第5回
「うちのホールでやるコンサートの前に施設の下見がしたいってことでアップフロントの人から聞いてるから入ってもいいけど、君一人なの?」
「あ、はい。研修も兼ねてまず一人で行ってこいって言われて」
ホールの受付の人はあからさまに胡散臭そうな目で明梨を見ていた。まぁ、マネージャーさんに何とか頼み込んで口をきいてもらったけど、明らかに無理あるからなぁ。
「それに君、なんかハロプロのアップアップガールズとかってグループにいる子に似てない?」
やばっ、この人ハロヲタ?正確にはハローじゃないけど。ばれないうちに入っちゃおう。
「いやぁ、言われたことないですよ。気のせいじゃないですか?それじゃ、お邪魔させていただきます」
「あんまり色々触って壊さないでね!」
「はぁい」
明梨は受付の人に一礼してホール内に入った。
「あ、はい。研修も兼ねてまず一人で行ってこいって言われて」
ホールの受付の人はあからさまに胡散臭そうな目で明梨を見ていた。まぁ、マネージャーさんに何とか頼み込んで口をきいてもらったけど、明らかに無理あるからなぁ。
「それに君、なんかハロプロのアップアップガールズとかってグループにいる子に似てない?」
やばっ、この人ハロヲタ?正確にはハローじゃないけど。ばれないうちに入っちゃおう。
「いやぁ、言われたことないですよ。気のせいじゃないですか?それじゃ、お邪魔させていただきます」
「あんまり色々触って壊さないでね!」
「はぁい」
明梨は受付の人に一礼してホール内に入った。
ハーモニーホール座間。ハロー!プロジェクトのユニット、アーティストがよく使用する神奈川県にあるホール。明梨もこうして一人だけでホール内に入るのは初めてだ。
「えっと、あの写真に写ってたのはたぶん楽屋がある辺りの廊下だよね」
明梨は関係者以外立ち入り禁止のエリアへと入って行った。
あらかじめすべての部屋に入ることができるように鍵は開けてもらってある。写真の廊下はすぐに分かった。カラープリントしてきた写真を確認し、明梨は周辺の部屋から調べていくことにした。
何室かある楽屋は当然毎回片付けられていて目ぼしいものは何も見つからなかった。明梨は一部屋ずつ見て行き、倉庫のようになっている部屋に目を止めた。
「えっと、あの写真に写ってたのはたぶん楽屋がある辺りの廊下だよね」
明梨は関係者以外立ち入り禁止のエリアへと入って行った。
あらかじめすべての部屋に入ることができるように鍵は開けてもらってある。写真の廊下はすぐに分かった。カラープリントしてきた写真を確認し、明梨は周辺の部屋から調べていくことにした。
何室かある楽屋は当然毎回片付けられていて目ぼしいものは何も見つからなかった。明梨は一部屋ずつ見て行き、倉庫のようになっている部屋に目を止めた。
積み上げられたパイプ椅子やテーブルを順に見ていくと、部屋の奥に一台の電子ピアノが大事そうに保管されていた。
明梨は何気なく鍵盤にかかっていた布を取りあちこち眺めていたが、メーカー名の横にある刻印を見て思わず息をのんだ。
「"Erina Mano"って…。これ、マノピアノ?なんでこんなとこに?」
真野恵里菜モデルとしてヤマハが製作した世界に一台しかないモデル。まさかこんなとこにあるなんて。
明梨は興味津々でマノピアノをあちこちいじっていたが…。
明梨は何気なく鍵盤にかかっていた布を取りあちこち眺めていたが、メーカー名の横にある刻印を見て思わず息をのんだ。
「"Erina Mano"って…。これ、マノピアノ?なんでこんなとこに?」
真野恵里菜モデルとしてヤマハが製作した世界に一台しかないモデル。まさかこんなとこにあるなんて。
明梨は興味津々でマノピアノをあちこちいじっていたが…。
バキッ。
嫌な音をたてて底面の一部が剥がれてしまった。
「どうしよう…。こんなのばれたら真野ちゃんにお説教どころじゃないよ。…ん?」
剥がれたパーツは折れたような断面ではなく最初から外れるようになっていたかのようにきれいだった。
パーツが外れたことで見えたスペースを覗き込むと、奥に何かが挟まっているのが見えた。
「どうしよう…。こんなのばれたら真野ちゃんにお説教どころじゃないよ。…ん?」
剥がれたパーツは折れたような断面ではなく最初から外れるようになっていたかのようにきれいだった。
パーツが外れたことで見えたスペースを覗き込むと、奥に何かが挟まっているのが見えた。
「よっと…」
何とか手を入れて奥に挟まっているものを引っ張り出すと、それは数枚の写真だった。
どこかの橋。神社。電話ボックス。夕日に染まる橋。夕暮れの街並み。夕暮れの山。
「何だろこれ?真野ちゃんはどうしてこんな写真を大事そうに…」
明梨はそう呟いて、ふと神社の写真を裏返してみた。
「えーっと。"あいたいよ… いつかきっと一緒に!! えりな・リンリン"こ、これ!」
かすれた文字を何とか読んで明梨は驚愕した。
「これはひとまずリンリンさんに見てもらわなきゃ」
明梨はリンリンに報告するためにこの数枚の写真と裏面のメッセージ、マノピアノをカメラに収めた。
何とか手を入れて奥に挟まっているものを引っ張り出すと、それは数枚の写真だった。
どこかの橋。神社。電話ボックス。夕日に染まる橋。夕暮れの街並み。夕暮れの山。
「何だろこれ?真野ちゃんはどうしてこんな写真を大事そうに…」
明梨はそう呟いて、ふと神社の写真を裏返してみた。
「えーっと。"あいたいよ… いつかきっと一緒に!! えりな・リンリン"こ、これ!」
かすれた文字を何とか読んで明梨は驚愕した。
「これはひとまずリンリンさんに見てもらわなきゃ」
明梨はリンリンに報告するためにこの数枚の写真と裏面のメッセージ、マノピアノをカメラに収めた。
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私は明梨から送られてきた報告のメールと添付された画像を見た。
「恵里菜…」
溢れる涙を拭い、もう一度写真とメッセージを見返す。
この写真に写っている風景は私がモーニング娘。を卒業して日本を離れる直前、恵里菜に写真で見せたもの。
どうしても大切な存在である彼女に見せたかった風景だから。
しかし、私は彼女に写真は渡していなかったので、彼女自身がこの地を訪れて撮影したものらしい。
その気持ち、そしてメッセージが嬉しかった。
最後に明梨のメールを読み返していると、気になる一文があった。
「恵里菜…」
溢れる涙を拭い、もう一度写真とメッセージを見返す。
この写真に写っている風景は私がモーニング娘。を卒業して日本を離れる直前、恵里菜に写真で見せたもの。
どうしても大切な存在である彼女に見せたかった風景だから。
しかし、私は彼女に写真は渡していなかったので、彼女自身がこの地を訪れて撮影したものらしい。
その気持ち、そしてメッセージが嬉しかった。
最後に明梨のメールを読み返していると、気になる一文があった。
『なんかこの神社の写真だけ他のよりも妙に鮮明なんですよね』
「普通では考えられないけど、でも…。入れ替わり自体が考えられないことだし」
写真とメッセージ、あの場所でそして入れ替わりが起こった事実について考える。そしてひとつの仮説にたどり着いた。
私は少し考えて、明梨にモーニング娘。と恵里菜のオフが合う日を調べてセッティングしてくれるよう依頼するメールを送った。
写真とメッセージ、あの場所でそして入れ替わりが起こった事実について考える。そしてひとつの仮説にたどり着いた。
私は少し考えて、明梨にモーニング娘。と恵里菜のオフが合う日を調べてセッティングしてくれるよう依頼するメールを送った。