「逢いたいな…」
公園のベンチに座り、絵里は思わず呟いてしまいそっとため息をついた。
公園のベンチに座り、絵里は思わず呟いてしまいそっとため息をついた。
入れ替わっていた絵里と衣梨奈が元に戻ってから1週間が過ぎようとしていた。
入れ替わりを打ち明けていたさゆ、愛佳、そしてもちろんれいなにも、元に戻ったことは伝えた。
しかし、れいなからは「よかったやん」とひと言あっただけ。入れ替わっている間にいつの間にかできていた距離は思った以上に大きかった。
「絵里のせい、か」
そう。絵里自身がずっと生田衣梨奈として生きていく覚悟を決めて、入れ替わりを打ち明けた後も意識してれいなと距離をとっていた結果かもしれない。
仕事場で会ってはいる。けれど、れいなの周りには常に後輩の9期・10期メンバーがいた。二人きりで話す機会が見つけられないまま、毎日が過ぎて行った。
「このままただのメンバー同士になっちゃうのかな…」
涙が零れそうになり慌てて空を見上げた時だった。
入れ替わりを打ち明けていたさゆ、愛佳、そしてもちろんれいなにも、元に戻ったことは伝えた。
しかし、れいなからは「よかったやん」とひと言あっただけ。入れ替わっている間にいつの間にかできていた距離は思った以上に大きかった。
「絵里のせい、か」
そう。絵里自身がずっと生田衣梨奈として生きていく覚悟を決めて、入れ替わりを打ち明けた後も意識してれいなと距離をとっていた結果かもしれない。
仕事場で会ってはいる。けれど、れいなの周りには常に後輩の9期・10期メンバーがいた。二人きりで話す機会が見つけられないまま、毎日が過ぎて行った。
「このままただのメンバー同士になっちゃうのかな…」
涙が零れそうになり慌てて空を見上げた時だった。
「それ、田中さんのことですか?」
ふいに声がして絵里は慌てて顔を戻した。そこに立っていたのは衣梨奈だった。
「えりぽん!なんで?」
驚く絵里に、衣梨奈はちょっと笑って答えた。
「スケジュール見て、公園で撮影してるってことだったからもしかしたら会えるかなと思って。それより…」
「え?」
「さっきの、田中さんのことですよね?亀井さんが好きな」
「な、何言って…」
無理に笑ってごまかそうとする絵里の言葉を、衣梨奈が遮った。
「分かりますよ。入れ替わってからずっと近くで亀井さんを見てきたし、それに」
衣梨奈はそこで言葉を切り、真剣な目で絵里を見つめた。
「それに、衣梨奈は亀井さんが好きですから」
絵里は大きく目を見開いた。
「亀井さんが田中さんのことを好きなのは分かってます。でも…、私じゃだめですか?」
座ったまま衣梨奈を見上げていた絵里は、立ち上がって衣梨奈をじっと見つめ、そしてふっと微笑んだ。
「ありがと。えりぽんの気持ち、嬉しいよ。でも、絵里はやっぱりれいなじゃなきゃだめなんだ」
衣梨奈は無理に微笑もうとしたが、こらえ切れず瞳から涙が一筋頬を伝った。
「そう…ですよね。分かってたんですけど…。でも、気持ちを伝えずにはいられなくて」
手で顔を覆い、すすり泣き始めた衣梨奈を絵里はやさしく抱き寄せ、背中をぽんぽんとたたいた。
ふいに声がして絵里は慌てて顔を戻した。そこに立っていたのは衣梨奈だった。
「えりぽん!なんで?」
驚く絵里に、衣梨奈はちょっと笑って答えた。
「スケジュール見て、公園で撮影してるってことだったからもしかしたら会えるかなと思って。それより…」
「え?」
「さっきの、田中さんのことですよね?亀井さんが好きな」
「な、何言って…」
無理に笑ってごまかそうとする絵里の言葉を、衣梨奈が遮った。
「分かりますよ。入れ替わってからずっと近くで亀井さんを見てきたし、それに」
衣梨奈はそこで言葉を切り、真剣な目で絵里を見つめた。
「それに、衣梨奈は亀井さんが好きですから」
絵里は大きく目を見開いた。
「亀井さんが田中さんのことを好きなのは分かってます。でも…、私じゃだめですか?」
座ったまま衣梨奈を見上げていた絵里は、立ち上がって衣梨奈をじっと見つめ、そしてふっと微笑んだ。
「ありがと。えりぽんの気持ち、嬉しいよ。でも、絵里はやっぱりれいなじゃなきゃだめなんだ」
衣梨奈は無理に微笑もうとしたが、こらえ切れず瞳から涙が一筋頬を伝った。
「そう…ですよね。分かってたんですけど…。でも、気持ちを伝えずにはいられなくて」
手で顔を覆い、すすり泣き始めた衣梨奈を絵里はやさしく抱き寄せ、背中をぽんぽんとたたいた。
「そんな…」
ハッとして絵里と衣梨奈は体を離し、声のした方を見た。
れいなだった。れいなは傷ついた表情で二人を見ていたが、ふいに身を翻して公園の奥に向かって駆け出して行った。
「れいな!」
絵里は叫んで追いかけようとしてしてためらい、足を止めた。
「行って下さい!私は大丈夫ですから、早く田中さんを追いかけて!」
衣梨奈はそう言って絵里の背中を押した。
絵里は振り向いて衣梨奈にひとつ頷いて、れいなを追って走り出した。
れいなだった。れいなは傷ついた表情で二人を見ていたが、ふいに身を翻して公園の奥に向かって駆け出して行った。
「れいな!」
絵里は叫んで追いかけようとしてしてためらい、足を止めた。
「行って下さい!私は大丈夫ですから、早く田中さんを追いかけて!」
衣梨奈はそう言って絵里の背中を押した。
絵里は振り向いて衣梨奈にひとつ頷いて、れいなを追って走り出した。
「これで、いいんだよね」
衣梨奈は頬を伝う涙を拭おうともせず、小さくなっていく絵里の背中をいつまでも見送っていた。
衣梨奈は頬を伝う涙を拭おうともせず、小さくなっていく絵里の背中をいつまでも見送っていた。
走り疲れたれいなは広大な公園の奥まったところにあるベンチに座り込んだ。
乱れていた呼吸が落ち着いてくると、さっきの抱き合う二人の映像がフラッシュバックする。
衣梨奈に呼び出されて公園まで来て、あんな場面に出くわすことになるなんて…。
れいなは衣梨奈の意図が分からず混乱していた。
「生田はあんな見せつけるような真似をする子じゃないって信じたい。信じたいけど…」
れいなは両手で顔を覆い、俯いた。
乱れていた呼吸が落ち着いてくると、さっきの抱き合う二人の映像がフラッシュバックする。
衣梨奈に呼び出されて公園まで来て、あんな場面に出くわすことになるなんて…。
れいなは衣梨奈の意図が分からず混乱していた。
「生田はあんな見せつけるような真似をする子じゃないって信じたい。信じたいけど…」
れいなは両手で顔を覆い、俯いた。
「れいな!」
かすかにれいなを呼ぶ絵里の声が聞こえ、れいなはハッと顔を上げた。
「絵里!」
大きな声でれいなが呼ぶと、絵里が気付いて駆け寄ってきた。
かすかにれいなを呼ぶ絵里の声が聞こえ、れいなはハッと顔を上げた。
「絵里!」
大きな声でれいなが呼ぶと、絵里が気付いて駆け寄ってきた。
「れいな。よかっ…た。はぁっ。はぁっ。みつ…けた」
絵里は息を切らし、れいなの隣にへたり込んだ。
「大丈夫?」
れいなは絵里にペットボトルのお茶を渡しながら聞いた。
絵里はお茶を受け取ってごくごくと飲み、大きく息をついた。
「何とか…」
絵里は息を切らし、れいなの隣にへたり込んだ。
「大丈夫?」
れいなは絵里にペットボトルのお茶を渡しながら聞いた。
絵里はお茶を受け取ってごくごくと飲み、大きく息をついた。
「何とか…」
絵里が落ち着いたところでれいなが口を開いた。
「絵里。さっき生田と何してたと?れいな、二人が抱き合っとぉとこしか見とらんけん」
「えりぽんにいきなり告白された。でも断った」
それを聞いてれいなは頭を抱えた。
「生田にメールで呼び出されて来てみたらあんな場面見せられて…。わけ分からん」
れいなの言葉に絵里は眉を寄せた。
「えりぽんの告白はどう見ても本気だったけど、わざわざそれをれいなに見せつけるような子じゃないし…」
「絵里。さっき生田と何してたと?れいな、二人が抱き合っとぉとこしか見とらんけん」
「えりぽんにいきなり告白された。でも断った」
それを聞いてれいなは頭を抱えた。
「生田にメールで呼び出されて来てみたらあんな場面見せられて…。わけ分からん」
れいなの言葉に絵里は眉を寄せた。
「えりぽんの告白はどう見ても本気だったけど、わざわざそれをれいなに見せつけるような子じゃないし…」
二人が考え込んでいると、れいなの携帯がメールの着信を知らせた。
「あ…。生田からメール…」
「何て?」
「"田中さん 自分に素直になって下さい。衣梨奈より"」
れいなと絵里が首を傾げていると、今度は絵里の携帯が鳴った。
「えりぽんからメール。"亀井さんの気持ちをそのまま田中さんに伝えてあげて下さい"だって」
「生意気なことして」
れいなと絵里は顔を見合わせて笑った。
「あ…。生田からメール…」
「何て?」
「"田中さん 自分に素直になって下さい。衣梨奈より"」
れいなと絵里が首を傾げていると、今度は絵里の携帯が鳴った。
「えりぽんからメール。"亀井さんの気持ちをそのまま田中さんに伝えてあげて下さい"だって」
「生意気なことして」
れいなと絵里は顔を見合わせて笑った。
笑いが収まると絵里は真顔になり、れいなの目を見て言った。
「やり方は無茶苦茶だけど、えりぽんの言いたかったことは分かるんだ。えりぽんのまっすぐな告白を聞いて、絵里がれいなに出会って恋に落ちた時の気持ちを思い出したよ」
絵里はそう言うとれいなの手を両手で包んだ。
「ほんとはこんなに言葉はいらなかったんだ」
衣梨奈の告白、そしてメールで絵里は気付いていた。れいなとの距離は遠くなったんじゃなくて、遠いと思い込んでいただけだったんだと。
絵里はれいなの手を強く握った。
「れいな。好きだよ」
「れいなも絵里が好きだよ。今までも、これからもずっと」
二人の距離はどちらからともなく縮まり、唇が重なった。
「やり方は無茶苦茶だけど、えりぽんの言いたかったことは分かるんだ。えりぽんのまっすぐな告白を聞いて、絵里がれいなに出会って恋に落ちた時の気持ちを思い出したよ」
絵里はそう言うとれいなの手を両手で包んだ。
「ほんとはこんなに言葉はいらなかったんだ」
衣梨奈の告白、そしてメールで絵里は気付いていた。れいなとの距離は遠くなったんじゃなくて、遠いと思い込んでいただけだったんだと。
絵里はれいなの手を強く握った。
「れいな。好きだよ」
「れいなも絵里が好きだよ。今までも、これからもずっと」
二人の距離はどちらからともなく縮まり、唇が重なった。
久し振りのキスはかすかに涙の味がした。
『ガキさんの告白編』AFTER STORY「近くて遠い距離」・完
元々は真野ちゃんの『黄昏交差点』を聴いて「れなえりの小説ができそうな歌詞だな~」と思ったのが最初のイメージとしてありましたw
イメージ補完としてよかったらどうぞ
ttp://www.youtube.com/watch?v=XUeFjFyisPw