「亀井さん…」
「んー?」
「私、亀井さんが…好き…なんですけど……」
「んー?」
「私、亀井さんが…好き…なんですけど……」
瞬間、絵里の頭はフリーズする。
さてさていったいなにを言っているんだろう、この子は…
さてさていったいなにを言っているんだろう、この子は…
「えーっと…えりぽん?」
「はい」
「……四月にはまだ早いよ」
「エイプリルフールじゃないですよ」
「はい」
「……四月にはまだ早いよ」
「エイプリルフールじゃないですよ」
ダメだ、そういう話じゃないらしい。
え、となるとなに?ドッキリ?絵里そういうの引っ掛かるの早いからなあ。
愛ちゃんのツボツボマンとか1発目だったし、4億円もすぐ騙されたし……
え、となるとなに?ドッキリ?絵里そういうの引っ掛かるの早いからなあ。
愛ちゃんのツボツボマンとか1発目だったし、4億円もすぐ騙されたし……
ただ残念なことに、目の前の彼女、というか私は本気の目をしている。
生田衣梨奈、外見は亀井絵里で中身は生田衣梨奈である彼女は嘘を言っているようには見えない。
生田衣梨奈、外見は亀井絵里で中身は生田衣梨奈である彼女は嘘を言っているようには見えない。
「亀井さんは…好きな人、いるんですか?」
衣梨奈の言葉に絵里はドキッとする。
いないわけではない。ずっと片想いをしている相手はいるが、それを未だに伝えることは出来ていない。
散々人のことを「へたれ」だと言うのだが、いちばんの「へたれ」は自分だと自覚している。
ただ、いま、好きな人がいるかいないかでもめている場合ではない。
絵里はふうと息を吐き、首を振った。
いないわけではない。ずっと片想いをしている相手はいるが、それを未だに伝えることは出来ていない。
散々人のことを「へたれ」だと言うのだが、いちばんの「へたれ」は自分だと自覚している。
ただ、いま、好きな人がいるかいないかでもめている場合ではない。
絵里はふうと息を吐き、首を振った。
「嘘ですね」
「へ?」
「いるって顔に書いてます」
「へ?」
「いるって顔に書いてます」
うーん、これはあなたの顔ですよと思うのだが、絵里は困ったように笑って誤魔化した。
すると衣梨奈は「ごめんなさい」と呟いた。
すると衣梨奈は「ごめんなさい」と呟いた。
「急に、困らせるようなこと言って…」
「あ、あー、まぁ…」
「あ、あー、まぁ…」
絵里は曖昧に笑う。
こういうとき、どうやって返せば良いのかが分からなくなる。
告白なんてされた経験もないし、まして相手が衣梨奈であればなおさらだ。
絵里は頭をポリポリとかくと、衣梨奈はクスッと笑った。
こういうとき、どうやって返せば良いのかが分からなくなる。
告白なんてされた経験もないし、まして相手が衣梨奈であればなおさらだ。
絵里は頭をポリポリとかくと、衣梨奈はクスッと笑った。
「告白、しないんですか?」
「え。あー、あー…まあ、こんな状態だし」
「え。あー、あー…まあ、こんな状態だし」
絵里がおどけてそういうと、衣梨奈も「そうですよね」と笑う。
実際、いつになったら自分は告白できるのだろうか。
モーニング娘。を卒業し、メンバーとともに過ごすことが少なくなった現在、告白の機会はさらに失われている。
もうこのまま、その人を忘れるのも手かなあと考えて過ごしていたところに、絵里は衣梨奈と出会い、入れ替わったのだ。
実際、いつになったら自分は告白できるのだろうか。
モーニング娘。を卒業し、メンバーとともに過ごすことが少なくなった現在、告白の機会はさらに失われている。
もうこのまま、その人を忘れるのも手かなあと考えて過ごしていたところに、絵里は衣梨奈と出会い、入れ替わったのだ。
「亀井さんになって、衣梨奈分かったんです」
絵里の思考は、衣梨奈の言葉で遮られた。
唐突に発せられたその言葉を、絵里は注意深く追った。
唐突に発せられたその言葉を、絵里は注意深く追った。
「亀井さん、モテてますから、きっとだいじょうぶですよ」
「……なにが?」
「亀井さんの好きな人も、たぶん亀井さんのこと、好きですから」
「……なにが?」
「亀井さんの好きな人も、たぶん亀井さんのこと、好きですから」
それはないと思うよえりぽん。
あの人は絵里のこと、そういう対象で見てなさそうだし…
というか、気付いたってどういうことよ?
あの人は絵里のこと、そういう対象で見てなさそうだし…
というか、気付いたってどういうことよ?
「ずいぶんな自信だね…」
「自信と元気と笑顔でここまで来ましたから!」
「自信と元気と笑顔でここまで来ましたから!」
意味が分からないよと思いながら絵里はグッと伸びをした。
「衣梨奈ー、そろそろ起きんねぇー」
衣梨奈の母親の声が聞こえ、絵里は目をこすりながら上体を起こす。
夢かあ…と思いながら大あくびをし、カーテンを開けた。やれやれ、今日も晴れたなあと空を見上げた。
夢かあ…と思いながら大あくびをし、カーテンを開けた。やれやれ、今日も晴れたなあと空を見上げた。
―「私、亀井さんが…好き…なんですけど……」
おどおどした割にストレートに告白した、夢の中の衣梨奈を思い出した。
あの子は自分に自信がないのかもしれないけれど、意外と度胸はあるのだなと思う。
告白される夢を見るなど、自意識過剰も良いところだと苦笑しながら、絵里は自室を出てキッチンへと向かう。
あの子は自分に自信がないのかもしれないけれど、意外と度胸はあるのだなと思う。
告白される夢を見るなど、自意識過剰も良いところだと苦笑しながら、絵里は自室を出てキッチンへと向かう。
―絵里にそんな度胸はないなあ…
夢の中で、外見だけの亀井絵里はストレートに告白したが、自分はまだまだできないと思う。
というか一生無理かもしれない。
いま、生田衣梨奈としてモーニング娘。の一員で活動する中で、絵里はまた、自分の想い人と一緒に時間を過ごしている。
そうすることができるだけでも、絵里は満足だった。
というか一生無理かもしれない。
いま、生田衣梨奈としてモーニング娘。の一員で活動する中で、絵里はまた、自分の想い人と一緒に時間を過ごしている。
そうすることができるだけでも、絵里は満足だった。
「へたれだなぁ…」
絵里はそう苦笑しながら食パンを齧ると、衣梨奈の母親に「なんが?」と聞かれた。
不思議そうな顔を見せた母親に対し、絵里は「なんでもなかよー」とだれかさんの博多弁をまねて返した。
不思議そうな顔を見せた母親に対し、絵里は「なんでもなかよー」とだれかさんの博多弁をまねて返した。