第8回
翌朝。恵里菜とともに待ち合わせの駅に向かった。
気が急いて待ち合わせの時間のかなり前に着いてしまったが、そこにはすでに明梨が待っていた。
「佐保ちゃん、もう来てたんだ?」
恵里菜の問いかけに、明梨は照れたように頭をかいた。
「実は待ち合わせの時間を間違えて、1時間早く来ちゃったんですよ。あ、いけね」
けたたましく鳴るキッチンタイマーを慌てて止める明梨に、私も恵里菜も大笑いした。
「佐保ちゃん、いつもキッチンタイマー持ち歩いてるの?」
笑いすぎて目尻ににじんだ涙を拭いながら私が尋ねると、明梨は必死に首を振って否定した。
「いやいや、違いますよ!たまたまです、たまたま!」
気が急いて待ち合わせの時間のかなり前に着いてしまったが、そこにはすでに明梨が待っていた。
「佐保ちゃん、もう来てたんだ?」
恵里菜の問いかけに、明梨は照れたように頭をかいた。
「実は待ち合わせの時間を間違えて、1時間早く来ちゃったんですよ。あ、いけね」
けたたましく鳴るキッチンタイマーを慌てて止める明梨に、私も恵里菜も大笑いした。
「佐保ちゃん、いつもキッチンタイマー持ち歩いてるの?」
笑いすぎて目尻ににじんだ涙を拭いながら私が尋ねると、明梨は必死に首を振って否定した。
「いやいや、違いますよ!たまたまです、たまたま!」
「三人とも何やってんの?」
コントのようなやり取りをしていると、いつの間にか亀井さんと衣梨奈がそばに立ってこちらを見ていた。
「亀井さんいつの間に?!衣梨奈も瞬間移動してきたですか?」
私が驚いていると、亀井さんは呆れたように笑った。
「リンリンたちがおしゃべりに夢中で気付かなかっただけでしょ?それより、真野ちゃんも"えりな"だからややこしいよ。今日だけでも呼び方変えない?」
「じゃ、真野ちゃんが"えりな"で生田ちゃんが"えりぽん"で」
コントのようなやり取りをしていると、いつの間にか亀井さんと衣梨奈がそばに立ってこちらを見ていた。
「亀井さんいつの間に?!衣梨奈も瞬間移動してきたですか?」
私が驚いていると、亀井さんは呆れたように笑った。
「リンリンたちがおしゃべりに夢中で気付かなかっただけでしょ?それより、真野ちゃんも"えりな"だからややこしいよ。今日だけでも呼び方変えない?」
「じゃ、真野ちゃんが"えりな"で生田ちゃんが"えりぽん"で」
全員揃ったのでそろそろ出発となった時、明梨が「あのぉ」と遠慮がちな声をあげた。
「一番部外者の私なんかが一緒に行ってもいいんでしょうか?」
それを聞いて、亀井さんが「何言ってんの」と明梨の頭をぽんぽんとたたいた。
「佐保ちゃんはリンリンと絵里たちの連絡役もしてくれたし、色々調べてくれたりもしたじゃない。本当に感謝してるんだよ。迷惑じゃなかったら一緒に行こうよ」
「迷惑だなんてとんでもないです!」
明梨は慌てて首をぶんぶんと振った。
「一番部外者の私なんかが一緒に行ってもいいんでしょうか?」
それを聞いて、亀井さんが「何言ってんの」と明梨の頭をぽんぽんとたたいた。
「佐保ちゃんはリンリンと絵里たちの連絡役もしてくれたし、色々調べてくれたりもしたじゃない。本当に感謝してるんだよ。迷惑じゃなかったら一緒に行こうよ」
「迷惑だなんてとんでもないです!」
明梨は慌てて首をぶんぶんと振った。
電車に揺られること約2時間。私たちは目的の地に着いた。
事務所の大先輩でもある森高千里さんの代表曲のひとつ、『渡良瀬橋』。私がモーニング娘。を卒業する時に歌った思い入れのある曲だ。
そんな曲のモデルとなった地をまたこんな形で訪れることになるなんて。ある種の感慨に浸りそうになって、私は慌てて考えを今回ここに来てどうするのかということに戻した。
「亀井さんとえりぽんにはメールを送って、佐保ちゃんからもだいたいの話は聞いてもらったと思いますけど、この写真の八雲神社がカギを握っていると思うんです」
私はみんなに問題の八雲神社の写真と『渡良瀬橋』の歌詞を見せながら説明した。
私の考えはこうだ。歌詞では『今でも八雲神社へお参りするとあなたのこと祈るわ 願い事一つ叶うならあの頃に戻りたい』とある。
当事者である亀井さんと衣梨奈、そしてこの写真に名前が書いてある私と恵里菜が一緒に八雲神社で祈ることで何かが起こるのではないかと。
願い事は、そう、"戻りたい"。
それこそアニメかファンタジー小説のようだけれど、少しでも可能性があるならやってみる価値はあるはずだ。
事務所の大先輩でもある森高千里さんの代表曲のひとつ、『渡良瀬橋』。私がモーニング娘。を卒業する時に歌った思い入れのある曲だ。
そんな曲のモデルとなった地をまたこんな形で訪れることになるなんて。ある種の感慨に浸りそうになって、私は慌てて考えを今回ここに来てどうするのかということに戻した。
「亀井さんとえりぽんにはメールを送って、佐保ちゃんからもだいたいの話は聞いてもらったと思いますけど、この写真の八雲神社がカギを握っていると思うんです」
私はみんなに問題の八雲神社の写真と『渡良瀬橋』の歌詞を見せながら説明した。
私の考えはこうだ。歌詞では『今でも八雲神社へお参りするとあなたのこと祈るわ 願い事一つ叶うならあの頃に戻りたい』とある。
当事者である亀井さんと衣梨奈、そしてこの写真に名前が書いてある私と恵里菜が一緒に八雲神社で祈ることで何かが起こるのではないかと。
願い事は、そう、"戻りたい"。
それこそアニメかファンタジー小説のようだけれど、少しでも可能性があるならやってみる価値はあるはずだ。
駅から地図を見ながら八雲神社を目指して歩く。この後のことを考えてか、道中はみんな口数は少なかった。
長い道のりをへて八雲神社にたどり着く。祭壇へと続く石畳の道を歩きながら亀井さんと衣梨奈の様子を窺うと、やはり二人ともやや緊張した面持ちだった。
みんなで祭壇の前に立ち、目を閉じて一心に祈る。どうか、この大切な先輩と後輩を元に戻して下さい…。
長い道のりをへて八雲神社にたどり着く。祭壇へと続く石畳の道を歩きながら亀井さんと衣梨奈の様子を窺うと、やはり二人ともやや緊張した面持ちだった。
みんなで祭壇の前に立ち、目を閉じて一心に祈る。どうか、この大切な先輩と後輩を元に戻して下さい…。
どれくらい祈っていただろうか。
恐る恐る目を開けて亀井さんと衣梨奈の方を見ると、二人はぽかんとした表情で固まっていた。
「亀井さん?えりぽん?ひょっとして…」
私の呼びかけで呪縛が解けたように、二人は同時に叫んだ。
「戻った!」
涙を溢れさせながら抱き合う二人。その様子に、私と恵里菜、それに明梨は顔を見合わせ、そして笑顔で手を取り合った。
恐る恐る目を開けて亀井さんと衣梨奈の方を見ると、二人はぽかんとした表情で固まっていた。
「亀井さん?えりぽん?ひょっとして…」
私の呼びかけで呪縛が解けたように、二人は同時に叫んだ。
「戻った!」
涙を溢れさせながら抱き合う二人。その様子に、私と恵里菜、それに明梨は顔を見合わせ、そして笑顔で手を取り合った。
しばらく興奮状態だった亀井さんと衣梨奈もようやく落ち着き、神社を出た時にはもうすぐ夕方という時刻だった。
歩きながら亀井さんが言った。
「結局今回絵里たちが入れ替わった時に何の力が働いたのかは推測するしかないけどさ、ひとつ実感したことがあるよ」
「何ですか?」
「思いの力、心の力はすごいっていうこと。リンリンの説が正しかったかどうかは別にしても、私たちは実際に元に戻った。それに真野ちゃんの願いも」
恵里菜がはっとして亀井さんを見た。
「そう。こうして真野ちゃんはまたリンリンと会えたし、ここにも一緒に来れたじゃん」
「はい」
亀井さんの言葉に恵里菜も私も笑顔になった。
「絵里とえりぽんも。ただの先輩後輩以上の深い絆ができたし、これから何があっても乗り越えられる気がする。ね、えりぽん?」
すると、衣梨奈がいたずらっぽく笑って言った。
「亀井さん、本来の家に戻っても自分の部屋を私がしてきたみたいにきれいに保って下さいね。心の力で!」
「こら!先輩をバカにしない!」
亀井さんはむっとして衣梨奈をにらんだが、すぐに衣梨奈と一緒になって笑った。
歩きながら亀井さんが言った。
「結局今回絵里たちが入れ替わった時に何の力が働いたのかは推測するしかないけどさ、ひとつ実感したことがあるよ」
「何ですか?」
「思いの力、心の力はすごいっていうこと。リンリンの説が正しかったかどうかは別にしても、私たちは実際に元に戻った。それに真野ちゃんの願いも」
恵里菜がはっとして亀井さんを見た。
「そう。こうして真野ちゃんはまたリンリンと会えたし、ここにも一緒に来れたじゃん」
「はい」
亀井さんの言葉に恵里菜も私も笑顔になった。
「絵里とえりぽんも。ただの先輩後輩以上の深い絆ができたし、これから何があっても乗り越えられる気がする。ね、えりぽん?」
すると、衣梨奈がいたずらっぽく笑って言った。
「亀井さん、本来の家に戻っても自分の部屋を私がしてきたみたいにきれいに保って下さいね。心の力で!」
「こら!先輩をバカにしない!」
亀井さんはむっとして衣梨奈をにらんだが、すぐに衣梨奈と一緒になって笑った。
渡良瀬橋の近くまで来て、亀井さんがふいに振り返って私と恵里菜に言った。
「じゃ、絵里たちは先に帰るね。ほら、佐保ちゃんも帰るよ」
「あ、はいはい」
明梨も慌てて亀井さんたちの後を追った。
「え?亀井さん?」
「リンリンと真野ちゃんと二人きりでもう少しここを見て行きなよ。大切な場所なんでしょ?」
亀井さんは振り返って不器用にウインクした。
遠ざかっていく亀井さんたちに、私は慌てて声をかけた。
「ありがとうございます!…あの!」
「ん?」
「亀井さんとえりぽん、家に帰ったらまず何を話しますか?」
私の質問に、亀井さんと衣梨奈は顔を見合わせて笑った。
「じゃ、絵里たちは先に帰るね。ほら、佐保ちゃんも帰るよ」
「あ、はいはい」
明梨も慌てて亀井さんたちの後を追った。
「え?亀井さん?」
「リンリンと真野ちゃんと二人きりでもう少しここを見て行きなよ。大切な場所なんでしょ?」
亀井さんは振り返って不器用にウインクした。
遠ざかっていく亀井さんたちに、私は慌てて声をかけた。
「ありがとうございます!…あの!」
「ん?」
「亀井さんとえりぽん、家に帰ったらまず何を話しますか?」
私の質問に、亀井さんと衣梨奈は顔を見合わせて笑った。
「そんなの決まってるじゃんね」
そして二人は声を合わせて答えた。
そして二人は声を合わせて答えた。
「ただいま!」
『リンリン編』2nd Season・完
最後にこれも貼っておきます
リンリン
http://www.youtube.com/watch?v=x-fMfaSgTac&feature=fvwrel
真野ちゃん
http://www.youtube.com/watch?v=fn8I-H5Su5I