事務所で用事を済ませた後、ついでにメンバーがいる部屋に顔を出そうと思い廊下を歩く。
事前に言っていなかったからみんなびっくりするだろうなと想像すると思わず笑みがこぼれた。
事前に言っていなかったからみんなびっくりするだろうなと想像すると思わず笑みがこぼれた。
「絵里・・・?」
後ろから声をかけられ振り返ると、れいなが立っていた。何でここにいるの?と言いたげに目を丸くしている。
田中さん、びっくりしてる。衣梨奈は初めて見るれいなの表情に驚きながらも、笑って返した。
田中さん、びっくりしてる。衣梨奈は初めて見るれいなの表情に驚きながらも、笑って返した。
「れいな、久しぶり」
れいなは何も返さず、ただ衣梨奈のことを見た。怒っているのか、困っているのか微妙な顔をして、立ち尽くしている。
とりあえずそばに行こうとれいなの方に足を進めた瞬間だった。
とりあえずそばに行こうとれいなの方に足を進めた瞬間だった。
「・・・なんで、連絡くれなかったと?」
咎めるような口調でれいなは言った。なんでと問われても衣梨奈には答えられなかった。
入れ替わる前に絵里とれいながどんな風に連絡を取っていたなんて知らなかったし、絵里からも何も聞かなかった。
黙ったままで今度は衣梨奈が立ち尽くす。
入れ替わる前に絵里とれいながどんな風に連絡を取っていたなんて知らなかったし、絵里からも何も聞かなかった。
黙ったままで今度は衣梨奈が立ち尽くす。
れいなは何も言わないことに呆れたのか、黙ったまま衣梨奈の側を通り過ぎようとした。
思わずその腕を掴む。顔をこちらに向けたれいなとすぐそばで目が合い、
そんな距離でれいなを見たことがなかった衣梨奈は少しドキドキした。
違うんです、新垣さんこれは違うんです。心の中で言い訳をする。
一方、見つめるれいなの目には徐々に涙が溜まっていく。
思わずその腕を掴む。顔をこちらに向けたれいなとすぐそばで目が合い、
そんな距離でれいなを見たことがなかった衣梨奈は少しドキドキした。
違うんです、新垣さんこれは違うんです。心の中で言い訳をする。
一方、見つめるれいなの目には徐々に涙が溜まっていく。
「放して・・・!」
振り払おうとするも、腕の力は弱々しかった。田中さん、こんなに非力なんだ。
当然ではあるが、れいなのことは何も知らないと実感した。
当然ではあるが、れいなのことは何も知らないと実感した。
全く重ならない二人が入れ替わってしまったことで、何かがずれていくのを感じていた。
里沙との関係もれいなとの関係も。それだけじゃない、きっと、聖や他の9期との関係も。
戻ったときに、それらは元通りになるのだろうか。まず、元に戻れるのだろうか。
そんなことを頭で考えながらも、衣梨奈はその手を離さなかった。
れいなは諦めて腕を降ろし、うつ向く。
里沙との関係もれいなとの関係も。それだけじゃない、きっと、聖や他の9期との関係も。
戻ったときに、それらは元通りになるのだろうか。まず、元に戻れるのだろうか。
そんなことを頭で考えながらも、衣梨奈はその手を離さなかった。
れいなは諦めて腕を降ろし、うつ向く。
「嫌われたかと思った・・・」
震えた、小さな声。いつも強気な彼女の弱っている一面を、衣梨奈は驚きながら見つめる。
完全に他人事になっていると気付き、いけないと心の中で首を振った。
完全に他人事になっていると気付き、いけないと心の中で首を振った。
「ごめん、嫌ったとかじゃなくて・・・ちょっと連絡出来なかった」
れいなは納得したようなしていないような表情で衣梨奈を見つめる。何かを見透かされるような気がして、衣梨奈は身構えた。
そのまま、バレちゃったほうが楽なのかもしれないけど。
そのまま、バレちゃったほうが楽なのかもしれないけど。
「・・・今も、好いとーと?」
聞き慣れた故郷の言葉は、耳に優しく響いた。そう言えば、ずっと聞いていなかったなあと今までの日々を振り返る。
ふと、れいなの言った言葉が違和感を持って衣梨奈の心に残った。
連絡が無かったことを咎める、嫌われたかと不安になる。今も、自分のことを好きなのかどうか尋ねる。
絵里とれいなの関係は、それらのヒントから推量されうるものである。答えは一つしか無かった。
理解した瞬間、れいなの腕を握る手のひらに汗が浮かんだ。
れいなの問いに答える最善の返事は分かっていた。口にしなければと思っているのに、声が出ない。
頭には、あの人の笑顔が浮かんでいた。
ふと、れいなの言った言葉が違和感を持って衣梨奈の心に残った。
連絡が無かったことを咎める、嫌われたかと不安になる。今も、自分のことを好きなのかどうか尋ねる。
絵里とれいなの関係は、それらのヒントから推量されうるものである。答えは一つしか無かった。
理解した瞬間、れいなの腕を握る手のひらに汗が浮かんだ。
れいなの問いに答える最善の返事は分かっていた。口にしなければと思っているのに、声が出ない。
頭には、あの人の笑顔が浮かんでいた。
「・・・当たり前じゃん」
そう答えるのが精一杯だった。