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  • 正統派「a better tomorrow」

ノノ*^ー^) えりがナマタでえりながカメで |||9|‘_ゝ‘) まとめwiki

正統派「a better tomorrow」

最終更新:2012年05月25日 19:54

namata-kame

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だれでも歓迎! 編集
衣梨奈は絵里とともに、家で個人ダンスレッスンを行っていた。
哀しいこともツラいことも、そこにはたくさん混在している。
だけど、立ち止まる暇なんてなかった。
時間は動きだしているし、いまさら戻ることなんてできない。
だとするならば、いまは必死に前に進むしかなかった。
涙が溢れるような毎日だとしても、理不尽ばかりの現実だとしても、絵里と衣梨奈は歩くしかない。
出口の見えないトンネルに、光が射し込んで来るその瞬間まで。

「えりぽん…」

神妙な面持ちをして、衣梨奈は絵里にそう話しかけられた。

「すみません、私、間違えました?」
「あ、ううん、そうじゃなくてさ……」

慌てて謝ってくる衣梨奈に対し、絵里は苦笑しながら答える。
モーニング娘。の春ツアー終了までもう時間はない。それなのに、ふたりは未だに戻れずにいる。
敬愛してやまない新垣里沙の卒業に立ち会えないかもしれないというのに、衣梨奈は必死に振りを覚え、ボイストレーニングをする。
絵里はそんな衣梨奈に応えようとし、毎日、時間を削って衣梨奈に付き合っていた。

「ちょっと……ワガママ、聞いてほしいんだ」

絵里は絞り出すようにそう訴えた。
彼女の真意が掴みきれなかった衣梨奈はきょとんとしている。
そんな彼女に絵里は申し訳なさそうな瞳を見せるが、どうしても、このワガママを、貫きたかった。



光井愛佳はひとり、自宅で音楽を聴きながらフリの確認をしていた。
左脚に激しい負荷をかけることはできないため、上半身のみのパフォーマンスになるが、それでも必死に体を動かす。
せっかく去年の秋ツアーには最終日しか参加できなかったが、今年の春ツアーは初日から参加できている。
ただそれだけで、愛佳は喜びを感じていた。

音楽が終わったところで「ふぅ」とひと息つき、汗で濡れたシャツを着替えながら愛佳は時計を見た。
彼女との約束の時間まではあと10分程度だが、どうせ彼女のことだから、時間通りには来ないんだろうなと苦笑する。
あの人と待ち合わせをして、ちゃんと時間通りに着いたことなど1度もなかった。
さすがに4時間も待たされることはないのだが、1時間弱の遅刻はザラにある。
それを見越して、待ち合わせ場所に行けば効率も良いのだろうが、愛佳はどうしても、集合の15分前にはいつも到着し、その人を待っていた。
それは気遣いなのか、はたまたそれ以上の感情があるからかは、判別できない。

「今日は何分遅刻するんやろ」

そうして着替えを終えた愛佳が苦笑交じりに立ち上がると、家のチャイムが鳴った。
思わず時計を見るが、先ほどから長針も短針もほとんど動いていない。
まさか待ち合わせの10分前に来たのだろうか?あの遅刻常習魔が?いや、それとも宅急便とか?
愛佳は服の乱れを整え、玄関先へと歩く。
覗き穴から確認すると、そこには、待ち合わせの人物ではない人がいた。

「生田……?」

愛佳は慌ててドアを開ける。
そこには、後輩の生田衣梨奈―――中身は亀井絵里である衣梨奈、が立っていた。

「どうしたの、生田…?」
「すみません光井さん…突然来ちゃって……」

本当に突然の出来事だった。
愛佳が今日会う約束をしていたのは、先輩である亀井絵里だった。
だが、約束の10分前とはいえ、やってきたのは後輩の生田衣梨奈。
どういうことだろうと頭を回転させるが、立ち話をさせるのも悪いと、愛佳は彼女を中へ入れた。

「ごめん、約束してたっけ?」
「あ、違います…ちょっと、どうしても、会いたくて……」

歯切れの悪い彼女を愛佳は不思議そうに見ながら自分の部屋へと通した。
とりあえずココアでも出そうかと、愛佳は台所へと向かう。
やって来た本人、衣梨奈の中に入っている絵里はといえば、「はぁ」と深くため息をついた。

今日、此処へ来る3時間前、絵里は衣梨奈にひとつの「ワガママ」を言った。
それは、「本当の自分」で、話をしてきてほしいというものだった。



「それは…」

衣梨奈は汗で濡れた前髪を整えながら絵里に探るように聞いた。
彼女はまだ真意が分かっていないようだったが、絵里は深く頷き、彼女の言葉を先に紡いだ。

「ガキさんに、ちゃんと言ってきてほしいんだ、自分のこと…」
「でも、それは」
「分かってる。なんのためにいまのいままで黙ってきたかってことも…」

絵里と衣梨奈がふたりで決めたこと。
だれにも迷惑をかけたくないから、入れ替わりのことはだれにも言わないというひとつの約束。
「秘密」を共有することで、ふたりが歩んでいく道は、まさに茨の道だった。それが分かっていても、ふたりはその道を選んだ。
だが、衣梨奈がだれよりも慕っている里沙の卒業が決まったことで状況は変わった。
大好きな先輩と同じステージに立てないことは、想像以上の痛みと哀しみを伴っていた。
それでも衣梨奈は立ち止まらずに、自分にできることをやっていた。
暗闇の中で泣き腫らすのではなく、元に戻れる事を信じ、あこがれの人と同じ舞台に立てるように努力してきた。

だが、武道館まではあと残り日数が僅かでしかない。
最悪の事態を想定した絵里は、そうなる前に、衣梨奈を里沙と会わせたかった。会ってちゃんと、自分の口で話をしてほしかった。
それはひとつの、ワガママだった―――

「で、でも……」
「えりぽんは、ガキさんと、会いたくない?」
「そんなことないです!」

衣梨奈はすぐに否定した。
いまでも、会いたくて仕方がない。あの優しい笑顔に、あの優しい声に、包み込んでくれる新垣里沙と言う存在に。
衣梨奈はいつの間にか、あの大きくて遠い背中に、知らぬうちに憧れ以上の想いを持っていたのかもしれない。
それを差し引いたとしても、衣梨奈は里沙に会いたかった。


「……会うなら、亀井さんもいっしょに」
「うーん、それは出来ないよ」

絵里はそうしておどけて話した。
どうして?と言わんばかりの表情を見せる衣梨奈に、絵里はいたずらっ子のような笑みを見せて返した。

「邪魔はしないよ」

それがどういう意図なのか、衣梨奈にだって分かった。
でも、本当にそれで良いのだろうか?
会いたい・会いたくないという二択を迫られたとき、衣梨奈は迷わず会いたいを選ぶのだけれど、心になにかが引っ掛かる。

「その代わりなんだけどさ……絵里はみっつぃーに会いたいんだ」
「え?」
「あの子、ああ見えて弱いからさ」

そうして絵里は優しく笑った。
その表情は確かに生田衣梨奈そのものなのだけれど、衣梨奈はその向こうに、確かに亀井絵里を見た。
いつでも優しく微笑んで、知らない内に人をシアワセにする力のある人、それが絵里だった。
モーニング娘。として、いっしょに過ごした時間はなかったけれど、それでも衣梨奈はなんとなく、絵里を理解する。
彼女はどうしようもなく、メンバーを想っているのだと。

だから衣梨奈は、彼女の「ワガママ」に付き合おうと思った。
きっとそれは、衣梨奈も心の底で願っていた、ワガママだったのだから―――



そうしてふたりはいま、自分自身として、それぞれの卒業していくメンバーに向き合っている。
恐らくいまごろは、衣梨奈も「生田衣梨奈」として、リーダーである里沙に会っているはずだった。
ちゃんと会話が成立しているかは、果てしなく微妙ではあるが。
絵里はひと息吐いて、ぽつんと床を見つめる。

自分で決めたひとつの「ワガママ」。
亀井絵里として愛佳に会うことを決めたのに、いざとなると、なんて言って良いのかが分からなくなる。
自分自身になって会いたいと思ったのは、衣梨奈の気持ちを感じ取ったからだけではなかった。
それは、武道館コンサートを控えた2週間前に、愛佳の卒業が決まったからという理由もあった。

どうしても、彼女に自分の口でなにか伝えたかった。
普段は自分の気持ちを正直に表現することが苦手な彼女に、なにか伝えたかった。

「お待たせー」

そのとき愛佳が部屋へと戻ってきた。
その手にはマグカップがふたつ握られており、愛佳はひとつを絵里に差し出した。

「すみません、急に来たのに……」
「ううん、かめへんよ。まだ時間あるし」

そうして愛佳は時計を見ると、愛佳が「絵里」と約束した時間になった。
3時間ほど前、愛佳は「絵里」から、今日いまから会えないかというメールをもらい、ふたつ返事でOKをした。
もともと綺麗な部屋であるので、少し片付けをしてしまえば、いつでも人を呼べる状態にあるのが愛佳の部屋だった。
愛佳は軽く片付けを済ませ、ひと息ついたところで、ダンスレッスンをしていたのである。

「ホンマは亀井さんと約束してるんよ、これから」

そうして愛佳は笑ってココアを飲む。
冷たいココアが喉を潤していく感覚が好きだった。

「ま、時間通りには来ぇへんと思うけど」

愛佳のその表情に絵里は胸が痛む。
どうして彼女は、こうやって笑顔を向けられるのだろう。
私が卒業を決めたときも、こうして笑顔でいられただろうかと絵里はぼんやり思う。
いつだって、彼女はそうなのだ。
自分が苦しいこともツラいこともその胸に秘め、痛みや哀しみを外に出そうとはしない。
だから、彼女がツラいということに、気付きにくい。

どうしようもない切なさを、彼女は携えている。
急遽決まった卒業。そしてその瞬間は、里沙と同じ、武道館。
たくさんの人を混乱させてしまったことへの哀しみと、里沙に最後まで迷惑をかけてしまうという痛み。
それでも前を向いて、いま自分にできることをすると歩き出す彼女が、どうしようもなく、絵里には愛しかった。
それはひとつの恋愛感情とはまた違う、愛しさなのかもしれないと絵里は想う。
ともに同じステージに立ち、キラキラと輝きを放っていたあの瞬間、絵里はなんども愛佳に助けられた。
だからこそ今度は、絵里が愛佳を助けたかった。

「あの……」
「うん?」

絵里は、意を決した。
今日はもう、逃げない。
不器用でも良い。愛佳にちゃんと伝えたかった。
「なにを」かは具体的には分からない。
でも、分からなくても、絵里は愛佳に向き合いたかった。
志半ばで、それでもメンバーを想いながら卒業していく、あなたに―――

絵里の喉はカラカラに渇いていた。たぶんそれは、ココアを飲んでも潤せないほどに。
それでも絵里は必死に言葉を紡ごうとした。

「あと1週間ですよね……武道館」

その言葉に愛佳はココアのカップをテーブルに置いた。

「ホンマやなぁ…新垣さん卒業で生田寂しいやろ」
「そう、ですけど…光井さんも」
「んー。うん、そうやね」

ちゃんと伝えたい。なにかを。不器用でも良いから。
それなのに、なにも言葉が出てこない。上手い言い回しさえも出てこない現状に絵里はゲンナリする。
どうしてこうも、自分は無計画なのだろうと。

「あ、怖い先輩がおらんくなって嬉しいとか思ったやろ」
「そんなことっ!」

おどけて話した愛佳に向かって、絵里は思わず叫んで立ち上がった。
その姿に愛佳は目を丸くした。こんな冗談に、本気で返すようなタイプだったっけ?と思い返す。

「そんなこと……」

絵里自身、焦っていたのかもしれない。
なにも言えない自分自身に。
せっかくワガママを聞いてもらったのに、それを返せない、不甲斐なさが身に沁みる。
衣梨奈に体を返すこともできず、自分だけがキラキラと輝くステージに立っているという、後ろめたさもあった。

「まあ、座りぃよ」

愛佳に促され、絵里はひとつ頷いて座る。
とにかく落ち着こうと差し出されたココアに口をつけた。

「生田、なんかあったん?」
「え?」
「いや、急にうちに来るなんて珍しいから…」

ああ、どうしようと絵里は思う。
愛佳に話をしに来たというのに、また彼女に心配をかけてしまっている。
伝えたいことはなにも伝えられず、ただ迷惑ばかりかけてしまっている。
いったいなにをしに此処まで来たのだと頭を抱えたくなるが、絵里は必死に自分を奮い立たせる。
此処で負けてしまっては、なんの意味もないのだと。

「光井さん…」
「うん?」
「……あの」

再び意を決して顔を上げた瞬間だった。
絵里に飛び込んできたのは、愛佳の優しい笑顔だった。
それだけでもう、絵里は限界だった。
後輩のことを最後まで心配し、気にかけてくれている彼女を見た途端に、感情が決壊する。
いちばんツラいときですら、彼女はだれにも心を伝えずに、自分ひとりで闘ってきた。
足を怪我し、モーニング娘。から長期離脱しているとき、彼女は笑顔で闘ってきたのだ。
痛みも哀しみも、全部全部その胸に背負いこんできた愛佳の姿を認めたとき、絵里は無意識のうちに、腕を伸ばした。

「え?」

そう愛佳が呟いたのも束の間、愛佳の体はふわりと絵里に包み込まれた。
一瞬、なにが起きたのか判別できなかった。
絵里は愛佳の体に両腕を伸ばし、ぎゅうと強く抱きしめた。
微かに香った彼女の香りに愛佳は思わずドキッとするが、それ以上に、どうして急に生田がこんなことをするのだろうと理解しようとした。

「……ごめ、ん」
「え?」
「もっと……話、聞いてあげたかった…」

なんのことだろうと愛佳が思っているとき、彼女の鼻をふわりとなにかが香った。
その香りは、愛佳の記憶の扉を開ける。
あれ?と愛佳は思う。
いつだったか、前にもこうして抱きしめられたことがあったのではないかと。
そう遠くはない昔、愛佳が涙を流し、鼻水さえも垂らしていたとき、愛佳はだれかに抱きしめられた。


―――大好きだよ


愛佳の中に、ひとつの声が浮かぶ。
それは優しくて温かい、だれかの声だった。


―――これからも、見守ってるから


歓声と拍手に交って聞こえるその声の主を愛佳は知っている。
温かい優しさの雨を降らせてくれる人を愛佳は知っている。
だれよりも気を遣う人で、だれよりも優しいその人を愛佳は知っている。
自然と周囲を笑顔にし、自分の痛みを背負いこんでいた人を愛佳は知っている。

「っ……亀井、さん………?」

愛佳はその人の名前を呼んだ。
どうしようもないほどに愛しく、だれよりもシアワセになってほしいその人の名を呼んだ。
瞬間に、視界がぼやける。
両の瞳に涙が溜まり、いまにも零れ落ちんとしていた。

なぜ?どうして?
いま此処にいるのは生田衣梨奈のはずなのに、どうして愛佳は亀井絵里の名を呼んだ?
その理由はひとつも分からなかった。
分からなかったのに、愛佳はもう、確信していた。
目の前にいるこの人は、1年前、最高の笑顔を携えたまま完全燃焼した、亀井絵里であることを。

「気ぃ、遣いすぎっ……もっと…もっとさぁ…」

絵里自身も、泣いていた。
涙が零れ、愛佳のシャツに落ちてしまうがもう知ったこっちゃない。
ぎゅうと彼女を強く抱きしめ、肩に顎を置き、声を絞り出す。
伝えたいこと、結局なにも云えてはいない。
それでも絵里は、必死に、その全身で、此処にある想いを届けようとしていた。
その感情は確かに愛佳の胸に響き、愛佳は泣きながらも自然と笑顔になることができた。

「すみません……気付かんで…」
「ちっがう!」

そうして絵里は愛佳の両肩を持ち、バッと距離を置く。
「へ?」という顔をしている愛佳に向かって絵里は叫んだ。

「そうじゃないでしょ!いまはみっつぃーのことが………って…」

そう叫んだところで絵里は気付く。
愛佳はいま、なんて言った?

「え、え………えぇぇぇぇ?!」
「亀井さん、うるさいです……」
「う、う、うるさいじゃなくて…は、待って、いつ気づいたの?!」
「……いまですけど」
「な、なななななんで?」

絵里は急に焦ったように頭を振る。
だが、なぜと聞かれても、愛佳には分からない。どうしてか、愛佳は目の前にいる人物を亀井絵里だと認識した。
自分自身に分からないことを聞かれても、愛佳は相手に説明できない。
「さぁ?」と首を振る愛佳に眉をひそめつつも、絵里は「とにかくっ!」と仕切り直す。

「絵里のことはともかく、みっつぃーのことが心配なの!」
「……なんで怒ってるんですか亀井さん」
「怒ってない!うるさい!」

理不尽だ、と愛佳は冷静に分析しながらも、これはいったいどういうことなのか考え始めた。
目の前にいるのは確かに生田衣梨奈でしかないのに、愛佳は直感的に、亀井絵里の名前を呼んだ。
抱きしめられたその瞬間に、愛佳はの記憶の扉は開き、そこにいるのは絵里だということを教えた。
あり得ない、全く以って非現実的な話であるのに、愛佳はそれを素直に受け止めている。

―どうしてやろ……

未だにバレた理由が分からずに困惑している絵里を前にしても、愛佳はなぜか冷静だった。
実に非現実的で、馬鹿げていて、小説や漫画の中だけの話でしかないのに。
愛佳は絵里を真っ直ぐに見つめる。相変わらず彼女は混乱したままでオロオロしている。
その姿はまさに、舞台裏の絵里そのもので、愛佳は思わず「あぁ…」と呟いた。

「そうなんや……」
「え?」

愛佳の呟きに絵里は思わず返すが、愛佳は変わらずに笑ったままでその問いには答えなかった。
自分は気付いていたのかもしれないなと愛佳は思う。
いつからか、というよりも、最初から。
去年の秋ツアー、高橋愛の卒業してしまう大切なツアーでも、愛佳は最終日の武道館、それもセレモニーの瞬間しか立ち会えなかった。
だからこそ、今回、新垣里沙の卒業する春ツアーに初日から舞台に立てる喜びを感じていた。
久しぶりに立つ舞台、久しぶりのリハーサル、久しぶりのメンバー。
モーニング娘。であるということに喜びを感じ、仕事をできるありがたさを実感した。

それと同時に覚えた、たったひとつの違和感。
後輩たちがどんどん台頭し、実力をつけてきていることは喜ばしく、愛佳もうかうかしていられないなと感じた。
だがそれ以上に、なにか、不思議な感覚を覚えることになった。それは9期メンバーの生田衣梨奈に対してであった。
「なにが」と聞かれれば明確に答えることはできないのだけれど、生田衣梨奈はこういう人物だっただろうか?と愛佳は感じた。
それは単純に、愛佳が衣梨奈たちと久しぶりに会うからではないかと自分で納得していた。

だけど、それは違ったのだといまハッキリ分かった。
愛佳はそのときから気付いていたのだ。
生田衣梨奈への違和感は、だれかへの「投影」だったのだ。
愛佳は彼女の向こうがわに、自分が尊敬してやまないその人の姿を映していた。
そう遠くはない過去に、なにも言わずに手を差し伸べてくれた優しい先輩の姿を、愛佳は確かに映し出していたのだと。

いくら姿が変わったとしても、変わらないものがある。
それこそが、彼女を、目の前にいる生田衣梨奈を亀井絵里だと認識したすべてなのだと、愛佳は理解した。

「すみませんでした……」
「だからいまはっ…」
「亀井さんも、生田も、ツラかったんですよね……」

愛佳の言葉に声が詰まる。
喉に引っ掛かったそれは音として外に出ることを許さない。
だれにも言えずにいた衣梨奈と絵里の抱えた「秘密」。図らずともそれが、後輩である愛佳の知るところとなった。
初めて理解されることへの喜びが胸にこみ上げてくる。

だけど、だけどいまは、いまはそうじゃないでしょと、絵里は必死に言葉を紡いだ。

「じ…の……」
「え?」

声が震える。
言葉にすることで痛みを伴う。
だけど、それでも、絵里は叫ぶ。
先輩として、ではなく、いっしょにあの輝くステージに立った、仲間として。
どんなことがあっても立ち止まらずに、ともに手を取り合って闘った、最高のメンバーとして。


「自分のシアワセくらい、欲張んなきゃダメだよ!」


絵里は愛佳の両肩を掴み、彼女の体を揺らす。

「ツラいって!哀しいって!痛いって!言わなきゃ、言わなきゃダメなんだよぉ!!」
「亀井さん……」
「ガキさんのこととかぁ!ファンのこととか、考えてんの…絵里、絵里はっ、知ってるからぁ!!」

絵里は泣きながらそう叫んだ。
愛佳の両肩を叩くようにして叫ぶ姿は、まるで子どもで、だけど何処かしら、大人だった。
愛佳の目には再び涙が滲んでくる。

ああ、そうや……と愛佳は思う。

苦手だった、といえば聞こえが良いのかもしれない。
だけど本当に、愛佳は自分の気持ちを素直に外に出すのが苦手だった。
なにを、どうすれば、自分の気持ちを伝えることができるのか、分からなかった。
同期がいない分、甘えることも、悩みを打ち明けることも、素直に話すこともできなかった。

だけど、それでも理解してくれた人がいた。
なにも口に出さずとも、愛佳の痛みや苦しみを、この人は分かってくれていた。
その場ではなにも言わなくても、いつも手を差し伸べてくれる人だった。
透明で柔らかい雰囲気を携えたこの人は、最後の最後まで、優しい人だった。
だから今日も、自分の抱えるどうしようもない闇を無視して、愛佳の痛みに寄り添おうとしてくれる。


愛佳が大好きな亀井絵里さんは、そういう人やった―――


愛佳は叩いてくる絵里の両手を掴み、そのまま引き寄せた。
ぎゅうと強く抱きしめると、彼女の匂いに包まれる。
どこまでも温かい優しさが、愛佳を自然と笑顔にさせる。

「ありがとうございます、亀井さん……」
「え……?」
「愛佳、ホンマに嬉しいんです、いま…」

愛佳の心境の吐露を絵里は静かに頷いて聞く。
突然の卒業発表、そして、里沙と同日・同会場での卒業。
それによって起こる混乱も不安も、言いようのない怒りも、愛佳はすべて受け止めようとしていた。
それが最後に自分がやるべきことだと信じていたから。

「怖かったんです……いままで」
「……うん」
「明日が来るのも、明後日が来るのも……卒業する、その日が来るのも」

涙で声が震える。
怖くて怖くて堪らなかった。
卒業してしまうことが、5月18日という日が来ることが、明日という未来が来ることが。

「でも……」
「でも?」
「いま、メッチャ嬉しいんです……亀井さんが、いるから」

そんな愛佳の前に絵里は現れた。
最後の最後まで、だれかのシアワセを願う彼女は、自分のシアワセを願えとやって来た。
どうしようもないくらいに、彼女は優しい。
だからこそ愛佳は、絵里のことを知らない間にこんなにも好きになっていたのだと気付いた。

分からないことはたくさんあった。
どうして、外見は衣梨奈なのに、中身は絵里であるのかとか、亀井絵里の外見は何処にあるのかとか、そこには衣梨奈がいるのかとか、
そもそもどうして急に此処にきたのかとか。

それでも愛佳は、こんなにも温かな気持ちになれる。
ぐしゃぐしゃに泣いてしまっているのに、心が落ち着いている。
不安も哀しみも切なさも、すべてはそこに混在したまま滞在しているのに、それでも愛佳は微笑んでいる。
それはただ、此処に亀井絵里というその人がいるからだった―――


「もう…時間ないですけど、良かったです、ホンマに」
「……ほんと?」

静かに聞いてくる絵里に愛佳は鼻水を啜りながら頷く。
卒業する前に、あなたに逢えて良かった。亀井絵里として、逢うことができて良かった。
だって亀井さん……亀井さんはこんなに私をシアワセにしてくれる。
真っ直ぐに、18日のその瞬間まで歩いていけるように道を示してくれる。
先の見えない明日が、少しだけより良いものになるように願ってくれる。

「……大好きです、亀井さん」
「うへへぇ…絵里も好きですよ」

絵里も同じように泣きながら愛佳をぎゅうと抱きしめた。
きっと重なることはない、微妙にズレた互いの想い。
それでも、ふたりが願ったのは、ただひとつ、あなたのシアワセだった。
どうしようもない不安も、痛みも、怒りも、思い通りにならない理不尽もあるけれど、それでもまた、歩いていく。
ステージから降りたあとも、舞台袖に下がったあとも、「さよなら」を告げたあとも、きっとあなたはそこにいるから。

そうしてふたりはしばらくの間、抱きしめ合っていた。

「あ、髪に鼻水ついちゃいそう…」

そんな絵里の情けない言葉が聞こえる瞬間まで。
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   2011/12/23 亀井絵里生誕
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  • なんちゃってれなえり編
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  • 1 2 3 4 5  
  • 6 7 8 
  • 「あたらしいあたし」AFTER STORY vol.2
     1 2 3 




12月の勉強

  • 1 2 3 4 5
  • 6 7 最終回1 最終回2 



りほりほ救出大作戦

  • 1 2 



ガキさんの告白

  • 第一部
    1 2 3 4 5 6 7
  • 第二部
    1 2 3 4 5
    6 7 8 9 10
  • 「笑顔と涙」スピンオフ
  • 「札幌の空の下で」エピソードゼロ 
  • 「近くて遠い距離」AFTER STORY



Rへの手紙

  • 1 2 3 4 最終回A 最終回B



フクちゃん編

  • 1 2 3 4 



さゆえり(?)小旅行

  • 1 2 3 4 5 6 



センターへの助走

  • 第1部
   1 2 3 4 5 6 7
  • 第2部 センター争奪勝ち抜きバトル編
   (組み合わせ抽選経過)
    1 2 3 4 5
    6 7 8 9




短編

  • 「結婚式狂騒曲」
  • 「どこから目線?」
  • 1-1 1-2 レッスン
  • 2-1 2-2 2-3
  • 3 告白される夢
  • 4-1 4-2 田中視点
  • 5 「H!P!P!」収録
  • 6*
  • 7* ハロプロ寮5の続き
  • 8*
  • 9-1 9-2 9-3 9-4* 9-5 9-6 生→ガキ
  • 10-1 10-2 藤本と田中
  • 11-1 11-2* 新垣視点 生ガキ
  • 12-1 12-2* 新垣視点 生ガキ
  • 13* ガキポク
  • 14* 新垣視点 生ガキ
  • 15-1 15-2 15-3 15-4 生ガキ
  • 16 新垣視点 生ガキ
  • 17 元に戻れた生田の苦悩
  • 18 新垣視点
  • 19* エロ
  • 20-1 20-2* 20-3* 20-4* 20-5* 20-6* 20-7* 問い詰める光井と変態亀井など
  • 21* 短編20の光井視点 
  • 22 おはスタ卒業式の翌朝 生ガキ
  • 23 生→ガキ(→カメ)
  • 24* 生フク



(注)*:R指定



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AA・小ネタ

  • 1 衝突
  • 2 風桶 その1
  • 3 風桶 その2
  • 4 風桶 その3
  • 5 風桶 その4(おまけ有り)
  • 6 怪しい露天商
  • 7 まぁちゃんとれいな
  • 8 関根(アプガ)と石田



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