第3回
「それじゃ、亀井さんからひと通りの話は聞いたんだね。何か気付くことあった?」
明梨が絵里と会って事情を聴いたことを話すと、リンリンはそう尋ねてきた。
「そう、それです!亀井さんと生田さんが入れ替わった時の話で、ちょっと引っかかることがあったんです」
「引っかかること?」
「亀井さんは『二人で階段から落ちて意識を失う直前、カメラのフラッシュが光った時のような光を感じて、"またか"って思ったような気がする』って言ってたんです」
「そんな話、亀井さんからも衣梨奈からも聞いてないなぁ」
「たぶん、改めて記憶を整理しているうちに思い出したんだと思います。それで考えたんですけど…」
「うん」
「今までリンリンさんも当事者の亀井さんと生田さんも、入れ替わる直前と入れ替わった後に注目してたと思うんですけど、もしこの階段落ちが最初の入れ替わりじゃなかったとしたら?」
明梨の言葉にリンリンが怪訝そうに尋ねる。
「どういうこと?」
「つまり、階段落ちは二人の心が入れ替わって定着するきっかけにすぎず、実はもっと以前から入れ替わりの前兆や一時的な入れ替わりが起こってたんじゃないかと考えたんです。
亀井さんの言う光はその時のサインじゃないかと。それだと入れ替わりの直接的な原因は別にあるわけで、今までいくら調べても分からなかった説明もつくかもしれません」
「確かに新しい発想だけど…」
明梨が絵里と会って事情を聴いたことを話すと、リンリンはそう尋ねてきた。
「そう、それです!亀井さんと生田さんが入れ替わった時の話で、ちょっと引っかかることがあったんです」
「引っかかること?」
「亀井さんは『二人で階段から落ちて意識を失う直前、カメラのフラッシュが光った時のような光を感じて、"またか"って思ったような気がする』って言ってたんです」
「そんな話、亀井さんからも衣梨奈からも聞いてないなぁ」
「たぶん、改めて記憶を整理しているうちに思い出したんだと思います。それで考えたんですけど…」
「うん」
「今までリンリンさんも当事者の亀井さんと生田さんも、入れ替わる直前と入れ替わった後に注目してたと思うんですけど、もしこの階段落ちが最初の入れ替わりじゃなかったとしたら?」
明梨の言葉にリンリンが怪訝そうに尋ねる。
「どういうこと?」
「つまり、階段落ちは二人の心が入れ替わって定着するきっかけにすぎず、実はもっと以前から入れ替わりの前兆や一時的な入れ替わりが起こってたんじゃないかと考えたんです。
亀井さんの言う光はその時のサインじゃないかと。それだと入れ替わりの直接的な原因は別にあるわけで、今までいくら調べても分からなかった説明もつくかもしれません」
「確かに新しい発想だけど…」
明梨のある意味ぶっ飛んだ仮説にリンリンが戸惑っているのが分かる。明梨自身も我ながら突拍子もないことを言っているなと思う。
だから、明梨は続けた。
「もちろん、これは仮説だし、生田さんの話も聞いてみないと何とも言えません。なので、この次は生田さんと亀井さんの二人に同時に話を聞きます。もし二人とも階段落ち以前のことで何かおかしなことがあったなら、この仮説に基づいて調査してみる価値はあると思います」
明梨の提示した方向性にリンリンも同意した。
「そうだね。佐保ちゃんにばかり動いてもらって申し訳ないけど、お願いしますデス」
「任せて下さい!」
その後リンリンと軽く近況報告をし合って、明梨は電話を切った。
だから、明梨は続けた。
「もちろん、これは仮説だし、生田さんの話も聞いてみないと何とも言えません。なので、この次は生田さんと亀井さんの二人に同時に話を聞きます。もし二人とも階段落ち以前のことで何かおかしなことがあったなら、この仮説に基づいて調査してみる価値はあると思います」
明梨の提示した方向性にリンリンも同意した。
「そうだね。佐保ちゃんにばかり動いてもらって申し訳ないけど、お願いしますデス」
「任せて下さい!」
その後リンリンと軽く近況報告をし合って、明梨は電話を切った。
数日後。
明梨は亀井家を訪ねていた。三人で話したいということで、絵里のオフの日に合わせてもらった。
衣梨奈と入れ替わっているとはいえ、久し振りに絵里の姿を見ることができるのは嬉しい。
しかし、この件を引き受けた時のある種ミーハーな気持ちはもはやなく、今の明梨は二人が元に戻れるように力になりたい気持ちが強かった。
明梨は亀井家を訪ねていた。三人で話したいということで、絵里のオフの日に合わせてもらった。
衣梨奈と入れ替わっているとはいえ、久し振りに絵里の姿を見ることができるのは嬉しい。
しかし、この件を引き受けた時のある種ミーハーな気持ちはもはやなく、今の明梨は二人が元に戻れるように力になりたい気持ちが強かった。
「お邪魔しまぁす!」
「どうぞどうぞ」
衣梨奈(見た目は絵里)に案内され、明梨は絵里の部屋に足を踏み入れた。そこにはすでに絵里が来ており、「やぁ」と軽く手をあげて明梨を迎えてくれた。
「どうぞどうぞ」
衣梨奈(見た目は絵里)に案内され、明梨は絵里の部屋に足を踏み入れた。そこにはすでに絵里が来ており、「やぁ」と軽く手をあげて明梨を迎えてくれた。
出されたお茶を飲んで落ち着くと、明梨はまず衣梨奈に入れ替わった時の話を聞いた。
「…だいたいこんなとこですね。亀井さんと同じだと思いますけど」
「階段から落ちて意識を失うまでの間で何か思い出すことありますか?どんな些細なことでもいいです」
記憶が誤って補完されないように、絵里から聞いた話はあえて伏せて明梨は尋ねた。
衣梨奈は首をひねり考えていたが、はっとしたように明梨を見て答えた。
「そういえば…。気を失う間際に何か光を感じて、"また?"って思いました」
衣梨奈の言葉に絵里は驚いて明梨と顔を見合わせた。
「えりぽんも?そんなこと今まで言ってなかったじゃん」
「"も"って、亀井さんも光を見たんですか?」
「…だいたいこんなとこですね。亀井さんと同じだと思いますけど」
「階段から落ちて意識を失うまでの間で何か思い出すことありますか?どんな些細なことでもいいです」
記憶が誤って補完されないように、絵里から聞いた話はあえて伏せて明梨は尋ねた。
衣梨奈は首をひねり考えていたが、はっとしたように明梨を見て答えた。
「そういえば…。気を失う間際に何か光を感じて、"また?"って思いました」
衣梨奈の言葉に絵里は驚いて明梨と顔を見合わせた。
「えりぽんも?そんなこと今まで言ってなかったじゃん」
「"も"って、亀井さんも光を見たんですか?」
驚いている二人に、明梨は先日リンリンに話した仮説を話した。
「…と、このように考えたんです。亀井さんと生田さんの話を聞いて、この線が正しい可能性が高くなってきました。
それで、お二人に思い出してみてほしいんですけど、同じように光を感じたとか何か階段落ち以前におかしなことはありませんでしたか?」
二人は難しい顔をして考え込んでいたが、はっと顔を見合わせ、同時に叫んだ。
「…と、このように考えたんです。亀井さんと生田さんの話を聞いて、この線が正しい可能性が高くなってきました。
それで、お二人に思い出してみてほしいんですけど、同じように光を感じたとか何か階段落ち以前におかしなことはありませんでしたか?」
二人は難しい顔をして考え込んでいたが、はっと顔を見合わせ、同時に叫んだ。
「リンリンだ!」
「リンリンさん!」
思いがけず出てきたリンリンの名前に明梨は驚いて二人を見つめ、次の言葉を待った。
「リンリンさん!」
思いがけず出てきたリンリンの名前に明梨は驚いて二人を見つめ、次の言葉を待った。