体験版 ポケットモンスター 金・銀

登録日:2018/07/17 Tue 23:41:28
更新日:2024/04/05 Fri 14:02:10
所要時間:約 40 分、折りたたみ部分を飛ばすと 15 分で読めます




体験版ポケットモンスター金・銀とは、1997年11月*1に幕張メッセで開催されたイベント「任天堂スペースワールド」でプレイできたポケットモンスター金・銀の体験版である。

概要

大ブームを巻き起こした「ポケットモンスター 赤・緑」の続編「ポケットモンスター2(仮称)」は、発売から間もない1996年春には早くもコロコロコミック等で開発中である事が公表されていた*2
当時の誌上では、ホウオウという新ポケモンが第一陣として公開され、次いでドンファンヤドキングデンリュウの新ポケモンや、主人公がスケボーで移動する姿、はじまりの街「サイレントヒルズ」、和風な塔の建つ街「オールドシティ」の画像などが掲載された。
そしてこれ以外に、新作に関する情報はほとんど何も公表されていなかった。
当時は現代のような情報社会ではなく、ゲームの事前情報の公開は極めて限定的であったのだ。
1997年12月発売とされていた発売予定日が、1998年3月に延期されたという不吉な情報のみが公表され、少年たちの心に不安を抱かせていた。
「任天堂スペースワールド」において、「ポケットモンスター金・銀」をプレイできる初のイベントが開催されることが公表されたのは、そんな時であった。

新情報に対する飢餓状態にあったポケモン少年たちは、血に飢えたゴルバットのような目で[要出典]幕張メッセへと殺到。
「ポケモン」ブームの真っ最中という事も手伝い、体験版プレイイベントは大盛況となった。
体験版の中では、最初にオーキド博士からもらえるポケモン「ハッパ」「ホノオグマ」「クルス」、そして「ハネコ」「キリンリキ」「マリル」といった誰も見たことのない新ポケモンが続々と出現。
更にポケモンが「そうび」したアイテムを使うという新システムも度肝を抜いた。
ポケモンを愛する少年たちは夢のような時間を過ごし…そして夢は余りにも短く醒めた。
「ポケモン」の凄まじい人気ゆえに、1人あたりのプレイ時間はわずか10分に制限されていたのだ。

子供たちは大興奮のまま帰途に就き、そして学校で新たなポケモンを大いに語った。
会場での発表によれば、すでに開発率は80%。完成は今や目前である。
彼らはハッパ、ホノオグマ、クルスに再び会える日を夢見て、1998年3月の発売日をキリンリキのように首を長くして待った。
そして…





ハッパ、ホノオグマ、クルスが子供たちの前に現れることは、二度となかった。






開発の遅れから、「ポケットモンスター金・銀」の発売は更に延期された。
この間にも、任天堂はブームの火を消さぬようピカチュウバージョンやピカチュウげんきでちゅう、ポケモンスタジアム等を発売したが、これらは基本的に151匹の「初代」に登場するポケモンのみが登場するゲームであり、「金・銀」に関する情報は途絶えた。
1998年に公開された新情報は、アニメに「トゲピー」「マリル」「ブルー」が登場した位しかない。
この間の新情報の少なさは当時としても異常であったようで、少年たちに広がる不安を抑えるため、公式にポケットモンスター金銀は本当に発売しますという声明が出るほどであった。
結局、体験版から大幅にブラッシュアップされた製品版が世に出たのは、最初の予定日から2年弱も経過した1999年11月の事であった。
だが、製品版での最初のポケモンは「チコリータ」「ヒノアラシ」「ワニノコ」の3匹であり、ハッパ、ホノオグマ、クルスは影も形もなかったのである。

1997年の体験版で初登場したポケモン達は、このイベント以外の場で公表されることが一切なかった。
そのため、これらのポケモンに関する情報は、実際にプレイした人々の記憶と、プレイ画面を撮影したわずかな写真・数秒の映像しか存在しない。
今なお「体験版金銀」の全貌を探ろうと調査を続ける人々は存在するが、今や新たな情報の発掘は絶望的であり、全ては時の流れの彼方へと消え失せようとしている。



追記・修正は体験版ポケットモンスター金銀を発掘した方にお願いします。












おっと! こんな ところに
みしらぬ ゲームボーイ
カセットを みつけた!
きどうしてみよう ポチっとな! ▼






2018年6月1日、体験版ポケットモンスター金銀は発掘された

英語圏では現在レトロゲーム収集ブームが発生しており、
おそらくはそうしたコレクターの1人が入手したのではないかと思われるが、経緯は不明。
「体験版金銀」はネット上にROMとプレイ動画が公開され、永遠に明らかにならないと思われていたその詳細が、白日の下に晒されたのである。

なおこのバージョンについてのネット上での呼称は「体験版」だったり「ベータ版」だったりとネット上でも一致していないが、本項では一貫して「体験版」と呼称する。

そしてその中身は、極めて驚くべきものであった…!

+ 目次

ポケモンについて

体験版の時点で、既に100種類の新ポケモンのデータが入っていた事が判明。
ただしその大半は製品版では全く別のポケモンと変更、もしくは名前の変更、大小のデザイン変更が行われている。
何の変更もなく製品版に登場できたのは既にアニメ・映画への登場が決定していたであろうトゲピー等を除けば、エーフィネイティハガネールなどごく少数である。
つまるところ、約90種類という過去に類を見ない量の没ポケモンが発見されたのだ。


「チコリータに似ている」という情報があった御三家ポケモン「ハッパ」は、チコリータと完全に同一のデザインであった事も判明した。
また最終進化系メガニウムも「ハナリュウ」という名前で既にデザインが固まっている。
一方で、中間進化系の「ハナモグラ」は製品版のベイリーフとは似ても似つかない「大きな花の中に糸目のハニワみたいなヤツが入っている」という衝撃的なデザインであった。そりゃボツになるよ

最も驚かれたのは、ポリゴン2が「ミスタードーナツ」のイメージキャラクター・ポン・デ・ライオンそっくりである事だろう。
ポン・デ・ライオンの初出は2003年であり、1997年制作のこの体験版時点ではポン・デ・ライオンは世に出ていない。
「ポケモン2」と「ポン・デ・ライオン」の両方の企画に関わった人物がおり、没になったデザインを再利用したのではないか等の説もあるが、
「ポン・デ・ライオン」も「まあポン・デ・リングでキャラクターを作るとそうなるよね」的なあまり捻った部分のないキャラクターという事もあり、偶然の可能性も否定できない。

ヤドキングの頭に噛み付いているアレ』が「ターバン」という独立したポケモンになっている点も注目を集めた。
開発側もうすうすやっぱアレシェルダーじゃねえだろと思っていたようである。

新ポケモンには、既存のポケモンの進化前のポケモン、いわゆる「ベイビィポケモン」がやたらと多いのも特徴。
製品版ではピチュー・ピィ・ププリン・エレキッド・ブビィ・ムチュール・バルキーの7種であったが、
体験版時点では、これに加えニャース・パラス・ロコン・ガーディ・ポニータ・ドードー・トサキント・モンジャラ・ベトベター・バリヤードの10種類の進化前に当たるベイビィポケモンが用意されていた。
新システム「タマゴ」を全面的に押し出そうとしていた事が分かるが、正直な所ベイビィポケモンは「クリアだけしたい人は興味なし」「普通の人は図鑑を埋めるだけに1匹だけ産んで後はボックスの肥やし」「対戦する人には育てる手間が増える面倒な要素」とゲームの面白さにあまり貢献できるシステムではないため、半分以下に減らしたのは賢明な判断と言えよう。
このうちバリヤードのベイビィは後に「ダイヤモンド・パール」でマネネとして登場することになった。

100種類の追加ポケモンの種族値についてはその多くが未設定であり、全能力が50になっているものが大半を占める。
「体験版」のシナリオ内で登場するものの一部や、伝説のポケモンについては設定済みとなっている。
また、新ポケモンのポケモン図鑑のデータは未設定であり、身長や体重、分類などは空欄、解説は「はっけんされた ばかりの ポケモン。 げんざい ちょうさちゅう」で統一されている。

新ポケモン一覧


一方、カントー地方のポケモンについては設定が既に固まっているためか、ちゃんとした図鑑説明文やグラフィックが用意されている。説明文の大半は赤・緑、青の流用又は改編となっているが、一部は新たに書き下ろされている。
グラフィックは新規のものと青のものが混在している。特にピカチュウラッキーに関しては同一のグラフィックがポケットカメラでも使用されている。

舞台について

冒険の舞台は日本全国である
はじまりの街「サイレントヒル*4」は、和訳すると「静かな丘」になる事から分かる通り、日本地図の静岡に位置している。
北は北海道、西は九州まで、日本全国が1枚のマップに収まっているのだ。
マップは概ね完成しており、デバッグモードで北の方の街へ行くと雪が積もっている様子を確認できる。
なお、同じくデバッグモードで確認できるタウンマップと実際のマップを照らし合わせてみると、一部の道路の繋がりが一致しておらず、途切れている部分があるのが分かる。

ただし、舞台を大幅に広げたしわ寄せにより、赤・緑の舞台であった「カントー地方」は猛烈に縮小。様々な街や施設が殆ど原型を留めていない。
製品版のカントーは「サファリゾーンやハナダの洞窟は閉鎖」「シルフカンパニーやポケモンタワー(現ラジオ塔)は1階だけ」「オツキミ山が超狭い」など、容量削減のために様々な物が削られている事で知られるが、体験版のカントーと比べるとそのクオリティは天地ほどの開きがある。
製品版はすべての街と道路が、縮小化こそあれ前作の面影を残しており、容量ギリギリという事情を加味すると、とても再現度が高いと言わざるを得ない。

地名一覧


アイテムについて

「もちもの」システムが登場したのは金・銀からだが、体験版時点では一貫して「もちもの」ではなく「そうび」と呼ばれている。
てきの キャタピーは そうびしていた
きのみで たいりょくを かいふくした! ▼
内部データには「そうびするとこうげきが10あがる」などのポケモンらしからぬ説明文のアイテムが大量に存在している。
また、特定タイプの攻撃を強化するアイテムだけでなく、特定タイプの攻撃を弱体化させる後の「オッカのみ」系列のようなアイテムも実装予定があったようだ。

気になるアイテム


わざ・タイプについて

新技についても一通り実装済みだが、製品版とは仕様等が異なるものも多い。
「せいなるほのお」はホウオウの専用技ではなく、ひるみの効果がある威力80のほのお技で、ガーディ系や初代での鬱憤を晴らすかのごとくファイヤーなどが覚える。ダイヤモンド・パールで物理攻撃に分類されたのは、本作でひるみ効果を設定しようとしていた名残だろうか?
威力90・命中100のいわ攻撃「いしあたま」の存在は全国のストーンエッジを外しまくっているいわタイプ使いに涙を流させた。ワロスエッジよりこっちください
他にも興味深いところでは、製品版ではむしタイプの高威力技であった「メガホーン」はこちらだと騒音を立てて相手の特攻を1段階下げるノーマルタイプの変化技という、角の「ホーン」ではなく文字通り「メガホン」由来の全くの別物であった。

内部データ的には、レベルアップで覚える技は全ての新ポケモンに設定済み。
わざマシンの使用可・不可の設定も存在するが、ミュウとキャタピーの設定が逆転していてキャタピーが万能になっているなど、明らかにデータが不完全である。

わざマシンの中身は1~50まで全て新しい技になっている。
ただし「スケッチ」や「テクスチャー2」といった限定技がマシンになっているなど不自然な点もあり、このまま使用する予定だったのか、ひとまず全て新技と紐付けしていたのかは不明。

ひでんマシンも全て新技となっているが、いずれも製品版のひでん技と同じ効用と思われる。
製品版と異なり、どの秘伝技もなぜか威力30程度で非常に弱い。
「とびはねる」に至っては正式版(ルビー・サファイア)ではそらをとぶ由来の効果だが、本作では「はねる」と同じ効果しかない
ひでんマシン01「ひっこぬく」=「いあいぎり」
ひでんマシン02「かぜにのる」=「そらをとぶ」
ひでんマシン03「みずあそび」=「なみのり」
ひでんマシン04「てつわん」=「かいりき」
ひでんマシン05「ひかりゴケ」=「フラッシュ」
ひでんマシン06「うずしお」
ひでんマシン07「とびはねる」=「たきのぼり」

一方タイプ面はというと、この時点でははがねタイプが「メタル」タイプという名称であり、タイプ相性も新タイプのあく・メタルを中心に製品版との差異が見受けられる。

シナリオについて


体験版としては、既にハッパ・ホノオグマ・クルスのいずれか1匹を連れている主人公が、隣の「1番道路」へ出てバトルするだけ。
全滅するか、次のマップへ出てライバルに話しかけると強制的にタイトル画面に戻り終了する。
全滅すると表示される主人公の「つぎは がんばるぞ!」のメッセージが侘しい。
なお、ポケモンセンターの回復マシンやパソコンのボックス機能はそれぞれ故障中・調整中とのことで、利用はできない。

体験版用ではない本編のデータも内部には入っているが、ごく序盤のシナリオまでしか作成されていない。

  • 主人公
サイレントヒル在住の少年で、デザインは既に製品版と同じ。ポケモン史上類を見ない事に兄のケンが居る。
オーキド博士から新種のポケモンを含めたポケモン図鑑の作成を依頼され、パートナーポケモンと共に旅立つ。
母親の呼び方を自由に決められるというまったく新しいシステムが搭載されており、フリーワード入力も可能なので好きな女性の息子になる事が可能
ララァ・スンを私の母にできるかもしれないシステムだった・・・!

主人公のライバル。目付きの悪いロン毛(死語)の少年で、製品版「金銀」のライバルと全く同じデザイン。
だが「研究所からポケモンを盗み出した住所不定無職の不良少年」である製品版と異なり、ただの口の悪い主人公の幼馴染であり、サイレントヒルに普通に自宅がある。
初代のライバルから「ボンジュール!」と「バイビー!」を抜いたものを想像して頂ければ大体合ってる。

新種のポケモンを求めて家族と共にサイレントヒルに研究拠点を移したポケモン研究者。
ラジオでは「オーキド博士が行方不明になった」というニュースが聞けるため、周囲には行き先を告げずに出奔してきた模様。
セリフは概ね初代と同じ。「わしも もう じじい!」

ぼくは かつて ポケモントレーナーの 
ちょうてんを めざしたことが あるんだ
そのとき いいきに なっていた ぼくの てんぐのはなを
へしおった やつに きみは どことなく にている
あいつの おかげで ぼくは こころを いれかえて 
じいさんの けんきゅうを てつだうように なったのさ ▼
「ポケットモンスター赤・緑」における主人公のライバル。
製品版「金銀」ではトキワシティのジムリーダーを勤めているが、こちらではオーキド博士の助手になっている。
1年前に初代主人公に負けた影響で性格がとても丸くなっている。
何しろ一人称が「ぼく」。ドット絵は変わっていないので違和感が凄い。
前作で自由に名前をつけられるキャラだったためか、自分の名前を名乗ったり、他人から名前を呼ばれたりするシーンがない。
オーキドからは「まご」、姉のナナミからは「おとうと」と呼ばれるなど慎重に名前が出ることを避けているが、不自然なためか製品版では結局デフォルト名の1つであるグリーンになった。

1年前に150種類のポケモンを集めたという設定になっている。

上記の初代主人公とは別人。
TVを調べるとサトシを主人公とする「ポケモンアニメ」が放送されているのだ。
時間帯によって異なる回が見られる。

  • その他、人物いろいろ
デバッグモードではトレーナーのグラフィックを確認可能。
ジムリーダーも一部デザインされており、後のアサギシティジムリーダーミカンが既に登場している。
髪型は製品版のデコちゃんと異なり、ポケモンシリーズで言うならゴチルゼルに近いものになっている。
この他にもハヤトは正体不明の鳥を肩に乗せていたり、ツクシは完全に大人の容姿に仕上がっており、マツバに至っては「エノキ」という全く別の名前だったりする。
また、四天王と思しき領域にはカンナ・シバ・カスミ・ワタルが並んでいる。

ロケット団やサカキ様の名前もあるので、サカキ様がロケット団を再建し逆襲を図るようなシナリオが予定されていたのかもしれない。
また、ゲルゲだんいんという正体不明のトレーナー名も用意されている。

ちなみに製品版と異なり、道路に立っている一般トレーナーの個人名はひらがなで表示される。
まいこはんのたまおが
しょうぶを しかけてきた! ▼

その他

  • 音楽はまだ作られていない模様。
    街ではトキワシティ、戦闘ではジムリーダー戦など、「赤・緑」の既存の音楽が流れる。
    ポケモンの鳴き声も作られておらず、ほとんどの新ポケモンはニドラン♂の鳴き声を短くしたような音声(初代の一部バグポケのアレ)が流れる。

  • ポケモンリストを見た方は気づいたかと思うが、ルギアは居ない。
    タイトル画面は金・銀のどちらのバージョンもホウオウが表示される。
    元々ルギアは完全に映画オリジナルのポケモンとする予定であり、ゲームに出す予定はなかったのである。
    開発が遅れに遅れた結果、映画と製作が重なったことで登場させることが可能になり、「銀」バージョンのパッケージポケモンを射止めた形となった。

  • タイトル画面で放置していると、「ダッシュするピカチュウを操作し、プリンが出す音符を取るミニゲーム」が始まる。
    製品版金銀にある「歌っているプリンにピカチュウが体当たりして画面外に押し出す」シーンは、このミニゲームの名残である。

  • 開発中のソフトなのでデバッグモードが搭載されており、任意の街に飛んだり、任意のポケモン同士を戦わせたり、スロット等のミニゲームを遊んだりできる。

  • タマゴを入手する方法は育て屋…ではなかったようで、こづくりやという衝撃的な名前の店の存在が内部データから確認できる。
    それでは こづくりします!
    それとされるマップは製品版でも残されている模様。

  • 当時のTV番組での紹介映像をよく見ると樹木を飛び越えて移動しているのだが、どうやらマップに当たり判定を実装していない状態で映像を作ったらしく本ROMでも同じ動きになる。

  • 「ポン・デ・ライオン」と「ポリゴン2」の類似性について。
    2000年代に放送されていた「ポン・デ・ライオン」の登場するクレイアニメのCMは、NHKの「ニャッキ!」等で知られるアニメーション作家の伊藤有壱氏が作成していた。
    そして伊藤氏は、1990年代に放送されていたNECのキャラクター「バザールでござーる」のCMにも関わっている。
    更に、「ポケモン」の開発元であるゲームフリーク社は、1996年に「バザールでござーる」のゲーム「バザールでござーるのゲームでござーる」を作成している。
    この事から、「ポケモン」と「ポン・デ・ライオン」には伊藤氏を通じて繋がりがあるのではないか、との説が流れた。
    ただし、伊藤氏はあくまでポン・デ・ライオンのクレイアニメ制作を行った人物である。
    「ミスタードーナツ」の運営企業であるダスキンはポン・デ・ライオンのデザイナーについて「非公開」「無名の人物」としており、真相は誰にもわからない。

  • 天才ゲームプログラマーとして知られ、後に任天堂の社長を務めた故・岩田聡は、「ポケットモンスター金・銀」にポケモンのグラフィック圧縮ツールを開発して提供した事が知られている。
    体験版では「日本全国と無理やり縮小されたカントー」が強引に1枚のマップに収まっているのに対し、製品版では「ジョウト地方」と「若干縮小されたカントー地方」の2つのマップを用意できたのは、グラフィックを圧縮したことでROM容量に余裕が生まれたから、すなわち岩田氏の功績ということになる。

2020年の発掘

2020年4月、今度は1999年の没データが大量に発掘。
同年内に製品版が発売されることもあってか1997年版のボムシカー等のように製品版に影も形も残っていないポケモンは存在しない。
一方この時点ではまだ名前・姿の固まっていないポケモンや1997年版の見た目のままのポケモンも存在し、マスターアップの数か月前にもかかわらずかなりギリギリまで調整していたことをうかがわせる内容となっている。

なお、一口に1999年版と言ってもビルド時期が異なる複数のROMデータが発見されており、それぞれ微妙に異なるポケモンが存在するため、ここでは1999年に開催された任天堂スペースワールドで展示された体験版を軸に、各備考欄で補足する。


新ポケモン一覧


シナリオなど

一方シナリオ面はほぼ出来上がっており、マップの違いも細部に留まっている。
だがBGMは未完成のものもあり、カントー地方の一部などは赤緑のものを流用しているほか、ED曲がポケモン研究所の使い回しだったり、セーブデータ画面のBGMの音程が高いといった相違点が見受けられる。

トレーナーもほぼ完成しているが手持ちに違いがあり、アカネがLv22のミルタンク単騎だったり、レッドのパーティ平均レベルが10ほど低かったり、ハヤトはなんとLv10のピジョットを編成していたりする。
四天王に至っては名前や使うポケモンのタイプこそ一致してるものの、製品版と同じシバを除き他3人のグラフィックが全くの別人となっており、イツキがサカキ、キョウがキクコ、カリンカンナのグラフィックを与えられている。特にカリンとカンナはポーズが完全に一致している。
またこの段階では製品版では没になったスポーツマン、先生(男)、兵士、電気屋のオヤジのほか、ガンテツや赤緑の開発段階のカツラの没デザインのトレーナーのグラフィックが収録されている。

元々体験版として作られているからか、31番道路とキキョウシティを繋ぐゲートを塞いでいるNPCが存在する。

これより更に古いマップデータも見つかっており、ジョウト地方の原型こそあるものの、ヨシノシティの規模が大きい、つながりの洞窟が製品版にはない街になっている、ウバメの森やタンバシティといった施設がなく、コガネシティとアサギシティが直接繋がっている、ワカバタウンのすぐそばにシロガネ山がある等の違いが見受けられる。
カントー地方も製品版では簡略化或いは削除された施設が赤・緑ほぼそのままである一方、ゲートが撤去、イワヤマトンネルは閉鎖されているといった違いがある。


ちなみに、海外のサイトには各バージョンのROMデータを比較してさらに関係者のインタビュー、数少ないスペースワールドの資料に当時のコロコロコミックまで全部洗って完成までの経緯を考察しているものもある。
…というか、日本語が読める人たちにとってはウッキウキだったのではないだろうか。

製品版へ…

こういった話題性溢れる発掘情報であるが、水を差すようだがその真贋については疑いの目が向けられることも多い。
というのも、諸兄はご存知かもしれないが『アルタイル・シリウス・ベガ』『萌えっ娘もんすたぁ』などといったハックロムが第三世代以降には存在している。
  • ベータ版ROMの入手元がどちらも判明していない。*6
  • ハックロム作成も知識と技術さえあれば不可能ではない。*7
  • 海外ではハックロム文化が盛んである。*8
という点から、これらのベータ版も同様のハックロムでありフェイクではないか?という疑いは向けられて当然なのだ。
公式だって真っ黒な代物に対して「よく見つけられましたね!実は〇〇だったんですよ!」などと答え合わせなどしてくれるわけもなく、「そうかもしれない」の域を脱せていない。

それはそうと、正式にリリースされた製品版である金銀には数多くの没テキストが存在している。
そして金銀はあのバグ無法地帯な初代の後継作ということもあり、バグ愛好家達による研究が行われ続けた結果、初代同様に森羅万象を操作可能な領域へと到達してしまった。
その結果、バグによりとあるプログラムが呼び出せることが発覚した。

エン『ブフウ!!

あ! やせいの!
エンテイが とびだしてきた! ▼

そう、エンというポケモンとシンボルエンカウントするイベントの名残で、それを実行するとエンテイが出現するのだ。
このイベントがいつ制作されたものかは不明であるが、99年版によればエンテイ=エンであることには間違いない。
しかしベータの残骸を製品版の実機でお目にかかれるという事実は、これらの発掘情報がフェイクではない裏付け、とまでは不十分なものの、界隈を大いに沸かせることとなった。
無論、発掘以前から知られていたミズウオのようにこの情報を一足先に知っていた者が、信憑性を高めるためにハックロムに盛り込んだのだと言われても、それを否定することはできない。真相は未だ闇の中である。

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最終更新:2024年04月05日 14:02

*1 「1997年夏」と誤って記載されている事が多いが、1997年の開催は11月である。「スペースワールド」は次回1999年以降8月になった

*2 赤・緑の発売日は1996年2月27日。

*3 白鳥モチーフと思われる

*4 雑誌情報では「サイレントヒルズ」という名称だったが、ゲーム内では一貫して「サイレントヒル」になっている

*5 カントー地方の1番道路とは異なる

*6 ポケモンwikiやニコニコ大百科での記載によれば「任天堂などへのハッキングにより不正に入手され、プログラミング集団の元へ送られた」との記載あり。どちらにせよ喜ばしくない話である。

*7 詳しくは書かないが元のゲームをより拡充させたり、上記のアルタイル~などのように別のソフトに変えたりするハックロムは存在している。

*8 ポケモン金をベースに改造された「ポケモンプリズム」やゼルダの伝説 時のオカリナのハックロム「ゼルダの伝説 ミッシングリンク」などがある。