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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part771【TSトレ】
≫37二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 07:19:01
『ウマ☆ドル』
「マベトレさんにロレトレさん。お二人共ウマドルになりませんか?」
「……ウマ、ドルですこと?」
「マーベラスな響きだけどー☆ あいにくデビューする予定はないんだよねー★」
「何もデビューまでしてくれとは言いません。少しライブに出ていただけないかと」
「それならいいかもねー☆ ウマ娘たちが輝けるマーベラスな舞台ー☆」
「わたしくは遠慮したいですわね……ああゆう衣装を着るのは少し抵抗がありますわ」
「いいえ、きっと似合うはずです。それにマベトレさんはその天真爛漫さと小悪魔の両方を兼ね備えた性格と超長距離を走れるだけのスタミナ。ロレトレさんは庇護欲を誘うような風貌や口調、そして何事にも挑戦できる向上心、これはウマドルとしてアドバンテージに働きます」
「ファルトレおにいちゃんけっこう私達のこと見ているんだねー☆」
「しかし……マベトレさんはともかく、わたくしは素人同然ですことよ。それにスケジュールもありますし」
「ボーカルレッスンは私が担当しますしダンスレッスンもデジトレさんに頼んであります。トレーニングの日程に影響が出ないようにスケジュール調整も行います。如何でしょうか?」
「そこまでしてくださるのに申し訳にくいのですが……、わたくしはやはり参加いたしますわ……ってええ!?」
「なーんだいやいや言っていたのにロレトレおねえちゃんも結局乗り気なんだー★クスクス。あ、私ももちろん参加するよー☆」
「ありがとうございます。では詳細は後程メールで送付します。よろしくお願いしますね」
「少しお待ちになさって!これは勝手に!って行ってしまわれましたわ……」
「どうすんの~★ ロレトレおねえちゃん~★★」
「仕方がありませんわね……これっきりですよ」
――その後、歌ダンスは完璧に仕上げたが、アイドル衣装を見て引きつったロレトレの顔があったのであった。
以上ウマドル構文お借りしました。
次回発売するWINNING LIVE 07でマヤノマベサンローレルのソロ曲が出るらしいですよ楽しみですね
再掲アイドルイラストはこちら https://bbs.animanch.com/board/634574/?res=113
≫41二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 08:46:05
『舞踊る君の姿は』
夕暮れ時のトレセンダンスレッスン場で、夕日に照らされ踊るウマ娘が一人、そしてそれに助言を与えるウマ娘も一人。
「もっと素直に拍を取りなさい! 曲の流れに身体を載せて、手足の指先まで集中するのです!」
「はいっス!」
栗毛に鉢巻がチャームポイントのバンブーメモリーが、金色月毛の不思議な仮面が特徴的なバンブーメモリー担当トレーナーの指導を受けて、ダンスの練習に励んでいる。
スピーカーから奏でられる旋律とバンブーの足先から刻まれる足音のビートが合わさって、レッスン上に一つのデュエットが奏でられる。
曲のサビに入ってさらに動きが激しくなる踊りに汗を流し、パフォーマンスのトレーニングはピークを迎える。ステップ、ステップ、姿勢を崩してブレイクダンスのような動き。脚が弧を描き、空を切る。再び姿勢を戻しては、リズムに乗ってステップ、ステップ。振りかざす腕とステップを打つ脚がバンブーの周りの大気を動かし、彼女がその音楽を纏うように舞い続ける。
そうして来るフィニッシュで、くるりとターンして最後の一音に指先を合わせて天を指す。
「……はい、お疲れさまでしたバンブーさん。最初よりもよく拍子に合わせて身体を動かせていましたね」
手を叩き、練習の区切りを伝えるバントレ。傍に置いてあったスポーツドリンクのボトルをバンブーに渡す。
「ありがとうございます!」
そのボトルを受け取ったバンブーはぺこりと綺麗な礼を返す。
「ですが、寂の中盤部分で少々重心を崩してしまっていましたね。体の平均をとりながら、腕と足の動きをもう少し意識させるとよいでしょう」
「はいっス!」
ほんの一瞬だけ姿勢が崩れたタイミングがあったことを指摘するバントレは、その言葉を言い終わった後に少しだけ考えるような姿勢を見せた。
「ふぅむ、昔取った杵柄と言う言葉もありますし、少し実演して見せましょう」
そう言うと、軽く手足をふるうと、先ほどバンブーが踊っていた部分の再演を行う。
ステップ、ステップ、音楽は無くともその動きには一切の迷いなく。バンブーのそれよりも長い手足が大きく空を切り、美しく弧を描いていく。
「……いやぁ、ほんと凄いっス……」
「お褒めに預かり光栄です。……魅せるだけでなく参考になったか、が一番重要ですけどね」
「なんとなくコツはつかめた気がするっス。次はきっちりこなせると思うっスよ!」
42二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 08:46:25
そう言って握りしめたこぶしをぐっと引き寄せ、次こそはとアピールするバンブー。それを見てバントレは柔らかく笑う。ああ、やはりこの子はとてもよく学んでくれる。
「さてもう一度……っと、おや?」
「あっ、邪魔しちゃったかな?ごめんね」
「お疲れ様です、バンブーさんにバントレさん」
現れたのはダートに輝くウマドル、スマートファルコンとそのトレーナー、スマートファルコン担当トレーナー。
「いえ、邪魔なんてことは無いっス! それより、合同トレーニングと行ってもいいっスか!」
「あの新曲だよね?良いよ、一緒にトレーニングしよー☆」
そう言って二人は鏡の前へと戻り、また曲を流し始めてからそれぞれのポジションにつきダンスのトレーニングを始めた。
「……しかしバントレさん、少し見させていただきましたが相変わらず素晴らしい腕前です」
座りながら二人のダンスを見続けるトレーナーたち。ふと、ファルトレがバントレの踊りの技術に言及する。以前ダンスについての会話を交わしたことがあるのだが、バントレの基礎には伝統的な日本の舞への知識と、実家でのトレーニングがあるということを知っていた。
「いえいえ、私のこれは所詮元あった知識と独学で築き上げただけの代物。真に知識を積み重ね、日々の研鑽を怠らず己の力と成していく彼女たちのそれには及びません。特に……貴方の担当、スマートファルコンさんのように」
その上で、バントレはストリートダンスへの知識と技術も得ている。一般的なアイドルのダンスとは少々趣は違えど、一時期ネット上でも話題になる程度にはその踊りは人々へと伝わる何かがあるようだ。
「そう卑下することはありません。見るものを圧倒し人々を魅了する……そんな魅力があなたの踊りには存在するのですよ、バントレさん」
そう言って、ファルトレはしばし考え込む。そして意を決するように、バントレのほうへと向き直った。
「バントレさん。貴方も、ウマドルになってみませんか?」
43二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 08:46:37
「……私がですか?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、バントレがファルトレへと声を返す。
「しかし、私がとぅいんくるしりぃずへ出るようなものでもないでしょう。皆さんのように確固たる走りへの実力を持ち合わせているわけでもありません」
「いえ、何もトゥインクルシリーズへデビューしてほしいというわけではございません。ライブへの出演をお願いしたいのです」
「……私も、あの舞台は好きです。皆あの場所では、互いの健闘を称え素晴らしい舞をもって同じ時間を共有する。勝ったものも負けたものも、皆同じ思いを持つ舞踏者となる……そんな素晴らしい場所です」
「ええ、あの場所は私も大好きです。思うに、バントレさんのダンス……仮面のミステリアスさ、舞に向けるその純粋なる思い、そして技術をその身に着けるための努力、周囲への気遣い。そんなあなたのスタンスはウマドルとしてアドバンテージとなるでしょう」
「……少々むず痒いですね、こうまで手放しに誉められた経験はそうありません」
仮面を少しかぶりなおすバントレ。
「ボーカルに関しては、私が担当できます。ダンスレッスンというよりも更なる技術向上のためのトレーニングに近くなるのですが、そちらもデジトレさんとトレーニングすることでより洗練されることでしょう」
「ふむ……」
「勿論スケジュール調整は貴方の都合がつくように行いますので、トレーニングへの支障は出させません。……如何でしょうか?」
一通りの説明を受け、少し考えこむバントレ。思い出と今の想いを基に思案を巡らせる。そして、バントレは結論を出した。
「……そうですね、私もあの光さす場所へ魅力を感じることは多々あります。以前路地の軽業師として少々活動していた時もありますし、大舞台で私の舞を披露したいと思ったことも一度や二度ではありません。……ですが」
そう言って、バントレは今まさにサビでパフォーマンスのピークを迎える二人のウマ娘のほうを向く。楽しそうに踊る、バンブーとファルコン。
「……まあ、今は魅せるよりも育てるほうが好きになった、といえばそうかもしれませんね」
そう、笑顔でファルトレに答える。それを聞き、ファルトレも少々残念そうに思いながらも笑顔を返した。
「そうですか。……いえ、それもまた決断の一つ。何かありましたら言ってくださいね、いつでもウマドルへの道は開いていますから」
44二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 08:47:32
曲も終わりを迎え、二人のウマ娘は互いのダンスへの意見を交わしあい、そんな姿を二人のトレーナーは静かに見守っている。そんな静寂と喧騒の中で、バントレが口を開き始めた。
「……ですが折角お誘いいただいたのに何もしない、というのも勿体ないお話でございます。聞けば秋の感謝祭ではまた『二の矢』で出し物をするそうではありませんか」
そう言って話を進めるバントレの顔は、仮面で隠れているとは思えぬほど心踊るような明るい表情となっていた。
「そうですね、またライブを行いたいと思っています」
「……以前、妖怪に扮して歌っていたと聞き及んでいますが……『天狗』の立ち位置は、余っていますでしょうか?」
それを聞いたファルトレは、少々呆気に取られながらもその意図をくみ取った。
「……成程。ではまた、後日その件について連絡いたしますね」
「ありがとうございます。……ファルトレさん」
「何でしょうか?」
バントレは少しだけ仮面を外してファルトレへと喋りかける。夕暮れの光に照らされた顔は、その艶やかな肌を橙色に染めていた。
「……ただ一日だけの特別な来訪者。それもまた、魅力的でしょう?」
「……ふふっ、それもそうですね」
「さて、二人の練習を一緒に見ていきましょう、ファルトレさん」
「ええ、是非良い練習にしていきましょう」
子供っぽく笑うバントレとファルトレ。今年の秋は忙しくも楽しいものになる、そんな未来を見据えながらもファルトレはまた更なるメンバーの勧誘を続ける決意を固めた。
≫51二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 12:15:52
「…すっかりびしょ濡れね」
「こんな大雨の中でするのはちょっと無理がありましたね…」
ポタポタと大量の水滴をたらし、やっちゃったねーみたいな軽いノリで話しているのはキタサンとキタトレ。
二人の薄い服は濡れたことでべったりと張り付いており、二人のエッ…豊満な肉体をこれでもかと強調していた。
「でも、トレーナーさんまで手伝いに来なくても良かったのに。」
「あら、私がそれを見過ごす訳無いでしょう?それに、人手が多いほうがすぐに終わるわ」
豪雨の中で撤収し忘れていたという部活の器具を片付けていた人達を、キタサンとキタトレの二人で手伝っていた訳である。
すぐに終わったものの、雨具を特につけていなかった二人は当然濡れて大変目に悪い姿となっているのだ。
「とりあえず、シャワーを浴びましょう…」
「キタ、先に入るといいわよ。私は兎も角貴方が風邪を引いたら今後のトレーニングとかに差し支えるわ」
「トレーナーさんが先に入ってください!あたしはドリームリーグだし、トレーナーさんが動けなくなったら困るんです」
「「…」」
「…あの、一緒に入りませんか?」
「…分かったわ。着替えは…トレーナー室に置いてあるジャージでいいわね。」
ふと、遠くから聞こえる名前を呼ぶ声。振り向いた二人の視界には、駆け寄ってくるチームメイトの姿が見えた。
「タオル持ってきまし…た……」
近づいてきた所で足を止め、硬直する。夏仕様の薄い制服で濡れ透けかけてるキタサンの姿も大分ヤバいがそれ以上に隣が凄い。
白シャツは完全に透けて黒色の下着が、色白なキタトレの肌と相まってくっきりと現れ大変眼福…刺激の強い光景だった。
「あー…持って来てくれてありがとうね。先に戻っていていいわよ。」
キタトレはそういうと彼女を戻らせ、足早にトレーナー室へと戻ることにした。とはいえ、その姿を見た周りは何かが破壊された。
後に二人でシャワーを浴びてる際、キタトレは少し恥ずかしかったとキタサンに漏らしていたとか。
短文失礼しました
濡れ透けで一番破壊力あるキタトレで一つ、ついでにキタちゃんのも見れます。凄い眼福な風景ですな。
恥ずかしいと言ってますが、キタトレも頑張って表に出さないようにしてるだけで恥ずかしいものは恥ずかしいと思ってたり。
≫75二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 21:14:06
「こんにちはパマトレさん、ウマドルになりませんか?」
「こんにちはーファルトレさん。ウマドルにー?私デビュー出来る程走れないよー?」
「大丈夫ですパマトレさん。ライブに出演していただけないかと。なんでも射的が得意とか」
「そうだねー。大体のものは取れるよー」
「その精密な動作と集中力はきっとライブに活かせると思います。やってみませんか?」
と聞いそういったパフォーマンスが出来るかなと。一緒にやりませんか」
「うん、いいよー。でもこんな声の調子でも歌える曲とかあるのかなー?」
「レッスンは私が担当しますし、歌える曲もきっと探してみせますよ。ダンスとかはやった事ありますか?」
「んーまだあんまり自信ないかもー。厳しいかなー?」
「いえ、デジトレさんがレッスンをしてくれるから大丈夫ですよ。日程も私が調整を行うので。如何でしょうか?」
「おっけー。やってみるよー」
「ありがとうございます。では詳細は後程メールで送付します。よろしくお願いしますね」
76二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 21:14:54
……よく考えたら笑顔が出来ないのはまずいかな?
ライブとか楽しそうだなぁ、とか逃げウマ娘担当の先輩達と仲良くなりたいなあ、なんて軽い気持ちで受けちゃったけど、すっかり忘れてた。
「どうしよっかー……」
普段は構わないのだけど、ライブだとそうもいかない。大勢の観客に受け入れてもらえるか少し怖い。迷惑かけてしまうかもしれないし。
どうしたものかなあ……と考えていると
「🚗」
ラジコンに乗るイクトレさんが見えた。そういえばあのフリップ……アレならいけるのでは……?
「すいませーんイクトレさーん」
『?』
「ちょっと作って欲しいものがあってー……」
「という訳で試作品を作ってもらったんだけどどうかなーファルトレさん?」
「したい表情を映し出してくれる電光ボード……ですか。どんな仕組みになってるんでしょうか」
「詳しい仕組みは私にはちょっと分からないかなー。仮面みたいになってるけどカメラがついてて前も見えるんだよー」
「なるほど……視界不良で転んだりしないなら有りです。練習頑張って行きましょう」
「おー」
今はまだボードだけど、いつかは堂々と顔を出せるようになりたいなあ。
その後、ウマ娘になる前は着たこともないようなフリフリの服にちょっとだけ恥ずかしくなったり、ライブ中にうっかりブルトレさんにぶつかってボードにトラブルが起こったりしたのはまた別の話。
おしまい
≫102二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 22:37:17
「おはようございます!タマトレさん。ウマドルになりませんか?」
「おはようファルトレ。聞き間違いかな?俺にキャピキャピした衣装着て歌って踊れと?」
「ええ。少しライブに出ていただけないかと」
「やっぱ誘う相手間違えてない?俺は飾り気無いしもっと可愛い奴の方がいいんじゃないか?猫とかネイトレあたりの」
「思うに、タマトレさんの体力と身長はウマドルとしてアドバンテージに働きます。あと綺麗な顔してますし」
「そんな褒めてもお菓子しか出てこないぞ。アルフォートでいいか?」
「ありがとうございます。で?どうです?ウマドルやってみません?」
「うーん……タマのトレーニングとか個人的な用事も有るからな。それに歌も踊りも殆どやったことないし」
「ボーカルレッスンは私が担当しますしダンスレッスンもデジトレさんに頼んであります。トレーニングの日程に影響が出ないようにスケジュール調整も行います。如何でしょうか?」
「………いや、すまんが俺は遠慮しておく。今はタマの事に専念したい。それにそういう格好はやっぱり抵抗がな……」
「そうですか。残念ですがわかりました。また何か機会があったら懲りずに誘いますから」
「何度誘われても絶対に着ないからな!絶対だぞ!呼ぶなら裏方で頼むよ本当」
この辺↓にアイドル衣装の絵
≫120二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 23:31:23
ザバァ…
「いいお湯だよね…」
「はい、そうですねトレーナーさん♪」
仲良く湯船に浸かり…というか、抱きかかえるようにサトトレを膝上に乗せながらお湯に浸かっているダイヤ。
今この場にいるのはダイヤとサトトレだけという大変(サトトレの諸々が)危険な状態だが、まだ特に何もなかった。
「雨天の中だと勝負服も汚れて大変だよね。条件次第じゃ泥も跳ねてくるし…」
「トレーナーさんのは真っ白ですからね…」
ダイヤの高貴な勝負服もそうだが、特に基本白一色のサトトレの勝負服は雨天時凄く汚れて目立つのだ。
身長低い分跳ねた泥が顔に当たりやすかったり、発熱で発生する水蒸気が更に視界を悪化させたりと大変なサトトレ。
(う〜ん、雨天といえば不良馬場の秋天で見せたキタちゃんの最内強襲を思い出すなぁ…僕もああいうのは出来るようにすべきかな…)
あれは間違いなく凄いレースだろう。追い込みのサトトレにはコース取り等学ぶべき点は多いと思っていた。とはいえサトトレの一番の得意戦術…というか好きなやり方は大外一気だが。バ群抜け出しはパワーがいるし、前が壁かつ顔に土が飛んできたりなので大変なのだ。
「…トレーナーさん、何か考えてますね?」
「うん?ああ…ダイヤのライバルのキタちゃんが見せた大雨の秋天を思い出してたんだ。参考に出来ないかなって」
「ふぅ〜ん…」
「ダイヤ…?わふっ」
地味に抱きしめてくる力が強くなる。浮いていたダイヤのπの間に頭を入れられると身動きが取れなくなった。
「ま、待ってダイヤ、どこ触って…ひゅっ!?」
「トレーナーさんの肌はぷにぷにでいいですね〜」
お腹と太腿のあたりに回した手で、サトトレのぷにぷにの肌を触る。わさわさと触られたサトトレがかわいい反応を見せ、ダイヤはヒートアップしてトレ吸いを行う。それも髪ではなくうなじにきっちりと顔を当てて、キスしたり舐めるのだからまあ大変。
「きゅ…」
「可愛いですね…」
蕩けたサトトレを優しく触りながら、ダイヤはにっこりと笑うのだった。
短文失礼しました
サトトレとダイヤのお風呂、話してる内容はレース絡み、サトトレはテクニカルな事も出来るけどレースだと大外一気が一番楽だと思っています(あまりやらないだろうけど)。そしてダイヤちゃんと二人きりにすれば大抵こうなる。ダイヤ>サトトレだから仕方ないね。
≫145☆6月のタイキトレ22/06/07(火) 13:52:25ボサボサって言うとなんかパサパサ感あるよね。でも失礼な。自分のは跳ねっ毛が多いんであって毛量の割に手入れ自体はしっかり……うん、そこそこしてるんよ。まあ丁寧さの欠如は否めない。今のネイトレちゃんほどサラサラツヤツヤしとらんのは確か。くそぅ、ウマ娘になる前は湿気ボンバーだったくせに。……あ、ども。タイキトレです。
「ふぅ……」
そんな跳ねまくりのブロンドに身を寄せる一匹のウマ娘、アドマイヤベガちゃん。視界の外にいる関係でどういう顔してるのかも分からん。あの、なにか御用?
「……少しだけ寒かったから」
……うわぁ〜〜〜! 『なに。悪い?』と『勝手なことしてごめんなさい』のちょうど狭間で揺れてる声色〜〜! ツンツンしながらも寄せられる信頼がなんだかくすぐったい〜〜!!
「ミートゥー。分かるわ……暑いのか寒いのかハッキリしない6月ってよくないと思う」
「……おーいベガトレさんや。なにあんたも参加してんの」
「なにってそりゃ、湿気でモッフモフな同期とのちょうどいい距離感を模索中……」
(わたしも! わたしにもモッフモフを!)
「トレーナーさん……楽しそうデース……」
なんかどんどん増えてくる。あれよあれよと担当の子までやってきた。……そういやタイキはあんまし自分の髪に執着してない。まあ同じ髪質だし、エネルギー有り余ってるから寒いとかなさそうだしね、後ろからではなく正面からガバァッ!てくるタイプ。ちなみに今日だけでもう4回ガバァッ!されてる。
「……そんなタイキのパワフルハグを求めてるっぽいよ、そこのアヤベちゃんが」
「な!? そんな私は……!」
「オゥ! 本当デスか!? ワタシの元気、いくらでも分けてあげマァーース!!」
「いや、待っ」
ガバァッ! キャーー!!
「平和な喧騒だねぇ……そう思わないタイキトレ?」
「いいからどきなよ」
「よいではないかーよいではないかー」
「……まあいっか」
「いいんかーい」
平和だしいいんだよ。きっと、たぶん、おそらく、めいびー。
(終)
≫153二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 14:10:17
──高度数千メートル上空、冷たい風が吹き本来人には余り縁のない場所。そんなところを飛ぶ飛行機が一つ。
「どうしたマヤトレ、腰がひけてるぞ。マヤノにいい姿を見せるんだろ、お前なら出来る。」
「寧ろなんで平気なんだよファイトレ(女)…」
「マヤトレって怖がりだったりする?」
「違うぞボノトレ!」
側面の扉を開けた飛行機から、スカイダイビングをしようとしているのはファイトレ(女)、マヤトレ、ボノトレの3人。
マヤノからのお願いで、空を飛ぶトレーナーの姿をみたいということでマヤトレは今空を飛ぼうとしていたのだった。
「…さて、無駄話はここまでだ。もうすぐポイントだから飛び降りる準備をしておけ」
「もう用意出来てるよ」
「ああ、俺も覚悟は出来てる」
「ふっ…よし、いけ!」
まずボノトレが真っ先に飛び出し、続いてファイトレ(女)が落下していく。最後に扉の縁に立ったマヤトレに襲いかかる強風と下のはっきり分かる程の遠い地面。恐怖で足が竦みそうになるものの、マヤノのお願いを思い出して飛び降りた。重力に引かれて落ちていく。
「姿勢を安定させろマヤトレ。ボノトレみたいな姿勢だ…そう、それでいい。後は…もう少ししたらパラシュートを開け」
「ファイトレ(女)は…ってなんだそれ?!」
ただ落下する二人に対し、ファイトレは何故か飛行してたり急降下して引き起こしたりと明らかに自由度が違う。
「ウィングパックとジェットエンジンの合わせ技だ。マヤノからの頼みで空中撮影もしてほしいらしいからな。」
「人間サイズの飛行機ってか…っとパラシュート…これだな」
一周回って落ち着いたマヤトレはすっと紐をひき、体が急減速で引っ張られる感覚とともに音が落ち着いた。
地面に降り立つと飛びついてきたマヤノとハグ…ではなくハイタッチ。頬を膨らませたマヤノの上から後ろへと響く轟音。
「マヤノちゃん、頼まれていたものだ。このカメラの中に入ってる写真を別のに移すか現像してから返してくれ」
「アイ、コピー!ありがとねファイトレ(女)さん!…マヤも空を自由に飛んでみたいな」
「はは、マヤノちゃんが(今の)私と同じくらいになる頃には飛べるようになってるだろうな」
「マヤ、待ち切れないよ!」
…浮きながら手渡しとは中々器用だと思いつつ、目を輝かせるマヤノの姿に思わず笑みが溢れたマヤトレだった。
154二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 14:10:38
──後日、マヤパパの元にマヤノとマヤトレの仲良さそうな空撮写真が何枚か届いたそうな。
短文失礼しました
空を飛ぶ()3人。ちなみに空に飛べるジェットパックはもう存在するので、近い将来私達も空を自由に飛べそうですね。
マヤパパへと届くとっても仲良しかつ何もやましくない写真、これにはマヤパパもにっこり。(撮影者ファイ女)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part772【TSトレ】
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part773【TSトレ】
≫54二次元好きの匿名さん22/06/07(火) 23:56:38
「あら〜、いい筋肉ですねー」
「そちらも中々悪くないだろう。リャイトレならいいマッスルだと言うんじゃないか?」
「…所で、僕はダンベル代わりなのか審判役でもすべきなのかな」
互いに褒め合うファイトレ(女)とグラトレ(独)。そしてたまたま…グラトレにまた抱かれていたサトトレは見る形に。
さて、そんな二人だが服装は大変薄く(特に上半身)サラシとスポブラだけという大変眼福な姿をしていた。
「ふむ…柔道でいいのか?」
「はい、ファイトレさんはCQCにも長けていると聞きますので〜、少し、お手合わせ願えないかと。」
「…いいだろう、だがやる以上は本気でやらせてもらおう。サトトレ、ルールは…」
「ん、じゃあ僕が審判するね。ルールはウマホもあるしそこそこ覚えてるから大丈夫。」
向かい合う両者。そこそこ筋肉がはっきりとしており、でありながら細さと柔らかさを両立したファイトレ(女)と分かりやすく見える訳ではないがしっかりとしたものを持つグラトレ(独)。どちらも無駄のない付き方。
「では…始め」
──決着は一瞬でついた。睨み合いではなく敢えて速攻を仕掛けたグラトレと早仕掛けを予測したファイトレ。掴みかかってきた彼を逆に掴みながら投げた彼女は綺麗に転がすと、サトトレの若干慌てた一本とともに息をはいた。すぐさま立ち上がり互いに礼をする。
「ふむ…見事だ。速攻や狙い所も中々上手い。けれど、私とて伊達に人の体でウマ娘SP達を相手していたわけではないのでな」
「経験差、ですか…私の完敗です。しかし、これは一本取るまで引き下がれませんね〜」
…互いに人の身でウマ娘に対抗しようとしたが故の技巧派二人。つまりやることは自然と似通ってくる…となれば、後は経験というか技量の差が出た形だった。まあ何年と本職のウマ娘相手し続けているとなれば強くなるといえばそれはそうなのだが。
「…ああそれと、このまま終わるならそこのサトトレは私が連れ帰って堪能するとしよう。」
「…尚更引けません。サトトレさんを堪能出来ないのは大変困りますので」
燃料を注ぎやる気を上げさせるファイトレ。巻き込まれたサトトレは視線を逸らし、グラトレはやる気が上がった。
──その後、床…というかマットに叩きつけられる鈍い音が何度も響いていた。その音がやんだころ、闘争心の見える目で握手してる姿や、3人でのんびり薄着でくつろぐ姿が見られたとかなんとか。
≫145二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 18:53:24
「そういえば、先生が中央のライセンス試験をお受けになられた時は、どのような試験内容だったのですかっ?」
「ん。あー……今とそう変わらんのう。じゃが、儂がいっちょ前になった後で出来たから、皆よりは楽をさせてもらったと思うんじゃが……」
「そうなんですねっ! じゃあ……」
「一浪したわ」
「えっ」
「基礎教養や体育学に計算、指導能力は花丸だったんじゃがの。外国語がのう、フランス語が出ると思わなくてのう……」
「そ、それじゃお仕事は……っ?」
「次の試験まで休業じゃよ。いやー、あれはマジぴえんじゃったわい。トレーナーとして仕事できんから、家内に頭の上がらぬ内職暮らしじゃったのう……」
「ヒエッ……」
「ホッホッホッ。同期には未だ擦られるネタじゃわい……(遠い目)」
うまぴょいうまぴょい
≫161二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 19:51:15
『異聞-メスガキ吸血鬼』
人里から離れた森の奥。今は亡きとある王国のとある王族の住んでいたとされるとある古城。とある冒険者パーティーは最近その古城に巣食ったらしいとある魔物の調査のためにこの地へとやってきた。
魔物が活発してる地域とは程遠い辺境の地、近隣への明確な被害報告はなしと楽な依頼だと思われていたのだが……。
「はぁ……はぁ……なぜこんなことに……」
日が落ちた古城を蝋燭の明かりを頼りに冒険者は逃げ惑う。一緒にいたはずのパーティーメンバーもバラバラに散らばりもはや行方は知らない。もっと事前準備をするべきであったと先立たぬ後悔を持ちながらとある冒険者は必死に逃げる。
――こうなるきっかけは少し前に戻る。
162二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 19:51:33
夕暮れが差し込む古城、魔物が巣食うどころか人っ子一人いなさそうな肩透かしを食らい冒険者パーティーはすっかり緊張が解け呑気に雑談をしながら遠足気分で探索していたのであった。
「しかし、こんな辺鄙な古城探査の依頼なんて誰がしたんでしょうねー」
「さあねどっかの貴族が働いてるアピールでもするためじゃないまあボクらには関係だけど」
「誰もいない古城を探索するだけでこんなに報奨金をもらえるんだから楽なもんだ。ちゃちゃっと終わらせて帰っちまおう」
「そうだなっと。あと探索するべき場所は……この玉座の間で最後っぽいな」
「もしかしたら古き秘宝とか王族のお宝があったりして」
「その場合はどうします?依頼者のものですか?」
「今回の依頼にその規定はなさそうだな」
「ということは俺たちのものか!」
そんな冒険者なのか盗賊なのかわからない曖昧な会話を繰り広げる彼らが玉座へと繋がる扉を開けると、そこは今まで探索した場所とは打って変わり、キレイに清掃が整いあちこちにおしゃれな装飾が施されたまるで深窓の令嬢が住んでいるのかと思わされる部屋があった。
冒険者たちは別世界へといざなわれるようにその玉座の間へと入っていく。そしてあたりを見回すと目の前に一人の少女が目をこすりながら立っていることに気づく。
「だーれ?おきゃくさんー?」
少女がそう言うと冒険者たちは顔を見つめ合って驚く。
「子供がいますよ」
「こんな夕暮れに迷子か?」
「なら迷子の依頼も受けれて一石二鳥だな」
そんな会話をし冒険者の一人は少女を刺激しないようにゆっくりと近づき、他の冒険者は他に誰かがいないか周辺を探る。
「ほら、お嬢さんお兄さんたちは君のお母さんたちから頼まれたんだ。一緒にお家に帰ろうな」
「そうなのー?」
「だから、ほらこっちへおいで」
「わかったー★じゃあいただきまーす★」
――そう言い少女は冒険者の一人に飛びついたのだった。
163二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 19:51:55
周りを探索していた冒険者たちは少女の他にだれもいないことを確認し、入り口に戻ってくるとあの少女についての疑問点を問う。
「こっちは他に誰もいなそうだよー」
「こっちもだー迷子の少女以外誰もいやしない」
「そういえば迷子なんておかしくない近隣の街までかなり離れてるし、この周辺にも目立った村はなかったよ」
「ならここの魔物に攫われたとかか?または家出とか」
「魔物に攫われたならもっと外傷があってもいいし、家出なら拒絶するんじゃねえの俺ならそうする」
「それはそうといつまで抱きつかれてるんだ。もう何もなさそうだし帰ろうぜ」
そう言い少女と一緒にいる仲間の方を見ると驚くべき光景があった。ただ単に抱きついていただけと思っていた少女は冒険者の首筋に牙を立て血を貪り吸っていたのだった。
かつての仲間はみるみるうちに干からびていき、最後にはミイラのような姿になっていってその場にバタリと倒れていった。
「あー、おいしかったー★ でも、まだ足りないなー★」
「「「きゅ……吸血鬼……」」」
「あれー?今頃気付いたのー?もしかしておにいちゃんたち私が食べる前からスッカラカン?クスクス」
「う、うわぁー」
――仲間が一瞬のうちに吸血鬼に殺された。その恐怖に陥った魔道士が杖を置き去りにして我先へと逃げ出していく。
「挑まないですーぐ逃げ出しちゃうなんてーだっさー★じゃあ10かぞえるから必死に逃げてねー★」
どうする逃げ出すべきか、それとも何か対策はあるか……。
「いーち、にーい、さーん~」
考えてるうちにもカウントが進んでいく……。するとガキンと突然金属が交わる音が鳴った。
164二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 19:52:11
「~~の敵討ちだ!」
仲間の一人が目をつぶりながら悠長にカウントする吸血鬼に不意打ちの一撃を入れた音であった。だが吸血鬼は袖から出した何かでガードした様子だった。体重差で後方へ吹き飛んだ吸血鬼に間髪入れず二撃三撃目を入れようする仲間だが吸血鬼はひらひらと踊るように、そしてギリギリ当たらないように躱し続ける。
「不意打ちを入れないといけないなんてプライドとかないのー★ざっこー★クスクス」
「あいにく持ち合わせてないんでな」
「ふーん★ じゃあこれでおしまいだねー★」
そう言うと吸血鬼は血で作られた鎌のようなものを手に取り一閃する。鎌の軌跡には今の夜空のような星空が映った。そうした跡には仲間の姿はどこにもなかった。
「最後に残った臆病なおにいちゃんは戦うー?それともいっしょに鬼ごっこ?どっちー★」
――そして冒頭へ戻る。
もうすこし……あとすこし……玄関ホールを抜ければ脱出できる。冒険者は半ば崩れた階段を駆け下り壁の隙間をくぐり抜け、そして玄関ホールへとたどり着いた。
天井が抜け落ちたホールには雲に隠れた薄暗い明かりが漏れ、そして一人の手を振る影があった。冒険者は安堵のため息を漏らし手を振り返す。仲間に生きて出会えた生きて帰れる。
――しかしその表情は、雲が晴れていき赤い月光がホールにゆっくりと差し込むと同時に歓喜から絶望へと変わっていった。
「あなたで最後だよー★もうおしまいだねー★クスクス」
「うおおおおおおおおお」
冒険者はフラフラになった体にムチをうち最後の抵抗を試みるが、手もすら使われず蹴りだけの格闘勝負に負け床に転がされる。
「このクソガキがっ」
「そのクソガキにいどんで負けたざこなおにいちゃん★大丈夫ご飯は残さない主義なのー★ぜーんぶ食べてあげる★」
「………………」
「ざぁーこ★」
――それがとある冒険者が聞いた最後の言葉であった。
≫171二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 20:24:23
「すいません、わざわざ泊めてもらって」
「ええ、別にいいわよ。それよりここらへんは足場が崩れやすいから気をつけて頂戴。」
ざくざくと斜面を登る二人の人影。…ファイトレ(男)とキタトレは日も登らぬ内から小さな山を登っていた。
たまたま通りがかりで泊めてもらったファイトレズ、その家の家主にして下の街でも有名なキタトレにこの辺の話を聞けた。
「ここらへんは随分安全ですよね。危険なモンスターは殆どいなくて、人と共存しているのも見掛けますし」
「そうね、そういうのが寄り付かないのは私が原因なのでしょうけど。」
「町で有名なのって、危険なモンスターは貴方が狩ってたりするからなのか?町でも敬意を払われてるように見えるし」
「まあ、そういうことではあるわね。」
やがて開けた山頂へと辿り着く。今にも朝日が登ろうとしていて、キタトレは目を細めながら東の空を見る。
「ここ、とても良い景色が見れるのよ。早朝に場所も伝えず付き合わせて悪かったわね。」
「いいえ、この光景で十分ですよ。それより…」
…キタトレの服装、緩いパンツスタイルに薄い羽織りという中々な代物だがこれで街の外どころか遠くまで出るという。
(…いくら達人でも武器も防具もなし、というのは考えにくいし、ここまでモンスターが寄り付かないとなると…)
「…」
「あら、私がどういうのか気になるのかしら。…まあ貴方なら構わないわ、正体を明かしてあげるわね。」
指を弾く音とともに現れる真っ黒な尻尾と角と翼。鋭い眼光と尻尾に見える黑鱗は伝説の武具でもなければ通さなそうなほど。
「龍人…?!」
「…いいえ、私は正真正銘龍よ。人の姿をしてるのは営みに紛れるのが楽で、さっきのは魔術で見えなくしてただけね。」
172二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 20:24:36
────黒龍。厄災の化身とも呼ばれ、一夜にして国を滅ぼしたとも言われる巨大で黒色の龍が目前の優しき彼女だというのだ。
先程までのキタトレと伝承に伝わる黒龍との頭がおかしくなりそうな差に?マークを浮かべながらファイトレ(男)は聞いた。
「アレは売られた喧嘩を買っただけよ?総力を上げて倒しにくるから私もきっちり国ごと滅ぼさきゃいけなかったのよね。」
「まあ悪評が広がった理由はそれなのだろうけど、そのせいか時折私を倒しにくる勇者も多いのよ。」
ボコボコにしてから手当てして丁重にお帰り願ってるとか聞き、ファイトレ(男)は心まで折れてそうだと挑んだ人達を思った。
「それと、この街は私を慕った人達が作り上げたもので、私はいつの間にか祀られるようになってたのよね。不思議な話だわ。」
「だから街の人が敬意を払ってたのか…そしてここにモンスターが寄り付かないのも、黒龍がいるのなら納得だ。」
誰も黒龍の事実上の住処という見え透いた地雷は踏みたくないのだ。仮に何かすればチリ一つ残さず消される可能性が高い。
…街でもキタトレに気安く対応したり相方のファイトレ(女)は結構語気が強かったはずだが、大丈夫だったのかと彼は今更思った。
「…話を聞く限り中々大変そうだけど、貴方は人というものをどう思ってるのか聞かせてほしい。」
「そうね…確かに色々良い面も悪い面もあるけど、それが人間だと断言出来るし私は人を庇護するつもりよ。」
「そして、これこそが俗にいう『愛』じゃないかしら。私みたいな長い刻を生きる人外が言ってもなんだけれどね。」
「…最後に一つ、貴方の相方のこと、よく見てあげなさい。悪意だけじゃなく善意からでも『怪物』は生まれるのよ。」
途中まで優しげな瞳で、しかし最後だけは惜しむように呟いたキタトレの顔が、ファイトレ(男)の脳裏に焼き付いていた。
「さあ、そろそろ戻りましょうか。貴方の相方も腹を空かせて待ってる頃合いじゃないかしら」
「…はい、そうしましょうか。」
二人揃って下りていく中で、そっと肩に回された手を温かく感じたファイトレ(男)だった。
短文?失礼しました
二人でモン娘ネタ、キタトレは王道の黑龍(人)ですね。人の姿を取る龍や獣は古今東西いくつもありますし。
黒龍ということで、なんとなく一狩り行こうぜしてる作品のアイツ要素もプラス。長く生きる人達の感性はまた独特そう。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part774【TSトレ】
≫49二次元好きの匿名さん22/06/08(水) 23:40:11
「入れ替わり……」
「なんというか、トレセン学園って本当になんでもありなんだね……フジは大丈夫?」
「うん、何も問題ないよ、違和感がほんの少しあるくらい、かな?」
「まあ、今日はお互いおとなしくしてれば……」
「あ、そうだ!」
「……フジ?」
「そういえばあの時これだけは無理、って着てもらえなかった服も、今なら出来るや……」
「フジ!?待って!待って!まさかアレじゃないよね!!」
「私の部屋からトレーナーサイズの私の勝負服もってこよう!」
「ストォッププリィィイイイイイズ!!!!」
※なお、この後着た姿を撮られてフジキセキはフジトレは2時間ほどすねられることになる
≫105二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 17:07:02
「イクトレさん……これ、直りますかね……?」
「……」
そう差し出されたのは、見事にブルースクリーンエラーを表示するノートパソコンであった。
IT関係者なら思わず目眩がする光景だが、ここはスポーツマンの巣窟で、イクトレは数少ない技師である。
然るに、こうしたIT関係の持ち込みも最近増えてきているのだ。目の前の新人トレーナーもそれを知ってのことだろう。
こうした依頼にイクトレも慣れたもので、目を細めてエラーコードを眺め始める。
『🔋?』
「え、あ、はい。充電がなくなっちゃってからこの調子で……」
『◯』
いくつかの質問を交えて、イクトレは再起動をかける。
すると、OSが正常に復旧され、普段と同じような稼働状態へと戻っていった。
なんのことはない。バッテリーがなくなったので、セーフモードで復旧するか問いかけていただけなのだ。
これだけで感謝されても技師としてはやりがいがないので、一時保存されたデータをサルベージし、完全に“直した”状態でイクトレは返却する。
『直ったよ』
「あああ、ありがとうございます! 報告書間に合いそうです……!」
『◎』
お礼と言ってはなんですが、と渡された生菓子をミニ冷蔵庫(これでないと手が届かないのだ)に収めながら、イクトレは「修理待ち」とラベルの書かれたPCを運び出す。
今日までに修理しなければならないものが、あと10台はあった。
「わたち、ていてちゅしょくにんなんらけろにゃ……」
……単なる整備不良からウィルス感染、更にはどういうわけか真っ二つに割れたそれらを見て、イクトレは溜息をつく。
今度オペトレに修理業者と保険屋を寄越させよう。そう考えながら、イクトレは修理用の道具を手に取った。
うまぴょいうまぴょい
≫112二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:23:30
【イクノディクタス担当トレーナーの修理日誌】
- パンクした自転車
依頼者:ナリタタイシン担当トレーナー
修理時間:1時間
コメント:変化前から乗っていたせいか、かなり無茶な乗り方をしていた
念のため現在の体型に合わせた調整を実行
- ボタンのヘタったストップウォッチ
依頼者:ナリタブライアン担当トレーナー
修理時間:10分
コメント:使い続けてバネがへたり、釦が正常に押下できなくなっていた。部品在庫があったので簡単に修理できた
チームを組むトレーナーの備品消費率は多いので、備品業者を紹介する
- ペン先の曲がった万年筆
依頼者:シンボリルドルフ担当トレーナー
修理時間:3時間
コメント:誤って落下させてしまいペン先が曲がったとのこと。ペン先の在庫がないので打ち直して提供
打っている間、皇帝陛下の惚気を散々聞かされたが途中で黒髪の方が迎えにきた。
明らかに黒髪の方が憔悴していた為、とりあえず作業時間を伸ばし、両者休ませることで対応
- ウィルス感染したノートパソコン
依頼者:トウカイテイオー担当トレーナー
修理時間:1日(待機時間含む)
コメント:スパムメールによる感染。他のPCに伝染していないか確認の為、1日作業。幸い学園のPCには感染せず
本件は各自の常識的判断では再発防止策とならない為、注意を促すようオペトレに手配をする(追記:済)
(追記:依頼者がエロサイトを見ていた、という噂を否定する証人として飲み会に出頭した。
「彼女がむっつりスケベか否かは保証しないがそれが原因ではない」と証言。
「むっつりスケベじゃないし!」と泣かれた)
113二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:23:58
- ランボルギーニ・カウンタック(バッテリー点検)
依頼者:マルゼンスキー マルゼンスキー担当トレーナー
修理時間:2時間
コメント:遠出するとのことで臨時点検。問題は特になかったが、傷をつけずによじ登るのに難儀し抱き上げられた
- 全壊したカブ
依頼者:ダイワスカーレット担当トレーナー
修理時間:3日
コメント:件の事件でボロボロになったカブを修理。ついでに例の四足獣のレリーフを彫ってやったら泣かれた
- ジョイント部分の破損したゲーミングノートパソコン
依頼者:ウオッカ担当トレーナー(付記:身長202cm)
修理時間:1時間
コメント:持ち運びの際に力加減を誤り、モニタと本体を繋ぐジョイントが壊れてしまった模様
補強及び排熱用のプレートを装着。その部分を持つように指導
- 液晶の破損したスマートフォン
依頼者:トーセンジョーダン
修理時間:10分
コメント:コンクリートに誤って落としてしまった様子。予備部品の在庫があったので短時間で修理
担当トレーナーから頂いたお礼の和菓子は大先生御用達らしい。めっちゃうまかった
- エンターキーだけになったパソコンの、データサルベージ
依頼者:ウオッカ担当トレーナー(Vサインのやつ)
修理時間:達成不可により返却
コメント:この状態からどうやって直せると思ったんだ?
114二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:25:02
- 真っ二つになったスマートフォン
依頼者:カワカミプリンセス担当トレーナー
修理時間:1日
コメント:これがミホノブルボン担当トレーナーからのものではないことに少なからず驚いている
担当ウマ娘の誤った力加減でこうなってしまったとのこと。この規模になると買換を推奨したい。直すが。
- 真っ二つになった仮面
依頼者:バンブーメモリー担当トレーナー
修理時間:2日(塗装を乾かす時間込み)
コメント:ウマ娘の衝突事故で割れてしまったとのこと。陶器製だったので金継ぎの要領で修理を試みる
- 真っ二つになった開運グッズ(プラ製)
依頼者:マチカネフクキタル担当トレーナー
修理時間:半日
コメント:直したけどこれはお焚き上げした方がいいと思う
- 真っ二つになった薙刀
依頼者:グラスワンダー担当トレーナー
修理時間:半日
コメント:真っ二つにするの流行ってるの?
117二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 18:28:19
- 刃こぼれしたサバイバルナイフ
依頼者:ヒシアケボノ担当トレーナー
修理時間:1時間
コメント:久しぶりに真っ当な品が来た気がする。打ち直す必要はないと判断し研ぎ作業で解決
でも日常生活でこんなに使い減りするものじゃないんだが、彼はどこで何をしているのか。
- ヴァイオリンの調整
依頼者:ライスシャワー担当トレーナー
修理時間:2時間
コメント:倉庫にあったヴァイオリンの調整を頼まれた。弦の張り直しと各種調整を行う。
そういえば弦は尾毛が使えると話したら尾を隠された。そんなセクハラしないよ。
- 校舎の壁
依頼者:駿川たづな女史
修理時間:一週間
コメント:マトモだと思ったらこれだもんなあ。
犯人は捜索中らしい。業者呼べよ業者。
- 砂になったスマートフォン
依頼者:ミホノブルボン担当トレーナー
修理時間:不可
コメント:今日はけっこう派手にやったな! せっかくなので砂を使ったCPU開発に臨む。
- イクノディクタス担当トレーナー
依頼者:イクノディクタス
修理時間:(「1日」に打ち消し線がつけられている) 超長期
コメント:塩辛食べ過ぎましたごめんなさい。ゆるしてください。ちょっとうまくいって調子乗っただけなんです。
粉ミルクだけは勘弁してください。おむついらないです。スーパークリークさんから学ばないでください。
やめて!
(ページはここで途切れている)
≫137二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 19:18:53
- 彼の身からして大きくなってしまった車
依頼者:サクラローレル担当トレーナー
修理時間:1週間
コメント:今の背丈でも運転できるように補助装置取り付けの改造依頼。
ちなみに私の使ってる車を使うかと聞いたら断られた。
- F-14の模型
依頼者:マヤノトップガン担当トレーナー
修理時間:4時間
コメント:剥げてしまった塗装の塗り直し。ついでに今話題の映画の劇中塗装にしておいた
- 剣、鎌、斧、槍、鍬、チェーン、謎の銃、謎の箱、etc...
依頼者:マーベラスサンデー担当トレーナー
修理時間:3日
コメント:彼女はいったいどこからこれを……?
以上構文お借りいたしました。
≫175二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 20:53:01
「…しかし、面倒なことになったわね。いや、いつものことかしら。」
「あはは…そうですね」
並んで歩く二人、キタサンとキタトレは…しかしよく見るといつもとは雰囲気が二人共違う。キタサンはどこか大人びた雰囲気が見えかくれし、キタトレは明らかに胡散臭さが消えて子供らしい感じがする。そう、二人は入れ替わっていたのだ。
「まあ今の所入れ替わりは貴方のクラスメイトにはバレてないわよ。…バレた所で問題はないといえばないのだけど。」
「トレーナーさん、外では私にそっくりな振る舞いですもんね。自分?を外から見れるのはちょっと新鮮かも」
キタトレの高精度な真似、付き合いの長いキタの振る舞いなら大体トレース出来てるので全然バレてはいない。
ある意味自分を見せられるキタからすれば、むず痒いような不思議な感覚を抱いてしまう。…と、そこで突然ドアが開く。飛びついてくる人影を慌てて受け止めたキタトレ(キタサンの姿)は
よく見た担当の幼馴染の姿にキタサンとして反応を返した。
「どうしたのダイヤちゃ…」
「トレーナーさん?」
扉の方から現れる小さなウマ娘。親友にして同僚のサトトレだが、やけに魔性な雰囲気を持っているように見える。受け止めたダイヤはいつもみたいなノリは潜め、子供らしさを感じた所でキタトレは何が起きているのかを大体把握して顔を若干引き攣らせた。
「とりあえず離れてダイヤ…いえ、サトトレ。」
「ご、ごめんキタちゃん…ってキタトレ?」
とりあえず取り繕う必要もないので、一旦現状の情報交換をして一息つく四人。トレーナー室でいつもの椅子に座るキタトレ、机を挟んだ椅子に座るキタサン、ソファで並んで座るサトトレとダイヤ(ダイヤはサトトレの腕にくっついている)という構図で
「…これで一通り話は終わりだけど、サトトレは…というかダイヤちゃん、貴方サトトレに甘えようとしてたのかしら。」
「はいっ♪普段トレーナーさんを抱く側なのですけど、逆に抱かれる側というのもいいですね。」
「ダイヤちゃん…その、ほどほどにね?」
「僕の体で色々されると調子狂っちゃうからやめて…」
──この後キタトレにフォローされるサトトレや、二人で走り回るキタサンとダイヤがいたとか。
短文失礼しました
入れ替わりネタ、キタトレはきっちり真似出来るから兎も角サトトレだとすぐに違うってバレそう。
クレイジーロリと長身爆乳の陽気な女ですか…
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part775【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん22/06/09(木) 22:00:25
「おやおや、あれに見やるは~」
何だか騒がしい気がするトレセン学園をグラトレがのんびりと歩いていた所、遠目に見知った後姿を見付けた。
「サトトレさんですね~」
そこに居たのは抱き心地抜群でお気に入りのサトトレさんだ。
丁度今は時間も空いているし、サトトレさんを抱きしめながら一緒に和菓子を食べるのも乙なものだろう。
そう思い立ち、早速サトトレさんの下へと向かい後ろから抱きしめつつ声を掛ける。
「こんにちは~」
「きゃっ!」
「ふふっ、サトトレさんはこれから時間は有りますでしょうか~」
「あっ、グラトレさんですね!」
「……おや?」
後ろから急に抱きしめられたサトトレさんは随分と可愛らしい声を出して驚いた後にこちらの名前を呼んできた。
しかし、サトトレさんは普段と言葉使いが違う様な?
それに何となく雰囲気も違う様な……
「グラトレさんには私のトレーナーさんに関して聞きたい事が有るんですよ?」
「私の……トレーナーさん……?」
「もしかしてグラトレさんは、今トレセン学園でトレーナーと担当ウマ娘が入れ替わる事象が起きているのを知らないんですか?」
「…………という事は~」
「はい♪ サトノダイヤモンドです」
何という事か、サトトレさんだと思って抱きしめてみたら中身がダイヤさんだったなんて……
……というかコレはヤバイのでは?
「逃がしませんよ? グラトレさんには私のトレーナーさんを事有る毎に抱きしめている事について聞きたいですから」
「た……助けてグラスゥゥゥ!!!!!」
うまぴょいうまぴょい
≫73二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 08:39:34
(……何故かLINEのやり取りだけでアイツを見かけないけど……)
「ねえチケット」
「なーにー?タイシン」
「私のトレーナー見かけた?」
「えー?そうだねータイシンのトレーナーさんならさっきプレもがっ」
「はははチケット良い所に併走したいなーと思ってたんだいや本当にいい所だ」ズルズルズル
「……」
≫74二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 08:58:53
「タイシンのトレーナーくんか。タイシンが喜びそうなもの……タイシンは何よりもキミを気にしていてね、言ってはなんだが、プレゼントよりもキミが健やかに過ごしていることの方がよほどタイシンには嬉しい事では無いかな?アドバイスとしては不適格かもしれないが、私のデータではそうなるね」
「成る程……ありがとうビワハヤヒデちゃん。そうと決まれば!」
タイトレは健康診断に行った
≫75二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 09:04:34
「ダンスをプレゼントとかどうでしょう?」
「タイトレさんのぷちを作ったので良ければ」
「いいコーヒー豆がありますよ」
「俺の描いた絵をあげよう」
「2人の写真は任せてくれ」
「私の国だったら誕生日はBBQよ!」
「やっぱりプロテインでマッスル〜!」
「サイズが合わないビキニがあるからあげるぜ!」
「胸だ!!」
「みんな、ありがとう!!!」
≫76二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 09:18:56
「おうどうしたタイトレ、らしくもねえ顔しやがって!」
「おう青タボ……実はタイシンの誕生日がもう明日なんだよ!」
「なんだと!? そいつは大変だ、お前だってもうそろそろ買いに行かねえとまずいんじゃあねえのか!?」
「そうなんだよ! だけどいろんな人に聞いても聞いてもいい案ばかりで中々決まらなくて! どうしよう!」
「ふっ……タイトレ、こういう時には一ついい考えがある」
「そ、そいつは何だ……?」
「漢なら! 全部買えッ! 全部! やれッッッッ!」
「な、成程ォォォォォッ!」
≫83二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:16:35
『勝利への解法
変化する状況の中で次々と迫られる判断
しくじりは決して許されない
どの位置を取るのか
いつまで我慢すべきか
どこを突いて抜け出すか
周囲に目を配れ知恵を振りしぼれ
最適解を積み重ねた先に勝利は待っている
JRA 「名馬の肖像」2021年皐月賞より』
時は残酷だ、誰の都合も考えず知らん顔して進んでいく。それに付き従うように状況は変わっていく。良い方向にも悪い方向にも。
アタシだって変化してきた。心境も身体も環境も。このまま不変でいられるなんてバカな事考えてなかったしアタシを取り巻く関係だって悪い方向に進む事も覚悟していた。
だけど、だけど。
「タイシン!!!朝起きたらなんかこんなことになっていた!!!」
「は?」
──まさかこんな状況になるだなんて誰が予測出来たのだろう。
84二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:17:14
「タイシーン!大丈夫ぅ!!??」
「うっさ…アタシは別に何か変わったわけじゃないし平気」
「そうか?トレーニングが精細を欠いてたように見えたが…まぁ無理もないか」
トレーナーがウマ娘になった。そんな話はトレセン中を駆け巡り少し前からそこらでする立ち話のネタは大体がそれを占めていた。
怪しげな薬品等ではなく唐突に、それも複数人のトレーナーが変わったというのだから仕方のない事だとは思う。摩訶不思議な事が起きてもなんとか対応をしている上の人達のお陰で抑えられている状況だけど。
「今病院で調べてもらってるらしいけど問題ないって言ってたし」
「そっかぁ…元気なら安心だ!!」
「そうだな、身体どころか性別、種族まで変わったのだ…聞いたところによるとテイオー君のトレーナーは…」
心が壊れ自らの脚を折った。詳しく聞いたわけじゃないけどその決別をするのにいったいどれだけの苦悩があったんだろう。どれほどの絶望を感じたんだろう。
最初にそういう状況になって、好奇の目に晒されて、誰にも相談出来なくて。
アイツはそれを知ってたはずだし同時期に他にも変わったトレーナーがいた。だとしても不安や恐怖は計り知れないと思う。
──アイツが、アイツまで壊れたら。
泣きそうにしているチケットと思案顔のハヤヒデと並んで黙り込んでると入口の方から怒鳴り合うような声が聞こえた。
「だから!知らねぇし答えられねぇって言ってんだろ!!」
「…トレーナー君?」
「あっハヤヒデー」
駆け出したハヤヒデについて入口に向かうとそこには。
にやついた笑みを浮かべ嫌な瞳をしたマスコミ達がハヤヒデのトレーナーに止められていた。
85二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:18:01
「あっBNWだ!ナリタタイシンがいるぞ!」
視界を潰すいくつものフラッシュに思わず怯んでしまう。怒号のようなハヤトレの停止の声で何とか目を開けられた。
「ナリタタイシンさん!担当トレーナーがウマ娘に変わったというのは本当でしょうか!?今のお気持ちは!?」
「トレセンの対応にどのような不満を感じましたかぁ!?大事な時期に迷惑をかけるトレーナーにどんな言葉をかけたいんでしょうか!?」
「いい加減にしねぇかお前ら…!!」
「でもですねぇ実際トウカイテイオーはレースに気持ちが入ってないように見えましたしトレーニング量も減ってるんでしょぉ?そんなトレーナーがウマ娘の役に立てるとは思えませんけどねぇ」
「こっ…の…!!」
「落ち着けトレーナー君!」
耳障りな声で言った奴の言葉に青筋を立てて近寄ろうとしたハヤトレをハヤヒデが組み付くように止める。それを見て冷や汗をかきながら他のマスコミが言葉を続けた。
「ナリタタイシンさんだって今週末にレースを控えてるでしょう?先に不安の種は摘んでおかないと」
「だから俺達が取材をしてやって世間に伝えてあげようとしてるワケなんですって!」
「それにほら…」
──タイシンちゃんには走るの勝てそうだよね。
ああ分かった。こいつらはあいつらと同類だ。人の事なんて一つも考えてない、誰かを貶してバカにして楽しめればそれでいいんだ。
握った拳が解けそうに無い。チケットですら怒ってるんだぞ、こいつらにはアタシや今にも爆発しそうなハヤトレの姿が見えないんだろうか。いや見ようともしていないのか。
「変わったトレーナーさん達ってみーんな美人なんでしょ?ぜひお会いしたいなぁと…」
「あぁもしかしてお楽しみの最中だからですか!?そりゃあ出て来れませんよね!」
「ごめんなハヤヒデさん。俺もう駄目だわ」
アタシが飛び出して蹴るよりも先にハヤトレが近くにいた奴の胸倉を掴んで吊し上げた。大の大人が本気で怒りを、殺意を向けて。
「ひっ…て、天下のトレセンのトレーナーがこんなことして…」
「俺頭いいからさぁバッジハヤヒデさんに渡したんだよ。だから今トレーナーじゃねぇんだ…それに…」
駄目だ、駄目なのに止まらない、止められない。
「友達こんな貶されて黙ってられる程賢くねぇんだ俺はァ!!」
「やめっやめてぇ!」
「ハヤトレ先輩その辺にしてあげて下さい」
86二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:18:57
「トレーナーさ、どれーなーざぁん!!」
「ごめんチケット、遅くなった…先輩も離してやってください」
「…はぁ、分かったよ」
注意を引くためか手を叩きながらやって来たのは白い髪と赤い瞳のチケットのトレーナー。一見落ち着いた雰囲気だけど汗をかいているし少し息も乱れているから急いで来てくれたんだろう。そうしていると尻餅をついたマスコミが声を振るわせながら情けなく喚いた。
「こ、こんな事してどうなるか分かって…!」
「うーんどうなるんでしょうかねぇ…知ってます?乙名史さん?」
チケットの頭を撫でながら振り向いた先には名物記者の人が笑って立ってた。
笑ってるけどいつもの笑顔じゃない、あれは敵意を示すための笑みだ。
「素晴らしいです、トレーナーさん達を心配して取材に来られるなんて。ただご質問ですがどうして皆様はこちらを付けていられないんでしょうか?」
そう言いながら彼女が引っ張ったのは腕につけた腕章。トレセンに許可を取って取材をしているという証。
「許可を取っていない場合不法侵入罪や不退去罪に問われる場合がありますね。無理な取材ならプライバシーの侵害、名誉毀損と言った恐れもありますけど…ご存知ですよねA社の〇〇さん、B社の××さん、C社の△さん?そういえば◇記者は立ち入り禁止になっていませんでしたか?詳しいお話お聞かせください」
「ゔっ…いや…その」
「おいおいどこ行こうとしてんだお前ら人の質問には答えましょうって小学校で習わなかったのか?」
「…まぁそもそももう警備員さん達がそこらで見てるから逃げれる訳ないんだけど」
(ふざけるなよなぁなぁぁぁ許せねぇなぁぁ)
(此方も抜かねば…無作法というもの…)
一息で言い切るとずいと距離を詰め、逃げようとするマスコミをハヤトレがカバディのような動きで牽制してるのを見て思わず笑いそうになる。ざまぁみろ。
「後は俺達がお話しておくから3人は先に帰って」
──先輩、トレーナー室にいるから。
通り過ぎる瞬間アタシだけに聞こえるように教えてくれた。
87二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:19:32
誰の声も聞こえない怖いくらい静かな部屋でアイツはぼんやりと座ってた。
いつも窮屈そうにしてたソファはアタシが隣に座れるくらい隙間が空いていて。いつもバカみたいに笑ってた顔は何かを考え込むようで。契約を結んだ時に撮った不機嫌そうなアタシの頭に手を乗せている自分の写真を黙って眺めてた。
入ってきたアタシにも気がつかないその様子が、アイツらしくなくて。
一回りも二回りも小さくなったその身体はやっぱり見慣れなくて。でもアイツはアイツで。
「…ねぇ」
「──タイシンか!いやー今日はトレーニング見れなくてすまん!」
「別に…アンタは大丈夫なのかよ」
「ん?あぁ…やっぱり違和感はあるけど俺は俺だからな!」
そうだ、見た目がちょっと変わったかもしれないけど何も変わってなんかない。コイツも、きっと他のトレーナーも。
変わったのは、周囲の見る目。何も知らない奴らがアタシ達の関係を勝手に壊そうとしてるだけ。
「それで今週末のレースについてなんだが…」
「…アンタ次のレース来なくていいよ」
「え?」
「色々落ち着くまで…その、メディア出ない方がいいし一人で大丈夫だから」
お願い、トレーナー。アタシよりも小さくなっちゃったその背中が崩れたら。
誰よりも暖かくて優しいトレーナーが悪意と嘲笑に晒されたら。
それでアンタが壊れてしまったら。心配で怖くて耐えられない。
「で、でもタイシン…俺は」
「うっさい!いいから来ないでよ!来たら一生口聞かないから!!」
無理矢理会話を終わらせて逃げるようにその場から立ち去る。
本当にこれでよかったの?
アタシ達の関係ってどうしたらいい?
アタシは…アンタはいつまで我慢すればいい?
ぐちゃぐちゃになった頭と崩れそうな関係になんか見向きもせず、只々時だけが過ぎていった。
88二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:20:12
『ゲートインが完了した模様です。一番人気は〇〇、二番人気はナリタタイシン、この二人による追い込み勝負がどうなるのでしょうか!』
肌を刺すこの空気はいつまで経っても心を揺さぶられるんだろうな。そう思って瞳を伏せ頭の中身を整える。
今回は間違いなくアタシと一番人気の追込み組の勝負になる、有力な逃げはいないからハイペースな展開になる…はず。
一人の待合室は酷く静かだった。集中出来たはずなのに、どうしてこんなに違和感があるんだろ。
考えるな関係無いものは全て置いていけ。
スタートに備えて身構えた瞬間、遠くから他のトレーナーの激励の声が聞こえた。
──アイツ、来てないんだ。
『各バ一斉にスター…おっとナリタタイシン出遅れたか!』
バカ、なにやってんの!
切り替えろ遅れを取り戻せ、取り返しのつかないことじゃない。
そう思い周囲に目を向けて違和感を感じ実況の声で目を見開く。
『先頭は…〇〇!追込型の彼女が気持ちいいくらいに大きく逃げています!虚を衝かれたか他の娘達に動揺が見られる!』
──やられた。あんた逃げも出来たの?
想定外の事態だったのか他の娘も走りに精彩を欠いてしまっている。そのままずるずると時間が過ぎていってしまう。
スローペースで縦長の展開、アタシにとって考えうる最悪のパターンだ。
アイツと散々話したのに。この展開だけは避けようと一緒に決めていたのに。
焦燥感が脚を鈍らせる。焦りが思考の邪魔をする。酷く喉が乾く。
世界が狭まる。あいつらの言葉が、あいつらの目がアタシに付き纏う。
──アタシはどうしたらいい?
何も出来ないままレースは終盤を迎えてしまった。
89二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:20:54
くそっくそっくそ!!位置が悪すぎる!
どうする、考えろ、考えろ!
どこを突いて抜け出すべきだ?
最適解を選べ、判断しろ!ここでしくじるわけにはいかないっ!
内は詰まってはいるけど抜け出す隙間はある。一着は厳しいけど勝ち負けには持ち込める。
外は…賭けだ。今いる位置から外に完璧に出る事が出来たら一着も狙える。だけどちょっとでもしくじったらそのまま届かずにおしまい。
どうする、勝負するべき?するべきだ、そんなの分かってる。分かってるけど。
ここで惨敗なんてしたらアイツに向けられる目はどうなる?
視界が狭まる、息が乱れる。小さな背中が遠のいて手の届かない場所に行ってしまいそうで。
…内だ。今回はこうするしかない…仕方ない。
そう判断し脚を向けようとして一瞬目を閉じる。次に目を開けた時には気持ちを切り替えられるように。
さぁいくぞ、三──二──
「勝てえぇぇ!!タイシィィーーンッ!!」
そんな叫びに思わず目を開けると。
トレーナーが、いた。
90二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:22:27
どうして、何で来たの。
来るなって言ったのに。ほらマスコミが近寄ってきてるし周りの人が見てるじゃん。
そんなアイツの眩しいくらい綺麗なエメラルドグリーンの瞳にはアタシしか映っていなかった。
「頑張れぇ!!!がんばれぇーー!!」
必死な顔で応援するその姿に思わず笑ってしまう。
『最終コーナーを回った!先頭は〇〇!いや××が前に出たか!?激しい競り合いだ後ろの娘達は間に合うのか! ──先頭集団に迫る影!!あれは!』
やっぱりアイツはアイツだ。バカで熱血でうるさくて──
アタシの、最高のトレーナー。
「うおおぉぉおぉぉぁ!!!」
『ナリタタイシンだ!!ナリタタイシン外からいったぁ!』
一人、二人、三人っ!!
速く、速く、誰よりも速く!
甘く見た、見ようとしなかった奴らに吠え面かかせてあげる!
アタシが、アタシ達がマジだってこと、教えてあげる!!!
『外からナリタタイシン!ナリタタイシン飛んできた!凄い脚だ届くか!届くか!抜いた!!ナリタタイシン差し切ったぁ!!』
「はぁ…はぁ…はあっ…!!」
心臓がはち切れそうな位うるさくて、それに負けない位歓声が響いてて、泣きそうな顔でアイツが駆け寄って来てて。
「タイシン、タイシン!タイシンッ!!やったな!!!」
うるさ。泣くのか笑うのかどっちかにしてよ。
まったく…アンタに釣られちゃったじゃん。
「へへっ…見たかっての!」
91二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 17:23:03
表彰台の上でアイツがいつも通りにレースに向けてた熱意や対策を語っている。前なら身長を気にして乗らなかったけど今じゃ乗らないと取材がしにくいらしい。それ以外は自然体で何も気にした様子じゃなかった。
一区切りついた後に真剣な瞳をした記者が言葉に気をつけながら姿の変化を問い、それに対してマイクを握り直して観客に対し胸を張って答えた。
「みなさんご覧の通り私はウマ娘になりました。原因不明で元に戻るか戻らないかも分かりません…ですが!」
一呼吸挟み一段と声を張り上げる。何者にも負けないように強く。
「俺はどうなってもタイシンのトレーナーであり続けます!いつまでも!一生この最高の相棒を支え続け栄光を届けて見せます!だから、だから!!これからもタイシンの応援をよろしくお願いします!!」
一瞬の静寂が場内を包み、大歓声が世界を揺らした。
熱意、好意、敬意…暖かい感情がこもった声援がアタシ達に突き刺さる。みんながアタシ達を、その目で見ていた。
すばっ素晴らっ…と感極まっている記者に向けられたマイクを手に取りこの場にいる全ての人に向けて吠える。
「アタシの…アタシ達の実力、思い知ったか!」
爆発するような大歓声が身を包む中、聞こえるか分からない小さな声で呟く。
「アタシのトレーナーはアンタしかいないから…その…これからもよろしく」
きっと迷惑をかけるだろう。きっと迷惑を被るだろう。そうであっても構わない。
苦難も困難もこの脚でぶち抜いてアンタといっしょに勝利を掴んでみせる。
アタシはナリタタイシン。
最高のトレーナーの、最高のウマ娘だ。
92おまけ22/06/10(金) 17:24:09
「うおおおぉタイシーーン!!!」
うるさく叫びながらこっちに駆け寄ろうとする姿を見て思わず笑う。やっぱり何も変わってなんかない。
そんな事を考えてたらアイツがお立ち台から降りる時に転びそうになった。身体が先に助けようと近づいて受け止める。
細くなった腕がアタシの頭を抱き込んで、重力に身を任せて体重をかけてきて、アイツのバカみたいに大きくて柔らかくていい匂いのするそれがアタシの顔を挟み込んで──
──タイシンの性癖は破壊された。
≫114二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:14:59
トレーナー。
アタシのトレーナー。
うるさい、暑苦しい、うざったい、変な奴。
……アタシの担当をしてくれている変な奴。
あの日、アンタと出会わなかったらどうなってたんだろう。
『位置取り争い』はきっとし続けただろうし、もしかしたら悪評で学園を去ってたのかもしれない。
腹が立つけど、アンタ以外がアタシの担当をしているところが想像できない。無駄にお節介焼きのアンタ以外。
今度「引く手あまた」なんて言ったら本気で蹴り飛ばしてやろうと思う。
……はぁ。
でも、こんな日ぐらい、少しだけ素直になってもいいのかもしれない。
アタシはアンタと会えて良かったよ。ありがとう。
これからどんなに辛く、苦しいことがあっても──
────やっぱアンタの隣が一番良いんだ。
≫120二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 21:31:29
あいつ朝からうるさそうだなと覚悟するタイシン
それに反して大人しいタイトレ、問いただしても
「今日はなにかあったか?それよりもトレーニングだぞ!」と言うタイトレ
「そっか……覚えてないんだな……」と意気消沈するタイシン
トレーニングが終わったあとトレーナー室に来るように呼ばれたタイシン
ドアを開けるとたくさんのウマ娘そして、そのトレーナーたちが勢ぞろいになり
「「タイシン、誕生日おめでとう!!」」とクラッカーが鳴り響かせその光景に驚くタイシン
「はははっ!!驚いたか?!!タイシン!!誕生日おめでとう!!!」とサプライズに自慢げなタイトレ
「うっさい!!ばか!!」とケリを入れるタイシン
おまけ
「タイシンの分のケーキだぞ!おっと!」
転けるタイトレをタイシンが受け止める
タイトレの豊満な胸が顔面に直撃しタイシンの性癖は……
※ケーキはオペトレがキャッチしました
≫126二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:18:30
タイトレさんを着付けるグラトレ(独)
「ではでは~、脱いでくださいな~」
「おう!」
「おう! じゃないっ!!」
開幕脱げという言葉とそれに応える威勢の良い返事、そしてその返事に対するツッコミが響き渡る。
此処はグラトレのトレーナー室。
普段はのんびりと書類を纏めたりしている時間だが、今日はタイトレとタイシンの二人が客人として来ていた。
では何故その二人がトレーナー室に来ているかというと、話は数十分前へと遡る
─────数十分前
(おっ、グラトレ!!!)
(うるさい! そんな大声じゃ無くても聞こえるでしょ!)
(おやおや、タイトレさんとタイシンさんですか~、お茶会の時間までは少し有りますよ~)
元々タイトレペアと約束をしていたお茶会。
しかし、約束の時間までまだまだ有るというのにタイトレとタイシンがグラトレの下にやって来たのだ。
(……コイツに言ってよ)
(スマンスマン! ちょっと頼みたい事が有ってな!)
(……頼みたい事でしょうか~?)
(ああ! せっかくのお茶会だからな、着物を着てみるのも良いかもなと思ってな!)
(ゴメン……このバカが急に)
(いえいえ~、構わないですよ~)
どうやらタイトレは野点でのお茶会に合わせて着物を着てみたいのだという。
そういう事ならば……
(取り合えず~、私のトレーナー室で詳しくお話を伺いましょうか~)
(ああ! よろしく頼む!!)
そういう事で、二人はグラトレのトレーナー室へとやって来たのだ。
127二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:18:50
所変わってグラトレのトレーナー室。
取り合えずタイトレさん達に詳しく……先程と変わって無かったが……話を聞き、着付けを行う事となった。
しかし、一つだけ問題が……
「申し訳ありませんが~、着物は私の予備の一着しか無いのですよ~」
「おっと、そうなのか?」
「ええ、急な話だったもので~」
「もう、アンタが急に言い出したからでしょ」
「ス……スマン」
「いえいえ~、急な話自体は問題有りませんので~」
問題というのは着せられる着物が、予備の一着しか無いという事。
着付け自体は今の身長である155cmよりも二人共小さいのでいけるだろうが、数だけはどうしようもない。
仕方無いので、どちらが着るかを決めて貰わないといけないだろう。
「さてさて~、どちらが着られるかを決めて貰わないといけませんね~」
「むっ? そういう事ならタイシンに……」
「はぁ? 着たいって言いだしたのはアンタでしょ?」
「うっ、だけど俺はタイシンが着物を着ている姿を見たいぞ!」
「な、なっ……わ、私は興味ないし着たがっていたアンタがヤッパリ着るべきでしょ!!」
「あらあら、埒が明きませんね~」
どうやら互いに遠慮し合っているのか、お互い譲る気は無さそうだ。
正直このまま口論させ続けるのも不毛なので、横槍を入れて埒を明けるとしようじゃないか。
そう考え、口論している二人を棚からある物を持って来る。
128二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:19:06
「はいはい、お二人共話が纏まらない様ですので~……コレで決めてしまいましょうか~」
「……何コレ? ザルみたいな茶碗とサイコロ?」
「……グラトレ、丁半か?」
「ええ、ええ、丁ならタイトレさん半ならタイシンさんが着物を着るという事で良いでしょうか~」
「ああ! 良いぞ!!」
「いや、丁半って何?」
「ではでは~、不肖ながらこのグラトレ……壺振りをさせて頂きます」
そう宣言したグラトレは、おもむろに着物を着崩し右腕を開けさせる。
腋下に見えるのはサラシではなくスポブラだが、中々に壺振りらしい姿だ。
「ちょっ!? 何で急に脱いだの!?」
「おお~、カッコ良いな! ちょっと俺もやってみたいぞ!」
「ふふっ、でしたら丁が出る様に祈ってくださいな~」
「いや、俺じゃなくタイシンに着て貰いたいからな……半が来る事を祈るぞ!」
「いや、だから何するのさ?」
「では~、振らせて貰います! 丁か! 半か! 勝負!!」
「半来い、半!!」
「だから! アンタらは私に説明をしろ!!!」
Tips:丁半
丁半とは丁半賭博の事。
壺と呼ばれる茶碗状のザルにサイコロを二つ入れてから振り、壺を開けて出たサイコロの目の和が偶数か奇数かを当てる賭け事。
偶数が丁、奇数が半であり確率は丁度五分五分。
時代劇で出て来る事が多い賭け事である。
129二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:19:20
そして場面は冒頭へと至る。
「ではでは~、脱いでくださいな~」
「おう!」
「おう! じゃないっ!!」
そうやって、威勢の良い返事とツッコミを返した二人。
返事をしたのがタイトレさんな事から分かる通り、出た目は丁だったのだ。
この結果に嬉しい半分タイシンに悪い事をしたとの思い半分なタイトレさんと、本当は着てみたかったのか少し残念そうなタイシンさん。
しかし、結果は出てしまったのだから仕方無い。
その二人を尻目に、タイトレさんが着物を着る準備に取り掛からせて貰う。
「それじゃあ脱ぐぞー!」
「ええ~、着ていた物はそちらの机の上に置いていてくださいな~」
「どうせアンタは適当に脱ぎ捨てるでしょ。 ほら、畳んであげるから渡して」
「おお、やっぱりタイシンは素敵なお嫁さんになれるな!」
「はぁっ!?」
「ふふっ……」
そんな微笑ましい会話を繰り広げる中、タイトレは着ていたシャツへと手を掛ける。
そしてタイトレの性格に見合った様な豪快な勢いでシャツを脱ぎ、その反動で小柄な身長には見合わない大きな双丘がバルンと弾んだ。
「……っ!?」
「……っ!!」
その、視覚への暴力とでも形容すべき光景に思わず息を飲む。
いくら俺がグラスを偏愛しているとはいえ元は男だ、ここまでの視覚への破壊力は流石に理性にダメージが通ってしまう。
……それじゃあ、横のタイシンさんは?
そう思い横を見てみると……
「…………」
「……お、お労しや」
其処に居たのは何かを破壊された顔をしたタイシンさんだった……
130二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:19:39
それからタイトレさんは着ていたスーツを脱ぎ終わり、清潔感の有る白い下着姿となった。
……タイシンさんは再度何かが破壊されていたが。
「それでは袖を通して貰えますでしょうか~」
「おう」
何かが破壊された顔をしていたタイシンさんを放置して、着付けの話を進めるべく下着姿のタイトレさんに指示を出す。
そしてタイトレさんからの返事を聞きながら着物を持ち上げて左右の袖に腕を通して貰う。
そして今度は襟を左前にして着物の前を閉じ……
「…………あ~」
しかし、前を閉じようとしてある問題に直面してしまった。
着物を着せる前はタイトレさんとの身長差が15cm有る事から丈を短く調整しないといけないと思っていた。
大は小を兼ねると言う様に、短くする分には問題は無いと考えていたのだ。
だが、実際は全くの逆。
タイトレさんの方が13cmも大きい双丘のせいで布が取られてしまい、寧ろ丈が足りなくなってしまったのだ。
というか前を閉めるのからしてキツイ、恐ろしい程に体格の違いを感じますね……
とは言え着付けるなら前を閉めなければ話にならないので、帯で無理矢理締めてしまう方向で行きたいと思う。
という訳で、此処はタイシンさんに協力を仰いで帯を取って来て貰いましょうか。
「申し訳……」
だが此処で気付いてしまった。
この後は帯を締める訳なのだから、帯はタイシンさんではなく自分で持っているべきだ
つまりタイシンさんに頼むのは帯を持って来る事ではなく……
大変な事だがタイシンさんに頼むしかない。
131二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:20:02
「タイシンさん、申し訳ありませんが宜しいでしょうか~」
「何?」
「私が帯を締めるまでの間~、タイトレさんの着物を押さえていて貰えますでしょうか~」
「!?」
そう……タイシンさんには帯で着物を締め切るまでの間、タイトレさんの着物を前で押さえていて欲しいのだ。
つまり帯が締まるまでの間タイシンさんはタイトレさんの双丘を目の前で見続ける事に……
「っっっ!!」
「ありがとうございます! タイシンさん!」
この犠牲を無駄にはしない、早急に帯を締め切らなければ。
そう思いながら帯をタイトレさんの身体に巻き付けて軽く締める。
帯を巻いた事でより強調されたタイトレさんの胸を前に、タイシンさんの顏が大変な事になっている……
そして締め切るべく強めに帯を引き着物を締め付けたのだが……
「おおっ、胸が」
「ああっ、襟元が……」
……帯を強めに締めた事でお腹の方に布が引き寄せられてしまったのだろう。
タイトレさんが着る着物の襟元が大変緩んでしまい、タイトレさんの深い渓谷が露となり白いブラも少し見えてしまっている。
そしてタイトレさんの着物を前で押さえていたせいでその状態を間近で見てしまったタイシンさんは……
「……ミ゚」
「タイシンさん……」
何かが破壊されていた……
……取り合えずタイシンさんは置いておいてタイトレさんの着物の着付けを続ける事にした。
タイシンさんの犠牲のお陰で何とか着付けれそうなのだ、この尊い犠牲を無駄にしてはいけない。
132二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:20:18
それから、1人の尊い犠牲の下でタイトレさんの着付けは取り合えず終わりを迎える事が出来た。
……タイシンさんに止めを刺した緩んだ襟元は放置したが。
一応どうにかしようと試行錯誤はしたのだが、いまいち上手くいかなかったのだ。
「……勝手に亡き者にしないでよ」
「おや、タイシンさん気が付かれましたか~」
そうこうしている内に、何かが粉砕されて停止状態だったタイシンさんが再起動を果たしていた。
「おお! 見てくれタイシン! 似合ってるか!?」
「……知らない」
「はっはっはっ! そうかそうか!!」
復活したタイシンさんと、それに気が付いたタイトレさん。
着物を着たタイトレさんへのタイシンさんの反応は素っ気無いものだ。
しかし、どうやらタイトレさんはそれだけでタイシンさんの心の内が分かっている様。
……心が通じ合っているというのは良いものだ。
そんな事を思うくらいには仲良くしている二人に、どうしても笑みが零れてしまう。
「ふふっ、お二方は仲が宜しいみたいですね~」
「はぁ?」
「ああ! そうだぞ!!」
「……っ! うっさい!!」
仲が良いと言う言葉を素直に肯定するタイトレさんに、タイシンさんは照れ隠しだろう蹴りをお見舞いするのでした。
そして、蹴られた衝撃で盛大に弾んだタイトレさんの双丘にタイシンさんは何かが壊されていた……
……酷いカウンターを見た
うまぴょいうまぴょい
133二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:20:30
おまけ
「しかし、その襟はどうしましょうか~」
「ん~、俺は気にならないけどなぁ?」
「ちょっとは気にしてよ!」
「ん~……そうだ!」
「おやおや、何か思いつかれたのでしょうか~」
「グラトレさんに折角着付けて貰ってるのに悪いけど、さっきのアレやってみたかったんだ!!」
「アレ?」
「アレですか~?」
「ああ!」
そう威勢良く言い放ったタイトレさんは、着ていた着物の右肩に左手を置いて固定し。
右袖から右腕を引き抜いて着物を着崩した、要はさっきグラトレが丁半をする為にしたのと同じ事だ。
だが、グラトレとは決定的に違う要素が……
それはタイトレがしっかりと着物を着れなかった要因、つまりグラトレより13cmも大きい双丘だ。
これにより着物を着崩したタイトレの姿は大変な事になった。
着崩した右側の白い下着が着いた丘は、胴を締める帯の上に乗り存在をこれでもかと主張している。
そして、そんな状態で壺振りの真似事をするものだから大変揺れていた。
「……っ!?」
これには流石のグラトレにも貫通ダメージが入り……
「……ミ゚」
タイシンは再びシャットダウンした……
うまぴょいうまぴょい
≫140二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:58:55
誕生日。
それは自分にとっては「あ、来たんだ」という軽いもの。
しかしお祝いする人達にとっては、特別な答え合わせの日だ。
「……えーっと、それで、なんで俺に?」
「ダストレ君なら、交友関係も広いと思ってね!」
どの口が? という言葉をぐっと飲み込んで、俺ことダイワスカーレット担当トレーナーは、この通り! と下げられたアタマとデカチチに生唾を飲み込んだ。
140-90-55-80という魔法の数字はもうお馴染みのことだろう。ナリタタイシン担当トレーナーは、どういうわけか俺にナリタタイシンちゃんの誕生日プレゼント選びを手伝ってほしいと言ってきたのだ。
「ハヤトレさんとか、チケトレさんに頼んでもいいんじゃ……?」
「ふたりにも勿論聞くよ。
でも今年はせっかくだから、色々な人の意見を聞きたいんだ! ……頼めるか?」
その上目遣いに、うぐ、と俺は答えに詰まる。
スカーレットよりも遥かに低い身長に詰まった、スカーレットと同じバスト。
なんと恐ろしい破壊兵器だろう。思わずデッッッッッッッッッッとかエッッッッッッッッとか言葉が出そうになる。
「とりあえず、色んな人に聞ければいいんですよね?」
「ああ! 俺が考えつかないことを出せる人は、トレセンにはいっぱいいるだろうしな!」
「じゃ、色々案出せる人集めますか。聞かれてもアレだし、喫煙所行きましょ」
「ようし、行こう……どうした? 首を押さえて」
「いや、命が惜しくて……」
俺は首を押さえて、努めて前を向く。
今の俺はスカーレットのトレーナーであり、婚約者なのだ。
「他の人に色目? 使ってもいいわよ」と張り付いた微笑みで返された言葉を、額面通りに受け止めるほどアホではないのである。
142二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:59:17
「成程。それで私達か」
「お誕生日とはおめでたい! 上腕二頭筋が鳴りますね!」
「ひん……筋肉が鳴るってなにぃ……?」
とりあえず続々集まってもらうとして、すぐ集まってくれたのはオペトレさんにスイトレさん、そしてリャイトレさんだ。
フォーマル、ファンシー、マッスル。お三方それぞれのチョイスが光ることを期待して、俺は話を切り出した。
「それで、タイシンちゃんに贈るものってどう思います?」
「はい!!!」
「はいリャイトレさん早かった!」
「……これは自分は、プロテインや鳥の胸肉と答えることを期待されてますか……?」
「大丈夫だよ! マジメに答えていいよ!!」
「リャイトレ君。大衆の思い描くマッスルよりも、自分のマッスル性を信じてあげなさい」
「自分のマッスル性ってなにぃ???」
開幕からやや真剣な面持ちでアイデンティティ問題を持ち込まれ、苦笑交じりに俺達はリャイトレさんの回答を促す。
彼も彼なりに人から受けるイメージと戦っているようだ。時々筋肉の会話しかできない悲しきマッスルモンスター扱いされるが、実は繊細なメジロライアンちゃんを支え導けるトレーナーだということを、俺達は忘れるべきではないのかもしれない。
143二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 22:59:45
「まあタイシンもいつもアスリートとして食べてるからな! できれば他のが聞きたい!」
「イエス、マッスル! それなら、ステンレスボトルなんてどうでしょう!」
「ステンレスボトル? あのアウトドア用の水筒ぅ?」
「ええ! 思い出の品にするなら、日常に寄り添ったものを贈った方がいいと思います!」
とても爽やかに、トモを叩いて笑うリャイトレさん。
その言葉に、タイトレさんもうんうんと思わず頷き、リャイトレさんの言葉を更に促す。
リャイトレさんはそれに気をよくして、更にポージングを派手にして語った。
「積み重ねることが大事なのは、筋肉も思い出も同じ。
なら、熱いハートを届けるものは、いつだって手に届くところに託しましょう!」
「……その考え方、すごく好きだな!
ありがとう、日常に寄り添ったものを探してみるよ!」
それは日々の積み重ねを重んじるボディビルダーらしい哲学だった。
嬉しそうに、楽しそうにメモを取るタイトレさんと、熱く語ってくれたリャイトレさんを見て熱が入ったのか、年嵩の分だけ知識を積み重ねたオペトレさんが口を開く。
「個人的には時計を推したいところだがね。
ここはやはり、レースに持ち込めるものを推したい」
「レースに持ち込めるっていうと、装飾品ですか?」
「そうだね。私の覇王に贈ったものだと、やはり指輪が……」
「やめよっかぁそのグラビティチョイス」
貴方達の関係割と重いんだよわかって?というスイトレさんの言葉に、オペトレさんも笑顔で引き下がる。
タイトレさんやリャイトレさんも苦笑交じりに頷くが、赤らんだ頬が指輪を贈るというのがどういう意味に捉えられているかを如実に語っていた。
俺はそっと左手薬指を隠した。これは愛してるんだからしょうがないんだってば。
144二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:00:13
「であれば、ミサンガなんてどうだい」
「また懐かしいもの出したねぇオペトレぇ……」
「えっ」
「ああ! あれなら俺も作り方知ってますよ! 昔、学校でやりましたから!」
「……なら重畳。あれならレース規定にも引っかからないし、思いの丈も託せるだろう」
懐かしい……という言葉を反芻しながら、オペトレさんはミサンガを作れる材料がどこに売ってるか教えてくれた。
その気になればもっとスゴいものを手配できるだろうけど、懐事情とその人の背景を汲んで適切なプランを組み立てるのは如何にもオペトレさんらしい。熱心にメモを取るタイトレさんに補足と豆知識を語っている辺り、俺の上司は随分と彼を気に入ったようだ。
そうして、ふたりが語ったのなら自分の番だと追い立てられたのだろう、スイトレさんがおずおずと喋り始めた。
「やっぱり、相手の好みに合わせた方がいいと思うんだぁ。
タイシンちゃんの好みって、どんなのかわかるぅ?」
「タイシンの好みかぁ……やっぱり、スマホのゲームとかかな?」
「じゃぁ、そのゲームに出てくるアイテムに似せるとかかなぁ。凝ったのだと針仕事になるけどぉ……」
こんなのとか、とスイトレさんが上げた手には、あみぐるみのチューリップが花を開いていた。
どうやら会話する中で作っていたようだ。
タイトレさんとリャイトレさんがおーっと声を上げるのにつられて驚きそうになり、俺は咥えたタバコを取り落とさないよう携帯灰皿にしまった。
145二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:00:52
「こういうの、すぐに作れるものなんですか!?」
「練習次第だねぇ。でも、たのしいよぉ?」
「脂肪の下にこんな繊細な筋肉が……全身を触って確かめても!?」
「やめてねぇ???」
それぞれ違った驚き方をしながらも、スイトレさんの意外な特技に興味津々になる。
スイトレさんが手編みの材料を持ってきていたので、相談会は一気にあみぐるみ教室になった。
プレゼントもこれで決まりかな?と思っていたところに、俺達に向けてクラクションが鳴り響く。
「イクトレさん」
『🙌』
ちいさなちいさな蹄鉄師、イクノディクタス担当トレーナーさんが、お気に入りの乗用ラジコンカーで喫煙所にやってきていた。
何をしているのかと問われたので、ここまでの経緯を簡単に説明すると、彼は得心がいったように頷いて、彼なりの答えを書き出した。
『彼女の目的に貢献できるもの、というのはどうだろう』
「タイシンの目的に、ですか?」
『◯』
つまり、走りに貢献できるものがいいのではないか、という如何にも実務重視のイクトレさんらしい言葉だった。
イクトレさんはタブレットからいくつかのカタログを取り寄せて、タイトレさん達に見せる。
……みんな一気に仕事の顔だ。この辺りみんな一流というか、なんというか。
呆れながらも、俺やスイトレさんも聞き逃さないよう耳を傾けた。
146二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:01:21
『お勧めはこのVRシミュレーター。目玉はレースエディット、逃げから追込まで想定状況を細かく作れる』
「VRというと、ウマレーターのように数畳で動き回れるってことか。耐久性はどうです?」
『勿論ウマ娘が基準値だ。買ってくれるならウマレーターなんて目じゃないチューンもやるよ』
「バ場状況によって脚部への運動負荷が異なると思いますが、その辺りはどうです?」
『鱗状のコンベアが細かく溝を作って対応する。だから値段がけっこう張る』
「個人向けの価格とはいえないな。これはうちの会社でいくつか取り寄せて、専用の部屋を設けられるようトレセン学園に掛け合うのもアリかもね」
「誕生日プレゼント選んでるんだよねぇ???」
スイトレさんのツッコミでようやく正気に戻った彼らは、咳払いを交えて仕事から離れた。
トレセン学園の住人は真面目な奴らが多いから、こうして適度に不真面目な奴らで軌道修正する必要があるのだ。逆だろ普通。
イクトレさんはタブレットを片付けながら、個人的な贈り物ならと続ける。
『走りを支えるものが、親しい人に贈られたものというのは、性能以上の効果を発揮すると思う』
「えっ、そういうもんですか?」
『◯』
技術者らしからぬ言葉に、思わずタイトレさんも俺達も驚く。
唯一オペトレさんが面白そうな顔をしているのを見て、イクトレさんはバツの悪そうな顔で追記した。
『ウマ娘は人の想いを、絆を乗せて走るんだ。技術はそれを支えるに過ぎない』
「絆か……イクトレさん、俺に蹄鉄の打ち方、教えてもらってもいいですか?」
『人生のかかったものだ、甘くはしない。それでいいなら』
「もちろん!」
その力強い頷きに、イクトレさんは幼児らしからぬ微笑みで頷き返した。
誰よりもちいさなイクトレさんは、その実だれよりも大人らしく振る舞っている気がする。
147二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:01:46
「ホッホッホッ……なにやら楽しそうな話じゃの」
「こんにちは、みなさんっ」
そんな俺らの背に声をかけたのは、大先生とその弟子……ダイタクヘリオス担当チーフトレーナー・サブトレーナーのふたりだ。
おじいちゃんのようなおねえさん、その実は88の大先生に、みんなが頭を下げる。その中で「あっ、ヘリトレ先生!」と嬉しそうに声を上げるタイトレさんは、けっこうな大物かもしれない。
「そういえば、タイシン嬢の誕生日じゃったか。ヘリサブは何か案はあるかの?」
「はいっ。やはり誕生日ですから、ケーキのチョイスはかかせないかとっ」
「「「「おおー、女子っぽい」」」」
「も、元男です……っ」
忘れがちかもしれませんが……っと声を上げるヘリサブだが、仕草とか恥じらい方が男好きのする女の子でしかないのが悪いと思う。というか主張しないからみんな元々女の子だと思ってて、ネイトレさんが同期での飲み会でめちゃくちゃに驚いてたのを俺は忘れてないからな。
とはいえ、確かに誕生日といったらケーキというのは頷ける。しきりに頷くタイトレさんに、ヘリサブは付箋まみれの雑誌を取り出す。
……スイーツ特集だった。
「ヘリサブ、お前……」
「ちっ、違いますよっ!? これはヘリオスといっしょに回る為のもので……っ!」
「要するにデートプラン用じゃの」
「努力系トレぴっぴがよォ……」
「ダストレさんっ!? 当たりが強いのですがぁっ!?」
貴方の薬指はどうなんですかぁっ!とか言われたら言い逃れができないので、いじりはここで引き上げておく。
ヘリサブはこうしていじっておくとわたわたおろおろしてカワイイのだ。大先生の背に隠れがちだが、ネイトレさんに並ぶか更に劣る23歳組よわよわ勢である。
148二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:02:03
「せ、先生はどう思われますか……っ?」
「儂か。特に指南は必要ないと思うがのう」
にこにこと微笑ましげに年長組が見つめる中、助け舟を求めるようにヘリサブは自分の師匠に話を振った。
ヘリトレ大先生はくすくすと笑いながら、椅子に腰掛けてタイトレさんに向き合った。
「必要なのは、タイトレ殿。おぬしが選んだかどうか、ではないかのう」
「……俺が選んだかどうか、ですか」
「そうじゃよ。贈り物は品の価値がすべてではない。贈り主が悩んだ時間で定まる。
……うちの婆さんは、一日悩むだけでは足りてくれなかったがのう」
だからどう悩んだか、どうして選んだか話してあげなさい。
そう語るヘリトレ大先生の微笑みは、確かに88年の歴史を感じさせるものだった。
「……わかりました! タイシンと、いっぱい話すことにします!」
「ホッホッホッ。それは1番の贈り物じゃのう」
溌剌としたタイトレさんの笑みを穏やかに受け止め、ヘリトレ大先生はそれを肯定した。
いじられたりいじってばかりだけど、こういう時は本当にウラトレ先生のお師匠さんというか、頼りになる人だと思う。
149二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:03:17
「いや、助かったよ! お蔭で今年もタイシンに喜んでもらえそうだ!」
「俺は人集めただけですよ。タイトレさんのご相談って言ったら一発でしたし」
「そうなのか? それは嬉しいな!」
あれから続々とやってきたトレーナー達から話を聞いて、タイトレさんもどんな贈り物にするか決まったようだ。
帰り道で礼を言われたので謙遜混じりにタイトレさんの人望を褒め称えると、素直に笑い返されて答えに詰まった。うちのサブトレさんなら蕁麻疹でのたうち回ってそうな真っ直ぐさだ。
「……本当に、嬉しい、いやありがたいな。そんなに慕ってもらえてるなんて」
「そんなにですか?」
「そんなにだよ! 俺がどう思われてるかなんて、俺にはわからないからな」
どう考えても人気者だと思うけど。という言葉をぐっと飲み込んで、そっと耳を傾けてみる。
身体が変わったことで悩むトレーナー達を数多く見てきたこと、彼らに寄り添ってやれたか不安に感じることもあること。もっとコミュニケーションを取りたいが、みんな敬遠していないかと悩むこと……。
思った以上に彼らしからぬ、けれど真っ当な人間関係の悩みだった。
「正直、もっと考えなしに突っ込む人かと思ってました」
「ひどいな! でもタイシンとはそんな感じに見えるか?」
「ソッスネ……」
あのねとめの区別がつかない顔を見せられたら、誰しもそう思うんじゃないだろうか。
俺は悪くない……と思いたいが、リャイトレさんの件といい、偏見というのは自分で選ばない贈り物と同じなのかもしれない。善意も悪意もなく、差し向けられた相手を傷つけるかもしれない、ということだ。
内心で反省しておく。
150二次元好きの匿名さん22/06/10(金) 23:04:26
「もちろん、本当は苦しいとかは言わないよ。
……ただ、元気でいようとは思ってる」
「空元気ですか?」
「いや、心から元気でいようと思ってる! だってその方が、みんな心配しないだろう?」
「あー……そっか。なるほど」
それはタイトレさんなりの、ウマ娘化問題への向き合い方なのかもしれない。
テイトレやタイトレさんの頃はウマ娘化もよくあることじゃなかったから、きっと不安も俺達以上のものだっただろう。
そんな中でタイシンちゃんという気難しい子の相手をするなら、自身の心の元気を損なわないよう気を遣うというのは――テイトレの苦難を思えば、正しい選択だと思う。
「じゃ、俺なりに考えた、最高の贈り物なんですけど」
「お? ダストレ君も聞かせてくれるのか!」
「ええ。……これからも元気でいること、ってどうですか」
これからも変わらない、元気なタイトレさんでいること。
それはタイシンちゃんにも、みんなにも最高の贈り物の筈だ。少なくとも、俺はスカーレットのそれで救われているから、そう思っている。
タイトレさんは狐につままれたような顔をした後、心底愉快そうに破顔した。
「それじゃ、毎日贈り物することになっちゃうな!」
「一年間のサービスにしましょうよ」
「そりゃいい! サービス券を作っておこうか!」
……後日、しきりにタイトレさんを蹴っては、だゆんぽゆんと弾む90cmにねとめの区別がつかなくなるタイシンちゃんが目撃されたそうだが。
俺は悪くない。これからもタイトレさんと仲良くね、タイシンちゃん。
うまぴょいうまぴょい
≫155二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 00:38:08
色々なプレゼントをくれた後おもむろにトレーナーは封筒を取り出した。プレゼントのどれもアイツがうんうん悩みながら、でも最後は選べなくて全部用意したのがわかる心の篭ったプレゼントだった。それで最後に出された封筒はなんなんだろ。
「ビワハヤヒデちゃんに聞いたんだ。タイシンが一番喜ぶモノを」
アタシが一番喜ぶモノ……?それで紙……?ま、まさか
「待った。流石にまだ学生の身分だし」
「大丈夫だタイシン。学生かどうかは大事なことじゃないんだ。受け取ってほしい」
「……この………バカ」
自分の顔が赤くなっているのを感じつつボールペンを用意して封筒から紙を取り出し自分の名前を書こうとそれを開いた。アイツの健康診断の結果だった。全部A判定(健康)だ。成る程ハヤヒデならたしかにトレーナーの健康がアタシにとって一番嬉しいとか言うだろうそう言われればコイツは健康診断を受けてきて嬉々として結果を渡してくるだろう。
「結果は健康そのもの!これからもトレーナーを頑張れるぞタイシン!」
「うんそれはとてもウレシイ、ちょっと席外してもいい?お花摘みってヤツ」
「大丈夫だいってらっしゃいタイシン!」
アタシはとりあえず部屋から出て近くの壁に頭を叩きつけまくった。
≫164二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 07:57:28
いつも通りの、いつもの屋上。
といっても、たまに先客ばかりだけど。
そんな場所に、普段見ない人がいたら気になるのは当然だったりする。
「……なんでここに?」
「あっ、タイシンちゃん。まあ、色々あって……」
あのルドルフ会長のトレーナー。不思議な雰囲気の人だ。
何処かで誰かが「実はウマ娘の彼と、人間の彼は別人で、人間の方は何処か別のところにいる」という噂もあるくらいに不思議な人だ。
──が、それは会ったことないウマ娘の間だけだし、あの人でそうなら、立て続けに何人も消えてその代わりのウマ娘が来ていることになる事実に、何故疑問を抱かないのか?
っと、話がそれた。
兎に角、アタシはあの人がそこまで嫌いじゃない。
……誰からも好かれる魅力、というもの自体が才能であり弱みなのだろうけど。
「色々?」
「そうなの。まあ、疲れちゃったり、本当にやろうかなぁって、思ってたり」
「ふーん……まあ、何様だけど。いたら?ここ」
「……うん。いるね?」
そう言うあの人は、やっぱり尻尾が揺れている。
男の頃からそんな気はしたけど、やっぱり感情が表に出やすい人らしい。
……あれであのバカより年上なのだから、世の中はわからない。
「……ところでさ。サプライズって……どんなのが好き?」
「えっ?」
「ああいや。派手なサプライズ、大丈夫かなって」
「んー……正直、そんな好きじゃないけども」
「そっか。ありがと!」
165二次元好きの匿名さん22/06/11(土) 07:59:00
突然話しかけてきて、突然この反応。そして去っていく。
なんというかチケットと近いのかもしれないけど、なんだかんだチケットはうるさいだけじゃないんだなとも思う。
────数日後、タイシンの誕生パーティー会場の外。
既に正座させられた三人のトレーナーを説教するウラトレ先生と、その後ろで花火を撤去するイクトレがそこにあった。
「さて、シンボリルドルフ担当トレーナー、ゴールドシップ担当トレーナー、マチカネタンホイザ担当トレーナー」
「はい……」
「何故、このような場所で二寸玉……花火を打ち上げようとしたのですか?」
「😡」
「それは……魔ルド君が『タイシンちゃんそんな派手なの好きじゃなさそう』って言うから急遽ゴルトレ君特製五尺五寸玉を封印したのであり。本来は五尺五寸玉を打ち上げる予定でした」
「そうそう!後、お祝いのため!」
「……ああ。ちっと五尺五寸玉が無駄になっちまったのは手痛いが……ま、派手に祝おうってこったな」
『待て、五尺五寸玉とは何だ』
「……確かに、祝いのための花火というものは理屈はわかります。が、五尺五寸玉という危険物を産み出したこと。きっちり叱らせて貰いましょう」
「待ってください、せめて二寸玉だけは……」
「ダメです」
こうして、五尺五寸玉という危険物は世に出ることなく消されたのであった。
ついでに、三人からの贈り物は当日に他のトレーナー経由でちゃんとタイシンに渡されたそうな。