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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part326【TSトレ】
≫28二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 15:43:44
「…………なあボノトレ、カレトレ。ふと思ったんだけどさ、担当の娘とそれぞれ交流会とかしてみない?」
「何マヤトレ、年齢はともかくアケボノもカレンちゃんもロリじゃないよ……というかそういう目で見たら流石に(カワイイ的規制)する」
「あはは……、ボノトレお兄ちゃんはともかく、実際なんでいきなり交流会とか言い出したの?」
「いや普段こうして絡んでるし、担当の娘も仲がいいけどさ。そういえばお互いの担当とはあんまり話したことが無いなって思って」
「え?」
「え? 何、二人ともマヤノと普通に話してたりするの?」
「うん。マヤノちゃんとはたまに女子会してるし、カレンちゃんには女装始めたての頃に化粧とか色々教えてもらってたし」
「私もマヤノお姉ちゃんとかアケボノお姉ちゃんと女子会で色々情報交換したりするよ? と言ってもお姉ちゃんの付き添いというかお姉ちゃんが付き添いって感じだけど……うん……」
「まじか……元男と現男が女子会云々は置いといても割と交流してるんだな……」
「まあ流石にマヤトレが中等部のお泊り会なりお出かけなりパジャマパーティなりに参加してたら、マヤノちゃんのパパさん以前にまず学園側から処分下りそうな気もするし。そこは仕方ないんじゃない?」
「最近なんか全体的に学園の風紀が緩んでるとは思うけど、流石にマヤトレお兄ちゃんはね……」
「それはそう。とはいえちょっと仲間外れになったみたいで寂しい気もしないでも……いや別にそうでもねぇな……。あと俺はもう突っ込まないからな?」
「でも交流会はいい案かもね。ボクらも基本担当の娘と一緒に、ってのはあったし。たまには離れて色々聞いてみるのもトレーニングにも活かせる……かも?」
「確かに……最近お姉ちゃんもなぜか私にべったりというかくっついてきてるしなぁ……。親交を深めるって意味でもそういう機会はあってもいいかもね」
この後無事交流会は開かれ、マヤトレのロリコン疑惑は加速し、ボノトレは恋愛脳二人による掘り下げで恥死し、カレトレはコミュ障爆発してカレンチャンに泣きつきましたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫44フクトレとスズカの交流 1/221/10/27(水) 16:17:48
「フクトレさん、こんにちは」
「おう、スズカか。ん、今日このスペースは俺たちの割り当てで申請したはずだが……まさか」
「はい……、フクキタルから併走占いに誘われて……」
「せめて事前に言えっての……いや、どうせ今日の占いがどうとかいうことなんだろうな」
「大丈夫ですよ。いつもフクキタルと走った後はいい刺激が得られますから。それにこういう時に物怖じせずに強引に相手を誘えるのも、フクキタルの強さだと思います」
「そう言ってもらえるとありがたい。俺はいいけど巻き込まれる方の心配がいつも先に立つもんでな」
「……ところで、トレーナーを目指すって話は」
「はい。今その為の勉強をしているところです。もちろん練習もこなしていますよ。次走は一緒のレースでしたね。絶対に先頭は譲りませんから」
「うい。今回の併走もある意味では渡りに舟だったからな。しかしそうか。ま、トレーナーライセンス、それも中央のものを取るとなると並大抵の苦労じゃないが……お前なら大丈夫か」
「はい。トレーナーさんの走りは。私の、新しい夢ですから」
「そうか。……」
45フクトレとスズカの交流 2/221/10/27(水) 16:18:12
「……フクキタルは」
「──っ」
「フクキタルは、私によくフクトレさんのお話をしてくれるんです。この前はこんな場所に行った。トレーナーさんの為にこんなものを買った。こんなことをしてトレーナーさんにアイアンクローされた。全部、とっても楽しそうに」
「…」
「私とトレーナーさんは、変わった末にそれこそ共に走る道を選びました。あの人が私を夢見てくれて、私もあの人の夢を見る。きっとフクキタルは、依然変わらずに共に生きようとしています。フクキタルがフクトレさんの幸せを願って」
「……俺も、あいつの幸せを願って、か」
「ふふ、先に言われてしまいましたね」
「そのまま逃げ切られそうだったんでな。自分で言った方がマシだ。……ったく」
「……フクキタルは、フクトレさんを見ていますよ。私のトレーナーさんへのそれとは違う風に、でも同じくらい大切に。なんて、ちょっと差し出がましかったですかね?」
「……結局逃げて差されたしな。あーあ。大の大人が学生にまんま図星の人生相談とか。フクに聞いたら笑われるわな」
「多分、フクキタルは言ってほしいんじゃないですか?私がトレーナーさんにいつかトレーナーとして頼ってほしいように。一緒に生きていく“運命の人”として」
「……改めて他人に直で言われると恥ずかしいな」
「私も他人事なのに口に出すのに結構勢いが要りましたよ。それぐらいのことなんです。それに……」
「それに?」
「“笑う門に福が来る”んですから。ちょっとぐらい笑われた方がいいんじゃないですか?」
「……」
「……手首を握って手を抑え込んで。噂のアイアンクローが拝めるんですかね」
「……生憎人様の担当には畏れ多くて出来ないんでな……」
「ふふ、じゃああの子の特権ってことですね。あとで言ってあげなくちゃ。ちょうど来たみたいだし」
「……今からの併走、覚悟しとけよ」
「丁度いい次走への調整、ありがとうございます」
≫51二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 16:36:01
気になる人がいるらしいので即興だが
キタトレとテイオーの一幕
「はちみーはちみー…ってあ、キタトレ!」
「あら、テイオーちゃん久しぶりね。最近はどうかしら?」
「にしし、もちろん色々あったのさ!」
「ふふ、それは気になるわね。…折角だから、はちみー買いに行きがてら聞いてもいい?」
「…奢ってくれるの、キタトレ?」
「勿論よ、なら早速行きましょうか。」
「やったぁ!ならトレーナーに連絡してくるね!」
「そうね、じゃあ私はここで待ってるわ。」
…書いてみたけどキタトレがただのいいお姉さんになった。
テイトレ相手ではスパダリだけど、こういう笑って受け止める人がいたらアプリレベルの対応してそう。
≫57二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 17:06:30
サトトレとマックイーン
「…マックイーンちゃん、僕はお菓子持ってこなくてよかったの?」
「ええ、構いませんわジャッジさん。その…」
「それ以上言わなくていいからね、マックイーンちゃん。」
「…心遣い感謝いたしますわ。それよりも、貴方はむしろ小さすぎないかと思うのですが」
「走っても食べても大きくはならなかったから諦めたよ。」
「その体で4000mをよく走ってることを考えると凄いですわね…」
「僕は根性と体力だけはあるからね。」
「あの追い込みを見せる人の発言とは思えませんわ…」
「う〜ん、そんなものだよ。…さて、冷めない内に飲もっか。」
「そうですわね、そうするとしましょう。」
こちらも即興駄文失礼しました。
お茶会で情報交換とか色々してそうな二人です。
サトトレはそこらへんのマナーも(ダイヤに仕込まれたので)バッチリです。
≫83二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 18:01:46
だれかが思った。ウマ娘化しなくてもかわいい男トレがいてもいいじゃないか
そうしてボノトレはここにいる
まただれかが思った。ウマ娘化しないイケメントレがいてもいいじゃないか
そうしてマヤトレはここにいる
まただれかが思った。ウマ娘化しない女トレがいてもいいじゃないか
そうしてウラトレはここにいる
まただれかが思った。ウマ娘化する女トレがいてもいいじゃないか
そうしてネイトレはここにいる
全てを受け入れられないだろう。全てを愛せないだろう
それでも自由がここにある
≫150二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 18:51:23
『ねいちゃさんとぶらとれさん』
「あっ、ブラトレさん。おーいブラトレさーん」
「げぇっネイチャ」
「ちょっとちょっとー?今を時めくウマ娘のネイチャさんをみて「げえっ」はないでしょ「げえっ」は」
「ジャーンジャーンジャーンおっとゴルトレが俺を呼んでるぜ!ブラトレは逃げ出した!」
「あっマジで待って!速い!速いってぇ!」
「け、結局逃げ回られて見失っちゃった……屋上に追い詰めたと思ったんだけどなあ……あれ?なんでアタシ追い詰めてたんだっけ?」
「なんか言いたいことがあるんじゃないの」
「そうそう、ブラトレさんに言いたいことがー……ってうぇぇえ!?いつの間に!?」
「いや、屋上につながるドアを開けた後上がってくるネイチャの死角に入り込んでたから」
「あー、だからいないと勘違いしちゃったんだ……」
「で、結局何なんだね。俺追われるようなことしてないと思うけど」
「あー、その……温泉旅行の件!」
「ごぶっ」
「ウワーッブラトレさん!?死なないでぇ!?」
「俺はおせっかい焼のブラトレ……おせっかい焼いた結果同僚が婚約してしまったブラトレ……」
「あ、アハハ……」
「何わらっとんじゃい!あまりにも唐突かつ迂闊な行動をした結果愛を誓いあってるのがトレセン中にばれた恋愛つよつよレジェンドラブラブウマ娘!」
「ぐふっ……、ぶ、ブラトレさん。停戦協定と行きましょうじゃないの」
「そうだな、これ以上はお互い死ぬしかなくなる……それは互いの担当やトレーナーに申し訳ない」
「……でも、本当に感謝してるんですよ?あたしみたいに何かの機会を伺ってからじゃないと攻められない人にとって、周りの人の気遣いってすごいありがたいんです」
「まあ、俺としても本当に心配のつもりだったしな。結果的にネイトレさんの両親と仲良くやれてそうでよかったよ」
「あ、そういえばトレーナーさんが写真送ったって言ってたね」
「婚約のうわさがぶわーって広がったときやっちゃった……って思ったのと、こじれなくて良かった……っていうのの半々だったからなあ」
「正直紙一重だった気がしますけどね……!」
151二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 18:51:32
「ま、とりあえずは……二人が後悔のない選択をできてよかったと思うよ」
「ブラトレさん……」
「実をいうとなかなかウマになるまでおおっぴらに交流する機会ってなかったんだよね。互いに忙しかったってのもあるし、ライバルっていうわけでもあったから」
「そうですねぇ」
「あと、ウマになる前にちょろっと話したときネイチャに威嚇された気がした」
「ぅえ!?……いやーネイチャさんそんなつもりなかったはずだけど……」
「まあそれだけ大切に思ってたってことだろうよ。幸せにしてあげなさいよー、あの子も大概面倒……あ、もう知ってるか」
「だね。ネイチャさんとトレーナーさんとの秘密!ま、それはそれとしてホント感謝してますぜぇブラトレさぁん」
「三下オーラ酷いぞネイチャ。あれだけ活躍しまくったやつが三下オーラとか出されたら俺がやばいやつみたいじゃん」
「……やばいほうではあるのでは?もうすでに結構な強さのチーム率いてるし」
「……否定したかったなー」
「ところで、すんごい美人さんになった後ってなんで即交流開始したんです?」
「めっちゃしんどそうだったから」
「ああ……」
「いやね、ウマになった後ってそのすぐの辺りで生徒会のトレーナーたちと軽い面談みたいなのがあるのは知ってるな?」
「あーありましたねぇ」
「同年齢、同期ってことで俺が割り当てられたんだけどそれはそれは精神的疲弊がすごそうだったから……」
「失踪しかけてましたしね……あ、これ内緒ですよ。トレーナーさん泣いちゃうから」
「ネイチャがなんとかできたからこうやって平和に思い出話にできてるわけだしなあ」
「……まあそんな色々あったし、もしよければブライアンさんも含めてカラオケをお誘いしようかなーって思ってるんで」
「ふむ、スケジュールだけ伝えてくれれば調整するぞ」
「んじゃ、そんな感じで。本当にありがとうございました、ブラトレさん」
「むしろここから大変なんだろうから、ネイチャこそ頑張れよー」
≫167二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 19:28:15
セイサトトレ入れ替わり
ーーーとある病院の病室にて
横たわるサトトレの元にセイトレがいた。
…二人は入れ替わっていたが。
「…ごめんセイトレ」
「俺は余り気にしてないから大丈夫。」
「でも、その体は…」
サトトレは元々自分のである痛々しい体をみる。
「俺は元々走れないから、動けなくなったくらいなら大丈夫だよ。」
「それにこれはサトトレの責任じゃないはずだ。」
「…そうだね。」
とりあえずサトトレが落ち着いたのを見計らってセイトレが呟く。
「しかし動けないのも暇だなぁ…」
「僕は起きたら知らない天井だったからびっくりしたよ。」
「ははは…それは俺もだよ。」
「担当には伝えてあるでしょ?」
「ああ、既に何例か起きてるから説明が楽だったよ。スカイも分かってくれたみたいだし」
「そうだね…けど、セイトレはよくこんな厚底で動けるよね。僕もきついんだけど?」
「それは慣れだよ。それよりも、フリフリしてのを着ているサトトレも俺からしたら良く分からないよ。」
「あはは…もう慣れっこかな、ちょっと恥ずかしいけど。」
168二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 19:28:50
「ねえ、セイトレ。…本当は苦しいんでしょ。」「そんな訳ないだろ…」
「…嘘つき。」
ーーー例え不器用な僕でも分かる。その声色が、その目が、その体が何よりも嘘であることを表していた。
(僕の体だから、いつもよりはっきり分かる。)
サトトレはキタトレがしてくれたことを思い出しながらそっと彼女に触る。
「今なら誰もいないし、僕の体はどうしてもいいから。…だから」
「…」
「苦しいなら全部吐き出してほしいよ…」
サトトレは縋るように体に手を伸ばす。
それを動く右手で掴んだセイトレは…
…ポロポロと涙を溢した。
それが心が痛むのか、体が痛むからなのかは分からないけど。
静かな部屋でシーツが濡れていく、嗚咽する小さな声だけが響いた。
駄文失礼しました
入れ替わりですがキタトレと違い暗いです。
ボロボロの二人が選ばれた時点でこうなるしかないんや…
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part327【TSトレ】
≫48二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 19:53:31
フクトレ『今日やるゲームはぁ……レフト◯デッドぉ〜俺も天の声しつつやるぞ四人プレイだからな』
スズトレ「何か普通のゾンビと違う音がしてるから気をつけて」
マルトレ「いや意外と怖く無いな、やっぱどんぱちやって味方が頼もしいとっぎゃあ゛あ゛あ゛!? なんか飛んできた!?」
ロブトレ「任せてください今助けますよマルトレさん!」
マルトレ「よ、よしなんとかゴールできそうだな」
スズトレ「マルトレの声で耳が……」
マルトレ「ごめんて」
ロブトレ「きゃっ!?」
フクトレ「まずいチャージャーに吹っ飛ばされたぞ」
ロブトレ「みなさん私は気にせずゴールしてください! ゾンビいっぱいきてます!」
マルトレ「やだ! せっかくなら全員でゴールだろ!」
スズトレ「そうよ! 雑魚払いは私に任せて!」
フクトレ『殿は任せろ』
ロブトレ「皆さん……!」
≫58侘助さん転々一泊概念・アフター21/10/27(水) 19:56:21
前スレ32より
「うっ……ひぐっ……う、うぅっ……!」
「あの……侘助さん、じゃなくてえーと、ドーベルのトレーナーとは本当に何もなかったから。お風呂や寝床だって別々にしてたから。ね?」
「うそ……!兄さんと一緒にお風呂に入って、一緒の布団で寝たんだ……!」
「するわけないでしょ!」
「だって!私ならそうする!」
「そりゃそうでしょうね!……え?侘助さんともうそんな関係なの?」
「……ネイトレさんはそんなことしないって信じてたのに!!」
「わあ!鋭い眼光!」
「……ねえドーベル。自分が言うのもなんだけど、少し落ち着いて?一緒に深呼吸しよ?」
「がんばったのに……」
「……なにを?」
「私、頑張ったのに!でも全然貴女に届いてなかった!!」
「えええ!!??……って、ええっと??」
「……ネイチャのは、兄さんに届いてたっていうのにぃ……」
「えーっとぉー……あ。
うーーーーん……!」
「……ネイチャにも言ってドーベルのための時間、取ってみるよ」
「…………本当に?」
「うん。最近のネイチャの八方にらみ、なんていうか金を超えた虹色感あるから。きっともっとドーベルの力になれると思う」
「あ、ありがとうネイトレさん……その、さっきはごめんなさい」
「ううん、やっぱり紛らわしい真似だったよね。ごめんね本当にね」
(……ドーベルが強くなったら、そのにらみつけ一番食らうの私なんだろうな……)
(終)
≫92二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 20:07:51
愛してるゲーム グルトレ
愛してるゲームとは、『愛してる』を様々な言い方をしても構わないので交互に伝えるもの。言われて照れたり、笑ってしまうと負けになるという実にシンプルなゲーム。
「愛してるゲームしよ?」
「何だ、藪から棒に」
グルーヴのトレーニングが終わり、トレーナー室でふたりの時間を過ごしていた私は隣りに座る彼女に脈絡もなく、愛してるゲームの提案をした。身を彼女へと乗り出し、やってみたかったのと念押しする。彼女は少し考えた様子をしたあと、頷いた。じゃんけんでどちらから言い始めるのかを決め、グルーヴが先攻となった。私は乗り出した姿勢を戻し、彼女と向き合う。
「愛してる」
「愛してるよ~」
最初はシンプルに言い合うものとなった。彼女のターンになる。彼女は私の手に指を絡める。とくん、と胸が高鳴る。
「あ~ずるい」
「そうしてはいけないルールはないはずだが?愛している」
「グルーヴがそうするなら……!」
絡めた彼女の手が離れたタイミングで私は手で彼女を頬に触れ、愛してるよと言い反対の頬にキスをした。そうすると、彼女は私をソファーの上に押し倒し、編み込まれた髪を撫でながら愛してると言った。私はひと呼吸し、彼女を抱き締め、顔を胸に埋ませた。彼女の耳が唇に触れたタイミングでグルーヴ、愛してるよと囁いた。腕を緩め、彼女の表情を確認するがポーカーフェイスを保っていた。
「むぅ…自信あったのに」
「そういうゲームだからな」
彼女は私の顎に手を添え、少し上に上げると唇を重ねる。長い口づけに耐えられず、口を開くとそのまま絡み合うようなものへと変わる。彼女を求めて腕を自然と彼女の首へと回す。もっとしたい、もっと。愛してるゲームのことを忘れてしまいそうになるくらいに彼女に溶かされそうになる。
93二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 20:08:01
彼女の唇が、溶かされる寸前で離れる。つーっ、と銀の糸を紡ぎ離れた唇はその糸を切りながら、私に愛していると言った。溶かされる寸前の回りきらない頭はポーカーフェイスを保つことをやめてしまい、顔に熱が集まってしまう。
「私の勝ちのようだな」
「だって……いつもより激しかったし」
「貴様がそうさせたんだぞ」
「悔しい、いつもは私がグルーヴのこと真っ赤にさせてるのに」
「うるさいっ…」
「私のこと求めてぎゅってしてくれるのに」
「それ以上言うな、このたわけが!」
ようやく彼女の顔を赤くさせられた。これの方が効くのなんだか悔しいなぁと思いながら、彼女を抱き締める。もっと重ねたい気持ちを抑えたい、落ち着かせたい。
「…もうあんなキス、家以外でしないでよ~」
「わかってる」
「家でなら続きもできるから、ね?」
時間ぎりぎりまでゲームにとらわれず、キスまでの行為で愛を伝え合う。限られた時間の中だけで得られる幸福感に浸っていた。
≫110二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 20:15:19
相談されるグラトレ(独占力)
「……トレーナーさんと、もっと仲良くなりたい……と?」
「はい! グラスちゃんとグラトレさんみたいに私もなりたいんです!」
「なるほど……なるほど……ですが、既にお二方は充分仲睦まじいと思いますよ?」
「そうですか? えへへ……って、いえ! その、私達とグラスちゃん達とはなんて言いますか……空気が違う気がするんです!」
「あっ……うん…………それは、その……やはり人によって違う、という事でしょう……ええ」
「そうなんですか? テイオーさん達と会長さん達みたいな違いの様な気がしたんですが……」
「……それでスペトレさんとの仲を深めたいとの話でしたね?」
「あっ、はい! どうしたら良いんでしょうか!?」
「ヨシ、そうですね〜……既に充分では無いでしょうか?」
「なるほど、充分! ……えっ!?」
「こうやって相談する程スペシャルウィークさんも好いているみたいですし、スペトレさんも独占欲を出すくらい好いているみたいですからね〜」
「独占欲ですか? トレーナーさんが?」
「グラスから聞きましたよ〜、スペシャルウィークさんが、トレーナーさんからパーカーを貰って着ていたって」
「はい……今思い出しても頭がホワホワしちゃいます……」
「きっとスペトレさんは、スペシャルウィークさんに匂いを付けたかったのでしょう」
「匂いですか? 私を幸せにしたかったんでしょうか? なりました!!」
「いえ、匂い付け……言わば周囲への牽制ですね、私のモノだぞという事を周りに伝えているのです」
「……!! そ、そうだったんですね……トレーナーさん……えへへへへ」
「ええ、ええ、スペシャルウィークさんは愛されていますね」
111二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 20:15:59
「はい! ……ですがパーカーのトレーナーさんの匂いは掠れてしまってます……」
「なるほど、でしたら寝袋はどうでしょうか?」
「寝袋ですか?」
「ええ、つい先日グラスが私の愛用している寝袋で眠りたいと借りて行ったのです……パーカーの話を聞いて羨ましくなったのかもしれませんね」
「……寝袋で眠る? …………もしかして……トレーナーさんの匂いに……包まれちゃう!? はい!! 私もしてみたいです!!」
「それなら以前トレーナー達で行ったキャンプの時の寝袋が有るかもしれませんので、借りると良いでしょう」
「はい!! トレーナーさんに借りて来ます!! ありがとうございましたグラトレさん!!」
「は〜い、ご武運を〜」
──後日
「……グラトレさん……トレーナーさんは寝袋にファブリ○ズ使ってました……」
「ああ……朝からスペトレがやけに落ち込んでると思ったら……」
「せっかく教えて貰ったのに、すみません……」
「大丈夫ですよ、上手くいかない事など幾らでも有ります……ところでスペシャルウィークさん、寝袋は借りれましたか?」
「は、はい……借りはしましたが?」
「実はグラスが今朝、寝袋を返しに来たんですよ?」
「そうなんですか? ……でも私が寝袋を借りた事と関係が有るんでしょうか?」
「グラスは寝袋にしっかりと匂いを付けて返して来ましたよ」
「……!!」
「スペシャルウィークさん……別にこちらから匂いを付けても良いのですよ?」
「……は、はい」
「スペトレさんへの想いを存分に載せてから返すと良いかもしれませんね」
「はい! …………えへへ、トレーナーさん……喜んでくれるかな…………」
「では、ご武運を〜」
了
≫157二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 20:29:26
妖艶転変学園トレセン、ソラを飛ぶセイテンの靴。
そこは愛に溺れた負の楽園。男はみな女たる意識へと溺れ、もはや空へと上がることは無い。
「その……むしろなんでそっち側に居るんだ?」
「人とは言えど獣の派生。抗い過ぎても体に毒じゃぞ?」
「何時までそんな嫌がってるのー?何も怖いことなんてないのにね?」
「抵抗にも叛意にも、価値も意味もなかったのです。わたくしは最近ようやく学びましたわ」
伸し掛る絶望を横目に、記憶はなく、愛のみの残る1人のトレーナーが桃色の園を駆け回る。全てはその破綻した世界を剪定するため。
≫166怪物2人 1/1021/10/27(水) 20:33:51
──会場の熱気に包まれながらゲートへと歩んでいく。
自分が走っていた頃から色々と変わったが、これだけはどの時代と世界でも変わらない。
思えばあの頃から自分も色々と変わった。息子の存在、愛する者との別離、生涯の果て、そして──
(で、ギムレット。今日のレースはどうなんだ?)
──体を同じとする相棒の存在。
随分と変わったものだ。言葉が無くとも心の中で通じ合うこの感覚はかつての自分にとってみてみれば考えられなかった。自分とはまた違うトレーナーの視点から言い渡される情報は間違いなく信頼に値するほどの物だった。
(そうだな、ボウズ。お前はどう見る)
だからこそ自分は彼の意見をそれなりには尊重している。まだまだ未熟で足らない部分は多いが、ウオッカを此処まで育て上げた主要因の1つは彼の観察眼によるものだ。
(……正直、難しいと思う。お前とブラトレとじゃ間違いなく相性が悪い)
冷静に、的確な彼我間の評価が下される。感性は少年のそれである自分の相棒だが、ウマ娘を評価するときは一切の色眼鏡を掛けることなく判断をすることができる。ウオッカと共に海外遠征をする時に彼が共に行くことになったのはチームの代表であると共に、相手の能力を厳正に見定める能力を持ち合わせていたからだろう。
(だろうな。少なくとも、俺からしてもブライアンのはこれまでで5指に入る強敵だ)
彼の言葉に賛同を返す。自分が全幅の信頼を置く彼が「相性が悪い」と評価を下すなら、それはきっと事実なのだろう。それは自分も感じていることであるために彼の感覚に間違いはないと確信できる。
167怪物2人 2/1021/10/27(水) 20:34:15
(だがな、相性の如何だけで勝敗は決まらん。決着がつくその瞬間まで勝敗は決まらない)
それがどうしたと心の中で喝破する。
相性だけで全てが決まるなら自分たちは命を懸けて闘い続けたりはしてこなかったし、今トレセン学園で走っている彼女たちも夢のために全力を尽くしてきたりはしなかった。
ゲートの中に入り、体制を整える。感覚が研ぎ澄まされて思考がレースのために雑多な思考をそぎ落としていく。会場の熱気や喧騒はどこか遠くへと走り過ぎ去っていった。
(ボウズ)
(どうした、ギムレット)
研ぎ澄まされた感覚の中でも消えることのない声。どこまで行ってもこの未熟者と二心同体であるという事実は少しやるせない気もするが、同時に少し安心するような気がした。
(このレースをよく憶えておけ。お前にとって必ず大きな糧になる筈だ)
返答を聞かず、更に思考を研ぎ澄ませていく。ゲートが開いてレースが始まるのはそれから十数秒後の出来事だった。
ゲートが開き、2つの影が飛び出していく。無銘と無明、2人の怪物による戦いは今ここに始まった。
先手を取ったのはナリタブライアンのトレーナー。抜群のスタートで外側のゲートから飛び出した彼は先頭に立つ。観客から悲鳴にも似た歓声が上がる。先行策を得意とする彼が差し・追い込みを得意とするギムレットよりも前に立つのは当然のことであり、彼がそうすることに対して何ら疑問は無い。
しかし、歓声が挙がった原因はそのやり方。
正々堂々と走ること、そして自由に走ることを専らとするブライアンのトレーナーがゲートを出た後、切れ込むように内側のコースを確保したのだ。
「何が何でも先頭をとる」。
確固たる決意を現したかのような彼の行動には彼なりの思惑があった。
ナリタブライアンのトレーナーは思い返す。
迫る影のような相手の走りを、影を縫うようにトレーナーたちの間を駆け抜けて勝利を手中に収めた彼の走法を記憶の中から引っ張り出す。
168怪物2人 3/1021/10/27(水) 20:34:35
今更問うまでもない。ギムレットは稀代のレース巧者だ。
あの日、レースを見に来た観客の中にはGⅠ級の競走で勝負になるだけの能力を持ち合わせている者が居た。自分だってトレーナーとしてそれなりに視界が広い自信がある。だがしかし、彼は消失してみせた。最終直線で先頭に抜け出すその瞬間まで見る者全ての視界と認識から消えてみせたのだ。
さらに彼は差し・追い込みの戦法を得意としているが、ウマ娘になった後の適性確認の結果を見る限り先行して走ることが別に不得手というわけではない。
レース巧者である彼にレースの主導権を渡す。
そんな選択肢を取って勝てると断言できるほど自分は今後方に居る相手を舐めてはいないし、また自分から勝利への道を遠ざけるほど莫迦ではない。
だからこそ、多少強引であっても先頭を奪い取る必要があった。先手を奪った彼にペースを抑え込まれてしまえば瞬発力に劣る自分では勝ち目が存在しないために、こうすることはむしろ必然だった。
ゲートを飛び出した勢いのままに最初の直線を走り抜け、第1コーナーへと差し掛かる。
後続との距離は2バ身程開いている。少なくとも、レース開始直後の位置取りについては優位に立ったのは自分であるとブライアンのトレーナーは確信した。
(ヨシ。ここまでは事前の作戦通り。ここからはできる限り一定の距離を……っ⁉)
序盤の駆け引きに勝利した安堵と気の抜けない緊張感と共に、コーナーのカーブを用いて左側から相手の位置を確認する──しかし、そこにあるのは誰も居ないターフだけだった。
自分の後ろにも、左にも自らの好敵手の姿はない。
背筋に怖気が走る。──じゃあ、今彼は何所に居る?
それ対する回答は、疑問が脳裏を駆けると同時に示された。
視界の端に黒い影が踊り出る。音も無く、影も無く、正体すら無明の怪物は眼前の敵を呑み込まんと大外からの強襲を敢行した。
頭から抜け落ちていた。いや、むしろ意識はしていた。自分は彼が気配を消しての強襲を行うことは織り込み済みでレースを行っていた。だが、この時点で奇襲策であるこの戦法を行うのは想定外だ。
169怪物2人 4/1021/10/27(水) 20:34:55
自身の闘争本能で彼を1つ理解する。彼は強力な手段を使うことを厭わない。たとえ手元に残されたのがどれだけ弱い手札だろうが、勝利できるのならば構わないという思考をしているのだろう。今隣に居る彼は、自身の強力な札で自分の戦法その物を崩しに来た。
(面白い‼)
自身の裡に眠るギアを1段階引き上げる。スタミナ勝負ならばこちらに分がある。元からある程度の差を開いてのレースをするつもりだったのだから何ら問題はない。彼が強襲を行うのならば、それが意味をなさないように突き放してしまえばいいだけのこと。
加速しながらギムレットとの距離を開く。事実、ブライアンのトレーナーがした選択は正しい。150㎝という比較的小柄な体躯ながら3200mでの競り合いを制するだけのバリキと根性を持ち合わせている彼と競り合うのは不利と見たのか、ギムレットは再び後方へと待機した。そして、同じ奇襲策を食らわないだけの観察眼を彼は持ち合わせていた。
第2コーナーへと進入する。あれほどまでに強烈なオーラを漂わせていた彼の気配がまるで最初からそこに存在しなかったかのように消失する。
それはさながら巨大な体躯をしているはずなのに足跡だけが遺されたビッグ・フット。一度しかない生涯を生き抜いたにもかかわらず、何の因果かあの世から舞い戻ってきてしまった亡霊は自らの気配を再び幽界へと潜航させて眼前の獲物を食らわんとその咢を開いた。
しかし──
「そこだっ!」
「っ!」
右手に移動することによってギムレットの進路を塞ぐ。咢は捉えるべき獲物を見失い、亡霊は後方へと押し返される。
あの日は俯瞰的に見る側だった。さっきは奇襲を許してしまった。だが今は違う。見て、肌で感じた今ならあの沈み込むように消える感覚と影が迫る感覚を感じとることができる。
2コーナーを越えて、向こう正面の直線へと進んでいく。
170怪物2人 5/1021/10/27(水) 20:35:19
ナリタブライアンのトレーナーが後方を見やると、ギムレットとの差は3バ身にまで開いていた。
気を緩めることのできないレースが続く。
──決着まで残り1500m。今、勝利の天秤は確かに、彼の側に傾いていた。
レースは第2コーナーを抜けて向こう正面を2人のウマ娘が駆けていく。先頭に立つのは白、後ろに続くのは黒。緩む寸前のペースを繰り返しながら彼らは勝利を目指してターフを駆ける。
──マズい。
体の主導権を全てギムレットに明け渡し、レースを走る側の視点から見て苦々しさを感じずにはいられない。
状況の優位は間違いなく眼前の相手に間違いなく存在する。ゲートを出た直後にブライアンのトレーナーが行った強引な位置取りの確保も、1コーナーでギムレットが行った気配を消しての大外奇襲も彼からしてみると予想外の出来事だった。間違いなく彼らは勝利するために出し惜しみをすることなく戦っている。
だからこそ、ギムレットが今どれだけ不利な状況にあるかが解ってしまう。
自分の3人目の相棒にとって、ナリタブライアンのトレーナーは天敵に等しい存在だ。
「自分は実際のレースでは通用しないから」
彼はトゥインクルシリーズに参戦しない理由の1つにそれを挙げている。トップスピードだけならば自信があるが、それでも鍛え上げているウマ娘には及ばず、レースの駆け引きに極めて弱いために自分はシリーズに参戦するウマ娘のレベルにはないと言っているのだ。
だが、今この状況においてはそれが悪い冗談か何かにしか感じられない。
そして今、自分の相棒は「時間」、「経験」、「相性」の3つの点が原因でブライアンのトレーナー相手に不利の状況に追い込まれている。
171怪物2人 7/1021/10/27(水) 20:35:46
ギムレットとブライアンのトレーナーとの間には「時間」という絶対的な差が存在している。
それはウマ娘になって以降、どれだけ鍛え続けたかの差。第2回のレース以来、ギムレットはまるで、錆びついてしまった古刀をもう一度鍛え上げて新生させるかのような驚異的な速度で成長し続けている。しかし、それでも時間という絶対的な差を埋めるまでには至らない。彼はむしろ検討している方だ。自分より先にウマ娘になり鍛え続けた結果、3200mを走破するスタミナと最高速度ならナリタブライアンに比肩しうるだけスピードを併せ持つようになった化け物相手に、同じく化け物のような練習強度で鍛え上げた体と天性の体の操作性だけで渡り合っているのだから。
ギムレットとブライアンのトレーナーとの間には「経験」という覆し難い差が存在している。
それはウマ娘になって以来、どれだけレースをしてきたかの差。ブライアンのトレーナーは他のトレーナーを誘ってのレースや自らが監督するチームメンバーとの併走により対ウマ娘の経験が多い。しかし、ギムレットにはそれが少ない。メジロライアンやウオッカなどとのレース形式での併走、そして彼が誰にも明かさず毎朝自分には見えない『何か』との併走を行ってきたが、自分の身体でのレース経験というのなら彼はブライアンのトレーナーには遠く及ばない。
ギムレットとブライアンのトレーナーとの間には「相性」という残酷な差が存在している。
第1回は3200mを、第2回は1600mを制した両者は互いに中距離を走るだけの能力を持ち合わせている。今回のコース設定でギムレットに2400mを提案したのは互いに距離的な意味で平等になるからだ。だがしかし、実際は少し違う。彼らの間にはスタミナという差が存在している。もし1コーナーで発生した競り合いを続けていたら、勝利の女神は今頃ブライアンのトレーナーに微笑んでいただろう。スタミナ勝負において、ギムレットはどう足搔こうが彼に勝つことはできない。消耗戦に持ち込まれるだけでギムレットの勝利は風前の灯同然の状態になってしまうのだ。
172怪物2人 8/1021/10/27(水) 20:36:08
故に、ギムレットの勝ち筋はただ1つ。ナリタブライアンのトレーナーが自らの弱点と公言しているレースでの状況変化を引き起こして彼のペースを崩す他無い。
それを自覚しているからこその先程までのコーナーごとの気配を消しての強襲だったのだろう。そう考えるならば、ギムレットの取った大外奇襲は理に適っている。
しかし、それは最早完全に見切られてしまった。1回目は彼の精神を揺さぶるだけの威力を持ち合わせていたが、2回目以降は完全に見切られてしまった。ゆさぶりとしての効果は未だに持ち合わせているが、それでも大きな効果は期待できないだろう。
そして、彼は自らの弱点に何ら対策を打つことなくレースに挑むほど愚鈍ではない。
チームでの併走や他のトレーナーとのレースを幾度となく経験し、ブライアンのトレーナーのそういった事態への耐性は以前に比べて格段に高まっている。さらに、今回はマッチレースだ。こちらが仕掛け続ければスタミナ切れで自爆する以上、ブライアンのトレーナーが警戒する要素は確実にフルゲートでのレースよりも少なくなる。弱点の消えた彼は、まさに『無銘の怪物』に相応しいだけの威容を放っていた。
更にもう1つ、ギムレットを窮地に追い詰める要因が存在していた。
前方を走るブライアンのトレーナーが顔を少し傾けて横目でこちらを見る。5バ身も離れているというのに、空のように蒼い眼は力強くギムレットを貫く。「お前の動きは全てお見通しだ」と言わんばかりの強い力を伴った視線は数瞬だけの間、自分の相棒を観察していた。
これが自分の相棒を不利な状況に置くもう1つの要因だった。
ナリタブライアンのトレーナーは競技者として一流だが、その本業はトレーナーだ。23歳の若さでチームを管理し、ナリタブライアンを三冠にまで導いて見せた稀代の大天才が最も秀でている部分は「目」──すなわち、洞察力だ。集団で走りながら教え子の走り方の問題点を見抜いて指摘する彼のチームのトレーニングメニューは、複数の教え子の走りを自らも走っている状態でその良し悪しを瞬時に判断する彼の観察眼があるからこそ可能な物だ。
173怪物2人 9/1021/10/27(水) 20:36:28
向こう正面の半分を超え、レースももう半分の距離を走破し終えた。
本来ならば複数の教え子を観察するために使用される眼は今現在自分達だけに注がれている。5バ身というギムレットに何かをされても落ち着いて対応できる距離を保ちながら、彼の打つ手を見逃さないように時々こちらを振り返って自分たちを見据えている。これ以上何かを小細工を弄するのはほぼ不可能に近かった。
自分ならこの状況をどう打破するかを考える。ロングスパートは間違いなく不可能。末脚に全てかけるとするならばこのギリギリ緩みのしないペースでは不安が残り、されど大人しく負けを認める通りも無い。
ある種八方塞がりの状況を確実に打破できる方法は今存在しなかった。
(──どうしたボウズ、不安か?)
声がする。走っていて自分より遥かにキツイ筈なのに、この程度なんともないと言わんばかりに自分自身を信じ続けている相棒の声がする。いつもレースをする時は話しかけるなと言っている彼にしては珍しい事態だった。
(珍しいけど何かあったのか?)
(お前が不安そうにしていたからな。レースも小康状態に入ったから聞いてみたまでさ)
どうやらこちらの不安感を悟られてしまったようだ。集中している彼に迷惑をかけてしまった。心中に渦巻く暗い霧を払い、思考を瞬時に切り替える。自分の相棒がどれだけ努力をしているかを知っているが故に、これ以上彼に迷惑をかけられない。自分がするのはこのレースから何を学び取るかだ。
174怪物2人 10/1021/10/27(水) 20:36:53
(いい顔をしている。どうやら心配は杞憂だったようだな。じゃあ俺から2つ質問だ。俺が勝つ見込みは?)
(正直言って大分低い。状況は最悪じゃないけど決して良くはない)
冷静に状況を理解する。
それは自分が初めてトレーナーとして学んだ事であり、そして今も大事にしていることだ。だからこそ厳しい状況を決して誤魔化すことだけはしない。それを見過ごしてしまうのが勝利から一番遠ざかってしまうのだから。
(だろうな。もう1つ質問だ。俺はアイツに勝てると思うか?)
(──ああ! 勝つのはお前さ。だって、俺はお前の努力を誰よりも知っているんだから)
不利な状況だということを理解した上でギムレットの質問に是と返す。
相手が彼にとって天敵?状況は不利?相性はほぼ最悪?
だからどうした。
自分は相棒の努力を誰よりも知っている。
身を削るように鍛え続けて昨日から縮まったタイムに満足しない彼を、ウオッカや後輩に迷惑をかけないように早朝と昼間の時間だけで十分なトレーニングをできるだけのメニューを空いた時間に必死に考えている彼を、早朝に誰にも見られないようにコースを走り抜ける度に心の底から悔しそうな顔をしている彼を、自分は誰よりも知っている。
だからこそハッキリと言い切ってやる。
このレースを勝つのは自分の相棒だ。
取り巻く状況が悪かったとしても、相手が稀代の天才だとしても、彼は自分が勝つことを微塵も疑ってはいない。ならば後は信じるだけだ。だって、相棒のことを信じてやれないのは最悪にカッコ悪いのだから。そんな行いだけはしないと心に誓っていた。
(そうか、なら見ていろ。お前の相棒が勝つところを)
短い返答と共に会話が打ち切られる。レースはもうすぐ3コーナーに差し掛かり、これからレースが動くであろうことを予期したのだろう。彼が会話を終了してレースのことにだけ意識を向ける。自分から話しかけて彼の集中力を削ぐ気は無かった。ただ今は彼がこのレースに勝利することを誰とも知れないどこかの神に祈るだけだった。
──決着まで残り1000m。勝利の天秤が、少し、揺れたような気がした。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part328【TSトレ】
≫13勝利の輝き1/1021/10/27(水) 21:01:32
これほどまでに刺激的なレースをしたのはいつ以来だろうか。
3コーナーを目指し、コースの向こう正面を疾駆しながら思考を巡らせる。
アルと初めて走った時?それとも初めてチームでレースをした時?いいや違う、この体の底から鳴り響くような歓喜と太陽のように心を照らし焦がす緊張感はもっと昔に感じた物だ。
焔のように魂が滾り、勝利への渇望は揺ぎ無く五体を動かしつづけている。
そうだ、この感覚は初めてトレーナーたちでレースをした時に感じた物だ。3200mでやると聞いた時は何をバカなことをなどと思ったものだが、他のトレーナーと熾烈な競り合いをした記憶は今でも自分の中に色濃く残り続けている。
ああそうだ、この感覚だ。心臓と魂から炎が溢れ出すかのようなこの感覚は、自分と「彼女」の両方が心の底からこのレースを楽しんでいることの証明だ。それに加えてコースに満ちる張り詰めた空気はギリギリのレースでしか味わえないものだ。
その状況を作り上げたのは自分と、今自分の後方に居るマッチレースの相手となった1人のウマ娘だった。
ギムレット。自分の同僚の中にいつの間にか住み着いていた名前以外全てが詳細不明な謎のウマ娘。第2回のトレーナー対抗ステークスを制し、自分がその過去を知りたいと思った相手。彼の相棒以外はその全容を知らない無明の怪物。
彼とのレースは息を吐く暇もない程に興奮と緊張の連続だった。たった2人で走っているはずなのに、1人だけかあるいは何人ものウマ娘と走っているような感覚にさせられる。発せられる気配を消しての揺さぶりに序盤からの大外奇襲、逆に気配を増大させてのフェイント。マッチレースであるからこそできる手札を打ち尽くすかのように様々な走りは、レース終盤に差し掛かった今も続いている。
3コーナーに入り呼吸を入れてスタミナを温存しようとした途端、後方の相手から発せられたわずかな予兆を感じ取る。身構えた瞬間、見えない何かに射殺されるかのような悪寒がするのを歯を食いしばって噛み殺す。
14勝利の輝き2/1021/10/27(水) 21:01:56
このレースでわかったことが1つある。彼の最大の強みは「不明」であることだ。著名なウマ娘ならばその走りの性質は広く知れ渡っている。たとえばアグネスデジタルならば場所を問わない万能さ、サイレンススズカならば桁違いのスピード、自分の担当であるナリタブライアンならば暴力的な強さといったように、有名かつ強力なウマ娘ならばその強さがどういったものであるかを形容することができる。
しかし、彼にはそれが無い。適性検査の結果とたった1度のレースで見せた走りと練習風景だけが自分が知る競技者としての彼の全て。彼とレースをするまで自分は彼の強みを「気配を完全に消せること」と考えていたが、それは間違いだった。彼がこのレースで見せた多彩な戦法の全てを隠してしまう秘密性こそが彼の最大の武器。自分は今、まさしく正体不明の怪物と戦っている。
(──楽しい)
彼が後どれほどの戦法を隠し持っているのかがわからない。そしてここからどんな手段で彼が仕掛けてくるのかわからない。緊張と不安が入り混じったそんな気分がするが、そんなものよりも歓びの方がはるかに大きい。間違いなく今後方で機を窺っている相手はウマ娘として強者に位置する存在だ。自分の担当と少しだけ似た、常に自信を絶やさない態度に相応しいだけの実力を持ち合わせているウマ娘とこうして競い合っている事実が自分を奮い立たせる。
3コーナーを越え、4コーナーに進入する。
もう彼の様子は確認せず、後は自分の全力を振るうだけを考える。自分は元より先行策を用いるステイヤーの身、最終直線から仕掛けていては最高速度への到達は叶わない。
4コーナー最中からの600mを使用したロングスパートでこのまま逃げ切るのが最適解であると自分の脳と直感がこの状況での最適解を叩き出す。差し戦法を得意とするギムレットと直線での瞬発力勝負を挑むわけにはいかない以上、それが最善の手であると認識して全力で走り始めるが──
15勝利の輝き3/1021/10/27(水) 21:02:21
(……⁉)
──足が重い。自然な形で足が前に行かない。自分が今まで出し続けていた軽やかさは見る影も無く、想像外の事態に一瞬意識が空白になる。
何が起こった?何故自分の足はこれほどまでに重いのか?自分の身体に一体何が起こっているのか?瞬間様々な思考が走り、脳は1つの回答を叩き出した。
──自分は一体どれだけの間全力で走り続けていた?
3コーナーでは気を入れようとして射殺すような威圧感で妨害された。2コーナーでは息を入れようとしたタイミングで強襲する相手を防いで彼を突き放した。1コーナーでは気配を消しての大外強襲で対応に追われた。向こう正面で走っている内600mの間は息を入れてスタミナを温存することができたが、それ以外自分はほぼ休みなしの状態で落ち着く間もなく走り続けていた。ヒトより遥かに強靭な五体と心配能力を保有するウマ娘。その中でもステイヤーである自分はスタミナに秀でているが、それでも2400mを全力で走り続けるのは厳しいものがある。
後方の敵は最初からすでに仕掛けていたのだ。スタミナ勝負で勝ち目がないのならば、スタミナその物を削り取ってしまえばいいだけのこと。自分は自分自身が弱点だと考えている部分を一緒に走る彼以外誰にもわからないように徐々に責め立てられていたのだ。
16勝利の輝き4/1021/10/27(水) 21:02:45
彼のレース巧者ぶりに息を撒いていると、後方で何かを蹴破るような音がする。そして──
ゾクリという怖気と共に後方で爆発するような闘気の奔流が溢れ出す。
これまでとは桁が違う強度の闘気に思わず振り返ると、発生元となったウマ娘は8バ身も後ろに居た。瞑目していた彼の眼が開かれる。そこには残光を放つ金の瞳が2つ、数百m先の勝利を揺ぎ無く見据えている。それは紛れもなく“領域”へ到達した証。
多彩な戦法を用いて戦い続けた無明の怪物。彼が最後に用いるのは──
「──さぁ、今からぶっちぎるぜ!!」
──差し脚による小細工抜きの真っ向勝負だった。
時代を作るような一部のウマ娘だけが辿り着ける限界のその先、自分自身ですら知らない剛脚で至る場所。人はそれを“領域”と呼ぶ。
その到達条件を三冠ウマ娘を鍛え上げ、自分自身もまた領域へと到達したナリタブライアンのトレーナーは「自らの魂との対話」とした。レースでの極限状態においてウマ娘が辿り着く根源、そこからウマ娘が自分自身の形で引き出す力こそが“領域”なのだとした。
では、その魂自体が至る“領域”とはどのような物なのだろうか。異世界からの漂流者、その生涯の果てに2回目の生を得た第69回日本ダービーの覇者タニノギムレットはどのようにして領域へと至るか。
4コーナーへと進入し、彼はかつての生涯を思い起こす。鍛錬の果てに得た栄光と挫折。愛おしい人と得た幸せと、それを失う悲しみ。様々な記憶が頭の中を流れるうちに、眼前の相手から問われた言葉がふと頭を過ぎった。
────「何のために走るのか?」
かつての自分が問われたならば、その答えを「そう願われたからだ」と返していただろう。走ることを求められて産まれてきて、勝つことを求められて走り続けた。それ以外に選択肢のなかった生だが、自分は確かに全力で走り抜いた。しかし、今自分は役割や義務に縛られず自由に走っている。では、自分は何のために走るのか。
数瞬の間瞑目する。答えは心の底にずっとあった。
17勝利の輝き5/1021/10/27(水) 21:03:12
─────「自分のすべきことを全うするため」。
自分には負けられない理由がある。いや、負けたっていい。それでも全力で走り続けなければならない理由がある。8000以上の夢を踏み越えてダービーの栄誉を得た勝者として、ウオッカの親父として、そして無二の友に信頼を寄せられた相棒として、タニノギムレットは勝利のために全力を尽くさなければならない。求められたからではなく、強制されたわけでもなく、自分自身の魂がそうしたいと心の底から願い続けている。
閉じていた眼を開く。
体に全能感が満ちていく。自らの視界は通るべき勝利への道を一直線に示していた。
これこそタニノギムレットが至る“領域”。目指すべき理想への明確なイメージは、辿るべき道筋を煌々と照らし続けている。
「──さぁ、今からぶっちぎるぜ!!」
溢れる衝動のまま宣言する。後は駆け抜けるだけだ。一条の光に、一本の槍となってただ前を見据えて困難を打ち破り勝利への道筋を駆け抜けろ。それこそタニノギムレットにとっての根源から来る衝動にして“領域”として顕現した理想のカタチだった、
───決着まで残り525m。勝利の天秤は、果たしてどちらの側に。
最終直線に2人の怪物が駆け込んでくる。
先頭を行くのは無銘。
650mのロングスパートには失敗したが、525mの長い直線を利用してトップスピードを目掛けて走り抜ける。担当や他のトレーナー相手では味わうことのない窮地であっても彼の口元から笑みは消え去ることは無い。まだ走り足りないと遥か蒼穹を目指す天衣無縫の怪物は、歓喜と全力を以て眼前の勝利を手中に収めようとしている。
後方を行くのは無明。
525mの直線を使用し、かつては三冠馬含めたダービー馬の中でも屈指の差し脚で8バ身先に居る相手目掛けて走り抜ける。相手をほぼ完璧に策に嵌めたとはいえ、2400をハイペースで走ってきた彼も余裕綽々というわけではない。身に纏う秘密を全て脱ぎ捨てた正体不明の怪物は、覚悟と死力を以て眼前の勝利を掴み取ろうとしている。
18勝利の輝き6/1021/10/27(水) 21:03:42
残り500m。戦況は間違いなくギムレットの有利に傾いている。
彼は「時間」、「経験」、「相性」の3つの点が理由でブライアンのトレーナー相手に優位に立っていた。
それは、敗北をかみ砕き自らの糧とし続けた「時間」。
それは、かつてGⅠの舞台でミスと妨害が原因で2回の敗北を喫した「経験」。
それは、この状況における先行と差しという脚質の「相性」。
かつて限界まで鍛え上げた身体は最早見る影も無い。しかしそれでも好敵手達と鎬を削りあい続けた記憶は、未だ網膜に焼き付いて彩鮮やかに残り続けている。
技巧を以て不利を覆し、強みを以て有利を築く。ギムレットが2000mかけて作り上げた策により、さっきまでの状況から一転して窮地に陥ったナリタブライアンのトレーナーはしかし、その瞳の奥に盛る焔をさらに燃え上がらせていた。
残り400m。ナリタブライアンのトレーナーの瞳から炎が溢れ出す。飽くことない勝利への渇望は、彼を更なる高みへと羽ばたかせた。
相性が不利?鉛のように足が重い?状況は最悪に近い?
それがどうした。
その程度の逆境、今現在4バ身差まで詰め寄って来ている彼も自分の担当も笑って乗り越えて見せたぞ。ならば自分が超えられなくてどうする。ナリタブライアンのトレーナーとして、チーム『ブラックヴォルフ』のトレーナーとして、そして『彼女』に走ることを誓った身として、この程度で諦める道理などありはしなかった。
一歩、地を踏み砕かんばかりに力強く踏み出す。誰も辿りつけぬ蒼穹を目指して無銘の怪物は今、その真価を発揮し始めた。
19勝利の輝き7/1021/10/27(水) 21:04:11
残り300m。状況が互角にまで引き戻される。基礎能力においてギムレットに勝る彼は全身全霊を賭して状況の不利を覆さんとしている。
眼前の背中を見て駆けながら、ギムレットは野性的な笑みを深める。自分の相棒も自分も競技者としてのブライアンのトレーナーが最も優れている点はその精神性にあると理解していたが、それがどれほどのものであるかを軽視していたようだ。
直線に入ってから彼が“領域”に入る前までの100mで4バ身まで詰め寄ったが、この100mを走ってそこから1バ身しか詰めることができていない。この状況を座視すれば敗北するのは自分だと本能で理解できる。
だからこそ、自分もまたギアを1つ挙げる。敬意を以て眼前の敵を捉えんと限界を踏み砕いて乗り越える。イメージするのは自らにとっての最強。ジンクスも常識も打ち破り続けた誇りを今ここに。
残り200m。互いに限界を越えていく。銀と金の流星はその輝きを増しながら、互いに渇望する勝利へと駆けてゆく。白と黒、前と後ろ、ある種反対ばかりな彼らだが、走る理由も負けられない理由も共に同じ。
ならば、もう言葉はいらなかった。
後は走りで自らを証明するのみ。共に先頭でゴールを目指して駆けていく彼らは、全力など生温い気迫で勝利へとただひた走る。気迫も、能力も、彼らの勝敗を分ける理由にはならなかった。
「───っ‼」
故に、勝敗を決するのはこれまでの積み重ね。
残り0m。今ここに勝敗が決する。怪物2名が心火を燃やし尽くしながら互いに競い合った熾烈なレース。勝利の天秤は『無明の怪物』ギムレットに傾いた。
残り50mでブライアンのトレーナーに並んだギムレットは数瞬の競り合いの後、自らの競走相手を抜き去った。2000m以上を使った彼の大仕掛けは今ここに完成した。
追いかけ続けた背中を追い越しても彼は止まらない。眼はただゴールだけを見据え、その足は速度を落とすことなく全力で駆け続ける。
結果はギムレットが1着、ナリタブライアンのトレーナーが2着。
1と1/2バ身、距離にして約3mが彼らの間に着いた着差だった。
20勝利の輝き8/1021/10/27(水) 21:04:39
いつの間にか高らかに鳴り響いていた喝采と共に、ギムレットは汗塗れの拳を高々と突き上げる。彼の瞳のように揺ぎ無く力強く突き上げられた拳は、この勝利が蒼穹の、遥か遠くの誰かまで届くことを願うようにその存在を高らかに謳いあげていた。
決着から少し時間が経った後、クールダウンを入念に済ませた彼らは2人並んで芝生に大の字で寝転がっていた。
「も、もう指一本動かせない……」
「こっちもだブライアンの。まさか“領域”に入るのがこんなにもキツイとは……」
限界を超えて走り続けた彼らの身体は声なき悲鳴を上げ続けており、レースを終えた直後は指1つ動かすのも億劫なほどの倦怠感が彼ら双方の身体を支配している。それでも走った後のケアを欠かさなかったのは彼らがウマ娘に関わる者として極めて優秀であることを如実に証明していた。
「というか親父さん“領域”に入るの初めてなんですか?てっきり昔から使えたと思ってましたけど」
「この体でやるのは初めてということだよ。以前他のトレーナーと走った時はノーマークなのを利用して認識の外を縫うようにして動いたからな。あの状況においてあれは最適だったが、理想的ではなかったというヤツさ」
「なるほど、あの時は理想の状態じゃなかったと。それにしても悔しいなぁ。やっぱり1コーナーで動揺したりそこから興奮してしまったりしたのがいけなかったんですかね?」
彼について新たな事実を1つ明かされながら、このレースに敗北した原因を考える。トゥインクルシリーズに出る気が無いとはいえ負けるのは正直大分落ち込むし、敗因を知りそれに対策をすることは将来自分と同じような弱点を持つウマ娘を指導する時に役に立つ。
「それもあるが、恐らくは一番の原因はお前が周囲に気を配りすぎなんだろうよ。お前が掛かりやすいのもその広い視野と高い認識能力が、知らなくても良い情報を受け取ってしまうからだろうさ。ま、それがお前の指導能力に繋がっているのは皮肉なモンだが」
チームの皆や目の前の彼にお願いして対プレッシャーでのトレーニングを積むのも選択肢になるか。そう考えていると彼から敗北の原因について1つの答えが示された。
21勝利の輝き9/1021/10/27(水) 21:05:02
「でも親父さん。そうだとしたら俺はその癖を直す気はありませんよ」
レースの時、自分は周囲に対しての情報のアンテナを常に張り続けている。彼が言ったのはそう言うことだ。自分と同じように目に優れているギムレットの意見は一考に値するが、そうであるならばなおのこと治すわけにはいかない。自分はウマ娘である以前にトレーナーなのだから。チームへの指導と自分のレースの勝敗のどちらかを選べと言われればチームの指導を選ぶと以前から決めていた。
「だろうな。お前ならそう答えるに決まってる。……あ~あ、もったいねぇ。その癖治してシリーズに挑戦したら天皇賞だって夢じゃないってのになぁ?」
「親父さんだって鍛え続けてシリーズに挑戦すれば、GⅠ狙えるんじゃないですか?そう考えると出ないのは勿体ないんじゃないですかね?」
「違いないな。ま、俺はダービーを獲っているから勿体ない気はしないが。……立てるか?ホラ、手貸してやるよ」
ギムレットからの苦笑交じりの軽口に応戦するように自分も返すと、彼の口から衝撃の事実が語られる。
彼の言葉に驚愕している自分を尻目にムクりと立ち上がってこちらに手を差し出すギムレット。困惑しながら手を差し出すと力強く、それでいて優しく握り返して自分を立たせてくれた。
だが、困惑が止まらない。
今彼はなんと言った?ウマソウルの種類は千差万別だ。自分のウマソウルとなった『彼女』は産まれて間もなく死んでしまったが、中にはGⅠを勝った者も居るだろう。だがしかし、彼の回答は予想外だった。
「親父さんは、ダービーウマ娘、だったんですか?」
22勝利の輝き10/1021/10/27(水) 21:05:26
ダービーウマ娘。それはクラウン路線に進むものならば誰もが1度は夢見る栄光。ウマ娘が得る栄誉の中でも最上級の物。言っていることが正しいのであれば今眼前に居る相手は、ダービーを勝った歴戦の猛者ということになる
「ああ、それも含めて改めて自己紹介をしようか」
「俺はタニノギムレット。ウオッカの父親で、かつてダービーの栄冠を勝ち取った者。今はウオッカのトレーナーの中に居候をして、チームの相談役みたいなことをしている。──お前の疑問はこれで解消されたかな?」
夕暮れへと向かう茜色の陽光に照らされて静かに語るギムレット。
気負うことも、高慢になることも無くただ事実を誇らしげに語る彼の様子にウソは一片も見られなかった。
ダービーウマ娘タニノギムレット。それが彼の明かしたかつての姿。しかし、彼は自らの称号に何ら重さを感じていない。かつての彼も、今の彼も、等しく彼にとっては自分なのだろう。
「……良いんですか?俺、親父さんに負けちゃいましたけど」
「特別サービスというヤツさ。どうしても気になるなら何か別の物の代金と考えといてくれ。……例えば、今日の夕飯とかのな?」
自分の質問に答え、頬を釣り上げてニヤリと笑うギムレット。さっきまでの空気はこれで終わりと言わんばかりの態度をする彼だが、彼なりの気遣いなのだろう。
「過去話する代わりが夕飯ってなんですかそれ。良いですけど、代価と内容が釣り合ってないんじゃないですか?」
「男の秘密ってのはそれだけの価値のある物なんだよ。折角だからお前のチームのメンバーとウオッカと青いのと白いのと、あとアルも呼ぼう。皆で食う飯は美味いに決まってるからな」
「うっへぇ、これは準備が大変そうだなぁ。もし良かったら手伝ってくれませんか?」
「勿論。荷物運びなら任せとけ」
気を置くことなく話しながら、2人並んで地下バ道へと続く出口への道へと向かう。
このレースを通じて友人となり競い合う好敵手となった彼らを、未だコースに残る熱狂の残滓と夕日はその背がコースから消えるまでただ優しく見守っていた
≫41二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 21:25:12
こんにちは!私、ナリタトリエステです!私は今…
「私達に何か用?」
「ちょっとドゥレンダ!もうちょっと優しくしなさい!」
(癖強いなぁ二人…)
私のトレーナーになってくれる人を探して聞きにきたのですが。
ドゥレンダさんとメロディラインさんの二人に聞こうとしたらこうなったのでした。
「ははは…ごめんね、こんなので。で、何を聞きにきたの?」
「はい、トレーナーさんを探していて…」
「あ〜、私が知ってる中だといないかな、ドゥレンダは?」
「私も知らん、そもそもアイツ以外に興味はない。」
「アンタは本当に…まあいいわ、ごめんね?」
「すみません、ありがとうございます…」
二人と別れた私はとぼとぼと歩く。そんな私にふと声がかけられた。
「こんにちは。お嬢さん、困っとるようじゃのう。」
気づいた私が振り返ると、天女のような姿をしたウマ娘の姿が。
「え?えっと、こんにちは。私は…」
「ナリタトリエステじゃろう?最近精力的にトレーナーを探す子として噂になっておるからのう。」
「うぇっ!?私、噂になってるんですか!?」「ほっほっほ、若い子の噂はすぐに広まるからな。…それで、悩みなら聞いてあげるぞい。」
「はい、実は…」
それから私はスカウトしてくれるトレーナーを探しているが、中々見つからないことを話した。
「ふむ、思ったよりも大変そうじゃな。」
「なんかすみません…」
「儂も少し彼らに掛け合ってみるとするか、もしかしたらがあるかもしれん。」
「あっ…ありがとうございます!」
「気にするでない、儂の仕事じゃよ。ではバイビーじゃ」
そう言って歩いていくウマ娘を見送ってから、私もやる気を入れ直した。
(私もまだまだ諦めないよ!…あっ、名前聞くの忘れてた…)
ーーー後にあの人がトレセンでも有名な人だと知った私は卒倒しかけたのだった。
≫84二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 21:41:23
俺が…“あいつ”と初めて接触したのはカフェのトレーナーになる前、彼女に興味を引かれていたときだった。
電気が消える、背中を押される、あと……声も掛けられた。最初こそは困惑したものの、案外慣れるのは早かった。
しかし今は────
「ねぇケツ!!」
「……」
「ケツっテバ!!」
「……」
「反応してよ、ケツ!!」パァンッ!
「いって!!ケツ呼びはやめろよお前……」
なんでこうなったんだ。
ウマ娘化してから数日後、“こいつ”の姿が朧げながら見えるようになった。最初の頃はカフェのことがもっと知れると嬉しがったのだが……
「ケツ!!暇だからかまッテ!!」
……見えるようになったのは子供みたいなヤツだった。
85二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 21:41:53
「なんでだよ、俺は見ての通り忙しいんだよ」
「ウソ!!さっきからスマホ触ってるモン!!」
「……そもそもなんでお前ここに居るんだよ、カフェのところに帰れよ」
「ダメ!!今はタバコと2人でお出かけしてるんだよ!!だから僕は空気読んでここに来タノ!!」
「あ〜……まぁそりゃ邪魔できねぇけど……」
「そうでしょ?じゃあかまっテヨ!!」
「……はぁ、じゃあ今日はなにすりゃいいんだよ」
「ほらこれ読んで!!コレ!!」バサァッ!
「本棚から本を落とすな!!ったく……うわ、しかも“黒い家”かよぉ、確かに前に途中でやめたけどさぁ」
「文句言うなよ、ケツ!!」パァンッ!
「んだっ!!わかったわかった……はぁ」
「やったやったー!!なんだかんだで読んでくれるケツ優しいよネェ」
「あーはいはい、これ読み終わったら帰れよ」
──コイツがハッキリと見えるようになって数週間、最初はストレスが溜まりまくったが、もう慣れてしまった自分が嫌になる
終わり
≫111二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 21:47:32
フクトレ『今日はモンハンをやっていくぞ。皆武器を言えい俺はガンランスだ』
マクトレ「私は今日は弓ですわ。忍者に近接戦を挑んだら体幹を崩されてズタボロにされる夢を見ましたの」
スズトレ「嘘でしょ……何その夢……あ、私は操虫棍で」
マルトレ「やっぱ太刀でしょ」
スズ「マク「フク『耐衝珠つけてこ』」」
マルトレ「おい?」
マルトレ「尻尾切ったどー!!」
マクトレ「ナイスですわ!」
スズトレ「あっスタミナあんまり無いのに乗っちゃった」
フクトレ『がんばれがんばれできるできる絶対できる紅玉がトゥルルって頑張ってるんだから!』
マクトレ「気合いでなんとかなるならスタミナは入りませんのよ!?」
スズトレ「大丈夫、なんとか転ばせたよ」
フクトレ『ナイスぅ』
マルトレ「とりあえず頭に兜割入れておくか」
フクトレ『あっ』(龍撃砲)
マルトレ「ぐふぁぁぁぁ!!」
スズトレ「あっはっはwww」
マクトレ「芝ですわ」
≫127ロブトレヒロイン概念21/10/27(水) 21:56:40
24歳組の同期会
「「「今月もお疲れさまでしたー」」」
月末の寮の一室、そこでは小さな同期会が行われていた。
ロブロイのトレーナーである私、スーパークリークのトレーナーである二人のトレーナー、この三人は同期であり、一緒の時期にトレーナーになった。
同期であることもあってか、よくこの三人で一緒に集まることが多い。
とは言っても、私と小さなクリトレさんはお酒に弱いため、集まる時はお酒は飲まず、なべパーティだったり、お菓子を持ち寄って食べたり、といったところではある。
「今日は鍋パーティですから、それぞれ持ってきたものを入れて行きましょう」
「ですね、そういえば何を持ってきました?僕はこちらの牛肉ですね」
「僕は良いタラが手に入ったので、野菜は大体用意していますから」
「私からは大ぶりのシイタケを。この前ロブロイと一緒にキノコ狩りした際に見つけた野生のものなのですよ。タマトレに見てもらったので大丈夫です」
「すごく立派ですね!タラもおいしそうですし、これはいい鍋ができそうですね」
「やっぱり私たちだと安定した物が出てきますね。ふざけたものとか持ってくるのもいいですけど、やっぱり美味しく食べたいですよね」
「ええ、二人ともそういう方なので、安心して鍋の具材を自由に持ち寄ることができるのですよ」
「それじゃ、早速鍋にしちゃいましょう」
「やっぱりみんなで食べる鍋はおいしいです!クリークが作ってくれたものとはまた違う良さがありますね」
「ええ、やはり一緒の時期に入ったわけですからね、お互いに色々と話しましたから、他とは違う仲間意識もありますからね」
「分かります。引っ込み思案な僕にもこうして仲良くしてくれるし、気を負わなくてすむ間柄、って言うのはやはり大切ですね」
「それに、なんといいますか、私たちの年下のトレーナーたち、しっかり者が多くて、本当に年下、って思う方が多いですよね」
「ブラトレさんやグラトレさんとかしっかりしていますもんね。ブラトレさんとかもうチームまで持っていますし」
「あの人たちはすごいですよね。僕たちも負けてられませんね」
「なら、いつものように情報交換をしましょう。何か新しく知ったこととかないですか?」
「あ、それなら、僕からですが……」
128ロブトレヒロイン概念21/10/27(水) 21:57:19
「改めて思いますが、まさか二人が一緒にクリークのトレーナーになるとは思ってもなかったですね」
「はい、クリークが僕たち二人ともをトレーナーさんに、って言ってくれましたからね」
「僕も上手く勧誘できなかったところにクリークが逆指名をしてくれたので、クリークに誘ってもらえた時、すごくうれしかったなあ」
「二人とも、仲良くできていていいですね。逆にそうなるとこちらが疎外感を感じたり、といったわけではありませんがね」
「そうですよ、ロブトレさんも一緒の同期じゃないですか。こうしてよく話しているんですから、そんなこと思わないでくださいよ」
「私たちみたいに新米トレーナー二人が同じウマ娘を担当する方が珍しいですからね。ロブトレみたいに一人の子を担当する方が多いですよ」
「姉さんの言う通りですよ。それにロブトレさんは自分でスカウトしたんですから、同世代の大学で首席ですし、やっぱりすごいですよ」
「私の場合は勉強ができただけですので、まあ、ロブロイへの想いはだれにも負けないつもりですが」
「あ、それなら僕だって!クリークへの想いは負けません!」
「それは聞き捨てならないです。僕だってクリークへの想いは負けていませんよ」
「僕の方が!」「いいえ、僕の方が想っています」「僕!」「僕です!」
「ふふ、本当にお二人とも、クリークのことが好きなのがよく伝わりますよ」
「……あはは、そうですね。だって僕たちは」
「二人ともクリークのトレーナーですからね」
「息もぴったりで、流石ですね」
「そういえば、クリトレ(小)さんは帰省された、と聞きましたが」
「うん、お父さんたちのところに帰省しましたよ。クリークも一緒にですね」
「クリークも一緒に行ったの、寂しかったんですよ。でも、その後にたくさん甘やかしてもらったのでいいですが」
「ごめんね、姉さん。今度は姉さんも一緒に来る?」
「良いのなら、是非行きたいですね。クリークと一緒に三人で温泉旅行とかもよさそうですね」
「……むぅ、また二人でクリークのことで話して……」
「ああ、ごめんなさい、またむくれないで!よしよし」
「普段は落ち着いているのに、こういう可愛いところもあるの、ずるいですよね、ロブトレは……よしよし、仲間はずれしているわけじゃないですからね………やっぱりロブトレだとあまり気負いせずにできますね」
129ロブトレヒロイン概念21/10/27(水) 21:59:07
「それならいいのですが……それで、実は私もそろそろ帰省を考えているのですが、その……参考までにウマ娘化した際の両親の反応はどうでしたか?」
「そうですよね、そこは心配ですよね。僕のところは多分、表には出していないけどショックは受けていたと思う」
「やはり、そうですよね……」
「でも、それでも変わらないよ。僕の両親であることは変わらない。確かに家族なんだよ」
「そうなのですね……ただ、私の場合は恐らく、また別の意味で問題があるのですよね……」
「?なにかあるの?」
「……私のお母様の写真、あるのですが見てみますか?」
「え、見せてくれるなら見るけど……え、これって……」
「どれどれ……え……もしかして……ロブトレのウマソウルって……」
「まあ、そういうことです。それもあって、なかなか会いにいけなかったのですが……」
「確かに複雑だけど、それでも僕は行ってあげたほうがいいと思うよ。家族のつながりは姿が変わっても繋がっているものだから」
「もしも何かあっても、僕たちがいますし、それにあなたにはロブロイもいます。だからきっと大丈夫ですよ」
「……ふふ、一番安心できる言葉をよくわかっていますね」
「何回聞いたと思っているんですか。ロブロイとの惚気話、何度も聞いたんですよ」
「そうそう、姉さんも僕ももう耳にタコができるくらい聞いたんだから、もうわかっているって」
「……やっぱり、二人に相談してよかったです。ありがとうございます」
「いいんですよ。いつでも相談に乗りますから」
「少しくらいは甘えてもいのですからね。何時も頑張っているの見ていますから」
「ふふ、そうですね。なら、少しだけ、甘えさせていただいても……」
「いいですよー。何時も頑張っているの、知っていますからね」
「他の人に向けて気を張っていますよね。今はゆっくりしていいのですよ」
「ウマ娘になってからは耳や尻尾で気持ちが分かりやすくなりましたよね。気持ちいいですか?沢山頑張りましたから、もっと気持ちよくなってくださいね」
(本当に、この二人の甘やかし方、どんどん強くなっていっていますね……それに溶けてしまいそうです……お母様、なんて言いたくなってしまいそうですが、まだ、まだ耐えれます。耐えてみせますから……)
130ロブトレヒロイン概念21/10/27(水) 21:59:25
「それじゃ、今月の同期会は以上でお開きですね」
「ええ、ではまた来月、今度はクリトレ(眼鏡)でやりましょう」
「そうだった、順番だと次は僕でしたね。しっかり片付けておかないと……」
「それなら僕と手伝いますよ!クリークもきっと手伝ってくれるよ」
「いや、流石にそれは気が引けるから……でも、クリークは手伝いたいだろうし、少しはお願いしようかな」
「まあ、次回まで十分時間もありますし、またLINEで何をするか決めたりしましょう」
「はい、それじゃまた」
「「「また来月も一緒に頑張りましょう」」」
以上、24歳組の同期会でした。クリトレのお二人をお借りしました、ありがとうございました。
24歳組ってロブトレとクリトレの二人なのですよね。で、以前のDK4メイド喫茶のssとか見ていると、クリトレ二人、クリークから甘やかしの技、伝授されてない?クリトレって甘やかすの好きですよね?
……これはいけない、今から私、赤ちゃんにさせられる……ってなりました。
あと、クリークのことで話が盛り上がり過ぎてロブトレがむくれる、ロブトレが甘やかされまくって赤ちゃんにされそうになって耐える、という流れとかできそうだな、と思いました。
では、駄文失礼しました。
≫138二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 22:07:28
流れ1ミリも関係なくて申し訳ないんだけど朝にウマ娘化したトレーナー達が手を組んで誘拐されたタイシンを取り戻す旅に出る大長編の夢を見たって言ってた奴です
- タイシンが魔王・頭サイゲに攫われる
- 勇者タイトレが戦士マクトレ、武闘家ブラトレ、魔法使いフクトレ、僧侶テイトレと共に旅に出る
- なんやかんやあってじじピと弟子ぴっぴを仲間に引き入れ最終決戦へ(マジで思い出せないけど道中でルドトレとダストレと親父は少なくともいたし他にもトレーナーがいっぱいいた)
- 悪の幹部新人ちゃんとマヤトレを軽く倒して魔王城に乗り込むタイトレ達
- 謎の呪文を使う魔王頭サイゲをなんとか倒すもなんと偽物、本物は最後まで出て来ないままであった
- じじピが捕まったタイシンを救出してタイトレに渡して逃した後に敵の最高幹部ウララトレが追い付いて来て久々に本気で戦いますか?って所でそんな正々堂々などと言っておられる時間もないからのぉみたいな事を言って弟子ぴっぴのルーラで逃げる
- タイシンが感動して飛び込んで来たタイトレの胸に埋まりハッピーエンド
まぁという事で1日経ったけど大して内容は思い出せんかったわ!!ごめん!!じゃあな!!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part329【TSトレ】
≫12ガンギマリ頭スズトレ21/10/27(水) 22:47:59
「うーーーーーーん…」
午前中、生徒達は授業を受けているだろう時間にトレーナー室で1人、あたしは唸る。理由は当然、止まらないシリウスのアプローチについて。
あたしが身体に慣れてないのを口実としたシリウスの猛攻はいつまで経っても衰えを見せない。それどころか激しさを増してすらいる。
一刻も早く、耐える方法を見つけないと。
「…リウトレ?大丈夫?」
と、そんな事を考えていると入り口から声をかけられる。顔を上げるとスズトレさんが扉を開けてこちらを覗いていた。
「すみません、廊下まで聞こえてました?」
「いや、多分私だから聞き取れただけだと思う。それよりどうしたの?書類で分かんないとこあった?」
「いや、そういうわけじゃないんですが…」
スズトレさんはウマ娘になってから耳がすごいよくなったとか。担当ウマ娘との関係も良好そうで羨ま…し…
「…スズトレさん、時間今ありますか?」
「うん、あるよ。」
「少し相談に乗ってもらいたい事があるんですけど…」
「つまり、シリウスのアプローチを耐える方法を教えてほしい、って事?」
「そうです!!他の人にも相談したんですけどなかなか上手くいかなくて…」
ものうつげにリウトレが漏らす。リウトレの担当、シリウスシンボリのリウトレへの猛アプローチはトレーナーの間でも有名だ。私も何度か、シリウスにお姫様抱っこされるリウトレを目にしたことがある。
「…正直に思ったこと言っていい?」
「はい。」
「…多分人選間違えてると思うなぁ…」
15ガンギマリ頭スズトレ21/10/27(水) 22:48:18
「えっ…でもスズトレさんってスズカさんとは…」
「うん、だからこそ。担当との関係がガッツリ違うんだよ、私とリウトレ。
私とスズカは共に道を歩む相棒って感じだからそこに恋愛感情とかは一切ない。これで男ならまだ考えなくもなかったけど、今は同性だしね。」
「それならあたし、ウマ娘になる前から同性なんですけど…」
「それはまあ、うん。ともかく私もスズカも恋愛感情は持ってない。だけどリウトレのとこは…シリウスは違うでしょ?」
「…そうですね。シリウスは本気のことしか言わない。本気で、私を好きでいる。」
「そして私は少なくともそうして向けられた好意を耐えようとした経験がない。だから私はアドバイスとかはできないかな。」
それが私の出した結論だった。
「…またダメかぁ…でも参考になりました。ありがとうございます、スズトレさん。」
「ごめんね、せっかく相談してくれたのに力になれなくて。」
「相談上手くいかないのはもうそろそろ慣れてきたので…」
遠くに視線を向けながらリウトレが話す。どうやら他にも相談しにいっては成果を得られず、というのを繰り返してるらしい。
…流石になんもなしで帰るのは可哀想なってきた。何か、私でもできる事はないか…
「…あ、そうだ。」
「どうかしました?」
「いや、リウトレと似たような感じの関係で、かつ頑張ってるリウトレが目指すべき相手を思い出したの、1人だけ。」
「本当ですか!?」
「うん。
…ずばり、カレトレ。」
後日、リウトレの耐性がほんのちょっぴりだけ上がった。
≫77二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:24:24
「いいの?これだけで。おごりだけど」
「別に遠慮はしていません。これでいいですわ」
ある日の夜。少しお高い居酒屋の座敷にウマ娘が二人。ひとりは白く長い髪の儚げな少女、トウカイテイオーのトレーナー。もう一人はよく見るステイヤーそっくり髪を纏めた、メジロマックイーンのトレーナー。
共に有名なウマ娘のトレーナーであり、メディアへの露出も最近では増えてきた。それに馬娘であることも相まって、個室の居酒屋は最近重宝しているのだった。
「で、相談事って何ですの?」
いつもより少し高めの日本酒を注ぎ、刺身を飲み込んで脚を崩してマクトレは言った。
大抵フクトレやブラトレ、たまにシャカトレやタイトレを含めて数人で来て騒ぐのが二人の飲みだが、今日に限っては二人きり。それはテイトレが、マクトレにサシで相談したいことがあったからだった。
「えーっとねえ……実は何だけど」
テイトレは少し溜めて、顔を赤らめて言った。
「俺、ちょっとテイオーに惚れてるかもっていうか……いやあいつの走りに惚れてたのは前からだけど……最近テイオーにときめいちゃったりしてて」
「今更?」
「うん、最近やたらテイオーがカッコよく見えちゃって」
「いやそうじゃなくてその自覚が今更なのかと言ってますのよ?」
「へ」
78二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:24:39
マクトレは少々目を見開いているテイトレを気にもせず、表情を変えることもなく頬杖をついた。
「結構前からわたくし達、あなたからそれっぽい雰囲気出てるな〜と思ってましたわ。メスがいますわ〜なんて」
「なんで気付いてるの……?」
「散々惚気て照れておいて逆に気付かない方がおかしいでしょう」
いつもよく一緒にいる4人で担当の自慢をした時、テイトレは高確率、というか最近は100%メスの匂いを漂わせていた。同時にはっちゃけている時ははっちゃけていたのでこいつ気付いていねえなというのがフクトレとマクトレの間での共通認識だった。ブラトレは疎い上に話の発展次第で気の不全に陥るので認識を共有してはいなかったが。
「みんなもよく担当については自慢してるでしょ!?」
「内容と話しているときの雰囲気でしょう。ブラトレやタイトレはカラっカラに相棒を語って、シャカトレやウオトレは色々な視点からその能力を語り、フクトレは時折しんみりしつつも兄のように。フクトレ曰くわたくしは熱いけれども蒸し暑くはないと。そんな中であなただけはしっとりした目でテイオーのことを語りますわよね?」
「そんな目してたの!?」
「ええ。ルドトレさんのそれに近いですわ」
「嘘でしょ……俺は普通にテイオーのことを話しているだけなのに……」
「自分の話になるとほんっと鈍いですわね」
赤くなり俯くテイトレを見ながら、マクトレはチヌを口に運ぶ。少し高い場所だからかいつも食べる刺身と比べて随分舌触りがいいな、と思いつつ話を続ける。
79二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:24:54
「んぐ……で、それが?」
「だからマクトレに相談しようと思って。ほら、言葉とか全然変わってるのに中身全然変わらないじゃん」
「へえ……つまり、あなたがテイオーに女として惚れてしまうのをどう防げばいいか、ということでよろしくて?」
「う、うん」
「その前にわたくしは惚れることになんの問題があるのかと思いますけど」
「ふむふむ……なんて?」
「あなたがテイオーの女になることでなんのデメリットがあるのかと思いまして」
テイトレは混乱した。目の前にいる、いつもしたたかでいつもの言動からは想像できない程度に相談が上手い「なんか今失礼なこと考えました?」マクトレならストレートに解決策を提示してくれるのではないかと思っていたところに想定外の答えが返ってきたからだ。
「え、でもマクトレは自分を変えないように頑張ってるじゃん」
「ええ。それなりに努力はしていますわ」
「じゃあ俺もそうしないとと思って聞いたんだけど」
「不安と焦りでそうなるのは仕方のないことですわ。そうですわね……少しわたくしの話をしましょうか」
マクトレはスマホを開き、少し操作してテイトレの方向へ滑らせた。
80二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:25:08
テイトレはそれを受け取り、スクロールして、え、という声を漏らした。そこに写っていたものは、テイトレを驚かせるのに十分な代物だった。
「これって」
「最近のわたくしのAmazonの購入履歴。どうです?意外でしょうか?」
「……うん。正直言って……マクトレでもそうはなるんだなって」
「社会活動。生命活動。わたくし一人が本当に一切変わらずいようとも、体の変化というものが与える影響はわたくしを襲い続ける。そんなもの、耐えるだけ自分を壊すだけですわ」
「でも心の底は変わってないよね?」
「もちろん。マックイーンの目標、そしてさらにその先までマックイーンを連れて行く、トレーナーとしての意思が変わることはない。最適な道はどこかを常に見定めて、そこに舵を切ってくと決めている」
「うん……?」
「そして、俺が心の底まで女になるか、も、その勘定の中に含まれている」
「……つまり?」
「それが最適と判断すればわたくしはいつでも『女』の海に飛び込めますわ。」
今度はテイトレは驚かなかった。会話の流れからなんとなく察することができたからだ。しかし、今度は不安に似た感情が襲いかかってきた。今までなんとなく頼りにしていた灯台が一瞬陰ったかのような、そんな気分だった。
「ですが、今はそんなことをすれば色々と重要なものが崩れてしまう、それが取り返しのつかないところまで転がり落ちて行ってしまう、そんな気がしていますの。だから、心の奥底、マックイーンに触れる部分の俺は一切変わることはない。壊れないようにそれ以外の部分は柔軟でありつつ、大切なものは絶対取りこぼさない。……お前はどうするテイトレ。俺を、わたくしを見るんじゃない。テイオーと自分を見るのです」
81二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:25:22
テイトレはしばらく手元を見つめた。つまを箸で弄り、そして10秒ほどで止めた。
「……まだ少しわからないかも」
人生を決めてしまうような選択、それは簡単に、一朝一夕で決められることではなかった。それはマクトレにも分かっていた。
「ええ、それでいいのです。ゆっくり決めてくださいまし。帝王の騎士になろうと、帝王の伴侶になろうと、いつだってわたくしはあなたを応援しますわ」
「なんだろう、話して色々考えて少し楽になったようで、また別の部分で悩んじゃうというか」
「もしも変わりたくないと思ったらわたくしよりフクトレに相談するといいでしょう。変わってしまうことの深刻さはあちらの方が上ですし」
「ありがとう。そうする。……お刺身、追加する?」
「ええ。さっきはこれでいいとか言ってしまいましたけどもう少し」
「何にする?俺はちょっと贅沢してマグロたのもっかな」
「さっきおいしかったのでクロダイで」
≫103二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:41:14
「お前……なんでコレを知ってんだよッ!!」
自分の首を掴まれながら壁に叩きつけられる。
「ッ……ゴハッ!!」
全身の力が入らない。
ドス黒い瞳は、殺意をもって私を見つめる。
「離してよ……ドベトレ、さん……!!」
104二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:41:53
「アンタその年でまだ実家暮らしなの!?」
全ては、この一言からだった。
22歳とはいえオレも学園で働く
れっきとした大人だ。
しっかり者が多いこの空間では
自分のようなイレギュラーは
少し特異に感じるんだろう。
「普通、か」
思えば自分の人生はおおよそ普通と
言えるものとは根本的にズレていた。
物心つく前に両親と死に別れ、
知らない上流階級の家に引き取られ、
そして人間を、殺した。
『異常』と評されるには
十分すぎる過去だった。
「だから、消した。
誰も知らないオレを、過去を、閉じ込めた」
人というのは一度犯した罪は永遠に消せず、
一生に渡って罰を受け続けるものだ。
だからこそ逃げ出した。
だからこそ目を背けた。
メジロのため、ドーベルのためと言いながら、
結局は自分自身から逃げ出したのだ。
威勢だけはいい、外面を嘘で繕った、
ただの子供。本当に、それでしかなかった。
「嘘が嫌いってのも、『嘘』なのかもな……」
何重にも隠されたその奥底にいるハズの『本当の自分』
それは本当に、『本当の自分』なのか。
「今日も星は…………見えねえや」
105二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:42:24
星の見えない寒空の中、
半ば無意識的に寮へと向かう。
また今日も、オレは誰かの世話になる。
「……来たぞ、スペトレ」
「ドベトレさん!!寒いから入って入って!!」
コイツはスペトレ。
オレと同い年でスペシャルウィークの
専属トレーナーをしている。
生きてきた年月は変わらないハズなのに
一回り大人びて見えるその姿は
どうにも自身の子供らしさを
突きつけられるようで。
「ごめん、世話になる」
「謝らなくていいんですよ、
困った時はお互い様ってよく言いますし」
そう言ってはにかんで見せる。
そんな顔しないでくれよ、スペトレ。
謝るべきなのはオレなんだから。
騙しているのもオレなんだから。
106二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:42:46
「ん、部屋は……」
「あんまりジロジロ見ないでください!!」
私の部屋はいたって普通。
キッチン、テレビ、書斎、ベッド、テーブル。
少し物寂しいような、そんなつまらない部屋。
「あんまり面白くないですよね……」
「いや、一人暮らしの工夫が
そこら中に詰め込まれてる。勉強になる」
そう言ってドベトレさんは
部屋をグルリと見回す。
「これぐらいハッキリいって普通ですよ」
「……オレにはその『普通』が分からねえ。
何にも……知らないんだ」
そこから私はドベトレさんに
一人暮らしの心得をひとつずつ教えた。
雨の日の部屋干し。疲れた時の夜食。
風呂場のカビ対策に、ゴミ出しの日付。
こちらの話を興味津々に聞いてくれるのは
とても気持ちがいい。
彼が皆から愛されているのは
こういった所なのだろう。
……少し、羨ましい。
「他にもたくさんあるから、このノートに
まとめてあるからね」
「さんきゅ」
ドベトレさんは小さく笑う。
…………なんだろう、この違和感……。
107二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:43:07
「そういえばですけど、夜、何にします?」
「何でもいいよ、スペトレのなら何でも」
「……あんまり他の人のトコでは言わない方が
いいかもですよ」
何かマズイことでも言っただろうか。
首を傾げる。
スペトレの家庭力はぐんぐん上昇している
という噂で、特に料理の才能があるのだとか。
だからこそ、何でもいいと思ったんだが……
それに、「何であったとしても」
オレはもう「大丈夫」なのだから。
本当は何も食べなくても、平気なハズなのに。
「だったらハンバーグが、食べたい」
「ちょうど私もそう思ってたんです!!
早速作るので、ドベトレさんも早く
手洗ってください!!ほら早く!!」
ちゃっちゃとキッチンへ連れていかれる。
「エプロンなんか持ってねえぞ」
「いちいちエプロン着ける人なんて
少数派です!!私も持ってませんし!!」
スペトレはふんすと胸を張る。
……いや誇れるコトじゃねえだろ……
そう考えながら、二人並んで
ハンバーグを作っていく。
108二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:43:44
「ご馳走様でした」「お粗末さまです」
向かい合わせでおじぎする女二人。
テーブルの上には
綺麗に平らげられた食器の数々。
「形はアレだったけど、すごく美味かった
ありがとよ」
「最初は誰だってそうです、
地道にコツコツいきましょう!」
オレが作ったのとアイツが作ったのとでは
見た目に雲泥の差があった。
だと言うのに、味は変わらないのだから
料理とは不思議なものである。
「…………ドベトレさん、元気ないですね」
「いや!!全くそんなことねえよ!!
飯も食ったし超元気だよ!!」
精一杯の虚勢。自分の辛さを
誰かに知られる訳にはいかない。
誰かに迷惑をかける訳にはいかない。
誰かに『己』を、知られてはいけない。
「…………、まあ話したくないことの
一つや二つありますよね……。
ごめんなさい、気遣えなくて……。」
またこれだ。悪いのは自分のハズなのに、
他人を傷つけたくないのに、
他人を悲しませてしまう。
キュッと胸が締め付けられる。
「私、お風呂洗って来るので、少しゆっくりしてて下さい!すぐ終わるので!!」
スペトレはパタパタと別の部屋へと姿を消してしまう。
109二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 23:44:20
「またやっちまった……」
放浪し始めた『あの日』から
いつもの調子が出ない。
やはり嘘をつくのは性にあわないようで、
どうにも変な感じになってしまう。
「はあ……、ってあれ……」
スペトレのスマホが鳴る。
着信は……スペシャルウィークからだ。
「仲いいんだな、お前のトコも」
画面に映る二人のツーショット写真。
おそらくスペシャルウィークの
プロフィール画面なのだろう。
すこし、頬が緩む。
とまあ、そうこうしてる内に、
「あっ……電話切れちまったわ」
画面が通話から切り替わる。
そして、オレの眼に映ったのは───────
『メジロドーベル トレーナー 殺人』
≫149二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:14:51
1話 変わるために
それは、罪の記憶。
「トレーナーさん?何やってるんですか?」
「ああ、トレーニングで得た情報を書き残してるんだよ。
俺はあんまり器用な方じゃないからな。
ちゃんと書いとかないとわからなくなってしまうんだ。」
「へー、トレーナーって大変なんですね。」
「まあ、君が気にする事じゃない。これがトレーナーの仕事だからな。」
夢見ていた。
「トレーナーさん…私、勝てるでしょうか…」
「大丈夫だ、俺たちは努力をずっとして来た。あの日々が無駄だった訳がないだろ?」
「…そうですね!トレーナーさん!私、勝って来ます!」
「ああ!行ってこい!」
信じていた。
「トレーナーさん、私、故郷に帰ろうと思います。」
「な、本気で言ってるのか!?まだ、少し負けが続いてるだけじゃないか!大丈夫、俺たちなら絶対に勝てるようになる!」
「いいんです。無理して言わなくても…
分かってますから、私にはここで戦って行くための才能が無い事ぐらい。
だからトレーナーさん。こんな私に、夢を見させてくれて。
ここで戦わせてくれて。ありがとうございました。」
「ッ!……君が…そう決めたのなら…無理強いは、出来ないな…
これまでよく頑張ったな。ゆっくり休んでくれ。」
「…ありがとう、トレーナーさん。」
失敗した。
150二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:15:53
それでも諦めないで進み続けた。
「アタシさ、全然信じてなかったんだ。アタシより強い奴が居るなんて。」
「でもここに来て分かった。」
「アタシ、すっごく弱かったんだなって。」
「そんな事は…」
「良いんだよ、本当の事だろ?」
「そんなアタシをここまで支えてくれて、感謝してるんだよ。」
「ありがとね、トレーナー。」
失敗した。
「オレ、ここで走るのが夢だったんだ…」
「中央で強い奴らと切磋琢磨して…
まぁ、そこにさえ行けなかったんだけどさ。」
「………すまない。」
「謝んなよ。トレーナー。それにいつか大舞台で走るような奴らと競えたって思うと、少しは頑張った意味もあるのかなって思うんだ。だからさ、」
「ありがとな、トレーナー。」
失敗した。
「ボクね、ずっと見たかったものがあったんだ。だけど、それを見る事はきっと叶わない。」
「でもボクはね、それでも良いんだ。トレーナーとここで見た光景は、とっても綺麗だったから。」
「……俺は、」
「だめ。それ以上は言わないで?トレーナー。
こう見えてボク、凄い感謝してるんだよ?だから、言わせてね。」
「ありがとう。トレーナー。」
失敗した。
151二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:16:34
そして誰もいなくなった。
皆、夢に敗れ帰って行く。
そんな彼女達の姿を見て、俺はただ、立ち尽くすしか出来なかった。
俺は一体、何度失敗すればいい?
何度彼女達の夢を潰せばいい?
何度あの姿を目に焼き付ければいい?
才能が無いくせに夢を見たからいけなかったのか?
俺が目指さなければ、彼女達はもっと輝く事が出来たのか?
…最初から、全て間違いだったのか?
そんな事を思いながら、俺は誰も居ない練習コースを見ていた。
ふと、夢を目指し輝いていた彼女達が走る姿が見える。
俺が消した輝きだ。
もう、終わりにしよう。
ここは、何もなせない、失敗しかしない俺なんかが、居ていい場所じゃなかったんだ。
きっとそれが最初から正解だったんだ。
「貴様、聞きたい事がある。」
「…え?」
いきなり話しかけられ、振り返る。
そこには1人のウマ娘が居た。
「貴様の元に来れば、地方ウマ娘でも走らせてくれると聞いて来た。」
「…俺のところに来たウマ娘がどうなったのか知った上で、それでも来たのか?」
「ああ、私は何がなんでもここで走らないといけない理由がある。」
「…君、名前は?」
「フジマサマーチだ。」
そう言った彼女目は、絶対に諦めないという強い意志を宿していた。
152二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:17:07
『へぇ…消えた魂の行方を探してたら、こんな事になってるなんて。ついでに面白いものも見れたしラッキー。』
…誰だ。
『ん、あれ、聞こえちゃってた?メンゴメンゴ。
いやね?放置してた魂が勝手にいなくなっちゃってさ、それを追って来たら勝手に貴方に入っちゃってたの!もうびっくりって感じ。』
何を言っているんだこの人…
『でも、なんかいい感じになってるし、このままでいっかーってわけ。
貴方もそのコのおかげで結構美味しい思いしてるみたいだし別に良いよね?
まぁ良くなくても、もうどうにもならないし、どうにかする気もないけどね。』
…腹が立つのはわかった。
『うわっ怖い顔してる…そんな怒んないでよもー。
あ、あと、そのコ。他の魂よりチカラが弱いから、あんまり無理しさせ過ぎると危ないよー。だから気をつけてね。うわー!教えてあげる私、やっさしー!
それじゃ、そんな優しさに溢れた私は帰るから。バイバーイ。』
153二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:17:31
「…ん、んあ?」
目が覚める。夢を見ていたようだ。
「時間は…もう夜か…」
周りには、トレーニングや作戦が書き込まれたノートがあった。書いていた途中で寝てしまったらしい。
…ふと、机の端に目が向く。
「……」
昔の、人だった頃の写真が飾ってある。
「あの頃の俺とは違う…」
そうだ。俺は変わった。
何度繰り返した失敗も、今なら糧にできる。
無理だと言われた夢も、今ならそこまで繋がる道が見える。
…もう二度と、諦めさせないで済む。
絶対にマーチを連れて行くんだ。あの舞台に、今度こそ。
今の俺なら、それが出来る。
「…もう少し頑張るか。」
もうあの頃の、何も出来なかった俺じゃない。
今度は絶対に失敗しない。絶対にマーチと勝つ。
次の目標は…俺が一度も越えられなかった壁、重賞だ。
≫161二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 00:30:58
こんにちは!シャカトレです!え、夜なのにこんにちははおかしい?ロジカルですね!しかし挨拶を変えないというロジカルといちいち時間で挨拶を変えるとか効率悪いでしょうというロジカルで僕のロジカル勝ちです!なんで負けたか明日まで考えといてください!
今日はそうですね、まだ始まったばかりですし軽く微分の解説とかしましょうか!指数関数の微分とかいいと思いませんか!証明には少し気を使いますが結果さえ知れば超使える微分!まるで気難しい彼女と結婚したら永久にイチャイチャしてる夫婦みたいですね!僕はそんな夫婦リアルであったことないですけど!
ではまず証明しましょう!lim起きます!微分の定義貼ります!e^xで割ります!こうするとlim(h→0)(e^h-1)/hを考えれば良くなるのですがこれ以上変形できません!まるでDOKIIUのバドエンのようなどん詰まり!困りましたね!そこで必要なのが自然対数eの定義です!eはlim(n→∞)(1+1/n)^(n)で求まりますがここで向きを逆転させるとlim(h→0)(1+n)^(1/n)となります!これ代入したらlim(h→0)(e^h-1)/h=1となります!1ですよ1!ギャルゲのダストレさん並みにちょろい答えになりましたね!ちなみにあのゲームの僕のルートは解析で引き摺り出すことができるのでやってみてください!
さてこれがどれくらい便利かというとマジで便利です!e^xは微分しても変わらないし積分しても定数がつくだけ!xに係数がついても微積したところで係数しかつかない!つまり微分方程式などの問題では係数比較が簡単にできるというわけです!何しても重要な部分は変わらないマクトレさんのような強さがありますね!しかし係数だけはついてしまったり定数項が発展してしまったりするところもマクトレさんらしいです!この性質を利用してe^xは本当にいろいろなところで目にします!学習する際は三角関数の積分より重要と考えるといいでしょう!まあe^ix=cosx+isinxとか言われるんですけどね!では!
≫169タバコとタキトレ21/10/28(木) 00:37:06
「ちょっとキミに話がある」
学園からの帰り道、背後からの言葉に自分の耳がぴくりと反応する。
続いて油の指していない機械のような動きで……こんな所にも疲労が現れているのか……振り返ると、タキオンのトレーナーが手招きしていた。
「何か?」
「ちょっと頼まれた事があってね。君について」
付いてきてくれ、と先導するタキトレに重い足を動かして後ろを歩く。
…と思っていたら歩く速度を落として隣に並んでくれた。
…気遣ってくれたのか…少し申し訳ないな。
見慣れた道を帰り、階段を登って…
連れてこられたのは、タキトレの部屋だった。
「………誘拐?」
「もう少し信用してくれてもいいんだよ?」
少し笑いながらタキトレが扉を開けてくれる。
おじゃまします、と呟いて部屋に入ると目に入ったのは、清潔な部屋と生活感のある間取り。
「きちんと過ごしてるんですね…」
「…もしかして部屋凄いことになってませんか?」
「物置きには」
ぴくりとタキトレのウマ耳が動く。
…?何かまずい事でも言っただろうか。
首を傾げていると、背中からグイグイと押されてソファに座らせられる。
正面にぽすんとタキトレが座り、緑の目で見つめてきた。
「さて…単刀直入に言います。
カフェトレさん、キミは不健康すぎる」
「…なるほど」
「それでマンハッタンカフェさんから相談されたんです。最近のカフェトレさんが弱々しいと。最近は特に酷いそうで」
「んぐ………」
170タバコとタキトレ21/10/28(木) 00:37:28
カフェの前ではしっかり隠していたはずなのに…
むぅ…流石カフェは敏いな、今度からは心配させない為にもちゃんと隠さないと…
「…反省してないな?」
「ん………」
「分かりやすいなぁ…全く。
トレーナーたる者、担当に不安がらせては駄目だと思いますよ?
それに貴方は特に体が弱いんですから。
担当を思う気持ちは分かりますが、それで貴方が倒れたら元も子もないんです」
そう言うと、机を回り込んで手を握られる。
「もっと自分を大切にしてください。
カフェの事を想うのなら」
「………分かった」
「…一応聞いておきますが、最近の睡眠時間は?」
「に、2徹…」
「………………はぁ…
これは本格的に矯正しないと駄目かもしれない…」
頭を抱えるタキトレの姿に、申し訳ないなと思うが、それと同時に心配してくれる彼の優しさが身に沁みる。
いっその事彼が養ってくれないだろうか、だなんて一瞬考えたが余りにも申し訳ないし、何やら背中に凄まじい視線と気迫を感じてその考えは何処かに吹き飛んでいってしまった。
…カフェに心配させない為にも、次からは徹夜の数を減らそう…だなんて考えるカフェトレなのだった。
≫178テイトレ相談フクトレ編1/521/10/28(木) 00:46:23
「何か意外だなー。こういう場所で飲むなんて」
「意外で悪かったな。それともお前の奢りにするか?」
ある日の夜。バーのボックス席にウマ娘が二人。ひとりは白く長い髪の儚げな少女、トウカイテイオーのトレーナー。もう一人はよく見るステイヤーそっくりの髪を纏めた、マチカネフクキタルのトレーナー。
共に有名なウマ娘のトレーナーであり、メディアの露出も最近では増加、加えてウマ娘である二人も、このバーはあくまで雰囲気の一部分として静かに溶け込ませてくれている。
「で、俺一人呼び出したからには何かあるんだろ?」
琥珀色から透明のグラデーションが綺麗なお酒を口にし(なんとかウイスキーフロートとか言ってたけどテイトレにはよくわからなかった)、グラスを静かに置きながら目線を合わせることなくフクトレは言った。
大抵マクトレやブラトレ、たまにシャカトレ、最近はムントレも含めて数人で着て騒ぐのが二人の飲みだが、今日に限っては二人きり。それはテイトレが、マクトレにサシで相談したいことがあったからだった。
「えーっとねえ……実はなんだけど」
テイトレは少し溜めて、顔を赤らめて言った。
「俺、ちょっとテイオーに惚れてるかもっていうか……いやあいつの走りに惚れてたのは前からだけど……最近テイオーにときめいちゃったりしてて」
「おうようやくか」
「うん、最近やたらテイオーがカッコよく見えちゃって」
「いやそうじゃなくて俺らにようやく言ってくれるのかって」
「へ?」
179テイトレ相談フクトレ編2/521/10/28(木) 00:46:51
フクトレは目を白黒させているテイトレを本格的に目線から外し、カウンター裏のラベルの羅列を眺めながらグラスを手に取った。
「まあいつ言ってくるんだろうなーって。相談が無けりゃお前ひとりでなんとかできたんだろうし別に無くともまあこれは大丈夫な部類かなと」
「え?そんなに周知の事実だったの?」
「お前俺らがどんだけお前のこと微笑ましい眼で見てたと思ってんだ」
いつもよく一緒にいる4人で担当の話がヒートアップした時、テイトレ以外の3人は高確率、というか最近は100%テイトレの話を最終的に聞く側に回っていた。普通の時にフクトレとマクトレがそれについて話してくると目敏く絡んでくるのでこいつ酒の席では気づいてねぇなというのがフクトレとマクトレの間での共通認識だった。ブラトレは大体潰れてるし万一聞いても濃密な惚気話に速攻でダウンするので認識を共有してはいなかったが。
「俺ばっかり話してたわけじゃないだろぉ!?(小声)」
「いや。お前が7割ぐらいだ。すげえぞ?怪物3冠バと春天2連覇とたまにトリプルティアラや無冠の英傑を相手にそんだけ話の主導権もってけるって。話のタネには事欠かねぇだろうにお前の話を結構楽しそうにどいつもこいつも聞いてくんだよ」
「そんなに!?(微小声)」
「ああ。ダストレ曰く『なんか一人だけ話の方向性違くない?』とのことだ」
「噓でしょ……俺は普通にテイオーのことを話しているだけなのに……」
「自分の話になるとマジで鈍いのな」
赤くなり俯くテイトレを見ながら、フクトレは燻製を口に運ぶ。いつもより塩味が足りなく感じるのはバーテンダーの気まぐれかはたまたこの場の雰囲気か。ともあれ話を続ける。
180テイトレ相談フクトレ編2/521/10/28(木) 00:47:22
「ん。で、それで?」
「だからフクトレに相談しようと思って。マクトレに聞いたら変わりたくないならフクトレに聞いてくれーって言ってたし」
「……つまるところ、お前は男として変わりたくない、と」
「う、うん」
「ま。現時点でもうお前は男として変わってるから大丈夫だぞ」
「ふむふむ……なんて?」
テイトレは混乱した。目の前にいる、いつも不愛想なのにやたらと相談相手として絡まれる「おい今憐れむような視線を感じたんだが?」フクトレならまずは男としての根幹を肯定してくれると思っていたところに想定外の答えが返ってきたからだ。
「え。あれ。俺、もう女だった?ん?」
「ああすまん。ルドトレみたいなことを言ってるわけじゃないから安心しろ」
「え?じゃあ女じゃない?え?」
「あー。論を急ぎすぎたな。順を追って話すか」
フクトレはグラスの結露が少しついた指でテイトレの一カ所を指す。
181テイトレ相談フクトレ編2/521/10/28(木) 00:47:51
テイトレはその指の先を理解し、衝動的に俯いた。フクトレがその部分は今まで能動的に触れてこなかったのも拍車をかけた
「それ。形はどうあれ、それはお前がテイオーの為に変わりたくないと思ってやったもんだろ?」
「……うん。間違っていたかもしれないけど。俺は、テイオーのトレーナーだから」
「大丈夫だ。現にお前の周りではお前を責めるやつはいなかったろ?……そうやってお前は“お前を貫き通した”。その上で、お前がテイオーを想って、テイオーもそれに応えた上で、お前は変わりそうになってる。なら。いいだろ?」
「でも、フクトレは変わらずにいようとしてるよね?」
「まあこっちは事情が違うしな。あとちょっと誤解がある。俺でもちょっとずつあいつとの関係性は変わってんだ。今までのものを軸にして。少しずつ。」
「……え?」
「ま、皮肉なことにこの姿に変わったことで気づけたことも進めたこともいくらかある。」
「……つまり?」
「俺も俺で変わっちまってるんだ。こんなことになって」
今度はテイトレは驚かなかった。会話の流れからなんとなく察することができたからだ。しかし、今度は不安に似た感情が襲いかかってきた。今までなんとなく目に慣れてきた篝火が少し揺らいだような、そんな気分だった。
「一番大事な部分は変えない。俺とフクの関係の根幹を変えちゃいけない。そこを踏み越えちまったらきっと黄泉の国まで真っ逆さまさ。でも変わることはきっと悪いことばかりじゃない。壊れないように大切なものは注意深く見て、それ以外の部分はお互いの為に、お互いがしたいように変えていく。……お前は大丈夫だよテイトレ。お前はもう大事なものはとっくに守ってんだ。だから、自分とテイオーを見てやれ」
182テイトレ相談フクトレ編5/521/10/28(木) 00:48:37
テイトレはしばらく手元を見つめた。ナッツを指で弄り、そして10秒ほどで止めた。
「……でもまだちょっと不安かも」
人生を決めてしまうような選択、それは簡単に、一朝一夕で決められることではなかった。それはフクトレにもわかっていた。
「ん。それでいいだろ。焦る必要はねえ。帝王の威光を前から広めようが、帝王の矜持を後ろから支えようが、お前はお前だ。俺もお前の友人Fだよ」
「なんだろう、話して色々考えて少し楽になったようで、また別の部分で悩んじゃうというか」
「ま。最終的にトレーナーとウマ娘の理想的な関係性は?ってなったらブラトレだろうな。アスリートかくたるべし、って感じだろ。同じ三冠バだし」
「ありがと。……まあでも耐えられるかな……あ、お酒、追加する?」
「ん。意外と早く飲み終わっちまったな。あんまり氷も解けなかったし」
「何にするの?ちょっと俺も同じもの飲みたいっていうか」
「ん。そうか。これはアメリカンだったけど今度はスコッチにするか。トゥワイスアップとかでな」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part330【TSトレ】
≫12チヨノオートレSS21/10/28(木) 01:10:00
アレを見たのは単なる偶然だった
たまたま残業で帰るのが遅れ、たまたま学園の中庭を通っただけ
今覚えば、これが終わりの始まりだったのだろう
私は三女神像が光るのを見た
それも単に一瞬光るのではなく、ボウッと輝くのを見た
三女神像に照明の類はついていなかった筈だ
ここまでなら、そこまで深追いしなかっただろう
翌日、とあるトレーナーがウマ娘化するまでは
最初は偶然だと思ったが、その現象について調べるにつれ変わっていった
この時の私には勘にも似た確信があり、いつも以上に興味が沸いていた
その先に何が待つのかも知らずに
私は三女神像の発光現象に規則性を見つけた
三女神像が発光すると、翌日トレーナーがウマ娘に代わる
そして、ウマ娘化したトレーナーの一部が悪夢と形容できる夢を見る
度重なる聞き取り調査と観測により分かった事実であった
データとして信用できる量のサンプルもある
これだけの一致があれば、無関係とはいえないだろう
トレーナーのウマ娘化には三女神が関わっており、何らかの目的でこの現象を起こしている
その仮説を知人に話すべく準備していた日の夜だった
『こんばんは~チヨトレちゃん』
聞こえるはずの無い声
この部屋には自分以外はいないはずだ
急いで振り向くと、古代ギリシャ人の服を纏ったウマ娘が立っている
そして、彼女は非日常の産物なのだと強く感じた
それだけの存在感があった
13チヨノオートレSS21/10/28(木) 01:10:51
『よくぞここまで突き止めたと誉めたいところなんだけど、禁忌なんだよねその情報』
何故だろう、彼女と目が合うと背筋が凍るような寒気を覚える
これは―――恐怖か?
『というわけで、あなたには消えてもらわなきゃいけないのでした』
言っていることが理解できない
いや、理解できるだけの思考を維持できない
『三千大千世界の彼方へ、ごきげんよう』
意識がじわじわと溶けていく
私というモノの境界があやふやになる
自我が今にも失われそうな最中、閉じかけた瞳が嗤うウマ娘を捉えていた
今更ながらソレの真意を悟る
ああ、このようなモノが根源であれば、この世界はどうしようもなく歪んでいる
ブツン―――――――――――
~~~~~~~~~~~~~~
異変に気付いたのは放課後だった
いつもの通り、トレーナーとのトレーニングに行くため友人達と別れようとしたとき
友人のヤエノさんが信じられない言葉を吐いた
「チヨノオーさんはまだトレーナーがついてませんよね?」
14チヨノオートレSS21/10/28(木) 01:11:46
始めは質の悪い冗談かと思った
でも、それが嘘じゃないと嫌でも思い知らされた
クラスの皆からもトレーナーの皆さんからも、トレーナーに関する記憶が抜け落ちている
まるで、始めから存在しなかったかのように
私は縋るような思いでダイワスカーレットさんのトレーナーさんを訪ねた
幸いにも彼女はトレーナーの事を覚えていた
事情を話すと、すぐに協力を申し出てくれた
2人でトレーナーの捜索を再開する
しかし―――――
「そんな方は、学園に在籍していない筈ですが」
「疑問。君達の誰の事をいっているのかな?」
たづなさんや理事長すらも覚えていない
そればかりか、記録からもトレーナーの痕跡が消えている
トレーナーさんの家を訪れても、知らない人が住んでいた
焦りながら探しても、結果は変わらなかった
そして、時間が無情に過ぎていき
「チヨノオーさん…私達、誰を捜してるでしたっけ…」
とうとうダイワスカーレットさんのトレーナーさんからも記憶が消えかけている
それを留めようと声をかけようとするも、言葉が出ない
思い出せない
捜している相手の情報が出てこない
15チヨノオートレSS21/10/28(木) 01:12:13
「おかしいです…名前が…顔が…だめ、だめです…!」
私だけは、私達だけは、忘れてはいけないのに
あの人と過ごした思い出も、積み上げてきた努力も、分かち合った喜びも
なにもかもが消えていく
残された時間が僅かなのは明白だ
私は天に縋るように願うしかなかった
「お願いです…私達から、絆を奪わないで―――」
そんな願いもむなしく、遂にその時は訪れてしまった
私の心に残っていた最後の記憶が消失する
全てが消える直前
誰かが、私の名前を呼んだ気がした
~~~~~~~~~~~
いつも間にか気を失っていたようだ
気が付くと、私は何故か学園の外をダイワスカーレットさんのトレーナーと歩いていた
なぜこんなところに来ているのか記憶がない
ダイワスカーレットさんのトレーナーさんに聞くも、覚えていないという
ふと、自分の頬を涙が伝っているのに気づく
「あれ…?私、何をしてたんだろう…何で泣いて――」
そのふと出た疑問は、茜空に溶けていった
≫26二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 01:21:31
ドベトレ「タマトレさん、お願いが」
タマトレ「ん?何だ?ラッコ肉の注文か?」
ドベトレ「いえ、違います。てか注文が有るんすか?」
タマトレ「直近だとル...おっと個人情報だったな、忘れてくれ」
ドベトレ「今夜泊めて欲しいんですよ」
タマトレ「....構わんけど、うちは狭いし散らかってるけど良いか?」
ドベトレ「構いません、おねがいします」
タマトレ「了解した、トレーニング終わったらlineしてくれ」
ドベトレ「うっす」
〜18時〜
ドベトレ「お邪魔しまーす」
タマトレ「おう、いらっしゃい。トレーニングで疲れてるだろ?風呂湧いてるから入ってこい、その後飯だ」
ドベトレ「ういーす」
〜ドベトレ入浴中〜
ドベトレ「うまいっ!うまいっ!」
タマトレ「駐屯地名物ジンギスカン丼だ、メジロの飯ほど豪華じゃ無いが旨いだろ?」
ドベトレ「美味ぇ!美味ぇよ!」
タマトレ「ここににんにく醤油がある...掛けるともっと美味くなるぞ...明日あれだが....」
ドベトレ「...すまねぇ、明日の俺」ダバァー
タマトレ「デザートにキャラメルアイスも有るぞ」
ドベトレ「タマトレさん....俺一生付いていきます!」尻尾ふりふり
タマトレ(ちょろい)
────────
27二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 01:21:54
ドベトレ「食った食った...」
タマトレ「いい食いっぷりだ!」(ケツとかもこんだけ食ってくれるといいんだがなぁ...)
タマトレ「さて...俺は食後の運動も兼ねて散歩に行くけど一緒に来るか?」
ドベトレ「行きます」
──────
ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ
ミギヨナカヨゲット ミギウチニモドシテクレイ
ドベトレ「タマトレさん?ここは一体...?」
タマトレ「ドベトレよ...俺はちょっと大工と対話してくるからこれ(諭吉)で暫く遊んでてくれ...1時間は遊べるはずだ...」
ドベトレ「タマトレさん!?」
───2時間後────
ドベトレ「凄い沢山メダルが増えてしまった...タマトレさんは一体何処に...?あっ居た」
ミギウチニモドシテクレイ
たまとれ「」
ドベトレ「し...死んでる...」
────────
ドベトレ「メダルゲームしてただけなのに諭吉が10人に...また来ようかな...」
たまとれ「よかったなぁ...」
──────23:00──────
タマトレ「明日も早い!寝るぞ」
ドベトレ「うっす」
──────────
タマトレ「これは独り言だ」
お前の過去に何が有るのか知らんし知る気も無い
今回何故色んな所を渡り歩いてるかも知らん
が何かあったら...年上を頼っても良いんだぞ?
おやすみ
────────────
28二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 01:23:08
タマトレ「マルゴーマルマル!起床!」
ドベトレ「ん...まだ眠い」
タマトレ「起きろ!起床!」
ドベトレ「寝る!」
タマトレ「起床!」
結局7時まで寝てたドベトレであった
うまぴょいうまぴょい
ドベトレのエミュあってる?激しく不安なんだが
≫41二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 01:35:23
曇らせと晴れは交互に貼らないとね
女神(聞こえますか?私はくもr..時を司る女神です過去に戻ってやり直したく無いですか?)
やり直せるんですか?あの時に戻って...またお母さんと優しかった頃のお父さんと暮らせるんですか?
女神(ええ、あなたの選択次第ですけど、戻りますか?)
戻ります!戻してください!
女神(では...良い旅路を...)
から始まるパラシン救済SS
なおTSもトレーナーも関係ないんで続きは有りません!
因みに過去で何しても変わるのは過程だけです!結果は変わりません!何度やり直しても必ず同じ結果に収束します!
46二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 01:38:17
これより最終ミッション「オペレーション・スクルド」の概要を説明する。
確定した過去を変えずに、結果を変えろ。
健闘を祈る。エイ・エイ・ムン。
≫103二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:22:50
ウマ娘女子会
「諸君、よく集まってくれた」
「左様、私達はアングラの集まり、バレる訳にはいかない」
「よし、監視網は大丈夫だ。さあ始めようか」
「ではここに同人会を臨時で開催する!」
「…ねえこれいつものお決まりだけどいるの?」
「考えるな、感じろ。…まあいいや、語ろっか。」
「今日はルドトレさんとキタトレさんのよ」
「最近あった入れ替わってたみたいなあれでしょ?…正直最高だったわ」
「分かる、あの傾国ボディで隙のないイイ女されるとか即死できる…しちゃう…」
「逆にあの豊満な胸で隙だらけってのはもはや惑星破壊兵器よ。…ぐっ」
「やっぱり刺さるよね…二人のファン更に増えたし」
「ギャップ萌えは最&高の要素よ、やばいわ。」
104二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:23:18
「…このウマホには既に同人用のプロットが入っている。」
「何!すぐにみせて!」「見たいわ!」
「後で送るよ、それよりもカップリングの話をしたいんだけど」
「勿論よ!…なら私はキタトレ×サトトレを推すわ!あの仲睦まじい二人…おねロリは至宝よ。」
「分かるよ…あの距離感、何しててもおかしくはない…」
「私的にはルドトレ×グルトレ派かな、あの二人のすることやってそうな雰囲気…ぅ」
「そうね…そして関係がバレてルドルフ会長とエアグルーヴ副会長の四人で…ぐは」
「早いわね…所で先程の同人ノートさんの内容は?私気になる」
「ルドトレ×キタトレだよ、入れ替わりがどうたらってので閃いたんだ。」
「Oh…筆が早いわね…」
「入れ替わった二人が互いに助け合って、ついにはラブロマンスに…」
「…あんた最高よ、抑えられなくなりそうだ
わ」
「…色々とバレたらまずいよ私達…でもやめられない…」
「これが禁酒法でも酒を求めた人の気分ね…今ならよく分かるわ…」
「てかこの集まりってなんでできたっけ?」
「えっ?誰かが『私バカだから言うっちまうけどさ…』とか言ったのが原因でしょ?」
「セヤナー…」
「でも、まだ語れるわね…語り尽くしましょう!」
「「「「おー!」」」
その後存分に語り明かしたのだった。
駄文失礼しました
久しぶりのネタ枠です。
あの世界でもこういう子達いそう(小並感)
≫107二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:29:10
未解決な想い グルトレとリウトレ
グルーヴとの朝のルーティンを終え、私はトレーナー室へ向かう前にとある場所へと足を運んだ。別のトレーナー室だ。ノックをし、ドアを開ける。
「失礼~」
「グルトレ先輩?おはようございます」
兎のような長い耳を揺らし、椅子からおりて私のもとへと覚束ない足取りでぽてぽてと駆け寄る。なるほど、朝お姫様抱っこされてるのはそういう意味もあるのか、と感心した。てっきり俺のものアピールの類だと、いや両方だ。断定してしまう。
「おはよ~、リウトレ」
シリウスシンボリのトレーナー、リウトレ。会長サンと少しいざこざのある彼女の担当ウマ娘と私のグルーヴが少し生徒会業務まわりでやりとりがあり、その関係で彼女とも関りがあった。あの件はまたの機会に。今はその為に彼女のもとへ来たわけではない。
「どうしたんです?」
「ちょっとね、スズトレとかフクトレに話聞いてたから」
朝のお姫様抱っこの件もそうだが、彼女がシリウスにアプローチをされている件で相談されたと聞いていた。彼女は身体の変化に慣れるのに時間がかなりかかっているのか、シリウスにお姫様抱っこされて基本移動をしている。私もその様子は見たことがある。ウマ娘への変化で身体と感覚の相性のようなものがあるならば、私はそういったことがない幸せな方だろう。そもそもそんな状況なのは彼女くらいではないだろうか。あまり聞いたことがない。
「あー……お茶とお菓子あるので座ってください」
「いいよ、気にしないで。それより、座って」
彼女は複雑そうな顔をした。あまり芳しくないようだ。私はソファーに座ると彼女が隣りに座る。彼女の性格的に素直になれないというところだろう。
「担当からのアプローチってどうしたら……」
「応えちゃってもいいんじゃない?」
「えっ…」
「シリウスにお姫様抱っこで通勤、嫌じゃないでしょ。リウトレ」
「嫌というか、頼るしかないので…」
109二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:29:23
人を頼ろうとしない彼女がシリウスを頼っているならそれなりに揺らいでいるのでは。と思わず口に出そうになるが、抑えた。
「グルトレ先輩は…その担当とそういう関係になるときに抵抗なかったんですか…?」
「だって、好きなら仕方ないじゃん?」
「担当とトレーナーでも?」
「勿論。お互いが想っていたら、そこに性も年齢も立場も関係ないと思うなぁ」
「あたしは、その…彼女に相応しいトレーナーでもないんです。彼女に応えていい立場でもない……」
「でもシリウスのトレーナーでしょ、キミは」
「紙だけの契約です…」
これは大分変な方向にこじれてしまっているようだ。シリウスと彼女の海外遠征でのレースは私も見たことがあるので察せなくはないことではあった。
「シリウスはそう思っているように見えないけどなぁ」
「あたしは、自分の気持ちがわからないんです。どうしたらいいかも」
私は彼女を抱き締めた。大きく耳を動かしてうろたえる彼女を見ると、シリウスの気持ちもわからんでもないが、そういうものだけではないだろう。
「な、なに……?」
「どう?私に抱き締められても、別にドキドキしないでしょ?」
「しない…あったかいけど、ちょっと違う」
「そういうことなの!」
「どういう…」
「好きってコト!」
彼女の頬がみるみる赤くなっていく。どうやら彼女は自覚していなかったようだ。
110二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:29:36
「好きなら、無理してアプローチ避けたりする必要ないよ」
「それでもあたしは、彼女にそう応えたいと思えないんです…」
「だから避けたり、耐えたいの?」
「そうです」
ふり絞るように出た肯定に私は胸を痛めた。すきだとわかっても、彼女は蓋をすること選ぶ。私には考えられなかった。これは骨が折れそうだな、頑張れダービーウマ娘。
「そっか…ごめんね、私には耐えるって選択肢がなかったから…」
「いいんです…あたしが意地張ってるだけですし……」
「抱え過ぎて無理しちゃ、だめだよ?」
「はい、ありがとうございます」
いたたまれないまま私は彼女のトレーナー室をあとにした。そんなに苦しい思いしてまで、彼女と居るなんてつらいだけだろうに。難しいな、こころ。私はそう思いながら、自身のトレーナー室へと向かった。
≫118二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:49:05
マルゼンスキー「トレーナーちゃ〜ん! 結婚しましょ〜⭐︎」
マルトレ「嬉しいが学生と結婚は俺がやばいからダメだぞ〜⭐︎」
マルゼンスキー「わ〜流石トレーナーちゃん倫理観チョベリグね」(つまり卒業後はいいって事ね……)
≫125二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 07:59:45
ポエマーなナカヤマフェスタトレが一瞬想像されたのだが沸いてきたポエムが
僕の名前はナカトレ、トレセン学園のトレーナーだ。
君は知るだろう
人としての姿 心 暮らし
トレーナーとして失い続けるものを
僕らは未来を求めた
希望を背にみんなが笑える未来を
だったので見なかったことにした
≫134二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 08:05:10
「トレーナーさん。一応婚約中ってことだけどさ、これっていつ結婚なの?」
「そりゃあネイチャが『走るのもうイヤ!』ってなった時だよ」
「……つまり、明日にもイヤって言ったらもう結婚ってこと?」
「それやった自分を想像してごらん?」
「……ごめん。ダサかった」
「でしょ?だからもう少し先ね」
「とてもカッコ悪かった」
「うんうん。……ネイチャ?」
「クッッッッソカッコ悪いんですけど……!?」
「大丈夫!ネイチャはちゃんと自分のキラキラ信じれる子!やればできる子だから!ね!?あと女の子がクソとか言わないで!」
≫139二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 08:21:05
タイトレ「リウトレ大変そうだな、なぁマルトレ、エルトレあっボンビー押し付けるな」
マルトレ「そだなー、オオン!?買い占めようと思ったら一件だけ買ってんじゃねえぞタイトレェ!」
エルトレ「大変そうだね。あっラッキータイトレのボンビーに感謝買い占め〜」
≫173二次元好きの匿名さん21/10/28(木) 08:46:21
タイシン「ねえハヤヒデチケット……相談が」
ハヤヒデ「どうしたタイシン」
チケゾー「何かあったのー?」
激マブ「……相談……するまでも無いわね、私はトレーナーちゃんにできる事をするだけ」(ガンギマリ笑顔)
エル「……」
グラス「どうしましたエルそんな真顔で」