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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part626【TSトレ】
二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 20:53:03
(じゃあ普段はアタ……ダイワスカーレットがビシバシヒンヒンしごいてるけど……いざデートした時に、急にオトナになるってこと!?)
(緊張したアタシを見てぎゅっと手を握ったり、「今日はオシャレしてきたんだね」とか……ううん、これはいつもやってるわね。攻めってことはもっと強く……)
(「今日はいつもより魅力的だね」とか……「どこにでも連れてってあげるからね」とか……そうよ! いつものプリウスじゃなくてオペトレさんからきれいな車を借りてくるんだわ!)
(それで1日中アタシの好きなところに連れてってくれて、なにくれなく褒めてくれて……あいつはいつもアタシのこと見てるから何でも気付くの。アタシはもう、何をしても褒められちゃうからすっごく調子に乗っちゃって……)
(……それでちょっと転びそうになった時、あいつは身を挺して庇うの。アタシのお尻の下敷きになってぐえ、とか声を上げて……それでもアタシの脚を気遣ってくれて……もうメロメロよアタシ!)
(それでそれで、最後は海の見える別荘を借りてふたりで料理を作るの。それで今日のことを思い出しあって、いっしょにお風呂に入って……それで……あいつが手を引いて……うふふふふ!!
あーあ!なんだか別荘を借りたくなっちゃったわ!
どのくらいなのかしら!あぶみ本舗に聞いてみましょっと!
≫141二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:10:05
(ん~~~っと迎えはプリウスでいっかな……オペトレさんから借りてもいいけど傷つけたらデートどころじゃないし……)
(スカーレットにばっか任せるとよくないだろうし、俺の行きたいとこも混ぜとくかな……あ、映画観たいな映画。そうしよっと)
(まあスカーレットはいつも外ではしっかりしてるし大丈夫だろ……でもまあ少しくらいは傷薬とか持ってくかぁ)
(えっと服は……ジャージ、はダメだよな。まあスーツでいっか)
(んで、夜は海の見えるレストランとか行って食べるのもいいかな。ウオトレのみんなからオススメ教えてもらったし……で、その後は……その後、は……だめだめだめ! スカーレットは未成年! 未成年です! うー……ちょっと発散しとかないと……えっとどうするかな。今日は砂多めで……
【30回復した。寝不足気味になった】
≫
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part627【TSトレ】
≫16 二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:43:23
トレセン学園 ウマ娘化トレーナー対抗ローション相撲
とある日唐突に開催されたウマ娘化トレーナー対抗相撲大会。
特にトーナメント制という訳でもなく、くじで対戦相手を決めて一対一で勝者か敗者かを決める単純な規定の下で行われ。
参加した者には景品として
- 勝者には1日特別休暇と日帰り温泉チケット、そして対戦相手を2時間好きに出来る権利
- 敗者には商店街の福引チケット
が渡されるという話を聞いたので参加を表明させて貰ったのだ…………だが。
グラ(独)「どういう事でしょうか、これは……」
相撲大会当日になって新たに知った情報に、俺は困惑する他無かった。
まあ、衣装が学校指定のスク水と白いTシャツなのは今までの経験から諦めと共に飲み込めたのだが。
だがそれよりも俺を困惑させたのは
グラ(独)「ロー……ション……?」
なんと今回の大会は相撲は相撲でもローション相撲だという事だ。
実際、土俵は無く代わりに存在したのはローションがぶちまけられた直径6mくらいの円形のステージ。
……考えるのを止めよう。
そう判断する迄の時間は短かった、流石に慣れたのだ……それ程までに色々有ったのだ、ほんと。
グラ(独)「……さてさて、気を取り直しまして~……私の対戦相手は誰でしょうか~?」
そうこうしている内にくじの結果が出た様なので確認へと向かい、其処で目にした対戦相手は……
- ウオトレ(女)vsグラトレ(独) ※敗者はウオトレ(V)と対戦
グラ(独)「…………ええっ?」
予想外過ぎる展開だった。
≫17二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:43:41
グラ(独)「改めて見ますと~……酷い光景ですね~」
ついに始まってしまったローション相撲大会。
ローションまみれのステージとローションで濡れ透けしている選手達。
一戦目から暴力的とも言える絵面の中で観客は脳とか理性とかを焼かれて泣く程興奮していた。
そんな興奮と熱狂の坩堝を尻目に、俺は静かに対戦相手の事を考えていた。
……考えるのを止めると先程言っていたが、撤回だ、撤回。
グラ(独)「ウオトレさん……それも女性の方と当たるとは……」
聞けばウオシスさんは旧態然とした箱入り娘として育てられたという。
他のウオトレさん達に比べて荒事には向いていないだろう。
グラ(独)「……どうしたものでしょうか」
恐らく好奇心のままに参加したであろう彼女にあまり無茶をさせる訳には……
そこまで考えたが、頭を振って考えを改める。
グラ(独)「……いえ、それではあまりにも不遜ですね」
彼女は戦うのを望んで立ったのだ、ならば全力を持って相手をするのが礼儀だろう。
グラ(独)「…………よし」
腹は決まった
《この次の試合はウオトレ(女)対グラトレ(独占力)です、選手の方は準備をしてください》
そして、それを待っていたかの如くアナウンスが届くのだった。
≫18二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:44:11
先の試合の熱狂冷め止まらぬ会場。
そんな光景を一瞥しステージへと慎重に上る。
グラ(独)「くっ……かなり滑りますね」
予想通りローション塗れのステージはかなり滑り歩く事すら難しい。
鍛えていると自負する俺でこのありさまなのだ、あまり鍛えていないだろうウオシスさんは……
そう思いウオシスさん側を見てみると、まるで生まれたての小鹿の様な有様だ。
グラ(独)「あの~、大丈夫でしょうか~?」
そんな今にも転びそうなウオシスさんがあまりにも心配なので思わず声を掛けてしまう。
ウオ(女)「は、はい、ご心配ありがとうございます」
……そうは言っても危なっかしい。
ウオ(女)「私は大丈夫ですから、グラトレさんも心配せずに本気で来て下さい!」
そんな此方の考えが伝わったのかウオシスさんは気にせず来て欲しいと告げて来た。
……元よりそのつもりだったが……ならばと返答として。
グラ(独)「ええ、ええ、箱入り娘だからと手加減なんていたしませんよ~……全力で勝ちに行かせて貰います」
手加減などしないと宣誓すると同時に闘志を膨らませウオシスさんへと向ける。
ウオ(女)「…………っ、はい! 思いっきり楽しみましょう」
叩き付けられる様な闘志にウオシスさんは一瞬怯むもののすぐさま楽しそうな雰囲気を取り戻し笑顔を此方に向けて来た。
……やはり彼女は強い、そんな想いを秘めながら。
グラ(独)「ええ、楽しみましょう~」
楽しめる勝負の開始を心待ちにするのだった。
《それでは始めます……ウオトレ(女)対グラトレ(独占力)……レディ、ファイ!!!》
そして、準備は整った……そう判断したアナウンスが声高々と試合の開始を宣言し、俺とウオシスさんとの戦いは切って落とされた。
俺は試合開始直後に先制を決めるべく良く滑るローションを活かし、文字通り滑る様な移動でウオシスさんとの間合いを一気に詰める。
グラ(独)「一撃で終わらせます!」
そしてそのままの勢いでウオシスさんに槍で突くが如き勢いで右手を突き出し一撃で決めようとした……その時だった
≫19二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:44:35
……ズルッ
ウオ(女)「きゃっ!」
此方の攻撃を避けようと身体を捩ったのだろう、立つのもやっとだったウオシスさんはバランスを崩して転倒してしまった。
グラ(独)「!!」
この勢いのままではウオシスさんを踏んでしまう、そう判断した俺は咄嗟に跳躍する事でウオシスさんを飛び越えに掛かり
そして見事ウオシスさんを飛び越えて綺麗に着地を決める
……ズルッッ
……が、そんな上手くいく筈も無く見事なまでに着地と同時にローションで滑り
グラ(独)「ローションッッッ!!」 ……ベシャアッ!
悲痛な叫びと共に俺はローション塗れのステージに盛大に転んでしまった。
ウオ(女)「だ、大丈夫ですか!?」
そんなあまりにも盛大に転んだ俺に、ウオシスさんは慌てて体制を立て直し近付こうとしてくれたが
……ズルッ
ウオ(女)「あっ!」
立つ事すらやっとだった彼女は立ち上がる事すら適わずに再度転んでしまい
ベシャッ、ズル~ッ
ウオ(女)「わわわわっ!」
グラ(独)「えっ、ちょっ?」
……ドンッ!
グラ(独)「アアアァァァ・・・…」
ズルズルズル…………ポテッ
近付こうとした勢いそのままにウオシスさんは滑って来て俺にぶつかり
ぶつかられた俺はウオシスさんに弾かれる様に場外へと滑り落ちるのだった……
《ええっ、噓でしょ…………コホン……か、勝ったのはウオトレ(女)だァァァ!!!》 ワァァァ!
ウオ(女)「……ごめんなさい……本当にごめんなさい……」
グラ(独)「だ、大丈夫ですから、元気出してください」
試合内容はともかく予想外の勝者を称える歓声の中、俺はウオシスさんを慰めているのでした。
≫ 20二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:44:5716報告
ローション相撲【ウオトレ(V)vsグラトレ(独)】
ウオシスさんとの戦い(?)を終え他トレーナーさん達の試合も終わり、ついに最終戦となるVトレさんとの試合の番となりました。
《この次の試合はウオトレ(V)対グラトレ(独占力)です、選手の方は準備をしてください》
次の試合を告げるアナウンスが流れ、俺は静かに試合会場へと歩を進める。
試合会場へと辿り着いた俺は相も変わらず良く滑るステージへしっかりとした足取りで上り
同じ様にステージへと上がって来たVトレさんへと話掛けた。
グラ(独)「Vトレさん、宜しくお願い致しますね~」
ウオ(V)「ああ、宜しく頼むよ」
グラ(独)「先程はお見苦しい戦いをウオシスさんにしてしまい申し訳有りませんでした」
ウオ(V)「いや、寧ろうちのお嬢様の方が謝りたいとさ……それより」
グラ(独)「ええ、そんな事をウオシスさんが忘れるくらい楽しい戦いを……ですね」
ウオ(V)「そういう事だ、宜しく頼む」
グラ(独)「ええ、ええ、良い戦いをしましょう」
この試合を見ているウオシスさんが楽しめる戦いをしよう……そう言葉を交わし会話を終える。
そして二人の会話が終わるのを見越したのかの様に試合開始のアナウンスが告げられた。
《それでは始めます……ウオトレ(V)対グラトレ(独占力)……レディ、ファイ!!!》
21二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:45:20
試合開始と共にお互い滑る様に接近し、近付いて直ぐにV互いに相手の胸ぐらを掴み合う。
ウオ(V)「ハッ!」
先制で行動したVトレさんは身体を捻りつつ股下から足を掬う、いわゆる大内刈を放って来る。
グラ(独)「甘い!」
ウオ(V)「ウオッ!」
しかしそれに対し俺は大内刈で掬いに来た足を逆に掬い返す大内返を持ってVトレさんの方をステージに叩き付ける。
グラ(独)「これで終わりです!」
そしてステージに叩き付けられたVトレさんの腕を取り、足をVトレさんの首と腹に掛け腕挫十字固で固めに掛かる。
……足に挟まれてVトレさんの胸が強調されたからか歓声が強くなった気がする。
だが、そのまま完全に固めきろうとしたその時だった。
グラ(独)「……あっ!!」
ローションで掴んでいたVトレさんの腕を滑って離してしまったのは。
グラ(独)「ローションッッッ!!」
……ベシャ
先程と同じ様な悲痛な叫びを上げつつ掴んでいた腕が不意に離れた事で完全に体制を崩しステージに全身で倒れてしまう。
そしてそんな大きな隙を見逃して貰える筈もなく。
ウオ(V)「悪いが、好機みたいだな!!」
腕挫十字固(未遂)から抜け出したVトレさんはその言葉と共に横から俺の腕を取り上半身で圧し掛かる様に寝技を仕掛けて来る。
……袈裟固か! ……ん?
完全にVトレさんに固められてしまった事に焦りを感じると共に別の事に気付いてしまう。
俺は今、袈裟固によってローション塗れのVトレさんの豊満な胸に顔が押し付けられる形となったのだ。
……つまり、息が出来ない。
グラ(独)「んんんんっ!!」
俺の必死のタップで状況に気付いたVトレさんが上から離れてくれたのは意識が遠のきかけた頃でした……
≫22二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:45:37
《激戦を制し、勝ったのはウオトレ(V)だァァァ!!!》 ワァァァ!
勝者を告げるアナウンスと熱狂の渦中の歓声が遠くで聞こえる気がする……
ウオ(V)「す、すまん……大丈夫か?」
ウオ(女)「グラトレさん、大丈夫ですか!」
グラ(独)「……え、ええ、何とか大丈夫ですよ……」
俺を心配してくれている二人の言葉に答えて安心させようとする、酸欠で意識が少し朦朧としているが。
そんな少々朦朧としている頭で思い起こすは先程の試合。
……二連敗するなんて。
ちょっと泣きたくなってきたが、二人が気に病んでしまってはいけないとグッと堪える。
……後でグラスに慰めて貰おう……既にグラスにはそういう弱い所を見せてしまっているからこそ甘えられる。
グラ(独)「ゥ…………んんっ、お二人とも勝利の方おめでとうございます~」
取り合えず泣きそうなのを堪える事が出来た俺は、対戦相手だった二人に称賛を贈る。
ウオ(女)「でも、私は事故みたいなものでしたから……」
ウオ(V)「お嬢、折角の賞賛を無下にしたらいけないよ」
ウオ(女)「……そうですね、すみません……はい、グラトレさんありがとうございました! 楽しかったです!」
そんなウオシスさんの明るい言葉と満面の笑みを向けられて、敗北した事で落ち込んでいた気持ちは和らぐのでした。
グラ(独)「あら? ……そういえば~?」
勝った二人を褒め称える中、俺は勝者に与えられる権利が有った事に思い至った。
グラ(独)「確か勝者には~、対戦相手を2時間好きに出来る権利なるものが有った様な~……まさか?」
ウオ(V)「まあ、そのまさかだ……俺は良いから、お嬢のお願いを俺の分まで聞いてくれ」
ウオ(女)「ダメですよ、Vトレさん! 権利はVトレさんに有りますからVトレさんが使わないといけません!」
グラ(独)「あらあら、叱られてしまいましたね?」
ウオ(V)「……だな……うん、ちゃんと考えておくよ」
ウオ(女)「ふふっ、私もちゃ~んと考えておきますね」
グラ(独)「……お手柔らかにお願いいたしますね~」
そんなに大変な物では無いだろうけど、どんな事を頼まれるのやら……そう思いながら二人のウオトレさんと談笑を続けるのでした。
≫32 二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:55:52
4話 『身長差:▼25→ 』
「ゆーきやこんこん、あられやこんこん。降っては降ってはずんずん積もる……だったかしら。」
「……こんこ、じゃなかったですか?」
「あ、それだわ。ナイスネイトレ。……ホントにそんくらい積もりそうな降りっぷりよねぇ……」
窓から外を眺めながらそう一言。今現在トレセン学園は大雪に見舞われていた。
1時間前の降り始めは可愛いものだったんだがそっから1度も止むことなく、となるとまあ凶悪。絶対明日これ雪かきに駆り出されるやつだよ。33の身には流石にちょっとばかり堪えるて。
「アイネスちゃんは大丈夫なんですか?ここにいないってことは今日もバイトですよね。」
「多分大丈夫、元々冷え込む予報だった分防寒はしっかりしてたもの。傘も折りたたみの持ち運んでるし。」
「なるほど……しっかりしてますねやっぱり。」
「ずっと妹や家族のために頑張り続けてたからね。自ずとそうなったんだと思う。」
だからこそ、俺の前では肩肘張らずにいさせてやりたいんだが……つくづく己の未熟さが恨めしい。
「……そうそう、こたつはどう?ちゃんとあったかくなってる?」
「バッチリです。これを冬の間トレーナー室に置けるならかなり助かるかと。」
「ふむふむ……他には何かある?」
「そうですね……」
続く言葉を1字1句漏れなくメモに書き記していく。
俺のトレーナー室に数日前から設置され今ネイトレが利用してる炬燵は俺とイクトレ先輩の合作。持ち運びと収納をしやすいように二人で考えた試作品であり、貸出の形でトレーナー室に置き、トレーニング後のウマ娘達が身体を冷やして風邪を引く可能性が減るようにしたいと思ってる。まだどうなるか分からんが。
≫34二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:56:15
「これでよしっと。協力ありがとう!ネイトレの意見、大事にするわね。」
「いえいえ。微力ながら力になれて良かったです。ではそろそろ失礼しますね……ってあれ?」
「どうしたの?」
「いや、足に何かが……スマホ?」
誰のだ?前に利用してた人のポケットからうっかり抜け落ちたのか?といくつか疑問が湧いてくるが、それはコタツからネイトレがそれを取り出したタイミングでハッキリした。
間違いない、フウのだ。
「うーん、そう都合よく止んだりはしないよねー……」
明かりの消えたお店の軒下で途方に暮れる。予報でかなり寒くなるとは言ってたからいつも以上に着込んできたけどまさか大雪になるなんて。
「しかもこんな時に限って傘はないし……」
天候は結構変わりやすい。だから何があっても大丈夫なよう、折りたたみ傘は普段から携帯しているのだけど……生憎ながら使いすぎでボロボロになり、買い換えようと部屋に置きっぱなし。オマケにスマホもどっかに落としたようで連絡もできない。
「……やっぱ走るしかないの。」
ここからトレセンまでは大体1kmくらい。雪を一番被らずに帰れる方法は間違いなくこれだ。
大事をとってまだ運動を禁じられてるけど、足もほぼ回復してるしきっと大丈夫。
少しだけ服装を走りやすく整え、構えを取る。
「よーい……」
「ドン、とはいかないからね?」
トン、と頭に優しくチョップが入る。
「……トレーナー!?なんで分かったの!?」
「まずフウが忘れてったスマホをネイトレが見つけてくれて、そこにこれが来たから。」
そう説明をしながらトレーナーがあたしのスマホを画面のついたまま手渡す。そこには『アイネス、傘なしで帰り大丈夫?よければ迎えに行こうか?』というライアンからのメッセージ。
「ずっと外で寒かったでしょ?さ、傘入って。」
≫35二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 21:56:34
「マフラー、あったかいの……いつの間に作ったの?これ。」
「作ってないわ、借り物。出てくる時にネイトレが貸してくれてね。」
言われてみれば絵柄がちょっと可愛らしい気がする。今度お礼言わなきゃ。
……そういえばだけど、このシチュエーションって。
「ねえトレーナー、これも一応相合傘……なのかな。」
「んー、多分そうなると思う。雨じゃなきゃダメとか聞いたことないもの。」
「そっか、やっぱりそうだよね。」
「……もしかして嫌だったかしら……?」
若干不安の篭ったトレーナーの言葉を聞いて、大慌てで首を横に振って否定する。
いやなわけがない、ただ少し過去の記憶が呼び戻されただけ。
「ほら、前にも相合傘したことあったじゃん、1回だけ♪」
「……あー、ダービー直前の。」
ダービーは一生に一度。だからゲン担ぎをしよっ!とカツ丼を食べに行って、帰りに天気雨に降られたあの日も、こうして相合傘でトレセンまで送ってもらった。
もっとも、あの時と傘を持ってたのはあたしだった。でも今はトレーナーが持ち手を握って、あたしがこれ以上雪に当たることのないように調整してくれてる。
……ホントに優しい人だと思う。トレセン学園に来てから数え切れないほどの奇跡に恵まれたけど、1番の奇跡はきっとトレーナーと出会えたこと。
ここまでずっともらってばかりで、何も返せてないあたしだけど。いつかトレーナーに何かを返せる日は来るのかな。来るように頑張らないと。
前とはすっかり違う、凛々しいトレーナーを見下ろすのではなく見上げながら、そう思った夜だった。
≫67 二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:06:11
「あの、グラトレさん…」
「どうされましたか〜?」
中庭で休憩をしていると、ウオトレ(女)に話しかけられた。
「その、この前のチケットを…」
この前、といえば例のローション相撲だろう。
「なるほど〜。何をして欲しいですか?」
「その、ふぁみれす?なるものに一緒に行ってくれませんか?」
「ファミレス…いいんですか?」
ファミレスのためにそのチケット使うのだろうか。
「はい、その、前マクトレさんたちが一緒に行かれてて、羨ましいなって」
「あらあらなるほど」
羨ましくなったということだろう。
「ダメですか?」
「勿論いいですよ〜」
そう答えると、日時を伝えてその日は解散となった。
68二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:07:0016報告
「ここですか?」
「はい、さいぜ、りあ?と言っておられましたので」
サイゼリヤ。言わずと知れた有名な店だ。
「サイザリヤですね。ではいきましょうか」
「はい!」
そうして店に足を踏み入れた。
「すごい…こんなに沢山…」
「好きなものを選んで良いんですよ」
席に座ってメニューを見ながら目をキラキラ輝かせている。
「好きなもの、ですか?」
「はい、ってどうされましたか?」
戸惑ったように首を捻る。
「その…洋食、というものを食べたことがほとんどなくて何を食べたらいいか…」
なるほどそういうことか。
「ほう…じゃあ、私が選んでもいいですか?」
「お願いします…」
申し訳なさそうにもぞもぞとする。
「そんな気を落とさなくてもいいですよ」
そう言って店員さんを呼んだ。
≫69二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:08:0216報告
「ドリンクバーとミラノ風ドリア、イタリアンプリンを全て2つずつでよろしいでしょうか?」
「はい、間違いありません」
店員さんの問いに答える。
「ではごゆっくり〜」
店員さんが離れたタイミングで、
「ありがとうございます、グラトレさん」
そう言ってきた。
「いえいえ、初めてなら分からなくて当然です。そんなに固くならなくても大丈夫ですよ」
そう伝えると疑問と好奇心に満ちた顔で聞いてくる。
「はい…ところでどりんくばぁ、とはなんですか?」
「…………」
まさかドリンクバーをしらない…?
「あう…何か悪いこと言っちゃいました?」
「いえ、じゃあ一緒にやってみましょうか」
「ここで好きな飲み物のボタンを押せばそのドリンクが飲めるんですよ」
「ふぇ…こんなに沢山…」
きょろきょろと何を選ぼうかと迷っているようだ。
「何か飲みたいものはありますか?」
「炭酸、というものを飲んでみたくて…」
炭酸も飲んだことがない…?
「ならこれがおすすめですね」
「そうなんですね、ありがとうございます!」
飲みやすい三ツ矢サイダーをチョイスすると尻尾を振りながら言ってきた。
≫70二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:09:54
「こちら、マルゲリータとミラノ風ドリアになります」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますっ」
「ではごゆっくり〜」
店員さんが運んできてくれた料理を見て目を見開くウオシスさん。
「「いただきます」」
しかし次には固まってしまった。
「…これはどうやって食べるんですか?」
「スプーンで崩して食べるんですよ」
スプーン…スプーン…と心許ない手つきで握る。
「端から削らないといけなかったりは…」
「ルールはありませんから、好きに食べて大丈夫です」
「なるほど…では…」
そういうと小さくドリアを取ってパクリと口に運んだ。
「ハフ…ハフ…」
案の定熱がっている。きっと熱さの地獄絵図だろう。
「大丈夫ですか?」
そう聞くと
「はい、とても熱かったです…ケホッケホッ!」
と、サイダーを飲んだと思ったら思いきり咳き込んでしまった。
「大丈夫ですか!?」
ナプキンを手渡すとそれで口元をぬぐってにへへと笑う。
「はい…喉がぴりぴりして痛いです」
「もしかして炭酸は初めてですか?」
「…お恥ずかしながら」
なるほどそれなら納得だ。
≫71二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:11:26
「ぴざ…これが…なんとまあ……」
ピザカッターで切るかと聞いたら次回切りたいと言っていた。
「こちらがウオシスさんです」
切り分けたマルゲリータを差し出す。
「ありがとうございます!では…」
小さくパクッとピザを食べると、ぶわっと尻尾や髪や耳を震わせる。聞くととても美味しいらしい。
ピザも堪能し、ドリンクを頑張って飲みほし、会計に向かった。
「お会計1400円になります」
「私が払いますね」
そう声をかけると返答があった。
「いえ、私が払います」
「あくまで負けは私ですから」
「うぅ…はい…」
そう伝えると半分納得したみたいに財布を収める。
「丁度、お願いします」
「こちらレシートです。ありがとうございました」
店員さんにお代を払って外に出ると
「うぅ…」
とウオシスさんが唸った。
「どうしました?」
「今度、お礼にご飯を作らせてください!」
お礼、とあらば受け取らないのは無粋だろう。
「あら、いいんですか?」
「はい、奢られっぱなしはどこか、嫌で…」
そうずいっと距離を詰めてくる。
「なら次の機会に、ご相伴に預からせていただきますね」
「はい!!」
そう答えるとニコニコと笑いながらペコリと頭を下げてきた。
「今日はほんとにありがとうございました!」
おしまい
≫81 二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:26:38
トレーナー対抗ローション相撲。
誰だ?こんなこと考えたやつ。思いつくまではまだ良いとして、どうして実行してしまったのか。誰か止める人はいなかったのか?
まぁ「ローション?よくわからんが相撲ってことはタイマンだな!!」って参加した俺が言えることではないのだけど。
あぁ……、このあとヒシアマに「何も考えずに、勢いだけで危ないことするな」って叱られるんだろうなぁ………………。
……後のことを考えても仕方ない。
前の試合が終わり、ローションが撒き直される。
相手は義カフェトレだ。あの義足が弱点だろうか。いや、義足であることを周りに気づかせなかった人だ。多少の影響はあるだろうが筋肉質な肉体を考えると、むしろ強敵だろう。
≫82二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:26:59
「両者、土俵へ上がって下さい!」
…………思ったより滑る。これだけ滑るなら……
「……始め!!」
義足でこのローションに慣れるには時間が要るはず!!
つまり、速攻だ。
「タイマンだ!」
身を低くし、地面を蹴る。黒い風となって、義カフェトレへ突進する。しかし
──ガッ
鍛え上げられた肉体がぶつかる音が会場に響く。
防がれた!?全力の体当たりは体勢を崩すことなく、わずかに後退させただけだった。
だが、これで近づくことはできた。俺と義カフェトレのリーチの差は大きい。離れてしまうと俺が不利になる。それ故、このまま接近戦を仕掛ける!
突っ張り。張り手。足払い。がむしゃらに攻め続ける。
何回攻めただろうか。義カフェトレは躱し、あるいは耐え、そのことごとくを防ぎ切った。こうなったら、さらに力を込めて──
「慣れてきた」
「!?」
突如、後ろへ突き飛ばされた。慌ててバランスをとる。義カフェトレはなんて言った?もうローションに慣れたのか?早すぎる。
足場の有利は無くなり、距離をとってしまった。
義カフェトレのパワーを考えると、まともに食らえば今度こそ土俵の外へ弾き飛ばされるだろう。故に全ての技を受け止めず、いなすか、躱すかしかない。
義カフェトレも理解しているのだろう。俺はリーチ差で攻撃を当てられず、避けてカウンターを狙うしかないことを。
ローションの滑りを利用した義カフェトレの攻撃には隙がない。
≫83二次元好きの匿名さん22/01/13(木) 23:27:21
リーチを活かした攻撃を避け続けることしかできず、俺は土俵際へ追い込まれた。
だが、これまで躱し続けて気づいた点がある。義カフェトレも疲れてきたのか、攻撃にわずかながら隙が生まれつつあることに。
──特に、この右腕を大きく横へ薙いだ直後!
これを見逃すわけにはいかない。間髪入れずに相手の懐へ突っ込む。初手と同じく全力の突進だ。
刹那、義カフェトレの表情が変わった。笑っている?
まさか、罠!?
義カフェトレへ向かった勢いはもはや止まない。その勢いのまま体が傾いていく。
足払いだ。
完全に決まった。油断していた。これまで腕でしか攻撃してこなかったのは、義足ゆえではなかったのか。すべてこの瞬間のため──
時の流れを緩やかに感じる。俺の敗北だ。潔くローションにまみれよう……。
…………やけにゆっくり落ちていくな。……!?このままだと頭から落ちる!やばい!受け身が間に合わない!!
傾いた世界で義カフェトレと目が合う。義カフェトレは慌ててこちらに手を伸ばしていた。
──ビチャン!
2人そろってローションに落ちた。
「ヒシトレさん大丈夫!?」
「助かったよ義カフェトレ。ありがとう。義カフェトレこそ大丈夫?」
どうやら義カフェトレがうまく受け止めてくれたらしい。2人ともローションまみれになってしまったが。
「俺の完敗だよ。良いタイマンだった。ありがとう」
「いや、ヒシトレさんの勝ちだよ」
義カフェトレが俺を助けようと手を伸ばしたために、先に地面に手をついたからか。
「──それで、僕に何をして欲しい?」
「……それなら、栄養管理について教えてほしい。具体的には他のカフェトレ達のために一緒に料理作らせて」
手を取り合いながら立ち上がった2人は笑い合いながら未来の話をした。
それはそれとして、筋肉質で健康的な肉体と褐色ロリ巨乳の2人がローションを被った姿は観客に刺さった。
ローションまみれのヒシトレは、ヒシアマのどこかにも刺さった。どのみち、説教はは行われるのだが。
≫142 ☆とある年の一月七日22/01/14(金) 11:10:42
ここはタイキトレのトレーナー室。コタツを囲むは部屋の主とその担当、そしてシーキングザパールとそのトレーナー。パルトレだけがどこか緊張した様子でいる。
「───せりなずな ごぎょうはこべら ほとけのざ
すずなすずしろ どれかわからん
……ども、タイキトレです」
「そして!これがジャパニーズ・ナナクサガユでーす!ハイ!パールさんの分!」
「ふふ。ありがと」
「ほい、これがパルトレちゃんの。どぞどぞ食いねぇうちらも食うから」
「え、ええ……」
「そんじゃみんな手を合わせてー。合わせた? はいっ」
いただきます!
「……朝から突然連行された時はどんな目に遭わされるのかと思いました」
「トレーナーは考えすぎよ。想像通りの楽しい催しだわ!」
「パールさんならノってくれると信じてまシタ!」
「それでもなぜ私たちなのかというのは疑問に残りますけど」
「それがさ、タイキと自分用に七草がゆセットを二つ買ったつもりがねぇ」
「……一セットが二人分だった?」
「そそ。これじゃもったいないってんで適当に目についた二人を拉致ってきたというわけよ」
「結局適当?しかも臆面もなく拉致って言いましたね?」
「ニンイドーコー、ですよネ?」
「任意……間違いないわ!世界へと駆ける私たちの道は私たちの意志で進んでゆくのだから!……ふー、ふー」
「ふーふーできてえらい。あ、パルトレちゃんもヤケドしないでねー?」
「お気遣いありがとうございます……
!!……美味しい」
「市販のに少ーしだけ創味のつゆ散らした。ただそれだけでまーウマイ」
≫143☆とある年の一月七日22/01/14(金) 11:11:30
「……一年の健康を祝う行事食。本当は朝食に食べるものじゃなかったかしら」
「およ?海外勢だから知らないと思ってた」
「謂れだけはね。実際に食べることは然程なかったし」
「世界に通じるということは当然日本にも通じるということ!トレーナーなら知ってて当然ね!」
「パールさんは?」
「よく知らなかったわ!!!」バーーーン!!
「ワオ!ナカマでーす!!」
「うーん。まあ午前中だし、朝ってことでいんじゃない?」
「適当ね……まあそういうことにしてあげるわ。この滋味(じみ)に免じて」
「寛大だわぁパルトレちゃん」
「トレーナーさん!オカワリ!」
「人の話聞いてた?4人分しかないんだからこれで終わりだよ」
「……カーラーノーーー??」
「どーこでそんな悪い言葉覚えたのタイキ!ないったらないの!……お昼ご飯減らしていいんなら考えてあげるけど?」
「ノーーウ!?カンダンさが足りまセーン!!」
ヤイノヤイノワーワー
「……騒がしいわね。この二人」
「でもトレーナーも楽しそうよ?」
「そうかしら?」
「笑ってるし、敬語が抜けてる」
「……やだ」
微笑むパールの目線から逃げるように器に残る粥を口に入れる。豊かなだしの香り。噛めば若草は少し苦くて、でもお米がほんのり甘い。
目の前にいる傍若無人の先輩から提供されたものだと思うとなおのこと、パルトレには複雑な味に感じられた。
(終)
≫167 二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 13:44:18
───某日、トレセンの片隅で
「…あ〜…」
「キタトレさん、前よりは楽になりましたか?」
「そうね…」
部屋のベッドの上で、横になりながらマッサージされているのはキタトレ───マッサージしているのはチヨトレだった。
「始めてのマッサージは大分痛かったわね……っ」
「キタトレさんは最初の頃、8時間睡眠どころか徹夜も週1ペースでしていたのですから、それでは不健康で痛くて当然です」
「…その時は忙しかった覚えはあるのと、貴方に3徹明けで見つかって半強制的に休まされた記憶もあるわね……っぅ…」
「目元に隈作って書類整理してる人を放っておける訳がないですよ。しかも反応が0コンマ数秒くらいいつもより遅かったですので。」
喋りつつも手を止めないチヨトレ、うつ伏せたキタトレの脇窩や膝窩を押し込み、揉み込んでいく。
「んっ……」
最近は仕事も落ち着き(当社比)、またキタトレ自身一応健康に気を遣ってるのもあってか痛み以外にも少し心地よい感覚が襲う。
…当然、キタトレの常に掛けている抑えが緩くなり、いつもならコントロールしている色気がふっと漏れ出す。
「…仰向けになってください」
「ん、分かったわ…」
ころりと仰向けの姿勢になるキタトレ、うつ伏せの姿勢で潰れて変形していた2つの山も大きく主張する。
(結構痛いけど、中々どうして気持ちいいわね…)
鼠径や肘のあたりから感じる刺激に、声を殺しつつ耐えるキタトレ、時間の流れもゆっくりに感じていた。
「…これで終わりです」
「ありがとうねチヨトレ、良かったわ。」
軽く感じる体を少し伸ばし、満面の笑みを浮かべたキタトレはチヨトレを軽く引き寄せて撫でると
「貴方も無理しないでちょうだい。いつでも私の元に来ていいわよ。それじゃあね」
離して去っていくキタトレを見送った後、チヨトレは彼女の程よく締まった体に触れた感覚を思い出し…
(柔らかかった…マッサージの時も凄く扇情的な…って心頭滅却、心頭滅却…!)
…頑張って耐えていたらしい。
短文失礼しました
他人に世話焼きで自分をおざなりにする二人ということでキタトレにチヨトレがリンパマッサージするお話。(オイルは別の人で…)
チヨトレ的にはキタトレのサイクルは多分アウトだろうし、むっつりとのことなのでこうやって思い出しては心頭滅却してそう(偏見)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part628【TSトレ】
≫104 二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 17:12:2017報告
『昔話談義~因幡の白兎~』
「最近話題に上がっていますが、兎といえば因幡の白兎ですね」
「あー、あの……なんだっけ、皮剥がれたやつ」
「ブラトレ、もうちょっとありませんでしたの?まあ私も詳しく知っているわけではないのですが」
「正しい意味での『古事記』にも記載のある由緒正しい兎ですね。離れ島から本土へと渡りたい兎が和邇を騙して本土へと渡り、渡りきる直前に嘘がばれてしまい皮を剥がれてしまいます。そこに通りかかった八十神にさらに騙され、その後大国主命より助けられる……といった流れですね。……因みに和邇に嘘がばれた理由は最後の最後で口を滑らせたせいです」
「自業自得では?」
「まあそうですわね。そもそも黙って渡り切れば問題はなかったでしょう」
「……ん?ワニ?え?バントレ、渡ったのって海だよな?」
「ええ、和邇(ワニ)。謎の生物です。挿絵からすると鰐ですが、ほかには鮫という説もありますね」
「私が昔読んだことあるバージョンではダイレクトにサメでしたわねえ」
「そのあたりは絵本の都合もあるでしょうね。まあ、どちらでとってもよろしいかと」
「皮剥がれた後に更に騙されたって、何されたんだっけこのウサギ」
「『海水を浴びて風にあててから寝なさい』ですね」
「死ぬ!死んでしまうぞウサギ!」
「想像したくありませんわねー……」
「その後通りすがりの大国主命により正しい処置を受け、無事回復しました。水で洗う、薬を塗る。まあかなり簡略化された表現とはいえ適切な方法でしょう」
「ケガは発生後の迅速な処置が一番大切だからなぁ」
「それでも皮ズタズタにされた上で塩水風コンボを叩き込まれたウサギはよくそこで死にませんでしたわね……」
「想像したくはありませんが、大国主命に出会った時はすでにかなり危ない状態だったと思われますね。何より出血がひどかったでしょうから」
「沁み方半端ねえと思うぞこれ、全身から塩が……想像するだけで痛い」
「無事助かった兎は大国主命へちょっとした予言……のようなものを与えます。その後大国主命は当初の目的であった八上比賣への求婚を成功させたため、兎神として崇められたとのことです」
「……元々はただの嘘ついてまで本土に渡りたかっただけのウサギですのにねぇ」
「信仰というものはそういうものでしょうね」
≫144 二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 18:53:39
『4ひきのモルモットくん』
「……トレーナー君、これは?」
「あっタキオン聞いてよ。寮でモルモットを飼ってる娘がいてさ。ルームメイトの娘共々遠征に行くからその間面倒を見てくれないかって」
「それで、担当に頼まれて人権を投げ出してしまうぐらい頼みごとを平然と聞くモルモット君は特に迷うことも無く承諾してしまったと。というか、トレセン学園の寮はペット禁止のはずだけれど用語教諭としてそこには突っ込まないのかい?」
「モルモットを飼って同室の娘以外に迷惑をかける相手とかは特に居ないだろうからね。ちゃんと話を付けてあるならこっちからは特に何も言えないよ」
「今こうしてキミの手を煩わせている時点で問題あると思うんだけどね……トレーナー君がそれで良いなら私も構わないよ」
「ありがとうタキオン。ちょっと迷惑をかけちゃうかもしれないけどよろしくお願いね?」
「トレーナー君なら私の実験の手伝いも私の世話もちゃんとしてくれると思うからだよ。いいね?以前と変わらないレベルを保つんだよ?」
「大丈夫。そこはちゃんとやるよ。それにしても可愛いね。預けてくれた娘が可愛がってるのも良くわかる気がするよ」
「私としては実験動物以上の感情はないけどねぇ。トレーナー君からすると可愛いのかい?」
「勿論。ほら、この口が動いているところとか弁当を食べている時のタキオンに似ていて可愛いよ?」
「人をモルモットに似ているとかキミも随分偉くなったものだねぇ……それにしてもククッ、モルモットか」
145二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 18:53:48
「どうしたのタキオン?」
「いや、ここにはモルモットが4匹いるなと思ったんだよ」
「4匹?2匹じゃなくて?」
「いいや、4匹さ。キミの手と肩に乗っているので2匹にトレーナー君、そして──私。私の実験動物なモルモット君と自分を実験台にしている私含めてね」
「4匹か……」
「そう考えると仲間意識が湧いてくるような気がしてくるね?ふふ、こうして見てみると愛嬌がある顔を「タキオン」……何だいトレーナー君?」
「タキオンはモルモットじゃないよ。いつも必死で、全力で、ひたむきな人だもの。だから、もう少し自分の身体を大切にしてくれると嬉しいな」
「……わかってるよ。比喩の話さ比喩の。まったく、たとえ話を理解してくれないモルモット君には困ったものだね。キミが居るんだからそんなことするはずもないだろう?」
「……ありがとう。今日は腕によりをかけて夕ご飯を作るから許してくれないかい?」
「それを言うからには楽しみにしてるよ。それにしても可愛いねぇ…‥」
タキオンと一緒に預かったモルモットたちを撫でていく。栗色の毛をしたそれは手の動きに合わせて気持ちよさそうに体を震わせて、もっと撫でろと言わんばかりに身体を擦り付けてくる。その姿を見ると何と言うか、さっき自分で否定した癖にタキオンがモルモットに似てるようなそんな気がしてきた。
その日、タキオンの実験室には4つの栗毛が仲睦まじそうに過ごしていた。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part629【TSトレ】
≫65 二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 21:41:53
『ふつう』
「普通って何だろうな、ブラトレ」
「知らぬ、他をあたれい」
「冷たい!そこはもうちょっと悩んでくれてもいいでしょ!」
「いやだってダストレよ……人それぞれで定義がとっ散らかりまくるじゃねえか、普通っていう単語そのものが」
「……確かに」
「まあまあ、ポッキーでも食べるといいよ」
「フラトレ……うっイケメン美女……ポッキーありがとう……」
「でも話してたら何のことはない一般人だぞフラトレも」
「自分が特別な何かってことは考えたことはないかな?あぁ、でもフラッシュにとっての特別でありたいとは思うよ。……いや、特別?ともにある存在?常に一緒にいるということが普通ならそれは特別ではない……?」
「堂々巡りになってるぞ甘いもの食べて落ち着きなさい」
「ふっ、お困りのようだねダストレさんたち」
「ウワーッムントレ!もっと顔面偏差値が上がる!」
「普通と特別って何だいムントレや」
「それはだねブラトレさん、比べて変わらないことが普通というのならば、十人十色、千差万別。人々を詳しく比べれば、誰もが特別な存在であるといえるだろう。決してそれは誇張ではないよ、同じような顔つき、同じような生活であったとしても歩んできた道のりは少しずつ違うだろう?」
「んーまあ確かに?」
「だが、特別だからといって何一つ同じ経験をしないということはない。……というわけで一本拝借」
「いいよ、いっぱい買ってあるからどんどん食べてね」
「これで、私とダストレさん、フラトレさん、ブラトレさんは同じ時を同じ袋から取り出したポッキーを食べて過ごした関係となったわけだ。それだけで簡単に共通点なんて増えるものさ」
「同じ飯食って笑いあえば仲間ってやつか」
「ふふふ、そういうことさ。わかったかい?」
「……そういうことにしておくかな……ポッキーうまし……」
≫80 二次元好きの匿名さん22/01/14(金) 22:52:19
普通の定義
「普通の定義とは〜、ダストレさんはまこと難儀な事に挑んでおられるのですね~」
「……えっ?」
「普通とは〜、人や場所、時代によって変わるもの故に……普通の定義とは難しいものでして〜」
「…………いや、あの、グラトレ?」
「はいダストレさん、どうされましたでしょうか~?」
「此処3階だよ?」
「ええ、分かっておりますよ~?」
「なんで外に居るの!?」
「屋上からの懸垂下降で外壁に身を寄せる……これなら見つからないでしょう~」
「見つからない? 隠れてるの?」
「かくれんぼとの事でしたので~」
「そこまでする!?」
「それこそ先程のお話ですよ~、かくれんぼと言えども勝ちに行くのは私にとって普通なのですよ~」
「3階の外壁に張り付くのは普通なのかなぁ……」
「人によって普通の基準は違う……という事ですよ〜」
「納得いかないなぁ……」
うまぴょいうまぴょい
≫110 二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 08:28:53
「…あれ、何だこれ?『トレセン学園における禁止リスト』?」
───某日、トレセン内でウマホを起動していたファイトレ(男)は、ふと見慣れぬサイトのリンクがあることに気がついた。
「…ウィルスとかでもないし開いてみるか…」
リンクをタップし、そのサイトを開いた。
────
13.冬場の時期にサトトレ達ちっちゃいものクラブをゆたんぽとして長時間独占することはやめてください。
ⅰ.ちっちゃいものクラブのメンバーもほいほいと抱かれないでください、特にサトトレ、貴方の事を言っています。
ⅱ.シビトレはちっちゃいものクラブではないからセーフではありません、彼女も逃げています。聞いてますかよく抱いてる人達!
────
14.ルドトレ、ゴルトレ、ムントレはトンチキな行動に周りを巻き込まないでください。脳がバグる者が多発していてます。
ⅰ.トンチキな事を吹き込むのも駄目です。一度聞いたウオトレ(女)が真似しようとして周りに多大な心労が掛かりました。
────
15.マルトレを唆して年上の人に当て、大ダメージを与えるのは今すぐにやめてください。既に何人か致命傷を受けています。
ⅰ.マルトレの行動で以前ヘリトレが機能不全を起こしています。このような年長者の寿命を縮めかねない行為は容認できません。
────
16.ウマ娘になったトレーナー達は周りの性癖を粉砕していく事をやめてください。意識無意識問わずです。
ⅰ.貴方達は普通に過ごしていようが何だろうが性癖に対する大量破壊兵器です。自覚しているのですか?
ⅱ.だから無差別に破壊するのはやめろと言ってるだろ!精密爆撃も大して変わらないわ!
────
「流石にこれは…くくっ…」
堪えきれなくて笑うファイトレ、切実なのは明らかに分かるがあまり関係ない一トレーナーからすれば喜劇染みていた。
「ねえねえトレーナー、何見てるの?」
「…いや、何もないよ。」
「もう、教えてくれないの?」
「駄目だよファイン…」
───その後、おねだりにやられたファイトレは例のサイトを見せ、ファインと二人で笑っていたらしい。
≫133 二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 11:30:29☆ぶらり辻湯たんぽの旅
「……ちっちゃいのを長時間湯たんぽしちゃだめなんだってさ。誰がそんなことしてんだろねー」
「タイキトレさんじゃないかなって」
自分の腕の中にいるダストレさんがジト目を向けながら答える。なんと失敬な。長時間はやったことないぞ。シビトレちゃんに関しては二時間チケット使った結果だしセーフセーフ。
「そもそもなんで俺が湯たんぽの対象に……」
「それが昨日ネットでね? ダストレさんとネイトレちゃんがやってたインタビューの切り抜きを久々に見てさ」
「切り抜きできてるの!?」
「あれ知らない? よくある話だけどインタビュー本編より再生伸びてんだよね。……これこれこの動画」
「……うわマジだ」
「それ見てる内に『ダストレさんには適正があるんじゃないか』と考えたわけで」
「……今更ながらネイトレェ……!」
握り拳を震わせるダストレさん。ごめんねネイトレちゃん、いつか小パンチが飛んでくるかもしれん。
……しかしながら、抱いてはみたもののイマイチである。じわじわぬくくなってるようにも思えるけど現状自分が湯たんぽでないかな。
「もうちょい近くないと熱が伝わらんかぁ……?」ムギュ
「……ッスゥーー」
「息の整え方にさりげなさがまるでないんよ」
「自分の破壊力分かってる……?」
「なんだなんだー、気になってんのかい? じゃあ、おっぱい揉む?」
「……いいの!!???」
「え?」
「え?」
かっ開かれた目……あれ。まさか乗り気になられるとは予想外。
≫134二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 11:30:38
「分かってはいると思うけど、これはほんの冗談で」
「念の為聞くけどその胸いいんだね!!?」
「いや、ちょっとだけ待って」
スカーレットちゃんの名前出して正気に戻してやろうかとも考えたけど、自分から言った手前それは不誠実か?……人畜無害そうな面しといて意外とこの男(?)、オープン助平である。ここで下手に渋ってるところを襲われてしまうよりは双方合意の方がお互いの傷にならないんじゃなかろうか。
そんな事を考えてると、ギラついていたマジ顔が一転、イタズラで呆れ半分な笑顔になる。
「……なーんちゃっt「なにやってんのアンタ」」
……種明かしをさえぎる第三者の静かな声。体感温度が一気に下がるのを感じる。二人して振り返ると、そこにはやっぱりダストレさんの愛バ。噂をすれば影、まだ脳内だったのによう聞こえとる。
「もう一度聞くわ。なにやってんのアンタ」
「……誤解ですスカーレット」
「敬語になってしまうほど後ろめたいのねよく分かったわ」
「ダストレさーんなんかさむーい(棒)」ムギューッ
「……ッスゥーーーーーー!?」
「息飲んでないで動きなさいよバカ!!!」
「そだ。一緒にダストレさんサンドイッチしない?」
「そっちもいい加減離れろぉーーー!!!」
……その後合流したタイキが場をかき乱した結果、スカーレットちゃんを三人で囲んで湯たんぽとすることで事態は無事収束したとさ。
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part630【TSトレ】
≫6二次元好きの匿名さん21/12/13(月) 16:08:13
「俺には夢が……あるな、いっぱいあるわ。でも夢を守ることはできる!」
「しょっぱな躓いたぞコイツ!「でも」が接続しきれてねえ!」
「まだまだエミュが足りないね!」
「うっせーやいブイトレにベガトレ!ほぼほぼ作中と同じことできるほうがおかしいんだよホントは!」
「まあ確かにこの部分はエミュがどうののレベルではないねえ」
「体質……いや体質でいいのかこれ?」
≫31 二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 14:31:35
「お邪魔しまーす」
自宅で本を読んでいると、ルドトレがやってきた。
「何してるの?」
「読書してました。ルドトレさんが来るまで」
外は雪が降り、白化粧になっていた。
「ガレージ片方借りたけど、よかった?」
「ええ。まだあそこに入る子は見つかってませんし」
そう言いながらチャチャっとコートを脱ぎ、黒い縦のセーターを着たルドトレに変わった。
「いやぁ、でも何度見てもすっごい部屋ね」
「なんとでも言ってください」
そう少し辛辣に返すとむすっとした様子で
「外、出た?」
と聞いてきた。
「でませんよこんな雪の日に」
「そうよね、雪といえば寒い、寒い日といえばストーブ…でもこの部屋ストーブないわよね?」
「本が燃えますからね。それにブランケット一枚あれば寒い感じはしませんし」
「シビトレちゃんあったかいもんねぇ…」
そう言いながらジリジリと近づいてくる。
「ねぇ…シビトレちゃん?」
「はい」
物凄く嫌な予感がする。
≫32二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 14:32:07
「お覚悟ーっ!」
寒さに頭をやられたのだろうか。体を低くしてこちらに向かってきたと思ったらブランケットの中に潜り込んできた。
「狭いです」
「あ〜ぬくぬく…ああぁ…」
この人、私で暖をとる気だ。
「離れてください」
「いけずぅ〜こんなにぬくいのに〜」
剥がそうとしてもセミみたいにくっついてきて離れない。
「もういいです…好きにしてください…」
「それを待ってたわよ」
そう言うと膝の方に回って胡座の中に座った。
「あの、読みにくいです」
「身長ほぼ一緒だもんねぇ。でもいいじゃないの…」
「どこのエレキテル連合ですか」
そう突っ込むと徐に積み上げられていた本を一つ手に取った。
「特撮の世界…シビトレちゃん、特撮好きなの?」
「いえ、作り方に興味があってどう作っているのかなと」
ふ〜ん、と返答をしたかと思えば分厚い大判の本を手に取った。
「こっちは医学書…ドイツの方の研究機関ね」
「向こうの方の新しい論文です。ウマ娘の筋肉の構造が少しだけ判明したらしいですよ。まあそれも氷山の一角らしいですが」
そう伝えながら手元の小説を読み進める。
≫33二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 14:32:33
ふと、彼女が目に少し悪戯心を含んでこちらを見てきた。
「ねえシビトレちゃん」
「なんですか」
とてつもなく嫌な予感がする。
「えっちい本はないの?」
想像以上にくだらなかった。
「ありません」
「え〜…こんなに沢山本があるならそういう1冊や2冊くらいは隠してるんじゃないの?」
「頭うまぴょいですかあなたは…」
「ねぇねぇどうなの?」
しつこくせがんでくる。
「そりゃ物語の最中にそういう描写はありますよ。でもそれオンリーなのはないですよ」
「むっつり?」
「違います」
何かい言いたそうにしていたがちぇ〜、と至極つまらなそうに漏らした。この話題は終わりだ。
「あ、そうそう」
「どうしたんですか?」
何か思い出したように声をかけてくる。
「このあとね、グルトレとマルトレも来るから」
「…は?」
聞いていない。全くもって聞いていない。
そう思うのと扉の開く音がするのは同時だった。
≫51二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 16:58:45
「うーん……」
年末年始特有の忙しさが過ぎ去った後、私は1人、寮の自室で唸りに唸る。
視線の先にはちょっと変わった彫刻刀が入った箱。先日のクリスマスに開かれたプレゼント交換会で私に回ってきたもの。
抽選ミスに巻き込まれたり自分のプレゼントを受け取る事になったドベトレのフォローをしたりで誰からのプレゼントかは結局分からなかった。
ただ調べてみるとフルーツカービングという果物や野菜を対象とした彫刻専門の物らしい。これ、かなりの当たりでは?お礼を言えなかったのがなおさら悔やまれる。
まあ拉致のあかない後悔は置いとくとして、もらったからには使いたい。でもさすがに最初から1人でチャレンジは危険だ。彫刻刀は一応扱ったことあるけど、平面と球体じゃ間違いなく要求される事が変わってくる。
誰に教わろうか。オグトレなら知ってるかなと思考を巡らせて……ある事に気づく。
「飾り切りと似てる……」
交換会とはまた別の、同期だけでやったクリスマスパーティの時にルドトレが見せた飾り切り。フルーツカービングで調べて出てきた写真はそれにとても似ていた。
彼女ならフルーツカービングも分かるのかな。聞いてみるだけ聞いてみてもいいかもしれない。思い立ったら吉日、なんて言葉もあるし。
「はい、できますよ。というかその彫刻刀を交換会に出したの、あたしなので。」
「そうだったの!?!?」
……まあホントにいい事があるなんて思いもしなかったけど。
≫52二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 16:59:13
「……そういえば。今更になっちゃいますけどありがとうございました。」
「んえ?」
そう切り出されたのはフルーツカービングの指導を快諾してもらって、最初のお題をどうしようかと調べてる時だった。
「……感謝べきなの、リウトレじゃなくて私だと思うんだけど……」
「あ、フルーツカービングの事ではなくて……シリウスとの事で相談に乗ってもらったので。」
「……でも私、結局話聞くだけで助言とかはしてあげれなかったよ?」
「それだけで十分なんです。声とかから真剣に考えてくれてた事は伝わりましたし、溜め込んだものを吐き出せたような気がして少し楽になれましたから。」
「……そっか。それなら私も嬉しい。」
溜め込みすぎがよくない事はいやというほど実感している。私の相談がそれを防ぐ一助になったなら、これほど喜ばしいことはないだろう。
「それともう1つ伝えとかないといけないことが……」
「シリウスとの事?」
「……知ってるんですか?」
「うん、他の人から聞いた。おめでとう。」
「ありがとうございます。担当との関係性としてはちょっとアウトかもしれませんけど……」
「……問題ないと思うな、私は。」
「えっ?」
キョトンとしたリウトレに続けて思いを伝えるべく言葉を紡ぐ。
「人それぞれに個性があるように、関係それぞれにもきっとあるべき形には違いがある。だからそれで担当側もトレーナー側も心の底から幸せだって言えるなら、私はそれでいいと思うんだ。まあもちろん片方が不幸になってるとかは論外だし、ある程度の節度もちゃんと弁える必要はあると思うけどね。」
それは私なりの応援であり、あの時にはあげられなかったもの。
「きっとこれからも苦難とかあるだろうけれど。……シリウスと幸せにね、リウトレ。」
「……はい。アドバイスありがとうございます、スズトレさん。」
「……よし、一段落ついたし話題戻そっか。」
「フルーツカービングですね。お題決まりました?」
「リンゴにしようってとこまでは。ただそれをどうやるかまでは……」
「なるほど……リンゴなら初心者でもできるのがいくつかありますし、あえて決めずに行くのもいいかもしれません。」
「あ、そうなの?……じゃあ任せちゃってもいい?」
「もちろんです!」
そんなこんなで後日、私の趣味がまたひとつ増えることになるのは、最早言うまでもないだろう。
≫61二次元好きの匿名さん22/01/15(土) 17:13:49
≫41 ◆(ノーコメント)
なんで??どうして??? ネイトレは自宅で悲嘆に暮れていた。
クリスマスの交換会大量の戦利品を入れた紙袋、その底敷として贈り物に紛れていた薄い大判雑誌は表紙からして18歳未満お断りをアリアリと表していた。
タマトレさん、そんな人じゃないと思ってたのに!!!……いや、実際にそんなつもりはなかったかもしれない。結構色褪せた紙袋、そして裏面の記載からして雑誌自体もだいぶ前のもの。元々紙袋の下に長いこと潜んでいた爆弾が今日この日、自分の家で爆発してしまっただけかもしれない。なるほど、シュールストレミングに続いて第二の爆弾ということか。……第三の爆弾があるかもしれないけど、怖いので確認しないこととする。
……そうだ、いくらなんでもこんなものを仕込んでおいて黙っているような人じゃないはずだ。いつまで経ってもブラは着けないし、パチンコ銀行にお金を預け続けては「トータルでは勝ってるから」とか言っちゃう人だけど、非常識ポイントはあくまでそのぐらい。飄々としつつも真摯で人当たりも良い優しい人なのだ。少なくとも私にとってはそんな人なわけで、今回のはきっとそんなタマトレさんですら意図していない、なにか運命のイタズラのようなものなのだ。そうであってほしい。そうに違いない。いやそういうもんだ!答えは聞いてない!いや!教えようとしないで神様!!
(斯様にして人は信じたいことだけを信じようとするのである)
……しかし紙のエロ本とは本当に懐かしい。地方のコンビニに入ればそういったものは売られてるものだが、さすがに手に取ったことはない。ただ、レディコミの類ならその昔、小学生の頃お家探検をした際に両親の部屋から発見して読んだ覚えが……いやそんな話はどうだっていいのだ。問題は目の前のこれだ。
おそらくは、というより表紙に書き連ねてある文言を見るに十中八九SM系雑誌。表紙を飾るのは裸のまま縛られた女性。……3つ上の先輩が脳内でひょっこり顔を出してこようとするのを必死に追い出す。お呼びじゃないです。
……この表紙の女性がほんの少し、ほんの少しだけ、100人中3人と共感してもらえないだろうけど、昔の自分に似た顔立ちなのが本当にいやらしい。しかもこの女性の特集が組まれているようだ。
……いやほんと、どうしよう。本当に。
───その後の雑誌の行方は、誰も知らない。
(終)
≫ 蒼の"そういう"話 1/522/01/15(土) 21:25:3014報告
夜。
今日も今日とてスマートファルコンはアイドル雑誌を読み漁る。
今日はルームメイトのエイシンフラッシュは外泊届を出している。即ちそれは彼女の時間的監視が無いことを意味し、出来るだけそういうことはないように努めるが、万一就寝時間をオーバーしてしまったとしても誰も咎める者はいない。
トップウマドルたろうとする彼女にとってアイドル雑誌とは重要な参考文献であり、かつ敵情報の宝庫であった。ユニットのインタビュー、Live情報、懸賞……魅せ方の流行と伝え方の変遷、それらすべてを余すことなく取り入れ、分析する。勿論、純粋にアイドルたちの情報を楽しむ意味合いもあった。
1冊読み終え、手を伸ばした先は漫画雑誌。意外ときちんとしたインタビューや情報が入っていることもあり、侮れない。
表紙に記載の通り、当該ページを開けばなかなか大胆なグラビアが載っていた。ただこうした魅せ方も参考にはなるし、する機会が絶対無いとは言えない。こういう写真も彼女のアイドルとしての立派な武器だし、ロケ地情報なんかも覚えておけば何かの時に役に立つだろう。
しかるに。結構際どい部類に入るその写真を見て、スマートファルコンは一つの疑問に思い至った。
───トレーナーさんって、“そういうの”に興味あるのかな?
≫148蒼の"そういう"話 2/522/01/15(土) 21:25:5414報告
一度思考の端に捉えてしまったら、もう目の前の紙っぺらなどどうでもよくなってしまった。
思い起こされるのは彼女(本来は彼なのだが本人はどちらかというとそう呼ばれたくはないらしい)の部屋。床と壁の大部分を覆うケイオス。それと対照的に部屋の一区画に最早畏怖すら覚えるほどに実現されたコスモス。
その内の秩序の世界に恭しく霊祀された自分のグッズたちは、おしなべて健全なものである。作りの細かいフィギュアはあれど、かつてそれを隅々まで監修していた時の彼女(その時は彼だったので早速ややこしくなっている)の目線は真剣そのもの、そういった感情の欠片も見えなかったし実際少し複雑な心境になった。
また、直近の異変を思い返せば、過激な寝間着で同衾(原義)をしたときも、共に入浴をしたときも、そんな視線は一切感じなかったしやはり少し複雑な心境になった。
では、念のためいつでも棄却可能な仮定として自身がそういう対象ではないとすると、次に思考が赴くは部屋一面の渾沌。そこにはいわゆるゴミと定義される(少なくとも彼女にとっては)ものは存在しない。したがって最低かつ下賤の極みな観測だがそういう後始末の様子は見えなかった。
ではゴミではないものたちは?床に散乱し、一方で天を衝く塔を形成する書籍や冊子の山。その中に“そういうもの”が紛れているとしたら(ちなみに電子書籍という存在は彼女の思考から抜け落ちてしまっていた。お分かりかと思うが彼女は既に冷静ではなかったのである)?残念ながらそれを確認するのは困難を極めるだろう。最近やっとトレーナーが遺した室内の轍を捕捉・追尾することに成功し始めたスマートファルコンにとって、その塁塞をほっくり返すことは自らの退路を塞ぐことに他ならない。あとなんか信用してないみたいでヤダ。それを言ったらこの思索も不適切になってしまうが。
堂々巡りに陥る思考、答えなど自力で見つかるはずもなく。順調に思われた自習は、思わぬ伏兵によって夜を跨いで滞り、畢竟彼女は見事に朝日を拝んでしまったのである。
体力が30回復した
「夜ふかし気味」になってしまった
≫149蒼の"そういう"話 3/522/01/15(土) 21:26:1414報告
さて。翌日努めてそんな様子を見せまいとしたスマートファルコンであったが、彼女が誰より尊敬して信頼する人物にバレないわけはなく。しかしそれを指摘される同時に宵っ張りの理由を追求されて、説明するわけにもいかず。
程々の吸音効果しかないはずのレッスンルームは、配慮ゆえにいまいち責めきれないトレーナーと、そんな心馳に際限なく罪悪感を積み上げているその担当によって、異様なほどに気まずい沈黙が流れていた。
そんな空気に苛まれる内。既にこれ程までに居た堪れないならこれ以上はないだろうと腹を括った、即ち一般的に言えばやけっぱちになったスマートファルコンは、先日から心を捕らえて離さないそもそもの疑問を遂に師にしてある種の同僚に投げ掛けた。
「その……いや、答えたくなければ答えなくていいんだけど……トレーナーさんってそのー、あー……“そういう気分”になることって……あるの?」
ウマドルの口から出たとは思えない質問。毒気に当てられたとはまさにこのことかとでも言わんばかりの呆け顔。今までどん底と思っていた最低を更新して積載され続ける気まずさ。「いやそういう仕事もあるっちゃあるしそういう目で見られることもあるだろうし」と更にらしくない言い訳を連ねようとした矢先、辛うじて思考を再開していたスマートファルコン担当トレーナーはそれを遮るように───。
「ないわね」
きっぱりと。言い切った。
≫150蒼の"そういう"話 4/522/01/15(土) 21:26:5414報告
余りの毅然とした態度にスマートファルコンが呆気に取られていると、トレーナーは追加の説明を始める。
「いえね、昔はあったのよ。ほら、私の家って結構良家だったって話はしたでしょ?ステレオタイプな予想通りそういうことにはやっぱり厳しくてね。中高の頃にはそれまでに嫌というほど味わった挫折もあってか結構すごかったわよ。勿論親に隠れてね。恥ずかしながら他にすることもなかったと思っていたし」
そこまで大真面目かつ赤裸々に語らなくてもというレベルの補足を聞いて、スマートファルコンは少し赤くなってしまう。ウマドル一直線の彼女にとってそういった話を聞くのが珍しいだけであり、ちょっと想像してしまったわけではない。決して。
「けれど大学でトレーナーを志してからはそれに忙しくなったというか。自然とそういうことからは離れていったわね。それでも多分人並みといった感じだったでしょうし、現にこっちに来た時の荷物にはそういうものも一応あったわ」
「……あった?」
「ええ。けれど貴方に出会ってから。貴方の夢を教えられてから。一切そういう欲はなくなったわね。今も資料として集めているグラビアも彼女たちの強みを活かした結果と割り切って見てしまっているのは否めないし、そういう作成物も程度や社会的にどうこうはあれ、誰かの強みを、輝きを発揮した結果なのだと思ってからはそういう目で見られなくなって結局処分してしまったわ。……まあ少しはそういう目線を持てないと正しい印象や魅せ方を分析できないのではないかとも思っているのだけれど、どうしてもね……。試してないし試す気もないけれど現在は自分がウマドルだから今そういうものを見たら尚更研究思考で見てしまいそうね」
≫151蒼の"そういう"話 5/522/01/15(土) 21:27:3913報告
スマートファルコンは納得した。なんてことはない。自分が男女ウマ娘問わずグラビアを見ている時に感じていたことを、彼女もまた感じているだけだったのだ。
それと同時にスマートファルコンは戦慄した。いや聞き流したけどいかがわしいものもその目線で見れちゃうのかと。そこまで輝きを見出さなくてもよかったんじゃないかな。
加えてスマートファルコンは安堵した。そういう場面になっても(あるのが大問題なのだが)一切動揺が見えなかったのは自分に女性的魅力がないとかそういう問題ではなく、彼女にそういう視点が欠落していたからだとわかったからだ。実はファル子の女性的魅力の有無は結局判断できないのだが彼女は今それどころではない。
そうして少し舞い上がってしまっていたスマートファルコンは、とりあえず浮かんだ感想を特に何も考えず溢してしまった。
「じゃあ、ウマドル的にも安心だね♪そーいうスキャンダルの影も無いってのは大事だし☆」
言って気づいた。あれ?性欲が無くともそもそもウマドルに関連するスキャンダラスな事象とは恋愛的感情に基づくものの方が多いのでは?と。
しかし。ちょっと早とちりすぎちゃったとスマートファルコンが訂正する前に、彼女のライバルは即座に返答してしまったのである。
「ええ。貴方の後を追いかけて、やがて貴方を凌ぐトップウマドルになるまで。そして勿論その後も。私がトラック上に、ステージ上に立っている限り、そういったことに関わっている余裕なんてそもそも無いでしょうしね」
エイシンフラッシュはかく語りき。「ウマドルという、同じ立場になったならばできることも増えるはず。そもそもより強固な関係性ができる、それを利用しない手はないだろう」と。
君よ、大いなる星よ。
いったい君の幸福もなにものであろうか、
もし君に光り照らす相手がいなかったならば。
スマートファルコンには、かつてルームメイトのトレーナーが諳んじた一節が聞こえたという。
「ちょっと意味が違うのではないでしょうか」というツッコミと共に。