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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part806【TSトレ】
≫118二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 21:35:14
『作って楽しい食べて楽しいロレトレのウマ娘ごはん』
今日のメニューはあの人の舌も蕩ける特性カレーをご紹介。一度食べたらもう他のカレーを食べられなくなる。
――トラウマになること保証付き。
「では食材ですわ。豚もも肉480g、玉葱200g、人参120g、じゃがいも200g、にんにく12g、ローリエ2枚、チーズ15g、オリーブ油適量、その他適当な野菜類と水でスープストックを作りますの」
「そして今回はタキオンさんとタキトレ様から隠し味をもらいましたので、この特製レシピを使うことにいたしますわ」
「下ごしらえとして、豚肉玉ねぎじゃがいもをそれぞれ2cm角人参をいちょう切りにカット致しますの。そして余った野菜の皮などはスープストックに追加いたしますわ」
「次にオリーブオイルで玉葱とにんにくを弱火で炒め、時折スープストックを少しづつ入れトロトロになるまで焦げないように炒めますわ。次にお肉を炒め火が通ったところで人参を炒めますわ。程よく炒めたらスープストックを入れ煮込みますの」
「ある程度煮込みましたらカレールー、チーズを入れ弱火で煮込みますわ。ここでインスタントコーヒーやジャムを入れてもいいですわね。程よく煮込みましたら蒸したじゃがいもを入れますわ」
119二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 21:35:58
――――――――――
「ここでMPですの。全体の色味が均一になったら濃硫酸45ccを加えますわ。これでじゃがいもに含まれるでんぷんが加水分解を起こして単糖類になるので甘みが増しますの」
C6H10O5(デンプン)+H2SO4(濃硫酸)→CnH2nO(単糖類)
「仕上げとしてひと煮立ちしたところで一旦火を止めて、隠し味としてクロロ酢酸を加えますわ。さっぱりとした酸味が食欲をそそりますわよ」
NaCl(食塩)+CH2ClCOOH(クロロ酢酸)→ClCH2CO2Na(クロロ酢酸ナトリウム)+HCl(塩酸)
「このとき一緒に防腐剤として硝酸カリウムを入れましょう。美味しさが長持ちし一晩寝かせても安心ですわね」
KNO3(硝酸カリウム)+H2SO4(硫酸)→KHSO4(硫酸水素カリウム)+HNO3(硝酸)
「最後に鍋をよくかき混ぜてから……もう一度強火で煮込みましょう。あの人の舌も蕩けること間違いなしですわ」
3HCl(塩酸)+HNO3(硝酸)→王水
※王水は酸化力が非常に強く通常の酸には溶けない金や白金などの貴金属も溶解できる非常に強力な酸である。
「これで完成ですわ。のんびりしていますとお鍋まで溶けてしまうので素早くガラスの器に盛り付けますわ。ガラスの器は溶けないので安心してくださいまし」
――あの人の舌どころかいろいろなものまで蕩ける特製カレーの完成。鍋に残った溶液は専門業者に依頼して処分してもらいましょう。危険なので決して下水には流さないでください。
以上元ネタは某テストと召喚獣です。タキオンから薬品をもらって全力の料理をしてしまうロレトレ。
ちなみに化学薬品とか絡まなければ普段はちゃんと栄養素たっぷりの食べられるごはんを作れますよ
≫138二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 22:35:42
「キタトレ〜?」
「…魔ルドトレ、とりあえずその手にあるジョッキを置きなさい。」
キタトレの家、酒宴には丁度いいスペースだと家主が時折提供し、今宵もまた十人くらいで宴会をした後。
家主のキタトレと唯一残った魔ルドトレは、ビールジョッキを手に寄ってくる魔ルドをキタトレが受け止める構図になっていた。
「別に私はいいのだけど、わざわざ二人きりで二次会なんてどうしたのかしら魔ルドトレ」
「んー…」
長いこと飲んでたせいで、いつもより更にふわふわとした感じのする魔ルドトレ、少し考えを整理してから
「…キタトレ、一人だけずっとつまみの用意してた姿しか見てなかったから、呑み足りてないんじゃないかなーと」
「ふふっ、気遣わなくてもいいのに。まあ貴方がそのつもりなら、とことん付き合ってあげるわよ。」
彼もまたよく見てるのだろう。いつもあんな姿を見せてはいるが、やっぱりルドルフのトレーナーなのだ。
閑話休題、現在の魔ルドトレは大変無防備である。常に艶のある魔ルドだが、アルコールとこの蒸し暑さによって汗で蒸れた結果、薄いシャツは透けてはりつき下着もあらわに。ワガママなボディのラインと合わせて大変スケベな姿で、酔っぱらっていた。
「…風呂、貸すわよ?」
「いいの〜?」
「まあその前に、貴方が寮に帰るかどう…」
話していた所で今の彼女の姿を改めて考えて、送るのも飲んでしまった以上不可能な事を突き合わせた瞬間、結論は出た。
「…魔ルドトレ、今日は泊まってきなさい。着替えは…何かあった時の為に用意してるジャージと下着があるから使って頂戴。」
このトンチキトレセン学園で、また変に体型変化とかしてもいいようにと用意した予備の服を使わせる。
流石にそのまま寝させるのはという話だが、ここまで色々と気を配ってくれるキタトレに魔ルドトレは感謝した。
「…ありがとうキタトレ」ギュウー
「ん、構わないわ。それよりそんな姿でいないで流してくるといいわよ。…それに、私もまだだから抱きつかれても、ね」
…さっぱりした魔ルドトレが薄着で眠りに入ったり、匂いに気遣ったキタトレがいつもより丁寧体を洗っていたとか。
短文失礼しました
ちょっとした呑みネタ。酔ってる状態の魔ルドトレを夜間に歩いて帰らせるのは流石にヤバすぎるッピ!
キタトレの家、一人暮らしするには無駄に広い家なので色々な事に家主の意向で使われてそうです。
≫146二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 23:04:40
[自分のはじまり、彼女の初めて]
「そういえばだけどさ、タキトレ先生って歳幾つなの?」
「歳、ですか?」
トレセン学園は午後の頃、授業も終わり生徒たちがそれぞれトレーニングに励んでいるであろう時間帯の保健室で、不意に投げかけられた質問に思わず聞き返してしまう。声のする方向に顔を向けると、そこには先程まで怪我──といっても足を軽くひねった程度だが──の処置をしていた生徒が足を揺らして、興味深そうな目線をこちらに向けながら椅子に座っていた。
「そ。男の頃から若いなぁって思ってたんだけど、ついつい気になってさ。それに、こうなって姿見て年齢とかわからなくなっちゃったから聞いてみようかなって」
「なるほど…」
彼女とはなんだかんだ長い付き合いになるが、年齢を知られていないのは自分としても少し意外に感じられて驚かされてしまう。そうして驚きと共に発言の真意を測りかねていると、彼女から助け舟が出された。
ウマ娘になったトレーナーは基本的に少女から妙齢の年齢程度の外見になる。これは御年88歳になるダイタクヘリオス担当トレーナーが10代の後半から20代前半程度の外見になっているように変化する以前にどれだけ高齢であろうとも共通しており、ウマ娘に変化した後の姿から実年齢を推測することは最早不可能な領域に到達してしまっている。
彼女からしてみると前々から気になっていたことが分からなくなってしまったから、この機会に聞いて確かめてみようと思ったのだろう。そう考えると彼女の言いたいことも腑に落ちるような気がした。
1472/722/07/24(日) 23:05:51
「誰にも言わないからさ、ダメかな…?」
「いいえ、年齢を聞かれることがあまり無かったものですから全然構いませんよ。それで、私は今年で26になります。23の時にこの学園の保健医兼トレーナーになったので今は4年目ですね」
自分の頼みが断られるのではないかと少し不安そうになっている彼女に対して、笑いながら問題ないと返すと共に自分の年齢と経歴を打ち明けた。
いつもタキオンの無茶ぶりに近い頼みを聞いているのだから、年齢の話などそれに比べれば些細なことだ。それに自分に対してこうして興味を持ってくれるというのは悪い気分ではないのだ。
「ありがとう先生! それにしても26歳かぁ、思ったより若……えっ、先生最初から保健医とトレーナー兼任だったの⁉」
「と、言っても最初は保健医としてだけでの採用でしたけどね。なのでトレーナーも兼任したいと学園側に伝えた時は揉めましたよ。本当にあの時は大変だった…」
自分の年齢を聞いた彼女は、それまでの沈んだ表情から花が咲いたかのような笑みを浮かべるようになったと思ったら、話した内容を理解すると共に一転して驚愕の強い物に表情を変えた。
ある意味少女らしいとも言える彼女の表情を見て少しおかしいような嬉しいような、言いようのない感想を抱きながら、自分がタキオンの担当になりたいと学園に伝えた時のことを思い出す。
保健医として採用したはずの人材が数ヶ月も働かない内にトレーナーも兼任したいと申し出る、しかも担当の名前は圧倒的な素質を持ちながらも問題児として有名なアグネスタキオンだというのだからなおの事問題だ。自主性を重んじるトレセン学園とはいえこのような申し出は前代未聞だったようで、許可を得るために色々と奔走することになった日々については未だに鮮明に記憶に残っている。
1483/722/07/24(日) 23:06:25
「それで、どうやって許可を貰ったの?その感じだと大分大変だったっぽいけど…」
「たづなさんとか理事長とかにお願いをして回ったりしていたけど、一番大きかったのはタキオンが宣言をしてくれたことですかね」
「宣言?」
「トレーナーになる許可をもらうために色々と行動している間に「アグネスタキオンがトレーナーを取るつもりだ」という噂が出てきましてね?何人かタキオンのことをスカウトしたいっていう人が居たのですが、その人たちの目の前で「彼以外と組む気は無い」と宣言したんですよ。名乗り出た中には有名なトレーナーさんも居ましたけど、彼らでは無くて新人の私を選ぶ以上は相当意志が固いんだろうということになって、半分特例みたいな形で許可を貰えたんです」
どの様にしてトレーナーと保健医を兼務することに許可を貰うことが出来たのかについてを彼女に話してから、瞼を下ろして昔の事を思い出す。
──『私は彼以外と組む気は無い』
今でも鮮明に思い出せる。ある意味、自分と彼女の始まりでもあるその瞬間を、今でも自分はハッキリと思い返すことができる。
アグネスタキオンという紛れもないダイヤの原石を担当したいと集まったトレーナー達は数多く居た。その中にはGⅠを幾つも勝っているベテランや新進気鋭の若手トレーナーも居り、正直な話自分よりも彼らの方がタキオンの目指す“果て”に近づけるのではないかと思うこともあった。事実、タキオンがトレーナー達を集めて話がしたいと伝えた時には、モルモットしてだけでも彼女に関われないかどうかを本格的に悩んだりもしたことがあった位だ。
だけど、彼女は自分を選んだ。当時はまだ正式なトレーナーですらなく、資格を持っているだけの保健医な自分を選んでくれた。
だからこそ、自分はここまで頑張ることが出来た。
経験も知識も足りない中で何度も悩むことがあったけどもあの日彼女に信頼してもらえたことが自分の中の原動力になり続けていた。そして、きっとそれはこれからも変わらないのだろう。
恥ずかしくて口には出せないのだけれど、それだけは断言できる自信があった。
1494/722/07/24(日) 23:06:53
「──へぇ?先生とタキオンさんに、そんなことがあったとはねぇ?」
自分が正式にタキオンのトレーナーになった日の思い出に浸っていると、目の前から響いてきた声に現実に引き戻される。閉じていた眼を開けると、そこには何やら満足そうにしていながらも少し悪戯っぽそうな笑みを浮かべた彼女が居た。
一体彼女は何を考えているのだろうか。聞いていて別に何か面白い要素があるという訳でもないというのに、そんな顔をされては自分としてはどうしたらいいのか反応に困ってしまう。
「…なんですかその顔は。別に「そんなこと」という程のことでもないと思いますよ?」
「えー? だってあのタキオンさんが有名なトレーナーさんからの誘いを断って「あなたが良い」って言うんだよ? そんなの少女漫画でも一周まわって中々無いぐらい理想的なシチュエーションだと思うけどなぁ」
「⁉ り、理想的なのかなそれは……?」
なので彼女にその理由を聞いてみたところ──とんでもない答えが返ってきた。
理想的なシチュエーション。
眼前の少女は自分とタキオンが正式にトレーナーになった時のことをそう評したのだ。
その言葉を聞いた瞬間、自分の顔が熱を持ち始めたのを意識のどこかで自覚した。
確かにそう言ってもらえて嬉しかったが、それはトレーナーとして信頼してもらえたのが嬉しいからなのであって決してときめきを感じたとかそういう訳じゃない。でも傍から見ればそういった風に見られかねないわけで……
流石にあの場に集まったトレーナー達が全員そういったことを考えた訳ではないだろうが、今現在の自分とタキオンの関係から振り返って考えてみると割ととんでもないことを自分たちはやらかしていたんじゃないだろうか。
何もしていないというのに顔が熱い。良い過去だと思っていた物が実は少女漫画染みていた物だったと指摘されるのがこんなにも恥ずかしいとは……!
1505/722/07/24(日) 23:07:17
「うわぁ、先生顔が真っ赤…大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと自分がやっていたことが実はとんでもないことだったことに衝撃を受けただけで……ええ、大丈夫ですよ。こちらこそ見苦しい所をみせて申し訳ありません」
「いいよー、先生のそんな姿初めて見たし、何より見ていて可愛かったし。それと、この話はヒミツにしておくから安心してね」
「ありがとうございます…それと、仮にも26の男に対して「かわいい」は誉め言葉になりませんよ?」
「でも今の先生はウマ娘だし?かわいい人に可愛いって言うのはちゃんと誉め言葉になると思いまーす」
「まったく……」
顔が赤くなっている自分を心配してきた彼女に深呼吸をして落ち着いた上で大丈夫だと返すと、悪戯っ子っぽい調子で彼女からあたふたとしていた自分が可愛いと言われてしまった。しかもそのことに反論するとウマ娘だしと返されてしまう。
半分屁理屈みたいなものだが、決して不愉快だとかそんな訳ではない。自分としてはむしろ逆で、悪気の無い彼女の表情を見ているとどこか微笑ましく感じられて、先程まで感じていた恥ずかしさはどこかに消えていってしまうようなそんな感じがする。ある意味、彼女の人徳のなせる技なのだろう。
「じゃ、長居するのもアレだしそろそろ失礼するね先生。今日は傷の手当してくれてありがとう」
「お大事にしてください。それと、先程の話はヒミツにしてくださいね? 約束ですよ?」
「はーい……そうだ。先生、1つ良いかな?」
「ん?それは良いですが…何かありましたか?」
別れの挨拶を交わしていると、ふいに彼女に呼び止められた。
彼女が自分に何か頼みごとをするのはよくあることだが、今日はいつもとは違っていた。何かを決意したかのような表情をしている彼女は、真剣に自分に何かを伝えたいと思っているのだろう。そう思うと自然と気が引き締まる。その内容が何であれ、トレーナーとして教員として、そして一人の大人として真面目に対応するべきことだろうと思った。
1516/722/07/24(日) 23:07:38
「あの、さ、来月に私が走るレースがあるんだけど、先生も見に来てくれないかなって…」
「……」
「いや、予定があるならそっちを優先して良いんだよ?レースと言ってもメイクデビュー戦だし、先約での用事があるならそっち優先でもいいしさ。でも、先生には色々とお世話になってるし折角なら見てほしいなって。ダメ、かな……?」
そうして彼女から告げられたのは「自分の走るレースを見に来ないか」という誘いだった。
人生で一度きりしかないメイクデビューのレース。人生一度の晴れ舞台を見に来てくれないかと言って来た彼女だったが、しかしその声は少しばかり震えを伴っていた。
断られないかどうかが不安なのだろう。
担当が出走している、または実力あるウマ娘の戦力偵察という訳でもなければ担当以外レースはよっぽどでもなければ見に行かないのが普通だ。しかも、トレーナーと保健医を兼務している上に、タキオンのモルモットをしている自分が一月先も予定が空いているとは限らない。
普通に考えるならば断わられる、または予定を見合わせるかのどちらかになるのが自然な所だし、彼女もそれを心のどこかで理解しているのだろう。体の震えは、彼女の恐れを何よりも雄弁に自分に教えてくれていた
「わかった」
「先生……?」
「絶対に行く。たとえ何があっても、君のレースは絶対に見に行くよ」
だが──それだからどうだというのか
彼女の手を取り、眼を見据える。
自分は本来ならタキオンのトレーナーだとは認められない身だった。でもそれをタキオンやたづなさん、理事長を始めとした色んな人々が力を貸してくれたお陰でトレーナーになることができて、こうして今もトレーナーと保険医の兼業を続けることができている。
だからこれぐらいはお安い御用だ。
彼女は断られてしまう不安を感じながらも自分に相談をしてくれた。ならばそれに応えるのは学園のトレーナーであり大人である自分の役目だ。
1527/722/07/24(日) 23:08:01
「…本当?」
「本当」
「……本当に来てくれる?」
「絶対に行くよ」
「無理をしてまで来なくて良いんだよ?」
「この程度、無理の範疇に入らないさ」
不安そうな彼女の眼をしっかりと見据えて言葉に応える。
言葉に嘘は1つもない。彼女は勇気を出して「自分のレースを見に来てくれないか」と言ってくれた。ならそのために行動することに無理なんか1つもない。
そうして見つめ合っていること数分。自分の言葉が嘘ではないことが彼女にも伝わったようで、体の震えが収まってきた。
「…うん、わかった。私、絶対に勝つから絶対に見に来てね。それじゃ、またね」
「ああ、またね」
それと同時に生来の元気さも少し取り戻したようで、椅子から立ち上がりこちらに向かって笑いかけてくる。彼女の姿を見ていると、不安なのよりも笑っている方がずっと良いと、なんとなくだがそう思う。
そして彼女は立ち上がった勢いのまま保健室を出ていき、部屋の中は自分1人になった。
「さて、どうしようかな…」
手帳を取り出し一人思う。今から一月後、彼女のレースがある日をどのようにして空けるか。保健医のシフトもあるし、タキオンとのトレーニングの兼ね合いもある。更には、彼女の実験もあるから調整するのは難しいことは間違いないだろう
だが、悩むが故の楽しさも同時にある。彼女のレースを起点として日程を考えていくことは今後を考える上でも役に立つのだ。
「折角だし、この日はリフレッシュも兼ねてタキオンと不タキもつれていこうかな」──。
彼の物思いはしばしの間、時間も忘れて続いていた。
≫176二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 13:06:38
『つれづれ話~うおばん~』
「そういえばバントレ、ちょくちょく生徒向けの復習会みたいなの開いてるっぽいけどあれって」
「ええ、無償ですよウオトレさん」
「あ、やっぱり?」
「教員資格を持っているとはいえ、今の私は教員ではなくウマ娘の教導者です。餅は餅屋、というわけではございませんが、それで賃金をいただくことは出来ませんよ」
「報酬なしでやるような量でもない気がするがなあアレ。今何人くらいいるんだ?」
「そうですね、常連の方が六人ほどと、入れ替わりで四から五人程度の人数が変わっているので……十人前後で見ておけば間違いはないでしょう」
「しかもその全員が学年バラバラだったりするんだろ? よくもまあちゃんと教えられるもんだ」
「基本的にはあと一押しが欲しい子のほうが多いですからね。難しい問題を解くときに、いつでも質問できるような環境だから教室に参加している、という子もいます。勿論、勉学が苦手だけれど試験を問題なく突破したいという子もいますから、どちらかといえばそういった苦手な子を中心に教えながら、質問があった際に逐一答えるという形ですね」
「成程なぁ。まあ疑問に思ったことをいつでも聞けるほうが良いな」
「疑問を早めのうちに解決し、それを反復学習によって身に着けていく。基本といえば基本ですが、大事なことです」
≫179二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 14:13:03
白い砂浜、青い海。タイヤを引いたり走り込みをするウマ娘。
そんな夏合宿の一時のこと。
「……そういえばだけどさ、スズトレちゃん」
「……魔ルドトレ。なぁに?」
えらく真面目そうな顔のそれながら、スズトレ(相棒)は何事もなく返す。なんとなく聞こえる心音から、問題ないと判断して。
「去年買った水着がキツくなってる、ってあるよね?」
「……まあ、本格化とか色々あったらあるんじゃない?」
「だよね!なんだか少し『あれ、もしかして太った!?』ってなることあるよね!?」
「……それは他のトレーナーに聞くべきだと思うけど?あと、多分キツくなった理由は絶対ウェストじゃないけど……」
「……えっ?」
そう、スズトレは特定二点を見て、魔ルドは何時も通りの困惑を見せる。
「後は、色々考えたけど。私より養タキトレやグラトレ(独)の方がわかってくれると思う……」
「……そお?」
「うん、多分」
「……なら、今度それとなく話を振るね?」
「魔ルドトレが振る話はだいたいそれとなくじゃないと思うけど……」
「……えっ?」
結局スズトレ(相棒)は後日、キラーパスを飛ばした面々に対し謝るのであった……
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part807【TSトレ】
≫52二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 21:58:14
夏合宿の一幕
「…………ルドトレさん?」
「あっ、それで相談したい事なんだけどね?」
「……その前に一つよろしいでしょうか?」
「なぁに?」
「何故……服を脱ぎ始めたのでしょうか?」
事の始まりは夏合宿の最中にルドトレがグラトレの部屋を訪れた所から。
夜の帳も下りた頃ノック音と共に来訪したのはルドトレ。
夜だからか、胸元が開いた楽そうな格好をして昼間の水着にも負けず劣らない色香を振り撒く……
そんなルドトレの突然の来訪に疑問を抱きつつも、グラトレは部屋へと招き入れる事にした。
そして部屋に入るなり徐ろに服を脱ぎ始めたルドトレに対して冒頭の言葉へと繋がるのだが……
「うん、私の身体を見て欲しいの」
「…………んん?」
何故脱ぐのか問うたら更なる爆弾発言が返ってくるとは思うまい。
53二次元好きの匿名さん22/07/25(月) 21:58:33
「……具体的に何をか言われないと分かりかねますね〜」
……取り敢えず話を進めよう。
そう判断したグラトレはルドトレの行動や発言を聞かなかった事にして詳しい相談内容を聞く事にした。
「実はね、去年買った水着がキツくなっちゃって……それで太ったのかな~って思ったの」
……何となくルドトレが急に服を脱いだ理由が察せた気がする。
「それでスズトレちゃんに聞いてみたら、ウェストは関係無いって!」
「……それで私にも聞きに来たのでしょうか~」
「うん! 養タキトレやグラトレの方が分かるだろうって言われたの!」
要は以前と体型が変わってないか見て欲しくてルドトレはグラトレの部屋に入るなり服を脱いだのだ。
そしてそれはスズトレの言葉を受けての行動だったのだ。
……酷いキラーパスを受けた。
そうグラトレは思わずにいられなかった……
「さてさて、それでは取り敢えず服を着て貰いましょうか~」
「見たり触ったりしなくても分かる?」
「……体型の変化は普段の行動からでしょうから〜、その辺りの問診から始めましょうか~」
「は〜い」
取り敢えずルドトレには服を着て貰う事が出来たと安堵するグラトレ。
いそいそと服を着始めたルドトレの豊かな双丘を見ながら、グラトレはウマ娘化直後のルドトレを思い出す。
……かの皇帝は7冠に飽き足らずグランドスラムを目指しているのか。
水着がキツくなった要因と思わしき事柄に思い至ってしまったグラトレは、この後どう茶を濁すか悩むのだった……
うまぴょいうまぴょい
≫106二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 19:50:48
「……よし!」
体の水気をしっかり拭き取り、タオルで前を隠して黒カフェは眼前の扉を見た。
『サウナ』と扉には札がかけられている。トレセン学園がクーポンをくれたので折角だからと向かったスーパー銭湯。しかも今日はキャンペーンでトレーナーのみに貸切だ。
その中にある男女共用のサウナルームに、今から黒カフェは入るのだ。
「よいしょ…あつっ!」
扉を少し開けるともわっと熱気が押し寄せてくる。それに驚きつつもままよと中に入ると、うだるような蒸気と高温を肌に感じる。
「あっづいな…」
尻用の敷きタオルを取り、上段に座る。水分補給は事前にしてきた。今回はきっちり整うつもりだ。
背もたれはちょっと触れただけでも火傷しそうだったので背筋を伸ばして座る。とりあえず10分を目標に。
「……一人か…」
他の男トレは大浴場でどんちゃんしていたので、まあいないだろうと予想はできていた。しかし、いざいないとなればどこか寂しい。
「…ま、しょうがないか……」
「………ふぅ」「!?」
左から耳の穴に熱い空気を送り込まれ、背筋がサウナの中というのに引き攣る。
「……こんにちは、黒さん」
「なんだ…影さんでしたか」
はぁ…と安堵の息をこぼしつつ、髪をかきあげる。しかし水蒸気が水になってくっついていて、とても熱い。
「驚かせてしまって、ごめんなさい。調子はどうですか?」
「結構熱めですね、ここ。入る時びっくりしました」
「ここは蒸気を多めに炊いてありますからね。私も、日頃よく来るんですよ」
「そうなんですか…え?」
今の影カフェの発言に目を見張る黒カフェ。理由は言うまでもないだろう。
107二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 19:52:17
「プライベート…他にはどんなところに行ってるか教えてくれませんか?」
「おっと、口が、滑ってしまいましたね。人は謎が多いほど美しいんですよ」
どこかの舞台の受け売りですが、と口元に手を当てて微笑む。それに面食らいつつも、
「謎が多すぎるのも困りモノですがね。ウマ娘になる前の性別だって僕たちは知らないんですから」
「それはトップシークレットですよ」
そう言ってタオルで体を隠して立ち上がり、何をするのかと思えばサウナ石に水をかけようとする。
「かけてもいいですか?」
「あ、いいですよ。僕のことは気にしないで」
それにありがとうと笑った影カフェは、水をじゅわあっ!と石にかけると、発生した蒸気と共にかげろうのように姿を消した。
「消えた…」
「いえ、消えてませんよ」
今度は黒カフェの右に座る。
「ここで蒸気をめいいっぱい出して、20分いた後に入る水風呂は最高ですよ」
「なるほど…じゃあ僕もそれに便乗します」
「無理はなさらず」
そう言って深呼吸をする影カフェ。二の腕やタオルから覗く太もも、うなじには玉のような汗が滲み出ており、真似して深呼吸したら肺がとても熱くなった。
ピタッと体には汗でタオルが張り付き、敷きタオルに汗染みを作っていく。
───⏰───
それから20分ほど経つと、影カフェがすっと立ち上がる。
「黒さん、大丈夫ですか?」
「ええ、僕は。外出ます?」
「そうしましょう」
すぃっと静かに扉を開け、外のタイルを踏む。入る前よりも外が劇的に涼しく感じられた。
108二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 19:53:19
「あ、パチタマさんこんにちは。サウナですか?」
「ああ、久々にな。黒カフェは一人か?」
「いえ、影さんと…」
横を見るが、そこにはもう彼(?)の姿はない。しかし遠くの方でかけ湯の音がした。
「まあ、はい。この後水風呂に入って外で涼む予定です」
「そうか。あ、水風呂は無理に入ると危ない気ぃつけろよ。あと入らなくても外で涼むだけでいい。本場はそうするらしいしな」
そう言って首にかけたタオルを振りながらサウナへ入っていく。
中から「あづっっ!!??」という声が聞こえたのはまた別のお話。
おしまい
今日サウナ行ってきたんで書きました。
サウナハットっていう髪とか頭皮のダメージを抑えるものも世の中にはあるらしいですね。
水風呂も実際は軽く手ですくって首とか脇の下とか、太い血管の走るところにかけて外で冷却するといいらしいです。急激に体を冷やすとそれだけで体には大きなストレスがかかるらしいですから。
サウナ後はお酒でなくきちんと麦茶で水分補給を。ミネラルも一緒に汗と流れてますから。
サウナ後の焼肉美味かったですわ!
以上、楽しかったですわ!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part808【TSトレ】
≫131ハンドクリーム 1/222/07/28(木) 19:07:53
冬場になると乾燥したり、手を使う作業を行ったりしてどうしても手が荒れてしまう。地味な痛みが続くので中々嫌なものだ。その対策として挙げられるのはハンドクリームだろう。私自身もよく塗っているし、生徒たちも使っている。
「おっと……すまない、トレーナー君、貰ってくれないだろうか」
「ん?ああ……構わないぞ、ほら」
私の手に白いハンドクリームが乗せられる。なんでもルドルフが自分の手に塗ろうとチューブを強めに押したところ、出し過ぎてしまったのだとか。手の保湿は大事なのは重々承知しているし、私に分け与える分には構わないのだが。彼女は何故かそのまま手を離そうとしない。それどころか私の手を掴んだままもう片方の手でクリームを塗り込み始めたのだ。
「ひゃ……る、ルドルフ、それくらい自分で塗れる!」
「こうした方が早いだろう?さあ、大人しくするんだ」
「普段はそんなことしないじゃないか……」
力では彼女に敵わないので大人しく手を差し出す。ぬる、ぬると私の手の甲をルドルフの手のひらが撫で回す。クリームから漂う柑橘類の香りが鼻をくすぐり、私のざわつく心を落ち着かせてくれる。効果は僅かばかりのものだが。
132ハンドクリーム 2/222/07/28(木) 19:08:55
「その、ルドルフ……入念過ぎないか?私は別に手が荒れているわけでは……」
「油断大敵、手荒れは予防からしっかりとするべきだよ。指の間もこうして……隅々まで、ね」
食い気味な返答と共に指と指が交わる。私の小さな手は、ルドルフの手に覆われてしまった。これでは恋人繋ぎだ。しかもその上でにぎにぎと私の手を握ってくるものだから羞恥で顔が熱くて仕方がない。どうやら彼女は私の反応を見て楽しんでいるらしい。しばらくルドルフの温かみに包まれていると、ようやく手が解放される。
やっと満足してくれたか、と心臓がなんとか保ったことに安堵したのも束の間、もう片方の手が差し出される。まるで私に塗れと言わんばかりに。
「全く……仕方ないな。君のクリームを貸してくれ、それを塗るよ」
「ふふ、じっくりと塗り込んでくれ」
「エアグルーヴやブライアンが見たら驚くだろうな」
「それは言わない約束だよ、トレーナー君」
今度はルドルフの手にクリームを出して塗り広げる。触れ合うのは小恥ずかしいけれども、いつも心配をかけてばかりだから。たまにはこうやって彼女の頼みを聞くのも良いか。まあでも、ウマ娘となってからは、私とルドルフとの距離が大きく縮まった気がする。その点に関しては、この怪現象には感謝している。
「……ありがとう、ルドルフ」
「こちらこそ」
このあと生徒会室で両手を見ながらやけに上機嫌なルドルフを見てエアグルーヴやナリタブライアンが察したのは、また別の話。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part809【TSトレ】
≫21二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 22:08:00
裏路地にひっそりと佇む、座敷が一つとカウンター席が4つあるだけの居酒屋。
冷房のよく効いた店内の座敷で静かに、しかし暖かく座卓を囲む4人のウマ娘がいた。
「僕は…砂肝のネギポン酢と焼き白子…あと冷の日本酒をおまかせでお願いします」
メニューから悩んだ末、品を二つピックアップするのは、黒髪の黒カフェトレ。
「私は…豚バラ串を1つと、枝豆を。お酒は…なるべく、強くないのをお願いします」
おしゃぶり昆布で口を慰めながら、耳を撫でるハスキーボイスで注文をするタバコカフェトレ。
「鳥モモと皮を2本ずつ、塩でお願いします。それからししとうと玉ねぎの天ぷら。あとは……お酒は辛口をお願いします」
比較的明るい声で、現状一番多く注文をするのは義カフェトレ。
「私は……お寿司の盛り合わせと、もろきゅうを、お願いします。それから、烏龍茶を」
この中で唯一酒を頼まず、カーディガンから淡雪のような指を覗かせるは影カフェ。
そう。今日この居酒屋に集ったのは他でもない、夏休みまでとりあえずお疲れ様会なのだ。
最初に提案したのは影カフェ。それに義カフェと黒カフェが同意して、タバコカフェが押し切られた形である。
「でも…影さんの奢りでよかったんですか?僕らがきっちり出しますけど…」
「サブトレーナーとして、ここで学ばせて貰ってますから。それに、エッセイのお仕事のおかげで少し余裕ができました。今日は、皆さんへの恩返しのようなものです」
にこり、と笑う影に、三者三様の礼をして、お通しの筑前煮を味わう。
「うん、美味しいね。私でも噛み切れる」
「タバコさん顎には気をつけてくださいね?」
「もちろん。無理はしないよ」
優しい煮物の味付けに舌鼓をうっていると、店主が静かに品を運んでくる。
「八海山の冷に、醉心、それから獺祭と烏龍茶」
それぞれに酒と注文した料理を起き、『ごゆっくり』と厨房へ戻る。
「それじゃあ、乾杯しようか。音頭は僕でいい?」
その黒カフェの言葉に頷く。
「私だけお酒じゃなくて、申し訳ありません」
「無理して気持ち悪くなったら、それこそ大変だからね」
タバコのフォローと共にチン、とささやかな透き通る音が鳴る。
「それじゃあ、カンパイ」
「「「かんぱい」」」
手を合わせ、各々の料理を食べ始める。
22二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 22:08:42
「それでね、綺麗な赤い鳥がぶわって僕の方に来てね」
黒カフェは砂肝をコリコリと噛み締めながらカフェと行った動物喫茶のことを話したり。
「最近、いいソファを、見つけたんだ……よく眠れる分、睡眠を短く、取れるんだよ」
タバコカフェは枝豆をつつましく剥きながら、近況を話したり。
「ここのお店のお肉はやっぱり美味しいね。カフェが20になったらまたみんなで来ない?」
義カフェは皮の焼き鳥を噛み締めながら、これからの未来の話をしたり。
「この前、カフェと行きたいと思った、喫茶店を見つけたんです。ここなんですけど…」
影カフェは写真を見せながら、皆との日常の話をしたり。
それぞれ話題を出し合って、時には頼んだ料理をシェアしたりして会話を楽しむ。
「そういえば、影さんは…お酒、飲まないんですか?」
タバコが、ふと枝豆を一つ口に運んで聞いた。
「お酒…はい。昔、お酒をちょっと飲んでしまって気がついたら知らない場所にいて…それ以降はぴたりと辞めました」
隣り合う2人の対面では、酔いが回った黒カフェが義カフェに撫でて撫でてと頭をぐりぐりしている。そんな彼を満面の笑みで撫でながら義も会話に加わる。
「今日くらいなら大丈夫じゃないかな?僕も黒カフェも、タバコも居るし」
そう言いながらわしわしと黒カフェの耳の裏を撫でる。「ん〜〜」と気持ちよさそうに目を細める黒カフェ。
「じゃあ、一口だけ」
そう言って小さなおちょこを頼み、そこにタバコの頼んでいた醉心を注いでもらう。
「頂きます」
そう言って半分ほどを飲み、ふぅと息を吐く。
「どう?…おいしい?」
「少し、甘いですね」
そう言ってもう半分もくいっと飲み干すと、おちょこを直してパチパチと瞬く。
「はい…おいひい……です…」
23二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 22:09:12
途端に呂律が回らなくなり、耳がぴんと立つ。頬がりんごのようにうっすら色づいたかと思えば、ふらり、はらりと左右に揺れる。
「影カフェ?どうしたの…って、あれ」
目を擦ったかと思うと、先ほどとまでとは違いはっきりと輪郭が見えるようになる。そのままタバコの膝にもたれかかり、すうすうと寝息を立てる。
「影カフェ?…おーい」
耳をぴんと立てながら眠ってしまった影カフェの髪をタバコカフェはゆっくり撫でる。いつもどこか夢現のような彼女と違い、そこにはっきりと質量があった。それを見ながら義カフェは黒カフェに水を飲ませる。少しだけ黒カフェの酔いも覚めたようで、一旦座り直した。
「まさかここまでお酒に弱いとはね。すぐに眠っちゃった」
追加注文したレバーを齧り、獺祭で流し込むと、義カフェは今までで一番しっかり見える影カフェに改めて目を向ける。
降りたての新雪のように白い肌。照明の光を艶やかに吸い込む、トレーナーの中では珍しい長さの部類に入る藍色のボブカット。ふわふわの毛が生えた大きな耳には、両耳にカフェとおそろいのプレートの付いていないピアスを開けている。
「こう改めて見ると美人さんだよね」
「うん…。でも、分からないことが多いよね…」
「ウマ娘になる前の性別も結局はぐらかされたままだしね」
そう言った黒カフェが水の入ったグラスを手に取ろうとした時、ぴしぃとヒビが走った。途端に黒カフェは酔いから覚め、虚空を見やる。
24二次元好きの匿名さん22/07/28(木) 22:09:41
「…黒カフェ?」
「何か、いる」
疑問に思った義カフェが声をかけるも、黒の顔は厳しいまま。
「僕でも見えないですけど…何かが、何かがいます」
ちゃぷん、と音がした。不気味な水音だった。
「…影カフェ?」
何者かに腕を引っ張られるように音もなく立ち上がると、彼女の体が足元から消えていく。
「マズイ…!」
そこからの行動は迅速だった。
まずタバコカフェが影カフェの手首を掴む。義カフェは塩をひとつまみぱっとかける。最後に黒カフェが懐から取り出した札をおでこに貼る。
一か八かだったが通用したようで、糸が切れた人形みたいにどさっと倒れた。
「…危なかった……」
心拍音が爆発したようにそれぞれの耳に響く。どっと精神的な疲れが押し寄せ、脂汗がにじむ。一応彼女は大丈夫なようで、静かに倒れ込んだままの姿勢で寝息を立てていた。
「これは……」
「うん……ぜえ……はぁ……」
「お酒は飲まない方がいいね……」
水を3人で一気に飲み、「お勘定する?」と義カフェが聞く。
「フクトレさん曰くお札は12時間は持つらしいし、一旦は大丈夫だと思うから…飲み直そう?」
そう黒カフェが言って「大将、おんなじお酒をもう一つずつと、焼き鳥の盛り合わせ…あともろきゅうとお塩ください」
そう注文する黒カフェと、それに多少面食らいつつも「そうだね」と冷や汗を辛口の獺祭で流し込む義カフェ、そっと薄手のタオルケットを影カフェにかけるタバコカフェに、その膝で丸くなって眠る影カフェだった。
後日影カフェは、彼岸花の多く咲く霧の立ち込めた川を渡る夢を見てたと話したとか。
おしまい
≫60◆cRvsSr6LRA22/07/29(金) 01:16:56
獅子は膝枕をしたかった ルドトレ
膝枕とは、書いて字のごとく。2人がする体勢のようなもの。2人の関係性は親密なものが多く、わたしたちもそういうことをする間柄だ。
「本当にわたしで良いのか?ルナ」
「ああ、もちろん頼むよ。トレーナー君」
わたしの自宅内リビング。ソファーにはわたしとルナが、テーブルにはティーカップとティッシュの上に並べられた耳掃除道具一式がある。わたしはルナの耳掃除をすることになった。
「トレーナー君、もう少し端にずれてくれるかな?」
「そうだったな」
耳掃除をするならば、膝枕をしなければ難しいだろう。わたしは道具一式を持ち、ソファーの端へと少しずれた。ぽんぽん、と合図のように膝を叩くとルナはわたしの膝へと頭を預けるように横になる。
「…ルナ、これは失敗だと思うが」
わたしが彼女の耳をマッサージからしようと下を向くと彼女の顔にわたしの胸が乗ってしまう。これでは耳掃除どころではない。少し胸を持ち上げる。
「耳掃除は夜、ベッドの上でしてもらうことしよう」
「裸でさせるつもりか?」
「それも悪くないが脱がしたあとはそのまま愉しみたいだろう。それに……」
わたしが首を傾げていると、ルナは起き上がり、わたしの首へと両腕を回した。胸が鏡餅のように重なり、視線が交差する。
「敏感な君の手元が狂ってしまえば、私は君の声が聞こえなくなってしまうからね」
「ルナがそうした身体だ」
「今の君は私がそうしたよりも敏感になっているだろう?」
片腕が首元から離れ、わたしの背骨をなぞるように指が這う。痺れるような感覚はわたしに声を漏らさせる。そのまま尾の付け根を周回するように指が這う。
「んっ……はぁ、っ……ぁっ……」
「ふふふ、可愛いよ。そういうところは本当に変わらない」
普段張られている心の糸が緩む。この身体になって弱点が増えただけだ。大きい身体も的が大きくなっただけ、いつもできていた膝枕もこの胸のせいでできない。髪色は落ち着いたが、それ以外が目立ちすぎる。
61◆cRvsSr6LRA22/07/29(金) 01:17:10
「ふむ……たまには私がしてあげよう」
わたしから離れると彼女は反対側へとうつり、穏やかに笑みを浮かべた。わたしを迎え入れようと両腕を伸ばす彼女のもとへ近付き、頭を預ける。
「……ルナ?」
「人間だった癖が出ているね。さぁ、仰向けになるんだ」
わたしの髪留めを外しながら、仰向けになるように促される。されるがままに仰向けになると嬉しそうにわたしの頭を撫でた。ああ、わたしは本当に―――。
「そんな顔をしないでくれ」
「…わたしは弱いな」
「そう思えると言うことは、君はもっと強くなるのだろう」
「……どうだろうか、この弱さはどうにかできそうにないんだ」
わたしの手に指が絡む。あの時から、ずっと、どうにかしようとしていたんだ。それなのに、抗えば抗うほどに、弱くなっていく一方。
「君には私が居る。そうだろう?」
その言葉が、その手が、わたしを弱くするんだ。
「ルナ、わたしは―――」
言葉を遮るように唇が重なる。わたしが言わなくとも、彼女はわかっているからだ、と重ねた唇からそう確信めいたものを感じた。ゆっくりと唇が離れると、彼女の手がわたしの眼を伏せる。
「トレーナー君、少し眠ろう」
言われるがままにわたしは夢の中へと落ちていく。ああ、わたしは本当に弱い。彼女に敵う気がしないのだ。わたしよりもずっと年下の彼女に、敵わない。
「起きたら、私と―――」
そう聞こえた気がした。
≫62◆cRvsSr6LRA22/07/29(金) 01:18:14
獅子は耳飾りをつける ルドトレ
「この箱はなんだ?」
「開けてみるといいよ。私から君へのプレゼントだ」
長方形の綺麗に包装された箱がわたしに手渡される。サイズ的に万年筆だろう、彼女のセンス的にもそう思った。そっと、綺麗な包装をとり、箱を開けると彼女が秋の流鏑馬に参加する際に着ていた時につけていた耳飾りが入っている。
「これ、秋の……」
「確かにあの時につけていたものとよく似ているが、少し変えてある」
「確かに、紐がリボンに、三角形の飾りはいつもルナがつけているものになっているな」
「ふふふ…君も冗談が言えるようになったんだな」
「……そういうつもりじゃない」
「それは残念だ。そうとして、君は普段スーツやシャツ、フォーマルな服装をしているだろう?合わせられるようデザインし直している」
紐がリボンになっていたり、はそういうことらしい。気を遣ってもらえるのはとても助かる。彼女からのプレゼントというのは、耳飾りのようだ。確かに生徒はじめ、ウマ娘になったトレーナーたちも耳飾りをつけている。
「脚のこれはすぐ用意できたのに、こっちはかかったな」
「そのガーターリングはシンプルだからね。すぐにでも用意できてしまうよ」
わたしがガーターリングを見せるように脚を組み替えると、そっと彼女の指がそれを撫でる。
「これを付けろと?」
「そのために君にプレゼントしたんだ」
「わかった。それで、これはどう付けるんだ?」
箱を彼女へ近付けると、彼女は手に取った。ソファーから立ち上がり、わたしの背後へと移る。背も高くなった分、座高も高くなった。脚の長さほどではないにしてもだ。
「トレーナー君、鏡は持っているかな?」
「化粧直し用の小さなものなら」
「それでいいよ」
バッグに入っている化粧ポーチから鏡を取り出す。ソファーに座り直すと、後頭部にふわりとした感触。そっと、鏡を持つ手に彼女の手が重なり、そのまま上へと上げられる。頭の上、耳が鏡に映る位置でぴたりととまる。
「そのままだ。付けるから、覚えるんだ。君ならこれくらい訳ないだろう?」
「ああ、問題ない」
63◆cRvsSr6LRA22/07/29(金) 01:18:25
鏡越しに映るわたしの左耳に、彼女の手によって耳飾りが付けられる。
「私と同じような耳だな」
「コトの時に気付かないのか?」
「君の顔と声を堪能することが多いからね、あまり言うことでもないだろう?」
「っ……」
「君、前より……」
「気にしなくていい。続けてくれ」
耳は人間だった頃に彼女に教育されたばかりに、緩みやすい。この身体はそれを膨張させているのか、あの時よりも、ずっと、わたしの糸を緩ませる。まるで、わたしに対して気を張り過ぎていると言わんばかりに。
「―――付け終わったが、大丈夫か?」
「頭には入った。だが今後、わたしの自宅以外で触るのは禁止だ」
「禁止されなくとも、触りはしないよ」
首に腕が回る。後頭部に触れるぬくもり。張られていたはずの糸はだらしなく緩んだままだ。
「鏡越しにそんな君の顔を見せられて、私が誰かに見せたがると思うかい?」
「知っている。たまにはそういうことを言わせてくれ」
こんな顔、彼女以外に見せられる訳がない。彼女にしか見せたくないのだ。
「君にもそういうところがあるんだな、以前は見せなかったが」
「年甲斐もなく、ワガママを言いたくなっただけだ」
「気にせず、いつでも言って欲しいものだな」
彼女が離れ、またわたしの隣りに座ると左耳についた耳飾りへと手を伸ばす。彼女は満足そうに笑みを浮かべ、わたしが彼女のものと言わしめるそれを、愛おしそうに触る。
「見立て通り、よく似合っているよ」
「それは何よりだ…それとルナ」
「なんだい、トレーナー君」
「ありがとう」
心のどこかで、彼女のものだと、必要不可欠と感じられる。わたしはただただ、それがとても嬉しい。この耳飾りはその証なのだと、この身体になっても、君は変わらず私のものだと言う彼女の意思を感じていられる。
≫112二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 20:09:34
「う…なんで子供用の水着なんだろう…」
ワンピースタイプのかわいい柄をした水着、どう見ても子供向けのそれを身に着けたサトトレは少し縮こまっていた。
用意された水着がこんなの故に、恥ずかしがるサトトレ。そしてそれは彼だけではなかった。
「あ、サトトレさんもですか…」
「ブルトレ、僕と同じ…ってメブトレも?」
「二人とも、恥ずかしがってるのですか?」
「流石に恥ずかしいよ…?」
似たような水着のブルトレとメブトレ。ブルトレはサトトレ同様この水着なのはちょっと恥ずかしかったりするのか普段より落ち込み気味で、メブトレは二人とは逆にそんな子供向けのでも適応して振る舞っていた。中々面白い差ではあろう。
「それで、海に出てきたのはいいけど僕達だけだと主に周りからの対応が問題になりそうな…」
「もしもし、お嬢ちゃん達?子供三人だけかな?」
「言ったそばから来ましたね…」
「ごめんなさい、わたくし達は…」
ライフセーバーの人が気にかけて声を掛けてきた所で、そこに話しかけてくる男性と女性。
「ああっと、すみません。彼女らは俺達の連れでして…」
「そうなんですか、てっきり子供だけかと」「ええ、だから大丈夫です。ありがとうございます」
…その男女ペアはよく見れば同僚のトレーナーであり、どうも気を利かせてくれたらしい。親切な二人に感謝するちっトレ。
「ありがとうございます」
「気にしないでくれ、折角の海だからな。」
「そうそう、楽しまなくっちゃ!」
てくてくと歩いて行く三人の背中を見ながら、その男女は少し距離があいてから呟いた。
「…で、正直な所さ。犯罪臭凄い…凄くない?」
「同意するわ。あれが元成人男性三人とは思えないのよ…」
「気に掛けておくか」
「そうしましょう。いつロリコンが湧いてもおかしくないしね。」
短文失礼しました
犯罪臭の凄いちっトレの子供水着。大分やべーですよこれは(マイクロビキニ?あんなものはもはや警察案件です)。
下心なしに気に掛けてくれたモブ二人。多分あれな視線を向けてる相手には色々妨害してそう。
≫172次元好きの匿名さん22/07/30(土) 19:46:41
ウマ娘化トレーナー学園指定水着計画
「提案! ウマ娘となったトレーナー達も学園指定水着の着用を義務付けたい!」
「ウマ娘となった事で、夏合宿中も担当ウマ娘の娘と一緒にトレーニングをされるトレーナーも居ますよね?」
「懸念! その際に指定が無ければどのような水着を着て来るか予想がつかない!」
「中には服装に無頓着なトレーナーさんに少々過激な水着を渡している人も居るみたいです」
「対策! なので学園指定水着に統一することで風紀を守る事にした!」
「プライベートの水着までは口出ししませんので夏合宿のトレーニング中はすみませんがお願いしますね」
そんな理事長とたづなさんの話から暫く経ち。
「おやおや、届きましたね〜」
件の水着はグラトレの下へと届いたのだった。
173二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 19:47:06
「……せっかくですし、着てみましょうかね~」
届いて早々なのだが届いた水着を試着してみる事にする。
発注前に身長やバストを答えているのて問題は無いだろうが確認は必要だろう。
シュル…シュル…と着物を脱ぎ下着も外す。
他に人が居ないのでその辺りはあまり気にせず着替えていく。
「さてさて着てみましたが~」
割とすんなりと着る事が出来た学園指定の水着。
胸や腰もピッタリフィットして苦しくも無いので大きさに問題は無さそうだ。
「……しかし、お尻は気になりますね~」
だが、水着の確認の為に少し動いて気が付いたのがお尻の布の問題。
どうやら脚を動かす度に水着のお尻部分の布がズレてしまう。
……が。
「他の水着もでしたから〜……世の女性方は大変なのですね~」
前にグラトレが着た水着の尽くがお尻の布がズレてしまっていたため。
女性用の水着はその様なモノなのだとグラトレは認識してしまっていたのだ。
「取り敢えずグラスにどうしているか聞いてみましょうか〜」
グラスも同じ様にお尻の布がズレて困ったりしているだろうから対処方法を聞いてみよう……
間違っては無いけど間違っているグラスの水着事情への認識。
その認識のままグラスに相談してクスクス笑われるのは数時間後の事だった。
ちなみに夏合宿中のトレーナー達に学園指定水着を着せる提案は「それはそれでヤバいのでは?」となり取り下げられたのだった。
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part810【TSトレ】
≫43二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:30:26
『黒狼物語~第三幕後編・祝歌~』
夜遅く、月明かりの照らす練習コース。
柔らかな光に照らされたまま、観客席からターフを眺める影が一つ。
(たった一日の練習とはいえ、自分の中での常識が何度も塗り替えられた練習だった)
赤みの掛かったロングヘアーのウマ娘、リボンカロルがぼんやりと過ごす。
(それでも……明日のレースにはまだ、不安がたくさんある)
まだ肌寒い空気の中、明日行われるであろうレースへと思いを馳せるリボンカロルは、ふと自身の後方からからりからりという車輪の回る音に気が付いた。
(あれ?誰かいるのかな)
後ろを振り向いてみれば、そこには車いすに乗った、美しい芦毛のウマ娘がいた。
「あ、ごめん。邪魔をしてしまったかな」
車椅子の彼女は少々申し訳なさそうにカロルに話しかけるが、カロルは手を振ってそれを否定する。
「い、いえ。そろそろ私も寮に戻らなければと思っていましたので……」
もういい時間だと思っていたので、戻ろうと思い始めたカロルを尻目に、腕時計を見たウマ娘は顔をしかめてしまう。
「えっ、もう門限まずくない?」
そう言うと、カロルへと腕時計の文字盤を見せる。時刻はとうに9時を過ぎており、許可のない外出は咎められる時間帯だ。カロルの顔から、さぁっと血の気が引いていく。
「えっ? あっ。ああぁああ!」
どうしようどうしようとワタワタし始めるカロルを見て、芦毛のウマ娘はクスリと笑う。
「うん、私……いや、俺も一緒に行こうか。安心していい」
「えっ、そ、それはありがたいんですけど……そういえば名前もなにも伺ってませんでした。学生さん……ですか?」
ハッと気が付いたような顔でリボンカロルが尋ねると芦毛のウマ娘は少しだけ顔を強張らせ、そして軽い笑みを浮かべながら答えた。
「俺は……うん、俺はトレーナーさ」
その表情からリボンカロルは、自負とも、自嘲とも言えるような不思議な感情を受け取った。
44二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:30:40
栗東寮には、黒鹿毛の寮長フジキセキがいる。
彼女は遅れて帰ってくるウマ娘たちを迎えるため、今日も彼らを待ち構えて玄関で目を光らせている。
「こーら、ポニーちゃん。学園のトレーナーさんと一緒とはいえ、どこで遊んでいたのかな?」
「すみませんフジ先輩! 長く外に居すぎました!」
寮の入り口で待っていたフジキセキへと、真っ直ぐに頭を下げるリボンカロル。
「明日も選考レースがあるんだ、今日はしっかりと寝て英気を養うんだよ」
「ありがとうございます、明日は頑張ります!」
フジキセキに感謝し、頭を上げるとくるりと振り向き芦毛のトレーナーに向かってまた礼を言う。
「ここまでありがとうございました。またいつか会うときに!」
「うん、明日のレースは頑張ってね」
にこりと笑うトレーナーに背を向けて、リボンカロルは自室へと向かっていった。
そうして残されたのは、寮長であるフジキセキと、数奇な運命の元ウマ娘となってしまったトレーナーのみ。
「……まだ、時間はかかりそうかな?」
心配を少し、それ以上に自らの寮に所属するウマ娘のトレーナーが再び立ち上がろうとしている姿に安堵を込めて、フジキセキは芦毛のトレーナー……トウカイテイオー担当トレーナーへと聞きただす。
「ごめん、リハビリはまだ始まったばかりだから」
少しばかり申し訳なさそうに頭をかくも、その眼には力が宿っていた。
「ううん、私に謝るのもおかしいかもしれないね。テイオーにはちゃんと会っているんだろう?」
「ああ、大丈夫。テイオーも練習の合間を縫って、俺のリハビリを手伝ってくれているからね」
今までの無気力な姿からは大きく違う、前を向く意志。
それを見てフジキセキは、とあるウマ娘を思い出した。
「うん、テイトレさんはもう大丈夫そうだね。テイオーの友人たちもまだ心配しているから、早く元気になってほしいかな?」
「はは、いろいろと迷惑かけちゃったからね……うん、ありがとうフジキセキ。きっと、君が思っているより早く戻ってくるよ」
そう言って、後ろ手に挨拶を返しながら車いすを動かし、テイトレは帰っていった。
「ウマ娘化、ね……まあ、雨降って地固まるなら、それもまた運命ってやつなのかな?」
そうつぶやいたフジキセキはふっと軽い溜息をついては、まだ帰ってこない「やんちゃなポニーちゃん」を迎えるために、また寮の玄関へと戻っていった。
45二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:30:58
ぱたん、とゆっくりとドアを閉める。同室の子は寝ているのだろうかとリボンカロルは思っていたが、どうやら宿題をこなしていたようで机に向かっていた。
「お帰りリボンカロル。……いや遅かったわね」
ドアの閉まる音で気が付いたのか、くるりと振り向いて同室の先輩ウマ娘が声をかける。
「え、えっと……はい、少々物思いに耽っていまして」
「早いわね。そういうのはもっとこう、壁にぶち当たってから……ごめん、そうだったわね」
当然レースに関する結果も聞いていた彼女は、失言をしてしまったと額に手を当てる。それを見てリボンカロルはあわてて手をふるう。
「いえ、先輩が謝る必要はありませんから! でも、少しだけ光は見えましたから。今はそれを目指してます」
「……そ。それならよかったわ」
くるりとまた机に向かう先輩ウマ娘。
「明日は頑張りなさいよ? 貴女には実力がある。良いトレーナーがつけりゃあたしみたいに重賞もきっちりとれるんだから」
「……はい。きっと、良い走りを見せられるように」
そう言ってリボンカロルは手早く着替えを済ませると、少しだけ早めに寝床へと就いた。
柔らかなベッドが体を包み、少しずつその意識が深く深くへと沈んでいく。
こつり、こつりと鳴り響く時計の針の音と、かりかりと鉛筆の先がけずれていく音だけが部屋に響く。
「……聞いてるならいいし、聞こえてないならいいわ。もしもう目を掛けられてるんだったら、絶対その目を放させるんじゃあないわよ」
何か思い出したように独り言をつぶやく先輩ウマ娘。
「……すぅ……すぅ……」
「……寝てるならいいわ。どーでもいいお節介だしね」
結局寝ているリボンカロルには届かなかったが、言うだけ言って満足した先輩ウマ娘は宿題の仕上げをこなすため、再び眼前の宿題へと意識を向けた。
月はその姿を少しずつ霞ませ、朝焼けのオレンジが空を覆い始める。
運命の日が、始まった。
46二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:31:57
天候は晴れ、雲一つない青空。穏やかな風がターフの向こう側まで駆け抜ける、絶好の走り日和。
今日も選抜レース場は多くのトレーナーが詰めかけ、新しいパートナーやチームの新メンバーを探すためにその目をギラつかせていた。
そんな中に、今日もまた二人のウマ娘が静かに観客席に座りながらその時を待っていた。
「どうなると思う、ブライアン?」
組んだ手の上に顎を乗せ、静かにターフを見据えるブラトレ。
「さあな、所詮付け焼刃かもしれん。碌に実力を発揮できないまま沈むことも十分にあり得る」
「まあそうだよなぁ……そうなったらもう申し訳ないどころじゃないな」
ハァ、と柄にもなくため息をつく姿を見せるブラトレに目もくれず、ブライアンはターフを眺めながら呟く。
「だが、それに乗ったのはあいつだ。そしてあんたはやるだけのことをやった……違うか?」
「……そうだな。じゃあもう信じるだけだな!」
その言葉で、悩むのはやめたとブラトレは気を持ち直す。誰だって努力すれば上手くいくとは限らない。しかし、努力を積むこともできなければ土俵にすら立てないことだってある。
彼女は今、トレセンという土俵に立っている。ならば後は、彼女の底力を発揮できるかは彼女次第ともいえよう。
「あいつがお前の教えた走法で走ると決めたのなら、そこからはあいつの物語だ。そこから羽ばたけるかは、あいつ次第……雛鳥は殻を破れるか」
「破って見せるさ、あいつなら……って、断言できたらかっこいいんだけどな」
格好つけるも締まらず、にへらっと笑ってしまうブラトレ。
「なんだ、私をあれだけ走らせておいて未だに観察眼が成長していないとでも言うつもりか?」
「いやぁそんなことは……お、ちょうどパドックでのアピールタイムが始まったみたいだぞ」
「おい。……まあいい、これでも私はあんたの実力を信頼しているからな」
呆れたように息を吐くも、すぐにアピールするウマ娘たちのほうへと目を向けるブライアン。軽口を叩きながらも、ターフから目を離さなかったブラトレ。静かな二人の狼は、もうすぐに始まる戦いを見据えていた。
47二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:32:40
パドックのアピールというものは、人其々である。足の小回りをアピールする者もいれば、素早い足踏みによるスピードの強調、ただ単に自分の決めポーズを決めるような子もいる。それら様々な動きから、自分がどれだけレースにおける自信を持っているかを強調する。
その点において、リボンカロルは非常に落ち着いたアピールをしていた。
静かにパドックの中央まで歩いてくると、胸に手をあて、深呼吸する。足元を爪先でたたき、くるりと回転してまた前を見据える。その目線は真っ直ぐと、観客席のほうへと向いていた。
(きっと、厳しい勝負になる。でも、私は少しでも勝ちに近づきたい)
まだ彼女の心には恐怖が残っている。後ろからの圧を受けた際に、また調子を大きく崩さないという保証はない。それでも、かすかに見えた光を掴むために、今ここに立っている。少し見渡せば、お世話になったあのトレーナーの姿も見えた。それだけで、彼女の心の中にほんのりとした勇気が湧いてくる。
(……よし!)
左手を自身の体の前に持っていき、力強く握る。そして、もう一度だけ前を見る。
彼女の迷いは、ちょっとだけ薄らいだ気がした。
(目の色が変わったな)
そう心の中で呟くは、若くして三冠の栄誉を得たトレーナー。曲者の担当ウマ娘と二人三脚で三年間を走り抜けた彼、もとい彼女はその眼にある程度の自信を置いている。
どのようなウマ娘においても、気力というものは大変重要なファクターを占めている、というのが彼女の持論だ。最高の気力を発揮すればその限界を超えることもできるが、逆に低調をきたしてしまえば本来の力は発揮できなくなる。
全てのレースにおいて、完全なポテンシャルを発揮することなどできはしない。だが、気力が高ければそれだけでも大きな力となる。様々な思惑、作戦、そして刻一刻と変わるレースの状況、それらにおいて気力と気力のぶつかり合いというものは幾度も発生する。
ならば、実力伯仲の間柄であれば最終的な勝負を決めるのは、互いの勝ちたいという気持ちに他ならないであろう。
今、リボンカロルの心には追われる恐怖以上に、勝ちたいという気持ちが強くなっている。ならば、最後の一瞬に恐怖を振り切られれば……。そんな姿を、彼女の瞳の中から感じた。
48二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:32:58
滞りなくゲートインが終了し、九人のウマ娘がスタートを今か今かと待ち構えている。
静かに呼吸を整えるもの、体を動かしてテンションを高めようとするもの、周りを見回して様子見をするもの。
そうして全員が前を見て、ゲートの開く瞬間を待つために姿勢を整える。
ガコン、と大きな音が一つ鳴り響いてレースは始まった。
瞬間、ブラトレの周囲では俄かにざわつきが広がる。以前のレースでは先行策をとっていたウマ娘が、出遅れたような姿勢でレースを開始したのだ、事情を知らないものからすればスタートで大きな失敗が起きたと考えても仕方はない。
「おいおい、あの子大丈夫か? 確か前のレースだと先行策だっただろう?」
「怪我でもしてなければいいけれど……不安ね」
観客が口々にそう呟く中で、何人かのトレーナーはその動きに何らかの意思を見つけた。
出遅れにしてはあまりにも迷いがなく、その動きは最初から意図的なものである、と。
「……案外わかる物なのですかね、ブラトレさん。あの子、今追い込みになってませんか?」
いつの間にかブラトレの隣にいた、新人トレーナーが問いかける。
「ん、君は初日のか。スカウトどうだった?」
「上手くいきましたが、それはそれとして観察眼は鍛えておいて損はない……と思いましたので。それより、あの子ですよ。先行策から後方策への切り替えなんて、一朝一夕でできるようなものなのですか?」
「んー、普通は難しいかな。基本的に多数の脚質を自在に操れるのはよっぽど天才的なセンス持ちか、過酷なトレーニングを積み重ねたものくらいだろう。じゃあ、そうじゃないとしたら?」
「……もしかして、元々適切な脚質ではなかった?」
「まあ俺はそう踏んでるよ」
そう話しているうちにも、集団はコーナーを回り始める。たった1400Mのレースでは、一瞬のうちに戦況は大きく変わっていく。コーナーを半分も回れば、もう終盤戦だ。
「リボンカロル……お前は翼を羽ばたかせられるか?」
ポツリとつぶやくブライアン。彼女の勝負所は今まさに此処にある。
49二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:33:12
(……勝ちたい)
リボンカロルには、実戦経験というものがないに等しかった。
幼いころからトレーニングはすべて本で読んだことと自分の思いついたことだけを頼りにし、レーシングクラブのような同年代の子と競い合う機会もほぼなく、ただただ愚直に、自分の可能性を模索していた。
両親は余裕のない家計をやりくりしながらも、カロルのためにいろいろな本を買ってあげたり、偶の休日に広い草原に連れて行ったりと、愛を受けながら成長してきた。
(勝ちたい)
見られる、ということが自身にとって致命的なことだとは露ほども思っていなかった。
少しでも実戦経験を積むことができれば回避できた、もしくは対策を積むことも出来ただろう。だが、いざ夢の舞台への第一歩といったところで大きな障害にあたってしまったと考えた彼女は、夢をあきらめようとさえ思ってしまった。
(勝ちたい)
だが、あきらめるにはまだ早いと教えてくれた人がいた。
たった数日間、出会って間もないというのに走りを見てもらい、適切な走法と思われるものを提示してくれて、あまつさえ練習まで指導してもらうことができた。
今彼女を突き動かしているのは、諦めかけていた夢を掴みたいという思い、今までできる限りのサポートをしてくれた両親への思い、諦めかけた夢を救い上げてくれたあのトレーナーへの思い。
そして、勝ちたいという思い。
(勝ちたい!)
走り続ける身体が熱を生み出す。最後方で控えていた彼女が、意を決してスパートをかけるためにその足で大地を踏み込む。
一瞬だけ、世界がスローモーションに見える。
爪先から頭のてっぺんまで、身体中を駆け巡る血が沸騰せんばかりに熱を帯びる。
じわり、じわりと大地へと沈んでいく足が、ついにその大きな反動となって速度へと変わっていく。
ダァン、と音がした。
一人、二人とその音に気が付いた時にはその前を緋色の風が過ぎ去っていく。
三人、四人。じわりじわりと先頭への距離が縮まっていく。
五人、六人、七人。ここにきて、後ろからの圧力につかまりそうになる。
でも、それは初めて味わった時の感覚とは大きく違うものだった。
50二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:33:39
「思うに、あいつの言う恐怖とは未知のことだ」
「いきなりどうしたんだ、ブライアン?」
後方集団を抜き去り始めたリボンカロルを見ながら、ブライアンはまたポツリと呟く。
「レース中という極限の状況、走り続けるウマ娘たち。最後の最後で気力を振り絞ってでも、自分の全てを出し尽くしてでも勝利を掴み取るという絶対的な意志。あの奔流へ常に身を任せる者は当然と思うだろうが、今の今まで一度も誰かと走ったことがない者がその圧を受けたら、どうなると思う?」
「……怖いでしょうね」
新人トレーナーは気が付いた。だからこそ、あの子はその圧に負けてしまったと。
「あぁ、だからこそあいつは一度折れかけた。だが、今度はどうだ?」
「カロルも、周りのウマ娘も勝ちたいと思っている。それは何方も同じだと気が付いたら?」
いままで恐怖していた未知は、自らの力と同じものだと気が付けるはずだ。
「……結局、諦めの悪い奴が勝つというのはそういうことかもしれんな」
集団は最終直線に入り、カロルは現在最前列を突き進むウマ娘に近づいて行った。
こんなにも、自然と走れることは初めて。
私の中で、燃える思いが全身を突き動かすエネルギーを溢れさせている。
今まで怖かったものは、きっと私も持っていたけど、気が付かないものだった。
誰かと走ることが、こんなにも怖くて、こんなにも辛いものだと思ったのは、きっと間違いじゃない。ただ、初めての感覚に戸惑っていただけなのかもしれない。
そうだ、皆同じなんだ。今ここに集まっている子たちは、夢を追いかけるためにこの大地を走る。
空に輝く一等星を掴むために、地上を吹き抜ける風となる。
私だって同じ。夢を掴みたい。誰よりも早く駆け抜けたい。
今でもまだ、後ろから強い視線を受けるのは怖い。だけど、その怖さだって乗り越えてみせる。
勝ちたいという気持ちは誰にも譲れないと、気が付いたのだから。
「さあ最終直線、先頭を逃げるはオレンジオーシャン! その後ろを猛追するのはリボンカロル! オレンジオーシャンここで加速するもまだまだリボンカロルは追い縋る! オーシャンか、カロルか、逃げか、追い込みか! 並んだ、並んだ並んだ! そして躱してゴール板! 一着リボンカロル、一着リボンカロルです! 速い速い、最後方からごぼう抜きを仕掛けた見事な追い込みでした! 二着はオレンジオーシャン、三着は……」
51二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 11:34:00
ワアッ、っと歓声が上がる。拍手が祝福の歌のように、彼女を包む。
走り切った彼女は、その勢いをゆっくりと抑えつつ立ち止まった。
静かに空を見上げる。
青く晴れ渡る空が、どこまでも遠く遠く風を運んでいた。
ふと、観客席を見ればあのトレーナーがいた。
きっとこれは運命なのかもしれない。あの日あの時、あのトレーナーと出会ったから。あのトレーナーが、私の流した涙と、私に感じた何かを信じてくれたから。
いま私は、ここに立っている。
気が付けば、走り出していた。まっすぐに、誰よりも早く、伝えたかった。
観客席最前列に近づいていたトレーナーに近寄って、心の中から声を張り上げた。
「もし、もしよければ! あなたのチームに所属してもいいですかぁーっ!」
「……うちは厳しいかもしれないぞー!」
「構いませぇーん!」
目を瞑って、叫んだ。ふわり、といったような音が聞こえたような気がして、目の前にトレーナーが降り立った。
「……じゃ、今後ともよろしくな? リボンカロル」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
差し出した手のひらを、ギュッと握りしめる。柔らかくて、大きな手だった。
気が付けばまた、拍手が起きていた。
でもこれはレースの終わりであって、始まりはこれから。
彼女の長くも短くもある旅路は、今ここで幕を開けたのだ。
五つの星は集い、ここに一つのチームが完成した。
星が集まったならば、後は星を繋いで名を付けるのみ。
≫71二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 18:06:09
ケーッ!(気が付いたら鳥になってたデース!)
ケー……(なので取り敢えず部屋に戻りたいのデスが……この姿だと結構遠いデース)
ケー……(飛べば速いと思いマスが、飛び方なんて分からないデース……)
「あれ? マンボ?」
ケッ!?(ケッ!?)
「また、逃げ出していたんだね」
ケッ、ケーッ!?(ト、トレーナーさん!?)
「怪我は……無いみたいだね」
ケッ、ケーッ!?(だ、抱き上げられたデース!?)
「ほら、暴れないで」
ケーッ……ケッ(トレーナーさんに抱き締められて……はう)
「うん、落ち着いたね……おや?」
ケーッ……(あう、そんなマジマジとエルの顔を見ないで欲しいデース……)
「よく見たら今日はエルとお揃いのマスクだねマンボ?」
ケーッ!?(エルそんな格好デース!?)
「エルもだけどマスクを着けていると格好良いよね」
ケーッ(格好良い……照れるデース!)
「それに、エルはマスクを外すと可愛らしくてドキッとさせられるんだよ」
ッ!?(ッ!?)
「エルには内緒だよマンボ?」
……!……!(……!……!)
「それじゃあトレーナー室まで一緒に行こうか」
ケーッ(ケーッ)プシュー
その後トレーナー室へ戻るなり元の姿に戻ったエル。
鷹状態のエルを抱き締めていたエルトレは元に戻ったエルを支えきれず一緒に倒れてしまった。
その結果エルトレに押し倒される形となったエルの脳は、処理の限界を迎えシャットダウンしたのだった……
マンボだと思って内緒話をしてしまい顔を赤くさせたエルトレにエルの何かが壊れたのは別の話
≫78二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 19:24:58
『ロレトレはまだ気づいていないので着てくれる』
チュンチュンチュン
「うーん。頭が……昨晩は皆様と晩酌をして、それから……うーん、記憶がありませんわ…… わたくしとしたことが……」
「もう朝ですのね。着替えなくては……ってあれ、お洋服がありませんわ……」
[スーツはクリーニングに出しています。代わりにトレセン学園制服を用意いたしました]
「……もう制服ですの。しかし、クリーニングでは仕方ありませんわね」
ヌギヌギ
ハキハキ
「ってそんなわけないですわよっ!! わたくしの服はどこですの!?」
「「「「ッチ」」」」
≫123二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 22:20:34
「なにこれ」
「三女神様直々に水着をくれたらしいわね。…なんで星条旗なのかしら」
「…着るの?」
「もちろんよ。三女神様からの贈り物よ?」
「ならトレーナー着せてあげるね」
「あら、ありがとう。私が着替え終わったら部屋から出るわね。ベイも嫌でしょう?」
「後ろが紐のタイプのビキニだから1人じゃ無理。お願いできる?」
「じゃあこの後一緒に海に行きましょう。それでいい?」
「Of corse!!…ま、裸なんてもう何度も見てるし今更ね」
「そうね〜。あ、海に行くなら髪飾りも変えなくちゃね」
「結ってあげるよ」
「ありがとうね」
はい。
ちなみに2人はぴょいぴょいはまだしてません。学生だしね
≫126二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 22:38:01
『テイトレビキニ高校校歌』
ああ 燦々ときらめく白の砂浜
遥か空に落ちてゆく 水平線のその浜で
恥ずかしく俺に似合わないと否定するテイトレに
ビキニを着せたい
きっと彼は 様々な理由から否定するだろう
しかしその様は美しく
最後にはテイオーの説得で堕ちるのだ
ああ 出来るのならば日焼け止めを塗る時のパラソルになって
彼らを日照りから守りたい
影の伸びる傘の下
艶めいた声を上げて欲しい
(間奏)
結局何が正解で 何が間違いか分からないけど
みんなちがって みんないい
おお 我ら歌えや
水着テイトレの胸とケツを盛る盛るモルモット高校
≫145二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 23:28:05
「…それで、同人誌サークルの摘発現場なのかなここは」
「いいえ、単に販売じゃないかしら。まあ、私達と一足先に来てるファイトレ女やバントレ達とだとそう見えるけども」
キタトレとサトトレが視線を向ける先、同人誌を販売してる人達とガサ入れ…ではなく見に来たファイ女とバントレ。
時折手にとっては中身を流し見て、二人で確認するその姿はやましい事でもあればすぐに吐きたくなるほどだった。
「許可は取ってあるから問題ない…よな?」
「ああ、俺達にやましいことは一切…」
「…そうか、私にも許可を取りに来てたな。」
「アッハイ」
ふと、ファイ女は一冊の(全年齢向け)同人誌を手に取る。『夢見ぬ彼女に休息を』とタイトルに書かれたそれを開き目を通す。眠れない女と心配する少女との夜の一幕を描いたというそれは、誰をモデルにしてるかは一目で分かった。
「ファイトレさん、あなたがモデルのもあるんですね。よく許可しましたねとは思いますけども」
「少しでも問題があれば別だが、これは特になかったからな。」
「…それで、見たところこの少女は同担の彼がモデルでしょうが、貴方から見てどうですか?」
「…知らん、勝手にしてくれ。私の彼に対する評価は変わらんのでな。」
そっけない返事に、バントレは真意を掴みかねる。そんな二人を遠目で見ていたキタトレとサトトレは
「…ファイトレ(女)って分かりにくい人だよね。実際どう思ってるのかきっと明らかにしようとはしないし」
「そうでなきゃやってられなかったというのは大きいでしょうね。正直、彼女の根は結構単純な気がするのだけど」
「所で、同人誌と言えば僕らのも以前出てたような…」
「そうね…現物は私の家に保管してたはずよ」
同人誌サークル、案外広くばれてるのかもしれない。そんな感覚を抱いたサークルメンバーであった。
短文失礼しました
『トレセン地下帝国』とかいうサークルが出てたので、同人誌サークルとそれを見に来たトレの(適当)ネタです。
面子がもうアカンやつと言えばまあはい。この後暫く色々とバントレに聞かれてそうなファイトレ(女)です。