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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part276【TSトレ】
≫82二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 17:46:52
黒色と楽園
「これが勝負服ね…」
スーツのようなそれを身にまとったキタトレーーー私は呟いた。
サトトレのサトノジャッジとしてのデビューで作ったのだが、いつの間にか私のもあった。
「僕のと合わせて作ったみたいだね。」
そう言うのは、白いワンピースの勝負服に身を包むサトトレだ。
耳飾りの黄金の天秤が輝いて見える。
「随分と似合うじゃないかしら?貴方のイメージ通りよ。」
「そうかな、なら嬉しいや。」
はにかむように笑う彼女がとても可愛い。
最近は振り切れてるとはいえ、今までそうやって笑う姿の少なかったサトトレのそれは良いものだった
(抱き締めてあげたくなるわね…仮に男性の姿だったとしても気持ちは変わらないけど。)
「…キタトレの勝負服もいいと思う。」
先程までじっと私を眺めてきた彼女からそんな言葉が飛んできた。
「そうかしら?そこまで変哲のないスーツだけど。」
「うん、だからだよ。キタトレはこっちの方がいいと思うんだ。それにこの帯もあるしね」
「赤色のこれでしょう。…走ったら広がるらしいけど」
「それとこの手袋もね。」
手渡してくるのは黒と白の手袋。サトトレから受け取ったそれを手に付けて感触を確かめる。
暗く纏う私にあの曲が今なら似合いそうだ。
「目立つね、その左手。僕と同じ白色。」
唯一明るいそれを彼女は指摘してくる。
「それは貴方のチョーカーもでしょう。…付けて上げるわ」
そういって赤色のチョーカーを取り出し、彼女の首に巻きつける。私が彼女を染め上げるかのようなそれ。
(ダイヤちゃんが染めていくのもわからなくはないわね…)
「不思議な感覚だね」
良く分かっているのか怪しい彼女が返してくる
「そうね…折角だし走りましょうか。」
「うん、そうしよっか」
ーーーその後、ターフにて白い羽根と赤色の羽根を見たと噂になったのだった。
≫107二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 18:00:51
変わらず天狼星 リウトレ
朝日を浴び、瞼を開ける。いつもより、身体に違和感がある。
「な、なによ…これ……!」
低くなった背、大きくなった胸と尻、白くなった髪に頭上にある耳、下半身にある尾。どうやらあたしはウマ娘になってしまったようだ。最近よく聞くトレーナーのウマ娘現象。またいじられそうだな、あたしはため息をつき、スマホで担当ウマ娘であるシリウスシンボリへ連絡を取った。
「ハハッ、そりゃあいい。見に行ってやるよ、アンタがどう変わったのか」
「もう何でもいいから、早く来て……」
あたしは頭を抱えた。アンバランスなこの体格は些か生活に問題がある。とりあえず着替え等を済ませることにした。慣れない歩幅に躓きかけたりした。尾のために服を新調する必要がありそうだ。あとは胸も大きくなったから下着も。今は支障のなさそうなワンピースを着用した。
「この眼も…笑いそう…」
鏡に映った自分はあまりにも変わり果てていた。赤い眼と黒目が青く見える眼が並ぶ。横髪だけ伸びたショートヘア、短く太い眉、口元の黒子。胴体以外変わってしまったようだ。
「入るぞ」
「ノックをしてって言ってるでしょ!」
「別に良いだろ、アンタと私の仲だ。にしても、随分と変わったな」
ノックもせずに部屋に入ったシリウスは変わったあたしの身体をまじまじと見つめ、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「ああ、悪くない。アンバランスではあるが、中身まで変わってねぇなら許容範囲だ」
「許容範囲って…」
「まさか、こんなちんちくりんになるとはな。兎みたいになっちまって」
「うっさい!気にしてんの」
彼女に突っかかろうとしてあたしはバランスを崩した。
「わ…」
「おっと…当面は私が抱えてやろうか?」
バランスを崩し転びそうになったあたしを抱えて嬉しそうに彼女は言った。
「慣れるまでだけよ!」
「ああ、いいぜ。アンタは私のトレーナーだからな。この身体でも可愛がってやる」
「もう…そういうのは良いから、ウマ娘用の服売ってるところに案内して頂戴!」
元々波乱の多い彼女との日々にまた大きく波がきた。顔に熱を感じながら、あたしはそんな気がした。
≫160二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 18:27:05
「──それで、マックイーンの一日のスイーツの上限を引き上げたのです」
「ま、いいんじゃねーの?走ればいいんだし」
「むしろ今までよく我慢したなマックイーンも」
「ええ、本当に。時折増やして欲しいと言われてましたが……わたくし少し厳しすぎたでしょうか……」
「それはマクトレの考えるべきことだよ。私はテイオーに言われたらすぐ許しちゃいそうだけど」
「……」
「……」
「……」
「え、どうしたの?」
「やばいな」
「やべえな」
「やばいですわね」
「えっほんとに何?」
「わたしって」
「あっ……」
「うん」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part277【TSトレ】
≫30>>1721/10/20(水) 18:45:48
『来ました! 来ました! 1着「───────」今ゴールイン! 2着の「──────────」を置き去りにした! 強い! まさに世界の「───────」! 今このドバイという舞台で……』
TVから流れる中継を聞きながら、ふと思う。私は、なぜ「間違えて」しまったのか。
それとも、今は「間違い」ではないのだろうか。
いまや誰もが世界一「────」と認める「姉(私)」、そして今、世界の舞台でレースを制してみせた「妹」。私達姉妹を誰もが羨むだろう。
『お姉ちゃん見てるー! 私、世界に勝ったよ!』
「はは、それはまだ言い過ぎ……でもないのかな……」
大切な「妹」の晴れ舞台。当然現地で応援するのが普通で。
でも私はその日にどうしても外せない予定があって、海外まで同行するのは難しい。
──そういうことに、してしまった。
その予定なんて、いくらでも変えられたはずなのに。
「どうしても変えられないから」なんて、私には理由にならないのに。
……無理なんて、これまでいくらでもしてきたはずなのに。
『おめでとうございます「───────」さん! 今この気持ちを伝えるとしたら誰でしょうか?』
『勿論お姉ちゃん! お姉ちゃん、いっぱい褒めてくれるかな♪』
『お姉ちゃん……ああ、カレンチャンさんのことですね!』
『はい♪ まずは家族に、それからこれまで支えてくれたみんなに、そして今私を見ているすべての人に、この「カワイイ」を届けたいです!』
勝者へのインタビュー。本来喜ばしいはずのそれを聞いても、私の心はむしろ沈んでいくばかりだ。
インタビューが進んでいく。そして話が姉妹の仲に進んだ時、私は耐えきれずTVの電源を落とした。内容は当然録画してあるから問題無い。でも……これから直ぐに、嬉しそうに報告してくるだろう。「お姉ちゃん見ててくれた♪」って。
だからそれまでに、私は涙を落としきらなければならない。私の「────」は当然、誰かを笑顔にするためのものなのだから。
ずっとそうしてきたように、「────」笑顔でよく頑張ったねって、お兄ちゃんを抱きしめてあげるんだ。これまでも、これからも。
うまぴょいうまジリリリリリリ!
≫124二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 19:31:33
マルトレ「ルドトレに聞いてきたんだが、マルゼンスキーみたいに征服欲を満たしたいなら抵抗するといいらしい。なので今日は抵抗するが別に嫌なわけじゃないからそこんところよろしく」
マルゼンスキー「私が学生の時の設定でお願いしたいわ」
マルトレ「了解」
マルトレ「ダメだマルゼンスキーッ!こんな……俺たち担当とトレーナーの関係で……こんなことしちゃダメだってぇっ……っぁ!」
マルゼンスキー「」
マルゼンスキーがハッスルしすぎてマルトレは腰痛で学園を休んだ
127二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 19:33:32
その後
マルゼンスキー「ごめんねトレーナーちゃん……昨日ハッスルしすぎちゃって……」
マルトレ「あれくらいの方が愛されてる実感あるから別にいいっていうかもっとして」
≫136二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 19:40:57
「ねえお母さーん」
「うーいなんだい娘二号?」
「なんでママはお母さんをネイチャって名前で呼ぶのに、お母さんはママを名前で呼ばないのー?」
「……それはねー。なんか名前で呼んでもしっくりこなかったからなんだよ?」
「なんでー?」
「それはねー。トレーナーさんって呼ぶのが一番好きって気持ちが伝わるからだよ?」
「どうしてー?」
「それはねー……」
…………
……
≫163二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 19:55:59
「トレーナー。昔学生の頃さ、あんた、アタシなら引く手数多だって、割とデリカシーないこと言ってたよね」
「ああ、言ってたな」
「アタシはさ、アンタがいい」
「……今の俺はウマ娘だぞ? タイシンには他の選択肢だって」
「二度も言わせるな、クソボケ」
「悪かった」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part278【TSトレ】
≫50二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 20:30:02
「トレーナー君。状況は?」
「ウマ娘側はエアグルーヴとフジキセキを副官に状況を鎮静化させるべきだと思う。トレーナーとなるとグラトレさんも頼りになりそう」
「わかった。エアグルーヴ、動けるトレーナーとウマ娘の実働部隊指揮を委任する。フジキセキは寮の方で確認を」
「わかりました会長」
「了解、すぐに行動するよ」
(*1)
≫109ガンギマリ頭スズトレ21/10/20(水) 20:50:59
「スズトレさん、今日って夜時間あったりは?」
「ん、あるけどどうかした?」
「いやー、ちと相談に乗ってもらいたくて…」
合同練習中にブラトレがそう持ちかけてくる。
「…私に?珍しいね、いつもはフクトレとかマクトレとかなのに。」
「そのフクトレの推薦だったりもするぞ。スズトレさんが一番気持ち分かるだろうって。」
「マジで?」
フクトレがわざわざ私の名前を出すってことはホントにそういう事なんだろう。内容は想像つかないけど。
まあブラトレには数え切れないくらいお世話になってる。ブラックヴォルフの練習にスズカや私を参加させてもらったり、ブライアンと並走させてもらったり、料理教えてもらったり。
「分かった、どこにする?」
「助かりますわ。」
断る理由はなかった。
ということで少し時が過ぎ、ブラトレの家にて。
「ルドトレとグルトレが…」
初手から私は頭を抱えた。それも物理的に。
「…オーケー、多分全てを理解したけど念の為続けて。」
「わかった。いや、俺ってほら、こう…18系の話苦手じゃないすか。」
「うん、ちょっと心配なるくらい耐性ないよねブラトレ。」
「それでさぁ!!ルドトレがさぁ!!もう遠慮なしに惚けまくるし言いまくるの!!!!」
「分かるよ…ルドトレ気の許せる相手だとただでさえ緩い口が更にユルッユルになるからね…」
「そうなんだよ…勘弁して…でさ、グルトレは抑えてくれてるのよ、ある程度。
…でもさ…ルドトレにガッツリ削られた後にされると十分すぎるくらいキツいっていうか…最近普通にブレーキ緩くなってきてるっていうか…」
「あー…寝込んだ後からグルーヴへの想いが更に溢れ出てるのはあるなぁ…多分あの時になんかあったんだろうね…」
「無事に帰ってきてくれてよかったわ。でも、やっぱりキツい…仕事がままならない…助けてスズトレさぁん…」
111ガンギマリ頭スズトレ21/10/20(水) 20:51:18
机に突っ伏し、弱々しくブラトレが言う。哀れ、あまりに哀れ。
特にそういうのに苦手意識のない私でも全力でお断りしたい空間に耐性マイナスを放り込まれた末路がそこにはあった。
「…正直に言っていい?リモートとかで近寄らないのが正解だと思うなぁ…」
「なん…だと…?」
「だって二人とも無自覚要素が少なからずあるから意識しても絶対漏れ出すし…あとはマクトレかカレトレ辺りから──耐えた。教わるとか…?」
「あれ覚えられるもんなの…?」
「…さあ…?」
沈黙が部屋に満ちる。
「…スズトレさんでも打つ手なしってことでよろしい?」
「申し訳ないけどこればっかしはお手上げ、降参!!だって打つ手あったら28歳組の集まりの度に監禁されるルドトレはいないからね!!」
「そっか!!!!」
そして一転、大笑い。簡単に言うとハイってやつだ。
そうしてひとしきり笑いきってから。
「…定期的に相談乗るよ。気持ちは痛いほど理解できるから。」
「助かりまぁす…」
そんな約束をして、ヤケクソ気味にお酒…は二人とも弱いため、麦茶を飲むのだった。
≫120二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 20:58:08
「……ルドルフ?」
「……トレーナー君?」
ふと、トレーナー君が呼び掛けてくる。
「……んー、今日さ、夜スるつもりだったじゃん。監禁調教プレイ」
「……するつもりだったな」
「……なんか、スる気が……」
「……奇遇だな、私もだ」
そうして、二人揃ってこう言う。
「…今日は、添い寝だけでいいな」「よね」
こうして、まったりしようとした二人が掛かった面々の鎮圧にてんやわんやするのはあと数分後の話……
────翌日、慰労も兼ねてルドトレは監禁された。
≫138ロブトレヒロイン概念21/10/20(水) 21:04:52
ロブトレ同窓会
「皆さん、お久しぶりです」
「「「いや、お前、誰だよ!」」」
「?先にLINEで伝えたと思いますが……」
「いや、伝わっているけどさ。それでもお前誰だよってなるよ!」「うおちっさ、うおでっか」
「あのイケメンがこんな姿になるとは……女性陣から阿鼻叫喚の声が聞こえるな」
「それで、本当にお前、ロブトレでいいんだよな?」
「ええ、なら大学時代の皆さんの武勇伝を話してあげましょうか?」
「「「いや、やめてくれ、お前の言う武勇伝は武勇伝ではない」」」
「ふふ、私からすると十分武勇伝のように感じていましたが、皆さん、これで分かっていただけたでしょうか?」
「ああ、分かったよ、お前は紛れもなくロブトレだ」
「とりあえず、いつも通り飲め、お前、昔は俺たちとくらいしか飲めていなかっただろ?」
「いえ、ですが、それで何時も皆さんに迷惑を……」
「良いんだって!お前のことはよくわかっているからさ、だから存分に飲め!」
「で、では……少しだけ、いただきますね」
~数十分後~
「ヒック……うう……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「酔っぱらっている時くらいしか、お前はゆっくりできなかったもんな、お前は」
「周りからの期待に縛られてさ……俺たちと一緒にいる時くらいは沢山泣いて、いろんな想いを流しちまえ」
「久しぶりに会って正直驚いたよ。よくつるんでいたからこそわかるけど、こいつ、だいぶ自然体になっていたな」
「ああ、柔らかな口調は変わらなくても、気を張っているわけではないのが伝わるからな」
「うう……ロブロイ……大好き……」
「俺、ずっと心配だったんだよな。こいつ、担当を持ったらそいつのためにずっと気を張り続けるんじゃないかって」
「そうならないために、よく俺たちでこいつの想いを吐き出させていたんだろ」
「でも、担当を持ってからのこいつ、本当に幸せそうだからな。いい担当に出会えたんだな」
「今まで我慢してきた分、十分幸せになれよ、ロブトレ」
「それはそれとして、今の状況、やばくない?」
「お前……こいつに欲情しているのか?」「そうなら俺たちの友情はここまでだな……」
「そうじゃなくてさ……酔いつぶれたロリ巨乳のウマ娘と、成人男性3人で飲み会している図……通報されないか?」
「……早めに切り上げて、ロブトレの送りを誰かにお願いするか」「だな……」
≫150二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:12:49
やっと、あなたと一緒に カフェトレ(タバコ)テイトレ
「…寒い」
「…寒いなぁ」
半月と星が照らす夜の海岸で二人の芦毛が釣り糸を垂らしていた。
「…マルトレは?」
「車で寝てる。朝になったらタマトレ達が青物とか狙うために投げ釣り用の荷物持って来るらしいからそれまで待つんじゃないかな」
「…まぁこんな真夜中から釣りなんてしなくてもいいし」
「…それはそうだけどさぁ」
くしゃくしゃと髪を掻く彼を見て、コンビニで買ったホットコーヒーをくいと口に含む。
「そういえばなんでカフェトレは参加してくれたんだ?」
「ん…そうだな。確かに私はあんまりこんな経験はないけど」
キャップのついた缶コーヒーを灰皿にして短くなったタバコをそこに捨てる。わずかに残したコーヒーに火が浸かり、じゅぅと音を立てて消える。
「夢を見たんだ。闇を切り裂いて暖かな光に飛び込む夢を…それで、なんとなく」
「そっか。それは良い夢だ」
「うん…本当に、良い夢だったから。気分が良くなってな」
表情はいつも通りに、それでも微かに微笑んでカフェトレは新しくタバコを取り出して咥える。そうして火を取り出そうとして、テイトレが伸ばした手に目を向ける。
「ん。おめでとう…ってのもなんか変だけど」
テイトレが差し出したZIPPOの揺れる炎を見て、彼は笑う。そうしてタバコに火をつけ、ゆっくりと息を吸う。煙が口腔を通り、気道を通って肺に満ちる。
「ふふ…ありがとう…も変だな、どうぞ」
「どうも…ははっ、なんだこれ」
お返しにとカフェトレが火を差し出して同じようにテイトレも紫煙を燻らせる。
星が瞬く、肌寒い波風が吹く夜の海岸。二人の芦毛が咥える蛍のような赤い光。
一際強い風が吹く。波音しか聞こえないその凪間でこう聞こえた気がした。
おめでとう、と。
「テイトレ、そういえば竿引いてるけどいいのか」
「うぇ!?もっと早く言ってよ!いじわる!」
≫171二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:29:16
釣り? をするゴルトレとムントレ
「ウェーイ☆ゴルシちゃん見てるぅ〜? 今、俺はゴルシちゃんにナイショで津軽海峡に来ちゃってま〜す☆」
「ウェイ☆着いてきたムントレだよ、タンホイザ見ているかい?」
「それじゃあコレから喫茶店でお出しする本マグロを釣っちゃいま〜す! 包丁を研いで待っとけよ☆」
「……!! それよりゴルトレ君!あの魚影を見たまえ!!」
「なっ! おいおいおい、キリ……ムントレ! ありゃあ俺の婆さんが言ってた大間の伝説のカジキマグロじゃねぇか!!」
「やはりそうか!! ふっ……釣り上げたらタンホイザも喜ぶだろう!!」
「当ったりめーだ、シュタ……ムントレ!! だけど、ちくしょう! アイツが喰らい付きそうな餌が無ぇ……!!」
「……ゴルトレ君、コレを使えないだろうか?」
「なっ……こりゃあ、リア……ムントレが作った味がしっかり染み込んだ大根!! ……いける、いけるぜ! この大根なら、あの伝説のカジキマグロも喰らい付く!!」
「やはり大根は全てに通ずるか……よし、船の操縦は任せてくれゴルトレ君!!」
「応! 任せたぜ、ヴォーダイムントレ!! ……つけ麺屋の親父……アンタの悲願、俺が叶える!!」
「コチラの準備は万端だ、ゴルトレ君!!」
「……よし、気合い入れっぞ! 良い言葉は有るか!?」
「愚問だな!!」
「「いくぞ!! えい、えい、むん!!!!」」
その後、メイド喫茶にてカジキマグロの解体ショーが有った事は誰もが知る所である。
完!!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part279【TSトレ】
≫19二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:46:08
『導く者たち』
「いやーごめんねブラトレちゃん、ヒシトレちゃん。料理任せっぱなしになっちゃってさ」
「気にせんでくださいよ、俺たちは料理好きですから。まあ飲むのも好きですけど!」
「ブラトレは飲みすぎたら暴走するらしいからほどほどにしてよぉ?」
「はっははー覚えてないなー、覚えてるけど。ま、そんなことより手を動かせ動かせ」
今日は夕方からブラトレの家で、生徒会、寮長トレーナーたちの飲み会が開催される予定だ。
ブラトレとヒシトレ両名は飲み会で提供するおつまみの準備に勤しんでいた。
「5人分のおつまみってなかなか量が要るねえ。」
「別にお酒で全部押し流すってなら量はいらないんですけどね、今日はゆったり話しながらなんでしょ?」
「それならこちらを充実させておいたほうが満足感出るでしょうから」
「それはありがたいねぇ。もう少ししたら二人も来るだろうし、テーブルのほうの準備を進めておくよ」
「あ、フジトレさんなんか食べたいものあります?作っておきますよ」
「じゃあ唐揚げでも予約しておこうかな?」
「かしこまりー」
フジトレはテーブルの準備へと赴き、こちらキッチンでは二人の料理が進んでいる。
「うーん、このペースなら10品程度いけるかな…?」
「5人で飲むからまあそれなりの量は欲しいよなぁ。野菜と魚関係任せても?」
「おっけい、肉系と揚げ焼き系はヒシトレやってくれ」
「よーし、チャチャっと作って俺たちの飲む時間を確保しよう」
かくして二人の料理人によるおつまみ大作戦は始まった。
「あー、オクラいい……たまに食べたくなる」
「おっと、つまみ食いとは感心しないなー?」「味見と言ってくれ味見と。ほれおいしいぞ」
「あーうまー。これで共犯者じゃないかぁ」「へっへへー問題なかろうぜぇ、生産者特権よ」
「よし、唐揚げは大丈夫。あとは煮つけかな?」「なめろうおっけー。大体できたんじゃないか?」
「あっ味見味見。うまー」「うまぁい……背徳的だぜ」
ちょこちょこと味見という名のつまみ食いをしつつも、時計の長針が半分回るころに料理は終了した。
20二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:46:29
「しゅーりょー。まあ、十分でしょ」
彼らの目の前には、相当量の料理の品々がそろっていた。
さすがに全部を一度にもっていくわけにはいかないので、一部は冷蔵庫の中で保存しておく。
「5人で食べる分だしこれくらいなら行ける行ける」
「……まあウマ基準だからあっという間だろうな」
「だろうねえ……みんな食べるしねえ」
「まぁ足りなかったら作ればいいや。そろそろ来るでしょ二人も」
そうキッチンで話していると、チャイムが部屋に鳴り響く。
フジトレもキッチンに向かってきて、二人を呼んだ。
「来たみたいだよ。迎えに行こう」
「了解でーす」
二人はキッチンを後にして、友人を部屋に招き入れに行った。
「ごめん遅くなっちゃった!」
「緊急の仕事がちょっと溜まってたみたいでね、グルトレちゃんの分を手伝ってたんだ」
玄関の外ではルドトレとグルトレの二人が待っていた。仕事終わりでスーツのままである。
「あーしゃーない、なんか今日も増えたとか言ってなかったっけ……」
「えーっと……たしかスマートファルコンさんのトレーナーが」
「増えたねえホントに……ブラトレちゃん、今何人だっけ」
「40あたりから数えるの放棄してデータベース頼りですよ俺」
「難しく考えたら爆散しそうだわ」
「まあそんな訳なので。仕事の話はここで終わり、今日はルドトレやみんなと一緒に飲む!」「飲むよー!」
仕事から解放された二人は存分に今日の飲み会を楽しむつもりである。
「ほいほい、今日はお酒は抑え目だけどおつまみは多めに用意したから楽しんでくれよー」
「「わーい!」」
迎え入れられた二人は靴をきっちりと揃えて脱ぎ、ぱたぱたと部屋へ入っていく。
「……いまさらながら僕たちって全員男だったんだよね?」
後のほうにウマになったフジトレが呟く。彼女たちの動き方はもはや女性のそれと何ら変わりないのだ。
「言わんでください……生徒会メンバーの俺が一番わかってたはずなのにわかっていなかったから……」
ブラトレはブラトレでなんやかんやの末最初期の変化メンバーになってしまったので、溜息交じりに呟いた。男の自覚が失われたわけではないが、何とも言えない気分であった。
21二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:47:02
休日前とはいえ、やはりハイペースに飲むのはよくない……という感じでブラトレとルドトレがペースを抑えながら飲んでいたため、本日の飲み会は大変緩い進行となっていた。
「あー、このなんだろ、魚おいしい」
「なめろうだねー、うまいうまい」
「ちょっと寒くなり始めたからあったかいものが食べたいー」
「じゃあ唐揚げとってくるかぁ」
「あ、行くならついでに芋焼酎とってきてブラトレちゃん」
「ほーい」
ブラトレが料理を取りに行ったタイミングで、グルトレが思い返したかのように口を開く。
「そういえばここにいるメンバーって大体担当に愛をささやいたりささやかれたりしてない?」
「……うそぉ」
爆弾が放り投げられたとヒシトレは確信した。多分ブラトレがいなくなったタイミングを見計らったのはこれだろう。
「そうだねー、僕はそこまで進んでるわけじゃないけどフジといろいろと楽しんでるよ」
「まあ私は言うまでもなくルドルフと」
「私もグルーヴと」
「……えっこれ俺も言うの?」
「だってブラトレちゃんはこの手の話に強くないじゃない?」
「何ならブラトレってもうすでにブライアンと家族枠というかなんというか……」
「あー、僕もちょっとわかるかも。落ち着いた相方っていうか熟年夫婦みたいな感じだよねえ」
「それなら新進気鋭のヒシトレちゃんに聞いたほうがほら、楽しそうじゃん」
ヒシトレの顔から冷汗がだらだらと噴き出る。ヒシトレは逃げたくなってきた。
「うおおおお、俺も逃げてえ……!」
「駄目だよー、軽くでいいから話してちょうだいよー」
「簡単でいいから言ってみてよー!」
「お、俺は……ヒシアマゾンに……いやそんな事はやってない!普通に一緒に過ごしてるだけだって!」
「なんだー、てっきりもっと進んでるかと思ったけどそんなことはなかったんだねえ」
「俺のことなんだと思ってるんです!……っていうか生徒会のメンバーお二方が一番やらかしてるのでは?」
「……いやそんなことはないはず……前よりは変な理由で監禁されなくなってきたし……」
「いや私も抑えてるはず……たぶん」
監禁というワードが出る時点でだいぶおかしいのだが、全く気が付いていないようだ。
22二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:47:22
「うぉーい唐揚げと芋焼酎とその他もろもろ持ってきたぞぉー」
「わーい!」「ブラトレありがとー!」
見計らったタイミングのようにブラトレが戻ってきたため、この話題は中止となった。
「まあ、人の関係はそれぞれ違って当たり前ってことでしょうねえ」
「そういうことにしといてください……」
「ん?何の話してたんだ?」
「いや別に何か特別な話はしてないよ」「ブライアンとブラトレって仲いいよねーっていう話?」
フジトレとグルトレは誤魔化しつつ料理皿を受け取った。
「まあ最高の相棒だからなー。うちの子一番って言い始めたら収集つかないからやめとくけど」
「それが賢明だねえ。それを言い始めたら僕だってフジが一番!って言い始めちゃうからね!」
「俺だってヒシアマゾンがナンバーワンだ……ってそういうところですよねー」
「負けず嫌いばかりだからねえ、暗黙の停戦協定よねー」
それだけ皆、様々な形で担当ウマ娘と関わり合い、ともに走り続けているのだ。
時には喧嘩もしたことだろうし、笑いあったり、涙を超えて行ったこともあるだろう。
ウマ娘たちを導く人であり、共に歩む人。そして同じ夢を目指して共に支えあい、走るもの。それがトレーナーなのだ。
「でも何もなしってもつまらないしなー、自分の相棒の良いところを一人一つだけでも挙げるか?」
「お、それなら良さそう」
「じゃあ誰からするー?」
「ここは年齢順でやっちゃうか!おじさんからやるよ!」
「フジキセキさんの良い所教えてー!」
宴もたけなわ宵の席、一人一つの良いとこ探し。
あの子は優しい、あの子は智的、自分の眼で見た全てのことから、これぞというもの一つを挙げて。
自分の愛バの自慢話は、酒の最高の肴だろう。
≫31チヨノオートレSS21/10/20(水) 21:55:41
私、サクラチヨノオーはトレーナー室で拍子抜けしていた
というのも、先日自分のトレーナーさんがウマ娘になったと聞かされていたからだ
さぞや混乱しているだろうなと心配していたのだが
「という訳でウマ娘になってしまいましたが、これからもよろしくお願いします」
ウマ娘化して初めての顔合わせでの第一声がこれである
確かにトレーナーのウマ娘化事例は増えてきている
トレーナーさんも同じウマ娘になった他の方々に話を聞いてもいるらしい
何というか、反応が淡白というか
もうちょっと困惑したりしても良いのではないだろうか?
何時までも後ろを向いてはいられないというのが本人の弁だが、それ以上の含みがあるように聞こえるのだ
それをトレーナーに問うと、今後試せることが増えると理由を話してくれた
「私がウマ娘であれば、チヨノオーさんのトレーニングを同じ目線で考えられるんです」
曰く、人とウマ娘は別個の生き物であり、どうしても認識のずれは生まれてしまうのだという
しかし、同じウマ娘ならば、データだけではなく疲労など言葉にしずらい感覚も理解できる
すなわち、自分のデータを参考にトレーニングを組み立てられるのだ―――
そう嬉しそうに話す彼(彼女?)を見ていると、一抹の不安がよぎるのだ
以前から、トレーナーさんは担当ウマ娘のことを重視する一方、自分の事はおざなりにしている傾向がある
ウマ娘や他の人間には病的なまでに無茶をすることを止めるのにだ
今回もデータ収集と称して自分の体を酷使してぶっ倒れはしないかとひやひやしている
それに、今だって―――
32チヨノオートレSS21/10/20(水) 21:56:28
「…何ですかその服装は」
「何って、ジャージですが…」
身の丈に合わないダボダボのジャージを着て私の前に姿をさらしている
以前から服装に関して意識が向いていないと思っていたがこれほどとは…
「トレーナーさん、今度お洋服を買いに行きましょう!私もつきあうので」
「でも、トレーニングが」
「でももだってもないです!!」
「アッハイ」
この調子だと先も思いやられるな
私は思わずため息をついた
33チヨノオートレSS21/10/20(水) 21:57:01
後日、ショッピングは困難を極めた
「別にスポブラでも…」
「駄目です。調子が悪くなりますよ」
「じゃああのマネキン一式を」
「チョイスが適当すぎますっ!」
「私は化粧とかは…」
「女性の基本なので覚えてもらわないと!」
お店を回って数時間後
フロアに設置されたベンチに倒れこむ。なんだかいつもの三倍ぐらい疲れた気がする
傍には紙袋を持ったトレーナーがいた
今は私が選んだブラウスとパンツを履いて貰っている
本人はこんな素敵な服は私なんかに似合わないとか言っていたが、実際着てみればベストマッチである
「ここまで買い込む必要があったのでしょうか…」
「女の人は繊細なのでこのぐらい必要なんです」
若干今回の買い物に乗り気でないトレーナー
やはり、トレーナーさんは自分について無頓着だ
自分が美少女ウマ娘である自覚がないというか…
女性としての自覚がないというか…
自分のことをおろそかにしがちというか…
34チヨノオートレSS21/10/20(水) 21:57:14
そのうち変に男性を刺激してえらい目に合いそうな危うさがある
うん、駄目だこの人…暫くは私がサポートしてあげないと
そう決意した昼下がりだった
≫73二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 22:17:29
『ウシ娘~ロングホーンダービー~』
「今日のてぇぇぇまはぁぁぁぁ~ウシ娘ぇぇぇぇぇぇぇい」
んな変な言葉が夢の終わりのあたりで響いてた気がした。またなんか俺の夢に侵入してやがるゥ。
朝起きて鏡を見れば、俺の頭には見事なまでの角が生えていた。
「嘘ぉン」
角ってなんだよ。俺今ウマ娘でしょ。ウマに牛の角付けたらもうキマイラでしょ。
ギガブラトレって名前になっちゃうよ。いやバッファ〇ーマンか?
「ご丁寧に服の柄まで変えやがって…!」
寝ているときに着ていた寝巻は見事なまでに牛柄。俺の愛用していた寝巻ジャージを返せ。
あとなぜ首にカウベルがついている。引き剥がせねえ。呪われている装備だ。
「あーどうしよう……今日は休みだけども……うん?電話?」
ピリリとなる電話を取る。
画面に表示された名前はつい最近までアメリカでバッファローを乗りこなしていたと噂のゴルトレ。
『おーっすブラトレー、ゴルトレちゃんだぞ?』
「どうしたゴルトレ、朝から宣戦布告か?」
『よく解ってるじゃねえか…ついにオレたちの雌雄が決する時が来たのだ』
「で、どこ集合?駅前?」
『本屋でよろしくー』
ピッと電話が切れる。スイッチが入る。
「さーて、出かけるかぁ…この頭どうしよ……」
この後ゴルトレとロングホーントレインの練習をした。翌日には角と牛柄はきれいさっぱり消えていた。
その時、ふと閃いた!このアイディアは、ブラックヴォルフのチームメンバーとのトレーニングに活かせるかもしれない!
メンバー全員は迫る影のヒントを得た!(冗談です)
≫88二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 22:26:24
リウトレさんは耐えたい リウトレ
ウマ娘化してしまったあたしは担当であるシリウスシンボリに連れられ、ウマ娘向けの服を扱う店へと向かっているのだが。
「恥ずかしいから下ろして!!」
「別に問題ねぇだろ、誰にも迷惑かけてねぇんだから」
シリウスに横抱きされていた。当然赤の他人の視線は向けられており、あたしの羞恥心は限界だった。ブラがないので胸は包帯とタオルでしっかりと抑え、靴は幸いもともと持っていたもので足りたので歩けなくはない。
「歩けるわよ」
「さっき突っかかろうとして、転びそうになったクセによく言う」
図星だ。だからと言って引き下がるあたしではない。そう、慣れないからといってこのまま文字通りおんぶにだっこではいつまで経っても慣れないのだ。正直彼女に抱きかかえられ、パーソナルスペースを侵食されるのは羞恥心を加速させている。恐ろしい程に顔がいい、それをわかっているのかそういう事をあたしによく言う。以前はパーソナルスペースに入らず、さらりと言ってくるだけだった。だったのだが。
「そんなに私の顔を見て、ようやく乗り気になったか?」
「違うわよ、下ろして」
あたしがこの身体に慣れないことを良いことに簡単にパーソナルスペースへ侵入してくる。
「ワガママなお姫サマだ」
「トレーナーよ」
ようやく横抱きから解放されたあたしは、ゆっくり地へと足をつける。身長とバランスの悪すぎる胸で脚元が見えない。平均台を歩く時のような感覚で一歩、また一歩と足を動かす。
「そんなチンタラ歩いてたら日が暮れちまうぞ」
「うっさい!……きゃぁっ」
急かされたあたしはバランスを崩し、彼女にまた抱き支えられた。本日2度目である。早く慣れたい。心臓が足りない。
「ほらな」
「っ……!」
「ハッ、可愛いモンだ」
顔に熱を感じる。彼女はあたしの手を取り、笑みを浮かべた。あたしは彼女に手を引かれながら歩くことを選んだ。
90二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 22:26:37
「これとかいいな、アンタによく似合う」
「なんでシリウスがあたしの下着選ぶのよ」
ショッピングモールに着き、下着から購入しているのだが、なぜか彼女が先導して選んでいる。そのせいか緑、白、赤が多い。
「そんな事聞くのか?」
「そりゃ聞くでしょ、わざわざ選ぶなんて」
「へぇ…いいぜ、教えてやるよ」
彼女は私の耳の根本へと唇を近付ける。吐息が触れ、肩が震える。
「アンタの事脱がしたいからだよ」
「っ~~!!」
トレーナーに吐く言葉じゃないことを囁かれ、あたしの羞恥心はどうにかなりそうだ。彼女はあたしの反応に満足したのか、下着選びを続けた。あたしの買おうとしたものは全部却下され、購入したものは全部彼女が選んだものとなった。女性トイレで慌ててブラをつける。ホックの段が多いので少し苦戦したがこれで堂々と歩ける。
「ちゃんと着けれたか?」
「できたわよ」
ドア越しに彼女が煽る。貧相な胸だったことを知っているからである。引き続き、洋服売り場、これも同じ理由か彼女が選んだ服だけ買った。
「今日は付き合ってくれて、ありがとね」
「アンタと居られるならいくらでも付き合ってやる」
帰路、たくさんの紙袋を抱えタクシーの中だ。紙袋が多すぎること、彼女とあたしの両手がふさがり、どうにもできないからである。
「明日からモーニングコールにアンタん家に行ってやるよ、じゃないと学園にも来れねぇだろ」
あたしは今日も何とか耐える。あくまであたしはトレーナーなのだ。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part280【TSトレ】
≫21二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 23:41:58
「というわけで最近母乳がトレーナーの乳から出てくるのは知ってますわよね?」
「噂程度には……でもなぜわたくしに?」
「わたくしにもそろそろなにか来そうだな……と。なのでもし私からも出てきたら、少しお時間を頂くことがあるかもしれません。トレーニング中に離席することもあるかもしれませんがよろしいでしょうか?」
「ええ、トレーナーさんも集中できないとしっかりとしたトレーニングは出来ませんし」
「ありがとうございますマックイーン。……というか、なんで子供がいる訳でもないのに出るんでしょうね?」
「ウマ娘になった時点でそのようなこと考えても無駄な気がしますわ」
「それはそうですわね」
「出ましたわ」
「早いですわね……さっきの話から1時間たってませんのに」
「胸が張るなーと思って洗面所で絞ってきました。頻度次第ではもう少し対策を考える必要がありそうですわね……」
「わたくしも何か浮かんだら提案させていただきますわね」
「ありがとうございますマックイーン、それでこそわたくしと一心同体」
「ふふふ、もちろんですとも」
「てか他のやつから聞きましたけど普通乳ってこんなに生産されるものでもないはずなのですが」
「なんでそんなこと知ってますの?」
「昔読んだ漫画に母乳処理のシーンがあって少し調べたんですの」
「そんな漫画あるのですね……」
「めちゃくちゃ有名で映画にもアニメにもなってますわよ?」
「えっ」
「ちはやふる」
「ライアンが持ってますわ……」
≫332人の『怪物』1/421/10/20(水) 23:53:37
陽光が燦々と照り付ける芝の上に、白と黒の影2つ。
日本トレーニングセンター学園が所有している模擬レース用の芝コースは今、物珍し気な目線と目の前の話題について話し合う喧騒に包まれていた。
「しかし、親父さんが模擬レースに誘うなんて珍しいですね。俺はてっきりそういったことに興味がないのかと思ってましたけど」
口火を切ったのは青みがかった芦毛をしたウマ娘。流れるような髪を今はポニーテールにした彼女はナリタブライアンのトレーナー。若干23歳にして三冠ウマ娘を育て上げチーム『ブラックヴォルフ』を管理している才媛であり、今も不定期に行われているトレーナーたちの対抗レースの第1回を熾烈な競り合いの末に制した無銘の怪物。
トレーナーとしても、そして競技者としても間違いなく強者である彼は今学園指定のジャージに身を包み柔軟運動をしていた。
「相棒や息子にも言われたことだが、そんなにやる気なさげなのかね俺は。以前に比べれば走っていると思うんだが」
ナリタブライアンのトレーナーの声に反応を返すのは黒みがかった鹿毛をしたウマ娘。肩にかからぬ程度に髪を切り、彼の言葉に異論を唱えるのはギムレット。府中最強の伝説を打ちたてたウオッカのトレーナー……の中にいつの間にか住み着いていた正体不明、経歴不詳のウマ娘。自らの担当であるウオッカを「息子」と呼んでいる彼だが走る実力は本物で、第2回のトレーナーたちの対抗レースを迫る影のような静かな走りで制した無明の怪物。
トレーナーとしての実力は不明だが、競技者としては超一流である彼もまたナリタブライアンのトレーナーと同様に学園指定のジャージに身を包んでストレッチをしていた。
ヒト・ウマ娘の如何を問わず今このコースの近くにいる人間の興味は今間違いなく彼ら2人に注がれている。速さの話題には事欠かないトレセン学園において、ウマ娘となったトレーナーたちの中でも上位の実力者である彼らがマッチレースを行うという話題は耳目を集めるには十分なだけの効力を有していた。
「ところでこの活況はなんだブライアンの。ウマ娘が2人模擬レースで走るってだけなのにそんなに騒ぐことがあるのか?」
342人の『怪物』2/421/10/20(水) 23:54:15
「俺と親父さんがサシで戦うからでしょうね。『トレーナー対抗レースの第1回王者と第2回王者が芝2400m左回りのダービーの設定でマッチレースをする』って学園の中じゃ今はその話題で持ちきりですよ」
「今相棒からも言われたがそういうことか。誘った時は気づかなかったが、これはある意味頂上決戦というヤツなのかな」
観客席やレールの外から向けられる視線を全く意に介さず会話を続ける2人。会場に満ちる期待を無視し続けることができるというのは彼らがよっぽどの鈍感であるか、この程度の視線の群れで動揺することのない傑物であるかのどちらかあるいは両方か。少なくとも、この状況に彼らが焦りを感じることは無いということだけは確かだった。
「ところで、どうして模擬レースの相手を俺に依頼したんですか。……もしかしてトゥインクルシリーズに挑戦するからとか?」
ウマ娘となったトレーナーによるトゥインクルシリーズへの出走。
それが正式に受理されて以降、既に幾人かのトレーナーが挑戦を表明している。
ブライアンのトレーナーは目の前のウマ娘が自分に模擬レースを挑んできた理由にある程度のアタリを付けていた。
恐らく、ギムレットはトゥインクルシリーズに挑戦するつもりだ。
彼が昼間に行っていることは既に自分も聞き及んでいる。メジロライアンの担当やもう一人のウオッカの担当と組んで彼はスパルタトレーニングを自分に課しており、一目見ただけでその強度はトゥインクルシリーズに挑戦するウマ娘と同等かそれ以上だと理解できた。
第2回のトレーナー対抗レースを走るまでそういった素振りを一切見せなかった彼が、今では強度の高いトレーニングを行い、こうして自分に模擬レースを挑んできた。
彼はシリーズへと向け、自分と戦い実戦の経験を積むつもりなのではないか。ブライアンのトレーナーはそう考えていた。
352人の『怪物』3/421/10/20(水) 23:55:23
「いいや、俺はトゥインクルシリーズには挑戦しない。相手にお前を選んだのは強い相手はいないかと相棒に相談したらお前の名前が挙がったからさ。それになブライアンの
────俺が挑戦したら2回目になってしまう。それは道理が通らないってものだろう?」
「2回目、ですか」
「……口が滑ったな。まぁいいさ、忘れてくれ。今はレースのことを考えよう。長話をしていると時間を使い切ってしまう」
自分は2回目だ。
どこか悲しそうな、寂しいような感情を隠すように、苦笑しながら手を振って先程自分のした発言を煙に巻くギムレット。いつもは泰然とし、体を共にする相棒に煽られてようやく激情を露にする彼が見せたその表情は、今まで誰にも見せたことが無かったものだった。
彼の表情を見てブライアンのトレーナーはふと思う。
自分は彼のことをどれだけ知っているのだろうか。
彼と共に酒を呑んで言葉を交わしたこともある。もう少し自分の為に楽しんだって良いと彼に忠告したこともある。トレーナー対抗レースでの走る彼の姿を見て、忍び寄る影のような走りに感嘆の声を漏らしたこともある。
だが、自分は彼を知らない。生前の彼がどうやって生きてきたのかを1つも知らない。
「親父さん」
「どうした。何か聞きたいことでもあるのか?」
「俺がこのレースで勝ったら、親父さん自身のことを教えてくれませんか。あなたがどんな風に生きて、何のために走って来たかを知りたいんです」
だからこそブライアンのトレーナーは今日のレースを勝ちたいと思った。
自分のことを何一つ話したがらない目の前の彼を知るために、彼が1人で抱え込んでいる何かを知るために。そして1人のウマ娘として眼前の好敵手に勝たなければならないと彼は感じている。もとより勝つために自分はこの場に立っているのだ。勝つことに対しての躊躇いは微塵も無かった。
「……こんな若ぶっているジジイの過去なんて聞いても全く面白くないぞ?」
「良いですよ。親父さんの過去ならきっと面白いと思いますし」
「これも若さってヤツなのかね。昔、そういって誰かに過去話をねだった記憶がある」
「話してくれたらそれもわかりますよ。あ、それも含めて教えてくださいね。約束ですよ?」
「答えも聞かずに約束を結ぶんじゃない。だが、それでやる気になってくれるというのなら文句はないさ。お前が勝ったなら俺の過去を全て話してやるよ」
362人の『怪物』4/421/10/20(水) 23:55:59
観念したかのように苦笑しながらブライアンのトレーナーの提案を呑むギムレット。後は勝つだけだと彼が意気込んでいると。
「だがな」
弛緩していた空気が張り詰める。
火薬庫から伸びる導線に火が付いたかのようなこの感覚を、ブライアンのトレーナーはよく知っている。知っていなくたって解る。いや、粟立つ体と本能が瞬時に解らせてしまう。
「走る前に勝った後の予定を話すのは感心しないな。まるで今から俺がお前に負けるみたいじゃないか」
輝く金の眼光。ナリタブライアンのように暴力的ではなく、刀剣のように極限にまで鍛え上げられた闘志が自分を射貫く。
それはGⅠを幾つも勝つような時代を代表する傑物のみが発し得るある種の圧。普段はレース場で彼の担当ウマ娘に向けられ、自分がウマ娘となった後はブライアン相手の併走ぐらいでしか間近に感じることのなかった強者の中の強者が持つオーラとも言うべき風格。
背筋がゾクゾクする。脳は間違いなく警鐘を鳴らしているというのに、武者震いが止まらない。眼前のウマ娘は今、有り余る闘志を隠すことなく自分1人にぶつけてきている。
「いつだって俺は勝つ気しかありませんよ親父さん。それより──楽しいレースにしましょう」
吊り上がる口角は自分が今何を感じているかを脳が認識するよりも先に教えてくれた。
──楽しい。
何を呑気なことをと自分に言う者が居るのかもしれない。だがハッキリと宣言しよう、自分は今この状況を楽しんでいる。体の細胞が、脳を走る電流が、奥底に眠る魂のそれら全てが今こうして歓喜を叫んでいる。
ならば勝つだけだ。滾る闘志は衰えを知らず、猛る魂は自由に駆け抜けることを渇望し続けている。
「ああ。──思う存分戦りあおうじゃないか」
熱を持った視線を一瞬交わし、その後は互いを見ることなくゲートへと歩いて向かう。
無銘と無明、二人の怪物による対決。会場に満ちる熱気は今トゥインクルシリーズのレースにすら劣ることが無い程に高まっていっていた。
だが、彼らにとってそんなものがどうだっていい。
言葉は十分すぎるほどに話し尽くした。後はレースで語るだけだ。
2人の間に渦巻く闘気は、爆発する瞬間を今か今かと待ち続けている。
彼らの走りが決着する瞬間は──もうすぐそこに迫っていた。
64二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 00:18:35
テイトレ「検閲済み」
テイオー「検閲済み」
テイトレ「検閲済み」
検閲済み
テイトレ「検閲済み」
検閲済み検閲済み
テイトレ「検閲済み」
検
閲
済
み
─────
検閲済み
≫106二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 00:38:23
「きゃああぁぁぁ!!」
「…テイトレが女の子みたいな悲鳴上げてる」
「行きたくないですわ」
「関わりたくねぇ…はぁ…どうしたー」
「パーラパラパラ!テイトレさんのショーツは頂きましたよ!」
「バ鹿!アホ!返せ!俺ズボンなのにどうやって抜き取ったんだ!」
「えぇ…こわ…近寄らんとこ…」
「シンプルながらちゃんとした下着…いやこれUNIQLOかなんかですね?ちゃんとした下着店で買って下さい!」
「見んなぁ!バ鹿!バー鹿!」
「可哀想過ぎますわ…」
「おやおや先輩方…貴方達も深夜テンションの私の餌食になって下さい!パーラパラパラ!」
「うおっ来ないで下さいまし!フクトレガード!」
「マクトレてめっ…うあっ!?」
「スーツだからと気を抜いてたんじゃないですかぁ?というかなんで男性物のパンツ…」
「いろいろ事情があるんだよアホ!返せ!」
「あげません!次はブラトレさんです!」
「…俺の尊厳の為だ!許せテイトレ!」
「えっばっ…きゃああぁぁ!!?」
「うわぁ…ブラジャーまで剥ぎ取られましたわ…」
「パーラパラ…いや結構おっきいですね!でも色気がないのでもっとレースのついたやつとか…テイトレさん?」
「うゔぅ…ひっく…ばかぁ…パラシンちゃんのばがぁ…」
「あーあなーかしたなーかした」
「先生に言ってやろー」
「大先生にも言ってやる。一回怒られてこいお前」
「返します!謝ります!だからウラトレさんとヘリトレさんだけは…あっもう駄目みたいですね」
107二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 00:39:23
マクトレ「ブラ選びの時間ですわ!」パリン
タマトレ「敵襲か!?」シュタッ
テイトレ「動くな!お前は完全に包囲されている!」
ウオトレ「失礼しますよ」ヒョイ
タマトレ「離せ!何をする気だ!恨みを買う様なことは...多少心当たりが有る!」
タマ「うちが頼んだんや」
タマトレ「タマ!?...嘘だろ...一体どういうつもりだ...」
タマ「トレーナーが悪いんやで?うちが何度言ってもブラを着けないトレーナーが...だから強行手段で行かせてもらうで」
マクトレ「そういうわけですわ、行きますわよ」
≫157二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 05:37:32
「……ネイチャ。アレ見える?」
「うん……三女神像の顔にへばり付いてるやつだよね?ぬいぐるみかな」
「だよね。私がネイチャにプレゼントしたやつだよね」
「トレーナーさんから貰ったのはちゃんと部屋にいるよ。今日もオハヨーって言ってたし……だから別の子だと思う」
「……リニューアルした三女神像がこちらになります?」
「いやー誰かのイタズラでしょーさすがに」
「そういうことなら……」
「なんで靴脱いで、ってもしかしてアレ取るの?結構高いとこにあるよ?」
「三女神像は学園の備品だし、それにあれが悪戯に使われるのはちょっとイヤだし」
「(……またドッキリ検証とかじゃないのかな)って待ってトレーナーさん!ツボの辺りとか危ないから!あたしも手伝う!」
≫173ロブトレヒロイン概念21/10/21(木) 06:56:09
なら投げますね
過去回想:ロブロイとの出会い第二話:始まりの物語
あの時の熱を忘れられず、ロブロイと図書室で交流することが日課になりました。
一緒に物語について話したり、ロブロイにトレーニングに役に立つ本を紹介してもらったりと、図書委員の仕事を手伝ったりと放課後を一緒に過ごすようになりました。
そして、彼女が選抜レースに参加する日が近づいてきたある日のこと……
「あ、あの……今日も手伝ってくださり、ありがとうございました」
「いえいえ、ロブロイにはいろんな本を紹介してもらっていますから。それにロブロイも模擬レースが近づいていますからね。少しでも良い状態で走ってもらいたいですので」
「は、はい……トレーナーさんも、知っていたんですね」
「私もトレーナーですので、選抜レースは欠かさず調べているのですよ」
「……あ、あの、トレーナーさん……選抜レース、見に来て、くれませんか?」
ロブロイは引っ込み思案な子であるのは見ていて分かっていました。そんな子が自分の模擬レースを見に来てほしい、と言ってくれるとは……
恐る恐る言っているのを見ると、きっと彼女はとても勇気をもって言ってくれたのだろう。その想いがすごくうれしく感じられる。
「ええ、見に行きますよ。あなたの走り、ぜひ見てみたかったですので」
「!!は、はい!私、頑張りますね!」
模擬レースを見に行く約束をしてから彼女と別れる。
あれだけの熱意を持った子の走る姿、どんな走りを見せてくれるのか、とても楽しみでした。
「……あのトレーナーさんが見てくれる……もっと、もっと頑張らないと……」
174ロブトレヒロイン概念21/10/21(木) 06:57:00
選抜レース当日
ロブロイが参加するレースは1800mのレース。選抜レースの中では中距離に適性のあるウマ娘が走る距離である。本来の中距離は2000mであるが、それよりも短いのはまだレースに出ていないウマ娘であるからだろう。
「ロブロイ、今日も私の魔法を見せてあげるわ!」
「は、はい、スイープさん……その、よ、よろしくお願いします」
どうやらロブロイだけではなくスイープトウショウも参加するようだ。
「あ、ロブトレさん、お疲れさまです。ロブトレさんも今日の選抜レース見に来たのですね」
「クリトレさん、ええ、そうですね。気になっている子がこの選抜レースに参加されるので……」
隣に来たのは私の同期であるクリトレさん。同期ということもあり、よく一緒に話して情報共有をしたり、親しくしている。
一緒に話しながらロブロイを見つめる。
……なんだろう……昨日図書館で見たときと違う。
疲労がたまっているような、顔色が悪く見える。ベストコンディションとは言えない。大丈夫だろうか……。
「ロブトレさん、ロブロイが気になっているのですね」
「ええ、図書館で見かけまして、実際に走る姿は今回が初めて見るのですが……」
「やめておいた方がいいぞ、ロブトレ」
「……○○トレさん、それはどういうことですか」
「まあ、見ていればわかるさ」
先輩であるそのトレーナーの言葉を聞いていると、レースの幕が上がった。
ガコンッ
ロブロイの参加する選抜レースが始まる。
ロブロイはどうやら先行策のようで、最初から前の方について走っている。
走り始めると安定したフォームで走っており、まさに王道ともいえる走り方をしている。
この安定感は一つの強みに感じられる。そのように思えていたが……
175ロブトレヒロイン概念21/10/21(木) 06:57:27
「あ……っ……」
他のウマ娘に抜かれ始める。段々とロブロイが後方に垂れ始める。
「ロブロイはな、本格化が来ていないうえに身体が弱かったそうだ。正直、まだ出来上がっていないんだよ」
「……ですが、彼女は明確にトレセン学園に入学したウマ娘です。既に覚悟のうえでは?」
「実際そうだがな、中学から入ってくる子には夢を見て入る子が多い。そしてそれで体を壊してしまう子もな……今まで何人も見てきたんだ。出来れば、ロブロイも身体が出来上がった高校生くらいになってから入ってほしかったものだな」
「っ……」
「あの、まだ分かりませんし、今はしっかり見ましょうよ」
「……ええ、そうですね」
「っ!!……私だって……」
垂れ始めている、だけど、それでも彼女はまっすぐ前を……その瞳には、確かな熱。あの時見た、あの熱が見える。
だが、その後も彼女は上がってくることはなく、スイープトウショウが1着、ロブロイは10着であった。
「あのスイープは既に本格化が始まっているな。ただ気性難だからな。上手く導けば強くなるだろうな」
「ううん、僕はもう少し他の子も見てみようと思います。ロブトレは……」
「……」
確かに彼女は敗北した。
それでも、走っている際の彼女の瞳に夢中になっていた。
誰よりも強い想いが、確かに……。
「無理して止めようとは思わないが、体の弱い子とかは入りたてのトレーナーがつくべきものじゃないぞ。お前があのトレーナーの子供だろうと、ここでは血筋だけで何とかなるものじゃないからな」
「ええ、分かっています……それでも、私は……」
模擬レースを終えたウマ娘にトレーナーたちはスカウトに向かう。
そんな中、ロブロイだけは既にグラウンドからいなくなっていた。
恐らく彼女は何時もの場所にいるに違いない、そう思い、私はその場をあとにした。
176ロブトレヒロイン概念21/10/21(木) 06:58:04
「グス……私だって、物語の、主役のように……」
図書室に向かうとそこには何時もの場所にロブロイが座っていた。
その手には一冊の本、何度も彼女にお勧めされた本、『ロブ・ロイ』の小説がある。
そんな彼女にそっと歩み寄る。何時ものように、毎日続けていたことのように
「今日のレース、お疲れさまでした。ロブロイ」
「ひゃっ……あ、と、トレーナー、さん……すみません……今日のレース、良いところ、見せられなかった、ですよね……」
「いいえ、そんなことはありません。あなたの走り、確かに見させてもらいました。その上で言わせてください、あなたをスカウトしたい」
「え……」
その言葉に俯いていた顔を上げる。
涙をためたその瞳をまっすぐ見つめるが、それでも彼女は再び俯く。
「……あのレースを、見ていたのでしたら……その、失望、するものじゃないんですか……」
「そんなことはありません!」
「その……私、物語の英雄のように、走れませんでした……それに、トレーナーさんも聞いていますよね、私が、体が弱かったこと……」
「ええ、確かに聞いています。そしてあのレースでは確かに敗北しました。それは確かな事実です」
「そう、ですよね……なら……」
「しかし、あなたの熱は変わらず、いえより強く感じました」
「え……熱、ですか?」
不思議そうに首をかしげる。
私自身、上手く表現できているとは思っていない。それでも、私が感じたことを彼女に伝えるんだ。
「ええ、あなたの物語の英雄のようになりたい、その理想、その夢へと向かう熱がとても感じられました」
「あなたはレース中、確かに落ちてしまっていました。それでも、貴方は諦めようとしていなかった。その瞳に、私は理想を追い求める熱を感じたのです」
「理想を……追い求める……熱……」
「ええ、それにあなたはそれだけ英雄への思いが強いということは、自分自身の走りの理想の姿を思い描いている。それはこれから走っていくうえでこの上なく強い武器となります」
「……ほ、本当に、そう、思ってくれるん、ですか……」
177ロブトレヒロイン概念21/10/21(木) 06:58:19
ロブロイの顔がはっきりと私と目を合わせる。
そんなロブロイに目線を合わせるように背をかがめ、そっと、瞳から流れる涙をふき取る。
「ええ、もちろん。そんな強い想いを持ったあなたを支えたいのです……いえ、違いますね」
「え……違う、のですか……」
ふと、頭の中で浮かんだ言葉。
彼女と共に過ごし、一人一人のウマ娘の人生とは、それぞれの物語における主役のようだと……
「『ウマ娘の人生は一編の物語のようなもの』、あなたとともに過ごすうちにそのように感じました」
「!!……『ウマ娘の人生は一編の物語』……それは素敵な発想ですね」
「その物語を、あなたの物語を一緒に紡がせてくれませんか?」
「え……私の物語を、一緒に……」
再び、彼女の瞳に涙があふれ出す。
でもその瞳はきっと、先程までの悔しさからではなく……
「私、そんなふうに言われたの、初めてです……あ、あの……トレーナーさん……」
「その……これから、よろしくお願いします」
図書室に夕日が差し込む。
夕陽に照らされた彼女の顔は、とてもきれいで、愛らしかった。
そして、それが私とロブロイの物語は始まりました。