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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part606【TSトレ】
≫15二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 19:33:52
お年玉ステークス
【イクトレ】
『私は断固としてもらう側に回ることを拒否します』
「そんなに理事長からお年玉をもらったことがショックだったんですか?」
【じじピ】
「ホッホッホッ。さあ、お年玉をやろうのう」
「うぇーい! じじピ、あざまる水産!」
「毎年恒例ですね、先生。……ご出費は大丈夫ですかっ?」
「なに、歳を取ると欲も薄れるものじゃ。寧ろ金を渡して使ってもらわねば、バチが当たるというもんじゃて」
「ほれ……あー、ジョトレ君も」
「お給金を頂いてるのでいりません」バッサリ
(ショックを受けて昏倒するじじピ)
≫3922歳組×餅つき22/01/02(日) 21:01:54
ドベトレ「んぐおおあああああああ!!!!」パンパン
スペトレ「死ぬう!!死んじゃいます〜!!」パンパン
ファルトレ「がんばりなよ男子〜」
ドベトレ「てめえらも手伝えよゴラァ!!」
リウトレ「いやアタシ杵持てないし…ここはパスで」
パルトレ「ほらもっと腰入れなさい!!」
ドベトレ「ぐぬぬ…!!」
リウトレ「てかアタシ達は調理に回るし……仕事はちゃんとしてるわよ」
スペトレ「ドベトレさん料理へたくそですもんね」
ファルトレ「正直1番任せたらヤバいかも、うん」
ドベトレ「」
パルトレ「でも貴方たちのおかげでつきたてのお餅が
食べれるんだから、感謝はしないといけないわね」
スペトレ「やっぱ良家の人って格が違う…優しいなあ」
ドベトレ「おいスペトレ、おい」
リウトレ「まあアタシら2人以外はみんなお嬢様だしね…」
ドベトレ「なんか最近皆アタリ強くね?なんなの?」
ウオトレ「皆さんきな粉買ってきましたあ〜!!!」
ファルトレ「ん、帰ってきたみたいだね」
パルトレ「ウオトレさんこっちこっち!!」
リウトレ「これで全員揃ったね、よし食べよっか!!」
ドベトレ「置いていくなスペトレ!!おいマジで!!」
スペトレ「正直ドベトレさんのパワーなら1人でも…」
パルトレ「ほらあと50回!!食べきっちゃうわよ!!」
ウオトレ「……ドベトレさんって、愛されてるんですね」
ドベトレ「……?お前も愛されてるんだろうが」
ウオトレ「……え?」
スペトレ「みんなウオトレさん大好きなんですよ!」
ファルトレ「なんかシンパシーかな、それと」
パルトレ「可愛い子は助けたくなっちゃうもの、ね?」
4022歳組×餅つき22/01/02(日) 21:02:34
リウトレ「アタシ達は経験も浅いし色々大変だと思うけど…、お互い助け合っていきましょ」
ウオトレ「皆さん……」
ドベトレ「今回はお前が最近悩んでねえかな、
って思って企画したんだ、ありがたく思えよな」
スペトレ「いや『ウオトレさんと友達になろうの会』じゃなかったでしたっけ……、あれ?」
ファルトレ「あっ」
リウトレ「言っちゃったかスペトレさん……」
ウオトレ「ふふっ、皆さんありがとうございます!!」
ドベトレ「……うっせーよばーか」
パルトレ「さ、準備も出来たわ皆!!」
ウオトレ「見たことないお餅がいっぱいだ!!」
ファルトレ「早速食べようか皆」
ドベトレ「おっしゃあ!!せーのっ!!」
全員「「「「「「いただきます!!」」」」」」
☆あとがき
22歳組のポテンシャルは高いのだ……(ダイマ)
ウオトレ(女)はかわいい……?(自明)
良家と庶民のギャップ!!6人中4人が女子!!
これさえあれば勝ちですわ!!
ちょっと待てこの6人家族っぽい……(突然)
スペトレ→母、ファルトレ(過激)→父
パルトレ→長女、リウトレ→次女
ウオトレ(女)→三女、ドベトレ→飼い犬
完璧だな
≫61二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 22:08:19
10月に入り、だいぶ涼しさが暑さを押しのけてきた。
「それじゃあ、あと2週間ほどで終わるからそこらへんで退院になるね」
「了解や。ほんまに色々と、あんがとな」
「そんな礼はいらないよ。仕事だからね」
そう言って病室を出ていく主治医。それに手を振って答えると改めてトレーナーに抱きつく。
「えかったなトレーナー!やっと退院やで!」
力加減を忘れ、強く抱きしめる。
「やっとやで…トレーナー!ほんまに…ここまで…長かったなぁ…」
そう言いながら段々と声が弱くなっていく。そして目尻から透明の雫が溢れる。
「よう……よう頑張ったな…」
トレーナーに背中をぽんぽんとされて、力が強く入っていたことに気がつく。
「おお、すまんな」
トレーナーを離すと目を拭われる。
にこりと笑いかける彼女に、声をかける。
「どうや?もうすぐ一緒にトレーニングできるんや!ウチは嬉しすぎるで!」
興奮で思わず声を張ってしまう。
62二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 22:08:44
「……ぁ…」
「!?!?」
唐突に、彼女が声を出した気がした。聞き間違いや空耳だろうか。いいや、そんなはずはない。確かに、今聞こえた。
「………ぁ………」
「なんや!?どうしたんや!?」
ずっと声を出せなかったトレーナーが、今声を出した。そして、何かを伝ようとしている。
「…ぇ………」
「落ち着け!落ち着いてゆっくりでええ!!」
「…あ……め……んぇ…」
段々と声の数が大きくなっていく。
何度も何度も、掠れた声をあげる。それをじっと待つ。
そして何度繰り返したろう。しゃがれた、でもしっかりした声で伝えた。
「…た……ま…ごめ…んね…」
「ごめんってそんな…なんや急に!ウチは別にそんな…」
「わたし…ずっ…と…いえ…な…て……ご…めん…ごめ…ん…」
深く俯いて、シーツを握りしめて、涙を流しながら謝る。驚きながらも、タマは再び彼女を抱きしめた。
「そんな…ウチは…ウチは大丈夫や……そんな謝らんでええ…アンタが…隣にいてくれたら…ウチは……ウチはそれで…それだけで十分や…」
さっきよりも強く抱擁をする。細くて、今にも折れてしまいそうな体を精一杯包み込む。
「わ…たし…ずっ……にげ…て…」
「逃げるも何もあるか…アンタはずっと…頑張っとったやろ……」
「で…も……」
「でもじゃないわ…ええか?」
肩を持ち、目をしっかり見つめると強く言う。
63二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 22:09:05
「アンタは、誰が何と言おうと頑張った。それを違う言うんは、ウチ絶対許さん。ええか?」
それを聞いて、こく、こくと頷く。
「そうや、アンタは自分で思っとるより頑張ったんや。そんで今も頑張っとる。もっと自信もってええんや」
その一言が合図だった。途端、堰を切ったようにタマに抱きつき、嗚咽を漏らして泣き始める。それを抱き返し、優しく背中をさすり続ける。
「泣きたいだけ泣けばええ。アンタは今、山を越えたんやからな」
「どや、落ち着いついたか?」
「…うん……」
目を真っ赤に晴らしてタマから離れると、顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「…あ………」
「ん、どうかしたんか?」
「…ふく……」
「ああ、大丈夫や。こんくらいどうにもなるわ」
そう言ってタマは荷物をまとめる。いつの間にやら、もうすぐ面会の終了時刻だ。
「じゃ、また近いうちに来るわ」
「……ん…」
「あとな、声出す練習のこと伝えとくけどええか?」
「…ん…」
首肯したのを見て、ベッドから降りると靴を履く。
「…ま……」
「おう、どしたんや」
「……ま……たね…」
「〜ッ、おう!またや!」
そう言って部屋を出ると、医局に寄って先程のことを伝え、病院を出て上を見る。
トレーナーの部屋に主治医が来ているのが見えた。
(あっ…前来たダストレさんに伝えんとな…あと理事長とオグリと…)
いつもより速足で、色々なことを考え、顔を少し綻ばせながらトレセンへと走って戻るのだった。
空には一番星が出始めていた。
≫75二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 22:30:31
前スレの概念になるけどお許しを
「タキオン、はいこれお年玉」
「おやおやこれはどうも、ありがたく預かっておくよ。……おや、どうしたんだい?何か気になることでも?」
「…えっと、その着物似合ってるなぁって。タキオンってあまり着物を着てるイメージが無いからちょっと意外だったというか、いつもこういうのにあんまり興味が無いんだろうなと思ってたというか……」
「一応これでも名家に分類されるような家の出身でね。親が放任主義とはいえ着物の1つぐらいは自分一人で着れるように躾けられたものさ。無用の長物だとは考えていたけど、人生何があるかわからないものだねぇ」
「ふーん。じゃあどうしてタキオンは着てくれたの?これまで一回も着たこととか無かったじゃないか」
「そもそも着る機会もなかったし、それに君が「初詣で着物を着ることになったけど、着方がわからないから教えてくれ」とか言っていたからね。教えるついでに久しぶりに着てみるのも悪くないと思ったまでさ。それに…」
「それに?」
「前ならともかく、今年は君と一緒に初詣に行きたいと思ってね。それならこっちの方が良いだろう?」
「……もしかして、タキオンって意外と好きな物とか独占したがりな方だったりする?」
「さて、それはどうだか」
≫77二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 22:44:32
https://bbs.animanch.com/board/221485/1/?res=147
正月 単発
「あっ、オグリ!あけましておめでとう!」
「おめでとうトレーナー。ん、それはまさか…」
「ふっふーん。オグリの考えることならお見通し!ということで餅つきセットを準備しました!私が沢山作ってあげるから覚悟してね!」
「あ、俺も一応いるから」
「トレーナーたちが作ってくれるのか!?」
「もっちろん!色々あったけど、今の私はウマ娘。彼に『お前なら樫本代理に対抗できる』って言われたのも今は昔!この溢れるウマ娘パワーを活かす時が来た!オグリのためにお餅の100個や1000個ちゃちゃっと作っちゃうよ!おりゃー!」
―少し後
「と、トレーナー…?大丈夫か…?」
「はぁ、はぁ…。流石オグリ、食べる速度が異次元…!私はまだまだ…やれる…!」
「なんで俺より先にお前がバテてんだよ」
「無理はしないでくれ。後でタマやイナリも呼んで手伝ってもらおう」
「ご、ごめんね…」
「出来上がったものがまだ少し残っている。冷えないうちに一緒に食べよう、トレーナー」
「うんっ。………ふふっ、おいしいね、オグリ」
「ああ、本当に美味しい。私のためにありがとう。今年もよろしく頼む、トレーナー」
「うん!よろしくね、オグリ!」
≫135二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 09:05:54
聖夜と竹炭お風呂と グルトレ
「これ、貴様がやったのか?」
「うん、頑張ってみたよ~」
私はトレーナーによるプレゼント交換会を終えて、グルーヴと帰宅した。仕込んであった夕食をテーブルへと並べていた。以前シリウスシンボリ担当トレーナー、リウトレに教わった花の飾り切りを取り入れたものだ。
「とても良いな、花の形にしたのは…私を想っての、だろう」
「もちろん!だってグルーヴ、好きでしょ。だから絶対喜んでくれるって!」
飾り切りを使用した料理は彼女に好評だった。こういう時に取り入れていこう、彼女との食事を楽しみながらそう思った。食事を終え、彼女と後片付けをする。
「お風呂、早速試してみよ」
「貰った竹炭か?」
「うん、今日はとても寒かったし一緒にゆっくり浸かろ」
洗った皿を拭き、棚へと戻し片付けを終えた。持って帰ってきたプレゼントボックスに入っている竹炭とそれを入れるためのネットを取り出し、バンブーメモリー担当トレーナー、バントレさんから教わった使用方法でお風呂の準備を始める。湯張りを待つ間はソファーにかけ、彼女とゆったりとした時間を過ごす。いつもなら彼女の方から絡められることのない尾が絡められ、私は少しドキリとした。高鳴る心臓を感じながら彼女と時間を過ごしていると、空気が読めるのか読めないのか、電子音が湯張りを終えたことを知らせる。竹炭を取り上げないと、ソファーから立ち上がると尾を絡めたまま彼女もついてきた。なんだかいつもより積極的だ。たまにあるけど、そういう時はだいたい私が誘う時だ。だから、そうしていないのに積極的な彼女に私は高鳴り続ける心臓を抑えられずにいた。湯船から竹炭を取り上げ、水洗いをして風通しの良いところへ置いた。これで竹炭のお風呂の準備が終わった。
「なんだか、今日のグルーヴは積極的~」
「…問題あるのか」
「おおアリ!ドキドキしちゃう」
風呂場で身体を洗い合いながら、私は素直に思ったことを伝えた。クリスマスだからだろうか、私も少し気持ちが昂っている気がする。流石にお風呂で、というのは考えなかった。お風呂の時間はお風呂の時間として楽しみたい。
136二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 09:06:07
「それに、いつもより印なぞる時の指が―――あんっ…グルーヴのえっち~」
「たわけ、貴様には言われたくない」
「え~私以外には言われてもいいの?」
そう言うと言葉の綾だ、と彼女は私の弱いところを触れる。ああ、だめ。これ以上は我慢できなくなってしまう。慌てて私は彼女を抱き締めた。ボディーソープの泡がぬるりと重なる身体を滑る。これもこれでよくない。
「そういうのはお風呂あがってから、ね?」
「私が満足するまで相手してもらうからな」
「いつもじゃん…あ、グルーヴ」
「なんだ?」
「グルーヴの1番可愛いところは絶対に私以外に見せちゃダメだからね!」
「その言葉、そのまま貴様に返す」
私自身がグルーヴの為だけの存在であるように、私しか知らない彼女はずっと私だけのものであって欲しい。シャワーで泡を洗い流しながら、そう思った。
「ん~……あったかい」
「そうだな」
「いつもの入浴剤も良いけど、竹炭も良いね」
彼女と身を寄せ合い、湯船に浸かる。じんわり、身体の芯までゆっくりとあたためられていくのを感じる。冷え込むこの時期にはぴったりだ。良いものを貰ったなぁ、満足そうに浸かる彼女を見ながら思った。指や脚、尾を絡める。ちゃぽん、ちゃぽり、ぴたん、ぴたん。動いた時の水の音だけが風呂場に響く。ただ目線を合わせ、会話もないコミュニケーション。互いに身体の芯がしっかりあたたまるまで、それは続いた。
137二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 09:06:18
湯船からあがり、髪や尾を乾かした。互いに一糸纏わずの姿で彼女をベッドに組み敷き、彼女の左手薬指にある指輪にキスをする。
「グルーヴ、プレゼントは明日でいいよね」
「ああ、私も明日渡そう。用意している」
「楽しみ。でも今は……」
もう我慢はしなくていい。愛を伝え、確かめ合うキスをする。ぷつりと糸が切れたら、それは合図。
「この夜を素敵なものにしよ」
「忘れらないくらい濃密にな」
愛していると言葉が重なり、素敵で愛おしい夜が始まる。プレゼントなんていいのに、彼女に印をつけながら思っていると彼女に私だけに集中しろ、このたわけがと首元を甘噛みされる。ああ、なんて可愛いのだろう。彼女への気持ちをそのままそれへと変え、互いに満足するまで夜は続いた。
≫163二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 10:41:47
ウオトレーズには
親父とギムレットはMP5での突貫部隊
202はアサルトライフルで中距離支援
Vに観測主とわんこはM82による超長距離狙撃
これをして欲しい。
「右に4、上に…7。いけるか?」
「もちろんだ」(バババババ)
「っと、危ないっす」
「おう、サンキュ」
「風速3、風向き北東より南南西。目標最上階左から2つ。距離2300。いけるか?」
「了解しました。タイミングは?」
「あと2分」
「了解しました」
「終わったらパフェでも食うか」
「本当ですか!?一撃で仕留めますね!!」
的な会話が見たい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part607【TSトレ】
≫13二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 11:48:52
「大先生これは?」
「見ての通り、スポーツチャンバラで使うソフトチャンバラじゃ」
「またなんでこんなものを大量に……」ブォォン
「……音が鳴ったんですけど」
「そんな素っ頓狂な顔するでないブラトレ。細かいことはさておき、センサー内蔵で振ると音が出るという代物よ」
「へぇ……」ブォンブォン
「へぇーー!」ウォンウォウォウォン
「気に入ったかの?ソーレスのフォームなんぞして」
「あ、この弓引き絞るような型ってそんな名前なんですね。そういやなんかで書いてあったかな……とりあえずみんなに配ってきますね!」
「くれぐれも悪用するんじゃないぞー」
19二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 12:18:36
地の利を得たぞー! アンタが憎いー!
ドーベル……あたしが君の父だ!!
スカーレットくん……私が君の父だよ
カワカミさん……私こそがあなたの父よ!!
「地獄だ……スターウォーズごっこは地獄だ……」
「トレーナーさんはやらないの?」
「基本戦争映画だから戦う女の人ばっかりなんだよね……こう、普通の市井の人ってのがイメージない」
「……仕方ないですね。ネイチャさんが一肌脱ぎましょうか」
「ネイチャ?」
「お遊びに付き合ってくださいよ。あたしが師匠でトレーナーさんがパダワン」
「……もしかして詳しい?」
「型はどちらかというとマカシが楽で好き」
「実はすごく詳しい?」
「スパルタで行きますよー!」
「ひぃぃぃぃ!!」
この後ポコポコにやられた。
≫33二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 14:11:06◆辛いものとかどうなのよ
「苦手なのを期待されてますが、どうなんですかトレーナーさん」
「流石にレッドホットチキンぐらいなら大丈夫だと思う……食べたことあるし」
「でもウマ娘になってからは?タイキトレさんみたいに味の感じ方が全然変わってしまうみたいな事も……」
「脅さないでよネイチャ……なんにせよ、今食べればわかる!」
「ひー……」
「おー、ちゃんと完食できたじゃん。えらいえらいトレーナーさん」
「美味しかったけど、から、みず」
「はいはいお水。ていうか綺麗に食べ切りますねぇ。軟骨も食べてほとんど骨だけ」
「ご飯は残さず食べ切らないと滅茶苦茶怒られる家だったから……ふぅ、落ち着いた」
ネイトレさんはあまり自分の限界を探ろうとしない人。飲みまくって初めて「この身体、結構ザルなんだ」とようやく気付く
≫36二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 15:27:50
その日、人類は思い出した。
イクトレという男は、悪ノリする時はどこまでもやらかす男だということを。
『Titan Fall READY』
悪ふざけで始まったチャンバラ合戦。
悪の武器商人の如く自作のおもちゃを卸していたイクトレをちょっと脅かしてみようとした集団へ、イクトレがみせたフリップにはそう書かれていた。
瞬間、砲音が工房から響き渡る。
正確に射出された人型のそれは、イクトレとトレーナー達の間を阻むように降り立った。
呆気にとられるトレーナー達を余所に、イクトレは2mはあろうロボットにつままれ、コックピットに放り込まれる。
「☠」
特大のスポンジブレードを振りかざし、ロボットがドクロの絵文字を表示する。
後日しこたま怒られるのは織り込み済。今は容赦のない反撃を叩き込むべく、イクトレは操縦艇を握った。
≫42二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 15:59:32
トレセンのトレーナーの仕事
それによる休日の慢性的な不足
トレーナーはその疲れの発散の機会を失い、頻発する現実逃避のチャンバラが相次ぎ、それに対応するためイクノトレの技術力は高度に発展させられ、トレーナー達にチャンバラを供給するイクノトレは徐々に力を付け、彼女ひとりがが強力な軍産複合体を形成し、その影響力を次第に強めていった。
して遂にトレーナーシステムの存亡の危機に陥る程に学園は破綻し始めていた。
新たなる統治体制の確立を目指し、その時実質最高権力として存在していた
生徒会
食堂
経理
理事会
イクノトレ社
シリウスグループ
以上6のグループが、現トレセン学園に見切りを付け、全世界に対し宣戦布告を宣言した。
人はその戦争を
学 園 解 体 戦 争
と言う。
≫53二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 16:26:05
『せめて隠さむ我が浮き心地』
あけましておめでとうございます。風紀委員長バンブーメモリーっス。
新年早々なんだけど、トレーナーさんはだいぶズルくなってしまったっス。
今日でさえいつものように(いや、そもそもトレーナーと担当ウマ娘がトレーナー室の同じ炬燵でおせちをつつくという状態自体が普通なのか?と思うっスけども)新年のあいさつをしているっス。
だけど、去年見事なまでに美人さんになってしまったトレーナーさんは、誰から聞いたか凄く綺麗な着付けをして着物姿でアタシの前に現れているっス。
変なサングラスつけてるけど。なんスかその……ユニバァスなサングラスは。
「では改めて。あけましておめでとうございます、バンブーさん」
「えー、あー、はい、よろしくお願いします。今年もいろいろと頑張っていきますっス」
元から静かな雰囲気を漂わせていたトレーナーさんに、綺麗な着物という合わせ技……
本当にへんてこなサングラスさえ除けば道行く人が振り向くような美人さんになってしまったっス。
いつもよりも気になってしまって視線が定まらないっす。
「……どうしました?バンブーさん。調子が悪いのでしょうか?」
「え!?あ、いや別にそんなことは……ひょえっ」
わたわたとしているとトレーナーさんの柔らかな手がアタシの額に。
「……熱はないようですね。よかった」
トレーナーさんはほっとした表情をして、少し前にかかった後ろ髪を手で払う。
やわらかでまっすぐなトレーナーさんの、月の光のように柔らかな金色の髪が揺れる。
そんなちょっとした細かいしぐさでさえ、ドキッとしてしまうアタシはいったいどうしちゃったっていうんスか。
「……まあきっと年末年始で色々疲れちゃったんスよ……」
「それはいけませんね。お節を食べた後はゆっくり休んでくださいね、バンブーさん」
「そうさせてもらうっス……」
そうして気を取り直すようにお節の栗きんとんに箸をのばす。
いつもよりも更に甘い味ははたして味付けのせいなのか、アタシの心のせいなのか。
そんなこと言うわけにもいかないので、心の中にしまい込んでしまうっス。
いつか開くことができれば……いいな。
≫99スズトレズと大晦日22/01/03(月) 19:34:29
「年越しそばできたよ、二人とも。」
「ありがとうございます、芦さん。」
「すみません、僕の家なのに先輩に用意させちゃって。」
「気にしないで。そもそも私がやりたいからやってるんだし、こうして集まれる場所提供してもらってる立場だからね。あ、ネギの量とか何か要望ある?」
「おまかせで。」
「じゃあ私は少しだけ減らしてもらえると助かります。」
「分かった、ちょっと待ってて。」
「しっかしだけど、今年ももう終わりかぁ……」
「あっという間でしたね。」
「お姉ちゃんと先輩は1番記憶に残ってることある?」
「……あなたがウマ娘化した事に勝ることあると思う??」
「ですよね……私もです。芦さんがなった後もずっと巻き込まれずにいたから栗さんは大丈夫だろう、と油断したところに来ましたから。」
「その節は二人に色々とお世話になったよ。背も縮んだから1人じゃ大変だったろうし。」
「正直今も世話になってないかって言われたら怪しいと思うけどね、主に服と服と服。」
「……そんなにセンスないかなぁ?」
「はい。」
「うん。」
「……もっと頑張ります……」
「まあともかく1年、3人とも無事に過ごせてよかっ……
……ウマ娘化現象に巻き込まれたことは無事って言っていいの……?」
「そこ引っかかるんだ……僕は今こうして元気でいるし、無事でいいと思う。」
「OK。……みんな無事に過ごせてよかったわ。」
「私もそう思います。来年もよろしくお願いしますね。芦さん、栗さん。」
「ああ、君が好きなだけ走れるよう支えるよ。」
「当然私も。もう片手に収まらないくらい一緒に進んできたんだから。……軽く区切りも付けたし、そろそろ今年最後の食事をしましょう。」
「伸びないうちに、ですね。」
「うん。じゃあ……」
「「「いただきます!!」」」
≫116二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 20:58:03
終節「idea」
1.
「ああもうっ、むかつくっ!」
お父さんも、お母さんも『お前の実力じゃ中央は無理だ』って!私の努力も思いも、何も知らないくせにっ!すぐに私の夢を諦めさせようとする!
道端に転がっている石を思いっきり、誰もいないことを確認してから蹴っ飛ばす。そして再び叫ぶ。
「この分からず屋―!」
嫌なことがあると、決まって私はここに来る。近所にある広い河川敷。ほんとにただ広いだけで何かあるわけでもないから、利用する人は多くない。今日みたいにほとんど誰もいない、みたいな日さえある。だから、思いっきり叫んだり走ったりする分にはうってつけの場所だ。
「私だってやればできるんだから。今までは運が悪かっただけ。本当だったら、誰にも、そう、誰にも負けたりだなんてしないんだから…」
それは考えてはいけない自分の弱さ。それを吐き出さないように押しとどめて、私はがむしゃらにそこから駆け出した。
「はぁはぁ、はぁ…」
何度も繰り返した。何度も同じ場所で、同じ景色を見た。でも、やっぱり気持ちいい。気分が晴れていく。もっと走りたい、この景色をレースでも見たい、とそう心が求めてやまない。
私は疲れ切った体で地面の上に寝そべる。誰も見ていない。私を気にしている人なんていない。だから思いっきり好きなように、と。だから、その一声を受け止めるには、あまりにもその時の私は無防備だった。
「いい走りをするね、君」
その声の主はなんだか大きすぎるコートのようなものを身に纏っていて。かろうじてわかるのはフードの奥から覗く碧眼と金色の髪くらいだった。
「うえぇあっ!どどど、どちら様?…です、か?」
素っ頓狂な声を上げて立ち上がる私に対して、微笑みながらその人は近づいてくる。
目の前に来てフードを脱いだその人は、少し恥ずかしそうにこう言った。
「俺は、トレーナーなんだ。ウマ娘の、ね」
トレーナーを名乗ったその人物には、確かに「ウマ娘」に耳があった。
117二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 20:59:05
2.
『すごい!―はずっと一番だね!』
『―なら将来は中央で活躍できるかもな』
『応援してる。だから私たちの分まで頑張って』
そう、あたしは。皆の期待に応えるんだ。今のままじゃとてもじゃないけど背負えない。だから、もっと、もっと。もっと!
「う、ううん…」
朦朧とした意識のままあたしは体を起こす。
背中には固い感触。どうやら公園の木製ベンチの上らしい。頭には冷えたタオルがのっている。そして、やたらと大きいコートが布団のようにかけられていた。ああ、そうだ。あたしは確か自主練で走っていて、それで…。
「あ、ごめん。起こしちゃったかな」
声のした方へ目を向けると、すぐ側に金髪で碧眼のウマ娘がいた。彼女が私を助けてくれたのだろうか。
「散歩していたら、偶然倒れている君を見つけたんだ。放っておくわけにもいかなくて、応急処置だけさせてもらったよ。軽い熱中症だね」
彼女はあたしに飲み物を差し出しながら言った。あたしはお礼を言いながらそれを受け取って、一気に飲み干す。このあたりでは比較的顔が広いと思っていたけど、地元でこんな容姿のウマ娘を見たのは初めてだった。
118二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 20:59:38
「すいません。助けていただいてありがとうございました」
「別に大したことはしてないよ。大事が無いようで良かった。それより…」
彼女はあたしの方をじっと見て、少しだけ考え込んだ後こう言った。
「確かに症状としては熱中症だけど、遠因は別にあると思ってる。特にその脚。視認はできないけれど内部でかなりの疲労が蓄積されてる。…失礼かもしれないけれど、かなり無茶な練習をしているんじゃないかな」
…見抜かれるとは思わなかった。図星だった。誰にも気づかれないようにしてきたのに。ここまで隠し通してきたのに。まさか見ず知らずのウマ娘に指摘されるなんて。
「…分かるんですか」
やっとの思いで答えられた言葉はそれだけだった。
「これでもトレーナーをやっていたことがあってね。とはいっても新人だけど。でも君みたいに無茶をする娘は少なくはないから。何か理由があるのかな」
その問いには、あたしは何も答えられなかった。彼女は別に追求するでもなく、ただじっとあたしの方を見つめると、ゆっくりとこう言った。
優しい、言葉だった。
「きっと君にも、考えがあってそうしてるのは分かる。それを無理に聞こうとは思わないよ。でもこのまま無茶な練習を続けると、君は間違いなく、その才能を発揮する前に壊れてしまう。偶然の出会いとはいえ、それを、俺は見過ごすことはできない」
私に言っているようで、自分自身にも言い聞かせているような言葉。
「あまり長居はできない身ではあるんだけど…。君のことを見させてほしい。きっと、いや必ず、力になってみせるから」
119二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 21:00:27
3.
「もしもし『先生』?元気ー?ボクだよ!」
「その声は…。まったく、『先生』呼びは恥ずかしいからやめてって何回も言ってるのに…」
「えー!?でも『先生』は『先生』だもん!なんたってボクを中央に連れて行ってくれたんだから!」
「…!」
「確かに短い間だったけど、先生が教えてくれたこと、全部覚えてる。あれからボク、頑張ったよ。トレセン学園の編入試験にも合格できたんだ。全部、あの時、ボクが諦めようとしていた時に『先生』がいてくれたおかげ。今日はそれを伝えたくて」
「…そっか。おめでとう。頑張ったね。でも、俺は何もしてないよ。全部君の力で掴み取ったんだ。自信を持って」
「まったく『先生』ったら謙虚なんだからー!…次は直接会いにいくよ。逃げないでね?」
「ふふっ。次に会うのはトレセン学園で、だね。楽しみにしてる」
「うん!『先生』が今どこにいるのか分からないけど、最近また寒くなってきたから気をつけてねー!あっ、でも『先生』にはあのでっっっかいコートがあるから大丈夫かな?」
「心配してくれてありがとう。俺は大丈夫だよ。君こそ、体調には気をつけてね。待ってるから」
「うんっ!じゃあ、またねー!」
通話は切れる。
空を、見上げる。
出会いを繰り返した。別れも繰り返した。
随分と遠くまで来た。
それでも積み上げたものは、確かに形となって。
彼女の軌跡を示す。
季節は、巡る。
始まりの、あの場所へと。
嘘か真か。今となっては確認する方法はない。
でも、その「一年」の間。トレーナーを名乗る、金色の髪をして、碧い眼をした、不思議なコートに身を包んだウマ娘に助けられたと。人数にして10人いるかいないか。それでも、そう語り夢を叶えたウマ娘が確かに、いた。
120二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 21:01:53
あれから随分と時間が経ったような気がします。
あっという間だったような。そうでもないような。
ドジはまだ直りませんけど…。私は、頑張っています、トレーナーさん。みんなと一緒に。ちょっとずつ。
トレーナーさんも、きっとどこかで、頑張っているのでしょうか。
もう、暖かくなる季節になってきました。
…待っています。信じていますから。
「ドトウ!いるかい!?」
「ビッグニュースですよ!ドトウさん!」
「うひゃあ!?」
テイエムオペラオーとマチカネフクキタル。突然の来客と大声に、メイショウドトウは驚き椅子から転げ落ちそうになる。
「驚かせてすまない。でも早く伝えなければと思って」
「はいっ!やっと、戻ってきましたよ!」
「え、ええっとぉ、何の話ですかぁ…?」
二人は声を合わせて、その名を告げる。
「ドトウのトレーナー君が戻ってきたんだ」
「ドトウさんのトレーナーさんです!」
121二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 21:02:16
駆け出していた。
何度も何度も転びそうになった。
その度になんとか頑張って踏みとどまった。
どんな顔をして会えばいいんでしょうか。
何を言えばいいんでしょうか。
トレーナーさんは、どんな顔をしているのでしょうか。
側にいるのが当たり前だった3年間を崩すのに、1年という期間は十分すぎて。再会はずっと待ち望んでいたもののはずなのに。不安になる気持ちも確かにあって。
でも。この体は迷いなく動き出していた。
何度目かの転びそうになった時、突然、誰かに支えられた。
「あまり急ぐと危ないぞ。…あいつは別に逃げやしない」
「フクキタルさんのトレーナーさん…あ、ありがとうございますぅ…」
「これで怪我しちゃ元も子もない。ゆっくり歩け。そして、お前を置いてったトレーナーに、文句の1つや2つ言ってやれ」
「…は、はいぃ!」
「…待たせ過ぎだ。さて、この貸し、どう請求してやろうかね」
122二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 21:03:32
いつもの学園の、いつものトレーニング場所。
見慣れたコース。そして、見慣れた「あの姿」
絶対に、間違えるはずがない。
トレーナーさん。
目があった。
何かを言おうとして、でも言えなくて。
こっちから行こうとしたけど、それも出来なくて。
数十秒か、数分か。トレーナーさんが側に来るまでとても長い時間が経ったような気がする。
一年前と変わらない姿のトレーナーさんが、目の前に。
「…ただいま。ドトウ」
「…おかえり、なさい。トレーナーさんっ!」
123二次元好きの匿名さん22/01/03(月) 21:04:07
「ごめん。長い間、君を一人にしてしまって。俺の我儘に、巻き込んでしまって」
「信じて、待ってましたから。それに、オペラオーさんやフクキタルさん、トレーナーさんたち…私を助けてくれる皆さんもいてくれましたし、寂しくは、なかったです。でも、でもっ。もう、どこにも行かないでください、トレーナーさん」
「うん。約束する。ずっと、君のそばにいるって」
感情が溢れる。
「ずっと前から、言いたかったことがあった。言う資格が無いと思って隠してたことが。でも、今、伝えたい。今なら、言える」
「好きだよ、ドトウ。今までも。そしてこれからも。君を、愛してる」
「…はい!私も、トレーナーさんのことが…!」
困難の果ての成長。
旅路の末に描いた軌跡。
今なら二人で笑い合える。
自信を持って。お互いに。大好きだって。
終節「idea」
終章「idea」 完
≫132チケトレの人22/01/03(月) 21:45:54
45分になったので投下しまーす
胸の奥にすまうもの⑥前編
16時00分──空は藍色に塗りつぶされていき、オレンジの太陽は徐々に落日していく。暗くなっていくターフ上にチケトレとチケットは立っていた。
「条件は2400──ダービーと同じ距離で走る。それでいいか?」
「うん、大丈夫っ」
ストレッチを行いながら走る距離に関して話し合う。
「トレーナーさんっ!約束──覚えてるよね?」
「ああ。」
肩周りを解しながらチケトレは答える。
「じゃあ、トレーナー室で書いてたのはなに?」
そうチケットが尋ねるとチケトレは少し返答に困った様子を見せる。何をかくそう書いていたのは自分の自我がなくなったときのための遺書だったからだ。
「……せめてもの保険さね。安心してほしい。おれはちゃんと戻ってくる。約束を違えるつもりはないよ。」
「信じていいんだね?嘘だったらアタシ泣いちゃうよ!?」
「それは困るなあ。」
はぐらかすように愛想笑いを浮かべ、二人はスタートラインに立つ。
「よーし、二人とも準備はいいな?」
「うんっ大丈夫だよっ」
「なにかあったとしても俺たちが控えているから安心して走ってくれ」
「おれも大丈夫です。……本当にありがとうございますウオトレさん、タキトレさん」
ぺこりとチケトレがお辞儀をすると、
「いいってことよ!ギムレットが見届けてやりたいって聞かないからさ。」
「俺も君に渡した薬の効能が気になってね──飲んだと聞いたが大丈夫だったか?」
「ええ、特には。」
「そうか、それならよかった──」
安堵の表情を見せると、辺りを軽く見回しウオトレが右手をすっとあげる。
スタートまで秒読みの段階でチケトレとチケットは精神を集中させる。これで恐らくケリがつく──はやる気持ちを抑え目の前の風景に神経を研ぎ澄ませる。チケットも息を吐き出し全神経を研ぎ澄ませる。
5、4、3、2、1──
「スタートッッッ!!」
ウオトレがばっと右腕を下ろし、レースの火蓋が今、切って落とされた。
133チケトレの人22/01/03(月) 21:46:33
並び立つように、同じタイミングで二人が飛び出した。
チケットは幅を狭くしたストライドで、チケトレは前回とは違い、歩幅を広くしたストライドでハナをとろうとする。
前半400が過ぎ、二人の間は既に3バ身距離が空いていた。
あれから鍛えているとはいえ、ウマ娘になってから1ヶ月もたっていないろくに走ったりしてない自分とレースに出るために子供の頃から走ってきたウマ娘では才能にしても経験にしても大きな差があると嫌でも分からされる。
「やはり一朝一夕じゃいかないかぁ…」
ぽつりとチケトレは呟き、顔の汗を拭う。
チケットのスタミナはまだ十分にある──対して、おれのスタミナは徐々にだがすり減らされていってる。
スタミナはゴールまでもつかわからない、心肺に対してのダメージレース──勝てる見込みは薄いだろう。
けれど、諦めるわけには行かず相も変わらず足は前に前に速く、疾く素早く前に出ていこうとする
流石トレーナーさんだねっもう縮めてきちゃったかー
不意に、チケットが後ろを横目で軽く見ると、脚の回転を少しだけ下げ、速度をわずかに落とした。
そして、内ラチに沿うように走っていたチケットがバ体一つ分外側によれる。
これはチャンスだ──チケットとおれの差はクビまで縮まっている。少しでも前へ出てリードを広げなきゃないけない──
1200mに差し掛かり、チケトレは大きく息を吸い込む。肺に酸素が行き渡り、心臓が早鐘を打ち脈動する。全身に血液が巡り、身体は更に熱を帯びてゆく。
バ体一つ分の隙間、抜け出すならそこしかない──
息を少しだけ吐き出し、脚を強く踏みしめ、ストライドで一気に内ラチとチケットの隙間めがけて突っ込んでいく。
瞬間──チケットをかわし、チケトレは前へと飛び出した。
初めてチケットを抜いたという事実にチケトレの口角はついつり上がっていた。
134チケトレの人22/01/03(月) 21:47:04
チケトレとチケットの二人の模擬レースを横目にウオトレとタキトレはのことについて会話を始める
「なあ、タキトレさん」
「なんでしょうかウオトレさん」
「チケトレさんは大丈夫かねえ。今日でケリをつけるとはいってたけれども」
「大丈夫ですよ。きっと──」
「ギムレットさんは危険はないだろうといってたんですよね?あの方の見る目は確かでしょうし信頼できますから」
チケトレの方を見やりながらタキトレはどこか真剣な面持ちで答える。平然と答えているように見えるが、拳を強く握っているのをウオトレは見逃さなかった
「…本当は不安じゃないのか?タキトレさん」
「あはは、お見通しですか──」
困ったように頬をかき、タキトレは答える。
いくら大丈夫といえど予想外の事態が起きないという確証はない。
チケトレの自我による消滅──それは事実上の死を意味する。
出来る限りのサポートはした、あとは本人に任せるしかない──
チケットと走るチケトレを横目に、タキトレは歯がゆい思いを抱えていた。
模擬レースも1600mに差し掛かる。
再びチケットがペースを少しあげ、チケトレと横並びになった。
「おっ、やってるな──」
ふらりと、ジャージに身を包んだブラトレが姿を表した
「お、ブラトレさん。あんたも見にきたのかい」
「おう、チケトレさんが走ってるのが見えたからな」
水を二口ほど飲んでブラトレはチケトレの方を見やる。
「しっかし、結構走れんだなチケトレさん」
「あれでもスタミナは落ちてるっていってましたけどね。」
「煙草吸ってなきゃもっと長く走れるだろうにな勿体ない。」
どこか残念そうにブラトレはぼそりと呟いた。
135チケトレの人22/01/03(月) 21:47:47
1600mを通過し、残り4ハロン──
再び横並びの拮抗状態になり、互いに抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げる。
互いの息づかいが耳に入り、どう出し抜こうか思考をフル回転させる。
最終コーナーに差し掛かる直前で、二人の間で駆け引きが繰り広げられていた。
このままいっても平行線……いや、最悪抜かされるかもしれない。
チケットのスタミナもまだ余裕があるだろうし、ここは誘ってみるか。
気づかれないようにほんの少しだけ脚の回転を遅くする。
おれがチケットならガス欠と判断し一気に前に出てくる筈──丁度コーナーの曲がり方、スパートのかけ方を教えたからな
そしてスタミナを温存し残り3ハロンあたりで外側に出て一気に加速する。勝つためにはこれしかない──
チケットが引っ掛かってくれることに賭け、チケトレはわざと呼吸を荒めにし、気づかない程度に足を緩め減速する。
トレーナーさんの息が荒い、きっとスタミナが切れ始めてるんだ──
アタシはまだスタミナに余裕があるからコーナーで一気に前に出れば抜かせるかも──
そう考え、加速しようとしたチケットの中に一つの考えが浮かぶ。
待って、もしこれがトレーナーさんの罠だったら?
アタシを誘って引っ掛かったところを抜く考えだったら?
トレーナーさんもなんだかんだ速くなってるし抜かされちゃうかも──
チケットの中で沢山の思考が駆け巡る。
どうすれば引き離せるか最終コーナーに差し掛かる僅か1秒まで考えを巡らせる。
そして、チケットは答えを導きだした
考えてても仕方がないっ、このままいくっ
チケットはピッチからストライドに切り替え、足に強く力を込める。それ以上外に膨らまないように身体を傾け、強引にコーナーを曲がっていく。
オートレースのような強引なコーナリングに思わずチケトレは驚愕の表情を見せた。
流石だよチケット──
柄にもなくチケトレはにたりと笑みを浮かべる。
土壇場で自分のかけた罠に引っ掛からなかったのが嬉しかったのだ。
136チケトレの人22/01/03(月) 21:48:15
チケットと対照的にチケトレはピッチに切り替え、爪先の動きで巧みに調整しコーナーを曲がる。
残り3ハロン──互いに譲れぬデッドヒート始まった。
最初にチケットが前へと出る。膝の力を抜き脚の回転を速くしてチケトレを一気に突き放しにかかった。
ここで仕掛けてくるか──
チケットのスパートに合わせ、チケトレも一気にペースを引き上げる。
ずんっ
強く、強く踏みしめ、カタパルトのように加速する。
双眸がぎらりと光り、赤瑪瑙の瞳が夕闇に浮かぶ。
残り400m、未だチケトレとチケットの間には2バ身の距離が空いていた。
先を行くチケットをチケトレが追いかけていく。中々埋まらない距離に迫ってくるゴール──チケトレは焦りを見せる。
このままじゃじり貧だ……一か八かにかけるしかない──
外側に移動し、砕けんばかりに歯を食い縛り腕を大きく振り、少しでも先へいけるようにチケトレは根性で更にペースを上げていく。
ありったけのスタミナを使いきらんとする加速にチケットは驚きを隠せなかった。
すごいやトレーナーさんっ!ここから更にスピードをあげるなんて──
嬉しそうにチケットはぎらついた笑みをうかべる。
残り150m──互いに譲ることなく、二つの風は吸い込まれるかのようにゴールへと入った──
ハナ差まで距離は縮んだものの、先にゴールを踏んでいたのはチケットだった。
また勝てなかったか──乱れに乱れた呼吸を整え、心臓のポンプをフル稼働させチケトレは呼吸を落ち着けると、オレンジに染まる夕焼け空を見上げた。
137チケトレの人22/01/03(月) 21:48:43
「惜しかったなチケトレさん。ホイ、タオル」
チケトレの方へ近寄ると、ブラトレがタオルを渡す。
「あっ、ありがとうございます…後もう少しでいけそうだったんですがね」
タオルで顔を拭い残念そうにチケトレは呟いた。
「でもすごいよトレーナーさんっ!アタシ追い付かれたとき焦ったもんっ!」
キラキラと瞳を輝かせ、チケットはばっと腕を広げる。
「そうだな。チケトレさん結構走れるじゃん。これだったトレーナー対抗レースも出られるんじゃないか?」
そうウオトレが言うと、チケトレはあははと愛想笑いを浮かべる。
「まあ、走るのは楽しいし、参加するのもいい……か……も……」
そう答えようとしたところで意識にモヤがかかっていく
ああ、ついにこのときがきたか──
薄れゆく意識の中でそう考えていると、チケトレの身体から力が抜け、地面に倒れそうになる
「おっととっ、タキトレさん!!」
「ああ、分かってる。一旦保健室へ運ぼう!ブラトレさん!、ウオトレさん!」
「了解!」
「分かった!」
タキトレの一声にウオトレが事前に用意してあった担架にのせ、ブラトレとウオトレの二人で保健室に運ぶ。
その間もタキトレはチケトレの脈を測るなどして身体に異常がないか確認し、チケットはチケトレに対し何度も呼び掛けていた
鬼がでるか蛇がでるか──それはチケトレのみぞ知ることであった
142チケトレの人22/01/03(月) 22:46:20
すんません、15分の遅刻ですが中編投げます!
胸の奥に住まうもの⑥ 中編─1
「脈拍は安定してるし今のところは大丈夫そうだね」
チケトレの手首に指を当て脈を測ると、チケットは安堵の表情を見せ、同時に涙が出てくる。
「よ"か"った"よ"ぉ"ぉ"ぉ"~~~っ」
わんわん泣くチケットの背中をツッコミ気味にブラトレが叩く。パシッという小気味のよい音が保健室に響き思わずチケットの涙は引っ込んだ。
「いててっ!なにすんのさブラトレさん!!」
ムッとするチケットの口にブラトレは人差し指をそっと近づける。静かに──そんな意味の籠ったサインを察したのかチケットは口をつぐんだ。
「ところでチケットは寮に戻らなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫。ちゃんとフジ寮長には言ってあるから。」
「トレーナーさんの一大事なのにアタシだけ先に帰ってるなんてできないし」
そう答えるチケットの目は鋭く、真っ直ぐに穏やかな寝息をたてるチケトレの方を見つめていた。
─────
どたどたどた──
がららっ
やかましい足音ともに保健室のドアが開く。
「廊下ははしるなよー……ってタイトレさんとハヤトレさんじゃないか」
ウオトレが振り向くと、息を切らしたタイトレとハヤトレの姿があった。
「お、おう…はぁはぁ…じゃ、邪魔するぞー…」
「いきなり走んなよタイトレー…ぜーぜー」
「はいはい廊下は走らない。ほら、水だよ」
タキトレから水をもらい、ふたりは一気に飲み干すと、チケトレの眠るベッドに近づいた
「ふー…状態はどうだ?」
「ま、なんともいえないな。ギムレットがいうにはまだ大丈夫だそうだが」
「おう、情報ありがとう──オレ達にも相談してくれればよかったのにな…」
「しゃーねーよ。アイツがそういう性分なのは俺達がよく知ってるだろ」
「……そうだな」
神妙な空気が流れる保健室──倒れてから1時間半が経つもチケトレはまだ目を覚まさないでいた
143チケトレの人22/01/03(月) 22:46:58
「もしもーし」
誰かがおれを呼ぶ声がする。
「もーしもーし」
「ん、んぅ……」
並走でつかれてるんだもう少し寝させてくれ──
「むぅー……とっとと起きろー!!」
ゆっさゆさと身体を揺すられ、肩をバシバシと叩かれる。お袋のような手荒い起こしかたに気だるげに目を開けると、見覚えのある風景が目に入った。
雲に覆われた空に短く切り揃えられた芝がどこまでも広がる──
そして、腕組をして仁王立ちしている見知らぬウマ娘──
背丈は165くらいだろうか──へそ出しの黒いカッターシャツに丈の短い黄色いベスト、黒いスラックスに身を包み、紳士らしい落ち着き払った雰囲気に伊達男のような気安さと危うさという一見矛盾した要素を宿していた
「ん?どうした。きょとんとして」
怪訝そうな顔をしてぐいと見知らぬウマ娘が顔を近づける。
艶のある肩まで伸びた栗毛の髪に鼻の根本まで伸びた一筋の流星が主張していた。
切れ長の目が己の心を射ぬくようにこちらを見つめ、心臓が跳ね上がるような感覚に陥る
「す、すみません…あ、あ、貴方は一体…」
どもりそうになりながらチケトレは栗毛のウマ娘に尋ねる。
すると、はぁとため息をつき腕組を解き栗毛のウマ娘はゆっくりとどこか申し訳なさげに口を開いた。
「……あんたが飲んだ薬でこの身体になったのに分からないのか」
「す、すいません」
「いや、謝らなくていい。改めて名乗らせてもらう。」
一拍置き、栗毛のウマ娘が名乗ろうとしたとき、さあと風が吹き、かさかさと芝が揺
れる。
「──トニービン。この世界とは別だがウイニングチケットの父だ。」
栗毛のウマ娘──トニービンはそう名乗る
チケトレとトニービンの間になんともいえぬ空気が流れた
144チケトレの人22/01/03(月) 22:47:27
「あ、じ、自分はチケトレと言います…」
「ああ、知ってるよ。私の宿主なんだからな。ってかどうしたんだそんな驚いた顔して」
「い、いや……こんな姿をしていたんだなって──」
小さくすみませんと謝りチケトレは困惑しつつ頬をポリポリと掻いた。
「まあ、驚くのも無理はないよな。私もまさかこんな姿になるとは思わなかったしな。」
自分の手を見つめ、トニービンはそう呟いた。
「まあ、そんなことはどうでもいいんだ」
そういってトニービンは立ち上がる。チケトレもそれに応じるように腰をあげると、トニービンはチケトレに対して頭を下げた。
「あのときは本当にすまなかった」
「言い訳がましくなるがあのときの私はどうかしていた──」
「君が息子と絆を育み、苦楽を共にしてきた関係だというのに私は息子を盗られたと思い、嫉妬に駆られ一時の感情に身を任せあんな酷い言葉を……君に投げつけてしまった……!」
つぶれてしまいそうな自己嫌悪でトニービンの声に嗚咽が混じる。
「私は父親失格だ……!世界は違えど息子に対しここまでよくしてくれている君に対しあんなに酷いことをいってしまうだなんて……!」
「許してくれと思い上がったことを言うつもりは毛頭ない──消えろというなら今すぐにでも消えよう──」
「ただ、あんなことをいった自分が許せないんだ。自己満足かもしれないが──せめて謝らせてほしい……!」
嗚咽を発し、申し訳なさと自己嫌悪が混じった涙を流し謝罪の言葉を発するトニービンの姿に胸を締め付けられる。
どんな啖呵を切ってやろうかと考えていたチケトレもすっかり毒気を抜かれてしまった
懺悔室で罪を告解する子羊のように、項垂れたように頭を下げるトニービンに、懺悔室の神父の如く告白を聞いていたチケトレはゆっくりとトニービンの肩にポンと手を置いた。
145チケトレの人22/01/03(月) 22:48:10
「あ、あの──」
「顔をあげてください……トニーさん。」
チケトレが語りかける。その目は優しく、赤瑪瑙の瞳がトニービンに対して向けられる。
「正直に申し上げますと、おれは貴方のことが嫌いでした。」
「コミュニケーションが取れず、おれのことを何も知らないくせに酷い言葉を投げつけてくるやつだと、そう思っていました。」
「次に会ったときはどう啖呵を切ってやろうか、胸ぐらでも掴んでやろうかと考えたときもありました」
チケトレが自分の思いの丈をぶつける。柔らかな口調から放たれるその一言一言がトニービンの心に刺さっていき、トニービンの口は更にかたく結ばれていく
「本当に……すまなかった……」
涙声で、か弱く言葉を発するトニービンをよそにチケトレは更に続ける。
「ただ色んなヒトに相談し、話を聞き自分にも問題があると見つめ直すことができました。」
トニービンの肩を持ち、ぐいと上体を引き起こす。
「貴方に対し勝手に苦手意識を持ち、コミュニケーションを怠り、挙げ句にチケットを奪おうとしていると言う勝手な妄想で貴方のことをろくに知ろうとしなかった自分にも責任があります。」
「許すも何もありません。消えろと言うつもりも毛頭ありません──現にこうして反省し、涙を流す貴方を追放するなんて真似してしまったら──」
「チケットが聞いたらすごく悲しむでしょうから」
にこりと、チケトレは微笑んだ。自分が思っていた以上に善い方を、ここまで悔いている方を何故裁けよう。
おれは死人に鞭打つ趣味などないし、真に悔いているならば赦すのが筋ではなかろうか。
その言葉を聞き、トニービンの目から更に涙が溢れていく。
ああ、なんと誠実で優しい子なんだろう──。
君みたいなヒトを私は──私は──
「有難う……うぅ……有難う……」
嗚咽を漏らし、ただ有難うと発するトニービンに胸を貸し、泣き止むまでチケトレはトニービンの頭を優しく撫でたのだった
146チケトレの人22/01/03(月) 22:48:58
「……落ち着きましたか?」
「ああ……見苦しい姿を見せてしまったね」
目の下をすっかり腫らし、気まずそうにしてトニーは苦笑する。
二人の間にあった溝はすっかり埋まり、チケットのよき理解者同士と言う新たな絆により二つの魂は強固な絆を得ることができた。
いいことなどないと思っていたウマ娘化だが、新しい友や理解者を得ることができたと考えると悪いことばかりじゃないとチケトレは噛み締めていた。
───
その後、2人はチケットという共通の話題で盛り上がりに盛り上がり、その光景はさながら嫁談義に花を咲かせる旦那と義父の如くだった。
「ダービーの時のチケットは本当にすごかったんですよ!」
「へえ、どんな感じだったか聞かせてもらってもいいかな?」
「はい!最終コーナーで中段だったのに一気にまくっていって最後にハヤヒデさんとタイシンさんをかわして一気にゴールしたんです!!」
「おお、そちらの世界でもそうだったんだな」
「トニーさんの世界のチケットもそのような感じだったんですか?」
「ああ、そうだよ。」
「しかし面白いものだ。君の世界と私の世界のチケットがダービーという舞台で同じような勝ち方をしていたとはね」
「……奇妙な偶然もあるものなんですね」
「ああ、そうだね……」
どこか懐かしげに目を細め、トニーは笑う。
しみじみと目を閉じなにやら考え事をした後にぱしんと足を叩き、トニーは立ち上がった
「チケトレ君。」
「なんでしょうか……?」
おずおずとチケトレが聞き返す。
「このバカな父親のお願いを聞いてほしいのだが───私と走ってもらってもいいかな?」
「……おれでいいんでしょうか」
困惑した様子でチケトレはトニーに対して尋ねるとトニーはフッと笑う。
「君以外に誰がいると思ってるんだ。」
その顔は、父が息子に対し向けるそれに近かった。
150チケトレの人22/01/03(月) 23:17:03
中編②投げます!
胸の奥にすまうもの6 中編②
「トレーナーさん、まだ起きないね」
チケトレの手を握り、チケットがぼそりと呟いた。
時計の針は21時を回るが、未だチケトレは目覚めなかった。
「瞳孔の方は異常無し、脈も今のところ正常…っと」
こうして20分ごとにタキトレさんがトレーナーさんの身体を診てくれてはいるけど大丈夫かな──もしかしてこのまま起きないんじゃ。嫌な予想だけがアタシの中に積み上がっていく───トレーナーさんが心配で心配で涙が止まらなくなってくる。
ああ、アタシって泣き虫なんだな、けど嫌だな、寂しいなぁ
そう考えていると、タイトレさんとハヤトレさんが肩を組んできた。
「大丈夫だよチケット!!あいつがここで死ぬと思うか!?」
「お"、思わな"いけど心配で心配で……」
「大丈夫だって!アイツは頑張ってるんだ!お前は応援してればいいの!」
二人とも心配なのにアタシを元気付けてくれてる。
うん、そうだよ。トレーナーさんは頑張ってるんだからアタシが信じてあげないとっ
BNの二人から励ましをもらい、チケットはチケトレの手をぎゅっと握りただ一言──頑張ってとだけ呟いた。
「戻ったぞ~」
保健室の扉が開き、暖かいのみものを持ったブラトレが中に入る。
「お、調達ありがとうブラトレさん。」
「いや、いいってことよウオトレさん。」
ブラトレが飲み物を配っているのをよそに、チケトレのからだがピクピクっと動き、チケットがそれに反応する。
「今なんか動いたような……」
不思議がるチケットをよそに、更にチケトレのからだがピクピクと動く。それをタキトレも確認していた。
「やっぱ動いてるよこれ!」
その一言にその場にいたトレーナーが反応した
「ちょっといいかなチケット」
タキトレが瞳孔、脈、どの部位が動いていたかを確認する。
保健室に緊張が走った。
21時45分のことであった
151チケトレの人22/01/03(月) 23:17:41
「で、結果はどうだったんだタキトレさん。」
保健室の椅子に座りながらブラトレはタキトレに尋ねる。
「うーん。瞳孔に異常はないけど、脈がちょっと早くなってるね。」
「でもなんでいきなりピクピクってなったんだろう……?」
不思議そうに考えるチケットに対し、トレーナー達はそれぞれの見解について話し合っていた。
「見たところ大腿部とふくらはぎ、腹筋の痙攣の頻度が大きいようだな」
チケトレの布団を剥ぎ、身体をさわりながらブラトレは呟いた。
「もしかしたら拒絶反応が起きているかもしれないね」
他に異常がないか探りながらタキトレが言った。
「拒絶反応って、ウマソウルのことだよな?けど今まで大丈夫だったんだろ?ウオトレさん」
「ギムレットがいう分にはな。特に異常はなかったらしい。」
「仮にソウルの方が問題ないとすると、なにが原因なんだろうなぁ」
「……もしかしたら夢の中で走ってるってことはないですかね。」
何かに気づいた様子でタキトレは言った。
何か根拠があるようで更に続ける。
「チケトレさんが眠っている状態で動かしている部位は走る際に使う部位なんですよ」
「チケトレのやつが動かしてるのは主に大腿部とふくらはぎ、それと腹筋だったな。」
「あと呼吸も若干早くなってねえかこれ!?」
「ってことは走ってるってことで間違いないっぽいな。ウオトレさん。いいや、ギムレット」
「待ってなブライアンの──今見てる。」
ブラトレが言うよりも早く、ギムレットはチケトレの方を見る。
「……今のところは問題なさそうだな。」
暫しの沈黙の後にギムレットはそう答える。
現時刻は22時──チケトレは未だに目を開けない。
152チケトレの人22/01/03(月) 23:18:20
広い広い草原を、二つの影が駆け抜ける──
草原の上には青空が広がっており、それはチケトレの精神状態を表しているとトニーは言った。
二人のウマ娘は風となり、草原へとふきすさんでゆく。
そこには己を縛るものなどなにもなく、しがらみもなにも存在しない。
爽やかに、高らかに、楽しげに、朗らかに得もいえぬ高揚感に包まれながら全力をもって駆けてゆく。
「どうだ!楽しいだろうチケトレ君!」
チケトレの横にならび、トニーは楽しげに尋ねる。互いに実態ではないはずなのに、汗をかき、熱気が伝わっている──普通ならば違和感を感じるだろうが今の自分にとってそれは些細なことだった。
「ええ、とても気持ちがいいです!頭空っぽにして走るのがこんなに楽しいなんて!」
走りながら、心のそこからチケトレは笑う。
思えば、今まで心のそこから笑ったことがなかったな──チケトレはふとそう思った。
「ああ、楽しいんだ!走るということは──」
「ウマである私や、ウマ娘である君たちにとって、抗えない本能のようなものだからね!」
ニヤリと笑い、トニーが加速する。
それに負けじとチケトレも足の回転をあげ追従する。
コーナーを曲がり、直線を駆け抜け互いに抜かされんとくらいつく。
────最後にストレートを駆け抜けると、トニーとチケトレはエネルギーが切れたかのように、大の字になり草原に身を委ねる。
「「…………ぷっ、あはははははっ!!!」」
そして、寝転がった状態で顔を合わせると、二人は腹の底から笑いあった。
互いに抱いていた嫌悪と溝はすっかり消え二人はこうして和解したのだった。
青い青い雲1つない青空が、二人の上にどこまでもどこまでも広がっていた──
154チケトレの人22/01/03(月) 23:20:15
「さて、そろそろ時間だな」
名残惜しそうにトニーが口を開いた。
「これ以上長居したら息子──いや、チケットも心配するだろうからなぁ」
続けてトニーは呟いた。
「ええ、そうですね……」
どこか寂しげにチケトレが答えるとトニーはチケトレの肩をばんと叩いた。チケトレは思わず前のめりになり痛っとこぼす
「そう寂しそうにしないでくれ。私は消える訳じゃないんだ。いつだって君のなかにいる。」
「まあ、さすがに普段から表に出るわけではないが君が困ったときはいつでも助けになるつもりだよ。」
にこりと優しい笑みを見せると、チケトレは暫しの沈黙の後「有難うございます」と頭を下げる。
「ただ、2つお願いを聞いてもらってもいいか?」
気恥ずかしそうに頬をかき、チケトレに対し尋ねる。
「は、はい、構いませんが」
そう答えると、トニーは重そうに口を開く。
「たまにでいいから息子──チケットの頭を撫でさせてほしいんだ。」
「世界は違えど私の大切な息子だからね。」
「あと、いつでもいいから私の子供に会いたいんだ。」
「物陰からでもいい、それでもこの世界でどのように過ごしてるか気になるからね……」
遠慮がちに、そう伝えるトニーに対しチケトレは小さく笑みを浮かべる。
「……はい、構いませんよ。」
そう答えると、トニーはありがとうと小さい声で呟いた。
───────
「じゃあ、君を今から現実に送り届けよう。」
トニーがチケトレの額に手をかざす。
すると、チケトレの意識が釣竿にかかった魚のように上へ上へと引っ張られてゆく。
「ちょ、ちょ、待っ……」
「じゃあな!!息子によろしく頼む」
「あ、あ、ありがとうございました!!」
礼を言いながら上へと引っ張られてゆくチケトレをよそにトニーは、「息子を頼むぞ」とだけ呟き草原の上に寝転んだ。
「……しばらく暇になるだろうなあ」
そうぼそりと呟くと、トニーは微睡みの中に再び潜んだ
158チケトレの人22/01/04(火) 00:00:27
さて、これから後編と急拵えですがエピローグをぶん投げます!
胸の奥にすまうもの⑥ 後編
「ん、んうぅ……」
眩しそうに、チケトレが目を開け、ごしごしと目を擦る。
壁に掛けられた時計を見ると、針は22時15分を指していた
5時間近く寝たままだったかと身体を伸ばしていると──
「トレ"ーナ"ーさ"あ"ぁ"ぁ"ぁん"っっ!!」
と目に溢れんばかりの涙を蓄えチケットがおれの身体にガバッと飛び付いてきた
「よ"か"った"よ"ぉ……っアタシ、心配で心配で……う"おお"ぉぉ"ぉぁ"ぁ"っ」
最後言葉になってなかったチケットの声を聞き、おれはそっと優しく撫でる。
「……心配かけてごめんな」
「ぐすっ、怖かったんだからね……うぅっ戻ってこないんじゃないかって──ひっぐ、トレーナーさんにもう会えないんじゃないかって──」
「ああ、ただいま──チケット」
「ごめんな。心配掛けさせちゃって」
嗚咽を漏らすチケットをグッと抱き寄せ、小さく笑みを浮かべてチケットの頭をもう一度撫でる。
それに安心したのか涙をぬぐい、痕が残る
顔でチケットはにこりと笑う。
「うん……うんっ。お帰り──トレーナーさん。」
保健室のベッドの上で二人はもう一度力強く抱き合い、二人はその強い絆を再確認するのだった。
159チケトレの人22/01/04(火) 00:01:15
「帰り。チケトレさん」
ひとしきり抱き合ったあと、ブラトレさんが話しかけてきた。
「あっ、ブラトレさん。どうも……」
会釈をすると、おれの顔をまじまじと見つめてくる。なにか顔についているのだろうか。
「ソウルの方は大丈夫だったのか?」
「あっ、はい……トニーさんとは無事和解できました……」
そう答えると、ブラトレさんはポンと肩を叩いてどこか嬉しそうな顔を見せる。
「そりゃあよかった。うまく言ったんならおれも安心だ。」
「ありがとうございました。相談に乗ってくださって。」
そう頭を下げると、ブラトレさんはどこか照れ臭そうに頬を掻いた。
二人で談笑していると、いつもの騒がしい声が耳に入る。ああ、先輩方もこちらに来てたのか。
「おう、おはようさん!」
ぺすこーんとタイトレ先輩に頭をはたかれる。一応病人なんですから加減してくださいよ
「また随分と寝てたなあ!俺も危うく寝るところだったぜ!」
バカっぽく笑うハヤトレ先輩に思わず困惑の表情をおれは向けてしまった。
「先輩方もいらっしゃってたんですね。……」
「あったりめえだろ!後輩の一大事なんだからよお」
今度は肩の辺りをばしっと叩かれる。一々スキンシップが多いんですって。
「お前はつい抱えこんじまうからほっとけねえんだよ」
全てを吹き飛ばしてくれそうな力強い声に思わず頬が緩む。それはそれとして保健室なんで静かにしてください。
そうやって漫才をしていると、タキトレさんがやってくる。首には聴診器をぶら下げ、手にはフラッシュライトを持っていた。
「頑張ったね。チケトレさん。」
「はい。少々不安ではありましたが自分が思っていたよりずっとよい方でした。」
「それはよかった。ただ、不安だから一回診させてもらうね」
そういって、タキトレさんは再びおれの身体を検査する。心音、脈拍、瞳孔、目に見える範囲の身体の異常──様々なことを調べ、タキトレさんは口を開いた。
160チケトレの人22/01/04(火) 00:02:24
「異常は特に無し。健康そのものだね。」
「よかったねっ!トレーナーさん。」
向き合った状態でチケットが笑い掛ける。
「うん、そうだね。チケット、すまないが降りてくれないか」
さすがに足の上に乗っかられたままだときついのでそうチケットにお願いする。
「わわっ、ごめんねっトレーナーさん。」
慌ててチケットがベッドから降り、おれの顔を見上げるようにしゃがみこむ。
「まあ、後は君とそのウマソウルが上手くやっていけるかだが──心配はなさそうだね」
にこっとタキトレは微笑みを浮かべる。
今までどこか不安げな顔が今では吹っ切れた顔をしていたため、問題ないと思ったのだろう。
「大丈夫だったか?チケットの」
ギムレットさんが歩みより、コーヒーを手渡してきた。おれはありがたく頂戴し、一口飲む。ずっと水分をとっていなかったため今はこの苦味すらが心地よく感じた。
「はい。お陰さまで全て終わりました。皆さんのお陰です。」
そういっておれは頭を下げると、金色の瞳がこちらを見つめる。
「ふむ、アンタの中の同居人もすっかり落ち着いてるな。本当になにもなくて良かったよ。」
目を細め、小さく呟くとギムレットさんはおれの肩をポンポンと叩く。
「よく頑張ったな。チケットの──」
その一言に救われた気がした。
おれなんかのために皆が動いてくれた──
その事実に有難いという気持ちと、申し訳なさが浮かび、ただ一言
「本当に、本当に──ありがとうございました」と頭を下げるしかなかった。
「バーカ!んな畏まんなって!」
「オレ達は好きでやってんだからんなしけたツラすんな!」
「俺達は同じトレーナーなんだから困ってたら助け合う。そういうもんだろ?」
「みんな君ことが心配だったから動いたんだ。そんな申し訳なさそうにしないでくれ」
「若いのが困ってたら手を差し出すのが大人ってもんだ──違うか?」
ああ、おれは善きヒト達に恵まれたなあ──
チケトレはそんな幸せを噛み締める。目には一筋の涙が浮かんでいたが、それは悲しみの涙などではなく喜びの涙であった。
161チケトレの人22/01/04(火) 00:03:46
検査の結果、異常がないことは分かっていたため全員このまま家に帰ることとなった。
幸いまだ時計の針はてっぺんを回ってないため電車はあるが、チケット一人で寮に帰すのも気が引けるため、途中まで送っていくことにした。
星のスパンコールがちりばめられた空の下を二人であるく。
吐く息は白く染まり肌を刺す冷たい外気に二人して肩を震わせる。
「さ、さむいねっ」
チケットがおれの方を見やる。冬服といえども流石に寒いか。
「チケット、ちょっとこっちを向いてくれないか?」
おれはすかさず首に巻いていたマフラーを外し、チケットの首にぐるぐると巻いた
チケットは顔を赤らめ恥ずかしそうにしている
「わわっ!?トレーナーさんっ!?だ、大丈夫だよっ」
「いや、担当に風邪を引かせてはトレーナー失格だからね。返すのはいつでもいいよ」
チケットに悟られぬように顔を隠す。そう、これは外が寒いせいで赤いんだと自分に必死で言い聞かせる。
「あ、ありがと」
嬉しそうに、小恥ずかしそうにチケットはお礼を述べる。おれも、「う、うん。大丈夫だから」と返すことしかできなかった。
──そんなこんなで寮の入り口にたどり着く。
「じゃあ、また明日」
「あっ、ちょっと待ってっ!!」
送り届けたのを確認し、立ち去ろうとしたその時、チケットに呼び止められる
「どうした?チケッt………」
振り向くよりも早く、チケットはおれの頬に──キスをした。
互いに顔を赤くし、チケットの心音が大きく響いているのが分かった。
「ま、ま、また明日ぁっ!!」
風のようにチケットは寮の扉を開けて中へ入っていってしまった。
おれは暫くフリーズし、胸の奥にいるトニーさんがお付き合いはお義父さんまだ認めてないぞおぉーーっ!!!と声高に騒いでいるのが否応なしに分かった。
162チケトレの人22/01/04(火) 00:05:52
エピローグ
後日───特に変わらぬ様子でトレセン学園に出勤し、トレーナー室のドアを開ける。
「さてと──」
机の上に置いておいたもしものための遺書を手に取った。
遺書の内容は、チケット、そして自分が世話になったトレーナーに対する感謝と謝罪の言葉──
勢いで書いたとはいえ無用のものとなった書類をわざわざ取っておく必要はないとして、おれはシュレッダーに突っ込もうとする。
(その紙、処分してしまうのかい?)
トニーさんが胸の奥から問いかける
ええ、もう必要のないものですから。
それだけ答えるとトニーさんは口惜しそうな様子を見せる
(せっかくだから読んでくれないか?君の思いを聞いてみたいんだ)
優しい口調で尋ねるトニーさんの思いを無下にすることができずおれは、読んだら処分しますからねとだけトニーさんに伝えて遺書の内容を読み上げた。
───────
(いやあ、いい内容だったなぁ)
済みましたか?そう聞くと満足げな様子であぁと答える。
返答を聞き、シュレッダーに掛けると思いを綴った紙はただの紙屑へと姿を変える。
(あ、そうそう)
いい忘れたかのようにトニーさんが一言伝えた
(ごめんな。チケトレ君──息子が来てるの忘れてたわ)
な"っ……
まさかと思い振り向くとそこにはマフラーを持ったチケットの姿があった。
よく見ると目に涙を溜めている。
まさか──そう思ったときには遅かった
「か"ん"どう"し"た"よ"おおおおぉおおぉ」
いつものダミ声におれは思わず耳を塞ぎながらチケットに頼み込んだ
「な、なあチケット──今のことは他言無用d………」
「ア"、ア"タ"シ"言って"くる"ね!!ト"レ"ーナーさ"ん"はこんなにいい"人だって"!!」
思わぬ一言とともにチケットはトレーナー室を出ていき慌てて俺も追いかける。そんな風景も、新たな同居人のお陰で更に賑やかになった気がした。そんな朝の一コマだった。
胸の奥にすまうもの─完─
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part608【TSトレ】
≫13二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 08:52:26
「戻ってきたよファイトレ(男)とチケトレ…」
「「…」」
…トレーナー室の一角に置かれたこたつに入りながら、タボトレ(赤)はウトウトとしているファイトレ(男)とチケトレを見やった。
もう新年を迎えて正月、24歳組の彼等はこのこたつに集まって話していたのだが、予想以上のペースで飲食したことで
「…あ、もうなくなりそうですね」
「じゃあ、俺が取ってくるよ」
「お、なら頼んでいいかなタボトレ」
「勿論だ」
といった具合に、タボトレは追加分を取りにいった後戻ってきてみたのが今の状況であった。
「…ふぅ…」
持ってきた分から取り出した煎餅の袋を開け、齧りながらタボトレは起こすべきかと考える。
(二人とも疲れてるだろうしな………)
…やっぱり起こさないでおこうと決意した矢先、もぞもぞとファイトレが動く。起こしてしまったかと身構えるタボトレ。
「…、タボトレ?」
「起こしたかファイトレ…」
「いや、気にしなくていいよタボトレ。多分寝落ちしてただろうしね。…取ってきてくれて助かるよ。」
「気にしないでくれ…チケトレは?」
起きて目をこするファイトレと明るい顔で振る舞うタボトレは、二人で眠るチケトレを見た。
「…zzz」
どうやら眠りも大分深くなってきているらしい、チケトレは耳も尻尾も力の抜けた状態で突っ伏していた。
ファイトレはその白毛を眺めながら、さっきの眠たげな顔はどこへやら、キリッとした表情で語る。
「チケトレも俺に慣れてきてるみたいでヨシ。…ってのは置いておくとして、穏やかそうな寝顔で何より。」
「ウマ娘になった時、リスカしたって聞いたけど、こうやって潰れずに済んでるのはいいことだな…」
そんなほんの僅かに黒色の滲んだ声で話すタボトレに、ファイトレは担当譲りの惹きつける笑顔で語り掛けた。
「俺は本音をずっと隠して生きるなんて苦しいだけだからと思ってるからね。」
「…そうだな」
タボトレからの返事に、そのニコニコとした顔をそのままにファイトレはその肩に手を触れたのだった。
…眠りについた白毛のウマ娘を、赤色のウマ娘と鹿毛のウマ娘が飲みながら見るのだった。
≫26二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 09:11:54
1200パワーズの正月
「なんか暇っスね」
「休みだからね」
「正月だしパチンコ打ちに行きたいんだけど」
「出球絞られてるに決まってますよやめておきましょう?」
「マッスル〜! そうとも打つなら筋肉を打つに限るマッスル〜」
「リャイトレのお陰で部屋あったかくなってきたっス。暖房要らずっス」
「義、冷蔵庫から飲み物取ってきてくれよ」
「わかったよちょっと待ってて」
「待ってくださいそう言えば義足外してましたね。私が取ってきます」
「そうだった。いいよ蒼自分で取ってくるよ」
「マッスル〜既に俺が取ってきているマッスル〜」
「い、いつのまに……?」
「めんどくさいっス。冷蔵庫こっちに運んでくるっス」
≫76二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:50:50
「ハッピーニューイヤー!今年もバリバリ海にマリモ投げていくぞー!」
「わーい!あ、あけましておめでとう!ゴルトレちゃん、ムントレさん!」
「こちらこそあけましておめでとう、ルドトレさん、ゴルトレさん」
「よし、新年の挨拶もしたし何するよ俺ら」
「……新年初おでんなんてどうだろうか?」
「ムントレ、それは"アリ"だがなんかビート足りねぇ」
「そうか……」
「んー、なら海に出よう!」
「お、いいな!んじゃアレだ、サブトレ連れてくるわ!」
「おおー!」
~🕰️~
「むんぐぅ!?」
「おいおいゴルシちゃんに担がれるのがそんな嬉しいのか?全くしょうがねぇ奴だなお前~!」
「すまん、ゴルシもついてきた」
「ならまあ仕方ないと思うよ?ほら、そこにルドルフいるし」
「ああ、仕方ないだろう。タンホイザも海が見たいと言うから連れてこようかと思ってたところだし……」
「……あのー、会長さん、これ……」
「何も言わずに逃げた方がいい、この集まりだと十中八九何かが起こる」
「よし、全員いるな!んじゃツインワープで一気にかっ飛ぶからしっかり歯ァ食いしばれよな!」
「わかった、気を付けようかタンホイザ」
「ふえぇ!?」
「んじゃ行くぞ!エクストリームワープ!」
「待ってくれ、さっきのツインワープは!?」
「あ、ルドルフがツッコミ役になってる」
77二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:51:28
~🕰️~
「……あれ、ここは……?」
「……えーと、ルドトレ、さん?」
「あ、タンホイザさん……あれ、ルドルフは?ってか一面雪……」
「……あ、え?他に誰もいませんよね、これ……」
「……ワープ失敗、かな?」
「えっ?」
~🕰️~
「あいててて……ん、そこにいるのはゴルトレさん……いや、ゴルシか」
「ん、ムントレ。こりゃもしかしてエラーコードか?」
「エラーコードかはわからないが……うん、この木の植生とあの木の植生を考えるにここは……」
~🕰️~
「……大丈夫だろうか、ゴルサブトレ君」
「……え、あー……ルドルフ、会長?えーと、ここは……」
「あの木からして恐らく長野県、だな」
「見事にワープ失敗してませんかこれ」
「そもそもあのワープで事態謎ではあったが……まさか、皆離ればなれになるとは……とりあえず、少しでも早く合流したいところではあるが……」
78二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:51:59
~🕰️~
「わぁ、見て!松ぼっくり!雪の中に落とし物、って感じ!」
「いや気にしてる状況!?」
「んー、ルドルフやゴルトレちゃん、ムントレさんなら絶対大丈夫でしょ?だから、私達はどっしり構える!あ、タンホイザさん中身ほじくりだせそうな木、見つけた?」
「……えーと、まあ見つかった、けど……」
「ふっふっふっ……ならよし!ところで、かまくらって作ったことある?」
「……え?」
~🕰️~
「でよー、どうするよ、アタシら。流石のゴルシちゃんでもこの状況は真面目にならざるを得ないから、さっくり指針決めて動かないとヤバいぜ?」
「全くだ……が、とりあえず他のペアについて考えよう。とりあえずルドトレさんは誰かと組むにしてもスタミナに対しスピードが追い付かない。勿論、彼女のスタミナを鑑みればある程度は動けるだろう。が、ルドトレさんの走りは見たことがあるだろう?」
「あたぼうよ、確か差しだよな?」
「ああ、誰かと組むにしてもスタミナを温存するため保温の為の策を講じるだろう。即ち……」
「動くにしても動かないにしてもある程度わかりやすい、か」
~🕰️~
「さて、ゴルサブトレ君。生憎状況は悪い。だが、君が生還できるよう最善を尽くそう」
「それは嬉しい話、ですけど……」
「けど?」
「……そこに転がっているアルミシート、何かに使えそうだなー、と」
「なら、羽織るといい。アルミシートは熱を反射して保温してくれるという。即ち、この状況において無駄な体力を使わなくて済む。動くにしても、動かないにしても都合がいい」
「成程……ところで、動きます?」
「……私の本音は動きたい。だが、君がいることを考えれば……」
「……なら、動きましょう」
「……そう、か。わかった、慎重に動こう」
79二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:52:57
~🕰️~
「かまくら出来ましたー!むん!」
「タンホイザさんお疲れ~!そういえばここに、シチトレちゃんと行ったバーのマッチが入ってて……あ、ホコリとか糸屑も出てきたからこれを火種にして……」
「木の破片、焚き火にしやすくしときますね」
「ありがとー!……よし!これでかまくらが風避けと保温になって焚き火であったかいから、何時間でもいられるよ!」
「おおー!ルドトレさんって普段抜けてる風に見えるけど、なんだかんだ考えてたり?」
「……ごめん、ちょっと傷ついた……」
~🕰️~
「なぁムントレ、この木、何か中身無理やり引っ張ったような跡ないか?しかも最近によ……」
「ああ。熊や鳥では無理だろう。つまり……」
「誰か人がいる、しかもそこまで離れてない、ってことだな?」
「そうなる。そして、この足跡はあっちに向かっている……」
「よし、ムントレ、ゴルシちゃんの背中に乗れ!」
「わかった!」
~🕰️~
「……あれは、ムントレとゴールドシップ……」
「……なんであのペアが……?しかもよく見るとムントレさんがおんぶされてる……」
「さあ……しかし、あの二人と合流できるのは大き……ん?これは……」
「……何が?」
「足跡、それもトレーナー君の……ああ成程。あの二人もきっと……」
「つまり?」
「単純明快、あの二人は足跡を辿ることにしたんだろう」
「なら、足跡を追えば……」
「ああ。行こう。きっと残りの面々もそこにいるはずだ」
80二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:53:23
~🕰️~
「ぬくーい……」
「ぬくーい……」
「焚き火って、こんなあったまるんですねー……」
「だねぇ……ぽかぽか~……」
「あーでも、眠くはならないというか、寝たらダメって……」オーイ
「……この声は、トレーナーさん?」
「え、ムントレさんと……ゴルトレちゃんじゃなくてこれは……」
「よっ!」
「あ、ゴルシちゃん!」
「タンホイザ、お待たせ」
「トレーナーさん!」
「いやー、まさかかまくら作るなんてよぉ、流石ルドトレだよなー」
「ああ。とりあえずこちらも暖まっていいかな?」
「いいよ!」
「……トレーナー君?」
「あ、ルドルフ!」
「サブトレ、アルミシートはかまくらの外にかけとけ、あ、入り口には置くなよ!」
「あっはい」
「……ところで、ゴルトレさんは見たかい?」
「いや……」
「見てないけど……」
81二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 10:53:33
~🕰️~
「よ!無事だったかお前ら……ヒヤヒヤしたぜ……そしてその分だと焚き火であったまってたな?」
「ゴルトレちゃん!無事だったんだね!」
「ああよかった……ところで、何故日が暮れる少し前に突然?」
「いやー、スマホで救助呼べる場所探してたら思いの外手間どっちまってよぉ……」
「「あっ」」
「……どうしたお前ら……ああ、ここスマホの電波入る……ん?まさか……」
「ゴルトレちゃん、それ以上聞かないで……」
こうして無事全員生還出来たそうな。めでたしめでたし
≫109二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 15:09:43
[あいむ、ゆあ、ふぁーざー?]
ここはトレセン学園の一室、もう夕刻になり辺りが暗くなったトレーナールームには今、二人の人影があった。
「疲れた……」
「お疲れ様ですギムレットさん。お水を用意しましたよ」
疲労困憊と言わんばかりにソファーに座って倒れているギムレットの前に、水の入ったコップが差しだされる。
よく冷えているそれを差し出したのは、濡れ羽色の髪をしてアメジストのような瞳をした女性──もと男性ばかりのウオッカのトレーナーでは元から女性のウオトレ(女)だった。
「ありがとうよ黒いの。たかがチャンバラと高を括っていたが、まさかあんなことになるとは……」
「…そんなに凄いことが起こっていたんですか?」
「ああ、そういえばお前はそこに居なかったから知らなくても不思議じゃないか。実はイクノの奴が馬鹿デカいロボットに乗ってきてな。近くに居た奴全員で対処する羽目になった。それまではボウズと入れ替わりながらブライアンのや青いの、白いのを相手に楽しんでいたが、あの時からあの場所が戦場に変わって余裕が全部吹き飛んだな」
差し出された水を一息に飲み干して、今日会ったことを万感の思いと共に吐き出すギムレット。レースにおいては百戦錬磨の彼であってもどうやら巨大なロボットと戦うのは今日が初めてだったようで、激戦を繰り広げたであろう彼は彼女の目からしてみても中々に見られないほどに疲れが全身に回っているようだった。
「そ、それは凄いですね……」
「まあ面白半分で素のイクノのを驚かそうとした奴が原因だから責めるわけにもいかないんだが。イクノのが搭乗したロボットを撃破するために何人ものトレーナーが犠牲に……というのはまた今度全員がいる時に話すことにするか。それで、お前はどうだったんだ黒いの。久しぶりのバカ騒ぎだったがお前は楽しめたか?」
「はい。ネイトレさんたちと一緒だったんですけど、ネイチャさんに戦い方とかを教えてもらえて凄い楽しかったです!「筋が良い」と褒めてもらいました!」
「おっ、そりゃ良かったじゃないか!今回は野郎共ばかりがバカやって楽しんでいる節があったからな。お前が楽しめたのなら何よりさ」
110二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 15:09:58
倒していた体を起こし、目の前の相手を楽しそうに嬉しそうに見据えながら話を聞いて安心したかのような反応を返すギムレット。どうやら彼の周りにいたのは男ばかりだったようで、彼女が本当に楽しめているのかについては少しばかり気にかけていたところだったらしい。
「えへへ、ありがとうございます。……あ、そういえば1つ気になっていたことがあったのですが聞いても良いですか?」
「勿論良いぞ。今日のことで何か気になることでもあったのか?」
「ネイトレさんたちと一緒に居る時に色んな方が「自分は貴女の父親だ!」といった旨の言葉を話されていたのですが、あれは一体何だったのでしょうか?ウマ娘の方もやっていたので、何かそういう物だとはわかるのですが…」
「あー、そういうやつか。ざっと掻い摘んで言うと、かくかくしかじかというヤツでな。チャンバラがその物語で出てきた武器にあまりにも似ていたんで真似をするのが居たってことなんだろうな」
「なるほど、敵だと思っていた相手が実は自分の父親だったということですか…」
ギムレットからの説明を聞いて彼女は首を傾げる。幼い頃からそういった物語とは切り離されて育った彼女にとって、大学に在籍していた4年の時間があったとはいえ数十年前の映画の内容を知らないというのはあり得ない可能性ではなかったのだ。
「大分昔のネタだしな。お前が知らなくても何も不思議じゃないし気にすることでもない……どうした、何か浮かない顔をしているようだが」
「いえ、その…自分はまだ皆さんが知っていることを全然知らないのだな、と思いまして……」
「いいか、黒いの」
「はい、ギムレットさん……ってわひゃあ!」
彼女がソファに座り込んで俯いていると、対面の彼からの言葉と共に彼女の頭に何かが乗せられる。少々がさつに、それでいて優しく頭上で動くそれはどうやら彼の手で、自分はどうやら今彼に撫でられている状態だった。
111二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 15:10:14
「さっきも言ったが知らなくても別に不思議じゃない。皆が知っていることをお前が全て知らなければならない道理は無いし、もし知らなかったのならそれを1つずつ知っていけばいいんだ。」
「大丈夫、そうやって悩むことのできるお前ならできるさ。俺が保証したって良い。優しくて、周囲のことをしっかりと見て考えているお前ならできるさ」
ウマ娘になったとはいえ、男性の手に撫でられることに慣れていないために慌てている彼女のことを気にせず、ギムレットは話を続ける。
「これから知っていけばいい」と、「お前ならできるさ」と語る彼の表情はいつもよりも柔らかく、まるで不安になっている娘を父親があやすようにその声音には温かさが籠められていた。
「……本当に大丈夫ですか?」
それでも消えない不安が口を吐く。もしかしたら知らずに居続けて、周囲の人の機嫌を損ねてしまうのかもしれない。いくら彼がそう言ってくれるとはいえ、全ての人物がそうとは限らない。もしかしたら今こう言ってくれる彼を失望させてしまうのかもしれない。
「大丈夫」
強く短く、それでいて優しい声で言い切られる。これ以上の言葉は必要ないと言わんばかりの態度は、絶対に揺ぎ無い確信があるという考えの強固さを表しているようだった。
「この程度のことであれこれ言ったり、人を判断したりするほど狭量な奴はこの学園にはいない。少なくとも、俺がこうして平然と相棒と共に居られるんだからな。だからまあ、何かあった俺だけじゃなくて他の奴にも遠慮なく言って良いんだ」
「ギムレットさん……」
自分の不安など知ったことかと言わんばかりに自信満々に、優しく笑っているギムレット。その姿を見ると、不思議と自分の中に渦巻く黒雲もどこかへと消え去ってしまったような気すらしてくる。
112二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 15:10:29
「おっ、良い顔をするようになったじゃないか。人間しかめっ面より笑っている方が何倍も良いに決まってる。……そうだ、今度の休みは皆で件の映画でも見ないか?面白いからお前もきっと気に入ると思うぞ」
「えっと、その、わたしの予定は空いてますけど、他の人の予定とかは大丈夫でしょうか……?」
「そこら辺は何とかするさ。もしかして、俺たちと一緒に映画とか見たくないとかそういうクチか」
「いえっ!みんなで見たいです!……あっ」
「よし、なら本決まりだ。じゃ、今日はこれで解散。暗いからお前も帰り道気を付けろよ?」
「あっちょっと、ギムレットさーん⁉」
今度の休みにチームの皆で映画を見る約束をして、ギムレットはソファから立ち上がってドアの方に歩いていく。もう話は終わりだと言わんばかりに話を切り上げた彼の態度に慌てて声をかけるが、彼は片手を振って何も答えずにドアの向こうに消えていった。
「はぁ…」
「大丈夫だ」とでも言いたいのだろうか。自分の悩みに応えて、言いたいことを言い切って出ていった彼の態度に困惑の溜息が口から出ずにはいられない。それはそうとして、皆で映画を見るという楽しみな予定をメモしておこうと手帳を取り出そうとしていると、ふと自分がさっき悩んでいたことを完全に気にしなくなっていることに気付いた。
果たしてこれは彼の性格か、それとも彼なりの配慮なのかはわからない。しかし、彼との話を終えて「皆で映画を見る予定」と、「それを楽しみにしている自分」が後に残ったのは紛れもない事実だ。
「ふふっ」
今度の休みに明るい色で映画の予定を書きこむ。装飾の無い武骨な手帳に書き加えられた文字は、隠しきることのできない嬉しさと感謝で鮮やかに彩られていた。
≫155二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 17:48:57
『似通うV/共通点の話』
「そういえばいつの間にかウオッカのトレーナーも4人に増えちゃったわけだけどさ」
「なんだよベガトレ。普通そんなに増えねえって話か?」
「それはまあ否定できないっすけどね。なんでうちだけこんなドコドコ増えてるんっすかねえ……まあカフェトレさんたちのとこも大概な気はするっすけど」
「……導き?俺に切り札と称してジョーカーの札がやたらと来るように」
「誰のですか!?」
「まあ導き云々はどーでもよくてだね」
「待てベガトレ、ババ抜きで連戦連敗する羽目になるからどうでもよくはないぞ!今度こそとやり続けてもう100連敗だ!」
「いやブイサブの謎現象はどうでもいいわよ!話を戻させてもらうけど私と全員共通点あるなっていう不思議な話なのよ」
「ほう、共通点。聞かせてみてもらおうか」
「ギムレットさん突然出てきましたね」
「楽しそうだからな」
「まずウオトレとギムレットの二人で一人組。まあ私もアルと一緒のふたりで一人ってわけだからまずそこだね」
「ふむふむ、確かに言われてみればそうっすね。どっちも表に出るようなレベルでハッキリ意識持ってるという点でもかなり特異っす」
「次にウオサブにブイトレ。どっちもオッドアイでしょ?私も黄色と桃色でオッドアイ繋がり。ついでに言うとスイーツ愛好家の面はウオサブと一緒ね」
「ははぁ、それも確かにだなベガの」
「で、最後に最近増えた……増えた?まあ増えたでいいや、ウオシスちゃん。元から女性!むしろこれだけ人数いて最後にようやく元から女性!」
「確かに……そうですね?」
「男性がウマ娘になるっていう時点でだいぶ怪奇現象だがな」
「それ言ったらもう女性がなるのも十分オカルトっすよ」
「まあそんなわけで謎なレベルで私との共通点が生えてる集団ってわけなのよウオッカトレーナーズは」
「別にそれぞれは大きな共通点抱えてるわけじゃないっすけどねえ。あ、ウオッカと仲良しってのは共通点でアリっすかね」
「アリで良いだろ、それ抜きにしたら全員完全なる他人だぞ」
「つまりこれからも仲良しということで良いんですか?」
「むしろ仲良くしない理由ないじゃないの。これからもよろしくねウオシスちゃん」
「よろしくお願いします、ベガトレさん!……そういえば何故ウオシスなのですか?」
「事実妹みたいなポジションだし…?」
「シス……ああ、妹」
うまぴょいうまぴょい。
≫160二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 18:12:03
ドンドコドコドコ ドンドコドコドコ
ドンドコドコドコ ドンドコドコドコ
新年祝って 思いを込めて
囲めや囲め トラ二匹!
こうなりたいか なりたくないか
吊るせや吊るせ 生贄を!
ドンドコドコドコ ドンドコドコドコ
ドンドコドコドコ ドンドコドコドコ……
「普通に怖いぃ……テイオォ……!」ポロポロ
「ネイチャ……助けてぇ……」ポロポロ
ネイトレとテイトレ。姿形は違えど三冠トレーナーとして名を馳せた二人は今、豚の丸焼きスタイルで吊るされていた。マイクロ虎柄ビキニで。ふーんエッチじゃん。
ちなみに吊るされた二人の周りを踊り散らかしている連中は皆一様に奇怪なお面を被っている。おそらくバントレ他仮面トレたちによる提供。女の能面が混じってる時点でしっかり怖い。
「ネイチャとのんびり寝正月していたかったのに……どうしてこんな事に」
タイキトレからの呼び出しにホイホイついてきちゃった結果がこれである。ガードゆるすぎて心配になっちゃうわー、とは当人の弁。お前がいうか?お前のせいだぞ?
「負けさえしなければ……羽子板勝負に負けさえしなければぁ……!」
一方悔恨の涙が止まらないテイトレ。ネイトレより自業自得度が高いのは気のせいではない。自分や対戦相手がこうなると分かってて勝負に乗り、そして負けたのだ。そら見たことか。天はスケベに味方した。
「……テイトレさん。こんな時になんですが」
「……なに?」
「あけましておめでとうございます……」
「……うん。こっちもあけましておめでとう。今年もよろしく」
「はい……今年もこんな感じなんですね。グスッ」
「そうみたい……うぅ」
二人の目頭に溜まる涙。新年初顔合わせがこんな天地逆転した状態とはお互い思わなかったろう。
そんな生贄に近づくいくつかの影があった。
161二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 18:12:51
「壮絶な光景ですわね……テイトレ、あなたこのまま食べられますの?」
「その声はマクトレ!もういいだろ下ろして!下ろして!!」
「それでは罰ゲームになりませんわ。しかし……ウラトレ先生監修じゃないとこんなにも際どくなりますのね。見せられない部分以外ほとんど見えてるのでは?」
「「見ないでぇ……!!」」
「心配無用です。ネイトレのは見ないようにしてますので」
「お、お願いします……」「俺のは見るのかよぉ!」
「ネイトレのがね、重力にちょっと負けちゃってるところがね……ぐへへへへ」
「笑い方で分かるんですよベガトレ先輩!」
「つっついたらふにゅって音しそうだよね!テイトレのは……セクハラになるしノーコメントにしといてやるか」
「そんな優しさあるなら解いてくれぇ……」
「同性でもセクハラは成立するんですからね……!」
「なに?ネイトレの乳もさることながら太ももとお尻がむっちり大きくて叩いたらいい音するよって話する?今叩く?響くよ?」
「いやあぁああああ!!?」「こいつ、無敵か!?」
「……」
「……リウトレさん。仮面で隠しても耳で分かるからね……?」
「ごめんなさい。吊るすか吊るされるかの二択を迫られて……」
「第三の道を模索しろリウトレ!!」
「がんばって!リウトレさんならできる!できるから助けて!」
「……助けようとして自分も剥かれてしまうビジョンが見えてるんですよ」
(*1)
「まだ先輩たちみたいな汚れになるのはちょっと早いかなと……とはいえ、今日は勇姿と最期を見届けます」
「だから見ないで、待って今汚れって言った??」「今最期って言った??」
「……」
「イクトレさん……ちっこいのとはみ出てるヘルメットで分かる」
「私たちのこと、なんとかしてもらえませんか?」
「🙏」『すまん。無碍にはしたくないけど誰かがこうなる運命だったんだ』
「運命」「思ったより重いワードが出てきた」
162二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 18:13:47
「……自分がこうなっていたらどうしようとか思いませんか?俺はこの際仕方ないとしてもネイトレは理不尽だから、どうか」
「😑」『その点に関しては自分じゃなくてよかったという気持ちでいっぱいだ。児ポにひっかかりかねん』
「それは、そうですけど……」
「その通り過ぎて言い返せない……!」
『劣情もまたパワーになる世の中だ。ドンマイ』
『……ちょうどいい。部族のエースが来た』
「エース……?」「いやそもそもなんだこの部族」
「ども。炎の出せないエースです」
「さっさと降ろせタイキトレ!」
「そういうことする人ですよね!知ってました!知ってたのに!私のバカ!!」
「遠慮呵責のない言葉たち!でもごめんね、負担の少ない縛り方にはしてあるから……あ、でも十字架に縛り付けられる方が姿勢が楽ってんなら、変えられるけど」
「「……」」
───ああ十字に括り付けられたあのあわれなトラを見よ
戸惑いに揺れ、濡れる瞳を見よ
下支えがなくとも前を向く双丘を見よ
正月の魔力に抗い通した象牙のように白く滑らかな腹を見よ
もはやどれほども隠されていない下腹部に目を向けよ
そうしたなら今一度二人の顔を見よ 羞恥に燃える顔を見よ
身をよじらせる様を見よ にじみ出た汗が肌を流れ、全身が赤く染まっていく様を見よ
「うーん、二人とも恥じらい方がアホみたいに画になる……」
「自分でもそう思いますかタイキトレさん。……いいえ、タイキシャトル担当」
「……」
この後、二匹のトラは生還を果たし、代わりに別のトラが逆さ吊りにされましたとさ。
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part609【TSトレ】
{#bold(){≫8二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 18:55:29
「ゔぇ……びぇええええええええっ!!」
「ゔぇ……びぇええええええええっ!!」
きっかけは些細なことであった。
段差に躓いたイクトレがすっ転んだ。
ただそれだけなら平然と起き上がり土埃を払うイクトレが、今日に限っては火のついたように泣き喚いているのだ。まるで年相応、3歳児が転んだ時のように。
段差に躓いたイクトレがすっ転んだ。
ただそれだけなら平然と起き上がり土埃を払うイクトレが、今日に限っては火のついたように泣き喚いているのだ。まるで年相応、3歳児が転んだ時のように。
「い、イクトレお姉ちゃん!? どうしたの!?」
「ゔぁああああああ! ぅゎぁあああああ!!」
「えー……すっごい泣いてる。よしよし……?」
「ゔぁああああああ! ぅゎぁあああああ!!」
「えー……すっごい泣いてる。よしよし……?」
カレトレが見る限り、怪我はしていない。擦りむいた様子もない。
しかし何故か泣きまくっているのだ。いい歳した大人と自負するイクトレが、脇目も振らずに泣きじゃくり、カレトレに縋りついている。
その妹力の高い振舞いに、カレトレの兄力……いやママ力が刺激され、カレトレは深い考えをせずイクトレを抱き上げた。
しかし何故か泣きまくっているのだ。いい歳した大人と自負するイクトレが、脇目も振らずに泣きじゃくり、カレトレに縋りついている。
その妹力の高い振舞いに、カレトレの兄力……いやママ力が刺激され、カレトレは深い考えをせずイクトレを抱き上げた。
「よーしよし……イクトレちゃんはカワイイでちゅね……」
「ぁう……」
「ぁう……」
普段声を上げない分、泣き疲れてきたのか、ゆすられて落ち着いてきたのか。
泣き腫らしたイクトレの目がとろんと閉じていく。
泣き腫らしたイクトレの目がとろんと閉じていく。
「ふふふ……ウマスタにあげちゃお」
すやすや寝付いたイクトレを談話室のソファに寝かせ、ブランケットをかけてやったカレトレは、しばしその寝顔を彼女なりに愛でることとした。
後日「頼むから消してくれ」と追うイクトレと、笑って逃げるカレトレの姿があったという
うまぴょいうまぴょい
後日「頼むから消してくれ」と追うイクトレと、笑って逃げるカレトレの姿があったという
うまぴょいうまぴょい
イクトレのヒミツ①
- 実は、たまにちびっ子らしい衝動を抑えられない時がある}}
≫31二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 19:27:57
テイエムオペラオー担当トレーナーは非常に不本意ながら、その品のない水着を手に取った。
「まさかこのような無様を晒すとは……」
程々に負け、程々に勝って終わらせるつもりだった賭けポーカー。
定石通りに進めていたそれを、常識外れの大番狂わせで乱されて大敗した結果がこれだ。
つくづく人生は侮りがたい。遠くで吊るされるネイトレとテイトレを眺めながら、オペトレはほっそりとした裸身に、隠すには心許ない虎柄マイクロビキニを身に纏った。
オペトレは肌を晒すのが苦手だ。それは傷を負ったからなどではなく、自分の少女性を見出されるのがたまらなく恥ずかしいからである。
普段気取った紳士といった面持ちで振る舞っているのに、脱がすと生娘のようだなどと思われたくないのだ。故に頑なに服で包み隠し、頑なに己を護る。そうして晒さねばならない時に後悔するのだ。
いっそ逃げてやろうか。そんな考えが思い浮かんだ時、目の前に見慣れぬ装いの、見慣れた人物がひとり。
メイショウドトウ担当トレーナー。羞恥で顔を真っ赤に染めた彼も、今はその豊満な身体を僅かに隠す虎柄マイクロビキニの装いだ。
それを見たオペトレは、滑るように彼の隣へ立ち、そっと背中を叩いた。
「お、オペトレさん!? 貴方まで……」
「恥ずかしいと思うから恥ずかしいのさ。大丈夫、胸を張りたまえ」
堂々と貧相な身体を伸ばして見せれば、それに鼓舞されたドトトレが大迫力の弧線を見せつける。
お互いに羞恥心でいっぱいいっぱいなのだが、健気に奮い立たせるふたりのトレーナー。
その姿がもうひとりのライバル、ベガトレに激写され、自らの担当ウマ娘へ漏洩することを、彼らはまだ知らない……
うまぴょいうまぴょい
≫38二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 20:05:41
「うえぇぇぇ…」
「どうしたお嬢」
「うぅ…服…剥がされてぇ…」
「オイオイオイ誰だよ…やったのは…」
「これ、コートっす。あと親父さんはその怖い目やめてほしいっす」
「嬢ちゃんに及ぶのは流石に見逃せねぇな」
「皆さん…ありがとうございま…くしゅん」
「あああお嬢が!風邪を!今すぐあったかい服!いやその前に外に出しっぱはマズイ!」
「とりあえず隠すっす」
「こいつぁ…時間の匂いだな…」
って感じで全力でウオシスを守るために動いてほしい
≫52二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 20:21:04
「くっ……何事でしょうか」
目を覚ましたグラトレは困惑した。
先程まで調べ物の為に図書室へと向かっていた筈……
それが何故か気付けば着物を脱がされ吊るされているではないか。
「いったいこれは……」
「ケーッケッケッケッケツ!」
「何奴……!!」
そこに現れたのはコンドルのマスクをした……女?
「ケッケッケッ、いい光景デース!」
「くっ……」
「何か言いたい事は有るデース?」
「……殺しなさい……武士たるもの命乞いなど致しません……殺せ!」
「そんな事しないデース!!」
そう言ったコンドルマスクの女は俺の後ろへと周り……
スパーン!!
「ひゃぁ!?」
俺のケツを引っ叩いた。
「ケッケッケッ、これからグラトレさんは私が満足するまでケツを引っ叩かれるのデース!! ケツデース!!」
「なっ!? ……止めなさい!!」
スパーン!!
「ぴゃっ!!」
「ケッケッケッ、ケツデース!!」
スパーン!! スパーン!!
コンドルマスクがグラトレのケツを叩く音はグラスワンダーが助けに来るまで続くのだった……
開けましておめでとう御座います!
新年初がこれって……
≫122二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 22:49:24
「うん。異常はどこもなし。これで最後だね」
「あり…がとう…ございます」
とある病室の一角で、2人が話をしていた。
片方は白衣を纏った男性。
もう片方はブカブカの病衣からやせ細った鎖骨と腕を覗かせる小さな女性。
彼らは主治医と患者という関係だが、その身長差のせいでどこか親子のようにみえる。は
「声もだいぶはっきり出せるようになったね。まだ滑らかには発生できそうにない?」
「はい…すいま…せ…」
「怒ってるわけじゃないよ。大丈夫」
「あ…えで…はい」
椅子に座って主治医の話を聞く小さい1人。少し髪が伸びて、ニット帽からはみ出ている。
「ちゃんと明日で退院できそうだ。よかったね」
「あ…ぅ…はい……」
下を俯いて、もじもじと答える。足は床に届いていない。
「よし終わり。戻っていいよ」
「はい…」
とてっ、と椅子から降りて、小さい歩幅で扉に向かう。
ぺこり、と1つお辞儀をして扉から出ていった。
「めでたいけど…どうなるかねぇ…」
主治医は上を向いて背もたれに体を預け、ため息をひとつついた。
123二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 22:49:45
「ぁ…たま…」
「お!トレーナー帰ってきたか!どうやった?」
部屋に入ってきたトレーナーを、タマが迎える。
「ぅん…あし…た…」
「ほうか!!なら、荷物纏めんとな!」
そう言うと手を引いてベッドまで連れていく。しかし、その途中でタマの手を引いた。
「……ん…」
「お、どした?」
「その…いま…まで……ご…め……」
「ハァ〜…コラ」
大きくため息をついてそれを遮ると、自分より一回り小さい彼女を撫でた。
「何回も言っとるやろ?ウチはウチが望んでこうやったんや。背中の傷もどっかいった、アンタはこう退院できる。万々歳や」
「そ…うだ…けど…」
なおも躊躇う彼女の頬をむに、としてやる。
「うにゅ…」
「心配せんでもええ。ウチが隣におる。それじゃ不満か?」
「…え…ちが…」
そう否定するのを見て、にかっと笑う。
「ならええわ!ほら、今日はウチここに泊まるさかい、頼むで!」
「え…ぇ…?」
突然のことに困惑する暇もくれずに、ポンポンと矢継ぎ早に言葉を重ねられる。
「トレセンにも病院にもちゃーんと、許可はとっとるんやで?」
「う…ぇ…」
「なんやなんや、嫌か?」
「いや…じゃ…」
「ならええ!あとは意外と何とかなるで?」
そう言って笑い飛ばす彼女をみて、少し気を緩ませる。
10月14日、明日に迫った退院の日は近くて、1人じゃなかった。
≫133二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 23:17:13
正月のとある日、何処かのトレーナー室で
「「………」」
「ファイトレさん、ドベトレさん、遠慮なく食べてくださいね」
ピタリと動きを止めてお出しされたその料理を見つめているのは、ファイトレ(女)とドベトレの二人。
「…?」
そしてその姿を見守るのは料理を作った本人でもあるカフェトレ(黒)、その顔はちょっとポカンとした表情を見せている。
そんな中で、ファイトレとドベトレは一見するとまともそうなその料理を挟んでアイコンタクトで会話する。
(ファイトレ、凄く嫌な予感がするんだが…)
(奇遇だなドベトレ、私もだ。)
「…すみません」
「「!?」」
カフェトレからの声にぴしりと電流が流れる二人、もしや心が読まれたかと身構え…
「僕はお手洗いに行ってきますね」
「あ、ああ…」
「分かった…」
(*2)
部屋のトイレに入っていくカフェトレを見届けた後、170cmの黒と白のウマ娘はため息を吐きながら呟いた。
「…ファイトレ、この料理…オレ達も手伝って作ったはずだよな?」
「ああ、少なくとも手順通りだし見た目はそこまでおかしくなさそうだが…」
…そのはずなのに、その料理を前にした二人は今までの経験で研ぎ澄まされた生存本能が警告を発していた。
ゴクリと唾を飲み込む音はどちらが出したものなのか、そんなことが些細なことでしかないくらいであった。
「…オレが先に食べるぜファイトレ」
「待て、早まるなドベトレ、その役目は私が引き受ける。私の作った食事である以上は消費するのは私の責任だ。」
「だったらオレもだ。オレだけ逃げる訳にはいかねえ。」
「…分かった、じゃあ…」
ファイトレとドベトレはいただきますと手を合わせると、箸を手にその料理を取る。そして覚悟を決めて口元に運び…
「「…!」」
…口に含んだ瞬間、二人の意識は襲い来る恐ろしい程の感触に押し流されてぷっつりと切れた。
134二次元好きの匿名さん22/01/04(火) 23:17:47
「…二人共?!」
お手洗いから戻ってきたカフェトレは、机に突っ伏して意識のない二人を必死に起こそうと努力した。
ちなみに後日、その感触を聞いてみたところ
「今までオレが経験したことない程だぜ…」
「毒ガスを浴びたとき以上の感覚だった…」
と、ひどく目が笑ってない顔で言っていたそうな。
短文失礼しました
初期武闘派トリオで、黒カフェトレのメシマズをカイゼンしようと頑張ったファイトレ(女)とドベトレの結果です。
このトリオは成り立ちからして異端なトリオなんでしょうけど、私的にはやっぱりいい意味でお似合いな三人だと思うんです。
≫147二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 01:28:55
──ん。ここは……どこだ? クソ、暗くてよく見えねぇ……
「──お目覚めかな、ドベトレ」
っ! その、声は……リャイトレ!
「その通り! そしてようこそ──マッスル・スタジアムへ!」
うおっ眩しっ……スタジアムっつーより、撮影スタジオだよなここ。で、何やってんだ?
「うん、素っ気ない反応ありがとう。そして答えよう……何、一つ頼みごとをしたいんだ」
頼み事。
「ああ。単刀直入に言おう。この虎柄ビキニを着て、俺と写真を撮ってくれないか?」
いや、写真はまあいいとして、いくら何でもこのビキニはやばいだろ……つーか何で虎柄?
「寅年だからさ。お屋敷で使うカレンダーがあるだろう? あれに使うんだ」
あーあれか、じゃねえよ! おかしいだろ色々と、一人で撮りゃいいじゃねえか!
「それでもいいんだが、やはり美しい筋肉の共鳴をに響かせるのは一人では難しいんだ」
何だよその筋肉の共鳴って……そもそも何でオレだけなんだ? メジロなら兄貴とかアルトレもいるだろ。
「ああ、その二人ならもう別日に撮影済みだ」
マジかよおい。
「頼む! メジロでウマ娘になったトレーナーはあと君だけなんだ! その鍛え上げられた筋肉たちを輝かせよう!」
……はぁ。しょうがねぇな、ちょっとだけ、ちょっとだけだぞ。
「! ありがとうドベトレ! よし、そうと決まれば急いで撮影準備だ! 早速着替えて来てくれ!」
はいはい……請け負っちまったからにはやるけどよ、虎柄ビキニか……あークソ、顔が熱い。
さっさと終わらせよう……。
後日完成したカレンダーのサンプルを見て、ドベトレは吠えた。
──恥ずかしいの極みだわコレ! つーか兄貴とアルトレは着ぐるみじゃねえか!
「二人の筋肉も悪くはないが、やはり俺やドベトレの筋肉の方が映えるのさ。二人は可愛い担当だ」
騙された! ……いや確かに詳しく聞かなかったオレにも落ち度はあるけどさ!
「だが中々評判はいいんだぞ? 特にこの写真、逞しさと愛らしさが虎柄とベストマッチだと一番人気だ」
……畜生、一瞬でも嬉しいと思っちまったオレがいる……。
「む、いい反応だ。それじゃ来年のカレンダーも……」
断る!
「残念だ。まあ、気が変わったら言ってくれ。筋肉はいつも君の傍にあるぞ!」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part610【TSトレ】
≫33二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 11:37:06
「なんでそんな怖い鬼のお面用意してきたんですかバントレさん」
「自分、鬼ですから」
「そしてなんで包丁のようなものまで持ってきてるんですか」
「自分、出は東北ですから」
「それ、なまはげ……!」
「ふふふ、何も問題はございませんよ。ああ、ついでにネイトレさんの分も持ってきていますよ」
「これは赤鬼……っていうかモモタロス……!」