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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart346~350)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part346【TSトレ】
≫63二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 17:51:43
────彼が彼女となって以来、奇妙なことも続くことがある。が……
「……いくら私達が寸歩不離の仲とはいえ、流石にこうなるとは……」
手錠に関しては流石に厳しい、というよりは私の強固になってきた理性が死ぬ。
「まあでも、これならずっと一緒だね♡って、明日には取れるからそんなでもないか……」
「確かに君を手放す気はないとは言ったが、四六時中一緒と……いや、何時も通りでは……?」
「……あっ」
突然、嫌な予感がする声をあげるトレーナー君。
「……ルドルフ、お手洗いいきたい」
「……えっ?」
予感的中、助けて。
「いや、小さい方だから……」
「その情報が必要な場合ではないのだけれども?」
「でも、トイレ行きたい……」
「……」
覚悟を決めてトイレに向かい、必死に目と耳をふさぐ私……を打ち破る一言。
「別に、ルドルフに見られてもいいんだけど……ほら、ルドルフのお嫁さんになるのは確定だし……」
────ルドルフはキレた。
────ルドトレはデコピンされてお説教された。
≫73ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:04:53
では時間になったので投げますね
ロブトレ帰省SS 第二話
「長旅お疲れ様、疲れたでしょう?腕によりをかけて作ったから是非食べてね」
「あまり無理はするな、とは言ったのだがね。だが家内の料理は絶品だから是非食べてくれ」
「ありがとうございます。とってもおいしそうです」
「ふふ、お母様の料理はとても美味しいですのでぜひ楽しんでくださいね」
トレーナーさんの両親に連れられて、家に入り、そこからは歓迎会が始まりました。
トレーナーさんのご両親は二人とも優しい方で、お父さんの方は切れ長の目で厳しい方かと思いましたけど、話してみると気さくな方で私に事をとても歓迎してくれました。
お母さんの方は見た目通り穏やかな方で、多分トレーナーさんは性格はお母さん似なのだろうなというのがうかがえました。
「しかし、ロブロイはすごいな。まだまだひよっこの───がトレーナーでよく秋シニア三冠をとったな」
「あ、あの、トレーナーさんが一緒にいてくれたから、一緒に歩んでくれたから、勝つことができたんです。私だけの力ではなく、トレーナーさんがいてくれたからです」
「本当にいい子ね。そうだわ、───の昔の写真見るかしら?」
「お前、まだ来たばかりだし、ご飯の方が先だろう?」
「でも、きっとロブロイちゃんも昔のあの子のこと、気になっているはずよ」
「あ、あの、気になりますが、その、いいのですか?」
「いいのよ。ちょっと待っていてね、今、アルバムを持ってくるから……」
そう言ってトレーナーさんのお母さんは車いすをこいで部屋から出ていく。その手つきがとても慣れたもので、恐らく最近折った、という訳ではなくずっと車いす生活なのでは、と思えました。
ギュッ……
「え……トレーナー、さん……?」
トレーナーさんに強く、手を握られました。
手汗がすごく、ここまで緊張しているのは見たことがありません。
まるで、何かを恐れているかのように……
74ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:06:10
「待たせてごめんなさいね。この子が小さいころからのアルバムよ」
とてもやさしそうに微笑みながらトレーナーさんのお母さんがアルバムをテーブルに置く。
本当に、このアルバムを開いていいのでしょうか……。
「トレーナーさん……その、いいのですか?」
「……ええ、大丈夫です。ロブロイに私の過去を知ってほしいのです」
「……分かりました。大丈夫です、トレーナーさん。私、どんなトレーナーさんでもきっと受け入れますから」
「?二人とも、何を話しているの?ふふ、私もアルバムを見るのは好きなの」
トレーナーさんの決心を確認し、私自身も心に決める。
何が待っていても、トレーナーさんはトレーナーさんなのだから……。
「ふふ、昔はね、この子もとってもかわいかったのよ。『───も勝負服が着たい!ヒロインみたいで可愛いもん!』何て言ってね……」
「そうだったんですね、トレーナーさん、昔から勝負服で可愛らしい服を着ていたのですね」
「ええ……そうでした。私は小さいころから、勝負服に、憧れていましたからね」
トレーナーさんのお母さんと一緒にアルバムを捲っていく。
小さいころからの写真がとても多く、何ページにもわたってトレーナーさんの写真が。
どうやらトレーナーさんのお母さんは呉服店で働いていたことがあるそうで、いろんな服を作っているそうです。この小さいころのトレーナーさんの服もどうやらお母さんが作ったものだそうです。
トレーナーさんの昔を知れて、すごくうれしい……。今まで知らなかったトレーナーさんを知ることができる、そう思うと夢中になって見てしまいます。
「この子はね、小さいころから勝負服が好きだったの、勝負服を着たウマ娘はキラキラしている!っていってね……何時しか私が教えながら服を作るのが趣味になっていたの。勝負服のアイデアのために流行りもののファッション雑誌を呼んだり、漫画からも発想をもらったりしていたのよ」
「トレーナーさんのドレス作りは小さいころからの物だったんですね、すごいです」
「……」
「……トレーナーさん……」
「大丈夫、大丈夫ですよ、ロブロイ……」
75ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:06:29
少しずつ、トレーナーさんの顔が悪くなっていく。
トレーナーさんにとって、あまりよくない過去なのでしょうか……。
そして、ページをめくるとそこには……
「あ、これって……ウェディングドレスのデザインですか?」
「ええ、そうよ。この子、一番憧れていた勝負服のデザイナーさんがウェディングドレスをモデルにしていてね。それで余計にウェディングドレスに憧れて、勝負服としてだけではなく、自分自身も着てみたい、って言ったりしていたのよ」
そう言うと想いを馳せるように遠くを見つめる。一番キラキラ輝いていた記憶であるかのように
「……私も、ウェディングドレス着たかった、って言ったら、この子、『なら───がファッションデザイナーになってお母さんにウェディングドレスの勝負服を着せてあげる!』『お母さんだけじゃないよ!ウマ娘皆が幸せになれるような、素敵な勝負服を作るデザイナーになるの!』って……」
「トレーナーさん、小さいころの夢はデザイナーさんだったんですね」
「……ええ……そう、デザイナーが夢だったんです……ですが……」
そして、もう1ページ捲る、捲る、捲る……だけど少し成長したころからはトレーナーさんの写真はありませんでした。
いえ、トレーナーさんの写真なのでしょう。でも、その姿はそれまでとは変わって、穏やかな、でもその笑顔は不自然なように……。
「でも、この子はそうはならなかった……。10歳の頃、将来の夢で『トレーナーになる』と決意してから、変わってしまった……。
ウマ娘を輝かせるためのアプローチが変わるだけ、って言っていたけど、今まで大切にしていたデザイン用のスケッチブックを捨てて、憧れていたウェディングドレスも捨てて……この子自身、覚悟を決めたのね。
デザイナーになる一番の想いがあったらトレーナーとしての道にいけない、だからトレーナーになるために覚悟を、周りから求められる『理想的なトレーナー』になる、って……」
「え、お、お母さん……」
76ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:06:50
トレーナーさんのお母さんの様子がおかしい。
何か、壊れてしまったかのような、今まで保っていたものが崩れていくような……
「心優しいこの子が、周りから求められたその手を振り払えるわけがなかった。そして決心してしまったら止まれない。止まるわけがない。だってこの子はウマ娘でなくても明確に私の因子を継いでいる!私の因子は私が分かっている。この感情は、一度決めたことは止まれない、覚悟をしたら止まることができないもの。其れこそ、自らができなくなるまで絶対に……」
「……ごめんな、さい……」
これが、トレーナーさんのおそれていたこと……。
トレーナーさんの過去、明確にはわかりませんが、それでも、これは……
「でも、それでもまだこの子は面影を残していた!あの人のように綺麗に育っていった。トレーナーになっても私たちの子はそこにあるって思っていた。でもその姿も今はない!私たちの子はどこにもない!どこ、どこに行ってしまったの!またこの因子が悪いの!ああ、勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい……だめ、このままじゃ、皆恨んでしまう。私が悪いのに、私の責任なのに!止まらなくちゃいけないのに、止まれない、壊さなくちゃ、私自身を壊さなくちゃ……私はあってはいけない、この想いは摘まなくてはいけない。でも折ったはずなのに、なんで……。私にこんな思いをさせるだけでなく、今度は私の子供まで奪ってしまうの!やめて、やめて、やめて!!嘶きが聞こえる。私からもう、奪わないで!!奪わせないで!!!」
「お前!大丈夫だ、あの子はここにいるから、落ち着け、落ち着くんだ!くっ、またウマソウルが強くなって……」
「お母様……ごめんなさい、ごめんなさい……そんな風にさせたくなかったのに……トレーナーとしてでも喜んでもらえるって、思ったのに……」
77ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:07:11
トレーナーのお父さんが必死になって抱きしめ呼びかけ続ける。でも戻ってこない。自分の中の魔女に喰らい尽くされそうになりながら……。
そしてそれはトレーナーさんも同じ、自分の過去と向き合って、それに押しつぶされようとしている。
ダメ、このままじゃ、トレーナーさんも、お母さんも、闇に飲まれてしまう……。
「トレーナーさん!!」
「ロブ……ロイ……」
そう思ったとき、私はトレーナーさんを抱きしめました。すっかり凍えて冷たくなっている。きっと、心もこの体のように凍えているのだろう。
その体を、心を優しく、ゆっくりと溶かすように……。
「トレーナーさん……私は、トレーナーさんを信じています。だから、トレーナーさんも、一緒に歩んできた物語を信じてください」
どうか、勇気を出して、トレーナーさん……。
78ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:07:32
それは、予感していた事態であった。
お母様が、壊れる……。
『ふふ、ウェディングドレスを作ってくれるの?楽しみに待っているわ』
嬉しそうに語ってくれていたお母様。
『トレーナーになる、その覚悟は強いようね。きっと、あなたにも私の因子があるのね……。そうと決めたら止まれない、無理に止めようとしたら壊れてしまうもの。なら、私も応援するわ』
それでも、トレーナーになると決めたとき、応援してくれたお母様。
『頑張って、私が唯一残せた子、あなたならきっと……』
でも、そんなお母様を壊したのは、私なのかもしれない……。
『お母様、トレーナー養成学校に受かりました』
『……どうして、あの頃のあなたは、どこに行ってしまったの……』
道を違えた私は、一番褒めてもらいたかった人を裏切ってしまった。
でも、もう止まれない、止まることができない。私は周りからの期待に応えなくてはいけない。
名トレーナーの息子、トレーナーになるべきもの、期待、熱望、羨望、憧れ……。
それらが、酷く重くて……助けを求めたくてもその声を出せなかった。
きっとその身が壊れるまで、私は進まなくてはいけないのだ。
周りから望まれるままに / 大切なものから目を背けて
そのために覚悟を決めた / 本当に大切なものを捨てて
輝かせたいという想いは変わらず / 捨ててきたものへの想いも変わらず
そして私はどこにたどり着くのだろう / どこに墜ちていくのだろう
嗚呼……すぐそこに、黒い嘶きが……
79ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:07:51
「トレーナーさん!!」
落ちていこうとする私の身体を熱が、包み込む……。
小さな体が、しっかりと私の身体をつなぎとめてくれる。
その小さな体は、私の、英雄……。
「ロブ……ロイ……」
強く、強く抱きしめられる。
ああ、そうだ……今の私は、一人ではない。
一緒に歩んでくれる人がいる。一緒に物語を紡ぐ人がいる。
「トレーナーさん……私は、トレーナーさんを信じています。だから、トレーナーさんも私と一緒に歩んできた物語を信じてください」
その言葉が、その熱が伝わる……今の私には、ロブロイがいることを。
ロブロイが一緒にこの物語を歩んでくれる。
私が進んできた道は、一人ではなく二人になった。
それが何よりも心強くて、だからこそ、明確に向き合える。今度こそ……。
「ありがとうございます、ロブロイ……」
そう言うと、ロブロイと一緒にお母様へと向かっていく。
お母様の想いから離れてトレーナーになり、お母様からもらった身体からウマ娘へと変わってしまった。
もうここには、あなたの知っている私はいないかもしれない。でも……
80ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:08:32
「お母様、私は、ここにいます」
お母様の身体を優しく、包み込む。
ここに私はいる。たとえ姿かたちが変わっても、確かにここにいるんだ、と……
「ア……───……」
「デザイナーではなくトレーナーになり、あなたから頂いた体はウマ娘のものへと変わってしまいました。ですが……」
蹲っていたお母様の顔を上げて私の目をまっすぐ見つめる。
ここに、私はいると伝えるように
「私は、あなたの子供なんです。例え姿が変わろうとも、あり方が変わろうとも、それは絶対に変わりません」
「……本当、なの……本当に、あなたは、変わっていないの……」
「ええ、お母様……お母様……私は、───は、ここにいます」
お母様の瞳に、光が戻ってくる。
お母様が、しっかりと私自身の目を見てくれている。
私の中の因子ではなく、明確に、私自身を……。
「あの、トレーナーさんのお母さん、私からも、良いですか?」
「ロブロイちゃん……」
ロブロイが前に出てお母様の手を握る。
私と一緒にお母様の目をまっすぐ見つめて、その心に熱を送り込むように……
「あの、私、トレーナーさんがいてくれたから、トレーナーさんが一緒に物語を紡いでくれたから、ここまで来れました」
「きっと、トレーナーさんがいなかったら、私、途中で折れてしまっていたかもしれません。そんな私をずっと支えてくれたんです」
「これからもずっと、ずっとトレーナーさんと一緒にこの物語を紡いでいきます。だから、言わせてください」
「……トレーナーさんを産んでくださり、ありがとうございます。あなたのおかげで、私はトレーナーさんに出会えました」
81ロブトレヒロイン概念21/10/30(土) 18:08:51
まるでそれは、一つの宣言のように。
でもその言葉が、確かにお母様の中で響いている。
「……分かっていました。有馬記念の二人を見て、姿が変わっても、それが他の人から求められてきた姿だとしても、あなたが変わっていないことが……」
お母様が、いつものお母様の姿が、戻ってくる。
「でも、やっぱり怖かったの……自然な顔のなくなったあなたが……姿さえも変わってしまったあなたが……もう、あの子はいないのではないかって」
お母様の瞳は、子供のころに見たあの煌めきが見える……優しく、慈愛のこもった瞳が……
「姿が変わっても、あなたはあなたのままだったのね……いいえ、それどころか、本当のあなた自身に戻れたのね。お帰りなさい……───」
「ええ、ただいま、お母様……」
そう挨拶する二人の眼には大粒の涙が溢れていました。
ずっとため込んできた思いとともに、雨粒は流れていく。
雨が晴れた後にはきっと、素敵な快晴が待っていることでしょう……。
≫98別概念ファルトレ第5話1/821/10/30(土) 18:30:41
“chiarezza. Access all area。”
病院での検査とその結果の学園への提出を終え、家に帰った後。ファル子に電話をかけてみたけれど繋がらなかった。もしかしたら自分のことで気に病ませているのかもしれない。とりあえず念のためメッセージとメールを両方送り、学園からもらったマニュアルと情報開示規則とを照らし合わせながら方々へのメールを作成する。日もすっかり落ち、ようやく一段落したところで、スマートフォンからファル子の新曲が流れる。すぐさま手に取り、通話に出る。
「もしもし♪あなたのウマドル、ファル子だよっ☆検査はどうだった?」
その声音に陰りが無いことに安堵する。
「ええ、やっぱり自我はしっかりしているということで、どうやら私がメインのままウマソウルと重ね合わさっている状態らしいわ。また何かの拍子に因子の方が強まる可能性もあるから、経過観察という処置ではあるけれど」
改めて意識すると、本当に女性らしい喋り方がすらすらと出てきているのを実感する。本当に違和感は無いし、何より表面上の違いで根幹には全く影響が無いから不安もないけれど、ファル子は。
「ふむふむ☆……えーと、まずは一安心、でいいのかな?まあ明日から学園に来れそうなら問題ナシだね♪」
少し空いた間は純粋に理解が遅れただけだろう。なにせ人間がウマ娘になるなんて本来異常事態だ。ちょっと考えただけで感想が出てくるぐらいに慣れているというのはむしろ現状が麻痺している証左ともいえるけれど。一先ず愛バに拒絶されたわけではなさそうだ、という感覚に再度安心する。
「うーんと、それでねトレーナーさん。もちろんそれだけ聞きに電話したんじゃなくて。」
少し、真面目な音色に変わる。悲壮さは感じられない。目を閉じればあの輝きつつも夢を見据えた瞳が思い起こされる。わかった。向き合う時が、来たのだと。
「ええ。何かしら」
「ファル子明日、ボイトレがしたいな♪トレーナーさんのピアノで☆」
99別概念ファルトレ第5話2/821/10/30(土) 18:31:08
ボイスレッスンルームC。中央にスタンドマイクと、それに寄り添うようにグランドピアノが鎮座している。勿論機材の配置は自由ではなのだけれど、御大層なグランドピアノを即日使用可能にしたファル子の申請の手腕には驚かされる。すごい。
声楽練習用の部屋も何種類かあるが、ここは話声の明瞭性が損なわれない程度に残響時間を出来る限り長くした部屋。どちらかというと講義や演奏会などに使用される建築音響の設定に近く、ウイニングライブは屋外ライブ、そうでなくともドーム建築での開催がメインである都合上、そこまで頻繁に使用されない部屋でもある。ファル子も例外ではない、どころか地方でのライブが多い都合上ファル子は特に屋外仮組みのステージで歌うことが多く、こうした環境は縁遠い。
「さっ、はじめよっか☆あっ、トレーナーさんも一緒にやってみようよ♪」
やはり。確かに後々には声楽教官としての講義も再開になるだろうし、この身体での発声には早々に慣れておいた方がいいだろう。メトロノームを揺らす。
1~5度の基本発声、スタッカート発声、1、3度音程切り替え発生、ロングトーン発声。
指は問題なく動く。そういえばこれはウマ娘用の鍵盤の強弱の限界が広いグランドピアノだろうか。発声練習程度の簡単なスケールならそこまで強くタッチすることもないだろうに。
声はかなり変わってしまった。ような気がする。というのもこの声も自分のものである、という感覚もあるから。その証拠に問題なく扱えるどころか自在に歌える。優しく、けれど何処までも貫いていけそうな透明感のある声が、ファル子の元気をそのまま固めたような跳ねる声に重なるのが、心なしか嬉しくて。
「……発声練習は終わったけれど。そういえば今日は何をしたいの?」
「んーとね……じゃあ次の路上ライブのセトリにある、このバラードかな☆」
ファル子がカバンから取り出した楽譜を譜面台にセットする。ウマドルたるものセトリのジャンルも幅広く☆いろんな色を出してこそだよね☆と一念発起したファル子の案で私が試しに書いてみた曲。
「それでね。一回イメージを掴むためにも、トレーナーさんに歌ってみてほしいなって」
遊錘を上げていた腕が止まる。
元はと言えば私の作詞作曲。一度手本を見せるのは確かに私が適任と言えるだろう。
「……わかったわ」
100別概念ファルトレ第5話3/821/10/30(土) 18:31:51
F#マイナーのアルペジオが響く。沈んだ、それでも燻る情熱。
ウマドルらしく、恋の歌。けれど、秘めた思いを諦めきれずに、誰もいない雨の中溢し続ける。
ぽつりぽつり。思いは止まず。諦めたと思っていた。諦めきれなかった。結局蓋をして、輝く貴方の中に勝手に見出して、それで満足しているだけだった。
なのに。知らぬ間に私は変わってしまった。貴方に届く指先を手に入れてしまった。触れたら、全てが変わってしまいそうで。それを拒む私と望む私がいる。
強まる和音。オルタードテンションのドミナントはトニックへ加速する。届けたい。走り出す。濡れるのも、泥にまみれるのも、構わずに。貴方だけを見つめて。きっと視線と焦点は変わらない。変わったのは、その意味。
大サビ。メインコードにぶつかる不協和音。荒れるグリッサンド。目を、閉じて。声を、上げる。ブレスノイズも気にせず。ダメ押しのロングトーン。歌いたい。叫びたい。
アウトロのスモルツァンドを弾くころには、いつの間にか息が上がり、涙が出ていた。
101別概念ファルトレ第5話4/821/10/30(土) 18:32:14
「ねえ、トレーナーさん」
椅子の傍に置いていた水で喉を潤わしながら、手本の歌としては不出来だったなとぼんやり考えていたら、ファル子が問いかけてきた。
「聞いても良いかな…?どうして、トレーナーになったのかって」
白鍵を撫でながら、思いを馳せる。
「ええ」
「私の家は、実は結構いい家でね。親族にはレースで名を上げたウマ娘だったり、ビジネスで一大資産を築き上げた人だったりもいたわ」
「そんな所に生まれたからには、当然色んな習い事に通ったわ。柔道、スイミング、英会話……。まああの頃は男の子だったからラインナップもこんなものね」
「その中で、特に気に入ったのが、ピアノと歌。色んな曲をすらすら覚えて、技法も様々身に着けて。その過程が楽しかった。たまの発表会で拍手をもらって、園や学校でちやほやされて。その評価が嬉しかった。」
「実際、地区・県規模のピアノ・歌唱コンクール、どっちにも出場して、賞をもらったこともあるわ。……そうね、今思えば、あの頃はまだ可愛い思い上がりだったわ。弾きたい、歌いたいって感情は純粋だったと思うし」
「それで、気を良くしてピアノコンクールの支部大会に出て。……打ちのめされる、とまでも行かず。けれども圧倒的差を見せつけられて。結果は2位。地区で改めて賞状ももらったぐらいの快挙ではあったけど、そんなことよりも、私は1位の子の演奏が目に焼き付いて離れなかった。無意識に、あの子と私を比べるようになってしまった。」
「その後も何度もコンクールに出たわ。けれど、その子には勝てなくて。あの子の演奏の魅力も私には理解できてしまって。……ふふ、贅沢な悩みよね。周りからは純粋にその成績が称えられていたのに。現に、この経験を喋れば大抵返ってくるのは『それでもすごいじゃないですか』。人によっては自虐に塗れた自慢に聞こえるでしょうね」
「……その子。後で調べたらプロになっていたのよね。特段驚かなかったわ。“本物”だと思ったから。○○○○って聞いたことあるかしら?その人よ」
102別概念ファルトレ第5話5/821/10/30(土) 18:32:33
「結局。コンクールに出るのはやめてしまったわ。留学の機会もあったけれど、それも無視。どれだけ努力しても、届かないことが怖くて。あの時に見た輝きが目に焼き付いて、私の目を曇らせていた。それでも歌とピアノはやめられなくて。縋るように歌って、弾き続けて。将来も見ずに。中学、高校とろくな部活にも入らずに」
「そんな風なある種空虚とも言える学校生活を終え、大学に進学したある日、偶然トレセンの歌唱講師の募集要項を見かけて。後で気になって課題曲の楽譜を見たの。」
「そこに綴ってあったのは、鮮烈な夢と強烈な意思。正直、私には毒物も同義だったわ。夢を捨てて、意思をすり減らした私には」
「けれど。何かに憑かれるように、ピアノや歌だけじゃなくてトレーナーの勉強までして。大学4年間をふいにして。ふふ、両親にはこっぴどく叱られたわ」
「そうして、この中央トレセン学園で晴れてトレーナーになれて。猛プッシュして歌唱講師の座ももぎ取って。トレーナーとしては下積みをしている中で、あの日あの河川敷で貴方に会った」
「人から見れば順風満帆な人生でしょうね。けれど、その中で私は夢を追うことを、輝きを磨くことに恐れを抱いた。届かないかもしれないと。」
103別概念ファルトレ第5話6/821/10/30(土) 18:32:52
「正直、どうして私がトレーナーになったかも自分では分からなかったわ。眩しすぎる子たち。強力な輝きに呑まれて自分を失っていく子たち。私も味わった、世が言う“素晴らしき経験”という名の落伍が溢れているこの場所に来た理由。貴方に会うまでは。」
「あの日私が捨てたものを。ここで色んな子が捨てているものを。貴方は大事に、他の誰よりも輝かせて人に見せていた。夢を追うことを肯定し、夢を見せることを是認してみせた。」
「次の日貴方の圧に負けて見せてもらった選抜レース、その後にぶつけられた想い。貴方を探して偶然見たスズカのライブ、その後に託された希望。どれも私の価値観を変えるには十分だった。この夢を支えたい。この輝きを照らしたい」
「その時に。この学園に入って見た砂の中にも夢があると気づいて。それを伝えたくてあなたを連れて行って。あなたは砂に摩天楼を描いて見せて。今も道の途中だけど、貴方の全てを支えたいと思っているわ」
「だから。一昨日にあれだけ走って。今こうして歌を歌って。湧き上がってくるこの感情にどういう名前を付ければいいのか分からないの。この想いは、この輝きはきっと貴方の後ろに立つには邪魔なもの。けれど、私の中のこの娘の気持ちも痛いほどに理解できるし、この娘のためにも何かをしてあげたい。貴方の夢を照らすのか。私の思いを晒すのか。どれが正しいのか……今は分からなくて」
「……怖いの」
104別概念ファルトレ第5話7/821/10/30(土) 18:33:15
沈黙が部屋を包む。それでも私の中の感情は依然として渦を巻く。私の言葉が変わる事には抵抗が無い。あの時見せられた感情も嫌悪感は無い。けれど、今こうして胸中を這いずる想いはどうしていいのか分からない。これは私がかつて捨てたはずのもの。きっとどこまでも私のものでもあるのだろうけれど、それは今必要なものなのだろうか。
しばらくして。コーダの無い繰り返しに思考が沈みそうになった時に。輝きが差し込められた。
「トレーナーさん。やっぱり、ウマドルになろうよ」
この姿になって最初に為された提案。けれどその声音はあの日のような切迫したものではなくて。見据えられた目に、思わず囚われる。
「理由ならいくらでも挙げられるよ。まず一つはダートウマドルライバルの必要性。今のダートは芝砂関係ナシのウララちゃんとデジタルちゃんを除けば、こういうのも何だけど私一強。あの子たちが芝に行けばそっちが注目される現状を見れば、他の子たちも頑張っているけれど、私に対して強力なウマドルライバルが必要」
「そしてトレーナーさんに能力の上でのウマドル適性があること。元々ここで歌の先生もしてて、トレーナーな関係上ダンスもある程度できる。元々運動神経も良いんだし尚更。そして今こうしてウマ娘になって、私についていけるぐらいの走りができるようになってる。あと文句なしにかわいい」
「さらにトレーナーさんは他の人には出来ないぐらいに私のウマドルの理想に寄り添える。三年間一緒に過ごして。辛いことも苦しいこともいっぱい一緒に乗り越えてきた。そんな中で私は私のウマドル像を、トレーナーさんに見せられたと思うし、何なら一緒に作り上げてきたから」
「他にもいっぱい上げられる。色んな理由。色んな外付けの動機。でも。一番重要なのは。最初に私が無意識に見つけて、昨日気づいて、さっきトレーナーさんの話を聞いて確信して、今あなたに伝えたいこと」
「あなたはもう一度輝きたがってる」
105別概念ファルトレ第5話8/821/10/30(土) 18:33:46
何かが、かちりとはまった気がした。ファル子は今、私の目を見て、私の想いに名前を付け、私の願いを肯定した。
「あなたは、どっちも、夢を追いたがっている。あなたは歌いたくて、あなたは走りたくて。そして、それを叶えられるのがウマドル」
「そして、ウマドルになるのは、私を支えるのと同じだよ?ファル子のライバルになって一緒にウマドルの高みを目指す」
「それに、トレーナーをやりながらウマドルもやっちゃいけないなんて決められてないよ。きっと、あなたならファル子のトレーナーをしながら、ファル子と一緒に走るウマドルを目指すこともできる」
途轍もなく遙遠、途方もなく遼遠。無理難題で、机上の空論のようにも聞こえる。けれど、目の前にいるのは、3年目のG1を全て勝利すると宣言し、それを見事達成しダートをかつてないほどの活気に溢れさせたウマドルだ。人にとっては荒唐無稽な夢物語を、諦めずに現実にできるウマ娘だ。そのウマ娘が、私を自分のトレーナーとして信じて、夢を託してくれている。あの日の、私と同じように。
「あっ、ならファル子もトレーナーになっちゃおっかな☆スズカちゃんも目指してるらしいし!」
「……スズカは大丈夫でしょうけれど、ファル子にトレーナーの勉強ができるかしら……」
「えぇ!?もう甘く見ないで!!ウマドルのためなら何のそのだよ!」
「本当かしら?だったら普段の授業も貴方というウマドルの為にきちんと受けてほしいものだけれど」
「うぐぐぐぐ……それとこれとはちょっと話が違うというか……」
頭を抱えるファル子を他所に、もう一度考える。
ウマドルになる。彼女は、私にもう一度夢を追う権利があると言った。その覚悟は、私には。
私の様子を見ていたファルコは、少し微笑んで、もう一つ提案してみた。
「ね、もう一回、ファル子と一緒に走ってみよ?ただし……」
≫119ガンギマリ頭スズトレ21/10/30(土) 19:01:00
「それでは90分、お楽しみください。」
受付の店員さんの声とともに、二人のウマ娘がスイーツバイキングに足を踏み入れる。
弱褐色芦毛のスラッとしたウマ娘、スズトレと濡羽色の小さなウマ娘、ロブトレである。
スイーツが好きという共通点を持つ私たちは休日の今日、少しだけ遠出し人気のスイーツバイキングを訪れていた。
「改めてだけど誘ってくれてありがとね、ロブトレ。前から目をつけてはいたんだけれど、1人だと食べすぎるかなーって躊躇してて。」
「他に人がいると抑えれたりしますからね。私もスズトレさんにはたくさんお世話になってるので、お誘いできてよかったです。」
軽くやり取りを交わしながら空いてる席を探すと、1つのボックス席を発見する。
「ロブトレ、「あそこにしよ」う…うん?」
正面からの声と言うことが重なる。
一旦席から目を離し正面を向くと、若干黄色っぽい栃栗毛と紫の目をしたウマ娘。
「お、兄者じゃん!」
「えっ、リィ!?」
私の妹、アーリィビートだった。
「アーリィビート25歳、スズトレのシスターってやつですね。はじめまして!!」
「ゼンノロブロイ担当トレーナー、ロブトレです。今日はよろしくお願いしますね、アーリィさん。」
三人で見つけたボックス席を取り、軽く机に食べるものを並べた後に初対面である私とアーリィさんが自己紹介をします。
「…それで、リィはなんでいるわけ?」
「今月の会社に顔出さないといけない日が今日だったんよ。んで終わったーネタ探しにブラブラしよーってやってたらここを見つけた、それだけ。」
「いつもは会社行かれないんですか?」
「はい。衣服のデザイナーを仕事に持ってるんですが、両親の農業も手伝いたくて実家暮らしのオンライン形式でやってるのです。」
デザイナー…!!趣味でドレスを作っているものとしては聞き逃せない言葉です。
120ガンギマリ頭スズトレ21/10/30(土) 19:01:21
「あの、アーリィさん。お仕事の話詳しく聞かせてもらえませんか?私服を作るのが大好きで…!」
「およ、マジですか。ぶっちゃけあたしだいぶ変わってるからあまり参考にならないかもですけどもよろしいですかね?」
「大丈夫です、お願いします!」
「…そこまで言われちゃあ仕方ない!道半ばの半端者ですが、色々コツっぽい何か話しましょう!!」
「2人とも、話に熱中しすぎて食べることも忘れないようにねー…はむ。」
そんなスズトレさんの声も他所に、私とアーリィさんの話はどんどん弾みます。
そして会話がしばらく続いて、スズトレさんが一旦スイーツを集めに行った頃。
「あ、そういえば聞きたいことが一つあったの思い出したんですけどいいですか?」
「はい、なんでしょうか。いっぱい教えてもらったので私に分かることならお答えします。」
「ロブロイちゃんの天皇賞秋、テレビで見させてもらいました。で、その時に引っかかったんですけど…ロブトレさんも勝負服らしきもの、来てませんでした?」
私の言葉を受けて投げられた問いはロブロイがGIに出る時に私が着用してる服装について。
「あれは私がロブロイに寄り添う者、支える者という思いを込めて自作したものなのです。当然、プロの方々が作る本物には遠く及ばない出来ですが…」
「…いいや、あの勝負服が本物に劣るなんて、そんな事ないです。」
「アーリィさん?」
121ガンギマリ頭スズトレ21/10/30(土) 19:01:47
「…GIという大舞台に立つ資格を得たものに与えられる唯一無二の証が勝負服です。その全てには等しく、強い思いが込められている。
あたしは初めてレースを見た時にその思いに魅せられました。勝負服と、そこに込めた思いで誰かの後押しをしたくてこの道を選んだんです。
…あの日見たあなたの勝負服に、私は決して他と見劣りしないほどの思いを見ました。だから…例え自作でも、細かなところでプロに及ばなかったとしても。ロブトレさんのアレは、間違いなく勝負服です。」
そう、アーリィさんが熱く語ります。
…ああ、今わかりました。ロブロイの勝利への欲求、スズカさんの景色への思い。そういったウマ娘の多くが何かへと向ける情熱を、アーリィさんは勝負服に抱いているのだと。
「ありがとうございます、アーリィさん。そう言ってもらえるととても嬉しいです。
いつか携われるといいですね、勝負服のデザイン。」
「はい!あと少しのとこまでは来てるので頑張ります。って言ってもこれがなかなか難しいんですが…」
「そうなのですか?」
苦笑いするアーリィさんに少し驚く。先程写真で今までデザインされた服を見せてもらいましたが、どれも素晴らしい出来でした。そんなアーリィさんが苦戦するとは…一体、どんな内容なのでしょう?
「ですです。勝負服をデザインしてみろ、って内容自体はシンプルなんですよ。ただ明確に着せたい相手がいないせいでインスピレーションがあと一歩足らず…すでに持ってる娘たちはそれが1番だし…」
「なるほど…それはつらいですね…」
アーリィさんにとっての勝負服は、着る誰かへの思いを乗せたこの世に二つとないもの。だけどアーリィさんにはその誰かというピースが欠けてしまっている。
何か、力になれないだろうか。レースを走るものではないからこそできる何かがきっと──
「──思いつきました!アーリィさん、一つだけ私に考えがあります!!」
122ガンギマリ頭スズトレ21/10/30(土) 19:02:12
「ふう、少しだけ遅くなっちゃったなぁ。」
食べきってるだろう二人の分もトレーに乗せながら、ゆっくり席へと向かう。
正直、最初は二人にしないように意識していたけど、服の事で完全に意気投合してたし大丈夫だろう。年齢が1歳しか変わらないのもよかったかもしれない。
「二人ともおまた、せ…」
「とりあえずやっぱり許可はいるよね。金とか一切取る気はないけど唯一無二の服を作らせてもらうわけだし!」
「そうですね!スズトレさんにも手伝ってもらってなるべく早めに許可を取れるようにしたいと思います!!」
…思った以上に盛り上がってる、というか…なんか話の内容がすごい方向に行ってない?リィの敬語も抜けてるし。
「あ、おかえり兄ぃ!!ロブトレさんに合わせてくれてありがとう!!!!」
「あ、うん…だけど今何してるの…?」
「今は勝負応援服計画について詳細を話し合ってるところですね!まだまだ詰めれるところがいっぱいなので!!」
「いやちょっと待って。勝負応援服??」
「えー分かんないのニキィ。前に話したしょ、勝負服デザイナーになるための最終課題。」
「え、うん…でもそこからなんで応援なんて…?」
「そこは私の発案です!ウマ娘化現象に巻き込まれたトレーナーの方々から希望者を募り、私のように担当を応援する際に着る勝負服…"勝負応援服"を作る!!これならアーリィさんを助けられるのではないかと!!」
「な、なるほど…?」
二人の熱量に圧倒されるけど、実際大正解だとは思う。私以外にメイクデビューする人も出てきたとはいえ、大抵のトレーナーはデビューする予定なんてないから勝負服を得ることは無い。アーリィ側は経験をつめて、トレーナー側は応援用としての服が手に入る、両者にお得な状態だから。
ただ…やっぱりちょっと熱くなりすぎてない??大丈夫??
「にぃにも力貸して!!二人じゃ絶対アラ出るから!!」
「当然これから話を聞かなきゃいけない人はたくさんいますが、説明のためにも下地は大事なんです!!あ、予算はどうしましょうか!?」
「私がたんまり溜め込んでる!!だからどっちかって言うと素材の入手手段が──」
「…時間、無制限じゃないんだからね…?」
結局、時間ギリギリまで討論は続いた。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part347【TSトレ】
≫62二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:53:41
では
VRウマレーター内にて
「…ここがゲームの中か」
「ふむ、思ったよりリアルね…」
「流石彼女のトレーナーだけありますわ…」
「よく用意したよね…」
そう口々に話すのはテイトレ、キタトレ、マクトレ、サトトレだった。
四人はVRウマレーターを利用しているが、その理由は少し前に遡る。
担当の話で四人で集まって話し合っていたところに、乱入する人影が。
『よお!お前ら!探検家のゴルトレちゃんだぜ!』
『…どうしましたのいきなり。』
『いやさ、ちょっと古代の遺跡を探検してきてぇと思った訳よ。んで折角だから練習しようと思ってな。』
『遺跡探検の練習って何…?』
『そこで閃いたのがVRって訳よ!てことで適当に作ってみたソフトを入れたVRウマレーターを用意したのさ!』
『よく作ったわねそんなの…』
『てことでデバックがてらやってみねえか?』『すごくいきなりだな…』
そう言われた四人は顔を見合わせてコソコソ話す。
『…どうする?やってみるか?』
『大丈夫なのかなそれ?』
『彼女なら不味いものは作らないはずですわ…』『となると…やって見ましょうか。』
65二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:54:05
ということで遺跡探検の練習(?)をやっているのが今の状況だった。
「とりあえず進もうか、まずは…」
「地図的にはこの扉の先かな?なんか重そう。」
「そうみたいですわね…しかし閉まってますわ、どうすれば…」
「ちょっと待って…ふむ、ここかしら?押し込んで…」
ガタン! ガチャン!
扉から音が響き、押してみると開くようになった。
「おお…開いたな。」
「分かりやすい鍵の仕掛けね、映画かしら?」
「何はともあれ先に進もっか。」
「私が前に行きますわ。」
そして一行はマクトレが先頭に立って歩き出す。
「…狭くないか?てか通れるのかこの通路。」
「よつん這いでないと通れないわね…」
狭い通路を通り
「深いなぁ…それに暗い…」
「踏み外さないよう気をつけてくださいまし、どこまで落ちるか分かりませんわ。」
縦穴をゆっくりと降りていく。
降りきって並んだ四人の前には3つの通路が。
通路の入口にはいくつもの像が立ち、中央の一つだけは閉じていた。
像の輝く目の部分が中央の像だけがない。
「ねえキタトレ、これってもしかして…」
「…どう考えてもこの先にあるわね。」
「どうする、二手に別れてみるか?」
「早いことクリアしたいですしそうしましょう。私とサトトレ、キタトレとテイトレで良いですわね?」
…残る三人は頷いた。
二手に別れ、別の通路を歩いていく。
66二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:54:43
マクトレとサトトレのペアはやけに傾いている気がする通路を突き進むと、広い部屋に辿り着く。
そこはぽっかりと中央が空いた部屋で、その真ん中には輝く目と数段盛り上がった台座が。
「あれだよね、でも…」
「届くか怪しいですわね…しかし取らなければいけませんわ」
「どうするの?落っこちること覚悟で取りにいく?」
「いいえ、そんなことはしませんわ。…私を信じてくださいまし」
するとマクトレは穴の縁に立つと手を前で組み、身構える。
それを見たサトトレはそっと頷いた。そして駆け出す。
「1、2、3!」「届け!」
サトトレは組んだ手を踏み台にして思い切り踏み切る。
マクトレも合わせて腕を振り上げ、高く遠くへと彼女を飛ばした。
狙い通り台座に届いたサトトレは、輝く目を取ると飛んで戻ってくる。
着地先で受け止めたマクトレと、二人でウィンクしあった。
67二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:54:46
テイトレとキタトレのペアはえらく曲がった通路を進み、一本道の奥にある部屋についた。
…その部屋は何故か篝火がおいてある部屋で、火の灯された石像がいくつも並んだ不思議な部屋だった。
「…どうやって火が灯されてるんだ…?」
「…多分考えてはいけないと思うわ。しかし…」
二人で部屋の奥を見る。奥の小さな台座には輝く目が。
だが、その前には石像が向かいあっており、その石像にはいかにもな穴が空いていた。
「俺の予想通りならこれ、炎が出てくるとかだよな。」
「そうね、私も同じ意見よ。となると…」
「この仕掛けを解くしかないな…」
(しかし、この仕掛けどうなって…ん?)
「…なんだこれ?」
絵のようなものが描かれた石板を拾った。その絵には松明を持ち、火の灯った石像を触る姿が描かれていた。
「…それは?」
「見つけたんだ、もしかして…」
「…私が持っておくわ。それと、その石像に触ってみてくれないかしら?」
「ああ、分かった。」
彼女が言ったとおり火の灯った石像に触れる、すると…
ゴゴゴゴゴゴ…!
「石像が動いた…!」
「ビンゴ!これで取りにいけるわ」
その後、篝火から火を石像に灯し、石像を動かしてどけて、輝く目を手にいれた。
…テイトレとキタトレはハイタッチを交わした。
68二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:55:48
戻ってきた私達は目をはめ込むと、開かれた真ん中の道を真っすぐに進み開かれた部屋へ。
その部屋からは長い一本道が伸びていた。
「この先が地図で示された部屋ですわね…」
「となるとこれで終わりかな?」
「よし、なら早速…」
「ちょっと待って頂戴、確認したいことがあるわ」
キタトレはテイトレを引き止めると、足元に転がる石をほり投げる。
投げられた石は通路を放物線を描いて飛び…
ジュッ!
突然、何かによって焼かれた。
「ひぃ…」
「石が焼けるって、通ったら勿論…」
「焼き切られるわね。原因は多分光よ。」
「レーザーみたいなものですわね…肉眼では見えませんわ。」
「光なら乱反射させれば分かるかもだけど…」
「あまりそれに使えるものはないわね」
「つまり何とか通り道を見つけないとな。」「この壁画が参考になると思いますわ。」
マクトレが指した壁画を全員で見る。そこには…
「頭を下げる人…?」
「『正しき祈りを捧げるものが、神の威光に焼かれぬ』ってさっきの光のことか…?」
「『5拍を刻み、礼をする。3度繰り返せ』ですか…何故祈るんですの…?」
「…閃いたわ、賭けてみようじゃない。」
そう言ったキタトレは通路に入り込んでいく。
下には恐らく通ろうとしたものの足跡があり、それをなぞるように歩く。
(1…2…3…4…5! ここ!)
拍を刻みながら5歩目のタイミングで頭を下げ、礼をする。
チリっという音ともに先程まで頭や首があった場所にあった髪が焼き切られる。
その光景を見ていた他の三人は
69二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:56:25
「なるほどね、そういうつくりな訳なんだ。」
「頭を下げると避けられるのか…」
「つまり私達も真似すれば良い訳ですわ。」
通路を通り抜けたキタトレから
「これよ、貴方達もこれで来れるわ。」
…順に三人とも礼をしながら通り抜けた。
通り抜けた後、大広間と出口に繋がっているであろう通り道を見つけた。
漁ってみたが大広間には特に何もなかったため、今は四人で通り道を歩いていた。
「何もありませんでしたわ…」
「まあそういうものなんじゃないかな…」
「でもこれで終わりか、後は出るだけだな」
「そうね、後は歩いて…」
ウマ娘の敏感な耳が、後ろから聞こえる物音を捉えた。
「ねえ、これ映画とかだとさ…」
「ああ、もしかしなくとも…」
恐る恐る四人は振り返る、視線の先には…
ゴロゴロゴロゴロ!!!
「やっぱりですわ!」
「さっさと逃げるわよ!」
巨大な岩が転がってくる。
ウマ娘として出せる全速力で道を駆け抜け、出口に急ぐ四人。
随分と走ってきた所で…
「嘘だろ…」
「塞がれてるのは想定外だわ…」
…そこそこのサイズのひび割れた石が道を塞いでいた。
「このままだと潰される…!?」
「最終手段ですわ!蹴り壊しますわよ!」
マクトレがそう叫び、他の三人も咄嗟に合わせて動く。
「「「「せーの!」」」」
70二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:56:47
四人で思い切り蹴り飛ばす。
ボロボロになっていた石は粉砕され、通れるように。
そしてその先の光に飛び込み…
…VR装置を外した私達は向かいあった。
「大変だったね…」
「なんてもん作ってるんですのあの人…」
「でも楽しかったじゃない?」
「そうだな、とっても楽しかったよ」
四人で顔を見合わせ、思わず笑う。
ーーー仲がより深まった気がした。
駄文長文失礼しました
担当同士で絡みがある四人でのVR体験です。
ぶっちゃけこういうのが見たかっただけです。
いいよな!書いたっていいよな!?
ということで私は創作してきます…(wiki更新?ハハッ!)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part348【TSトレ】
≫27侘助21/10/30(土) 22:12:01
「向き合う過去が!もう!ないんだよ!!!」
堰を切ったように流れ出す。
今までずっと隠していた思いが
濁流のように溢れ出てくる。
「名前も戸籍も繋がりも!!
全部あの時に消しちまったんだよ!!
ドーベルのためだとか言って!!
本当は自分が逃げだしたかっただけなのに!!」
涙を堪えて、歯を食いしばる。
消えない過去を無理に消した結果がこれだ。
向き合うモノを、完全に見失った。
もう、過去の自分など欠片も残っちゃいない。
「もう……誰もオレのことなんか……
覚えてるハズないよ……」
「覚えてるよ」
「みんな、絶対許してくれない……」
「もう許されてる」
「……逃げてばっかでも…………
オレ……生きてて……いいのかなあ……!!」
水面に雫が、落ちていく。
28侘助21/10/30(土) 22:12:25
「……私は、あなたに生きててほしいよ」
「えっ……」
困ったように笑う彼女。
「俺の、目標だった。憧れだった。
ずっと、届かないと思ってた」
ポツリポツリと、スペトレは口を開く。
「がんばったんだよ、俺。
お前に追いつけるように。必死でな。」
「なんで……」
「お前がトレーナーを目指してるって
聞いたから、この世界に飛び込んだんだ。
お前はお前が思うより、
とってもすごいヤツなんだよ」
オレが、誰かの光に。
誰かを助けることができていたのか。
心に刺さっていたトゲが
じんわりと、溶けていく。
「なんか、落ち着いたわ……
取り乱して、すまなかった」
浴槽の中、頭を下げる。「…………」
「……えっ、ちょ、ちょっと待って!?
顔上げて!!?死んじゃいますよ!?」
「ぼぶぼぼびばびばぼぼ」
これが今オレが出来る精一杯だ。
目の前の恩人には、感謝しきれない。
「ごぼぼぼぼぼぼぼぼ」
29侘助21/10/30(土) 22:12:48
「アイス食べます?私のお気に入りアイス」
「おっ、メロンのあれじゃん。
まだ売ってたんだあれ……」
風呂から上がってドライヤーをかけ合う。
コイツ髪乾かすのうめえな……
「あむ……、!!」
「どうです私のアイスは!!」
「お前が作ったんじゃねえだろうが!!!」
ついツッコミをいれてしまう。
あれ、この感じ。
「やっといつものドベトレさんに
戻りましたね……はあ疲れた……」
「そんなにやばかったかオレ?
隠してたつもりだったんだが」
「バレバレですよバレバレ。
……さてはウソつけないタイプですね?」
んぐっ。図星を突かれる。そんなあ。
20侘助21/10/30(土) 22:13:13
「キレイな白髪……、と、あれ……?
なんですコレ……?」
前髪が引っ張られる。痛い痛い。
「いってて……ああ、気づいた?
ココの部分的だけちょっとな」
オレは額の少し上を指で叩く。
「黒い流星……?変な感じですね」
むむむと考え込むスペトレ。
百面相もかくやという感じだ。
「最近、色が着いたんだ。
それも本格化の同じタイミングでな」
「前に言ってましたねそういえば!!
気づかなかった〜!!」
「まあ、一点だけ真っ黒なのもな、
最近は一日中ずっと髪上げてたし」
折れグセがついた白髪を撫でる。
「……これからは何も隠さないで生きてく。
さっきので踏ん切りがついた。
だからこの髪も隠さない。」
そう言って櫛を入れていく。
「でも、かっこいいと思いますよ。私」
「にしし!!だろ!!!」
「ちょっと厨二臭いですけど」
「」
31侘助21/10/30(土) 22:13:40
ほの明るい居間にて向かい合う。
テーブルの上にあるのは、大量の書類。
「あの日、あなたが姿を消した後に
色々あったんですよ」
渡される一枚のプリント。
「これは……」文書に目を通す。
一連の流れから、一つの答えが浮かび上がる。
「無罪……判決」
オレがいなかった五年もの間に
たくさんの人が助けてくれたらしい。
「町の人達が署名してくれたんです。
当時はあなたが死んだと思われていたのも
あって、みんな必死だったんですよ?」
少しづつ思いだす過去の景色。
モノクロの記憶が色づいていく。
「拳銃所持と誘拐の複数前科持ち。
そして現場の状況とあの娘の証言から
正当防衛が認められたんです。」
「ドーベルが……、みんな……!!」
感謝してもしきれない。
自分が勝手に切り離した縁が
切れずに残っていた。
自分とみんなを結んでくれていた。
32侘助21/10/30(土) 22:14:09
「じゃあ、脅迫の方は?!」
「同級生にいたらしいんです、彼らの親族が」
「……だから分かったのか……」
「ずっと憎んでましたよ、あなたのこと」
思い出したくない過去を、思い返すように、
彼女は苦悶の表情を浮かべる。
「ですが、これは法で裁かれるべきだと
私は思います。キタトレとサトトレさん
あたりに聞けば分かるかもしれません。」
「……そっか、そうなのかもな」
少しづつ、受け入れていく。
彼女から聞く思い出話は
時に辛く、時に楽しかったあの日々を
思い出させる。
過去を思い出す度に、
色が、音が、感触が、蘇る。
「今日はこれぐらいにしときましょうか?」
オレの顔を、覗くスペトレ。
少し、疲れが見えてしまったか。
「辛くは……、いや、正直、キツい。
でも、もう逃げないって決めたんだ。
だから続けてくれ、スペトレ」
嘘はつかない。オレ自身の本心を伝える。
「まあドベトレさん嘘つく時、
尻尾が回りますからね、簡単です」
「え」
33侘助21/10/30(土) 22:14:32
翌朝。
結局、思い出話は夜を超え
朝日に気づいたのは、午前5時のこと。
「……もう朝ですね、ふわあ〜」
「やっぱ一日で語るのは無理だって……!!
ま、楽しかったからいっか」
二人で9時間近く話をした。
同窓会なら三次会の時間だ。
「んんん〜!!朝ご飯、食べてきますか?」
「いやいらな……」
「ドベトレさん」
「……お腹、空きました」
「はい、少し待っててくださいね」
なんだろうか。
母親にしつけられてるみたいだ。
経験はないが、なんだかそう思う。
「オレも手伝わせてくれ!!
本心だから!!この通り!!」
「いや頭さげなくてもいいですって!!
それじゃ……ミネストローネ作ってください!」
「……がんばります」
いきなりハードル高えなコイツ……
やっぱ昨日の根に持ってんのかなあ……
「昨日のことは気にしないでください
……いいですね?」
「はい、もう気にしません!!
ぜっっったいに気にしません!!」
34侘助21/10/30(土) 22:14:57
「んじゃありがとなスペトレ」
「私はちょっとこの状態でいくと……
なんか変な性癖持ってるって思われそうなので」
二人とも苦笑する。
許してくれた優しさに報いるためにも
ズルズルひきずっててはいけないのだ。
「あ!!そうだそうだ、
お土産があるんです!!」
本棚をガサゴソし出す。
「あんま時間ねえんだけどー」
「あった!!これが『お土産』です!!」
オレに渡されたのは、
「高校の卒アルじゃねえか……!!」
「まあ私のですけどね、よかったらどうぞ!」
5年前の過去の記録。失ったハズの歴史。
「いやいや!!
さすがに貰えるわけねえだろうが!!!」
人の物は流石にまずい。
オレの信義的にもちょっとなあ……。
「……ゲマス……」
「え?」
「 あ げ ま す ! ! ! ! ! !」
「えええええええ!!!!???」
35侘助21/10/30(土) 22:15:30
決して切れぬその円環
決して終わらぬその旅路
其れは消せない罪のよう
其れは断てない過去のよう
幻視するは死の鎖
心を縛るは罪の枷
それでも歩みを止めぬ者
孤独を背負いて進む者
傷にまみれた彼は視る
其れは縛りしモノでなく
心を結ぶモノであると
永久に続く人の愛
繋いで結びし神の愛
罪過の枷を引きちぎり
過去の『○○』は開展し
『終の白猟』へ進化する
最終章「∞〜MEVIUS〜」 了
≫61二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 22:32:27
フクトレ『今日のゲームは土鬼魂デースデッカイカタマリツクッテいくデス(王様の真似)』
スズトレ「ごめん元ネタ知らないから採点できないわよ。今日はよろしくねネイトレ」
マルトレ「ネイトレよろしく〜」
ネイトレ「今日はよろしくお願いします」
フクトレ『今日はネイチャっぽいものを巻き込んでいく特殊MODを公式に許可を取って実装デス、ネイトレにふさわしいお題デス』
マルトレ「ネイトレのネイチャ判定が光るな……」
スズトレ「どれくらいネイチャになるのかしら……」
ネイトレ「すいませんこれ公開処刑じゃありませんか?」
マルトレ「いやいや、ちゃんとマルゼンスキーっぽい塊とスズカっぽい塊も作るから」
スズトレ「そうそう、気楽に行きましょう」
フクトレ(実は隣でネイチャがリアルタイムで見学してるのを言うべきか?)
マルトレ「結構固まり大きくなったな。人も巻き込めそうだ」
スズトレ「あ、ネイチャがいる……」
ネイトレ「ネイチャ待って……! 逃げないであなたが必要なの! やった! ネイチャを押し倒して取り込めました!」
スズトレ「言い方」
フクトレ『さあ判定は〜〜〜パーフェクトネイチャ塊だこれは! さあ空に打ち上げてネイチャ座を作ろう』
ナイスネイチャ『これで私も晴れて星座ってわけでぇ〜ありがとうねぇ〜』
ネイトレ「いつから見てたのネイチャ!?」
≫70チヨノオートレSS21/10/30(土) 22:38:40
日本ダービーの数日後
あの規格外の激走の影響か、チヨノオーさんは足を痛めた
幸いにも屈腱炎などの致命的な故障ではなかったが
チヨノオーさんが怪我をしたという結果自体が私を打ちのめしている
チヨノオーさんは私の指導の凄さを証明するために走ったと言った
それは、私が彼女を間接的に怪我に追いやったということで…
思考がネガティブな方ばかりに流れていく
「ちょっと付き合ってください」
その様子を見かねたのか、チヨノオーさんは私をとある場所に連れていった
行先は東京レース場
今日は休日だったので、レースを楽しんだりグルメを堪能したりした
一通りレース場を回り終えると、チヨノオーさんは私を人気のない場所に引っ張っていく
チヨノオーさんがこちらを振り返った
「トレーナーさん、私レースが好きです」
チヨノオーさんは語る
沢山の友人達と切磋琢磨し、レースで競う事
そしてまだ見ぬ景色を味わう事
それが酷く楽しいのだと
だから、この位の怪我なんて大したことないのだと
そういってほほ笑む彼女を見て、改めて己の未熟さを恥じる
「チヨノオーさんは凄いです。それに比べて私は結局自分の事ばっかりで…指導者失格ですね…」
「あ~!トレーナーさんたら、また自分の事卑下するんですから」
72チヨノオートレSS21/10/30(土) 22:39:29
私の弱気な言葉にむくれているチヨノオーさん
そうじゃない、そういうことじゃないんだと
私の指導手腕は凄くて、そのおかげで今の私があるのだと語る
問題なのは心構えの方
それじゃあ前に進めない、過去に縋るのでは未来を目指せない
オーバーな身振り手振りで語るチヨノオーさん。若干気圧される私
熱弁はヒートアップし、ついに想定外の言葉が放たれた
「亡くなったご家族や友人は、そんなトレーナーさんを見たらどう思うでしょう」
「―――ッ!?なぜそれを…!」
「すいません。ダストレさんに聞きました。」
チヨノオーさんは私の過去に触れたことに謝った
デリカシーと配慮に欠けた一言
決して誉められたことではないと理解しつつも、譲れないことがあるという
「話を聞くに、トレーナーさんがそんな風に思い悩むことその方達は望んではいない筈です」
そう言われてハッとなった
父と母は、ひたすら思う方向に突き進む私をたしなめつつも、成長を見守ってくれていた
友人達は、一緒に馬鹿やったりしながらも、つらい時は励ましてくれた
彼ら彼女らは確かにそういう性分だった
73チヨノオートレSS21/10/30(土) 22:39:54
「人の心に土足で入るなんて、私悪い子ですね…」
言いたい事を言い終えて、しゅんとなるチヨノオーさん
でも、私をなんとかしたいという熱意は伝わって来たし、私は勇気を貰えた
今日一日は、実りのある一日であるとはっきり言える
これではどちらが指導者か分からないなと心の中で自嘲する
「いえ、思いは伝わりました。くよくよするのはやめにします」
「トレーナーさん…!」
「ただし!リハビリと調整をみっちりやるので覚悟しててください」
「は、はい!!」
この日を境に、私は弱気な考えをするのをやめた
ああ、空から見てるかもしれない皆に私のうつむいた姿を見せたくないな
心からそう思えた
≫159二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 23:40:59
「……ま、まあいつぞや絞ったりなんかしちゃった時にトレーナーさんのは触ったしね?別に今更だよね?」
「……私、あの時ネイチャに泣きながら胸をビンタされたの忘れてないからね」
「若気ノ至リダッタンデス……」
「あれ、ちょっと待って。レギュレーション変更がで示されて……」
「……ちょっと待ってよトレーナーさん。あたしらの場合どうしても無理ってわけじゃないじゃん」
「だから素直に嫁入り前の身体を明け渡せと……?」
「あたしも!それ言ったらあたしも嫁入り前!」
「ネイチャは旦那さんだから。もう嫁に入るとかいう次元じゃないから」
「あたしもウェディングドレス着たかったんだけど!?あの、じりじり近づいてこないで……!」
「……ネイチャ、いや?」
「本気でイヤかって言われると、たしかに判断に困るところではあるんですけど……!!」
「……じゃあ、やっぱり私のでいいよ」
「な、なんで?」
「ネイチャが嫌がってるのに無理矢理なんてしたら、ちょっと立ち直れないかもしれないから。……それにほら、さっきも言った通り二回目だし」
「……あの」
「なーに?」
「……優しくします」
「……お願いね。本当にどうなっているのこの学園」
「いやもう本当にね……」
その後、ネイチャが服の上からふよふよ揉んだりふにふにさすったりしていたら3分後に部屋の扉は開いた。
ネイトレは情けなさからか目頭が熱くなったが、なんとか涙がこぼれずに済んだ。
了
≫182二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 00:08:37
「ということでルドルフ!ハッピーハロウィン!あとトリックオアトリート!おかしくれなきゃいたずらするよ!」
背中のぱっくり開いたウェディングドレス仮装をして現れたトレーナー君の奇襲攻撃。
因みに私は吸血鬼……もとい男物のタキシードである。
「……ほう、困った……生憎持ち合わせのお菓子がない。ここは一旦悪戯で済ませ」
と言っている途中に唇を奪われる。
「……"いたずら"しちゃうね?」
「……まだ日中」
「問答無用!」
────この後引き剥がしてデコピンして説教した。
────"いたずら"は夜になってからルドルフがした。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part349【TSトレ】
≫5二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 00:33:43
たておつハロウィンぶん投げ
「トリックオアトリート、お兄ちゃん♪ ……お菓子かいたずらか、どっちを選ぶ?」
「はいクッキー。勿論手作りだよお姉ちゃん」
「んー……、まあ手作りならいっか、うん。じゃあ今年はトリートの方……」
「ふふふ……」
「え、お兄ちゃん?」
「トリックオアトリートだよお姉ちゃん! 今年は私もこっそり仮装してたりするんだなぁ! まあ小悪魔風の衣装お姉ちゃんと完全に被ってたけど!」バサッ
「……へぇー?」
「さあお姉ちゃん! どっちに……!」
「アーオカシモッテナイナーコレハタイヘンダーイタズラサレチャウナー。……ちらり」
「いやクッキー持ってるしお姉ちゃんこういう日は絶対こっそりお菓子常備して……え! ちょっとそんな一気食いしなくても……!? ああ……」
「……お兄ちゃん、トリートの方を選ばせようとしたでしょ?」
「えっ」
「お兄ちゃん、たまには反撃してみたくなったけど、でもやっぱ悪戯は何したらいいか分からないし、その方面だと結局どうあがいてもカレンに勝てないからってこうしたんでしょ? カレン、そういうのはあんまり良くないと思うなぁ。……うるうる」
「ご、ごめんなさい……」
「……まああんまり意地悪するのも可哀想だよね。じゃ、悪戯してね? お兄ちゃん♪」
「え?」
「カレン、どんな悪戯されちゃうのかなー?」
「…え?」
「だってカレン、お兄ちゃんに最初声をかけた時、もしお菓子が無かったり市販品のお菓子だったらいたずらするつもりだったもん。いたずらするならされる覚悟は持ってなきゃ失礼だもんね♪ 勿論お兄ちゃんも……その覚悟に答えてくれるだろうし」
「え!?」
「さぁお兄ちゃん……? カレンに何をしちゃうのかなぁ……♪」
そしてお兄ちゃんは──逃げた。
が、結局捕まり再び攻防を繰り広げた後、二人で仲良く手作りのクッキー他用意してたお菓子を食べましたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫19二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 00:49:21
昔話 ライトレ
───少し昔の話をしよう。僕についての話だ。
僕は裕福な家庭に生まれたひとり息子だ。家族は父と母だけ。海外出張の多い両親は家をほぼ家政婦さんに任せ、幼い僕をひとり置いて海外へあちこちで仕事をする日々だった。当時の僕は幼稚園や小学校で両親と何かをするものをすべて担任の先生、もしくは家政婦さんとするような寂しい幼少期を送っていた。寂しさを紛らわす為だったのかもしれない。僕は絵本の世界へとのめり込んだ。1冊1冊に紡がれる不思議な世界、優しい絵に僕はキラキラとしたものを感じていた。絵本に出てくるお菓子が食べたくて、家政婦さんにお菓子作りを教わった。最初は家政婦さんの言われた通りだけに作っていたお菓子作りは、僕が年を重ねるたびに創意工夫がされていった。
「とっても美味しくできていますよ!すごい、将来はパティシエですね」
「えへへ…」
僕はその時の家政婦さんの笑顔が今でも忘れられずにいる。僕がひとりで作ったお菓子を美味しく食べてくれる。心の中がぽかぽかしていた。もっと美味しく食べてもらいたくて、お菓子にあう飲み物の勉強も始めた。紅茶、コーヒー…僕はどちらかというと、紅茶が好みだったので紅茶について勉強した。お菓子と紅茶を用意すると家政婦さんはびっくりしたようすをした後、本当にあなたは熱心ですねと僕を褒めてくれた。口にしては、笑顔を見せてくれる家政婦さんは本当の母よりも母のようだった。正直言うと、僕は両親のことがきらいだった。
「また髪を伸ばして!」
「やだ!やめてよ!」
僕はこの姿になる前から、髪が長かった。今のこの髪よりも長い髪。僕は長い髪に憧れがあった。それはまだ、僕が両親のことをきらいになる前だ。一度だけ、両親がレース場へ連れていってくれたことがある。最初で最後、両親が僕にしてくれた親らしいことだと思ってる。僕はターフを駆けるウマ娘を見て、靡く髪を、尾を見てとても綺麗だと思った。女の子になりたい訳でもなく、僕はあの靡く髪に憧れ、髪を伸ばすようになった。1着を取ったウマ娘がウィニングライブで輝く姿を見て、どうしてこんなにキラキラしているのだろう。気になった。ウマ娘はトレーナーと二人三脚でレースに挑んでいることを知り、僕はトレーナーになろうと思った。誰かの笑顔が見れる。世話を焼くのも好きだったからだ。話を髪に戻そう。
21二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 00:49:36
長い髪に憧れた僕は、真似するように髪を伸ばした。姿見でくるっとターンをするとふわっと靡く髪を見て僕はとても綺麗だと思っていた。
「あなたらしくて素敵」
今思えば、社交辞令だったかもしれない。それでも僕は嬉しくて、髪を伸ばした。だが、母は許してはくれなかった。海外出張から時折帰って来ては、親面で僕の髪を咎め、髪を切った。いたちごっこだった。僕は諦めずに伸ばしても、母は帰って来ては切る。だが、僕が高校生になる頃には両親はほぼ帰ってくることはなく、気にせず僕は髪を伸ばした。この長い髪に合うよう身だしなみを徹底していた。服にスタイル、気を使っているうちにモデルにならないかと声をかけられることもあった。僕はトレーナーになるためにそれを断り、学業とバイトの両立させた。大好きな絵本もお菓子作りも相変わらずだ。保育士とかの方が向いているだろうと言う者もいた。ピアノもバイオリンも母にやらされていたからだ。保育士になったらあのキラキラについて僕は一生知れないだろう。僕は確固としてトレーナーになるために、中央のライセンスを獲得するために日々を重ねた。成人し、その日々のなか、僕は両親と絶縁した。家政婦さんと別れるのは辛かったが、それでも、僕は僕らしく生きるために選択した答えだった。
「寂しくなりますね」
「ごめんさない家政婦さん。今まで本当にありがとう」
僕は幼い頃からのお小遣いやバイト代を貯めたものでひとり暮らしを始めた。お菓子作りは得意だったが料理はなかなか慣れることはなかった。それでも、僕はひとり暮らしが辛くもあったが楽しくもあった。勉強をし、そして中央のライセンスを獲得した。僕はスタートラインにようやく立てたのだ。
≫27二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 01:07:25
1スレ借りるで
「なぁ...トレーナー?」
「何だタマ...」
「この手錠どないしようか...」
「...どうしよっか」
気がついたら手錠が嵌められていた。
ご丁寧に女神からのプレゼントです♡
などと言う巫山戯た紙付きで....ざけんな
「実際どうするかな...」
いくら担当とトレーナーの仲とは言え
年頃の娘と一日一緒にあまつさえ同じ布団で寝た等と知れ渡ったら良くて懲戒...悪ければ実刑、どちらにしろ社会的な死は(脳裏に浮かぶ性徒会&ネイトレ等の関係)
...なんかこの学園なら大丈夫な気もしてきたな
「と、トレーナー...」
「ん?どうした?」
「その...御手洗いに行きたいんやけど」
「...我慢とか」
「実はさっきから我慢しとって」
「...」
「トレーナー?」
「しゃーない!腹を括れ俺!」ヨイショットお姫様抱っこ
「トレーナー!?何しとるんや!?恥ずかしいっておろしてぇや」
「これが一番速くトイレまで運べるから我慢してくれ」
「アホ!バカ!///」
─────────
このあとめちゃくちゃイナリ達にからかわれた
うまぴょいうまぴょい
≫62二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 02:28:41
タマトレ「圧力鍋に貰った肉入れて...
自家製塩辛ヨシ、蜂の子甘辛煮ヨシ、自家製葡萄酒ヨシ
これで明日の飲み会の仕込みは全部終わったな!
後は角煮が出来るのを待つだ」ドッカーン
タマトレ「ぎゃぁぁっぁぁ!!!アチ!!胸に角煮が!何で!?何で圧力鍋が!?衛生兵!?衛生兵!!!」
─────次の日の飲み会───────
タマトレ「てなわけでよ、火傷したから今胸に包帯巻いてんのよ...」
パラシン「そんな!?私の角煮が!?」
マクトレ「ずっと火傷してたほうが良いのでは?」
テイトレ「タマちゃんが号泣してた理由はこれかぁ...」
ブラトレ「真相知ったら別の意味で泣きそうだな...」
タマトレはサラシを手に入れた
E:サラシ
うまぴょいうまぴょい
≫71二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 03:30:21
「トリックオアトリート! お菓子くれなきゃ悪戯するぞ☆」
「お姉ちゃん、それもう既に一回やったよね……?」
「うん」
「うん、って……」
「で、お兄ちゃんお菓子はまだ残ってる? ……さっき同僚のトレーナーさん達とか中等部の子達に配ってたけど」
「…………」
「じゃあ悪戯だね、お兄ちゃん」
「それはずるじゃないお姉ちゃん!?」
「ふふ、なにしちゃおっかなぁ……? さっきはお兄ちゃんが悪戯したんだもんね、カレンの悪戯もお兄ちゃんは逃げずに受け入れてくれるよね?」
「私悪戯出来てたかなぁお姉ちゃん!? いや普段なら問答無用で悪戯してくるお姉ちゃんがトリックオアトリートって確認しに来ただけなんかおかしいなって思ってたけどこれが狙いだったの!?」
「……普段、なら?」
「え?」
「そうかな。確かに私、こんな風にしない……かな……? ……お兄ちゃんなら、こんなことしなくても受け入れてくれるもんね」
「えっと、お姉ちゃん……?」
「ううん、ごめんお兄ちゃん。なんでもないよ。それじゃあとりあえずこの攻…」
「……ねぇ、お姉ちゃん」
「うん?」
「今の、ちょっと落ち着いたお姉ちゃんも、嫌いじゃないよ、私。お姉ちゃん、マヤノお姉ちゃん達とか、あとお兄ちゃん達みたいな年上のお兄ちゃんと話してる時は、カワイイだけじゃない口調も使ったりするでしょ? 私にはそういう面はあんまり見せてくれないから。勿論それが嫌いなわけじゃないけど、でもカワイイじゃないお姉ちゃんも、知りたいの、私」
「…………」
「だから、こうなってから、またお姉ちゃんの知らない一面を見れて、お姉ちゃんの見せたいお姉ちゃんじゃない一面を見れて、ちょっとだけ嬉しかったり……って、なんか照れくさいね、お姉ちゃん」
「お兄ちゃん……。そっか、お兄ちゃんはまだちゃんと、負けず嫌いで優しい、お兄ちゃんのままなんだね」
「お姉ちゃん?」
「ふふ、じゃあお兄ちゃん。今日は一日問答無用で悪戯するから♪」
「え? 話の流れ的に、こう……落ち着いたお姉ちゃんを見せてくれるとこじゃないの今の」
「カレンのことぜーんぶ受け止めてね、お兄ちゃん☆」
「え? ……え?」
この後一日散々にカレンチャンに揶揄われて疲労困憊になりながらも、でもなんだかんだちょっと嬉しそうにしていたお兄ちゃんでしたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫79二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 07:25:35
トレセン学園のとある教室にて
…教官役を任されたキタトレこと私は壇上で語っていた。
「ということでそろそろ時間ね、一旦休憩としましょう。」
「「「「「はい!」」」」」
「次は外でトレーニングをするから準備をしておいてね。それでは解散よ」
ぞろぞろと歩きだす子達を見ながら、私は隣で手伝ってくれている彼女に声をかける。
「しかし、貴方がいてくれて助かるわ。」
「今回、私は手伝ってるだけでありますよ?」
「二人いると進行のしやすさが違うのよ。いつもは一人でしてる時も多いから。」
「チーム以外の子も巻き込んで見ている貴方らしい意見ですな。…いっそ教官職に来てみませんか?」
「有り難い提案だけど遠慮させてもらうわ。もうチームの子もいるしね。」
「やはりそうでありますよね…」
「手放す訳にはいかないからね。でも、チームの子とかがいなくなったら考えてみようかしら。」
「その時はいつでも歓迎するであります。」
「ふふっ…そうね、そろそろ私達も外に出ましょうか。」
着替えた自分達はグラウンドに集合すると、前のキタトレ殿が声を掛けた。
「ストレッチとかは済んでるわね?」
「はい、もうやってあります!」
「いいわ、それなら早速併走しましょうか。私が先導するから付いてきてちょうだい。」
「「「「「はい!」」」」」
そう言って駆け出すキタトレ殿と担当の子達。
その風景は、時折見かけるキタトレ殿が独自に行う大人数での練習と同じようなものだった。
(あれで全員の状態をみてられるというから凄い能力ですな…)
『走りながら大人数を見るのは大変ではありませんか?』
『大丈夫よ、マルチタスクは前の仕事柄得意だったから問題ないわ。』
(ペースを調整しながらフォームや調子を確認しているみたいであります…)
定期的に位置を変えて大外から見ていたり、後ろについて追いかけたりと、只走るだけではない。
彼女曰く、近くで見ていた方がよく分かるそうだ。特に走ってるときの彼女達の感覚は。
80二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 07:25:58
そんな彼女達の姿をキタトレ殿が予め用意しておいた用紙にメモしつつ、自分は合図を送った。
「とりあえず併走はここまでよ、一旦戻りましょうか。」
「「「「「はい!」」」」」
こちらに戻ってくる彼女達を見つつ、自分は意識を切り替えた。
特別教官二日目、予定では今日で指導は終了であるが…
「…それと、今回の指導が終わってからも私の所に来て構わないわ。」
「私は貴方達の練習にも、相談にも付き合ってあげるからね。」
そう彼女が言った瞬間、指導していた子達の目が変わる。
残念そうにしていたその目が輝きだす。
(…まあでも、当然のことではありますね。)
…G1バを育てたトレーナーに教えてもらうこと自体が貴重で、基本専属かチームなことも多いのと相まってまずないといってもいい。
ましてや一際輝く子でもない限りはそもそも気に留めることもないのだ。
そんな中で誰彼問わず教えているG1バ、キタサンブラックのトレーナーである彼女はやっぱり異端なのだ。
…指導した子達に囲まれ、口々に話しかけられている彼女に声をかける。
「貴方は優しい人でありますな」
「そうかしら?私はただ皆に笑っていてほしいだけの強欲な人間よ。」
「HAHAHA、貴方らしい返答ですな」
少しの間見つめ合い、思わず自分と彼女は笑い合うのだった。
駄文失礼しました
早速教官さんに出てもらってます(エミュ大丈夫か…?)
教官職の仕事の部分にまで食い込んでそうなキタトレのスタイルはやっぱり異端だと思います。(個人の感想)
≫181二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 10:19:44
「どうしたタキトレ、随分と困った顔をしているようだけど」
「タキオンに部屋に泊めてくれって言われまして。多分今夜は徹夜で研究ですよ。まったく、彼女の研究癖には困ったものです」
「そ、そうか(とんでもなく尻尾がブンブンしてる……気付いてないのか)?」
「どうかしましたか?何か変なことでも?」
「いや、担当と仲が良いんだなぁって……」
「?部屋に泊めるぐらいですから仲はいいですけどどうしたんですか?」
タキトレはこういうレベル
耳と尻尾敏感な癖に動いてるの気付いてないのがタキトレ
しかも和菓子大好きウララトレ先生に和菓子を譲る選択肢を思い浮かばせるぐらい変化する
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part350【TSトレ】
≫74二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 11:06:59
『ぼのとれさんとぶらとれさん』
「ねーねーブラトレ、パンケーキに興味はない?」
「……アケボノがめっちゃ作っちゃったから一緒に食ってくれってことか?」
「察しが早くて助かるよ……」
「ま、何時ものことだしなー。アケボノはどっちかというと大量生産が得意なタイプの料理スキル持ちだろ?」
「うん、まあ一人で食べきれる量で作ってくれることもあるけどテンションが上がるとものすごい量になっちゃうからね」
「おっけ、今日の昼飯分はそっちで済ましてしまおう」
「ありがとう……」
「むしろボノトレは人間のままなのになんであの量食い切れるのって話なんだよ」
「それはきっと、ひとえに愛だよ」
「愛か……愛なら仕方ないな……実際めちゃくちゃに美味いし愛はこもってるよな……ギチギチではじけ飛びそうなくらい」
「でもそんな溢れるくらいの愛を受け取ることも、トレーナーにとっては大事かもしれないでしょ?」
「まあ確かになぁ。ちょっと行き過ぎた愛の表現方法やってるやつが多いけど……」
「……それに関してはノーコメントで」
「ああそうだ、愛に関してならあと一つ話題があるな。マヤトレ」
「あー、マヤトレ……」
「未だに変わらないことに関して、俺はマヤノの愛以上にマヤノのパパさんの関与を疑っている」
「いやさすがにそれは……さすがに……無いはずだよね?」
「……言い切れるか?」
「いや微妙だね……しかし残念だなあ、マヤトレ今日は出張だから巻き込めなくて」
「巻き込むって言ったなおい。あいつに関しては妙に辛辣だよなボノトレ」
「うーん、ほら皆どんどん変わってるでしょ?そのせいでマヤトレ、たぶん物凄く肩身が狭いと思うんだよ。その分僕がいつも通りに接することで、気にしなくていいんだよーって」
「本音は?」
「いやこれは本音だよ。まあ楽しいからってのもあるにはあるけど」
「ま、ボノトレはボノトレで引き返せるのに引き返せないところに自ら身を投じてるけどな……」
「え?」
「……まあ別に退廃的な生活でもないし職務放棄でもないしいいか……」
さすがにウマ娘パワーとはいえかなりの量できつかったが、食い切った。
数枚お土産としてチームメンバーに渡したら、まず私たちを呼べぇぇぇとブラトレたちは怒られた。
≫83二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 11:20:46
「……自分にも覚えがあるんで分かりますよ。ボノトレさん」
「あーあー聞こえなーい」
「『この人相手ならこれぐらい雑でもいいだろ』っていうのはよくある甘えの構造らしいですよ」
「あーあー!聞こえなーい!ネイトレ!あんまり言うともうスイーツ情報の横流ししてあげないよ!」
「そんなぁ!!?」
≫135ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:08:48
ロブトレ帰省SS 第三話
トレーナーさんとお母さんが二人とも泣き疲れて眠ってしまい、トレーナーさんのお父さんと一緒にベッドに連れて行きました。
そして今、トレーナーさんのお父さんと一緒にテラスに行きました。
「まず、すまなかったね。本当はゆっくりと話したかっただろうに、迷惑をかけてしまったね」
「い、いえ……すみません、やっぱり驚きました。あの、トレーナーさんのお母さんって……」
「ああ、妻は昔から心を病んでしまっていてね。トレーナーであった俺がもっとしっかりしていれば、と今でも思っているよ」
あの叫びの中に合った言葉からもしかしたら、と思っていましたが、やっぱりトレーナーさんのお母さんはかつてはレースで走っていた。そして、そのトレーナーがこのお父さんであった。
グラスの中のお酒を揺らしながら、物思いにふけるように話してくれます。
「でもね、最近はすごくよくなっていたんだよ。君たちが有馬記念で勝利したのを見てね。あの子が戻ってきた、ってね」
「あの、トレーナーさんって、そんなにも昔と違うのですか?」
「……そうだね、あの子は自分の気持ちを隠しやすいから親しい人にしかわからないだろうけど、ずっと周りからの期待に応えようと気を張っていたね。その姿が妻にとっては痛々しく映ってしまっていたんだよ」
痛々しいほどに気を張っている。それは少し感じていました。
TVなどで出演する際などはずっと気を張っている。皆の前だから、と理想のトレーナーとしてふるまおうとしているのを何度も見ていました。
でも、最近はそんな姿があまり見なくなってもきています。他のトレーナーさんと交流している際もとても自然体で……。
「最近は自然になれている、ウラトレさんからも聞いていてね、親である私たちもそれが強く分かっていたんだよ。そしてそうなれたのはね、ロブロイ、きっと君のおかげなんだろうね」
「え、わ、私、ですか?」
「ああ、君は最初、自分の好きな物語を沢山語ったそうじゃないか。その時の君の好きな物語への想い、そしてそんな物語の主役になりたい、という強い想いが、あの子のずっと眠らせていた熱を呼び起こさせたんだよ」
「トレーナーさんの、熱……」
126ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:09:31
「ああ、あの子はね、トレーナーになる覚悟を決めたとき、今まで夢として見ていたもの、その核となる存在を捨てたんだよ。漫画やドレス作りは自身の趣味、ストレス解消法として残したけど、一番大切なものを捨てることでデザイナーという夢を捨てて、トレーナーとなる覚悟を決めたんだ」
「それは……」
それは、どれほどの覚悟をしてトレーナーに臨んでいたのかがうかがえます。
私で言うのであれば好きな物語を封じて臨む行為です。でも、それは……
「そんなことをしたら、壊れてしまうのでは……」
「ああ、壊れると思った。だけどその想いを否定することもできなくてね。実際俺の指導する厳しいトレーナー修行を耐えきったわけだしな。そんな後ろ向きな覚悟ではすぐに折れる、折れた時はまた元の道に戻ればいい、そう思っていたが、あいつのウマ娘への想いはそれ以上だったわけだ」
トレーナーになるための覚悟、それが私が思った以上に強く、そして辛く感じられました。
でも、同時に私と一緒にいるときはそれを感じさせられなかった。覚悟を決めていたのですが、それでも本心でこのトレーナーとしての生活を楽しんでいたのはわかります。
「うん、だからこそだよ。君のその想いできっとあの子は自分の中に沈めていたものが呼び起こされた。自分自身の好き、という気持ちに正直になれたんだよ。その姿が自分で勝負服を身に着けた姿だったんだろうからね」
「トレーナーさん……」
ずっとトレーナーさんに支えられていた。でもトレーナーさんも私のおかげで救われていた、そう、トレーナーさんのお父さんは告げていました。
そして、お父さんは私に向かって頭を下げる。
「ロブロイ、あいつの父親として礼を言わせてほしい。あの子の担当になってくれてありがとう。君のおかげであいつは本当のトレーナーになれたんだ」
「そ、そんな、頭を上げてください。私の方こそ、トレーナーさんがいてくれたからここまで歩めたんです。その、トレーナーさんをこの世界で出会えたのはお父さんたちのおかげです。その、ありがとうございました」
127ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:10:09
「君は本当に優しい子だね。君になら、うちの子を頼めるよ……って、それを学生の君に言うのはよくなかったね」
「え、そ、それって……」
「さて、どうだろうね?ただ一つ言っておくと、絶対に卒業してからにするんだよ。私たちだって学生とトレーナーという関係でなかったからできたことなのだしね」
「あ、あの……その……」
「ふふ、すまないね、少し早すぎたね。ともかく、俺たちは君たちのことを応援しているよ。あ、でも、これはまだあの子には内緒にしておいてくれよ。今のは俺と君だけの内緒話だ」
「は、はい……」
思いがけない言葉を頂いちゃいました。
でも、本当にこれからずっと、長い関係になるんだろう。そのことが強く感じられました。
「すみません、ロブロイ、お父様。いつの間にか眠ってしまって……本当はゆっくり歓迎するはずだったのに」
そんなふうに話していると、扉から私のトレーナーさんが……どうやら起きてしまったようです。
「ああ、───、ようやく起きたか」「あ、トレーナーさん、その、もう大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。お父様……」
「俺からは何も言うことはないな。お前はもう、立派なトレーナーだよ。改めて言う、お帰り、───」
「……はい、ただいま、お父様」
「さて、それじゃ俺は片づけをしているから、お前はその子とゆっくりしておけ」
「え、お父様、それなら私も……」「あ、あの、私も手伝います」
「お前ら二人とも長旅で疲れているだろう?それにさっきのこともあるしな。それじゃ、後はお前らゆっくりな」
そう言ってトレーナーさんのお父さんは去っていきました。
森の中にある一軒家、空には満天の星空が輝いていました。
128ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:10:36
お父様が家の中へと戻っていき、この静かな森の中で私とロブロイは残される。
そのロブロイの隣、先程までお父様が座っていた場所に座る。
「その、ロブロイ、今日はすみませんでした。そして、ありがとうございました」
「トレーナーさん、そんなことありませんよ。私もトレーナーさんのこと、知れてうれしかったです」
「……そうですね、ロブロイに私のことを知ってほしいという想いと、過去に向き合うため、という意味で今回帰省したわけですからね」
「はい、トレーナーさんは素敵なご両親に育てられたんですね」
「ええ、あんな姿を見せてしまいましたが、それでも私にとっては大切な両親ですので……」
そう、お父様も、お母様も私にとっては大切な存在、かけがえのない存在だ。
どんなことがあろうとも、私にとってあの二人は私の親なのだから。
「でも、この場所がトレーナーさんを育ててくれたんですよね。トレーナーさんにとっての物語の始まりの場所ですね」
「ええ、そうです。この場所が私を育ててくれました。その場所をあなたに見てほしかったんです」
それから、星空の下、この場所や家族のことで語り合う。
庭の中には餌場がありそこには毎朝鳥たちが食べに来ること、電波が届かない場所だから外で知ったものをドレスを作って表そうとしたこと、他にも、沢山、沢山のことを……
「そして、トレーナーさんはトレーナーになったんですね」
「ええ、それによっていろんなことがありましたが、それでも、私はこの道を歩んだことを後悔はしていません……」
確かに後悔はない、私はトレーナーとして歩んできた。最初は周りからの期待に応えるためであった。それでもウマ娘を輝かせたいという想いは変わらない。いや、より強くなっている。
だけど、同時に私は……
129ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:11:34
「トレーナーさん……」
「ロブロイ……」
そっと、ロブロイがその手を重ねる。
大丈夫、あなたの想うままに……
そう伝えるかのように、その熱が、鼓動が伝えてくる。
私の胸にずっと抱き続けていた、小さいころからの夢を……本当の夢を……
「ロブロイ、私は、やはりデザイナーになりたい。皆が幸せになれるような服を、そしていつかは幸せの象徴であるあの服を……でも、同時に私はあなたのトレーナーであり続けたい。あなただけのトレーナーであり続けたいんです。ですが、それでは……」
「トレーナーさん……トレーナーさんならそう言うと思っていました」
「……ロブロイ?」
私の宣言を聞くとロブロイは立ち上がる。そして私に向き直る。
背後には月光りが優しく包み込んでいる。
その姿がとても美しくて……
「トレーナーさん、あなたが言ってくれました。『ウマ娘の人生は一編の物語』って……」
「なら、今度はあなたの物語を一緒に紡がせてください。トレーナーさんの理想とする物語を一緒に紡ぎたいんです……その、いいでしょうか?」
そう言って、ロブロイは私に手を差し出します。
130ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:11:56
『その物語を、あなたの物語を一緒に紡がせてくれませんか?』
それは、かつて私がロブロイに向けた言葉。私たちの物語が始まった時と同じ言葉……。
そうか、これは新しい物語の始まり。私とロブロイ、二人の物語の新たな1ページなのだろう。
「ありがとう、ロブロイ。これからも、ずっとずっと、一緒にこの物語を紡いでいきましょう」
「はい!今度は私がトレーナーさんの夢を支える番です!」
ロブロイの手を取る。するとロブロイはそのまま私を抱き寄せる。
二人の熱が一つになる。そう、私たちは一緒の物語を紡いでいくんだ。
これまでも、これからも、ずっと、ずっと一緒に……。
月下に照らされて、二つの影は一つになる。
これは新たな物語の始まりの1ページ。
始まりの言葉はそう……こう綴ろう……
131ロブトレヒロイン概念21/10/31(日) 12:12:55
『これはあなたと共に紡ぐ物語』
おまけ
「では、お父様、お母様、ありがとうございました」
「あの、お邪魔しました。とても楽しかったです」
「いやいや、こちらこそ、面倒をかけた。こんな親だがまた来てくれると嬉しく思っている」
「はい、ぜひまた来ますね」
「───……ロブロイちゃん……見苦しいところを見せてしまってごめんなさい。次の時はもっとしっかりと歓迎するからね」
「そんなことないです!トレーナーさんのこと、本当に大切にしているのがすごく伝わりましたから、その、お母さんもお元気で」
「本当にいい子ね……あなたがいてくれたからこの子も戻ってきたのね。ありがとう、ロブロイちゃん」
「名残惜しいかもしれないが、そこまでにしておこうな。強く言い続けていたら二人とも出れなくなるだろうしな」
「ええ、そうね、あなた。二人とも、行ってらっしゃい。何時までも私はここで二人を応援していますからね」
「お母様、お父様、はい、今度はトレーナーとしてだけではなく、本当の夢に向かっていきます。だから、見ていてください!」
「!!……ええ、ええ、ずっと、ずっと見ているわ。ずっと、ずっと……」
「では、行ってまいります」
「……その、“行ってきます”」
「ロブロイちゃん……ええ、二人ともいってらっしゃい」
「お前たちならきっとできる、きっとな……」
その後の母親は以前よりも回復し、時折森から出ることができるようになったとか
≫158二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 12:35:55
では
何処かの一軒家で
「ただいま、母さん」
「すみません、お邪魔しまーす!」
…そう言って家に上がるのはキタトレとキタサンの二人だった。
「おかえり、キタトレ。あら、キタちゃんも一緒かしら?」
「そうよ、丁度オフだし久しぶりに連れてきたわ。」
「えへへ、久しぶりですお義母さま。」
そう言って笑顔で礼をするキタサン。
「そんなの気にしないでいいのよキタちゃん。…しかしこう、いつ聞いても随分と面白いわねその口調。私の真似かしら?」
「そうよ、母さんの真似させてもらってるわ。…家だし戻すか?」
「う〜ん、面白いから今日はそのままでいいわ!」
「はは、分かったよ母さん。」
「どっちの口調でもトレーナーさんだしね!」「…そうねキタ。それよりも父さんは?」
「ん〜、仕事よ?どうせ顔が見たくて早く帰ってくると思うから寛いでなさい。」
「分かったわ、座りましょうか」
「はーい!」
二人でリビングのソファに座ると、キタトレの母はお茶と菓子を出して隣に座る。
159二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 12:36:07
キタトレの母は茶をすすりながら言った。
「しかしまあ、随分私にそっくりになったわね。所々違いはあるのだけど。」
「そうなんですか?」
「そうよキタ、母さんが若い頃とそっくり…」
「あら?私は永遠の17歳よ?今の貴方と同じくらいに決まってるわ。」
素晴らしい笑顔でキタトレを見る母。
「…そうね」
「とても親子には見えないくらい差がないね…」
実際、キタトレとその母は身長や見た目の若さにあまり差がないので姉妹のようにも見える。
「まあでも、正直貴方がその姿になった時は私が増えたのかと思ったわよ、だから貴方だと分かりやすかったけどね。」
「母さんのドッペルゲンガーとか父さんへの負担が凄そうね…」
「随分と失礼じゃない?」
「私以上のくわせものな母さんに言われたくないわ。腹にどれだけ抱えてるんだか。」
「二人とも本当の魔女みたいだね…」
思わずキタはもらす。それを聞いた二人は
「「…、ふふふ…」」
いい笑顔で笑い合った。
160二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 12:36:43
「…さて、折角キタちゃんもいるんだから、あのファイルを出してあげるわ。」
その言葉を聞いた瞬間、キタトレの顔が若干引きつる。
「…あれを出す気かしら母さん?」
「別にいいでしょ?」
ため息をついたキタトレは頷いた。
取りに部屋を出る母を見つつ、キタは問いかける。
「ねえトレーナーさん、あれって何?」
「…見たらわかるわ」
いつもと少し違う反応を返すキタトレに、キタは違和感を抱く。
丁度取ってきた母が戻ってくると、そのファイルを広げた。
そこには…
「何だろこれ…ライブの写真?」
「ふふ、キタトレの学校でやった女装ライブよ。中央のこれがキタトレなのよ。」
「…え?このメイクしてる人がなの?」
「…そうね、それが私よ。軽く端折っていうと、出し物でこれをしたいってなったのだけど、その役を引き受けたのが私だったのよ。」
「断らずに引き受けたのでしょう?私に女性らしい動きとか聞いてきた時は思わず吹き出したわ」
「…やる以上は本気でしたかったのよ。それに、そのお陰で今こうやって口調とかで苦労してないのだから結果オーライね。」
「…トレーナーさんがあまりライブとかに抵抗とかないのって」
「キタちゃんの予想通りだと思うわよ。」
「…まあこれが理由ね、凄くアレな理由だけど」
「そうだったんだね…」
微妙な顔をするキタとキタトレ、ニコニコした顔で見守る母。
161二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 12:37:12
そんな空気のまま数分がたった所、
「ただいま、もう帰ってきてるかな」
玄関の方から声がした。
「おかえりなさい貴方、二人ともいるわ。」
「おかえりなさい、父さん。」
「お邪魔してますお義父さん。」
「久しぶりだなキタトレ、それにキタちゃんも。俺は会えて嬉しいよ。」
「…あなた、折角だから皆で出かけようかしら?」
「ん?勿論だよ、ちょっと疲れてるがそれはそれ、これはこれだからな。」
「ふふ、ありがとうあなた。なら早速行きましょう。」
ーーーその後、四人でのお出かけを楽しんだ
駄文長文失礼しました
キタトレの実家帰省ssです(凄く短いですが)。キタちゃんはもう家族みたいに馴染んでいます。
学校のライブは悪ふざけで言ってみたら通っちゃったパターンで、引き受けたのがキタトレだった感じです。
キタトレ母、くわせものな優しい人。見た感じは若く、プロポーションもキタトレと同じくらいだったり。
年齢?えっとウラトレさんとかとちか(ここから先は血で汚れている
キタトレ父、社交性のある人。それはそれ、これはこれという口癖を持ち、よく軽口を叩く。
これでも割と親馬鹿気味だったり。