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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part731【TSトレ】
≫13二次元好きの匿名さん22/04/11(月) 18:42:02
ウオシス「ファイトレ女様、今、お届けにあがろうと思っておりました」
ファイ女「ほう…これは…」
ウオシス「対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル、今までの.454カスール改造弾ではなく、初の専用弾使用銃です。全長39センチ、重量10キロ、装弾数6発。もはや人類では扱えない代物です」
ファイ女「専用弾は?」
ウオシス「13mm炸裂徹甲弾」
ファイ女「弾殻は?」
ウオシス「純銀製マケドニウム加工弾殻」
ファイ女「弾頭は?炸薬式か、水銀式か」
ウオシス「法儀式済み水銀弾頭で」
ファイ女「パーフェクトだ、ウオシス」
ウオシス「感謝の極み」
≫40二次元好きの匿名さん22/04/11(月) 21:53:26
『伝承談義~弱点マシマシ吸血鬼~』
「俺は人間をやめるぞ、ジョ〇ョーッ!」
「なるほど、すでに人間やめてる私たちはほぼそのまんまですわね」
「いや、やめるっていうかやめさせられたが正解なんじゃねえのこれ」
「そんなこと神に聞いてくださいなウオトレ、私がわかるわけありませんわよ」
「なんか反応うっすくない?」
「そんなことはないですわよダストレ。……非凡感はちょっとばかり薄れたと思いますわ」
「ひどい!」
「でもよダストレ、吸血鬼になって何やるのお前」
「えっ……?いや、別に……?」
「……ノリと勢いで昼の活動をポイ捨てするとは漢ですわね」
「多分なんも考えてなかったんだろうな。昼のレースには一切出られなくなりそうだ」
「い、いやほら……比較的日光に強い吸血鬼かもしれない!」
「どこぞの鬼のボスが血眼になって探す対象になりますわね」
「……やっぱ吸血鬼やめようかなー」
「得る力に対して不便だよな……」
「というか、現代社会において夜間生活を徹底するでもない限りはデメリットのほうが大きいですわねあれ……」
「元より、利点を薄くされた怪異であるという見方もできますね」
「おや、バントレではありませんか」
「お、解説してくれるのか?」
「そうですね、折角の機会ですので。吸血鬼そのものは民間より発生したものと、大元の伝承があるもの、という二つの見方があります。前者は腐り難かった死体に関することや、誤葬に関して発生したもの、もしくは黒死病にかかわる……という話も聞いたことがあります」
「あー、昔のヨーロッパじゃなあ」
「死んでると思って埋葬したら死んでなかったとかまあ……恐怖だな。埋められた奴にとってもたまったもんじゃないだろうが」
41二次元好きの匿名さん22/04/11(月) 21:53:35
「伝承に関しては、18世紀以前により血を啜る怪物、といった具合の伝承は世界各地に残っており、そちらが元であるといった具合でしょう。中国にも古くから吸血鬼、といった表現が使われていたようです」
「生き血を啜るという表現は怪物や悪人に対してよく使われる表現ですわね」
「一つ人の世の生き血を啜りィ!」
「二つ不埒な悪行三昧!」
「三つ醜い浮世の鬼を……ってそれは別ですわよ」
「退治されるべき鬼、という部分に関しては一致しているかもしれませんね。さて、起源はともかく一番気になるのは異様なまでに設定された弱点に関する部分でしょう」
「多すぎねえ?」
「ここまで懇切丁寧に撃退方法や弱点が書かれた怪物や化生の類もそうそういないのではないか……と思われるほど、吸血鬼には多種多様な弱点といわれるものが存在します。日光に弱い、十字架に弱い、にんにくに弱い、討伐するには首をもぐ、心臓に杭を打つ、銀製の武器を使う、死体を聖水や葡萄酒で洗う、その他いろいろな弱点があります。面白いものには、靴下を盗まれると弱体化するというものまであります」
「いや、死ぬだろ!心臓に杭打たれて死なねえ生き物はいねえだろ!」
「首もいで生きてる動物はたまにいるのが恐ろしい話ですわねえ」
「どうして靴下なんだろう……?」
「いまいち要領を得ませんが、おそらく蒐集物に対する執着心のことを指しているのかもしれませんね。ダストレさんも靴下が片一方だけなくなったら気になってしまうでしょう?それを増幅したものと考えれば……もしかすれば、です」
「弱体化まではしないかなあ……」
「ともあれ、なぜここまで事細かに……ともすれば攻略本とも呼べるまで羅列されているかなのですが、吸血鬼そのものが悪であると基督(キリスト)教において考えられているからでしょうね。そういった絡みで聖水にも弱い、十字架にも弱いといった弱点が付け加えられているのでしょう」
「あー、まあ世界最大の宗教だからな……」
42二次元好きの匿名さん22/04/11(月) 21:53:44
「ちなみにですが、私たちの身近なものにも吸血鬼に強い効果のあるものがあります」
「え、何?」
「それは蹄鉄です。伝承には、天使や神が懲罰を行った悪魔への戒めの装飾品として蹄鉄が使われていた……というものがあるようです。そういった伝承故か、蹄鉄には魔よけの効果があるともいわれています。転じて、吸血鬼に対しては十字架などと同じ効果を持つようになったのかもしれませんね」
「意外ですわねえ……」
「あ、だからたまに出てくる怪異にドロップキックしてるゴルトレがいるのか」
「おそらくそちらとは関係はないと思われますが……もしかすれば、効果はあるのかもしれません」
「つまり……纏めると、神様の敵だから滅茶苦茶事細かに弱点を書かれた、と」
「そういった認識でもよろしいかと。やはり宗教というものは生活や文化にも大きくかかわってきますから」
「ある意味三女神もそういうものに近いのか?」
「うーむ、どうなんだろ……まあ神様っちゃ神様だしなあ」
「しょっちゅう変なネタみたいな現象でちょっかいかけてくるのだけはいただけませんわね、本当……」
「まあ、我々も色々お世話になっていることでしょうし。たまには像の掃除でも行うのもよろしいかと」
「じゃあ……吸血鬼コスプレでやるか」
「わざわざ神の敵対者になって掃除をするなんてダストレ、あなたなかなかいい趣味してますわね」
≫58二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 01:06:00
月明かりが照らすプールサイド。
声に導かれる様に、私はここへと来てしまいました。
……グラス…………グラス
──ああ、また聴こえます。
──もっと私の名前を呼んでください。
私が好きな声、それに導かれる様に更にプールへと近付きます。
そして、あと一歩踏み出せばプールへと落ちる所まで来て再度声が聴こえて来ます。
……グラス……ツカマエマシタヨ
──あっ
次の瞬間にはプールへと引き摺り込まれてしまいます。
──ぷはっ!
……ですが、あくまで学園のプール。
普通に足が着いて水面に顔を出す事が出来ました。
──あっ
水面へ顔を出した私、その時最初に目に飛びこんで来たのは濡れた黒髪でした。
水に濡れ月明かりに照らされた長く艷やかな黒髪。
それが扇の様に水面へと広がっています。
そんな美しい黒髪に見惚れる私に向けて、黒髪の存在は近付いて来ます。
……逃げろ。
私の中の警鐘はそんな命令をしていた様に感じます。
ですが私の目は黒髪に、私の耳は声に、それぞれ意識を奪われ動く気は起きません。
59二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 01:06:21
……グラス
そして遂に黒髪の存在は私の眼の前までやって来たのです。
眼の前まで来た黒髪。
より姿が見える様になった彼女はプールの中とはあまりにも場違いな和服を身に纏っています。
グラスは良い娘ですね~
そんな和服を纏った腕を持ち上げ私の肩を掴んだ彼女は、私が良い娘だと笑顔で語る。
──牙?
笑顔を見せた彼女の口から見えた鈍く光った牙。
その牙を見た私は、かつて見た文献を思い出しました。
磯女……確か水辺に現れ、美しい声と美しい黒髪で誘い生き血を吸う日本の吸血鬼ともいえる妖怪……
彼女がそれだと確信は有りませんが、もはや些細な事でしょう。
私の肩に手を置いた彼女は口を開け鋭い牙を見せます、そして私の首筋へと顔を運び……
60二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 01:06:44
「グラス? グラス?」
「…………あ、あら?」
目を醒ませばそこはトレーナーさんのお宅でした。
どうやらうっかり寝てしまっていたようです。
「寝言を言っていたみたいですが〜、どんな夢を見られていたのでしょうか~」
どうやら私は寝言を口にしていた様子。
「実は……」
寝言は少々恥ずかしかったですが、せっかくなので夢の中の事をトレーナーさんに話しました。
「磯女……ですか〜」
夢の中で出て来たトレーナーさん。
それがまるで昔見た磯女みたいだったという話がトレーナーさんは気になる様に。
酷い話ですが、今思えば私を呼ぶ声も綺麗な黒髪もトレーナーさんのものでしたね、心惹かれて当然ですよ。
「噛まれる前に目が醒めたのですね~」
「はい、助かりました」
「……グラスは〜、噛まれてみたくありませんか~?」
「えっ?」
そして、急な言葉にきょとんとする私へとトレーナーさんは距離を詰めました。
「では先ずは〜、首筋からですね~」
有無を言わさない速さでトレーナーさんは私の首元へと顔を近付けて……
私は吸血鬼の様に噛み跡を付けるトレーナーさんに、夢の続きを見せられるのでした。
うまぴょいうまぴょい
≫72二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 08:37:53
「…」
「ファイトレ(女)、さん?」
壁際に追い詰められ、腰を抜かしたようにへたり込むファイトレ(男)。壁ドンしながら彼女は目を細めている。
(待って、このままだと食べられる!?そもそもなんでファイトレ女はこんな…)
捕食者のような目つきで舌舐めずりする彼女、いつも見慣れた碧眼が、今夜はやけに月明かりで暗闇に輝いて見える。
「なんで…」
「許してくれなくていい、ただ…血が欲しい」
牙を見せじりじりと近寄る彼女。勿論逃げようとしても相手が相手故に無理な話。若干怯えながらも話をするファイ男。
「どうしてなんだファイトレ(女)…」
「私は…彼女に傷をつけたくない。けれど、身体が疼いて仕方ないんだ。彼女の血が欲しいと…」「…!」
…つまるところ、抑えきれなくなっているのだろう。どういう理屈かは知らないが、何となく彼女が暴挙に出た理由は分かる。
(なるほど、だから俺に頼ってくる訳だ。ジェネリック殿下…もし疼きというのが彼女への執着なら確かに抑えられるかもしれない)
「…いいですよ、そろそろ堪えるのも辛くなってきてるんですよね」
「!」
「…どうぞ」
服を少しずらし首筋をはっきり見せる。その顔がゆっくりと首筋に近づけられるのを見ながら突き立てられる痛みに備えた。
「…」
…明らかに牙が突き刺さったはずだが、そこまで痛みを感じない。ただ、ゆっくりと血を吸われる不思議な感触がする。
獣のようにがっついてくる彼女に、奇妙な愛おしさを感じながら目を閉じて、流れに身を任せていく…
──────
「…は」
…どうやら夢だったらしい、ベッドの上で目が覚めたファイトレ(男)は先程の内容を振り返りながら考える。
「そういえば、あの人は俺のことをどう思ってるんだろうか。相変わらずはぐらかされることも多いし…」
軽く伸びをしながら起き上がる。その隣の机には飲まないからあげるという書き置きとエナドリがいつの間にか置かれていた。
短文失礼しました
吸血鬼ネタということで、似合うファイ女で一つ。彼女は本能的な欲求もしっかり抑えて信頼出来る人に飲ませてもらってそう
ファイ女がファイ男の首筋から吸血する絵面は中々…(エナドリはカフェイン入りのは彼女の場合酔ってしまうので飲めないです)
≫82二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 15:23:16
モブトレ「トレトレがお好き?けっこう。ではますます好きになりますよ。左、右は俗に言うタチ、ネコの関係をイメージすると理解しやすいでしょう。それよりもマイルドに、81が言う振り回す側振り回される側が全年齢版のニュアンスとして分かりやすいかも知れませんね。左の特徴としてぐいぐい引っ張れる人や世話焼き…自分から右に行動を起こすタイプが多いです。自分のペースに巻き込むマベトレやマクトレ、ウラトレ先生やじじぴ大先生なんかも適性は高いでしょう。世話焼きでいうとキタトレやタキトレ、ウオシス以外のウオトレ達辺りは鉄板中の鉄板ですね。後は…タイトレやドベトレなんかも左としての魅力はあるでしょう。右側はかなりの人が当て嵌まりますよ。素晴らしい反応をするタイプやなんだかんだ付き合う面倒見のいいタイプ…沢山の種類がいますが78の右固定三銃士は分かりやすい。テイトレは可愛い系のオチに使いやすいですしフクトレはギャグ、シリアスで付き合う万能さが魅力でしょう。カフェトレ達は生活環境を正される日常系においてtearトップの実力を持っていますし…さわり程度ですがどうです?」
モブB「一番気に入ってるのは」
モブ「なんです?」
B「右側の誘い受けや左側のへたれ攻めだ」
モブ「わーっ、何を!わぁ、待って!生ものでR指定は駄目ですよ!待って!止まれ!うわぁーっ!!」
この後無事「デトロ!開けろイト執行部だ!」された
≫162二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 22:10:44
六、TSステーション
そしてテイトレはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、濃い鋼青のそらの野原にたちました。いま新らしく灼いたばかりの青いの板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと立ったのです。
するとどこかで、ふしぎな声が、TSステーション、TSステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら撒いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、テイトレは、思わず何べんも眼を擦ってしまいました。
気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、テイトレの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。車室の中は、青い天蚕絨を張った腰掛けが、まるでがら明きで、向うの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光っているのでした。
すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高いウマ娘が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。
それはウマ娘になったマクトレだったのです。
テイトレが、マクトレ、きみは前からここに居たのと云おうと思ったとき、マクトレが
「みなさんは、ずいぶん走っていらしたのですけれど、遅れてしまいましたわ。マベトレも、ずいぶん走ったけれども追いつきませんでしたの。」と云いました。
ジョバンニは、(そうだ、ぼくたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)とおもいながら、
「どこかで待っていようか」と云いました。するとマクトレは
「マベトレはもう帰りましたわ。マヤトレが迎いにいらしたんですの。」
163二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 22:12:25
マクトレは、なぜかそう云いながら、少し顔いろが青ざめて、どこか胸の辺りが苦しいというふうでした。するとテイトレも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるというような、おかしな気持ちがしてだまってしまいました。
ところがマクトレは、窓から外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢いよく云いました。
「しまいましたわ!わたくし、ストゼロを忘れてきてしまいました。唐揚げも忘れてきました。けれど構いませんわ。もうじき白鳥の停車場ですの。わたくし、白鳥を見るなら、ほんとうにすきですわ。川の遠くを飛んでいたって、わたくしはきっと見えますわ。」そして、マクトレは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていました。まったくその中に、白くあらわされた天の川の左の岸に沿って一条の言うっちまう鉄道線路が、次スレへ次スレへとたどって行くのでした。そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒な盤の上に、邪神酒乱の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい文体でちりばめられてありました。テイトレはなんだかその地図をどこかで見たようにおもいました。
「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」
テイトレが云いました。
「TSステーションで、もらいましたの。あなたも貰わなかったのですの。」
「ああ、ぼくTSステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指しました。
「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」
そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。
164二次元好きの匿名さん22/04/12(火) 22:13:55
「月夜でないよ。性癖だから光るんだよ。」テイトレは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、或いは三角形、或いは四辺形、あるいは電や鎖の形、さまざまにならんで、野原いっぱい光っているのでした。テイトレ、まるでどきどきして、頭の上の耳をやけに振りました。するとほんとうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかがやく三角標も、てんでに息をつくように、ちらちらゆれたり顫えたりしました。
「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。」テイトレは云いました。
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」テイトレが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云いました。
「いいねか感想でしょう。」マクトレが云いました。
ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川のバースや、三角点の青じろい微光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
「あら、りんどうの花が咲いていますわ。もうすっかり秋ですのね。」マクトレが、窓の外を指さして云いました。
線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」テイトレは胸を踊らせて云いました。
「もうだめですわ。あんなにうしろへ行ってしまいましたから。」
マクトレが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part732【TSトレ】
≫73二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 22:08:56
『……』
ルドトレ・グラトレ・フラトレ・タキトレ、そしてフジトレ・グルトレ・シチトレ。
苦笑いすら憚られる重い沈黙が部屋を包む。談笑などとてもする雰囲気ではない。話のネタならすでにお互いが察し合っている面子の大半に通ずる共通項があるのだが、そんなこと堂々赤裸々に口にするものではないのだ。魔性だの失言女王だの言われてるルドトレですら沈黙を貫いている。かしこい。
(侘助さん……!これ本当に何の集まりなんですか……!)
そんな中、察しの悪い面子もいるもので。いやなんでいるんだろうね。
(分からねぇ……!年齢とか担当の戦績とか、そういうんじゃねぇのは分かるけど、分からないってことしか分からねぇ!)
実のところチーム八方睨みとして固められた面子だが、ネイトレとドベトレには知る由もない。
(なんであたしまでここに……!?)
リウトレに至っては完全に巻き込まれ事故である。
(……うん!分からん!)
(胸張らないでドベトレ!……あ、先輩は大丈夫です)
(当てにすらされてない!?)
(てめ、姉貴に対してなんだその(侘助さんもやめて!))
でもいいと思う。いい感じにヒソヒソ掛け合いできてるし、ちょうど白い髪三人揃ってる感あるよ。うん。
……フラトレも白だしフジトレもほぼ白? 勘のいいガキは(ry
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なーんでこんな大会議室に呼ばれるんだろね俺ら」
「さてね。私とブラトレ、組合せ的にどういう意図があるのか汲みかねるけど、出たとこ勝負といこうか」
「うーん、計画性のない言葉なのにファイトレが言うと安心感が半端ない。そんじゃまノックノック。失礼しま……す……?」
『……』
「「「……???」」」
「なんだこの集まり」
「……OK、沈黙を守ろう。ブラトレは……そっちの3人の方へ」
「ええっと……あ。もしかして髪白く染めた方がいい奴?」
「違う」
その後、精神修養にも似た時間はもう少し続いた。
(終)
≫78二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 22:20:47
「真っ白い髪もそれはそれで綺麗だよなー。俺のはなんかよくわかんねえけど毛先に黒が残ってるし」
「いつも思うんですけど、いつまで残ってるんですかその黒部分」
「さぁ……?」
「え、移動してんのか?髪切るそばから?」
「いやそんなはずは……えっ、そうなの?」
「や、やってみるか?ハサミここにはないけど」
「今やるの!?侘助さん!?」
「えっマジで切るの!?お前他人の切れるの!?」
「勢いで言っただけだから本気にしないでくれぇ!」
≫86二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 22:30:37
「…ふぅ…」
ペンを置き、一息つくサトトレ。彼が座りながら向き合う机には大量の書類と冷めたお茶、そしてキタトレのペンが置かれていた。
「今日で二週間…しかも帰ってこれないかぁ…」
地方トレセンへと長期出張が決まり、キタトレが行って早二週間。本来は今日帰って来るはずだったのだが…
ザアァァァ!!!
「…土砂降りだね…」
季節外れの今年初めての台風が直撃、交通機関が完全にストップした結果帰って来れなくなったのだ。
トレセンも外のグラウンド等は雨でぐちゃぐちゃになって使用不能であり、トレーニングにも影響が出ていた。
「…うん?どうしたのかなキタちゃん」
「あっ、車椅子のサトトレさんがちょっと大丈夫かなって、少し気になっちゃって。」
───毎日のトレーニング等はキタトレが話をつけて気に掛けてくれたトレーナー達のお蔭で何とか問題なく出来ていた。
…ルドトレフウトレが纏めて引き受けようとしてチームメンバーや他のトレーナーに必死で止められたりといった事案もあったが。
(いないからこそ分かるけど、あの人数を見てよく捌けるよねキタトレ…僕一人なら間違いなく一週間と持たずに倒れてるよ。)
キタちゃんが頑張ってくれてるのでチームの士気も比較的良好だが、その分負担が…と思った矢先に掛かってくる電話。
「もしもし、キタトレ?」
『…サトトレね、調子はどうかしら。予定通りならもう休んでもらうつもりだったのだけど…』
「仕方ないよ、それに根回ししてくれたお蔭でそこまで辛くはないし、キタちゃんも手伝ってくれるし…ね」
『そう、なら良かったわ。…それと、近くにいるキタサンに変わってくれるかしら?』
…どうやら同じ部屋にいるのはお見通しらしい。付き合いが長いとはいえサトトレの反応から推測してくるのは流石の一言。
87二次元好きの匿名さん22/04/13(水) 22:31:28
「もしもし、トレーナーさん!」
『あら、随分元気な挨拶ねキタ。』
「外は大雨ですけど、あたしは元気ですから!皆が頑張れるようにあたしが張り切っていかなきいと」
『そうねキタ、皆を引っ張ってくれる貴方は本当に凄いわ。…私がいない間、寂しかったでしょう?』
「!……うん…」
『私も、いつもキタに助けられてるわ。頑張ってくれてありがとね。いなかった分好きにしていいのよ』
「…まあ、僕はトレーナーだからね。ここでの内容は黙っておくよ。」
いくらキタちゃんがチームの娘も見るようになってよりしっかりしたとはいえ、まだ年頃の子供なのだ。
『…それは偉いわね…』
「えへへ~」
嬉しそうに話すキタちゃんを眺めながら、サトトレは車椅子を回すと雲に覆われた雨天の空を眺める。
(…それぞれの欲しいことをちゃんとしてくれるのがキタトレだからね。…本当、よく相手を労れる人だよ。)
…そんなことを思いながら、恐らく半日はやまないであろう雨を前にじっくりと思いを馳せるサトトレだった。
短文失礼しました
出張ネタで一つ。プロキオンが士気を高く保てる要因であるキタちゃんと、ビフォー&アフターケアが完璧なキタトレです。
サトトレはキタ育成での強火幼馴染ファンダイヤちゃん宜しくキタトレに対して厚い信頼と諸々があるかも(因子継承が理由かな?)
≫98君の生まれた日に(1/4)22/04/14(木) 05:44:55
普段より、少し早く目が覚めた。
普段より少し早く準備を済ませ、普段より少し早く部屋を出る。
何故か、なんて決まり切っている──緊張しているからだ。
(年甲斐もなく緊張してるね……君はレース前、いつもこうなのかな)
逸る気を抑えるべく、意識して普段より遅めに歩く。
それでも「少し早く」の積み重ねは大きく、学園に着いたのは普段より早い時刻。
君は──僕の、僕らの愛バ、サクラバクシンオーは──普段通り元気よく挨拶をしていた。
「おおっ! これはトレーナーさん! おはようございますッ!」
「おはようバクシンオー。今日も元気よく挨拶してるね」
「勿論です! 皆さんの緊張を振り払い、気持ちよく一日を過ごして頂くためにも、挨拶は元気よく、です!」
「緊張?」
「ええ、新年度、新たな環境や仲間に緊張している方も多いでしょう。そこで学級委員長の出番、というわけですっ!」
桜並木の手前、学園の門の前で、そう高らかに宣言する彼女。
……成程、確かに挨拶を返す生徒たちは、それ以前より少し前を向けているようだ。
「トレーナーさんもご一緒にどうですか」と誘ってくれる彼女へ、
心苦しいが「これからへ向けての準備がある」と伝え断る。
「おやっ、そうですか。それではまた放課後、トレーナー室でお会いしましょう!」
「うん。バクシンオーも、挨拶頑張って」
……バクシンオーと別れ、トレーナー室に着き。僕の緊張の糸は、ここでようやく緩んだ。
彼女の挨拶は、今日の僕に限っては寧ろ緊張を強めるものだったらしい。
僕の荷物が普段より少し多かったことは、多分気付かれていないだろう。
99君の生まれた日に(2/4)22/04/14(木) 05:45:13
バクシンオーの授業が終わり放課後になると、彼女は僕が待つトレーナー室へやって来る。
「お待たせしましたトレーナーさん! さあ、今日も元気にトレーニングを始めましょうッ!」
「うん、よろしくね。それじゃあ先ずはミーティング、それから──」
普段通り、快活にトレーニングに臨む彼女へ、普段通りを意識して指示する僕。
……僕としては、きっちり隠せているつもりだったのだけれど。
「トレーナーさん。もしや、体調が悪いのですか?」
「……えっ」
「トレーニング中やミーティング中、そういえば朝にお会いした時も、どこかソワソワしていたようですから」
「うー、ん……」
トレーニングを終え、トレーナー室へ戻ってくるなり、彼女はそう訊いてきた。
他の生徒や同僚たちと話していても、そう見抜かれるほど挙動不審にはなっていなかったはずだが。
どうやら、彼女の目は誤魔化しきれなかったらしい。
……それでも。このタイミングまで、やり過ごせた。
彼女は授業とトレーニングを終えた──つまり、今日やるべきことは全て終えた。
あと残っているのは、僕の方の一つだけ。
「もし体調が優れないのなら、保健室で診ていただくか、それか」
「いや、それには及ばないよ。心配してくれてありがとう」
「しかし」
「大丈夫。ソワソワしてたのは、この時のためだから……バクシンオー」
「誕生日、おめでとう」
100君の生まれた日に(3/4)22/04/14(木) 05:45:29
言いながら、デスクの引き出しに隠しておいた袋を取り出し、彼女へ差し出す。
瞬間、不安げに曇っていた彼女の顔がパァッと晴れ渡る。
「ありがとうございますッ!!」
「ははは、どういたしまして」
「早速中身を見てもいいですかっ!?」
「勿論、構わないよ」
ウキウキで袋を覗くバクシンオー。中身は──
「これは……桜餅と、尻尾用のオイル、ですか?」
「うん」
一つめは、桜餅。どこの店のものでもない、僕の手作り。
お菓子作りが得意な同僚たちにも手伝ってもらった、少し不格好な、しかし想いを籠めた一品。
「トレーナーさんの手作り桜餅を頂けるとは……今食べてしまってもいいでしょうか」
「いいよ。今日のトレーニングも終わったし」
「それでは、いただきますっ! ……~~~~! この桜餅、とても美味しいですトレーナーさん!」
「……よかった、喜んでもらえて嬉しいよ」
手製の桜餅を早速食べ、華やぐバクシンオーの表情。
それを見て、僕の心に安堵と喜びが満ちていく。
101君の生まれた日に(4/4)22/04/14(木) 05:45:45
二つ目は、尻尾用のオイル。こちらは流石に既製品だが、それでも最大限こだわった。
かつての記者仲間のツテを頼り、ギリギリまで悩みぬいて、心を込めて選んだ一瓶。
「これは、ツバキの……?」
「……うん」
ギリギリまで懊悩し、苦悩し……それでも選んだ、椿油を用いたテールオイル。
「スンスン……おおっ、とても良い香りです!」
「よかった……ソレはね、僕だけじゃなくて……僕ともうひとりからの、贈り物だよ」
「もうひとり? どなたでしょうか……私の知っている方でしょうか」
「……いや。きっと知らない」
心がチクリと痛むのは、これから嘘を吐くからか。それとも、それが少なからず真実を含むからか。
「では、どんな方なのです?」
「……君を、サクラバクシンオーを、"本当の姉のように"慕っている。そんな存在だよ」
そう伝えると、彼女は静かに「そうですか」と呟き、そっと瓶を抱きしめた。
誕生日おめでとう、サクラバクシンオー。
ハッピーバースデイ、おねえさま。
願わくば君/あなたの駆けゆく先に、春の陽のように暖かな笑顔と、輝かしい栄光がありますように。
「そうです! 折角ですから、このオイルも早速使いましょう! トレーナーさん、よろしくお願いします!」
「えっ」
(了)
≫120二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 12:51:02
晴天の東京を、俺ともう一人のウマ娘が並んで、手を繋ぎながら歩く。
片方は独特な流星の鹿毛、一方俺は綺麗な白い葦毛。
外野から見れば思わず振り向きそうな二人のうち、鹿毛の方──魔ルドが話しかける。
「それでね、ゴルトレちゃん。その時、大先生が疲れた顔でこう言ったの。『お前さんは少し女に気を付けんと、いつか足元を掬われるぞ』って!」
「お前なぁ……それ現実になってるじゃねぇかもっと考えろよ」
「……現実に、なってるかな?」
「なってるなってる。なってなかったら俺はM78星雲に投棄されてもいいぞ」
「えー?そんなことになったら嫌だなぁ……」
「俺の場合、何処にいようとそのうちゴルシが助けてくれっから心配すんなって。で、どこ行くんだったか?」
そう俺が返すと、すっと取り出した手帳から簡単なメモを出す。
「そうだねぇ……駅のそばに鯛ラーメンってのがあって」
「……タイ?」
「そう、お魚の方の鯛。いいでしょ?」
「……ほう?そりゃ面白そうだな?」
「でしょでしょ?あとはちょーっと歩くけど浅草寺も行けるよ?近くには博物館も美術館もあるし」
「ほーん、なんつーかよ、無難だな」
「デートだし無難な方がいいでしょ?」
「……まあ、普通ならそうだよな」
「あー、ゴルトレちゃんが相手するのは、ゴルシちゃんだもんね……」
腑に落ちた顔をする魔ルドを見ながら、とりあえず黙って従うことにする。
アイツに楽しいことを教えてもらったが、別な楽しみだって探求するのも悪くない。
……まあ、今回はスリルを味わいながらだろうが。
121二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 12:51:47
そうして入った博物館では、塩とタバコの展示が並ぶ。
尤も、最初に向かうのは入り口すぐの売店だったが。
「ブラトレちゃんが確かパイプを持ってたし、これをプレゼントしようかなぁ?」
「アイツ、そもそもパイプでタバコ吸ったか?」
「……どうだっけ?」
次に見るのは塩の展示。俺たちが立ち止まったのは、世界の塩の取り方の場所だ。
「見て見て!ポーランドの岩塩だって!」
「こりゃあれだな、マンモスの足をゴルシと蹴り飛ばした時くらいあるな」
「なにそれ〜?マンモスに会ったの?」
「ん?その話、いくらでもするぞ?」
「え、いいの?」
マンモスの話を終えて向かうのはタバコの展示。タバコの歴史を見てから、大量のパイプを見る。
「おお、このパイプ吸いにくそう……」
「……これ、引きずらせればゴルシのトレーニングになるか?」
「……ならないと思うなぁ」
「……そーゆーところ無駄に理性的だよな」
「……そうかな?」
122二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 12:52:31
その後、やれこのタバコの箱は洒落てるだの、このタバコの箱は見たことがあるだの語らった後、最後に特別展示に向かう。
「特別展示のペルシャ絨毯だって!あ、塩を入れる袋もある!」
「ルドトレ、今塩袋持ってるんだが見るか?」
「……えっ?」
そうして、二人で全ての展示を見終えて外に出た時、とてつもない悪寒を感じた。
「……はっ」
「ゴルトレちゃん?」
「安全しろ、ちょっとゴルゴル星からサイバネメールが来ただけだ」
「そうなの?それ、すぐ返さないとダメだったりする?」
「お前、俺を誰だと思ってるんだ?もう返したぞ?」
「おおー!流石ゴルトレちゃん!」
「そうだろ、そうだろ?んじゃ、腹も減ったしお前が言ってたところに行くか!」
「うん!」
感じてるかシンボリルドルフ。独占力は弾けるんだぞ?
この後鯛ラーメンと鯛フレーク+鯛スープを食べた魔ルドが酒を求めて、それを止めようと一悶着あったのはまた別のお話。
≫139二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 19:10:07
ザアアァァァァァ……
「……」←ネイトレ
「……」←侘助さん
ザアアァァァァァ……
「え。もしかしておうち放浪まだ続いてる……?」
「……」コクリ
「……もっかいおいで?」
「……」コクリ
そんな世界線もアリ
≫146二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 19:25:16
『雨の日とマーベラス』
雨の日は憂鬱だ。気分が沈むし雨に濡れるせいで外出するのも面倒になる。
――というのも昔の話
「マーーーベラス☆」
マベトレはるんるんと透明なビニール傘を回しながら舞うように土手を駆けていく
普段とは違う空気・傘に奏でる雨音・あちこちに反射する水鏡そのすべてがマーベラスに映る。
ウマ娘になるまでは知覚できなかった感覚をその五感で感じ取る。
どんよりとした灰色の風景もマベトレにとっては鮮やかでキラキラとした光景になっていた。
マベトレがふと前を見ると先行していたマーベラスサンデーがいつの間にか傘がなくなっていたらしく、
体を濡らしながら散策をしていた。マベトレはその姿を見て呼び止める。
「マベー、雨に濡れたままだと風邪を引いちゃうよー☆」
「えへへ、濡れた感じもマーベラス★くしゅん☆」
「もー、帰ったらお風呂だからねー☆」
そうしてマベトレはバックからタオル取り出し、そして自分より高くなったマーベラスサンデーに背伸びをしてそれを掛ける。
「それとー、二人で一緒にいたほうがより一層マーベラスでしょー☆」
「ありがとうートレーナー☆トレーナーと一緒☆★トレーナーと相合い傘☆★マーベラス☆★☆」
相合い傘という単語聞いて、いまさら気づいたのかマベトレは顔が少し赤くなっていた。
――――しとしとした春の雨相合い傘をした2つの小さな影が学園に帰っていく
≫174二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 21:30:19
(汗で張り付くなぁ…)
トレセンの一角、湿度100%の蒸し暑い日にファイトレ(男)はキッチンでせっせと動いていた。
「さてと、後は…」
「あの、いいのですかぁ?」
「おう、オレたちの分まで作ってくれるなんていいやつだなファイトレ(男)!」
「いいよ別に、どの道多めに作らないと足りないから」
背を丸めるスイトレと、担当を彷彿させるノリを見せるゴルトレ。勿論理由は彼の料理を昼に食べることである。
そんな二人に笑顔を見せるファイトレ男だが、その服装は薄く汗で張り付いていた。くっきりとする細く締まったボディライン。
さて、そんなことを大して気にしていない彼は隣にある汁と麺を纏めて出すと腕で汗を拭いながら二人に
「はい、おまちどおさま。ひんやりしたつけ麺だよ。」
「お、いい色じゃねえか。スープのベースは豚骨にニンニクマシマシって所か?」
「流石ゴルトレ、一発で見分けてくるね」
「美味しそうだねぇ。」
いただきますという声と共に食べ始めた二人を見つつ、ふと時計を確認する。正午はまだ回ってない。
(今の時間だとファインは授業中かな?こちらから特に連絡しなくてもいつの間にか現れるからな殿下…)
「…なあ、替え玉はあるかファイトレ?」
「うん?あるけど…もっと食べたいなら別の方法があるからね、ちょっと、残ったスープを使うよ」
「あ〜…美味しいねぇ」
ゴルトレの麺…ウマ娘用に多めに盛られたのがなくなったのを確認しつつ、後ろで保温していた炊飯器を開ける。
…炊きたての白米。それをこってりとしたスープと合わせて、トッピングを乗せれば…
「…おじやの完成、中々美味いよこれ」
「…むむ、冷たい豚骨ベースなのに中々イケる!流石だなファイトレ!」
「おかわりが欲しいねぇ」
親指を上に突き立ててサムズアップするゴルトレと黙々と美味しそうに食べるスイトレ。ファイトレはそんな二人に頬を緩めた。
短文失礼しました
蒸し暑い日なので冷たい料理をと。ゴルトレのあの絶妙なハジケ具合とか諸々が足りない気がする…まだまだ精進しなくては…
ファイトレ(男)は別にラーメン以外も普通に作れます。自炊の経験と修行してから料理自体けっこうやるようになったのでね。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part733【TSトレ】
≫21二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:41:18
ザァァァァァ……
朝から降り続けていた雨は雨脚を強め教室の窓を濡らしている。
「そ、それじゃあ、また明日」
「バ、バイバーイ」
授業も終わり、トレーナーの下へと向かう者や帰宅する者らが教室を後にして行く。
不思議と足早に教室から離れた彼女達が教室から出払った後に残されたウマ娘が二人居た。
「エル。貴女に聴きたい事が有ります」
片や、薙刀を持った笑顔だけど笑顔じゃないウマ娘グラスワンダー
「…………ハイ」
もう片方は、真っ青になった顔をマスクで隠したウマ娘エルコンドルパサー
そして、エルの前に置かれているのは折れた番傘。
この折れた番傘、よりにもよってグラトレの愛用していた番傘である。
……他の生徒達は明らかにヤバいのでさっさと逃げたのだ。
「エル。これは?」
「……グラスのトレーナーさんの傘……デス」
「はい正解です。……それで、エルはトレーナーさんの番傘で何をなさっていたのですか?」
「に、日本の伝統文芸デ…「エル」
ガンッ! っと石突で床を鳴らす音が教室へと響いた。
控えめに言って割とガチギレ気味である。
「……テ、テレビで見た、傘の上でボールを回す芸デース……」
「……要するに、他人の番傘で大道芸をしていたら壊してしまった……と?」
「グラス、ごめんなさいデース……」
「……はぁ、まあ、ちゃんと謝ったので罰は程々にします」
「……グラス……!」
「……エル、私はこれからこの壊れた番傘を持ってトレーナーさんの下へと向かいます……貴女は私が良いと言うまで正座していなさい」
「…………ホワイ?」
……その後、教室には苦悶の声をあげながら正座をし続けるエルコンドルパサーが居たとか何とか。
22二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:41:40
「……と、いうことですトレーナーさん」
正座をさせたエルを放置してトレーナーさんの下へと赴いた私は、事のあらましをトレーナーさんに説明しました。
「あらあら、見事に折れていますね~」
「修理は無理そうですかね……」
うっかりロッカーに当ててしまったという番傘は、持ち手の竹と数本の骨が折れてしまっています。
修理出来ない訳ではないようですが、直ぐに出来るという訳でもないです。
「まあ、番傘の方は、また買いに行きましょうか~」
「それでしたら、今度のお休みの日に一緒に行きませんか?」
「ええ、ええ、そうしましょう~」
とまあ、自然な流れでデートの約束を取り付けれた事に内心ガッツポーズを取ります。
……一緒に行かないとトレーナーさんは迷子になってしまうというのも有りますが。
「では、次の……一番の問題といきましょうか〜」
「……はい」
取り敢えず番傘の件は後日買いに行く事で決着が付いたのですが、一番の問題は目の前に有ったのです。
「グラスは雨具を持って来ましたでしょうか~」
「…………無い……です」
そう、二人共雨具が無いのです。
番傘が壊れてしまったトレーナーさんは兎も角、何故朝から雨が降っていたのに私が雨具を持っていないかというと。
朝は寮までトレーナーさんに迎えに来て貰ったから。
という理由です。
トレーナーさんに甘えて不覚を取りましたね……
23二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:42:06
「何か無いのでしょうか~」
そう言ってトレーナー室を漁り始めるトレーナーさん。
私もそれに続きます。
「学園の駐車場まで走るしか無いですかね~」
「しかしこの雨では、車に着くまでにかなり濡れてしまいますよ」
「私は濡れても良いので、校舎前まで車を回しましょう~」
「そんな、悪いですよ……って、あら?」
「どうしましたか、グラス?」
「ビニール傘が……」
車で学園まで来られているトレーナーさん。
その車にさえ乗れれば濡れずに済むのですが、駐車場までは傘も無しで向かわないといけず。
トレーナーさんは自分だけ濡れて車を取りに行くと言っていますが、私は納得できません。
そんな折でした、ロッカーから少し錆びたビニール傘を見付けたのは。
24二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:42:50
「あらあら、この傘は〜」
「そういえばここに片付けていましたね〜」
何て事のない少しくたびれた普通のビニール傘。
ウマ娘となる前のトレーナーさんとの、些細だけど大事な思い出が有る……そんな傘。
「さてさて、帰りましょうか~」
見付けたビニール傘を手に持ち部屋から出て、傘を広げ二人肩を並べて雨が降る外へと繰り出します。
ウマ娘となる前のトレーナーさんに合わせていた傘は、今のトレーナーさんには少々大き目。
それでも私を極力濡らさないように身体を端に寄せるトレーナーさんは、姿が変わっても変わりません。
「トレーナーさん……肩を濡らしていますか?」
「……うん」
トレーナーさんがウマ娘となる前に一度だけ有った二人の相合い傘。
その時のトレーナーさんは、身体が今より大きかった事も有り半身を濡らす程身体を傘から出していました。
私がそこまでしなくてもと言っても、頑なに私が濡れないように傘を押し付けて来るのです。
……結局私が折れたんでしたよね。
そして、きっともう一度言っても私が負けるのでしょう。
だから確認だけして私も心配だと伝えておくのです。
「さあ、早く車に向かいましょうトレーナーさん」
「いえいえ、危ないですし、もう少しゆっくり歩いても良いかと〜」
「トレーナーさんに風邪をひかれる方が困りますよ」
「むぅ……」
さあ、私の事を最優先にする優しいトレーナーさんが身体を冷やし切る前に車へと着きましょう。
この人は、私の事ばっかり考えて自身の事を後回しにしてしまう……そんな人。
だから、私もこの人を護れるように行動するのです。
例え姿形が変われども、心は変わらないトレーナーさん。
ならば私も変わらず支えていきましょう。
25二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:43:19
──その頃のエル
「ノォォォォ……いつまでエルは正座を……」
グラスがいいと言うまで正座をしておけと、怒ったグラスに課せられた罰。
それをちゃんと行っていますが、もう足の感覚が有りません……
罰はいつまで続くのですか……
……というか、グラスはエルを忘れてないですか?
「エル?」
そんな時に届く救いの声、それはエルのトレーナーさんの声です。
「オゥゥ、トレーナーさん?」
「グラスさんから言伝てで「もう良いですよ」との事だよ」
「…………長かったデース……」
グラスからの許しを伝言してくれたトレーナーさんの言葉に、やっと終わったと安堵して立ち上がろうとしました。
「…………あ、足が痺れて立てまセーン……」
「ええっ! ……えっと、はい、手」
「ソーリー」
優しいトレーナーさんに手を取って貰って、エルは何とか立ち上がろうとします。
ですが……
「エル? うわっ!」
痺れた足に力が入らず転けてしまいました。
26二次元好きの匿名さん22/04/14(木) 23:43:39
(ウウッ、転けてしまいました。 ……って!?)
なんとエルは、立ち上がろうとしてそのまま前に転けたのでトレーナーさんを押し倒す形になったのです。
現在エルの顔の前に有るのはトレーナーさんのお腹……
(あっ、トレーナーさん少し筋肉が付いてマース……いやいや、落ち着くデース深呼吸デース)
取り敢えず落ち着く為にトレーナーさんにバレないように深呼吸します。
(あっ、トレーナーさん少し汗ばんだ匂いがしマース……カァァ!!)
エルは……エルは弱いデース……
「エル?」
そんな葛藤をしている時、エルはトレーナーさんに呼び掛けられました。
「トレーナーさん?」
「その……退いて貰っても良いかな……その、当たってるから……さ」
そう言っているトレーナーさんは顔を赤くして横を向いてます。
……当たってるとは何でしょう?
そう思い考えると、自分が立ち上がる為にトレーナーさんの手を引っ張っていた事を思い出します。
そして引っ張っていたせいでトレーナーさんの手はちょうどエルの胸の辺りに下敷きに……
つまりトレーナーさんが顔を赤くしていた理由は……
「…………フゥー」
「エ、エル? どうしてまた正座を……?」
「必要だからです!」
「えっ、ええ!?」
トレーナーさんの上から一瞬で退いた私は再度正座しました。
そしてそれは私が心頭滅却出来るまで続くのでした。
うまぴょいうまぴょい
≫37二次元好きの匿名さん22/04/15(金) 00:32:11
エルトレが仕事を終えた。彼は伸びをし、首をポキポキと鳴らすと、冷蔵庫からプリンを出した。
「エル、食べるかい?」
「本当デースか!?」
それをエルに差し出すと、彼女は受け取ろうと立ち上がった。しかし立ちくらみのせいで上手くバランスがとれず、フラリとよろけてしまった。
「危ない!!」
そしてそれを支えようとエルトレが急いで横に滑りこむ。しかし数瞬ほど遅く、2人まとめてくんずほぐれつ、と言った体勢になってしまった。
エルの胸に当たるは主張する彼のその双丘。
エルの脚に絡まるはむちむちとした両の腿。
自身の体の80パーセントは密着している。
そんな状況を一気に認識したエルの性癖は増えた
≫39ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:07:37
都内某所。高層ビルにて、僕ことフジトレとフジは、食事を取っていた。
まあお察しではあるだろうけどこれはいわゆる高級レストランって奴で。
本日4/15はフジの誕生日。
まあ要するに、僕たちは誕生日パーティーを行っていた。
「……それにしても。よかったの?フジ」
そう僕が言ってる間に、本日のメインが運ばれてきた。
鉄板の上でじゅうじゅうと、僕に聞きなれない音を出しながら焼かれる肉塊。
確か200gだか300gだかの黒毛和牛のステーキ、だったような気がする。
正直、ウマ娘になる前は匂いだけできつくなるから見たくもないタイプのものだったけれど、ウマ娘となった今では、かなり食欲をそそられる。
……何せ、僕の人生初めてのステーキなのだから。
「折角の君の誕生日なのに、僕ばっかり得させてもらっちゃってるんだけど」
40ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:08:04
話は一週間前くらいに遡る。
それはフジと一緒に何の気無しに朝のテレビを見ていた時のこと。
なんか都内の人気店紹介を見ながら何の気なしに呟いたのだった。
「そういえばステーキって食べたことないなあ」
……と。
で、その日の夜に誕生日のデートの要望を渡された訳だけども、そこにはものの見事にステーキが有名なレストランの名前が前に行きたいと公園に並んで鎮座ましましており。
要望とは書いてあるものの明らかに僕を喜ばせるためのデートコースだった。
41ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:08:36
で、まあそんなこんなで午後のトレーニングは休みにしてデートしていた訳だけども説明不要なレベルでしっかりとエスコートされて、今に至る。正直なところ至れり尽くせり過ぎて、どっちの誕生日か分からなくなってくる。
おまけに無理目な勧誘とかナンパとかも普段なら僕の方が断る側なのに(フジは普段は強く断れない)今回ばかりはフジの方がきっぱりスッパリお断りしているので、なんというか少々いたたまれない。
そんな僕を見てフジは、微笑んで答える
「私は貴方に喜んでもらえるのが一番嬉しいんだよ」
……まあ、そんな気は薄々してたんだけど。
フジは誰かを喜ばせるのを生きがいとしているから、恋人が喜んでくれるのであればそれが一番のプレゼント、ということだろう。いつかの温泉のときもそうだったし。
だからまあ、納得いかないのは、僕の方、という訳で
42ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:09:02
(いや、考えすぎるのもアレだ、とりあえずステーキ食べよう)
お題は僕の方が持ってる訳だし。
そう思ってナイフを使って目の前のステーキを切る。
ナイフはまるで豆腐か何かを切る様にステーキに沈んでいき、断面は奇麗な桃色で赤い肉汁が溢れだしている。
流石に素人の僕でも分かる。これ相当に(お値段だけあって)上等なステーキだ。
(初体験のステーキがこれって、後で他のステーキ食べられなくならない?)
そんな変な方向の心配をしながら、切り分けた肉を口内に運ぶ。
(……おいしい)
肉汁が噛むたびに溢れて肉の味をしっかりと伝えてくれる。
おまけに掛かってるソースもこれまたお肉とマッチしながらもあっさりしてて美味しい。
「美味しそうで良かった」
いつの間にやら僕は幸せそうな顔をしてたらしく、ちょっとバツが悪いような気分になるけど、恋人と食べるステーキに叶うものではない。人生初体験のステーキの幸福感が気まずい気分を楽々と押し流していく。
(ウマ娘になれなかったら、こういうものも食べられなかったのかな)
そんなことをふと思う。
あの日体が変わって、フジと行ける場所は本当に増えた。行けなかった場所に多くいって、食べられなかったものを多く食べた。その全部が楽しい思い出になった
ここだって、今日来なかったら食べられなかっただろう。
僕としては普通の人生を手に入れられたことも嬉しかったけど、僕がフジを縛らないで済むようになったことが、何よりも、嬉しかった。
そんなことを考えながら食べ進めていたら、ついに最後の一切れになっていた。
「また、食べに来ようね、フジ」
そうして、健康になったからこそ出来る約束をする
「もちろん」
43ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:09:23
夜風に当たりながら、僕らは二人で歩いていた。
街はずれとは言っても、街頭がそれなりにあるおかげで、さほど暗くない。
「ごめんね、トレーナーさん」
そんな中、フジは藪から棒に切り出す。
「どうしたの?」
「今日ちょっと嘘をついた」
フジはそういいながらこちらへ向きなおる。
「本当はね、貴方の初めての幸せを独占したかったんだ」
そう言う彼女は、月に照らされてこの上無く綺麗だった。
「前までは一緒に行きたいところも、一緒に食べたいものもいっぱいあったけど、行けないところもいっぱいあったから」
思い返せば、ウマ娘になる前は、そういったことの連続だった。フジがどこかに行こうと提案して、僕が体の理由から断る。そういったことが何度もあった。
多分、言い出せなかったけど、自分の中だけで思いついたけどナシにしたものも多かっただろう。
「だから、一番最初は私がよかったんだ」
44ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:10:22
そういう彼女は、少しだけ、バツが悪そうな顔をしている。
僕に対する独占欲と、それに対する罪悪感
それが気まずくてちょっと胡麻化してしまったこと……そんなあたりだろうか
でも、それは今更なんだよ、フジ。
前にも言ったけど、僕は観客じゃなくて、君の隣に居たいんだから。
「……本当は、もうちょっと後に渡そうと思ったけど」
今渡してしまう方が、確実に良いから。
「はい、誕生日プレゼント」
そう言いながら、手提げから小さい紙袋を取り出した。
「誕生日おめでとう、フジ」
「ありがとう、トレーナーさん」
それをフジへと手渡す
「開けてみて」
僕に促されて、フジは紙袋を開けて中身を取りだす
入っていたものを確かめたフジは、驚いた表情をした。
「……ブレスレット、かな」
それもかなり大き目で太い。
多分、それを贈った意味を、フジは気づいている。
「うん」
去年はネクタイピン。プレゼントの意味は、「あなたを支えたい」とかだったはず。
……あの時は年のせいもあって、絶対にこんなもの渡せなかったし、こんなこと言えなかったけど
「僕はフジのものだから、そのワガママはいつでも聞いてあげる。いつだって」
実際は人付き合いもあるから、全部とはいかないだろうけども。それでも、先に独占したいものはいくらでも言ってくれれば聞くから。
……一方的に幸せにされっぱなしには、されたくないから
「だからその代わり、フジの隣はずっと僕に独占させて」
『ずっと一緒にいて』『あなたしかいない』、太ければ太いほどに、束縛は大きい。
それがブレスレットの持つ意味。
45ハッピバースディ!!!22/04/15(金) 06:10:39
「……それで、いいよね?」
勢いで言った言葉に恥ずかしくなってきて、自分でもちょっと顔が赤くなってる自信がある。対するフジも、珍しく驚いた表情で固まってる。こんな表情を見たことは、人生でも数えるぐらいしか無い気がする。
「……トレーナーさん」
こちらにゆっくりと近づいてくるフジ
「なに?」
その言葉を言い切るより前に、僕の頬に手があてられて
キスを、された
(~~~~~っ!?)
言葉にならない。相も変わらず不意撃ちでサラッと僕の愛バはこういうことをしてくる。
もうやることまでやり切ってるのに、本当に手慣れてるから、おぼこみたいに毎度照れさせられてしまう。
「返事は、これでいい?」
フジの方はというと、珍しく余裕があまり無い、真剣な表情をしてる。
いい。間違いなく完璧に分かる返事だったけど。
僕は一方的に幸せになるのは嫌だから。
「……もう一回」
再確認を要求して、お互いにキスをした。
≫56二次元好きの匿名さん22/04/15(金) 08:10:00
「…ん?何やってんだろファイトレ(女)」
…トレセンの中にある倉庫、その開いた扉から数歩入り込んだ所で立つファイトレ(女)に、ドベトレはふと疑問を抱いた。
彼女は倉庫の中を見回し少し考え込むと、視線を左腕に向けて右腕を動かし掴む。何かをしているようだ。
「あの義手…ビックリドッキリメカみたいに色々出来るが、何を………!?」
彼女が右手に持つのは細い円筒形の物体。恐らく、注射器。それをおもむろに首筋に当てようとしていた。
(まさか、危ねえクスリか!?)
そう判断したドベトレはコンセントレーションを決めて全力で走り出す。注射器を彼女から奪おうと突撃する。
「…ん?」
全速力で突っ込んできたドベトレをファイトレが視認した時には後一歩という距離で、右手にドベトレが手を伸ばし…
「ッ!」
「…なんだ、ドベトレ?」
逆に彼女の体捌きで勢いを殺され地面に体を押し付けられる羽目になった。注射器は投げ捨てられ注入済である証拠に。
「…これか?ああ…安心しろ、ただの活性剤だ。恐らく君が危惧していた危ない薬とかではない。」
「…は?」
「何、いくらの私でもこうなる前はただの女性の体だからな。どうしても筋力とかで男性やウマ娘に劣る部分は存在する。」
「いや、あんた大分パワーある方だったよな?それで劣るって…」
「だから一時的なブースト用に使ってたんだ。今回は力がいりそうだからウマ娘の体でも効くのか実験も込みで使おうと思ってな」
投げ捨てた注射器を回収し、展開した左腕の3本分の格納場所に入れる。パタリと閉じたのを確認して視線を上げると
「さてドベトレ、ちょっと引っ張られてくれるか?」
「あ、ああ……うおっ!」
ファイ女に掴まれたドベトレはいつもより強い力で引き寄せられる。でも、しっかりと倒れないように彼女は支えていた。
「どうやら効き目はあるようだな。」
「眼の前でドーピングを見せられるのか…まあいい。オレも手伝うぞファイトレ(女)、何をすればいい?」
「そうか、助かる。ならまずは…」
…倉庫での仕事は二人分とブーストしたことですぐに終わったらしい。
短文失礼しました
お薬を使うファイ女と勘違いするドベトレです。当たり前だけど禁止薬物ではないし、彼女もドーピングを勧めたりしません。
比較対象がウマ娘とかなせいで筋力に劣ると評価するヒト耳の頃のファイトレ(女)。でもその頃からゴリウーです。
≫105二次元好きの匿名さん22/04/15(金) 21:19:22
『マーベラス☆な目覚め』
――マベトレの朝は遅い
朝日が世界を照らし人々が活動はじめる時間
ぬいぐるみやクッション、フリフリとした服などが増え、
すっかりと少女趣味風味となった部屋には未だ夜闇が取り残されてる。
朝練のため、早朝からの前準備、はたまた前日からの忘れ物を取り戻すなど様々な理由で早朝から活動する人たちはここトレセン学園には多い。
しかしながらマベトレは夜型という性質のため、寝入りが遅くこうして朝も遅くまで寝ているのであった。
それは、最近特別というわけではなくウマ娘になる前からの本来の気質であった。メスガキの因子から多少その気質は強化はされているが、
「ファイオーファイオーファイオー……」
外でウマ娘たちが早朝トレーニングをしている声を布団の中から出したウマ耳がピクピクと反応する。
しばらくの後に、マべトレはもぞもぞと布団の中から這い出し、女の子座りした状態でぼーっと虚空を見つめる。
大きなUMAYAのサメぬいぐるみを抱え、半透明なネグリジェを着た姿は、少し大人ぶった幼いウマ娘のようであった。
そのマベトレのとろんとした瞳には光が宿っておらず、むにゃむにゃと未だ夢心地であることを示していた。
――数十分とその場から動かないマベトレに、カーテンからの漏れ出た光が次第に差しかかる。
足元にあった光は腹から胸元。そして顔から瞳へと――
陽光が瞳を覆うと、いままで光の灯らなかった瞳に星型の光が宿りはじめ見知ったマベトレの瞳へとなる。
それと同時にマベトレの見ている世界は一気に綺羅びやかなものへとなっていった。
「マーーーベェェラァァス☆」
――その叫びとともにマベトレの意識は完全に覚醒し、マーベラスな一日が今日も始まるのであった。
≫129二次元好きの匿名さん22/04/15(金) 23:10:41
とある春の日、トレセンも相変わらずの賑やかさを見せて、トレーナー達も新年度早々ということで襟を正す中
「…髪の毛を触りたい?」
「は、はい。皆様の髪の毛がどうなってるのか、少し気になって…」
ウオシスに聞かれるキタトレ。彼女が皆の髪が気になって周っている中で、キタトレにも番が周ってきた訳である。
「ふむ…いいわよ。とはいえ、私の髪は軽く手入れしてるだけのそこまで風変わりなものでもなんでもないわよ?」
「大丈夫です!」
そういうやいなや、キタトレは簪を外し纏めていた髪を伸ばす。流石の毛量と長さ、ふわりと黒色がたなびいていた。
「では…」
まずは丁寧に触る。程よくさらさらと抜ける髪を手櫛で軽く梳きながら、髪から漂うシャンプーの匂いを嗅いでみた。
…ほんのりと、薄っすら甘い匂いがするキタトレの髪。それだけではなく、簪もどうやら香り付きの代物のようだと気づく。
「簪から、匂いが…」
「ふふ、私はシャンプーとかそこまで匂いの強くないものを使うから、こういうのと合わせやすいのよ」
「…おや、楽しんでるみたいですねウオシスさん、キタトレさんの髪はどうですか?」
「!?」
いつの間にか後ろに現れたウラトレにびっくりするウオシス。キタトレは視線を合わせることなく
「こんにちはウラトレさん、純真な彼女を驚かすのは中々いい性格とは言えませんね」
「…そうでしょうか。私は先程から後ろにいましたし、貴方も気づいてたのに黙ってるのであれば一緒ではありませんか?」
うふふとシンクロして笑う二人。勿論耐性のないウオシスは二人の戯れにオロオロとしだし、ウラトレは
「ウオシスさん、キタトレさんの髪は色々な髪型にするのに丁度良いのでぜひ試してみるといいですよ」
「なるほど…!」
櫛と髪留めを手にキタトレの髪を弄るウオシス。ウラトレも当然のように参加しては二人で色々と試していた。
「…しかし、この油は随分馴染みがいいわね。ウラトレも少し髪を弄るついでに試してみてはどうかしら。…いくら短いとはいえ、何もヘアアレンジ出来ない訳ではないでしょう?」
「…」
「…ウオシス、後でウラトレにもやってあげるといいわ。ついでに短い髪で何が出来るか試しておきなさい」
「はい!」
「まあ、構いませんが…些か強引ですねキタトレさん?」
「あら、私は善意で彼女に言っただけよ?」
…どうやら、気兼ねなく振り回し合う関係のようだった
≫139二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:00:07
──某マンション。私の部屋。
「本当に温いですねこれ……」ホワホワ
髪を下ろしたネイチャinキルンケットが目の前でぬくぬくしている。かわいい。
「でしょ? 今日は本当に寒くって……数日ぶりにコタツを引っ張り出そうか真剣に考えた」
「雪国育ちがなんとまあ寒がりな……あれ? じゃあ逆に暑いのには強かったり?」
「順当に弱いです……」
「でしたねー……」
項垂れる私を萌え袖もどきの毛布でよしよししてくれるネイチャ。
そんな愛しの担当が外泊許可を勝ち取ってきた今日。私の部屋に夕食の食材を持ってやってきてこの子と一緒に料理して、食べて、そして金曜ロー⚪︎ショーを見て、見終わってから簡単にシャワーを浴びて……そこからダラダラと過ごして今に至ってる。
……はあ。にしても湯上がりネイチャがかわいい。温泉旅行の時もそうだったけど、大変かわいい。好き。
「……あのー? あんまし黙って見られっぱなしというのも落ち着かないんですけどー?」
「だって普段見れない新鮮なネイチャだから、見入っちゃう」
「ほーー? そんなに……あ、いや、やっぱいいや」
「……うん。そんなに言うほどだよ。かわいい。一番かわいい」
「んーもう!やっぱいいって言ったのにー!」
「ふふ、いい加減慣れてよ」
「もう五年くらいください……」
「会ってもう5年だよ? 10年かけないとダメかー」
「いや……なんか一生慣れてないビジョンが今チラッと見えた」
「ネイチャらしいねぇ……」
それはつまりお婆ちゃんになってもかわいいかわいいと言っている私がいるということだ。まあ言ってそうではある。というか、かわいいお婆ちゃんになってそうだよねネイチャ。
「……てりゃっ」
「あうっ」
ネイチャの弱チョップが脳天に当てる。そんな失礼な想像してないのに……。
140二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:00:21
「……あと数分だね」
「なーんで本人以上にトレーナーさんがソワソワしてんのかね」
「……私を見て逆に冷静になっちゃってるパターン?」
「割とそれ。あと、パールさんとシチーさんと……しかもイクノとも一緒なもんで」
「めちゃくちゃ被ってるよねぇ……」
「少なくとも全く知らない面子じゃないのはラッキーって感じ。パールさんもシチーさんもトゥインクルシリーズで少し?交流があったし、イクノは言わずもがなで。明日会えるか怪しい前者二人にはもうプレゼントも渡してますから」
「本当にネイチャは顔が広いね」
「こう見えて付き合いは色々とありますし。誰彼ともなくというほどじゃないですけど」
「でもイクノには渡さなくていいの?」
「なんとなーく予感はしてるんですよね。パーティ的な催しで会える予感が」
「……ソッカー」
バレてる。色々用意してるのがバレてる。こちらから聞いてみよう。
「ネイチャこそ、なにかプレゼントほしくない?」
「……」
「……あ」
この緊張感と沈黙はアレだ、ちょっとエッチなの考えてる時の間だ。でも分かるよ。バッチこい。……なんてね。
141二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:00:48
「……トレーナーさん」
「なぁに?」
何を言いたいのかの見当なんてついている。でも、私に似て変にシャイなこの子が自分から口にしようとしてる。邪魔はしない。
「プレゼントは要らないです」
「うん」
「だから、その代わりに。これから一年、一緒にいて下さい」
「……うん」
「特別じゃない感じで一緒にいてください」
「……うん。そう言うと思ってた」
「マジ!? うにににに……トレースされまくってる……!」
「ふっふっふ、どれくらいの角度で斜に構えてるかお見通しだよ?」
「いや! アレですよ! 『やましい事考えてるんじゃ……』て思ってたでしょ??」
「実際考えてたんじゃない?」
「…………」メソラシー
「……でも、ちゃんと軌道修正するって分かってた、よ!」
「のわっ!?」
キルンケットに潜り込む。二人羽織っぽくなったけど、さらっとネイチャを後ろ抱きする。ああ、腕の中にこの子がいる安心感が心地いい。
142二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:01:02
「でもさ、一年だけでいいの? 『アタシの残りの人生半分あげるから、トレーナーさんの人生半分ください!』的なのでもよかったんだよ?」
「また何かの漫画のセリフですか? そういうのは……プロポーズのタイミングにでも言いますよ」
「……すんごい予告されちゃった」
「伊達酔狂で両方の親からOKもらってませんから?」
「そうだった……!」
「外堀は二人して埋められちゃってんですから、い、いい加減覚悟しといてくださいねー」
ネイチャは恥ずかしそうに、でもそれが当然であるかのように言ってのける。
……すごいねネイチャは。
好きだとか、愛してるとか、そういう今の気持ちを言葉にする事なら私の方がずっとスムーズにできるのに。「一緒に居よう」とか「添い遂げよう」ってところまでしっかり考えているのはネイチャの方だ。
「……やっぱりネイチャはすごいよ」
「散々『やれば出来る子!』って煽てられまくってここまで来てんですよ? もうどこまでもやれなきゃウソでしょ」
「かわいいだけじゃなくてかっこいいとこもあるから、好き」
「っっ……。まぁその、こんな感じでちょっぴりお姫様扱いもするんで、その……」
「……うん。私もたまには王子様役、がんばるね」キリッ
「えへへ、たまにでいいんで……あ、でも無理して凛々しい顔しないでいいですから。……プクク」
「な、なんで笑うのぉ!?」
「いや、だって振り向いたらなんか……クク。顔の造りとしては似合ってる表情なのに、中身と違いすぎてギャップが……!」
何も知らなきゃ、あと黙ってさえいれば超美人なのにねと笑うネイチャ。いや、その評価はゴールドシップと同じでなんかすごく複雑だよ私。
143二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:01:20
「……そろそろかな?」
「……うん」
「ネイチャもまた一つ大人に近づいて……というか成人年齢を考えるともう大人?」
「……もう少しだけ子供ってことで」
「……そっか。じゃあやっぱり手を出すわけにはいかないね」
「でも、キスぐらいしてくれてもバチは当たらないと思うんだけど?」
「……このままの姿勢だと後頭部か、がんばってもほっぺだなー」
「に゛ゃああああ! 向き、向き変える! 変えるから腕どかして!」
「やーだぁー。このまんまがいーいー」
じゃれるように腕に力を込めるけど、ネイチャにはかなわない。一つのキルンケットの中で、あっという間に向かい合う姿勢になる。
「……あの。もし、もしですよ?」
「うん」
「この期に及んで、その……」
「うん」
「……『トレーナーさんが欲しい』って言ったらどうしますか?」
「あげる。全部あげる」
我ながら即答。でも悩むところがないから仕方ない。
「……ちょっと勇気が足りてないんで後日……」
「ネイチャのヘタレ」
「ヘタっ!? ……トレーナーさんから来てくれてもいいんですけどー!?」
「いってもいいなら今からでもいくよ!!?」
「……ま、また後日……!!」
「ヘタレー」
楽しくなってきたけど、あまりいじるのは勘弁してあげよう。大事な瞬間にもう一分もないし。
144二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 00:01:41
カチッ。
時針、分針、秒針。全ての針が12を指した。日付が変わった。
目の前の女の子を見る。
見慣れた彼女の、きっと見慣れることになる姿に改めて胸がときめく。
……数多の祝われるべき命の中で、私が一番に声をかけたいのはやっぱり貴女だなって。
「誕生日おめでとう。ネイチャ」
「うん。ありがと」
まだ少し臆病で、でも貴女が大好きな私から。
今日という日に生まれた優しく素敵な貴女へ。
ちょっと照れくさそうにおめでとうを受け取る彼女に小さなキスのプレゼント。
今日からまたよろしくね、ネイチャ。
(終)
≫153二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 07:03:28
『理論、感覚、天才、秀才』
昼下がりの食堂、月毛のウマ娘と芦毛のウマ娘がだらだらと食事と雑談を続けている。
一方は焼肉定食をほおばり、もう一方は天丼をかきこみ、腹を満たしながら時を過ごしていた。
「そういえばなんだけどよ、ブラトレがまだ担当持ってなかったころあるじゃん」
「マジでそういえばレベルだなそれ。何年前?もう4~5年近く前にならない?」
月毛のほう、ハヤトレが芦毛のほう、ブラトレへと話し始める。
「いやほんと最近思い返したことだから許してくれよな?あの時ハヤヒデさんのトレーニングに付き合ってくれたんだってなぁ。なんか……ありがとな!」
「めっちゃふわっとしてるな……あの時ハヤヒデさんと会ったのは偶然だぞ?ブライアンのスカウト上手くいかないなーって時にたまたま河川敷で出会って、なぜかその流れでトレーニングに付き合うことになった」
「それでよくトレーニングできたよなぁって話よ。俺も一応理論的な部分のざっくりとしたとこだけは勉強したんだけどよ、結局実践しかねえ!思い付きだ!って感じでトレーニングすることが多くってさあ」
「完全に感覚派なんだなハヤトレ……」
「ぶっちゃけ教本開いてた時間よりハヤヒデさんのトレーニングを自前で考えてた時のほうが長かったまであるな」
しみじみと思い返す姿。三冠のうちの一つを勝ち取り、その後も多様なG1レースで勝利を挙げたウマ娘のトレーナーとは思えぬ姿がそこにあった。
「まあそれであれだけ実力を発揮できてたってんなら十分なんじゃねえの?」
「んー確かにそうだな。あとな、河川敷のトレーニングの時のデータをハヤヒデさんがしっかり記録してくれててさぁ、その時はどっから出たやつなのかわかんねえけどまあいい感じに使えそうだったから使っちまうぜーって感じでジュニア期からクラシック前くらいの基礎トレーニングに使わせてもらってたのよ。で、今更ながらその頃の話してた時にふとハヤヒデさんが教えてくれてなー。じゃあこれブラトレがやってくれたことじゃん、すげぇ!って。……あとその日はそろそろメイクデビューだってのに所用が入っちゃって、早めにトレーニング切り上げる羽目になっちゃってたし……本当に助かったんだぜあれ」
「それはまあ、何よりだな。……その時は本当に手持無沙汰だったからってのもあったしなあ……せっかく色んな事勉強したのに活かせないってぐるぐるしてたから」
154二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 07:03:43
「何つーか……ブラトレって割と努力の人!って感じだよな。あとからあとから積み重ねてんの」
「んー、まあそうかもしれんなぁ、俺自身はそこまで凄いことやってるとは思わんし。正直な話ブライアンの強さに頼ってた部分もないとは言い切れない」
「だがそれを引き出せたのはお前だけだってハヤヒデさんも言ってたぞ?だから気にすんな、お前の実力はお前のもんだぜ!」
ニコッと笑いながらハヤトレはブラトレを褒める。臆面もなくこういった言葉を伝えられるのが彼の良いところでもあると、ブラトレは認識している。
「まあそう言ってくれると有り難いがね。考えてみれば俺とハヤトレと、担当のブライアンとハヤヒデさんと……案外正反対な部分を持ってたりするよな」
「ハヤヒデさんはもう見るからに頭良いからな!実際頭もいい!ルックスも完璧だ!」
「逆にブライアンは割と感覚派な気がする。結構頭の中でレースのシミュレートしてたりするから、自分の中でのイメージを結構大切にしてるんだろうなって思うな」
「あと見てる限りだとブライアンちゃんって結構ワイルドな走りするよな。ハヤヒデさんと姉妹だってのに結構走り方違って驚いたなあ……」
「スパート時の体勢って人によってかなり変わってくるからなあ。ハヤヒデさんの場合少々起き上がり気味だが、ブライアンの場合は限界ぎりぎりまで傾けてるからそういう部分でも結構個性が出る」
「あ、そういう部分も結構違うんだなぁ」
「本当に癖や走りやすさが人によって大きく変わるからなぁ……この部分は色んな人が変えようとやってみて結局変わらないってケースが多いんだよ。思ったよりスピードが出ないとか、体勢を崩しやすくなって結局遅くなるとかで」
「ほぇ~……色々知ってるなあ」
「まあ先生にしっかり叩き込まれたからなー……そういやハヤトレってどういう風に勉強してきたんだ?マジで感覚だけでここまで来たのか?」
「……実のところあんまりがっつり勉強ってしたことないんだよな俺。トレーナー資格試験もザラザラって教本読んで、試験のところとかはいい感じにやってきた」
あまりにもあっけらかんと言い放つその姿には、もはや語る言葉もなし。天才はいる、悔しいが。
「……マジでお前天才なのかもしれんな」
「褒めても何も出ねぇぞー?」
155二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 07:04:26
「ま、結局天才だろうが秀才だろうが凡人だろうが何だろうが、トレーナーがトレーナーとしてやっていくには思いの強さも大事なんだろうな」
「そりゃそーだろな、俺はハヤヒデさんに対する思いならだれにも負けてない自負があるぜ?……あーでもブライアンちゃんはどうだろ、家族だしなあ」
「家族とかのベクトルと比べりゃそりゃ違いは出るだろうよ」
「まあそっかー」
ぐいっとコーヒーの入ったカップを傾けると、ブラトレは軽く座りなおしてまた話し出す。
「大成するにしろしないにしろ契約に誠意をもって続けていくのであれば、一人一人のウマ娘競争者たちとしっかり向き合っていくってことは大事だろうな。まあチーム率いてる俺が気軽に言える言葉か……?っていうのはあるけど頑張ってるんで……」
「いやいや、結局身を粉にして働いてんのは同じなんだからだれも否定しねえって」
「まあ今の時代いろんな人が残してくれたノウハウが蓄積されてるからこそ、ここまで俺たちが活動できるわけだしなー。先達には感謝しかないな」
「今度ヘリオスんとこの爺さんトレーナーを労りにでも行くかぁ」
「んーそうだなあ、たまにはそういうのもアリだな。なんか料理でも作ろうかねぇ」
「俺もそれ食べていいんだよな?」
「まあ一緒に食べるんだったらそうだろうよ」
連綿と続くウマ娘たちの走りの歴史、その一部であるトレーナーたちの歴史。
才あるものもそうでないものも、ただ己の相棒を信じて修練に努める者たち。
いずれ星へと届くまで、ひたすら走れよウマ娘。
≫171二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 10:57:55
ごめんなさい、タキオン。午後のモルモットには、行けません。
私は今、山の中にいます。
さっきまでトレーナー室にいたと思ったんですが、何故かここに居ます。
空は夕焼けみたいに藍色と茜色が混ざり合っています。木々のざわめきがやけに耳につきます。
ちりん、ちろん、と、先ほどから向こうのほうで鈴が鳴っています。何でしょう。行ってみましょうか。
道中はなぜか玉石が敷かれています。誰かの所持する山なのでしょうか?
おや、真っ赤な鳥居があります。とても立派ですね。100人のうち98人が立派、とまず思うような鳥居です。
どうやらこの奥から鈴の音がしているようです。
石畳で舗装された道には伏見稲荷のような鳥居が連続して立っています。石灯籠や提灯なんかも少し嫌なくらいに明るいです。
いくら歩いたでしょうか。気がつけば何故か川に出ていました。船頭さんも楷を持ってこっちを見ていますね。
やっぱり鈴の音は向こうから聞こえてきます。ここでの向こう、とは川の対岸のことです。
おや、船頭さんが手招きをしています。行ってみましょう。
「6文、あるか?」
もん、とは、はてさて聞きなれない通貨の名前ですね。ポッケを探ってみましょう。
「これですか?」
手の先にこつんと当たるような感触。それを引っ張り上げてみれば手の中には六枚の見慣れない貨幣がありまえひた。真ん中には50円玉のような穴が空いていますが、小指の爪の先ほどの小さな正方形です。
「おう、結構だ。乗りな」
そう言われて船に乗りました。きい、きい、とゆっくり楷をこぐ音が水面に消えていきます。向こう側は相変わらず霧で覆われて見えません。
「あの〜」
「ん?」
船頭さんに声をかけます。向こうのほうに大きな百足が居ます。
「あれ、何ですか?」
「ありゃ大百足だ。別に変なことしなけりゃ襲ってはこね…ぇ…」
172二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 10:59:31
どうやらあの百足はこちらにくるようです。ふと何故かクロヤマアリ達を思い出しました。
シャーー!!と、鉄道のブレーキを急にかけたような、世界中の森林が一気に囃し立てるような、腹の底から生理的な、生物としての本能的な恐怖を無理に顕にさせる金切り声をあげ、私が元いた方からこちらに向かってきます。
その土星の輪でも切り裂くかのような顎(もちろん土星の輪は幾万もの小惑星でできているのは承知の上での比喩です)で私を挟み込んできました。しかし何故か恐怖や慄き、絶望といった感情はありません。むしろ私は彼と会ったようなことさえある気がします。
そこで、目が覚めました。
まず、辺りを見回します。どうやらここは保健室です。見覚えがあります。
そして枕元にはフクトレさんにカフェトレさんがいます。腹の上ではカムちゃんがトグロを巻いて寝ていました(もちろん彼(?)は蛇ではありません)
「お、起きたか」
「タキトレ(養)さーん!不タキさん起きましたよ!」
どうやら何か知っているようです。よいしょ、と体を起こしました。腕には点滴が付いています。
「やっと起きたね。何が起こったのか、分かるかい?」
さっぱり、わかりませんでした。聞いてみるとどうやら突然廊下の、しかも往来のど真ん中でばたりと、前触れも何もなく倒れたようです。
「君がやった罪状、わかる?」
タキトレさんの目が笑っていません。耳も前例がないほど絞られています。これは死を覚悟せざるを得ません。
「えっと……まだ頭がぼんやりしてて……」
「5徹で睡眠は合計2時間未満、ご飯はゼリー飲料とサプリと加えてリポDも何本飲んだの?」
「……あ」
思い出しました。タキオンのGⅡレースがひと段落して、次のレースに備えていたんでした。
「本当にすいません。それはそれとして、何故カフェトレさんとフクトレさんが?」
「それは俺から説明しよう」
フクトレさんが手を挙げました。しかし目の模様がどこかいつもと違います。フクキタルさんのしいたけ目を少しずらしてXにしたような目です。
「倒れる寸前に俺が後ろにいて、たまたまざっと霊視したら不タキの魂が抜けてくのが見えた。その後急いで脈を測ったら相当弱ってたから、急いでカフェトレ、セイトレ、ブルトレ、カムちゃんを集めた」
173二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 11:00:28
それをカフェトレが引き継ぐ。
「その後急いで座標の観測と指定をして、セイブルコンボのチャージと並行してケツパンチの準備をしました。あとはフクトレさんがお札で指定した座標までカムちゃんの魂だけをセイブルケツワープで送ったんです」
それが終わるとひどい罪悪感が胸を苛みました。本当に申し訳がないです。
「この埋め合わせは何でもします。本当に、本当に申し訳ありませんでした」
頭を下げて、精一杯の謝罪をします。
「……じゃあ聞かせろ。なんでここまで無茶をするんだ?」
フクトレさんが、そう聞いてきます。
「何故、ですか。私にとってタキオンは自分そのものなんです。彼女の見る先、それを絶対に彼女へと届けなければならない。そのためなら脚の2本や3本、全く惜しくはありません。まあ、この体になるために一つ、命を捧げましたしね」
その時の私を、フクトレさんは、生きてて1番怖かったと言いました。目の中にはもはや狂気とさえ思えないような、放っておけば本当に命を躊躇いなく投げ捨てそうな意志が燻っていたようです。
「……じゃあ、そこで死んだらどうすんだよ」
「私は死にませんよ。この命も心も体も、未来も人生も人権も全部、タキオンのものですから。勝手に死ぬなんて、それこそ自分を殺したくなりまづよ」
「…………そうか。わかった。じゃあそれを踏まえて、さっき何でもする、って言ったよな?」
「はい、もちろんです」
「じゃあ……1週間ほどみっちり、しごかれてこい」
パンパン、と柏手のような音を立てて手を鳴らすと、ガラガラと扉が開く音がしました。その奥にはフジトレさんとマルトレさん、マルゼンスキーさんがいました。
「おじさん、タキオンちゃんかrw頼まれてね?みぃいっちりと、やってくれたまえ、だって。おじさん張り切っちゃうぞ」
「外でエンジンはあったまってるからな」
「もうバッチグーよ!久しぶりに血が激るわね」
死を、再びそこで悟りました。
174二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 11:00:44
その後、点滴が終わった後に亀甲縛りで縛られ、掟破りの地元走りでミラーから消えそうな走行で峠を攻められました。ボンネットの上の特等席です。
その後は1週間、フジトレさんのお家にお邪魔して、(規制済み)を(カワイイフィルター)されて(見せられないよ)を(検閲済み)されました。それに加えて(SAN値チェック)や(隕九縺ェ?)もされました。
タキオンは泣きついてきました。正直自分の首を太い縄で締めたく、また誰彼構わず腹を殴って欲しくなりました。
あのタキオンの顔は、もう二度と見たくないです。少し、健康を改めてみましょうか。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part734【TSトレ】
≫29二次元好きの匿名さん22/04/16(土) 17:26:39
「これはこれは中々にひんやりとしていますね~」
「……まさか私も狙われるとは思わなかったですね」
春とは思えない程に気温の上がったとある日の事。
今日も今日とてタキオンの為に肉体を労使していた不タキトレは、後方から音も無く忍び寄って来たグラトレに捕まって抱き枕にされてしまっていた。
「ですが〜……少々細すぎませんかね~」
捕まえて最初に思ったのは『ひんやりしてる♪』だったが、その直後に恐ろしく細い身体に気が付いてしまった。
「タバコさんよりはマシじゃないかな?」
「例えマシでも駄目ですね~」
例に出された人も健康に影響が出るレベルで細いが、今は目の前の不健康さんの事だろう。
「ではでは失礼致しまして〜」
「ちょ、わっ、抱き上げないでくれ、前も言ったが恥ずかしいよ」
不タキトレさんの腰に手をやりヒョイッと持ち上げる……前に肩に担いだ時も思ったが、やっぱり軽過ぎる。
……抗議の声も聞こえるが無視です。
「では、このまま養タキトレさんの所へ行きましょうか~」
「ちょっ、離して! やっぱ力強くないですか!?」
そのまま不タキトレは保健室へと連行され。
グラトレに抱きしめられるという拘束を受けながら、養タキトレ特性の栄養満点料理を食べさせられるのだった。
うまぴょいうまぴょい
≫83二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 01:26:35
『らぢお月の調べ』
「どうも皆さん今晩は、本日より満月とともにひと時の楽しみをお送りいたします。月の調べ第一回、進行は私、バンブーメモリー担当トレーナーと」
「マチカネタンホイザ担当トレーナー。よろしく頼むよ」
「ついでにこの俺、ビワハヤヒデ担当トレーナーだ!」
「では皆様、よろしくお願いしますね。さて、なぜこのらぢおが始まったかについてですが……どうも『黒の會』が人気のようでして、他にもなにかやってみたい人はいらっしゃらないかという打診が私たちに来まして」
「それで俺たち、レアカラー組が呼ばれたってわけだな。俺たちはゴールドレアだぜ!」
「その場合あちらはブラックレアになるのかな?」
「どうでしょうね、希少価値というものは見る人によって大きく変わりますから。今回は所用ということで、スイープトウショウ担当トレーナーさんは参加を見送ったそうですが、次回は何とか参加したいとのことです」
「で、そういやなんも決めてないけど何話すのこれ」
「……行き当たりばったりというのも悪くないんじゃあないかな?」
「さすがにキビシーんじゃねえかなあ!?」
「そうだろうと思いまして、私が一つ話題を持ってきております。今回は月に関してお話いたしましょうか」
「そういや今日はピンクムーンだか何だかニュースで言ってたなァ。あれって何なんだ?」
「そうですね……掻い摘んで話しますが、もともとは米国の先住民による呼称のようです。当月で印象的な催し、祭り、そして動物や植物などに因んで、名称を決めたようです。今月の桃色月の場合は春の鮮やかな桃色の花の時期だから、だそうですね」
「へー……向こうでもピンクってのは春のイメージなんだな」
「以前旅行に訪れた際は春先だからか、一面の花畑を見ることができたね。その時の花は……確か、アイスプラントだったかな?」
「どれどれ……なるほど、めっちゃピンクだな」
「これが広々と咲き渡っているんだ。中々壮観だろう?」
「アメリカに遠征レース行ったら観れるんだよな……行くか……?アメリカ……」
「ほかにも、米国に持ち運ばれた桜を華盛頓(ワシントン)で見ることができますね。米国に旅行の際は、一度観光ついでのお花見というのも良いかもしれません」
84二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 01:26:42
「そっかー、成程なー。花見ってのも悪くないな……あーでももう桜の時期バリバリってわけでもないんだよなぁ……」
「ふふっ、桜の花を見るだけが花見じゃあないさ。手元にある花を愛で、そしてともに食事を楽しみ歓談する……それでも十分に花見と呼べるんじゃないかな?」
「おー、そりゃいいな。美味いもん食って楽しめりゃ平和ってもんだぜ」
「桜、といえば桜餅も美味しいですね。バクシンオーさんと、彼女のトレーナーさんがよく食べていらっしゃいますが、偶にご相伴に預からせてもらっています」
「ほー、そりゃ……うらやましいな。やっべ、夜だってのに結構腹減ってきたかも」
「いずれにせよ、その時に合わせた言葉を当てはめていったことによって、少し変わった名称になった……ということでしょうね。以上、つまらぬ蘊蓄を語らせていただきました」
「教えてもらわなきゃわかんねえことだっていっぱいあるしな、ありがとな!」
「ふむ、調べてみたところ本日の夜明け前がちょうど満月のようだ。早起きして、月見に一杯というのも風流かもしれないね」
「休みの日だから酒だってまあ……飲めなくはないな!」
「そのあたりは個人個人の用事と御相談ということで。私は流石に朝駆けに御酒を飲むのは憚られますが、楽しみたい方もいらっしゃるでしょう。飲みすぎず、お楽しみくださいね」
「そうこうしているうちに良い時間になったようだね。では今回の月の調べはここでお開きとしようじゃないか」
「また次の満月の時期になるのか?まあそんな感じでよろしくなー」
「では皆さん、良い睡眠を。おやすみなさいませ……」
≫102二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 10:09:15
◇だいれくとまーけてぃんぐ
「こんにちは。僕、ナイスネイチャです」
「……え?」
4/16も終わりゆく夜。どんちゃん騒ぎのパーティーも終わりネイチャを寮へと送る帰り道。急に立ち止まったかと思うと、突然ネイチャが自己紹介を始めた。……え、僕?
「34歳を記念して今年も……ってあれ? 僕のトレーナーさん何処にいるんだろ? 去年から変わっちゃったのかな……」
「私私。ネイトレここにいる」
「ふえ?」
キョトンとした顔でこっちを見てくる愛しの子。かわいい。でもここまでのやり取りで十二分に分かる。……中身が違う。
……三女神様! 最近大人しいと思ってたらネイチャの誕生日になんてことを!!
「……あなた誰ですか?」
「僕はナイスネイチャです!」
「絶っっっ対に違う!!」
「そんなー……」
しょぼくれる自称ネイチャ。……でもなんだろう。ウソをついている雰囲気はない。だからこそこちらも困惑している……本当に誰……??
「【引退した仲間の再就職を支援しよう!】をテーマに、今年も宣伝部長張り切ってやろうとしてるんだけどなぁ」
「……ちょっと分からなかった。もう一回言って?」
「ごめんなさい。今年のはちょっと難しい話なので、僕にはうまく説明できないです!」
胸を張りながらフンスと鼻を鳴らす。結構情けないことを言ってるけどさては中にいる子、ちょっとアホなのかな?
「まあいいや。そんなわけで仲間たちのこと、よろしくお願いします! 短いですが以上、ナイスネイチャでしたー」
「……」
「……はっ。アタシってば何を。
……ってうおおぉトレーナーさん!? 近い! え、抱きし、えっ!? ここ普通に道端、……うええっ!?」
静かに。夜なんだから黙って抱きしめられてなさい。……ああ、柔らかい。落ち着く。かわいい。
……他のトレーナーさんたちがたまに口にする『ウマソウル』。私には何のことかよく分からないけど、その存在の一端を垣間見たのかもしれません。
(終)
≫158二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 17:23:09
誕生日を祝う。
イクノディクタス担当トレーナーには随分と慣れないことで、さてどうするべきかと頭を悩ませた。
イクノディクタスへの誕生日プレゼント。それはかぐや姫の出した難題のように、彼を悩ませるのだった。
“誕生祝い”
イクトレはチラシをばっと撒き散らし、膝で踏みしめいいものがないか探す。
老眼鏡要らずとなった大きなおめめは、チラシの情報を余さず捉えるが、これと思い当たるものはなかった。
3Dプリンター、ロボット、車……どれも今、イクノディクタスに贈るべきものではないだろうと、イクトレは首を横に振る。
「☹」
「どうしたんですか?」
懊悩している彼に、膝を曲げて問う者がいた。
ミホノブルボン担当トレーナー。青鹿毛のおかっぱと、斜めに切り揃えた前髪から覗く青の瞳、何よりもイクトレと比べても少し高い程度の小柄な体躯が特徴的なウマ娘化トレーナーである。
機械を壊す特殊な体質の持ち主で、彼の為にイクトレはいくらかの奮闘劇を繰り広げたことがあり、その縁で度々交流を取っていた。
ふたまわりも年嵩の少ない彼ならば、今時の女子ウケのよい品も心得ているかもしれないと、イクトレは相談を持ちかけることにした。
159二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 17:25:16
「……それって、蹄鉄じゃダメなんですか?」
「🤔」
「イクノさん、蹄鉄が好きなんですよね。なら、特製の蹄鉄を用意するのはどうですか?」
「……」
ブルトレの意見は的を得ている。イクトレもそう思ったが、少しして申し訳なさげに固辞した。
ブルトレが理由を聞けば、彼は長い話になると前置き、身体を寄り添わせ、ボードをブルトレの眼前に寄せた。
『息子がいるんだ』
「えっ」
「👁🗨❔」
なんだその目は、とイクトレは睨み、次いで産んでないぞとイクトレは訂正する。
彼の息子は既に成人している。最近幼児になったイクトレに産めるわけもなかった。年齢的にも、相手的にも、物理的にも。
その事実に胸を撫で下ろしたブルトレに、イクトレは彼が少々天然であることも加味して説明を続けた。
『我ながら、ひどい父親だった』
160二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 17:25:36
エンジニアから蹄鉄師としての転身。
それを熟すには膨大な研鑽が必要で、その為にイクトレは家庭を省みることができなかった。
ある年、息子の誕生日プレゼントにイクトレは自分の中で最高の出来栄えと確信する蹄鉄を贈った。
息子にその奥深さを伝えたいと思ってのことだったが……妻と喧嘩になってしまったのだ。
『“この子はウマ娘じゃないのよ”と言われたよ』
「……!」
『妻の方が正しい。私は息子を、家族を見ていなかった』
結局、イクトレは離婚し、親権は妻に委ねられた。
仕事に身を入れ過ぎて家庭を失った、本当によくある話。
『君も気をつけるといい。
時折振り返るくらいで、丁度いいんだから』
その横顔は童女と思えないほど、酷く寂しげに映っていた。
161二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 17:26:12
「……なら、イクノさんには何を贈ります?」
「😦」
「そうだった、って顔しないでください」
しんみりするのもつかの間。
しっかりとしたブルトレの発言に、ペド壮年は頭を抱えて頷いた。
そうなのだ。今は息子ではなくイクノへの贈り物を模索する時。
余計な感傷に浸るべきではない、とイクトレは頬を振ってブルトレへ向き直る。
『どうすればいいだろう』
「うーん……女の子が好みそうなものは、女の子が贈るんじゃないでしょうか」
「🤔」
「イクトレさんは、イクトレさんにしか贈れないものを贈るのが一番だと思います」
ありますよね、と指差された先を見れば、イクトレが腰に提げた金槌がそこにあった。
イクトレは金槌を手に持ち、じっと見つめる。
金槌の重みは、何を打つべきかを教えていた。
『ありがとう。やってみる』
「頑張ってくださいね」
「ん」
ブルトレに頭を下げ、イクトレはぷぴぷぴと足音弾ませて工房へと急ぐ。
時間は、幾らあっても惜しかった。
162二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 17:26:48
「贈り物ですか?」
「⭕」
イクノディクタスが工房に立ち寄った時、ちょうどイクトレも贈り物が完成していた。
自分がいる以上、必要はないかもしれないが、と前置いて、イクトレはおずおずとそれを差し出す。
「……ハンマー、ですね。これは、蹄鉄用の?」
「⚒」
「確かに、レース前は必ず打ち直して頂けるとはいえ、練習時のメンテナンスにあるとありがたいですね」
ありがとうございます、と頭を下げるイクノに、イクトレは早速振ってみてほしいと促す。
イクノがハンマーを握ってみれば、吸い付くように手によく馴染んだ。
「……私専用の設計、ということでしょうか」
「⭕」
肯定した後、イクトレは図解入りで説明をする。
部品は交換可能となっており、槌がひしゃげて柄が擦り切れても、新しく造れるということ。
その都度、自分が健在なら打ち直すということ。
『来年も、再来年も打つよ』
「……それは、嬉しいですね」
だから、来年もよろしく。
そんな気持ちを込めて、イクトレはハンマーと共にイクノの手を包む。
その手はまだ柔らかく、職人の手とは言い難い。これからどうなっていくのかは、イクトレにはわからない。
けれども、その手が、脚が健やかなものであることは、イクトレは強く確信していた。
何故ならその未来は、確実に彼が築き上げるからである。
うまぴょいうまぴょい
≫172二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 19:30:52
ケツ上「体重が増えました…つまりこれは胸も…」
胸くソンナモノ、ナイヨ
ケツ上「そんな…じゃあ増えた体重は何処に…?」
尻くオッス
ケツ上「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉお゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」
一方その頃…
ウオシス「なんだか…服がきついです…」
胸く😃
尻<✋
ウオシス「太って…しまいましたか?」
こうして黒の會の内部抗争から発展し、しまいにはトレセン学園一帯を巻き込む「ケツ上の乱」が起こったのは教科書にある通りです。
明日はケツ上の乱の以降、「90-55-80ビッグバン」をやりますので、資料集を忘れないよう。
≫178二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 20:08:11
「不定期開催、トレセン極悪人衆会合〜!」
「いぇ〜い!」
「年度も変わり、いつのまにかpart700を越え、何かと貴様らも忙しかったろう!だがしかしけれども!我々は決して捨ててはならない使命がある!」
「その通り!まず私はトレーナールームの掃除をしてやりました!エアグルーヴ担当トレーナーの部屋は妙に綺麗でしたが、侵入の露見はしませんでしたよ!」
「理事長からの許可は?」
「もちろんここに。各々のトレーナーに迷惑はかけないこと、そして機密事項には一歳触れず、目も通さないこと。これを守らずして何が極悪人か、何がトレセンか」
「秩序あっての混沌だ。及第点をやろう。京都土産のイチゴ八つ橋だ」
「わぁい!!」
「あっしは新入生の誘導と案内をしてやりました。彼奴等の仕事をこっそりと掠め取り、スムーズな入学及び入寮を促しましたわい」
「合格だ。ほれ、前欲しがっていた千枚漬だ」
「やったぜ」
「私は、新しくウマ娘になってしまったトレーナー達の書類関係の根回しを済ませておきました」
「首尾は?」
「きちんと、保健、免許証、その他諸々は滞りなく」
「良い。では褒美は一保堂の茶葉だ」
「っしゃオラァ!この後八つ橋で茶会してウチで飲み会しようぜ!千枚漬けも米と食おう!魚沼産新米のコシヒカリを5キロ、きちんと用意してるからなァ!」
「しば漬けもあるぞ…だから俺も混ぜろ」
「もちろんですとも!」
「飯を食べた後は茶を啜りながら八つ橋…なんという贅沢…」
「……自分、いいっすか」
「おう、すまんすまん。遠慮なく言え」
「…ハイ、えーっと、その……癒しを届けれられたらと、そのぉ…拙いですが同人誌を…」
「絵に上手いも下手もない。そこには情熱、文字通り魂が宿るのだ。そしてまた、その魂にも貴賎はない」
「あ、ありがとございます…えっと、これと、これと、これです」
「こ、この年度末で3冊も…?」「しかも通常の業務をしながらだろ…オイオイマジか…」「頭おかしいんちゃうか?」「ええぇぇ…」
「…その、やっぱり下手でも楽しいな、なんて」
179二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 20:08:41
「1冊目は…ウオトレズの温泉旅行か…あああ湯煙!!お前邪魔!!マジで消えてくれよデバフがよ!!」「でもそれがあるからこその想像力が湧きません?」
「……パーフェクトだ、ウォルター」
「2冊目は…ほうほう。『たきとれのなつやすみ』ですか。田舎に帰ったタキトレ(養)とタキオンは白い白衣の痩せこけた1人のウマ娘と出会う。ミステリー系列…何ページあるんです?」「ジャンプの単行本一冊と考えていただければ」「パターン青、こいつ使徒です!」「バケモンかよマジで…」
「最後は……テイトレと小タマのか。なんだろう、この並びだけですごい胸がキュってする」「心臓病か?」「いや、辛さで」「ちなみにエンドは?」「こっちがバッド、これがメリバです」「……ハッピーは?」「………ないっピ」
「うわあああああ!!!」「ああ!モブAが死んだ!」「この人でなし!!!」
おしまい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part735【TSトレ】
≫8二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 21:25:22
「…増えたわね。それに、胸がきついかしら…」
…軽く揺れる胸に目を落としながら、体重計に乗ったキタトレは悩んでいた。目の前の数字は増えたことを示している。
「最近、デスクワークが多くなっていたのが原因でしょうね…基礎代謝が下がった訳ではないだろうし、運動不足かしら。」
トレーニングはチームのを彼女も見るついでに行っているが、それ以上にこの時期は大きなレースが多いのだ。
必然的に増えた雑務処理のために自主トレ(と睡眠時間やら)を削ったり祝勝会をしたりする分、+に転じてしまったのだろう。
「サトトレならこれでも増えないでしょうけど、とはいえ燃費極悪のピーキー極めた体質は困るわね…」
…キタトレが仮にサトトレ並の燃費になった場合、レースなら恐らくマイルまでしか走れないレベルのスタミナになるのだ。
(いつ考えても本当におかしい体質ね。異常な量のスタミナとそれをあっさり食いつぶす分過剰なまでの出力…よく制御できるわ)
「…と、脱線してるわね。まずはブラをどうにかしましょうか。ちょっと…きついわ。」
ややブラが食い込む程に大きくなったπを持ち上げ、どうやって減量しようかと悩む彼女のいる近くを通る人影。
「…ねえファイトレ(女)、少し付き合ってくれるかしら?」
「む?なんだキタトレ。…ふむ、もしかして減量か?」
「話が早くて助かるわ。それで…」
「おーい、ファイトレ(女)……っ!」
「何をして…」
キタトレとファイトレ(女)の会話する所に来るドベトレと黒カフェトレ。…しかも、今キタトレの胸元は緩められてるのだ。
9二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 21:25:49
…当然、見せつけられるそのいつもより大きくなった乳と食い込むブラ。ドベトレは赤面して、黒カフェトレは目が死んだ。
「あー…流石に刺激が強かったかしら…すぐに閉めr「あっキタトレ、ブラ貸してくれない?」…魔ルドトレ?」
乱入してくる魔ルド。その胸はいつもより大きくなっており、そしてブラをつけてないのか明らかに揺れていた。
「普段より大きなサイズということで私のなのでしょうけど、もうちょっとオブラートに言った方がいいわよ。」
「ごめんねキタトレ、つい…」
「…」
さて、目前には2つの双峰がそそりたち、しかも片方は揺れて片方は食い込んでるのだ。それを見せられた黒カフェトレは…
「…ふっ!…ドベトレ、彼を頼む。」
「(顔を赤くした状態で頷く)」
───あまりの視覚的暴力にキレて暴走しかけた所を、首元に落とされたファイ女の手刀で意識を落とされたのだった。
ファイトレ(女)は手早く倒れる彼を受け止めると、ドベトレに任せてその場を離脱させた。ついでに暗示をかけておく
「いいか、ドベトレ。私達は何も見なかった。Iカップ以上が二人なんて光景はない。…分かったな?」
「あ、ああ…分かった…」
…その後、ファイトレ(女)の行動が功を奏してか、黒カフェトレは特に覚えていなかったらしい。
短文失礼しました。
前スレよりやれと言われた気がしたので。よりによってキタトレとルドトレの胸の増量を見せられる黒カフェトレです。
ファイトレ(女)は黒カフェトレの外付け緊急停止システムみたくなっています。彼女が近くにいれば暴走はしないでしょう。
≫45二次元好きの匿名さん22/04/17(日) 23:53:21
「…………あの〜、トレーナーさん?」
「はい、どうしましたかグラス?」
「その、言い辛いのですが……太られましたか?」
「…………いえ、そのような筈はありませんよ~」
「答えるまでの間は何だったんでしょうか〜?」
「ふふっ、なんでしょうね~」
「ふふっ、では脱いでください」
「グラス?」
「着物を脱いでくださいトレーナーさん」
「……何故?」
「目視で確認したいのですが、着物を着られていると体型が判り辛いからです」
「流石に脱ぐのは〜」
「では問答無用で行きます!」
「ちょ、ちょわー!?」
「やっぱり下着がきつそうですね……何故か下の方だけですが」
「ううっ……気が付けば何故かお尻だけ大きく……」
「お尻だけ太るなんて不思議な事もありますね~」モミモミモミモミ
「ひぁ、ちょ、グラス? ひゃん」
「最近食べ過ぎていた訳でもないですし」フニフニフニフニ
「ひぅ、お、お尻は、ひゃ、しょ、少々敏感で、やっ」
「また、女神の謎パワーでしょうか?」モミュモミュモミュモミュ
「あぅぅぅ……」
「トレーナーさんはどう思われ……トレーナーさん!?」
「うぅぅぅ、グラスは意地悪です……」
「…………」
その後、腰砕けになったグラトレは更にお尻を揉まれ続けたとかなんとか。
うまぴょいうまぴょい
≫57二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 10:56:08
ある日の午後、ルドゴルムンの三人は学園の一角でティータイム(と称した実質的な意見交換と有益なデータの報告会)をしていた。
「……そういえば」
「うん?どうしたルドトレ。蛇に豆をガトリング掃射したような顔してよ」
「ああ、いや。そういえば、私だけ小さいなぁ、って思って」
「「……小さい?」」
魔ルドの突然の発言にきょとんとする二人。
「……お前よぉ、少し考えてみろ。最初にウマ娘になった連中の中で二番目に身長が高かった奴がそんなこと言うと嫉妬で狂う奴が出るぞ?
特にイクトレとかお前の発言聞いたらピコピコ鳴る靴でロッキー山脈越えて追ってくるな」
「でもぉ……すぐフラトレさんとか、ライトレさんとか、スズトレちゃんとかが……」
「……君のその身長だからこそ美しい、そうではないだろうか?」
「ムントレちゃん……」
「やめろムントレ。万が一、こいつをたらし込んだ日には襟裳岬でカツオ漁させられるぞ」
「カツオ漁か。そういえばおでん用の鰹節を切らしていたからそれで調達するのも……」
魔ルドワールドとムントレワールドが発生する中、ブレーキを踏むゴルトレ。尤も、こうなるとツッコミ役の面々ですら止められないが。
「……目線を高くしたいなら、ハイヒールをグルトレあたりと買ってこいよ」
「……確かに」
「……試してみようかな、ハイヒール」
尚数日後、慣れぬハイヒールでルドルフにお姫様抱っこされる魔ルドと、ハイヒールを履いて現れた結果タンホイザの男性観を破壊するムントレが同時出現しトレセン学園は大荒れとなった。
ゴルトレはゴルシとサブトレと三人、今度はレムリア探しに奔走していたため、この事態を察知するのが遅れた。
翌日、モブトレからどう対処すれば良かったのか聞かれたゴルトレは「……魔ルドの方はヘリトレぶつけろ」と呟いたのであった。
≫68二次元好きの匿名さん22/04/18(月) 13:35:24
「…お疲れ様、頑張ったわね」
「今日は2着だったけど、次はきっと勝てるよ!」
…地下バ道、重賞レースを終えて戻ってきた彼女を出迎えるキタトレとキタサン。苛烈な差し合い…彼女ともう一人だけがバ群を抜け出して、更に彼女を差し切ったもう一人が一着。彼女は惜しくも二着となった。やや病弱気味な彼女を労りつつ、まずは無事に戻ってきたことに安堵するキタトレ。
「…今回のレース、少し早く仕掛けてしまったのでしょう?初めての重賞で圧倒されたのじゃないかしら。」
「!…そうなんです、つい…」
オープンではなく初めての重賞。しかも、彼女は病弱故に出るレースは絞らなければいけなかったのが慣れない要因だろう。
「そうね、こればっかりは経験よ。大舞台の辛さは慣れるしかないわ、キタだってそうだったもの。」
「…トレーナーさん…私、悔しいです…!折角キタちゃんやトレーナーさんに並走もしてもらって色々教えてもらったのに…!!」
「…なら、次は出来るわね。その悔しさは、貴方が心折れない限り貴方のバネになるわ。…また後で、ゆっくり話しましょう。」
「うん、大丈夫。諦めない限り何度でもチャンスはあるよ!」
悔し涙とともに奮起する彼女を二人で励ましながら、キタトレは目を細めながら問いかけた。
「この後ライブだけど、体調は大丈夫かしら。」
「…はい、多分大丈夫です…」
「分かったわ、なら…」
ひょいと腕を回して彼女を持ち上げる。背中と膝裏を支えるお姫様抱っこの状態で、キタトレは
「控室まで連れて行ってあげるわ。ライブまで出来る限り体を休めておきなさい。キタ、先に準備しておいてくれる?」
「分かったよトレーナーさん!」
「え、あ、あの…」
「うふふ、私からのご褒美よ。それに、芸術品のような貴方を丁寧に扱わないなんて、品が知れるわ。」
「~ッ!」
──控室に連れて行かれるまでの間、羞恥心とキタトレの対応に顔を真っ赤に染めた彼女だった。
短文失礼しました
皐月賞を見てから書いた一つです。重賞レースで惜しくも2着となったチムメンを出迎えるキタトレとキタサン。
帰ってきたことをまず喜ぶキタトレ。勿論レースの評価を伝えたり、褒めたり励ましたり叱ったりと、各々に合わせてやってくれます
≫113二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 00:03:40
いただきたいもの 黒メブ
今日はブライトの誕生日であり、メジロ家総出で彼女の生誕が祝われたのだが。
「ブライト」
「トレーナーさま、どうされましたか~?」
「説明してくれ」
その誕生日パーティーが終わり、ボクはなぜか彼女の部屋に連れられてしまった。現在のボクの小さな身体ではいくらウマ娘になったとはいえ、レースの為に鍛えられたブライトには敵わないのである。パーティーということもあり、ボクの服装はいつも以上にフリルやレースを多用されており動きづらい。彼女のベッドの上にちょこんと座らされてそのままだ。
「トレーナーさまとふたりきりになりたかったのですわ~」
「だからと言ってきみの部屋に連れてくる必要はないだろ」
考えて欲しい。彼女は未成年の女の子でボクは見た目こそはウマ娘だが中身は成人男性だ。節度がないように思われるのは困る。こういったとき、未成年側がやっても責任はボクに回ってくる。それ以前にメジロ家のご令嬢にそんな話が出回るなんてことはあってはならない。そういう焦りと心配がボクを苛ませる。
「いいか、ブライト。こんなナリになってもボクは男なん―――」
「トレーナーさま、わたくしクリスマスの時に『この先』が欲しいと言いましたわ」
「ボクはそれを受け入れただろう」
「はい」
ボクの小さな手を彼女は両手で優しく包む。少し彼女の手は震えていた。
「ブライト…?」
「トレーナーさま、誕生日にわがままをさせてくださいませ」
「内容による」
「…その、『この先』はメジロ家の為ですが、わたくしの個人的感情で『トレーナーさま』をいただきたいのですわ」
ボクは呆気にとられた。正直言うと、ボク自身はとっくのとうにメジロ家の、彼女のものだと思っていたのだ。悠久の時を共に歩んでいくと、そう誓ったあの日からそうだと思い込んでいたのはボクだけのようだ。目線を彼女を見るように上げると不安そうな顔をした彼女がボクを見ていた。
「そんな顔をするな」
「トレーナーさま……」
「ボクはそのわがままとやらは、とっくのとうにさせた気でいた」
114二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 00:03:54
彼女は少しマイペース過ぎる性格だ。それでもレースのこと、メジロ家のこと、ボクのことに関してはあまりそれを感じさせることはなかったのだ。彼女のトレーナーになってから、ボクは彼女の人生に、メジロ家に大きく関わっていったことの責任を感じていた。彼女に『この先』が欲しいと言われたとき、ボクはよろこんで差し出した。ボクの人生でいいなら、と。
「ボクは、きみと、メジロ家の為にあるんだ。そんなことわがままのうちには入らない」
好きにすればいい、ボクは彼女の身体に頭を預けた。するりと彼女の手が離れ、ボクをゆっくりと抱き締める。
「…ありがとうございます、トレーナーさま……」
「気にしなくていい…ああ、それと」
「なんでしょうか~?」
「誕生日おめでとう、ブライト」
やっと言えた。パーティーではそんな余裕もなかったからだ。頭の上が濡れた気がしたが、ボクは気にしていないフリをして彼女に身を委ねていた。
≫165二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 16:50:40
「ふぅ…いい湯だった。やはり温泉は最高だ。」
「…大分…長風呂ですねファイトレ(女)さん」
「温泉好きなんですね…」
…ポタポタと水滴を垂らし、体から白い湯気を立ち昇らせながら体を拭くファイトレ(女)、カフェトレ(煙)、タキトレ(不)の3人。
何故三人で温泉にいるのか。それは、ファイトレが知っている健康に良いここに、周りから勧められて入りに来たからである。
(ふむ、毎日でも入りたくなるな。…さて、今の所は二人とも大丈夫か。)
今ここにいない担当ウマ娘に関しては、それぞれ他の同担トレが見てくれているのでそこまで問題はない。
ファイトレがこの温泉にいるのは、勿論彼女が入りたかったからではあるが、同時に二人の監視役というのも込みなのだ。
「…所でファイトレさん、尻尾は…」
「む…」
「もしかして、あまり手入れしてないのかい?」
「…そうだ。自分では余りしなくてな…」
体を拭き取り、着替える彼女にふと問いかけるタキトレ。カフェトレも聞いた所で大人しく白状した。
「拭くくらいならするが、手入れはそこまでやらなくてな。その…なんだ、大体してもらってるんだ」
彼女の意外な一面に、少し驚いたような反応をするカフェトレとタキトレ。…タキトレはそんなファイトレに
「…なら、私が手入れしましょうか?連れてきてくださったお礼と言っては、なんですが…」
「…ふむ、その提案はありがたいが…いいのかタキトレ」
「いつもタキオンにやってることですから」
「分かった、ありがとうタキトレ。」
櫛とオイルを手に取り、ファイトレの尻尾を手入れし始めるタキトレ。また、黒カフェトレも
「ちょっとだけ、情報交換しませんか。お互いの担当について、とか…」
「それはいいな。幾つかファインから聞いたネタがある」
「そういえば、タキオンも上機嫌で話してましたね…」
───担当のことになるとすぐに饒舌になるあたり、どうやらお似合いの三人だったのかもしれなかった。
短文失礼しました
上のネタより一本、ファイトレ(女)!カフェトレ(煙)!タキトレ(不)!我等担当への激重感情持ち三銃士!
ファイトレ、温泉かつ色々されていますがしっかり監視という仕事はしてるので安心。そしてすぐに担当のことを考え出す三人…