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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part431【TSトレ】
≫9二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 07:29:15
前回のあらすじ。
私はトレーナー君とのポッキーゲームに運悪く負けてしまった。
そうして、トレーナー君宅で言い渡された罰ゲームとは……
「じゃーん!」
そう言い出てくるのはマイクロビキニ。
「……まさか」
「いや、さ?よくよく考えたら私だけマイクロビキニだったりミニスカメイド服だったりで不公平だなーって思って」
「……それは……そうだが……」
「ということでルドルフのサイズぴったりのコスプレ衣裳を用意したからさ!色々着ていこう!」
────
『う、うぅ……』
『似合ってるよミニスカメイド服!引っ張ったら溢れそうって迫力はないけど!』
『それは……君の胸が……』
『……写真取ったから次行こう!』
────
『……トレーナー君、この程度の露出で私が恥ずかしがるとでも?』
『でもミニスカメイド服は恥ずかしがって……ああ、フリルいっぱいついてたからかな?』
『……にしても、何故チャイナ服を?』
『着せたかったから?』
────
「ってことで最後の一つだけど……」
「まさか……」
「マイクロビキニしかなくない?」
「……ルナおうちかえりたい」
「……問答無用!」
飛びかかってくるトレーナー君。当然ながら彼女が怪我しないよう私は受け止めてしまい────
────結局、この後滅茶苦茶イチャイチャした。
うまぴょいうまぴょい
≫35二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 08:20:08
「…ふぅ」
そうやって息を吐き、黒い夜空を眺めているのはファイトレーーー珍しく左腕の義手を外していたのだった。
「宇宙か…未だ人類が辿り着くことのできない世界。綺麗なものね。」
煌めく星々を眺めながらファイトレは呟いた。
「私が今こうしていることも、天文学的な確率の上に成り立っていると考えるなら、それは、俗に言う運命なんだろうな。」
ーーーファインと出会い、彼女のトレーナーとしてこの地で過ごす。仄暗い関係のままに。
…それは彼女の心にどうしようもないほどに深い影を落としている。
星々は彼女の心も知らず夜空に輝いている。
「…例えこの広い宇宙でも、いつかは全て人の手が届き、くだらない土地になるのだろうか。」
(最も、それまで私が生きているとは限らないが)
「…ああ、でも。」
外した義手を眺める。糸の切れたように動かないそれは、血さえ流れていたら本物のそれと間違えそうなくらいにそっくりだった。
「サイボーグね…記憶も人格も全てコピーすることが出来たなら、永遠に生き続けることになるのかな。」
(でも、ファインが隣にいないというのなら、例え永遠の寿命にも意味はない。)
「あるいはウマ娘でも、ウマソウルとやらもコピーすることが出来るのか。機械化された魂…ね。」
もしもそれが出来るなら、それは喜ばしいことだろうか。
「いや、全てそれは詮無きことか。どうでもいいただの夢想だ。」
思考をバッサリと切り捨てて、ただ只管に夜空を眺める。
「やっぱり、綺麗だなぁ…」
目から一筋の液体が零れ落ちたことに、ついぞ気づくことはなかった。
天は何も言わず、ただ輝き続けていた。
短文失礼しました
天体観測をするファイトレです。まだ宇宙には届かないけど、いつかは私達の手が届く日が来るのでしょうか。
今回の永遠という語りには、「竹取物語」の天皇の言と合わせています。彼女にとってのかぐや姫はまさしくファインなんですよ35
≫37二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 08:30:13
兎→猫 リウトレ
同室のナカヤマフェスタを起こさないよう、準備をして寮を出る。あの日以来、私がトレーナーにしているルーティンの為だ。彼女を起こして、彼女の作った朝餉を食べ、横抱きにして学園へ連れていく。帰りは家へと連れ、夕餉を食べて寮へ帰る。今日も同じようにする予定だったのだが、寝室に彼女の姿はなくベッドの上には───。
「みぃー」
猫がいた。白く、小柄な猫だ。彼女と同じ赤の強い茶色と青い色の眼だ。どうしたものだろうか。この猫は一体どこから来たのか、彼女は何をしているのか。
───♪~~~。
着信音が響く。私のではなく、彼女のものだ。とりあえず出てみることにした。彼女のスマホへと手を伸ばすと猫がそれを嫌がるように身体をスマホの上に乗せた。
「取れないだろ」
「みっ…みぃ!」
何故だがわからないが、雑に扱えない。扱ってはいけない気がした。無下にしてはいけない。彼女と同じように扱え、そう本能が囁く。彼女のデスクにある椅子に座り、猫とにらめっこをしていれば着信音は止まった。誰からの着信だったのかもわからず仕舞いだ。
「アンタ、どこから来たんだ?」
この猫ととりあえず、会話を試みることにした。猫は起用に前足でベッドを指した。
「アンタの飼い主はどこだ?」
今は居場所のわからない彼女が気になる。昨日彼女を送った時には居なかった。寮に戻る為にここを出た時間を考えたら、彼女が外出するとも思えない。猫は否定するように首を振った。不自然なくらいにこちらの言葉を理解しているような様子に私はすさまじくおかしなことを想定しまう。まさか、いや普通はあり得ないが、トレーナーがウマ娘になるんだ。なにがあってもおかしくはないのだろうか。
「……聞くが、ここの家主は今私の眼の前にいるのか?」
阿呆のような質問をしたが、実際これが一番手っ取り早い。猫は眼を輝かせ、頷いた。
「…なんで猫になってんだ?」
私は頭を抱えた。人だった彼女がウマ娘になったかと思えば、今度は猫と来た。猫となった彼女を優しく抱える。小さな猫となった彼女は片手で軽々と抱えられるので、空いている手で顎の下を撫でる。ぐるぐると喉を鳴らしながら眼を細め上を向く。どうやら、こういうのは猫としてのそれになっているようだ。
「今日は休むか。アンタがこのザマじゃ気が気じゃない」
スマホを取り出し、連絡をとった。
38二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 08:30:46
「どうするか…」
「みぃ……」
猫になる前に着ていただろう彼女の衣類を畳み、隅に置く。ベッドの上に寝ころび、胸の上に彼女をのせる。なんとも愛くるしい。そうじゃない。人でもウマ娘でもどっちでもいいから戻ってくれ。みぃと鳴かれても、私には真意は伝わらないんだ。言葉にしてくれ。額を指で撫でながら、そう願う。
「様子を見るか」
猫になった彼女と戯れながら、悠々と時間は流れた。朝餉を忘れたまま、昼を迎える。流石に腹が減る。彼女も恐らく腹が減っているだろう。私は冷蔵庫のもので済むだろうが、猫になった彼女はそうはいかないだろう。コンビニにでも行って適当に買ってくるか。下手なものを食わすわけにもいかない。抱きかかえている彼女をおろす。
「みぃ?」
「コンビニで適当に買ってくるから待ってろ」
立ち上がり、部屋を出ようとすると足元をうろちょろと駆け回る。これでは身動きが取れない。
「すぐ戻ってくる」
「みぃっ!みぃー!」
着ていたであろう衣類がぐしゃぐしゃと置かれていた以上、いつ戻るかもわからない彼女を外に連れていくわけにもいかない。
「アンタが外で戻って裸だったら私は嫌だから、家にいてくれ」
「み……」
こちらの言葉は理解してもらえるからある程度は助かる。ピタリと止まった彼女の頭を撫で、家を出た。近所のコンビニで自分の昼食と猫用のおやつと柔らかいタイプのご飯を購入した。店員に不思議そうに見られたが、時間帯的にも仕方のないことだが、トレーナーが猫になったから世話をしているなんて言っても信じて貰えるわけもないので、気にせず彼女の家へと戻る。
「みぃー!!」
「普段からこれくらい素直になってくれ」
玄関マットの上で彼女は鎮座していた。猫としてのそれか、彼女の真意かはわからないが、私は言葉を零した。リビングへ行き、テーブルの上に買ったものを置く。平らな皿に猫用のご飯を出し、スプーンでほぐし食べやすくする。タオルハンカチを敷いてその上に彼女をのせて目の前にその皿を置く。
「猫である以上は今はそれだ」
「みぃ……」
渋々といったようすで食べていく。なんとも言い難い気持ちを抱えながら私も昼食を済ませる。再度彼女を抱きかかえ、部屋のベッドへと寝ころぶ。
「寝るか、考えてもわからねぇし…」
「みぃ」
顎の下を撫で、瞼を閉じた。
39二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 08:31:02
身体がやけに重く感じ、目が覚める。抱きかかえていた猫はいなくなり、一糸纏わずの彼女がいた。人にまでは戻れずとも、ウマ娘にまでは戻れたようだ。私の制服のリボンを握りながら、すぅすぅと呼吸をして眠っている。起こさないようにそっと毛布を取り、彼女にかける。家に居させて正解だった。彼女の頭を撫でながら、そう思った。数分後に、目が覚めた彼女の声にならない悲鳴を聞いてどこか安心した。
「もう、あたしお嫁に……」
「私がもらうから関係ないだろ」
「っ……う、うるさい!」
このあと、夕餉が肉料理だったので、魚じゃなくてよかったのかと聞くと当面食べたくないと彼女が返した。
≫48『私にとって』1/421/11/12(金) 08:51:29
────自分のトレーナーについてどう思うか、ですか?
……難しい話ですね。
人の評価というものは、評価する時やする人間によって大きく異なるものですから。私の考えだけではトレーナーさんの適切な評価にはならないと思いますよ?
それでも構わない?貴女がどう感じたかが気になる?わかりました。それでよろしいのでしたら、私にとってのトレーナーさんをお話ししましょう。
私のトレーナーさんについて一言で言うなら、「新しい視点をくれる人」でしょうか。
『しっかりとした予定を建てて、完璧にこなす』。それはマイスターである私の両親から学んだ大切なことで、今でも自分の行動指針になっています。でもシリーズに挑戦し始めた頃の私は今よりずっと不器用で、一度定めたスケジュールを正確にこなすことが何よりも重要だと考えていたんです。……今思えば、きっと焦っていたのでしょう。3年と自ら定めたレース人生の中において、私は中長距離のGⅠ戦線を走り抜く必要がありましたから。両親に誇れる自分であるためにそれだけは譲れないと思っていたのです。
そんな私はトゥインクルシリーズを過ごす中で、トレーナーさんから色々なことを教えてもらいました。
故郷のマイスターの誇りと伝統が籠められた勝負服に私が袖を通す資格があるのか悩んでいる時は、私にも誇るべき伝統がしっかりと宿っていることを教えてくれました。
目標を達成することが難しいと分かった時や目標のレースを勝つために無茶をする私を彼は優しく窘めて、そういう時は軌道修正をすれば良いということを教えてくれました。
そして────挑戦することの重要さを自分の体を張って気付かせてくれました。
49『私にとって』2/421/11/12(金) 08:52:01
そのどれもが私1人では気付くことのできないことで、私とは思考のベースが徹底的に異なっているけど、少し似ている彼だからこそ気付かせてくれたことです。考え方が違う彼と一緒に歩んできたからこそ、私はこうして今自分を誇らしいと思えるのです。
……ところで、周囲から見るとちょっと近寄りがたい外見をしているトレーナーさんですけど、意外とかわいい所もあるんですよ?
私は将来の為の修行兼ねてケーキを作るのが趣味なのですが、トレーナーさんは完成したケーキを見ていつも喜んでくれますし、クリスマスの時にアドベンドカレンダー※を贈った時は、私が作った菓子の1つ1つに喜んで毎日何が入っていたかを教えてくれたんです。いつもは頼りになるトレーナーさんがお菓子を食べる時は子供のように目を輝かせているのを見ると、次に作る時に予定を超えて作りすぎてしまうことがあるのが少し困りものです。
それにトレーナーさんは綺麗な芦毛の髪をしているのですが、時々私に髪型を弄らせてくれるのですが、彼の雪原のように綺麗な白銀の髪を撫でると、くすぐったそうにしてこちらを見つめ返してくれるんですよ
……コホン、失礼しました。
私にとってトレーナーさんはかけがえのない大切な人です。
なにか私に足りない部分があれば彼がそれを補い、彼に何か足りない部分があった時は私がそれを補う。私達はきっとそういう関係なのだと思います。
……最初に提示した時間に到達しました。私はあなたの問いに十全な回答ができたのでしょうか?これからトレーナーさんとミーティングの予定がありますので、追加の質問などがあればそちらで聞きますが。……大丈夫ですか。ありがとうございました。また機会があれば、その時はよろしくお願いします。
50『私にとって』2/421/11/12(金) 08:52:23
逸る心を抑えてトレーナー室に続く廊下を歩く。
早鐘を打つかのようにドキドキとしているのは今から彼に会えるというという高揚感と、少し不安が身を支配しているからなのだろう。
『自分のトレーナーをどう思うか』。担当にトレーナーとの関係性を再確認させてくれる良い質問だと思う。振り返って関係性を考えてみるのはこれまでをこれからに昇華させる良い機会だ。
だが、自分はその質問に正直に答えるわけにはいかなかった。
自分は彼のことが好きだ。愛していると言い換えても良い。3年目の有馬記念の前に10年分の予定を詰め込んだ手帳を破り捨てたのも、これからの人生を彼と歩むと覚悟を決めたからだ。誰にも明かす訳にはいかない関係性になってしまったがその選択に後悔はないし、自分が彼のことを心の底から愛しているのは間違いないことだった。
だからこそ、少し不安になってしまう。
──トレーナーさんは私のことをどう思っているのだろうか?
考え方のベースからして違う自分を、彼が離れて行ってしまわないように強い関係性を求めた自分を、そして今こうして寄せられた質問に嘘の関係性を回答してしまった自分を、彼は受け入れてくれるのだろうか?
2度ノックをして許可を得てからトレーナー室に入る。幾度も見慣れた顔は今日も変わらず柔和な笑みを浮かべていた。
「いつも通り予定時刻ピッタリだね。じゃあミーティングを始めようか」
「はい、ですがトレーナーさん。その前に質問を1つしていいでしょうか?」
「ん?それは構わないけど、どうしたんだい?」
「トレーナーさんは私のことをどう思っていますか?」
同じソファに隣り合って座る彼にいつもはしない質問をする。不安なままミーティングを進めることを、自分の憧れの人たちなら絶対にしないと分かっているから、それに憧れている自分もそうしないわけにはいかなかった。
「……これはまた難しい質問だね」
「ええ、でしょうね。今日同じことを聞かれて少し迷ってしまいました。折角ですのでトレーナーさんはどう思っているのか聞いてみようと思ったんですが……もしかして迷惑だったでしょうか?」
51『私にとって』4/421/11/12(金) 08:53:05
「君のことなら迷惑なことなんて1つも無いさ。そうだね、正直に言うなら不器用な人かな」
「不器用な人、ですか」
「うん。限定クレープを食べたいのに自分のトレーニングを優先したり、目標にしていたレースを勝つために無茶をしたり、挙句の果てには考え込んで保健室のスリッパのまま帰ったり「トレーナーさん?」……ごめんなさい。でも、フラッシュのその不器用さは美点だとも思っているよ。決めたことを絶対に貫き通そうとする君の素晴らしい部分だ」
「トレーナーさん……」
「その上でフラッシュ、僕は何度だって君に言うよ。──君を愛している。君が気にしている不器用な所も含めて、僕は君が好きだ」
向き合って偽らざる好意を伝えてくれるトレーナーさん。ウマ娘となって体格も瞳の色も変わってしまっても、まっすぐ力強く優しく自分を見つめる視線だけは男の頃からずっと変わらない。嗚呼、自分はきっとこの視線が好きなのだろう。自分と契約してくれた理由を教えてくれた時と同じ心の底からの好意を多分に含んだ眼は今も変わらず自分を眼差してくれていた。
「……ありがとうございますトレーナーさん。不安が少し払拭されたような気がします」
「君がそう思ってくれるのなら少し勇気を出した甲斐があったというものかな。そうだ、今度の週末は一緒に出掛けないか?ホテルでやっているケーキバイキングの予約が取れたんだ。それで残りの不安もきっと無くなると思うんだ」
「ええ、勿論。私も週末は貴方と過ごすと決めていましたから。……トレーナーさん」
「どうしたの?」
「私も愛してます。あなたが気にしているところも含めて、私はあなたが好きです。……少し時間を使いすぎてしまいましたね。これ以上時間を使ってはいけませんし、ミーティングを始めましょうか」
「ふふ、そうだね。じゃあミーティングを始めようか」
こうして2人だけの時間が始まる。3年の月日を乗り越えて2人で掴んだその時間は、きっと彼らにとっては何物にも代えがたい大事なものだ。互いに愛おしいと思いながら、彼らは2人の時間を過ごす。それはきっと、春の日差しにも似ていた。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part432【TSトレ】
≫15二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 12:35:54
『うおさぶさんとべがとれさん』
「あら、ウオサブじゃない」
購買でとあるものを買い、ウキウキの気分で歩いていたベガトレは、同期の長身ウマ娘になったウオッカのサブトレーナーと遭遇した。ベガトレの手に下げたビニール袋の中身へと、目をガッツリと向けている。
「ベガトレ、もしかしてそのプリンは……」
「そう、購買のDXプリン。ちょうどさっきポスター張って売り始めてたから買ったのよ」
「うおお、とんでもない運っすね……」
「……一緒に食べる?」
「えっマジっすか?そりゃ一口でも頂けるならもう感謝感激雨霰っすけど」
「マスク越しにも舌なめずりが見えるわよ?そんなに甘いもの好きだったんだねえ」
「ありがとっす……狙ってもなかなか買えなかったんで本当に感謝っすよ」
「ほらほら、拝み倒してないで休憩スペース行くよ」
近くにあった休憩スペースに座り、プラスプーンを一つ多めに用意して二人でプリンを楽しむことにした。流石に沢山食べるわけにもいかないのでウオサブはちまちまと楽しんでいたが、それでも口の中に広がる甘さと美味しさに震える。
「あんまぁい……今食べられるのがこれだけというのが実に口惜しいっすね」
「限定品で争奪戦が起きるというのもわかる美味しさよねぇ」
「やっぱあれっすかね、限定品っていうレアリティの高さも味わいにかかわったりするんすかね」
「どうだろうね?当然量産品だとしても美味しいものはいくらでもあるし、ものすごく貴重なものだからと言って必ずおいしいわけじゃあないし……ただ、自分が好きな味だった時でそれが限定品だった時、その時は本当に味わいは変わるかもねえ」
「あー、確かに。相乗効果ってあるかもしれないっすねえ」
「まあ、言ってしまえば気分の違いなんだろうけども、そういうのも楽しんでなんぼというところはあるよねぇ」
「わかるっす」
「……まあだからと言って壮絶な争奪戦になるのもどーかと思うけどね私は」
「……それについては同感っすよ」
しょっちゅう購買前でバトルが発生しているという噂もあるレベルで人気なのだ。だからこそ突発的な販売のみに絞っているのだろう。降って湧いた幸運であれ、二人は今この甘露の素晴らしさを舌で楽しみながら、ゆるりと雑談も楽しんでいた。
≫21二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 12:41:59
kaleidoscope グルトレ
くるり、くるりと時計が回る。同じ時間でも違う色や形に変えて、日々を彩る。くるり、くるり、今日も昨日も、きっと明日も毎日同じようで違う。『俺』がウマ娘になって大きく形が変わった。日々を彩る形は丸みが増え、寒色が多かったものは日に日に暖色が増えていく。少しずつ、少しずつ『私』になっていく。『俺』のしたかった形とは少しだけ違う彩りは彼女との関係も変える。くるり、くるり。『女帝の杖』としてだけ居られれば良かった『俺』違う、『女帝の杖』だけではなく、彼女と『そういう関係』になりたいと、最期まで一緒に人生を歩みたいと選んだ『私』。彼女が幸せならそれでいいが『俺』と『私』の共通点。
『私』はくるり、くるりと回る世界を見る。彼女との時間、幸せであたたかくて優しくてだいすきなもの。くるり、くるり。トレーナー業務、彼女のコトを考えることが仕事、だいすきなもの。くるり、くるり。生徒会業務の手伝い、大変だけども会長サンやルドトレさん、ブライアンやブラトレ、役員の子たち。誰かと何かを成し遂げるために奮闘するのは達成感があってとてもすき。『私』になっても受け入れてくれる。きっとルドトレさんがいたからかな、ありがたいなぁって思う。『俺』は困っていたけれど。役員の子たちに変わらず、どころか同性になったからかより慕われている感じがする。くるり、くるり、不思議な縁もあったなぁ。オグトレとライトレ、なんであの時あんな夢をみたのだろう。でも彼らに助けられたことも多い。料理やお菓子作りで困ったら彼らに相談しているし、彼らの在り方に助けられるときもある。くるり、くるり。スズトレとフクトレ、年齢なんて気にせずに接せる大事なヒトたち。彼女といる楽しさとはまた違った楽しさ。だいすき。くるり、くるり。リウトレ、意地っ張りで周りを頼ろうとしない娘。放っておけない娘。『俺』が『私』になったように彼女も変わりつつある。少しずつ、『私』と同じようにこの現象で変わっていってる娘。この現象がなかったら、あの娘は今どうなっているのだろう。あまり考えたくはないかな。きっといい方向にいっているから、頑張って欲しいなぁ。
くるり、くるり。今日も瞼を開けて、『私』はカレイドスコープを覗く。今日の形と彩りを楽しみながら。
≫107二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 14:21:36
夜のトレーナー室
カタカタとパソコンを打ち込むキタトレこと私は、ふとギィ…っと部屋のドアが開く音を聞いた。すぐさま確認に向かう。
「誰かしら…?」
…そこにいるのは最近チームに入れた娘だった。私は寮の門限を過ぎていることを言おうとして
「…」
その酷く物憂げで虚ろな目を見て、私は彼女を無言で部屋にあげた。
「…それで、どうしたのかしら。」
部屋のソファに腰掛けたまま、彼女に問いかける。問いかけに少しの間黙っていた彼女は、そっと口を開くと
「…トレーナーさん、私はどうしたら苦しまずにすみますか?」
そう、問い返してきた。
「いつも…勝てないんです、走っても2着か3着ばっかり。地方では勝ててたけど、中央に来てから勝ったことなんてなくて」
「それが嫌で、苦しくて仕方ないんです。…でも、トレーナーさんもいるし、私の走りが見たいと言ってくれるファンもいるんです。」
「…そしてそれ以上に、私が走ることが好きで楽しいんです。だから、やめよう。だなんて思えなくて。でも、走れば走るほどに、そのことがつらく感じるんです。」
「…」
「…私より凄い子なんていくらでもいるんです。G1バだっているし、そうでなくても勝てる娘だって沢山。…そんな人達と自分を比較したら、どうしようもなく惨めにしか見えないんです。所詮その程度だって突きつけられてる気がして」
「でも、私よりも勝てない子だってそれ以上にいるんです。もう諦めている子だって…だからって、自分の下がいるからって安心したくない。そんなことをしたら、私は自分を許せない…」
「…結局、中途半端なんです。どっちつかずで、どれだけやっても上に登れるかもしれないけど、頂点にはなれない。」
「トレーナーさん…上を向いてられるほどに強くない、でも、下を向いてられるほど畜生にはなれない、…そんな私は」
「どうしたら、いいんですか…」
109二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 14:21:57
その言葉のままに縋りついてくる涙目の彼女を、そっと抱き締める。
(…何も解決してあげられないわ。)
カウンセリングにしても対処療法にしかならない。根本的な解決が出来ないことが歯痒くって仕方なかった。
「…私は貴方を信じてるわ。勝てるようになるまで見ていてあげる…」
「…」
「だから、少しだけでいいの、胸を張っていなさい。…大丈夫だから、ね。」
震える彼女を優しく抱き締めたまま、割れ物を触るようにそっと撫でる。
「…苦しいよぉ…」
胸から聞こえるその泣き声に、私は少しだけ抱き締める力を強めた。
(…どうしようもなく理不尽よね、この世界は。)
そう憂いながら、泣き続ける彼女とともにその夜を過ごした。
短文失礼しました
シルバー、ブロンズコレクターな担当ウマ娘とそれを受け止めるキタトレです。今回は大分重たくなりました。
中途半端って、ある意味一番嫌な位置ですよね。勝ちきれないのに、期待されてしまう。本人の走りたいという気持ちと合わせて苦しさとの板挟みです。
ちなみに、これを書く時は作者の実体験も元に作ってるので、多分一番書きやすかったと思います。
≫147二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 16:32:52
「カフェのお友だちを紹介するよ」
「カフェのお友だち⁉︎」
「幼なげな子」
「イェーイ! 僕のこと黒見てるカ!?」
「あの子。ただ、今はタバコの中に入ってるから不在だ」
「𝓢𝓾𝓷𝓭𝓪𝔂 𝓢𝓲𝓵𝓮𝓷𝓬𝓮」
ナンダ ソノ フォント
「アーノルド・アロイス・シュワルツェネッガー」
「I'll be back」
≫154真ポッキーゲーム1/321/11/12(金) 17:04:08
ポッキーゲーム。
それは二人の戦士が、互いの誇りを賭けた年に一度だけの聖戦である。
机に身を乗り出して向かい合い、一本のポッキーの両端を咥えるデジトレとファルトレ。
その目は真剣そのもので、相手をまっすぐ見詰めている。
互いに狩人。互いに獲物。
獣としての闘争本能を呼び覚ました二人の周囲に緊張感が流れる。
その様子を見守っていた審判役、スマートファルコンは思わず息を飲んだ。
(凄い……二人の闘気が私の中にまで伝わってくる)
汗が滲んだ手を強く握る。脚を開き、腰を落として身体をしっかり支えた。
そうしないと、二人に気圧されてひっくり返ってしまいそうだったから。
観客のアグネスデジタルは「お二人の扱い視線が、吐息が混ざりあってる……!あれは最早ポッキーと言う名の尊みの掛橋……っ!」
…………相変わらずである。
デジタルの仲ではデジトレとファルトレのその後のシチュエーションが湧き水の如く浮かび、脳内ネタ帳に書かれて行く。
155真ポッキーゲーム2/321/11/12(金) 17:04:55
ファルコンがまっすぐ右手を上げた。
デジタルが喋るのを止める。トレーナー二人が息を止める。数秒、世界が静寂に包まれる。
その闘いの火蓋はファルコンの手を下ろす合図と共に______「始めっ!!」______切って落とされた。
「ふっ!」
「っ!」
勝負は一瞬だった。
互いが逆方向に首を振り、加えていたポッキーが2本に折れる。中を舞った破片が机の中央付近に降り注ぐ。
口からポッキーを取って、残った長さを確認する。
長く残った方が勝者。
そしてそれは、デジトレだった。
「負けちゃった……力加減が甘かったかな」
悔しいそうに自分のポッキーを食べるファルトレ。
しかし彼女の心はポッキーの様に折れてはおらず、己の敗因を冷静に分析していた。
勝者であるデジトレも密かに冷や汗を流していた。
(今回は首を振る角度に拘ったアタシに軍配が下りたが、次回はそうは行かない。もっと修行を積まないと……!)
更に己を高める決意をしながらポッキーを食べる。
「良い勝負だった。敬意を表するよ、ファルトレ」
「こちらこそ、デジトレさんと闘えた事を三女神様に感謝します」
互いに力強い握手を交わし、健闘を称え合う。
ノーサイド。試合が終われば、そこにいるのは真剣勝負を走り抜いた同士だけである。
そんな二人を見てデジタルの目には涙が流れる。素晴らしい勝負を見れた事に感動し、叫びそうになる自分の口を必死に抑えた。
ファルコンも瞳を潤ませながらトレーナー達に拍手を送る。二人は少し照れくさそうに自分達の担当ウマ娘を見た。
そして、ファルコンの脳内に浮かんだ(これポッキーゲームじゃないよね)と言うツッコミが声に出る事は無かった。
156真ポッキーゲーム3/321/11/12(金) 17:05:46
真ポッキーゲーム
参加者
審判役:1
選手:2
ルール
1:選手二人が机の上で向かい合い一本のポッキーの両端を咥える。
2:審判の合図と同時にお互い逆方向を向いてポッキーを折る。
3:咥えたポッキーが長い方が勝利。(落ちた場合は咥えていた方が勝利。二人とも落としたら再戦)
4:ゲームが終わったら互いの健闘を称え合うこと。
※このゲームはただ首を降れば良いだけでなく、首を曲げる角度、速さ、止める位置等を正確に調整する事で折れる長さをコントロール出来る様になる。
※食べ物で遊んではいけません。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part433【TSトレ】
≫59二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 18:28:57
「今度は茶坊主役か……練習すればできるだろうが、最近は腰が痛むからなあ」
「筋肉の痛みと聞いてとんできマッスル!」
「おやおや」
「成程! オペトレさん、それはもしかすると大臀筋由来の腰痛かもしれませんね!」
「大臀筋というとリャイトレ君、つまりおしりの筋肉かい?」
「そうです! 大臀筋・中臀筋・小臀筋・梨状筋と4つの筋肉でおしりは構成されていますが、歩く・走る・立つを補助するのが大臀筋です! デスクワーク中心の方は大臀筋が衰えやすく、そのコリが腰へと連動して痛みを与えるんです。筋肉の涙ですね!」
「運動不足か……となると、この役の練習は気合を入れるべきかな?」
「WAIT MUSCLE! 急な捻りの運動は肉離れの原因にもなりますから、ゆっくりお散歩からはじめましょう!」
「それはいい。オペラオーとゆっくり過ごすのも悪くないね……ところでリャイトレ君、ひとつ頼みがあるんだが」
「勿論、承りマッスル!」
「それでチャイナ喫茶で働いてるんですか……えっと、トレーナーさん?」
「なんだいリャイアン! 大臀筋の輝きが足りていないかい?」
「ちょっと頬が赤いみたいですけど……もしかして、恥ずかしかったり?」
「大臀筋を見せつけることに抵抗はないさ! ただ……」
「ただ?」
「……チャイナドレスは、ちょっとはずかしい!!」
ライアンの性癖がちょっと壊れた
うまぴょいうまぴょい
≫103ジョートレ作成者21/11/12(金) 20:02:21
【ゴルシトレとの絡み】
ウマ娘になって早数日。
何とか普段通りに過ごしている。
とりあえず理事長に報告したので
学園にも知られているだろう。
と、そんなことを思っていると、
「よーっ、ジョートレ!!
ウマ娘になったってホントなんだな!!
あんま見た目変わんねーけど。」
こう言ってくるのは学園一の問題児
ゴールドシップのトレーナーだ。
ゴールドシップと瓜二つで、
よく二人で騒いでいるのを見て
私は青春を感じている。
「えぇまぁ。でもみんなに最初誰かわからないっ
て言われるのよりマシだと思っています。」
「ふーん、そっか。それより今からゴルシと一緒
にUFOで海底火山引っ張りに行くんだけど
オマエもジョーダンと一緒に来ねぇか?」
「ええ、いいですよ。」
「よっしゃ!!じゃあ太陽でスフィンクスフライ
作るってジョーダンに伝えろよな!!」
なんかさっき言ったことと矛盾しているけど、
あんなにイキイキしているのを見ると
青春を感じて私も元気になってくる。
よし、さっそくジョーダンに声をかけよう!!
尚、ゴルシの単語が出てすぐに
「ジョーダンきつい。」と断られたもよう。
≫145ジョートレ作成者21/11/12(金) 20:47:53
【シチトレとの絡み】
ゴルシさんとゴルシトレとのお出かけから三日がたった。
「いやー、日本昔話のOP見たいに龍に乗ったり、古代文明の電磁浮遊するロボットと友達になったり、青春を感じたなぁー。」
と、そう思っていると、
「あれ、シチトレさんどうしました?」
「あ、ジョートレじゃん。」
彼女はモデルウマ娘であるゴールドシチーさんのトレーナーだ。二人は付き合っていたが、ウマ娘になってからそれを隠さないようになった。二人のイチャイチャっぷりは青春を感じさせる。
「いや、シチーにプレゼントあげたいんだけどどんなのがいいかって。」
「ああ、でしたら私も一緒に考えますよ。というかもう私どんなのがいいか思い付いています。」
「ホント!!じゃあ教えてくれない?」
「いや、プレゼントってあなたのことですけど。」
「えっ!?いや、私もそれは考えたんだけどシチーとはいつも一緒にいるし···。」
「いや、そういう風にしてすごく考えてくれるだけでシチーさん喜んでくれると思いますけど。」
「で、でも···。」
「でもじゃありません。むしろそう考えているもはシチーさんも悲しむと思いますよ。」
「···うん、わかった。ありがとうジョートレ!!今度何か奢るから!!」
「いや、私も考えさせられましたので気にしないで結構です。」
楽しそうに駆けるシチトレさん。
私もあんな風にジョーダンと···。
≫168二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 21:14:02
トレセン学園、練習グラウンドの近くで
「う〜ん…」
…そう悩んでいるのは最近tsしたばかりのジョートレ。彼女はグラウンドの近くを一人で歩いていた。
(良いトレーニングがないものかなぁ…)
ジョーダンのためにトレーニングを考えていた彼女に、後ろから声がかかる。
「こんにちはジョートレ、何か悩んでいるのかしら?」
振り向いたジョートレの視界には、その大きなものをぶら下げたキタトレの姿があった。
「あっ、キタトレさんこんにちは。実は、ジョーダンのトレーニングをどうしようか悩んでいて…」
「そうね…」
キタトレはメモを取り出すと、確認しながらジョートレに問いかける。
「ジョートレ、午後から空いているかしら?」
「ええ、空いてますけど…」
「なら今日は私のチームと練習しないかしら。幸い、キタもジャッジも揃っているから丁度いいわよ?」
「本当ですか!?迷惑だったりしたら…」
「そんな訳ないわよ。むしろ他の娘と走れるってのは中々ないからいい機会よ。」
「…ならお願いします。」
「勿論よ、午後にこのグラウンド集合ね。じゃあ後で。」
「はい、なら後で会いましょう。」
立ち去っていくキタトレの姿を見つつ、ジョートレはジョーダンに早速連絡をかけたのであった。
ーーー午後のトレーニングでは、トレーニングに思わず参加したジョートレが疲れてくたくたになっていたがそれは別のお話である。
短文失礼しました
早速ジョートレを借りて書いております。ジョートレはこんなこと言わないし、しないって感じたら遠慮なく言ってください。これを消して私は切腹いたします。
才気にあふれた彼には私なんか置いていって、どこまで高く飛んでいってほしいですね。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part434【TSトレ】
≫166二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 22:24:37
「……スズトレちゃん」
「……どうしたの、ルドトレ」
ある日、私がなんとなしにルドトレの家に寄ると、そこにはチャイナドレス姿のルドトレがいた。
いや、なんでだろう。本当に。
「あー……これ?ルドルフに見せたら面白いかなー、って思って二種類買っちゃったんだけど……実は、片方よく見てなかったからか少し、私には”ここ”が小さくて……」
そう言いながら胸元を指差すルドトレ。私だって小さくないのになー、と思うけれど相手が悪いとも。
「あー……ネットで買うとその辺り分かりにくいよねー……」
「うんうん……あっ、もしかして……」
「えっ?」
何かに気が付いたルドトレが、着ていない方のチャイナドレスのタグを見て、私の方を振りむく。
「スズトレちゃんにぴったりだよ、これ!」
「あっ、私帰るね」
即座に席を立とうとする私。だが、ルドトレは私より玄関に近い位置にいる。故に────
「つーかーまーえーた♡」
「うっ……ルドトレ、自分で脱ぐから」
「はーい」
そうして服を大人しく脱ぎ、チャイナドレスを着る。
「わぁ!スズトレちゃんとっても似合ってる!」
「そう?ってかルドトレ、だいぶスリットエグいの買ったね……」
「まあ、そういう用途の考えてたから……」
「そういうところだと思うよ?」
────結局二人で記念撮影をすることになった。
────サイレンススズカの写真フォルダに写真が一枚増え、シンボリルドルフはあまりの絵面に絶句した。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part435【TSトレ】
≫12ガンギマリ頭スズトレ21/11/12(金) 22:38:34
どんよりとした曇り空のある日、トレセンの中にあるダンススタジオに声が響く。
声の主は二人、スズトレとデジトレ。二の矢★トレーナーズ(仮)が結成され、その活動に備えてダンスを練習し始めた私が、かつてトップダンサーだったデジトレに指導を頼んだのだ。
とはいっても今は暫しの休憩中。何気ない会話を交わしてるとこである。
例えばそう。
「デジトレって前より酒強くなってない??」
「あーうん、多分どれだけ飲んでも行けるよ。」
互いのアルコール耐性の話とか、そんな感じの。
「医者の人が言うにはウマ娘の持つ毒耐性が人一倍強いらしいんだ。その副産物でアルコールもバッチリってわけ。」
「私の聴覚と似た感じかな?」
「そういやスズトレの耳も並外れてるんだったね、多分そう。
まあ正直、アタシからしてみればウマ娘になったのに酒弱い方がおかしいと思うけどな。」
「私は元から雑魚なんてものじゃなかったからなぁ…1杯飲めるようなっただけまだマシってレベルだし。
…でもマーチトレはむしろ弱くなったって言ってた気がする…」
ウマ娘の体になる事で強くなるならまだしもかえって弱くなる…やはりこの現象、まだまだ謎は多い。
「私やデジトレはもう割り切ってるからいいけどそうじゃない人もいるし、早く原因とか見つかるといいんだけどね。」
「だなー。この調子で増えてったらなってない人も不安になっちゃうだろうし。それこそ初期の頃のウラトレさんとか。」
14ガンギマリ頭スズトレ21/11/12(金) 22:39:00
「当時のウラトレさんは私も見てて辛かったなぁ…」
私の中でウラトレさんの存在は結構大きい。なんせ私にトレーナーの道を示してくれた人だ、多分あの出会いがなければ私の人生は大きく変わっていたはずだ。
「…そういえば、スズトレもアタシと同じでウラトレさんがキッカケなんだっけ?トレーナーなったの。」
「うん…え、というかデジトレもウラトレさんがきっかけだったの!?」
「ああ、詳しい経緯は長くなるから省くが、ダンスの方で色々とあって燃え尽き症候群みたくなってた時期があるんだ。その時にたまたまウラトレさんが担当してたウマ娘の異変に気づいてな。再開した時に誘われた、って感じ。」
そうだったのね…と口から言葉が漏れ出る。
デジトレがトレーナーになる前、世界クラスのダンサーだったのはニュースで知っていた。だからこそどうしてトレーナーになったのかは少し疑問に思ってたけど…まさかそんな裏話があったとは。
「いつかあの背中を追い越せるように頑張らなきゃなぁ。」
「まあその前に目の前のダンスだけどね。」
「…あ、ホントだ。なんなら少し予定より過ぎてる…」
「話弾んだから仕方ない。その代わり少し厳しめに行くぞ。」
「分かった、遠慮なく来て。」
「おし、じゃあまず──」
かつてとある女性に導かれし二人の談話はこれにて一旦終わり。
彼らがどんな花を咲かすのか、それは未来のお楽しみである。
≫146二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 23:38:53
「あの時、マルトレさんがこんな弄りしてきたんですよ」
「ウラトレ……なーんでそんな嬉しそうにしとるんじゃお主」
「え? だって嬉しいじゃないですか」
「まあ分からんでもないが。というかなんじゃ、もしかせんでも自慢か?」
「ええ、自慢です。どうですか? 先生はそういう話ないんですか」
「ほっほー? 最近ルドトレらとボウリング行った時の話しちゃろか?」
「ボウリング場というチョイスがもう……」
「……やっぱしダメじゃったかの。最初微妙そうな顔しとった」
「でも最後は?」
「想像通り」
「……うらやましいです」
≫161ポッキーな教官ちゃん21/11/12(金) 23:42:16
菓子は苦手だった。
より正確に言えば、甘味というものを私の身体は受け付けなかった。
美味い甘いという感想の前に、『非効率』の一文が浮かぶような人間だった。
幼童より、理想の身体を目指して栄養管理に躍起になっていた身である。食事は肉体を象る材料で、不要なモノを取り込む余裕を私は私に許さなかった。
競技から身を引いてからもその考え方を変えることは出来ず、時たま口にしても、糖分が喜びをもたらすことは終ぞなかったのである。
「ああ、情けない、情けない」
だからこそ、私は私に失望する。
トレーナーがウマ娘となる謎の現象により、年若い少女に成り果ててから、何度目かもわからない失望である。
目の前にある菓子が、ほしくて欲しくてたまらないのだ。うら若き乙女のように。
菓子は苦手なはずだった。『非効率』で、縁のないモノのはずだった。
なのに、今の自分は、それを欲している。
それは年月が積み上げてきた固定観念の変化によるものではなく、ただ単純に、この若くしなやかな肉体が求めているからという、それだけの理由だった。
年頃の少女は、甘いものが好きなのだ。それを身をもって教えられて、だから私は私に失望する。
何より、菓子の山の中で目を引いてくる───私が無意識に目を向けてしまう『ソレ』が、致命的だった。
にんじんプリン、という商品がある。
文字通り、にんじん味のプリン。私にとっては、忌々しく、好ましいモノ。
生徒のひとりに勧められ不用意に口にした際、私は、ああ、思い出したくもない。ただひとつ言えることは、私はかつての自分より随分と感情豊かになった。衆目の面前で相貌を土砂崩れさせて歓喜を叫ぶ程に。それは時を戻した肉体と、身に宿した因子によるものだ。そう、因子。
数ある甘味の中でも殊更に、このにんじんプリンを好んでいるのは、つまり、『この身体が、これを好んでいる』ということを知っているからなのだろう。
一言で言えば、死にたくなる。
年相応に老熟したと思っていた精神は、肉体の変化に容易く引っ張られ、因子に容易く染められて。そしてそれは彼女を汚すのと同義だ。今すぐこの世界から消えるべきだと思う。
162ポッキーな教官ちゃん21/11/12(金) 23:42:39
「ありゃ、教官さんジャン。何してるんです?」
はっと我に返る。顔見知りの生徒の声。『ご自由にお取りください』と書かれたカードの前に積まれた菓子の前で、ぼうっとしていた自分の姿は、傍目から見れば。
「ははぁ……真面目ジャン。ご自由にって書いてあるんだから、何個でも持っていけばいいのでは?」
「あ、いや、そうではなく、いや何個も持っていくのはマナー違反であります、いやそうではなくて」
「うぉっ……いきなりあざとくなるジャン。まあ確かに、マナー違反ってのはその通りですね。んじゃアタシはこれをいただいておこう」
彼女の手が伸びる。細くしなやかな指。その爪先が示すモノを見て、咄嗟に身体が動いた。動いてしまった。
「おおっと目標被り……」
「……これは、違う、私は菓子なんて嫌いで、だからこんな」
「じゃあ、尋常に戦りましょうか」
「へ?」
ごそごそと取り出された長方形の箱。色鮮やかなパッケージは有名な菓子のひとつで、そういえば今日はそれに因んだ記念日でもあった気がする。
彼女はそれを一本口に据えて、闘志を露わに腕を組んだ。
「ただ一つのにんじんプリンを懸けて、いざ尋常に───」
163ポッキーな教官ちゃん21/11/12(金) 23:43:03
さくさくと、菓子を食む。
ポッキーゲームなる遊びは私には刺激が強すぎた。『はれんちであります! はれんちであります!』と連呼して惨敗した私は、何故か残りのそれを押し付けられ、今はポッキー片手にひとり、テーブルに座っている。
「甘い」
淡々と咀嚼する。
イチゴ味のそれは糖分の塊で、アスリートに適した食物ではない。
非効率で、生徒に勧められる代物では決してなくて、今だって喜びよりも嫌悪感が勝っている。
けれど。
「……『楽しかった』、でありますね」
思えば担当を持っていた頃、誰かと共に菓子を食べたことはなかったかもしれない。
テーブルを囲むのは人脈を広げる手段でしかなく、微笑みを貼り付けて味のしないものを口に入れるだけだった。
なんとも寂しい人間だ、自嘲して薄く笑う。後悔などあるはずもない。トレーナーとなり、地方から中央に来て二十余年、ずっとウマ娘のために生きてきたのだ。自分のことを考えるより、彼女『等』の未来を想ってきた。
誰かひとりのためでなく、より多くの未来のために。
瞳を焼く程の輝きに手を伸ばすのではなく、泥濘から掬い上げるのをよしとしたが故に。
今までも、これからも、それでいい、はずだ。少なくとも、生きている限りは。
「……『おいしい』、であります」
誰かと共に食べた菓子は、覚えてはいけない味がした。