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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart236~240)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part236【TSトレ】
≫24マーチトレ書いた奴21/10/15(金) 17:03:32
1日精神交換
いや…おかしい。
今回は最初からおかしい…
「…身体が…マーチになってる…」
やばい…どうしよう…
何かの間違いでマーチに怪我でもさせたら…
俺は…俺は…
「トレーナー!?
朝起きたら資料室でトレーナーの身体になっていたんだが!そっちは大丈夫か?」
「マーチ!早く俺の体を傷つけないように縛れ!
俺が何か間違いをしないうちに!」
その後マーチを縛るトレーナーが発見された。
トレーナーは大切な何かを失った。
≫41二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:18:11
「あ、ボーノちゃん…じゃなくてボノトレちゃん?」
「え、マヤトレ……? いやこのパターンは……マヤノちゃん!?」
「うん! って、ごめん見つかっちゃった! それじゃまたね! テイクオーフ!!」
「あ、いっちゃった……。うん、ということは今こっちに走ってきてるマヤノちゃんは……」
「みぎゃあああああああああ! 待ってくれマヤノ! いや本当に待ってくれマヤノ! その言動俺の体じゃ色々と許されないんだ!」
「まあそうなるよね……」
「アケボノちゃん! ここにマヤノがこなかったか!?」
「来たしあっちに走ってったよ。あと中身はボクだよマヤトレ」
「そっかすまん助かる! 早く捕まえないと……ただでさえやばい俺の尊厳が!」
「今更気にする尊厳残ってる? ……え、というか追いつけないの?」
「流石に身長とか体のバランスが違い過ぎて上手く動けないんだよ! それでもある程度は勝手に体の方がなんとかしてくれるけど! というかマヤノは何であんなに走れるんだ……!」
「流石天才児というかなんというか……。ボクも歩くのがやっとだからなぁ……。ある意味新鮮ではあるけどねこの視点の高さは。アケボノっていつも、こんな風に世界を見てるんだなって」
「じゃあそういうことで! 待ってマヤノ!」
「あ、いっちゃった……。まあ今回の事態だと確かに一番大変かもしれないなぁマヤトレ……。皆入れ替わってるみたいだけど、流石に異性と入れ替わ……るの……は……」
この後学園中を走り回り色々粉砕しながらもなんとか致命的な事態を招く前にボノトレ(inヒシアケボノ)を見つけ出したボノトレでしたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫45二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:19:02
目が覚めると、今度はヒシアマゾンになっていた。
「ここは、ヒシアマの部屋か……?」
昨夜の行動を思い返す。
「確か、トレーナー室でトレーニングメニューを考えて……」
その後、寝落ちしていたはず……
「トレ公!?起きたらアンタになっていたけど、大丈夫かい!?」
「ヒシアマ!?」
ヒシアマが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「つまり、体が入れ替わったと……」
「不思議なことも起こるもんだね。
ところで、トレ公?なんでアンタの体はトレーナー室で目覚めたんだい?」
「……あっ」
また、寝落ちしたのバレた……
この2人、あまり変化の影響なさそう。
≫46二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:19:03
超短編
朝気付けば入れ替わっていたファインとファイトレ。
「ねぇファイン、思ったより違和感ないわね」
「トレーナーさんの身体というのも不思議な感覚ですね。」
「そうね、私の顔でその笑顔も中々だし」
「…トレーナーさんから見た私ってこう見えるんですね」
「どうしたのかしらファイ…」
ファイン(ファイトレの姿)がファイトレ(ファインの姿)を押し倒す。
「何して…」
「思わず欲しくなってしまったので、いただきます」
「待ってファイン!…っぁ!」
ーーーうまぴょいうまぴょい
上げた責任を取って作った。ファインを襲う姿って状態知ららなかったらヤバそう
≫50二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:23:13
「ウワーッ! 俺の身体がスカーレットのビッグボディ!」
「バカねトレーナー……普段のアンタが薄いのよ」
目の前に自分がいるというのは中々不思議な感覚だが、それ以上に眼前に広がる胸部の圧が凄まじい。
俺ことダイワスカーレットのトレーナーは思わずおててで目を隠すが、スカーレットのおててはほっそいのでちょっと隙間から見えてしまうのだった。
「それにしても……ちょっと羨ましいくらい身体が軽いわね」
「こっちはちょっとびっくりするくらい肩が凝るよ……」
「それがアタシの苦しみよ。ちょっとは味わっておきなさい」
整体をスケジュールに入れるべきかな……とスカーレットの肉体疲労をチェックしていると、段々とスカーレットが物言いたげに俺を見つめる。
彼女の言いたいことを察して、俺はぎゅっとスカーレットを抱きしめた。
「ちょおっ!?」
「大丈夫大丈夫。この体は、必ずスカーレットに返すからね」
「いやそういうことじゃ……ふぁあ……!?」
ぎゅーってしたら俺の身体だからか、すぐにスカーレットはふにゃふにゃになった。
その後、無事戻った後にお返しだとスカーレットに抱きしめられて俺はいろいろめちゃめちゃになった。
うまぴょいうまぴょい
≫53二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:28:32
「あ、お姉ちゃん、おはよー! こんな事態になるなんて思わなかったね♪」
「お、おはようお兄ちゃん。いや本当に大変な事に……」
「…………?」
「ど、どうしたのかなお兄ちゃん、何か変なことでも」
「あ、芦毛」
「え!」ガバッ
「…………何やってるのドバイ1800m星人。芦毛好きだけならともかくそれで他人の体を乗っ取るのはいくらなんでも最低だよこの種付け下手」
「…………うん? お兄ちゃん?」
「いや私カレンチャンのお兄ちゃんであってもアシゲスキーのお兄ちゃんではなくない?」
「あ、カレンチャン」
「え!」ガバッ
「おい人の事言えるのか世界レーティング2位。ていうか俺以上に最低じゃないかなんかこう普通に色々と」
「待って、カレンチャンの体でカワイくないこと言わないで」
「これでもカワイイ補正働いててめっちゃ規制されてるから安心していいぞ♡」
「カレンチャンのカワイイってそういうもんじゃなくない? ていうかカワイイ補正って何……?」
「いやそれにしても……」
「うん、まあ……」
「「どうしてこうなった。いやそもそも事故だけども……」」
※ちゃんと一日で戻りました
うまぴょいうまぴょい
≫57二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:32:39
ケツ(タバコ)「おぉ……この身体いいね、胸が少しないけど……そっちはどう?」
タバコ(ケツ)「うぅ゛ぇ……この身体になった瞬間吐き気が……なんじゃこれ……(素)」
ケツ(タバコ)「……少しショック受けるな……」
タバコ(ケツ)「もっと食べて寝てください……う゛ぅ」
ケツ(タバコ)「……カフェはどう思う?」
カフェ「ややこしいので早く戻ってください……」
≫60二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:35:08
「おいトレーナー、大丈夫か」
「お、おうブライアン……俺はこの通り大丈夫よ」
「……私の体はどうだった?」
「おいやめろ!含んだ言い方をするんじゃないよ!マジでやめて頂戴!」
「ははっ、冗談に決まっているだろう!そこまで赤くなるとは思わなかったぞ」
「くそーおちょくりおって……絶対この姿はフクトレに見せられねえや……」
「まあそんなことはどうでもいい。お前も走るか?」
「んーそうだな、とりあえず走ってから考えるか」
≫74二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:40:53
入れ替わったグラトレとグラスワンダー
「…………入れ替わったね〜」……ズズッ
「…………入れ替わりましたね〜」……ズズッ
校庭に建てた野点にて二人はのんびりと、とんでもない事態を確認し合います。
……しかし、自身らではどうする事もできないので
「……私の身体……試してみますか?」
「……グラスも試してみたいの?」
楽しむ事にしたのでした。
「グラス、はい」
「ありがとうございます、トレーナーさんもどうぞ」
「ありがとう」
そう言いながら何処からともなく取り出したお互いの得物を渡し合う。
グラスの身体になったグラトレが槍を、グラトレの身体になったグラスが薙刀を……
「お互い怪我をさせない様にね?」
「ええ、わかっていますよトレーナーさん」
「「……いざ、尋常に勝負!!」」
校庭に剣戟と楽しそうな二人の笑い声が響くのでした……
完
≫80ガンギマリ頭スズトレ21/10/15(金) 17:45:13
まともトリオと入れ替わり
「えーっと、一応確認だけどグルトレとフクトレであってるんだよね?」
「合ってる。そういうお前もスズトレだな?スズカじゃないよな?」
「当たり前でしょ…私だけ入れ替わってないとかあると思う?」
「でもメインとサブの関係ある人はトレーナー同士で入れ替わってたりするよ?」
「そーなの!?」
「いよいよわけわかんねえな…っていうか、グルトレが思ったより高くて違和感がやべぇ。」
「へへーん、今グルーヴの身体だしスズトレもスズカちゃんだから1番高いもんねー。」
「フクトレはまだ身長変わってないだけよくない??私更に縮んだことになるからなかなか大変よ?いや、髪は楽だけど。」
「あ、そっか。スズトレ髪は短くなったんだ。」
「あの髪やっぱ苦労してんだな…」
「好きを通すには辛いのよ…」
「ねえ3人とも!?ここに俺…じゃなくてマヤノ来なかったか!?」
「マヤトレおはよう。ここには来てないかなー。」
「あ、でもブラトレがあっちの方で見たって言ってたと思う!」
「グルトレありがとう!!待ってくれマヤノォォォ!!!」
「…今回の1番の犠牲者はマヤトレだな。」
「「だね。」」
≫81二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 17:45:24
「ウワーッ⁉トレーナーと精神が入れ替わった⁉」
「五月蠅いぞ息子よ……。ん?この場合は親父か?」
「入れ替わっただけで関係まで逆転するわけないだろギムレットォ⁉年上に親父呼ばわりされたくないわ‼」
「すまん。流石に配慮が足りなかった。姿形が変わろうが俺はお前の親父だよ」
「……まぁ良いさ。それより、トレーナーはどうした?こっちには居ないけどそっちに居るのか?」
「こっちにも居ないぞ。てっきりお前の方に居るものだと思ったが」
「「んん?」」
「それじゃあどこに行ったってんだ?」
「流石に消滅というわけじゃないだろうが……」
「ウワーッ⁉なんか後輩の身体に乗り移ったんだけど⁉」
「「そっちか‼」」
ギャグになった
どうして……
≫111二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 18:24:44
精神入れ替わり グルトレ
柔らかな日差しの中、眼が覚める。昨晩グルーヴと身体を重ね、愛を深めそのまま一糸纏わず眠りについていた。特に何もなかったはずなのに、私を抱き締めて眠っている私がいる。慌てて髪や顔、身体を確認すると、完全に彼女の身体だった。私は今彼女の身体の中にいる。おそらく、私の身体には本来この身体にいるはずの彼女がいるだろう。
「ねぇ、グルーヴ起きて…」
「なんだ……っ!!」
奇妙な光景に彼女は眼を見開いて私を見る。その表情は普段の私にはないものだ。
「入れ替わっちゃったね?」
「のんきな事を言ってる場合か、このたわけが!」
「だって~新鮮だよ?」
私は彼女を抱き締める。私の身体は彼女からしたら少しだけ、ほんの少しだけ小さかった。胸の奥がきゅっと締め付けられる。いつも彼女はこんな気持ちで私を抱き締めていたんだ。ずるい。胸と胸が重なる。それとそれが重なり、彼女は声をあげた。身体のそういうのは入れ替わっていないようだ。私ならおそらく耐えるそれを慣れていない彼女は耐えられず、声をあげてしまったのだろう。
「グルーヴが私の胸にそういうコトしたんだよ?」
以前母乳が出てしまった際に、彼女が私の胸を執拗に攻めた結果、私の胸は更に敏感になってしまっていた。
「早くしろ……このたわけがっ」
「うん!たまには、グルーヴもそういう風に気持ち良くなろっか…ね?」
入れ替わった身体でそのまま、愛を確かめ合う。
「私の身体でもグルーヴはグルーヴだよ、だいすき」
唇に唇を重ねる。翌日にはもとに戻ったけど、たまにはこういうのも悪くないと私はぼんやり思った。
≫123二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 18:34:34
マルゼンスキー「すまんマルゼンスキー。訳がわからんけどとりあえず学校に行こう」
マルトレ「わーありがとうトレーナーちゃん!」
マルゼンスキー「とりあえず体は俺がトレーニングをこなすからマルゼンスキーは動画でレース研究をやってほしい。あとすまん……マルゼンスキーの家のコップ一個割った……」
マルトレ「ダイジョーブイトレーナーちゃん!」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part237【TSトレ】
≫20二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:12:44
『負けず嫌い達の賛歌』
自分の根っこの部分を見つめ直すというのは大事なことだ。
今でこそとんでもないやつ扱いのブラトレではあるが、研修の頃はまだ何も分かっていなかった。
ウマ娘達がどんな思いで走っているのか?
どうして彼女達は輝きたいのか?
トレーナーは、そんな彼女達に対してどのようなことができるのか?
そんな漠然とした、答えのない問いに答えるべく、トレーナーは努力をする。
実らぬ努力もあっただろう。輝かぬ夢もあっただろう。
それでも努力を続け、自分の力を信じ、トレーナーと担当が力を合わせる。
そんな姿に憧れたからこそ、ブラトレはこの世界に身を投じたのだ。
「久しぶりにサシで飲むんじゃないかな、ブラトレ?」
「そうだなー、だいぶ久しぶりだ……3,200走る前にちょっとあったくらいじゃないか?」
そう言いながらブラトレはテイトレと共に行きつけの居酒屋へと入る。
「しかしどうしてまた?俺以外にも色々いたんじゃないの?」
個室の部屋でのんびりとお酒を楽しみながら、テイトレが本題に入る。
「いやねえ、最近とあるトレーナーを拾ってな、その絡みで思い出話でも、と」
「拾うってそれ捨て猫かなんかみたいな言い方するじゃん……」
「雨の中へたり込んでるやつをなんとか家まで引っ張るのは実際そんな感じしないか?」
「うーん、まあ確かに?」
くいっと猪口を傾けると、ブラトレは思い出すかのように笑みを浮かべる。
「どったのそんな表情して」
「懐かしくてなー。俺も最初の頃は試行錯誤して、あーでもないこーでもないってやってたことをな」
「わかるなー、やっぱ最初の頃は大変だったよね。テイオーも結構自由気質だったし。……ところでそのトレーナーってもしかして、フジマサマーチの?」
「耳聡いな、その通りだ。アイツもだいぶ苦労してるみたいでなー」
「結果が出ない、自分の努力が無駄だったかもしれない……怖いよね」
「ああ、その通りだ。でも俺たちはやっぱりトレーナーで、負けず嫌いの集まりだからな。足掻いて足掻いて、やるだけのことをやり切って、そして担当のことを信じる。その先に勝利の女神様がいると信じてな」
それを聞くとテイトレは感心した素振りを見せて…
「へっへーなんかブラトレがまともっぽいこと言ってる!あんだけ新人の時の序盤を棒に振ってたのに!」
とおちょくった。
「うるへー、そこは今関係ないだろ!」
21二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:13:59
「あっはははは、まだ気にしてたんだね!」
テイトレは昔のように笑う。顔が変わっても、ウマになってもそこは変わらない。
「まあ未だにアホって言われる原因の一つだからな……だが後悔はしてないぞ?最高の相棒、ブライアンに出会えたんだからな」
ブラトレもふっと笑う。心の底からの喜びが顔に浮かんでいる。
「ま、それはもうみんなわかってるさ。ブラトレとブライアンっていつも仲良いしね」
「マーチのトレーナーも、まだ諦めてない。そしてきっと、マーチだって諦めたくないと思ってるはずだ。それなら、きっとその先に何か光が見えるはず……彼女らに勝利の女神が微笑んでくれることを祈っておくよ」
「いずれ俺たちのライバルになるかもしれないね。さ、難しい話はこれくらいにして楽しもう!」
「よし、美味いもん食ってお酒飲んで、明日の元気にするか!」
そうして2人の飲み会は再び始まった。
夕暮れ時の酒の席に、思い出語りで花が咲く。
目指した星の輝きは、今でも彼らの上に在る。
≫35二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:23:48
入れ代わりはいいぞポッター
タマ「凄いで!この身体!目線が高い!力もある!高い所も楽々届く!」
タマトレ「喜んで頂けて何よりです...所でタマモクロスさん...何で俺は縛られてるんですか?」
タマ「トレーナー、うちは信頼しとるんや!自由にさせたらまずブラを脱ぐってな、だから縛って動けなくしとるんや」
タマトレ「失礼な、脱がないよ!流石に人の身体でノーブラはしないよ!(正直このサイズなら要らないと思うけど)」
タマ「それと昨日クリークとの賭けに負けてな...」
クリトレ(クリーク)「タマちゃん?約束の時間でちゅよ?」
タマ「トレーナー...堪忍な」スタコラサッサー
タマトレ「助けて!赤ちゃんにされるぅぅ!」
オグリ(オグトレ)「諦めるのも大事だ、はっはっは」(遠い目)
クリーク(クリトレ)「ばぶぅ」虚ろな目
─────────────
バブぴょいばぶぴょい
≫59二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:47:01
「マァーーーベラス!!」
アラームの音が聞こえ……ん?
寝ぼけ眼のまま伸びをして、おそるおそる辺りを見回す。
知らない天井、知らないベッド。隣のベッドにマーベラス。
「おはようネイチャ!今日もマーベラスな一日にしようね☆」
カーテンが勢いよく開けられる。うすく反射するガラス越しに見る自分の髪は白、ではなく茶褐色。ああ……ツインテールを解いたらこんな感じになるんだ。やっぱりかわいい。
今日も戻っていない。いや、それどころか変わり過ぎなんですが。
────────────────────────────────
『……トレーナーさん!生きてる!?』
「簡単に殺さないで!?何回か死にかけてはいるけど!」
起床後すぐ、自分のスマホからかかってきたらしい電話に出ると、聞きなれない声で心配をする誰かがそこにいた。
「一応確認するけどネイチャだよね?今私の家?」
『うん、そうあたし。今トレーナーさんの部屋……よかった。あたしの意識でトレーナーさん上書きしたとか、そういうのになっちゃってるのかと思ってぇ……!!」
「さらっと怖いこと言わないで……あと泣かないで?私トレーナー、今ネイチャの部屋にいるよー??」
身体に引っ張られてるのかぐずり出すネイチャに、目いっぱいひょうきんな声を出してあやそうと試みる。横にいたマーベラスからは何かを察したのか、キラキラした目を向けられていた。
『……うわ、あたしの声ってそんな高いの?なんかキンキンする』
「必死の行動にその反応は酷い……でもそういうもんだって。私も喋っててネイチャっぽい低い声が聞こえてるの、全然落ち着か……まぁいいや。トレセン来れそう?」
『ちょっと待って……着替えの場所は多分……どうやって行くかも、うん分かる。適当に冷蔵庫の中で食べていい?』
「もうじゃんじゃん食べて。こっちでどうすればいいかは……同室のマーベラスに」
『うん。なんかあの子なら事情説明したら協力してくれそうな気がする、ってうわああ!!?』
「ネイチャ!ネイチャ!!?」
悲鳴とともに通話が切れる。
ダイジョーブ?
「……大丈夫じゃないかも」
ピラミッド状に配置されたてっぺんのぬいぐるみにも心配されながら、私は身支度を始めた。
60二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:47:12
さすが同室、マーベラスは下着の場所から折り紙トロフィーの保管場所まで全部教えてくれた。……ネイチャにもプライバシーはある。一部の情報は忘れてあげよう。
「こ・れ・で。うん!いつものマーベラスなネイチャだよ☆」
鏡を見ると確かに慣れ親しんだ顔がそこにあった。かっこつけたりすました表情をして遊びたいけど、今は余裕がない。
「ありがとうマーベラス。朝はネイチャも寮食だよね、連れてってもらえる?」
「ん~ちょっと早すぎてやってないかも★だからすぐにネイチャの元へ行ってあげて☆」
「不思議耐性高くて助かる!これが終わったら、自分でできることなら一回助けてあげるから!」
簡単な約束をして私はすぐに寮を飛び出した。
途中、再度ネイチャからきた電話によると単純に重心を崩して転倒しただけらしい。よかった。ともあれ、早く合流しなくちゃ。
車が行きかう道路を抜けて堤防上の道にまで出る。ここからなら私のマンションまではほぼ一直線だ。
……ネイチャがやっていた呼吸を思い出す。スタート前のフォームを真似る。足に、全身に、力を籠める。
……少しだけ、本当に少しだけだからこの身体、力を貸して。
幻想のゲートが開いた。
──早い。
──早い。早い。
──早い早い。ここに来るまでもわかってたけどとにかく早い!そして軽い!!なにこれ!!?
思わずのけぞりそうになる身体を必死に前に傾けて、路面を確認しながら足を進める。やっぱり私ウマ娘じゃなかったんじゃないの!?こんなの全然感じてこなかったよ今まで!
そしてあっという間に、マンションを出てすぐの道沿いに倒れ伏す私を見つけてしまった。
「ネイチャ!」
「トレーナーさん……あたし、もうダメみたい。ちょっと走っただけでもう、この身体……弱すぎる」
「待ってネイチャ!今なんか色々傷つくからやめて!?」
確かに息を切らしてヘトヘトな私inネイチャ。でもなんだろう、余裕を感じる。
「へへ。ありがとう、トレーナーさん……ずっと、大好きだったよ……ガクッ」
口元には隠し切れない笑みを浮かべたまま、ネイチャから力が抜ける。
「!! ネイチャ?ネイチャ??……ネイチャーーーーーーーーーーーーーッ」
ご近所様を考慮して音量を落とした叫び。頭の中では平○堅の「瞳を閉じて」が流れている。気分だけならここが世界の中心だった。
61二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:47:23
「……こんなんでよかったでしょうか」
ひとしきり叫んだ後に声をかける。むくっと起き上がる私の身体。……ちょっと腹が立つ。
「うん、ネイチャさん的には90点だね……楽しかったぁ」
「残り10点は叫びが足りないとこ?」
「あと『助けてください!』はやっぱり欲しいよねー」
「よーし全然余裕だね。じゃあ抱えて持ってくから」
有無を言わさずネイチャ入りの私を抱えてトレセンへと進む。
「え、ちょ……やだー!だからお米様抱っこはイヤーー!」
「朝から楽しそうですね?」
「楽しかった!でもトレーナーさんもノってくれたじゃん!この格好恥ずかしくないの!?」
「いいのよ、私の身体が恥ずかしい分には……」
「お姫様抱っこじゃダメ?せめておんぶは?」
「多分バランスが取れないし、タイトスカートでおんぶは論外」
「元気!元気になったし歩く!だから下ろして~~~!」
肩の上でじたばたするか弱い生き物を抱えて私は考える。
──やっぱり力だとネイチャには敵わないなぁ。どこか勝てるところ作らないとなぁ。
そんなことを考えながら、ほかの人に会うまでの間、私は私を抱えてトレセンへの道を進むのだった。
うまぴょいうまぴょい
≫127シチトレ幻覚マン21/10/15(金) 20:22:23
「参ったね…」「はい…」
私は、居酒屋でフジキセキのトレーナーである、目の前の女性と顔を見合わせた。
彼女は、私がこのトレセン学園に来た頃にお世話になった人だ。その当時の私は、地方のトレセンから来たトレーナーとして、あまり馴染めていなかったが、彼女─当時は彼だったが─が世話してくれた。私が早く馴染めるように色々な便宜を図ってくれた。それに、今回のシチーの寮から、一人暮らしの移行にも口添えしてくれた。そんな彼ももう"彼女"だ。…そのおかげで生来の身体の弱さが解決したみたいで、私としては嬉しい限りだ。口添えのお礼に、焼肉を奢らせてもらったのも記憶に新しい。そんな彼女と私だか、少し困ったことになっている。
原因は、トレーナー同士の飲み会での王様ゲームだった。命令で選ばれたのが、私たちだったのだが内容が内容だった。それは…
「まさか、キスとは…」「はは…」
女性になったとはいえ、恩人とキスするのは…。気は進まないが…。
「良い…ですか?」「良いよ。」
彼女は、少し頬を染めて、顔を寄せてきた。こんな状況とはいえ、彼女のその顔は私をやる気にさせるには十分だった。しかし、彼女にはフジキセキがいる。もちろん私にもシチーがいる。お互いのためにも軽く唇を重ねるに留まった。
「ん…」「…ふぅ。」
「ふふっ…」
重ね終わったあと、彼女は私に向けて艶のある笑みを浮かべた。
…なるほど、フジキセキのパートナーなだけある…。
彼女の、男の時の優しさとその時にはなかった色気を目の当たりにして、少し驚かされた。
128シチトレ幻覚マン21/10/15(金) 20:22:58
今日は、カレンチャンのトレーナーに頼まれて、ヘアスタイルの相談を受けている。もうほとんど私とシチーの美容院と化した教室で、椅子に座りながら座る彼女は、担当のことをお姉ちゃんと呼ぶようになり、元男であることなど微塵も想像させない雰囲気であった。
「で、よりかわいくなりたいから私に相談してきたと…」
「そういうこと♪」
彼女とは、よく美容のことについて話していた。それで、よりかわいくなりたい彼女からヘアスタイルの相談を受けた形となったのだ。
正直、これ以上私に出来ることなどほとんどない。というか、これ以上何を求めるのだろうか…
そう思って彼女の瞳を見た時に、なんとなく気がついた。
負けず嫌いなんだ、それも筋金入りの。
その1点だけで、私は彼女の「カワイイ」を応援したくなった。
熱意が本物と信じるに値すると思ったのだ。
それに、彼女のそのあり方はどこか他人の気がしなかった。カレンチャンの妹であろうとするその姿に、何故かシンパシーを感じていた。…担当に似てくるのだろうか、ウマ娘になったトレーナーというのは。
とはいえ、ヘアスタイルではこれ以上改善の余地はないのは明白だった。だから、ヘアスタイル以外のアプローチで彼女をサポートすることにした。
具体的には、アロマによる雰囲気の演出での「カワイイ」の追求だ。
そのために、彼女に幾らかのアロマを譲った。バラとか、ジャスミンを中心に、アロマをいくつか見繕って袋に詰めた。
「どうもありがとう♪」
彼女は、そのアロマを持って、嬉しそうにこの部屋を去った。
…願わくば、彼女のカワイイ、それも新たな「カワイイ」への道が拓けることを願いながら、しょうもないことを考えていた。
「今度、シチーにお姉ちゃんって呼んでもらおうかな…」
≫139ルドグルブラフジ温泉の旅121/10/15(金) 20:31:43
秋のある朝。早い時間であるが、フジキセキのトレーナーは自宅でゆっくり本を読んでいた。
といっても、別に何もない日というではない。迎えを待ってるだけである。
「んー、そろそろかな」
ふと時計を見て、そう呟くと同時にインターホンが鳴る。
『おーい、迎えに来たぞ』
そう言う相手は今の彼とさして変わらない身長の黒ののこる葦毛のウマ娘──ナリタブライアンのトレーナーだ。
「ブラトレか。今行くよー」
そう言いながら玄関に荷物を持って出る。この身体になってから”日常という幸せ”を噛みしめている彼は、此度の件についても非常に楽しみにしていた。
「おまたせー」
「お、荷物持つぞ」
「ありがとう……と言いたいけど、自分で持つよ」
「お、そうか」
と言いながら、外に停まってる車を見る。助手席からこちらに手を振ってる金髪のグルトレ、運転席で地図を見てるのはルドトレ────今回のメンバーだ。
「おはようございます」
「あ、フジトレさんおはよー!体調は大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、それじゃ、行こうか」
二人とも元気そうというか、ルドトレには運転を任せていいか不安になりつつも後部座席に乗り込む。
「それじゃ行くよー!」
「「「おー!」」」
140ルドグルブラフジ温泉の旅221/10/15(金) 20:32:17
────結局のところルドトレの免許はゴールドであり、しっかり安全運転であった。
「ところで、朝食どうしました?」
グルトレが切り出す。
「あ、確かに。私食べてないんですけどどこかドライブスルー入ります?」
「ドライブスルー?なら一度試してみたいものが実はあって……」
「お、フジトレ。何が試してみたいんだ?」
「そりゃあ健康になったんだし。例のファストフード店の朝メニューというものを試してみたくて」
「ならやろう!丁度近くにあるし!」
「いいな、やろう」
「ならこの道をそのまま行けばあるのでそこで買いましょう」
「了解!」
ルドトレのハンドルさばきに安心感を抱きつつも車はドライブスルーへと至る。
「えーと、みんな何食べるー?」
「俺メガマフィン。コーヒーで」
「私はフィレオフィッシュで。勿論コーヒーでお願いします」
「あ、フジトレさんどうする?」
「んー……ベーコンエッグ!飲み物はコーヒーで!」
「はーい!」
そうして、ルドトレが自分の分を含めて注文していく。
『エッグマフィンのセットが1つ、ベーコンエッグのセットが1つ、メガマフィンのセットが1つ、フィレオフィッシュのセットが1つですね』
そうして手渡された袋をルドトレが受け取り、袋を渡されたグルトレが皆に配っていく。
「おおー……!」
ベーコンエッグサンドを見つめるフジトレを、ルドトレ以外の二人が注目する。
ぱくり。一口食べたフジトレが笑顔になる。それに釣られてグルトレとブラトレも笑顔になる。
141ルドグルブラフジ温泉の旅321/10/15(金) 20:32:55
「これって、こういう味なんだ……!」
「すまん、ちょっと涙が」
「大丈夫、私も若干きてる」
「……?」
「あ、いや、二人とも気にしないで食べて食べて……」
「フジトレさんどう?美味しい?」
「あ、ルドトレちゃん。勿論美味しいよ」
「ならよかった~……って、私運転してるから食べれない……グルトレちゃん食べさせて!」
「あ、はいはい……はい、あーん」
そう言いながらグルトレがルドトレのぶんのハッシュドポテトを食べさせる。
「んむ……」
「これ、イロボケが見たらキレながら車に突っ込んでくるな」
「そもそも助手席渡さないよね、彼女」
そう皆で話しながら車は高速に乗り、旅館へと進む──────
そうしてしばらく運転して、とあるサービスエリア。
「と、言うことで少し休憩とかお手洗いとかここでしよっか!」
「だな。ちょっと色々見てくるのもいいよな?」
「ならブラトレと僕で動くよ」
「じゃあ30分集合ね!ってことでお手洗い行ってくる!」
「あ、待ってルドトレさん。私も行く」
そう言いながら皆車を出て好きに歩く。因みに車の鍵はフジトレが持っている。
142ルドグルブラフジ温泉の旅421/10/15(金) 20:33:43
そんなこんなで、ブラトレとフジトレはサービスエリア内の道の駅でふらふらしていた。
「お、メロンパン」
「メロンパンかー……」
「……食うか?」
「いいかな?」
「まあ大丈夫だろ。ウマ娘だし」
そう言いながら二人はメロンパンを買い、頬張る。外はサクサク中はしっとりしてて甘い。
そして、これが"普通"であることに気がつく。
「……背徳感」
「……あるな。でもそれがいいだろ?」
「ああ。わかる。みんなこういうことしてたんだ……」
「……よし、どんどん楽しむぞ!」
「おおー!」
そうして二人はサービスエリアを待ち合わせ時間ギリギリまで楽しむ。
それは、灰色のキャンバスに色が塗られていくように。
「お、戻ってきたー!」
車に戻るとルドトレが既に待機している。
「ルドトレ、グルトレは?」
「ごみ捨ててくるって!先に乗って待ってだって!」
「なるほど。なら仕方ないね」
「だな。あ、ルドトレ。メロンパンあるけど食うか?」
「食べるー!」
そう言いながらメロンパンを食べるルドトレ。やっぱりかわいい。
そうこうしていると、グルトレが戻ってくる。
────四人の旅は、まだまだ続く。
≫148二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 20:43:55
「あ!ネイトレちょうどよかった!近頃マーベラス不足なネイトレに吉報だよ☆。」
「どうかしたのマーベラス?」
「この前、福引で式場見学のペアチケットが当たったからネイトレ達にあげようと思って、ネイチャとネイトレたちならぴったりかなって☆」
「いいよ、せっかく当たったのなら、君たちで行ってきなよ」
「いいや、気にしないで私達はスイーツ食べ放題のペアチケットが当たったから☆」
「運が良すぎる!っていうかソッチのほうが行きたいかも」
「この前の約束だよ。一回助けてくれるって」
「あー」
こうしてネイトレ&ネイチャは式場へ行ったのであった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part238【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:16:50
超絶一発ネタ。フクロブテイネイ悩み話
「フクトレさん…テイトレさんとネイトレさんが落ち込んでいます!」
「雑、導入が雑だわ…仕方ない聞いてやってくれロブトレ」
「お任せください…どうされたんですか?」
「…………」
「ふむふむ…テイオーさんに優しくされると下腹辺りがきゅんきゅんしてときめいてしまうのが情け無いらしいです」
「あー…影響があるとはいえ男の矜持がな…」
「…………」
「でもそんな関係が気恥ずかしくも嬉しいらしいです!」
「よーし解散。心配して損した」
「分かりますよ…私もロブロイの一挙一足に心を踊らせてしまいますから…」
「いいんだぞロブトレ、反応してやらなくても…で、ネイトレはどうした」
「…………」
「なるほど…可愛い妹のように思っていたネイチャさんに最近頼ってばかりになってしまっていると」
「…それは別にいいんじゃないのか」
「…………」
「格好いいところや優しいところに心が揺さぶられてるこの状況が幸せで辛いらしいです!」
「よぉーし解散解散!」
≫30ケツとタキトレ 1/321/10/15(金) 21:25:05
「キミの身体能力の低さは目を引くものがある」
そうタキオンに言われたのは……2、3時間ぐらい前だろうか?
続いて彼女は、俺を研究したいと申し出た。俺も自分の力の無さは気になるので了承、約束された時間通りに研究室に来た……のだが、そこにタキオンの姿は無かった。時間通りに来たのに居ないタキオンの不順守ぶりに少し呆れる。
「すいませーん!誰かいませんかー!」
とりあえず声を掛けてみる……すると奥から“まだ”見慣れないウマ娘が出てきた。
「あぁカフェトレさん、タキオンに用ですか?あいにく彼女は今居ませんよ。すぐ戻ると思うんで、そこの椅子にでも座って待っててください」
彼女は……タキオンのトレーナー、ついこの間まで姿をくらませており、ウマ娘になったことしか耳にしなかった。タキトレさんが男の時は俺よりもガタイが良かったのだが、ウマ娘になったタキトレさんは俺と同じぐらいの体格になり、その面影はない。
「紅茶でいいですか?」
「あ……はい、ありがとうございます」
そう言うと彼女は紅茶を淹れて、テーブルを挟んだ俺の前の椅子に座った。
……気まずい、タキオンとはぼちぼち喋るがタキトレさんとは話したことがあまりない。こういう時、自分の社交性のなさがつくづく嫌になる。何の話題も思いつかないまま、時間だけがゆっくりと流れていく。
31ケツとタキトレ 2/321/10/15(金) 21:25:39
「……カフェトレさんはウマ娘になった時どう思いましたか?」
「えっ?」
沈黙の中、急に話しかけられ声がうわずった。
「あぁ……僕がウマ娘になった時ですか?」
「そうですそうです、気になったもので」
「僕は……無いなぁって思いました」
「無い?」
「……胸が」
彼女が笑う。文字通り身を削ったネタだ、これで笑ってくれなかったら困る。
「いやぁごめんなさい、あんまり面白いもんで」
「でも、戸籍とかも変えなきゃだし大変でしたよ」
こちらも愛想笑いをする。流れに乗れたと思い、話を続ける。
「それに……親にバレた時は大変でしたね」
「あー、親ですか……」
「実家に帰って来いって言われましてね……泣かれましたよ」
「……まぁそうですよね」
「えぇ……やはり姿が変わるのは親としてショックが大きいんでしょうね……」
「……私が変化した時の話、してもいいですか?」
そう言ってタキトレさんがした話は衝撃的だった。
タキオンの作った薬を飲んだ……確かに俺もカフェもタキオンから懇願され血液をあげていたが、まさかそんな研究に使われてるとは思いもしなかった。彼が……彼女が味わったという変化の時の痛みは、聞いている俺でさえ耐えられるものではなかった。しかしタキトレさんは後悔はしておらず、タキオンの研究に貢献できたことを心の底から喜んでいることを俺に伝えた。
俺は……正直タキトレさんに恐怖した。彼女の覚悟は生半可なものではない、俺の何倍もの精神力があってこそできた偉業だ。そして俺はタキトレさんに恐怖すると同時に……尊敬した。
32ケツとタキトレ 3/321/10/15(金) 21:26:16
「……それはとても大変でしたね、でも……」
“でもなんで僕なんかにその話を?”喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。この質問は俺に秘密を打ち明けてくれたタキトレさんに失礼極まりない。
しかし、タキトレさんは俺の言おうとしたことを察したように言葉を綴った。
「……どうしてでしょうね、なにか貴女には話しやすかったんです」
タキトレさんは困ったような、それでいて少し心が軽くなったような表情を浮かべた。そして次にまっすぐな瞳で俺の目を見つめた。
「……なんだろう、カフェトレさんとはもっと仲良くなれる気がする。直感だけどそんな気がするんです」
「……そうですね、僕もそんな気がして堪らないんです。また研究室に来た時は話しかけてもいいですか?」
「もちろん話しかけていいですよ。だからさ……無理してそんな話し方しないでほしいんだ。ダメかい?」
タキトレさんの口調が少し崩れる、どうやら彼女には隠しごとはできないようだ。口調が崩れたのは俺にも崩して欲しいという、タキトレさんなりのサインなのだろう。
数秒考え込む、そして俺は……
「……ダメですよ、“俺”はタキトレさんよりも年下なんですから……敬語を使わせてください」
その言葉を聞いたタキトレさんは少し驚きつつも、“まだ”見慣れない嬉しそうな微笑をしてくれたのだった。
数ヶ月後、俺とタキトレさんは仲良くなりすぎて変なものを飲まされたりするのだが、それはまた別の話。
うまぴょいうまぴょい
≫48ガンギマリ頭スズトレ21/10/15(金) 21:35:06
「並走?」
「ああ、スズカの大逃げをテイオーの成長の糧にしたい。いつかドリームシリーズで当たった時のためにもな。」
テイトレが火の玉並のストレートで頼む。全く隠そうという意図を感じない。
「そこら辺普通隠すとこじゃないの?」
「でもまだまだスズカは走るんだろ?なら"帝王"との並走は大きな経験になるはずだ。」
言ってテイトレがにやりと笑う。その目は私の脳内まで全部見抜いてそうで。
「…分かった。」
「よし!」
大人しく事実上の白旗をあげ、テイトレがガッツポーズ。
ついでにトレーニングも一緒にしようと決めて、互いに担当を呼び事情を説明する。
「なるほど…分かりました。」
「へぇー、スズカとかぁ。よろしくね!」
「えぇ。よろしく、テイオー。」
そんなやり取りを短く交わして、二人はトラックでトレーニングを始める。
「…今日は一緒に走らないのか?」
「走らないよ。スズカだけなら私もトレーニング参加してても見れるけど、普段見てないテイオーまでは見れないから。」
「なんだかんだ言っといてガッツリ情報抜くつもりだな。」
「やられっぱなしで終わるわけないでしょ?」
「それもそうか。」
「私のトレーニング見れなくて残念?」
「そうだな。あわよくばとは思ってた。」
「ホントに思ってたの…」
「今なら俺も走れる。テイオーをより高みへと連れてけるなら手段は選ばないさ。」
「あー…確かに。」
「…ははは!」
「…ふふっ。」
互いに出したジャブが同じような結果で終わり、少し笑いが込み上げてくる。
そうしてひとしきり笑い終わった後。
50ガンギマリ頭スズトレ21/10/15(金) 21:35:27
「…結局デビューはするのか?」
テイトレが切り出した。
「…するよ。どれだけ早く見積もってもスズカがドリームシリーズ入りしてから1年後だけどね。最初の1年はドリームシリーズに慣れるのに使いたいから。」
「そうか。上手くいけば間違いなくトゥインクルシリーズは盛り上がる。頑張れよ。」
「うん、いつかテイオーも倒せるくらいを目指して頑張るよ。」
「おう、それは叶わないと思うけどな。」
「はいはい。…脚はもう人に見せても平気なの?」
「ああ。みんなに、テイオーにずっと優しく支えてもらったからな。お前も含めて。だから平気だ。まだなるべく隠してはいたいが。」
「うん、それでいいと思う。まだまだ先は長いんだし、ゆっくり行こう。」
風が吹く。並走を始める担当2人の背中を押すように。
「…ねえ、テイトレ。」
「なんだ?」
「もしテイオーと組まなければウマ娘化しないって言われたらどうする?」
「聞くまでもないな。
それでも俺は、テイオーと組むよ。」
「同じく。例え辛いことだけ意図的に抜粋されて言われたとしても私はスズカを選ぶ。」
少しの静寂。風も止み、ただただ二人の言葉を待つ。
「…テイオー、ちゃんと支えてあげなよ。」
「スズカについてけよ、どこまでもな。」
再度、風が吹く。──過去を、試練を超えた2人を、祝福するように。風は大きな空へと、吹いていった。
≫68スペースカマドラゴンじゃねえ21/10/15(金) 21:47:44
穂木を折る
メジロマックイーンのトレーナー。
恐ろしいまでに強靭な意思と担当への熱意を持つトレーナーだ。
ウマ娘化してからのメジロマックイーンそっくりな容姿もあり、トレセンの中でも有名なトレーナーだった。悪ノリすることが多かったり、勢いまかせな行動を取ったりすることもあったが、相談を受けたり、トレーニングを見ていたりするときの凛々しいマクトレは、同じ容姿の担当とは別方面で少し人気があった。
そんなマクトレに悲劇が襲い掛かれば、噂はすぐに学園に広がる。
70新型トリオン兵メカジャールだ21/10/15(金) 21:48:14
虚な目をしたマックイーンそっくりのウマ娘が、グラウンドの縁に立って走る生徒達を眺めていた。
ブラトレが500mlのペットボトルを持って近寄る。
「おい」
「はい…?」
「飲め」
「ありがとうございます…えっと…」
「ブラトレでいい」
「はい、ブラトレさん」
マクトレの記憶は、消えていた。
この日の朝起きた時点で、マクトレから自分に関する記憶が一切合切消えていた。自分の名前、職業、顔、全てを忘れていた。
幸い、スマホや鍵といった日用品へのアクションは体が覚えていたらしく、スマホから最も連絡頻度の高かったマックイーンに連絡が行った。
マックイーンは最初混乱していたが、かなり早くに自分のすべきことを判断し行動することができた。結果、マクトレの記憶喪失が発覚したのだった。
「何か思い出せそうか?」
「すいません。本当に、何も」
「そうか…」
医者にも原因はわからないと言う。そもそもマクトレは自分のことを他の人間にあまり話さない人間だった。マクトレの話す内容など、「マックイーンのため」以外は与太話くらいしかなかった。そのため、マクトレが何かのストレスを隠していたのか、ストレスなど関係なく記憶を失ったのか、それすらもわからなかった。
71二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:48:28
ブラトレ達はシャカトレにも話を聞きに行った。頭を抱えっぱなしで動かないエアシャカールを横目にシャカトレは、
「僕の専門の外もいいところですけど…?」
と困った顔をした後、医者の話していたことを聞いて、
「正直、マクトレさんが何かえらいものを抱えていたとは思えませんけどね…。あの人、マックイーンのためならなんでもする、じゃなくて、最善を尽くす、ってタイプじゃないですか。ストレスとか溜まる前に相談すると思うんですよね。毎日夢で陵辱されるなんて相談できるくらいですから」
ロジカルなシャカトレの説明に納得しかできなかった面々は、とりあえずグラウンドにマクトレを置いてみることにしたのだった。
効果はいまいちのようだった。
「あーもー、俺には何をすればいいのかわからん」
「本当にありがとうございます……ご期待に添えず申し訳ありません」
今のマクトレには覇気が無かった。強者メジロマックイーンの凄みも、狂人マクトレの熱も失われたそれは、風が吹けば折れそうな深窓の令嬢のようだった。ただ一つ、本当に何も入っていないかのような空虚な眼を除いては。
「トレーナーさん」
「ああ、えーと、マックイーンさん」
「ええ。あなたの担当しているウマ娘、メジロマックイーンですわ」
やけに凛々しいマックイーンを見てブラトレはふと思った。この子こんなんだったっけ?と。
72二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:48:44
別にマックイーンが弱いウマ娘と思っているわけでは無かった。心も体も強いいいウマ娘だと思っていた。だがこの瞬間のマックイーンには、なんだかよくわからない違和感があった。
「ごめんなさい、わたくしいまだに何も思い出せなくて……」
「そんなすぐになんでも解決しようなんて思ってはいけませんわ。わたくしも何をすればいいか全力で考えて協力いたします。だからどうか、ご安心してくださいまし」
「いえ、どうかマックイーンさんはご自身の練習を最優先にしてくださいまし……わたくしなんかにかける時間ももったいないですから」
「なんか、ではありません。あなたはわたくしのトレーナー、二人三脚で天皇賞を獲ると決めたのです。二人三脚で相方を置いて行けなんて、そんなお話あるはずもないでしょう?」
ああ、となんとなくブラトレは察した。
このマックイーンはマクトレに似ている。おそらく、マクトレに影響を受け、そしてマクトレのように強くあろうと決めて、今彼女は口を動かしている。しかも、きっと無理はしていない。いつもよりトレーナーのようにあれ、それくらいの塩梅に見える。
あいつ、そう言うとこすげえなとブラトレは思った。あいつの記憶が消えたところで、あいつの功績は一切消えずにここにあるじゃないかと。それがマクトレの記憶を戻すことになんら関係ない気もしたが、それはそれとしてなんとなく心が軽くなった。
73二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:48:59
その日の夜。
マクトレとマックイーンはトレセンに泊まることになった。
理由はいくつかある。まずマクトレを帰す意味が薄いこと、マクトレがどうにも精神的に弱っていること、そしてマックイーンが宿泊に前向きであったこと。
「わたくしはトレーナーさんに多くの“強さ”を教えていただきました。わたくしはその恩をお返しするのみですわ。それに、わたくしと居てわたくしと話した方が、何か思い出せることもあるかもしれません」
いつもよりも“強い”マックイーンの発言もあり、二人はトレセンの一室で一晩過ごすことになった。
「──といったトレーニングをトレーナーさんが考案してくださって。これがまた面白くてしばらくはこれだけやりたいとまで思ってしまいましたわ」
「そうなんですね」
マックイーンは色々な話をした。インカムを使ったゲームのようなトレーニング、障害物を用いた回避トレーニング、正直あまり意味のなかったものからとても有意義なものまで全部話した。
74二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:49:13
それを、マクトレは微笑みながら、少し悲しそうに聞いていた。
「……何か、思い出せましたか?」
「…………すいません」
マクトレは、少し黙って、俯いて言った。
どれほどの思い出を語ってもマクトレは何も思い出さない。知っている動きだけはしても、知っていたはずのことだけは思い出さない。
何が残っているのだろうか、と思ってしまうくらいに。
「……では」
何が残っているのか、を聞いてみたくなるほどに。
「今のあなたについて教えていただけますか?」
「わたくし……?」
少々驚き、そして怪訝な顔をしたのち、若干の沈黙を挟み、彼女は言い放った。
「何も」
「え?」
「わたくしには何もありません。わたくしは、何者でもないし、何になりたいとかもないし、何をすべきと思うことも無いのです」
続く
≫75二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:49:54
DK/UTSどうでしょう1
「こんにちは皆さん」
「こんにちはシャカトレ。今日はなんの集まりです?」
「なんとなくわかるけどな……」
「その先は考えたらダメだよフクトレ」
「おう、その紙の束はなんだ」
「ここにはですね、各都道府県の代表レース場のシンボルがあります」
「あー、これは京都でこれは……」
「中山のレース場か?」
「あ、これ函館のやつ」
「そうですね」
「……なあ、やっぱり不安なんだが、これ何の為に用意した?」
「えーっとですね…今から、ここから一枚髪を引いてもらいます」
「で?」
「そこに行きます。公共交通機関で」
「はい?」
「バカなの!?」
「いや僕だってワケわかりませんよ!?あなたたちはともかくなんで僕にまでこの指令が上から来てるのかわからないんですよ!?」
「なんだとこのやろう」
「あーわかりましたわかりましたわ。とりあえずそこから引いたレース場に行けばいいのですね。まあ楽な方でしょう」
「で、行ったら府中が出るまで次のカードを引くそうです」
「バッカじゃないですの!?!?」
「あと一度通ったルートは禁止だそうです」
「バッッッッッカじゃねえの!?!?!?」
「ですよね!?!?でもURATVからの直々の依頼です!!!!」
76二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 21:50:09
「今からでも揉み消せないの?」
「カメラがこちらに……」
「やっぱり撮ってたのかよ……」
「はあ……わかった、もうさっさと引こうぜ。府中だせばいーんだろ」
「はい、ただ一回はどっか行けとのことで最初は府中入ってないです」
「よしブラトレ、引いて」
「俺!?」
「中山でも大井でもいいですわ、引きなさい」
「中山か大井がいいですね」
「中山か大井がいいな」
「俺に仕事を押し付けるな!わかった!」
「さすがはブラトレ!さあ大井を引け!」
「おらあッ!!」
「小倉ああああ?????」
「すぐに殺しますわ」
「このアホ!バカ!腐りトマト!!」
「なんでそう一番か二番に遠い……」
「ふざけんな!運だろしかたねえだろ!!!」
「はあ……まあもう行けばいいんだろ行けば。さっさと羽田に……」
「次は行き方をサイコロで決めます……」
「この企画マジでバカが考えてるな?」
「マクトレさんお願いします」
「あーもうヤケクソですわ!オラァ!」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part239【TSトレ】
≫21二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:01:11
偉い人はパーティーに集まって何をするの? と、御覧の皆様は疑問に思うことだろう。
実際のところ、大したことはしない。世界の危機について話し合ったり陰謀が渦巻くのは物語の中だけだ。
実利的なことを言えば、単に少したのしい顔つなぎの場である。
こういった社交場に必要なのは主催者という共通の知人であり、趣味や所属する業界によって生ずる溝を一時だけ忘れられる。
そうして埋まった溝を行きかい、新たな出会いが生まれるのだ。
しかし、会によっては品格や相応しき振舞いが求められるものでもあり……。
「……まあ。何かしら、あの格好?」
「あんな服装、はじめて見たわ……」
……それにそぐわぬ者は、須らく好奇の目に晒されるのである。
その覚悟をしていたとはいえ、各界の重鎮達が向ける目線に新米のダイタクヘリオス担当サブトレーナーが耐えられようもなかった。
「はにゃ? みんな注目エグくね? 全集中の呼吸でこっち見てね? うぇーい! バイブスアガってるー!?」
「あわわわっ、へ、ヘリオスっ、落ち着いて……っ!」
サブトレーナーはミリタリーテイストのへそ出しツーピースなストリート系ギャル。
担当ウマ娘はオフショルダートップスとショートパンツのストリート系ギャル。
落ち着いた黒留袖やイブニングドレスの中にいると非常に悪目立ちするふたりは、片や青ざめ、片や盛り上がっていた。
「と、とりあえずっ、壁の花っ、壁の花に……っ!」
「……ええと、ダイタクヘリオス担当サブトレーナー?」
「ひゃいぃっ!?」
とはいえ、それだけ目立っていれば知り合いもすぐに見つけられようもの。
今回直ちに彼女達を見つけたトレーナーは、良家の才媛……。
「き、桐生院さん……っ?」
ハッピーミーク担当トレーナー、桐生院葵であった。
22二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:01:39
桐生院家という名門がある。
数多くの優秀なトレーナーを排出した名門一族で、彼らの教えが詰まった「トレーナー白書」は現在のトレーナー教育書に比べて遥かに優れた実践技術が記されていると専らの噂だ。
その一人娘こそ桐生院葵トレーナーであり、未だ新米ながら担当のハッピーミークに芝・ダート、そしてあらゆる距離を問わぬ走法をハッピーミークに伝授するなど、ただの七光りでないことを証明している。
(懸命な読者ならばご理解頂けることだろうが、脚質や距離の適性を拡げるのは並大抵のことではないのだ。
ヘリサブの師、通称じじピを以てしても掴めぬ秘伝の技といえば、ご理解頂けぬ読者諸氏にもわかって頂けることだろう)
そんな桐生院トレーナーも今日は蒼のカクテルドレスに身を包み、優美な振舞いで佇んでいる。
オロオロと汗を出すヘリサブに対し、彼女は困ったように微笑んで宥めた。
「落ち着いてください。今日は桐生院家主催のパーティーですから。
追い出されるなんてことはありませんよ」
「は、はい……っ」
良家の淑女としてパーティー慣れしているのか、桐生院トレーナーは特に気負った様子もなくヘリサブ達の手を取る。
周囲の眼差しは更に増えた気がするが、主催者の一人娘がエスコートしていることから、その攻撃性はぐっと減ったようにヘリサブは感じた。
「ミークは先生方のところで待ってもらってるんです。
手早く御挨拶を済ませて、私達もスイーツを頂いちゃいましょう!」
ただの人間とは思えないほど力強い引っ張り方に、やや驚きながらヘリサブ達はソファの置かれた一画にやってくる。
そこには無心で高級にんじんビスケットを齧るハッピーミークを取り囲んで、各界の重鎮、それもトップとも言える面々が彼女を撫でて褒めて愛でていた。
「いやぁ、葵ちゃんの担当さん、きれいな髪色だねえ」
「本当ねえ。きれいな芦毛。よく手入れされてるわあ」
「……トレーナーが、毎日やってくれます」
「ほうほう。丁寧に心がけているのだね……感心感心」
優しそうな顔をした老人達の中に、よくテレビで見かける大物政治家がいたことに気づいたヘリサブは、その隣を見て思わず息を呑んだ。
自らの師、ダイタクヘリオス担当トレーナーが酒を呑んでいたのである。
23二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:02:38
「おいおい。若返ったからって飲みすぎじゃあないかい」
「冗談じゃあねえぜ。俺ァ好きでこんなナリした憶えはねえよ」
「ハハハ。少なくとも、メイヂちゃんそっくりにはならないだろうなあ」
黒留袖を着た師は、普段からは想像もつかない程に荒々しい言葉遣いで大物政治家に言葉を返した。
しかし周囲の老人達は不快に思うどころか、懐かしそうに笑いながら、ヘリサブの師を煽り倒すのである。
「死に花咲かせ損なったんですって? 三女神のいたずらかしらねえ」
「だとすると、一度文句は言っとかねえとな。お蔭で年金また払うハメになっちまった」
「お、それはありがたい! 是非我々の年金分を養ってもらわないと」
「てめえら全員素見通なんぞ無縁で、一生年金使わねえで左団扇だろうがよォ、えーっ!?」
ぷりぷりと怒った素振りをした師がくい、と笑って杯を飲み干せば、老人達もころころと笑いながらそれに続く。
この辺りの師の扱いは教え子たるウラトレやオペトレと変わらないようで、ヘリサブも思わず安心する。
「じじピ、なんかドチャクソイキってね? エモじゃね!?」
「素見通……えぇと、江戸弁ですねっ」
「御国言葉みたいですね……東京出身って聞いたことはありますけど、あれが御爺様の素ということでしょうか」
幸いにも、隠れて様子を見守り始めた娘達のことを、師は気づいていないようであった。
だが、老人達のひとりは彼女達に気づき、くすくすと笑いながら師へ遊ぶような眼差しを向ける。
「そういえば、折角メイヂちゃんそっくりなんだから、ちょっと物真似でもやって御覧なさいよ」
「またそれか。つがもねえように言うがよ、死んだカミさんの真似しろってのは酷たァ思わんのか?」
「あら。もっと残酷なことを言ってほしい?」
「……墓前で謝ってくれよ、本気で」
「夢枕で叱られたら考えるわ。さ、早く早く」
やんや、やんやと囃し立てられ、師はわざとらしい咳を立てる。扇子をパン、と広げれば、師はまるきり表情を変え、いたずらな微笑みを湛えていた。
24二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:03:10
「御下に御座れ。御下に御座れ。
伊達に御見物へ御御足晒しちゃいないよ」
たん、と足を卓に置き、まるで落語や講談のように朗々と師は語り始める。
見る間に老翁達は目を輝かせ、ご婦人方はきゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げ始めた。
「このメイヂヒカリの脚は、太刀筋一閃の切れ味を見せてるってェ専らの評判さ。
逃げも追込も自由自在。東京一番の手騎(テキ)が教えた自在脚質、どうぞ御覧じろってんだ!」
それはまるで、この場はパドックだと言わんばかりに。
あまりにも堂々たる振舞いに、思わず周囲からも拍手が送られる。
ご婦人方などまるで青春を取り戻したように跳ね、師へと握手を求めていた。
「ああ、本当にメイヂちゃんそっくり!
ありがとう、本当にありがとう。今の映像、ダビングして墓まで持ってくわ」
「火葬場に迷惑かけるんじゃないよ。
……まあ、真似れるのは名乗り口上くらいだがなあ。走りは土台敵わんわ」
「手騎……ああ、違った。トレーナーとはいえ、そう真似れるものでもないだろうなあ。
その辺りは、ミークちゃんはどう思う?」
「うーん……」
老人のひとりに話を振られたハッピーミークは目を滑らせて、桐生院トレーナーの姿を見つける。
そしてつい、と彼女達を指差して答えた。
「トレーナーなら、知ってるかも」
引っ張り出されるように、申し訳無さそうにヘリサブ達は前に出る。
ダイタクヘリオス担当トレーナーは、ぴしりと固まった。
25二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:03:40
「……い、いつから」
「割と、最初からです……っ」
「うっそじゃろ……」
ヘリサブの師は頭を抱え、老人達は最早耐えきれぬとばかりに笑い出した。
ダイタクヘリオスが最早我慢しきれぬと、満面の笑みで師の胸へ飛び込む。
「なになに!? じじピ熱盛めっちゃ連発してんじゃん!
めっちゃすきピなんだけど! かわいー!」
「しんじゃう」
「えー!? じじピだめだめ! 死ぬのナーシー!
ほらほら笑ってー笑って~~~~、うぇい☆」
「ぅぇぃ」
師の顔が真っ赤であることは、恐らく酒酔いだけではないだろう。
大部分が羞恥によって染められたそのかんばせの奥で、瞳が涙に揺れていた。
恥顔涙目ダブルピースである。
「ごめんなさいね、驚いたでしょう」
「い、いえ……っ」
「彼、教鞭を執りはじめてからは老人語で接するから距離感掴みづらいでしょ?
でも、昔っからいじられキャラなのよ」
「そうなんですね……勉強になりますっ」
「そんなこと勉強せんでええわい……!」
旧友らしい振舞いに、思わず新人トレーナー達に笑みが溢れる。
それを見てようやく、老人達に安心したような笑みが顕れた。
老人達にとっては、自分達がお偉方とはいえ、萎縮され、畏まられても面白くないのだ。
孫のように懐いてくれた方が、彼らとしても可愛がり甲斐があるのである。
26二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:05:36
「しかし、あまり見ないドレスだねえ。若者の間ではそういうのが流行りなのかい?」
「ま!? オジサン、ストリート系知らん?」
「今時の若い子のファッションよねえ。府中は貴方の票田なんだから、そういうのにも目を向けたら?」
「ふーむ、確かにそうかもしれないねえ……お嬢さん、教えてくれるかい?」「りょ!」
次第に、老人達は若者達へ話を振り始める。深い溜息をつきながら、ダイタクヘリオス担当トレーナーはお猪口に清酒を注ぎ、飲み干した。
「全く、割に合わんわい」
「でも、御爺様も肩肘を張らずに済むのではないですか?」
「葵君か……いや、いや。老人語を使うのは肩肘を張っておる訳じゃあないんじゃ」
お猪口に注がれた清酒に気づき、師は献杯をして再び唇を濕らせる。
「言葉は心を示す鏡じゃ。乱暴に使えば粗忽者となり、丁寧に使えば麗人となる。荒々しい言葉は心も荒ませる。耄碌した爺が若者に振りかざせば、忽ちの内に老害となるじゃろう」
それはダイタクヘリオス担当トレーナーなりの、戒めの証であった。酒に酔いながらもはっきりとした意思を感じるその瞳に、桐生院葵は思わず息を呑む。
「老いれば老いる程、己を強く律せねばならん。……老人が出しゃばる世の中なぞ、若者には息が詰まるじゃろ?」
「……ヘリオスさん達は、きっとそう思わないと思いますよ」
「そりゃそうじゃよ。あの子らはマジでエンジェルじゃもん」
「そのタイミングで崩すんですか!?」
驚く桐生院トレーナーに対し、ダイタクヘリオス担当トレーナーはからからと笑って立ち上がる。ちょうど音楽が鳴り、余興の社交ダンスが開催された。
「もいっちょババアどもとフロアを沸かしてやるかの。一曲付きおうてくれぬか?」
「……はい! 私で良ければ!」
「ホッホッホッ、ありがたい。弟子は運動音痴で、ヘリオスはDJブチ上げかねんからのう!」
ダイタクヘリオス担当トレーナーの嫋やかな手を取り、桐生院トレーナーは立ち上がる。いつもならちょっとたのしいだけのパーティーは、今日だけは大盛りあがりとなりそうだった。
うまぴょいうまぴょい
≫93二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:44:09
フクトレ『今日のゲストはぁ〜タイトレに来てもらったぞぉ(若本)』
スズトレ「21点。勝ち抜けで対戦ゲームよ」
マルトレ「俺は勝ち抜け対戦の為にサングラスをずっと温存していた。勝ったから付けてドヤ顔するわ」
スズトレ「嘘でしょ……普通に負けた……」
タイトレ「なんか変な喋り方だな!おーいタイシン見てるか〜!頑張るぞー!」ユッサユッサ
フクトレ「あのだな、タイトレはあんまり動き回ると動画消されるからちょっと自重してもらって」
タイトレ「なんでだ!?」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part240【TSトレ】
≫27二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:40:22
クッキングタマ(トレ)
20x2年2月4日
マクトレ「ウッキィーですわ!」トランザム
タマトレ「今年は申年ぃ!」ヅダハセンカンスラモオトセルノダヨ
テイトレ「速いぞぉ!」ジユウヲウバワセテモラウ
ブラトレ「やったー!ブッパ!」セキハテンキョウケン
<ヅダは政治に敗れたのだ lose
タマトレ「くっそ、負けた」
マクトレ「無念ですわ!」
マヤトレ「次は俺らな」
ボノトレ「交代だよ」
テイトレ「ぷはー、買ったあとの酒はうめぇ」
ブラトレ「ツマミ切れた」
マクトレ「その棚に買い置きがありますわ、そこに無ければ無いですわ」
テイトレ「無いよ」
マクトレ「ツマミが無ければ酒だけ飲めば良いんですわ!」
テイトレ「それできるのお前だけだよ...」
ボノトレ「冷蔵庫に生肉と生卵あったよ、食べる?」
マヤトレ「そのままか!?」
タマトレ「しょうがねぇな、簡単なツマミで良いか?」
マクトレ「硬め濃いめ多めでお願いしますわ!」
タマトレ「手伝ってはくれないのな、まあ良いけど。冷蔵庫の中身貰うぞ」
28二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:40:42
タマトレ3分クッキング
タマトレ「材料はネギ、ニラ、ニンニク、卵、ひき肉、塩、胡椒」
マクトレ「何を作るんですの?」
タマトレ「タイ風オムレツのアレンジ?」
マクトレ「普通のオムレツと何が違うんですの?」
タマトレ「色々違うぞ」
「まずは材料を全部混ぜる」
「混ぜ終わったらフライパンに油を入れて温める本当は1cmぐらい入れるんだが後片付けが面倒だからな、今日は少しだけだ」
「具材ドーン!」
油が跳ねましたわ!熱いですわ!
「こんがりきつね色になるまで焼く、焼色がついたらひっくり返してもう片面も焼く」
「焼き上がったらキッチンペーパーで油を落として完成だ」
───────────
タマトレ「お好みで醤油とレモンのソースに漬けて食べてくれ」
テイトレ「普通のオムレツとは全然ちがうな」
ブラトレ「どれどれ…おいしい」モグモグ
マクトレ「美味しいですわ!これで何杯でもいけますわ!濃い味付けは正義ですわ!」
マヤトレ「いけるいける」
ボノトレ「美味しい、今度ボーノに作って貰おうかな」
テイトレ「ん?何か紙が」ペラ
先輩へ福引で当たったお肉のお裾分けです!パラシン
20x0年8月27日
全員「..........」
このあと大人気アトラクションTOILETが爆誕したとか
うまぴょいうまぴょい
≫42二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 01:07:16
『げーみんぐブラマル~諦めの悪い奴~』
「よく言うじゃあないかマルトレ、しつこい奴は嫌われるって」
「まあそうねえ、男を振る文句としてはよく使われるやつだね」
「だがよ、勝利の女神ってのは諦めないやつのほうが好きなわけだ」
「ん、それもそう。努力しないやつはいつか足元を掬われる」
「結局そのしつこさのベクトルの違いなんだろうねえ」
「前向きにしつこいってのはどうなのさブラトレ」
「……言い方悪くなっちまうな、それ」
「でもまあ、あきらめない限り手を差し伸べてくれるのはいいことだと思うよ?」
「だよなー、達成できるまで何度も挑戦できるのはいいことだ」
「もっとも……」「まあ……」
「「むっずいゲームだったらまた別の話なんだけどな/ね……」」
「いやきっついんだけど?初代メト〇イド操作性やばいんだけど?」
「だぁら俺言ったじゃないの、リメイク版クリアで満足しておいたほうがいいって」
「まあFC時代のソフトだから仕方ないとは思ってたけどさー。マ〇オって結構操作性良かったじゃん、同じ会社だからもうちょっと優しいと思ってたんだけどなー……リメイク版ってものすごい親切だったんだね」
「斜め撃ち?しゃがみ撃ち?そんなものはございませぬぞ、頑張ってくりゃれマル殿!」
「チクショウ!やってやらぁよ!」
「まあマップが一切ないってのが一番きついわなあ」
「ある程度リメイク版と同じなのはわかるんだけど今どこにいるか全くわかんない」
「そんなマルトレ君に、ぷれぜんとがありまぁす。手書きマップー」
「うそぉ、さっきのさっきまで何やってるか見せてなかったのそれだったの?」
「コピーしたりタブで表示するのも味気ないしなー。方眼ノートがあればそれなりに楽できるからまだマシよ」
「ありがてぇ……」「いいってことよォ」
「昔の子供ってこうやって遊んでたのかなあ……」「かもしれないなあ……」
その後クソ迷ったうえで何とかクリアしたマルトレだった。
ラストエリアでは2~3回ほどマイクが壊されかけた。
≫67二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 07:56:06
『今を生きるものよ』
「そういえばアルトレさんや」
「なんでしょうブラトレさん」
「変わる前って動物にすらビビられてたっぽいけど、今はどうなの?」
「……どうなんですかねえ」
昼下がりのトレセンの中庭で、ベンチに座りながらのんびり過ごしているブラトレとアルトレ。
自作おにぎりをほおばりながらブラトレは話し続ける。
「いやね、久しぶりに動物園行きたいなーって思ってんだけどせっかくだからいつものメンツよりは別のメンツで行きたいなって思っててなぁ」
「ははぁなるほど、それで私にその話を?」
「まあそういうこったねー。で、どう?行けそう?」
それを聞くと、若干アルトレの顔が悩みに染まる。
「んんん……まあ、大丈夫でしょう。アルダンさんとはまた時間を作って一緒に行くも悪くないでしょうし」
「んじゃ今度の週末くらいにでも行くかな?府中近くの動物園なんで日帰りで行けるだろうし」
そうしゃべる二人のもとに迫る影が一つ。
「動物園かい?いつ出発する?おじさんも同行しよう!」
「フジトレ院」
「その言い方だと電車みたいですね」
そこには褐色芦毛のお茶目なトレーナー、フジトレがいた。
ただしそのお茶目さは怒らせない場合、という条件が付くが。
周りに特に誰かいたわけでもなし、ウマ娘の聴力恐るべしといったところである。
「フジトレさんお疲れ様です、時間が合うならいっしょに行きます?」
「そうだね、僕もせっかくだから行きたい。動物園は何度行っても楽しいからね」
「あー、そういえばそうでしたね。んじゃあ、今週末にでも行きましょうか」
そうして、ちょっとした動物園観光が決まったのであった。
68二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 07:56:38
「おじさんね、動物アレルギーひどかったから、それはそれは大変だったんだよね」
「お話は聞いてました。となるとウマ娘になった後は?」
「それはもう、完全によくなっちゃたからね。その分フジといろんなことを楽しんできたんだ」
「ふむー……いや、よくわからんのですがウマ娘化っていろいろ変わるんだなあ……まあ俺たちも変わってるんだけど」
昼前の動物園を、3人のウマ娘が歩いている。
休日の動物園だけあって結構な人数が居るのだが、この3人、なかなかに目立つ風体をしているのもあり遠目からちらちらとみられている。
だがそんなことはお構いなしに3人は楽しんでいた。
「ま、不思議なことが起きたってやつだね。お、あそこにイヌワシがいるよ」
「おーフクロウもだ。鳥類いい……」
「いいですね……」
「トレセン内にも鳥が集まるスポットがあるけど、やはり大型はまた格別だねえ」
「あ、そういえばここってライオンバスあったし、せっかくだから乗りますかい?」
「いいね、乗ろう乗ろう!」
「ライオン……」
「どったのアルトレさん」
何だか難しい表情をし始めたアルトレに二人の目線が移る。
「いやあのですね……昔、といっても数年前?くらいですかね。ちょっとこの動物園に来た時にライオンがビビって逃げたことがありましてね」
「ええ……そこまでか……」
「なんというか、すごいオーラだったんだねえ」
「こ、今度は大丈夫……大丈夫のはず。ちっちゃい動物以外にはビビられてなかったから大丈夫……」
汗がだらだらと出始めているアルトレ。まだ暑い時間にはちょっと遠い。
「んじゃちょっとバスのところまで走ってきまーす」
そう言うとブラトレはすたたたっと走っていった。
「では、僕たちはベンチで休憩でもしよっか」
「そうですね、ゆっくりさせてもらいましょう」
二人はちょうど近くにあった広場のベンチに腰掛け、ブラトレを待つことにした。
69二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 07:56:54
さあさあと風が吹く。動物園の喧騒の中にありながら、ゆったりと過ぎる時間。
「ブラトレさんもそうですが、私たちは案外ウマになったことによる恩恵があるのでしょうか?」
「さあどうだろうね?少なくとも僕は大変楽しい人生になったと思ってるよ」
「楽しい……ええ、そうですね。ちょっとだけ楽しくなったかもしれません。まだ、わかりませんが」
「『神さまの導きか戯れか、そこはまあともかくとしてだ。なってしまったものはしょうがないし、楽しめるなら楽しみたい』ってブラトレちゃんは言っていたね」
「そういうことも、大事なのかもしれませんね」
「ま、彼女の場合考えなさ過ぎてる気もするけどね!」
「……まあ、そういうところに皆助けられてるかもしれませんがね」
「本人に言うとよせやーいてれくさーいって逃げちゃうけどね。あっ戻ってきた」
言ってきたときと同じようにすててっとブラトレが走って戻ってきた。
「昼過ぎから乗れるってさー。というわけで飯を先に食べよう!」
「ではいただきましょうかね。ブラトレちゃんのお弁当楽しみにしてたんですよ!」
「私も御相伴に預からせてもらいますね」
「今日は弁当っていうよりはサンドセットになるけどね。たまにはあっさりいい感じで」
ブラトレが持ってきた大き目のリュックには、結構な量のタッパーと、そこにキレイに収められたサンドイッチが大量にあった。
「ハムと野菜多めに、カツサンド、ポテトサラダに……ふむ、丸いサンドイッチとは」
「最近知ったんだけどこれも面白そうで作ってみたんだよ。丸い具材をそのまま使えるのもいい」
「ははあ、どれもおいしそうですね。では手を拭いていただきましょうか」
「「「頂きます」」」
日が高く上る時間、昼餉の時。
「んー、美味しいですねえ。ブラトレちゃんも料理ができるとは聞いていましたが、噂通り……いや、それ以上かもしれませんね」
「まだまだオグトレさんみたいにスーパーな料理人じゃあないですけどね、頑張ってますよ」
「あ、柔らかい味。後でちょっと教えてくださいね、アルダンにも食べてもらいたいので」
「いいよー。まあそんなに凝ったことはしてないからすぐにできるできる」
手に取りながら話のしやすいサンドイッチは、皆で談笑しながら食べるのに丁度いいチョイスであった。
3人は満足げにお腹を膨らせて、ライオンバスへと向かった。
71二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 07:57:09
百獣の王、ライオン。
それは人間から見た、動物における強さの象徴である。
この動物園にいるライオンの長もまた、その群れにおいて最も強い存在である。
彼が群のトップになるだいぶ前に、とある人間と出会った。
彼は本能で悟った。こいつは強いと。その時は逃げるしかないと思ってしまった。
だが、その時強くなると決意し、この群れの長となった。
そうして時が経った。
彼は悟った。また、奴が来たと。
遠くからではあるが、バスからそのオーラを感じ取る。
しかし、彼はそれに迷いを読み取った。
汝強き者なり。然しその心に迷いあり。
なればあの時汝に抱いた強さを汝に返すのみ。
動物園に、百獣の王が発する、全力の咆哮が轟いた。
届かなくとも良い。伝わらずとも良い。私はあの時から、今でも強く生きている。
汝も強く、生きよ。
ライオンバスの中にすら響く咆哮に、バスの中は騒然とした。
しかしその中にあって、アルトレは不思議な懐かしさを覚えた。
「おお!大迫力ですねえ、ライオンの咆哮!力強さと生命力を感じますよ!」
「すげえ、初めてここまででかいの聞いたかも……アルトレさん?」
「……あ、いえ。なんだか懐かしさを感じたのです」
「ふーん?じゃあきっと知ってるライオンなんだな」
ライオンに知り合いなんているんだろうかね?、とつぶやきながらブラトレはまたライオン観察へと戻った。
(きっと、応援なんでしょうね。ありがとうございます、いつかの日のライオンさん)
しかしその力強い咆哮に、ちょっとの懐かしさと、活力を受け取ったアルトレであった。
72二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 07:57:22
「今日はお誘いいただきありがとうございます、ブラトレさん」
「おじさんも楽しめたよー。また何かあったら一緒に遊びに行こうね」
「ええ、アルトレさんフジトレさんに喜んでもらえて何よりです」
夕暮れ時になって別れの時。トレセンまで戻ってから、3人は分かれることにした。
「そういえばアルトレさんお土産何買ったの?」
「そうですね、これを買いました」
そういうと袋から、ライオンの小さなぬいぐるみを二つ取り出した。
「ほほー、ライオン。かわいらしいサイズですね」
「やはり、ライオンはいいですね。カッコいいです」
「わかる……でも俺は鳥も好きだから今回はフクロウにしたんだ。ライオンもいいなあ、今度行った時に買うか」
「おじさんはぬいぐるみって年でもないけど、やっぱ買っちゃったよね、オランウータン」
「愛嬌あるチョイスですねえ」
その後もさすがにもう暗くなったから帰ろうという時間まで、3人は動物トークを楽しんでいた。
後日アルダンにプレゼントされたライオンのぬいぐるみは、彼女の手によって可愛らしく飾りつけされて自室に飾られているらしい。
≫88デジトレかダンスを教える話121/10/16(土) 08:31:20
(では上げます)
シチーは授業中で自分もトレーニングは休みなのでヒマだったシチトレはブラブラと学園内を散策していた。
なんとなく頭の中でリズムを取り始めそれに合わせて身体を揺らしながら歩いていた。
少しして、脳内で刻んでいたビートが聞き覚えのある洋楽へと変わっていく。誰かが曲を流している様だ。
気になったシチトレは曲の聞こえる方向に静かな足取りで向かって行った。
建物の陰から様子を伺うと、噴水の前で一人のウマ娘がダンスを踊っていた。
生徒、ではない。今は授業中だ。
となると教師、もしくは自分と同じウマ娘化したトレーナーだろう。
____________一瞬横顔が見えた。踊っているのはデジトレか。
シチトレのダンス経験はデビューを決めてから本格的に習い始めたぐらいであまり長くは無いが、そんな彼女から見てもレベルの高いダンスをしているのが分かった。
テンポの速い曲だが、しっかりリズムを刻んでるし、複雑な動きを違和感なくやっている。
過去にダンサーをやっていたのだろうか。
ジャンルは違うが、同じ音楽経験者として少し親近感が沸いた。
90デジトレがダンスを教える話221/10/16(土) 08:33:09
曲の途中でデジトレの動きが止まる。
自分の手や脚を見回して回したり捻ったりしている。
何処か怪我をしたのかと心配になったシチトレはデジトレに声を掛けようと歩きだす。
声を掛ける前に振り向いてシチトレの存在に気付いたデジトレ。
「あれ?もしかして見てた?」
「途中からだけどね。それより身体どうかしたの?」
スマホから流れる曲を止めるデジトレ。
邪魔しちゃったかなとも思ったシチトレだったが、それでも心配なのでそのまま話を続ける事にした。
「いやさ、ウマ娘化で出せる力が人だった頃の倍以上にはね上がっただろ。だからまだ力加減に慣れないんだよ」
「あー、分かる。最初頃は物を壊さない様に気を使うよね」
ウマ娘化で腕力が強化された事によう日常生活の不便さは全てのウマ娘化トレーナーが経験しているだろう。勿論シチトレも例外ではない。
「だから慣れる為に久々にダンスやってたんだけど、まだ違和感が消えないんだよな」
「私から見たらかなり上手かったけどね」
「これに関してはアタシ個人の感覚だからね……」
確かに、慣れない身体の使い方をリズムを利用して覚えるのは良いとシチトレは思う。
自分もまた、ドラムのビートが刻むイメージで身体の走行技術を鍛えたりしているからだ。
「じゃあさ。私にダンス教えてくれないかな?」
「教えるって言ったって、アタシまだリハビリ中みたいな物だぞ」
「だからだよ、指導することで感覚が掴めるかもしれないし」
「……これも良い気分転換か。よし、やろう」
91デジトレがダンスを教える話321/10/16(土) 08:34:51
こうしてデジトレによるダンス指導が始まったのだが、内容は結構ハードだった。
まるで全身でムーンウォークしてるかの様にを滑らせながら手足で波を描く動きは思わず目を疑ったし、激しくステップを踏みながら脚の位置を入れ換える動きはまるで、脚が何本も増えたかの様に見えた。
デジトレの担当ウマ娘であるアグネスデジタルはレースでの強さは勿論、ライブパフォーマンスのクオリティの高さにも定評がある。それは本人の才能もだがデジトレの指導がしっかり生きているのだろう。
実はデジトレの指導でダンスの実力を上げていつかライブで披露してシチーを驚かせようと言う下心もあったシチトレだったが、現実は甘くはなかった。
デジトレはわからないと所は丁寧に教えてくれるし、直すべき点もしっかり指摘してくれる。
シチトレも基本的な動きは出来るし、リズム感にも自信があるのでそれなりには覚えられるのだが、その分動きの難易度が上がってしまう。
しかし、投げ出すのは悔しいのでどうにか一つぐらいは難しい動きを覚えたかった。
いつしか、時間を忘れて練習にのめり込んで行く。
92デジトレがダンスを教える話421/10/16(土) 08:36:49
「ニー、サン、シっと……よし出来たぁ!」
ずっと苦戦していたステップにやっと成功する。
初めてドラムでビートを刻めた時に似た達成感を覚えた。
放課後を知らせるチャイムが鳴り響く。
「時間も時間だし、そろそろ終わりにするか」
「そうね、今日はありがとう。色々勉強になったよ」
「こちらこそ、良い刺激を貰えたよ」
そう言って水筒の水の飲み始めるデジトレ
それをタオルで汗を拭いながらを見ていると、ある情報がシチトレの頭に浮かんだ。
「そういやデジトレってデビューするんだっけ?」
「デビューはまだ先だな。今は体力作りに専念したいし」
「そっかぁ、でもいつかは一緒に走る日が来るかもね」
「可能性は十分あるよな」
「その時は今日のお礼も込めて可愛がってあげるよ」
「そっちこそ、首はちゃんと洗っておけよ」
お互いに、挑発と言う名の激励を送り合う。
数秒沈黙が流れたが耐えきれなくなり、お互いに吹き出した。
「じゃ、またねアグネスデバイス」
「あぁまた。シンボリマティリアル」
ウマ娘としての名前を呼びながら別れを告げた二人は、自分達の担当ウマ娘の居る場所を目指して歩きだした。
93デジトレがダンスを教える話521/10/16(土) 08:39:22
「トレーナーさ、さっきデジトレさんにダンス教えて貰ってたでしょ」
「え?シチー見てたの?」
「教室移動する時にね」
「あー、なんか今になって恥ずかしくなってきた」
「ちゃんとやれてたし良かったと思うよ。………でも良いなぁ」
「ん?もしかして焼きもち?」
「それもあるけど……デジトレさんに教えて貰ってるのがね。あの人ダンスの大会で優勝した事あって業界だと結構名前が知られてるらしいから」
「もしかして結構凄い人なの?」
「ウマ娘化してからは、ダンスの講師にならないかって理事長に誘われた話もあるしね。もしかしたら私や他の皆もデジトレさんの指導を受ける日が来るかも」
「その時は覚悟しときなよ。結構厳しいから」
「それはさっき見たのでなんとなく察してるよ」
シチーと駄弁りながら、デジトレで教わったステップを思い出す。少しでも分かりやすくなる様に得意のドラムを叩くイメージをした。
慣れた動きを加えると少し覚えやすくなる気がする。
ダンスも楽しい。でも、結局行き着くのはこれ(ドラム)なんだなと思いながら、先程聞いた洋楽を口ずさむシチトレだった。
≫155二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 10:24:16
チーム《プラエトリアニ》。
"なんとなく"で私達のトレーナーがつけ、リーダーに意味を叩き込まれてた、そんな名前。
……そんなチームですが、私ロマンパープルでも重賞を取れるまでに成長させてくれた、とてもいいチームです。まあ、私の場合地方レースですけど……
そんなチームですが現在……
「今日のトレーニングメニューはなんでしょう?トレーナー」
「そうだね、セプテントリオンはスクワットで筋力をつけていこうか。ロマンパープルと並走も、かな?」
「はい。……ロマン?」
……やっぱり、元々顔のいいトレーナーがウマ娘になって、伊達眼鏡の女教師スタイルで皆と話してるのは凄まじい違和感がある。いやまあ、皆楽しそうだけど……
「あー、いや、ボーッとしてた。ごめんねリオン。今行くから」
……まあ、今はまだ会長が来てないから全然マシ、かな……
────そうして、私達が並走を終えると"リーダー"とトレーナーが揃う。……うん、端から見ると完全にデキてるようにしか見えない。
「ルドルフ、生徒会のお仕事お疲れさま!皆にはトレーニングメニュー伝えてあるけどそろそろ戻ってくると思うよ!」
「……そうか。すまない、トレーナー君」
「気にしなくていいよ?あ、ルドルフは皆のお手伝いしてくれるかな?そろそろエーネアスのレースがあるし仕上げたいなって……あと、デュオスクトゥム……は、大丈夫って言ってたけど私が見に行くから、ロマンとリオンもお願いね?」
「わかった。まあ、彼女らを考えれば大丈夫だとは思うのだが……」
……うん。なんとなく会長の目が明らかに若干の嫉妬と"子分の面倒を見てやろう"になってる。いやまあ、会長も嫉妬に狂わず全うにトレーニングしてくれるので助かるのだけど。若干負荷高い気がするけど。
「トレーナー。リオンとの並走終わりました」
「あ、ロマンお疲れ!ルドルフに色々言っておいたからエーネアスと三人、しっかりね!」
そう言い残してデュオの方に行くトレーナー。何故元男に身体で負けたと思うんだろう、私。
「……さて」
会長がこちらを振り向く。気がついたらいたエーネアスとリオンが背筋を正す。
「「なんでしょう、会長」」
────プラエトリアニ。ローマ皇帝の親衛隊、それを冠したチームが、皇帝親衛隊になるのは必然だったのかも?
結局、皆へとへとになるまで頑張ったけど、会長とトレーナーへの忠誠はなぁ……