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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart676~680)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part676【TSトレ】
≫22二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 10:19:30
パラシンvsタイキトレ 〜登山家パラシン上々系〜
こんばんは!言うっちまうスレのD•ブランドー!パラシンちゃんです!
100年の永き眠りから目覚めたアタシ、出会ったのはアメリカナイズされたナイスバディでした!
「いやー照れるロボ♡どもどもパラシンちゃん♡」
ものすごいタイミングで邂逅しちゃいました!アメリカンというかロボ!てか大丈夫ですかそのキメラ語尾!?
「黙ってたって面白くないロボ♡」
エンターテイナー!これはこれでが極まった楽天家精神!尊敬しますが憧れませんね!
「……自分も持ってるから、と見たロボ♡」
イッェーース!!……ハイタッチまでしてくれました。友達になれそうです。
しかしかかったなアホが!その隙逃しませんよロボもどきになってもやわやわ揺れる推定Fカップぅっ!!(ヒョイ)
……なんで避けるんですか!揉ませてくれるのがアイデンティティでは!?
「言ってるだけであまり揉まれてないロボ♡……それにダストレさんがマジな目をした時、ちょっとまずいなって思っちゃったロボ♡」
くっ、令和の世に帰ってきたオープン系むっつりスケベのせいで!
「んにゃ、アレはアレで担当に頭やられた被害者みたいなもんロボ♡……そういう意味では自分も同じロボ♡」
あ、ちょい照れしてるとこはあざと可愛いですね。……しかし状況は絶望的ィ!アタシのトンチキ力がタイキトレさんの存在透過能力の向上に寄与してる事は明々白々!アタシの『並行世界(ザ・パラレルワールド)』もまだスタンドパワーが足りてない……!
「第三部っていうよりSBRみたいだロボ……♡まあ塩対応なのも可哀想だし、条件次第で考えてあげるロボ♡」
……はぅあっっ!?この展開、進研ゼミでやった事ある!アタシの成長性Bな身体をお求めですねこの変態さん!
「そそ♡胸揉みと胸揉み、ある意味これ以上等価なものはないロボ♡」
……え、マジですか?……え???
──────────
🕳イ、イヤだーーっ!登山はしたいけど登山されるのはイヤなんですーーーっ!
「自発的に埋まっちゃうレベルほどロボ?♡」
🕳絶対ねちっこいですもん!やめてって言っても笑顔でやめてくれないトレーナーランキング上位に入ってますもん!!
「滅茶苦茶失礼ロボ!♡」
リスポーンによる逃げ切り完了ロボ!……はっ!? パラぴょいロボぴょい
≫40二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 11:26:26
グラトレ「グスッ……グスッ……」
マクトレ「仕方なかったのですわ、グラトレさんは悪くありませんわ……」
グラトレ「ですが……私が誘ったせいで……パラシンさんが……私が気を付けてさえいれば……」
────────────
先週
おはようございます~、グラトレと申します~
実は最近パラシンさんの噂をお聞きしまして~
何でも、パラシンさんは幾多の山を攻められた~、熱意有る登山家との事ですね~
是非ともお話をお聞きしましょう~
───────
パラシンさんこんにちは~
早速で申し訳ありませんが~、私と縄で結び合いませんか~
キンバクプレイデスカ!!
────────
捜索終了の連絡
ザイルが外れ墜落したパラシン様の捜索は、これ以上の進展は見込めないとして
本日を持って打ち切りとさせていただきます
親族及び関係者の皆様方にはお悔やみを申し上げさせていただきます
山岳救助隊より
≫50二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 11:39:51
ある休日。また手作りうどんを作る彼女を見ながら、私は持ち込んだ生徒会の仕事を片付けていた。
すると……
ナンカシリアイガクルケハイガスル
「……知り合い?それは、トレーナー君に危害を加えないな?」
クワエナイヨ、カマライゴンウソツカナイ
「そうか……ところであれは?」
そう指差す先は例のミニメカ。いつも通りの文言を言いながら、切られていくうどんを見ている。
ユゲデダテメガネヲクモラセルメカ、ダテメガネスルメカ
「はいはい……あ、あー……ルドルフ、この子お願いするね?」
「……わかった」
ヤメルメカーシンイハイヤメカ
仕方なく、ミニメカをこちらに持ってくる。
気がついたら紫色のぬいぐるみも増えていたが……
「……」
アジサイメカー
ウドントキイテヤッテキタ、アジサイダ
ヒサシブリー
これだけ見ているとぬいぐるみの集まりだが、実態は謎生物三体。私は何を見せられているのだろうか。
51二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 11:40:06
そんな謎生物の会話を眺めていると……
「ルドルフ!はいうどん!」
「ありがとう、トレーナー君」
「ふふーん、今日のは自信作だから味わってね!
……あ、みんなの分もあるよ」
ヤッタメカ、ウドンニオモチヲイレテツユヲクモラセルメカ
オモチヤクノメンドウダシヤメトコウ
マテ、フツウニアジワウノガ…
三匹がガヤガヤやるなか、私とトレーナー君は箸を手に取り、手を合わせてこう言う。
「「いただきます」」メカー
やはり、彼女の手料理は美味しい。
……「出来れば私以外に披露するのは控えて欲しい」とは、口が裂けても言えない。
私が彼女を見つめる限り、彼女も私を見つめているのだろうし、それは互いに幸せにならないのだから。
そう考えながら口をつけたつゆで、少し舌がヒリヒリしたのは私の敗北の一つに入るのだろうか。
≫117二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 17:39:47
「好みは色々あるだろうが、日常生活では下着はちゃんと着けた方が良いぞ」
「そういえばウオトレって俺がブラ着けてなかったら鬼気迫るような顔をして注意してたけど、昔何かあったのか?」
「ああ、それは……」
「先輩はブラジャーを貰ったは良いものの、着け方がわからなくて放置してたら胸を痛めたんすよ」「後輩⁉」
「えぇ……親父さんはどうしたんだ?走りに影響が出る事には結構気を払っている人だし、そこら辺気付くんじゃないのか?」
「それがな、不思議なことにギムレットもブラジャーのことを忘れていて、2人して痛い痛いと反省する羽目になったんだよ。アイツ前世もウマ娘のはずなのに、胸を痛めるまで気付かない辺り天然な所あるよな」
「そうなのか……ところで、ウオサブはそんなこと無かったのか?ウマ娘になったのはウオトレより早かったって聞いてるけど」
「俺は他の人より体が大きかったんでブラを貰った時に着け方も教えてもらったっすよ。だから先輩が胸を痛めたって聞いた時は驚きより先に「ああ……」と原因がすぐ分かったのが何とも言えなかったっすね」
「そういうこともあるんだなぁ……」
≫132二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 19:09:16
「Vさんも一緒に入りましょう!」
「いやー俺は後でいいかな……」
「どうしたんだ白いの」
「お嬢が元から女の子だから照れてるんスよ。今は自分もウマ娘じゃないスか」
「うるせーやい!それとはまた話が別だろ!?」
「Vさんは私とは入りたくないですか……?」ウルウル
「〜〜っ!わかった入る、入るよ!おいウオッカ!どっちが長く入ってられるか勝負しようぜ!」
「いいぜ!勝った方にアイスな!」
≫136金のカフェの瞳22/02/12(土) 19:22:16
「おはようございます。トレーナーさん……トレーナーさん?」
マンハッタンカフェがトレーナー室にぬるりと影のように入り込む。しかし返事がない。鍵を開けたまま出かけてしまったのだろうか、と少し思ったカフェだったが、校舎の方からの微かな喧騒を覗いた静謐の部屋に自分とはリズムの違う呼吸音に気の軋む音。そして人の存在を証明するぬくもりがあった。
よくよく見ればよくタキオンが占拠しているアンティークなロッキングチェアに座ったトレーナーが居眠りをしていた。その左足の裾の隙間からは、義足の金属がチラリとみえている。以前は服の外から見た人の肉付きを再現した義足を履いていたらしい。隠す気が無くなったから利便性や手入れの楽さから普通の義足に切り替えたと聞いている。
カフェもトレーナーが義足ということに、今の姿になるまで気がつくことが無かった。水族館に行ったし車に乗せてもらった事もある。普通に運転していた。
137金のカフェの瞳22/02/12(土) 19:22:34
ふとカフェは思い起こす。フランス遠征を強行しようとした時のトレーナーの言葉を。
『カフェ自身が……カフェの成功と"存続"が、夢よりも、何より大切だ』
存続。その名の通り続く事だ。フランス遠征はカフェにとっての終焉になってしまう代物だった。けれども二人の始まりにして、とても大切であったはずの夢の道筋。それをトレーナーは拒否した。
カフェは裏切られたと思った。その後のよくわからない騒動で有耶無耶になってしまったが、カフェはその時確かにトレーナーに裏切られ、落胆したのだ。
何故ならカフェは夢の為ならば壊れてしまっても構わないと思っていたから。片足の無いトレーナーの姿を見て、自分のその考えがひどく傲慢に思えてしまったことにカフェは当時驚いたものだ。今もまだカフェは夢の道を進んでいる。進む道があったのだ。それがフランス遠征をすれば断たれていた。今の未来は無かった。壊れるとはそういう事なのだ。トレーナーのあの言葉の重みは、彼自身の体験がそのまま重力となって言霊として宿っていたのだと。
そうして思う。トレーナーはカフェの事を多く知っている。でもカフェはトレーナーの過去は詳しく知らない。何故義足になったのかも。カフェはお友だちに夢中だったから。
トレーナーが風邪をひかないように畳んであった膝掛けをかける。意外と深く眠ってる様子のトレーナーの顔を凝視し、カフェは目を細めた。
「トレーナーさん……私はもっとあなたのことを知りたい……過去だけでなく、あなたのイデアまで」
マンハッタンカフェの瞳が妖しく輝いているかのように爛々とトレーナーの眠る顔を映していた。
おしまい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part677【TSトレ】
≫52二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 23:13:35
メジロドーベル 157-83-57-81
タイキトレ 174-93-61-91
「勝負服は伸縮性に優れた素材でできている、と強弁するとしてだよ」
「はぁ……(すごい見た目になってる……)」
「……いや。他所の子の勝負服借りといてあれこれ言うのはどうかと思うわ自分」
「別にいいですよ?タイキのトレーナーさんがそこまで妙なことは言わないと思うので」
「おおう、そこそこ信頼感ある目がまぶしい……んじゃ言うけどね?」
「はい。なんなりと言ってください。というかフリルの話ですか?」
「いやそれも確かにあるんだけど……」
「?」
「……腋丸出しなの恥ずかしくない?」
「……///」
「ああっごめんね!そうだよね改めてツッコまれると意識しちゃうよね!?いやー赤面してるドーベルちゃんもかわいーなー!?ドベトレさんもイチコロだねこれは!知らんけど!」
「……ドーベルがセクハラされてる気がする」
「ハーイ動かないでくださいネー。揃え直した丈のを着替えたら、ワタシのトレーナーさんとドーベルに見てもらいまショー!」
「……なんつーか、押しの強さがタイキトレに似てるな」
「ノンノン、トレーナーさんがワタシに似てるんデスヨ?トレーナーさんはワタシが育てマシタ!」
「逆だろ普通!?」
(終)
ヘソもそうだけど腋見せは恥ずいと思います
≫59二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 23:28:58
セイントジェード・ヒーラー
エルトレ 148-76-55-82
グラス 152-77-53-84
エルトレ「グ、グラスワンダーの勝負服で助かった!!」
グラス「丈が少々大きい以外は、丁度良さそうですね〜」
エルトレ「露出も少なくて本当に助かるよ」
グラス「ふふっ、では魔法の呪文をお願いしま〜す♪」
エルトレ「……え?」
ククルカン・モンク
グラトレ 155-77-55-85
エル 163-89-58-86
グラトレ「丈が少々大きいですね~」
エル「そのせいか、胸の辺りもブカブカデース!」
グラトレ「そうですね〜、ですがお尻の方はピッタリですよ~♪」
エル「……ケッ……ケッ」
グラトレ「ケッ?」
エル「ケツデース!!!」スパーン
グラトレ「ひゃいん!?」
≫67二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 00:11:55
マーベラスサンデー 145-87-52-77
ネイトレ 178-93-68-94
「じゃじゃーん★☆ネイトレさん・マーベラスフォーームッ!ほぼ作り直した気もするけど気にしない☆気にしない★」
「ごめんね……身長33cm差とウェスト16cm差は気合いじゃどうしようもできなくて……でもなんだろ、割と着心地いいかも」
「うんうん!ネイチャのトレーナーさんもこれでさらにマーベラス★になったね!」
「今まで気づかなかったけど、大きいリボンもありつつ意外と落ち着いたデザインの勝負服なんだね……」
「フフッ★なんで気づかなかったかは聞かないであげるね☆」
「う、器が大きい……(胸のせいだってきっとバレてる……)」
「着てみた感想言っていいー?ネイチャの勝負服ってさー」
「内容次第では泣きながらまっすぐトレーナーさんの元に帰りますけど?」
「……あれ、セクハラ認定されちゃう感じー?★」
「割と大事なことなんですが、あたし元男性のトレーナーさんたちのことは一応男性だと思って見ているんで」
「……」
「……」
「……ネイチャの勝負服って胸の辺りがキツイよねー!☆★」
「よぉーーしその喧嘩買ったぁっ!!」
クソガキに身を委ねたマベトレは数秒後、魔眼で分からされたとさ。
うまぴょいうまぴょい
見てみたいですね。マベトレ・タイプネイチャとネイトレ・マーベラスフォーム
画像はマーベラスサンデーの勝負服(原案)
≫74二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 00:28:59
アルダン 162-87-56-85
チヨトレ 156-85-57-86
「とても似合っておられますよ」
「そう…ですかね…」
「何か不安があるのですか?」
「いえ、こういう風な女性的な服を着たことがなくて…その…」
「その?」
「ボディーラインが出てて…恥ずかしくて…」
「ふふ、そういう所も魅力的ですね」
≫76二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 01:35:49
「とれ〜な〜さん」
「ひょわあああああっ! あっ、アルダンさん!?」
「はい、あなたのメジロアルダンです」
「い、いきなり何をするのですか!?」
アルトレが部屋から出てきたところをドアの陰に隠れていたアルダンが後ろから尻尾をつかみ思い切り引っ張ったのだ。
「トレーナーさんが近ごろ隠れてこそこそしているのが気になっただけですよ。 先ほども机の引き出しに何か隠していたようですし」
「あ、ああ、そのことでしたか」
「別に隠し事をするなと言いたいわけではないのです。 隠すなら気づかれないようにしっかりと隠してほしいのです」
隠し事をされていることに気づいてしまうと寂しいですから。 そういうアルダンにアルトレは、隠していたわけではないのですがと告げ、今出てきた部屋にアルダンを招き入れた。
「つまり、チョコレートが大好きなトレーナーさんは毎年この季節を楽しみにしていた、と」
「はい」
机の上に並べられたのは大小様々なチョコレートの箱だった。 国内のみならず、海外の有名店のものも含まれている。
「去年まではお姉様にお願いして買ってきてもらっていたけれど、今年はウマ娘になったので何の気兼ねもなく自分で買いに行ったと」
「はい」
「いざ選び始めたら種類が多くて迷っているうちに楽しくなって、浮かれてお財布のひもが緩くなってついつい買いすぎてしまったと」
「まあ、はい。 アスリートであるあなたの前でチョコレートをパクパク食べるのは自分でもどうかと思いまして」
アルダンはあきれたようにため息をつくと、ソファに座るアルトレの膝の上にぽすんと腰を下ろす。 そのままアルトレに寄りかかり、完全に体を預けた。
「どうして誘ってくださらなかったんですか? どれがおいしそうか二人で話し合うのも楽しそうではないですか。」
「それは、そうですね。 自分で食べる分を買うだけだからと一人で行きましたが、アルダンさんと一緒なら迷う時間ももっと楽しくなっていたでしょうね」
78二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 01:37:48
アルトレが手櫛でアルダンの髪をすいているとアルトレを見上げたアルダンと視線が合う。
「チョコレートをいただいても?」
「ええ、かまいませんよ」
アルダンは近くの箱から花の形のチョコレートをつまむ。
「当日は私がチョコレートを用意しますから、一緒にお茶にしましょう」
「はい、楽しみにしています」
アルダンはつまんだチョコレートを口に含むと、アルトレの顔をじっと見つめた。
「アルダンさん? っうむ!?」
アルダンは両手をアルトレの頬に添えるとアルトレの唇に自らのそれを重ねた。
アルダンの舌がアルトレの唇をつつき、閉じられた唇がわずかに開く。
その隙間から、アルダンは口に含んだチョコレートを押し込んだ。 アルトレの口の中で、チョコレートと二人の舌が絡み合う。
時間にして数秒、けれど、二人にとっては永遠に近い時間が過ぎ、唇は離れた。
「…………チョコレート、甘かったですか?」
「……今まで食べた中で、一番に」
「……その、勢いでやってしまったことなので、あまり真剣に考えないでくださいね」
そう言ってアルダンは部屋の外に走って出て行った。
ドアを閉じる際にこぼれた「初めてのキスは、チョコレート味でした」というつぶやきは
、ウマ娘になったアルトレの耳にはきちんと届いていた。
アルダンの出て行ったドアを見つめながら、アルトレは自身の唇に触れる。
アルダンの唇の感触はまだ実感として残っている・
本当の隠し事に気づかれなかれなかったことに安堵しながら、バレンタインデー当日に思いをはせた。
≫94二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 09:28:04
試験、受験、検定、テスト。
学生の本分は勉強であると言われる通り人は様々な局面で実力を試される。良い成績を残すために、良い学校に行くために、良い資格を取るために。
学生の本分は勉強、大人になれば解放されると思う者もいるかもしれないが──
「ロブトレーここの意味ってこんな感じ?」
「いえここはどちらかと言うとこういうニュアンスですね…この方は文の中にカジュアルな話し言葉を挟まれるので」
「うあー…フランス語わかんねぇっす…」
「マーベラスじゃなーい…」
──当然、そんなことはない。
人がまばらになったカフェテラスの一角で分厚い論文やレポートを見ながら話し合うのは一流の中央トレーナー…テイトレ、ロブトレ、ウオトレ(202)、マベトレの四人。
今度の講演会に向け自主勉強会を開いていたのである。各々が最新の文献や資料を持ち寄り話し合いをしていたのだが。
「わがんないぃ…せめて英語なら…」
「私も専門用語が絡まれるとどうしても時間が…」
「大体の文読めればグラフとか表で理解できるんすけどね…あ、三缶目がなくなった…」
「信憑性の薄いやつはざっと読めばポイって出来るのにー…ざこざこ論文最後まで読んじゃった時つらいー…」
始めてから数時間、四人の集中力は限界を迎えていた。足元に置かれた読み終えた大量の資料が成果であるといえばこの四人の実力が伝わるだろうか。普段アホなことやってても超が付くほど優秀なトレーナーなのである。こんなでも。
「…よし!休憩!これは先輩命令であるぞ!」
「そうですね、ちょっと一息入れましょう」
「お代官様の御言葉のままにー」
「…あれ?俺とテイトレタメっすよね?」
「なんぞ?お上の言葉に逆らうか?」
「滅相もございませんっす…」
「圧政が過ぎる…これはもう一揆ですね」
「討ち取れー!」
「覚悟っすー!」
「えっちょやめ…あはは!くすぐるのはズル!あははは!ひぃ!」
わちゃわちゃと絡み合う四人。笑い声の中に艶めかしい吐息が漏れたりもしたが誰かのお腹が鳴る音で全員がぴたりと止まった。
「お腹すいたっすね」
「頭使いましたしね…」
「おばちゃんにお願いして何か作ってもらおー」
「そうすっか…ん?」
95二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 09:28:28
移動の途中に見つけた端っこの壁際に置かれた大量の段ボールとデカデカと貼られた紙、そこに書かれた内容は。
「家族が送ってくれたさつまいも…多過ぎるので御自由にどうぞ…ですか」
「新人ちゃんっすね、いや多くないっすか?」
「ひーふーみー…大型トラックでも使ったの…?」
「さつまいも…うん…よし!」
芋を片手に勢いよく立ち上がったテイトレが携帯で誰かに連絡を送る。
「どうしたのー?」
マベトレの疑問の声に振り返りふふんと満足げな顔で芋を掲げて返す。
「お菓子を作ろうと思います!」
──
「オグトレに許可は取ったから早速始めよっか。ウオトレ段ボールそこ置いて」
「なんでオグトレが…すいません邪魔にならないようにしますっす」
歴戦のおばちゃんが手際よく仕込みをしながら片手を振るのを見て頭を下げる。
「チョコ菓子を作ってたらお菓子作りにハマってさー最近覚えた丁度良いのがあるんだ」
「ああ…チョコ…頂きましたね…」
「ハート型のあれっすね…」
「美味しかったねあれー」
遠い目をする二人とにこにこ笑う一人を尻目にテイトレが慣れた手つきでエプロンをつける。同じようにエプロンをつけながらその様子を見た三人がぽつりと呟いた。
「若奥様」
「新婚さんっすね」
「プレゼントはあ、た、しって感じー」
「聞こえてんぞぶっ飛ばされてぇか!!」
「ふふ、ごめんなさいテイトレさん…何を作るんですか?」
「まったく…スイートポテトを作ろうかなって」
「スイートポテト…おいしそー!」
「…そういえばここにいる四人甘いもの好きっすね」
「そんな自分達が満足できる物を頑張って作ろう…じゃあ始めるか!」
「「「おー!」」」
96二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 09:29:03
「まずさつまいもの両端を多めに切って二、三等分にしたら水に浸ける。それを縦に置いて皮を剥いてく…こんな感じに」
「そんなに厚く切っちゃっていいのー?勿体なくない?」
「ああ、えっと」
「さつまいもの皮のそばはすじがあってアクも多いので…その為に両端も多めに切るんですよね?」
「ロブトレの言う通り、いっぱいあるし贅沢に使っちゃおう。それを切ったらすぐに水にさらしてアクを抜く」
「おー白く濁る濁る…これは濁らなくなるまでアクを抜いたらいいんすか?」
「うん…みんな理解が早いな…俺いる?」
「テイトレさんの教え方が分かりやすいからですよ」
「やり方も丁寧だしねー」
「そ、そうか?えへへ…アク抜きが終わったら水気切って皿に並べてレンジでチン。串が通るくらいになったら熱いうちに好みの荒さに潰して…なめらかなのがいいなら裏ごしするといいらしいけど」
「じゃあそれは私やるー種類が多いほうがマーベラスだもんね」
「おっけ…じゃあそれに砂糖とバターと牛乳を入れて混ぜて…ここで牛乳がだばってならないように気をつけ…あっ!」
「…テイトレ?今の前フリっすか?」
「くすくす、ざこざこ〜」
「ま、まぁまぁ…さつまいもを増やすかレンジで水分を飛ばせばいいんじゃないですか?」
「うう…どうせ俺は料理上手組じゃありませんよ…スプーンで掬える位の固さにしたら小さく分けてラグビーボール状にしてアルミカップに乗せて」
「ほいっす…この量俺達で食べきれるっすかね?」
「美味しく出来たらテラスにいる生徒達に配りましょうか」
「さんせー」
「ん、じゃあそれに溶いた卵黄を塗って焼き加減を見ながら焼いて…綺麗な焼き目がついたら」
「「「「完成!」」」」
97二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 09:29:44
「おいしー!」
「優しい味わいですね…紅茶に合いそうです」
「美味いっすねーくどくなくて食べやすいっす」
「美味い…裏ごししたなめらかなのいいなぁ」
「こっちもおいしーよー。おいもの食感があってマーベラス☆」
「さて…じゃあ味見も済んだことですし…」
「向こうからキラキラした目でこっちを見る生徒達に配るっすかー」
きゃいきゃいと嬉しそうに受け取り美味しそうに食べる生徒達の笑顔を見て元気を貰った四人はその後勉強が捗ったのでした。
などというわけはなく。
──
「パクパクですわ!最強ですわ!」
「はいテイオー。食べてね」
「(エプロン姿すごく可愛いボクのお嫁さんかなお嫁さんだよね食べてってトレーナーのことかなそういうことだよね据え膳食わぬは帝王の恥だよねボクを誘ってるんだよね)…ありがとうトレーナー!」
「よく耐えたテイオー…ネイチャさんは嬉しいよ…」
「おらテイトレ何逃げようとしてんだ早く調理に戻れ」
「離せー!離してオグトレー!」
「あんな良い匂いさせたらみんな来るの分かってただろ?いいから三人みたいに大人しく作れ」
「大人しくの前に死んだ目でって付くじゃん!やだぁぁぁぁ!!」
「ボクのトレーナーがずるずる連れてかれた」
「でもみんななんだかんだ楽しそうだしいいんじゃない?」
「まぁ料理上手なトレーナー達が手伝い始めてるしまぁ…大丈夫…かな?」
「パクパクです…わっ!?」
「マックイーン?食べ過ぎですわよ?」
≫112デジトレ吸い1/322/02/13(日) 13:10:53
一日のトレーニングを終え、シャワールームで汗を流す。
タオルでかるく水気を拭き取ってから制服に着替えると、先に上がって洗面台で髪を乾かしているトレーナーさんの元へ向かう。
肩甲骨にぎりぎり届く長さの青毛の髪を丁寧に乾かしているトレーナーさんが目に入り、あまりの美しさに膝から崩れ落ちてしまった。
「おかえりデジタル。髪痛んじゃうからはやく乾かしちゃいな」
鏡ごしに見ていたトレーナーさんはいつもの事なので得に驚く事もなく冷静だ。
トレーナーさんの隣に座り、タオルとドライヤーを使って自分の髪を乾かしていく。
あたしはハヤヒデさん程ではないにしろ毛の長さも量も多めなので手入れが結構大変だったりする。
ふと、目の前の鏡を見るとトレーナーさんがいつの間にか背後に立っていた。
「ちょっとドライヤーとタオル借りて良い?」
「?はい、どうぞ……ほぇっ!?」
あたしの頭を優しくマッサージしながら渡されたドライヤーとタオルで髪を乾かしていくトレーナーさん。
「デジタルはいつも頑張ってるからね。これはアタシからのサービスだよ」
「しょんな……ありがたきしあわしぇ……」
髪を整えて行くトレーナーさんの手の動きがあまりに気持ち良すぎて変な声を出してしまう。実はトレーナーさんにマッサージ技術をしこんだのはあたしなのだが、まさかここまで素質があるとは。
至近距離にトレーナーさんが居ると、自然と彼女の香りを感じ取ってしまう。
風呂上りの、甘く爽やかな香りが鼻腔から脳内へと広がり、思考が霧がかっていく。
113デジトレ吸い2/322/02/13(日) 13:11:46
ふと、最近流行りの「トレ吸い」という言葉が頭に浮かんだ。
主にウマ娘ちゃん化の身体に顔をうずめてその香りを嗅ぐと言った行為で、その光景を想像しただけで同人制作が捗ったのだが、これはある意味トレ吸いと言って良いのではないだろうか。
そうこう考えている内に髪を乾かし終わった様で、頭の水気が無くなっていた。
「はい、おしまい。風呂上りだから良い香りするね」
「ありがとうございます。そうですね……石鹸の香りがとても」
今も漂うトレーナーさんの香りに酔いしれる。
あたしは大丈夫だろうか?ウマ娘オタクたるものウマ娘ちゃん達に不快な思いをさせない様、身だしに気を配るのは当然だがちゃんと洗えているか不安になる。
「さっきから匂いを気にしてるみたいだけど、嗅ぎたいの?アタシの香り」
「えっハイ!……あ、いやその」
突然図星を当てられてしどろもどろになる。
これは完全にバレてますね……。
「トレ吸いだっけか?最近流行ってる行為」
床に座ってあたしに目線を合わせるトレーナーさん。
あたしは椅子に座っているので、普段と違ってトレーナーさんが見上げる形になっている。
「良いよ、好きなだけ吸って」
「!?」
あたしを椅子から下ろし、そのまま抱き着いてくるトレーナーさん。
一瞬本能のまま抱き返しそうになるが、どうにか理性で抑え込む。とは言っても数秒も経たない内に崩壊してしまいそうだが。
「デジタルが吸いたがってるのは分かってるし、アタシも吸ってもらいたい。だから遠慮なんてしないで来て欲しいな?」
あたしの首元に顔をうずめていたトレーナーさんが上目づかいで見て来る。
これは断ってはいけないやつだ。あたしにとっても大歓迎なのに、変な意地を張って拒否したらトレーナーさんが傷付くかもしれない。
114デジトレ吸い3/322/02/13(日) 13:12:23
「そこまでおっしゃるなら……し、失礼します!」
意を決してあたしもトレーナーさんを抱き返す。
先程までも感じていたトレーナーさんの匂いをより一層深くなり、気が遠くなるような快感が脳内に染み渡った。
風呂上りの火照った身体があたしの手に触れ、しっとりとした柔らかな手触りを感じさせる。
細身だが、触ってみると筋肉質な身体だ。
無駄な脂肪は一切なく、動く為に必要な筋肉のみを身に付けたアスリートの理想形とも言える肉体。
髪の毛に顔をうずめるとトレーナーさんが「んっ……♡」と艶っぽい声を出した。
そこでデジたんの理性は完全崩壊。目を閉じて、トレーナーさんの頭に顔をうずめたまま深呼吸をする。シャンプーとコンディショナーの香りを肺いっぱいに吸い込みながら、顔でトレーナーさんの髪の毛の感触を堪能する。
あまりにも気持ち良すぎて幸せで、背筋に電流の様な感覚が走り、脚がガクガクと震えてしまう。
「デジたんも……凄く良い香りだよ」
「はい、トレーナーさんも、とても……とても……」
そう言ってあたし達は互いに強く抱きしめあう。
この後は快感で暫く立つことが出来なくなってしまったので、トレーナーさんにおんぶして貰いながら寮まで送り届けて貰う事になった。
≫172二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 17:49:38
バレンタインのグラスとグラトレ(独)
世間はバレンタインに染まっている朝の事。
普段なら週末はトレーナーさんのお宅で過ごすのですが、週明けにバレンタイン当日が来るからか今週は残念ながらお泊りは無しでした。
しかし裏を返せばトレーナーさんもバレンタインの準備をしてくれているという事です。
トレーナーさんお手製のチョコがどんな物になるのか考えながら学園に向かう為に美浦寮から出たところ……
「おはようございます、グラス」
「トレーナーさん……?」
門で待ち構えていたトレーナーさんと遭遇したのでした。
「えっと、おはようございますトレーナーさん」
「ええ、おはようございます」
「こんな所で待たれるなんて、どうされたんですか?」
「こちらをどうぞ~」
「ありがとうございます?」
門で待たれていた理由を聴いてみたのですが、遮るかの様に何やら小さい包みを渡されました。
……包みからチョコの香りが漂っていて、中身が察せてしまうのですが……
「……さあ、学園へ向かいましょうか~」
「えっ、あの……?」
チョコの香りがする包みを私に渡したトレーナーさんは、用は済んだとばかりに私の手を引き学園へと歩き出し始めました。
そして、手を引かれた私自身もそれに抵抗する事無く学園へと歩を進めます。
……今日のトレーナーさんは、普段より少々気を張っているみたいです。
「到着ですね~」
手を引かれて辿り着いたのは、いつものトレーナー室。
普段と様子の違うトレーナーさんに何処に連れて行かれるのかと思いましたが、慣れ親しんだ場所で少しホッとします。
173二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 17:49:57
「ではでは~、先程渡した包みを出して貰えますでしょうか~」
「え~っと……ここで開けても良いですか?」
「ええ、ええ、是非とも感想を聞かせてくださいな~」
色々聴きたい事は有りますが折角トレーナーさんにチョコを貰ったのです、取り合えず食べさせて貰いましょう。
中身は察せていますが、トレーナーさんに許可を貰って包みを広げていきます。
「……羊羹?」
包みを開けてみると、そこにはチョコでは無く小さな羊羹が入っていました。
しかし、見た目こそ羊羹ですが香りはチョコそのもの……チョコを使った羊羹といった所ですかね?
そんな疑問を持ちつつもチョコ羊羹を一口……
「…………普通の羊羹?」
「はい、羊羹ですよ~」
「で、ですが香りは……!」
「チョコフレーバー入りの羊羹でして~」
トレーナーさんから渡された小さな包みに入ったチョコの香りがする羊羹。
悪戯が成功して嬉しそうなトレーナーさんに明かされたその正体は、本当にチョコの香りがするだけの羊羹でした……
正直言って香りと味の違いで混乱します。
「まさかバレンタインに羊羹を渡されるとは思いませんでしたよ~」
「ふふっ、皆に配る物はそちらで良いでしょう~」
「他の人に配る物なんですか?」
「ええ、ええ、本命のチョコは……こちらですよ~」
そう言ってトレーナーさんが冷蔵庫から取り出した物は、和紙の様なラッピングで包まれた大きいチョコでした。
そして本命だというチョコを手に持ったトレーナーさんは咳払いを一つ
「俺からのバレンタインチョコ、受け取ってくれますか?」
そんな笑顔で当然の事を聞いてきます、ならば私の返しは当然
「はい、是非とも♪」
笑顔でそう返すのでした。
174二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 17:50:13
「……さて、私もグラスから貰えますでしょうか~」
私がトレーナーさんからのチョコを受け取った後、トレーナーさんは伺うかの様に聞いてきました。
……私から貰えると疑っていませんね……渡すのですが。
「では、トレーナーさんこちらをどうぞ~」
「ありがとうございます~」
期待に満ちているトレーナーさんに私が丁寧にラッピングしたチョコを渡すと、トレーナーさんはキラキラした笑顔で受け取ってくれます。
この可愛らしい所は、姿が変わっても変わりが無い様ですね~
「ではでは~、早速食べさせて貰いましょうか~」
「はい、私も食べさせて貰いますね~」
そしてお互いのチョコを交換し終わった私達は、早速ですがチョコを食べ始めました。
お互いが想いを込めて作ったチョコをしっかり味わいながら食べて。
私の頬に付いたチョコを舐め取られた時は凄く恥ずかしくて。
お返しとばかりにトレーナーさんの指に着いていたチョコを指ごと口に含んで舐め取ったり……
最後は口移しで食べさせ合う事までしちゃいました。
そんな甘い時間を過ごしている内に
「ご馳走様でした~」
「ご馳走様でした♪」
気付けばチョコは無くなってしまいました。
175二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 17:50:25
「トレーナーさんにお聞きしたい事が有るのですが~」
チョコを食べ終え珍しくホットココアを飲んでいる時に、私は疑問に思っていた事を切り出しました。
「はい、何でしょうか~」
「今日は何故、寮の前に居られたんですか?」
「そういえば説明していませんでしたね~」
そうしてトレーナーさんの口から出た説明は……何とも強めの独占力を発揮したものでした。
「理由は単純ですよ~、グラスと誰よりも早くチョコの交換をしたかっただけですよ~」
「……誰よりも早く?」
「 ええ~、本当でしたら誰にも渡して欲しくは無いのですが~……そういう訳にもいかないでしょうからね~……」
「……ま、まあ、そうですね……友人達に渡したいですからね」
「ならばせめて誰よりも早くグラスとチョコを交換してしまおうと、悪いけれども寮の前で待たせて貰いました」
「……そ……そうだったんですね~……」
「うん、グラスが学園に着くまでに交換してしまわないか心配してついね」
「…………」
「グラス、どうしたんだ?」
段々と男言葉に戻っている独占力発揮中のトレーナーさんに反比例する様に、私は段々と言葉を失っていきました。
今朝、美浦寮の前までトレーナーさんが迎えに来たのは、他の人に私がチョコを渡す前に会うという独占力故の行動だったのです。
……ですが
「……すみませんトレーナーさん」
「どうしたんだ、グラス?」
「……寮から出る前に、その……同室のエルと友チョコをですが……交換していました……」
「…………………えっ?」
その日の晩、私は脳が焼けるかと思う程のお仕置きを受けるのでした……
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part678【TSトレ】
≫12二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 18:32:18
『172-89-66-87←158-85-58-82』
「思ったよりこう……バランス悪なっちゃったかも」
「やはり身長差が大きすぎましたね……いえ、着心地自体は問題ありませんが」
トレセンでたまに行われる変な催し、その一つである勝負服交換会。今回はその一環として、何故かウマ娘になってしまったトレーナーも巻き込まれ、彼らの担当に関わるウマ娘たちの勝負服を着ることになった。
勿論レプリカである。
「お直し自体は行われていますので全く着ることのできない、ということにはならなかったのが幸いしました」
ゴールドシチーの前で彼女の勝負服を着ているのは、シチーの同室ウマ娘であるバンブーメモリーの担当トレーナー。今日は比較的抑え目の、シンプルな仮面。
「数値上の差はどうしようも無いのよね……特に背の高い人の調整は難しいから」
「全くです。私の場合は極端な体型ではないとはいえ、身長は高いほうに入りますからね」
軽く足を動かし、動きやすさを確認するバントレ。他人の服のレプリカとはいえ、動きやすさは流石の勝負服といったところである。
「何だか……ちょっと申し訳ないですね」
シチーは申し訳なさそうに、少し苦笑いをする。それを見てバントレは手を振って止める。
「いえいえシチーさん、そう気に病むことはありません。服というものは、人それぞれに合う合わないというものは明確に存在します。そして、この勝負服はシチーさんのためにあつらえられた物。シチーさんだけが着こなすことのできる最高の勝負服なのですから」
勝負服は、そのウマ娘が輝くためにデザインされたものである。ならば、その服の主はただ一人でも良いのかもしれない。
「そう、ですね。ありがとうございます。……って、あたしが褒められるのってなんだか変な気分。ふふっ」
先ほどとは違う、はにかむような笑い方をするシチー。
「ふふふ、そうかもしれませんね。では、バンブーさんに見てもらいましょうか」
「……大丈夫かな……?」
その後バンブーに見せてみたところ、バンブーはじっと見た後で、かぁっと顔を赤くして逃げてしまった。
何故でしょうかと不思議そうに呟くバントレを尻目に(バントレさんにはやっぱり露出が大きすぎたかな……)と頭を抱えるシチーの姿があったとか、なかったとか。
≫21二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 18:48:59
7話『活動:療養→ 』
フウの無断欠席……もとい失踪未遂が起きた日の翌週、月曜日。週末のうちに互いに身と心を休めリフレッシュが完了したのは朝確認済み。遠慮なくバイト前のフウを引き止めた。
「そろそろ本格的に復帰に向かって動き出したいと思うのだけど……」
「ホント!?」
「ええ、だから方針を早めに決めておきたくて。……フウ、これからも作戦は逃げでいいのね?」
大興奮、って感じのフウに若干申し訳なさを感じながらも、冷静に確認を取る。
なにせ非常に軽微だったとはいえ屈腱炎だ。ダービーのハイペースな逃げが主な要因なのは間違いないだろうが、他のレースの影響が0かと言われりゃ絶対にNO。
足にかかる負担とフウの能力を考えれば、先行に切り替えるのも悪くはない。そう、ずっと前にフウにも話し、選択を委ねてた。
「うん!もちろん逃げで行くの!!」
……まあ答えは聞くまでもなく分かってたが。
「りょーかい、っと!ならはいこれ、バイトの合間とかにできるトレーニングをまとめたものよ。」
「さっすがトレーナー、仕事早い!!」
「ずっと前から備えてたからね、本格的なやつは今のフウの能力とか調べてから吟味する必要あるし。あ、でも注意はしっかり守ること。足への負荷とかまで考えて作ってあるから、いい?」
「おっけー!じゃあいってきますなの!」
そう言って元気よくバイトに向かうフウを、いってらっしゃいの言葉で見送る。
さて、俺ものんびりしちゃあいられない。彼女が今までの道を貫くと決めたならそれをサポートするのは俺の役目。
フウの期待に応えるため、俺もまたトレーナー室を後にした。
22二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 18:49:35
「──と、いうことなので前話した通り逃げの方でお願いします。」
「👍」
俺がイクトレ先輩の工房を訪れたのは、それから幾分か時計の針が巡ってからの事。要件は言わずもがなフウの新しい蹄鉄、その依頼。
『最終確認だが、保護性高めでいいんだね?その分スピードは下がってしまうが。』
「はい、フウのスピードなら多少は問題にならないですし。それに……」
「❓」
「……怪我のリスクが減らせればそれだけ、新しいフウの新たな強みを活かせるので。」
「😳」
「療養中、何度もレース映像は見返して見つけたんです。流石に詳細は伏せますけど。」
「🤔」
「言ったら対策講じちゃうじゃないですか……」
「🥺」
特にイクトレ先輩の担当イクノはその出走数からして同期で1番当たる可能性高い相手だ。機械が必要になってくる物の製作で何度も恩はあるし、なんなら現在進行形でコタツの件で助けてもらってる状態とはいえ教えるわけにゃあいかない。
LEDプレートと幼児顔のダブルで訴えかけてきてもである。
『……まあふざけるのはここまでにして。』
「あわよくばとは思ってましたよね?」
『なんの事かな。』
😗までつけて分かりやすくしらをきった上で、イクトレ先輩は続ける。
『明日取りに来て。』
「いつもより難しい感じですか?」
『いや、リハビリ向け蹄鉄も用意しとくから。』
予想から大きく外れた回答に、思わず言葉が喉につまる。
「おうえん、ちてまちゅ。」
「……ありがとうございます、イクトレ先輩。」
満足気な笑みを残して、イクトレ先輩は蹄鉄を作るべく、ぴぷぴぷと足音を鳴らしながら工房の奥へ消えてった。
23二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 18:49:57
さらに数日後、蹄鉄や現時点でのフウの身体能力etcの必要なものを揃え、半年以上ぶりのトレーニングは始まった。
とりあえずは基礎を重点的に鍛えつつ、もらった樹脂製蹄鉄を利用して走る感覚も取り戻す。
復帰戦はトレーニングの経過を見て。ただ、今のところは1月29日の白富士ステークス、2月12日の洛陽ステークスが候補となってる。
「やっほーマクトレェ!」
「フウトレか。今マックイーンのトレーニング中なんだが。」
「時間はあまり取らないつもりよ。ダメ?」
「……手短にな?」
「ありがと!」
そんな日々の中、機を見計らって俺はマクトレに突撃した。
「アイネスは?復帰に向けて動き出してるってのは聞いてるが。」
「リャイトレと一緒。脚をなるべく怪我しにくいように鍛えて欲しいって頼んでてね。」
あとは溜まった疲労のケアの方法も教えてもらっている。ホント、筋肉に対する膨大な知識量には助けられてばかりだ。
「……まあいい。要件は?」
「何回かマックイーンのトレーニングに付き合わせてもらえない?」
「トレーニング……並走じゃなくて?」
「そう、並走じゃなくてトレーニング。これからのフウの走りのため、どうしてもスタミナ付ける必要があるのよ。」
マックイーンにはそれがある。しかも、きっと歴代のウマ娘達の中で上位に名を刻めるレベルの。
「……頼めるかしら?」
「ああ。その代わりスケジュール合わせは全部任すぞ。」
「任せなさい、得意分野だわ。」
他にも逃げシスのみんなやパーマ、ヘリオスなど多くのウマ娘に並走で力を貸してもらい、フウは日の経つ事にレースへ、その身を仕上げていった。
そしてついに────1月29日、俺達は復帰レースの、白富士ステークスを迎える。
≫62二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 20:21:07
デデッデンデデン デデッデンデデデデデン
「タバコさん?シビトレさん?今日は何を食べましたか?」
オーオーツルセーフケンコウユルサヌオーオー
「……カロリーメイト……2ブロックです……
「シビトレさん?今日は何を食べましたか?」
オーオーツルセーフケンコウユルサヌオーオー
「……明治の板チョコの白と……トーマスキャンディー2つです……」
デンデデデデンデデデンデデン
「なら、なぜここに吊るされてるかわかりますね?」
「いや、なんでかな……」
「私は悪くないの……論文が……」
「問答無用です」
ユルスマジ ユルスマジ フケンコウヲ ユルスマジ
「反省するのならば、こちらの牛柄マイクロビキニで許しましょう」
ユルスマジ ユルスマジ フケンコウヲ ユルスマジ
「反省しないのなら……お分かりですね?」
この後めちゃくちゃ牛柄マイクロビキニでうまぴょい伝説した
≫132二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 22:35:07
「親父さん親父さん親父さん!!」
「どうしたよそんな慌てて」
「お嬢がちっちゃくなったっす!!」
「はあ!?今どこにいる!?」
「ここっす」(腕パカア)
「ちっちぇえ……かわいいな……」
(ボウズ……ちょいと変わってくれ)
「ちょっと待てギムレット」
「お嬢、随分とちっちゃくなりやがったな……」
「V、抱っこしてみるっすか?」
「お、おう……」
「ぶーさん、ごえんなあい」
「喋った!お嬢が喋ったぞ!!」
(ボウズ……今回ばっかしはすまんな」
(ギムレット!?お前なに勝手にかわってんだ!!)
「娘よ……ほら、親父だぞ〜」
「おやいさん、だいじょううれうか?」
「大丈夫だぞ〜ほら〜よしよし」
「ギムレットさんずるいっす変わって欲しいっす」
「ダメだ。これは父の特権だ」
「「(ずるい!!!)」」
「ここにウオシスちゃんがちっちゃくなったって……あらあらあらあら」
「クリークの!?娘は渡さんぞ!!」
「ウオシスちゃん!こんなにちっちゃくなって…ほら、こっちおいで〜」
「フジトレさん…今日ばかりは敵っすね」
「お嬢!ここは戦場になる!逃げるぞ!!」
「ぶいさん、おえあいしあう」
うまぴょいぴょ
≫156二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:07:08
夜眠れないから朝に眠る。これはトレーナー業には思ってた以上に影響が出る部分だ。
幸い朝は通常授業があるからトレーニングを見る必要は基本的にない。
然し仕事がないなんて事はなく、事務仕事やトレーニング場所や時間の摺り合わせ等は日頃から必要になる。
……極力起きたままの深夜に回しても間に合わない物もある。
外せない用事がある時は徹夜か、人前に出る必要がある場合は薬を飲んで少しでも眠らなくてはいけない。
まあ、一番の問題点は往々にして忙しい日というのは数日続く事であって。
つまり、俺は数日完徹が続いているのだった。
……まあ、体が無理に馴れているとは言え体力も栄養も足りてない体で影響が出ない訳もない。
スカイにも疲れ気味かと聞かれ、同僚トレーナーの前では時々意識が途切れていた気がする。
……もう少し無理が効いて欲しいがそんな体じゃあないから仕方ない、夜眠る方が俺は嫌だ。……思い出したくもない。
眠い体を引きずり朝礼後にトレーナー室に転がり込む。寮の部屋に寝具なんてない俺にとってこの炬燵とソファが生命線だ。
体を丸めて炬燵に入る、最近体が冷えているのかずっとサムくて仕方ない。窓から陽の光が射す中すぐに眠りについた。
「トレーナーさん、大丈夫?」
「……ん~……あぁ……」
「だいぶお疲れですね~、寝ててもいいよ?」
「んー……あ、れ……じゅぎょ……」
「まあまあ、このお昼寝日和にそんな事いいっこなしなし。お隣失礼しまーす。」
「ぅん……」
「そう言えばトレーナーさん、匂い吸うトレ吸いって知ってます?セイちゃんもやってみたいなー、なんちゃって!」
「ん~……はい……」 ウシロガミポイ
「ぇ……そ、それじゃあちょっとだけ……。髪、サラサラですね……」
「ふぁあ……ぴょんこぴょんこ、する……かぁ、ら……あらてる……」
「……今なんて?」
「……ぴょんこ、ぴょんこ……zzz」
「あちゃー、ほんとにお疲れですね。おやすみ、トレーナーさん」
157二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 00:07:34
「……ふぁ、あ……ん……ちょっと、寝すぎた、か……ぁれ?」
「……zzz」
「髪、まくらぁ?……動けな、イヤいいか」
「……ぴょんこぴょんこ」
「えっ?……スカイ、起きてる?」
「……起きてますよー、もうちょっと寝てていい?」
「いいよ。ただ今の何?ぴょんこ?」
「トレーナーさんが言ってましたよ、ぴょんこぴょんこって」
「ええぇ、なにそれ……?」
「いや~、それはセイちゃんにもわからないかな~。という事でトレーナーさん教えて下さい!」
「えっ、俺?俺が教えるの?……ちょっと待って」
「それまで髪借りてるからね~」
──この後、授業をサボったセイウンスカイとその担当トレーナーは深刻な正座からの逃亡を強いられる。
幾度もなく捕縛と逃走を繰り返してきた彼女は、多くの担当へのお仕置きを奪ったトレーナーでもある。
トレ吸いや湯たんぽするには細いなぁと悩みましたけど髪フワッフワッしてるなぁ!と頂いた絵から発想を得ました。
私の遅筆の割に描いて頂く機会ほんと嬉しい、何度も見返してます。
バレンタインには乗っかりたかったけど長編で諸問題解決しないといけないので未来に放り投げます。
ギャルゲ概念と天体観測も同じ理由で未来に投げた記憶がある。
何書くかは大体決めてるはずですが仄暗い部分に触れなきゃいけないので中々進まず……。
侘助さんや小タマの人、ファイトレの人スゴイなって、彼女等程ではないと思ってるんですけどね~……。
日向ぼっこがのんびり楽しいのです、いい加減解決しな~?って。
そもそもバレンタインに何が出来るんでしょうね!ネタすら固まってないなぁ!!!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part679【TSトレ】
≫3バクシン的バレンタイン 1/222/02/14(月) 06:42:52
某日。『挨拶活動の少し前に校門前へ来てほしい』というメッセージを受け、いつもより早く学園へやって来た。
すると、いつも通り愛バが校門前に立っていた……足元に、紙袋を置いて。
「トレーナーさん! おはようございますッ! 早速ですがこちらをどうぞ!」
「うん、おはようバクシンオー。で、これは……スンスン……チョコかな。若干、というか大分焦げてるけど」
「流石はトレーナーさんです! その通り、所謂手作りチョコレートです!」
「へえ、手作りか。誰かと一緒に作ったりしたの?」
「いえ。皆と協力するのも大事ですが、一人でもやり切るのが優等生のあるべき姿! 今回は私一人で!」
つまり、今回は先日のコンクールの面々をはじめ、R.R.I.のメンバーにも協力を仰がず、あえて一人でチョコを作ったのだ。
「……成程。どうして一人で? 誰かと一緒に作っても良かったんじゃないか」
「実は、ブルボンさんやライスさんたちと一緒にも作ったのです。ですが、それはあくまで友チョコでして」
「うん」
「トレーナーさんへ贈るチョコだけは私一人で作ろうと、そう思ったのです。何故かはよくわかりませんが!」
「……!」
「まあ、気持ちを籠めすぎたのか爆発してしまいましたが! いやぁ、参りました! ハッハッハ!」
チョコが焦げているのは、爆発したからということか。しかも爆発原因は『気持ちの籠めすぎ』ときた。
……何ともまあ、バクシンオーらしい。
「さあさあトレーナーさん! 早速ですが、感想をお聞かせください! 遠慮なくどうぞ!」
「うん、それじゃあ頂きます……ン、ムグ……ん。ふふ、これはまた随分とビターだ」
「そうでしょうそうでしょう! オトナなトレーナーさんに合わせてこんがり焦がしましたからねッ!」
「成程、味の決め手は焦がしにアリ……これはメモしておかなくちゃね」
バクシンオーから貰ったオトナなチョコを食べ終わる頃には、少しずつ生徒が登校してくる時間になった。
学級委員長としての責務を果たすべく、彼女はいつも通りの挨拶活動を始める。
僕は少し後ろから、その姿を見守る。以前この活動に立ち会った時より、声に張りがあるのは気のせいだろうか。
4バクシン的バレンタイン 2/222/02/14(月) 06:43:22
挨拶活動を終えたバクシンオーはそのまま教室へ向かい、僕は朝礼前の準備にトレーナー室へ。
……ふと、疑問を抱く。なぜ彼女はチョコの受け渡し場所に校門前を選んだのだろう。
午後のトレーニング前に、聞いてみるとしよう。
「ふっふっふ……ずばり、校門前はギリギリ学外だからです!」
「……そうなの?」
「え? 学外とは学校の外、そして校門は学校の内と外を区切る場所、ですよね?」
「あ、そういう事。確かにそれならギリギリ学外、か?」
学内で率先してチョコを渡すのは模範的でなく、ならばギリギリ学外の校門前で渡せばよい。
しかしそれなら放課後でもよい筈だ。何故あんなにも早く呼び出されたのかがわからない。
「場所の謎は解けたけれど、それじゃあどうしてあんなに早くに僕を呼んだの?」
「ちょわっ!? それは……一つは、他の生徒たちへ見つかっては模範的でないからで。それと……」
「それと?」
「そのぅ……トレーナーさんへ、いち早くチョコをお渡ししたかったからです」
「……そうか。うん、わかった」
爆発するほど気持ちを籠めたチョコを、いち早く届けて、美味しく食べてほしい。
そんなものを受け取ったのだ。応えないわけにはいかないだろう。
「朝言い損ねたから今言うよ。バクシンオー、美味しいチョコを、どうもありがとう」
「トレーナーさん……! ええ! ご満足いただけたなら何よりですとも!」
「実は君への贈り物を、トレーナー室に置いてあるんだ。後で渡す……けど、その前にこれだけ言わせてほしい」
「ハイッ! 何でしょうか!」
「……いつもありがとう、バクシンオー。ハッピーバレンタイン!」
「……ッ! ハイ! ハッピーバレンタイン、ですッ♪」
(了)
≫20二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 08:18:08
前略。今日はバレンタイン。ということで意気揚々と来たわけだが……
「うおおおお!!バレンタイン!バレンタインが来た……が、が!よくよく考えたらよ!俺が貰う側なのか、あげる側なのか……
まあ、考えるのはハヤヒデさんと会ってからでいいかァ!」
バカはバカ。とりあえず思考を他人に投げた。
そうして……
「トレーナー君?何を騒いで……」
「あっ、ハヤヒデ!実は……」
~🕰️~
「成程。即ち肉体の性別としてチョコを渡す側として行うべきだったか、或いは精神的な性別として貰う側のみとするか……そういうことだな?」
「そーそー、で。俺はどうすればいいと思う?」
「まず1つ、重要な点を教えよう。義理チョコや友チョコは計算に入れただろうか?」
「……あっ!」
「はぁ……」
わかりきっていたかのような声でため息をつくハヤヒデさん。
だが、すぐに鞄の中身を出す。
「だが、君の今の味覚の変化を計算に入れたチョコ。ひとまずこれを味わってからでも、行動に移すのは遅くないだろう」
「……つまりこれって」
「……とりあえず、飲み物を用意しよう。しっかり、合う飲み物も計算済みだ」
この後、ハヤヒデさんの手作りチョコを味わっていたら友チョコや義理チョコのことなんかどうでもよくなって、ルドトレとゴルトレとムントレの配ってた手作りチョコを手に入れられなかったのはまた別の話だけどハヤヒデさんのチョコが滅茶苦茶旨かったのでまぁいいかぁ!いいよな!
Fin
≫27二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 08:29:08
(『本命のあの人へ♡チョコレート特集』)
(……いや、そんなんじゃないから……。あっ、このお店のリンゴ入りチョコおいしかったよな)
(『職場で喜ばれるバレンタインチョコ』)
(これはさすがに堅苦しくないか?)
(『友達が喜ぶバレンタインのプレゼント!』)
(…………これくらいの気軽な距離感だよな。いや担当と友達ってのもどうかと思うけど)
(うーん……どうしよっかな。そういえばヒシアマってりんご好きだったな。最初に見たお店で買うか?)
(確か家にたくさんリンゴ残ってたよな。いっそ手作り?)
(……去年は手作りのもらったよな、今年は俺もそうするか)
(よしっ。チョコ買いに行かなくちゃ)
(練習分も含めてリンゴも追加で買おう)
(無事にバレンタイン当日までに作れた……)
(これ、いつ渡そう?)
(思ったより、多くなっちゃった……)
(朝一で寮に行って渡す?ヒシアマは困るかな?)
(おやつの時間ぐらいがちょうど良いかな?そしたら、その場で食べてもらえるかな?)
(感想聞きたいし……。いや自信はあるけども。たくさん練習したんだから)
(午後になったらトレーナー室に来るだろうし、そこで待とうかな)
(あっ、でも他の子からチョコもらってくるかも)
(ヒシアマは人気者だし……)
(いや、そこまで考えたらどうしようもないよな。そのときは冷蔵庫にしまって明日のおやつにでも……)
(包装はこれで良かったかな。チョコづくりに夢中で選んだのギリギリになっちゃったからなぁ)
(どうしよう。なかなか寝付けない)
(…………あぁ、ヒシアマはおいしいって言ってくれるかなぁ)
28二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 08:29:27
バレンタイン。学園内にはどこか楽しげな空気が漂っていた。
コンコンッ
「よう、トレ公!邪魔するよ!」
「……?ヒシアマ?もうそんな時間!?」
「アンタ、また炬燵で寝てたのかい?顔に跡がついてるよ」
「昨日あんまり寝てなくて……。そんなことより、ハッピーバレンタイン!ってことでこれ!」
「ありがとうトレ公。先を越されたね。ほい!アタシからもチョコレート」
互いのチョコレートを交換し合い、包みを開ける。
「トレ公のこれは……?」
「リンゴ入りのチョコ。リンゴを煮詰めて感想させてからチョコをかけたんだ」
「へぇ、……これおいしいね!」
「良かったぁ……。ヒシアマのはガトーショコラ?美味しそう!」
一口食べると、しっとりした食感と濃厚なチョコの味が口中に広がる。下層にはサクサクとしたクルミが敷き詰められていた。
「うん美味しい!」
「そうか……へへっ。よかったよ!実はヒシアマ姐さん特製、低糖質低脂質なガトーショコラなのさ!いやー、美味しいって言ってくれてホッとしたよ」
試行錯誤を重ねてヘルシーに作ってくれたようだ。胸が熱くなる。
「実は、俺が作ったのはまだあるんだ」
「これは……、タルトタタン?」
「リンゴが余ったからついでに作っちゃった」
本当は、リンゴ入りチョコを作ったのは良いものの喜んでくれるか不安になって、つい深夜に作ってしまっただけだ。ヒシアマなら間違いなく喜んでくれるのだから、そこまで気にする必要はなかったわけだが。
「良かったら一緒に食べよう。俺はお茶を入れてくるよ」
29二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 08:29:44
炬燵を囲み、2人だけのお茶会が始まった。
「このタルトもおいしいよ、トレ公!」
ホッと胸をなでおろす。
「実はヒシアマに何送ろうか、ずっと迷ってたんだ」
パクッと俺も一口。うん。よくできている。
「だからバレンタイン特集を色々調べてたんだ。それ見てたら、ヒシアマがリンゴ好きだったこと思い出してね」
そう、確かあのページは『本命のあの人へ♡……
「……ハッ!?」
いやいや本命って、まるでヒシアマのことが……
慌てて、紅茶を口にする。
むせた。
「ゴホッゴホッ」
「大丈夫かいトレ公!?」
「……お茶が変なとこに入っただけだから!平気だよ!」
「でも、顔真っ赤になってるけど、本当に大丈夫かい?」
「これは……。そう、炬燵にずっと入ってたから!」
俺とヒシアマはあくまで担当とトレーナーで……
だから、きっと、この熱も炬燵のせい。
≫48二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 11:00:03
漣程度の穏やかな海。
ぷかぷか浮かぶ漁船。
隣にいるのは超がつく大物を釣り上げた結果、海上保安庁を待つゴルシ。
なんで、僕はこうなったんだろうか。
────時は、ゴルゴル時間4時間前に遡る……
「つこーとでサブトレ。ちょーっと手伝え!」
「えっ……?」
「いや、単に色々工面するもんがあってよ。トレーナーは絶賛ウオトレ四人組のお説教中だから抜け出せねぇと思ってよ……」
「何やったんですかあの人」
「……本人に聞いた方がいいぞ」
「えっ」
こうして、僕はゴルシと海に出た……のだが。
「見ろよ、松葉ガニ釣れたぜ」
「ここ太平洋だったような……?」
「細かいことは良いんだよ……って、おい。なんだあの影」
そうゴルシが指差す先の、大きな影が水面に近付いていく──
そうして影が水面に出ると、それは潜水艇だった。
49二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 11:00:46
「おいこれやべーぞ!中に入れ!」
「えっ、あっ、うん!」
思わず、ゴルシと二人船室に入る。
船室の窓から潜水艇を覗き見ると、なにやら白人男性がひょこりと出て、周囲をちらりと見る。
「……あれって」
「見りゃわかるだろ、多分麻薬の密輸潜水艇だ。ここからマガダンかウラジオストク、或いはカムチャッカまでいって捌くんだろうな」
「……つまり、見つかったら」
「お察しの通りだろうな、サブトレーナー」
そう言うゴルシの声色は、珍しく緊張しているようだった。
「……サブトレ。とりあえずは海上保安庁に電話する。座標はこの船の機器に出てるからそれを伝える。そしてまあ……あんたは見張りがこっちの船に乗り込んできそうになったら言ってくれればいい」
「……わかった」
「んじゃ、作戦"ゴルシちゃんとゴルサブトレのドキドキミッションインポッシブル"開始だ」
そう言うと、そそくさと動き出すゴルシ。
こんな場合なのに、安心する。
そうして、見張りはこちらの船を怪しんだのか一度艇の中に戻っていく……
「ゴルシ、見張りが中に戻っていった」
「……警戒は続けろ。今、海上保安庁が巡視船回してくれるけど、あと30分は警戒しないと不味い」
「さ、30!?」
「しーっ、声がでかい。だが、30分耐えれば二人とも助かるんだ。余裕だろ?」
「……まあ、頑張ります」
~🕰️~
50二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 11:01:27
「ゴルシ、見張りが船に戻ってる」
「……マジか。少し待ってろ」
そう言いながら船室から出ていくゴルシ。さっきと言ってることが矛盾してるかもしれないがまあ仕方ない。
そうして、ゴルシが甲板に……あれ、いつの間に勝負服?しかもあの槍は?
「よっしゃあ行ってこい!少なくとも潜水出来ないようにしちまえ!」
「!?」
ゴルシが槍を投げる。槍がなんか悲鳴をあげた気もするが、槍がハッチの開閉部を破損させてから、ゴルシの手元に戻ってくる。なにこれ。
「つこーとでとりあえず妨害工作はしてきたぞ」
「……???」
「まあ……とりあえず、そのまま待ってようぜ」
こうして、海上保安庁の方で潜水艇の面々が拿捕されるまで、僕達は狭い船室で待ち続けたのであった……
~🕰️~
51二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 11:03:27
そうして、トレセン学園に戻ってくる頃にはすっかり日が暮れていた。
「……よ、お前ら。どこ行ってたんだ?」
「トレーナー!ハッピーバレンタイン!つーことでよ、とりあえず棒鱈だろ?松葉ガニだろ?マグロだろ?鯛だろ?イシダイだろ?まあ色々あるからサブトレと三人で楽しもうぜ!」
「お、いいじゃねぇか!……ってサブトレ、お前大丈夫か?部屋までおぶってやるぞ」
しれっとゴルトレさんと合流、彼がしゃがんで、こちらがもたれかかりやすいようにしてくれる。
「あ、はい、すみません……」
「……気にすんなって。とりあえず俺とゴルシで魚捌くから、お前は風呂入って休んで、飯食べてリラックスしろ」
「あ、はい……」
そんな彼の背中は、やけにチョコの匂いがした。
そうして、お風呂にゆっくりと浸かった後、ゴルシとゴルトレさんの海鮮づくしのご飯を食べ、ゆっくり休んだ。
二人揃ってこちらを気遣ったのは、迷惑かけたという負い目なのだろう。
────翌日、ゴルトレさんが僕宛のチョコをしっかり保存してくれていたのでそれを食べた。
甘かったし、何よりゴルトレさんの手作りチョコも混じっていた。辛かった。
おしまい
≫87二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 17:25:27
「義さん義さん、僕チョコ交換会行ってきますね」
「……あー、待って黒カフェ。これ持ってって」
「…なんですか?これ」
「市販で買ったチョコだよ」
「……あの、義さん。ここに作ったチョコがあるんですけど」
「ダメだよ」
「えっ」
「ダメだよ」
「えぇ…」
「だってそのチョコ、禍々しいオーラ?みたいなのが……何入れたの?」
「チョコを溶かしたあとにシュブ=ニグラスを大さじ2杯入れました」
「ウソでしょ……またよく分からないもの入れてる………」
≫95二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 17:55:14
「はい。い、言っとくけど、義理だから」
俺ことダイワスカーレット担当トレーナーは膝から崩れ落ちた。
義理だから。なんという悲しい気持ちになる言葉だろう。
世のトレーナー達は頬を赤らめた担当ウマ娘達に本命チョコを頂いているというのに、俺だけ義理チョコなのだ。
いや、義理は義理でもギリギリのラインで義理なのかもしれない。こう、下のラインで義理義理チョコを頂ける立場の、ぎりぎりぎり……
「しのう」
「なんでよ!? こら、正気戻んなさい!」
頭を揺すられて脳みそのチャンネルが合わさったところで、ちょっと頬を赤らめたスカーレットが目に映る。かわいいねスカーレット。
ああだこうだ取ってつけたような理由が並んだ後、スカーレットは俺にチョコを握らせた。おててあったかいねスカーレット……
「……3倍返し、期待してるから」
「量がいい? 質がいい?」
「質よ、質。駄菓子袋なんて承知しないんだからね」
「はぁい」
逃げるように去っていったスカーレットを見送りながら、俺はもらったチョコを写メった後、ありがたく頂いた。
俺好みの、しっとりあまあまチョコケーキ。スカーレット、また腕を上げたなあ……
「……まだ義理かぁー」
虫歯になりそうな甘さはまだまだ遠い。
もっとがんばらないとなあ……うまぴょいうまぴょい
≫103二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 18:29:23
『甘さと苦さ重ねて』
「トレーナー、おはようございまっす!」
「おー、フラハラウおはよう。どうした?だいぶ早いじゃあねえの」
ブラトレがいつも通りに朝の仕事をトレーナー室で行っていると、チームメンバーの一人であるフラハラウが朝のミーティングよりも早くやってきた。訳を尋ねてみれば、フラハラウは手持ちのバッグから謎の包みを一つ取り出して勢いよく突き出してきた。
「ふっふー、こいつをくらえっす!二重の意味で!」
「……なんだこの包み。チョコか?」
すんすんと香りをかぐと、ほのかに漂う甘い香り。そういえば今日はバレンタインだな、とブラトレが気が付いたのは突き出された直後である。
「そうそれ!4人で一緒に作ってきたんで、しっかり味わって食べてくださいっすよ!」
「おーそいつは重畳。仕事終わったら食べさせてもらうわー」
それを聞くとフラハラウはにっこりと笑う。そしてどたどたとトレーナー室の出口へと向かいながら
「じゃあアタシは教室に荷物おいてくるんでー!!」
と、自らの教室へと向かうことにした。足取り軽く、たったったという音が遠くへと消えていった。
「あー、そういや今日はそうだったなぁ……俺はどっち側だ?作ったほうがいいのかねぇ?」
手元に残った甘い香りとともに、ふと思いをはせる。今でも一応自覚としては男性のままなのだが、身体はもはや女性のそれ。
せっかくそういうことになったのであれば手作りチョコを送るのもよかったのかもしれない……と思い、
「まぁ、あげるにしても今から作るんじゃあ間に合わんだろうな……」
タイミングの悪さを嘆いたのであった。
せめて一週間前くらいに気が付いておけば、ライトレやフラトレ達のお菓子作りに長けた友人たちに頼ることで、苦手なお菓子作りとはいえそれなりのものを用意できたであろう。だが時すでに遅し、覆水盆に返らず、後の祭り。いや、祭りは始まったばかりなのだが。
「んー、まあいいかぁ……手作りは来年だな。どうせまだ機会はたくさんあるしな」
そう呟いて背伸びをすると、また仕事へと戻った。バレンタインの今日は別の大仕事も待っているのだ。
今年はいくつやってくるんだろうか。だいぶヤバそうではある。
ブライアンがいつも通りに靴箱の中からあふれだしてきたチョコレートを抱えてきたと同時に、たずなさんが部屋へとやってきた。
確認の時間だ。
104二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 18:29:41
「……えっと、こちらになります」
「嘘でしょぉん……」
山と形容するべきか、丘と形容するべきか。城と表現してもいいかもしれない。
贈り物に対してそんな表現をしていいのかと思われるかもしれないが、贈り物単品ではなくそれが積み重なった現状に対する表現なので送ってくださったファンの方々はどうかご安心召されよ。いや、そんなことを考えている事態ではないとブラトレは頭を振って考えをリセットした。ともかく、予想をはるかに上回るバカみたいな量のチョコレートを目にしてしまえば、こうもなろうというものである。
仕方ないのだ、今回ブライアンのものだけでなく、ブラックヴォルフのメンバーにもそれなりの量のチョコレートが届いているのだから。熱心なファンというのは割といるものだ。
規模はともかくこの光景はトレセンにおいて毎年恒例行事である。トレセンの空き教室の一角を利用して量の多い贈り物の保管をしているのだが、まさかたった1チーム……それも五人の少人数チームに向けられて、部屋の片隅を埋め尽くすほどのチョコレートが送られてきたとは考えられなかった。
否、考えたくなかったというべきだろう。甘さの波。糖分の大嵐。以前はもうちょっと少なかったはずなのに、それが数倍になってやってきた。ちらとみるだけでも、ブライアンへのものだけで7割程度は埋め尽くしている。
市販されたチョコレートの絵柄が折り重なって、ここが大手デパートのチョコレート売り場のような様相を呈している程の、バラエティ豊かな種類のチョコレート。それこそコンビニで買えるようなお手軽なものから、あからさまにお高めのチョコレートの箱まで混じっている。これは食べ比べて楽しめますねなんて余裕などない。圧倒的カロリーと糖分と質量の暴力。
これが消費社会の極限、圧倒的嗜好品の量。他メンバーのものを差し引いたとしてもこれをたった二人で切り崩せというのは難題である。
「……おい、トレーナー……どうする」
さしものブライアンも冷や汗をたらし、少々身構えている。
「どうするも何も……」
決まってしまっている。
彼らに残された道は徹底抗戦。
「食うしか……ない……!だが……俺たちだけでは無理!」
無理に食べたら色々なものが崩壊する。主にカロリー制限とか、その他諸々の何かが。
だが去年までと違って今は二人ではない。
つまり……チームは巻き込まれることになった。
合掌。
105二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 18:29:54
「こうまで食べ比べできるなんて思いませんでしたねー……うん、ちょっと量が……」
「死ぬ……あたしが死んでしまうぞメイフォ……」
「タマシチよしんでしまうとは情け……いや情けなくないわこの量は死ぬわ……」
「ま、まだ残ってるっすよ……峠は越えたけど……」
「くっ……一人一つというのは守っているのが質が悪い……!」
「ぐっふ……いや一昨年去年はもうちょっとマシだったんだがなぁ……」
昼食を放り投げてチョコレートの山を崩しにかかるブラックヴォルフ。だが溢れるチョコの山に遭難しかけである。
いくらウマ娘が人よりも食べる量が多いといっても、甘いものばかりを食べ続けるのは大変なのだ。
ブラトレとフラハラウは大の字で寝て、タマシチとメイフォレストはこたつに突っ伏し、未だに格闘を続けているのはブライアンとリボンカロルのみ。地獄絵図一歩手前。
こたつの上にはまだまだ大量のチョコレートがのっており、更には奥の倉庫スペースには二箱ほど段ボールが残っている。
「お疲れ、ブラトレさん」
そんなことを聞いてか知らずしてか、ムントレがトレーナー室にやってきた。
「おぉ……ムントレか。どうした」
ブラトレはぶっ倒れた姿勢のままトレーナー室入り口にいるムントレへと顔を向ける。
「別に何かあるわけじゃないが、手伝おうか?」
「それは助かる。で、ムントレは貰ったのか?」
「ふふふ、色々貰ったけれどタンホイザが今年も用意してくれたよ。だが困っている友がいるならそちらを手伝うのもいいものさ。そうだろう?」
「天の助けってやつかぁ……ともかく食べてくれる人が多くなるのは助かる……」
ぐいっと体を起こしてまたチョコレートと向き合う。
「別に全部が全部食べなきゃならないってわけじゃあないんだがね……賞味期限が短いものが残ってるから、そっちは消費しきらないとな」
「じゃあ、タンホイザも呼ぼうかな。大丈夫かい、ブライアン?」
「あぁ、問題ない。メッセージにはこうも書かれていた」
そういうとブライアンは箱に添えられていたカードの束を差し出す。そこには「チームや周りの皆さんと楽しんでください」といったカードが大量にあった。
「どうやら新興チームであるということが案外知られているようでな……」
「それだけではない……かもしれないけどね。まあそちらは置いておこう。さあさあ、タンホイザに連絡だ」
106二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 18:30:15
「はわぁ~、こんな量のチョコレートを食べたのは初めてかも」
「そりゃそうだろうよ……俺だって初めてだもんここまで食べたの」
「程々の量とはいえ、私もここまで食べたのは久しぶりだね。学生の頃は何かと貰う機会に恵まれていたから」
「あー、やっぱり?まあそんな気はしてたっていうかトレーナーになってからも貰ってただろ?」
「好意を無碍にするというわけにもいかないからね。大切に食べさせてもらったよ」
二人増えるということは、一気に3割程度消費速度が上がるということ。瞬く間に食べなければならないチョコは胃袋に消え、後には満足感の残る二人と腹の中にぎちぎちにチョコレートを詰め込んだ6人が残った。
「うごごごご……当分チョコレートはいいっす……余りにも量が……量がぁ……」
「今年一年分は食べた気がしますね……」
「何を言っとるか、だいぶ少なくなってるとはいえまだ残ってるからちょこちょこ消費はするぞ」
「わぁい嬉しいなぁ……」
「チョコを食べるしあわせとかなしみ……」
悶絶している二名と撃沈している二名、そして流石に食い過ぎたと腹を撫でながらふぅと息を吐くブライアン。
仕方ないとはいえ、来年もこうなりそうであればもっと人数を動員しないといけないかもしれないなと思いつつ、ブラトレはようやく一息ついたのであった。
「あ、言い忘れてたけど今日は軽いトレーニングだけで済ますからなー」
「ありがとうございますぅ~」
トレーニングは必要とはいえ、流石にこの状態で強烈なトレーニングを行ってしまっては色々と引きずってしまうだろうということで、今日のトレーニングは軽いものに変更となったのであった。
最も、ブライアン以外の4人は授業で眠気地獄に襲われたのだが、それはまた別の話。
107二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 18:30:26
その日の帰り際。
仕事を早めに終えて、夕方のトレセンを歩いているブラトレを追うように足音が響いてきた。
ブラトレが振り返ると、そこにはブライアンの姿があった。
「お疲れブライアン。どうした?」
「まあ、どうしたというわけではないが……これをあんたに渡すのを忘れていたからな」
ごそごそと手荷物から箱を取り出すと、少々恥ずかしそうに顔を背けて、ブラトレへと手渡した。
「ハッピー……バレンタイン」
「……あぁ、ありがとうなブライアン!」
両手で受け取り、大切にバッグへとしまい込む。
「今日食べたものは甘いものが多くてしょうがなかったが、私のは苦めに作っておいた。……あんたの口に合うかはわからんがな」
普段料理をしないブライアンが手ずから作ってくれたらしいチョコレート。
きっと色々な苦労があっただろうに、それをおくびにも出さず渡してくる。
そんな彼女の強がりとも、意地とも見える気構え。
そんないじらしさを見て、ブラトレは心の底から暖かさを感じた。
「ブライアンが俺のために作ってくれたものなら、どんなものでもありがたいよ」
そんな彼女への返答は、着飾る必要もない本心からの言葉。
「……あんたのその言葉は、今日のどんなチョコよりも甘ったるいな」
ふっと笑うブライアンにつられて、ブラトレも笑う。
「お返しは期待してくれよ?」
「ああ、待っている」
夕暮れの赤に二人の顔が染まる。
バレンタインは終わり、またいつも通りの日々へと人々は戻っていく。
しかしその時に交わした思いや言葉、味わった甘さや苦さは記憶となり、また明日への糧となっていく。
まだまだ続く彼らの道筋に、少しずつ変化をもたらしながら。
≫113二のトレバレンタイン1/522/02/14(月) 19:01:50
「ということで私たち『二の矢★トレーナーズ(仮)』もバレンタインライブを行うわ」
「そうですよね。ハロウィン、クリスマスと来たら次はバレンタインですよね。知ってました」
「目の光を取り戻してブルトレ…。確かに予想がついたし慣れてきた自分に疑問が浮かぶのはわかるけど…」
「いつものノリだと逃げシスのライブに対抗して-って感じか?」
「あっちは確かパティシエ衣装だったわよね?フウが恥ずかしそうにしてたけど可愛かったわー」
「となると…パティシエから連想して…チョコ衣装、ですかね?」
「待って。ファルトレならそこからさらに『私たちのファンへの愛は平等。皆等しく義理チョコよ』って言いながら板チョコ衣装になるかもしれないよ」
「鋭いわね、実際私もその路線は考えたわ。二の矢にひっかけて『ギリギリ・滑り込み義理チョコフェア』とでも名付けてね」
「ウソでしょ…致命的にダサいし面白くない…」
「…ん?考えた、ってことは今は違うのか?」
「ええ。あれは昨日の事…」ホワンホワンホワン
「頭の中に直接イメージが……!?」
「これが噂に聞くトンチキSSパワーってことかしら!?」
「メタい!いや私は何を!?」
ガチャ『ファル子?いるかしら?明後日の遠征だけれど……』
『うわぁ!?ト、トレーナーさん!?』ガバッパサッ『あっ』
『何か落ちたわよ?…雑誌かしら?どれどれ…バレンタイン特集?本命チョコカタログ?』
『あ、あのこれは違くて、本命は本命なんだけど、その本命の……そう!ありがとチョコ!ファン一号でかけがえのないライバルで大切なトレーナーさんに本命の“ありがと”チョコなの!うん☆』
『ファンへの本命のありがとうチョコ……成程!これだわ!確かにそうね、本命のチョコに込める思いが恋慕や親愛とは限らない……!ありがとうファル子!また新たなウマドル観が見えたわ!』
『えっ、あっ、あれ…あっ……その……ねえ……』
114二のトレバレンタイン2/522/02/14(月) 19:02:09
ホワンホワンホワン「ということがあったの。世界が見違えたわ」
「ウソみたいに語るに落ちてたな」
「ていうかそこまでボロボロこぼされてそれ以外に感想を抱かなかったの……?」
「話の出だしからしてファル子さんの遠征の話だったしそういうスイッチになってたと考えましょう、そういうことにしましょう……そうでなければ余りにいたたまれませんよ……」
「…ってことは…チョコ衣装だけどきちんと本命仕様、でいいのよね?」
「その通り。私たちからファンへの想いは皆等しく本命。色とりどりのウマドルたちの輝きのアソート。視覚と聴覚のマリアージュが、あなたに今愛を届けます。これがデザイン案よ」
「うわ汚っ」
「何これ……泥?苔?」
「何で自分で描いちゃったの?下のキャプション見た方が伝わるって何?」
「すごいですよね。これ自信満々に出してきますしこんなに言われても全くへこたれないの」
「褒めてもチョコしか出ないわよ」
「耳ついてます?」
「と、とりあえず文章読めばわかるな……チョコミントアイス(ファルトレ)、ストロベリーチョコレートマシュマロ(スズトレ)、チョコレートパフェ(ブルトレ)、エクレア(フウトレ)、パウダーシュガー生チョコ(マルトレ)…」
「まともね……」
「そう。もう一味欲しいと思わない?」
「それは正しくお菓子作り失敗するタイプの思考なんですよ」
「バレンタインに刺激を求めるのは世間一般的じゃないよ?」
115二のトレバレンタイン3/522/02/14(月) 19:02:23
「足りないのは。そう、味覚。私たち二のシスは手作りチョコをライブ中に配るわ」
「……本気で言ってる?」
「本気よ。フウトレ。3日後開けてもらったスケジュールがあるわよね?」
「え、ええ。バッチリ全員分確保してるわ」
「えっ!?何か不自然にこの日開いてるなと思ったけどあれ仕組まれてたのか!?」
「というかフウトレさんも理由聞かないで全員の日取り確保したんですか!?」
「そこで全員に食品衛生責任者講習会を受講してもらうわ」
「ウワーッ!学園祭とかで受けるアレ!」
「頒布、それもデザート類のだからちょっと違うくない!?」
「大丈夫。その辺を知り合いに相談したら練習、前日、当日全てで保健所が立ち入り検査を行ってくれることにもなったわ」
「アイドル「ウマドルよ」の料理風景だよね!?」
「その様子を動画に収めて編集したものも当日物販に入れるわ」
「…あれ、でも保健所立ち入りの元ってことは作ってるときの服装って…」
「ええ。念には念を入れてクリーンスーツ。勿論マスク着用よ」
「どの層に向けた映像作品だよ!!」
「あと私たち、あまりお菓子作りは得意じゃないけど……どうするの?」チラッ
「見ないで見ないで。わたしだって悩んでるの。そりゃ見た目ダークマターは自分でも勘弁願いたいわよ」
「そこに関しては手を打ってあるわ」
116二のトレバレンタイン4/522/02/14(月) 19:02:39
「まずフウトレにはラッピングの方を担当してもらうわ。大量生産が効くレベルで簡略、かつ特別感は失われないように……できるわよね?」
「成程!任されたわ!」
「次にスズトレ。これを見て」
「これは……外国の人のチョコ作りの動画?」
「あ、このパティシエ知ってる。結構有名な人だよな?」
「これの音を全部覚えて実際の作成全般の観察と注意を行ってもらうわ」
「とんでもない無茶振りだな」
「動画時間は30分……まあいけなくもないかな……」
「えぇ……」
「そしてブルトレ、貴方にはテンパリングを行ってもらうわ」
「テンパリングっていえばなんかこねこねするあれ?」
「ええ。具体的にはより正確に言えば調温作業ね」
「私はデジタル温度計とかコンロとか使えないんですが…」
「安心して。アナログの温度計と大理石の手配はすんでるわ」
「本格的なやつ!!」
「いや大理石使うやつでもアナログの温度計は使わないと思うよ!?」
「…そういえばファンに配るチョコですよね?量は?」
「20gを限定500個で10kgよ」
「私10kgをテンパリングするんです!?」
「トレセン学園のカフェテリアに比べれば簡単でしょう。ウマ娘の膂力もあるのだし」
「そんな日本一の芋煮会より小規模みたいなこと言われても!!」
「おい、限定500個ってどう配るんだ?多分手渡しじゃないんだろ?」
「ステージ上からバラまくわ。節分ライブも兼用できて一石二鳥ね」
「待って、結構しっかりしたラッピングにしないといけないじゃない」
「いやツッコミどころそこじゃないと思う」
117二のトレバレンタイン5/522/02/14(月) 19:03:10
「そしてその他の細々してたり間を埋める作業は私が言い出しっぺの法則としてやるわ」
「雑かつ重労働!」
「テンパリングとラッピング以外の作業全部をその他諸々でくくりやがったぞこいつ!」
「それでもクオリティが保証されるわけではないですよね?スズトレさんの修正が入るとしても……」
「品質に関してはライトレ、フラトレの指導も追加で入るわ。あくまで“二のトレの手作りチョコ”という付加価値の純化を目指すために手出しは無用と伝えてあるけど」
「お菓子作りに使う用語じゃないですよ。手出しは無用て」
「…俺は兵役免除でいいのか?」
「マルトレはトレーナーTVでこのチョコの宣伝と味見をしてもらうわ。スタッフの許可は取ってあるけどどういうコーナーにするかとかどういうタイミングでねじ込むかとかは任せるわ」
「一番ふわっとした指示だった!!」
「というか知らない間にトレーナーTVのスタッフに取り入ってる!!」
「オペトレさんほどじゃないですけど大概人脈の暴力ですよね……さっきの保健所の件といい大理石の手配といい……」
「さあファンのみんなに甘さの降り注ぐライブを届けるわよ!レッツゴー二のトレ!!」
その後無事に保健所の審査も通ったらしく、本当に二のトレはライブ中に手作りチョコをバラきました。
味については私のトレーナーさんも褒めていたので相応のものだったのでしょう。事実話題にもしっかりなっていました。
ライブ終了後にファルコンさんとそのトレーナーさんは本命のありがとチョコとやらの交換を行ったそうです。
寮の部屋に帰ってきたファルコンさんはどこか遠い目をしていました。
あのファルコンさん特攻の癖にクソボケボク念仁なトレーナーさんからどんな仕打ちを受けたのかは私には想像もつきませんでしたし、聞く勇気もありませんでした。
うまぴょいうまぴょい。
≫122二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 19:18:51
……その昔。どこの会社でもやっていることだそうですが、ここトレセン学園においても、女性職員一同から男性職員一同へ義理チョコを送る風習がありました。
人数比の関係でホワイトデーのお返しはそこそこ立派なものが期待できる都合上、集金等の手間はありましたが、男女から程々に喜ばれる行事だったそうです。
それがいつしか「友チョコ」という風習が新たに入ってきた時、誰かが思ったそうです。
「あれ?友チョコだけで良くない??」……と。
それ以来、全体集金をする大々的なチョコのやり取りはなくなったそうです。まあ禁止されてるわけでもないので個々人で渡すのは当然今でも行われてますが。ともあれ今日のトレセン学園のバレンタインは女性同士の交換が主流となっているのです。
「……まあそんなこと知ったことではありませんが。はいチョコをどうぞ、先生」
「よく知っておるのうウラトレ。まるで見てきたかのようじゃ」
「まあ毎年の口上ですから」
「友チョコの起こりは約20年前らしいですからね。ウラトレ先生ほどなら逆にここ数年の事より覚えてるんじゃないんですか」
「マルゼンスキー担当?」
「すみません」
「……まあそういう軽口叩くところがかわいいと言えなくもありませんが。はいチョコです」
「俺も貰えるんですか?」
「当然。感謝の思いを込めての友チョコですから」
「もうハルウララからは貰ったのかの?」
「すでに既製品がたくさんと手作りチョコを。わたしからも手渡して交換済です。……味見でお腹いっぱいなどとのたまっていたので、明日のトレーニングはちょっと厳しくしようかなと」
「おいたわしやウララ……」
「それではチョコ配り行脚に戻りますね。それでは」
───ああダストレ。……ええ、毎年恒例のアレですよ。すでに担当から本命を貰ってるかもしれませんが。
「……マルトレ、儂のとは大きさに差はないな?」
「逆に大きさ含めて特別感醸し出されてたらびっくりしませんか?」
「……そうかもしらん」
───げ、元気を出してくださいダストレ……。わたしも迂闊でした。
ウラトレがルドゴルムンによる『テリーヌつくるよ!!!!・ノーカットエディション』と書かれた円盤の内容に頭を抱えるまであと二時間。
(終)
≫130二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 19:59:47
「ほら今年もチョコ買うて来たで!食っとき!」
「おお、ありがとう。こっちもほら、お返しのブラックライトニングチョコ」
「…は?なんでや」
「え?だって俺今ウマ娘だし。バレンタインにチョコあげてもいいだろ。嫌か?」
「いやいや嫌ちゃう…嫌ちゃうけど…ホワイトデーまでの心の準備が出来んやんか!」
「なんだタマモ、顔真っ赤にして…照れてるのか?」
「ううう、うっさいわ!ウチなんかよりまずチビ達にやっとき!ほなな!」ダッ
「問題ない、チビ達にはもうあげたぞ!」ダダッ
「速っ!なんでウチに追いつけるねん!」
「ギャグ補正を無礼るなよ!」
「んなアホな事あるかい!」
その後偶然通りがかったクリークにまとめて捕まりましたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫139二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 20:15:36
チョコ交換会の用意・タキトレ編
「んー、どうしたものかな……」
「おや、何か困り顔のようだけど、どうしたんだいトレーナー君?」
「ん?ああ、タキオンか。交換会に持っていくチョコをどうするか悩んでてさ。自分らしい物を、とは思ってるんだけど悩み始めると良い回答があまり思いつかなくて困っちゃうね?」
「それなら毎年保健室用に作っているチョコクッキーで良い…というのも交換用としてはアレか。うーん、困ったねぇ……」
「だよねぇ…そういえばタキオンはどうするの?カフェさんとかとチョコの交換しないの?」
「スカーレット君から貰うことはあるだろうけどね。カフェから貰うことは無いだろうし、もし貰ってもお返しが手製だと薬が入ってると疑われるから既製品のチョコを渡して済ませるつもりだよ。まったく、人の厚意を疑うなんてひどい話だと思わないかい?」
「はは…まあ、それはそうだね……」
「そういえばキミも疑う側だったね。まあそれについては後々話すとして……そうだな、発光しているチョコはどうだろう?一目で誰が作ったかわかると思うよ?キミが作ったのなら疑われないだろうし、新しく作ったこの薬を仕込んでみるのm「後で飲むからそれは却下ね」…モルモット君に断られるというのも中々にクるものがあるねぇ…」
「そんなにタキオンの頼みを断ることって珍しいかな…?でも参考になったよ。いい案が思い浮かんできたんだ」
「へえ……今のが参考になるとは思わなかったけど、もしそうならよかったよ」
「うん、ありがとうね……それと、今年のバレンタイン。期待して待っててね。腕によりをかけて作るから」
「キミが腕をよりをかけて作るのはいつものことだろう?でも、キミがそう言ってくれるのなら楽しみにしてるよ」
◎タキトレからのチョコ
交換会でタキトレから貰ったチョコ。カラフルかつマーブルに彩られた一口サイズのチョコの詰め合わせ。
色合いと作ったのがあのアグネスタキオンのトレーナーということもあって、何かが入っててもおかしくない。
聞いてみても悪戯っぽく微笑んでそれとなく答えを返されるだけで、入ってるのかどうかは食べてみないとわからないだろう。
彼にとって食べる時のドキドキを含めてバレンタインの贈り物……なのかもしれない。
≫145二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 20:23:58
クエルクス・キウィーリス、エンプレスロード
エアグルーヴ 155-90-53-85
ファイトレ女 170-91-58-86
ファイトレ男 157-77-57-82
「…なるほど、中々似合うじゃないか」
「…そう言ってくれるのかエアグルーヴ」with花嫁衣装(サイズは調整)
「あの、エアグルーヴ。ちょっと言いづらいけど、胸元が大分…」with通常衣装(サイズ調整なし)
「はぁ…確かに貴様はファインとそっくりだからな、ファインと勝負服の交換をしたときと同じような状態だろう…」
「ええ…そんなことしてたのか…」
「…ところで、何か気になる事があるようだなファイトレ女。」
「いや…私みたいな女にこんな服装が似合うだなんて思ってなかったんだよ」
「まったく…このたわけ!貴様の担当にいつも何を言われてもいるんだ!…それに、よく似合っているじゃないか。」
「…ファイトレ女、後でファインに言っておくからね。」
「…そうだな…すまない二人共」
「…まあ、説教がしたい訳でもないからこの辺にしてやろう。次はもう一つの勝負服だったな」
「うん、じゃあ着替えてくるよ」
───1分後
「…えっと、流石に(胸は)調整させてもらったよ…」with花嫁衣装
「中々ひらひらしてるな…」with通常衣装
「これも良いだろう。どうだファイトレ男?」
「うん、凄い衣装だよねグルーヴ!…って二人共…」
「「…」」
「無言だとこっちも反応しづらいかなぁ…」
「…まあなんだ、そっくりさんというのは難儀なものだな…」
146二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 20:24:14
Noble Seamair
ファイン 158-78-56-83
グルトレ 160-90-55-92
「うん、胸が流石にきついから別サイズの服だよ」
「私より胸とお尻が大きいからね…身長と腰回りは同じくらいなのだけど…」
「この服のファインちゃんは凄く凛々しくてかわいけどどうかな?」
「私は凄く似合ってると思うよ!グルーヴにも見せてきたら?」
「勿論!」
短文失礼しました
出遅れ極まってる勝負服交換ネタ。体の一部がサイズ的に合わないから大変な人達です。ファイン勝負服とか胸が…。
ファイトレ女は多分結婚と自分の子供ってのは苦しい話題。理由はまあ本人の過去がもろに刺さるからですが。
後雑で出遅れまくった挙げ句今の今ですらバレンタインss用意できてないから私ちょっと横になるね…
≫150二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 20:43:00
『ハッピーマーベラスバレンタイン☆★☆★』
2月14日、愛を訴えた聖バレンタインの命日を起源とした大切な人に贈り物を送る習わし
それが輸入された際、思惑が重なったとかなんとかで女性が男性にチョコレートを送る日として定着
さらに近年では家族チョコ、友チョコといった風に様々な形に派生した結果、単にチョコレートを送り合ったり食べたりするイベントと化している
だが、今ここトレセン学園では二人の小さくて大きいウマ娘がまるでクリスマスのサンタのような大きな袋を掲げてウマ娘男女職員問わずにチョコレートを渡し歩いていた。
「え、俺のようなモブにも?いいの??」
「今日はバレンタイン★とってもマーベラスな日なんだよ☆楽しまなきゃもったいない☆★」
「普段なら一個ももらえなさそうなかわいそうー★な、おにいちゃんにも特別にマーベラスを分けてあげる☆あと視線が少し下過ぎない?」
「ははは、そんなことないジャナイカ…うん、チョコレートありがとう!」
「うんうん、マーベラスな輝き☆とてもキラキラ★」
「じゃあマベー次なるマーベラスへ☆」
♪マーベラス☆マーベラス★マーベラス☆マーベラス★るんるんるんー
151二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 20:43:13
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
嵐のようなマーベラスなイベントを数々こなしながらチョコレートを配り終えた二人はトレーナー室にて凪のように緩やかな時を過ごしていた
休憩を挟んでいたマーベラスサンデーが突然立ち上がりゴソゴソと物陰に用意してあった何かを取り出しもってくる
「はい☆、トレーナーッ!!ハッピーマーベラスバレンタイン★アタシからのプレゼントだよ☆★」
マべトレは少し驚いた後、すぐにニヤけついた顔になり座っていたソファから立ち上がり机の引き出しから何かを取り出す
「サプライズは自分だけかと思ったー?ざんねーんハッピーマーベラスバレンタイン☆私からもプレゼントだよー☆」
「わあーっ!!トレーナーからも!すごいやー!!思っても見なかったマーベラス☆」
「外見も中身も変わっちゃったけどー★感謝の印とこれからのマーベラスな気持ちを込めたチョコどうかなー☆」
「ありがとう!!でもねトレーナーは変わってなんかないよだってねトレーナーはトレーナだもん☆」
「マベのそういうとこ、とってもマーベラス☆じゃあもう一回お互いに出し合いっこしようかー☆」
「うん☆★」
「「ハッピーマーベラスバレンタイン☆★☆★」」
≫158二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 21:36:00
「ハーッハッハッハ! さあ、目で愛でて、舌で愛でたまえトレーナー君!」
「うーん、力作だね……」
自宅にそびえ立つ1/1テイエムオペラチョコに、テイエムオペラオー担当トレーナーは冷や汗混じりに呟いた。「部屋を冷やしておいてくれたまえ」と担当ウマ娘に言われたからには断る理由もなく、ワインセラーを片付けていたところ、運ばれてきたのがこれである。精巧かつふんだんに努力が散りばめられたものであることに疑いはなく、勿論オペトレとしても気持ちは嬉しいのだが……。
「これを食べるというのは、けっこうな時間がかかりそうだ……」
何せウマ娘サイズのチョコレートだ。
当然ながら一食に収まる範囲ではないし、まして小食なオペトレではひとかけらで満足してしまうことだろう。
つまり、向こう二ヶ月はこのテイエムオペラチョコを食し続けねばならないのである。
どこから食べ始めるべきか。入念な計画が必要となるだろう。
「……では、まずひと口」
「なっ!?」
そのひと口目を意趣返しとばかりに、オペトレは像の精巧な指に定めた。
折ることはなく、跪いてただ舐り回す。その光景にテイエムオペラオーが頬を赤らめ、自らの指を抑えるのは無理からぬことだろう。
「……うん、おいしいね」
満足気にオペトレは微笑み、自らの唇についたチョコレートを指で拭き取る。そうしてそのまま、送り主に差し出した。
「君もひと口、如何かな?」
「……撤退させてもらう!!!」
久しぶりの攻防戦。勝者は久しく勝てなかったオペトレの完勝であった。
この後テイエムオペラチョコは三ヶ月かけてオペトレが完食したが、手だけになったテイエムオペラチョコを食べるオペトレを目撃したスイトレが気絶するという事件があったことは、オペトレとスイトレだけの秘密である。
うまぴょいうまぴょい
あとがき:まさかチョコ像が来るなんて思わないじゃないですか
≫166二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 22:30:20
「なんだか今日はいつもより騒がしいな」
「バレンタインデーです。日頃の感謝の気持ちを込めて、親しい人物にチョコレートを贈るのだと、私の友人たちもそのような話題で盛り上がっていました」
「ああ、そういえばそんなのあったっけか…。やたらと甘い匂いがするわけだ」
「トレーナーは誰かに贈ったりしないのですか?」
「俺?いや俺は男だから…って今は女だった。でも渡す渡されるとか以前に、去年までの道場での生活では全然縁のなかった催し事だし、なんか実感わかないんだよな」
「確かに家ではそうでしたが…」
「ヤエはチョコとか作ったりしたのか?」
「一応、チヨノオーさんやアルダンさんたちと一緒に少し…」
「それはよかった。俺はてっきりチョコがうまく作れなくて手助けでも求めに来たのかと」
「そ、そんなことありません!」
「ははっ。まあ、せっかくのイベントなら楽しんでこい。友達も大切にな。…あっ、そうだ。せっかくなら師匠に二人で何か作って贈らないか?」
「じいちゃんに、ですか?」
「ああ、近況報告もかねてさ。俺たちにとって世話になってる人なら師匠以上にふさわしい人はいないだろ。我ながらいいアイデアじゃないか?」
「そうですね、きっと喜ぶと思います」
「じゃあ今日のトレーニングは軽めにするか。何作るか考えて材料の買い出しに行かないとな」
「はい!」
「よしっ、じゃあいつも以上に気合を入れていくぞ!」
―今年も結局渡せませんでした。
じいちゃんと同じように、家族に渡すようなものだと考えれば何も難しいことなどないはずなのですが。
どうしてもあと一歩、踏み出すことをためらってしまう。
ただ感謝を伝えて物を贈る。それだけのことに、どうして。
まだまだ心の鍛錬が足りていないということなのでしょうか。
≫172二次元好きの匿名さん22/02/14(月) 22:51:51
「ハッピーバレンタインです。マスター。チョコレートをどうぞ」
「ありがとうブルボン。今年も美味しそうですね」
「はい。『会心の出来』だと認識。オペレーション『チョコレート作成』の協力感謝致します、マスター。」
数日前
「おはようブルボン。こんな朝から何をしてるんですか?」
「おはようございます、マスター。ただ今オペレーション「バレンタインのチョコレート作成」を実行中。現在はコンチング作業中です」
「砕いた豆をチョコレートにする作業でしたっけ。ずっとの作業は疲れるでしょうし私も手伝います。いつもお世話にになってますし」
「了解致しました。ありがとうございます」
ジブンガモラウノニテツダウメカ?
「居たんですか……いいんです。ブルボンの助けになれるんですし。どうせ暇でしょうから貴方も手伝ってください、後でチョコあげますから」
メカー!?
「72時間の作業は大変でしたね……まあ機械での手伝いはできなくなってしまいましたがこのくらいは大丈夫ですよ。毎回カカオ豆から手作りしてくれるのも嬉しいですし」
「はい、やはり手作りの方がマスターに喜んでいただけると推測。この程度の作業は問題ありません」クキュー
ブルボンがそう言った直後、彼女のお腹が鳴る音がしました。
「ふふ、交代しながらやってましたが最後の方は何も食べてませんでしたね。私もお腹が減りましたし今年も一緒に食べましょうか」
「……申し訳ありません、マスター」
「いえいえ、今年のはとっても大きいですし問題ありませんよ。それにブルボンと食べた方が美味しいですからね」
「了解しました。感謝致します」
「……うん、今年も美味しいですね」
「はい、マスター。ステータス『とても美味』です。」
来年も、再来年もこうして2人でチョコを食べられたら……なんて贅沢ですよね。
終わり
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part680【TSトレ】
≫11二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:20:53
[戦えパラシンちゃん!バレンタイン敗北編!]
パ~ラパラパラパラ!どうも、あなたの隣に這いよる後輩。パラシンちゃんです!
今トレセン学園はバレンタインの真っ最中。モテるトレーナーさんがチョコに埋もれ、非モテのトレーナーの皆さんが涙に埋もれる日本で残酷な日ランキング堂々の第2位に輝く地獄の日!ちなみに、堂々の第一位はクリスマスイブ。いちゃつくカップルなんて爆発すればいいのに。
わたしなんて貰えたチョコはマーベラスさんと新人ちゃんとゴルトレさんたちから貰った3つと、タキトレさんの保健室からぬす…貰って来たチョコクッキー含めた計4つですよ4つ!あれ、思ったより多いな……?
ま、まあそれはともかく!狂える非モテの代表者、商業主義に汚染されたバレンタインを口実に甘いことをうつつを抜かしてやがるカップル共に対する復讐者のクラスになったわたしことパラシンちゃんは、モテてるトレーナーさんたちを混沌の惨禍に叩き落してやろうと計画を練り実行するのをこの日まで約6ヶ月待ち続けたのです!フハハハハ―!今のわたしは令呪3画でも止めることはできないぜ――――!!
そう思っていたのですが……
「阿呆が…」
大失敗しました。ええ、それはもう見事に。まさかこのパラシンちゃんが6ヶ月の間練りに練った計画が破綻するとは…!一番最初にウマ娘になって女子にモテモテなウオッカさんに似て、最近ギムレットさんの分も含めて更にモテるようになってきたウオトレ(親父)さんを襲撃しようとしたパラシンちゃん。人気のない通路に行ったのを見計らってその綺麗な顔面にチョコパイを叩きつけてハッピーバレンタインしようとしたのですが、ギムレットさんに見抜かれていて即座に捕縛されてしまいました。
「くっ、殺せ……!どうせわたしに酷いことするんでしょ⁉同人誌みたいに!同人誌みたいに!」
「お前にそんなことをする道理も理由もないだろうが。で、どうして俺たちを狙おうとしていたのか教えてもらおうか」
12二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:21:13
どうやらギムレットさんはわたしが何かしようとしていたことに気付いている様子。金の眼光がこっちを射殺さんとばかりにギラギラ光っています。だけどめげるなパラシンちゃん。証拠がない限り誤魔化しは効くはずです…!
「な、なんですか……?流石にパラシンちゃんもまだ何もやってないの悪人扱い「『まだ』、ということはこれからするつもりだったんだな?」…ハイ、ソウデス…」
ダメです。さしものパラシンちゃんもギムレットさんの眼光が光り輝いている前でシラを切り通すのはキツいです。というかギムレットさんの視線に「嘘ついたらわかってるよな?」っていう感情が乗りまくっていてヤバいです。
「で、バレンタインに何を企てていたんだ?」
「え、えっとぉ……商業的なバレンタインに異議申し立てをすると言いますかぁ……」
自分の上着で拘束されて真正面から見られているだけなのに、重力が増して心臓が射貫かれるような恐怖感が止まりません。ネイチャさんはまだ視線だけで済んでましたけど、この人は間違いなく必要になったらやる。あれ、どうしてネイチャさんの視線にマクトレさん染みた行動原理を一部混ぜ込んだかのような人を対象にしたんだわたし…?
そんな後悔を抱きつつも、練っていた計画を全部ゲロリます。嗚呼、さよならこの6ヶ月の苦労。流石に自分の精神的安定と命には代えられませんでした。そんなこんなでわたしが密かに練って実行しようとした計画を打ち明けると──
「馬鹿が……」
これまで吹き上がらせていた怒気とか威圧感とかが嘘のように吹き飛んで消え去って、ギムレットさんは目頭を押さえました。息苦しさとかそういったものが無くなって吸い込んだ空気は凄い美味しかったです。生きてるって素晴らしいですね。
13二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:21:42
「お前、まさかチョコ貰えなくてそんなチョコパイを顔面にぶつけるとかそんな馬鹿な真似をしようとしたのか…?」
「はい……」
冗談抜きで呆れて困惑しているギムレットさん。さっきまでの恐ろしさが嘘のように消え去って、今心の中呆れ100%って感じになってますねこれは…
「…ちょっと待ってろ。忘れ物を持ってくる」
呆れながらそう言い残して踵を返してどこかへ行こうとするギムレットさん。…もしかして、脱出チャンスというヤツなのでは……⁉ギムレットさんももしかしたら非モテ側の同志で見逃してくれていたりしちゃうのでは……⁉
「わかってると思うがそこから動くなよ?」
てへ、バレてました。体に一瞬だけかけられた重圧が彼の本気度合いを示しているようで、パラシンちゃんの頭の中から「にげる」というコマンドが消滅させられました。あの人八方睨み使うのこなれすぎじゃありませんかねぇ…⁉
それにしても、忘れ物とは何だったんだろ……?
~~~⏰~~~
「ん、逃げていなかったか。これは重畳」
それから数分が経った後のこと。帰って来たギムレットさんの手には……アイスバー?
奇妙なことに彼は真ん中で2つに割れるタイプのチョコのアイスバーを持ってきました。あれが彼の「忘れ物」なのでしょうか……?
「あの、どうしたんですかギムレットさん。まさか「忘れ物」ってその手に持っているアイスですか…?」
「ああ、そうだが。それがどうした」
「ギムレットさん、もしかしてこれが罰だったりします?チョコの貰えなかったわたしの目の前で2人分のアイスを貪り食らうとかする的な…?」
「さて、それはどうだかな……」
わたしからの疑問を適当に受け流しながらアイスバーを包むビニールを取りさるギムレットさん。この様子は火を見るよりも明らかです!チームウオッカの親父的ポジションとして知られているギムレットさんは、縛られた少女の前でアイスを食べる変人の極みみたいな人なんだ!
14二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:22:41
わたしがそう考えながらもギムレットさんを羨ましそうに見ていると──
「ホラ、食えよ」
「──えっ」
──ギムレットさんがアイスバーを2つに分けて片方をこちらに差し出してきました。しかも割り方が下手だったのか2つ割れたうち大きな方を。
頭の中が困惑に支配されました。どうして彼はそんなことをするのでしょう。彼にそんなことをする道理なんて1つもないというのに。それに答えを出すことができないまま、差し出されたアイスに口を付けると、冷たさと共に控えめな甘さが口の中に広がっていく感覚がしました。
「あの、どうしてわたしにアイスをくれるんですか…?」
「どうしてって、そりゃあ…今日はバレンタインだからな。今年位お前にチョコの1つでもやるヤツが1人位いても良いいだろうよ」
わたしの疑問に呆れつつも、それと同時に少し気恥ずかしそうになりながら答えを返すギムレットさん。それがモテないわたしへの憐れみからくる行動なのか、それとも別のなにかから来る物なのかわたしにはわかりません。少なくとも、憐れみだけでいまそんなことをしているとは思わないとなんとなくそう思うのです。
「さて、お前なら上着の拘束も自分で解けるだろうし、口だけでアイスも支えられるだろうから俺はもう行くぞ。これ食ったら今日1日ぐらいは大人しくしてろよ?」
15二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:22:49
そう言い残して今度こそ手を振って通路の奥の方へ歩いていくギムレットさん。あっという間にその姿は消えて、わたし一人が人気のない通路に取り残されました。
ぶっちゃけもう自由です。パラシンちゃんには約束を守らなきゃいけない道理なんて1つもないし、約束を破って痛む心もそこまでありません。ギムレットさんがした拘束なんてタイキトレさんにいつも吊るされたり、他のトレーナーさんに埋められているのに比べてばゆるゆるで、いつでも抜け出せてしまうものです。つまり、ギムレットさんとの約束なんてわたしには守る理由も道理も無いのです。
だけど、だけど、
「んー、これ以上気が向かないし、チョコも貰えたからまあヨシとしますか!」
不思議とこれ以上なにか悪戯をするだとか、そんな気は少しも湧いてきませんでした。それがどうしてなのかわからないし、知る気もありませんでした。
拘束を解いてギムレットさんがくれたアイスを口に咥えなおしてみると、じんわりと広がる甘さと冷たさが、どことなく気になりました。
6ヶ月かけた計画がアイス1つで御破算になる。これもパラシンちゃんクオリティなのだと、そう考えてみるとそれもアリだなと。なんとなくそう思うパラシンちゃんなのでした。
≫21二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:43:03
「────ナーさん、トレ────ん」
「……う、うん?」
「お目覚めですか? トレーナーさん」
「……アルダンさん?」
「はい、貴方のメジロアルダンです」
アルトレは自室のソファでアルダンに膝枕された状態で目を覚ました。
アルトレは起き上がろうとするが、額を押さえられアルダンの膝に頭を戻された。
「トレーナーさんに撫でていただくことはよくありますけれど、逆に私が撫でることってありませんでしたね。 ふふっ、たまにはこうするのもいいですね」
「仮眠をとるだけのつもりだったのですが、ずいぶんと眠ってしまっていたようです」
「昨夜もずいぶん遅くまでお仕事をしていたのでしょう? 睡眠は足りていますか?」
「今日一日は貴女のためだけに時間を使いたかったのでどうしても昨日のうちに終わらせてしまいたかったのですが、それでかえって心配をかけてしまったようですね」
「私のために、というのは嬉しいのですが、それで体調を崩してしまうようではいけませんよ」
「おっしゃる通りです。 申し訳ありません」
「よろしい」
アルダンは目の前のテーブルから包装された箱をとる。
「トレーナーさんは今日が何の日かわかっていますか?」
「バレンタインデーですね」
「正解です。 というわけで、ハッピーバレンタイン。 お行儀は悪いですけど、せっかくですからこのまま食べさせてあげますね」
アルダンは包装を解くと、中からチョコをひとつつまみアルトレの口に運ぶ。
「生チョコですね。 とても甘くて、とてもおいしいです」
「よかった。 ばあやに教わりながら精一杯作ったんです」
23二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:43:39
それからしばらく和やかな時間が流れる。
30分ほど過ぎたころアルトレは自分からも受け取ってほしいものがあると告げ、起き上がる。
「先日の隠し事ですが、本当はこのことだったんです」
机の引き出しから木箱を取り出し、ふたを開ける。
中には2つのガラス細工が入っていた。
1つは青い色ガラスで作られた小鳥。
1つは青い色ガラスで作られた薔薇。
「どちらがよりあなたに喜ばれるか悩むのはとても楽しい時間でした。 悩みすぎた結果、両方送れば2倍喜んでもらえるのではないかとわがままな思い付きをしてしまうくらいには」
そう言って木箱をアルダンに手渡す。
「ガラスというものは化学的には非常に安定していて、変化というものはほぼ起こらないそうです。 ですから、込められた願いとともに、永遠に残ります。 あなたのもとに幸福が訪れますように。 そして、貴女と巡り会えた奇跡に」
「──────」
24二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 00:44:00
アルダンは受け取った木箱を強く抱きしめた。
「私は幸せです」
アルダンの頬を一筋の涙がつたう。
「貴方と出会ってから、私はずっと幸せでした。 今を生きるのに精一杯だったのに、貴方のやさしさに包まれて、私は未来に想いをはせるようになりました。 幸せは貴方が運んできたのです。 私の『青い鳥』」
「私も貴女と出会ってからずっと幸せでした。 貴女の強い覚悟が、強い意志が放つ輝きが諦めかけていた私の心に熱を与えました。 貴女の放つ輝きが見たいから、貴女をより強く輝かせるために、私はここにいるんです。 私の『永遠の輝き』」
アルトレはアルダンを抱き寄せると、頬に手を添え、唇を重ねた。
時間にして数秒、けれど、二人にとっては永遠に近い時間が過ぎ、唇は離れた。
「先日のお返しです」
「──初めてですね。 私を求めてくださったのは」
「今日は愛を捧げる日ですから、特別です。 明日からはまた普段通りです」
アルダンは抱えていた木箱をテーブルに置くと、もういちどアルトレに身を委ねた。
「それなら今日は、強く抱きしめてください。 それから、キス、してください」
「はい、貴女の望むままに」
≫41二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 08:12:42
白富士ステークス。1月末に東京レース場で行われるOPレースだ。
距離は芝の2000m、この時期のOPの中距離レースはこれのみであり、比較的力のあるウマ娘が集いやすい傾向がある。
だが今年はその中でも一際レベルが高い、という話が広まっていた。その理由はいたって明白。
────最多入場人数を記録したとも言われるダービーウマ娘、アイネスフウジン。彼女がこのレースを復帰戦に選んだからである。
「フウ、脚は大丈夫そう?」
「うん、バッチシ!これなら思いっきり走れると思うの!」
「そう、なら安心したわ。」
そんなレースを目前に、俺とフウは控室で最後の打ち合わせを行う。
「作戦はさっきも話した通り。ただレースで何が起こるかはその時になってみないと分からない。だから……」
「最後は私が1番だと思ったことを、だよね♪」
「ええ。」
フウの調子は見るまでもないくらいに絶好調。約8ヵ月ぶりだから緊張してるかもと朝は思ったが、とんだ杞憂だったようだ。
なら、かける言葉は多くなくていい。
「……フウ。」
「何?トレーナー。」
「久しぶりのレース、めいいっぱい楽しんでおいで!!」
「……うんっ!いってくるの!!」
たった一言の激励。しかしフウはそれに大きく、笑顔で頷いた。
「……ホントに、久しぶりなの。」
実況の人のアナウンスを聞きながら、体操服とゼッケンを身にまとい、ターフを踏みしめる。
何もかもが懐かしく、始まる前からワクワクしてくる。
「……お客さんもいっぱいだし。」
もちろん皐月賞とかダービーとかに比べたら控えめだけど、OPにしては十分多いと言えちゃう人数。それだけの人があたしを待ってくれてたんだと思うと、勇気が湧いてくる。
『さあ、各ウマ娘ゲートに入りました……』
なら、あたしもそれに答えなくちゃ。
見てて、みんな、トレーナー。
「あたしの……アイネスフウジンの走りを!」
42二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 08:13:16
『スタートしました!』
その言葉と同時にウマ娘達がゲートを飛び出す。
フウは……うん、上手くいったようだ。得意のスタートダッシュを決め、その勢いのままぐいぐいと後続を突き放していく。文句なしの100点満点だ。
だから問題があるとすれば……フウ以外。200m通過時点にしては開きすぎた差だろう。分かりやすく後続側に追おうとする気がない。
ダービーのような消耗戦には付き合わず、終盤溜めた脚で差し切る。確実にフウを……フウのハイペースな逃げを警戒した動きだった。
そんなレース展開を眺め、俺は小さく笑う。
「……まずは読み通り。」
『今回、フウをついてくるのは多くて1人か2人だと思う。』
『そうなの?』
『うん。いくら療養しててもフウがGIを2勝してる上澄みであることに変わりない。ほぼ間違いなく意識して来るはずよ、勝つために。』
「予想的中、ってね♪」
そう呟きながらあたしはコーナーを駆ける。もうすぐ向こう正面、なのに誰も追いかけてこない。
「"レースとは如何に自らのやりたい事を通し、相手のしたい事を阻むか"、だったっけ。」
きっと今他のみんなが実践してるのは後ろの方なんだろう。実際このままじゃ最終直線までにスタミナを削るあたしの作戦は失敗。なくなるってわけじゃないけど勝つのは難しくなる。
……でもこれ、トレーナーの狙い通りな展開なわけで、なら当然備えてる。
「もっと、もっと、もっと、もっと!!飛ばすよー!!!!」
自分の中でギアを上げるように、あたしはさらに加速していく。
向こう正面に入ってなおフウの進出は続く。後続との差はすっかり10バ身。もはや逃げよりは大逃げの方が近しい。
自滅としか思えないペースに、観客席からもどよめきが湧く。
「けど、それでいい。」
付かず離れず徐々にスピードを上げ、相手を気付かぬ間にハイペースに巻き込んだダービーとは対局の。周りを微塵も気にしない大逃げだからこそ、レース場全てを動揺させ思考を乱すことができる。
そこまでいけば、あとは。
『おおっと!ここまで来て2番手以降もスピードを上げ始めたぞ!?』
裏があると読んで、殺人的なペースに乗らざるを得なくなってくる。
43二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 08:13:46
レースは第3コーナー、そして最終コーナーに。
大丈夫、まだまだ脚は動く。少なくとも最後の直線まで持たないなんてことはなさそうだ。
大逃げの感覚を掴めるまで並走に付き合ってくれたパーマーちゃんやヘリオスちゃん、逃げシスのみんな。
スタミナを付けるため力を貸してくれたマックイーンちゃん。
"後続が追い始めた瞬間にペースを緩めて息を入れる"なんて作戦を立ててくれたトレーナー。
他にもいっぱい、お礼を言いたい人達がいる。
「……だから。勝って言うんだ、ありがとうって!!」
感覚が研ぎ澄まされる。身体に力が漲る。
────"風"が、吹き荒ぶ。
最後の直線。ウマ娘達が一団になって駆けてくる。 フウが作り出したハイペースに巻き込まれた影響か、どの子の顔にも少なからず疲労が浮かんでおり、脚も鈍くなってる。
それは先頭を維持するフウも同じく。いや、それ以上に。2番手との差も200mを残して2バ身まで縮まっていた。
────だが、その2バ身が埋まらない。スタミナは切れる寸前、スピードも目に見えて落ちてきてる。それでも差の減り方は僅かずつのみ。
……大別して、フウの走りには強みが4つ存在している。
1つは俺が選抜レースで見出した、圧倒的なスピード。
1つはフウが自己申告した、飛び出しの速さ。スタートダッシュとも言う。
1つはトレーニングを重ねるうちに気づいた、緻密なまでのスピードコントロール。ダービーの逃げはこれがなきゃ成立しなかった。
そして、ラスト1つは勝負根性。
ダービーの逃げ切り勝利、それを支えた最後のピースが、再び追い風となってフウの背中を押す。
残り150、どよめきが歓声へと変わる。
残り90、ウマ娘達が最後の力を振り絞る。
残り30、それらを上回る勢いで、"風"が吹く。
自身に、レースに、観客達の情熱にさえも。
前に進め、ペースを押し上げ、燃え上がらせて。
『アイネスフウジン先頭!!アイネスフウジンが先頭で今、ゴールインッッ!!!半年以上の時を経てここに、復活を遂げました!!!!』
"風神"は今、勝利と共に帰還した。
44二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 08:14:07
「はー……はー……勝っ、た……?」
立ってるのもやっとな状態のまま、掲示板を見上げる。最後の方はずっと無我夢中で分からなかった。でも見てる限り、ちゃんと勝てたっぽい。
「そっか……勝てたんだ、あたし……」
よかった、と心からそう安堵して、息と共に身体の力まで抜ける。ただ尻もちをつく先はターフではなく、トレーナー。
「お疲れ様、フウ。」
「ありがとなのトレーナー……あたしの走り、ちゃんと見てくれた?」
その問いかけに、トレーナーはノータイムで答える。
「……ああ!最っ高だった!!」
おっきい声と、満面の笑みで。
「どうする?このまま控室まで戻る?」
疲労困憊で動けないフウをおんぶしてそう聞く。これからウイニングライブもあるし念を入れて脚のケアもしときたい。対策はできるだけしたとはいえ負荷が多いことに変わりないから。
「いや、最後に見にきてくれた人達の前に行きたいかな。いっぱい力貰ったから。」
「ん、オッケー。」
彼女の意思を尊重するように、観客席の前までフウを連れていく。
奇しくもダービーと同じ構図、だが今はあの時のような背足らずでも力不足でもない。それを示すようにちゃんとした形で、なるべく揺らさず運ぶ。
そうしてウィナーズサークルにたどり着いた二人を、観客達は大歓声で出迎えた。
あのダービーにも劣らぬ、熱狂と共に。
8話『風塵→風神:あの熱狂を、何度でも』 終
≫89二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 15:15:18
「…ファイン、私からのバレンタインだ」
「わぁ…!ありがとうトレーナー!」
ファイトレの住むアパートで、コートの内側から取り出した小箱をファインに手渡すファイトレ(女)。ファインはそれを嬉しそうに受け取るとファイトレに感謝の言葉を伝えた。
今日はバレンタインデー。トレセンでもチョコを本命義理問わず贈る姿があちこちで見られ、少し浮き足立つ日である。
「バレンタインは日本だと女性からチョコを男性に贈る日だが、まあ別に女性から女性に贈っても構わないだろう。」
「ふふっ、元々カップルが感謝を込めて贈り合う日だからね。じゃあ中は…」
丁寧に結ばれたリボンを解き、箱の蓋を開ける。…その中には薔薇の花を形取ったピンク色のチョコが9個入っていた。
「苺味のチョコレートだよ、今回は花を形取ってみたんだ。…美味しい?」
「うん!美味しいよ!」
「お口にあったようで何より」
大分顔の緩んだファイトレ。ほっとしたのかいつもの凛々しい顔ではなくかわいい顔を見せていた。
「…そうそう、私からキミにプレゼントがあるの。本来のバレンタインはお互いに贈り合うものでしょ?」
「そうだね」
「だから…はい」
ファインからの小袋のプレゼントを受け取り、嬉しそうな表情で感謝を伝えるファイトレ。袋の中には…
「ふむ…色合いからしてビターかミルクチョコかな」
黒茶色の何の変哲もない一口大チョコ。ファインの事だからぶっ飛んだものでも用意したのかと思ったが王道のそれ。
「どうかな?」
「うん、美味しいよ。」
普通にミルクチョコレートの味である。顔を近づけて覗き込むように眺めるファインにファイトレが返事した瞬間
「!」
「ん…美味しい。私からのトッピングだよ♪」
ファインが食べていたファイトレにキスをする。ぺろりと舌なめずりしたその姿は妙に似合っていた。
(…なるほど、このチョコはそういうことか)
勘づいたファイトレはファインを抱き寄せる。もう一度キスしてくるファインを受け入れながら目を閉じる。
───そのキスはチョコレートの甘い味わいがした。
短文失礼しました
互いに贈り合うファインとファイトレ女バレンタインネタ。この後どうしたかはご想像にお任せします。
ファイトレのチョコは手作りで、作った後に口にあうか心配してそう。美味しいと言ってくれた時にはいい表情してるね
≫148二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 19:42:43
「ねえトレーナーちゃん。バレンタインデーに自分にチョコをかけて私を食べて❤️するのってチョベリグ可愛いと思うんだけれど……熱くないのかしら……?」
「生チョコなら三十五度くらいで余裕で溶けるから何とかいけるんじゃないか?じゃなきゃ大体60度の粘性の物体をかけられてることになる」
「わー、マンモス熱いわね。カワイイは我慢って事なのかしら」
「大火傷にはならないだろうけどまあ普通に熱いよね」
「溶かしたチョコを垂らすのはねー大体SMで使われるロウソク垂らされるくらいの熱さだよ〜。あ、これ新作のチョコうどん」
「へぇ〜。え?まったスルーしたけどマジでチョコ混ぜてうどん作ったの? つゆのベース何にすればいいんだこれ?」
「ルドルフにはホットハチミツで食べてみてもらったけど好評だったよ」
「あぁールドルフちゃんがまだ必死でルームランナーで走ってるのってそういことね?」
≫162バレンタイン①22/02/15(火) 19:55:00
バレンタインデー当日。周囲の空気は普段より浮ついていて、各々誰に渡すか、或いは誰から貰うかで盛り上がっている。かく言う私も、鼓動が高鳴っている。だって今回ばかりは私も渡す側なのだから。
「ルドルフ、ハッピーバレンタイン。日頃の感謝も込めて、私からのチョコレートだ。少し凝って小さなケーキにしてみたんだが、どうだろうか」
「ハッピーバレンタイン、ありがとうトレーナー君。感慨無量、とても嬉しいよ。何せ初めての手作り、なのだろう?」
「……あえ、っ、な、なっ!?」
思わず声が上擦った。何でバレたんだ。態度にも言動にも何一つそれを悟らせる要素は無かったはずだ。彼女の言う通り、私はお菓子なんて作ったことはない。ひとりで作ろうと試行錯誤したけど無理だった。だからお菓子作りが得意なトレーナーたちに指導して貰って、何とか完成させることが出来た。
失敗作ばっかりで、それをルドルフに知られるのが恥ずかしくて、隠してたのに。
そんな私の思考を見透かすかのようにルドルフは私の絆創膏だらけの手を取り、優しく撫でる。絆創膏だらけの、手、を。
164バレンタイン②22/02/15(火) 19:55:31
「………あっ」
「ふふ、私に渡したいあまり、手のことが頭から抜け落ちていたみたいだね」
「ああぁぁぁぁぁ……恥ずかしい……!」
沸騰したかのように顔が熱くなる。まさかこんなくだらないミスをするなんて。ダメだ、ルドルフの顔を直視出来ない。
真っ赤な顔を見られないように必死に顔を逸らしているうちに、ぽん、と手に乗る感触。
「あ……」
「改めて、私からもハッピーバレンタイン。共に歩む道は決して甘くないけれど、君と一緒ならきっと乗り越えられる。これからもどうか、よろしく頼むよ」
……ああ、全く。ルドルフはずるいなあ。
「当然だ。私はこれまでも、この先も、君のものだよ」
顔の熱が抜け切らない内に、私は想いの丈を告げた。
〔了〕