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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part691【TSトレ】
≫43二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 20:37:46
「…トレーナーさん?」
「何かしらキタ?」
───キタトレのトレーナー室。珍しくキタサンとキタトレの二人きりの状況で、キタはキタトレを呼んだ。
視線を落としていたキタトレは顔を上げ、モノクルを少し調整しながら返事する。キタは
「あたし達もトレセンで走り始めてから随分たったよね」
「そうね…いや、そうだなキタ。キタはトゥインクルからドリームトロフィーでまだまだ活躍してるし、俺は何の因果かウマ娘になってチームを持つようになったからな。最近は『私』である時間が殆どで『俺』として振る舞うこともあまりないか。」
いつもの女性としての喋り方ではなく、キタには馴染み深い男性口調で語るキタトレ。顔と口調が明らかに合わないその様子は、間違いなく今のキタトレがウマ娘であることを証明していた。そして本人もそれは自覚しているのだろう。
「なあキタ、夢は見つけ…違うな、それは重要じゃない。今こうやって走り続けているのは楽しいか?」
「もちろんだよトレーナーさん!ダイヤちゃんもプロキオンのチームメイトも、他の皆と走ってられるから!」
満面の笑みで言ってくるキタに、キタトレは口元を緩めて満足そうな反応を見せた。
「それは良かった。さて、そろそろトレーニングに向かおうか。」
「最近ひらめいた新しいトレーニングだよね!まずはやってみよう!…と、その前に」
「?」
「トレーナーさんは少しお休みだよ、いつも器具の用意とかストレッチの指導とかしてるけど、今回は私達で大丈夫!」
キタから休んでねと言われたキタトレは、少し考え込んだ後キタの顔を見てそっと息を吐く。そして笑みを浮かべると
「…なら、今回はキタ達に任せるよ。怪我に気をつけて、しっかりこなすんだぞ?」
「…うん!」
トレーナー室から出て行くキタを、笑いながら見送るキタトレは、椅子に座り力を抜いて少しばかしの休憩ともつれ込んだ。
短文失礼しました
祝キタちゃん実装ということで、キタとキタトレで一本。マッサージネタは実装後のお楽しみです
いよいよ明日、ただ無料10連があるのと無課金故に初日全ツッパが出来ない悲しみ。数日間我慢だ私…!
≫72二次元好きの匿名さん22/02/23(水) 22:55:08
ハァ、ハァ………クッ………ハハハァ………!
『キタサンブラックは俺が当てる』、君達はそう言った………
私に歯向かった罰だ………その望みを………絶つ………!
ピロロロロ…アイガッタビリー…
キタサンブラックゥ!何故君がサトノダイヤモンドを差し置いて………ウマ娘に実装できたのか。
アロノワナー
何故トレーナーにマッサージをできたのか、何故トレーナーの財布が痛むのくわァ!
それ以上言うな!
ワイワイワーイ
その答えはただ一つ………!
やめろォォォ!
ハァァァ………キタサンブラックゥ!
(無言で走り出す)
君の!別々の実装で………!トレーナーの財布を………!!
破壊するウマ娘だからだァァア゛ーーーーーッハハハハッ!!
ターニッォン
ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!
ソウトウエキサーイエキサーイ
私が………トレーナーさんを………?
ッヘーイ(煽り)
嘘だ、私を騙そうとしている………!
≫80二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:15:32
ハーゼシュトラール リウif
🐰1
───もしかしたら、あなたが『本格化』するかもしれないし、そうでないかもしれない。
───すべてあなた次第。あなたの身体だもの、あなたが選ぶ、当然だわ。
あの時見た夢を最近よく見る。あたしが走れるのだろうか、歩けるようにはなったしこの身体はウマ娘だ。トレーニングをすれば走れるようになれるのだろうか。実際にレースに出たり、担当と併走するウマ娘化したトレーナーを見ている。あたしもそういう風になれるのだろうか。夢の中でふと思う。
「―――ろ、起きろ」
「んっ…あと5分……」
「めざめのチュウ」
「ねむいー」
シリウスのモーニングコールにも慣れてきた。まどろみの中のあたしを抱き締めている彼女の体温が心地良い。無防備を晒しても彼女にはそういうことはされない。ああ見えて良い子である。そんな良い子な彼女のおかげであたしの純潔は保たれたままだ。流石にそういうのは彼女が学園を卒業してからにしてもらいたいのでありがたいことだ。
「そうか、それなら私にも考えがある」
彼女はあたしから離れ、布団を剥ぎ、あたしが手を伸ばした先の抱き枕も取った。朝のひんやりとした空気が肌に触れる。
「寒い…」
「なら、さっさと準備を済ませることだな」
あたしは渋々朝の準備を済ませた。この身体になってからは彼女のモーニングコールから始まり、一緒に家で朝食をとり、横抱きにされて学園へと出勤する。これがあたしの日常になっていた。ただ、あたしがいつもと違うのは、どこか『走りたい』という感情を抱えていることだ。
「また昼にな」
「ええ」
いつもならトレーナー室にあたしを運べば、彼女は座学の為に教室へと向かうのだが、なにか言いたげにあたしをじっと見ている。
「…な、なによ」
「アンタのことだ、言えと言ってもすぐには言わないだろ。言いたくなったら構わず言え。いいな?」
「……わかってるわよ」
「ならいい。じゃあな」
彼女はトレーナー室をあとにした。『走りたい』とあたしの中に入っていたそれがずっとそう言っている気がして、なかなか午前中はトレーナー業務に集中できなかった。
81二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:15:51
ウマ娘化したあたしの身体には3人のウマ娘が入っていた。そのせいであたしがこの身体になった一定期間は歩くことすらまともにできずにいた。現在は普通に歩けるが、変わらずあたしは移動の際にシリウスに横抱きにされている。なのでこういった時間において、ひとりで行動する際は『歩く練習』という体でのんびりと歩く。昼はシリウスに横抱きにされてカフェテリアへ移動、そこで昼食を済ませている。放課後になればまた彼女が来る。トレーニングがあればトレーニングにとりかかる。今日みたいな日がそうだ。
「始めて」
トレーニングに使われるグラウンド。芝に影響の出ない場所に簡易的な三脚チェアをおいてストップウォッチを首から提げ、タブレットを膝の上に手と声と合図を送る。クラシック級に長きに渡る海外遠征、URAファイナルズを終えてもドリームトロフィーがある。その為のトレーニングだ。合図に彼女がスタート、同時にストップウォッチも動き出す。中距離を重視したメニュー。契約の際に彼女と決めたそういう方針だ。彼女の長い髪と尾が靡く。今なら、このウマ娘の身体なら、彼女と併走できるのだろうか。もっと近くで彼女を見られるのだろうか。ストップウォッチと彼女の姿を目で追う。あたし、今何を考えたのだろう。彼女はラスト200メートル付近まで来ている。集中しなくては。ゴール地点を彼女の頭が入ったタイミングで止まるストップウォッチ。バ場状態良、天候晴れ、コースの状態等と彼女の平均を考えればいいものである。彼女はこちらに向かいながら息を整えている。
「シリウ―――」
「タイムはいい、それより」
彼女はあたしの言葉を遮り、あたしの顎に手を添えて上を向かせる。
「大事な愛バのトレーニング中に何を考えていた?」
「……そ、それは、その……せっかくこの身体になったわけだし、走ってみたいなんてちょっと。そうちょっとだけ思っただけよ」
思わず目線だけを逸らした。彼女はダメと言うだろう。なぜなら歩けるようになったにも関わらず、彼女はあたしが普通に歩けることを周囲に知られたくないと変わらずあたしを横抱きにして送迎を続けている。あたしが走るなんて許してくれるとは考えづらい。
「走りたいのか?」
「え?ええ、シリウスと一緒に走ってみたいわ」
彼女はあたしの顎から手を離し、一考する。考えてくれるのか、正直少し意外だった。
82二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:16:13
「いきなり併走するのも危ねぇから、最初は抱えないで一緒に歩くか」
「いいの?」
「いいぜ、ただし走るのは私見ている時だけだ」
「ありがとう、シリウス」
嬉しくなり思わず頬が緩むと彼女も得意気な笑みを浮かべた。時間まで予定していたトレーニングに付き合う。集中しきれてなかったのが嘘のように集中できた。トレーニングを終えたあとに理事長に話を通した。あたしの身体の事情がトレーナーのウマ娘化現象の中でも特殊な事例のひとつであった為、歩けるようになっても変わらずシリウスはあたしの送迎をできるそうだ。万が一を考慮しての事だ。
「こんなに歩いているの久々だわ」
「だろうな」
今までなら彼女に横抱きにされて見ていた道だ。夕陽に焼かれ、橙色に塗り替えられた街並みを彼女と歩いている。
「……ねぇ、シリウス」
「なんだ?」
「今日の夕食なにがいい?」
「アンタが作ったモンなら何でもいい」
それが一番困る。具体的なリクエストをしてほしい。パスタがいい、和食がいいとかせめて方針を。嘘を言わない彼女のことだ、実際何でも良いのだろう。買い物を済ませ、いっぱいになったエコバッグを手に彼女と家へ帰る。彼女にちょっかい出されながら夕食を作り一緒に食べる。彼女が寮に帰ったら、風呂に入り明日の準備をして眠る。あたしの日常が少しずつまた変わろうとしている。
83二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:16:29
変わっていくあたしの日常。始めは彼女と歩いて学園へ出勤していた。日々を重ね、それはジョギングへと変わっていき、『シリウスシンボリのトレーナーは歩けない』という周囲の認識も変わっていった。ジャージや蹄鉄のあるシューズも用意して走るようになっていき、あたしの『走りたい』という感情は解消されていくどころか、日に日に増していた。
「なんか、きつい……?」
まさか太った、そんな不安は抱かなかった。毎日ジョギングをし、シリウスのトレーニングも少しだけあたし自身も一緒にやっていた。筋肉量が増えた。そう思うのが当然なのだが、この身体になってからそれなりに経ったのでこのサイズにも慣れた。だからこそわかる。今のブラのサイズが合っていないのであると。今日はオフの日だ。買い出しついでにサイズを確認して新しいものを購入するとしよう。朝食の準備をしようとキッチンに立つと、シリウスが来た。いつもの時間よりはずっと遅いものの、あたしを起こしに来たのか、彼女はキッチンにいるあたしに少し驚いた様子だったがいつもの自信にあふれた表情に戻る。
「今日はオフだからゆっくり寝てて良いわよって言ったはずだけど」
「オフだろうと関係ない。私はアンタと居たいんだ」
あたしを後ろから抱き締める。これでは朝食の準備ができない。
「ちょっと…準備できないでしょ」
「良いだろ、オフなんだ。ゆっくりしようぜ」
「買い出しもあるから、とっとと済ませたいのよ」
そう言うと彼女はパッと離れた。これで朝食の準備もできる。
「そういうことなら私も付き合う」
「いいわよ」
「へぇ、珍しく素直だな」
「いいでしょ、別に……」
朝食の準備を終わらせ、2人で食べる。朝食の片付けを済ませて時計を見れば、開店してそうな時間帯になっていた。
「で、何を買いに行くんだ?」
「食材に、飲み物、あと下着」
「は?下着、なんでだ?」
「今のサイズだときついのよ……とにかく、サイズを確認して買いなおそうってことよ」
笑う彼女をよそに財布をはじめとする貴重品、エコバッグなどを確認してバッグを肩に提げてキーケースを手にする。
「付き合ってくれるのでしょ、笑ってないで来て」
「ああ、勿論だ」
84二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:16:43
彼女とショッピングモールに着く。この身体になって彼女と初めて来た場所、今着ているものもここで購入した。今のサイズもかなり大きいものだが、これより大きいサイズはあるのだろうか。いささか不安を抱えつつも下着売り場へと足を運ぶ。店員に声をかけてスリーサイズを改めて計測してもらった。店員もあまり居ないサイズなのか驚いた顔をしつつ、折りたたみのカードにサイズが記載され、あたしに手渡した。あたしが一番驚いてる。
「どうだったんだ?」
「……大きくなってる」
今着けてるものだとあまり良くないらしい。フックを一番手前にしてゆるく使っても少し苦しいのでそういうことだろう。B92W57H85と記載された以前購入したときに貰ったカードと今手渡されたB95W57H90と記載されたカードを並べるとため息が零れる。ひとつ上のサイズになってしまっていた。お腹に肉がいってないことに安堵はしたものの、この身長でこれはあまりにもアンバランスだ。身長も伸びてたら良いのにと彼女を見るがあまり目線が変わってないので伸びてないのだろう。悲しい。
「なんだ?」
「どうせなら身長も伸びたらなぁって思っただけよ、サイズ見ないと…どうせ選ぶんでしょ」
「よくわかってるじゃねぇか」
「前もそうだったでしょ」
今着けているものはこの身体になった際に彼女が選んだものだ。なので色も彼女の勝負服にちなんだチョイスだったり、彼女を彷彿させる色ばかりになっている。あのときあたしが選んだものは却下されている。大きいサイズが置いてあるところへ行き、背伸びをすると合わせて屈んでくれるので耳元でこっそりとサイズを伝えた。
「そんなサイズあんのか?」
「数はあまり置いてないけどあるって言ってたわ」
下着を彼女に選んでもらい、そのまま購入。サイズもそうだがそれなりに可愛いデザインもあって少し嬉しかった。次に食材や飲み物を購入し、食材と飲み物は店でやってる宅配サービスで運んでもらうことにした。その後は彼女と自宅で過ごし、昼食と夕食を彼女と済ませ、今日1日を終えた。
85二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:17:25
シリウスと朝のジョギングを兼ねた通勤にも慣れた。最初は途中休憩を挟みながらだったが、休憩をほぼなしでできるようになっていた。夏でもないのに着替えやタオルや汗拭きシートを持ち歩くようになった。彼女のトレーニングに付き合う時は基本的にスーツやそれに準ずるものだったが、ジャージに変わっていた。継続は力、幼い頃から理解していた。この身体が以前の基礎体力も残しているならもう少し走れそうな気がするが、水泳でのスタミナトレーニングで試してみても良いかもしれない。以前の身体と全く同じように泳げるとは体型的に思えないが、それなりに泳げるなら体力の付けようもあるというものだ。
「さて、と……」
「アンタが泳ぐのは久々に見るな」
「この身体では初めてよ……一応、タイム計っておいて」
「いいぜ」
水着は当然新しく用意したものだ。ゴーグルは変わらずそのままだ。彼女にストップウォッチを渡す。軽く柔軟を終わらせ、身体を水に慣らす。水の中から壁を蹴ってスタートすることにした。彼女の合図と共に壁を蹴る。ある程度水中を進み顔を出して泳ぎだす。以前の身体程でなくとも身体は泳ぎ方を忘れていないようだ。50mをクロールで、ターンして残り50m平泳ぎ。自分でも以前よりずっと泳げていないのを感じる。スタートで蹴った壁をタッチするとストップウォッチが止まる。プールからあがり、彼女にストップウォッチを見せてもらう。この身体になってから初めてであることを加味してももう少し速く泳げると思っていたのでタイムに関してはショックだ。彼女のトレーニングの時や休憩の時に泳ぐことを決めた。
「ありがと、メニューを始めて」
「アンタのあとに泳ぐのか」
「誰のあとだって変わらないわ」
水の抵抗を感じずにはいられなかった。タオルで身体の水気をふき取り、トレーニングメニューを始めた彼女を見ながらため息が出た。どくり、と心臓が疼くような不思議な感覚に襲われる。
―――本当は走りたいのでしょう。
―――わかるよ、だって今のあなたはウマ娘だから。
―――ウマ娘の本能にも素直になっていい。
あの時の3人と同じ声が聞こえた気がした。彼女がメニューの一部を終え、休憩してる時はあたしが泳ぐ。速く、速くなりたい。そう思いながらただがむしゃらに泳いだ。この身体なら泳ぐよりも走る方がよっぽど速くなれるというのに、心の中で誰かが言ったような気がした。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part692【TSトレ】
≫38二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 22:55:00
トレセン学園闇の会議(Part???)
「ではこれよりトレセン学園闇の会議を始める……!」
「風紀委員がなんぼのもんじゃい!アタシたちはこれがあるからこそトレセン学園に居るってもんよ!」
「職員としてアウト一直線の発言してるわよアンタ……ところで今日の議題は何かしらリーダー。珍しく男たちが居ないいようだけど居ちゃマズい議題だったりするの?」
「うむ、ではそれも含めて本日の議題を発表する……。本日の議題は『自分含めたトレーナーで家族を作るならどうする?』だ。是非妄想の力を振るって議論に参加してもらいたい」
「家族概念……だと……⁉」
「なんて犯罪的、かつアブノーマルな……‼ただでさえヤバかったトレ×トレ概念から更に発展しているような気もするわよ議長⁉」
「うむ、以前トレ×トレの時は男女間での議論がヤバくなりそうになったし、人数も搾りたかったので今回は女性だけということにした。だけど家族、家族だから!血がつながってなくても家族になれるって怖い服装したあんちゃんが言ってたからセーフよ!」
「それ本当にセーフなのかな……?それはともかく、まずはお父さんから決めますか。誰か候補居ましたっけ?」
「やっぱギムレットさんでしょ。ウオッカさんのみならずウオトレの皆の父親って感じが凄いし、レースの時の格好良さと時折優しく微笑んでいる時のギャップがもう……!でも親父さんでも若くてフレッシュな父味があって良いわ。個人的には母親役には恐れ多いけど、ウラトレ先生かキタトレさんだと妻には頭の上がらない父親感が出て良いと思うわ」
「いや、オグトレさんも捨てがたいところですよ。料理上手な上に少し天然な所があるオグリさんを絶妙な間合いから支えているところとか、お父さんとしては最高です」
「なるほど……オグトレさんも魅力的ね……」
「個人的にはタバコさんが父親というも見てみたくはあるんだよね。子供たちが寝た後に奥さんに「悪い子だね……」と囁いて二人きりの時間を過ごすとか良くない?」
39二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 22:55:17
「見たい……」
「こうして見てみると父親候補として軽く見るだけでも色々いるわね。ところで、タバコさんが父親ということは母親は黒カフェさんで良いのかしら?」
「さあ……黒カフェさんでも義カフェさんでも、更にはタキトレさんやその他でも。可能性は無限よ」
「……君が私たちの同志で良かったと心から思うわ。それで、親はともかく兄弟とかはどうする?私タイトレさんみたいな人が妹だったらいいなぁと思うの」
「おひさまの匂いがして太陽みたいな笑顔を浮かべる元気いっぱいの妹とかもう天使ですわ。将来結婚相手を連れてきても結婚を認めない自信があるわよそれ」
「タイトレさんが兄や姉でも良いけど、妹だともう破壊力が凄いわ…というか満場一致で妹はタイトレさんで良いんじゃないかしら」
「いや、それは待ってほしい。個人的にもっと良いのが浮かんできたわ」
「へぇ…是非聞かせてもらおうじゃない。タイトレさんとタメをはれるレベルの妹力を持つトレーナーを…!」
「……ドベトレさんはどう?」
「「⁉」」
「ドベトレさんも結構元気系でワイルドな感じがするんだけど、お酒を飲んだりすると皆に甘えて褒めてくれるの。しかも私は某筋からドベトレさんが寂しがり屋じゃないかという情報を入手してるわ。育った後は今の感じだけど、幼い頃は兄や姉の後ろをついてくる寂しがり屋さんだったと考えたら適性はあると思うわ。どうかしら」
「いい……」
「寂しがりやな幼ドベトレさん最高…‥」
「両方妹にしたいわ…というかもう2人は私の妹なのでは?小さい頃一緒に遊んで「お姉ちゃん」と呼んでもらったきがするんだけど」
「それは妄想よ。それと、ドベトレさんを妹にするなら姉はネイトレさんとスズトレさんとかもアリだと思うわ。勿論、ドベトレさんとセットだからという訳では無くて、少々だらしないネイトレ姉さんときっちりとしているスズトレ姉さんは姉として欲しい存在だと思うの」
40二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 22:55:43
「いいね……ところでフウトレさんはどう?大きくなって姉って感じがする様になったと思うけど皆はどう思う?」
「たとえ自分より大きくても妹です」
「年上らしいところを見せたい妹ね」
「魂が妹の形をしているわ」
「哀れフウトレさん……私は悪くないと思うんだけどなぁ」
「この議題には個々人なりの答えと個々人なりの理想があるの。勿論、あなたのネタもは胸を張って主張していいわ」
「ありがとう……!あと個人的にはタバコさんは母親の方が良いと思うの」
「は?タバコママとかもう最強かよ…父親はタキトレさんとかだったらいいなぁ。父親に見えるのが母親で、母親に見えるのが父親って良くない?」
「パパがママで、ママがパパとは考えたわね……」
「やはり、色んな概念と組み合わせで無限大に広がりを見せるわねこの概念は……本日はこれぐらいにして後は各人で概念について煮詰めてくるというのは?」
「そうね。次の機会に各自考えてきた家族構成と関係性について話してみるのもアリね」
「では……各々方。本人にはくれぐれも内密に」
「「「「散‼」」」」
≫64二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 23:46:10
「開催ッ!トレセン学園トレーナーズサバイバルゲーム!」
「と、いうことで実況ダストレさん、解説は私スズトレ、医療班にマルトレさんでお送りします」
「第一試合、ウオトレーズvsタマトレーズ!」
「えー、それではカメラを写してみましょう。まずはウオトレーズサイドですね」
(カチッ)(カメラの変わる音)
「ううむ…こいつぁどうすっか…」
「向こうにはパチさんがいるっすからね。攻撃戦には慣れてるはずっす」
「やっぱ隠密からのバン!だな」
「じゃあこいつはどうだ?向こうは多分俺かVが攻撃と思ってるだろう。だからこそお嬢、いけるか?」
「初めてなので難しいですが…がんばります!」
「じゃあお嬢はmp7での突貫。Vはその援護だ。俺と202は裏から回るから…」
「なるほど。結構真剣に練ってますね。個人の力量を重視するようです。ではタマトレーズサイドにまわりましょう」
(カチッ)
「相手は多分突貫してくるだろうな」
「じゃあどうすんだ?」
「向こうが攻めてくるんなら防衛一方だな。そっちの方が明らかに有利だ」
「通信機器は必要なのか?」
「当たり前だ。連携において綿密な打ち合わせは不可避。創作で見るような単独無双なんて無謀も甚だしい」
「そうなのか…」
「じゃあ役割を分けるぞ。俺と黒は瓦礫に身を隠しつつ防衛に徹する。ここではまず相手を誘き寄せるのが第一だ」
「ほうほう。…あれ、小は?」
「小さい体と視認性の悪さを利用してもらう。いけるか?」
「…が、がんばる…」
「生き物ってのは勝ちを確信した瞬間が1番慢心しやすいんだ。もちろん無意識にな。だからこそそこを突く」
「うん…」
「俺たちがミスったフリして奴らを引き寄せた瞬間。そこで突貫、浸透してもらうぞ。いける…みたいだな」
「うん…!」
「しゃあ、勝ってタマに賞金送る為にも、絶対欠けることなく、勝つぞ!」「新台も打つぞ!」「勝つ…!」
「うん、燃えてますね。あ、第一試合始まるみたいです」
続く…?
≫69二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:37:04
ハーゼシュトラール リウif
前回https://bbs.animanch.com/board/393549/?res=80
🐰2
『走りたい』と願うことに、ヒトもウマ娘もない。それは脚があれば、否、なくともあり得ることだ。
「併走したい、私とか?」
「ダメならダメでいいわよ、好奇心だけだし」
今日はグラウンドを使ってのトレーニング。ちょっとした好奇心、シリウスと併走してみたいとそう思った。ダービーや海外のレースを経験した彼女の走りを間近で感じられるなんて貴重な経験だ。この姿でなければ叶わないことだろう。
「距離は?」
「そうね…1600、シリウスのメイクデビューと同じ距離」
「へぇ…」
彼女はにやりと笑った。この距離を提案したのには特に考えは無かった。ただ、頭の中でふんわりと出てきたのが1600mというだけだった。あの3人が全員短距離ウマ娘だった場合、適性に合ってないが流石にそれはないだろうとは思った。希望的観測である。
「合図はアンタに任せる」
「助かるわ」
ゴール地点から1600mの位置に立つ。こうして彼女と芝の上で並ぶのは初めてだ。彼女の合図でスタートなんてできる気がしないのであたしの合図でスタートできるのはありがたい。
「位置について」
構えるとどくり、どくり。胸の奥が、騒ぎ立てる。走れ、走れ、速く、前へ、前へと。
「よーい、ドン!」
前へ1歩踏み出す。芝を蹴るように、前へと。思ったより、軽い。流石にトレーニングを重ねている彼女より速さは出ない。それでもあたしの脚は前へと進むことを諦めない。まだ、まだ出せる。脚がそう言ってる気がした。先行策を得意とする彼女のあとを追うようにとはいえ、1600を走り切ってしまった。息は少し上がっているが、まだ余裕がある気がする。速さが足りない。スタミナはある。それが速さを出せた時も足りるかわからない。
「思ったてたより、走れているな」
「ええ、自分でも少し驚いてるわ」
「1度アンタひとりで今の距離走ってみろ」
「わ、わかったわ」
「全速力でな」
70二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:37:25
彼女は三脚イスの上にあるあたしのトートバッグからストップウォッチを取り出した。速さも計るようだ。先程と同じ位置に戻り、手を振り合図を送る。彼女が腕を上げたので構える。振り下ろされた彼女の腕と共に脚を前に出す。この脚は思っていたよりもずっと軽い。交互に、速く脚を動かす。コーナーも大きくならないように気をつけながら丁寧に位置取りをする。
―――走るって楽しいでしょう。
―――あなたはもっと速くなれますよ、だって彼女と私たちがいるもの。
―――本能の赴くままに。走りたいと願えば願うほど、速く。
速く、もっと速く。最後の直線を出せる限りを振り絞った。彼女のもとへ早く行きたくて。
「はぁ…っ……」
走りきった。ただ、さっきよりもずっと苦しい。スタミナが足りていない。もっと付けなくては。少し脚が笑っているせいか上手くバランスが。
「おっと、流石に初めてはキツかったか?」
「はぁっ…慣れてやるわよっ」
倒れそうになったあたしを彼女は抱き支えた。
「最初から逃げていた方が良いんじゃねぇか?」
「何言って…」
「アンタの性格からして差し切るなんてのは途中掛かってできるとも思わねぇ」
「どういう意味よ、それ」
「そういうとこだ。それなりにスピードが出ているからスタミナを付けて全速力で最初から最後まで1着で有り続けろ。逃げや大逃げだな」
逃げは派手で華があるぜと彼女は笑みを浮かべた。自分は先行策がメインだろうに。
71二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:37:41
シリウスとトレーニングを重ねる時間が日毎に増していた。トレーナーとして付き合うだけではなく、あたし自身もトレーニングをすることが増えていた。スタミナがついてきたのか初めて全速力で走った時のようなキツさを感じることがなくなっていた。スピードも出るようになり、走れる距離が伸びていった。元々水泳をやっていたこともあり、運動することに抵抗がなかったのが大きいだろう。彼女に逃げが合っていると言われたときに自身が水泳の際に常に全速力で泳いでいたことを思い出した。競技を行ううえで、あたしはそういうタイプだと。あたしの『走りたい』という感情は冷めることは無かった。そして―――。
「レースに出たいと言ったのか?」
「そうよ」
あたしをレースへ駆り立てた。ウマ娘化したトレーナーのなかには実際にレースに出走し、結果を収めている者もいる。おそらく手続きをしっかりすれば、あたしにも出走できると思った。やるからには結果を残したいが先天性と後天性ではそれなりに差があるだろう。楽なことだとは思っていない。それでもこの感情は、『走りたい』とそれを欲していた。
「走り始めて、脚に違和感を覚えることは無かったわ。問題なく出走できると思ったのよ、それに」
「なんだ?」
「もっと走りたい…シリウスとの併走に飽きたとかじゃないわよ。この身体でいる間はずっとしていたいくらいだわ」
「そんなモン言われなくてもわかってる」
トレーナーをしながらトウィンクルシリーズに出走しようと言うのだ。担当である彼女の同意は必要不可欠だ。単純に走りたい、だけなら簡単だがレースに出たいとなると話は別だ。あたし自身も色々なレースを見てきた。必ずしも全員が怪我なく、とは限らない。レースを終えた後に怪我がわかることもあれば、レースを中断せざるを得ない状況になってしまうこともある。あたしの身体が今のものになった当初を考慮すれば彼女がすぐに返事ができるとは思っていない。
「ひとつだけ条件がある」
「条件?」
「そうだ。アンタが少しでも、ほんの些細なことでも違和感を脚に覚えたらそのレースには出るな」
「それを飲むなら、良いの?」
「私は走りたいと言ってるウマ娘を止めるなんて、できねぇからな」
「ありがとう、シリウス」
あたしのトゥインクルシリーズの出走が決まった。
72二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:38:05
あたしの出走が決まった翌日。諸々の相談も兼ねて、シリウスと別れたあとにとあるトレーナーの元へ訪れた。
―――コンコン。
「失礼します」
「あれ、リウトレ。どうしたの?」
「ども…あの相談があって、今時間大丈夫ですか?」
弱褐色のポニーテールを揺らしたウマ娘。サイレンススズカの担当トレーナーにしてトゥインクルシリーズに出走し、成績を収めた逃げウマ娘サイレンスアサヒそのヒトである。以前シリウスとの関係について相談したことがあり、交流がある先輩トレーナーのひとりである。『逃げ』について聞くならこのヒトが良い、そう判断した。
「いいけど、シリウスとのことなら…私じゃなくても」
「スズトレさん、今回はそっちじゃないんです」
そう、あたしがこのヒトの元へ訪れたのは―――。
「サイレンスアサヒさんに、『逃げ』について」
彼女の耳がぴくりと動く。
「お話を聞きに来たんです」
「いいよ、座って」
「ありがとうございます」
ソファーに座るように促されたので座ると、スズトレさんは隣りに座った。少しだけ神妙な面立ちであたしを見る。
「リウトレ、どうして私に『逃げ』について聞きに来たの?シリウスは先行策がメインだよね?」
「ええ、話すと長くなるのですが…」
あたしはスズトレさんに、あたしがトゥインクルシリーズに登録を考えていること、逃げで走ろうとしていることを話した。
「走ってるのは見かけていたけど、レースに出るなんてビックリ…」
「シリウス以外に話したのは実は初めてなので…この後理事長のもとで、話をして出走登録その後メイクデビューに向けてトレーニングの予定です」
「そっか、あの歩けなかったリウトレが…同じ逃げウマ娘として応援するね」
「ありがとうございます。それで……」
「もちろん、私の教えられる範囲で」
あたしはメモとペンを取り出して、得られるものはスポンジが如く吸収するようにスズトレさんの話を聞いた。実際にそういう走りをしているトレーナーというこの現象ならではの貴重な話を聞けた。これはあたしが逃げウマ娘としてレースに出る競技者としても、ひとりのトレーナーとしても、とても充実したものとなった。
「お時間、ありがとうございました」
「うん、こういう話なら相談に乗れるから私も嬉しいよ。頑張ってね」
「はい、失礼します」
スズトレさんのトレーナー室を出て理事長室へと向かった。
73二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:38:23
理事長に話を通して、承諾を得た。トゥインクルシリーズに出走するための書類を受け取り、自身のトレーナー室へと戻ってきた。
「あ、そうか…名前」
書類の記入欄で真っ先に目に入ったのが名前である。あたしの名前ではなく、ウマ娘としての名前。これから逃げウマ娘として出走するあたしの名前だ。決めていなかった。
「シリウス……」
シリウスとはギリシャ語で『焼き焦がすもの』『光り輝くもの』という意味だ。名は体を表すとはよく言ったものだと感じずにはいられない。そういった意味合いの言葉を使いたい。走っている時も彼女を感じられたらいい。何か、いい言葉はないだろうか。頭の中でそういった言葉を探す。日本語、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語。知っている限りを思い出していく。
「シュトラール…」
ドイツ語で『輝く』という意味だ。『光線』という意味もあるが、語感で選ぶならこれだろう。あとはシリウスに相談してみても良いかもしれない。一瞬でも『シンボリ』を考えた。シリウスと同じなのは良いと思ったが、あのルドルフと同じ音は背負いたくない。そう思った。時計を見ると、そろそろここに来る時間だ。
「昼行くぞ」
「ええ」
彼女はいつものようにドアをノックもせず、自分の部屋のように入ってくる。いい加減慣れたものだ。カフェテリアへ向かう道中、あたしは登録名について考えていた。
「ねぇ、シリウス」
「なんだ?」
「登録名なんだけど……」
「ああ、アンタの名前そのままって訳にもいかねぇか」
カフェテリアでランチを食べながら、あたしはシリウスに登録名について話した。
「その、ギリシャ語『シリウス』の光り輝くものにちなんでドイツ語『シュトラール』、輝くというのまでは考えているわ」
「へぇ…私にちなんだ名前を」
「ニヤニヤしないで。良いでしょ、別に」
「いいと思うぜ、アンタが私のものだって感じられる」
ニヤニヤしたままあたしを見る彼女を横目にランチを食べていく。素直になってあげたところで彼女のスタンスは変わらないのである。
74二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:38:46
「『うさぎ』はドイツ語でなんだ?」
「うさぎはいやよ」
「どうせならその見た目も取り入れていけ、上等だろ?ウマ娘だらけのターフをうさぎ娘が駆けるんだ」
「誰が、うさぎよ誰が」
古今東西いろんなウマ娘がいるが、アンタみたいな白くそこまで長い耳はそういない。彼女はそう言ってランチを口にしていく。
「……『ハーゼ』とか『カニンヒェン』、シリウスが入れたいなら入れるわ」
顔が熱い。自分がどれだけ彼女に焼き焦がされてしまっているのか理解しているからだ。
「『ハーゼ』」
「そうね、『カニンヒェン』は『シュトラール』と繋げるには長過ぎるわ」
「『ハーゼシュトラール』で登録だな」
「ええ、そうするわ」
知ってか知らずか、彼女が『ハーゼ』を取った。耳が長い野うさぎを意味するドイツ語。あたしの登録名は思ったよりもずっと早く決まった。カフェテリアからトレーナー室に戻り、彼女と別れた。『ハーゼシュトラール』それがあたしのウマ娘としての名前になった。書類を記載し、理事長のもとへ提出し、正式に登録となった。メイクデビューに向けてあたしのトレーニングは更に苛烈になった。逃げであるならば、スピード。そしてそれを維持するための豊富なスタミナと効率の良い位置取り。スズトレさんから聞いた話を頭に入れつつ、あたしなりの逃げを探求した。ウイニングライブの為の歌とダンス。普段彼女に付き合っていたすべてを熟していった。ダンスはそれなりにやっていたこともあり、苦はなかった。
75二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:39:10
「2400までならスピードを維持できてるな」
「余裕よ。もともと体力はあったもの…2500はともかく、3000はまだ怪しいところだわ」
それに毎日の彼女とのジョギングや得意な水泳でのトレーニングでスタミナは著しいものとなった。維持でき、更に良くなっていくスピード。モチベーションは上がっていく一方だった。
「ティアラ路線で行くんだろ?それなら2400で十二分だ」
「そうだけど」
あたしはティアラ路線、つまり桜花賞やオークスといったマイル中距離をメインにしていこうと考えていた。もし出走が叶うなら有マ記念も視野に入れている。なので最低限2500まではスピードを維持したい。このスタミナを活かせるのは長距離の方だ。
「あとは体幹もな。アンタは小さいからな、最序盤の位置取りや終盤の時に追い込まれた際に押し負けるぜ」
「それに関しては小さいからこその策もあるわ」
小さいなら小さいなりに、小回りも利く。勿論、いい走りを維持する為に体幹は鍛えている。あたしのできることはすべてやっている。
「それは実際のレースが楽しみだな」
「ずっと1着で走り切ってみせるわ」
「そういや、それでトレーニングしてるが…」
「なによ」
「レース時に着るものの確認はしたのか?」
「これからよ」
昨晩あたしの家に一式が届いていたが、まだ確認はしていない。
「今日一緒に確認するか」
互いにトレーニングをした後、いつものようにジョギングしつつ帰宅した。
76二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 00:39:26
夕食と風呂を済ませたあたしたちは届いている段ボールを囲む。留めているテープをはがし、開封する。丁寧に包装された袋を開けていく。学園指定のジャージ、体操着など見慣れたものが新品であたしのサイズで用意されていた。なんだか不思議な感じだ。
「え…?」
「そんなんだと思った」
「なんでブルマ……」
ブルマが入っていた。てっきりハーフパンツだと思い込んでいたので困惑している。確かにブルマでGⅡ以下のレースを走るウマ娘もいるのは知っているが、自分がそのひとりになろうとは思いもしない。本来の姿ではないが、今のあたしはこの姿だ。恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「こんなこと……」
「今ここで履いてみろ」
「なんでよ!」
「私が今だけでも独り占めするために決まってんだろ」
「…嫌と言ったら?」
「寮に帰らない」
困った。それは困る。あまり遅い時間になっても良くない。彼女の言葉は全部が本気のそれだ。履くまで帰らないだろう。
「は、履けばいいんでしょ…履くからこっち見ないで」
「それでいい」
彼女があたしに背を向けたのを確認し、部屋着のパンツを脱ぎ、ブルマを履く。見せパンみたいだ。走っている時にずれてショーツが見えないか不安になる。でもそういったことは聞かないし、大丈夫ってことだろう。そう考えても恥ずかしいものは恥ずかしい。
「履いたわよ…なんで」
「今は私ひとりでもメイクデビューやGⅠじゃないレースはもっと大勢に見られるんだ、慣れとけ」
そう言いながら彼女が振り向く。見られるだけで恥ずかしい。これで走らないといけない。きまりはきまりだ。こちらをじっと見ている彼女。あたしは目線が泳ぐ。
「私がこうすんのと…」
「っ……」
「どっちが……って言うまでもなかったな」
「う、うるさい!……それに、赤の他人に見られるのと、シリウスにそういうことをされるのは恥ずかしさのベクトルが違うわ」
そう言うと彼女は満足そうに口角を上げた。
「にやにやしないで、履いたんだから寮に帰って。時間遅くなるでしょ……」
「帰るとするか」
彼女は寮へと帰った。あたしはブルマから部屋着のパンツに履き替え、明日の準備を済ませてから眠りについた。メイクデビューの日は刻々と近付いていた。
≫100二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 08:45:39
───マヤトレはM4を片手に隠れていた。
(くっそ…動けない。なんでファイ女とパチタマのガチ勢を相手しなきゃいけないんだ!)
何故こんな事になっているのか、ざっくりと言えばトレーナー達でサバゲーをしようとなった際にあれよあれよと話が進み、何故かマヤトレがファイ女パチタマを相手した2vs10のチーム戦をすることになったのだ。
(10人がかりで潰しにいったらもう半分以上削られて各個撃破されかかってるとか嘘だろぉ…)
ゲームを始めてすぐに50mHSで三人が抜かれ、包囲網をしいたものの三人追加でやられた挙げ句包囲を抜けられるという始末。
(つかなんでボルトアクションと拳銃とかいう浪漫枠であんだけ強いんだよ!バグか!?)
『モシンナガン…久々に触れたがスコープなしとは中々だな。アイアンサイトの見づらさとボルトの硬さもそっくりだ。』
『お、P220。懐かしいグリップの握り心地、自衛隊で撃ってた頃を思い出すわ。じゃあ俺これだけでいいや』
…ボルトアクションでフルオートじみた速射やハンドガンで50mHS決めた奴らの選んだ時の反応である。控えめに言って狂っていた。
マヤトレはそっと片眼で障害物越しに覗く。その先にはハンドサインのみで完璧な連携を見せるパチタマファイ女。
味方がいるであろう小屋の扉の前で止まるとファイ女はハンドサインを出し、パチタマが周辺警戒に入る。ファイ女の指でのカウントがゼロになった瞬間、扉を蹴り開けて突入していく。
乾いた発砲音一発と味方の断末魔だけが聞こえて静かになった。
(どうする…この調子じゃ遠からず『掃除』されるぞ。でも迂闊に顔を出せばさっきの包囲よろしく抜かれる…)
マヤトレは静かに歩いて動こうとする。一歩目を踏み出した途端、二人の耳と顔がぐりんとこちらを向く。
(今のでバレるのかよ!やばいすぐに来る、しかもロシア語で会話されると聞き取れてもわからん!)
102二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 08:46:13
『9時方向で足音。あの障害物あたり。ゲーム前のミーティングで簡単にロシア語を教えてくれて助かるファイ女。』
『気にするな、盗聴対策だ。詰めるぞパチタマ。』
そんなロシア語での声を背中に音が出るのは覚悟で走るマヤトレ。無線機でチームメイトに連絡を入れて合流する
《マヤトレだ!居場所がバレた、移動してそっちに向かう!これ以上は無理だし賭けに出るぞ!》
《了解!マヤトレも背中から抜かれるなよ!》
学園の備品である無線機を切り、成人男性の脚力で走る。後ろからはゆっくりと二人が詰めてきていた。
「良かった生きてたかマヤトレ!」
「ハァ…ハァ…なんとかな…」
息も絶え絶えに味方のモブトレ達と合流する。後ろから探しに来てる以上時間もないので三人での即席作戦会議を行う。
「どうする?包囲は出来ないし撃ち合えば間違いなくやられるぞマヤトレ。もう詰みじゃないか…?」
「…一つだけ、至近距離で二人がかりでタマトレを抑えてファイトレを一人で倒すという作戦だ。一人で倒す役は…俺がいく」
「マヤトレ…お前…」
「こうなりゃヤケだ、長物抱えてる今なら自慢の格闘も難しいだろうし拳銃のある俺の方が優位なはずだ。」
M4を置きM9拳銃を片手にとったマヤトレに、同じくモブトレ達も拳銃を片手に敬礼。頷いた三人は配置についた。
寄ってくる二人。その顔はいつもなら見ることのない本気の冷たい顔。タイミングを見計らったマヤトレの
《ゴーゴーゴー!》
タマトレをモブ二人が抑えてくれてると信じてファイ女に突っ込むマヤトレ。なんとか懐に入りこんだ瞬間
103二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 08:46:29
(まず…!)
モシンを片手持ちしたファイ女に腕を掴まれる。そのまま投げられて撃たれると思った時、マヤトレの頭に響くマヤノとそのパパの声。マヤノがよく分かったという第六感のようなものがマヤトレにも響き、その直感のままに体を動かす。
ファイ女を逆に投げるマヤトレ。地面に叩きつけられるタイミングで撃てば確実にやれる…はずだった。
「えっ…」
ホルスターから抜いた拳銃がないと思った瞬間、視界が反転して地面に叩きつけられる。頭に向けられる拳銃。
「私をその程度でやれると思ったか?だが…先程の投げは見事だったよ。いいセンスだ。」
パンッ!
最後に残っていたマヤトレが頭を撃たれたことでチームは全滅、パチタマファイ女側の勝利となった。
───控えのテントでやられたモブとマヤトレがダウンする中、パチタマとファイ女がやってくると
「久々の緊張感を味わえたな、楽しかった。」
「という訳で特製ドリンクの差し入れだ、さあ飲め飲め!」
「ヤッフー!」
「これだけでも頑張った価値があるぜ!」
チョロいモブトレ達を尻目にマヤトレも受け取ると飲み干す。喉の乾いた体にはとても美味しい。
今回のサバゲーを振り返ったマヤトレは
「うん…やっぱつれぇわ…」
とこぼしたのであった。
長文失礼しました
筆がめちゃくちゃサクサク進むサバゲーネタ。私の趣味(ミリオタ)と合致してるからなんだろうなと予測してたり。
マヤトレにも仲間はいるよ!頑張れ!でも勝てないのはまあうん。でもファイ女を一度投げて一矢は報いてます。
≫125二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 11:58:58
「きのこには種類によって毒の有無があるというのは最早誰しもが知っている前提というのはわかってるねトレーナー君」
「それわかってるよタキオン。小さい頃母さんに生えてるきのこは食べちゃダメとか言われてたなぁ」
「そうだね。きのこ狩りは秋の行楽として有名だけど、毒の有無が判明するまでは基本的にきのこや植物は食べない方が懸命だ。それで……」
「うん…」
イヤッフー!ハッハーメカー!マンマミーアメカー!!
「さっきから飛び跳ねて大きくなったり小さくなったりしてるメカ邪龍はなんだい?というかメカ邪龍なんてどこから見つけてきたんだい?」
「実はゴルトレさんたちがきのこ狩りにいって採ってきたはいいものの「種類がわからないからタキオンに見せてくれ」と預かったきのこを、これまたフラトレから預かったメカ邪龍が食べちゃって…」
「それでこうなった、と。とりあえずゴルトレ君たちには毒があったと言うことにして、どうやって元に戻そうか」
「…色々お手伝いするから頑張って!」
「だろうね。頑張ることにするよ…」
クモラセルメカー!ピョンピョン
2回も送信ミスして申し訳ありません…
腹を切ってお詫び申し上げます
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part693【TSトレ】
≫69二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:16:37
「…あー、どんな状況だ?」
「許さないでくれ…俺は…本当にどうしようもない…」
「俺が悪いんだよ…時代や環境のせいじゃない…もう…嫌なんだ自分が…」
「ああマヤトレ来てくれたんだ。えっと…今モブトレ二人が自分で石抱してるのは…」
──少し前
「んほぉおおおお」
「あはははは!すごい顔してる!!」
「お前トレーナーとして恥ずかしくないのかー?俺が手本を…おほおおおぉ」
「ぐっ…んふふ…なんか変なクスリでもやってるみてぇだな!」
「ボノトレ達何やってんの?楽しそう」
「ああテイトレー。今これで遊んでて」
「頭ゾクゾクするやつ…メタルシャワーってやつよ」
「あーなんか聞いた事あるなぁ…言うほど効くのか?嘘くさいけど…」
「百聞は一見にしかず!くらえぃテイトレ!」
「ひいっ!!うあーなんだこれ!のあー!」
「はっはっは!ウマ娘にも効くんだなこれ」
「うあー…あ、うっ」
「…モブトレ?そのへんに…」
「ほれほれほれほれ!お前も変な顔を…」
「ひ、う…んっ…ふ…ぁん…」
「…」
「っんく…抜かれ、る時にひ、引っかかってぇ…」
「…」
70二次元好きの匿名さん22/02/25(金) 23:16:51
──今に至る
「なるほど?それで今テイトレが頬赤らめて瞳潤わせてぽーっとしてると」
「気が付いたら二人が石抱してライナーになってて…」
「…お前ら正直に言え。テイトレを見てどう思った?」
「むらだっちしました…!」
「えちえちファイヤーしました…!」
「正直でよろしい。ゲンコツ一発で許してやるから…」
「もっと言うと…!テイトレみたいに男口調の奴が溶けたように声出してるのに女を感じて性癖に刺さった…!」
「なんなら今のテイトレがちょっと催眠モノみたいで今なら何言っても聞いてくれそうで…!ぴょいしたいって言ったら聞いてくれそうじゃないか!?」
「気持ち悪っ…」
「うーん…じゃやっぱ殺すしかねーな」
「なんで!正直になれっていうから!」
「度があるんだよなぁ…よく考えてみろよ?今の発言をテイトレが素面で聞いてたとするだろ?」
「はい」
「間違いなく気持ち悪がられるぞ?そこのマヤトレみたいな顔で見られるんだぞ?嫌だろう?」
「…うん…それは…」
「だろ?だからこういうのはこれっきりに…」
「いいですね、えぇ」
「いやむしろ好きだな…蔑んだ目で見てもらえるんだろ?汚い物を見る目で…あの誰にも優しいテイトレが…!!ふひっ!」
「もしかして同じ手段を用いれば他の奴等にも!?あの母のように優しいキタトレやなんだかんだ面倒見てくれるフクトレ達にも蔑んだ目で!?」
「俺はロブトレやブルトレ辺りに見て欲しいなぁ!なんなら踏みつけられながら…!」
「うん…じゃあボノトレ悪いけどテイトレ連れてどっか行って貰って…うん…執行部が来る前に動けない程度にしとくから…あー一応警備の人も呼んでおいてくれ…」
この後、執行部から隠れて創作活動に勤しむ包帯ぐるぐる巻きの者が二人増えた。
うまぴょいうまぴょい。
≫136二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:16:59
ハーゼシュトラール リウif
🐰3
あれからトレーニングを重ね、あたしはウマ娘『ハーゼシュトラール』として形になっていた。
「ゼッケンこれしかサイズないの?」
「それしかねぇんだろ、伸縮性もあるから大丈夫だ」
メイクデビュー当日。控室でゼッケンをつけていたが、サイズがギリギリである。ただでさえ大きい胸が大きくなったので仕方ないと言えば仕方ない。確かに伸びるには伸びるが、悲鳴をあげている気がした。ブルマはトレーニング時やジョギング中に履くようにして無理矢理慣らした。
「それより、脚は大丈夫なのか?」
「ええ、問題ないわ」
メイクデビューはフルゲート9人、1600ⅿ。8枠9番だ。大外を回ることになるが、1600mの大外でへばるようなスタミナをしていないので邪魔されることなく走れるだろう。あたしが当初歩けなかったことはこの時代故に簡単に広まっている為、9番人気と誰も期待していなかった。当然だろう、だからこそ。あたしはやる気に満ち溢れていた。
「8枠9番はこの子、ハーゼシュトラールです!」
パドックでステップを踏みながら、ジャージを取る。あたしの脚は『走りたがっている』と言わんばかりだ。
「心配されていた脚ですが、問題なさそうですね。芝の上をしっかりと走り切って欲しいですね」
「このダンスは以前あった毎日王冠を思い出しますね」
冷静を保ちなさい、あたし。今はあたしのレース。あの時は関係ない。今はあたしの走りを見せることに集中させる。ジャージを拾い、パドックから下がり、少し暗い本バ場への道を歩く。本バ場が広がっているであろう光の手前に彼女がいた。
「シリウス?」
「パドックでなんであんな事をした」
「勝手に脚が動いただけよ」
「私と同じステップを踏んだのにか?」
「そうよ、にやにやしないで」
なぜか、脚が動いた。無意識なのか、まだあたしの中に彼女たちがいるのか。この脚があたしの記憶を辿り、シリウスが毎日王冠の時に踏んだステップを採用したのか。あたしがそうしたくてそうしたのか、なにひとつとしてわからなかった。
「脚に問題ないなら、それでいい。頑張れよ」
「当然よ、あたしの走り見てるといいわ」
光の向こう側へと行けば、生い茂るターフが広がる。練習用じゃない、レース用のターフを踏みしめる。脚が嬉しそうにするのを感じた。
137二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:17:13
「出走ウマ娘、ゲートイン完了しました」
ゲートの中は狭い。早く走りたい、武者震いのような感覚が脚にある。落ち着いて、ゲートが開いた瞬間前へ進もう。そう自分に言い聞かせる。誰もいない前をひたすら走ればいい。誰の後ろも走らない。そういう景色を見ていればいい。
―――ガシャコン。
開くと同時にあたしの脚は前へ出た。
「一斉に綺麗なスタートを切りました。先行争いは…おおっと、9番ハーゼシュトラールいきなりフルスロットルかー!」
「先行策と予想される声も多かったようですが、逃げのようですね」
バ群に飲まれる前にそのまま外を回りあたしは先頭へ出た。先頭を維持しつつ内を回る。誰にも遮られることがなくあたる風が気持ち良い。前へ前へと進もうとする脚がとても軽い。コーナーも練習通り綺麗に回れる。そろそろ先行や後方待機してる子たちが来そうだ。それでも誰もあたしに追い付かない。競泳の時と同じ。誰もあたしに追い付かない。楽しい、楽しいわ。
「最後の直線!ハーゼシュトラール、それはもう脱兎のごとく、誰にも捕まらせない!!」
もっと速く、前へ、誰よりも速く。誰よりも。
「伸びる!伸びる!誰にも捕まらず、ゴールイン!」
「素晴らしい逃げっぷりでした」
1600はまだスタミナ面で余裕がある。ゆっくりと呼吸をし、整える。出走者全員がゴールするまであたしはターフの上を離れなかった。
「ああっ…うう……」
大粒の涙が頬をつたう。嗚咽が止まらない。どうして、自分でもわからなかった。声が出る、幼子のように大声を上げながら、涙を止められずにいる。
「どうしたのでしょうか…?」
「メイクデビューでここまで泣いてしまう子は珍しいですね」
「ああああああ……」
涙で潤んだ視界に彼女が映る。そのままあたしに駆け寄り、抱き締められた。
「大丈夫か?」
「シリウ、ス……」
「次のレースもある。歩けるなら控室行くぞ」
138二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:17:48
あたしは頷き、彼女に支えられながらターフを去り、控室に戻ってきた。椅子に座り、気持ちを落ち着かせようとするが、涙は変わらず流れ続けている。確かにこの身体になった当初はまともに歩くことも出来なかった。だからこんなにも走れるなんて、感動はしていた。こんなに泣いてしまうくらいではない、はず。
「落ち着け、ゆっくり深呼吸しろ」
彼女の胸の中でゆっくりと言われた通りに深呼吸をする。優しく頭を撫でられる。少しずつ、流れる涙が小さくなり止まった。眼が真っ赤になっているだろう。
「ありがと……シリウス」
「どうした?人前であんなに子供みたいに泣いて、アンタらしくもない」
「あたし自身もわからないのよ…急に涙と声が出て、あたしなのにあたしじゃないみたいで」
「今度からはあの道に控えるようにするから、泣きそうになったらそこまで来い」
濡れた頬を彼女の指が拭う。あの時を思い出す。あたしたちが海外遠征から帰った後のあの日。あたしが初めて彼女の前で泣いた日。あの時も彼女はあたしの涙をこうして拭ってくれた。あたしは何も言わず、頷いた。
「こんなに眼を赤くして、ほんとにうさぎになっちまったか?」
「うさぎって言うな!……今は『ハーゼ』よ」
「ハッ!違いねぇ、アンタは私の大事なトレーナーでウマ娘『ハーゼシュトラール』だ」
彼女はニッと笑みを浮かべ、あたしの太腿にそっと触れた。
「ひゃぁっ…何すん……シリウス?」
「脚は大丈夫そうだな」
「ええ、それよりも」
「なんだ?」
「触り方がやらしいわよ」
彼女の指がオーバーニーソックスに包まれている脚やブルマとオーバーニーソックスの間の肌をなぞる度に肩が震える。耳に触れられた時のあの感覚だ。このまま彼女に触られ続けるのは良くない。
「私はアンタが心配なだけだぜ?」
「わかってるわよ、でも大丈夫ってわかったでしょ」
在学中の彼女とそういうコトはしたくない。そういう気分にさせないで欲しい。誤魔化すようにあたしは言葉を紡いだ。そう言うと彼女は脚から手を離し、あたしを抱き締めた。
「言い忘れていたな、メイクデビュー1着おめでとう」
「ええ、ありがとう。シリウス」
あたしの身体は、あたしの中にいたウマ娘3人のことも含めてわからないことだらけだ。あの涙も、この脚も。このあとレースがすべて終わり、あたしはウィニングライブをセンターとして、しっかりやりきった。
139二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:18:05
「次のレースはアルテミスステークスにするわ」
「順当にいけばそうだろうな」
メイクデビューの翌日、自宅で朝食の準備をしながらのミーティングである。アルテミスステークスからの阪神ジュベナイルフィリーズ、そのままうまくいけば桜花賞とオークスという流れだ。メイクデビューのように上手くいくとは限らない。レースに『絶対』はない。
「いつもより派手な朝食だな」
「そんなつもりは……」
朝食を見ながら彼女がそう言うので、あたしは用意した朝食を見て口が開いた。いつもよりも派手に飾り切りされた人参はじめ野菜の数々。
「素直に嬉しかったんだろ?」
「ええ、とても嬉しかったわ」
「素直なことはいい。特にアンタは素直にならねぇからな」
「ひとこと余計よ」
あたしはいただきますと言い、彼女との朝食の時間を過ごした。荷物片手に通勤がてらのジョギングにも慣れたものだ。スタミナにかなり余力を感じる。トレーナー室に着けば汗を拭き取り、着替える。かなり健康的な生活をしている気がする。今日は特に荷物が多い日だ。
「そうだ、お礼しないと」
サイレンススズカ担当トレーナーことスズトレさんにお礼をする為の菓子折りである。『逃げ』に関して享受し、あたしなりの『逃げ』を見つけるきっかけになった。メイクデビューが上手くいったのも彼女の力添えあってだ。立ち上がり、菓子折りを片手に彼女の元へ向かった。
140二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 00:18:16
―――コンコン。
「失礼します」
「おはよう、リウトレ」
「おはようございます」
「見てたよ、良い逃げっぷりだったね」
「ありがとうございます」
弱褐色のポニーテールを揺らしながらこちらに駆け寄る。
「それで今日はどうしたの?」
「お礼を、と思って…」
スズトレさんは甘い物が好きとエアグルーヴ担当トレーナーこと、グルトレ先輩から話を聞いていた。なのでメイクデビュー翌日にお礼をする為にと予めお菓子を用意した。
「え、そんないいのに…」
「いえ、受け取ってください。ここのお菓子美味しいんで」
「いいの?」
「もちろんです、お礼も兼ねての品ですし」
「それなら、頂こうかな。ありがとう」
「お礼を言うのはあたしの方なので、本当にありがとうございます」
彼女に紙袋を手渡す。
「次は決めているの?」
「そうですね、アルテミスステークスを考えてます」
「ティアラ路線だったね。次も頑張って」
「はい、ありがとうございます。お時間取らせてすみません」
「いいよ、気にしないで」
失礼しますと頭を下げ、スズトレさんのトレーナー室をあとにする。あたしの『逃げ』をもっと極めたい。今日のシリウスのトレーニング時もしっかり走ろう。そう思いながら、トレーナー室へと戻った。
「どうして、あの時涙が。どうして、あの時ステップを」
無意識的なものか、それともあたしの中にいたウマ娘たちがそうさせているのか。彼女たちもウマ娘だ。あたしの身体を通して走りたがっていたのであれば、彼女たちの癖が出てしまうのだろう。人間だったトレーナーたちが次々とウマ娘化してしまうんだ、何があっても不思議じゃないとそう解釈することにした。気持ちを切り替えてトレーナーとしての業務を始めた。
≫150二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 01:06:02
雲外蒼天
「…その…よろしく、お願いします…」
「…」
そんなぎこちないやり取りからのスタートだった。少女の眼は警戒心の塊で、ちゃんと言葉を交わすようになるまで、どれだけの時間がかかっただろうか。
でもそれは至極真っ当なことで。突然迎え入れられたどこの誰とも分からない、しかも年齢の離れた異性ともなれば当然の反応だった。それが察せないほど俺も阿呆ではなかったし、そもそも師匠に頼まれたこととはいえ、自分のことばかり考えていた当時の俺にとっては、少女のことを気にかけようなんて気持ちはほとんど無いに等しかった。
ただ、今よりずっと荒れていた少女の眼は。
昔からずっと変わることなく力強く、鋭くて。
いつか至るべき極致を見ているような気がした。
合図と同時に大地を蹴る。体を前に。意思を前に。ただ前だけを目指し疾駆する。
見慣れた場所。何度も繰り返した勝負。相手はほとんどを知り尽くしている担当。
それでも今日この時は、いつもとは少し違った。
どうしても、縮まらない距離がある。
過去の経験から出遅れることはよくあっても、並べないなんてことは一度もなかった。
枷がかかっているのだ。見えない鎖が未だ絡み付いたまま、力の発揮を阻害している。
迷いの有無が、距離の差となって現れている。
それが意味することは明確だ。
この距離が無くなり、俺が再びあの娘に並んだ時。
俺はまた、スタートに立てる。
151二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 01:07:08
私は不器用だ。
言葉を巧みに扱えるわけでもなく。他人の感情の機微に敏いわけでもない。
ただ己が鍛練と研鑽を積むことばかり。私の日常は、そのほとんどが修行と隣り合わせ。
だからあの人が、その迷いを話してくれた時も。
打ち明けてくれたことがとても嬉しかったはずなのに。何か力になりたいと思ったのに。
何を言うべきか分からなかった。どうしていいか分からなかった。
そんな不器用な私なりの答えがこれだ。私は、いや、私たちはいつもこうやって進んできた。だからきっと伝わるはず。こんな方法でしか私は語れない。示せない。
人間だった頃も、ウマ娘に変わってしまった後も。
いつだって共に私たちは走ってきたのだ。
だから『走り』はどんな言葉よりも雄弁に語るはず。道を示すはず。
あとは貴方次第です、トレーナー。
それがどんな答えであろうとも、私は全力で、それに応えますから。
152二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 01:08:29
『あれだけ忠告したというのに、まだそれを続けるつもりか』
どこからともなく声が聞こえる。
『その在り方はいずれ破綻する。誰も望んでいない。お前はウマ娘ではなくトレーナーだ。ならばその責務を第一に果たせ。今のお前はトレーナーではない』
道を閉ざそうとする声。意思を縛ろうとする声。惑いに誘う声。
夢の中ではすぐに答えを出せなかった。
間違っているのは俺なんじゃないかと、信じてしまいそうになった。
でも言うべきことなんて初めから一つしかなかったのだ。だから俺は心の中で強く思う。
―俺を否定するのは、お前らじゃない。
―俺が聞くべきなのは、お前らみたいな亡霊の言葉じゃないんだ。俺がどうしようもなく間違った時、ぶん殴ってでも止めてくれる仲間が、担当がここにはいる。だからそれまでは、俺はこの自分の好きという気持ちに嘘をつきたくない。
『そんな答えで許されると思うのか?』
―答えとか、許すとか、そんなん知るかよ。答えなんてあるわけがないし、ましてや決めるのはお前たちじゃない。それでも、どうしても否定したいなら俺がどん底に落ちてからにしろ。ざまあみろ、やっぱりお前は間違ってたんだって、その時になったらいくらでも俺を嘲笑え。
だからもう今は、その鬱陶しい声を響かせるな。
あの娘、ヤエノムテキの隣で、共に歩む。
信じているから。もう俺は、迷わない。
「いざ」
「尋常に」
「「勝負ッ!」」
『やはり、貴方は見ていて飽きませんね』
…あんたもか、何も言うことはないから帰ってくれ
『贈り物があるんです。いい覚悟を見せてもらいましたので』
…好きにしてくれ
『使うも使わないも貴方次第。今の貴方なら大丈夫と判断しました。どうか、悔いのない未来を』
153二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 01:10:08
「はぁ…はぁ…。なぁ、ヤエ」
「…なんですか」
「…やっぱり、気持ちいいな。走るのって。楽しいな。競い合う仲間がいるって」
「…そう、ですね。確かにこの景色は…一人では見ることのできないものだと、思います」
「ははっ、そうだよな…。…よし、決めた」
「?」
「これからのこと。驚かないで、聞いてほしい」
運命は大きく変わる。
あり得るはずのなかった存在によって。
『つっ、強いッ!他のウマ娘を全く寄せ付けなかった!突如として現れた新星!なぜこれほどまでの力を持ったウマ娘がノーマークだったのか!?5番、メイクデビューを8バ身差の圧倒的勝利で飾りましたッ!』
全てを賭けてでも、共に見たい景色がある。
その輝きはあまりにも圧倒的で。
そして、短く、儚い、刹那の幻。
続く
≫166ナトリちゃん鍛える(1/2)22/02/26(土) 08:28:13
皆さんこんにちは! トレセン学園中等部、ナトリことナリタトリエステです!
お久しぶり、或いは初めましてでしょうか。いずれにせよ、私は今ちょっと追い込まれた状況にあります。
何故か、と言いますと……
「うんうん☆ みんないい感じに疲れてきてるね! あと少しでマーベラス☆ な世界が見えそうかな?」
「くれぐれも、無理はしないようにね! 何かあればすぐに言ってね。僕、張り切ってお世話するから!」
マベトレさんとクリトレ(小)さん、2人のちっちゃい(?)トレーナーによるグループトレーニング中だからです。
トレーナー側は担当以外のデータ収集や多様なウマ娘への指導経験ができ、
私のような担当のいないウマ娘は第一線で活躍するトレーナーの指示を仰げる、まさにwin-win!
少人数の予約制で、普段のトレーニングや適性、体調などからメニューを組んで貰えるから有難い!
……ということで級友と参加したのですが。これがまあ中々キツイ。
「あと10回! ガンバレ★ ガンバレ★ ……よーしオッケー! イイ感じだよー☆」
少人数ゆえサボリは利かず、きっちり調整されたメニューが襲い掛かってきます。
「3……2……1……休憩終了! それじゃ、次のトレーニングいってみよっか!」
いつもは甘やかしてくれるクリトレ(小)さんも、今日ばかりは容赦なし。
こんな調子じゃ、一緒に参加した級友はそろそろ限界かもしれません。
要領よくパパっと済ませ、隙を見て休むタイプの彼女のこと、今頃疲れが隠せなく……
「……ゼェ…………ゼェ………………ガハッ」
……なるどころか撃沈寸前、というかもうダメそうです。何とかメニューを達成できたのはガッツの為せる業かな。
「うん、メニュー完了だね。お疲れ様! 運んであげるからゆっくり休んでね」
「水分補給と、できればストレッチするといいよ! クールダウン、大事だからね☆」
167ナトリちゃん鍛える(2/2)22/02/26(土) 08:29:34
運ばれていく級友に心の中で敬礼しつつ、しかし当の私も限界が近くなってきました。
「……よし、と。ナトリちゃんもそろそろ終わりかな。あとちょっとだよ!」
ちょっと疲れで確認ができていませんでしたが、もう少しで終わりだと思えば気合も入──
「えー? もう少しいけると思うなー★ まあでも、これだけできれば十分かなー?」
──っ! こんなもんかな、という妥協案の提示……! マベトレさんのこの言葉、もしやこれは私への挑戦状!?
「うーん、メニューからみて、1セットなら追加してもオーバーワークにはならないけど……でもなぁ」
「まあ決めるのは本人だよ。どうしよっかナトリちゃん! ここで終わってもいいんだよー★」
クリトレ(小)さんの補足とマベトレさんの追撃……これが、私に火を点けました!
「ここで……っ! 終われません! 限界なんて超えて見せます! もう1セット、追加でお願いします!」
「おおっ☆ いいねいいね、それじゃもう1セット! 張り切っていってみよー☆」
「僕はクールダウンの準備しておくね。ナトリちゃん、ファイト!」
結果、私は限界を超えられましたし、級友も走りにキレが出たようです!
マベトレさんとクリトレ(小)さん、ありがとうございました!
「おはよーナトリ! やー、きつかったねー。あのトレーニング!」
「うん、おはよう。確かにキツかった……でも、なんだか前より成長できた気もするんだ」
「そりゃ勿論! あれだけやったんだし、ぜぇったいマーベラス☆ になったって!」
「だねぇ……ん? いま、マーベラス☆ って……」
……級友がちょっと、ほんのちょびっとだけ、マーベラスに染まっちゃったのは、まあヨシとしましょう。
多分なんの影響もないでしょうし、きっとすぐ元に戻るでしょうし。
なお数日後、級友は元通りになりました。
(了)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part694【TSトレ】
≫43二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 17:22:57
トレセンのパーティーへと参加する事になった私。
アイツと料理を見て回っているうちに会食の時間は過ぎてペアダンスの時間へとなってしまった。
「アンタは食べなくて良かったの?」
「ああ! タイシンが友達の所に行った時か、タイシンが食べる時に一緒に食べさせて貰うよ!」
「……ばっかじゃないの?」
あまり食べれない私に気を使ってくれたのだろう。
……普段はクソボケのくせに。
そんな事を思って少し綻ぶ顔を軽く振って元に戻す。
綻ぶ顔を元に戻してパーティー会場へと意識を戻せば、会場の中心では3組のペアのダンスが衆目を引いていた。
ブライアン副会長とブラトレの力強いダンス
グルーヴ副会長とグルトレの優美なダンス
ルドルフ会長とルドトレの完璧な社交ダンス
そして、あまりにも楽しそうに踊る彼女達に釣られる様に周囲の人達もダンスを踊り始める。
「アンタも踊るの?」
「いや、俺は正直言ってダンスは全然でな」
「……そんな気はしてた」
周りも踊りだしたから、私達も踊るのかと少し遠回しに聞いてみたら予想通りの言葉が返って来た。
……まあ、縁は無さそうだったからね。
「タイシンは俺を気にしないで友達と踊って来て良いぞ!」
「…………はぁ?」
それじゃあ二人で皆んなのダンスを眺めていようかと思った矢先、このクソボケは実にクソボケな事を言ってきたのだ。
44二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 17:23:11
「ほら! 手!」
「えっ、タイシン?」
「踊るよ!」
「いや、俺は踊れないからタイシンは友達と……」
「良いから!」
そう言って無理矢理クソボケの手を取って見様見真似のダンスを踊り始める。
正直言って私もダンスが出来るとは言えないから随分と不格好なダンスだっただろう。
それでも私と頑張って踊ろうとしてくれるアイツと踊るのは楽しくて。
「む、難しいな!」
「私もだけど、アンタのダンスもぎこちないね」
「だけど楽しいな!」
「…………うん」
さあ、不格好なダンスを二人で楽しく気が済むまで踊ろうか。
結構な大声でタイシンはタイトレをダンスに誘っていたが、周囲の人はいつものクソボケかと見て見ぬ振りをしていたらしい。
うまぴょいうまぴょい
可怪しい……ダンスでタ性壊する筈がタ性壊が入って無い……
あと、タイシンのエミュが怪しい(未所持)
了
≫188二次元好きの匿名さん22/02/26(土) 22:35:43
(ウキウキと作業に勤しむイクトレ)
「嬉しそうですね、トレーナーさん」
「鎚が振りやすいから。あと、遠くに手が届く」(イクノを撫でる)
「……成程。確かに、いい気分ですね」
「ところで下着ですが」
「はい」
「私のものではサイズが合わない点、スポブラでは支えきれない重量の観点から、こちらをお使いください」
(きちんとした下着)
「…………はい」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part695【TSトレ】
≫21提案した人ごめんなさい22/02/26(土) 22:56:38
「数多のウマ娘を(たぶん)導く救世主!奇跡の腕を持つ(自称)伝説的笹針師!その名も『パラ心沢 パラ美』よっ!! ワォ!ぱらし~ん☆」
「……頼むから帰ってくれ」
「まあまあまあまあ、自己紹介も済みましたしブスッと逝っときましょう!」
「いや、本当にお願いだから帰ってくれ、この後トレーナー会議有るんだよ……頼むから何もせずに帰ってくれ」
「ワォ!ぱらし〜ん!問答無用です!いでよパラ針!見つかれ秘孔!ブスッとね!!」
「ひでぶっ」
パラッと!大成功!おめでとう!
タマトレの胸は幼年期から究極体に進化した!
身長が完全体から究極体に進化した!
185-105-60-95になった
服は弾け飛んだ
タマトレは目の前が真っ暗になった……
≫72◇やってやれないことはない☆22/02/26(土) 23:58:37
「フュージョン……たしかある程度気の大きさ揃えたり身長が同じくらいじゃないといけなかったりで結構制限多いんじゃなかったかな?」
「でも悟空とベジータでゴジータってのがいるのはネイチャさんも知ってますよ」
「あぁそっか、あれぐらいの体格差ならアリなんだ」
「……ちなみにこれを仮にやるとして。トレーナーさん的にはその……変身ポーズ、恥ずかしくないですか?」
「か、隠れてやる分には……。見てるのはおなじポーズする合体相手だけだから、多分大丈夫かなって」
「人前でやれって言われたら?」
「……」
「ポタラ合体と人前でフュージョン選べって言われたらどっちにします?」
「さすがに一生合体は無理、だけど、うーーーーん……!」
フューーーージョン!!!
「おお、噂をすればフュージョン試してるタイキさんにタイキトレさん」
「あれぐらい思いきりよくやれば恥ずかしくないのかな……?」
ハァーーーーッ!!!
カッ!!!!!
『…………できたぁーーーーっ!!!?』ガーン!
「できるんだ……!?」
「自分達でもびっくりするんだ!? というかすごい! 二人の声が被って聞こえる!」
「音声をお聞かせできないのが残念です!」
『まぁ、ワタシらなら一発オーケー出ると思ってたけどネ!』
「あ、合体するとちょいとナルシスト入るんですね」
「というか最初から超サイヤ人3みたいな金髪ロングでカッコいい……けど」
『ほえーー。そういえばこういうバトルスーツっていうか民族衣装になるんだっけー? 実はよく知らなかったり』バインバイン
(*1)
そこから変身解除するまでの30分間、トレセン学園中を笑顔で駆け回る何者かがいたという。このことについてネイチャとネイトレは何も語らなかったとさ。
うまぴょいうまぴょい
≫77二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 00:07:13
ハーゼシュトラール リウif
🐰4
あたしの中にいたウマ娘は3人いた。白毛のウマ娘と鹿毛のウマ娘、もうひとりはあの時よく見えなかった。でもシルエットはウマ娘のそれだった。彼女たちのことを知ることは叶うのだろうか。
「アルテミスステークスは…1600かメイクデビューと同じだな」
「ええ、その次に出走を考えている阪神ジュベナイルフィリーズの前哨戦のようなものだわ」
前哨戦とは言っても、全力だ。手を抜いたりはしない。ジャージに着替え、グラウンドの上でシリウスと準備運動を済ませる。トレーニングは彼女の日程に合わせメニューを構築している。トレーナー業務とウマ娘『ハーゼシュトラール』の二足の草鞋を履いている。忙しい日々だが、とても充実している。トレーニングも彼女との時間も。
「今日は私と併走するんだろ?」
「ええ、もっと後ろから迫られることに慣れておきたいわ」
メイクデビューのように距離をあけて逃げ続けることが毎回できるとも限らない。レースに『絶対』はないのだから。
「距離は1600か?」
「そうね。アルテミスもジュベナイルも1600だからしっかり、1600の距離を経験しておきたいわ」
「いいぜ」
スタート位置に彼女と並ぶ。最近、併走する際は彼女の合図でスタートしている。ゲートの開くタイミングは自分で決められるものではないからだ。彼女の合図とともに脚を前に出す。全速力で前に出る。先行策の彼女は最後のコーナーで上がってくる。それに慣れたい。同じレーンから迫られるプレッシャーというのは競泳にはないものだ。スピードを競うことには慣れていても同じレーンには居ない。後ろを見るな、前を見て走れ。そう脚が言っている気がする。あたしの今出せるスピードで今はとにかく彼女と差をつけることだけを考えて走る。第1コーナーを迎え、彼女の蹄鉄の音が重く聞こえはじめ、そのまま最終コーナーに。ぞくりと彼女の存在を肌で感じる。経験の差を嫌なくらいに思い知らされる。
「抜かれても怯むんじゃねぇ!抜き返すくらいでいろ!」
「わかっ、て…いるわよ!!」
あたしを簡単に追い抜いた彼女は叫ぶ。脚はまだ諦めていない。まだ速くなれる、速くと。彼女に追いつきたい、抜き返したいと叫ぶ。身体に電流のような不思議な感覚が走る。踏み出す脚は今までよりもずっと軽く、ずっと強く芝を踏んだ。それでも、あたしは彼女に届くことはなかった。
78二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 00:07:35
「はぁ……はぁ……」
「今までで1番スピード出ていたな」
彼女はあたしの頭を雑に撫でながら、スポーツドリンクの入ったボトルを渡した。あたしはそのまま受け取り、口にする。運動後に必要なものだとわかっていても甘ったるい。
「ねぇ、シリウス」
「なんだ?」
「これあたしのボトルじゃないわよ」
「別に中身同じなら関係ねぇだろ」
「あー!もう……」
そういう問題ではない。いつも入れてある量よりも少なかった気がした。つまり、彼女はすでにこのボトルで飲んでいる。そういうことである。そっぽを向けば彼女は頬をむにむにといじってくる。たかだか間接キスでどうしてこんなに乱されなくてはならないのか。ここは芝の上だ。走ることにした。
「こんなことで真っ赤になるんだな」
「うっさい、もう1回よ!」
あの感覚を忘れないように、脚に刻みつけたい。今はまだ、彼女に追いつけなくともあたしは幾度もかみついた。
「ぐぬぬ……」
「1600とは言え、ちょっとやそっとトレーニングした程度のアンタに負けるようなら、レースで走った連中に示しがつかねぇだろ」
「それでもよ!やるからには勝ちたいわ」
「そのメンタルは評価してやる。それぐらい無いとやっていけねぇからな」
彼女に追いつけないまま今日のトレーニングは終わった。まだまだ課題は山積みである。今日のトレーニングを終え、いつものようにジョギングで帰宅。風呂に入るのだが。
79二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 00:07:47
「くっついてたらお風呂に入れないわ、離して」
彼女に抱き締められている為に、入れないのである。これでは服も脱げない。あたしのことで門限に関して大目に見て貰っているとはいえ、安全面を考えたらあまり遅い時間にしたくない。離す気はなさそうだ。久々にそうしてあげるべきなのかもしれない。あたしの羞恥心を犠牲に彼女の安心が得られるならそれでいい。
「し、シリウス」
「なんだ?お願いされても―――」
「あたし今日すっごく疲れて、もう夕食作る元気しかないわ。だから、その身勝手だけど」
あたしが本当に歩けなかったときのある種魔法である。最近は機会も減っていた。『頼る』こと、あたしの苦手なこと。ボトルのことも今のこのことも、彼女を少し寂しがらせてしまっていたのかもしれない。
「……一緒にお風呂入って、背中流して」
「狼に食われちまうかもしれねぇぞ」
「食われないわよ、ちゃんと待てができるもの」
あたしの言葉に呆れたのか、彼女の腕が緩んだのでそのまま服を脱ぐ。不慮の事故みたいなものだが、彼女には裸を見られている。散々無防備を晒しても食べようとしなかった狼が今更食べようとなんてする訳がない。信頼のもとでの言動である。なんだかんだそういうことに関しては良い子である。
「流石に洗顔は自分でするわよ、それにこの体勢はどうなのよ」
「問題ねぇだろ」
風呂場でぺたりと座るあたしは彼女の脚の中に、あたしの長い尾に彼女の尾が絡む。彼女の腕は胸下にあり、逃がす気がないようだ。そもそもあたしの家なので逃げるも何もない。気にせず、クレンジングオイルを手にしてメイクを落としてから洗顔を済ませる。
「髪、洗ってくれるんでしょ……さっきより近いわよ」
「良い香りがする…朝のあの香りはこれか」
そう言うと彼女はシャワーを手にし、あたしの頭にお湯をかけた。水を吸った長い耳が重たくなる。シャワーの湯が途切れたタイミングで反射的に瞑っていた眼を開けると、そのままシャンプーで髪を洗われる。
「あ、シリウス。耳は…ひゃぁんっ…」
「……」
忠告をする前に彼女に耳を触れられるとあたしの情けない声が風呂場に響き、彼女の手がぴたりと止まる。自分で触れる分には問題ないが、誰かに触れられるとそういう風になるらしい。最初に言っておくべきだったとあたしは後悔した。
80二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 00:07:59
「その、耳…すごく、弱くて……先に言うべき…シリウス?」
彼女の方へ身体ごと向くと、 あたしをいつもと違う眼の色で見ていた。彼女は時折こうなる気がする。あたしが想いを告げたあの時と同じ眼だ。
「聞いてる?」
「……ああ」
「耳、弱いけど……その、シリウスになら触られても良いから。続けて」
彼女に背を向け、そう言うと彼女は先程よりも少しぎこちない手つきであたしの髪や尾を洗っていく。彼女の指が耳や尾に触れる度に肩が震える。あたしのせいとは言え、空気がつらい。彼女がシャワーを手に取るので目を瞑る。泡を流されながら、この身体には色々と問題が多いとそう思う。歩けなかったこと、あたしの中にいた3人のウマ娘のこと、そしてこの耳などのあれそれ。このアンバランスな体型のこと。シャワーの湯が途切れたので閉じていた瞼をあけると、優しくトリートメントされる。
あたしをそのまま後ろから抱き寄せ、そのままシャワーに手をまた伸ばした。
「借りる」
「構わないわ」
彼女の体温を背中に感じながら、トリートメントまで終えるの膝を抱え、待つ。シャンプーの泡が身体にたれてはシャワーで流される。彼女はボディタオルにボディーソープをたらして泡立てる。
「もしかして、アンタ身体が弱いのか?」
「……多分、そうよ」
「そんな顔すんな、私はアンタが食われたいと直々に言うまで待っててやるよ」
「やっぱり待てがちゃんとできるじゃない」
あたしはのどまで来た言葉を飲み込み、彼女に向き合う。あたしは彼女のトレーナーなのだから、間違いをしてはいけない。『食べて良いわよ』なんて、彼女が社会人になるまでは言ってはいけない。良い子ねと頭を撫でようとするとそのまま手首を丁寧にとられ、ボディタオルが腕をなぞる。体幹を鍛えた甲斐があったなんて、こんなシチュエーションで思いたくなかった。体勢を維持したまま彼女に身体を洗われるが、重心になっていた膝が泡で滑り、彼女に抱き着いてしまう。
「あ、えと…これは」
「ゴチャゴチャうるせぇ、そのままでいろ」
抱き締め返され、そのまま背中を洗われた。そのあとも全身洗われ、シャワーで流された。
「もっと広々と浸かろうとは思わないの?」
「ひとりで入ってんならそうするが、今はアンタがいるからこれでいい」
それなりに大きさがあるのだが、彼女と密着して湯船に浸かっている。
81二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 00:08:12
「あたしのこと、通勤で抱きかかえられなくなって寂しかったのかしら?」
「寂しかったか、ああ…そうかもしれねぇな。抱えてないと、どっか遠くに行っちまうんじゃねぇか…なんて柄にもなく考えることがあった」
彼女の方へ向こうとすると、向くなと言わんばかりに首元に腕が回る。どうして、あたしには見させてくれないのだろうか。『頼る』はシリウスだってしていい。あたしだけのものじゃない。
「シリウス、あたし言ったわよね。『責任取ってもらうわよ』って」
「ああ、覚えている」
「最期まで責任取ってもらわないと困るのよ…それにあたし自身の責任もあるわ。だからあたしはシリウスが心配してるようなことにはならないわよ」
彼女を置いて遠くに、なんてできる訳がない。遠くに行くなら彼女を巻き込んで連れていく。あたし自身、あたしに対して彼女をそうさせたという責任がある。レースのことだけではなくて、この関係のこと。あたしが彼女をそうさせ、あたしは彼女のそれに応えた。どんなものごとにも責任は生じる。それが形のないものでも。
「2500m、我慢して。戻ってくるから」
「相変わらず有マ視野なんだな、アンタは」
自分でも不思議だった。有マ記念は確かGⅠレースでもダービーに匹敵する大レースを、と提案され開催されている。それでも、あたしが固執する理由はなかった。自分が走るとなると、あたしはあの3人に影響されているのだろうか。レース後に泣いてしまうのもあの3人の影響なのだろうか。
「そうね、そうかも……シリウス」
「なんだ?」
「のぼせそう…もうあがりたいわ」
少しだるさのような感覚がある。彼女に身体を委ねると、首に回っていた腕が離れる。脇の下を抱えられ、湯船から軽々とあげられた。シャワーで身体を流され、風呂場から出る。水を吸った髪や尾はタオルで拭き取られ、ドライヤーで乾かされた。その後夕食を済ませた彼女は寮へと帰った。
「あたしは、あたし」
ベッドの上で言い聞かせるように言葉を紡ぐ。あたしはシリウスシンボリの担当トレーナでウマ娘『ハーゼシュトラール』であり、あたしの中にいた3人の誰かでもない。愛用している抱き枕を手に眠りにつく。明日も頑張らねば、もうすぐアルテミスステークスが来る。
≫94二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 06:11:18
「はりきってこ〜!」
「「「「「お、お〜!」」」」」
「おー!」
───キタサンの掛け声とともに響くウマ娘達の合唱。先頭でペースメーカーをしていたブルボンも合わせる。
グループトレーニング、主に専属トレーナー達がトレーナーのいないウマ娘にトレーニングするそれ。
「ふむ…大丈夫そうね」
「私もそう思います」
…トレーニング風景を見守るキタトレとブルトレは、ブルトレが気になる点をメモしてキタトレがウマホに打ち込んでいた。
…本当は統一したかったのだが、ブルトレの電子機器との相性☓とキタトレの手書き適正Gによりあえなく断念することになった。
「皆から遅れないようにね!」
「はいぃ…!」
「───ちゃん、息をリズム良く。後そろそろ…」
「うん、良さそうね。…ブルボンちゃん、加速してちょうだい」
「ペースアップ、了解」
…このランニングトレーニングだが、ブルボンがペースメーカーとしてお手本になり、キタサンで内(ウマ娘)側から、ブルトレが外(トレーナー)側からアドバイスしてキタトレが全体の監督を行うという分業体制が確立していた。これが効率良くトレーニングできるのだ。
「すみません、後、どれくらいですか〜!?」
「…まだ行けるわね。ギアアップよ、次の週から速度を更に上げてブルボンちゃん。」
「まだまだいくよ〜!───さん!」
「ひぇぇ〜!」
冷静に追い込み指示を出すキタトレとキタサンの鼓舞を受けながら走るモブウマ娘達。先頭のブルボンはリズムを崩していない。
「遅れてますよ、もっとテンポ良く!…キタトレさん、彼女は僅かに右に傾いているように見えます。」
「あの子、そろそろ疲労が厳しいかしら」
ブルトレは的確にアドバイスを飛ばしながらキタトレに気になった点を伝え、キタトレは自分の視点と合わせて判断する。
95二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 06:11:48
ブルトレは的確にアドバイスを飛ばしながらキタトレに気になった点を伝え、キタトレは自分の視点と合わせて判断する。
「…でも、まだ追い込めるわね。全員の脚に不安はなさそうだしもっとよ。」
「わかりました」
…トレーナーもウマ娘もどちらもストイックな奴ら、その四人のメニューは必然的に限界まで追い込むソレであった。
トレーナー二人からのゴーサインに速度を上げて追い込むブルボン。キタサン以外の他の子たちも必死で食らいついていた。
───あれから少しして、全員がへとへとになるくらいまで走った後の休憩タイム。
「きゅぅ…」
「うあぁ〜…」
「皆、お疲れ様。よく頑張ったわ。今日はこれで終わり、チェックが終わったらじっくり英気を養ってちょうだい。」
「ということで差し入れです、箱から取っていてください。」
「ありがとうございますぅ…」
「やったよぉ〜」
ブルトレが箱から配った後、二人で彼女らの脚に触れたりして怪我や疲労を確認する。ついでに揉みほぐしておく。
ふにゃふにゃと横になったり、トレーナーの方へ倒れ込んだりする彼女等を尻目にキタサンとブルボンは
「はぁ…はぁ…まだまだ追い込まないとですねブルボンさん」
「私も、そう思います」
…同じ限界追い込み勢として仲良く倒れていた。そんな二人の元に寄ってくるトレーナー二人。タオルとドリンクを手に
「キタ、タオルよ」
「ブルボン、ドリンクです」
いい表情のキタトレブルトレに、キタサンもブルボンも笑顔で起き上がって受け取るのだった。
短文失礼しました
朝のグループトレーニングネタです。多人数管理に定評のあるキタトレ、ブルボンを鍛え上げたブルトレによる限界追い込み。
キタちゃんもコーチング能力高いらしいし、ブルボンもその正確さからお手本にはピッタリと結構良さげなウマ娘四人ですね。
でも手加減はしてくれないです。
≫138二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 12:07:56
『あの日あの時』
「うーん……シックなカフェだな」
「案外残ってるんだなあこういうところも……」
昼時、偶には外で一緒に食事でもといった具合にブラトレとマルトレが街をうろついていると、少し年季の入ったカフェを見つけた。案外こういうところもアリだなということで二人は入店し、カウンター席にて料理を待っていた。
そして店内に流れはじめた、だいぶ古い時代のドラマの主題歌。
「……あー、これ有名な奴だな。なんだっけ、東京を舞台にしたやつ」
「意外とその時代のドラマ、マルゼンスキーが詳しいんだよな……」
「言葉遣いはそれっぽいが実際に見てたのか……ちょい納得」
流れる主題歌はサビの部分に入り、力強い歌声が響く。
「あの日あの時……ねえ。実際どう思う?俺たちが今の担当と会わなかったら」
「……難しいなー。俺がマルゼンスキーと会わなかったら?うーん、もしかしたら俺結構燻ってたかもなー」
「俺もここまでいろいろ手を広げてたりはしなかったかもなあ……少なくともチームは持ってなかっただろうな」
「ん?となるとブライアンがもしかしたら退学して?今のブラトレのチームが存在しなくなって?」
「……歴史改変物かな?壮絶な影響が出るわ」
ぐへえといった顔になるブラトレ。何よりも、退学してしまったブライアンという可能性のことを思うとどうにも渋い顔になってしまうようだ。
「何より三冠がどうのはぶっちゃけどうでもよくて、ブライアンがレースで走らなくなってしまったという可能性のほうがつらいかもしれんね」
「……会えてよかったね」
「そりゃそうだよ……俺もマルトレも」
湯気の立ち上るプレート料理が運ばれてきて、二人は手を合わせて食べ始める。
「数奇な運命とはいえ、俺はトレーナーになって良かったなっていつも思うんだよ。ブライアンもそうだが、戦ってきた幾多のライバルたち、彼女たちのトレーナー、そして今友人として関わってるトレーナーたち。いろんな出会いがあって、俺が今こうして生きてるわけだしな」
「そうだなぁ……人生がより良いものになったのは間違いないかな。まあ俺もお前もウマになるなんてねぇ」
「そりゃ言えてるな。人生わからんもんだらけだ」
偶然、必然、運命、天命。いくらでも言葉は探せても、今この人生を歩むのはそれぞれ一人のみ。
二人は今日もこうして、いきている。
≫161二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 16:10:01
「ねえバクシンオー。本当に僕がコレ歌うの?」
「勿論ですッ! トレーナーさんに歌われたいと曲も言っていますよ!」
「本当かな……それに何だか気恥ずかしいし」
「なんと! どこも恥ずかしい所などありませんよ! 素晴らしい一曲ではありませんか!」
「それと……うーん……まあいいか。歌えば何かわかるかもしれないし」
「おお! 歌ってくださるのですね! それではいきますよ! さん、ハイッ!」
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!(楽しげに)』
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!(クールに)』
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!(絶不調で)』
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!(絶好調で)』
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!(蠱惑的に)』
『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! ……
「ぜー……ぜー……ぜー……」
「素晴らしいバクシンぶりでしたよトレーナーさん! 今度の感謝祭、大盛り上がり間違いなしですッ!」
「それは……はー……何より……はー……」
歌うこと自体はいいのだが、当初の懸念は的中していた。
何せこの曲、ずっと同じパターンの繰り返しのために止めどころがわからないのである。
おまけにAメロもBメロもおまけに間奏さえもなくサビしかないので非常に疲れるのだ。
しかし担当が目を輝かせて聞いてくれるので、結局体力の限界まで歌ってしまうバクトレなのであった。
バクトレの体力が25減った
バクトレのスタミナが5上がった
バクトレの根性が5上がった
「愛嬌(担当限定)」を獲得した!
≫165二次元好きの匿名さん22/02/27(日) 17:05:03
「今日の勝利の女神は! アタシだけにチュッっとする!!」ヤケクソ
「キャ~~~! トレーナーちゃんにチュッってされちゃった~~~!」
「お兄ちゃん~! もっと視線を意識して~?(なんでマヤトレさんがセンターなのかな……?)」
「トレーナーさん頑張って~!(なんでマヤトレさんがセンターなんだろ~?)」
「虹の彼方へゆこう!(なんで俺がセンターなんだ……?)」
「風をきって 大地けって(なんでマヤトレがセンターなんだろ?)」
「君のなかに 光ともす(なんでマヤトレお兄ちゃ……マヤトレがセンターなのかな……?)