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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart681~685)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part681【TSトレ】
≫131二次元好きの匿名さん22/02/15(火) 23:14:21
「ラブもサイズも100倍増し」だなんて普通は嘘・大袈裟・紛らわしいの報告対象じゃん?そう思うじゃん?
「他の子に配ってるのと比べさせてもらったら縦横厚みがざっくり5倍あって、ああ本当に100倍なんだなって……」
「食べ切ったのかお前……」
「んにゃ、流石に一日で食べきれないからトレーナー室の冷蔵庫と冷凍庫に分けて入れてる……。一応言っとくけど、例えフクトレさんでもあげないかんね」
「フクから貰ったのがあるからノーセンキューだ。……ただまあ、がんばれ。腐らせないようにな」
「もちのろん……。あーーー無性にスッキリした何かが食べたいぃぃぃ……」
「……唐揚げ食うか?」
「脂っこいもんの代表格だよね?」
「気を利かせてレモンを先掛けしてやろう」
「うーん相対的にスッキリ……あんがと」
「……」
「……ツッコミ待ちだったかもしんないけど、今は普通に気遣いが嬉しい」
「……一欠片程度なら手伝うぞ」
「へへ、その点は気遣い無用」
「そうか」
その後、長い時間をかけてなんとか一人で食べ切ったタイキトレだった。
(終)
以上。フクトレさんに駄弁りに付き合ってもらいました。ボケに回りたい苦労人好き
自分からはレモン掛けないし、掛かってたらわざわざ掛けてくれたと喜んじゃうタイキトレ
甘々(量的な意味で)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part682【TSトレ】
≫16二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 11:34:05
途中送信してしまったけど投げます……
「と、言うわけで。はいお兄ちゃんお膝~♪」
「……え?」
「え?」
「待ってお姉ちゃん。説明、説明が欲しい」
「あ、そうだねお兄ちゃん。……はい、カレンのお膝に寝転んで?」
「待ってお姉ちゃん。『お膝』って意味を求めたわけじゃない」
「……? あ、お兄ちゃんが先にしたいならそう言ってくれれば……」
「ストップ、ストップお姉ちゃん」
「もう、な~にお兄ちゃん♪」
「……なんで耳かき?」
「え?」
「えっ」
「いやだって、そういえばしたことないなーって」
「……? い、いや、流石に担当ウマ娘に耳かきをさせ」
「だってよく考えたら、お兄ちゃんウマ娘になってからちゃんと耳かきしてるのかなって思って。ほら、耳の構造とか全然違うでしょ?」
「…………あ、そっち!?」
「……へぇ~? っと、まあそっちは今度追及するとして……」
「追及って」
「ほら、自分でやり方わからないでしょ? だからまずはカレンがやってあげる♪ それからカレンの耳かきもすれば、多少は感じがわかるんじゃないかな」
「そうかな……そうかも……?」
「というわけで! はいお兄ちゃんお膝~」ポンポン
「さ、流石にちょっと恥ずかし……わひゃっ!?」
「はいはいお兄ちゃん大人しくしててね~」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃ…………。……ぴっ!?」
「え、ごめん! 掠っちゃった!?」
「そ、そういうわけじゃないけど! この体制は視覚的にまず……あ、動けない!」
「もーお兄ちゃん動いたらダメ! それに正面からじゃないと耳かきできないの!」
「う……」
17二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 11:35:26
「あ、目を瞑っちゃった。そんなに耳かき怖かった?」ホジホジ
「いや違……」
「よし、いっぱい取れたね☆ あ、それと……」
「な、何お姉ちゃん……」
「……ん~、まあ今回はカレンもちょっと意地悪しすぎたかな、ごめんね♪」
「…………むぅ」
「なんだか、新鮮だね。こんなお兄ちゃん……っと、それじゃあカレンの番♪ はいお兄ちゃんお膝~」
「紛らわしっ!? ……もー」
「えへへ~お兄ちゃんのお膝ちっちゃーい……」
「どう反応すれば良いのそれ……」
「…………ふっ」
「待ってそれなんの笑み。どこを見て今その勝ち誇った笑みを浮かべたのお姉ちゃん」
「とりあえず耳かきする時は正面から掘ってね? 自分でする時も同じだから」
「急に耳かきの話するじゃん……」
「お兄ちゃん、口調が安定してないよ?」
「なんでかなぁ!? じゃ、じゃあ入れるね?」
「うん、お兄ちゃん。……入れて? そっとね? いや本当にそっとね?」
「だ、大丈夫、怖くない……怖くない……」
「…………」ゴクッ
「や、やった。お姉ちゃんの(耳の)中にちゃんと入った! う、動いて大丈夫だよね……?」
「うん、良いよお兄ちゃん? お兄ちゃんの好きに動いて♡」
「じゃあ、動くねお姉ちゃん……! あ、お姉ちゃんの(耳の)中暖かい……」
「お兄ちゃん……。やっぱお兄ちゃんにそっち方面のキャラは無理かな……」
「と、とにかく耳かきを。耳かきを……」
「うん? お兄ちゃん?」
「…………耳垢、全くないんだけど」
「…………あ」
うまぴょいうまぴょい
≫84二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 15:50:27
「あ、こんにちは黒ルドトレさん」
「こんにちはサトトレさん、いい天気ですね」
トレセン学園、座っていた黒ルドトレに声を掛けたのはメカクレことサトトレ。今日は風も強くひんやりとしている。
「…えっと、黒ルドトレさんは最近ウマ娘になったんだよね?」
「うん、そうだね」
「なら、これに招待しておかないとね」
そう言って差し出されたサトトレのウマホ。その画面にはメッセージグループのQRコードが。
「…?」
「これは同じウマ娘化したトレーナー達の一部で繋がってるグループなんだ。相談とか色々使えるんだよ」
「ああ、なるほど。グループ名が『ちっちゃいものクラブ』…」
「このグループだと名前の通り身長低い人が入ってるよ。…よし、入ってきたね。」
「ありがとうサトトレさん、助かるよ」
ウマホをしまい、世間話に興じる二人。だが、そんな二人に近づく影が2つ。それに気づいた時はもう遅く
「…はい?」
「んー?」
ガシッと伸びできた腕にロックされる二人。その腕の伸びてきた方向にはタイキトレとグラトレの姿が。
「ちょっと、タイキトレさん?!」
「いやー、ルドトレも中々温かいわー。」
ロックされた状態で離してもらおうともがいてみたものの、タイキトレから離れられない。横を向いて助けを乞う。
「助けてサトトレさ…」
「んふ〜…。あ、ふ菓子食べます〜?」
「ありがとうグラトレ〜」
「…???」
…その隣ではグラトレの膝上に乗せれられて餌付け…ふ菓子をもらって食べるサトトレ。グラトレも後ろから抱き締めている。
「まあ別にいいよねー、ルドトレさん?」
「…いいですよ」
タイキトレからの一言に、しぶしぶとルドトレは許可を出す。押せ押せのスタイルにはルドトレは弱いのだ。
───結果として、ルドトレとサトトレはタイキトレとグラトレに抱かれている姿が目撃されたそうな。
尚、担当のルドルフとダイヤにはばっちり耳に入っており、別のタイミングで抱かれる羽目になった。
≫112二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 18:57:44
【Aの部屋】
『死ぬんだぁ……』(←危なっかしい一流維持)
【Bの部屋】
『いやーこれは勝ったな! テイオー見てるー?』(←二流陥落)
『こんなマーベラスな問題を間違えるなんて、ネイトレ可哀そー☆ ……どうしたのウラトレせんせ?★』(←納得のそっくりさん)
『……ダメです。まだ迷ってます……』(←普通?)
「……ウラトレの奴だけ二段階落としたろか」[司会ヘリトレ]
「流石に狙って普通にはしてませんよ、多分っ」[副司会ヘリサブ]
「しかしまぁバラけるもんじゃのう……」
「トレーナーにかすっただけのカルトクイズですからこうもなるでしょう……あっ、最後の一人も部屋に入りますよっ!」
「……タイキトレか」
『およ!? よかったー! なんとか踏ん張ったっぽい!』(←この後消えます)
『ウソでしょ……』
『ノーマーベラァス……』
『……やられたっ……!』
『なんでさ! もっとB選んだ己を信じてよ!』(←この後消えます)
「……わざとかの?」
「はっ、『存在感が薄い』ってそういうっ……」
「まぁ編集しなくても消えれるから便利っちゃ便利じゃが」
(終)
書いてて楽しかった(小並感)(土下座)
≫119二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:17:37
グラトレ(独)の膝枕でグラスの耳掃除
「さあグラス、こちらに頭を置いて貰えますか~」
そう言ったトレーナーさんはにこやかな顔をして太腿をポンポンと叩き、その手には耳かき棒を持っています。
……つまり膝枕での耳かきの体勢ですね。
「え~っと、急にどうされたんですか?」
「ええ、実は耳かきをしようかと思ったのですが~、耳の位置が以前と違う為中々に苦戦していまして~」
「そうでしたか~」
……確かにトレーナーさんはウマ娘化した事で、以前と耳の位置が大きく変わってしまっています。
自身で耳かきをしようにも勝手が違い過ぎて上手く出来ないのでしょう。
……ですが、疑問点が一つ有ります
「……それなら何故トレーナーさんは私に耳かきをしようとされているんですか?」
そういう事です、耳かきが出来ないのならば私がトレーナーさんにするものではないのでしょうか?
「折角ですから~、グラスも耳かきはどうでしょうかと思いまして~」
…………どうやら特に深い意味は無かったみたいですね……
それでしたら、折角の好意を無下にするのも悪いです。
「分かりました、トレーナーさんお願いしますね♪」
「……! ええ、ええ、承りました~」
トレーナーさんの好意に乗る事にした私の返事に、トレーナーさんはとても嬉しそうにされるのでした。
120二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:18:40
「それで、トレーナーさん?」
「はい、どうされましたか~」
「何故私はトレーナーさんの太腿に頭を挟まれているのでしょうか?」
いざ耳かきが始まろうとした時に、私がトレーナーさんに指示された体勢は予想と違うものでした。
顏を上に向けるのはウマ娘として何時もの事、トレーナーさんの顏が良く見えて良いです。
ですが身体の方は、何故かトレーナーさんの身体に対して90度の向きでは無く身体に対して真っ直ぐな体勢で寝る様に指示されたのです。
それどころか私の頭はトレーナーさんの太腿に挟まれてしまっています、鍛えているだけ有ってムチムチして気持ち良いですね……
……思考が逸れました。
予想と違う体勢を取らされている事に困惑しながら、その理由をトレーナーさんに聞いてみますが……
「何分不慣れな事ですからね~、すみませんがあまり頭が動かない様固定させて貰いますね~」
そんな返答が返ってきます。
それどころか……
「ひゃっ!?」
「すみませんが~、耳も固定させて貰いますね~」
そう言って耳の先端を指で捕まえられます。
「ではでは~、始めますね~」
121二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:18:52
「あうう……」
トレーナさんはやはりウマ娘の耳には不慣れなのでしょう、私の耳を傷付けない様慎重に慎重に耳かきをされています。
しかし、集中されているトレーナーさんは気付かれていないのでしょうか……
傷付けない様に優しく私の耳を掻いているが故に、私は焦らす様に耳を掻かれている事を。
固定する為に私の耳の先端を挟んでいる指は、コリコリと内側を擦っている事を。
よく見る為に近付いたトレーナーさんの吐息が耳へと掛かっている事を。
……動いたら危ない事を理解しているが為に、私は拷問の様な気持ち良さを受け入れるしかないのです。
そしてそうこう我慢をしている内に、トレーナーさんの顏が耳から離れ、耳かき棒は床に置かれ、耳を固定していた指は外されました。
……まだトレーナーさんの太腿に挟まれたままですが、どうやら耳かきは終わった様です。
そしてトレーナーさんは終わった事を確認しようとした私に……
「……あの、トレーナーさん、終わ…ンッ」
「……ン、終わりましたよ、グラス?」
不意打ちのキスを降らせ、悪戯に成功した様な笑みを浮かべながら耳かきの終了を告げるのでした。
122二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 19:19:39
「さあ、次はトレーナーさんの番ですね~」
「……? グラスは私と同じ様にしなくても大丈夫ではないのでしょうか~」
交代した私の太腿に挟まれるのはトレーナーさん。
トレーナーさんの言う通り90度の向きでも良いですが……
「折角なのでトレーナーさんと同じ様にしてみようかと~♪」
「そうですか~、それではお願いしますね~」
ええ、トレーナーさんが私にされた様にしますとも……全部。
「ひ、ひぅぅぅ」
「は~い、動かないでくださいね~」
結局、トレーナーさんが最後に私にしたキスも含めてトレーナーさんにやり返すのでした。
うまぴょいうまぴょい
了です。
耳かき概念……
太腿で頭を固定して指で耳も固定、近付いた顔から出る吐息は耳を撫でる……
身体に対して横向きの耳かきも良いですが、身体に対して垂直の耳かきだからこその良さも有ると思います。
そして行数確認大事(n敗目)
この場で悪いのですが、84 の方でグラトレの使用ありがとうございました
残念ながらサトトレの餌付けは終わっているんだ、次は黒ルドトレが餌付けされて湯たんぽにされる番なんだ。
小っちゃい娘クラブの餌付けも直ぐに終わるんだ。
違
グ
聞
≫174二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 21:28:19
ある日、私がトレーナー室で仕事をしていると、"彼"がやってきた。
「お疲れ様。……ああ、コーヒー淹れるけど飲む?」
「……ああ。すまない。お願いしようか」
彼は私より一つ上で、同じくルドルフを見ているトレーナーとして思うところがありつつも上手くやっていた。
そんな彼は私より早くにウマ娘となっていて、私がウマ娘となってからは、ルドルフと共に支えてくれた良き隣人だ。少々不思議な言動が混じるが。
そうして、私がPCを見続けていると彼がマグカップと皿を持ってこちらに来る。皿の上には──
「ショートケーキ?」
「うん。ちょっと美味しそうなケーキ屋を見つけて買ってたんだ。でも、買ってから一人で食べきれそうにないと思って。
だから勿体ないし、黒ルドにも食べてほしいな~って」
「……一応聞くが、ルドルフに内緒で買ったりとか、してないだろうな?」
「大丈夫大丈夫。先程ルドルフにも出してきたから」
そう言いながらコーヒーとケーキを目の前に置いて、彼は自分の分を用意しに戻っていく。
「ケーキが勿体ないから、一旦仕事は置いて食べるとするか」
フォークでケーキを一口食べると、苺の酸味とクリームの甘さが口の中に広がる。
「どうかな?口に合った?」
「……ああ、大丈夫だ」
「ならよかった。君なら間違いなく知ってるだろうけど、糖分補給は大事だから。カフェインも摂って効率も……って、余計だったかな」
そう言って笑う彼も、ケーキを口に含んで喜ぶ。
「……ちゃんとルドルフも黒ルドも、適度に休憩させないと、ね」
黒ルドに聞こえないよう、"彼"が呟いたのは、誰も知らない。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part683【TSトレ】
≫37二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 22:54:15
バレンタインより少し前、皆がバレンタインに向け準備をしている頃──
私は屋台でチョコレートをかけられた大根が乗った皿と対峙していました。
「ムントレさん……これは?」
「何かおかしいかな?ブルトレ。どう見てもチョコおでんじゃないか」
「そんな常識みたいに言われても困るんですが……というかなんですこの屋台」
「ゴルトレとゴールドシップが作ってくれてね。彼らの多芸ぶりにはつくづく驚かされるよ」
「なるほど……なるほど?ではなぜおでんにチョコレートかけちゃったんです?」
「せっかくなら手作りの方がいいと思ってね。そこで思いついたのが……おでんだ」
「思いついちゃいましたか……」
「私と言えばおでんだろう?そしてチョコだが…モレソースというのは知ってるかな?」
「いえ…初めて聞きましたね」
「メキシコに居る友人から聞いてね。チョコレートを使ったソースがあるらしいんだ」
「そんなソースがあるんですね。このかかってるのがそうなんですか」
「まあこれはチョコレートのままだが」
「……今のくだりいりました?」
「まあまあ。とにかく食べてみて貰えないか?」
この人は本当……と思いながら大根を口に入れてみましたが…よく煮えた大根とチョコの味が不思議とマッチしていました。
「これは……思ったより美味しいですね」
「そうだろう?これが案外悪くないんだ」
「確かにこれはこれでいいですが……もうちょっとこう、普通のチョコでもいいんじゃないです?」
「ふむ……普通のチョコ……か。どういう物にすればいいだろう?」
「それはチョコを溶かして……といった感じでいいんじゃないでしょうか。あ、でも私のところは機械を使わないので参考に出来ないですね、すみません」
「いや、ありがとう。他の人にも聞いてみるから大丈夫さ。そうだな…ゴルトレにでも聞いてみるか」
「人選に不安しかありませんが……」
その後ムントレさんはゴルトレさん達とチョコを作ったようですが……スズトレさん達が頭を抱えていたアレがどういう物かを知ろうとする勇気は私にはありませんでした。知らない方がいい事もありますよね……
≫50二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:46:06
バレンタイン。家族に、友人に、想い人に温かく、柔らかく、甘い綺麗な気持ちを伝える日。
そんな彼彼女らの抱える美しい心に対しこの惨めな身体が抱く浅ましき心の何と醜いことだろう。
人を思う気持ちに優劣は無いと綺麗事をほざく癖に、本心では一番であって欲しいと思うこの感情は。
──ただ傷つきたくない恐怖心だ。
「よし…これで大丈夫か?」
世話になってるトレーナー仲間や人達にチョコも配り終えた。義理チョコもありがたくいただいた。後はこれを渡すだけだ。
ラッピングが崩れないように丁寧に個別に持って来たとっておきの自信作。テイオーは喜んでくれるだろうか、笑ってくれるだろうか。
子供と変わらないなと一人微笑んでテイオーがいたというカフェテラスに向かって、
「テイオー様!どうぞこちらを受け取って下さいまし!」
足が、止まった。
目に飛び込んだのはとあるウマ娘がテイオーに自身の丈ほどの豪華なチョコレートケーキを渡そうとしている瞬間。あの子は確か、テイオーを慕う中等部の娘だっただろうか。
「シェフに根性キメさせて用意をさせましたの!ささ、ご遠慮なさらずお受け取り下さい!」
「うぇー…嬉しいけど…おっきすぎない?」
綺麗だと思った。豪華絢爛でありながら下品さを感じさせない見事な装飾のチョコレートケーキも、ストレートに好意を伝えるあの娘も。
伸ばしかけた手を止める。あんなに自信のあった手作りのそれがあんまりにお粗末で見窄らしく見えた。
黙って、背を向けてその場を去った。こんなものを渡すのが恥ずかしくなったから。
あの娘が悪いわけじゃ無い。想いに優劣なんてないのは分かっている。ただ、俺が弱くて情けなかっただけだ。
テイオーがこれを貰って嫌がるわけない。彼女は笑って、心から喜んでくれるだろう。
私がただ、億が一こんなものかと思われるのが怖くて渡せなかっただけだ。
小さな身体を押すように吹いた風が、いやに冷たくて寒かった。
51二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:46:38
バレンタイン。家族に、友人に、想い人に温かく、柔らかく、甘い綺麗な気持ちを伝える日。
そんなみんなの持つ綺麗な心に対してボクが持つこの心はなんて見苦しいんだろう。
ボクにとっての一番なんだから君にとっても一番であって欲しいと思うこの感情は。
──なんて傲慢な嫉妬心なんだろう。
「トレーナートッレーナーボクのトレーナーはどっこかなー」
今にも飛んでいってしまいそうになる気持ちを隠そうともせずに手に持ったチョコを見やる。
何個も何個もみんなと食べ歩いて探し当てた最高の一品。体重計に乗って「嘘ですわー!!」と叫んだマックイーンの尊い犠牲を払いつつもトレーナーに贈るのに相応しい品を見つけられた。
これを受け取ったらトレーナーはどんな反応をするだろう。驚くだろうか、いや普通に喜ぶだろうな、もしかしたら嬉しすぎて踊り出すかも。
「もーしょうがないなぁトレーナーは」
一人で想像を膨らませながら笑っているとついにその後ろ姿を見つけて、
「はいテイトレ、ハッピーバレンタイン」
近くの荷物のそばに隠れた。
そーっと頭を出して見えたのはトレーナーがチョコを受け取る瞬間。あの人は確か同僚の人。
そのまま視線を横にして見つけたのが小山のようになったチョコの群。あれ全部トレーナーが貰ったの?
「それにしてもテイトレ大人気ねー本命もあるんじゃない?」
「そんなわけないだろ…全部義理だよ」
本当にそうだろうか。明らかに気合の入った包装の物もあるのに。なんなら気軽に話しかけている彼女が手に持っているそれも本命のように見えてしまう。
「む…むぅ…」
なんだか怖くなってその場から逃げ出す。考えが甘かったのかもしれない。トレーナーがあんなに人気だなんて思わなかった。思いたく、なかった。
ボクの一番はトレーナーだから、トレーナーの一番もボクなんだって思おうとしてた。
だけど、もし、トレーナーの一番がボクじゃなかったら。あの中の誰かを選んだとしたら。
譲る気もなければ負ける気もない。ボクは帝王だ。帝王のはず、なのに。
もしもが頭から離れなくて。
濁って熱いモヤモヤが芯を燻るように引き留めていた。
52二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:47:19
トレーナー室でボクとトレーナーは黙り込んでいた。
言いたい事がある。多分トレーナーもボクに言いたい事がある。だけど言い出せなくて、時間だけが過ぎていって──先に耐え切れなくなったのはボクだった。
「…トレーナー!」
「んっ!?うっ…ど、どうし」
「はいこれ!」
ボクの声にびくりと耳を立てたトレーナーにチョコを押し付けるように手渡す。返品なんて許さないと気持ちを込めて。
「バレンタインチョコ!ボクの、本命だからね!それじゃ!」
呆けたようにチョコを見るトレーナーから逃げるようにしてトレーナー室から出ようとしたボクを優しい声が引き止める。
「…テイオー。ありがとう、すごく、すっごく、嬉しい」
ボクのチョコを本当に嬉しそうに抱き締めて微笑んでいたその姿に見惚れているとチョコを大事そうに置いたトレーナーが自身のカバンから可愛らしくラッピングされた物を取り出した。
「あの、これ、み、みんなみたいに豪華でも珍しくもないけど」
「頑張って、テイオーのために一生懸命作った」
ぺたりと耳は垂れ瞳は潤み声が震えていた。顔が赤いのは夕焼けのせいじゃないだろう。
「わた、私の…本命チョコ…受け取って…くれます、か」
不安を隠すように瞳を伏せチョコを口元に当てたトレーナーに近づいて強く、壊れないように強く抱き締める。
伝えたい言葉なんて山のようにある。それでも溢れそうなこの感情を君に伝えるために、ぎゅうと目を閉じた。
「…ありがとう、トレーナー…ボク、すごく、すっごく嬉しい」
夕暮れを告げる鐘が鳴り響くその時まで、時を忘れて抱き締め合って。その後お互いに抱えてた気持ちを隠さず伝え合って、二人して笑いながらチョコを食べた。
甘くて、苦くて、本当に甘いバレンタインだった。
53二次元好きの匿名さん22/02/16(水) 23:48:06
おまけ
「テイオー様!お渡しした物、テイトレ様とご一緒に食べて頂けましたか!?」
「うん二人で食べたよーありがとー!」
「…俺も食べちゃったけど、よかったのか?あれ、テイオーにって」
「いえ、いえ違います!ぜひお二人に、お二人で!食べて頂きたかったのです!」
「あらそれはどうして?」
「あっ同僚」
「私!お二人が大好きですの!尊敬しておりますの!!なんせカプ厨なもので!」
「…カ、カプ?」
「わかるわ…分かりすぎて…デビルマンになったわね…」
「理解していただけますか!?矢印をこちらに向けて欲しい訳ではないんです…!ただ背中を押したり便利なモブとなりたいだけなのです!!」
「んん!解釈一致!!相互理解を深める為だけのイベント要員になりたい気持ち…分かるわ…!あわよくばその姿を間近で見ていたいわよね!!」
「そうなのです!そうなのですよ!!このお二人は本当に…幸せになって欲しくて…」
「ええ…分かりみが深いわ…だってこのペアは」
「儚げテイトレ様へのスパダリテイオー様の甘く蕩けるような優しい攻めが尊いんですもの!!」
「普段調子のテイトレが挑発するように媚びてそれに乗るへたれ気味テイオーのぎこちない攻めが最高よね!!」
「「…あ?」」
「テイオー手離してくれー何も聞こえんー」
「聞かなくて良いよ。本当に」
≫71二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 07:28:28
バレンタインデー、それは乙女達の戦場。
といっても、戦場だと認識せずその場にいる者が多々いるのもまたトレセン学園らしいものだが。
「……うわぁ」
今、山積みのチョコに若干引いているシンボリルドルフ担当トレーナーもその一人であり、彼女が彼であった頃のバレンタインとは『女性が必死そうな目でこちらにチョコを渡してくる』イベントであった。
恋と愛を知った今なら、なんとなく彼女らの気持ちも理解できるようになったのだが。
「……まあでも、これはこれで嬉しいかな。"僕"を覚えて渡してくれる人もいるってことだし」
そうしていると、扉に近付く足音が聞こえたために、身体をそちらに向ける。
「あ、ルドルフ。私も随分貰っちゃって」
「そうか。だが……君の待っていたものは、これだろう?」
そう言うと、ルドルフはそっと箱を渡してくる。
「ハッピーバレンタイン、トレーナー君」
「ありがとうルドルフ!大事に食べるね!……って、私もあるんだった!はい!」
こちらもチョコの入った包みを渡す。
「みんなに配ったチョコテリーヌとは違う、ルドルフのためのチョコだから」
「そうか。であれば……互いのチョコをちょこっと食べて、少し休憩しよう。君のチョコが気になるからな」
「だね、休もっか!……あ、あとルドルフ。今のは定番ネタ過ぎて笑う人と笑えない人で別れると思うな」
「……そうか、そう、か……うーん……」
────このあと滅茶苦茶ル監された。
≫110二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 12:30:42
「いやぁ…!タマトレさんの爆弾魔ぁ…!」
「逃げ方が下手すぎるぞネイトレ…なんで壁際に逃げるんだ。というか爆弾魔はやめろ!キラークイーンなんか持ってない!」
「やめて…まだお昼ご飯前なの…!」
「美味しく昼飯食えないからとかそんな理由でいいの?」
「うぅぅ…!やだぁ…!(フルフル)」
「……あれ、もしかしてすごい悪いことしてる俺?」
「無理矢理カロリー爆弾口に入れるのは悪いことですよ!!」
「今だ隙ありっ!!」
「むぐぅっ!?」
続かない。なんだかいけないことしてる気分になったんだが?
≫121二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 13:17:51
「…うあぁ…」
「まあ、そうなるわね…」
某日、お腹を膨らませたウマ娘が二人、汗をかきながら会話していた。テイトレとキタトレである。
「マーズバーがここまで重たいなんて思わなかった…」
「一本2000kcalは中々暴力的なのよね…」
普段から暴力的なボディをしたキタトレがテイトレをポンポンと優しく叩く。その体はいつもよりむっちりとしていた。
テイトレはその膨らんだお腹を軽くつまみつつ、ため息を吐いて空を見上げる。また視線を戻すと
「パチタマトレも作りすぎだろあれ…なんで数十本も揚げてるんだ。皿に積み上げられる程って…」
「本当、誰に消費してもらうつもりだったのでしょうね。私とテイトレとパチタマトレだけだったら多分無理でしょうに。」
皿にうず高く積み上げられ、一桁では明らかにすまない数のマーズバー。それを消費する羽目になったのだ。
テイトレ一人で当初は消費していたが、到底一人では限界だったがために、近くにいたキタトレにヘルプを求めた。
だがパチタマトレ込みの三人でもきつそうだったために、最終的には他のトレーナーにも食べてもらう事になった。
それでも最初から食べていた二人がこのザマなあたり、いかに凄い総カロリーだったか推して知るべしである。
「最初から人呼べば良かった…特にサトトレ。」
「サトトレ一人で結構な量消費していたものね…」
…食べてくれたトレーナーの中でも特にサトノジョー…サトトレが大分消費してくれていた。明らかにテイトレ達以上食べていた筈なのだが、太るどころかけろりとしているのだ。とはいえ、今更言っても後の祭りでしかないのだが。
「キタトレぇ…俺どれくらい減量したかなぁ」「…まだまだね。明日もじゃないかしら…」
「明日もスタミナトレーニング…」
「…頑張りましょう。」
テイトレの背中をさすり、励ますキタトレ。むちむちした二人は明日もスタミナトレーニングで減量することとなった。
尚、この光景を見て二人が妊娠してると勘違いした大バカ野郎もいたとか、いなかったとか。
短文失礼しました
マーズバーを食べて太り気味になった二人で駄弁るだけです。パチタマトレならきっと大量に作ってそうという信頼?
百本くらいあってもこのトレセンの太らない人達で消費すれば割とすぐになくなりそうである。
≫172二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 20:06:45
◆ネイチャとネイトレとバレンタイン
「……またすごい量貰っちゃってますね?」
ネイチャがそうぼやく。私も同意見。
よもやトレーナー室の前に私宛のチョコの山ができるとは思っても見なかった。
「去年はネイチャからと友チョコいくつかだけだったのに……」
「しかも全体的に『あやかりたいから捧げ物します』みたいなご利益目当てのが多くないですか?」
添えられてるメッセージカードを精査すると確かにそういうものがほとんどだ。困った、まだお裾分けできるレベルじゃないと思うんだけど。
「私じゃなくてネイチャに贈るべきなんじゃ……?」
「ハハハ、ソンナ……」
「……ネイチャ?」
分かりやすく挙動不審になったところをつついてみると、寮の下駄箱に私同様、人生初のチョコの山ができていたらしい。
「まあネイチャは気さくで後輩からも慕われる系の子だからねー。私もちょっぴり鼻が高い」
「縁遠いイベント、のはずだったんですけどね……ていうか、あんまりやきもきしてない感じですか?」
「むしろ『どうだすごいだろう!』の気分。……それに」
「ん?」
「……結局ネイチャの一番は私でしょ?」
「……はい。まぁどれだけチョコもらってもトレーナーさんの一番はアタシでしょうけど」
「うん。……」
ちょっと無駄にカッコつけちゃった。お互い顔が赤い。
173二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 20:07:50
「……と、とにかくこのチョコの山を頑張って食べましょ! はいトレーナーさん、一気! 一気!」
「急性チョコ中になっちゃう!?」
「血糖値ヤバそう……」
「分かってるならさせないでよ……」
流石にノリでチョコを飲んでいく訳にはいかない。それに最初の一口は決まってるし。
「……なんですかねその手は」
「ネイチャからのチョコ待ち」
「……イヤーマサカ今日ガバレンタインダッタトハー」
「いまさら? というか『みんなでチョコ作りしたんだよー!』という情報はウララから母さん経由で聞いてるけど」
「ウ・ラ・ラ〜〜〜……!!」
悪いのはこの期に及んで尻込みするネイチャだと思う。……ちょっとだけイジワルしようかな。
観念したネイチャから送られたチョコを大事に受け取ったら、チョコの包装を解いて、すぐにネイチャに渡し直す。
……すぐに何をしてほしいか伝わったようで、何よりです。
「こりゃまあ大きい雛だこと……」
「ふふ」
「はいはい笑ってないで屈んで口開けて。……あ、あーん」
「あーーーん♪」
……甘かったです。楽しかったです。
ただ、同じことをネイチャにする羽目になりました。チョコの付いた指も舐められて恥ずかしかったです。
……でも楽しかったです。
(終)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part684【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん22/02/17(木) 20:47:58
◆オマケ・カロリーは脆い(といいのに)
「お互いのチョコを食べ終えても山はまだまだ残ったままっていうね……」モクモグ
「こんだけあると太り気味超えてぽっちゃり不可避ですなー。あんまり駄肉つけちゃダメですよトレーナーさん?」
「……まぁでも、これだけあってもカロリーゼロみたいなところはあるから」
「おお、ネイチャさんもどこかで聞いたトンデモ理論」
「甘いものはすぐにエネルギーに変わるから太らないんだよね」
「うんうん」
「ハンバーグも肉をミンチにする過程でカロリーが叩き潰されるからカロリーゼロだし」
「へー……」
「アイスとか氷菓の類はカロリーごと凍らせているからゼロカロリーだし」
「ほー……」
「そうだ知ってる? チャーハンも何度もフライパンの上で熱で痛めつけられてるからカロリーゼロなんだよ? というかカロリーゼロになったタイミングがチャーハンの完成なんだって」
「はえーそうだったんですかー……!」
「え、マジで言ってる?」
「……本当だったらこんな苦々しい顔してない」モグ...
「……ビターチョコに当たりましたか?」
「あっはっはっははは……はぁ」
根性を発揮しながら完食したネイトレだったけど、ちょっとだけポッキーを敬遠する日々が続いた。
あといろんな人にお腹を摘まれそうになったとさ。
うまぴょいうまぴょい
≫103二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 11:20:59
『心の底のW/あなたの、わたしの、おもい』
新月の夜。トレセン学園近くの丘。
二人の双子のような影。
「そういえば、アル……一つ聞きたいことがあるのだけど」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
さらさらと風が流れる。夜風は遠くから流れ、また遠くへと消えていく。
「その……あなたはやっぱり、走りたくなることってあるの?」
「……あるといえばあるかな。でもね、お姉ちゃん」
ベンチに座りながら、双子は語らいあう。
「うん」
「お姉ちゃんの中にいた私の一部が、ちょっとだけでもお姉ちゃんが走ってきた記憶を持ってきてくれたんだ。その時の心地よさ、楽しさ、興奮、悔しさ、そして嬉しさ。あれだけでわたしは大丈夫だよ。それよりも……」
「……」
見上げるのは星の海。遠く遠くへと思いが巡り、輝いて、瞬く。
「もっといろんな子と戦って、切磋琢磨して、レースを楽しんで……そんな、ターフの上で輝いているお姉ちゃんを見るほうが今は楽しみかなって。ベガトレさんの影響もちょっとはあると思うけどね」
「……そうね。予想外に早く再会したとはいえ、私があなたの自慢のお姉ちゃんになれるように……もっともっと、走っていくわ。あのターフの上で、私が私であるように。たった一つ輝ける一等星のように」
またさらさらと風が吹く。走り続ける彼女の背を押すように。
「──じゃ、そんなあなたを支えるのが私の一番大事なことってわけね」
「トレーナー」
「まだまだ走り続けるんでしょ?きっちりサポートするわよ」
「……そうね。ありがとう」
二色の眼を持つ少女は立ち上がる。それに続けて、輝く一等星も立ち上がる。
静かな夜に吹く風が、彼女たちを応援するようにまた、さらさらと吹いてきた。
≫110二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 13:07:12
「最近出た新しいスイーツだけど、どうかしら二人共?」
「うん、いいねこれ」
「…ありがとうキタトレさん、美味しいです」
「いいのよ別に。私は少し多めに買ったのを出しているだけなのだから。」
…キタトレのトレーナー室、招かれた客人の二人であるルドトレ(魔)とルドトレ(黒)はスイーツを楽しんでいた。
キタトレとルドトレ(魔)は互いに気楽そうに振る舞う中、ルドトレ(黒)は少しだけ緊張感を持って座っていた。
「…そういえば、ルドトレ(黒)は昨日の書類、問題なかったかしら?中身を私の一存で確認するわけにはいかないのよね」
「昨日はわざわざ書類を届けてくださりありがとうございます。今の所、特に問題はないので大丈夫です。」
「ああ、その書類なら俺も確認したから大丈夫なはずだね」
ふと確認するキタトレに、ルドトレ(黒)は問題ないことと感謝を伝えつつ、ルドトレ(魔)も大丈夫だと太鼓判を押す。
「それなら良いわ。後は…そうね…」
「…キタトレさん?」
キタトレはルドトレ(黒)の横に来ると、その腕をするりと彼の体に回して触れる。その状態で
「仕事は大変でしょう?」
「…大丈夫です」
「そうかしら。私の親友にもそうやって言う人がいるのよね。…ねぇルドトレ(黒)、たまには遊んで休むことも仕事よ。」
「…」
…返事をしようとしたルドトレ(黒)は、見上げたキタトレの顔のその細められた眼が、酷く優しげな色をしているのに気づいた。
それをルドトレ(黒)は無下に出来るわけもなく、体の力を抜くと後ろに凭れる。それをキタトレの腕が支えて寄せる
「〜♪」
「…」
鼻唄を歌い出すキタトレと、彼に撫でられているルドトレ(黒)。その瞼は少しずつ閉じていき、閉じきって少ししてから
「…やっぱりね。ちょっと強引だったけど、これでいいはず。」
「大分疲れが溜まってたか…ここ最近、ずっと忙しかったからね…」
「多分貴方が休ませたりしてたのでしょうけど、トレーナーの仕事は楽なものではないから仕方ないわね。それに…」
「?」
「…貴方も、一度休息をとったらどうかしら。どうせ休んでないのは貴方もでしょう?ルドトレ(黒)がこんな時点でね。」
キタトレからの提案に、ルドトレ(魔)は笑って返す。その笑顔はなるほど魔性の女と言われてもおかしくないそれであった。
111二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 13:07:28
「…それはむしろ貴方が言われる方だろうに」
「あら、私はしっかり休んでるわよ?休日に本を読んだり皆とお出かけすることは別に仕事じゃないもの」
…休日に資格や資料を読み、チームのやる気を上げるという点で仕事してるようなものだが、休日を取っているのは間違いない。
「まあ、なら俺も休ませてもらうよ。」
「私の事は気にしなくて良いわ、そこのリラックス用につけてみたアロマが切れるまでは好きにいていいわよ」
「…はは、助かるよキタトレ」
どうみても数時間分以上残っているであろうアロマに、キタトレの気遣いを感じながらルドトレ(魔)はソファに倒れ込む。
「〜♪」
彼が鼻唄を小さく歌いながら片手に本を開いたのを見つつ、ルドトレ(魔)もまたゆっくりと意識を落とした。
短文失礼しました
ルドトレ'sを休ませるキタトレです。キタトレからすれば二人共性格的に目をつけるのは当然の事だったり。
キタトレの近くにもルドトレ(黒)と一部似ているのがいるし、面倒な性格の人をかわいい人と言ってそうなタイプのキタトレです。
≫174二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 20:41:16
黒タマ「トレーナーTV、ちっちゃいトレーナー倶楽部〜!」
ブルトレ「えー、ちっちゃいトレーナー倶楽部とは、私たち小さいトレーナー達が色々と楽しむ企画です」
イクトレ「👍」
サトトレ「えっと、今日は何をするんだっけ?」
黒ルド「今日はとりあえず顔合わせらしいな」
赤タボ「他にも居るんだろうが……今んとこわかってるのは1人欠席か?」
ブルトレ「えっと、小タマさんですね」
黒タマ「もうちょいで来れるらしいから気長に待ってくれ」
サトトレ「うん、わかったよ。じゃあ、ジュースだけど一同の顔合わせを祝って…」
「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」
イクトレ「🥂」
絵などない。描けない
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part685【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 21:39:21
誕生日のグラスワンダー
「…………はぁ」
「トレーナーさんは酷いですね~……」
2月18日、バレンタインから4日程たった今日は私にとってとても大事な日でした。
日本に来るまでは家族皆でパーティーを開いたりして過ごし、日本に来てからは日本で出来た友人達とささやかな集まりを催して過ごす……
それが2月18日。
私の……誕生日でした。
そして今年の誕生日。
色々な事が有りましたが晴れてトレーナーさんと恋仲になった私は、今年はトレーナーさんと誕生日を過ごす為に予定を組んでいたのですが……
『明日、私は予定が有りますので~、図書室でレースの知識を学んでいて下さいな~』
そんな事を言われてしまい、実際に朝からトレーナーさんと連絡が着きません。
まさか、GPSまで切っているなんて……
「はぁ……」
今年はトレーナーさんに祝って貰える。
そう思っていただけに、期待が外れた事がより辛くなってしまいます。
「はぁ……」
そして何度目か分からない溜息を吐いたその時です
「おーっと!? グラスが、元気無いみたいデース!」
「グラスちゃん大丈夫?」
「にゃはは〜、溜息ばっかだと幸せが逃げちゃうよ~」
「せっかくこの私が誕生日を祝いに来てあげたのだから、そんな辛気臭い顔はお止めなさいな」
友人達が私の元に着てくれたのでした。
15二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 21:39:41
「それで溜息ばかりしてどうしちゃったのグラスちゃん?」
「スペちゃん……実は」
私の誕生日を祝い来てくれた友人達に、トレーナーさんに会えなくて落ち込んでいるなんて言って良いものか?
そう思いますが、心配してくれている友人達をないがしろにするのも良くないです。
しっかりと事のあらましを伝えましょう……
「なるほど……つまりグラスちゃんは、誕生日なのにトレーナーと会えなくて寂しいんですね!」
「…………はい」
「グラスが乙女してマース……」
「エルちゃんや、思っても言わない方が良いかなぁ~?」
「あなた達……」
……実際に他の人達に言われると恥ずかしいですね。
それと、エルとセイちゃんは後で覚えておいてくださいね?
「まあいいわ! 担当の大事な誕生日に予定を入れるへっぽこは置いておいて、私達でグラスさんの誕生日を祝うわよ!」
「はい、私もそう思います!」
「それなら善は急げデース! グラスの誕生会開催デース!」
「ではでは〜、グラスちゃんのトレーナー室へご案な〜い」
「えっ!? あっ! ちょっ、ちょっと皆!? ひっ、引っ張らないでください」
落ち込む私に見かねたのでしょうか、皆さん私のトレーナー室で誕生日会を開いてくれると言っています。
少々強引な気もしますが、友人達の優しさに心が暖かくなりますね……
そして私のトレーナー室へは直ぐに到着しました。
「は〜い、到着ですよ~」
「寒いデース、早く開けてくだサーイ!」
「はいはい、今開けますよ~」
そう言って扉を開けると
「…………えっ?」
予想外の光景が広がっていたのです。
16二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 21:40:04
トレーナー室を開けて中を見た私の目に先ず飛び込んできたのは、タンポポで彩られた大きなチョコケーキでした。
そしてそのチョコケーキを挟んで部屋の反対側に居たのは……
「……トレーナーさん?」
「誕生日おめでとう、グラス」
「えっ? えっ?」
予定が有るからと連絡が付かなかったトレーナーさんの出現と、誕生日を祝う言葉に私は理解が追い付きません。
「グラスの混乱する顔が見れたデース!」
「にゃはは〜、サプライズ成功〜」
「グラスちゃん、凄いビックリしてるね」
「このキングが手伝ったのだから当然よ!」
そんな混乱する私へと種明かしをする友人達。
最初から皆さんに騙されていたんですね。
「皆さん、よく騙してくれましたね?」
「えっ……ええっ!! グラスちゃん怒っちゃいましたよ!?」
「あれは……照れ隠しデース!」
「顔は嬉しそうですものね」
「う〜ん、でも逃げた方が良さそうか……も?」
あまり広いとは言えないトレーナー室。
その中を所狭しと走り回る楽しげなグラスとその友人達を見て、サプライズ成功を喜ぶ。
普段は物静かな担当ウマ娘が年相応にはしゃぐ様を見ながら、グラスの友人達に協力を仰いだのは間違いでは無かったと独り言ちる。
俺では引き出せないであろう表情に少々の嫉妬を彼女達に抱くが……
17二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 21:40:55
さて、そんな嫉妬心よりも彼女達が熱くなりすぎて料理に影響が出る前に止めないといけない。
せっかく作ったのだから美味しい内に食べて貰いたいものだからな。
「皆さ〜ん、冷めない内に食べましょうか~」
「「「「は〜い!!」」」」
「す、すみませんトレーナーさん!」
「ふふっ……」
そして皆が座ったのを確認して、改めてグラスへと向き合い……
「さて、改めてもう一度俺から言わせて貰うよ? ……グラス、誕生日おめでとう!」
「はい! ありがとうございます♪」
この言葉を皮切りに、グラスの誕生日パーティーは行われるのでした。
うまぴょいうまぴょい
了です。
朝に出来て無いと言ったがなんとか間に合ったよ……
グラスワンダー……誕生日おめでとうございます
ご顕在のグラスワンダー号も含めて、誕生日を祝いましょう。
≫32二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 22:32:27
9話『風向き:過去→未来』
「これで合ってる……わよね?……うん、合ってるはず。」
鏡で注意深く確認しながら呟く。俺から見て左、実際の右耳には白縹色で作られた氷の結晶がついてる耳飾り。ついさっき実家から届いたばっかのものだ。
「まさか耳飾り付けるのにこんなに時間かかるなんて……確かに今まで自分に付けたことなかったけれども。」
この調子だと慣れるまでもう数日はかかるだろうなと考え、苦笑い。
それから外れたりしないかも確認してから洗面所を出る。向かうは寝室、引き出しから1つの写真を取り出して机の上に立てる。
そして……
「こんにちは、姉さん。いつもより早くてごめんね。でも、どうしても伝えたいことがあって。」
ゆっくり、姉さんの写真に語りかける。
「これ、姉さんに俺がプレゼントした耳飾り。お母さん達に探してもらってたのがやっと見つかったの。」
仏壇はない。引越ししたばっかの頃は財布に余裕なかったし、今もときどき宅飲みの場になるから。日頃のアレコレ忘れて騒ぐような時にしんみりさせたくないだろ?
「やっとと言えば、バレンタインのプレゼントももうすぐ用意完了するんだ。やっぱ全員に配るとなると作り慣れてても時間かかるね。」
ちな作ったのは各々の担当を模した羊毛フェルトのミニだるま。1つにかかる時間が少ないのと縁起いいのとが大体の理由だ。
「人生ってホントに面白いよね。男のわたしが、バレンタインで渡す側に回る日が来るんだよ?」
それもウマ娘になる事で。バレンタインの形が時と共に変わって男性も渡す時代が来るとかだろうよ普通なら。
「……きっとこれからも想像を遥かに超える事がたくさん起こると思う。」
実際に動物化に幼児化、あと理性消滅……だったか?他にも数多く、俺が巻き込まれる前からそういうのは起こってる。
「だから、耳飾りから見てて。わたしは……俺は、姉さんの分まで生きるから。めいいっぱい、楽しんで!!」
────うん、ずっと見守ってるよ
そう聞こえた気がして、思わず振り返る。幻聴だろうか?でも、なんとなくそうは思いたくなくて。
「……ありがとう。」
返した言葉は、雪のようにどこかへ溶けていった。
33二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 22:32:50
──2月14日、バレンタイン。ざっくり説明するなら、友達や家族にチョコを贈り贈られするイベント。けど、実は別にチョコじゃなくてもいいらしい。
そんなちょっとした豆知識を持ってあたし、アイネスフウジンは今年のバレンタインを迎えた。
「アイネスさん、私のチョコ受け取ってください!」
「私のも!」
「手作りしてきました!」
「あはは……みんなありがとなの!」
これまでと比較にならないくらいのチョコに迎えられながら。
心当たりはいくつかある。逃げシスの活動とか、ダービーとか、去年は色々あったから。
でもここまで多いのは予想外。先輩達曰くファンの人達からも届くらしいけどちゃんと食べきれるかな。うーん……ちょっと不安。
「……ううん、悩んでても仕方ない!全部確認してからトレーナーと考えるの!」
仮に多くてもトレーナーならいい対処法を知ってるだろう。気持ちを切り替え、トレーナー室へと駆け出した。
「んー、それなら長持ちするもの見繕って実家に郵送しようか?」
「……それアリなんだ!?」
「大ありよ。人によっては数名で処理できる限界を超えた量とか贈られてくるしね……」
そう言ってトレーナーが若干遠い目をする。そういえば最初に担当した人がめちゃくちゃ女性人気あったとか言ってたから、その時に苦い思いしたのかな。
「……まあ無理して食べた結果体調崩した、なんてファンは望んでないでしょうし。」
「あー、そっか……そうだよね。」
「どうする?」
チョコの詰まったダンボールを机に運びながらトレーナーはのんびり聞いてくる。数は三つ、全部ぎっしりチョコ入ってるって考えると結構多い。
……よしっ。
「決めた!家に送るの!」
「おっけー。じゃあ選別始めましょう。」
「はーい♪」
34二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 22:34:12
そうしてチョコの仕分けがひと段落した頃。
「はい、フウ。ハッピーバレンタインってね。」
「!いいの!?」
赤い包みを手渡され、フウは目を大きく輝かせる。
「ええ、期待に応えれてるかは分からないけど……」
結局チョコは手作りできなかったしな、ダークマター化回避できずに。もちろんその分他のに力入れたが……
とか考えてたらフウが紐をほどき終える。
「どれどれ〜……これ、もしかしてメンコ?」
「そう、5種類くらい。あと市販品だけどチョコも入れといた。」
「わっホントだ……ありがとうトレーナー!メンコ、大事にするの!」
その言葉を聞いて心底ホッとする。正直、喜んでくれるかめちゃくちゃ心配だった。あーよかった、マジでよかった……
「……じゃあ今度はこっちの番。ハッピーバレンタインなの、トレーナー♪」
「えっ?……え??」
「……別にトレーナーがウマ娘になったからってあたしが男になったわけじゃないよ??」
そこまで言われてやっと疑問が解ける。 ……いや、どんだけ緊張してたんだ俺????まあそんな事よりフウに集中だ。
「ありがとう、フウ。早速開けてもいいかしら?」
「もちろん!」
手に持った感じ、そこそこの重量はある。容器の中に色々入ってる感じか?と予想しながら包みを開く。
底が手のひらくらいのサイズの瓶だ。そして中身は……
「……飴、で合ってる?」
「うん!ほらトレーナー、一度何か始めたら終わるまで動きたがらないでしょ?それでふとした時に口に入れれるように選んだんだ。」
「なるほどね、確かにそれは助かるかも……ってあら?」
色とりどりな飴の山の頂上、他とは明らかに違う黒い梱包がある。
「……みんなにも配ってる、あたしの手作りチョコ♪日持ちしないから入れたのは1個だけだけど、今言ってもらえれば直接渡すの!」
了解の返事を返しながら梱包を外して、チョコを口の中に放り込む。……うん。とっても甘くて、そして。
「めちゃくちゃ美味しい!フウ、おかわり!」
「りょーかい、なの!」
幸せの味とは、こういうものを言うんだろう。そう思いつつ、もらった二個目を笑顔で食べるのだった。
35二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 22:34:34
「トレーナー、喜んでくれてよかったの。」
1人っきりになったトレーナー室でそう満足気に呟く。トレーナーはというとほかの人たちへプレゼントを配りにいって不在。
ミニだるま、結構残ってたから時間かかるんじゃないかな。少なくとも今戻ってくることはなさそう。
「あたしは助かるんだけどね……」
だって今のあたし、きっとすごい顔してる。一目見るだけで隠してることバレちゃいそうな感じの。
「……トレーナーは。」
優しくて、聡明で、いつも親身で。
ちょっと子供っぽいとこもあるけどそこがまた可愛くて、なのにいざと言う時はずるいくらいカッコよくて。
ナイナイ尽くしのあたしにはもったいないくらいのいい人だと、今でも思ってる。
けど、同時にこうも思うのだ。そんなあたしにとってトレーナーと会えたことはまたとない奇跡で……
「だからこそ。絶対に逃したくない、って。」
勇気のない今のあたしじゃ、まだ言葉にすることはできないけれど。いつか、必ず口にして伝えるから。
……今は、この飴で許してほしい。
──バレンタインに贈るものは、別にチョコじゃなくてもいい。そして、チョコ以外のお菓子にはそれぞれ意味が宿るらしい。
バレンタインのプレゼントとしてのキャンディ、その意味は────
「────、トレーナー。」
風は、流れだ。
音を乗せ、天気を乗せ、人を乗せ、時をも乗せて、風向きへとそれらを導く。
──せめて、どうか。彼女達を乗せた風の行先が、きらめくような未来でありますように。
フウトレ長編『"フウジン"の帰還』 完
≫45二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:21:41
ある日のこと。私と魔ルドさんが佇んでいると、何やら黒い何かが突っ込んできた。
「ククク、俺は別バースのトレーナーとなんか整合性を保ちながら入れ替える怪異」
「”別バースのトレーナーとなんか整合性を保ちながら入れ替える怪異”!?」
「なんでしれっと受け入れてるんだ!?」
「だって、嘘をついているようには見えないし」
そんな会話をしていると、黒いのは魔ルドに指……指?さしてこう言ってくる。
「くらえ!バース交換ビーム!」
「な、なあっ!?」
「ま、魔ルド!?大丈夫か!?」
「な、なんだか、胸が熱い……」
「フフフ……バース交換ビームの効果は三時間、それまでの間楽しんでいるといい……それでは、さらばだ!」
そう言いながら怪異は三徹後のハルウララくらいの速度で逃げていき、残されたのは私と、何やら白い光に包まれる魔ルドだけだった……
そうして、白い光が徐々に消えていくと、そこにいたのは……
「……双子の、妹?」
顔は魔ルドそのままだが、髪はまとめておらず、胸は二回りほど大きく、衣服もパンツスタイルからスカートに変わっている。あとは……
「どことなく全体的にむっちりしてないか?」
「……酷くない?黒ルドちゃん」
「あ、起き……え?えーと、魔ルド。もう一度、私の名前を呼んで……」
「んー、黒ルドちゃん?」
「……あ、呼び方も変わるのか!?」
「あー……と。まあ色々あって……って、とりあえずトレーナー室行こう」
「えっ、ああ、うん」
46二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:22:02
そう頷くが早いか、魔ルドがひょい、と私を持ち上げて走り出す。
一瞬たじろぐが、18cm差とウマ娘になってからの時間という、圧倒的な差が抵抗を許さない。
そうして、運ばれながらふとした疑問点を口に出す。
「……そういえば」
「なぁに?黒ルドちゃん」
「今の魔ルドのいた世界って、どういう感じだったんだ?」
「んー、ルドルフの担当が私一人で。ちょっと色々あって」
「……そうか。何があったのか、聞いてもいいか?」
「んー、ごめんなさい。流石に黒ルドちゃんでも、ちょっと話せないかな」
「……もしかして、ルドルフと何か──」
私の疑問をかき消すように、彼は少し怒ったように言った。
「言っておくけど。”私”も”僕”もちょっとしか変わってないから」
「わかった。そういうことに、しておく」
「うん、わかればいいよ……って、ついたぁ」
正直、ここまで誰とも会わなかったのは偶然か怪異の仕業か。あっけなくトレーナー室まで到着してしまった。
そして、魔ルドは続ける。
「……じゃ、しばらくここにいる……けど」
「けど?」
「黒ルドちゃん、吸わせて?」
「……は、え?」
「んー”僕”も疲れてるから、黒ルドちゃんを吸って回復したいなって。勿論、代わりに膝枕とか色々するから!お願い!」
「わ、わかった、吸うだけ、だよな?」
「うん、吸ったりするだけ」
47二次元好きの匿名さん22/02/18(金) 23:22:18
そう言いながら、彼は私を抱き、ポニーテールに顔をうずめる。
そうするとやはり背中に当たる大きなそれ。
……柔らかい。
「……いい匂い、食べちゃいたいくらい」
「冗談には、聞こえないのだが」
「ちゃんと冗談だよ!流石に、こっちの”僕”に迷惑かけるわけにもいかないし……」
何かが聞こえた気がするけれど、無視する。
「……まあ、でも。黒ルドちゃんはいつもいつも、頑張ってるよ」
「急に、何を」
「だからね、私やルドルフにも、もっと頼ってもいいんだよ」
そう、ゆっくり語りながらそっと頭をなでてくる。
そうして、しばらく撫でられ続けると、だんだん、手の動きが遅くなっていき……
「……すやぁ」
「寝、寝てる……」
やがて、抱きしめられたまま眠ってしまう。
勿論、私は抜け出そうともがくが……
「抜け出せない……」
結局、魔ルドが元に戻ったうえで目覚めるまで、このままのんびり待たざるを得ないのであった。
因みに、怪異はギムレットさんに蹴り飛ばされて散ったらしい。
≫143二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 20:02:54
「ねぇねぇ、そこのコンビニ寄ってみたいな!」
「うん、いいよファイン」
府中のどこかで、似たような姿で歩く二人。ファインとファイトレ(男)は散歩という名目で歩いていた。
二人共トレセン冬制服であり、ファイトレは伊達眼鏡とストレートに髪を伸ばして最低限区別してもらえるような状態。
そもそもなんで学園でもないのに制服なのかと言えば、ファインが普通の学生の気分を味わいたいというワガママである。
「ふふっ、これも女子学生の日常ってものなんだね!」
「そうだね」
コンビニの店内へ堂々と入っていくファインの横について入るファイトレ。今のファイトレはもう普通に女子学生である。
いらっしゃいませ~という店員さんの声を聞きながら、店内を早速詮索するファイン。その眼はやはり輝いていた。
「わぁ〜!」
「懐かしいなぁ…学生時代はよくコンビニで弁当を買っては食べてたよ」
「そうなの?」
「道中にあるからよく寄ったし、その店でバイトもしていたかな」
自分で作ることも多かったが、半分くらいはコンビニかスーパーマーケットで買ってるファイトレ。
ファインはそんなトレーナーの昔の一面に興味深そうな表情を見せつつ、レジ横の肉まんを指さすと
「…ねえ、私はこの肉まんを買うつもりだけど、キミはどうするの?」
「あー…いいかな」
肉まんを買ってるファインを見つつ、今日の栄養バランスとかを考え直すファイトレ。ラーメン巡りに付き合う以上慣れた。
コンビニから出る時、外に見慣れた顔のSPを見かけてお疲れ様ですと内心思いつつ、また路端を歩くファイトレ。
「ん〜!美味しいね!」
はふはふと熱々の肉まんを食べるファイン。可愛らしい姿を眺めていると、ファイトレの前に出される肉まん。
「…キミも食べる?」
「い、いやいいかな…」
「…いらないの?」
「うっ…食べます…」
あっさりと押し負けたファイトレは、ファインが食べていた肉まんを前に硬直する。
…担当に人生かけているファイトレだが、その根っこは一市井である。ファインの食べていたそれを食べるのは抵抗があった。
「お、美味しいよファイン…」
(味以前に胃が…SPさん達本当にすみません…)
「…ふふ、キミもそう思うんだね」
145二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 20:03:27
───ファインのニヤニヤした顔に、ファイトレは少し困り顔をしながら見つめるのであった。
短文失礼しました
ファミマコラボよりコンビニに寄る二人です。ここのトレーナー達もバイトしてたり色々やってたのかなと想像できます
ファイトレはファインに振り回されてる姿しか見えない。今のファイトレがファインそっくりさんであるけどな!
≫159二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 21:20:58
[保険医からすると]
「……というわけでまあ、大体はこんな感じかな?タキトレにはお世話になったし、本当に感謝してるわ。今回は本当にありがとう」
「なるほど……」
アイネスフウジンのトレーナーが過労により倒れ、メジロライアンのトレーナーから電話を受け取って保健室を飛び出してから早数日。理由を話して許可を取ったとはいえ、本来ならば安静にしているべきだった筈の状況で激しい運動をしたことについて、フウトレは当時保健室の担当医であったタキトレに事の顛末──気恥ずかしいからフウとの会話の詳細は除くけど──を説明していた。
何故自分が過労で倒れるに至ったか、そして担当であるアイネスフウジンが寮から消えた理由と彼女をどう連れ戻したかについてを眼前の相手に語り、タキトレは時折相槌をつきながら自分の話を聞いていたというのが先程までの状況だった。
「……フウトレさん」
事の顛末を聞き終わった後、タキトレの眉間にはしわが寄せられていた。そして先程まで話していた相手の名前を呼ぶ声には、強い安堵と、それと同じぐらい怒りや呆れと言った激情に近い感情が滲んでいた。
(タキトレ、もしかして今凄い怒っている……?)
今眼前で顔をしかめている相手──タキトレは温厚な人間だ。保険医として来客には物腰柔らかく接し、トレーナーとしては気さくに振舞う。学園内でも屈指の奇人と謳われるあのアグネスタキオンの実験に巻き込まれてもそれを怒ったりはせず、困り眉になりながらも手伝っているのがタキトレという人物だ。
そのタキトレが怒りや呆れと言った感情を抑えきれていない。つまり、それは彼が間違いなく類を見ないほど怒っているということで──
160保険医からすると2/422/02/19(土) 21:21:34
「色々とありますが、まずはお疲れさまでした。フウトレさんがフウジンさんとまた一緒にトゥインクルシリーズに挑むのを見れるというのは、1人のファンとして嬉しいです。ダービーでのあの逃げ切り勝利は今でも時々見返していますよ」
「は、はい。ありがとうございます……?」
タキトレからかけられたのは労いの声。そこには怒気といったものは全く含まれておらず、更には歓びの感情を持って自分たちのファンだと言ってもらったことは純粋に嬉しいからこそ、敬語になりつつも感謝の言葉を口にする。
だが違和感は拭えない。自分はなんとなくだが、こういった怒り方をするであろう人を1人知っている。今眼前に居る相手の師匠筋にあたる、いつもは優しいけど怒る時は本当に怖いであろう人を知っている。
「ですが」
「自身の過労が原因で契約解除になりかける、というのはトレセン学園の保険医として、そして1人のトレーナーとしてあまり看過できません。私はあまりトレーナーさんの健康問題などに口を出したりしませんが、それは皆さんが担当の方に迷惑をかけることは無いと信じているからであって、倒れるような生活をしていても良いということではありません」
「はい…まったくもってその通りです……」
指を一本立てて滔々と、しかし強さが含まれた語気で筋道立てて話していくタキトレ。
自分としてもそう言われてしまうと反論の使用が無い。トレセン学園のトレーナーは副業が許可されている。オペトレさんは会社の社長だし、自分は幾つかの執筆活動、それこそ今眼前に居るタキトレは本来ならばトレーナーの方が副業だ。自由と自主性を重んじるトレセン学園の気風は確かにトレーナー達の間にも流れている。しかし、それは決して何でもやっていいということではない。
もしフウが倒れてしまいそうなぐらい自身の許容量を超えてバイトをしていたら勿論自分は止めていただろう。だが、自分は自分の状態を甘く見積もった結果倒れ、一時は契約解除になりかけていた。フウからの言葉もあって続けていた副業での活動だが、あの時の自分は今顧みてみるとトレーナー失格だったのではないかと、そう思わされる。
161保険医からすると3/422/02/19(土) 21:22:03
「と、言ってもこの件に関する責任の一端は以前ビコトレさんが倒れた時に注意喚起を強くしなかった私にもあるでしょうし、私も他人のことは言えませんからお説教というのもここまでにしておきましょうか。これ以上言っていたら私も先生とかタキオンに怒られてしまいそうですしね。……良いですか。もう2度と、こんなことをしてはいけませんよ」
「ああ、フウに契約解除を迫られてしまうなんてことはもう懲り懲りだわ。……ところで、タキトレも倒れたことがあるって本当なの?体調の管理とかきっちりとする側だったから意外な印象があったけど…」
「ええ、ただし私は倒れかけたぐらいですし、タキオンに救われた側だったのでフウトレさんとはまた少し違いますけどね」
少し気恥ずかしそうに自分も倒れかけていたのだから、他人のことはあまり強く言えないと話すと共にこちらに釘を刺しに来るタキトレ。
ああ、まったくその通りだ。今回はどうにか関係を修復できたが、次もその通りとは限らないし、そもそもの話担当であるフウから契約解除を切りだすことも自分が契約解除を告げることも正直言ってしまえばしたくもされたくもない。
それにしても、健康には常日頃から気を使っているタキトレが倒れかけて、しかも不健康な生活をしているであろうタキオンに救われるとはいったい何があったのだろうか…。
「なあタキトレ。タキトレが倒れた時って、いったい何があったんだ?タキオンに救われたところも含めて今凄い気になってるんだけど…」
「恥ずかしいのでそれは秘密、ということで。それと、話も終わりましたしもう行って構いませんよ」
「でもわたしも話したんだし、タキトレも少しぐらい話してくれても……」
「フウトレさん、あまり人の恥部を詮索するものではありませんよ。またどこかで話す機会があるかもしれませんから、そこまで楽しみにしていてください。……ほら、この後フウジンさんの練習があるんですから早めに行った方が良いんじゃないですか?」
162保険医からすると4/422/02/19(土) 21:22:25
そこを聞いてみると、やんわりと拒否の意思を告げられる。どうやら彼はこの場では話す気はないらしく、これ以上追求したとしても望む答えは返ってこないだろう。この後のフウとのトレーニングを持ち出されて退出を促されると最早言い返しの使用が無い。彼がそう返すということは相当に話すのが恥ずかしい、または話したくないことなのだろうか。
「それもそうね。フウを待たせるのも悪いし、今日はお暇させてもらうわ」
「早くフウジンさんのところに行ってさしあげてください……そうだ、フウトレさん。最後に1つ」
「ん?どうしたのタキトレ」
「フウジンさんの次走が決まったら、ぜひ教えてくださいね。応援に行かせてもらいますから」
弾むような軽やかさで、次のレースの日程を教えてもらうように頼んでくるタキトレ。彼の声は次のレースを今から心待ちにしている期待感とアイネスフウジンがターフに戻ってくるという喜びに彩られていた。間違いなくわかる。この人はフウのレースが好きな人なんだろう。
「──ああ!楽しみにしててくれよ!」
だからこそ、自分のすべきことがまたハッキリと再確認させられた。タキトレに一礼して見送られながら保健室の外に出る。さあ行こう、フウがトレーニングコースで待っている。トレーナーとして自分のいるべき場所は彼女の隣なのだから。
そう決心しながら歩いていると自分の背後から風が通り抜けていく。12月にしては暖かく朗らかな冬の風は、自分が向かうべき先を指し示すようにトレーニングコースの方へと駆け抜けて行った。
≫166二次元好きの匿名さん22/02/19(土) 21:53:02
「パラパラパラ…件の小娘に例の書状を送りつけてやりました。少々邪魔は入りましたが、これであやつはもう2度とは走れないでしょうな」
「おお、よくやったのう。……これは褒美じゃ。受け取るがよいメカ」
「なんと……これはこれは、誠にありがたき幸せ……」
「これで奴の陥落は時の問題……もはや我らの敵ではない。次期最優秀トレーナーの座はこの儂に決まったも同然!さあ飲め飲め!今日はめでたき宴メカ!」
バシュッッ!!
「これは……ボールペン?」
「そこにいるのは誰じゃ!障子を開けよ!」
シューッ
「こいつ……先日の邪魔はこやつの仕業です!」
「自身の醜き私腹を肥やすに飽き足らず、あまつさえその利己的な目的の為の犠牲にウマ娘さえも手にかけるとは……」
「黙れ!だまれ!貴様無名の分際でよくぞメカをここまでコケに……」
「戯け者!余の顔を見忘れたか!」
「なにぃ、余じゃと?」
カーン
「…う、上様!!」
「罪なき1人の少女を拐かそうとしたにも関わらず、その競技人生さえも断とうとは……中央のトレーナーとは思えぬ所業。その宴、この世の名残りの宴と知るがよい」
「そんな……どうかお慈悲を……」
「その方、中央トレーナーの座にありながら贔屓目に見る輩と結託して1人の少女を貶め、あまつさえ、不正を告発しようとした新人を手先を用いて亡き者にするなど、その罪、断じて許し難い。潔く方の裁きに服すがよい」
「ぐぬぬぬ……そこまでばれているのなら、毒を食うは皿までよ!曲者じゃ!皆の者!出合え出合え!!」
「ほう……」
「この者、上様の名を騙る不届き者!奉行に代わって成敗してくれるわ!こ奴を討ち取れぃ!」
「どこまでも腐りきった奴め……娘よ。今ここでそなたの悲しみ、身勝手ながら晴らさせておう」
はい