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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part216【TSトレ】
≫57二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 19:47:43
テイトレウラトレ結婚式話
「毎度お馴染みいつもの部屋ーってな…今回は誰がいるやら」
「おやテイトレ。遅かったですね」
「神様!神様ー!時間を巻き戻して!」
「ふふ…別にお説教なんてしませんよ…さぁお掛けなさい。お茶を淹れましょう」
「あっやった。先生のお茶美味しいから好き」
「貴方は御茶菓子の準備をお願いしますね」
ウラトレが急須で丁寧にお茶を用意し、テイトレが頭を回してそれに合う菓子を準備する。最終的にとあるデパートの限定の和菓子に舌鼓をうちながら香り高いお茶を楽しみ、最近起きた出来事や担当の話を交わしながら一息つく。
「それで、どうすればこの部屋から出られるんですか?」
「…先生…笑いながらいうのやめて下さい…というかそもそも前に写真撮ってたじゃないですか…」
くすくすと上品に笑うウラトレに頬を染めながらテイトレが返す。そもそも以前テイトレとウオトレ202がウエディングドレスに着替えた際に二人を囲んで感想を言いながら写真を撮っているのだからこの部屋の事を知らぬはずがない。ウラトレなりの冗談である。
「うー…結婚式とかドレスとか、それにまつわる話をすれば出られますよ…そもそも何か用事ある人は呼ばれないっぽいですけど」
「三女神様も気を遣っておられるのかしらね」
そんな気遣いはいらねぇ、と苦虫を噛んだ顔をするテイトレを見てまた一つ笑い、彼女が口を開く。
「では楽しくお喋りをしましょうか。どんな話をします?」
「そうですね…じゃあ先生の願望なんて…あっごめんなさい!冗談です!」
にっこりと笑うだけで何も言えなくなる圧がウラトレにはあった。女性に対してプライベートの事や年齢を尋ねるのは死地に向かうと同義である。
「でもなぁ…もうウエディングドレスも着たし結婚式の話もしたし…」
「でしたら白無垢はどうです?貴方に良く似合うと思いますが」
「いや…俺はもう…それにほら!隣の部屋から探すのも面倒ですし!」
パチン!とウラトレが一つ指を鳴らす。すると床が開いて和婚に利用される婚礼衣装一式が自動で出てきた。
「…あー…えっと…こういうのは先生の方がお似合いだと思いますし…」
「テイトレ」
「はい…」
全てを諦めた顔でテイトレが服を脱ぎ始める。大魔王から逃れられないように目上の方、特に先生には逆らえないのだ。
58二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 19:48:12
「…どうです?苦しくはないですか?」
「大丈夫です!えっと…ここ持っておけばいいんですよね?」
その道のプロに引けを取らない手際でウラトレが着付けをする。和装ブラ、肌襦袢、長襦袢を自分で着た後に掛下と呼ばれる専用の振袖を着ている最中である。
幾度も「何でこんなこと出来るんですか」「先生着た事あるんですか」と口に出そうになったが鋼の意志でテイトレは耐えた。彼は学習するのである。
「はいもう離しても大丈夫です…今から飾り小物を付けていきますから気に入ったのがあればそれにしましょう」
「…先生がウキウキで選んでるそれでもういいです…にしてもこれ綺麗ですね。ウララちゃんの髪色に合いそうで…あっあっ」
鋼の意志は発動しなかったようだ。彼は学習しないのである。
「…そうですね。ハルウララは世界一可愛いですから何でも似合いますけど、ぜひ白無垢を着て欲しいです」
「えっと…もしウララちゃんが結婚するってなったら先生は…」
「彼女が選んだ人なら文句は言いません。ですが、簡単な試練程度は受けて貰いますけど…ふふ」
血反吐吐くんだろうなぁウララちゃんと結婚する人…とテイトレが未来の誰かに同情してる間に色小物の装飾も終わる。基本的に白で合わせるのに対し上品ながらお洒落にカラフルな色小物が穢れのない真っ白な掛下に良く似合っていた。
「では最後に打掛…白無垢ですね」
皺のつかないように、汚れないように丁寧にウラトレが着付けをする。訪れた沈黙を破ったのは彼女だった。
「テイトレ」
「何でしょう先生?」
「貴方は今、幸せですか」
「…それ、は」
「辛いことがありましたね。姿が変わり、心が変わり…今だってそうです、貴方が本当に嫌なら今すぐにでも」
「先生」
言葉を切るようにテイトレが口を開く。
「俺は、幸せですよ」
振り向かずに言う。震えも、恐れもなく。
60二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 19:48:42
「まだ杖は必要ですけど自分の足で歩けます。テイオーと、みんなと過ごす日常が楽しいです…今だって、恥ずかしいですけど…ちょっとだけワクワクもしてますから」
「…そうですか」
白無垢の着付けが終わりウラトレの手が止まる。くるりと振り返りその姿を見ると彼女は俯き、表情は見えなかった。
「…先生」
テイトレがそっと肩に手を置く。何を言おうかと言葉を探そうとした瞬間、がしりとその腕が掴まれた。
「へっ?」
「それを聞いて安心しました。ならば私も全力で答えましょう」
ゆっくりと上げた顔に写っていたのはいつもの優しい微笑み、で隠し切れない悪戯っ子の笑み。掴んでいない方の手を見ると指の間に挟んだ幾つもの化粧道具。
「ふふ、もうちょっとだけ付き合ってくれますね?」
「…はい」
「おや…みんな待ってたんですね」
「お疲れ様です先生!…それにテイトレ…」
「うん…」
声をかけたブラトレを筆頭に茶化すために出待ちしていた何人かは口を閉ざす。
楽しそうにしているウラトレと完璧に化粧され、綿帽子まで被った疲れ切ったテイトレの姿を見て追い討ちをかけるほどみんなは厳しくなかった。
「ふふ…どうです?なかなかいい眺めでしょう」
「ほっほっほ…なるほどなるほど…」
訂正。もう一人楽しそうにしている人物がいた。ウラトレの言葉に頷くヘリトレだ。
「のうテイトレ」
「…はい…なんでしょう大先生…」
「媒酌人は儂にやらせてくれぃ。完璧にこなして見せるからの」
「でしたら私が媒酌人婦人ですね。エスコートしてあげますから」
「…はい…もうなんでもいいです…」
その後、二時間ほど写真撮影や式について楽しそうに話をする三人…死んだ顔のテイトレを可哀想に見て出待ち組は彼を見捨てたとさ。自分が一番大事だからね。
うまぴょいうまぴょい。
≫121二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 20:36:52
雨の日に歩いていたマクトレとマックイーン。
マクトレは位置も通り自然と車道側を歩いていた。
しかしそこに現れるクソデカ水溜りと都合よくやってくるハイスピード・ジドーシャcar!
撒き散らされた水からマックイーンを守るためマクトレは傘と体をマックイーンの前へ!
結果、マックイーンに届いた水滴、1ml!しかしマクトレはめっちゃ思いっきり濡れてしまった!
マックイーンは身を挺して自分を守るマクトレに感謝し、そしてマクトレのためにもより精進することを決意!
しかし。
──────ナイダン、覚醒。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part217【TSトレ】
≫12二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:04:51
「ルドルフ!助けて!」
いつも通り生徒会室に来るルドトレ。
「……また、かトレーナー君。今度は一体何が……」
「実は、ウマ娘用のアレコレを作ってる会社にいるおじさんから、お見合いの話が来てて……」
「……それで?」
「そのおじさん、私が今こうなってることを知らないから家族みんな大慌てで……でも、代役を立てるにしても兄さんは仕事の都合で無理だし、弟だと教養とか知識の差ですぐバレそうだから……その」
「私と君の仲だ、遠慮なく言ってくれ」
「……ルドルフ、男装して、私の代役としてお見合いしてきてくれない?」
上目遣い、甘えるような声、潤んだ瞳。これで断れば罪悪感必至だ。
「……熟慮断行したい。もう少しだけ時間を……」
「七日間ハワイ旅行のペアチケットあるよ?勿論新しい水着も買ってるよ……?」
「しかしだな……君の演技は出来なくないとはいえ……」
どうにか耐えるルドルフに、ルドトレは追い打ちをする。
「あ、水着見せてなかったや。じゃーん!」
そこにはフリルをあしらったホルターネックのビキニを着たルドトレが寝そべっており……
────ルドルフは耐えられなかった。
「わかった。やろう」
「ありがとうルドルフ!愛してる!」
そう言いながら抱き付いてくるルドトレに「このままでいいのか」等と思いつつも受け入れたのだからやらねばと思うのであった。
13二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:05:02
そして当日。
ハンチング帽、12cmのシークレットブーツ、尻尾はトレーナー向けのウェストポーチで隠し、胸はサラシで潰したルドルフは細身の童顔の美男子に見えなくもない。
「流石に君とかけ離れてるように思えるが……」
「と、言うだろうと思って協力者を呼んどいたから!」
そうして、二人のウマ娘が入ってくる。
「……どうも。といっても、他人に似せるメイクはあまりしたことないから上手くやれるかわからないけど……」
「お久しぶり。といっても、今は私もシンボリか。まあシチー含めて全力は尽くすから」
ゴールドシチーとシンボリマティリアル──つまりはシチーとシチトレである──が入ってきた。
「ありがとうシチトレちゃん!お礼は何がいい?高級スイーツ?」
「……後で話そうか。シチー、やっちゃおう」
「りょーかい。さ、会長はこっちに」
「ああ。頼む」
そうして、メイクが終わり、ウィッグをつけるとそこにはかつてのルドトレによく似た雰囲気の男性──尤も、中身はウマ娘なのだが──が座っていた。
「はい、完成したよ。あ、ウォータープルーフの化粧品を使ってるから落とすならこのクレンジング剤使ってね。これ使わないとなかなか落ちないから」
「あ、シチー。化粧品はどうする?」
「全部ルドトレさんが買ってくれたし、置いといていいかな」
「わかった。そうしておくね」
テキパキと後片付けを終え、「成功するといいね」とだけ言い残して立ち去るシチーとシチトレ。
14二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:05:32
後に残されたルドトレは、化粧で変わったルドルフの顔をまじまじと見る。
「おおー……鏡見てるみたい」
「……手鏡を取ってくれないと私自身が把握できないのだが」
「あ、ごめんごめん。……はい」
「……まさしく、昔の君だな」
「だね。それじゃあ……お願い、ルドルフ」
「……コホン。任せてくれ。ちゃんと"私らしく"しよう」
その声色も、かつてのそれに少しばかり似てるような気がした。
「……あ」
「……それじゃ、"行ってくる"」
「……い、いってらっしゃい」
その声の裏、汗が流れていたのは本人すら知らない。
16二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:05:57
────そして、見合いの場。
「どうも。本日はよろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いしますね」
すんなり進むそれは誰が見ても初々しい男女のお見合いで、片方の中身が男装したウマ娘などとは予想不可能である。
「お仕事は中央トレセン学園でトレーナーをなされているとのことでしたが」
「ええ。教官と違い少ない数のウマ娘を見ることになりますが、それであっても楽しい仕事です」
「なるほど」
────尤も、本物にあった異性を引き付けるそれは大分薄れているが。
そうして、何度か危うい場面もあったが無事にお見合いは終わりを迎え──
「……よろしければ、また会いませんか?」
「……大丈夫ですが。当面の都合がつかない上、身分的に忙しいので後日都合のいい日をこちらから連絡させていただきます」
「わかりました。お待ちしておりますね」
と、事実上のお断りをし、無事にお見合いを終えたルドルフはすたすたとルドトレの待つ彼女の部屋へと向かう。
17二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:06:38
そこには男時代のシャツにくるまり、震え、泣いているルドトレの姿があった。
そして、ルドルフが近づくとびくり、と肩を震わせる。
それを見たルドルフは即座に靴を脱ぎ、ウェストポーチを外し、スーツを脱いでワイシャツだけになり、洗面器まで向かいクレンジング剤で化粧を落とし、ウィッグを取り、いつもの姿に戻る。服装はややだらしないが。
そうして、震えの収まってきたルドトレに優しく語りかける。
「……大丈夫。私は私だ」
「わかってる。わかってる、けど……あの時から、私が、私でない気がして……」
「大丈夫だ。たとえ君がどのような姿となろうと、私は君を愛す。今の君も、かつての君も。どちらも君だ。……それに」
甘い、優しい口づけ。
「君からそれを奪ったのは、私だとも」
18二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:07:01
「……だね。ごめん、なんか、湿っぽいこと言って」
「大丈夫だとも。さて、夕食は私が作ろうか?」
「ううん、私が作るよ?ルドルフは演技を頑張ったんだから、しっかり食べて休まないと」
「……なら、任せよう。……あ」
「……どうしたの?」
「トレーナー君。私の着替えは?」
「……朝来たときのしかないけど……あっ!下着……」
────ルドルフは監禁され、ご褒美を与えられた。
翌日朝、必至にスカートを抑えながら自室に駆けるルドルフが見られたとか見られなかったとか。
≫70侘助21/10/12(火) 21:35:37
スペトレ「振袖着るときって、いつもの下着そのまま使える訳じゃないんですね……」
スズトレ「私も初めて知ったわ……」
テイトレ「着付け難しくない!?」
こんな感じで一緒に振袖選びに概念いいなあ……
担当に選んでもらうのもアリだな……
ドベトレは曇るだけで湿らないかなおそらく……
≫95二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:58:39
こんにちは!言うっちまうスレのエンコのマエストロ(効果は保証いたしかねます)パラシンちゃんです!
今日は元旦!と言うことで振り袖です!慣れない格好ですから何か恥ずかしいです///
────────
食堂で甘酒を貰って来ました!正月と言ったらこれですよ!ヒクッ、もちりょんノンアリュでしゅよ!未成年でしゅから!ヒック
やや!珍しくブラトレ先輩が一人でいますね!
先輩!一緒に飲みましぇ
コケるパラシンちゃん、咄嗟に支えようとするも一緒に倒れてしまうブラトレ
バタッドン
────────
んあっ♡んっ♡やんっ♡
押し倒されちゃいました♡先輩...顔真っ赤です...
きっとこの後快楽天見たいにされちゃ、ちょっと!何で逃げるんですか!人の胸揉みしだいておいて!おい!マテゴラ!逃げるな!
───────────
🕳違うんですって、今回は私が被害者何ですよ
「ブラトレは今泣いてるんだぞ!」
「追い回しといて被害者か、面白い冗談だな」
「許せませんわ!グラムの錆にしてあげますわ!」
パラぴょいパラぴょい
≫124二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 22:12:41
では失礼します〜…
ドトウ「雨、強くなってきましたね〜…」
トレ「そうだね。あまりひどくならないうちにトレーニングは切り上げよう」
ドトウ「はいぃ、分かりましたぁ。」
ドトウ「…うわぁ!?空が光りましたぁ〜!雷も鳴ってますぅ…」
トレ「ちょうどこの周辺の天気が荒れてるっぽいね。調べたら一時間くらいで収まるらしいから、今は帰らずにここで嵐が過ぎるのを待っていようか」
トレ「ん…急に明かりが落ちた。停電かな…。ドトウ!暗くて危ないから、あまり動かないようにね…!」
ドトウ「あわわわわ…真っ暗ですぅ〜!トレーナーさぁーん!どこですかぁ〜!?」
トレ「わた、お、俺は大丈夫だから、ドトウも落ち着いて…」
「うわぁ!?」「ひゃっ…!」
ドトウ「あ、明るくなりましたぁ…。ってト、トレーナーさん!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!私が押しつぶしちゃってますぅ〜!」
トレ「…ぶ…から…」
ドトウ「今急いで離れます〜!」
トレ「大丈夫…だから…離れないで」
ドトウ「えっ…?」
トレ「もう少しだけ…このままでいて。お願い、ドトウ」
コンディション『実は暗闇が苦手』を取得!
≫132二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 22:22:50
元日。
「じゃーん!先生と大先生に着方教えてもらったんだー!」
「……振り袖か。似合ってるぞ、トレーナー君」
ひょっこり現れたのは水色の振り袖を着たルドトレ。しれっとウラトレとじじピに色々見られてるのが発覚したが、ルドルフにとってみればその二人は"何があっても間違いはない"ので無視する。
「と、言うわけで迅速果敢?に神社に初詣しに行こうか!」
「ああ……ところで、先に二人で何を願うか決めておこう」
「なにって……無病息災、今年もルドルフと健康に、楽しく過ごせたらなー、って」
「ふふっ、君らしいな」
「でしょ?あ、甘酒飲んでおもち……あんこの缶詰とかきな粉とか色々戸棚にあったはず……」
「そんなことばかり考えてるから胸だけ太るんだ……休み明けから並走の本数を増やすなりして君も運動すべきだな……」
「はーい」
そうして、初詣に来ていた先生方と新年の挨拶をし、二人で互いの無病息災を願い、甘酒を飲み、おみくじを引く。
「あ、ルドルフ!末吉だって!」
「私は中吉だったな」
「おおー!ルドルフのが幸運で嬉しいよ私も!あ、交通安全と無病息災のお守りと破魔矢も買っておかないと……」
「新年早々これでは、先が思いやられるな……」
結局、ある教師曰く「甘い新婚夫婦に見えた」初詣デートはいちゃいちゃしまくって終わったのであった。
≫138二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:03:47
皆さんこんばんは!期待の敏腕フィクサーパラシンちゃんです!
昨日紹介した依頼の件でランナー7人ほどからガチ報復を受けて危うくオオサカ湾の植物栽培ビルに吊るされて肥料になる寸前でしたが、何とかお父さんが金やコネを回してくれたので無事生き延びることが出来ました!持つべきものは太い実家ですね!
それにしてもランナーたちも自身の裏取り不足をこちらのせいにしないで欲しいものですまったく!
さて、そんなことより今日も今日とて仕事(ラン)の仲介。今日のお仕事(ラン)は浮気調査。猫探しからドラゴン退治まで、ランナー(使いっ走り)は大変そうですね!
───────
あ、マクトレさんおはようございます!
今度のはちょっとした浮気調査ですよ!大丈夫です前みたいなことにはなりませんって!本当に簡単な仕事ですから!町に顔を通しておくのも悪くないですよ!
マアソウデスワネ…デハソレデ
────────
手紙
パラシンへ元気にしていますか
中略
あの浮気調査の件ですがどうも相手が植物栽培を専門とする某巨大企業(メガコーポ)の重役という噂が出ています。
直ちに各種資料を破棄し、もし既にランナーに依頼したのなら無関係を装ってください。こちらで処理しておきます。
父より
≫141二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:06:44
ハンバーグ オグトレ
今日はオグリとルドルフの併走トレーニング日だ。俺がウマ娘になってから初めてであるが、向こうにもその旨は伝えてあるから何事もなく終わるだろう。
―学園内グラウンド
「わぁ、本当にウマ娘になってる〜」
可愛いと言いながら俺に抱き着いてくる。シンボリルドルフのトレーナーこと、ルドトレは天然である。彼だった時と比べると別人だ。小動物を可愛がるような気持ちで抱き締め返し、背伸びをし頭を撫でる。俺もそれくらい背が欲しかったよと思いつつ、怖い目をするルドルフを呆れ気味に見る。
「別に私はお前さんからこの子を取ってやろうなんて思ってないさ」
「トレーナー」
オグリが服の袖を引っ張るので彼女から手を離す。遊びに来た訳じゃない、おふざけも程々にしよう。
「お前さんも」
「そうだった、併走トレーニングだもんね」
へらっと笑みを浮かべながらルドルフの隣りへ戻る。顔の変化のわかりやすい皇帝だ。
「今日は、いや今日もか。よろしく頼む」
「うん、よろしくね」
スタート位置からゴールまでを併走する。実にシンプルだが、学べる事も多い。脚質先行差し、適性距離も近いこれ程、オグリに合った併走相手そういない。数回行い、タイムを見る。競り合うのもあって、タイムは申し分ない。トレーニングを終え、2人と別れた。
142二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:07:07
「今日の夕食は何が良いだろう……オグリ?」
トレーナー寮への道をオグリと歩きながら、夕食のリクエストを伺うが、珍しく反応がない。いつもならこれがいい、あれがいいと言うのだが。顔を覗こうとすると、オグリは何も言わず編んでいる髪を取られ顔を近付けもふもふとする。時々こうして、編んでいる髪をもふもふとする。落ち着くのだろうか、わからないところではあるが、痛い訳でもないので静観している。
「オグリ、リクエストはないのか?」
「……ハンバーグがいい」
「任せろ」
結局部屋に着くまでオグリが俺の髪を離す事はなかった。流石にエプロンを手に取り、準備を始めると邪魔しないように離れ、キッチンに立つ俺をジッと見る。いつもの光景だ。食材と調理器具を出し、始める。この身体にも慣れたものだ。最初はかなり苦労した。190あった男が急に160に満たない女の身体にされたんだ。手足の短さ、この大きい尻、長い髪、何もかもなかったものだ。
143二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:07:46
「いい匂いがする」
「そりゃあ、俺が作ってるからな」
ハンバーグのいい香りがオグリの鼻腔を擽るのだろう。目を輝かせこちらを見ている。もう少し俺が歳いってたら娘のように可愛がっていただろう。父と言うには俺は若いから妹や親戚の子を可愛がるような感覚だが。世間体を気にしなくていいこの空間は身体は変わったままでも俺が俺らしくいられる。
「トレーナーが俺と言ってると前を思い出せる」
「流石に、女の身体だからな。俺とは言えないさね、それにこの身体はお前さんに似過ぎてるからな」
背丈はともかく、遠目で見られるとよく間違えられる。髪を下ろすと癖まで似ているから余計だ。前髪を流してみても間違えられる。粗相はできない。似てなくてもオグリキャップのトレーナーとして粗相をするつもりは毛頭ない。
「トレーナーもああなるんじゃないかって少しでも思ったんだ…」
「ああなる?」
「ルドルフのトレーナーみたいに」
「そんな事を心配していたのか、大丈夫だ。俺はこうして俺でいる」
トレーニング前、終了後の彼女を見て心配していたようだ。焼いたハンバーグを盛り付けながら話を続ける。
「トレーナーがああいう風に変わってしまったら私もどうなるのかわからない」
「それは困るな」
「だからトレーナーはトレーナーのままでいて欲しい」
「お前さんがそう言うなら、俺は尚更変わらずにいられるよ」
144二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:08:14
盛り付けた皿を並べ、食事の時間。俺たちにとって変わらない日常のひとこま。食事も、時間も、会話も、空間もすべてを噛み締める。笑顔で俺の作った料理を食べてくれるオグリを娘のように愛おしく感じる。父性を忘れずにいられる。
「トレーナー、今日のハンバーグはいつもより美味しいんだが何かまた工夫をしたのか?」
「どうだろうな」
併走トレーニングで疲れていたのだろう、それもまたスパイスだ。俺はあえてぼやかし、ハッキリとは伝えなかった。食事の時間を終え、使った食器を片付ける。そろそろオグリを生徒側の寮へ送らないといけない。
「オグリ、そろそろ寮へ」
今日はよく抱き着かれる日だ。
「なんだ?ハンバーグといい、甘えん坊のチビちゃんだな」
「チビちゃんは今のトレーナーの方だ………抱き締め返して頭を撫でてくれないのか?」
ああ、そういう事か。ルドトレにされた事、した事羨ましかったのか。素直に言ってくれればいいと思ったが、年頃だから言いづらいか。髪をもふもふしたのも嫉妬の表れと、俺は今日この姿になってからひとつお前さんから学んだ。
「娘を可愛がらないやつがいると思っているのか?」
抱き締め返し、頭を撫でる。前ならつむじも見えるのに今では背伸びをしなくてはオグリの頭には手が届かない。少し悲しい。満足したのか、笑顔を浮かべたオグリをそのまま寮へ送り、俺の1日がおわった。
≫148ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:15:29
四部作外伝2『温かなる曙』
時は4年目のクリスマス。私の地元の山でスズカとこれからの事を話し合い、そして誓いあった夜の8時頃。
今から戻るとトレセンに着くには遅すぎる、ということで久しぶりに実家に泊まる事になっていた。
「…準備はいい?」
「はい、お願いします。」
スズカの言葉を聞き届け、扉を開く。
「おっと!?」
「えっ。」
…こっちに思いっきり倒れてくる母の体が盛大に私達を出迎えた。
「ごめんねぇ…いきなりドジかましちゃって…」
「いえいえ、お気になさらず…」
リビングにて失意に沈む母さんをスズカがそう慰める。これじゃどっちが大人か分かったもんじゃない。母さんが150cmしかないのもあるけど。
「ていうか、なんであんなとこで転んだの…?」
「お前らがそろそろ降りてくるだろうって予測して色々ドタバタしてたんだ。そしたら階段踏み外したらしい。」
そんな光景を眺めながら父さんが私に説明する。
…それ、下手したら扉に頭からぶつかってたやつでは?
「私が扉開けるの少し遅かったらとんでもない事になってない…?」
「だからお前はあいつの恩人だ。帰ってきてそうそう親孝行ありがとな。」
「えぇ…」
それでいいのかと言いたくなるけど、多分私のポジティブ思考はここから来てるんだろうから言い返せない。
149ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:16:10
「ていうか父さん、リィは?」
「今風呂入ってる。鼻歌からして長いパターンだから先にご飯食べてるといい。」
「分かった。母さーん、ご飯おねがーい!!」
「あ、そうね。2人ともお腹減ってるもんね。ちょっと待っててね、今用意するから。」
じゃあ俺も手伝うか、と父さんも母さんを追って台所へ。代わりにスズカが寄ってくる。
「いいご両親ですね。」
「そう感じる?」
「違うんですか?」
「いや、合ってる。生んでもらえてよかったと心から思えるいい親だよ。」
そうじゃなきゃ、農業で大変な中長男を一切の反対なく送り出すなんて事はしないだろう。
本当に、感謝してもしきれない。
「…そろそろできあがるかな?」
「分かるんですか?」
「なんとなくね。行こっか。母さんの料理は絶品だよ?」
「…はい、楽しみにしています!」
そうして、トレーナーさんの両親からご馳走になったあと。
「リィ、いる?」
「おっとこの約8ヶ月くらいの間週一で聞いた声は?」
「具体的すぎるでしょ。」
私たちはお風呂に入る前に、服を借りるためトレーナーさんの妹さんの部屋を訪れていました。
150ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:17:04
「うっひょーおひさ兄貴。女性なったとかじゃなくマジでウマ娘になったんだね。超常現象すぎない?」
「いや、女性なっただけでも十分超常現象だよ?」
「それはそう。」
妹さんがトレーナーさんとそんな軽口を交わしながら、こちらに目を向ける。
「んで、兄者が連れてきたってことはあなたが担当さんかな?あ、ちなみに兄の呼び方はテキトーに変えてるから。」
「…はじめまして。サイレンススズカです。」
「こちらこそはじめまして。25歳、アーリィビートってもんです。気の赴くままに服のデザイナーしてたりしてます。よろしくね!」
言い終わると共にリィさんがベッドで軽く一礼。
明るい声だけどその内に秘めた根のしっかりさを今の声から感じた。
「うん、うんうん。いい娘見つけたじゃんあにぃ!よし!!はいこれ兄上の分の着替え!!」
「え、ありがたいけどいいの?絶対着せ替え人形にされると思ってたんだけど。」
「もうインスピレーション得たからいいかなー。なりたいなら存分に使わせてもらうけどね?」
「遠慮します。…まあ、そういう事なら先風呂入ってくるね、スズカ。」
「分かりました。その間にリィさんと話してますね。」
「うん、リィもスズカの事よろしくねー!!」
「分かってるよ兄ちゃん!!」
そう言い残してトレーナーさんが部屋からいなくなり、2人っきりに。
「うーんと、ちとだけ待ってねスズカちゃん。今合いそうなやつ探すから。」
「ありがとうございます。…いっぱい服あるんですね。」
「結構色んなもの作ってきたかんねー、ちょっとした服屋みたいにはなってるのよ。」
凄いでしょ?とリィさんは続ける。
実際、部屋中にあるタンスやクローゼットに服があるとするなら彼女の言う通り小規模な服屋と言える量だ。しかも目につくところだけでも私が見たことある服が結構ある。思わず見惚れてしまいそうだ。
151ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:17:33
「…スズカちゃんはさー。ニキがウマ娘になってどう思ったの?」
不意に、リィさんが問いかけてくる。
「あたしは正直結構ビビっちゃった。自由奔放な性格してるつもりだけど、明らかに自由の域超えてたからね。電話の度に違和感の増えてく兄ちゃんの事がちょーっと、いやだいぶ怖くて。
結果兄ちゃん傷つけちゃった。」
『…女性らしくなったねって言われたんだ、妹に。』
トレーナーさんの言葉が頭をよぎる。
「…電話だけじゃ分からないこともあると思います。リィさんも今日会ったら安心したんじゃないんですか?」
「…分かっちゃう???」
「はい。リィさん、表情がコロコロ変わるので。」
そっかー、とリィさんが笑う。トレーナーさんの笑顔とそっくりだ。
「うーん、しかしいよいよインスピレーションがヤバくなってきた。よし、走ってこよ。静岡の辺りまで。」
「あ、分かりました。トレーナーさんには私か…」
そこまで言いかけて、少し固まる。…静岡??
…ここから、何時間かかるの…??
「あ、助かる!ホントにいい娘だわースズカちゃん。はい、これ着替え。好きに選んじゃっていいしなんならそのままあげちゃう!!」
「え、ちょっと待ってください。今から静岡ですか!?しかも走って!?」
「うん!!あたしインスピレーション得たら走って遠出して確固たるイメージまで消化するのがルーティンなんだよねっ!!数時間単位で走るのも慣れてるから大丈夫だよー!!」
それだけ言い残してリィさんは風のように去っていき…
「…嘘でしょ…?」
私の言葉も、その風に攫われて夜空に消えていった。
152ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:17:54
「…ふわああああ…」
カーテンの隙間から差し込む淡い朝日を受けて、目が覚める。
随部と懐かしい。スズカと組んでからはずっと帰ってなかったから4年ぶり、だろうか。
「…えいしょと。」
隣で寝てるスズカを起こさないように静かに部屋を出る。
「何気にうちで髪結ぶの初めてかぁ…上手くできるかなぁ…」
何せ腰どころか膝近くある超ロング。寮でやることには慣れても、ホテルのような初めての環境で苦戦することも少なくはなかった。
髪を掴んで踏みつけないようにしながら階段を降り、リビングを通って洗面所へ…
「あら、おはよう。」
「母さん起きてたんだ。」
「せっかく来てくれたんだもの。朝ごはんに力入れたくてねえ。」
そう言う母さんの手元にはここからでも見えるくらいの食材が。
「…力入れすぎじゃない?別に大丈夫だよ?」
「いいのいいの。スズトレこそどうして降りてきたの?いつもなら着替えてから降りてくるじゃない。」
「うーん、ほら、髪がこんな長くなったから先にまとめないとめんどくさいんだよね。」
「…よし、なら今日は母さんが結んであげる。」
「いいの?」
「ええ、もちろん。」
153ガンギマリ頭スズトレ21/10/12(火) 23:18:19
軽く手を洗った母さんと一緒に、洗面所に入って鏡の前で座る。
「じゃあお願い、髪型は昨日と同じで。」
「分かったわ。母さんドジだから失敗したらごめんね?」
「大丈夫大丈夫。」
母さんのドジはなんだかんだ他の人を巻き込むときはかなり優しめになる。1人だと惨事になりかねないときがあるけど、昨日みたいに。
「髪、キレイね。しっかり手入れされてる。」
「そう?母さんが言うなら自信持つね。」
「ええ。これ髪色はなんて言うのかしら?」
「弱褐色芦毛かなぁ。私も結構気に入ってるよ。」
「へえ…そんな色もあるのね、奥深いわあ。」
「…ねえ母さん。」
「なあに?」
「大丈夫だった?私がウマ娘になって。」
「どうして私にだけ?リィや父さんもいるのに。」
「父さんは私以上にポジティブだから論外。リィもなんだかんだで飲み込み早いから会えば大丈夫だと思ってた。でも、母さんはそうじゃないから。」
母さんは優しい。とても優しい。だからこそ、私がウマ娘化した事でした苦労とかにまで思いを馳せてしまうのではないか。それが少しだけ、不安だった。
「…それに、せっかく母さんに似てた顔も変わっちゃったし。」
「…母さんはスズカさんに似た今の顔も好きよ?」
「────」
「そりゃ少しは不安にもなったけど、身体や精神が少し変わっちゃったからってあなたはあなた。
だから心配しないでいいのよ。」
「…うん、分かった。ありがとう、母さん。
…色々と話あるんだけど、聞いてくれる?」
「ええ、いくらでも。」
そうして娘となった息子と、母の談話が始まる。
時は曙。2人のいる洗面所は一足先に日向の温かさに包まれていた。
≫159二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:28:52
5話
頭が…痛い…前が…見えない…
でも…それでも…行かなくちゃ…
「……い、お…い」
何か聞こえる…一体何が…
「…ーい、おーい!」
意識がゆっくり浮上する。
「うっ…あ、あー…ここは?」
「お、目が覚めたか?びっくりしたよ。お前、雨の中泣きながらへたり込でたんだから。」
外を見たら、夜が明けたのか、日が少しずつ上がって来ていた。
「そ、それはありがとう、一体あんたは…」
視線を上げる。そこに居たのは、
「よ。」
薄水色の芦毛…サイドテールに…
トレーナーバッチ…
「!?」
「うわっ、そんないきなりびっくりするなって
こっちまで驚いくだろ?」
「あ、ああ、あんた!
あの無敵のブライアンのトレーナー!」
『影も恐れぬ怪物』ナリタブライアン。
無類の強さと滾り続ける闘争心でレースを総なめにした三冠ウマ娘。
出るレースではその殆どが圧倒的な差をつけて勝利をする。
そんなウマ娘のトレーナーが彼である。
160二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:29:18
「あぁ、知ってたのか。
そりゃ自己紹介の手間が省ける」
「知ってるも何も、
あんためちゃくちゃな有名人じゃないか!」
「ハハハ、よせやい。照れるだろ?」
「お、俺はマーチトレ、助けてくれてありがとう。
でもなんでそんなあんたが俺を…」
「?何度も言ってるが目の前でへたり込んでたのを助けただけだよ。
流石に動けなくなってるウマ娘を放っておけって言う方が無理だろ。」
なんか運良くすげぇ人に助けられたもんだなぁ…
「んで?マーチトレさんは、
なんであんなとこにいたんだ?」
「うっ…」
「あんな場所で、あんな格好で、
あんな状況になってたんだから、流石になんでもないは無理な話だろ?」
「そ、それは…」
「まぁ…無理にとは言わないが、
お前の服についてるやつ、トレーナーバッチだろ?」
「何か悩みがあるなら、
相談に乗るくらいはできるぞ?」
…正直今の状況を話したところで何かが変わるとは到底思わない。
でも、もしかしたら状況が変わるヒントぐらいならもらえるかも知れない。
「実は…」
161二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:29:48
俺はこれまで事を話した。
「だから、もうどうするべきなのかがわからなくなってきてて…」
「…少し、俺の話になるけど良いか?」
「?は、はい…」
「俺さ、担当の…ブライアンの走りをはじめて見た時、こんなスゲー走りをする奴がいるんだってすっげーワクワクしたんだ。」
実際、デビュー前から重賞を勝っている様な格上のウマ娘相手にいい勝負をしていたと聞いた事がある。
「それと同時に、こんなスゲー走りをする奴が全部諦めてるみたいに走る姿がどうしてもほっとけなかったんだ…」
「えっ…それは何で?」
「それはなぁ…わからんかった!」
「へ?」
「そんで聞いてみたんだ!でも全部門前払い!」
「えぇ…」
噂に聞いてた通りのめちゃくちゃな人だ。
「けどさ、諦めきれなかったんだ。」
彼の目付きが少し変わる。
162二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:30:26
「どうやったら、ブライアンの勝利への渇きが満たされるかなんて俺にはわかんないし、アイツが欲しがっているものを俺が持ってる訳ないしな。」
「でもそれは、アイツを諦める理由にはならねーだろ?」
「だらから俺は、ブライアンの脚に全てを賭けた。」
「バッチもトレーナー資格もいらんッ!ってね」
…想像以上にめちゃくちゃな人だ。
「そんなけアイツに諦めて欲しくなかったんだよ。」
「だってよ、知ってるか?
ブライアンって走る時すっげぇ楽しそうに走るんだ!」
「…楽しそうに」
正直これまで俺が見てきたウマ娘達は、
実力の差に絶望し、諦めてしまう娘ばっかりだった…
もしもっと環境も、知識も、経験も
揃っていさえすれば、楽しそうに走る彼女達が見れたのだろうか。
…フジマサマーチが楽しそうに走る姿を。
だとしても、出来なかった俺に…
163二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:31:01
「だからさ、
あんたも担当のそんな姿、夢見ても良いんじゃないか?」
「俺が…いいのか?」
「いいも何も、トレーナーならだったら誰だって思ってる事だろ。」
「………ありがとう。」
「ふぇ?ど、どうしたんだよいきなり…」
「やっと…ほんの少しだけ、できるかわからないけど…前に進める気がした。」
「…そうか。んじゃ、頑張れよ。」
俺は一度頭を下げて、彼の家を飛び出した。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part218【TSトレ】
≫13二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 00:06:52
テイトレタキトレハロウィン衣装話
「あー…またこの部屋か…もう解放されてもいいだろ…」
「…本当に閉じ込められているようですね。この原理を突き止めればタキオンの研究に役立つか…?」
「タキトレ?やめよう?本当に」
こいつ大概やばいなぁと心に秘めてテイトレがテーブルに向かう。その上に置かれた紙にはハロウィン衣装話をしろとの指示が。二人して首を捻りながら隣の衣装が大量にある部屋に向かう。
「んーコスプレかぁ」
「はぁー…凄いいっぱいあるな…これくらいタキオンの研究室も荷物入れられたらな」
「いやいらんだろ…何置くんだ…実験動物か?」
「研究が進むたびに荷物が増えるもんで…あっ!見ろ!テイトレ!」
急にテンションの上がったタキトレの方向に目を向けて、テイトレも同じように目を輝かせた。
「そっ…それは!ニーサンの赤いコート!男の憧れ!貸して!!」
「駄目!俺が見つけたんだから…どう!?似合う?」
「くっそー…似合う…腹刺さった後の髪解いてる時っぽい…」
「ここでタキオンの発光薬品を飲んで…くそぉ…持っていかれたぁ…!!」
「何を?人としての尊厳?顔光らせながら言っても全然格好つかんぞ」
「うーん駄目かぁ。やっぱりタキオンの薬に合わせるならマユリ様のコスプレしかないな」
「ハロウィンのコスプレってそんなんでいいのか…?」
二人の衣装合わせはまだまだ続く。アニメの衣装を見れば互いにポーズを決め、迷走をすること一時間ほど。ようやくお互い衣装が決まり各自着替えを行なった。
「お待たせー…どう?」
「いいじゃん…すげぇなそのメイク」
顔に大きなつぎはぎ痕をメイクし、頭を貫通したように見えるネジのカチューシャを付けて丸い眼鏡を付け自前の白衣を着たタキトレがいた。
「まぁ、なんだかんだでオーソドックスが一番かと」
14二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 00:07:30
「フランケンシュタイン…実は詳しく知らんなぁ…小説だっけ?」
「元はフランケンシュタインって博士の名前なんだよ。よく見るあれは名前のない怪物…今回は混ぜてみたけど」
「いいじゃん似合ってるし。うーん…俺シンプル過ぎ?」
テイトレの姿は折れた三角帽に喪服のように真っ黒ながらしっかりと装飾のされた魔女であった。杖代わりの長い箒がこだわりらしい。
「いいんじゃないか?お互い硬派で伝統的だし…ん、もう出れそう」
「はー…誰もいなきゃいいんだけどなぁ…」
そんな話をしながら二人は部屋を出る。当然誰もいないわけが無い。一体どこに行っていたんだい、えーっ!?と言わんばかりにアグネスタキオンがドアの真正面に立っていた。
「ふぅん…フランケンシュタイン…の博士か…なら私は博士に作られた怪物ってところかな」
ねぇトレーナー君、とタキオンが続ける。
「博士に生み出された名も無い怪物は創造主たる人間に絶望し、友人や家族を殺害して回ったのは知ってるかい?」
「…タキオン」
「怪物の望みはたった一つ。伴侶となる怪物…生贄が欲しかった訳だ、まぁそんな酔狂な者がいるわけもなく怪物は哀れにも自死を選び一人遠くに消えるんだけどね」
「タキオン」
ぐいと細い腕を掴み、躊躇なく愛バを抱き締める。
「君を一人になんてしない。君が死を選ぶなら共にこの身を炎に投げ出そう」
「…ふふ、ははは!それでこそ私のトレーナー君だよ…怪物の生贄は見つかったようだねぇ」
「生贄なんかじゃない…伴侶となり得て見せる」
「あっトレーナー!魔女の格好して一人でどうしたのさ」
「テイオー…雰囲気を察して姿を消した俺を褒めて…」
「うーん?よく分かんないけど偉いぞよ!…それに、よく似合ってる。恋の魔法にかけられちゃったかも」
「テイオー!もう!そういうのやめて…恥ずかしい…」
この後二組がイチャつき倒し片方は無事に別れ、片方はとある研究室に消え、後日お互い謝ったとさ。
うまぴょいうまぴょい。
≫61二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 05:56:12
おけ、では
隣で守るもの
(ふむ…特に変わりはないな)
学園内を歩いていた時、目つきの悪い人を見つけた。
(あれは…アルトレか)
メジロアルダンとそのトレーナーである彼女は二人で談笑しているようだ。ふと、こちらに気づいたのかアルトレが近寄ってくる
「どうも、こんにちは。」
「こんにちは、前より元気そうですね」
「ええ、この姿になってからは怯えられることもないので」
「男性のときの貴方は相当な強面だったからですし、今でも中々のものですよ」
「そうですか、変わる前から話をしてる人は多くはないので」
「あれはメジロアルダンちゃんの横にいれば、見た目はボディーガードとして中々良かったと思いますけど、そこは今も変わらなさそうですね」
「ファインモーションのトレーナーで警護もしてる貴方が言うと違いますね」
「私は彼女のトレーナーだけど彼女だけのナイトでもあるので。」
「ハハハ、そうですね。おっと彼女に呼ばれたのでここで失礼します。それでは」
「ええ、ではまた」
先程離れたアルダンちゃんの元に向かう彼女を見つつ
(…私もファインの元に行くか)
踵を返して歩き出した
≫137二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 08:55:46
ルドトレ
濡れ透け
会長はそっと服を脱がせバスタオルで優しく拭いて毛布にくるみ風呂を沸かす。温まって出てくればそこには乾いた換えの服がしっかりと置いてある。
────風呂に入って温まり風邪の心配のなくなったルドトレは監禁された。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part219【TSトレ】
≫50二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 10:07:33
「というわけでやってきました、都内某所のスケートリンク!」
「トレーナーさん。あたし、スポーツでいいとこみたいなんて思ってないよ?」
「任せてネイチャ!これでもこどもスケート教室では一二を争う腕前だったんだから!」フンス
「……ほらっ!この通りっ!後ろ向きでも滑れるっ!」ボロッ...
「問題。トレーナーさんはこれまで何回転んだでしょーーか」
「だって!色々と重心とか変わっててぇ!」
「はいはい。じゃ、一緒に滑りましょっか」
「いきなりうまい……ずるい……あ、ホントに転倒には気をつけてね」
「分かってますってー」ツィー
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part220【TSトレ】
≫18フクトレ相合傘1/221/10/13(水) 12:27:49
フクとの外出の日。用事は当然グッズ漁り。いつも通りにまずは俺の部屋にグッズを見に来た後、いざ出発だという場面で。
「雨、ですね」
「小雨だが無視はできない程度の……か。」
トレセンからすぐ近くのバスを利用して、到着すればアーケード付きの商店街、とはいえどこの学園の敷地は中々のもの。それに前にほんの小雨を無視して出掛けようとしたときに「湿気は邪気を呼ぶんですよぉ!?」と詰められたこともある。
懐から鍵を取り出し、玄関の鍵付き傘立てから随分と主張の激しいものを引っ張り上げる。
ふとフクを見ると、同じく柄の激しい肩掛けポシェットをまさぐることもせず立っている。
「……フク」
「あー……、えーと……入れてもらえませんか……?」
持っていません。そんな顔をしようと努めているが目は泳ぐわ汗は出るわ。そもそも前にあんなにうるさく俺に言ったやつが折りたたみの傘を持っていないなんてことがあるわけない。
フクは俺がこの姿になってから時たまこうしてあからさまに甘えることがあった。懐かしいのか。不安なのか。縋りたいのか。普段は分かりやすく表情を変えるのに、そうしたところは一切見せてくれない。いや、俺からは見られないだけなのか。
「そ、それに!傘は細くて長いのがいいんです!だったら折りたたみよりもちゃんとした傘の方が風水的にはいいんですよ!」
それにって言ったぞ。折りたたみよりもって言ったぞ。
そんなガバガバ穴だらけの弁解よりも。以前は占いにかこつけて意識的に迫ってくるようなことも無かったフクの変化よりも。
細く長く。思い起こされるのは。
『ほら、大事な人とたくさん過ごすには長生きしなきゃじゃないですか』
重なる。
「……ったく。早く行かないとバスが出るだろうが。」
先に玄関から出て。あぁ~待ってください!と鳴きポシェットを開けようとしながら外に軒下に出てくるフクに。
傘を傾けてやる。
「……へ?」
「ほら。早くしろ」
「……は、はいぃ!」
19フクトレ相合傘2/221/10/13(水) 12:28:25
同じ傘の下。雨足はやはり重なる足音を隠すほどのものでもない。
以前不慮の事態で相合傘することになったときは、身長差のせいで傘を大分フク側に傾けていたために俺の肩に雨がかかることもあった。だが、身の丈も今は全く同じ。その時の反省だか何だかでフクに押し付けられた無駄に大きなこの傘であれば、濡れる心配はない。
横に目を滑らせるとすぐに担当の顔が見えるこの視点には、今もまだあまり慣れていない。フクは大丈夫なのだろうかと横目に見ると。
満面の笑顔が広がっていた。
俺の容姿を気にしていないわけがない。以前との比較ができるこの姿勢では尚更だ。ならば何故?無理をしているのなら……そこまで思考して、気が付いた。
頭上に咲く、桃色の大輪の菊に。
フクが、俺のために選んだ傘。大きめで、パステルブルーの地に桃色の菊が堂々を描かれたもの。
フクと俺が変わっても、変わらないものもある。それを軸にして、また少しずつ変わっていく。きっとこの傘もいつかは買い替える。その時はまた、フクが選ぶのだろうか。
今日の出先で襲い掛かるそこそこ痛い出費に目を瞑り、静かな雨音と隣の鼻歌を聞きながら、これからの幸福に思いを馳せるのは、中々悪くなかった。
≫34二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 12:48:41
それでは暫し
さて、どこが空いてるか。
アルトレは大混雑の食堂の中、定食Aをトレイに乗せたまま辺りを見回した。たまの食堂利用も楽しみの一つだが、人間だった頃のくせで端の席を求めてしまう。しかし今日はどこも埋まっているようだった。
キョロキョロと席を探す作業を続けてると、アルトレは今しがた着席したばかりのウマ娘と目が合った。……彼女は手招きしている。《前の席が空いてるのでどうですか?》とジェスチャーしてるのも分かった。
是非もない。別の人を呼んでいないことを確認してからアルトレは自分を招いてくれた同僚の前に座った。
「ありがとうございます。ネイトレさん」
「いえいえ。あ、同じA定ですね。小鉢は違いますけど」
「そちらも迷ったんですが、今日は筑前煮の気分でした」
「私はナスの煮浸しの気分です」
掲げられるそれぞれの小鉢。どう戻せばいいのかわからなくなったお互いのそれは、小鉢同士で乾杯をすることで決着した。
「……ネイトレさんは普段から食堂利用ですか」
「はい。買ってきたお弁当や外に食べに行くよりはこちらで食べることが多いです」
「自分で作ったりなどは?」
「美味しいものを食べたいので……」
自虐的な笑みを浮かべるネイトレ。そんなに不器用なんだろうかとアルトレは首を傾げる。……自分も人のことは言えないが。
35二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 12:49:15
そういえば、と先程目が合った事も含め兼ねてよりの疑問をぶつけてみる。
「ネイトレさんからの視線って人間の頃から結構感じていたんですよ」
盛大に咽せるネイトレ。
「ごめんなさい。タイミングが悪かったですね」
「いえ、こちらこそすみません。……じつはその、ずっと似てるなーって思ってたんです。ある格闘ゲームのキャラに」
「……豪●?」
「そうです●鬼!ああ、リアル●鬼だぁ!って見上げるたび思って…………すみません。まことに失礼なことを」
「いえ、自分でも似てるなぁと思ってましたから。……本当に気にしないでください」
しおしおと縮んでいくネイトレに助け舟を出す。
「以前の自分はそうでしたが、ウマ娘になってみると大分変わりましたからね。私は少し縮んで、……逆にネイトレさんは背が伸びて」
「そう、ですね。だからちょっと身近になったかなと思ったり。……そういう意味ではウマ娘になってから誰かを見上げるなんてウオトレさん以外ではなかった事なので、まだまだ新鮮です」
「私もです。視線を少し下げるだけで顔が見えるのは中々ないことなので」
「しかも、こうして座っているとほとんど目の高さは変わらないんですよねー」
「ああ……そうですね。目線が同じ高さというのは意外と重要です」
目線、という自分が放った言葉にアルトレはいつかの友を思い出した。……余計な気の回し方を続けてしまったが、そろそろ彼と話すべきなのかもしれない。
「……ちなみにですが、今も豪●のイメージですか?」
「流石にそんなことは!今はー、……やさしいクマさんですかね?」
「クマさん」
「はい。クマさん」
一切邪気を感じさせない潔い返答に、アルトレは困ったような笑いを漏らすことしかできなかった。
完
≫46二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:08:59
『差し出された傘の中で』
夏の夕暮れ時というのは、兎角天候が変わりやすいものだ。
入道雲はその体をたんまりと重くして、今か今かとその時を待つ。
「んー、嫌な感じがするな。そろそろ来るかもしれない」
「む、それなら早く用事を済ませるか」
そう呟くのはブライアンとそのトレーナー。
今日はいつものショッピングモールでなく、商店街で練習用備品を買い込みに来ていた。
「あと何か買うものあったっけな?」
「確かサージの在庫が少なくなっていたな。それを買っておこう」
「ほいきた」
練習で使うものや、応急処置のために用意しておく物をてきぱきと集めていく。
そうして今日の買い出しは終わりを告げたのだが…
「あー、間に合わなかったか…」
「いや、仕方ない。途中から降られるほうが面倒だ」
店を出ようとした二人の眼前に、ごうごうと音を立てる夕立が出迎えていた。
「んーまあ仕方ない。バスにでも乗って帰るか…?」
「このタイミングの雨だ、かなり混んでそうだがな。さほど遠いわけではない、歩くとしよう」
「よし、折り畳み傘は持ってきてるか?」
「ああ…んん?」
ブラトレは手慣れた手つきで緑色の傘を取り出した。
だがブライアンのほうはバッグを浚ってみたが、終ぞいつも使う傘は出てこなかった。
「……珍しいこともあるもんだな」
「……ああ」
「しかし俺の傘じゃあちょっと小さいしな…買って来よう…か…?」
そう言いつつ店に寄ろうとしたブラトレを、ブライアンが手を引いて止める。
「いや、良い。私が多少濡れても構わん、早く帰るほうがいいだろう」
「むぅ……いや、それは俺が気になる。折角だし相合傘と行くか」
「…………まあ、いいだろう」
少し思うところがあるのか、それでもブライアンは頷いた。
47二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:09:29
「やっぱこの傘小さかったな…」
折り畳み傘故に二人が入るにはかなり手狭なサイズであり、二人の間で持つとどうしても両方が濡れてしまう。
傘は身長の関係でブライアンが持っていたが、
「……お前がもうちょっと入れ」
そういうとブライアンは傘の中心をブラトレに押し付けようとした。しかしブラトレも負けじと押し返す。
「大事な担当だぜ、俺が濡れたほうがいいだろ」
「そういうなら、私にとってお前は大事なトレーナーだ」
「……平行線だな!」
「……ふっ、そういうことだ。諦めて二人で濡れて帰るとするか」
2人して笑う。こんなやり取りも何回やってきたことだろう。
「んーでもなー…ああそうだ」
そういうと、並んでいた状態からブラトレはブライアンの前に出て、体を少しブライアンに預ける。
「これならもうちょっと濡れにくいかな?」
「……まあそれも構わん。が、顔が見えんのは気になるな」
そう言うと、傘を持たない手のほうでブライアンは目の前の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ぬあー!やめなさいよ!」
「ちょうどいいところに頭があったからな」
「後でブライアンもわしゃわしゃさせろよ!」
「どうせ髪が濡れているからな、タオルでも使って優しく拭いてくれ」
「ほいほい、姉上のおっしゃるままに」
つぶやきながら、降り注ぐ雨の中を2人は歩む。
いつか止む雨だとしても、傘の中のぬくもりに寄り添う2人。
大雨の中、ちょっとした二人きりの時間。
やがて空に虹がかかるまで、二人はゆったりと談笑しながら歩いていた。
≫92二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:40:52
ウマ娘化後、大事な事をまた忘れたりしないか怖くなり夜眠るのを避ける様になった。
朝から外せない用事がある時は薬等で眠り、そうでない場合は朝夕に仮眠を取り夜に書類仕事を進めるのが習慣になっていた。
一通り仕事が終わるとトレーナーや名伯楽の著書を読む。自分の事以外は概ね覚えているとは言え抜けがあるとスカイに悪い。
何より俺は新人だ、担当を持つ様になった以上少しでも研鑽を積みあの走りに応え導けるようにならなければならない。
そうして空が白んできたのを感じる頃、今日は休みだしゆっくり眠ろうと伸びをする。
……腹が減ったな。
眠れそうにないし部屋に置いた小さな冷蔵庫を漁る。軽く胃を満たす事は出来そうだ。
[朝の献立]
ヨーグルト、飽きが来る前に食べきる程度の量。
ジャム、甘さが欲しい時に。今日は苺ジャム。
いただきます、と心中呟きヨーグルトをそのまま一口。
…美味い。
冷蔵庫で冷やされたヨーグルトに体が冷まされ意識がシャッキリする。
プレーンな味わいと仄かな甘味が舌に伝播して眠気眼にも心地よい。
二口、三口と食べ続ける。悪くない、悪くないが…何処か物足りなさも感じてきた。
冷蔵庫に残っていた苺ジャムをありがたりながら残っていたヨーグルトへ落とす。
軽くかき混ぜて一口。…うん、甘い。
ヨーグルトそのもののプレーンな甘さも悪くないがジャムの甘さが足されるのも良いものだ。
然しこの色が変わる様子は知育菓子を思い起こす。色々忘れているが新しい発見と思うと楽しいものだ。
量もそこまで多くない、一口、また一口と楽しんでいる間にすぐに完食してしまった。
器を洗いながら外の日差しを見る。
今日はポカポカとした陽気で気持ちよさそうだ。スカイの昼寝スポットにお邪魔したらよく眠れるだろう。
思い立ったが吉日、ブランケットと厚底ブーツを手に昼寝に出かけよう。
相変わらず覚束ない足元に今日も転びそうな予感を感じるが、それ以上に暖かな陽気が今から楽しみだ。
≫115二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:58:15
6話
マーチに戻ってきてもらうには、
レースで絶対に勝てる方法を探さないといけない。
そもそも、次のレースで負けたらカサマツに戻されてしまう為、
何がなんでも見つけなければならない。
俺は、考えていたトレーニングの効果を調べる為、
すぐに家に戻りありったけの資料を持って
学園のグラウンドに向かって走る。
ウマ娘になったおかげで全く時間をかけずに着く事ができた。
息を切らしながら、ふと練習コースに目を向ける。
そこには、
朝日に照らされ特徴的な弱褐色の芦毛を靡かせながら走るウマ娘がいた。
116二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:58:35
「サイレンス…アサヒ…」
『異次元の逃亡者』、
サイレンススズカのトレーナー。
それと同時に、
今、レース界隈を沸かせている1人のウマ娘である。
スズカと同じ逃げを得意とした走りをしており、
特別参加した選抜レースでは、
スタートで着けた差を完璧に維持し誰も並ばさせる事なく勝つその姿から、
一部では『完璧なる逃亡者』なんて言われている。
そんな彼女の走る姿に少し見惚れいると、
「えーっと…どうかしたの…かな?」
「え?あ!いや…その…凄い綺麗な走り方だったなぁって思って…」
「そうか、ありがとう。」
117二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:59:13
どうしよう、試す為に来ただけだったのに…
すげぇ人と会ってしまった…
朝といい今といい、なんか運が良すぎである。
でも、もしかしたらブラトレさんみたいに
何かヒントが貰えるかもしれない。
それに、気になってた事が一つあった。
トレーナーなのに何故レースに出たのか。
それがずっと不思議でしょうがなかった。
「一つ、質問いいか?」
「ん?」
「何であんたは、レースに出たんだ?」
「…質問を質問で返しちゃうけど、何でいきなりそんな事を?」
「…俺、どうしてももう一度、走って欲しいウマ娘がいるんだ。」
「だから、
ウマ娘になってからレースを走った事がある
あんたに聞けば何かわかるかもって。」
「…難しい理由はないよ。」
「私は先頭の景色が見たかった。」
そう言って彼は、アサヒは、語り出す。
118二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 13:59:39
「見たい景色ってとっても大事だと思うんだ。
スズカのおかげで私が見れたあの景色は、
とっても綺麗だったから。」
「初めてレースに出た時、
スズカが大好きな逃げで走ったんだ。
そしたらさ、周りには誰もいない、
静かで、どこまでも広くて、そんな景色があったの。」
「それが…走る理由…」
「そう。それにね、
『トレーナーさんの走りは多くの人に夢を与えるもの』
なんて担当に言われちゃったら走らなきゃ。」
そう言って彼は笑った。
「俺には…」
わからなかった。
毎日進む事で精一杯。
前にある壁を越えることしか考えられなくて、
そんな事を考える暇なんか、なかったから。
「見つけられるといいね。」
「え?」
「あなた達が見たい景色。」
彼はそう言って立ち去って行った。
≫168二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 14:34:03
レース中のウマ娘の脚部には負荷がかかる。
余談ではあるが、筆者は日本有数の蹄鉄職人の元を訪れたことがある。そこで行われるのは砂鉄から玉鋼を作り、何度も折り返し鍛錬を行う鍛治の姿だ。そう、最高峰の蹄鉄は刀と同じ製法で作られていたのだ。侍の魂が刀であるならば、走るために生まれたとされるウマ娘の魂はその足だろう。その足を保護する蹄鉄が刀と同じ製法とは、筆者は数奇な運命を感じずにはいられない。
ともかく、折れず曲がらずよく衝撃を吸収する蹄鉄が必要なほど、ウマ娘の足は過酷な衝撃をレース中受けているのである。