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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part511【TSトレ】
≫80二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:01:20
『竹記す思ひ出は仮初めの面と共に』
バンブーさん、すみません。今日は休ませてもらいます。もしよろしければ、さらしと運動着だけでも持ってきてくださると幸いです。
まだほんのりと空が明るんだ時間帯、バンブーメモリーの使っている携帯にメールが届いたのは朝の6時。実際早く、まだ起きている人も少ない時間である。バンブーはすぐさま気が付き、メッセージに反応を返した。
了解しました、早めに持ってきます。気を付けてくださいっす
返信が完了したのち、バンブーは思いっきり息を吸い、そして吐き出した。
「……ああああああああ!ついにアタシのトレーナーまでもが!被害にあってしまったっていうっスかぁぁ!」
朝のトレセンに、風紀委員長の悲しみを背負った叫び声が轟いた。
いつからだろう、このトレセンにウマ娘化現象なるものが発生したのは。多分去年くらいからだろう。
下は22歳から上は88歳まで、それはもう多種多様なトレーナーたちがウマ娘と化してしまい、トレセン中は大混乱……とまではいかなかったのだが、だいぶ混迷していた。
その結果生徒会はたいそう仕事量が増え、風紀委員会もサポートへ回るようになった。あの仕事をしないブライアン副会長すら走り回っているのだ。
閑話休題。
とりあえず今日の風紀委員会の仕事を終えて、トレーナーを助けに行かねば。そうバンブーは思いながら、学園を走り回った。
「執行部定例会は次週の金曜日となっているっス。ブライアンさん、この資料を頼みますっス」
「ああ、承知した。書類は預かっておく」
「お疲れバンブー。なんか今日は表情が硬いな?」
「あー、ブラトレさんお疲れ様っス。あの、うちのトレーナーも巻き込まれたみたいっス……だからまあ仕事を早めに終わらせないと」
「え!?それを早く言ってくれよ!言ってくれたら普通にこちらで仕事引き受けたのに」
「いえ、これも風紀委員長の責務!仕事をほっぽり出していくのはアタシの気が済まねえっスから!それに、他の仕事はすでに終了してるっス、問題ありません!では!」
そうバンブーは言い切ると、踵を返してスタスタと歩いて行った。
「おー、気を付けて行けよー!」
「……相も変わらず騒がしい奴だな」
「まあそういうところがバンブーの美点だろ」
後ろからは二人の声がするが、特に気にせずトレーナーのもとへ行く準備をするために、自室へ急ぐバンブーであった。
82二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:01:30
思えば、トレーナーを助けるのはこれが初めてではないな、とバンブーは思い出を振り返っていた。
最初に会ったのはまだトレセンに入学する前のころだった。勉強が苦手であったバンブーのために親が呼んできてくれたのが、今のバンブーのトレーナーであった。このころは家庭教師をする傍らに、トレーナー資格の勉強をしていたようだ。
割と思考が変な方向に飛んでいきやすいバンブーに、真摯に付き合って勉強を教えてくれた先生。勉強が苦手でも、この先生と一緒ならいろいろと頑張れる、そんな間柄であった。
しかしその関係は、偶然の不運によって妨げられた。
落雷、それによる火災。幸い死者は出なかったものの、火事に巻き込まれたことによって先生は顔に大きなやけどを負ってしまったらしい。あまり人に見せられるような状態でもなかったため、彼はお見舞いに来たバンブーにさえもその傷跡を見せず、包帯で顔の大半を隠したような状態となっていた。
「すみません、こうなった以上は……家庭教師も辞めざるを得ないでしょう」
「ど、どうしてっスか先生!アタシも、アタシの家族も何も気にしないってのに!」
「いえ、流石にこういった見た目になってしまった都合、人前に出るような仕事には向かないと言わざるを得ません……私のトレーナーとしての夢も、断念せざるを得ないでしょう……」
ほろりほろりと涙がこぼれ始め、声が震えるトレーナー。
「……嫌っス」「……バンブーさん……」
バンブーは勢いよく立ち上がり、まくし立てる。
「嫌っスよ!なんでアタシがとっても世話になった先生が夢を叶えられないで、只々教えてもらってただけのアタシがのうのうとトレセンに入られるっスか!こうなったら理事長にでもなんでも直談判して、顔がとっても怖いトレーナーでも、顔がどれだけうさん臭くっても、たとえ顔が傷だらけだっても構いませんっていう言質とってくるっスよ!」
「ちょ、ちょっとバンブーさん、病院なので静かに」「あっ!ご、ごめんなさいっス」
周囲の入院患者たちがびっくりしてこちらを見ていたため、恥ずかしくなってもとのように座り込むバンブー。
だが、その意思は変わらない。
「アタシは絶対諦めないっすよ。アタシがトレセンに入りたい事と同じくらい、先生がトレーナーになることも大事っス」
「……」
83二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:01:43
「先生だって……夢、諦めたくないっスよね?」
「……そうです。今でも未練がましいとは思っていますが、出来るならあの学園に行きたい。そして、ウマ娘さんたちが夢を掴むことの応援をしたい。それは確かです」
涙ぐみながらも、真っすぐとバンブーを見つめ返す先生。それを見て、バンブーはようやくにっこりと笑った。
「だったら、思いは一緒っス!今から病院の外で連絡してみるっスから、待っててほしいっスよ」
「……早くないですか?」
「善は急げ、先生が教えてくれた言葉っスよ!」
そう言うとバンブーは、スタタタッと病室を出て行ってしまった。
そして5分とかからず戻ってきた。
「言質とったっスよ!秋川理事長が問題ないと仰ってたっス!……敬語の使い方これで合ってたっスかね……?」
「は、早い……!」
そうして、一度諦めた夢が先生のもとに秒速で戻ってきた。
そこからは、二人で夢を追う日々であった。
トレセンへの入学、そしてトレセンへの赴任が同時期になったことに喜び、選抜レースでほとんど逆指名のような形で先生とともに歩むことを決め、、最初のメイクデビュー戦でうっかり負け、未勝利戦をなんとか勝って様々なレースに参加し、初めてのG1を取って、G1で負けて、笑いあって、泣いて、喜び合って。
そうしてあっという間の三年間が過ぎていった。
これが彼らの歩んだ道、竹の記憶がトゥインクルシリーズに刻まれた始まり。
84二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:02:02
「来たっすよー……あれ、トレーナーさん?」
トレーナー寮の部屋の前で、チャイムを鳴らすバンブー。だがなぜか反応が返ってこない。
(あれ?これ拙い奴じゃないっスか?)
電話をかけてもなぜか反応なし、鍵もかかってしまっている。今までのケースを知っていたが故にこれは本格的にまずい状態なのではと思い始めたバンブーは、とりあえず合鍵を寮の管理人からダッシュで借りてきた。鍵を回してみると、カチリと開いた音。
ドアを開けて、中に入るとそこには……
「すぅぅぅんんんんすぴっ……すぴーん……」
ソファでゆったり眠りこけていたバントレの姿があった。鼻提灯まで膨らませている。
「起きろーっス!!!!」
これにはバンブーもキレ気味の咆哮を轟かせた。
「おわっふう!?……あ、バンブーさんおはようございます」
「おはようございますじゃねえっス!もう!16時!」
「あれ?もう?あれ?」
「もしかしてあれっスか、突発的事態だってのにアタシを待つついでにちょっと寝ようかなとか思ってたらいつの間にかぐっすり寝てしまってたってヤツっスか」
「……御免なさいねバンブーさん。朝だいぶ気だるげでしたので……」
「はあぁぁぁぁぁぁぁ……マジで心配して損したッスよ」
最悪の場合の想定をしていたバンブーは、がっくりと膝をつく。よくよく思い返せばこのトレーナー、先生時代のころからわりと図太い性格であった。流石にあの火事の直後は精神的にかなり疲弊していたのだが、トレーナーになることへの問題が消失した後はあっという間に元の性格に戻ったばかりか、「どの仮面がいいですかね」などと宣うぐらいには図太かった。
そんな彼……いや、今は彼女がつけているのは目元のあたりを隠す真っ白い仮面。とりあえずつけてみましたと言わんばかりに輪ゴムで何とかしてる辺り、割と混乱していたのかもしれない。
「とりあえずその仮面とってもらっていいっスか?一応確認はしないといけないんで……あー目の色も変わってる」
「あれ、そうなんですか?鏡を見る気力すらなかったから適当に仮面を付けて寝てたので……」
そう言うと、バントレは仮面を外してみせる。すると其処には……
「うわっ、とんでもない美人さんっス……」
まつ毛はバチッバチ、眼はクリックリ、切れのよい美人の顔がそこにあった。
85二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:02:18
「えっそんなにですか?」
「ほ、ほら……見てみるっスよ」
そう言うとバンブーは手鏡をバントレに向ける。バントレが見る鏡の向こう側には、金毛できれいに切りそろえたセミロングに近い髪型、切れの良い目尻、まつ毛バチッバチ、美しい翡翠の瞳を持った美人ウマ娘が一人。
「どうっスか、びっくりするくらい変わってるっスけど……」
「……あっちょっと恥ずかしい。仮面被らせてもらいます」
スススと仮面で隠すバントレ。
「……これ拙いっスね」
「ええ、だいぶ拙いですね」
「「風紀が乱れそうっス/です」」
もう既に色んな面でガタガタのズタボロなトレセン内の風紀なのだが、自身のトレーナーが見事にウマ娘化現象に巻き込まれたこと、更には仮面を外したらヤバイ級美人であったこと、ついでに言えば淡く淡くほんのり淡く思いを寄せていたトレーナーがそうなったことでバンブーの脳はショートしていた。
バントレもバントレで、火傷を負ったことによってまあそういうことは今後ないだろうと、その辺のごみ箱にポイしていた女性に対する免疫が足を引きずり、自分の顔が女性になったことに対して初々しい恥ずかしさを覚え、次いで自分が見たこともないようなレベルの美人さんであったということに驚きを隠せず、オマケにそれを寝起きの若干ボケた頭で認識してしまい混乱が加速していた。
その結果。
「あぁ、仮面被ればいいのではないでしょうか?」
「それっス!それで完璧っスよ!」
二人共々出た結論はあらぬ方向へと吹っ飛んで行ってしまった。
その翌日。
謎の金毛仮面ウマ娘がトレセンに現れたということで大騒ぎになってしまったのであった。
86二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:02:32
~~余談その1、目覚めたときの話~~
体がもぞもぞするし、なんだか微妙に寒気がする。夢だというのに変な感じです。
そういえば昨日帰り際に女神像がピッカピカ光ってた気が……なんでしたっけ、なんかそういう話を前にチヨトレさんかテイトレさんに聞いたような何だったような……おや?夢の中だってのにだれか知らない人……人?がいらっしゃいますね。
何か言っているようです。何々……すまない、ほんとうにすまない?何がすまないんですか?
え?ちょっと?もしもーし?
目が覚めると、私はウマ娘になっていました。いやそれどころではないですね、どうも風邪をひいてる気がします。人用の薬ってウマ娘に効きましたっけ……?あーその前にバンブーさんに連絡入れておかないとでした。
ぺっぺっぺとスマホをタッチしてメッセージを送る……あーこれ電話しづらい……後でお給料引き出してイヤホンの類を買っておきませんと……
あぁやはり熱っぽい。こういう日はさっさと寝るに限ります。アイマスク代わりに仮面をかぶって、おやすみなさい……
バンブーさんに叩き起こされたときには、熱は綺麗さっぱり吹っ飛んでいました。
~~余談その2、一日目面談の話~~
「っていうか仮面はそのままなの……?」
「ええまあ、はい。まだこの顔を表に見せるのは一寸恥ずかしいので。ですがご安心をブラトレさん、理事長には許可を頂いております」
「いやそういうわけではないんだが?まああっちよりマシか……」
「あちらというと?」
「ターボ!今日も併走トレーニングするぞ!」
「するするー!アニキ!今日もツインツインターボエンジン全開だー!」
「青タボ……お前ホントその格好で暴れまわるのだけは勘弁してくれ……」
「……いやぁ、元気ですねえ」
「その一言で済ませちゃって大丈夫なので……?」
「あちらも理事長に許可を頂いているらしいのでお互いさまということです」
「……そだね、うん」
≫169ガンギマリ頭スズトレ21/11/29(月) 22:48:27
まともトリオと耳かき
「ウマ娘化してからずっと……」
「耳掃除してないだぁ……??」
「え、そんなにおかしい?私元からあんまりしないタイプだけど。」
「大アリだわ、軽く1年は経ってんだぞ。」
「私でさえグルーヴに時々やってもらってるんだよ??」
「グルトレでさえ……!?ごめん私の認識がバグってたみたい。」
「まあ別にやらなかったら問題がある、ってわけでもないからな……」
「せっかくだしフクトレにやってもらえば〜?人とウマ娘とじゃ感覚違うだろうし。」
「あ、いいねそれ。」
「待て、なんで俺に振る??」
「だって膝枕はなるべくグルーヴにだけしてあげたいし……」
「あとフクトレなら絶対誰かにやってあげた経験あるかなって。」
「……場整えるからちょっと待ってろ。」
「ありがとう、フクトレ。私もその間に髪解いとくね。」
「んじゃあやるがあまり期待するなよ?」
「大丈夫大丈夫、感覚掴みたいだけだし。だけどそっか、ウマ娘の耳の向き的に仰向けなんだね。」
「そうそう!いいよね〜顔見ながらやってもらえるの!」
「たまに変顔してくるやついるけどな。」
「……そういえばスズトレが髪下ろしてるのって新鮮かも。」
「あー……めちゃくちゃ長いから結ばないと大変なんだよひゃんっ!?」
「「!?!?」」
170ガンギマリ頭スズトレ21/11/29(月) 22:48:43
「……フクトレ?」
「誓ってなんもしてねえぞ。いやホントに。」
「大丈夫分かってる。あくまで念には念を入れただけだから。……スズトレ、大丈夫?」
「……だい、丈夫……(顔真っ赤)」
「ダメそうだな……次からはスズカにやってもらえ。自分でやるのは絶対無理だわこの感じ。」
「そうだね〜……とりあえず今どうするの?やめる?」
「……いろいろ分かったしここまででい」
「いや、このままやる。」
「えっ。」
「この量の耳垢をスズカに任せられねえよ。予行練習だと思って耐えろ。」
「フクトレ、私は何したらいい?」
「色々と絵面がヤバいことなるだろうから軽く人払いして、その後はスズトレ抑えれるように構えておいてもらえると助かるな。」
「分かった!!」
「待ってほんとに続けるの!?心構えんぅっ…!!」
以後、スズトレはちゃんと月一で耳掃除をスズカに頼むようになった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part512【TSトレ】
≫15二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 23:02:48
「…と、ファイトレさん。こんにちは。」
「ああ、こんにちはバントレ。今日はいつもの仮面みたいだね。」
…仲良く談笑しているのはファイトレとバントレ。ことバントレは最近ウマ娘になったばかりであり、ファイトレも少し気にかけていた。
「…しかし随分と慣れたみたいで。普通、もう少し慌てるかと思っていたけれど。」
「ええ、私はあまりそういうのは…」
「はは、大分図太いようだ。…けれど、私としてはそれで良いと思うよ。少なくとも、それを気に病んだりするよりは全然。」
「…ファイトレさんも気にしていない人ですね」
バントレからの返事に、ファイトレは答える
「私にとって大した問題ではなかったからね。むしろファインに並走して色々教えられたり、彼女の感覚を掴めることの方が嬉しいよ。」
「ファインさんには勉強とかも教えているので?」
「その通りだね。彼女に教えて上げられるものは全部教えるつもりだよ。そのおかげか、成績に困ったことはあまりないさ。」
「…なら、私が教える必要はあまりなさそうです」
バントレからのその言葉に、ファイトレは少しキョトンとしたあと、笑みを浮かべながら言った。
「もしそうなったら、私が寂しいから譲る気はないとも。…けれど、貴方の教え方は凄く気になっていてね。今度見て見たいんだ。」
「ええ、なら明日にでも見に来ますか?」
「いいのか?それなら是非行かせてもらおう」「その代わりと言ってはなんですが、外国の著名な論文って持っていますか?もしあるのなら、一度読んでみたいと思いまして。」
「…ふむ、ウマ娘関連だがいくつか持ってきているから、それで良いなら貸し出すよ。」
「ありがとうございます。」
ペコリとお辞儀をするバントレ、だが姿勢を戻そうとした際に仮面がほんの少しずれたのか、隙間からちらりと顔が見えた。
16二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 23:03:04
「あっ…」
慌てて仮面を付け直すバントレ、一方それを見ていたファイトレは
(なるほど、絶世の美女って訳か。道理で…)
「すいません、見苦しい所をお見せしました」「ふふ、私は気にしてないので大丈夫ですよ、それに、仮面の下は勝手に見るものではない。…違いますかね」
「…ファイトレさんは時々男性より男性らしく振る舞いますね…。すみません、時間もそろそろなのでこの辺で」
「ああ、また後で。」
立ち去っていくバントレを見つつ、
(冷徹な仮面と愉快な仮面か)
自分と彼女がつけた仮面の事を比べて思うファイトレであった。
短文失礼しました
またやっております。教育者つながりてファインに色々教えているファイトレと話してもらいました。少し突貫工事がすぎるぞおい!
ファイトレからしたら、そういうできる所はどんどん改善すべきだと思ってます。彼女達は仮面をつけているということも同じですね。
≫104二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 07:35:08
ピッ!
「…よし、ここまでね。」
ホイッスルを吹いたキタトレから掛けられる声、プールでトレーニングをしていたチームメンバーは水から上がった。
「…それで、キタトレ的にはどうなの?」
上がってきたサトトレから問われたキタトレは、手に持っていた端末から視線を外さずに返事した。
「そうね、今回のトレーニングは上々ってところかしら。私からすればもうちょっと伸ばせると思うけど。」
「…よく考えなくてもG1バと重賞バを同時にトレーニングさせるとか、担当のトレーナーの感覚は狂いそうだね。」
「そもそもG1バが最初の担当の時点でもうおかしいわよ?頭を焼かれても仕方ないわね」
「実際焼かれてるでしょ?太陽の輝きに。」
「貴方もダイヤモンドの輝きに目を焼かれてるのに何を今更かしら。…まあ、私は輝く天使にも焼かれかかってるからそれはそうね。」
「…言ってくれるねキタトレ。まあでも、僕からしたら信頼できるトレーナーだよ。」
「ふふ、言えるようになったじゃないの。」「まだ微妙だけどね。…それと、僕がそれを引き受けるよ。」
「なら頼んだ…」
「トレーナーさぁっ!?」
その時、後ろから来ていたセラタプラタがうっかり足を滑らせ、キタトレに倒れかかる。反応できないキタトレ。
ザバァン!
105二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 07:35:42
派手な水飛沫と音とともに、二人揃ってプールに落ちた。慌てるチームプロキオン。
「…ぷはっ」
程なくして浮いてきたキタトレは、セラタプラタを片腕と胸で抱えたまま、心配するチームメンバーに声を掛けた。
「私は大丈夫よ、誰かセラタプラタを引き上げてくれないかしら。」
「トレーナー、私は大丈夫です…」
「なら良かった、とりあえず上がりましょう」
「はい…」
プールから上がってくる二人、水着のセラタプラタはともかく、普通の服だったキタトレは濡れて凄いことになっていた。
「とりあえず早めに着替えるとして…」
ふと、周りからの視線が微妙なことに気づくキタトレ。チームは勿論、他の所も目を逸らしていた。微妙な顔のサトトレが声をかける。
「キタトレ…服が…」
…濡れたことで服が張り付いて透け、その結果非常に豊満なバストと引き締まった腰、そこそこ大きなお尻がくっきりと強調されていた。
そしてその状況をすぐさま把握した彼女は
「…その、ごめんなさいね」
とだけ言い残して足早に立ち去っていく。
結果、それを見ていた全員の悶々とした空気がその場には残されたのであった。
短文失礼しました
昨日の水着ネタを遅れて使ってます。酒宴させる前にこっち先が良かったか…?あの体型での濡れ透けは非常によろしくないと思う。
ssを書く時は妄想を字に起こすだけなんだけど、こと自分の感情とかも乗せがち(乗せると大抵重くなる)のがなんとも…しかもそうすると加速するし…
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part513【TSトレ】
≫19二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 12:05:18
「お前の走りが見たいんだよ、俺は!お前だって走りたいんじゃあないのか!それをなんだ、トレーナーを皆追い返しちゃって!」
「煩い!私の抱えてるものも知らないくせに!何がわかるんだ、アンタに!」
「だから、こうやって聞いてるんでしょうが!解らないでトレーナーなんかになれる訳がないっ!」
「ッ……好きに……好きにしろ。ついて行くぐらいはやってやる」
富野節のようなそれっぽい何かになったブラトレ達のストーリー中の口論…?
いやクソ難しいよねって
25二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 12:13:35
「あなたの担当は確かに優れた資質を持っているようですが、無礼を許すわけにはいきません」
「こういう馬鹿な男性もいます…世の中捨てたものではありませんよ」
「ふふ…先生からそのような申し出を受けるなんて嬉しい」
「でも困りました…貴方はものの頼み方を知らないようですね」
違う…ハマーン様に合わせてみたけど俺の中のウラトレ先生はこんなこと言わない…!!でも言うかも…()
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part514【TSトレ】
≫50邪龍ぐるみ、咲いちゃう21/11/30(火) 18:24:54
「……どう、でしょうか。お二人とも」
「う~ん……これは、どう見ても……」
「……うん、間違いない。これは……」
「「アジサイだね」」
「やっぱり、そうですよね」
「この、たてがみ? の部分に咲いているのは、俺の見立てではガクアジサイだろうと思うよ」
「顔のあたりが空いてるし、私もそう思います。それで、この肩? に咲いてるのは……ホンアジサイ、かな?」
「ニシトレさんもグルトレさんも、お詳しいんですね。見ただけで細かな種類までわかるなんて」
「ありがとう、黒鹿毛のクリトレ君。俺はまあ、好きこそものの上手なれ、ってやつかな」
「よく花壇のお世話なさってますもんね~……本っ当にありがとうございます……助かってます、ホントに」
「好きでやってるから気にしないで。生徒会の手伝いやら、色々大変だろうし。何かあれば声かけて、力になるから」
「グルトレさんもグルーヴちゃんも、最近お忙しそうですからね……僕も何かお手伝い、しましょうか?」
「気遣いが嬉しい……けど、大丈夫だよ栗毛のクリトレ。ニシトレさんもね」
「そうですか……あ、グルトレさんはどうしてそんなにお花に明るいのか、お伺いしてもいいですか?」
「む、いい質問だよ栗毛のクリトレ! 実はね、グルーヴが色々教えてくれてね! こないだも……」
「スイッチの入ったグルトレ君は栗毛のクリトレ君に任せるとして。どうしてこうなったのか、聞いてもいいかな」
「あ、はい。そろそろ洗った方がいいかな、と思って、洗濯方法の書いてあるタグを探したんです」
「ふむ。見た所、なさそうだ……けど、そこで話は終わらないんだろ? 黒鹿毛のクリトレ君」
「ええ……次の日トレーナー室に来たら、この子の足元に紙があって、そこに書いてあったんです」
「不思議なこともあるものだね……それで、その紙にはなんて?」
「"洗剤を使わず手で揉み洗いして、日当たりと風通しの良い所で乾かしてください"と」
「……その手順に従ったら、この通り、ぬいぐるみにアジサイの花が咲いたわけだ」
「はい……不思議ですよね」
わがなは「じゃりゅう・あこうかまじしさい」。りゃくして「あじさい」。みずとひかりで、はながさくのだ。
いっしゅうかんくらいさくぞ。きぶんてんかんにどうぞ。へやがはなやぐことまちがいなし。はなだけに。
(了)
≫75二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 19:02:50
ある日、ムントレは悩んでいた。
そんなムントレに、近づくものがいた……
「うーん……」
「あ、ムントレさん?大丈夫?」
「あー……ルドトレ。実は──」
~🕐~
「ふむふむ……"究極のおでんを作りたいけどその材料を如何に集めるか"……」
「ああ。購入はまず考えたけれども、究極のちくわ、究極のハンペンを作るならまず材料の鮮度が大事、究極の大根と究極のコンニャク芋は既に理事長のニンジン畑を間借りして栽培してるから大丈夫だけれども、やはり魚介類が……」
「……昆布も魚介だし、何よりつみれとかも……」
「ああ……だからこそ、自ら魚を手にいれたいものだが……」
そこに颯爽と現れるセグウェイ一つ。
乗っているのは──
「よっ!どうした?そんな推理物を買ったら実はアクションだった顔して!」
「ゴルトレ!」「ゴルトレちゃん!」
「んー……このゴルトレ様が推理したところ、多分船舶免許いるやつだな?」
「その通り!実は──」
~🕐~
「ふんふん……その"究極のおでん"っつーのはジャニーズ案件じゃねえか?」
「採算度外視だから単価は気にしないよ?少なくとも、TOKIOのラーメンよりは……」
「ああ。究極の具で作ったおでんこそ究極となる、なんて単純なことは考えていない。だけれども、究極の具で作ったおでん、それを手にしてみたいと……」
「んー……とりあえずお前らのやる気はわかった!よーし、ゴルトレちゃん号についてこい!」
「「おー!」」
76二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 19:03:03
こうして、三人は明日が休日なので翌日まで待ってから、ゴルトレに連れられ行き先も見ずに電車に乗った──
「……ところで行き先は?」
「……大洗かな?」
────大洗。
「ついたー!」
「長いこと電車に揺られ……おっと、もうお昼時か……」
「ならよぉ……やっぱあれっしょ!」
「だね!」
「だな!」
「「「あんこう鍋!」」」
────こうして、結局三人はあんこう鍋を食べて水族館を見て、ごみ袋を買って帰った。
シンボリルドルフとマチカネタンホイザの賢さが5上がった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part515【TSトレ】
≫52後編(上) 1/1021/11/30(火) 21:28:56
────ウマ娘がレースの時に並ぶゲート。何回も、何回も見てきたコレだがまさか自分が並ぶ日が来るとは思わなかった。
アイツが因子の話をしてくれて、尚且つ“霊力”を貸してくれたのはありがたかったのだが……少し話が長かった。俺がゲートについた時にはもうレースが始まる5分前、他のトレーナーさん達はもうとっくのとうに並びきった後だった。
何とか間に合ったという安心感と、観客席から感じる目線に恥ずかしさを感じつつ、いそいそとゲートに入る。すると、隣に並んでいたブラトレさんが話しかけてきた。
「よう、カフェトレ。随分と遅かったな」
「あ、はは……色々ありまして」
「そうか、まぁ大変だがお互い頑張ろうぜ」
「ええ、頑張りましょう」
……どうやらこの青い光は他の人には見えないらしい、というか見えたら面倒なことになる。遠くにいるフクトレさんの目線が痛いが気にしないことにした。
俺のゲートは一番左端、右を向くと全員の横顔が見えるのだが……みんな目が本気だ。
スズトレさんやフラトレさんはまだわかるのだが、マルトレさんやネイトレさんといった、普段は走るところを想像できない人たちまで決心した表情をしている。
息を呑んだ、さっきまでだったら腰が引けてただろう。だが今はアイツの力を借りている。少し卑怯な気もするが……今ならもしかして上位に……
────そしてゲート開放の時間になった。
53後編(上) 2/1021/11/30(火) 21:29:34
3……息を整える。
2……そして前を向いた。
1……俺ならいける。
0……ガコンッ!という音と共にゲートが開いた。
スタートダッシュは上々だ。
アイツとのトレーニングで、俺は中距離適性の逃げ脚質だということが分かった。3200mだからといって差しなどの戦法を取っても、その前に体力が切れるのは目に見えている。だから俺は大逃げを決めるつもりで全力疾走した、それが一番最善、かつ上位に入れる可能性が高いと思ったからだ。
アイツの力を借りてるからか、練習の時とは比べ物にならないぐらい速い。周りの風景がすごい勢いで変わっていく、風を切る音が激しい。
これが……本来のウマ娘の力か。
だけど……
みんな速いな……?
先頭を走るつもりだったが……俺の前にはテイトレさんとフクトレさん、ブラトレさんが走っている。さらに少し奥にマクトレさん、そのずっと奥にカレトレさんとスズトレさんが見える。俺も二人の場所に行くつもりで走っているが……これは難しそうだ。
カレトレさんとスズトレさんが逃げの戦法を取ることはわかってはいたが、他の四人に関してはまだまだ体力を温存してるように見える。一方こっちは全力で走っている……どうやらアイツが『霊力を入れてトントン』と言ってたのは嘘ではなかったようだ。
力を借りていなかったら完走できなかったのはまず間違いない。
などと考えてるうちに後ろから来たルドトレさんとフラトレさんに抜かされる。もう減速してきた、まだ1200mあたり……半分すら行っていないのに。
54後編(上) 3/1021/11/30(火) 21:30:09
「クソっ」
悪態をついた、他でもない自分に対して。
もう身体がキツくなってきている、逃げの脚質なのに体力が無さすぎるのだ。それでも必死に食いつこうとフラトレさんの背中を1バ身ほど空けて追いかける。
前を走ってる人たちに関しては、スズトレさんとカレトレさんもスタミナが切れ始めてるのか、少しずつ減速し始めていた。逆に他4人はペースを上げ始めている。どうやらここから勝負を決めるつもりらしい。まぁフラトレさんに食らいつくのすら必死な俺には無関係の話だが。
2000m、ここまで頑張って来たがついにフラトレさんと2バ身ほど空いてしまった。すぐ後ろからは誰かは分からないが息遣いを感じる。意地でここまで食らいついたが……限界か。
残っている距離もかなり長い、体力を温存しないとこの先が厳しくなってくる。そう思い、徐々にスピードを落としていった……
その時だった。
がくん、と膝から崩れそうになる。
慌てて体制を直そうとする……が、足が急に重くなり上げることができない。
息が荒くなる、周りの音が遠くなる、周りが少しずつ暗くなり始めた。
なんだ……?なにが……?
身体を見てみるとアイツがくれた青い光が消えていた。
あぁ
まぁ
そう上手くはいかないか。
55後編(上) 4/1021/11/30(火) 21:30:48
すぐ後ろにいたであろうオグトレさんが俺の横を駆け抜けていく、そのすぐあとにロブトレさんとタイトレさんが走っていき……背中がどんどん遠くなり……見えなくなった。
俺は走るのが嫌いだ。これは子供のころからずっと同じだった、ウマ娘に変わってしまっても走ることは嫌いなままだった。
それなのに、なんで俺がこんなレースに出て、なんで俺だけ不平等な状態で走らなければいけないんだ?
俺にはウマ娘の『闘争心』なんてものは無いのに。
時間がゆっくりに感じる、視界がかなり暗くなった、恐らくぶっ倒れる数秒前なのだろう。なのになぜか思考だけは異様に働く。相反して体は重く、重くなっていく。
2200m……俺にしてはよくやった方だ、アイツに力を借りていなければここまでこれなかったろう。
悔いはない。身体が急に怠く、重くなったのは力を借りたせいだろうが、責める気は無い。鍛えてくれて、更にここまでしてくれたアイツを……責める気にはなれない。
でも、カフェにかっこ悪いところを見せちまうな……
56後編(上) 5/1021/11/30(火) 21:31:20
諦めていた、ここから立ち直る気力なんて残ってない。後はこの遅く過ぎていく時間に身を任せるだけだった。
身体が少しづつ斜めに、斜めに倒れていく……
その時だった、もうほとんど何も聞こえない耳に音が届いたのは。
「トレーナーさんっ!!」
……この声は……
57後編(上) 6/1021/11/30(火) 21:31:56
俺はゆっくり進む時間の中、残った少しの気力を絞り観客席に目を向けた。
おぼろげにしか見えないはずの視界、何故か彼女だけはハッキリと、明確に見えた。
マンハッタンカフェ、俺のかわいいかわいい愛バ。観客席から身を乗り出して、いつもは出さないような大声で俺の名を呼んでいた。
……カフェ、俺はいつもお前の素晴らしい夢を叶えてほしいと思って過ごしてた。お前の夢を支えるために全力を尽くしてきた。
まだ地面までは少し遠い、次に共に過ごした日のことが脳裏を過る。
一緒に怪奇現象を乗り越えたこともあった。
一緒に温泉旅行に行ったこともあった。
一緒に幻影の遊園地で遊んだこともあった。
お前をレースに勝たせてやれなくて、悔しい思いをさせたこともあった。
俺は情けない自分が嫌になって泣いた。
お前も悲しそうな顔をしていた、泣いている俺を横目に。
なのに……
なのに……
なのに、なんであの時よりも悲しい顔をしてるんだ?
58後編(上) 7/1021/11/30(火) 21:32:34
あぁ、そうか。俺を心配してくれてるのか。
お前は優しい子だからな、いつも自分のことより俺のことを考えてくれるんだ。こんなトレーナーのなりそこないみたいな俺のことを。
……俺は…………何を考えてるんだ?
違う。
違うだろ。
お前と会う前の、根性無しの俺とは違うんだ。
カフェと色々なことを経験して俺は強くなった、彼女と一緒に強くなれた。辛いことだってお前と、お前と一緒だったからこそ乗り越えられてきた。
俺はトレーナーのなりそこないなんかじゃない、俺はマンハッタンカフェのトレーナーだ。きっと……いや、これから絶対にもっと強くなる俺のかわいい愛バ。そのトレーナーがくよくよしてどうするんだ。
だから、頼むからそんな悲しそうな、泣きそうな顔をしないでくれ。お前にはずっと、ずっと笑顔でいて欲しいんだ。
……俺は、俺はお前に魅入られて
俺は……
俺はっ!!
59後編(上) 8/1021/11/30(火) 21:33:06
芝生を再び強く踏みしめる、血液がまた激しく流れ始める。そして、ゆっくりと過ぎていくはずだった時間の流れが元に戻った。
そうだ、俺は……俺はまだ走れる。彼女の為なら!!
900m、最早姿勢も呼吸法もでたらめな走り方だ。こんな姿をトレーナーの俺が見せるのは恥以外の何でもない。
800m、だが……だが今だけは、こんな滅茶苦茶な走り方でも見てほしい人がいる。
700m、視界が回り、耳鳴りがする。だからなんだ、こんなものでは俺は止まらない。
600m、滲む視界の中、ゴールだけを見てただ無我夢中で走る。
500m、足裏が痛い、ふくらはぎが痛い、膝が痛い。やっぱり走るのなんて……
400m、走るの……なんて……
300m、…………
200m、今こんなことを思うのも変だが……
100m、走るのって楽しいんだな。
────転がり込むように俺はゴールした。
60後編(上) 9/1021/11/30(火) 21:33:35
そのままその場に倒れる、足から筋肉痛を数倍酷くしたような痛みが走ってくる。いつもカフェには走り終わったあとは息を整えろと言ってるのに……俺も深呼吸をしようとする、むせて咳込んだ。
そういえば順位……と思い、横目で自分の順位を見る。結果は11位……頭が回らなくてそもそも何人だったか覚えていない。とにかく低い順位だ。だが……俺は完走しきった、3200mを走りぬいてやったのだ。
満身創痍の状態でいると、遠くの方からブラトレさんの声がした。
「おーい!!カフェトレー!!平気かー!?」
「いや、正直運動不足のお前が完走すると思わなかったよ!!よく頑張ったな!!」
俺も返事をしようとしたが、口からは「かひゅ」という空気がかすれる音しか出なかった。
「あ、悪い。無理して返事しなくてもいいぞ。それよりも……ほら、見てみろ。お前の愛バが来たぜ」
遠くを見てみると、慌てた様子のカフェが走って俺の方へと駆け寄ってきてた。
「トレーナーさん……無理はしないでと言ったのに……!!」
「…………ご、めん……」
俺は無理やり口から謝罪の声を捻り出した、しゃがれた声しか出ない。そして意識がもうろうとし始めた……ここまで根性だけで頑張ったが、どうやらそろそろ限界らしい。
視界の横で、申し訳なさそうな顔をしながら水を持ってくる“アイツ”を視界に入れたあと、ゆっくりと俺の意識は闇へと落ちていった。
61後編(上) 10/1021/11/30(火) 21:33:58
心配そうなカフェの顔と、ぼそりとだけ聞こえた
「……かっこよかったです」
という言葉と共に。
≫138チケトレの人21/11/30(火) 22:54:19
胸の奥にすまうもの④
「おーいっ!!ウオトレさーーーーーん!!」
「ちょっ、チケット、声がでかいって…」
1km先まで届きそうな声でチケットが呼び掛ける。
みんな振り向いてるからやめてほしいと思いながらチケットに手をぐいぐいと引っ張られウオトレのほうにむかっていく
「おっ、チケットとチケトレさんじゃないか、どうしたんだ?」
「アッ、ドモ、ウオトレサン」
「なんか固いけど大丈夫なのかチケット?」
「あー、緊張してるんだよ多分。」
緊張のせいか、かたことめいた口調になりチケトレは恥ずかしさで思わず自己嫌悪に陥りそうになった
「トレーナーさんがさ、ウマソウルのことについて聞きたいんだって!!」
代わりにいってくれてありがとう──心のなかでそう感謝の言葉を告げると、気を取り直してチケトレは自分の身に起こっていることを説明した。
並走のときのこと、ウマソウルのこと、そして夢でみたこと──すべて説明するとウオトレはちょっと困ったような顔を見せた。
「だったら蛇の道は蛇、ギムレットに聞いたほうが早いんじゃないか?」
ギムレット──ウオトレの身に宿るウマソウル。ウオトレとは共存関係にあり、聞いた話ではウマソウルを鑑定することが出来るという。なるほど、確かに今のおれにうってつけの人物といえる。
そう考えていると、ウオトレは目を閉じる。
しばらくすると、アクアマリンのような水色をした瞳が黄玉がごとき金色に輝きその鋭い双眸に胸を撃ち抜かれたような感覚に陥った
139チケトレの人21/11/30(火) 22:54:54
「うわあ、一気に雰囲気が変わったねえ」
思わずチケットが言葉を漏らす。実際、20真ん中くらいの男性がいきなり
壮年の危険な香りを放つちょいわる親父になったようなものだ。その迫力に思わず二人して生唾をのみこんだ。
「ほーう…。チケットの─あんたもなかなか難儀なのに捕まったな」
「なんか分かったんですかギムレットさん!?」
「ああ、恐らく今は休眠状態ってこととこのウマソウルはウイニングチケットの血縁者だってことだ」
「アタシの、血縁者…?」
チケットがキョトンとした顔でギムレットの方を見つめる表情はさしずめあり得ないといった顔だろうか。
「ああ、ちょっと驚いたがな。それも、俺と同じ親父殿らしい」
「チケットの親父さんですか…」
「父親といってもこの世界のウイニングチケットの父親じゃあない。アンタの身体のウマソウルがもといた世界でウイニングチケットとウマソウルが父子関係にあったんだ…って聞いてるかウイニングチケット」
頭が情報を処理できなくなったのか今にも煙が立ち上りそうな表情でチケットはフリーズする。チケトレが目の前で手を振っても反応しなかったので仕方なくチケトレとギムレットの二人で話を進める。
140チケトレの人21/11/30(火) 22:55:26
「それで、ウマソウルの名を教えていただけませんか…?」
早く教えてほしい、そんな表情でチケトレは訴えかける。
「まあ、慌てなさんなチケットの。」
「…そのウマソウルの名は──」
────
───
「おーい、チケット-」
「はっ!?ご、ごめんっ!固まっちゃってたみたいっ」
ようやくチケトレのかざす手に反応しあたりを見回す
「あれっ?ウオトレさんは?」
「用は済んだってことでチケットに宜しくとだけ言ってもどってったよ」
「そっかぁー、アタシもどんな子か聞きたかったなー」
口を尖らせてチケットが呟くがチケトレは愛想笑いをするもどこか浮かない表情を見せ、二人はトレセンの廊下を歩く。
流石にあんなこと伝えるわけにもいかないしなあ
チケトレは心のなかでぽつりとこぼした
141チケトレの人21/11/30(火) 22:56:00
時間は少々遡り10分前──チケトレとギムレットが話をしていた頃まで巻きもどる。
「そのウマソウルの名はトニービン。俺の居た世界ではウイニングチケットの親父に当たる奴だな」
「チケットのお父さんですか…」
一言だけ返すとチケトレは考え込んでしまった。
あくまでもチケットと血縁関係にあるのはこことは、別の世界──この世界のチケットとは何ら関係ない。そう分かっていてもチケトレのなかにはウマソウル──トニービンの発していた言葉が頭から離れなかった
「息子を返してくれ」「なぜおまえなんかが私を差し置いて」「許せない」「おまえさえ居なければ」「おまえが私の息子に相応しいわけがない」
頭のなかに直接流れ込む怨嗟の声─あれは夢だと己に言い聞かせるもいやにリアリティーのあるそれは不快に感じさせるには十分だったのだ
「不安か?」
優しい口調で尋ねるギムレットにチケトレは力なくうなずくしかできなかった
「安心しな。恐らくお前さんが見たのは質の悪い夢だ。見た限り今は落ち着いている。話し合うことはできるだろうしからだを乗っ取られることはないだろうさ。」
その一言に、チケトレは幾分か救われたような気がした。
「……おれはうまくやっていけるでしょうか」
「ボウズと俺だってやっていけてるんだ。気負うことはねえよ」
「そういっていただけると有り難いです……相談に乗っていただきありがとうございます」
「報酬はニンジンを所望するぞ。ボウズはラーメンがいいみたいだがな」
「分かりました、今度おごりますね」
そう返すと楽しみにしてるからなと言いギムレットさんはじゃあなとだけ残して歩いていった
肩で風を切り歩くその姿が今は頼もしく見えた。
≫147二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 23:34:27
ドリップコーヒー リウトレ
昼休みが終わり、シリウスはトレーナー室をあとにした。昼休み終了間際に構ってほしそうに迫ってきたがあたしは許さなかった。彼女は競争ウマ娘ではあるが、学生なのだから学業も大事にしてもらいたい。トレーナーという指導者としての立場であるあたしのエゴと言われたらそこまでだけども。指導者と言っても、彼女との年齢差は然程ない。だから向こうも変に改まることもない。ギクシャクするよりは良いとは思っていた。あたしのような新人でも選んでもらえただけありがたいことなのである。ケトルで沸かしたお湯をドリップコーヒーをセットしたマグカップへゆっくりと注ぐ。気持ち寒くなったトレーナー室にコーヒーの香りがひろがる。本当はちゃんとしたのが飲みたいところだけれども、あくまで職場なので切り替える意味も込めてドリップコーヒーを選んでいる。
人生はいろんなことがある、わかっていたけどウマ娘化することは想定外だった。それによってあたしの人生構想が狂わされてしまったことも。正直シリウスが卒業したらあたしは彼女から離れ、トレセン学園を去り、トレーナーを辞めるつもりだった。想定していたはずなのに、あたしは怖くなってしまった。トレーナーを続ければまた、ひとりの人生を棒に振るいかねないのではないか、と。だからあたしは別の道を改めて勉強しなおすことも考えていた。
もしかしたら彼女に出会っていた時点で狂わされていたのかもしれない。彼女はどうしてあたしに固執したのか、今でもわかっていない。ただ、わかっていることはあたしを大事にしてくれて想ってくれる。どんなに辛酸を舐めても、トレーナーであるあたしを恨まず、憎まず、契約を切ろうと話を持ち掛けても首を縦に振ることをしなかった。元々アプローチはされていた。いつぐらいからか、出会ったときからかもしれない。当時のあたしがそれをコミュニケーションの類や揶揄いではなく、アプローチとして認識し始めたのはその話を持ち掛けてからだ。それを口説き文句のそれだと感じるようになっていた。今ほどの身体の距離が近くなることはなかったものの、時折近いと感じていたことはある。トレーナーらしいことなど何ひとつとしてできていなかったあたしに何をそこまでするのだろう。彼女は自分だって辛いはずなのに、それを出さずにあたしに気を遣っていた。
148二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 23:34:37
マグカップからドリップコーヒーを外すとぽたりぽたり、マグカップへ垂れるコーヒー。少し安っぽいこのコーヒーの香り。不思議と好きだ。マグカップを手にパソコンの前に。作業をしながら今日の夕食を考える。2人分を考えるのが当たり前になっていた。この身体にも慣れてきた気がする。慣れないこともあるけど、それは基本的に日常生活には関りのないことだ。彼女に話しておくべきかは保留にしよう。作業をしながらコーヒーを口にしていく。苦いだけで何もない安いコーヒー。うとうとしてしまうこの時間には丁度いいものだ。コーヒーが冷めて、マグカップからなくなる頃にはいつものようにノックもせずに彼女がトレーナー室に入ってくる。今はそれがどこか待ち遠しく感じている。この前までと違うこと。あたしは生きるのが下手くそだったんだなぁと思わされる。でも少しずつ変えていきたい。彼女となら大丈夫。そう思えるようになれたから。
≫167二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:27:38
10年前
ゴールっ!ねぇねぇお姉ちゃん、どうだった?速かった?
すごい、前よりもずっと速くなってたよ。毎日練習してたの?
うん!あたしは将来トゥインクルシリーズで活躍するウマ娘になるの!だから特訓してるんだ!
それは素敵な夢ね。お姉ちゃん応援するよ。できることがあったら何でも言ってね。
ありがとう!…あっそうだ!あたしが大きくなってデビューしたら、お姉ちゃんがトレーナーになってよ!
…えっ、私がトレーナー?
うん!あたしとお姉ちゃんが一緒ならきっとすごいことができるって、そんな気がするの!だから、お願いっ!
…ふふっ。分かったわ。あなたの夢、私も一緒に背負う。
先にトレーナーになって、『ハクア』のことを待ってる。約束する。
168二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:28:49
1年8ヶ月前
すごい人気ね。あの走りを見せられたら当然の反応ではあるけど。
あなたも、スカウト?
うーん、半々かな。もちろんその気持ちもあるけど、ただ貴女のことは個人的に気になっていて。ずっと話してみたかったの。
…私は、一人でも走れる。誰の助けがなくても、走らないといけない、勝たないといけない。そう言ったら、来たトレーナーは皆困った顔をしていたわ。あなたは、どう?
そうね。…私は、貴女がどんな思いでレースに挑んでいるのか知りたい。どうしてそんな、まるで自分に罰を与えるかのように走っているのか。その理由が、私は気になる、かな。
…あなたには、そう見えたの?
なんとなく、ね。見当外れのことを言っていたらごめんなさい。
別に、いい。
…よしっ。決めた。友達になりましょう『アドマイヤベガ』
えっ?
やっぱり私は貴女のことが放っておけないみたい。でもすぐにトレーナーとして、というには時間も信頼も足りてない。だから、友達。まずは、お互いのことをよく知るところから。…だめ、かな?
169二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:29:49
9ヶ月前
妹…
うん、私にはウマ娘の妹がいるの。『ハクア』っていう名前なんだけど。その妹が来月、トレセン学園に入学してくるんだ。
…そう。
私が、トレーナーになったきっかけでもあるの。何年も前に、デビューしたらお姉ちゃんがトレーナーになって!って頼まれて。来月から1人、少し騒がしいのが増えるけど、いいかな?
いいわ。私のやることは、何も変わらないから。
ありがとう。…ねぇベガ。貴女の思いを、私は否定しない。それが貴女の強さだから。でも、苦しんでまで、無理をしてまで走ることを、私も『妹』も望んではいない。それだけは間違いないから。それを、忘れないで。
170二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:30:39
7ヶ月前
「ダービー」凄かったです!アヤベ先輩っ!
…ありがと。
お疲れ様、ベガ。いい走りだったよ、本当に。
あたしも早くアヤベ先輩みたいにレースで走りたいなぁ…
『ハクア』にはまだ早いよ。まずは基礎体力をしっかりつけてから。
はいはーい、分かってまーす。
…少しだけ、不思議な気分。今まで、誰かの憧れになんてなったことがないから。でも、悪くない。
「なんのために走るのか」。ゆっくりでいいから、ベガには考えてもらいたいんだ。そしていつかは…自分を許してあげてほしい。ベガには笑顔でいてもらいたいから。
…考えておくわ。
171二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:31:35
6ヶ月前
目の前に広がるそれは轟音を上げ
火炎が平穏を呑み込んでいく
誰かの静止を振り切って
真っ赤に染まった世界へと飛び込む
お姉ちゃん、助けて
中には妹がいる。
私が。私が。私が。助けなくては。
あぁ。
こういう気持ちなのか。
こういう絶望なのか。
今になってやっとあの娘の気持ちが分かった。
妹の救出は間に合わなかった。
私は一度生死の狭間を彷徨ったものの、最終的にはなんとか助かった。
私は助けられなかった。
私は残されてしまった。
約束したんだ。私がトレーナーになるって。一緒に夢を叶えようって。応援するって。できることなら何でもするって。
こんな終わりがあってたまるか。こんな運命私が許さない。神様、どうか。残された私の全てを賭けて。
奇跡よ起これと祈り続ける。
172二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:32:27
5ヶ月前
…トレーナー。
久しぶりね、ベガ。心配かけてごめんね。
何が、あったの?
…あの日、火事で『ハクア』が死んで。私は助かって。それからずっと祈ってた。そうしたら…
熱く燃えていく感覚も、死ぬまでの記憶も残ってる。死んだはずなのに、「あたし」はこうして、お姉ちゃんの身体を借りて、アヤベ先輩と話すことができる。
…!
どんなオカルトか、超常現象か、「私」に何が起きたのか全然分かってないの。でも事実として、今私の中には2人の人格がいることになる。そのせいか見た目も少し変わっていて、『ハクア』にかなり近くなっているかな。
耳と、尻尾…
身体のそれはウマ娘のものに変わってしまったらしいって、病院の人は言ってたわ。人格のことは伏せてあるから、どうしてなのかは分からないって首を傾げてたけど。
平気なの?
今のところは問題ないかな。人格も任意で切り替えができるし、表に出ていなくても、感覚や思考は共有できてるから。すごく変な感じだけどね。だからベガは心配しないで。退院まではもう少し時間がかかるけど、戻ったらまた、しっかりトレーナーを続けるから。
「あたし」も大丈夫です!変なことにはなっちゃったけど、でもこれってとっても幸運なことでもあると思うんで!またアヤベ先輩と一緒にトレーニングしたいんで、待っててください!
173二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:33:13
3ヶ月前
左脚の炎症…ごめん、気付けなくて。
ううん、いいの。少しの休みが来ただけ。『ハクア』としばらく走れなくなるのは残念だけど、でも必ず治して、またレースの舞台に立つから。
…成長したね、ベガ。私も早く治るように協力する。
ありがとう、トレーナー。
じゃあ「あたし」が、アヤベ先輩が復帰するまでの間、先輩の役目を引き継ぎます!
えっ…?
幸いというかなんというか、今このお姉ちゃんの身体はウマ娘。何回もこの身体で走ってはいるから勝手は理解したつもりです。だから、アヤベ先輩が回復するまでは、「あたし」がレースに出ます!
ちょっと待って。『ハクア』はまだ、入学してからまだ半年経つくらい。だいたい今のその状態でメイクデビューに出るどころか「本格化」もまだなのに…
確かに以前の「あたし」の「本格化」はまだでしたけど、でも、お姉ちゃんのこの身体は、既に「本格化」を迎えているんです。
…そうなの?トレーナー。
…確かに「私」のこの身体はレースで走れるだけの準備ができてはいる。そういう意味では嘘ではない、かな。
お願いしますアヤベ先輩!「あたし」に走りを教えてください!先輩たちのいる舞台に挑戦してみたいんです!
もちろん、これは「私」たちのわがまま。何よりも優先すべきなのはベガの脚の治療。でも、その中で、もしベガに余裕があるようなら、少しでいいから、『ハクア』の指導をお願いしたいの。今の「私」にはもうできないことだから…
174二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 01:34:34
現在
なんだかこうやって話すのは久しぶり。夜遅くにごめんね。寮長さんや学園の人に見つかったら怒られちゃうかな。
…その時は謝ればいいわ。私も、気になっていたから。
ありがとう。ベガは優しいね。
そう、今の「私」の状態について、話しておかないといけないことがあるの。
きっかけは多分あの時。菊花賞のあとにベガの炎症が発覚して、『ハクア』が代わりに走りたいと言った、あの時。
あの日以来、「私」の意識は日に日に小さくなってる。こんな夜遅くにならないと表に出てこれないくらいには。感覚や思考はもう共有できないし、切り替えももう任意にできない。そう遠くないうちに、「私」は消えるのかもしれない。それを、伝えておきたかった。
…っ。どうして…なの。
完全に「私」の推測でしかないけど、もともと無茶なことだったんだよ、きっと。死んだ妹の魂が生き残った姉の身体に同居するなんて。奇跡は起きたけど、完全な救済なわけがなかった。片方の要素が強くなれば、その分だけ残りは追いやられる。1つになろうとして小さい方が吸収される。今のこの身体のことを考えれば、こうなるのは当たり前だよ。
どうにもできないの?
少なくとも「私」には分からない。だから、もし、「私」が消えてしまっても大丈夫なように、今日はベガに話しておきたかった。
ありがとう。ここまで一緒に来てくれて。
ありがとう。「私」たち姉妹に付き合ってくれて。
そして、お願い。妹は何も悪くない。でも、少し天然だから。多分「私」のことを、最近出てこないなぁ、くらいにしか思ってないかもしれない。最後まで迷惑をかけるけど、どうかそんな妹と、これからずっと仲良くしてくれたら嬉しいな。
…私…私は。トレーナーに会えてよかった。つらかったレースが、少し楽しいと思えた。自分を、少しだけ許せた。私は、トレーナーに感謝してる。もっと3人で、一緒にいたいと思ってる。だから…だから…いなくなるだなんて言わないで…トレーナー。
…ありがとう、ベガ。うん、あと少しだけ、最後の時間を、貴女と過ごしたい。
そしてその日以降、「私」が現れることはなかった。