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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part601【TSトレ】
≫15二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 23:30:56
『誰がために走る?』
――カーン
――カーン
――カーン
トレセン学園のとある工房、その内にて甲高い鋼鉄の音が鳴り響く、
――その音を発するはとても小さな小さなウマ娘。イクノディクタス担当トレーナーである。
――カーン
――カーン
子供どころか幼児並の体躯から振るわれる鎚は、赤熱の鋳塊を芸術品の如き蹄鉄に仕上げていく。
「😊💦」
思い通りの仕上げになったのか、満足げに作り上げた蹄鉄をしまう。
そうして一仕事を終えたイクトレの背後に一つの影がゆっくりと差し込む
「ふふ、いつ見てもマーベラスな出来だよねー☆イクトレも食べちゃいたいくらい~★」
両腕らしき影が背後からゆっくりとイクトレの体を覆うとした時、イクトレは何らかのボタンを押す。そうすると警報音とともに不審者撃退用と思われる網が射出され、後方の影を襲う。
「え!?、まっt、わああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!私、私だよーイクトレー!!マベトレだよぉぉぉ!」
「😮💨」
イクトレはため息をつきながら装置の解除をしていった――。
16二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 23:31:11
……てんやもんやの末、マべトレは本題の用事を伝える。
「そうだったー、マベ用の蹄鉄の注文したいんだけど大丈夫ー?」
「👍️」
「📝」
「ありがとー。それで注文内容は練習用極軟鋼を4セットと模擬練習用アルミニウム合金2セットかなー、それで仕上がりはマーベラスにお願い☆」
「💪」
「あ、あとねー」
「❓」
「私用にも同じく極軟鋼を4セットとアルミニウム合金2セットをお願いしたいー。私に合うサイズの既製品はもうないから」
「👌」
「👣📏」
「そうだねー。足靴の診断もしなきゃだねーサイズも以前よりも更に小さくなっちゃったからねー☆」
サイズ測定をしながらイクトレは質問を投げかける。
「🙋👐❔」
「ん?質問?珍しいね。いいよーマーベラスに答えてあげる★」
17二次元好きの匿名さん21/12/30(木) 23:31:21
『君はどうして走るのかな?』
「ふーん、そういうことー、それはもう私自身のためだよー私がマーベラスに感じるため★それ以外にあると思う?」
「😯」
「クスクス――というのは半分冗談ー☆もちろん皆のためだよー私の走りで――マベと一緒に皆にマーベラスを届けられるそれが走る理由☆。だけどねーもう半分の私のためというのも本当だよ★そうじゃないとね。」
「😊」
「ふふふ」
「🙋👐❔1⃣」
「もう一つ?いいよー」
「😈🚫❓」
「んー?えーそれは難しいかなーこれは心の底、魂から自然と出ちゃうものだからー、例えるならおいしい食事を見てお腹が空いたり涎が出たりとか、面白いものを見て笑いが止まらないとかそういったもの。クス、難しいでしょ?でもねこれも"私"なんだからしっかり尊重しないと。マーベラスにね★自分は否定しちゃいけないんだよー」
「🧐」
「質問はこれで終わりー?」
「🔚1⃣」
「最後にひとつ?」
「🌞💖❓」
「はあ??何言ってるの!!そんなのあるわけないじゃん!マベのことは大切だと思うけどあくまでもトレーナーと担当としての間柄だし!恋愛とか論外!!。」
「😊」
「何いいものが見れたみたいな顔してんの!」
「🔚👣📏」
「…………で、どうー」
『靴も見たが走る姿勢からか普段減らないところの減りがひどい、しっかりとオーダーメイドしてやる』
「ありがとーイクトレ。マーベラスな蹄鉄をお願いするねー、じゃあまたくるねー★☆」
「👋」
≫40うどん(1/3)21/12/31(金) 06:42:16
「おうどん、できましたよー!」
「沢山ありますから、遠慮せず召し上がって下さいね」
「お、来た来た……うん、旨そうだな。いただきます……ほらスペトレも、遠慮するな」
「あ、はい……いや、これで遠慮するなは無理がありますよタマトレさん」
ある冬の日、何てことないはずの昼時。スペトレの目の前には熱々のうどんがあった。
……いやダメだ。三人称視点で状況を見れば何かわかるかも、何て思ったことがバカだった。
すぐ横ではタマトレさんがうどんを啜っている。冷める前に早く食えと目で催促されるが、それどころじゃない。
キッチンでは二人のクリトレさんがエプロンを着てうどんをよそっているのが見える。
……自分の分をよそって、こちらへ運んでくる。やがて食卓は4人のウマ娘で囲まれた。
「いただきます……って、あれ? スペトレさん、箸が進んでいないみたいですね」
「えっと、もしかして何か、食べちゃいけないものでも入ってましたか?」
……ハッと気づけば、クリトレさんたちが心配そうにこちらを見ていた。
「え、あ、いえ。そういう訳ではないんです、けど」
そう、目の前のうどんには何も問題はない。この状況にはあるが。
「ところでタマトレさん、どうしてスペトレさんとご一緒だったんですか?」
眼鏡のクリトレさんが尋ねる。当然の疑問に、タマトレさんはサラッと答えた。
「方々に食器用洗剤配って歩いてて、その途中で拾った」
「拾われました……あの、洗剤を配ってる理由とか、拾われた理由とか、ついでにお聞きしても?」
行脚中にはついぞ聞けなかったいくつかの理由を、便乗して訊いてみる。するとこれにも返答があった。
41うどん(2/3)21/12/31(金) 06:42:37
「洗剤はパチンコの景品だ。久々に大当てして喜んだのも束の間、他の景品が根こそぎ持ってかれててな……」
「仕方なく洗剤を貰ってきた、という訳ですか」
「文字通り山ほどあってな、お歳暮代わりに配って回ってたんだよ」
「普段から自炊してる僕としてはとっても嬉しいです! それで、スペトレさんを連れて来た理由は?」
「一つは人手が欲しかったからだな。いくら何でもあの量を一人で抱えて歩くのは無謀だ」
「お陰で腕がこわいべ……」
「で、もう一つは懐が寒そうだったからだ。財布を覗き込みながら渋い顔してたんでな、間違いないと思った」
「……ご明察です……うう、美味しそうに食べるもんだからつい……」
わかりやすいとよく言われるが、まさかあまり絡みのない方にすらそう思われてしまうとは。
事実なのだけれど、一向に事実なのだけれども! それでもちょっとヘコむのだ。
「洗剤配り手伝わせて、駄賃代わりに飯でも奢ってやろうと思ったところで、クリトレたちから連絡が来てな」
「そういう……ありがとうございますタマトレさん。クリトレさんたちもすみません、突然一人増えたりして」
どうやらタマトレさんなりに気を回してくれた結果らしい。感謝の念でいっぱいになる。
クリトレさんたちにもお詫びとお礼を兼ねて挨拶すれば、二人ともにこやかに言葉を返してくれた。
「大丈夫ですよ、元々沢山つくる予定でしたから。何ならあと数人増えても問題ありませんし」
「最初につくる量が4人前から5人前になるだけです! おかわりも自由ですからどんどんどうぞー!」
どうやら、自分一人増えたくらいじゃ変わらないくらいの量を用意しているらしい。
遠慮しないでいいようにという方便かもしれないが、ともあれ優しさが身に染みる。
感動しつつ改めて手を合わせ、いざいただこう……としたその時。ふと疑問がひとつ浮かび上がった。
42うどん(3/3)21/12/31(金) 06:42:55
「ん? あれ、ちょっと待てよ……ええと」
この部屋には今、4人しかいないはず。自分とタマトレさん、それからクリトレさん二人……やっぱり4人だ。
自分は急遽加わったわけで、つまり最初の予定では3人分のうどんを用意することになる。
しかし小さい方のクリトレさんは"最初から4人前つくる気でいた"という。
まさか、誰かが加わることを予想していたのか。それとも……
……ウム、ウマイ。モウイッパイ
「あ、もう食べ終わったんですね。おかわり持ってきます」
ヨロシクタノム
「……あの、タマトレさん。あそこのぬいぐるみ、今喋りませんでした?」
「ああ、あじさいだろう。アイツは喋るぞ」
「……ほぇ?」
「ん、言ってなかったか。そもそも今日うどんを食べることになったのもアイツのリクエストだぞ」
「……な、な……ななな……」
「な?」
「なしてぇーーっ!?」
──スペトレは叫んだ。
迷子のグラトレを探し、セイトレの面倒を見、キントレのコール練習に付き合い、エルトレを励ます。
黄金世代トレーナーの最年少オカンとして様々な事象に直面し、且つ慣れてきたスペトレだったが、
未だ「喋る上うどんを要求し、あまつさえ一切の汁跳ね無く食べきるぬいぐるみ」には出会っていなかったのだ。
驚愕と困惑の末、スペトレはただ、叫ぶことしかできなかった。
そしてそれはそれとしてうどんは美味しくいただいた。
「あ゛ー沁みるぅー……おかわり下さい!」
「俺もおかわり」
ワレモオカワリ
「はい、おかわり3人分ですね。少し待っていて下さい」
「ふふ、お口に合ったみたいで良かったです! 皆さん、いっぱい食べてくださいね!」
(了)
≫49二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 06:57:55
朝、目が覚めた。
横の時計は朝の5時をさしている。体を起こして軽く伸びをすると、ベッドから降りる。しかし足元が疎かになったせいでドテンと転ぶ。
横のオグリはもぞもぞとして起きそうにない。胸を撫で下ろして着替えを引っ張り出し、洗面台に向かう。
寝巻きを脱ぎ、下着を取り替えようとする。しかし、それは叶わなかった。手から力が抜けて、震え出す。
「嘘…やろ…?」
背中を鏡に写す。そこには、白い傷一つない背中があった。
「なんでや…なんでなんや…?」
目を何回擦っても、頬をパチンと叩いても、傷はない。まっさらな肌だった。
トレーナーの見舞いやらなんやらで傷や噛み跡がついて、でも最近はそれもなくなって、代わりに浅黒い痕になって。
全く信じることができなかった。まだ宝くじ3億円が当たったと言った方が信じれた。そのくらいに、どこか非現実的に感じた。
「んぅ…タマ…朝からろうした…ん…」
寝ぼけ眼を擦りながらオグリがやってくる。しかし、タマの背中を見るとピタッと静止した。
「タマ…背中の傷が…ないぞ…?」
「やっぱりか。オグリ、ほんまか?」
「ああ、本当だ」
神妙な顔で頷くオグリ。やはり本当なのだろう。
「こりゃ只事ちゃうで…」
その日のトレーニングは全く身が入らず、終了時刻を迎えるのだった。
50二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 06:59:17
夢を、みた。
3人の、誰かが、話してくる。
望みを、言え、という。
どんな望みでも、叶える、と。
私は、言う。
「タマよ傷を、肩代わりさせて」
3人は、言う。
厳しい、道だ、と。
私は、笑う。
目が、覚めた。
51二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 07:00:35
「はぁ…はぁ…トレーナー!!」
けたたましく扉を開けてしまうが、そんなことを気にする余裕はない。今は何よりトレーナーが重要だ。
「トレーナー!おるか!?」
足をもつれさせながらベッドへと向かう。
彼女は外を見ていた。青々とした桜と、忙しなく動く道路の車の列を。
「なんともないか!?なあ、ほんまに大丈夫なんか!?」
タマが息を切らしながら問いかける。しかしトレーナーは首をかくんと傾げて疑問を示す。
「そうやな…いきなりやったな…」
はぁ…はぁ…と息を整えながら説明をする。
「あんな、今日朝起きたらな、その…背中ん傷が消えとったんや。トレーナー、何か知らんか?」
こくり。
「そっか…まあそうやな…そうよな…」
それから少し経って、
「なあトレーナー。聞いた話なんやけどな、三女神しっとっか?アイツらと交渉して色々したっちゅう話を聞いたんや。ホンマになんも知らんのやな?」
こくり。
「ほっか…ならええわ。あー…今日も元気そうやな。こん後ちーとトレセンでやることがあるんや。失礼するで」
いそいそと荷物をまとめるタマに控えめに手を振ってくる。それに振り返すと、病室を出ていく。
(トレーナーには何も心当たりは無い。なら…三女神の気まぐれかいな?)
そう思いながら廊下を早歩きでかけていくのだった。
52二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 07:01:18
タマが去った後、外を見ながら思い出す。
そうか、あれは三女神だったのか。
なら納得だ。
彼女は、知らなくていい。
知ったら、きっと負い目を感じるだろう。
だから、黙っていればいい。
この程度の傷で許されるはずがない。
彼女はもっと大きな傷を負い続けているだろうから。
この程度の痛みで許されるはずがない。
彼女はずっと痛みを抑え込んでいるのだろうから。
このことを知れば、彼女は怒るだろう。厳しく叱咤してくるだろう。涙を流すだろう。
だから、このことは誰にも言わない。明かさない。ずっと、隠したままで。生きていく。
この先自分が生きていいのか、わからないけれど。
ごめんね、タマ。
≫66年越しマルゼンスキー21/12/31(金) 08:26:42
「トレーナーちゃん、折角だしタッちゃんに乗って夜のランデブーといきましょ?」
年越し蕎麦を一緒に食べてのんびりとしていると、マルゼンスキーがそんな提案をした。
「いいよ。どこに行く?」
「それは着いてからのお楽しみ!」
しっかりと防寒具を着て車に乗り込むと、いつもと違ってのんびりと走り出した。時折夜の街灯にスッと照らされるマルゼンスキーを眺めながらマルトレは一年を振り返る。春のG1戦線でのシンボリルドルフやグラスワンダーとの対決。秋天のスペシャルウィーク、ジャパンCの海外ウマ娘、有マでのAJとの再対決。さまざまなことがあった。マルゼンスキーはそれらを走り抜いたし、マルトレはその手伝いを頑張った。
マルトレの目線に気づいたマルゼンスキーが、信号で止まったところで顔を向けて、ニコリと笑う。釣られてマルトレも微笑んだ。
年越しの十分前。潮の香りがするなとよくよく見れば、いつも来る海岸の砂浜だった。
「ふふ、内緒にする為にいつもと違うルートできたの」
「夜で違う道だから気づかなかったよ」
ドアを開けて白い息を吐きながらマルトレは背伸びをした。時計を見れば年越しまであと五分を切っていた。
「ねえトレーナーちゃん! 年越しの瞬間にピョンって飛ぶの知ってる?」
「あー、なんだっけ。年越しの瞬間地球上に居なかったみたいな?」
「そうそう!」
「いいよやろう。じゃ、カウントダウンするよ」
時計だと秒のずれが気になるので時報に電話をかける。
「マルゼンスキー、もうすぐだから準備して、行くよ。九、八、七、六、五、四、三、に────」
67年越しマルゼンスキー21/12/31(金) 08:27:15
カウントダウンの二を言おうとした瞬間、マルゼンスキーがマルトレを抱きかかえ、その脚力で大きく大きくジャンプした。宙に浮いて驚いたマルトレの耳にスマホから新年を知らせる時報が鳴り響いた。マルゼンスキーの釣り上がった口の端がスマホの光で照らされる。
ボスン、と砂浜に着地したマルゼンスキーがニコニコしながらマルトレをおろす。
「ウフフ、お姉さんからのサプラ〜イズ! びっくりした? トレーナーちゃん」
「びっくりした……鍛えてるウマ娘の脚力だと俺抱えててもあんなに跳べるのか……」
「そこはトレーナーちゃんがやったトモ鍛えるトレーニング成果というか。ともかく一緒に新年は地球上からバッチリ離脱成功よ!」
「たしかに、飛行機乗ってる人以外でこれ以上長い時間新年に地球上に居なかったやつは存在しないのでは?」
「私たちがオンリーワンね! Fooo〜!」
「いえ〜い!」
深夜テンションなのか二人でしっちゃかめっちゃか適当に踊りマルトレが砂に足を取られてすっ転びそうになるのをマルゼンスキーが手を取って支えた。まるでエスコートをするように強くその手を彼女は握る。
「さっトレーナーちゃん、次は初日の出が見える所に行きましょう!」
「そっかここ夕日が見える海岸だった」
「そうよ〜!」
車に乗り込んで今度は初日の出が見える海岸を目指す。新年早々マルゼンスキーとマルトレは夜の街を駆けるのだった。
おしまい
68年越しマルゼンスキー21/12/31(金) 08:27:43
おまけ
一緒にジャンプするつもりだったマルゼンスキーはカウントダウンをするマルトレを思わず抱えて跳んだ。
その瞬間、マルトレを誰からも、それこそ地球からも独占できたような気がした。
≫91二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 10:01:09
「ねぇじいや。私、ちょっと散歩に行きたいのですが…」
「なりません。お嬢様は大切なご主人様のご息女にあらせられます。万が一、お怪我などしたら…」
「はぁい」
「ねぇお父様。私、おままごとをしたいです」
「駄目だ。きちんと学を修め、淑やかに、美しき女性である。それがお前の役割だ。そのような事は断じて認めん」
「……はい…」
「ねぇじいや。私、あやとりがしたいです」
「なりません。裁縫も満足に出来ていないようでは、そのような事はじいやも許可は出来ませぬ」
「うぅ…」
「ねぇ庭師さん。私にも剪定をさせてください」
「ダメダメ。怪我したら大事ですよ。それにそんなこと、旦那様も奥様も許しませんし、俺の首も危ういですから」
「あぁ…ごめんなさい…」
「ねぇ運転手さん。今度、歩いて学校まで行きたいです」
「いいえ。事故に遭われては大事となります。容認はできません。それに道中人攫いや路地裏に連れ込まれたりなどしたらどうなさるおつもりですか?」
「……」
「旦那様も一族としての役目を自覚しろ、そう仰っていたではありませんか。お忘れになられましたか?」
「…いえ…」
狭い鳥籠の中で、雁字搦めの日々の中。
何をするのにも、何を見るのにも、何を食べるのにも。
全てに糸が絡みついてきて。
全てに糸で縛られます。
退屈で、つまらなくて、飽き飽きして、凡庸な、そんな日々です。
92二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 10:02:01
「ねぇお母様。私、だあびい?を見てみたいです」
「…あなた…どういたしましょう?」
「構わん。そのくらいは良い。ただし裁縫と料理の質を上げさせろ。これではまだまだだ。」
「そうですか…では明日の午後3時20分に本邸に来なさい。そこで見せてあげます」
「本当に!?わぁい!」
「こら、女性がそのように喜ぶものじゃありません」
「あっ…申し訳ありません…」
「全く…この娘は…」
日本ダービー。
当時はその名前も、内容も、何もかもを知らずにいました。
ただ、学校に来た特別講師の方が、ダービーウマ娘だったと言っていただけです。
それだけなのに、何故か強く心を惹かれた気がしました。
次の日、ただの51インチの液晶に流れるだけの映像。
ただそれだけのはずなのに、それにまるで鷲掴みにされるように心をひかれました。
姿勢も、佇まいも忘れ、食い入るようにそれを見つめました。
当時は知らなかったせいもあるでしょう、本当に命を懸け、全身全霊を賭して走っているように思えました。
脳天を雷で撃ち抜かれ、背骨から体中に電撃が走り去るような衝撃。そう形容しても足りないほどに、頭の中を直接槌で揺さぶられたかのように。それほどまでに、鮮烈に、強烈に、心に、目に、脳に、体に、全てに刻みつけられました。
93二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 10:02:28
「お父様!」
「なんだ。それと、女がそのように声を高ぶらせるのはやめなさい。はしたない」
「私、ウマ娘さん達を支えるお仕事につきたいです!」
「…何?」
「あの人たちを支えて、頑張れって励まして、それで一緒に」
(バァン!!)
「いい加減にしろ。近頃のお前は本当に酷いぞ。お前は女だ。女は淑やかに、美しく、男を支える役目があるんだ。それなのにこんなくだらないものを見せたせいで…」
「くだらないなんて…そんなことは…」
「またそうやって…おい、座敷牢に入れろ。3日もすれば落ち着くだろう」
「え…そんな…お父様!ごめんなさい!もう…もうしませんから!それだけは…おねがい!お父様!」
「きちんと思い出せ。その血筋と、役割を」
暗い、座敷牢で、ずっと考えました。
やっぱり、許されるはずなかったって。
やっぱり、駄目なんだって。
やっぱり、なれないんだって。
諦めるしか、ないんだって。
でも、それが分かっても、やはり納得は出来ませんでした。
94二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 10:03:22
「反省はしたか?」
「はい…一時の気の迷いであのようなことをしてしまい、本当にすいませんでした」
「お前の役割は?」
「一族のために、よい殿方に嫁ぎ、発展と安寧のために尽くすことです」
「…及第点だ。もういい」
「…はい…」
そう答えても諦めることはできませんでした。
燻った火種を隠すように、それからは静かに生きました。
それから時が経ち、大学進学の時。
父親と、両親と、一族と、勘当をしてしまいました。
大きな言い合いでした。頬をはたかれ、気が狂ったのかと喚き立てられました。お前のような未熟者に1人で生きていけるはずがないと怒鳴られました。
でも、思えば、あれが初めての反抗だったように思います。
悪いことはしたと思いますし、間違っていたのかと、今でも思います。
でも後悔はありませんでした。しかし自責の念はやはり残りました。でも、もう後戻りはできませんでした。
95二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 10:03:46
主席でウマ娘の生態学の権威である大学に入学し、きちんと主席を4年間保ったまま卒業をし、そして中央トレセンに就職しました。
でも、その時のことは思い出したくもありません。
両家の箱入りお嬢様ということで話しかけてくる方は多くいました。しかし、私がそれほど価値がないとわかるとさっさと去っていきました。
今思えば、本当に潰れそうになっていました。
そんな時に、彼女に出会いました。
一目惚れ、といえばいいのでしょうか。とにかく、目を奪われたのです。
気がつけば、契約の話を持ちかけていました。そのくらいに、彼女は輝いていて、かっこよかったのです。
彼女はもちろん、と承諾してくれました。私の立場を聞いても「それはトレーナーの力量に関係ないし、1人のヒトとしてアンタを見たい」、そう言ってくれました。
そうして、今ここにいます。あの時潰れずに済んだのも、こうして今ここに居るのも、ウオッカさんのおかげです。願わくば、これからも共に歩んでいきたいです。
本当に、ありがとうございます。
そして、これからもよろしくお願いしますね。
おしまい
≫148二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 13:55:49
「では第3回トレセン極悪人衆会合を始めるぞ。まずお前」
「はい。私はトレセン食堂における動線の整備とキッチンの清掃点検をしてよりスピーディーに食事を提供することができるようにしてやりました」
「ふふふ…それで食堂は大忙しだろう。次にお前」
「へえ。あっしはウマ娘寮内に侵入して、廊下や共用スペースの柱のささくれを取り除き、コーティングしてやりました。これでアイツらは怪我に怯えることなく暮らせるでしょう…あ、私室には入っておりゃせん」
「その線引き、悪として誉高い。褒めて遣わす。あとそこのお前」
「はい。私はとんでもないことをしてやりましたよ」
「…ほう、詳しく聞かせろ」
「まずトレセン学園内の備品の取り換え。それから壁及び窓ガラスなどの修復がはじめ」
「次は?」
「机及び椅子の点検を。奴らは自分の机や椅子に魔の手が忍び寄った後など気づきますまい。」
「それだけではあるまいな?」
「ええもちろん。現在入院中と噂の件のトレーナー。アレを更に傷付けようとする輩の排除並びに、トレセン学園の反乱因子の摘発。ターフの芝の整備やダートの砂の入れ替え、理事長の猫の毛繕いを敢行しました」
「バレていないのか?」
「もちろんでございます」
「よくやった。最後にお前だ」
「えー…申し訳ありません…今回図書室の棚の上のホコリを排除しようと試みたのですが…」
「構わん。言ってみろ」
「その…ゼンノロブロイ及びそのトレーナーに鉢合わせしそうになりまして。急遽脱出したため、何も…出来ませんでした…!」
「わかった。次はないぞ?失敗すればトレーナー寮の廊下清掃だからな。もちろん1番きつい床の雑巾がけだ。わかったな?」
「はっ…はいい!!」
「以上だ。今日の会合はここで終わる。くれぐれも、イヌに嗅ぎつかれぬようにな」
「「「「「はっ!!」」」」」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part602【TSトレ】
≫47二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 18:05:44
特殊な家、というわけではなかった。
家族にウマ娘がいた、というわけではない。お金持ちではないし、極端に貧乏でもない。厳しくも優しい父と母。よくある普通の家庭。そこで育ったのが僕。
ウマ娘のトレーナーになりたい、そう思ったのはそう確か…中学に上がる前だったと思う。
父に連れられて行った東京レース場、そこでみたウマ娘の走り、それに僕は憧れを抱いたんだ。
それからは死ぬほど、いや文字通り死ぬほど勉強した。トレセン学園には集まるウマ娘は、全国から選ばれた一握りの天才たち。それを指導するトレーナーもまた、優れた才覚を求められる。凡人である僕は、努力に更に努力を重ねることでようやく…彼ら天才たちに追いつけるのだ。
そして僕は、トレセン学園のトレーナーと…なれたのだった。
そこで出会ったウマ娘、サイレンススズカ。
稀代の大逃げウマ娘。彼女との出会いは、僕の人生の中でもかなり特殊なもので…簡単に説明すれば、最初はベテランさんの下で指導を受けていた彼女を、僕が譲り受けた形になる。
そして、彼女と…担当とそのトレーナーという間柄になり、デビュー戦を経てしばらく、それは起きたのだった。
48二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 18:06:43
「…えっ?なに、この…耳?わあ、これは尻尾?」
「えぇ…?えええ…?」
いつも通りの朝だった。ベッドから起き上がり、洗面所へ。この時点で既に何か、いつもとは違うと思っていた。体が軽い、頭と臀部に違和感。そして鏡をみて、気づいた。
…僕は、ウマ娘になっていたのだった。
「トレーナーさん、本当にウマ娘になってしまったんですね…。」
スズカには僕がウマ娘になってすぐにこのことを教えることにした。担当だからだ。いまの僕にとっては一番近い立場の人だ。
「うん…。ウマ娘になって二日、まだ慣れないね。スズカの方は、その。」
「はい、やっと…理解できました。トレーナーさんはウマ娘、それも私と似た姿の。」
そんな彼女でも、流石に即日この不可思議な現象を理解することはできなかったようで。納得はすぐさましてくれたが、理解するのにはやはり二日ほど掛かった、らしい。
「スズカの方が少しばかり背は大きいみたいだけどね。まあ、元の僕から大体20cm近く縮んだことになる。正直、これだけでもかなり苦労してるんだ。」
「昨日は棚のファイルを取るのにも難儀してましたね。」
「前の僕を恨んだよ、どうしてそんな高いところに…。」
「台、用意しましようか?」
「ごめんね、スズカ…頼む。」
49二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 18:07:18
そうなのだ。ウマ娘化するだけならいざ知らず…いやそもそもそれ自体がなぜ?なのだが、背も小さくなったのだ。前までは届いていた所にも台が必要になってくる。うーん、不便。
「しかしまあなってしまったものは仕方ない、か?慣れていこう。」
「そうですね…。私も、出来る限りのサポートはします。」
「ありがとう、スズカ。じゃあえっと、とりあえず、ね。」
「はい。」
「服…買いに行きたい。」
「あっ…。そ、そうですね。」
いま僕が着ているのはサイレンススズカの服である。担当の私服を借りている。トレーナーとしてそれはちょっと、ね?
すぐにでも用意する予定がなんだかんだと時間が経ってしまった。
…買いに行こう、すぐにでも。
「とりあえずサイズを合わせたTシャツとジーンズがあればいいかな。」
「…いえ、ダメです。ちゃんと女性物の服を買いましょう。」
「えっでも。」
「ダメです。今のトレーナーさんはウマ娘なんです。しばらくは、服は私が選びます。いいですね?」
「あっ…はい。」
50二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 18:07:37
ううん、なにやらスズカは張り切ってるけど、別にそんな上等な物じゃなくていいのに…。
それこそさっき言ったような格好でも。
「トレーナーさん、スカート…はまだはやいですね。」
「…スカート!?待って待って!それちょっと恥ずかしいよ!いやほら、僕脚開いちゃうし!女性らしさとか微塵もないし!」
「はい。ですから、最初はスラックスと合わせていきましょう。」
「よ、よかっ…えっ最初?」
「徐々に徐々に…。」
「あの…。」
「楽しみですね、トレーナーさん。」
「えっと…お、お手柔らかに…?」
ウマ娘化して二日。既に前途多難。僕は男としての尊厳を保てるのだろうか、スカートを履かずに…済むのだろうか。
まあでも、しかし。スズカがニコニコと、楽しそうにしているのであれば。
それなら少しぐらいは、スカートぐらいであれば履いてもいい、かな?
この時点では、僕はそう考えていたのだった。
つづく、かも
≫75二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:49:59
第二節「Decision(決断)」
「本気か?お前…」
「はい、本気です」
おいおい急すぎだろ…、とフクトレ先輩は困ったようにそう言ってため息をつく。
「いつから?」
「学園との手続きにかかる時間にもよりますが、だいたい1、2週間後を予定しています」
「…理由を聞いても?」
俺はすうっと深呼吸してから、先輩に向き直って答える。
「最近、いやここ数日でやっと気づいたんです。俺はこのままだと『あの娘』、メイショウドトウから離れられない。無意識のうちに求めてしまう。ずっと側に居続けたいと願ってしまう」
「惚気話か?」
「違います、真面目です。…このままでも何も問題ないのかもしれません。むしろ今のままの方が、誰にも迷惑をかけずに、幸福で、楽な道だと思います。それでも、俺が、俺自身に納得できない。ドトウの隣に並ぶ資格が。たとえドトウがいなくても進んで行けるという、自信が。まだ、俺にはない」
「難しく考えすぎだと思うけどな」
「…そうですね。これは、俺のエゴです。でもやっぱり、どうしても譲れないことでもあるんです。俺は、弱くなった。やっとの思いで積み上げたものを崩されて、否定されて、見失って。『あの時』も、ウマ娘になってしまった時も、俺は誰かの助けがなければここに立てすらしなかった。だから、俺は乗り越えたい。ここでは、それがきっとできない」
自分がとんでもないことを言っているという自覚はある。それでも、フクトレ先輩はあきれることなくしっかりと聞いてくれる。この先輩が、いてくれてよかった。心の底から、そう思う。
「お前の言わんとしていることは分かった。驚いたが、反対はしねーよ。…あの時の死にたがりがここまできて、いい眼をするようになって、俺も嬉しいしな。…あっ」
それは、失言と呼ぶにはあまりにも突然すぎて、大きすぎる爆弾だった。
「えっ、えっ?せ、先輩、いま、なんて…?」
「あ、あー…。いやその、まぁ、なんというか」
「命の恩人ってやつだ、昔のお前の、な」
「…(絶句)きゅう」
「おい!まだ話は終わってねぇんだからここで倒れんなって!」
76二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:50:31
「…」
「恥ずいのはお互い様なんだから、そろそろ顔上げろって」
「…いえ、確かに恥ずかしいですけど、でもそれ以上に嬉しいんです。だって、もう会えないと思っていたから。お礼も何も伝えられないと思っていたから。ありがとうございます、先輩。あの時助けてくれて、必要としている人が必ずいるって言ってくれて。あの言葉はあれからずっと忘れたことなんて無かった。それだけ、『あの人』の存在は俺の中では大きくて、俺を生かし続けてくれた。…俺、結局トレセン学園に来てからもお世話になりっぱなしだったんですね」
溢れる。涙が。とめどなく
「…やめろ、調子が狂う。とりあえず話を戻すぞ。まず、お前が不在の間、メイショウドトウの所属は俺が預かる。それでいいな?」
「はい。あ、でも」
「?」
「他のトレーナーの方にも、できる限り伝えてみるつもりでいます。オペトレ先輩とか、ベガトレ先輩とか。ドトウの居場所は、できる限り多い方がいいから」
「それは、こっちとしては助かることではあるが。んで、その担当にはもう話したんだよな?」
「…まだです。これから言いに行きます」
「おいおい、これからって…それが一番重要なことだろうが。担当が反対したら取り下げだからな、これ。さっさと行ってこい。すぐ行ってこい」
「分かってます。あの、先輩」
「なんだ」
「…いえ、何でもありません。ありがとうございます。行ってきます」
77二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:51:37
昨夜、ドトウにはいろいろなことを話してしまった。
そしてこれから、俺の都合で、もっと迷惑をかけることになる。
そのことに抵抗はある。でも、隠さないと決めた。逃げないと決めた。
はっきりと伝えて、答えを聞いて。許されないのであればおとなしく引き下がろう。
でも、もし、こんなトレーナーでも。あの娘が、許してくれるのであれば。
『いつか、二人でお互いをもっと誇れるように。』
俺は変わるよ。自分を好きになって、戻ってくる。そしてその時なら、きっと。
君に本当に言いたかった言葉が、言えると思うんだ。
「あ、トレーナーさぁん。どうかしましたか~?」
「ドトウ。大切な話が、あるんだ」
「話…ですか?」
「うん。驚くかもしれないけれど、聞いてほしい」
「…?」
「…俺は、しばらくトレセン学園から離れようと思うんだ」
しばらくの沈黙がお互いの間に流れる。
「…え、えっ、ええと、は、離れるって…どういう…」
「ごめん。我儘なのは分かってる。でも、ここにいたら、俺はずっとドトウや先輩たちに頼り切ってしまう。きっとこのままじゃ、俺は本当の意味で『自信』を持てない。だから、少し旅をしようと思うんだ。ウマ娘のトレーナーとして、この中央以外にも、いろいろなものを見てみたい」
「で、でも、でもっ!」
「ウマ娘になって、もう時間が経った。今の姿を拒否するような気持ちはもうないし、これでも、意外かもしれないけど、けっこう…その、『好き』になれたんだよ。自分が。でも『自信』はまだ、なかなかついてこない。どうしても『周りのみんなに助けられないと』っていう前提がついて離れなくて、そしてそれに甘えてしまう自分がいるんだ。それは、きっと俺のためになってない。最後の一歩、納得はどうしても、自分の手で掴みたい」
78二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:52:17
ドトウは少し泣きそうになりながら、言う。
「だ、だったら私もっ。一緒に行きます!付いていきますっ。こ、これでもいろんなところに行くのは慣れてるので!」
「…ドトウは優しいね。その気持ちは本当に嬉しい。でも、それはダメだよ、ドトウ。君はこれから中央のレースを引っ張っていくんだ。テイエムオペラオー、アドマイヤベガ、マチカネフクキタル、エアシャカール、アグネスデジタル、タイキシャトル…それ以外にもドトウの仲間、友人、ライバルはたくさんいる。貴女の居場所はまだ、ここにある。まだ、やらないといけないことも残ってる。だから、ね?」
「でも!でもっ!私にもまだまだ自信なんてっ!トレーナーさんがいないと何にもできなくて!私は、私は、私はっ…」
泣き出してしまったドトウを俺はゆっくりと、しっかりと抱きしめる。
「それはもう、昔の話だよ、ドトウ。それに今の君には、俺以外にも助けてくれる仲間もいる。…いつだって君は大事な選択は自分でしてきた。そのための努力も、結果も君自身が成し遂げてきた。俺は少し背中を押しただけ。君は、強い。今まで君がずっと信じてくれた俺を、信じて」
ドトウは泣き止まない。ただお互いの、抱きしめあう力が少しずつ、強くなっていくだけ。
「今はまだ言えないけれど、俺はドトウに、伝えたいことがあるんだ。いつになるか分からないけれど、そのために、必ず、君のもとに戻ってくるよ。だから、泣かないで。…笑って俺を応援してほしい」
ずるいことだとは思っている。強引だとも思っている。誰よりも優しいこの娘が、断れるはずも、ないのだ。そして俺が最後に発した言葉は、かつて有馬記念の日、ドトウから言われた言葉そのものだから。
「トレー、ナ―、さん…」
泣きながら、それでも確かに笑いながら、ドトウはうなずいて見せてくれた。
本当は、許されてはいけないことなんだろう。最後まで、俺は皆の優しさに甘えている。
これ以上、ドトウにかけられる言葉はない。何を言っても薄っぺらく、言い訳がましくなってしまう。
だから、今伝えられるだけの思いを。できる限りの形に。
「ありがとう。…待ってて」
そう静かに言って、彼女の頬に口づけした。
79二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:52:56
「そっか。フクトレは口を滑らせたのか」
「…はい。テイトレ先輩にもどうお礼を言えばいいのか…。何を言っても足りないと思いますが…」
「いいよいいよ。フクトレもそうだろうけど、君が、こうしてここに来ているという事実だけで、それだけで感慨深いものがあるのさ。本も、大切にしてくれていたし」
「本当に、ありがとうございます」
「メイショウドトウのことは了解したよ。それよりも頑張りなよ。考えている以上にめんどくさい道に突っ込んだんだから。ずっと帰ってこない、なんてことになったら、流石にみんな怒るからね?」
「はい、肝に銘じておきます」
「うん、よしっ、行ってこい!」
トウカイテイオー担当トレーナー。
「なるほどね。言っては失礼かもしれないが、あの君が、まさかこんな選択をするようになるとは、思いもしなかった」
「ご迷惑をおかけします、オペトレ先輩」
「ドトウ君の件は別に構わないとも。君の選択、きっとそれは成長と呼ぶのだろう。若くて迷える者の特権だ。ただ、お節介かもしれないが一つだけ言っておきたい。君は『メイショウドトウのトレーナー』だ。たとえ中央を離れようとも、ドトウ君の所属が一時的に別のトレーナーに移ろうとも、それは決して変わることはない。もし、ドトウ君が不調をきたし、何か問題が起こるようであれば、その時は君に必ず戻ってきてもらう。それが、トレーナーとしての義務だ。それを、忘れないように」
「もちろんです。分かっています」
「…もっとも、君たちなら杞憂に終わると確信しているけれどね。それでは、よい旅を」
テイエムオペラオー担当トレーナー。
「難しいことはよく分かんないけど、でもドトトレは戻ってくるんだろ?じゃあドトウちゃんのことは任せとけって。またみんなで集まれる日を楽しみにしてるから」
アドマイヤベガ担当トレーナー。
「難儀なことするわね…でも、いいと思うわそういうの。嫌いじゃない。でもあんまり思いつめないようにね。ドトトレさんの居場所だって、まだここにあるでしょ」
タイキシャトル担当トレーナー。
「分かりました。ドトウさんのことは気にかけておきます。ドトトレさんのその目的を完全に理解しているわけではないですが、でも大切な、譲れないものがあるというのは、顔を見ていれば分かります。良い成果を手に入れられることを祈っています」
アグネスタキオン担当トレーナー。
80二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 19:53:37
この決断は、きっとある意味で不正解だ。
でも、それでも。
欲している解答は、いつだって。
自分の信じた道の先。手を伸ばした先にしか存在しないんだ。
第二節「decision(決断)」 終
終節「idea」に続く。
≫99二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:01:37
2話 家族との邂逅。
忘れていた。
忘れていた…。
忘れていた…!
「息子が…ウマ娘にっ。」
僕がウマ娘になったこと、家族に伝え忘れていた。
きっかけは簡単なことだった。実家に忘れ物を取りに行こう、そう思い、久しぶりに両親に顔を出すことにする。元の僕であればそれは自然なこと。
トレーナーになるまでは勉強勉強、夜校夜校、予備校…と両親に会う暇もなく、最後にあったのはトレーナー資格を取ってすぐのことだ。それからは会っていない
「ひさしぶりだなあ、父さん母さん。元気にしてるかなあ。」
実家の最寄駅へと繋がる電車の中、僕はスズカと共にいた。トレーナーさん一人では心配ということで一緒に移動しているのだが、25歳に対して高等部の子が。過保護というか、それ逆なんじゃないか?とは思う。
ふと、スズカが僕に問いかけてくる。
「…あの、トレーナーさん?」
「なんだい?スズカ。」
「ご両親には今のこと、話してるんですか?」
「…あっ。」
話して…いない。まずはスズカに、そして学園側に、とりあえずいまの状態を伝えて後は、というところで終わっていたのだった。
100二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:02:20
「ま、まずい!この姿で帰ったら…。」
「驚いて倒れちゃう…?」
「かもしれない。」
まずは電話で伝えよう。えっと、次の駅は。
「もう目的地だ…。」
「とりあえず電車を降りてから考えましょう?」
「…そうしようか。」
電車を降り、改札を出て、電話をかける。しかし。
「出ない。わあ、留守電だ、留守電だよこれ。」
返ってくるのは留守番電話サービスの無機質な機械音声。母の優しい声は、僕には届かない。
「落ち着いてくださいトレーナーさん。一度、深呼吸してください。」
「スーゥ…ハァァァァ。落ち着いた、よし。でも留守電、母さぁん。」
「大丈夫ですトレーナーさん。私も最初は驚きましたが、少し経てば慣れました。ご両親もびっくり…はするかもしれませんけど、トレーナーさんが自分の子だってわかるはずですよ。」
「そうかな?そうかも?…ありがとう、スズカ。慰めてくれて。」
「ふふ…トレーナーさんが慌てるから、逆に冷静になっちゃいました。」
担当に気を遣わせるとは、トレーナーとしては失態としか言えない。落ち着け、落ち着け僕。
そうだ、息子とその親しか知らないこと。それで説明できるはずだ。
101二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:02:48
「ヨシ…。スズカ、このまま行こう。実家へ。」
「何か秘策でも思いついたんですか?」
「ああ、家族しか知らない秘密。それを出せば納得するはずだ。多分。」
そして僕たちは歩き出す。父さんと母さんの待つ、実家へ。
「いないな。」
「そうですね。」
気づくべきだった。留守電ということは、家にいないと言うこと。留守だから留守電となる。当たり前のことじゃないか。
「これなら父さん母さんが帰ってくる前に用事を済ませられるな。」
「いいんですか?」
「いいんだ。僕に起きたこれは、後でゆっくり伝えておくよ。」
「トレーナーさんがそれでいいのなら、いいんですけど…。」
合鍵を使って中へ。よしよし、変わってない。
「ごめん、スズカ。ええっと…リビングで待っててもらっても良い、かな?」
「わかりました。待ってますね。」
さあ、さっさと忘れ物を取ってきて立ち去ろう。
「これだ…。はやく見つかってよかった。」
「さて、と。スズカと合流してトレセンへ」ただいまー。あれ?鍵開いてる?」
「どうした母さん。ん?なんだこの靴。」
…あっ。帰って、来た。
僕は急いで、そしてバレないようにこっそりとリビングへと向かう。
102二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:03:31
「スズカ…。」
「ト、トレーナーさん。」
「作戦が変わった、こっそり家を出よう。」
「えっ?で、でもそれって難しいと思いますけど…。」
「僕はこの家を熟知している、音を出さなければいけ」
「だ、誰…?」
いけなかった。速攻バレた。ひさしぶりの父さんと母さんとの邂逅。彼女たちは、とても、とてつもなく驚いた顔をしていた…。
「待って!違うんだ!父さん母さん!」
「何が!?ウマ娘の姉妹?姉妹泥棒!?お父さん!来て!」
「姉妹!?違うよ!?」
「違うんですか?トレーナーさん。」
「スズカ!?違うよ!?」
「どうした母さん…うわあ美人なウマ娘さんだなあ、お客さん?」
「お父さん!泥棒よ!」
「だから違うって!待って、話を聞いて!」
しっちゃかめっちゃかなこの状況。打破するには…これだ!
「…僕が初めて買った服は、黒ずくめの長コート!」
「…え?」
「中は全身謎ベルトの革の服!翌日学校に着ていって恥をかいて…その日は早退した。」
「もしかして…息子、か?」
「息子が…ウマ娘にっ。」
僕が言うのもアレだけど。
なんでそれでわかるんだ…!
103二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:03:57
「つまり、ある日突然ウマ娘になってたってこと?」
「うん。」
「そしてこの子は、貴方がいま担当しているウマ娘で、そして貴方とこの子は瓜二つだけど、姉妹ではないと。」
「そう。」
「ははあ、不思議なことがあるものだなあ、母さん。」
「そうねぇ…。長生きするものねぇ、お父さん。」
その後の説明は、思ったよりもうまくいった。僕の家はずっと普通の家かと思ってたけど、この理解力。もしかして普通じゃないな?この親。
「あの、私が言うことではないと思うんですけど、驚いたりとかはしないんですか?」
スズカが聞く。僕も思う。だって普通ないから、こんなこと。
「ええ。驚いたわ、サイレンススズカさん。」
「うん。でもね、この子は息子だよ。私と母さんにはわかる。」
父さん…母さん…。
「あんなトラウマ級の出来事、息子がおいそれと他人に話すわけないからな。」
「そうね。あれは息子のトップシークレットだから。」
そうかあ…。そうですよねぇ…。嫌なことだけど納得しちゃったなあ。
104二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:04:19
「ま、まあわかってくれたならそれでいいよ…。じゃあ、うん。僕らはこれで後にするから。帰ろうか、スズカ。」
「ええっと…?はい、トレーナーさん。」
僕らは帰り支度を始める。スズカの帰寮時間のこともあるし、そう長いことこのままここにいるわけにはいかない。トレセンまでは電車で二時間ちょっと掛かるのだ。
「ねぇ、サイレンススズカさん。」
帰り際、母さんがスズカに声をかける。
「?はい、なんでしょうか?トレーナーさんのお母様。」
「息子…いいえ、娘は真面目さしか取り柄のない子です。」
「それにちょっと天然です。服のセンスも悪い。」
それはいいよ父さん。
「こんなことをお願いするのは…申し訳ないことだとは思うのですが…。」
「娘のこと、よろしくお願いします。」
父さんと母さんは、スズカに向けて頭を下げる。スズカは…。
「わかりました。娘さんのこと、任せてください。」
二人のことをまっすぐ見つめなおし、こちらもまた頭を下げるのだった。
105二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:05:01
「ねぇ、スズカ。その、さ。父さんと母さんが言ったこと、気にしないでね?」
「トレーナーさんのことお願いします…ということですか?」
「うん。こうなっちゃったのは仕方ないにしても、僕はスズカのトレーナーだからさ。担当には少しの重みも背負わせるつもりはないよ。…ごめん、服はちょっとお願いしたい。」
帰りの電車の中、僕はスズカにそう言う。突発的なこととは言え、ウマ娘化は僕の責任。彼女に負担を担がせるわけにはいかない。
トレーナーとしてこれだけは譲れない、と思う…。
「…いえ、背負います。トレーナーさんのこと。」
「いや、でも。」
「いいんです。ウマ娘になったトレーナーさん、みていて心配ですから。」
「えっそう、かな…?」
「そうですよ。髪や尻尾のお手入れもよくわかってないですよね?」
ウマ娘になって…わからないことが増えた。確かにそうだ。
106二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 21:05:21
「う、それは…はい。」
「しばらくは私に任せてください、トレーナーさん。」
「…なら、ごめん。ちょっとの間は君に教わること、多いかもしれない。」
「ふふっ…いいですよ。私のこと、お姉さんだと思ってなんでも聞いてください。」
「えー…それは違うんじゃ…?」
「違いませんよ。…もうそろそろ乗り換えですね。」
「あっ…そうだね。降りようか。」
それからは、トレーニングの話、次走、どのレースを走ろうか、という話。そんなことを話しながら、トレセンまでの帰路についた。
ウマ娘になって、やることがぐっと増えた。
担当に負担を掛けるなんて、トレーナーとして情けないことだと思う。しかしスズカは、それをいいと言う、任せてくれと言う。
僕は、少しだけその言葉に甘えてしまうのだった。
≫125二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 22:20:04
大晦日の夜。電話で話し始めてはや一時間。
「明日の餅つき大会の準備はできてる?帰省しない子のために今年もやるんだろ?」
「もちろん!トレ公こそ初詣の用意はできてるかい?」
「ああ!でも着付けはお願い」
「はははっ、アタシに任せときな」
「美浦寮まで迎えに行くよ」
「待ってるよ」
「初詣の後、餅つき大会の前に一度トレーナー寮に寄っていい?」
「いいけど、何か用でもあるのかい?」
「実家からみかんがいっぱい届いてさ。だから美浦寮にも一箱お裾分けしようかと」
「そりゃ良い。寮のみんなも喜ぶよ」
2人の場所は違えど、会話が弾む。
「そういえば俺、初日の出見たことないかも」
「それなら、モーニングコールしてあげようかい?」
「助かるよ。毎年がんばって起きていようと思ってるんだけど、その前に寝ちゃってさ。起きた頃には日が昇ってて」
ふと時計を見る。
「あっ」
もうすぐ12時になる。
「「あけましておめでとう!」」
声が揃った。
「「はははっ」」
笑い声まで揃う。
「明日は早いんだから、さっさと寝なよ。トレ公」
「そうだね。じゃあまた明日……、もう今日か。また後で」
電話が切れる。早く寝ないとな。
トレーナー寮、美浦寮と場所は違うけど、2人は同じ朝日を見たとさ。
≫136二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 22:43:35
深夜3時半。部屋にはカリカリと万年筆が擦れる音と紙擦れの音が響く。仕事を始めて4時間が経過し、手が少々痺れ始めていた。
もうすぐ年明けというのに、休憩がてら外を覗くとぽつぽつと明かりが灯っている。片手の指で足りるほどだが、きっと同じような状況だろう。
椅子を立ち上がり伸びをする。背中から軽い音がいくつか鳴ると、フラリと体が傾いた。
控えめにあくびをしながら冷蔵庫を開けるも、何もない。その上のお菓子のカゴの中にも何もない。
諦めてコップに水を注ぎ、一息に飲み干す。
そうして机に戻り、ふと引き出しを引くとシガリロが入っていた。昔はヘビースモーカーだったが、トレーナー試験を合格してからはキッパリとやめた。トレーナーがそういうものを吸っていると彼女らの健康にも迷惑だ。
しかしなぜか無性に吸いたくなった。
それとライターをカーディガンの内ポケットに忍ばせ、喫煙所に向かう。ここからだと少し遠いが、肌寒さがかえって心地よかった。
喫煙所には誰もいなかった。ポケットからその箱を取り出し、一本取る。ライターで火をつけると、弱く少しだけ吸い込む。控えめな甘さが心地いい。
137二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 22:44:18
「あ、こんばんは」
「ピエッ」
入り口に誰か入ってきた。見るとテイオーのトレーナーさんだ。
「すいません…今すぐ出ますので…」
そそくさとタバコを消そうとするも、
「そんな逃げなくても大丈夫。取って食べたりしないから」
そう言われて少しだけ安心する。とりあえずは一緒にいていいみたい。
「ミスターシービーのトレーナーさんだよね?」
「えっ…あっ…はい…」
急に聞かれて辿々しく答えてしまう。
「よくタバコは吸うの?」
「えっと…タバコより…葉巻とかが…好きで…よく…吸うのは…昔…で…」
「ふ〜ん…今吸ってる銘柄は?すっごい甘い匂いするけど」
「あっえっと…カフェ・クレーム・バニラ…です…」
「へえ。一本いい?」
「あっ……どうぞ…」
初対面でいきなり言われるのは初めてで、何か裏がないか思わず勘ぐってしまう。
一本渡すと懐からライターを取り出して煙を吸い込む。しかし思いっきりむせてしまった。
「だっだだ大丈夫ですか!?」
「ケホッゴホッ…ああ痛かった。舌焼けしちゃった」
「すいません…これ…その…ゆっくり弱めに吸わないと…」
「ああ、なるほどね」
そう返すと、ごめんね、といって火種を潰す。そして懐からタバコを取り出して火をつけた。
まずい。やってしまった。またちゃんと言わなかったから迷惑をかけた。また…また…
138二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 22:44:53
「だっだだ大丈夫ですか!?」
「ケホッゴホッ…ああ痛かった。舌焼けしちゃった」
「すいません…これ…その…ゆっくり弱めに吸わないと…」
「ああ、なるほどね」
そう返すと、ごめんね、といって火種を潰す。そして懐からタバコを取り出して火をつけた。
まずい。やってしまった。またちゃんと言わなかったから迷惑をかけた。また…また…
「ふう〜…2度目になるけどシビトレさんは結構吸うの?」
「ヒッ…いえ…久しぶりに…無性に…その…吸いたくなって…」
「昔どのくらい吸ってたの?」
「あっと…葉巻…8本から12本くらい…です…1日…」
そう答えると目を丸くするテイトレさん。やっぱり言わなければよかった。
「結構吸ってたんだね」
「あ…はい…」
そしてしばしの無言が満ちる。
吸い込もうと持ち上げると、もう火はきえていた。
「あの…」
「どうしたの?」
「その…私は…これで…」
「ん。無理はしないようにね」
「えっと…その…はい…」
そう言ってペコリと頭を下げると、全速力で走り出す。途中こけそうになったが、なんとか脚を持ち直して走る。
「はぁ…はぁ…」
部屋に着くと、閉めた扉を背にしてもたれかかる。悪い人そうじゃなかった。でも、舌焼けの謝罪とお詫びに何か持っていかないとな。
そう思いながら、ふと自分が煙くさいことに気づく。
139二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 22:45:20
嫌々ながら歯ブラシ、着替え、ルドトレにもらったシャンプーやボディーソープなどをカゴに詰めてシャワールームに向かう。
しぶしぶシャワーを浴びて体を念入りに洗う。チクチクして気持ちが悪い。
いつもの烏の行水のようなものとはまるで別人のように丁寧に洗い終わると体と髪を拭いて下着をつける。適当なズボンとワイシャツを着て、煙の匂いがついた服を洗濯機に放り込むと洗剤を入れてスイッチを押す。予備のカーディガンを羽織ると、カゴに荷物を詰めてトレーナー室へ帰る。
部屋を出ると奥の曲がり角にテイトレさんとほか3人ほど他のトレーナーさんがいた。急いでシャワー室に隠れる。
耳を澄ますと、離れていくようだ。鉢合わせは回避できたようだ。
「でも…悪い人じゃない…かな」
そう呟くと立ち上がり、控えめな帰路につくのだった。
翌日同じ匂いがするとルドルフとシービーに詰め寄られ、ルドトレの助け舟によって一名を取り留めたシビトレなのだった。
後日シービーに普段愛用しているというシャンプーやボディソープなどをもらった。
≫164二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:14:54
『帰郷』
見知った顔、私のトレーナーが画面の向こうで笑っている。
「しかしよかったのか、私を実家に呼ぶとは」
『むしろブライアンの方は良いのか?年末年始なんだし家族や生徒会メンバー、マヤノたちと一緒に過ごしてもよかったんだぞ?』
「……まあ、それは良い。ともかく私はお前についていくつもりだ。今更無しにはさせんぞ」
『おっけーおっけー、じゃあ大晦日にな。お休み、ブライアン』
「ああ、お休み」
そう言ってあいつは電話を切った。
まったく、最近は思いついてからちゃんと連絡するのは構わんが、突拍子もないことを言い出されても困る。
「まあ、そういった面を含めて気に入っているのは確かだが」
そう独り言ちてしまった。
時刻はもう10時をとっくに過ぎており、そろそろ寝る時間だ。これ以上起きていては寮長にどやされる。
(あいつめ、堂々と実家に誘うとは……いったい何を考えているんだ?)
チームを率いてからの初めての冬、ジュニア、シニア併せてG1レース4連戦というトレーナーにとっての地獄のようなスケジュールが終わりを告げた後。あいつは突然私を旅行、それも帰省旅行へと誘ってきた。
実家への帰省に誘う。これを額面通りに受け取るほどこの私は無垢な少女ではない。
だが、あのあっけらかんとした表情から伝えられた情報だと思えば、あいつが額面通りの言葉で投げつけてきたことはわかりきっていた。
そういえばあいつ、ネイチャに温泉旅行券がどうのこうのとも言っていたな。
まさかとは思うが、本当に何も考えずにネイトレの実家への帰省にネイチャを巻き込んだのではないだろうか……
(まあ、私自身そういった関係になることもやぶさかではないが……)
そう思い、私は思考をリセットするためにも寝床へと体を沈めることにした。
静かな夜に、私の思考は溶けていく。
嗚呼、実家。嗚呼、家族か。
安らぎの場所、心を休める場所。
今の私の安らぎの場所……
いつも隣にいてくれることで安心できるのは、そのせいだろうか。
165二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:15:35
俺の朝は早い。
ウマになってからも大体変わらぬサイクルで過ごしているが、速度が出せるようになったので朝のランニングはちょっと距離が増えた。
朝のランニング、朝食の準備、髪を整える、服を着替える、朝食をいただく。
しかし今日はちょっとだけサイクルを変えた。
なぜなら今日の朝から実家に向けて飛行機で帰るわけだからだ。
ランニングはちょっと抑えめに、朝食も移動中に軽くつまめるものをついでに用意しておく。
髪の毛を整え、服装はまあいつも通りに。準備を整え、トランクと手荷物を纏め終わったらいざ出発。
「おーブラトレさん、おはようね」
「おはようさんです、大家さん」
「大荷物ねー。実家に帰省するの?」
「そーですそーです、今年はゆっくりできそうなので」
「いいわねー。お土産期待してるわよぉ」
「いいやつ買っときますねー」
大家さんがちょうど朝の掃除に出ていたのでごあいさつ。東京で一軒家をお安く借りられているのはこの方のおかげである。
拝むしかない。
でかい荷物で走るわけにはいかず、もどかしい時間を過ごしながら集合場所であるトレセンまで行く。
よく考えたら人間のころはこんな感じでトレセンに向かってたなあ、と思い返す。
人間といえば、元の姿に戻りたいウマになってしまったトレーナー達は結構な人数いると思うのだが、俺はよくわからない。
いや、この練習のやりやすい姿をポンと捨てるのが惜しいというわけではないのだが……
まあ難しいことを考えても仕方ないということで寒い風に乗せて思考の外へ追いやってしまう。
そうして歩けば、いつも見知った顔が一つ。
俺の相棒、俺の愛バ。ナリタブライアン。
「おーいブライアン。待たせたかー?」
「いや、ちょうど着いたところだ。行くか」
「おう」
いつも通りのあいさつ、そして返事。日常から始まる非日常。
さあさ、帰ろう。我がふるさとへ。
166二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:16:05
トレセン近く、最寄り駅よりゆらりゆられて1時間半。
羽田の空港より、目指すはトレーナーの地元。
轟音立てて大地を離れ、鋼鉄の鳥が空を駆ける。
「あー、そういえば連絡してたっけ…?」
「おい、私が一緒に帰ることも伝えてなかったのか?」
「嘘嘘、ちゃんと連絡してるってば。ほら通話履歴」
そういうとトレーナーはスマホの画面をこちらに向ける。
実家の二文字の記された通話履歴が何個か残っているのだが……
「おい……もしかして私に連絡して、私がついて来ると言う前に全部伝えていたのか?」
「あっバレちゃった。ははは、まあそういうことよ」
「まったく、私が行かなかったらどうするつもりだったんだ?」
そう笑いながら言うと、こいつはこいつでにししと笑いながら
「んーその時は涙を呑みながら一人で帰ってたな!」
などと抜かした。
「どうせそれはそれでウキウキしながら帰ってたくせに、よく言う」
そういいながら撫でやすくなった位置の頭をわしわしと撫で繰り回す。
「ぬあーやめい!せっかくセットしたのに!」
「ふっ、後でセットしなおしてやるからいいだろう」
「ぐぬぬ、まあいいか。昼過ぎくらいには着くだろうから、それくらいまではゆっくりしてていいぞ」
「ああ、そうさせてもらう」
嫌がる……というのもポーズのみということが分かっているし、だいぶ触り心地がよくなってしまったからついつい楽しんでしまう。
あのときの謎のぬいぐるみよりも触り心地が良いのだ。仕方あるまい。
その後少しまどろみつつも、飛行機は着陸の時を迎える。
空の旅は終了だ。
窓の外を見れば、都市部とは違った景色が広がる。
なるほど、これがトレーナーの故郷か。
中々良いじゃないか。
167二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:16:32
「おおお……マジで目の前にあの三冠ウマ娘が居る……うちの愚弟が率いてるとは思えないオーラだ」
空港を出れば姉が迎えに来ていた。待ちなさいよ、愚弟呼ばわりはひどいぞ。
「お世話になります。よろしく、お姉さん」
初対面ということもあってブライアンは礼儀正しく接した。まあこの後すぐに崩れていくのだが。
「こ、こちらこそ?お世話させていただきます……?」
「姉さん落ち着き、いつもの悠々としたペースはどうした」
「無理でしょ、有名人だぞおい。むしろもっと委縮するくらいがちょうどいいでしょ、あんたが慣れすぎなのよ」
よく考えたらトゥインクルシリーズを駆け抜け、ドリームシリーズで戦うウマ娘が無名なわけがない。
「うーんまあ否定はできんなぁ……でももう三年以上の付き合いだしなー」
「このアホ面3年も見続けたなんて、って今は顔変わってたわ。まあよく飽きなかったわよねー」
「案外ころころ変わって面白かったぞ」
「ええい顔の話はやめ!さっさと家に帰るぞ!」
「はいはい。途中でご飯は食べる?それとも家に帰ってから食べる?」
「腹減ってるけどまあ、家でいいでしょ。一時間もかからないし」「りょうかーい」
姉がいつも通勤で使っている軽自動車が、田圃広がる田舎道をただ走る。
懐かしい光景だ。冬の寒い時期だから外の空気は楽しめないが、ただ広い耕作地帯を車で走るのは好きだ。
まあ、今車は持ってないのだが。
「そういえばあんた、今車持ってないわよね?正月の移動はどうするの?」
「うーん、だれか使わないってなら借りたい」
「それだったらまあ、私のかしたげるわ。傷つけたりしないでよー」
「へいへーい」
「……免許持ってたんだな」
「あー、そういえばブライアンには話してなかったな。持ってるけど府中の移動ではわざわざ乗る必要もないなってんで、実家に置きっぱなしから売りに出しちゃったのよね」
「なるほど。なら、ドライブにでも連れて行ってもらおうか」
「いいぜー、まあ田舎なんだから大したものはないけどな」
「……ふぅん、やっぱ仲いいのね」
「まあなー」「ああ」
姉のつぶやきに二人して反応してしまった。顔を見合わせ、俺はちょっと笑う。
ブライアンのほうは、ぷいとそっぽを向いてしまったが。
168二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:16:57
田舎の空気は良い。都会の喧騒と違い、風が運んでくる音も自然のそれに近い。
トレーナーが地方出身だったのは聞いていたが、話だけで終わるのと実際にその土地に訪れるのとでは大きく違うものだ。
「案外良い家だな」
「そうか?まあ住み心地はよかったな」
トレーナーの家は、まあ……普通なのだろう。二階建てで、ちょっとした庭がある。それくらいの家だ。
だが、こいつが生きてきた家と考えると、なんだか不思議な感覚がある。
「さあさ、おあがりください。マジでこんな有名人が家に来るとかマジであり得ないことをあんたは理解してほしい」
「わかったわかった、ほんとお迎えありがとうね」
トレーナーのお姉さんが私に家に入ることを促してくる。
「おじゃまします」
そうして、私はトレーナーの家へと足を踏み入れた。
正直に言うと、だいぶ元気な家庭だと思った。
私のことを見るや否やサインを要求してきた兄、止めるためにチョップを叩き込む母、苦笑しながらごめんなさいねと謝ってくる父。明らかに精神的疲労で疲れている姉、それを煽るトレーナー。反撃にチョップを食らうトレーナー。非常に早口でまくし立ててくる……というか褒めちぎってくる祖父。やはり祖父も祖母にストップをかけられる。
私はまあ、いつも通りに受け答えをする。
そのたびに感嘆や驚きが広がり、波紋となって家の中を反響する。
喜びを増やし、驚きを新鮮にさせ、そして悲しみは薄めてくれる。
なるほど、トレーナーが良い家族だといった通りだ。
「ところでブライアンちゃんは何が食べたい?大晦日だから事前に用意した分の材料だけだけど、好きなものを食べていいわよ!」
「では、肉を。しっかり焼きこんだもので頼む」
「うっし、母さん手伝うよ」
「あらいいの?じゃあ下準備お願いね」
肉が焼きあがるまではリビングでゆっくりとさせてもらった。
使い古されたソファーが、柔らかく私の体を迎える。
台所からは厚い肉の焼ける音。スパイスと肉の焼けた濃厚な香りが、私の鼻をくすぐる。
やはり肉は、良い。
169二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:17:40
「大きい肉はいい、喰らい尽くすという感覚が一番好きだ」
「食った感じは大事だよなー……まさかこんなに大きいやつ用意してくれてたとは思わなかったよ」
食事中の会話は抑えめだったが、食べ終わる間際にブライアンが話し始めると、食卓に言葉が飛び交い始めた。
「せっかくブライアンちゃんが来るって聞いたからねえ、奮発したわよ!」
「弟よ、お金はちょっとくらい出してくれよ」
「へーへー、それくらいなら普通に全額払うよ」
まあ、いつもこれ以上のお金使ってるしね……トレーナーの給料万歳。
「それにしても、子供のころに突然トレーナーになるって聞いたときにはまさかここまで来るとは思わんかったよね」
「それに関しては俺もそう思ってる。ブライアンに出会えなきゃこんな結果まで行けたかわからないからな」
「弟の運命の人ってわけかぁ?かーっ、帰って来てから惚気られるたぁ思わなかったよ!」
「ちょ、そういうわけじゃねえって!ブライアン!笑ってるんじゃあない!」
「くくっ、だいぶ面白いからな」
「ぬぎぃー!」
兄さんの口をこれ以上勢い付かせないように話題を変える。
「そういう兄さんはよぉ!ちゃんと終わったんでしょうね、告白!」
「……ソウイウノヨクナイトオモウ!」
まだ好意を寄せられてるのが明確な後輩に答えを伝えていないらしい。
「大概なのは兄さんも変わんねえからな!」
「っていうかうちの家庭の男衆が大体ヘタレの家系だからね…」
「そうなのか?」
「ええブライアンさん、兄貴と弟はまあ見てたらわかると思うけど、じいちゃんも父さんもどっちもプロポーズされる側ばっかりだったから」
「血は争えないということだな」
「ま、そういうことねー。弟もブライアンさんが引っ張ってくれれば丁度いいのに」
「……いや、私もこいつに引っ張ってもらっているからな」
「あら意外。弟はそういうの得意そうじゃないのにねえ」
「俺だって頑張るときは頑張ってんだぞぉ」
ふふんといった顔つきをしたら姉とブライアンに鼻で笑われた。ええい。
170二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:18:04
風呂を借りて、体の汚れを落とす。
鏡の前で一糸纏わぬ私がいる。
思えばあいつは突然ウマになった時も特に不安を表すこともしなかった。
いや、実際不安がなかったようだが……やっぱりあいつはイレギュラーそのものかもしれない。
鏡の向こうを見る。私の瞳が映る。
仮にもし、私が逆に人間になったとしたら、どうなるだろうか。
きっとあいつは私を助けてくれるだろう。
しかし、それに甘えてばかりでいいのだろうか。
あいつのような、強さを持てるのだろうか。
ふと、鏡の奥に影が見えた気がした。水色の影。
「おーいブライアン、脱いだ後の服は洗濯機に入れておくけどいいかー?」
「ああ、かまわん」
あいつだった。
「りょうかーい、入れとくぜー」
「……ああ」
あいつの能天気さには助けられる。
要らぬことを考えすぎるのは最近の私の悪い癖だ。
そう考えて、私は湯船に体を浸した。
狭い湯船だが、心と体が温まる。
171二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:18:30
「おーブライアン、こっちこっち」
「なんだ、私はゆっくり休みたいのだが」
まあまあ、とブライアンを2階にある自室へと連れていく。
「ほら入った入った。こたつだぞー」
「……ほう」
するりと炬燵に入るブライアン。なんだ、飼い猫のようだ。
そんな若干失礼なことを考えていると、炬燵の上にあったミカンをぺしっと投げつけられた。
「痛いじゃないのブライアン」
「どうせ私を猫か何かと思っていたのだろう」
「……以心伝心ってこういうことなんだろうか?」
「知らん」
二人でこたつに入り、静寂が場を支配する。
一階では普通に家族が話しているが、どうも気を使ってくれているようでこちらにはやってこない。
「今年一年。正直に言うと私の人生の中で最もろくでもない一年の一つだ」
「おっと、いきなりぶつけてくるなぁ」
口を開いたブライアンは、俺に対してしか話さないような愚痴をこぼし始めた。
「まず一つ、あんたがチームを持ったこと」
「……まあそれはすまなかった。相談が足りてなかったと思う」
「いや、それはいい。あいつらは十分に力を秘めていること、勝利に貪欲なこと、努力を惜しまぬことも分かっている」
ブライアンはそう言いながら若干頬を緩ませるが、俺がにやけたことに気が付いたのか、表情を元に戻す。
「二つ目。あんたが突如ウマになった」
「……いやそれはちょっと俺の管轄外だわ」
「それはそうだろうな。だが愚痴るわけにもいくまい、トウカイテイオーのトレーナーから始まりあのご老公ですら巻き込まれたのだ。逆に誰に言えばいい……」
眉をひそめて天井を仰ぐブライアン。俺もわかんない。
「まあ……うん。むしろ変わってないのはマヤトレとボノトレ、あと先生ぐらいか……?」
「そういうことだ……そして……もう一つ……」
そう話すブライアンの表情が、さらに険しくなる。いや、これは険しいというか……赤い。
172二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:19:19
「……あの時のアレだな」
「ああー、アレ」
恥ずべき記憶がよみがえってきた。少々顔が赤くなっているかもしれない。
人気のない公園だからと言って、往来で嗚咽を漏らし、目を泣き腫らしたなど私のイメージではない。
しかも、その間こいつに背中を撫でられ、頭をやさしく抱きかかえられていた。
それはそれは、後で悶絶したものだ。
「でもあの時に本心を語ってくれたのは本当にありがたかったぜ?」
「……まあ、悪いわけではない」
否応なしに耳が揺れる。こういう時にウマであることを後悔する時がある。
「ブライアンも結構内に抱えちゃうタイプだからなあ、ホントなんかあったらちゃんと話してくれよ」
「善処する」
どうでもいいと言わんばかりに吐き捨てたが、あいつは柔らかな笑みを浮かべたままだ。
なんだか私だけが負けた気分になったので、胡坐を解いてトレーナーの足を軽く蹴りつける。
「おいこらブライアン、足癖が悪いぞ」
「知らん、理由など自分で考えてみろ」
「あー、みかんが足りなくなってきたのか……じゃあとってくるわ」
「……まあ、頼む」
まあ実際にこたつの上のミカンはほぼ食べ尽くしてしまっていたため、そちらに理由が吸い込まれて行ってしまったようだ。
持ち帰ってきてまたどうでもいい話を始める。
やれ今年のレースはどれが面白かっただの、次に戦いそうになる相手はだれが有力そうだの、いつも話すことや今年のあまりにも異様な現象についての話だの、本当に些細なことばかりを話していた。
そういえば去年のクリスマスではトレーナーと私にとっての当たり前のような日常を良いものだと思っていたが、やはりこういった物もよいと思えてくる。
やがて私も競争者としての一生を終える時が来る。その時、私はどこへ向かうのだろうか。
もしもトレーナーが許してくれるのであれば、それからずっと傍にいることも、いいのかもしれん。
173二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:20:15
除夜の鐘が町に鳴り響き始めた。
「おっと、もうそろそろ一年が終わるな……」
「煩悩は消しておいたか?108個あるらしいじゃないか」
「そもそもそんな数の煩悩覚えてるやつのが少ないだろ?」
「はっ、確かにそうだな」
鐘の音が私の心に響く。
煩悩というほど大したものではないが、あの時に迷いをトレーナーが晴らしてくれた。
ウララのトレーナーが言ったとおり、トレーナーと担当ウマ娘は大切な関係である。
悲しみを薄めてくれた。喜びを再確認させてくれた。
そのことを今日、再認識できた。それだけでも十二分に収穫はあった。
ああ、やはり私はこのトレーナーが好きなようだ。
鐘の音が俺の心に響く。
ブライアンがすっきりとした表情になった。迷いは晴れたようだ。
悩んでる姿はなるべく見たくない。
まあ、たまには甘えてくるのも悪くはないのだが、悲しみはやっぱり勘弁してほしい。
ブライアンには笑顔がよく似合う。
ぶっきらぼうでも優しくて、周りのことを考えてしまう。
やっぱり、ブライアンは俺にとっての最高の相棒だ。
「では、そろそろ挨拶としよう。旧年中はお世話になった」
「そうだな。いろいろと俺も助けてもらった」
「来年もよろしく」
「ああ、よろしくな、ブライアン」
最後の鐘がなる。今年が終わる。
「「あけまして、おめでとうございます」」
そして、その鐘はまた始まりを告げる。
願わくば、いつまでも良い関係であります様に。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part603【TSトレ】
≫13二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:49:26
大タマトレ→ネイトレ [超絶カロリーの米レーション・日本の美味しいレーション・数年前のシュールストレミング・余り玉で貰った大量の駄菓子]
「バラエティパック過ぎる!!」
「なんていうか、すまん」
「いえ、思わずつっこんじゃいましたけど福袋みたいで普通に嬉しいですよ。一足お先に正月突入した感あります」
「マジか。割と好印象?」
「はい。レーション、は食べ方よくわかんないですけど、後で調べてみますね。……わーほんとに色々あるー♪」
「想像よりウケがいいな……ちょっと待ってろ、確か駄菓子袋のこの辺にネイトレが悦んじゃうような……(ガサゴソ)いろんな種類のプリッツも入ってる!」
「……これはこれで嬉しい!」
「お前、割とハードル低いな?」
「自慢じゃありませんが、担当に折り紙プレゼントするような安い女なので!」
「納得した。……いや速攻理解されて凹むなって。面倒なやっちゃ……」
「……あ、でもこの缶詰だけは分かりませんね。……サ、サース……サーストロミングス?サストロ?」
「……」
タマトレは少しだけ悩んだ。今ここで適当なデタラメを吹き込んで、日頃自分にブラを強要してくるネイトレに地獄を見せてやるという企みも頭をよぎった。
「……ネイトレや、それの読み方はシュールストレミングだゾ」
結果、この場では良心が勝った。
「ああ!あのシュールストレ……あの???」
「そうだ。あの世界一臭い食べもの」
「ななな、なんてもんプレゼントしてるんですかぁ!!!??」
「いやーそのリアクションが欲しかった!ともあれもうネイトレのもんだ。開けるなら屋外推奨、捨ててもいい服で開けろよ?」
「ば、爆弾!爆弾押し付けられたぁ!」
「そう言われるとほんのちょっと膨らんでる辺り、今にも破裂しそうだな……
バン!!!!!!!!」
「っっっっっ!!!きゅう……」
「あっ」
……その後、交換会主宰のドベトレの猛攻を必死にかわし続ける大タマトレがおったとさ。
うまぴょいうまぴょい
≫29二次元好きの匿名さん21/12/31(金) 23:58:32
「あの…ウオッカさん…」
「どした?トレーナー」
「その…年越しのお蕎麦の仕込みも着物の準備も終わったので…その…おこたに入ってみたいのですが…」
「別に遠慮とかいらなくね?ほらこっちゃこいこい」
「いえ…その…昔こたつに入っていいのは殿方の許可を得た時のみと言われまして…」
「はぁ…もうトレーナーは1人のヒトなんだろ?それくらい自由にしてもいいんじゃねぇの?」
「そう…でしょうか…」
「おう、オレが保証してやるよ。ほら入れよ」
「は…はい!!」
「どうだ、あったかいだろ?」
「これは…ポカポカして…初めてで…幸せです…」
「そっか!ならオレも満足…って寝るな寝るな!風邪ひくから!」
「しかしこれはぁ…ふわぁ…」
「あーあー魔物に飲まれたよ…」
「うにゅ…うおっかさあん…」(ギュー)
「あー…少しだけならいいけどよ…」
「だいすき…ですぅ…」
「…へへっ、オレもトレーナーが大好きだよ。これからもよろしくな」
「わたしも…よろしくでしゅ!」(にぱー)
おしまい
≫36二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 00:00:02
「う〜ん、どうかしらこれ…」
「似合ってるねトレーナー!」
いつもとは違う振袖を着ながら問うキタトレと、それに似合ってると笑顔で返すキタ。大晦日の夜に二人で過ごしていたのだ。
「しかし、ウラトレさんが着せてきたこの振袖、大分ヒラヒラしてるわね…」
…赤とを基調としたその振袖は、その豊満な胸に合わせて盛り上がり腰が締められていることと相まって胸が強調されていた。
「トレーナーで歌合戦した結果で着せ替えしたんでしょ?…トレーナーさんの歌凄く良かったよ!」
「割と良いところまで行ったと思ったのだけどね…。『躍動』の曲名通り躍動感ある歌い方と褒められたし」
まあ一位じゃなかったからねー、と緩い顔で言ったキタトレは、改めてキタに向き合うと少し真剣な顔で話した。
「…良いのかしらキタ?ここでこんな夜まで起きていても。」
「うん、あたしがそうしたいだけだからね!それに、もうすぐ新年でしょ?」
キタトレは懐から愛用の懐中時計を取り出して見る。時計の針は数分もたたないうちに新年を迎えることを示していた。
「…そうね、野暮な質問だったわ。」
「…ねえ、今年も色々あったねトレーナー。」
「本当にね。…やっぱり、今年の一番は私がこうなったことかしら。よく考えなくてもウマ娘になるって凄い話よね。」
「あたしも凄くびっくりしたよ。でも、トレーナーはトレーナーのままなんだって思えるから別にこれでも良いかな!」
「あら、キタはそう思うのね。…私も一緒よ。」
「…えへへ」
新年を目前としたその僅かな時間。いつもとは違った不思議な空間で二人はゆるりと過ごす。
38二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 00:00:06
───30秒を切った。
「…もうすぐだね」
「ええ」
…残り15秒
「ねぇキタ」
「何?」
10秒前
「…これからもよろしく」
5秒
「…うん!」
3
2
1
「「明けましておめでとうございます!」」
───これからも、その歩みは止まらない。行き先を輝きながら駆けていく。その先の景色はきっと…まばゆいものだろう。
短文失礼しました
まずは明けましておめでとうございます。これからもこの言うっちまうを好きなように盛り上げてて行きましょう。
短いですが新年の幕開けということで、キタトレとキタの年越しを書いてます。輝く彼女達はきっと明るいものですね。
≫81二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 00:29:46
☆ハイヤー!(アメリカの「あけおめ」)
「ハッピーニューイヤー! トレーナーさーん!」ギューッ!!!
「はーいタイキー、あけましておめでとうねー。あとそろそろ力抜いてくんないと自分死んじゃうよーん。……小さくミシミシいってるよヤバいよ」
「トレーナーさんからハグし返してくれたら緩めマース」
「年明け早々命懸けの交渉するなんてことある?……こう?」ギュー!
「グッド! トレーナーさんからニューイヤーキスしてくれたらもっと緩めマース♪」
「調子に乗ってんねぇ!? いけると思ったかタイキ!」
「ダメですか?」
「ダメです」
「ダメですか……?」
「ダメでしょうが」
「絶対にダメですか……??」
「……まあ。今年はアメリカ行けずに日本で年越しだったもんね。日本のファミリーとしてはそんぐら、い(チュッ
チュッ チュッ チューッ
「」
「アラタメまして…… ア・ハッピー・ニューイヤー☆ 今年もよろしくお願いしマス!」
「」
「トレーナーさん?」
「じ、自分からって話は……?」
「……ワオ、新年初チャッカリでーす!」
「うっかりね。……いや合ってんのかな」
「フッフッフー♪」
(終)
──ニューイヤーキスをする事で悪霊を祓って沢山の幸せが訪れると昔から信じられているらしいアメリカ。一方で”これからもずっとキスをしていきたい相手にキスをする”という考え方もあったりなかったり。うーん異文化
≫97二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 00:48:48
「あっそろそろ…。」
ポーン、と古めかしい柱時計が音を鳴らす。
0時、新しい日を迎える音。
「新年。」
「あけまして。」
「「おめでとうございます。」」
「もう年が明けたのかー。」
「一年、すぐでしたね。」
「そうだね…25を過ぎると本当にすぐだよ。加速するんだ…。気をつけたほうがいいよ、お姉ちゃんも。」
「もう…おじさんみたいですよ?トレーナーさん。」
「あははっ、ごめんね?お姉ちゃん。」
「今年はいい年になればいいですね。」
「今年もだよ、スズカ。来年もだ、ずっとずっと…いい年にするんだ、ボクと、君とで。」
「…はい!ふふ…じゃあ、今年もよろしくお願いしますね?トレーナーさん。」
「うん…今年もよろしく、お姉ちゃんっ。」
「では振袖を…。」
「振袖ェっ!?ボク着方わからないしなあ、あっ母さんならわかるかも。」
「トレーナーさんのご実家、ご挨拶に行きますか?」
「例年通りなら家でぬくぬく炬燵に入ってるだろうね…行ってみようか?」
「そうしましょう、トレーナーさん。お母様に着付けを教わって…。」
「ま、顔を出すってことでもいいか。連絡しておくよ、お姉ちゃん。」
三が日、そこには母に着せ替え人形にされるスズトレ(妹)の姿があったのだった。
≫107猫とフェストレ122/01/01(土) 01:13:07
では失礼します。
肌寒くなって来た昼下がり、葉を全て落とした裸の木々を見ながら校内を歩いていた。
「トレーナー、上!」
「ん?」
突然聞こえた声に言われた通りに上を見ると、顔めがけて何かが落ちて来た。直撃する寸前で両手で受け止めると柔らかく、そしてふわふわとした感触が伝わって来る。
「なんだ猫か。いきなり人の上に飛び降りたら危ないぞお前」
両脇を抱えられた猫は俺の言葉を理解しているかはわからないが素知らぬ顔で目を逸らした。口には何故かニット帽が咥えられている。
「首輪が着いてるって事は飼い猫か。それにコレ、凄い見覚えのあるニット帽だな」
ずっと脇を掴まれてもしんどいだろうと横抱きに変える。
「ナイスキャッチだったぞトレーナー」
「さっきの声はフェスタか。てことはこのニット帽お前のだな」
「ああ、外して置いといたらたまたま通りかかったそいつに持ってかれちまってな」
「で、この猫が逃げた木から飛び降りたらタイミングよく俺が来たって事か」
「そういう事だ。とりあえずそれ取り返してくれないか。この状態のままは恥ずかしいからよ」
フェスタの頭をよく見ると静電気のせいなのか髪の毛がぐしゃぐしゃになっていた。
思わず吹き出しそうになり、それに気づいたフェスタが不機嫌そうな顔をする。
「はいはい今渡すからそんな顔すんなって」
猫を左腕で抱いたまま空いた右手の指先でひげの付け根辺りをゆっくりと撫でる。指が当たる度に小さく跳ねるひげ。何度かやっていると段々と気持ちよさそうに目を細める様になって来た。
次は顎の下だ。口のすぐ近くから喉先にかけて毛並みに沿って撫でながら往復する。猫が感触に飽きない様に指先と手の甲を交互に換えながら撫でていく。
気持ちよさそうにあくびをする猫。咥えられていたニット帽が外れたのでフェスタに渡す。
軽く手で誇りを払うとそのままニット帽を被っていつもの状態になった。
「なぁ~」
もっと撫でろと言わんばかりに鳴き声を上げる。リクエストにお答えして再びひげの近くを撫でると顔の向きを変えて指を噛んで来た。あまり痛みは無いのでこれは甘噛みだ。口内で指の感触を確かめているだけだろう。
抵抗する事なくしばらく噛ませてやると飽きて来たのか、舌を使って吐き出される。
ポケットの中のハンカチで唾液を拭いていると少しづつ雨が降って来た。
108猫とフェストレ22/01/01(土) 01:13:53
「一旦部室行こうぜトレーナー」
「そうだな。君も雨宿りしていきなさい」
「んご~」
可愛げのない声で返事をする猫を撫でながら歩き出した。
「じゃあ飼い主が来るまでこっちで面倒見とくよ」
『すみません。今日中にはいらっしゃるそうなのでしばしお待ちください』
部室に着いた後、たずなさんに連絡をして迷い込んだ飼い猫を保護したと報告した。
予め逃げ出す事を想定していたのか首輪に付いていたケースに住所と電話番号を書いた紙が入っていたので、飼い主にもすぐに知らせる事が出来た。
「ほらほら、もっと上だぞー」
後ろを見るとフェスタが猫と遊んでいた。
猫はフェスタが上から垂らした猫じゃらしに後ろ脚で跳びながら右前脚、左前脚とフックを食らわせている。
俺とフェスタ二人とも猫好きなため、部室には猫用のグッズが揃っており、よく理事長の飼っている猫と遊んであげている。
「飼い主と連絡取れたから暫くしたら来るってよ」
「だってさ。良かったなロビン」
ロビン__猫の名前を呼ぶフェスタ。猫じゃらしに嚙みついていたロビンは顔を上げると数秒フェスタを見詰めた後ゆっくりと顔を伏せた。表情には安堵の感情が見て取れる。
フェスタの隣に座り、ロビンに魚の形をしたぬいぐるみを見せる。数秒じっと見つめたあと咥えていた猫じゃらしを落としてぬいぐるみを真っ直ぐ見詰めながら近付いてくる。
左脚によるフックが飛んでくる。ぬいぐるみが軽く跳ねて手に振動が伝わる。次は右脚での強烈なストレート。同時に腕を動かしてその一撃をかわす。
ロビンの前でぬいぐるみを素早く左右に移動させる。小刻みに顔を動かしながらタイミングを計って猫パンチを繰り出す。時折当たっては釣り上げられた本物の魚のごとくぬいぐるみを震わせる。
目を細め、体勢を低くするロビン。どうやらここで勝負に出る様だ。よろしい、相手になろう。
ぬいぐるみを動かしながら一瞬速度を変えたり端に行く前に戻したりと不規則な動きで相手の混乱を誘う。しかしロビンは冷静だ。鋭い眼光で獲物に狙いを定めている。
その姿はまるで、飼い猫の皮を被った一匹の虎の様だ。
動かしていたぬいぐるみが正面に来た瞬間、弾丸のごとき勢いでロビンが飛んで来た。タイミングはバッチリ。あっという間に手からぬいぐるみを奪い取り、そのまま勢い余って俺の腹めがけて突っ込んで来た。
109猫とフェストレ322/01/01(土) 01:14:57
「ぐふっ……」
思わずくぐもった声が出てしまった。
フェスタはそっぽを向いて腕で口を抑えながら笑いを堪えている。
「やる気なさげな顔して元気いいな……」
苦笑いを浮かべながら腹の上でぬいぐるみにじゃれついているロビンに言う。
しばらく身体の上に乗っけて遊ばせていると次第に眠くなって来たのか動きが鈍くなり、ソファーに転がり落ちる。フェスタが取って来てくれたブランケットをかけてやる。
起こしてしまわない様に俺とフェスタは向かいのソファーに移動した。
隣に座ったフェスタが顎の下を撫でて来た。どうやら俺を猫扱いしたいらしい。
抱き寄せられた頭をフェスタの左肩に預ける。
フェスタの手のひらが俺の頬をなぞり指先が耳の付け根をくすぐる。髪を指でそっと梳かれる心地良さとくすぐったさに身を任せて目を閉じた。
このまま撫でられてても良いがせっかくだしお返ししてあげよう。
さりげなくフェスタの後ろに腕を回して身体を倒す。驚いた顔はとくにせず俺の脚に頭を預ける膝枕の形になった。
フェスタの癖のある鹿毛を指に絡ませながら頭を撫でる。先程の俺と同じ様に目を閉じる。
腹を撫でるとくすぐったかったのか口角が少し上がった。
前髪が広がり、普段は隠れている額が露わになっていたので顔を近付けて口付けを落とした。顔を離すとフェスタも一緒に起き上がり俺の左頬にキスをした。
目が合い、互いに真っ直ぐ見詰めあう。次はどう仕掛けようかな。
「フェ、フェストレさん。猫の飼い主がいらっしゃいましたよー……」
顔を少し赤くしたたづなさんがドアのむこうから顔を覗かせる。
「わざわざ悪いね。今行くよ」
110猫とフェストレ422/01/01(土) 01:15:55
ソファーから身体を起き上がらせて部室から出る。外には7~8歳程の女の子が母親と思われる女性と一緒に不安げな顔で立っていた。
「もう大丈夫だぞお嬢さん。今君の家族と会わせてやるからな」
そう言うとフェスタが寝ているロビンを抱きながら部室から出て来る。
「ロビン!!」
女の子がフェスタに駆け寄って涙でくしゃくしゃになった顔で家族の名前を呼ぶ。
「なんで勝手にいなくなっちゃうの⁉あたしのことキライになったの⁉」
我慢していた涙が決壊したのか堰を切った様に泣き出した。
ロビンの方は大きなあくびをしながら目を開けると女の子を見て「ミャア」と一声鳴いた。
抱きしめながら泣いている女の子に対して呑気な顔のロビン。
「まったく、女の子泣かせちゃダメだろ」
しゃがんで女の子と目線を合わせ、頭を撫でてやる。俯いて泣いていた女の子が顔を上げる。
「ロビンのやつ君が迎えに来るって教えたら安心した顔になったんだぜ。よっぽど君と居るのが好きみたいだな」
フェスタが壁に寄りかかりながら言うと女の子フェスタの方に顔を向け、それからゆっくりと抱きしめていたロビンを見る。
「ああ、君の事が嫌だったらこんなにリラックスはしてないからな。今日ここに来たのもちょっと迷子になっただけだよ。だから安心しな」
再び女の子の頭を撫でる。俺とフェスタの顔を交互に見ると顔を紅くして俯いてしまった。
「フェスタ、また女の子を落としたのか。しかもこんな小さな子を」
「それはあんたもだろ。ウマ娘化する前も後も女性人気凄いじゃねえか」
互いにからかい合っている内に女の子も落ち着いて来たのか泣き声も止んでいた。
111猫とフェストレ522/01/01(土) 01:16:25
「じゃあなロビン。もう女の子泣かせるんじゃないぞ」
「元気でなー」
フェスタと一緒に学園の校門から去って行く女の子を見送る。
相変わらず顔を赤くして俯いたまま小さく手を振っている。これは完全に落としてしまった様だ。
女の子の姿が見えなくなると一息ついた後、フェスタに話掛ける。
「さて、今日はもう予定はないけどこの後どうする?」
「じゃあさっきの続きでもするか……お?」
俺の後ろに顔を向けるフェスタ。その視線をたどると一匹の猫がいた。
首輪は……無い。どうやらただの野良猫の様だ。
「……今日はもうのんびりしようか。ただただ一緒に過ごすってのも悪くないだろ」
「じゃあトレーナーの部屋上がらせて貰うぞ。暖かい紅茶が飲みたくなって来たからさ」
二人で語らいながら自宅へと歩を進める。
先程の女の子とロビンも今頃は離ればなれだった時間を埋める為に我が家を目指しているのだろう。
冷たい風が俺達の間を通り過ぎる。
______すっかり寒くなって来たな、早く帰って暖を取ろう。
≫139二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 08:25:04
「あけましておめでとう、トレーナー君」
そう言いながら寝室から顔を出す。
トレーナー君は既に起きてお雑煮を作っていたらしく、ほんのりだしの匂いが香る。
「うん、あけましておめでとうルドルフ!あ、お雑煮はもうできるから、先におせち食べてていいよ!」
こちらに振り向きながらそう語る彼女の尻尾は新年への期待か、ゆっくり揺れている。
「……いや、君と食べよう。たとえ、本当にすぐだとしても」
「……そう?なら、もう少しだけ待ってて!すぐ持っていくから」
「ああ、わかった」
そうして、私が座るのと同じタイミングで彼女が二人分のお雑煮を置く。
そうして、彼女が座ってから二人揃って「いただきます」と食べ始める。
伊達巻、黒豆、かまぼこ、海老。これ以外にも、縁起がいいものがおおよそ入ったおせちと世間一般では関東風と呼ばれるだろうお雑煮。
彼女の愛情が入りすぎて、つい食べ過ぎてしまいそうだ。
141二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 08:25:48
────そうして、二人とも食べ終えたあと。
「あ、ルドルフ!はいこれ!」
「お年玉、か。中を見ても?」
「いいよ?」
彼女に渡されたポチ袋を開ける。
その中身は温泉旅行券のペアチケット。
「どうだった?」
「最高のお年玉だとも。それで、誰を誘ってもいいんだな?」
「うん、そうだよ?」
はぁ、と軽くため息をつく。
「……双宿双飛、君と行きたいが……問題はないな?」
「ない、けど……」
「なら決まりだ。……ところで、姫始めという言葉は知っているな?」
「……んもう。姫始め、やっていいよ」
────ル監。
≫150二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 09:00:29
「👁娘よ…いくぞ…」
「ちょちょおやっさんストップ!強すぎ!!」
「大丈夫っすか?」
「はい…でもたのしいです!!わととと…ってあわっ!?」
「👁娘よ…怪我はないか…」
「こけてしまいました…」
「膝擦りむいてるっすね。医務室連れて行ってくるっす」ヒョイ
「あっ…その…あり…ぴえ…あう…ふえぇぇぇぇ」
「あーっ!!お姫様抱っこでオーバーヒートしてる!!」
「👁娘よ…」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part604【TSトレ】
≫56スズトレ(妹)22/01/01(土) 15:13:48
買い物
「これは…。」
「スカートです、トレーナーさん。」
週末。僕は新しい服を確保するため、スズカとショッピングモールへと訪れたていた。
「前も言ったと思うけど、スカートはちょっと、僕には。」
「似合うと思うんですが…。」
「そ、そりゃまあ、いまの僕はスズカと瓜二つなわけだし。君に似合うのなら僕にもって理論はわかるけど。」
「…私に似合うと、そう思ってるんですか?」
「えっ…うん。凄く可愛らしくて、スズカに似合うと思うよ。」
「…なら買います。これは私用です。」
「そ、そっか?」
白のスカート、清楚な雰囲気でスズカに似合っている。ホクホク顔のスズカを横目でみながら僕は僕で、一人服を物色する。
「あっこれなんてどう?」
「えっ…トレーナー…さん?」
僕が選んだのは肩が膨らんだジャケット。いいじゃないか、昔みたロックシンガーみたいだ。
「これいいと思うなあ。」
「人の感性は多々あると思います。けど、それって普段使いするものじゃないと思います。」
「うーん、そうかもなあ。やめておこっか。」
「ふぅ…よかった。」
「えっ?」
「なんでもありません。」
…なんか引っ掛かるな。まあいいか。
58スズトレ(妹)22/01/01(土) 15:14:11
「あら〜?姉妹でお買い物ですか?」
「ぅえっ!?」
店員さんに突然話しかけられる。姉妹って、ああいやそうみえても仕方ないよね。とりあえず否定しておこうか。
「いえ、違いま」
「そうです。私が姉で、この子は妹です。」
「スズカ…?」
「あらあら、そうなんですねぇ。可愛らしいウマ娘姉妹だこと〜。」
ええ…。違うんだけど。いやしかし、変に話が拗れるよりかは、もうこのまま繋げてしまうか。
「…はい、姉妹です。あの、こういうところ来るの、初めてで…。」
「そうなんですねぇ〜。これなんてどうですかぁ〜?」
そう言った店員さんが取り出してきたのは…白のワンピース。
いや、いやいやいや…それは。
「僕には似合わな」
「…!いいですね、この子にはとっても似合うと思います。」
「そうですよねぇ〜。お客様、とーっても可愛らしくてぇ。」
困った。また否定できる雰囲気じゃなくなった。
「トレーナーさん…とりあえず試着だけでもしてみませんか?」
「試着ですか〜?試着室はあちらです〜。」
「う…じ、じゃあちょっとだけ…?」
59スズトレ(妹)22/01/01(土) 15:14:36
───試着室。
「トレーナーさん?大丈夫ですか?一人で着れますか?」
「うん、被るだけだから、多分大丈夫。」
「よかった…。私、ちょっと離れてますから。何かあれば呼んでください。」
「わかったよ、スズカ。」
まさか25にしてこんな可愛い…ワンピースを着ることになるとは。いいのかな?中身は男だよ?僕は。
「うう〜もうどうとでもなれ、えいっ。」
一気に着替える。着てしまえば見えない、ヨシ!
「き、着替えてみたよスズカ。どう、かな…?」
試着室のカーテンを開き、スズカにワンピース姿をみせる。
…と、あれ?
「スズカも試着したの?」
「はい。その…お揃い、ですね。」
目の前には、同じワンピースを着て顔を少し赤らめたスズカの姿が。
「わあ…可愛いね、スズカ。」
「ありがとうございます。トレーナーさんも、似合ってますよ。」
しばらく、僕らはお互いを褒め合う。うん、本当にスズカに似合ってる。…変な話、スズカに似合ってるのなら彼女と瓜二つであるボクにも似合ってるってことなんだろうけど、雰囲気とかあるからな…。可愛い、のかな?と姿鏡をみて、思う。
60スズトレ(妹)22/01/01(土) 15:15:19
「って、何を考えているんだボクはっ。はぁ〜…こんなんでいいのかなあ。」
「あら〜?あらぁ〜!」
さっきの店員さんだ。目をキラキラと輝かせてボクらをみている。
「なーんてお似合いなんでしょう〜!お客様たち…ビューゥティフォウ!キュート!ですよ〜!」
「あ、ありがとうございます。」
思わず感謝を述べてしまう。い、勢いが凄い。
「店員さん…可愛いですよね、この子。」
「ええ、とっても!」
「似合ってますよね。」
「はい〜。」
「買うしかない、ですよね。」
「ご購入いただければ、私としても、服からしても嬉しいでしょうね〜。」
「スズカ…?」
まさかとは思うけど…。
「買いましょう、トレーナーさん。」
「やっぱりそうなるかー!」
ワンピースを2着購入し、店を後にする。
買ってしまった…。こんな、女の子って感じの服。まあ普段着るとは言ってないし。うん、後で考えよう。
ふう…一店舗目で既に疲れてしまった。
61スズトレ(妹)22/01/01(土) 15:16:00
「スズカ、そろそろ。」
「もう一店舗だけ、行きませんか?」
「一店舗?なら…。」
「次は靴です。そろそろ夏に向けて新しい商品が出てきてると思います。」
「へぇ…そうなんだ。」
「行きましょう、トレーナーさん。」
「ん…じゃあちょっとだけ。行こっか、スズカ。」
結局その日は一店舗だけでは済まず、全身コーデを揃えることになるのだった
終わり。
こう…どんどん染まってほしい、この子には
≫68本当にすみませんでした22/01/01(土) 16:24:11
「あ…あの……タイキトレさん……?」
「あ、ども。タイキトレです」
「いや…なんですかこれ……?」
「いやね、そちらのサクシャがなんかやらかしたらしくてね、自分が吊るすことになったんよね」
「お…降ろしてください……」
「んー……とりあえず3時間はこのままってカンジで」
「そんな…助けて……」ポロポロ
「あれま……泣いちゃった。めんごね、めんご」
≫95二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 17:48:13☆一時間後
元日から必殺仕事人してます。誰かお給金くれ。……ども、タイキトレです。黒カフェさんが何やらモジモジくんしてます。
「あの……そろそろ。そろそろ……!」モジモジ
「……あー、そう考えると三時間は長いかあ……仕方ない。ん」
「……ん?」
「ん!」ズイッ!
「ん?? あの、手を差し出されてもなんのことか」
「お年玉くれたらすぐに下ろしたげよう」←26歳
「ば、蛮族!!」←25歳
「どうスル?そろそろ僕が助けよウカ?」
(いや、なぜか申し訳ない気がしなくもないし……でも流石に、もう俺限界かもしれん……!)シュルシュル
「あれ?解いてくれ、た?」
「流石に粗相させるのはノーグッドだと思うんでね?いってらっしゃーい」
「はい!ありがとうございます!」
「終わったら戻っておいでねー!」
「……ちょっと考えさせてくださーい!」
「これで戻ってくるからケツはケツなんだヨナー」という声が聞こえた気がした。おおむね気のせいだけど、実際戻ってくるんじゃないかな?
……お年玉というほどのもんじゃないが、舟和の芋羊羹ミニを用意しといてやろう。ただで食えんというのなら……なんだったかな、あのちっこい瓶入りの奴、マリモをせびろうと思う。
……うーん本当に戻ってきた。涙拭きな黒さん。負担の少ない吊り方にしたげよう。
(終)
≫111二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 18:39:41
初詣
「さ、寒い…」
「いつも籠ってばかりだからだろ。ほら、さっさと行くぞ。」
今日俺は、マーチと初詣に来ていた。
なんでも、何も言わないと年を越した事も知らずに過ごしそうだからと言われここまで連れてこられた。
参拝をする為列に並んでいると、他にもいろんな人が来ているらしく、顔見知りとも何回かあったりした。
そして、賽銭箱の前までやってきた。
財布から小銭をだし、願い事を考える。
(願い…願いか…)
…正直気乗りはしなかった。
それこそ担当達の願いを叶えられなかった俺が、願い事なんてしていいのか、そんな資格が俺にあるのか…
…いや、全部背負うって決めたんだ。なら、俺がしなくちゃいけない事は、
(いつか、マーチと共に頂点の景色を見れますよう…)
(…違うな。マーチと共に、絶対たどり着く。)
そうして二礼二拍手一礼を済ませ、その場を後にした。
112二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 18:40:09
「トレーナー、願い事は何にしたんだ?」
「何って…まぁ…色々だ。色々。」
「そうか、私はな。」
「トレーナーと共に頂点に行く。そう願った。」
「………そっか。」
「でもよく考えてみれば、これではただの意思表示だな。」
どうも俺とマーチの考えていた事は一緒だったらしい。
「…そうか、トレーナーも同じか。」
「!?な、何で分かるんだよ!」
「私が言った後、顔が赤くなったからな。考えていた事が一緒で嬉しかったのだろ?
それなりの時間を共に過ごしてきたんだ。それぐらい分かるさ。」
「うぅ…」
自分で思っている以上に、俺は顔に出やすいらしい。
そんなに分かりやすいのかと少し恥ずかしく思っていると、マーチがこちらを向く。
「トレーナー、今年もよろしくな。」
それは、これからの長く険しい道のりを共に進んでくれるかと言う問い。
なら、返す言葉は一つだけだ。
「…あぁ。こちらこそ、よろしく頼む。」
俺とマーチの頂への挑戦が、今年も始まる。
≫123二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 20:01:38
「ねえトレーナー」
「やだ」
「早くないかな?」
元日。トレーナーの家の2階。何とか山のような本を整理し、こたつの設置に成功した2時間後。ぬくぬくと暖を取りながら本を読んでいた時、話しかけられた。
「アタシ、お茶が飲みたいな」
「冷蔵庫の中あるから」
「あぁ寒いなぁだれか取ってきてくれないかなぁ」
「今私忙しいから」
「何してるの?」
「論文」
ああ、と頷くシービー。机の上に積まれたメモやノートが事実であることを語っていた。
「担当がお願いしているんだよ?取ってはくれないのかい?」
「ムリ」
カタカタと一心不乱にキーボードを叩くトレーナー。
「いけず」
「なんとでも言いなさい」
「甲斐性なし。ずぼら。コミュ障」
「3分の2が悪口だよね?」
「でも事実でしょ?」
そんなことをいいながら、もう一度聞く。
「ねえトレーナー。お茶取ってきて」
「ムリ。もう少しで書き終わるの」
「じゃあそのラストスパートの気付けということで」
「ムリなものはムリ。自分で取ってきなさいな」
124二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 20:02:00
「はぁ…ならそんなトレーナーには…こう!」
コタツに潜ったと思いきや、トレーナーの座っている方に腕をのばし、尻尾の付け根をコリッとする。
「ヒャ…ちょっとシービー?それはなしでしょ?」
「ミスタートレーナー。アタシは今、交渉をしているんだ」
「これは武力の行使で…ヒンッ」
シービーを引き剥がそうとするもするすると避けてくる。それに加えて色々な手で尻尾を攻めてくる。
「わかった…わかったから…ヒャウッ」
「わかったから?何?」
「アッ…やめ…とってくる…からぁ…」
「言質はとったからね?」
「ハァ…ハァ…りょー…かい…」
フラフラと立ち上がって冷蔵庫へ向かう。しかしタイミングが悪かった。
「あけましておめで…と…」
扉を開け、ルドトレが入ってきた。しかしピシィッと音がするほどに固まった。
「…お取り込み中?」
「違う違う!違いますから!!」
「ごめんねお邪魔しちゃって。どうぞごゆっくり〜」
「待ってください!!行かないで!!」
「トレーナー、続きはしないのかい?」
「シャラップシービー!!」
その後何とか誤解をとき、論文の完成は少し先になるのだった。
≫145二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 21:12:40
1月1日。それは新しい1年の始まりの日。
去年もホントに色んなことが──主にウマ娘化現象とそれ関係の大量のアレコレで他年の倍ですまないくらいには──あったけど、とりあえず。
「ふう……着きましたね。」
「うん。混み始める前に済ませちゃおっか。」
元旦といえば初詣。スズカと二人で朝早く○△神社を訪れていた。
トレセンから少し離れた場所に位置するこの神社は近くに人気の神社があるせいか比較的人が少なく、参拝の多いだろう新年でもこの時間なら静かなことが多い。それがスズカにはピッタリで、二人っきりの時は足を運ぶのだ。
手水で清め、僅かにできた列に並び、賽銭を入れて。
カランカラーン
パンパン
神社の神様へとお願いごとをし、一礼。
「さて、これからどうする?やっぱりおみくじ?」
「はい。フクキタルに結果を教えてほしいって言われてるので。」
「あー確かに言いそう……」
というか2年前の正月で似た話を聞いた気がする。
そんなことに思いを馳せつつ、御籤のために授与所へ。
しかしやはりここも前と比べると色んな音が聞こえるようになってるのを感じる。神社の人たちの会話とか、賽銭箱の中でお金同士が擦れ合う音とか、騒がしいのも好きな私にとっては新鮮でなかなか楽しい。
他には手水をしながら会話する声も────
「トレーナーさん、これって飲めるんですかね?」
「いや、ダメだよ。あくまですすぐだけ、ね。」
「そうですか……残念です。」
────あれ、この声聞き覚えあるんだけど。
「……えーっと、スペトレ??」
「……スズトレさん!?」
「あ、本当だ!スズカさんもいる!!」
「あら……スペちゃんにスペトレさん、あけましておめでとうございます。」
146二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 21:13:02
「はい、あったかいお茶。」
「ありがとうございます……ゴクゴク」
仲良くお守りを買いに行ったスペとスズカを待ってる間、参道脇のベンチでホッと一息。
「……でもまさか会うとは思わなかった。ここってそこそこの穴場だし、トレセンから近くて大きい神社他にもいっぱいあるから知ってる人いないと思ってた。」
「私もです。前にスペとお出かけしてたらたまたま見つけただけなので……」
「私はスズカに連れてこられたのがキッカケだったかな。走ってたら見つけたとかで。」
「はは、相変わらずですね。」
そう笑ってから茶を飲んでスペトレが顔を緩ませる。
「願い事は何にしたの?」
「"スペが元気でいられますように"って頼みました。スズトレさんは?」
「"スズカの進む先が溢れんばかりの幸せで満ちてますように"かな。昨年は結局ジャパンカップくらいだったからね、その分も。」
「あーなるほど……私ももうちょっと工夫すれば良かったかな……」
「そんなことないと思うよ。シンプルイズザベストなんて言葉もあるし。
……あ、そうだ。新年の抱負って感じで改めて言ってみるのはどう?」
「あ、いいですね!……えっと、それっぽい質問お願いしてもいいですかね?」
「うん、大丈夫。……えーこほん。スペトレ、あなたは今年をどんな年にしたい?」
「……皆が笑えるような年にしたいです。ウマ娘化現象がまだまだ活発なので簡単じゃないと思いますけど……それでも笑顔が1番ですから。
……こんな感じでどうですか?」
「……凄くいいと思う!」
「ありがとうございます!」
私の感想を聞いてスペトレは顔を輝かせながら礼をする。ホントに、優しい後輩だ。この優しさに何度助けられたことか。
「……困った時はすぐに言ってね、力なるから。」
「はい、たくさん頼らせてもらいます!」
この後、スズカ達が近くの屋台を見つけてきたタイミングで賽銭で財布が空っぽになってた事が発覚し、早速奢る事になったのはまた別な話。
≫152二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:06:57
お正月のウオッカとウオトレ(女)
「おっすトレーナー!」ガチャ
トレーナーの部屋に合鍵で入ると、そこには三つ指をついて頭を下げるトレーナーが。
「あけましておめでとうございます。ウオッカさん」
「おおうびっくりした。って、トレーナーすげえ綺麗」
「ええ。着物は、昔から着ていましたからね」
「へぇー」(ジーッ)
「ウオッカさんも、着てみます?」
「えっ?でもオレ自分で着れねぇし、着物も持ってねぇし」
「着物はウオッカさんに合うように私のを仕立て直しました。着付けは私がやるので問題ないですよ」
「そっか、ありがとよ!」
「少しまってくださいね…確かここに…あたっ」(ゴツン)
「おうおう大丈夫か?」
「大丈夫です…うぅ…」
「とりあえず頭冷やしとくか。氷と氷嚢借りるぞ」
「はいぃ…」
「ほら、打ったところ冷やしとけ」
髪を上げておでこを冷やすトレーナー。
「あの…ウオッカさん?そんなに見てどうしたんです…?」
153二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:07:23
「いや、目、綺麗だなって」
「ぴぇ!?」
「いや、そんな意味じゃなくてさ。アメジストみてえに紫で、吸い込まれそうで、キラキラしてて。かっけえなぁ…」
「いえ…そんな…褒められるほどの…ものじゃ…」
「へへっ、赤くなってやんのー」
「容姿だけは、昔から良かったですから…ええ…」
(なんか暗いな…不味いこと言っちまったか…?昔のこと…ああ…なるほどな…)
「あー…トレーナー」
「はい?」
「ん」(腕広げ)
「えっと…ウオッカ…さん?」
「いいから。トレーナーもこうしな」
「は…はい…」
「よいしょ」(ギュー)
「ぴえ!?」
「ごめんな、昔のこと思い出させちまって」
「いえ…そんな私は…」
「いや、こればかりはオレが悪い。ごめんな」(ギュー)
「あう…その…大丈夫です…。もう…1人じゃないですし、ウオッカさんが隣に居てくれますから」
「そっか…なら大丈夫だな。よし、それ冷やしてる間になんか作るか!冷蔵庫いいか?」
「あっ…あの…おせちはもう近くの商店街で予約したのがあって…その…」
「お、ならラッキーだ」
「あの…初めて自分一人でおせちを予約…してみたかったのと、初めて…家族だった人達以外の人と…おせちを食べたくて…」
「お、ならトレーナーの初めては頂きだな」
「ええ。もっと沢山、貰ってくださいね」
「おう!」
おしまい
≫159二次元好きの匿名さん22/01/01(土) 22:18:02
───とある神社にて
「ねぇダイヤ」
「どうしましたかトレーナーさん?」
「その…この服装だとやっぱり凄く目立つね…」
…その神聖な地に初詣に来ていたのはサトトレとダイヤ、二人でお揃いの着物を着てその手を繋いで歩いていた。
「…別にいいと思わないですか?」
少し微妙な顔で答えるダイヤ。そんな彼女の着物は普通のとは違い袖口にフリルがあしらわれ白いふわふわが首元についていた。
その緑を基調にしながらも派手な柄の振袖は、ダイヤが常にまとっているその雰囲気を抑えるどころか引き立てていた。
(ダイヤは凄いなぁ…)
一方でサトトレも似たような振袖を着ており、更には帯が上からまかれてより華やかさと儚さを強調していた。
そんな二人は当然周囲の目を惹きつけながら石段を登り、賽銭箱の前に立つと綺麗に揃って賽銭、二礼二拍手一礼。
「…うん、行こっか。」
「そうですねトレーナーさん♪」
戻る道中にダイヤはサトトレに聞く。
「ふふっ、そういえばトレーナーさんは何を願ったんですか?」
「…言わなきゃ、駄目?」
聞かれたサトトレはそう問い返すも、ダイヤはバッサリと切り捨てた。
「駄目です。」
「う…分かったよ。僕は…皆に幸運があることを願ったかな。…僕の口から言うと恥ずかしいなこれ…」
少し顔を赤く染めたサトトレを、ダイヤはニコニコとした顔で後ろから抱きしめる。そして耳元で喋った。
「やっぱり、可愛いですねトレーナーさん。」「うう…」
ダイヤからの耳元からの声に、羞恥心やらなんやらが刺激されるサトトレ。相変わらずダイヤは笑顔のまま。
ざわざわとする周囲を余所に、ダイヤは
「行きましょう♪」
「そうだね…」
サトトレを連れて参道を歩いて行くのだった。
短文失礼しました
初詣のサトトレとダイヤ、二人共華美な振袖で着飾って神社に来ています。こんな姉妹みたいな二人に周りの視線は間違いなく吸われるだろうなぁ。それと最近、量と質が下がって来ている気がする…もうちょっとマシな(私基準)の書けてたはずでは…?
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part605【TSトレ】
≫16◎かわいい22/01/01(土) 23:08:31
「たすきで背筋ピーンってするの!ピンピーン!」
───はいかわいい。
「ねぇねぇ!"ゆず"育てよーよ!こっちでもお正月にみんなに配りたいんだ〜!」
───かわいい。でも種からはやめましょうね。
「キングちゃんの手は魔法の手なの!だってね、髪をくるくるぽん!ってキレイに結んでくれるんだもん!」
───かわいい。……ですが髪結いでは負けません。負けるつもりは毛頭ないですが。
「寝たくなったらお手伝いするよっ!ゴーンゴーンって108回唱えるといいってフクちゃんが言ってたの!」
───……ああ。もう。
「……どうしましょう。うちのウララが正月からフルスロットルでかわいいんです」
「だいぶ頭がやられたのはよく理解しました」
「フクトレ、そこのところほんっとうに理解してますか?」
「ウララを脳髄に叩き込もうとしないでください……」
年始から真顔極まる先生に捕まったかと思えばこれである。
数年に一度、極めてまれな頻度ではあるが、ウラトレ先生は壊れるらしい。派手さはなくとも紛れもなくブレーキが壊れるそうだ。そんな時、たまたま近くにいたトレーナーは彼女の担当に関するある種の"ノロケ話"を滔々と長々と語るのを聴かされることとなる……という噂だ。本当ならご愁傷様というより他ない。つまりは俺乙。
……いや違う。正確にはもう一人犠牲者がいた。
「……分かります。僕もハロウィンの時期ライスを見てはどれほど頭がおかしくなりそうだったことか……!!あのとき、自分がどこまでも我慢強くなっていくのを感じました!」
「しまった。こいつ先生側だ」
「ふふふ……ライトレさん。貴方はわかってくれると思っていました!」
共鳴したウラライスの保護者たちによって固い握手が交わされる。愚かな生け贄は自分一人だけだったようだ。解せぬ。
「そりゃ理解できますよ!僕は年中"世界一かわいい"ライスのそばにいるんですから!」
「どの世界かは知りませんがライスシャワーも大変かわいいですよね……ウララには及びませんが」
「……お???」
「……ん???」
いやもうせめて仲良くしてくれめんどくさい。
◎かわいい22/01/01(土) 23:09:14
頭の中で愚痴りながら瞬間冷戦に移行しようとする二人を宥める。そして地味に気にしてた懸念事項について突っ込んでみる。
「……フクがテキトー吹き込んですいません」
「除夜の鐘スリープメソッドのことですか?……いえいえ、これがあながち出鱈目でもなかったのですよ」
「どんなメカニズムです?」
「ゴーンゴーンと言ってるうち、じわじわ眠くなるウララができます」
「……つられて眠くなっていくと」
「寝かしつけようとしてくれる担当の寝顔に満たされ、ともに眠りたいという睡眠欲が刺激される……ですね?」
「一方、いつまでも寝顔を見ていたいという欲も同時に芽生えます。……しかしウララの心を思えばジレンマに悩むことはありません」
「……」
「……」
無言で見つめ合った二人による二度目の握手。心なしかさっきより強い。身長差は20cmほどあるがこのまま肩組んで歌い始めそうな勢いすら感じる。
……とはいえたしかに、単調すぎる作業に退屈でじわじわ活動停止していくウララは容易に想像できる。
なるほど、やるじゃないか。話を聞いて以来、脳内でフクにかけていたアイアンクローを一時的に解除する。フギャフギャ抗議してくるがそこは静かに無視。
「……フクトレは何かありませんか?」
「俺ですか?」
「はい。<新春大大吉キタル>に合わせてフクキタルも勝負服素材の衣装があったでしょう?」
「あー……」
……思うところがないわけじゃない。むしろデザイナーGJと思うことだらけだ。ただ、それをこの面子相手に、どの程度の温度感で話していいものかが悩みどころ。……なので。
「悩みますね」
素直に困ってると伝えてみる。
「なるほど、フクトレさんは言葉にして形にするのは恥ずかしいと」
「……なんかもう、それでいいや」
「であれば……言葉の代わりに珠玉の一枚でもって語り尽くしてみせましょう」
「んなルドトレみたいな……」
「……どうやら、お姉さまたる僕が選りすぐったライスフォルダが火を吹くときが来たようだね!」
「清々しいほどのライスバカだなお前も」
仕方がない。この二人にあてられたという事にして、このノリについていってやろう。
……ふと、こうして先生発信の"ノロケ話"は長くなるんだなと思った。
(終)
≫50二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:03:03
「私単独でセーラームーンですか!?月のうさぎならやっぱりリウトレさんじゃ……」
「じゃあ先輩はどの星にします?」
「……ネイチャをネプチューンにしてくれたらウラヌス役に……」
「堂々とイチャイチャする気だこの人……」
「あ、でもウラヌス役なら自分内定もらってるよ?」
「た、タイキトレ先輩!?な、なんでぇ!?」
「声」←CV緒方恵美
「ずるい!!!過去最高にずるい!!!」
≫54二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:07:15
バァン「今月光仮面と……」
ブラァ「言ってねえ言ってねえ」
ネェイ「月光仮面のおじさんはー」
バァン「正義のお方だ良い人だー」
ブラァ「またネイトレがクソ古い歌を歌っている!」
ネェイ「まだ2005なんだからそんなに古くないですよ!」
≫59二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:09:13
ウオトレ(女)とネイトレ
土曜日。昼下がり。秋晴れ。ネイトレは商店街へ散歩がてら買い物に来ていた。
程よく人のいる商店街に、何でもないようなハンドメイドのアクセサリーを見ながら目を輝かせているウマ娘を見つけた。
トレセンで何度か見かけた濡れ羽色の髪の彼女に話しかけた。
「こんにちは。どうかしたんですか?」
「あっ、この指輪が綺麗だなと思って、眺めてたんです」
ネイトレよりおおよそ10センチくらい低い彼女は、少し固く答える。
「えっと、ウオトレさんであってます?」
「あっ…そうですけど、何か?」
一層固い雰囲気を纏う彼女に言う。
「私ナイスネイチャのトレーナーです。お話しするのは初めてですよね?」
「あっ…はい!はじめてです!」
途端に目をキラキラとさせる。自分の名前を知っていたらしい。警戒心をなくすことには成功したみたいだ。
「ウオトレさんは、どうしてここに?」
「ウオッカさんが買い物に行くと教えてくれて…その…申し上げにくいのですが…ついていきたくなって…」
(えっなにそれかわいい)
「なるほど」
「あっ、今ウオッカは向こうで店主の方とお話をしてて、しばらくかかるから自由に回っていいって言われたのですが…」
段々と耳をしゅんとさせていくウオトレ。
「その…一人は少し…寂しくて…」
飼い主とはぐれた犬みたいにしょんぼりとするウオトレ。
61二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 00:10:03
「あっ、一人で勝手に暴走してしまいました。ネイトレさんは?」
「散歩がてら一人で買い物に来たんですけど…ちょっと話し相手が欲しいな〜何ちゃって」
(尻尾すごい振ってる…耳もぴこぴこしてて超かわいい…)
「そ…そうなんですね…」(うずうず…そわそわ…)
「よかったら…一緒に回ったり」
「いいんですか!?」
久しぶりに再開した実家の犬みたいに喜ぶウオトレ。
「もちろんですよ」
「なら私ウオッカに聞いてきますね!」
パタパタと向こうへ走っていくウオトレ。
「わんこみたい…超可愛い…」
尻尾を振りながら走って戻ってくる。
「ネイトレさ〜ん!許可をもらいましうわぁ!」
「おっと」
こちらにこけてくるウオトレを支える。
「大丈夫ですか?」
「ふえぇ…はい…大丈夫です…」
顔を真っ赤にして立ち上がるウオトレ。
「あの…すいません…ありがとうございます…」
「いえいえ大丈夫ですよ」
ペコリと頭を下げてくる。許可ももらったらしく、気になっていたことを聞いてみた。
「ウオトレさんもウマ娘になっちゃったんですよね?」
「はい…性別は変わらなかったのは幸いですが…」
(えっ!?ウオトレさん元女の子!?)
「そうなんですか。それは良かったですね」
「はい…」
「じゃあ、一緒に買い物回りましょうか」
「はい!ぜひ!!」
そうして途中合流したウオッカと3人で買い物をした。
何にでも目をキラキラとさせるウオトレはネイトレさんと沢山話をした。今度一緒にお茶をする約束もした。
≫84二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 02:11:18
ガチャ
「お正月の時間じゃい!」
「何だ何だ!?」
「敵襲ですの?」
「ハッピーニューイヤー!初詣も行かない暇人諸君!パチサンタさんだ」
「サンタって...もうクリスマスは終わってる」
「んなことどーでもいいんじゃーい、正月のイベントと言えば?はい、フクトレ!」
「...福袋?」
「それもイベントだけど違います!ブラトレ!」
「福袋じゃ無いんだろ...爆竹投げとか?」
「それは中国の旧正月にやるイベントだ」
「決まってますわ!新年会ですわ!新年会!」
「一昨日忘年会やったばかりだろうが、新年会は来週だ、最後テイトレ」
「お年玉とか?」
「ハイ、正解。と言う訳でお前らにお年玉だ。はい」
「やった!何か厚くない?ポチ袋が直立してる...」
「ありがとうですわ!分厚いですわ!」
「子供銀行券かこれ?」
「安心しろちゃんとしたお札だ」イチオウ
「あやしい...」
───────────────────────
「さて、タマトレも行ったし開けるか」
「開けますわ!これは...ジンバブエドル?」
「こっちは1円札だ」
「ひーふーみー....この紙幣0が20個も有るぞこれ」(ペンゲー)
「わからないけど多分碌な紙幣じゃない事だけは判る...」(ボリバル)
≫126二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 11:34:51
正月といえば
「初売りセールなのー!!」
「あと福袋もあるわよね。」
「うんうん!ともかく正月こそ買い物の大チャンス、ここで買えるだけ買って家に届けるの♪」
「ふふっ、気合十分ね!ならパパっと計画建てて動かないと……はいこれ。チラシから得たバーゲンの情報を地図にしたから、これでどこの店か決めてもらえるかしら?」
「オッケー!トレーナーもやる気だね!!」
「今年からはわたしも参戦できるもの。182もの体格!ウマ娘の膂力!そして身長!!これでもかというくらいにもみくちゃにされてた過去のわたしのようには行かないわ。」
「あーそっか、トレーナーも今はもう大っきいんだ……なら少し欲張ってみてもいい?」
「えぇ。じゃんじゃんこき使っていいわよ。」
「そこまではしないよー。あたし的にはこことここ、あとここにここ行きたいんだけど……」
「どれどれ……うん。大丈夫、これなら全部回れるわ。じゃあ時間も惜しいし早速動きましょう!スケジュールは運転しながら説明するから。」
「ありがとうなの!ふぁいと〜〜!!!」
──その日、フウトレは行く先々のセールで大活躍し、結果として多くの者の性癖を破壊した。
ついでにフウトレ自身も全てが終わった後にアイネスに甘やかされ、甘やかされ癖が深いとこに刻まれた。
≫134二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:05:19
リウの場合
「おせちも飽きたわね…」
「ピザでも頼むか?」
「宅配頼まくても作れるわよ」
「アンタ、ピザも作れんのか」
「ええ、だからあたしの家にいる間はあたしの手料理しか食べられないと思いなさい」
「ハッ!それはいい、このまま寮生活やめたいくらいだな」
「あー、抱き着かないで!」
≫148二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 13:35:37◆瞬間よみがえる存在する記憶
「餅ピザなら作ったことあるなあ……」
「何それトレーナーさん」
「えっとね、確かクッキングペーパーの上に少しだけふやかしたお餅数個を並べて、トマトソースと輪切りにしたピーマンとチーズを乗っけてオーブンで焼くの」
「あーー生地の代わりに餅使う的な?」
「そうそう」
「……相当安易では?」
「そうは言ってもネイチャ……私が小二の頃の創作料理だし」
「なるほど納得。そうは言ってもトレーナーさんちにトマトソースなんて洒落たもんはー……なんでホールのトマトなんてあるんですか」
「……朝に一缶開けて塩振って食べる用に」
「いちいち時短に極振りしすぎなんですよトレーナーさんメニューは!」
「め、目玉焼き作ったりもするし!……まあだからか、ネイチャの料理が沁みるんだよね……同じ時短でもあったかくて本当に美味しい」シミジミ
「……あーもうはいはい。今言った餅ピザ作れってんでしょ。作りますよ」
「やったー!」
「小躍りしてないで多少は手伝ってくださいね?」
「もちろん!」
≫169二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 16:37:24
「マルゼンスキー、はいこれお年玉。」
「わ〜! トレーナーちゃんありがとう! 私とおそろの着物もとっても綺麗よ!」
「ウラトレが着付けしてくれたんだ。……腰にタオル巻かれまくった時の顔怖かった」
「そんなトレーナーちゃんにお姉さんからも、はいこれお年玉」
「なんで?」
≫171二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 17:25:08
「フラッシュ、はいこれお年玉」
「……? トレーナーさん。これが世に聞くお年玉というものなのでしょうか」
「うん。そういえばドイツにはそういった習慣は無かったんだっけ?」
「ええ、年末年始にマジパンで作られた子豚を贈るのでそれは用意してましたが…金銭を贈るということはまずありませんでしたね」
「じゃあこれはフラッシュから僕へのお年玉ってことだね」
「……! ふふっ、ありがとうございますトレーナーさん」
≫175二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 18:04:24
ウオッカにお年玉あげようとして他のウオトレから貰うウオトレ(女)が見える見える…
「ウオッカさん、これお年玉です!」
「おう、ありがとな!」
👁「息子よ…娘よ…」
「これはウオッカで、こっちが嬢ちゃんだ」
「これ、よければどうぞっす」
「これで推理小説でも買うといい」
「そんな…こんなに沢山…ぴえ…ふえぇえ…」
「ウワーッ!トレーナーが倒れた!」
≫181二次元好きの匿名さん22/01/02(日) 18:48:30
クリトレ(小):貯金勢。いつ誰から貰ったか記録してあり、その中に決して開けようとしない袋が1つある。
「僕自身いつ倒れるか分かりませんし……なんて、冗談ですよ冗談! ……ほんとに冗談ならなぁ」
「あげる側になる前に、また貰う側かぁ……もしかして、また成長したらまたまた小さくなるとか?」
「……このポチ袋には、ちょっとのお金と、色んな思い出が詰まってるんです。いつかの晴れ舞台で開けようかと」
バクトレ:色んなお店で福袋を買い集める資金にする。残れば貯金だが、大抵むしろマイナス。
「所謂縁起物ですとか、そういう類を大事にする質なんです。福袋も、僕にとってはその一つと言えるでしょう」
「電子機器、服飾品、食料品、他にも色々。正直頂いた分だけでは足りませんので、いつも差し引きマイナスです」
「現状、お年玉を渡す相手があまりいないのが幸いです……が、いずれそうも言っていられなくなりそうで。いやはや」