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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart756~760)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part756【TSトレ】
≫15二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 08:29:37
「…綺麗な月だ」
たった一人、夜に月見酒をするファイトレ(男)。珍しく柄でもないことをしているのには、その手の酒が原因だった。
「国王陛下からなんか送られてきたこの酒…余りにも高級品すぎてあんまり手をつける気にはなれないんだよな…」
───一本数十万はしそうなそのアイリッシュウィスキー、こんな高貴な姿にこそなったものの中身は変わらずどこにでもいる一般市民なファイトレ(男)には、縁がないどころではなく恐れ多い代物なのだ。故に余り考えないようにしていたのだが…
「飲まないってのも悪いからね。…うん、美味しい。」
つまみはない。用意しようかと思ったがこれに合うものが作れなかったので諦めた。トレーナーであるとはいえ、料理人の端くれとしてのプライドが生半可なものを出すのは許さなかった。或いは他にも飲む人がいたら別だが…今回はファイトレ(男)一人であるし。
「う〜ん…そろそろ酔いが回ってきたかな…」
その頬をほんのりと赤くして、僅かにふらつくファイトレ(男)の横にそっと置かれるつまみをのせた小皿。
「…つまみ…?」
ふと誰かが入ってきたのだろうかと思考するファイトレ(男)。しかし、その思考はアルコールによっていつもほどのキレはない。
それでも少し考えて、こうしてくれる人の心当たりを探ればなんとなくだけど分かった。
「ありがとうございますSPさん。」
「…」
返事はない。でも、きっと聞こえているだろうと判断してそれ以上の詮索はしないことにした。
「ふわぁ…」
あれから少しして酔いが回り、欠伸を一つして目を閉じるファイトレ(男)。飲み干したウィスキーのボトルとグラスが月明かりを反射して輝き、彼の綺麗な寝顔を照らす。程なくしてその明かりを遮る影が一つ、ファイトレに掛け布団を被せると何処かに消えた。
「おやすみなさいませ」
「…」
──翌日、掛けられた布団を丁寧に洗い手料理を振る舞うファイトレ(男)の姿が見られたとかなんとか。
短文失礼しました
一人月見酒なファイトレ(男)。金銭感覚はいくらトレーナーとはいえ一般国民の彼とファインとでは大分ズレてます。
ファイトレはSP達とも仲が良かったら嬉しい。
そっくりな彼に布団を掛ける時は顔が緩んでたりしてそうです。
≫69二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:20:23
旅の日のスズトレ(相棒)さんとグラトレ(独)
「うん、今日もいいトレーニングだったね」
「ええ、とても気持ち良く走れたわ」
「それじゃあ、スズカもしっかり休んでまた明日ね」
「はい、トレーナーさんもまた明日」
夕方のトレセン学園。
トレーニングを終えたトレーナーと生徒達がそれぞれ帰路へと着く時間。
サイレンススズカとその担当トレーナーのスズトレもまたトレーニングを終え、また明日と担当と別れた所でした。
「うーん、今日のトレーニングのまとめは明日しようかな? ……あら?」
担当と別れトレーニングで得た情報を何時まとめようか思案している時に、ふと目に付いた人物が。
「あれは……グラトレよね?」
スズトレの目に付いた人物は担当のグラスワンダーと共に居るグラトレ。
グラトレもまたトレーナーなのだから別に此処に居てもおかしくは無いのだけど……
「いつもと恰好が違う?」
別に居てもおかしくないグラトレに目が付いた理由、それは普段とグラトレが着ている物が違ったから。
ウマ娘になってから常日頃着物を着ているグラトレ、それが今日は何故かシャツとズボンを着て背中にリュックを背負っている。
まるでハイキングに向かうかの様なグラトレの姿にスズトレの中で少し興味が沸いた。
「……少しお話を聞きに行こうかな?」
トレーナー室へと戻ろうとしていた足の向かう先を変え気になる方へ。
トレーニングのまとめは明日への持ち越し決定。
「ちょっと聞き耳は悪いけど……ごめんね、聞かせて貰う」
そして、情報を集める為に他の人より数倍良くなった耳でグラトレとグラスちゃんの会話を聞きながらグラトレの下へと歩き始めました。
70二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:20:48
「流石に今からは無謀じゃないですかトレーナーさん?」
「大丈夫ですよグラス、私の家もあちら方面ですし少し寄り道する様なものですよ~」
「トレーナーさんは迷子になって少しじゃなくなるじゃないですか」
「いえいえ、電車で移動ですから大丈夫ですよ~」
「電車で箱根に行こうとして軽井沢へ行った人が何を……!」
「あの様な間違いはそうそう致しませんよ~」
「前科有りの時点で心配です! 私も着いて行きます!」
「それはダメです、グラスは寮へ帰りしっかりと休みなさい」
「ですが……」
「……あの~、良いかな?」
「……! あら、スズトレさんこんにちは」
「おやおや、スズトレさんこんにちは~」
「えっと……話を聞いても良い?」
何やら珍しく意見が合っていなさそうなグラトレとグラスちゃんの話を断って話を聞かせて貰う。
聞き耳を立てて得た情報では、どうやらグラトレが帰る途中に何処かへ向かおうとしているけどグラスちゃんはそれを止めたいみたい。
……まあ、普段の道の迷いっぷりを見れば止めたくなる気持ちも分からなくはないかな。
「……それで、グラトレは何処に行こうとしてたの?」
「あら、聞いてらしたんですね~……実は~、家に帰る前に高尾山に登ろうと思っていたのですよ~」
「……嘘でしょ……えっ、今から?」
「ええ~、今日は旅の日ですので~……私も少しばかりの旅をと思いまして~」
「でも、今から向かっても登っている内に日が落ちると思うけど……」
「頂上から星空を見るのも良いですね~」
……グラスちゃんが止める気持ちが分かった(二回目)、グラトレは夜の山で間違いなく迷うよね。
まあ、グラトレなら迷ってもどうにかできるだろうけど……心配はするよね。
……此処で私が聞いてしまったのも何かの縁。
だから、二人へ私は一つ提案をしました。
71二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:21:07
「私が着いて行こうか?」
「えっ? ……良いんですか?」
「グラスちゃんが心配なのも分かるしね」
「ふ、二人共信頼して下さらないのですね……」
「普段から……ねえ?」
「すみませんスズトレさん、お願いします」
「…………」
ちょっと落ち込んだグラトレを横目に、取り合えず荷物を置いて着替えて来るとグラスちゃんに伝えトレーナー室へ。
流石にスーツで登る訳にもいかないからと予備のジャージを取り出し、着替えてグラトレ達の下へと戻りました。
「お待たせ、準備出来たよ?」
「あの、スズトレさん……トレーナーさんをよろしくお願いします」
「うん、任されたよ」
「……流石に私も傷付きますよ?」
グラスちゃんからの頼みに頷き、突発的な登山へと出発。
グラトレが更にダメージを受けていたけど無視します。
それから府中駅へと向かい電車に乗って30分、無事に高尾山の麓へと着きました。
……グラトレが高尾山行きではなく新宿行きに乗ろうとしていたので着いてきて正解だった。
「ケーブルカーは……まあ、終わってるよね」
高尾山のケーブルカーは18時前に終わってしまう、トレーニングを終えた時点で間に合わないのは当然だった。
「それは元より覚悟の上でしたので~、一号路を登りましょうか~」
「うん、日も落ちたし登り易い一号路が良いかな」
高尾山の一号路は全面舗装された初心者にも安心して登れる道。
とはいえ夜は灯りも無く危ないのには変わりないです、持って来た灯りでしっかり足元を照らしながら登らないといけない。
正月なら参拝客の為に灯りが点いてるけど、流石に今の時期は真っ暗だね。
72二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:21:27
グラトレと二人で高尾山の一号路を足元に気を付けながらのんびりと登って行きます。
昼間なら二時間も掛からない場所だけど、暗いのもあってゆっくりペース。
神社の辺りでグラトレがビビってしまい、余計に時間が掛かった気がするけど……
……本当に独りで来れたの? グラトレさん?
そんなこんなで遂に……
「到頂完了だね」
「無事登り切りましたね~」
高尾山の山頂へと至りました。
……だけど。
「……気が付いてはいましたが~……」
「見事に途中から曇ったね……」
高尾山へ旅をするという目的を達成し喜んだのも束の間。
残念ながら頂上から星空を見るという目的は、登頂中に雲が掛かって達成できなくなっていました。
「残念ですが~、大本となる目的は達成できましたので良しとするしかないですね~」
「うん、星空はまた今度だね」
「すみませんスズトレさん、此処まで付き合って頂きましてありがとうございます」
「ううん、大丈夫……あら?」
「スズトレさん?」
「……何の声?」
「ひいっ……!?」
何か聞き慣れない声が向こうの方から聞こえた気がする。
そして私の言葉を聞いたグラトレが腰に抱き着いてきた、痛いから本気で締めないで欲しい……
「えっと、声がしたのはコッチかな?」
「ええっ……行くんですか……」
腰に抱き着いたグラトレをそのまま引き連れ声がした方へと向かいます。
73二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:21:43
するとそこには……
「あら? この子の鳴き声だったんだね」
「……はぁぁぁぁ……ムササビだったんですか~」
どうやら私が聴いた声の主は、この森の住人らしきムササビのよう。
そして、正体が判明した事で安心したのかグラトレは大きく息を吐いてしゃがんでしまいました。
「ふふっ、この子人懐っこい」
登山客の多いこの山で人に慣れているのか、ムササビは私の手にも乗ってくれます。
ですが相手はあくまで野生動物、触れ合う時間は直ぐに終わりを告げてしまい。
「あら、帰っちゃうの?」
私の手から付近の木へと移ったムササビは、そのまま飛び立ち何処かへと向かってしまいました。
「バイバイ、気を付けて……あら?」
そしてそれを目で追った私は、星の様な光を見付けたのです。
「ふふっ、グラトレあれを見て?」
「あれ~……ですか?」
「うん、街灯りが星みたいなの」
「……これは」
「星灯りは見えなかったけど、これも良いと思わない?」
「ええ、ええ、とても……綺麗ですね~」
月も星も雲へと隠れた夜だったけど、雲迄届く街の灯りが織りなす夜景を心行くまで二人で堪能する事ができました。
74二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:21:58
「さて、帰らないといけないけど……」
「私は此処から家が近いんですけどね~」
夜景を楽しみ恐る恐る下山した私達。
気付けば中々に遅い時間になっていたのだ。
「今から家に帰ってお風呂の用意して……」
「スズトレさん、スズトレさん」
「? どうかしたグラトレ?」
「此処からあまり遠くないですから~、私の家に来ませんか~?」
「グラトレの家に?」
「ええ、スズトレさんは私に付き合って下さいましたからね~、この様な形ですがお礼をさせてくださいな~」
「いや……う~ん」
流石にお邪魔するのは悪いかなとは思うけど、今から帰ったら眠るのは何時になるのやら……
此処はグラトレのお言葉に甘えさせて貰う方が良いのかもしれない。
「……それじゃあ、お願いしても良いかな?」
「ええ、ええ、腕によりをかけておもてなしさせて貰いますよ~」
「そこまでしっかりもてなさなくても大丈夫だからね?」
「分かりました~、ですが料理位くらいはしっかりしさせて貰いますね~」
「グラトレの料理かぁ」
「ふふっ、初鰹を買ってあるのでお刺身にしますよ~」
「うん、いただきます」
「は~い」
それから二人でグラトレの家へと帰り。
一緒に鰹の刺身で舌鼓を打ったのは別の話。
うまぴょいうまぴょい
≫99二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 08:31:44
「「…」」
机に肘をつき疲れた顔をする二人のウマ娘。副会長エアグルーヴと同室のファイン…ではなくファイトレ(男)。
「あの二人…どうしてああなってるの?」
「ほら…先程ファインのお姉さんが来たでしょ?それで彼女に付き合ってたんだとか。」
〜少女回想中〜
『確か今日はファインの姉さんが来る日だったよな、エアグルーヴ』
『ああ、案内役は会長とファインに任せてある。私は少し…な』
『…それでいいと思うよ。あちらから指定はされてないし、ファインから案内する所は聞いて…』
『ああ、やはりここにいたか!』
『『!?』』
〜回想終了〜
…とまあ、こんな感じに殿下の姉にあっさり見つかったことで、二人揃って付き合う羽目になりその結果がこれだった。
「お疲れ様、二人とも。」
「ありがとうございます会長」
「すまない、ありがとうルドルフ。」
飲み物を持ってきてくれた会長に、礼を言いながら受け取る二人。その姿は社長にねぎらわれる課長達みたいな姿だった。
ふとファイトレ(男)はポケットに何か入ってることに気づく。どうやら手紙のようで、ぺらりと開いて中を見る。
「「…」」
…そこにはアイルランドのトレセンに来ないかという招待と案内のお礼が、大変に情熱的な文章で書かれていた。
「ふふ、アイルランドからの情熱的なラブレターだな」
「「…」」
この発言に入っていた駄洒落に気づいたファイトレ(男)は実に素晴らしい顔で天を仰ぎ、顔を下に向けて大きく溜息をついた。
そしてエアグルーヴにそっと耳打ちすると、頭を抱えた彼女は気づかなかったことに酷く気落ちした。
「ど、どうしたんだ二人共?」
「なんでも…ないです…」
…その後、いつもより随分としょんぼりした二人の姿がトレセンのあちこちで見られたとか。エアグルーヴとファイトレ(男)のやる気が絶不調になった!
短文失礼しました
なんかありそうなシーンで一つ。かの姉殿下を相手して二人して胃にダメージもらってそうです。後追撃もセット。
駄洒落はアイルランドのアイ(愛)とラブレターのLove(愛)をかけた代物。ルドルフってこんな感じで良かったか不安です。
≫126二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 17:45:38
「ねえ、ネイチャこれ」
「知りません、ネイチャさんは知りませんよー」
「こっちを向いて話してネイチャ」
「ぐ、ぐぅ……いや知りませんもん!」
「……ダメなの?」
「……ダメじゃないですけど!」
「まあ御待ちなさいなネイトレ、レアケース中のレアケースという可能性もありますわよ」
「そ、そうですねマクトレさん……」
「おい、マクトレ……俺の装備変じゃないか?これそんなにつくやつなのか?」
「僕のも初手からこれがついたんだけれど、なんだか不思議だね」
「どうしましたの黒ルドトレにフラトレ……あっ」
「あっ、て! あっ、て言った今! 目をそらさないでマクトレさん!?」
≫153カフェトレーズ盆土産1/822/05/17(火) 20:46:55
えびフライ、とつぶやいてみた。
足元でかまらいごんが鳴いている。腰を下ろしている石の影にでもいるのだろうが、張りのあるいい声が川につけたゴム長のふくらはぎを伝って、ひざの裏をくすぐってくる。つぶやくにしても声にはならないように気をつけないと、人声には敏感なかまらいごんを驚かせることになる。
えびフライ。発音がむつかしい。舌がうまく回らない。栗東の人には造作もないことかもしれないが、こちらにはとんとなじみのない言葉だから、うっかりすると舌をかみそうになる。フライのほうはともかくとして、えびが、存外むつかしい。
えびフライ。さっき家を出てくるときも、つい、唐突にそうつぶやいて、カフェに、
「…まぁた、えんび。なして、間にんを入れる…?えんびじゃねくて、…えびフライ。」
と訂正された。自分では、えびと言っているつもりなのだが、人にはえんびと聞こえるらしい。それが何度繰り返しても直らない。
けれども、そういうカフェにしても、これから釣ろうとしている機械龍のことを、いつもミヌムカと言っている。分校の先生から、本当はミニメカというのだと聞いてきて、
「ミヌムカじゃねくて、ミニメカ。」
と教えてやっても、カフェはミヌムカと言うのをやめない。もう中学生だから、分校の子供に物を教わるのはおもしろくないとみえて、うるさそうに、
「…そったらごと、とうの昔から覚えでら…。」
そう言っていながら、今日もまき餌にする曇らせをタフネス30の空き瓶に詰めているところへ起きてきて、
「…ミヌムカ釣りな? ……んだ、義カフェのだしをこさえておかねばなあ…。」
とカフェは言った。
義カフェのだしというのは、義カフェの好きな生そばのだしのことで、義カフェはいつも、干したミニメカだしにした生そばを食わないことには自分の村へ帰ってきたような気がしない、と言っている。
154カフェトレーズ盆土産2/822/05/17(火) 20:47:16
帰るなら、もっと早くに知らせてくれればこんなに慌てずに済むものを、ゆうべ、いきなり速達で、盆には帰ると言ってくるものだから、面くらってしまう。明日はもう盆の入りで、殺生はいけないから、釣るものは今日のうちに釣っておかなければいけない。釣ったミニメカは、芦カフェに内燃機関を抜いてもらって、囲炉裏の火で串焼きにしてから、陰干しにする。今朝釣って、どうにか送り盆の晩には間に合うくらいだから、ゆうべは曇らせでも降って性癖が濁ったりしたらと、気が気ではなかった。
えびフライ。どうもそいつが気にかかる。
ゆうべ、といっても、まだ日が暮れたばかりのころだったが、町の郵便局から赤いヘルメットのウマ娘がやってきたときは、家じゅうでひやりとさせられた。東京から速達だというから、てっきり義カフェの工事現場で事故でもあったのではないかと思ったのだ。普段、速達などには縁のない暮らしをしているから、急な知らせにはわけもなく不吉なものを感じてしまう。
ところが、封筒の中には、伝票のような紙切れが一枚入っていて、その裏に濃淡の著しいボールペンの文字でこう書いてあった。
『盆には帰る。十一日の夜行に乗るすけ。土産は、えびフライ。油とソースを買っておけ。』
芦カフェと、カフェと、三人で、しばらく顔を見合わせていた。父親は、正月休みで帰ってきたとき、今年の盆には帰れぬだろうと話していたから、みんなはすっかりその気でいたのだ。
もちろん、義カフェが帰ってくれるのはうれしかったが、正直いって土産が少し心もとなかった。えびフライというのは、まだ見たことも食ったこともない。カフェに、どんなものかと尋ねてみると、
「…どったらもんって……えびのフライだえな…。…えんびじゃねくて、えびフライ…。」
カフェは、にこりともせずにそう言って、あとは黙って自分の鼻の頭でも眺めるような目つきをしていた。
155カフェトレーズ盆土産3/822/05/17(火) 20:47:57
えびなら、沼に小えびがたくさんいるし、フライというのも、給食に時たまメカ邪竜のフライが出るからわかる。けれども、両方いっしょにして、えびフライといわれると、急になんだかわからなくなる。あんな小えびを、どうやってフライにするのだろう。天ぷらのかき揚げのように、何匹もいっしょに揚げるのだろうか。それとも、小さく切り刻むかすりつぶすかしたのを、手ごろな大きさにまとめてコロッケのようにするのだろうか。そう言って芦カフェに尋ねてみると、芦カフェは、そうだともそうではないとも言わずに、ただ、
「……うめもんせ。」
とだけ言った。
それは、義カフェがわざわざ府中から盆土産にもって帰るくらいだから、とびきりうまいものにはちがいない。だからこそ、気になって、つい、
「えびフライ……。」
と、つぶやいてみないではいられないのだ。
タフネス30瓶の曇らせを一口、ラッパ飲みの容量でほおばって、それをゆっくりとかみ砕く。これはすこぶるまずいものだが、もうすぐうまいものが食えるのだから、今朝はあまり気にならない。義カフェの土産のうまさをよく味わうためにも、かえって口の中をなるべくまずくしておくほうがいいのだ。
かみ砕いた曇らせを唾液といっしょに、前の川面へ吹き散らす。すると、それを争って食うミニメカの口で、川面はそこだけ夕立に打たれたようにあばたになる。そこへ短い竿をふわりと振って、小さな針を落としてやる。針には、湾曲したところに、曇らせに似せた概念が付けてあるから、ミニメカが間違えて食いついてくる。釣るというよりも、これ幸いと加速力を上げるだけだから、竿を静かに後ろの岸へ回して手元を振ると、ミニメカは簡単に砂の上に落ちる。
盆前で、あまり暇な釣り人がいなかったせいか、よく肥えたミニメカばかりで、それがぴちぴちと砂の斜面を跳ねながら水辺に並べた小石の柵を越えそうになるから、思わず、
「ばためぐなじゃ、こりゃあ。」
とどなりつけると、とたんに、足元のかまらいごんがぴたりと鳴きやんだ。
156カフェトレーズ盆土産4/822/05/17(火) 20:49:13
義カフェは、村にいるころから、あじさいのたてがみの防寒帽でも麦わら帽でもあみだかぶりにする癖があったが、今度も真新しいハンチングのひしを上げて、特徴的な流星をまる出しにして帰ってきた。見上げると、その額の眉毛から上のほうは、そこだけ不健康ででもいるかのように生白かった。どうやら、工事現場のヘルメットばかりは自分の流儀で気ままにかぶるというわけにもいかないらしい。黒のハンチングは、まだ頭になじんでいなくて、谷風にちょっとひさしをあおられただけで慌てて上から押さえつけなければならなかった。
土間の上がり框で、土産の紙袋の口を開けてみて、まず、盛んに湯気を噴き上げる氷にびっくりさせられた。ぶっかき氷にしては不透明で白すぎる、なにやら砂糖菓子のような塊が大小合わせて十個ほどもビニール袋に入っているので、これも土産の一つかと思って袋の口をほどいてみると、とたんに中から、もうもうと湯気のようなものが噴き出てきたのだ。びっくりして袋を取り落としたはずみに、中の塊が一つ飛び出した。
「あ、もったいない…。」
とカフェが言うので、急いで拾おうとすると、ちょうど囲炉裏の灰の中から掘り出したばかりの焼きにんじんをせっかちにつまんだときのように、指先がひりっとして、二度びっくりさせられた。そのうえそいつのほうから指先に吸い付いてくるので、慌てて強く手を振ると、そいつは板の間を囲炉裏の方まで転げていった。
「そったらもの、食っちゃなんねど。それはドライアイスつうもんだ。」
と、義カフェが炉端から振り向いて言った。
義カフェの話によれば、ドライアイスというのは空気に触れると白い煙になって跡形もなくなる氷だという。軽くて、とけても水にならないから、紙袋の中を冷やしたりするのに都合がいいらしい。府中駅から近くの町の駅までは、夜行でおよそ八時間かかる。それからバスに乗り換えて、村にいちばん近い停留所まで一時間かかる。それで父親は、そのドライアイスをビニール袋にどっさりもらって、道中それを小出しにしながら来たのだという。
157カフェトレーズ盆土産5/822/05/17(火) 20:49:49
そんなにまでして紙袋の中を冷やし続けなければならなかったわけは、袋の底から平べったい箱を取り出してみて、初めてわかった。その箱のふたには、『冷凍食品 えびフライ』とあり、中にパン粉をつけて油で揚げるばかりにした大きなえびが、六尾並んでいるのが見えていた。えびフライといっても、まだ生ものだから、義カフェは家に帰り着くまでに鮮度があやしくなったらいけないと思い、ただこの六尾のえびだけのために、一晩中、眠りを寸断して冷やし続けながら帰ってきたのだ。
それにしても、箱の中のえびの大きさには、カフェと二人で目をみはった。こんなに大きなえびがいるとは知らなかった。今朝釣ってきたミニメカのうちでいちばん大きなやつよりも、ずっと大きいし、よく肥えている。
「ずんぶ大きかえん? これでも頭は落としてある。」
義カフェは、満足そうにしっぽをぴしゃぴしゃたたきながら言った。いったいどこの沼でとれたえびだろうかと尋ねてみると、沼ではなく海でとれたえびだと父親は言った。
「これは車えびつうえびだけんど、海ではもっと大きなやつもとれる。長えひげのあるやつもとれる。」
義カフェが珍しくそんな冗談を言うので、思わず首をすくめて笑ってしまった。
午後遅く、裏の谷川のよどみに漬けておいたビールを引き揚げて戻ってくると、隣のセイトレが独りで畦道をふらついていた。隣でもフクトレが帰ったとみえて、真新しい、黄の地に緑の横縞のTシャツをぎこちなく着て、腰には何連発かの細長い花火の筒を二本、刀のように差していた。
「義カフェ、帰ってたな?」
セイトレは二級下の一年生だが、自信満々に腕組みをしてこちらのぬれたビールをじろじろ見ながらそう言うので、
「んだ。」
とうなずいてから、土産は何かときかれる前に、
「えびフライ。」
と言った。
喜作は気勢をそがれたように、口を開けたままきょとんとしていた。
「……なんどえ?」
「えびフライ。」
「……えびフライって、何せ。」
それが知りたければ家に来てみろ。そう言いたかったが、見せるだけでもったいないのに、ついでに一口と言われるのが怖くて、
「なんでもねっす。」
と通り過ぎた。
158カフェトレーズ盆土産6/822/05/17(火) 20:50:17
普段、おかずの支度はすべてカフェがしているが、今夜はキャベツを細く刻むだけにして、フライは義カフェが自分で揚げた。煮えた油の中でパン粉の焦げるいいにおいが、家の中にこもった。四人家族で六尾では、配分がむつかしそうに思われたが、義カフェは明快に、
「お前とカフェは二匹ずつ食え。おらと芦カフェは一匹ずつでええ。」
と言って、その代わりに、今朝釣ってきたミニメカをビールの肴にした。串焼きにしたまま囲炉裏の灰に立てておいたのを、あぶり直して、一尾ずつ串から抜いてはしょう油をかけて食った。ビールは三本あるから、はらはらして、
「あんまり食えば、そばのだしがなくならえ。」
と言うと、義カフェは薄く笑って、
「わかってらぁに。人のことは気にしねで、えびフライをじっくと味わって食え。」
と言った。
揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。
二尾も一度に食ってしまうのは惜しいような気がしたが、明日からは盆で、精進しなければならない。最初は、自分のだけ先になくならないように、横目でカフェを見ながら調子を合わせて食っていたが、二尾目になると、それも忘れてやった。
不意に、芦カフェがむせてせき込んだ。カフェが背中をたたいてやると、小皿にえびのしっぽを吐き出した。
「不養生なのに、しっぽは無理だえなあ、芦カフェ。えびは、しっぽを残すのせ。」
と義カフェが苦笑いして言った。
そんなら、食う前にそう教えてくれればよかった。カフェの皿を見ると、やはりしっぽは見当たらなかった。カフェもこちらの皿を見ていた。顔を見合わせて、首をすくめた。
「…健康なら、しっぽもうめえや。」
カフェがだれにともなくそう言うので、
「んだ。うめえ。」
と同調して、その勢いで二尾目のしっぽも口の中に入れた。
義カフェの皿には、さすがにしっぽは残っていたが、案の定、焼いたミニメカはもうあらかたなくなっていた。
159カフェトレーズ盆土産7/822/05/17(火) 20:50:42
翌朝、目を覚ましたときも、まだ舌の根にゆうべのうまさが残っていた。あんなにうまい土産をもらったのだから、今朝もまた川へ出かけて、そばのだしを釣り直してこなければなるまいと思っていたのだが、その必要はなかった。義カフェが、一日半しか休暇をもらえなかったので、今夜の夜行で東京へ戻ると言いだしたからである。どうりで、ゆうべは雑魚の食い方が尋常ではないと思ったのだ。
午後から、みんなで、死んだお友だちが好きだった菊とかすみそうの花を摘みながら、共同墓地へ墓参りに出かけた。盛り土の上に、ただ丸い石を載せただけの小さすぎる墓を、せいぜい色とりどりの花で埋めて、供え物をし、細く割いた松の根で迎え火をたいた。
芦カフェは、墓地へ登る坂道の途中から絶え間なく念仏を唱えていたが、芦カフェの南無阿弥陀仏は、いつも『なまん、だあうち』というふうに聞こえる。ところが、墓の前にしゃがんで火に松の根をくべ足していたとき、芦カフェの『なまん、だあうち』の合間に、ふと、
「えんびフライ……。」
という言葉が混じるのを聞いた。
芦カフェは寝不足だから、言葉はたいがい不明瞭だが、そのときは確かに、えびフライではなくえんびフライという言葉をもらしたのだ。
芦カフェは昨夜の食卓の様子を(えびのしっぽがのどにつかえたことは抜きにして)芦カフェの教え子とお友だちに報告しているのだろうかと思った。そういえば、芦カフェの教え子やお友だちは生きているうちに、えびのフライなど食ったことがあったろうか。芦カフェの教え子のことは知らないが、まだ田畑を作っているころに早死にしたお友だちは、あんなにうまいものは一度も食わずに死んだのではなかろうか──そんなことを考えているうちに、なんとなく墓を上目でしか見られなくなった。義カフェは、少し離れたがけっぷちに腰を下ろして、黙ってたばこをふかしていた。
160カフェトレーズ盆土産8/822/05/17(火) 20:51:00
義カフェが夕方の終バスで町を出るので、独りで停留所まで送っていった。谷間はすでに日がかげって、ミニメカを釣った河原では早くもかまらいごんが鳴き始めていた。村はずれのつり橋を渡り終えると、義カフェはとって付けたように、
「こんだ正月に帰るすけ、もっとゆっくり。」
と言った。すると、なぜだか不意にしゃくり上げそうになって、とっさに、
「冬だら、ドライアイスもいらねべな。」
と言った。
「いや、そうでもなかべおん。」と、義カフェは首を横に振りながら言った。「冬は汽車のスチームがききすぎて、汗こ出るくらい暑いすけ。ドライアイスだら、夏どこでなくいるべおん。」
それからまた、停留所まで黙って歩いた。
バスが来ると、父親は右手でこちらの頭をわしづかみにして、
「んだら、ちゃんと留守してれな。」
と揺さぶった。それが、いつもより少し手荒くて、それで頭が混乱した。んだら、さいなら、と言うつもりで、うっかり、
「えんびフライ。」
と言ってしまった。
バスの乗り口の方へ歩きかけていた父親は、ちょっと驚いたように立ち止まって、苦笑いした。
「わかってらぁに。また買ってくるすけ……。」
父親はまだ何か言いたげだったが、車掌のタイキトレが降りてきて大きな欠伸をしてから、
「はい、お早くう。」
と言った。
義カフェは、何も言わずに、片手でハンチングを上から押さえてバスの中へ駆け込んでいった。
「はい、発車あ。」
と、軽い声で車掌が言った。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part757【TSトレ】
≫26二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 23:35:59
黑カフェ「黒の會、30分クッキング~」
ウオシス「わぁ~!」パチパチパチパチ
黑メブ 「そこは3分じゃねぇの!?」
黑タマ 「3分じゃ鮭は焼けねぇ!」
黑ダス 「それは仕方無いですね」(先に具材を言うなよ……)
黑ルド 「まあ取り合えず、今回のゲスト兼料理人に来て貰いましょう」
黒カフェ「そうしましょう!」
黒カフェ「コホン……ではお越しください! 和食料理の鉄人! グラトレです!!」シューッ
ウオシス「わぁ~!」パチパチパチパチ
黑メブ 「3分か鉄人かどっちかにしろよ!!」
黑ルド 「……ってアレ? スモークが晴れてもグラトレが居ない?」
黑ダス 「何処に行ったんですかね?」(まーた迷子か……)
黑グラ 「此処は何処です!」
黑タマ 「うお! ビィった!」
ウオシス「ど、どうして後ろから?」
黑グラ 「私にも分かり兼ねますね~」
黑タマ 「それは置いといて、名前変えね? (卒)の方も髪黒いからややこしい」
黑(独) 「仕方有りませんね~」
黑メブ 「そっちじゃねぇよ!?」
黑ダス 「……ボケはもういいからさっさと話し進めっぞ」
黑カフェ「はい! では次に行きましょう!」
黑タマ 「……なんか今回は元気だな」
黑ルド 「グラトレさんはそこまで大きく無いですからね……」
黑メブ 「お労しいですわね~」
ウオシス「元気なのは良い事ですよ?」
黑ダス 「あっ、うんそうだねー」(天然の切れ味……!!)
27二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 23:36:11
グラ(独)「ではでは、今回の料理は~……さっと出来るお茶漬けに一手間加えた~、鮭茶漬けを作らせて頂きますね~」
黑カフェ「そして、今回はなんと~……僕も料理を手伝います!!」フンスッ
二人以外「…………………………えっ?」
黑タマ 「……へへっ……中々面白い冗談やな」
黑カフェ「えっ? 冗談じゃ無いですよ?」
グラ(独)「はい、黒カフェさんと話合って手伝って貰う事になりました」
黑ルド 「嘘……でしょ?」
ウオシス「そんな……そんな、グラトレさん……どうして……」
黑ダス 「…………」(逃げよ)
グラ(独)「皆様安心して下さいな~、黒カフェさんはご飯を炊くだけですから~」
黑ルド 「ご飯を炊くだけ?」
黒カフェ「ご飯を炊くのは得意ですからね、それならお手伝い出来ます!」
黑ダス 「……つまり、助かったのか?」
黑メブ 「そうらしい」
黑タマ 「おい待て、警戒は怠るんじゃねぇ」
黑ルド 「確かに……万が一、少しでもご飯に以外に触れられたらアウトですね」
ウオシス「私も……しっかり見ておきます!」
黑ルド 「ウオシスちゃんさえ信用しない黒カフェさんの料理の腕……」
グラ(独)「それでは先に時間の掛かるご飯と焼鮭の準備に取り掛かりましょうか~」
黑カフェ「はい、分かりました! ……それで黒タマさんは何を?」
黑タマ 「おいらは仕切り板!(半透明)」
ウオシス「凄いです黒タマさん! そんな風に接触を遮るなんて!!」
黑メブ 「……いや、黒タマの形状が変わってる事へのツッコミは……」
黑ダス 「……」首フルフル
黑ルド 「……諦めって大事ですよ」
黑メブ 「そうしますわ~(棒)」
28二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 23:36:23
黑ルド 「さて、お茶漬けが出来上がるまで少し時間が有るみたいですしちょっと雑談でもしてますか?」
ウオシス「そうですね~」
黑ダス 「それでは、カメラさんは料理している二人を映していてくださいね」(は~、やっと息を付けるな)
黑メブ 「……なんで二人の尻を映してんの」
黒タマ 「この二人なら尻を映さねえと失礼だろ!」
黑メブ 「……そっかぁ~」
─────
ご飯を炊いている黒カフェトレと料理中のグラトレ(独)……のお尻の映像
─────
黑メブ 「あら~、そろそろ出来たみたいですわ~」
黑カフェ「……」フッフーン
黑ダス 「一仕事終えた顔をしていますね」(何でドヤ顔?)
ウオシス「今はお茶を淹れている所みたいですね、良い匂いです」
黒タマ 「そろそろ仕切り板は要らねぇかな?」
黑ルド 「はい、黒タマさんお疲れ様です」
ウオシス「わぁ~、黒タマさんお肌がモチモチになってますね~」
黒タマ 「スチーム美顔だぜ!」
黑ダス 「ああ、米炊いた時の蒸気か」
黑メブ 「落ち着いてくれ黑ダス、納得したらダメだ」
29二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 23:36:37
グラ(独)「はいどうぞ~、後はお茶を注いだら完成ですよ~」
黑メブ 「あら~、美味しそうですわね~」
ウオシス「焼鮭の香りがとても美味しそうですね」
黑ダス 「ご飯も普通に美味しそうです」(ダークマター化してないなら大丈夫……か?)
黑ルド 「それでは配膳しましょうか」
黒カフェ「それじゃあ僕g ウオシス「私が運びますね!」
黒カフェ「えっ? いや」
黑ダス 「ナイス!!」(ウオシスちゃんの手伝いたいって気持ちを無下にしないあげてください)
黑タマ 「逆、逆」
グラ(独)「ではお茶を注ぎまして~……」
他トレ達「お~っ」
グラ(独)「完成ですよ~」
他トレ達「お~っ!」パチパチパチパチ
黑カフェ「では! 皆さん早速食べましょうか!」
グラ(独)「是非熱いうちから食べて下さいな~」
ウオシス「はい! いただきます!」
黑ルド 「うん、早く食べたいね」
黑ダス 「私は猫舌ですので直ぐには……」(遅効性を考慮して1分……いや2分)
黑メブ 「黒ダスさんも~、死ぬ時は一緒にですよ~」
黑タマ 「スゴイ・シツレイ!!」
黑カフェ「はいはい、皆さん手を合わせて下さい!」
他トレ達「はーい」
黑カフェ「では感謝を込めて、いただきます!」
他トレ達「いただきま~す!」
それから、別に緊急搬送される人が出る事も無く、美味しくお茶漬けを食べて皆満足しましたとさ。
≫50二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 07:35:26
「…うん、こんなところでいいかな。そっちはどう、黒ルドトレ?」
「ああ、石の道具一式、予備も含めて用意したぞ。」
「助かるよ、後はマベトレと…」
「呼んだー★?」
…マインクラフト、このブロックで出来た世界で四人のトレーナー達は一夜を明かそうとしていた。
勿論VRであり、ウマレーター4台による四人プレイが今回の内容。モニタリングもイクトレらが担当していた。
「木材…足りてる?」
「うーん★微妙かなー!」
さてVRのマインクラフトということで、ちっちゃいもの倶楽部と今回は乳武海からも何人か呼んできてある。
今はかまどの火と松明を光源に、山の側面をくり抜いた洞窟のような家に三人で籠もりちゃくちゃくと準備を進めていた。
「朝になったら家を建てるけど、マベトレと黒ルドトレに任せていいかな。タイトレは…ブランチマイニングしてもらってるしね。」
三人で首を下へと続く階段に向ける。タイトレがザクザクと掘り進めており、中々の声量で声が聞こえてくる。
「うおおおぉぉぉ!!!」
「…大丈夫そうだね。じゃあ、僕はちょっと探索と材料を集めに行ってくるよ。朝までには戻ってくるね!」
…剣を片手に夜の闇に消えていったサトトレを見送りつつ、二人だけになった仮の家で燃えるかまどを見る。ふと
「あのペースのままならそろそろタイトレのツルハシが壊れてくる頃か…」
「タイトレおにいちゃんにツルハシを届けてくるねー!マーベラス★」
「ちょ、ちょっと待てっ…はぁ。…ん!?」
一人取り残される羽目になった黒ルドトレは、扉の近くからした物音にびくりと反応して後ずさる。
(どうしよう…下手に行動するのは…だがただ怯えてるわけにはいかない)
恐る恐る扉の前に立ち、白樺の扉を開いて物音の主を確認する。扉の前は明るく、何も見えないことにほっとした矢先
51二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 07:35:40
───蜘蛛が上から降ってきた。それもしっかりと顔を向けて、一時停止しながら独特な声を出す。
「ひっ!」
腰が抜ける。動けなくなった黒ルドトレにカサコソと迫ってくるでかい蜘蛛。このあと来る恐怖に思わず身構えた瞬間
ヒュッ!ドサッ!
突如として降ってきた矢が突き刺さり、更にワンテンポ遅れてそのまま降りてきた人影に斬られた蜘蛛はあっさりと消滅した。
「大丈夫、黒ルドトレ!?」
「…あっ……うん。」
…出ていた筈のサトトレだった。どうやら戻ってきたところその姿が見えたらしく、ダイナミックエントリーしたそうな。
「マーベラス★届けてきたよー…ってあれ、黒ルドトレおにいちゃん、もしかして」
「…う、うるさい!」
「煽るのも程々にね…お、もうすぐ朝だね。じゃあタイトレも呼んで今日は拠点づくりにしよっか。」
「えー、また呼びに行くのー?」
…その日は割と豪華な拠点を四人で作ってたとか。
短文失礼しました
ちょっと間に合わなかったけどマイクラネタ。マイクラの蜘蛛はまあでかいし形が形だったりと怯えるのもわからなくもない。
タイトレは単純作業とか向いてそう。マベトレが煽って黒ルドトレが補助、サトトレが探索役と中々バランス?は取れてる?
≫55二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 10:00:33
ある日のこと、ルドトレ二人はVRウマレーターのMinecraftトレーナー共有ワールドで遊んでいた。
そんな中、突然魔ルドがこんなことを言い出す。
「ねぇ黒ルドちゃん。ほら……焼肉のたれの、あれ!あれ建てたい!」
「……ベルヴェデーレとシェーンブルン、どっちだ?」
「えーと……どっちが楽だと思う?」
「プリズマリンを屋根にして……ベルヴェデーレだと思うが……」
「じゃあそっちで!」
「……随分雑だな」
「即断即決した方が楽じゃん?」
「それも、そうだけれども……」
「じゃあ、とりあえずゴルトレちゃんが『ちょっとエンドの外側の島爆破してくる』って言ってたからそこで資材貰えるだろうし行ってくるね!」
「……エンドの島を……?爆破耐性のある……?って、もう行った……」
その後、やむなく整地をしていた黒ルドが、戻ってこない魔ルドを探しにエンドに行くと、エンドは一面シュルカーボックスで埋め尽くされていたのであった……
≫124二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:12:42
「そういや今日は…」
13日の金曜日、だったか。
ガタガタと揺れるタクシーの窓を横目に、私…タバコこと芦毛のカフェトレは、読みさしの本を静かに閉じる。
元々英語圏では不吉の象徴として恐れられている日だが、紆余曲折あってこの日本にも流れてきた風習だ。
…もちろん、やたらと幽霊やら怪異やらが存在──少なくとも私自身何度も出会ったことがある──するトレセン周りも穏やかに過ごせるはずもなく。
ドン!!!と音を立て、窓に赤い手形がべったりと貼り付いた。
ひとつ、ふたつ…段々と"ソレ"は窓に増えていく。
「あー…運転手さん、ごめんなさい」
「いや、いいよ。
…流石にここまで暴れられるのは初めてだねぇ」
運転席に座る初老の男性は、言葉こそ平静を保っていたが、ほんの少しその声は揺れていた。
走行中に外から窓を叩く音が聞こえてくるのだ、怖くないはずがない。
幸いなのは手形が後部座席の窓にだけ集中している事だろうか。
お陰で多少ふらつきながらも、タクシーは夜の道を進んでいく。
さて、どうしたものか───そう手を顎の下に持ってこようとしたとき、コートの内ポケットが揺れる。
そういえば、そこにはスマホを入れていたんだったと思い返し画面を見る。
126二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:13:26
マンハッタンカフェ
ほぼノータイムでロックを外し、スマホを耳に当てる。
そこから聞こえてきたのは
『大丈夫ですか、トレーナーさん?』
「…………………。
カフェ」
『ええ、私です。
少し嫌な予感がしまして…トレーナーさん、今もしかして怪異に…?』
「ああ…そうだね。
少し厄介なことになっている。
………カフェは大丈夫?」
『ええ、私は大丈夫ですが…
トレーナーさんの声の後ろからは、とても"嫌な雰囲気"を感じます。
これは…一筋縄ではいかなそうですね』
「…そうだね。
どうすればいいかな、…カフェ」
『そうですね…私に少し作戦があります。
ですからトレーナー室に来てもらえますか?そこで迎え撃つつもりなので。
その、トレーナーさんの協力も必要ですし…』
「成程…分かった。
今から向かうよ」
127二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:13:57
そう了承し、タクシードライバーに行き先変更を告げる。
いつの間にか窓ガラスを叩く音は消えていた。
だが油断はできない、トレーナー室に向かわなければ…
窓にまだ残る赤い手形を見ながら、私はもう一度スマホに触れた。
─────────────
「これで…良いのかな?」
『はい、それが今回の怨霊を倒す重要な要素です』
トレーナー室の窓や扉は全て開かれ、微かに残っている珈琲の香りを吹き飛ばした。
ゆらゆらと揺れるカーテンはまるで御伽噺の幽霊のようだが、怨霊というのは…もっと嫌な姿をしているんだったなと思い返した。
部屋の中にあった鏡は全て外に持ち出している。
電話越しの声曰く、「アレらは霊の逃げ道になってしまう」らしい。
電気も消されたトレーナー室は、異様な雰囲気に包まれていた。
『では、今から私が向かいます。
すぐに終わりますから』
「ああ、待ってるよ」
そう答えながら、内ポケットのタバコを取り出そうとして、動きを止めた。
…流石に換気しているとはいえ、このトレーナー室でタバコを吸うのは如何なものだろうか。
…しょうがない。
指に挟んだ細長いその白棒を、私は火をつけずにそのまま口へ運ぶ。
紫煙は出なかったが、そのルーティンのような行動は、私の荒れた気持ちをほんの少し落ち着かせた。
128二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:14:56
「………ふぅ」
いつの間にか夜の冷気が出てきたのか、煙ではなく凝結した息が口から漏れる。
いつ到着するのだろうか。
そう考えるのと、見慣れた黒いコート姿がトレーナー室の入り口に現れるのは全くの同時だった。
「…来てくれてありがとう。
早かったね?」
「ええ、トレーナーさんが心配だったので…」
「…ありがとう。
それで、どうすればいい?」
入り口に背中を向けて、開け放たれた窓を見る。
すると、途端に後ろから手を伸ばされ抱き締められた。
「………。」
沈黙。
二人とも、何も言わなかった。
そっと溜息をつき、体を捻ろうと力を込めると
「バぁカ」
酷く異質で、ザラついて、聞き慣れない耳障りな声がトレーナー室に響いた。
ガラスを引っ掻くような騒音の後、私の体は背後から床に叩きつけられる。
衝撃でグラグラする頭を後ろからわし掴むと、ぐるりと体を彼女…いや、既に姿は性別どころか種族すらも変わっている、ソレに向き合わされた。
黒コートに見えた部分はうぞうぞと蠢き、視界に垂れる前髪はカフェのように艷やかではなく、死人のソレ。
垂れ下がった前髪に隠れた瞳は空洞で、あるべきパーツがない恐怖をこちらを植え付けんとしてくる。
───要するに。
129二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:15:29
「…怨霊…だよね。
しかも人間の体を乗っ取るタイプの」
答えは帰ってこない。
ぎりぎりと四肢を締め付ける影は万力のような力で、1mmたりとも動かせる気がしない。
空いた怨霊の両手が、蠢きながら近づいてくる。
そこまでして───漸く、怨霊がまともに話し始めた
『どうシた、嫌がりもしナイのか?』
「…もう、勝負ついてるみたいなものだし」
『つまらンなァ』
どうやらただ身体を乗っとるだけでは不満らしい。
嬲るのか弄ぶのか、どちらにせよ下卑た視線を──瞳はないのだが──を感じる。
今日何度目か分からない溜息をつく。
そう、勝負はついたのだ。
・
もっとも、私達の勝利だけれど。
ガシリ、と怨霊の肩に手が置かれて、まるで道端に落ちたガムを引っ剥がすように乱雑に引き戻される。
驚きの表情に歪んだその顔面を、まるで意表返しのように床に叩きつけて、後ろ手に縛られた。
130二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:15:55
「大丈夫ですか、タバコさん!」
抑えつけながらこちらを心配してくるのは同じマンハッタンカフェのトレーナー、黒毛トレ。
所謂「ケツパンチ」───何故こんな名称になったのかは不明だが───はしっかりと直撃し霊の体をしっかりと捕らえたようだった。
「こりゃまた、随分と可笑しな奴に絡まれたもんだ」
壁に背を預けながらこちらを見るのはマチカネフクキタルのトレーナーだ。
リラックスしているように見えて、その実万が一拘束から抜けられたら即座に反応できるように構えている。
「怪我はない?」
背中に手を回してくれるのは同じマンハッタンカフェのトレーナー、栗毛トレ。
彼女は特に怪奇現象に好かれるタチで、今日のような日は本来外出すべきではないのだろうが、私が心配らしく来てくれたお人好し。
こうして集まった「トレセン・ゴーストバスターズ」とでも言うべき面子に、件の怨霊は驚いていた。
131二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:16:38
「ど、どうイウ…!」
叩きつけられた衝撃でひんまがったタバコを咥えながら、背中を栗毛トレに支えられて立ち上がる。
「身体を乗っ取るには…『心のスキマ』を見つけなきゃならない。
まぁ…理論とかそう言うのはないけれど…私は、そう考えている。
だからこそキミは…『私の最も大切な人』に化けて『私の最も安心できる場所』で襲ったんだろう?」
「…!」
「だからこそ、ここへ追い詰める為に…怪奇現象を起こして、『マンハッタンカフェ』に化けて、更に霊力を高める為に場も整えさせた」
開けっ放しの窓も、鏡を持ち出させたのもそのため。
それほどまでに、『あの世の存在である霊がこの世の人間の体を乗っ取る』という行為へのハードルは高い。
恐らくは「相手の大切なものに変身できる」ような力を持った霊だったのだろう。
随分と嫌味な能力だが…それを使って今回の作戦を実行したわけだ。
苦虫を潰すようなうめき声が霊から漏れる。
132二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:17:01
「イッタイ…いつカら」
「最初からだよ。
カフェじゃないなって…思った。
確かにキミの声音は彼女そのものだったけど…違うと感じたから。
…そうと分かれば、予めトレーナー室にキミを倒せるだけの人員を隠しておいて、逃げも隠れもできない状態でキミを祓えばいい」
…ヒュウ、と口笛を吹くのはフクトレ。
君だってきっと見抜くだろうに…彼女の担当への思いを考えると、そう思う。
「まぁ…別にトレーナー室に行かなければそれ以上の心霊現象も起きなかっただろうし、最悪スルーすれば襲われる事も無かった、と思う」
だけど───と続ける。
「キミはよりにもよって『マンハッタンカフェ』に化けた。
化けたキミは分かっているだろうけど…私の、最も大切な人に」
133二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:17:53
ジッと、押さえつけられた"ソレ"を見る。
だからこの行為は私の唯の私怨で…どうしようもない苛立ちで…酷く幼稚な理由の、制裁だ。
「黒毛、頼んだ」
「…はい」
拘束している腕に、力を込めていく。
ボロボロと乾いた泥のように、そこから崩れていく怨霊の体。
霊に死ぬという意識があるのかどうかは分からないが、消えたくはないのだろう。
その耳障りな声で喚き出した。
「ま…待っテくれ!
…お、俺は死ンだやつ二も…お前、会いたい奴が居るんダろう!?
だカラ、会いたイなら─」
「───っ。」
私が何か言い放つ前、そして一歩踏み出す前に。
フクトレがその頭を蹴り砕いた。
断末魔さえも聴こえずに、ソレはボロボロと崩れていき…やがて欠片すらも残らず消えた。
「…ありがとう、フクトレ」
「…いや、いいんだ。
お前も…続く言葉は聞きたくなかっただろ」
「………うん」
134二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:18:15
「………窓!閉めようか!」
パチンと手を合わせて栗毛が場の空気を弛緩させてくれる。
…そうだった。
事件が終われば、残るのは後始末だけなのだから。
部屋の扉と窓を全て閉じ、鏡を元の位置へ戻す。
すっかり元通りになったトレーナー室は、やはり私の心に安心感を持たせてくれた。
「…今日は、ありがとう。
本来なら呼び出さなくても済むような事に…付き合ってくれて」
3人は往々にして大したことない、むしろ頼ってくれ…と言ってくれた。
…良い友人達だ、本当に。
ただ、進んで囮になるような事はしないように、と全員から釘を刺されてしまったが。
その後、今回の協力への感謝としてタバコが奢ると言い出し、深夜の居酒屋に四人で立ち寄り、少々騒動が起こったのはまた別の話………
135二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:18:43
オマケ
居酒屋にて
「なぁんで私の胸は育たないんですかぁぁあ!」
「あー…うん、よしよし」
「うぅ゛…タバコざん………
良いですよね、タバコさんはDカップも゛あって…」
「そりゃアンダーがかなり痩せてるからじゃねぇのか…なぁ?」
「本当、もっと肉付けてもらいたいんだけどね…」
「いや…うん、最近は努力してるよ。
ちょっとだけ成長してる…様な、してないような…」
「………また今度お邪魔させてもらうから」
「ハイ…」
「ハハ、年貢の納め時ってやつかもな?」
「うぅ゛…いいもん、私にもいつか成長期が……」
≫147二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:39:00
「起きてください!トプトレさん起きて…って起きない!?」
些か突然ではあるが、現在ナイスネイチャ担当トレーナーは、現在危機に陥っていた。
「なんで…なんでこうなったの?」
状況を整理しよう。まず彼女はトレーナー室で自主的な休憩をしていた。決して午後の麗かな温度にあてられて、なんて、そんなまるで体育のマラソンの後の老教師の現代文か数学、なんて感じじゃ無い。ええ決して。
そして夢でツボ持った女神様に何か言われて起きたらこうだ。左の手首には分厚い、無骨な手錠。202でも破壊は困難であろうそれ。
そしてその先にはトプトレが眠っている。豊かな胸を重力に従わせて、まるでとろけるかのような表情で仰向けで。その光景は一目見たならば容易に性癖を破壊されかねない。
「んぁ…おはよう…ございます、ネイトレさん」
「はい、おはようございます…じゃなくてぇ!どうなってるんですかコレ!?」
「ちょっと待ってくださいね。ええ…この状況です…なるほど。了解です。チェムさん曰く愛の女神様のしたことらしいです。「互いに近くにいて愛を確かめろ」とか何とか」
「またですか三女神様」
トプトレが起きたおかげか少し落ち着いた様子。ふう、と一息をついて手錠をあらためてみる。
「こうなったのは仕方ないですが…どうするんです?」
「そうですね…手錠がこうして掛けられているということは私はどこかに送られるのかも知れません。留置所とか拘置所みたいな」
「トプトレさんそんな悪いことしたんですか!?」
「悪いこと…そうかはわかりませんが、この前ムントレさんとおでんを炊きました。魔ルドさんに「悪い事は言わないからここではやめておきましょ、ね?」と言われましたよ」
「アノー…ちなみに何処で?」
「メイド喫茶ですね」「そりゃそうですよ!?」
早くもツッコミを入れるネイトレ。周りは屋上で、ここから移動をしなければ助けは求められそうにない。
「ネイトレさん、とりあえず移動しましょう。ここじゃ誰かが来る確率も低いでしょう」
「ですね…。誤解されたら面倒になりそうですしね」(ネイチャにだけはバレませんように…!)
「ですね。ゴカイは気持ち悪いですし」
「え?」「え?」
148二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:39:39
どこか噛み合わない部分はありつつも、2人して立ち上がり移動をする。
幸か不幸か、今日は生徒達の姿はまばらであり、誰かとエンカウントする確率は低いだろう。
「とは言ったものの…どうしたら解けるのコレ…」
「まあまあ。そう焦らず。ゆっくりといきましょう。一旦お茶でもしませんか?」
「それはありがたいですけど、どこで?」
「私のトレーナー室でどうでしょう?何か食べたいものはありますか?」
「えっいいんですか!?」
「もちろんです。彼らも美味しく食べてもらった方がいいでしょうし」
一気に元気を取り戻し、目をキラキラと輝かせるネイトレ。お菓子につられてガードがまた緩くなっている。そんなんだからなんだぞネイトレ。もう少し警戒心を持ってくれネイトレ。
部屋に入り、冷蔵庫を開けるとトプトレは聞く。
「こっちがアップルパイでこれがチョコケーキですね。どっちがいいですか?」
「どっちも美味しそう…うわあどうしよう……」
「ふふっ、ではどちらも食べますか?」
「是非!」
「ではネイトレさん。そっちの湯呑みを取ってください」
「はい!…湯呑み?」
「はい。湯呑みです」
ケーキを取り出し、ネイトレの方を少し大きめに切り、器に乗せるトプトレの横で困惑しながら湯呑みを取り出すネイトレ。ケーキに湯呑みとはこれいかに。そんな疑問を口に出そうとするが、トプトレが急須を取り出すのを見てああ…となる。ツッコんでいいんだぞ。
「ネイトレさん紅茶と緑茶、どちらがいいですか?」
「えっと…紅茶でお願いします」
「はい。もう少し待ってくださいね。確かアールグレイがここらに…あ、すいません。少し屈んでもらえますか?」
149二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:40:18
手錠のことを若干忘れかけていた2人は出来上がった緑茶と紅茶、大小二つのケーキを持ってソファに隣り合わせで座る。
マイヤさんがベガトレさんとよくいらっしゃるので買い替えました、と言うふっかふか、ネイトレも沈み込むそんなソファに驚きつつ、ネイトレがお皿を取ろうと左手を伸ばすのに合わせてトプトレも合わせる。
「あの、大丈夫ですか?」
「ええ。ネイトレさんが食べ終わるまではお茶を飲んでおきます。右手は楽にしておくのでごゆっくり」
「ふぁ…おいしい…」
話をギリギリ聞いていないラインでアップルパイを頬張るネイトレ。モッキュモッキュしておる。顔が完全にとろけている。ニコニコしてる。
それを横目に緑茶の水面を見つめるトプトレ。その中には茶柱が3本浮かんでいる。
あ〜〜…幸せ…、と横のネイトレは幸せのぬるま湯にどっぷりだ。
「お邪魔するよ〜」
「ああ、ベガトレさんこんにちは。邪魔じゃないですし来てくださって嬉しいですよ」
「ありゃ、ネイトレもいたんだ。それにその手錠…ほうほう…」
「起きたら付いてました。不思議ですね」
「そういうプレイじゃん!」
「プレイ…ですか。早くなくなってほしいと祈っていますよ」
スイーツに夢中なネイトレは突然のベガトレ来訪に気付いていない。
そして紅茶を飲んで〆としたネイトレはようやくベガトレに気がつく。
「あ…こんにちは」
「こんにちはネイトーレ。さっきすんごいとろんとろんな顔してた。こう…襲いたくなる感じの」
「まずい予感がする…助けてネイチャ…」
「あ、ベガトレさんそういえば明日の併走なんですが」
「今ですかトプトレさん!?」
150二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:41:07
密室。セクハラ魔にスケベ寛容にセクハラ被害者。何も起きない訳もなく……
「トレーナーさーん、いるー?」
「あっネイチャ!助けて!!」
起きなかった。
結局ネイトレはネイチャに助けられて、危機を脱したのだった。
おしまい
手錠ネタを見かけたのでやってみました。
責任の所在どうこうは…三女神様のせいということで。
ベガトレさん、やっぱりエミュ難しいですね。こう…どうも納得ができないというか。
立ち回りも今のところタッチしてくる役だけなので、バラエティを増やさねば
オペトレさんにドトトレさんとの話も書きたいしダストレさんに「揉む?」するお話も書きたいな、なんて。
長々と失礼しました。最後にベガトレさんとネイトレさんの作者様に腹を切って侘助します
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part758【TSトレ】
≫53二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 01:05:26
『夢幻に浮かぶ』
雲のように、ふわふわと漂う感覚。かと思えば、急に流れの中に巻き込まれてどこかに流される。
夢とは狗頭生角、摩訶不思議。起きれば消え去る泡沫模様。
道を歩いていたら川に叩き落されたような、不意打ち気味に始まったの中で水色芦毛が一人漂い続ける。
「……誰もいない夢ってのも何かねぇ」
暇だな、と呟く。意外とバリエーションの多い夢を見ていた彼女は、久しぶりに見る空虚なそれに溜息をつく。
他所より来た白い少女、その子を何かと気に掛ける大正浪漫に溢れた美女、その他友人知り合いエトセトラエトセトラ。誰も見えずに、ぽつんと独りぼっち。
流れ流れて、見当もつかぬ。いつしかこの夢の果てにたどり着くのか、それともまた別の夢に入り込むのか。まあ面白いものでもあればよいか、明日の朝起きることに問題がなければよいと、期待半分諦念半分。
そうして夢の中で目を閉じていると、ふとだれかいるような気配を感じて双眸を開け放つ。
なんと驚き、そこには自分の顔。いや、正確に言えば自分の顔“だったもの”。変わり果ててはウマ娘、元を正せば人の子と、思い出すのも簡単な、長年共だった我が顔よ。見た感じだと、二、三年前くらいの平凡面。
「俺がいる!」
「俺って誰!? お前!?」
「そりゃ俺は俺だろうよ、ほら、声も近い」
「いや確かに近いけど……女声じゃないか、俺は男だよ! しかもウマ娘じゃねえし!」
つい俺がどうこう言ってみれば、向こうはあまり納得せぬ模様。仕方ないので思いつく限りの言の葉を載せて、納得するまで根競べ。
「ブライアンを始めて見たのは?」
「そりゃトレセンの選考レースの時だろ?ヒシアマゾンと争ってた」
「その後2週間ぐらい棒に振ったよなー」
「あー懐かしいな、あれの一件でだいぶ愉快な奴と見られたような……」
「そのあとトレーナーバッジを賭けた。まあ殆ど勢いみたいなもんでな」
「おっと……それを知ってるのは俺とブライアン、それと友人のマクトレマヤトレぐらいしかいねえだろうな」
「今はグラトレやネイトレも知ってるかな」
「広めたのかよ!?」
驚くやら、呆れるやら、暫し話せば気が付いて貰えたらしい。
「で、どうして俺がこんなところに?」
「わからん、夢を漂っていただけだからな」
「そもそも、なんで俺がウマ娘になったんだ?」
「それもわからん」
「えぇ……」
全力の呆れ顔を向けられた。解せぬ。
54二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 01:05:38
聞けば元の顔の俺の明日にはクラシック戦線は一つ目の冠、皐月賞の開催日らしい。大分巻き戻ってしまっているが、まあ夢なのでそういうこともあるのだろう。
「不安でもあるのか?」
「いや別に?」
即答であった。
「ブライアンならきっと大丈夫だって思ってるからな」
「流石俺だ、ブライアンのことをよく信じている……」
あの頃から大して変わらないことを喜ぶべきか、進歩がないと悲しむべきか。まあブライアンが元気なので、喜んでいいのだろう。
「……まあこれは野暮だな、うん。そもそも同じ歴史を辿るかわかんねえし」
思ったことを言おうとしたが、やめておいた。過去への干渉なんて碌なことにならぬのは、古今東西いろんなSFが証明している。そもそも干渉できてるかどうかすら定かではないが。
「あ、なんかいらんこと言おうとしてないかウマ娘の俺」
「言ってないからセーフセーフ。未来の貴方自身なのです……とか言ってもなんもなんねえわこれ」
「むしろそれで固定されても困る! やめろやめろ!」
若干必死な表情を見て笑えてくる。なんだ、俺はこんなに性格が悪かったのか。
「すまんすまん、忘れてくれ。まあ夢だから忘れるだろうけどな」
「……あー、なら一つだけ聞こうかな」
何か思いついた様子で、昔の俺が問いかけてくる。
「ブライアンは元気か?」
「無論、元気だよ」
「そっか、ならいいや」
それだけ聞くと、安心したような顔になる。それを見て、俺もはにかむ。
「なんだ、笑い方は変わらないんだな」
「そりゃ俺だからな」
二人で顔を見合わせて笑う。そうして夢が終わるまで、二人は笑い続けていた。
「……いや、何が可笑しかったんだろうな」
目が覚めたら、最後のあたりだけ覚えてた。あっちは何を覚えて起きたのか、それだけちょっと気になって夜明けの太陽を体に浴びるのだった。
もしかしたらあっちの俺はウマ娘にならないかもしれないし、ウマ娘になるかもしれない。まあだからといって、何が変わるわけでもないのだが。
結局のところ、今を生きる自分は自分だけなのだ。ならば、その自分を全力で生きるのみ。ただそれだけ心に残しておいて、俺は今日も生きていくのだ。
≫64二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 08:27:03
「…ッ」
ゴトリと持っていた今さきほど空にしたばかりの瓶を下ろし、引き攣った笑みで一人笑うファイトレ(女)。
「あ、はは…実に、最悪な気分だ……」
その瞳に正気はなく、澱んだ水のように光のないそれは、もうすでに彼女が狂い果てているかのように示していた。
…勿論、こんなことになったのには理由がある。それは…いつかの自分と向き合ってしまったという一点だろう。
────
「…ねぇねぇ未来の私、伝言、聞いてくれた?」
「ッ!」
二人きりの空間、机を挟むように置かれた二つの椅子に座るファイトレ(女)と、彼女によく似た少女…いや幼少期の彼女。
「『未来の私へ、きっと過去の私よりもっと多くのことを知ってるはずだけど、今とっても楽しい?』…ってね?」
「………ああ、楽しいさ…」
その言葉を聞いた彼女は、楽しそうな顔から不機嫌そうな顔へと変わり、その目はどこか憐れむような色をしていた。
「…嘘つき、同じ私が嘘を見抜けない訳ないよ?…それは本音だろうけど、まだ別の何か本音を隠してるよね?」
「…」
「だんまり…なら答えて、貴方、どうしてそんなに苦しそうなの?理想も、友人も、家族も、貴方はどうしてしまったの?」
「…」
手が震える。座ったまま項垂れたファイトレの心はかき乱されて、両手で覆った顔の、指の隙間からは見開いた目が覗く。
(全部、私の方から捨て去ったんだ…そんな私が、今頃求めるなんて烏滸がましい。戻ってくることも、許されることもない…)
…理想の歯車に歪んだ現実の歯車が噛み合い、異音とひずみを発生させながら彼女の心で回り続けていた。
───
机に向かい、肘をついて腕組みしたまま拳で顔を支えるファイトレ(女)。ぽたりと手のひらに食い込んだ爪から血が垂れる。
「…」
吐き出すことも出来ない感情に、ただ只管に苦悩して耐えている彼女を、自室の窓から月明かりが一筋照らしていた。
短文失礼しました
心にクリティカルなネタということで、キラキラしてた頃の自分と会ってもらいました。ねえねえ今どんな気持ち?
ファイトレ(女)がこうである限り、永遠に忘れられない傷なんですよね。割り切れるほど彼女は愚者じゃなかった。
≫71二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 12:04:07
「ウワーッ! 過去の俺!?」
「えっこれ未来の俺!? パットしねえ!」
「うるせー!!!」
〜⏰〜
「えっ俺、やっぱスカーレットと結婚すんの?」
「俺からプロポーズするよ」
「マジか……いやそうか、そうかもな……ところで夜の方なんですが」
「俺は絶対に負けるので諦めて?」
「やだ! 俺この未来やだ!! もうちょっと男らしい未来がいい!!!」
「うるせーし! 未来最高! 未来最高! お前も未来最高と叫びやがれ!」
「やだよメス堕ち不可避の未来とか!」
こんなんしか思い浮かばないよダストレ
≫117二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 19:39:06
『過去と未来のマーベラス☆』
近頃、夢の中で過去の――ウマ娘になる前の自分自身に会ったというトレーナーが増えてるらしい。
嘘か真かそんな噂で持ちきりなトレセン学園
「ねえマベトレはこの噂知ってる?」
「うん、知ってるよー過去の自分と会えるなんてすごいマーベラスだよね☆ でもこうなっちゃう前の私かー」
「もしもマベトレが会ったならその時の話を聞いてみたいかも」
「うーん☆ それは難しいかもねー★ 今の私とよわよわな時の私ってぜんぜん違うからおはなしになるかもわからないよー★☆クスクス」
「ふぅんじゃあ何が起こっただけ聞かせておねがい」
「マーベラス☆★」
マベトレはかなりのレベルでの精神侵食を受けておりちょっとした好物から趣味嗜好、果ては性格に至るまでほぼ全てが変わっており、外から見ると別人ともいえてしまうほどである。
しかし実際には人格の分裂や消失が起こってなく地続きな人格で変わってしまった自身の性格を認識してるというそんな奇妙な状態にある。それが過去の自分と会えるかというと微妙であった。
――気がつくとマベトレは霧が立ち込める真っ白な空間のなかにいた
空間の中央にはまるで対談させるかのような一対の椅子とテーブルが置いてあり、テーブルの上にはご丁寧にメジロ家で見るようなスイーツとティーセットまで置かれていた。
ここが噂できいた過去の自分との対談の場所かと思いついに私の出番かとマベトレは少しため息を漏らす。
(……雑魚な私と対談とかマーベラスじゃないんだけどー★)
そうこう考えているうちに、立ち込める霧の中から一人の懐かしき男の姿が浮かび上がる。その男は突然の出来事に困惑した感じの様子だった。
その情けなさそうに見えた姿を見て、マベトレは自然とニヤけてしまうと同時に自身がここまで変わったことを自覚する。
――そしてマベトレは決心する
――"今"の私らしくマーベラス☆ に出迎えよう
「今日もマーベラス☆ ざこなころの『わたし』★」
≫123フジトレは察し上手22/05/19(木) 20:48:41
「……」
「…………」
「……その姿ってさ」
「うん、まあそういうことだよ」
「そっかぁ……」
「だから、まあ、なんというか、だけど」
「……うん、うん」
「捨てる神あれば拾う神ありってことだから。もうちょっとの辛抱だよ」
≫128二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 20:51:46
タマトレ(小)は1人、タクシーで揺られていた。酔い止めをキッチリ飲んだのに、気持ちが悪い。
「お客さん、ここであってる?」
「あ…、あって、ま、す」
タクシーの運転手が振り向いて、出発前に渡した地図を指しながら聞いてくる。大丈夫。悪意はない。大丈夫。
「そう。じゃあ、5800円になります」
「え、と、これ、で……お、おねがい、ます」
「6000円ですね。お釣りの200円と、領収書は?」
「領収、書、おねがい、し、ます」
「はいどうぞ」
「あ、り、がとう、ござ、ます」
途切れ途切れに支払いを終わらせ、ニット帽を深く被り直してタクシーから降りる。
そそくさと人目をかいくぐるように道を進み、エントランスへと入る。
「面会ですか?診察ですか?」
受付の人は聞いてくる。大丈夫。大丈夫。
「面、会で、す」
「何号室ですか?」
「え、と、────です」
「───室、了解しました。こちらのパスは無くさないようにお願いします」
「は、い」
小さくお辞儀をしてそそくさと去る。非常階段を通って、なるべく誰もいないところを通る。
階段を、肩で息をしながら登り、目的の階層に着く。
その部屋の前に立った瞬間、胸がキュッとなって苦しくなる。
これから言われること、責められること、詰問されること、全部全部怖くて、ここから走り去ってどこかに隠れたくなる。
でもそれは、自分1人さえ救えやしないから。
恐る恐る、ノックを。小さな手で、壁のようなその扉を。
コン、コン。
──静寂。中からは何も聞こえない。
もう、一度──
「どうぞ」
中から、声がした。電話越しに聞こえた、あの声。
129二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 20:52:13
「し…し、つれ、い、しま…す」
蚊の鳴くような声で扉を開ける。心臓は今にも張り裂けそうで、痛んでいいはずないのに胸が痛くて。
「よく来ましたね。まずは座ってください」
「は…ぃ…」
ベッドにはプラチナブロンドの髪を窓からの風に靡かせ、眼鏡の奥からこちらを除く、ハルウララ担当トレーナーだ。ベッド横の椅子をすすめ、居住まいを直す。
「こ、れ……お、み、おみや、げ、で…」
「ありがとうございます。後で頂きますね」
受け取ったそれを横の棚に置くと、少しだけ笑みを浮かべる。
「大分喋られるようになりましたね。相当練習を積んだのでは?」
「わ、たし、じゃ…ない、で、す。タ、タマ、に、食、堂の、おば、ちゃんが、てつ、だって、く、れた、か、ら」
「謙遜と否定は違いますよ。貴女が頑張らなければ、ここまで成長はできなかったはずです」
「………」
それを聞いて、俯いてしまう。自分の事を認め切れずに、やはり後ろめたくなる。
ふぅ、と一息つくと、彼女に声をかける。
「タマモクロス担当」
「は…ぃ…」
きっ、と目が鋭くなる。
「まず。貴女は自信の犯したことを、きちんと分かっていますか?」
「はい…」
「担当ウマ娘を傷つけ、周囲との関わりを絶ち、加えて彼女への信頼の低下さえ招きました。トレーナー以前に、それはひととして許される事ではありません」
目を氷のような温度にして、彼女に問う。
「このままで、貴女は再発の恐れは無いと言い切れますか?また、誰かを傷つけないと、そう断言できますか?」
ウラトレの言葉は、厳しく心のかさぶたを剥ぎ取ってきて、深いところにナイフを突き立ててくる。
その言動は至極真っ当で、だこからこそ強く過去を抉り取ってきて。
「それでも尚、貴女はタマモクロスのトレーナーとして、このまま彼女の隣に居るつもりですか?」
一見きつそうに見え、しかし本当の事をそのまま伝えただけの、その言葉。
担当を傷つけ、本来ならばトレセンに居られるはずがない、彼女への言葉。
どれだけ時間が経ったろう。一瞬かもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。
彼女は俯きながらも、ポツリポツリと言った。
130二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 20:52:54
「わか、って、ます。私、は、許され、ない、こと、しました。あやま、って、も、なに、して、も、ゆるされ、ま、せん…で、も、私、約束、し、まし、た。約、束。タマ、を、立派、に、する、って……」
ずっと、ずっと考えてきたこと。何をどれだけやっても、決して贖罪にはならないこと。許されるなんて、絶対にいけないこと。
逃げても逃げても、それは結局自身の首をさらに締めるだけで。
「もし、わた、し、が、死んで、も、許、され、ないです。許さ、れる、べきじゃない、です。で、も、私は、逃げたく、ないで、す。もう、タマ、を、皆、を、不幸に、するのは、嫌、です。だか、ら、タマ、を、立派に、すごい、ウマ娘に、して。それが、私の、できる、すべて、です」
それを言い切ると、涙の溜まった目をウラトレに向け、頭を下げる。真正面から、立ち向かうように。
強く、もう逃げも隠れもしないと言わんばかりの姿勢で。
「おねが、い、しま、す。タマ…と…いっしょに……いさせ…て…」
ウラトレは、黙ったままだ。
「………顔を上げなさい。タマモクロス担当」
しかし、彼女は頭を上げない。頑なに、いっそ不器用なほどに。
「顔を、上げなさい。タマモクロス担当」
「ゃ…で…す…」
「貴女の覚悟は分かりました。私から言えることはただ一つです」
手を涙で濡れた頬に添え、その目尻を拭ってやる。
「やりとげなさい」
強く、優しく言う。それ以上でもそれ以下でもない、激励。
「…は…い」
それに応える彼女の声は、少しだけ、晴れやかな気がした。
これにて終わりです。
タマ(小)の決意表明、のような回です。
彼女が、ひとりで悩み抜いて出した答えです。
ウラトレさんをお借りしました。エミュ、立場など問題あればご指摘お願いします。
皆さんに受け入れてもらえるか分かりませんが、自分でやってしまった手前、きちんと最後まで完結させます。
ここまでスパンが開いて申し訳ございませんでした。
見苦しいでしょうが、タマ(小)をどうかよろしくお願いします。
≫135チヨトレの場合22/05/19(木) 21:15:15
「……」
「こんにちは」
「……」
「やはり、話せませんか」
「……」
「今、貴方には悲しみや恐怖しかないかもしれませんが」
「……」
「この世にはまだ、美しいものがあるのだと思える何かに出会えるかもしれません」
「……そんなの」
「あるわけがない…ですか?」
「……」
「分かりませんよ?だってこの世界には、貴方の知らないものがたくさんあるのですから」
≫149二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 21:59:23
ある時、ゴルトレは何もない空間で一人の男と対峙していた。
「……俺か」
「そういうゴルシ似のウマ娘は誰だよ」
「……お前だよ」
「……誰のせいだよ、ゴルシか、タキオンか?」
「さぁな、お前に教えるべきではないことだから言わねぇよ」
「そうか。んじゃ、そういうことにしとくけどよ。未来の他の連中は元気してるか?」
「ゴルシも楽しくやってるし、俺も、あいつらも楽しくやってるよ。ただまあ……魔ルドとサブトレーナーについては気を遣ってやれ」
「……色々あったんだな。聞かないでやるが」
「ん。それでいいと思うぜ?後はオクトーバーフェストには気を付けろ。うっかりグラス割って大損すっから」
「……他には伝えなくていいのか?」
「んなもん、ゴルゴルネットワークで改変していいギリギリ狙ってんだから気にすんな」
「成程。んじゃ、また未来で」
「ん。お前が俺になる時は待ってるからな」
そうして目覚めると、日時はお台場のオクトーバーフェスト終了後────5月9日を示していた。
タンクトップ姿で記憶の海に飛び込むと、そういえば数日前に魔ルドに連れられてムントレやフラトレと行ったこと、グラスを割りかけたが"たまたま置いておいた"同日開催していたイベントの袋のおかけで割れなかったことを思い出す。
「……覚えててくれたんだな。あんなしょうもねぇ与太話なのによ」
そう呟きながら、彼は身支度をすべく動き出すのであった。
≫156二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 22:43:36
モブどもが駄弁るだけ
「戦国乙女って知ってる!??」
「不知火です」
「同じく。はい終わりトレーナーに死ぬほど愛されて眠れない本描くのに忙しいから黙れ(ドン」
「シンプルな塩対応が五臓六腑に沁みるぜ…まぁその戦国乙女がさ、パチスロのコンテンツであってそれがまた可愛いんだよ」
「おっ鋼の意志持ちか???」
「ほら見てこの衣装すっげぇ可愛くない?」
「…ふーん、まあ、悪くないかな」
「今回はずばり!トレーナー達に似合いそうな衣装を考えようってのが本題です!!」
「こいつパチンコ勝ったな…」
「はいまずは千リキュウ!これはもうグラトレだろ!いっしょにお茶会したさしかない!!」
「…私はバクトレかウラトレ先生かな。バクトレは眼鏡かけてるし先生も雰囲気似てる気がする」
「バクトレは明智ミツヒデみあるし…ウラトレさんは乙女って言うには年齢g」
「ウラトレ先生は!!!!可愛いだろうがぁ!!!強いし可愛くお茶目なウラトレ先生は最高に乙女だろうがぁ!!!!!もぐぞ!!!!」
「おいおい俺死んだわ」
「でぃ、DK4は?DK4の話しましょう?」
「ちっ…ブラトレは元気で明るいしブライアン要素あるから武田シンゲン?マクトレは顔がいいし黙ってたらクール系だから石田ミツナリとか」
「せやろか?あんな酔っ払い(隠し撮りマクトレの写真を見る)ウワーッ!顔がいい!」
「いつもの、フクトレは絶対立花ドウセツ。脇出し絶対領域最高…」
「迷うけどテイトレは大友ソウリンちゃんかしら…大型武器シスターってのもあるけどドウセツと侍従関係なのよね…清楚でお淑やかなのにフクトレにだけはちょっとわがままでカステラをあーんさせるのよ。でもその背景には家族愛を超えた信頼関係があってフクトレもそれを理解していてなんだかんだ甘くて…ふひっ」
「ウアアアカプ厨ダーッ助ケテクレーッ」
「これ以上は(ガイドライン的に)危険や流れを変えるぞ!」
「キタトレは…北条ウジマサがいい…闇堕ちキタトレが見たい…マベトレかロブトレは小早川ヒデアキがいい…カシン化した姿が見たい…」
「ウアアア曇らせダーッ助ケテクレーッ」
「これ以上は(以下略)」
「じゃあブルトレなんだけど…細川ユウサイとか似合いそうじゃね?それかシロ」
「いやシロはイクトレじゃない?どっちかっていうとグミちゃん」
「人様を勝手にマスコット扱いするのだいぶ失礼が過ぎる」
157二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 22:44:15
「カフェトレの話がしたいわ!カフェトレズの妄想をさせてちょうだい!」
「黒カフェは徳川イエヤス。魔法少女いいよね…タバカフェは毛利モトナリ。冥府に送って欲しい…欲しくない? 義カフェは悩むけど伊達マサムネ。正直に言う義カフェめっちゃ眼帯似合うと思う」
「いい妄想力してんじゃねぇか…」
「…ずっと考えてたんだけどさ。やっぱタイトレは織田ノブナガかなぁと」
「んー…元気明るい系なら豊臣ヒデヨシとか前田トシイエとかの方が似合ってる気がするけど」
「分かってる…分かってるんだ…それでも、ノブナガの格好をしてナリタタイシンの前でポロリしちゃったりお腹や太ももを曝け出してる姿を想像すると…!憧れは止められねぇんだ…!」
「おやおやおや」
「モブトレは気持ち悪いですね」
「あ…あの…自分執行部なんすよ…ちょっと連行させてもらっていいスか」
「「「しょうがねぇなプライベートで妄想してるときに…」」」ダッ
「逃げた!!逃げた伊黒さんアホどもが逃げた!!」
こんな話がロブトレとウオ202に伝わって実際にトレーナ各位がコスプレしたかどうか、続きはWEBで!!
≫167二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 23:39:47
「…貴方は…誰だ?」
「…なるほど、過去の私かしら。とすればこれは神様の気まぐれというわけね。」
「どういうことだ?」
「そうね、簡潔に言うなら…私は未来の貴方よ。運命の悪戯かこのような姿になっているのだけどね…」
「…なら、20XX年の冬にキタサンと二人でいった山小屋で出されたお茶の銘柄は?」
「───産の『春初め』ね、渋みが独特で中々良かったわ。」
「なるほど、これは信じれるか。…しかし、母さんを思い出す喋り方だな未来の俺。さしずめその姿に合わせた訳か」
「ええ、男性的な喋りでは周りに不必要な混乱を招くわ。サトトレみたいな喋り方ならともかくね。…まあ、胡散臭いのだけど」
「ふむ…それで、ウマ娘の体はどうなんだ?」「胸がやや重いのを除けば凄くいいわね。この体ならチームメンバーと触れ合っても余り問題にならないのは楽なのよ。」
「…チームを持ったのか。フルメンバーで回してるんだろう俺、何か先に必要なことでもあるか?」
「ふふ、ないわよ。少なくとも困りはしてないわ。」
「…ああそうだ、一つだけ確認しておこう、『私』はまだ理想を追い続けてるか?」
「当たり前よ『俺』、その信念を忘れた日なんてないわ。」
「ふ…なら俺から言うことはないな。…未来のことは任せたぞ俺、俺ならやり遂げられる…そうだろう?」
「勿論よ私、貴方は貴方の今に心血を注いだらいいわ。私がきっと上手くいくと保証するわよ。」
「…そろそろ時間か、じゃあな。」
「ええ、さよなら。」
〜〜〜
「…夢…いや、それはどうでもいいわね。どうやら過去の私は変わらずやってくれたみたい…義理は果たしてくれたわね。」
「さて、今日も仕事を始めるとしましょう。まずは…プロキオンの皆に挨拶からって所かしらね。」
短文失礼しました
セリフのみキタトレで一本、こっちは凄くからっとしてます。自分への信頼と、互いに推察力とかはピカーなので混乱もしない強さ。
理想を変わらず追い求めて、でも潰れず一つ一つこなしているのがキタトレです。同じ理想を追い求めたファイ女と違う形。
≫173これまで、これから22/05/20(金) 00:14:12
扉を開く。5歳ほどの少年が、運動着姿で立っている。
「あのね! パパとママがね! 今日の運動会に来てくれたんだ! えへへ、うれしいなー……」
「えっ、今朝の体温? えーっとねー……36度6分だったよ」
僕は彼の頭を優しく撫でて、次の扉の前に立つ。
扉を開く。10歳ほどの少年が、喪服姿で立っている。
「……パパとママは、もういないよ。もう、……」
「……あっ、そうだ、体温……測ってないや。叱られちゃ……そっか、もう、叱ってくれるパパも、ママも……」
僕は彼をぎゅっと抱きしめて、次の扉の前に立つ。
扉を開く。15歳ほどの少年が、制服姿で立っている。
「あいつら、父さんと母さんをバカにしたんだ。僕がバカにされるのはいい、でも、僕の家族をバカにするのは許せない」
「……体温? 36度2分」
僕は彼に微笑みかけて、次の扉の前に立つ。
扉を開く。20歳ほどの青年が、スーツ姿で立っている。
「成人式、懐かしい顔がいっぱい居たよ。今日のコト、話してあげなきゃ。父さんと母さん、それから──パパと、ママに」
「今朝の体温は36度丁度。至って健康だよ」
僕は彼と握手して、次の扉の前に立つ。
扉を開く。25歳手前の青年が、礼服姿で立っている。
「──この先は無いよ、"僕"はここまで。後は、宜しくね……あんまりクリークに頼り切りにならないように!」
「今朝の体温は──」
僕は彼と話しながら、意識を手放して──
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……
「……うん、36度4分。平熱だね」
鏡の前に立つ。栗色の髪、青い瞳、ピコピコ揺れる耳、ふわふわの尻尾。担当とよく似た、ウマ娘になった"僕"の姿が見える。
今日も、学園の生徒たちの為に、そして愛バの為に。着替えて、鞄を持って──扉を開く。
≫177二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 06:11:05
「過去の自分を見る、ですか」
「ああ、見るだけじゃなく話せるらしい。お前の場合は記憶の事もあるから大事になるだろ、セイトレ?」
「偶に幻覚なら見ますよ、もう何度か」
「お前サラッと心霊現象地味た物に合うよな」
失礼な、と言いたくなったが今のは俺にも悪い点がある。
食欲がないから食堂で飲み物だけ、と飲んで居たらフクトレさんから声をかけられた。
何かと忙しそうなのにどうしたのかと思っていたので何となく納得。
然し耳に入ると思い出す気味の悪いものを避けるようにジュースの水面を出すようにくるくるとストローで回す。
「偶にですよ。映るものに写真でだけ知ってる男が映ります。鏡とか、水面とか」
「水面か……お前釣り行くらしいけど大丈夫か?」
「キツイ時は風景見たり竿動かして波紋広げてますよ、おかげで酷い時は全く釣れません」 タノシイケド
「あんま無理するなよ。……それで、何か聞けたりしたのか」
「いや、なーんにも?」
「何も?なら幻覚か」
「そうですね、鏡にも、水面にも、コップにも、夜寝たら夢にも出ますけど口すら動かしてくれません」
"……恨み節の一つでも聞ければ家族に会うきっかけになるかもしれない。"
喉まで出かかった言葉を飲み込むようにストローに口を付けジュースを流し込む。
本当に話が聞けるのならば記憶を探る事には使えるかもしれない。
それ以外は"セイウンスカイのトレーナー"に成り代わってる似非者と認識させられ、ただ辛いだけだ。
「それじゃ手掛かりにはならないか。然しそんなに見るなら最早慣れっこだな」
「ンブッフ、ゴフゥウェッフッ!!?」
「うわっ!?きったねえなお前!?」
「ンゲホッ、ゴホッ、何か見える度にビビり倒してますからね!?ほら、鏡素手で割った時の切った傷痕も左手に残ってますから!!」
「そんなもん見せるな!」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part759【TSトレ】
≫40二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 15:57:00
「あつい…」
白を基調にしたワンピースタイプの水着と麦わら帽子をつけて、ビーチで遊んでいるのはサトトレ。
海水で濡れた白い肌と水着、そして残った水滴が眩しい。濡れた髪はしっとりと纏まり中々の重量感。
「そうですね…」
ちょっとした柄がおしゃれなスク水タイプのを身につけたブルトレも、垂れてきた汗を腕で拭った。
勿論二人共対策はバッチリで、担当に日焼け止めやらなんやら塗ってもらってるのでその肌が焼けることはない。
「やっぱり水中の方が涼しいよね。…あ、アイスバーあるけど食べる?」
「なら、頂きます。…はむ」
キンキンに冷えたアイスはこの暑さの中では、いつも以上に甘く感じる。ついでに奥に見えるトレーナー達も手招きした。
「皆、暑いと感じてるんですね…はい、どうぞ」
奥でクラゲをつっついていたパーカーを羽織る黒ルドトレや、砂に半分埋まっていたビキニタイプの黒タマトレ。砂の城を作っていたフリル付水着のメブトレと腕に浮きのついたイクトレといった面々がパラソルの下に集まると、クーラーボックスから出したアイスを食べ始める。…その可愛さに癒やされる空間が完成していた。
「甘い…」
思い思いに座り込み、6人並んでそれぞれの反応をしながら食べるちっちゃいもの倶楽部。不粋にも邪魔する人はいなかった。
「ふぅ…美味しかった。」
「…あ、皆でビーチバレーでもしませんか?折角揃っていますし…」
「俺はいいと思う!」
「それならいいか…あ、イクトレさんは…審判役を頼んでいいですか」
「👍」
「それなら、早速始めましょうか!」
…身長の低いちっちゃいもの倶楽部でのバレーは、代わりにジャンプが増えてぴょんぴょん飛び跳ねるゲームになった。
周りの目も生暖かいものから、なんかアレな反応までしてたりと中々影響を与えてるちっトレ達だった。
短文失礼しました
ちっトレ達の夏休みということでビーチでの一幕。水着はとりあえずそれぞれで合いそうなのを適当にチョイスしてみました。
ビーチバレーといえば高身長かつ巨乳組なイメージですが、今回はあえて逆行。低身長を補うためにめっちゃ跳ねてそうです。
≫93二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 21:21:48
「ごめんくださーい」
「あ、不タキさんいらっしゃいませ。養タキさんから話は聞いていますよ」
「今日はよろしくお願いします」
「全身揉みほぐしですよね?」
「それでお願いします。一回行ってみたらと勧められたので」
「じゃあ、あっちで着替えてきてください」
〜⏰〜
「タオル一枚だとスースーしますね。下着がないのも少し落ち着かないです」
「(なんで口に出したの…?)じ、じゃあそこにうつ伏せでおねがいしまっす」
「はい。よいしょ」
「じゃあオイル塗り込んでいきますね」
「ひゃうっ…意外とぬるぬるしてるんですね」
「そっそうですね…」(やばい……タバコさんとは違った方でえっちだ…)
「馴染むと気持ちいですね、これ」
「で、ですね。それじゃあほぐしていきますね」
「はい、おねがうします」
「まず背中の方から行きますね」
ビキッ
「…あの、折れましたか?」
「いえ、そんな痛みはしませんが?」
「つ、続けますね」
バキバキバキッポキビキッッッ
「ッスー……大丈夫ですかね?」
「大丈夫ですよ。できればもう少しお願いしますね」
その後、チヨトレマッサージ店からは人から鳴ってはいけない音が響いていたという
うまぴょいうまぴょい
≫125二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:49:22夢の中で夢を叶えてくスタイル
「……うん。なんっじゃこりゃあ。」
眼前に広がる光景と取り巻く環境を踏まえ、そう雑に言葉を吐き捨てる。
まあ状況を整理しよう。まず辺り一面まっさら雪原。そこにポツンと置かれた机と椅子二脚。
そして現在スヤスヤしてる、SSサイズで尚だぼだぼ気味なスーツを袖まくってまで無理につけてる超小柄な男性。はい、こうなる前の俺だね。いやなんで???
「んぁあ…………どこだここ……」
とか考えてたら起きた。どう考えても夢なこの状況で起きたって表現が正しいかは怪しいが起きたもんは起きた。
「おはよー過去のわたし。」
「おうおはよ……いや誰だよ!?」
「だからわたし……あ、そうか。姉ムーブ習得したのこうなった後だから分かるはずなかったわすまんすまん。俺だよ俺、未来の俺。」
「そんなオレオレ詐欺されても流石に種族から違うのは無理ねえ?アイムヒューマンぞ??」
「ところがどっこい無理じゃないんだよなぁこれが。長くなっけどとりあえずウマ娘化現象っていうのが数年前からあってな……」
「あ、それかぁ!!」
「あれ、知ってんの??」
「まあ俺の認識だと今はフウの皐月賞終わった直後くらいだかんな。」
「OK理解した、俺は巻き込まれてないがトレセンの常識にはなって久しい頃ね。」
ついでに付け加えるならおそらく春のファン感謝祭がウマ娘化トレーナーたちのアレコレで大盛り上がりした頃合。……随分とまあ微妙な時期をセレクトしたもんで。
「ともかく俺は未来のお前なのだ、過去の俺。」
「言うてビフォーアフターがすぎて疑いが抜けきらんぞ、未来の俺。」
「マクトレよりはマシじゃね?」
「それはそう。」
「まあ納得してもらったところでなんか質問ある?何でもとは言わんが未来改変とか起こらん範囲で答えるぞ。」
「んまぁ色々あるな、大事は起こってないかとか耳飾りとか。でも1つ目はこれしかないだろ……そのスーツ、サイズは?」
「……スリー、エックス、エル。」
過去のフウトレは────狂喜乱舞した。
甘やかされ癖の存在を聞かされ絶望のどん底に叩き落とされる、5分前の事であった。
≫135取材記録_対象:僕(ウマ娘)22/05/21(土) 05:35:28
──では、改めて……簡単に自己紹介を。
「ええ。僕はバクトレ、サクラバクシンオー担当トレーナーとして、現在中央トレセンに籍を置いています」
──ありがとうございます。早速ですが、今のお姿になった経緯をご説明願えますか。
「わかりました……と言っても、さほどお話出来ることはないのですよ」
──と、言うと?
「ある日、トレーナー室で徹夜で仕事をして……そのまま居眠りをして。そして目が覚めたら」
──体が縮んでいた。
「(笑)」
──(笑)。と、まあ。お決まりの文句はさておき……それでは、本当にそういった経緯で?
「はい。目覚めたらこの──ウマ娘の姿でしたね。すぐに手元のウマホで担当に連絡をしましたよ」
──成程。やはり、驚かれたでしょう。
「勿論です。結局、彼女がやって来て……説明を終えるまで、焦りっぱなしでした」
──その時も、両目は今のように?
「ええ。今のように、閉じたまま対応しましたよ」
──率直に、今のお気持ちを……ウマ娘になった感想を、お聞かせください。
「そうですね……悪くないな、と。勿論、突然女性の体になった訳ですから、大変なことも多くあります。ですが……」
──悪いことばかりでもない、と。
「仰る通り。トレーニングでも、プライベートでも。より担当に近い目線で情報を得られるのは、非常に大きな利点です」
──成程。では最後に、これからウマ娘になる過去の貴方──即ち、"僕"へ。何かメッセージを頂けますか。
「……では、──」
『……それで? あなたは、過去のあなた自身へ、どんな言葉を贈ったのかしら』
「なんということはありません。ただ、」
『ただ?』
「──"春の来ない木はない"と。それだけですよ」
『……そう。あなたらしい、回りくどい励ましね』
「ははは。ええ、その通り」
(了)
≫142二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 08:57:56
ぽわぽわ、ぐるぐる、うとうと、もやもや。
そんな色々が渦巻いて、二人は出会う。本来的会ってはならないのに。
「……やっほー、過去の私」
「……えー、と?」
「んー、その。私は貴方。なんとなくわかるかな?」
「さあ、どうだろう。僕にはなんとなくわからないかも」
「そっかー……まあ、仕方ないよね……」
そう言いながら、彼女は頬を掻く。
白と濃い茶色の流星が揺れ、優しげな笑みが若干曇る。
それを見て、僕は質問をする。
「……一応、聞こう。仮に君が本当に未来の僕だとしたら、ルドルフはどうなっている?」
「んー……大丈夫。ルドルフは弱いけど、強いから。君がちゃんと信じてあげれば、信じ続ければ、大丈夫だよ?」
「……そうか。多分、そうなるんだろう」
「うん、それでいいと思う」
彼女の耳が、尻尾が喜びを示すそれとなる。
可愛らしさと美しさが混じった独特の雰囲気は妖艶……なのだろうか?いまいちそういうものに疎くて、全くわからないけど。
「……それにしても」
「ん?」
「"私"って案外整った顔してたんだね」
突然彼女は近づいて、こちらの頬を挟み、顔を近づけてこちらの顔を見てくる。
彼女の綺麗な瞳と、薄く香水の匂いが鼻腔に届く。
そこで、こう返す。
143二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 08:58:30
「君の顔も整ってる」
「……んえ?」
彼女の頬が赤く染まり、耳が項垂れる。
「……えっと、その。私には、好きな人がいて……」
「そういう意味ではなくて。未来の自分に惚れる、フィクションでも危ういが、割とありそうな話だけれど」
「……あ、うん。まあ、ね。私が言えることは、その……ルドルフを信じてあげて、ね?ずっと、側にいれば、わかってくれるから」
「大丈夫。そこは、僕も君も理解している筈だから」
そう返すと、彼女は満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「だよね!良かったぁ……」
「……ああ、やはり、君は未来の僕なんだろう。ところで、一つ気になっていたことがある」
「……なぁに?」
「なぜ、ウマ娘に?」
「……女の子には秘密があるもの、でしょ?」
「それは、答えではないのでは……」
そう溢すと、空間が歪む。ふわり、ぐるり。
どうやら、目覚めの時らしい。
────そういえば、テイトレが入院していて、今日戻ってくるとのことだったか。
そう、なんとなく"彼ら"の事情を理解しながら、覚醒へと近づくのだった。
────目が覚める。自室のベッドで重い目を擦る。
なにか変な夢を見ていたような気がするが、思い出そうとしてもこちらを見つめるウマ娘が思い浮かぶだけだった。
「……よし。今日も頑張ろう」
そう起きると、どこかで担当の名前を呼ぶ筋肉質"だった"声が聞こえた気がした。
≫157二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 13:45:58
過去の自分との会合
「ふむ……『夢の中で過去の自分と相対せよ』でしたでしょうか~」
微睡む意識の中で何やら声が聞こえた気がして目を覚ましてみれば、謎の黒い空間の中に立っていた。
とはいえ三女神の急な無茶振りは今に始まった事でも無く、いい加減慣れてきたものだ。
だが……目の前の過去の己はそうはいかないだろう。
「えっと、此処は何処だろう……それに貴女は?」
「此処は夢の中ですよ~……そして私は貴方、未来の貴方自身ですよ~」
「…………なんて?」
「まあ、そうなりますよね~」
「……え~っと、詳しく教えて貰える?」
「ではでは~、詳しく説明させて貰いますと~『かくかくしかじかうまぴょいうまぴょい』……という訳ですよ~」
「……そ、そんな事が」
ふむ、やはり話を聞いた過去の自分は中々に驚愕している様で。
まあ……色々有りましたからね……本当に。
158二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 13:46:11
「えっと……色々聞きたい事はまだまだ有るけど、一つだけ聞かせて欲しい」
「はい、なんでしょうか~」
「未来でもグラスは俺の横で楽しく走れてる?」
「うん、変らず俺の横で笑顔を見せてくれているよ」
「そうか……変わらずグラスは笑顔で走っているんだね」
「ええ、ええ、いつも通り可愛らしい笑顔ですよ~」
「うん、グラスの笑顔は何よりも勝るからね」
「「…………」」
「……過去の自分とは言え、グラスを親しそうに語られると気に食わないですね~」
「は? 俺からしたら知らない奴が親しそうにグラスを語ってるに等しいんだが?」
「「…………」」
「……やるか?」
「ああ、やってやる」
「「…………」」
「「グラスは俺のものだァァァ!!!!!」」
……槍と薙刀のぶつかり合う自分自身との戦いは暫く続いたそうな。
うまぴょいうまぴょい
≫170二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 15:39:50
「ここは…夢の中…かな?」
ニシトレは眠りについたはずだったが、気がつくと知らない場所にいる事に気がつく。どこか分からず周囲を見渡すと少し奥には人影が見える。近づいてみるとその人影は過去の自分だった。ニシトレはそれに気がつくと声をかける。
「おーい、君」
「…君は?」
「えっと…急に言われて信じられないだろうけど…未来の君なんだ」
「未来の…俺?どういうことだい?それに君はウマ娘じゃないか」
「うーん…どこから説明すればいいかな…」
話しかけたのはいいが、自分がニシトレの未来の姿だと証明するのに手間取った。長い時間をかけてようやく信じてくれた。
「まさか…俺が将来的にウマ娘になるとは…」
「やっぱり驚くよね。」
「まあね、いきなり体の特徴が変わる事を知れば驚くよ…それにしても…」
過去のニシトレは現在のニシトレを見上げた。
「結構背が伸びたんだね。高い所の物を取ったりする時便利そうだなあ」
「身長か…たしかにウマ娘になった時伸びたけど、いい事ばかりじゃないよ?体の大きさ把握できなくて体をぶつける事がすごい増えたし、これが結構痛くて…」
「背が高くなっても苦労するんだ…」
171二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 15:40:15
この後も二人はお互いに話し続けたが、ある程度会話すると過去のニシトレが一つ質問した。
「あのさ、未来の俺に聞くんだけど、ニシノってどうしてるの?やっぱり担当として気になるんだ」
「ニシノのこと?大丈夫、怪我もなくしっかりトレーニングもレースもしてるよ。しっかり支えてるから安心して」
「そっか…それならよかった…未来の俺もちゃんと支えてあげられてるって事が分かって」
過去のニシトレは安堵した顔を見せた。
「未来の俺。これからもニシノを支え続けてあげてね」
「うん。頑張るよ」
そういうと意識が途切れ始め、そして夢から目を覚ました。
「…夢…かぁ…」
過去の自分と会話した夢の内容を思い返す。
「さて…今日も頑張ろうかな!」
やる気に溢れたニシトレはそう言いながらベッドから起きた。
≫176二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 16:58:31
『いいか。まず信頼できるウマ娘に合鍵を渡すんだ』
「何故そんな口説くような真似を」
『必要なんだ。それから備蓄は這ってでも手が届く場所に置け』
「なんだ? 何の災害が起きるんだ? 君は何を知っている?」
『タイムパラドックスを懸念し、最低限を話すが……』
I’m Your Future.
『私は君だ』
「!?」
〜⏰〜
「どうしましたトレーナーさん、おむつ交換しますか」
『まだお世話になってない筈では』
「そうですね。用意はしてありますが……夢見が悪かったのですか?」
『いや。少し過去を救いに』
「時速88マイルで爆走する予定があるなら、助手席は空けておいてくださいね」
『そうする』
イクトレは枕にしていた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のDVDケースをどかし、イクノの腕で二度寝するのであった
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part760【TSトレ】
≫9二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 18:14:00
☆自分にやっほー
夢の中で昔の自分に会うとか会わないとかいう話を聞いて「そこまで劇的な変化してないと思うんよねー」って言ったら周りのトレーナーさん達からサラウンドツッコミされました。ども、タイキトレです。
もちろんボケだよ? でも会ったらどんな話したいかってのは悩むところだよねー。タイキのトレーニング話について花咲かせてみるとか?
「……」
「……」
……うん、そんな風に悩んでる最中だったから本番来るのはもう少し待ってほしかったな。真っ白な空間に机と椅子二脚、既に座ってるのはどう見ても昔の自分じゃん?
「……あの」
しかも大学生の頃の自分。化粧っ気も胸もねぇ、無造作すぎる髪型にあるのは多少のたっぱばかりという性別不詳な頃の自分。そんな彼女はやぁやぁと手を上げたっきり掛ける声を失ってる自分を見て警戒し不審がってる様子。……まぁ当然か、正体不明のウマ娘とのご対面だもんね。不っ不っ不。わけわかんねぇだろ? 自分もわからん。
「……えと」
「…………どもっ!!! 娘ですっ!!!」
「マジ!!!???」
ゆえに。大ボケをかましていくこととする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そっかー……自分の子ってウマ娘になるんだぁ……!」
「ソウダネ」
「……なんかシュタ●っぽくない?」
「……ソウダネ」
結果、個人情報を小出しに開示してくことによって『未来からやってきた娘』という設定を無事(?)信じ込ませることに成功しました。……どうしよう、自分の話術が優秀なのかこの子が純真なアホなのか区別がつかん。
でも是非もないね。『貴女は数年後ウマ娘になるのよ』と比べれば荒唐無稽感はどっこいどっこい。現実は小説より奇なりって奴よ。うん、マジでどうなってんだ。
10二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 18:15:06
「そんなわけでユーアーマザー。オーケイ?」
「なんで英語? ……あ、もしかして、私の旦那になる人ってタイキシャトル関係?」
おどけて出しただけの英語に何か勘違いをしておられる。そしてごめん昔の自分、26時点では旦那の影も形もない。……ぐっ、口から出まかせのこの設定、意外と自傷ダメージがでかい。
「違う違う。てか自ぶ、じゃないや。母さんはタイキィ……さん、にはもう会ってるんだ?」
「うん。トレーナー資格を取ってすぐのトレセンで。でもあの子ものすごく押しが強くて……全然引っ張っていける気がしないの」
「……ほほう?」
「トレーナーなんだからリードしてこうって思うんだけど、振り回されてばっかで……こんな自分で、タイキを立派に勝たせてあげられるのかなって。ごめんね、娘に話すことじゃないんだろうけど」
はぁ、とため息を使う自分(昔)。タイキと会ってるとなると4回生、卒業前辺りかな?……しかし懐かしいねぇ自分。受動的で割と内向的。自分の在り方に悩んでる辺りに実に若者感を覚える。愛いのう愛いのう。……ここは一つ、先達(?)としてなんか言わにゃなるまい。
「……そのまんまでいいと思うよ」
「え?」
「母さんはアレだよ。あんま自発的に変われる人じゃないから」
「地味に言葉のナイフひどくない?」
「大事なのはどんぶらこっこと流された先で何ができるか、ってことよ。意識切り替えてこ」
「……たしかにそうだろうけど、でも貴女の言う通りならそうやって自発的に変わろうと思ってもなんともならないんじゃない?」
「 否が応でも変わるよ 」
今日一実感がこもった言葉が出てしまう。おかげで昔の自分が慄いておる。でもマジよ? タイキと3年過ごしてみ、考え方違いすぎて色々影響されたから。……あと、同僚や同期は大切にね。クセ強いけどめっちゃいい人らだから。クセ強いけど。
……白の空間に溶けるように自分達の身体が徐々に消えていく。どうやら夢の時間も終わりのようで。
「……母さんに最後に一個だけ」
「なに? あ、そういや名前聞いてなかったや」
「それはしっかり考えてつけて。…………お酒、飲む量を考えてね」
……悲しくなるから酒を飲むな、と言ってもよかったのにそれができない。うん、やっぱ自分、厳しくすんのは苦手だね。
(終)
11二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 18:15:52
☆おまけ
「今日はお立ち合いありがとうフクトレさん」
「……妙な夢の話は前座だよな? わざわざ俺をバーに呼んだってことは」
「うん。……過去への助言が今の自分に影響するかもしれない。そんなバタフライエフェクトを期待してるんよ」
「シュ●ゲか? でも変化期待するなら一切飲むなって言うべきだったんじゃないか」
「それ言わないで。……てなわけで久しぶりに、いただきます!!」クイッ
「……」
「……」
「……ん? もしかして、」
「まっずううううううぅぅ……!!」
「知ってた!」
「うぇぇぇぇえええん!! お酒が、おしゃけが美味しくないよおぉぉぉぉ!!」
「素面でからみ酒してくんじゃ、ねぇ!!」デコバチーン!
「あだぁぁぁぁ!!? いだいよぉぉぉぉぉぁぁあっはっはっはっは!!」ニコニコ
楽しく吞めたからよしとした。
うまぴょいうまぴょい
以上。タイキに影響受ける前だと性格は割とネイトレさんに近かったタイキトレ。出会ったウマ娘の違いですね(テキトー)
あと、だる絡み楽しい()
≫24二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 19:00:39
「…私達には使命がある」
はっと目が覚める。いつも通り自室で少し居眠りしてしまったのかと思いながら呼びに来てくれたファイトレ(女)に
「おはようトレーナー、今日は…午後からの公務以外は無かったよね」
「ふふっ、そうだね。折角の天気だし外に出ようか」
お城の庭、トレセンより広いこの城は当然庭も相応であり、ウマ娘が走り回るのに十分なサイズがあるほど。
「ここはずっと変わらないね」
「ん…そういうものだろうさ。」
「えへへ、そうやってキミに触られるとくすぐったいな」
「…ふふ」
庭の真ん中に辿り着いた二人は、雲ひとつない晴天を見上げながらふと一年前のことを思い出して話す。
「そういえば、今日で一年だよね…あの事故」
「ああ、私達が乗った車に車が突っ込んできた事故…幸いにして無事だったから良かったものの…」
「でも私、その日のことはよく覚えてないの…お医者様曰く軽い脳震盪が理由らしいけど…」
「仕方ないさ、何はともあれ怪我がなかったことが嬉しいんだ…ファインの体に傷なんて似合わないからな。」
…暖かい日だまりの中では、すぐに睡魔が襲ってくる。彼女がぱちぱちとしているとファイトレ(女)は気をきかせて
「む、眠たいな…大丈夫、部屋まで連れて行くよ」
「ありがとう、キミは…いつも優しいね…」
持ち上げられてゆっくりと狭まる視界、左手で支えられた首元と右手で支えられた体温のような熱が心地良かった…
────────
「…は」
(なんだったんだろうあれは、夢、だろうか…)
「やあ、起きたかね」
いつの間にか覗き込んでくる顔が二つ、あのタキオンと養タキトレの二人が、文字通り研究者らしい目をしていた
「忘れたの?俺が渡したタキオン謹製の薬を飲み干してから眠っていたんだよ。…悪夢を見る副作用つきの。」
「ああ…思い出した、そうだったな。となると、アレは悪夢なのか…?」
「ふぅん?不思議だねぇ…途中でうわ言のように担当の名前を呼んでいたのだから、さぞかしキツイものだと思っていたのだが…」
「え?」
『私達には使命がある』…ファイトレ(女)のその言葉だけが妙にくっきりと覚えていた。まるで何度も聞かされていたかのように…
≫35パルトレSS22/05/21(土) 20:13:37
遂にこの日がやってきた。私の担当であるシーキングザパールのメイクデビューの日だ。小倉レース場に集まった観客の歓声を背に、最後の打ち合わせをする。
「にしても、本当に今日まで基礎トレーニングだけとはね」
「あら、基礎は大事よ。」
このデビュー戦まで彼女には基礎のトレーニングのみをやらせた。土台がしっかりしてなければ、応用や経験は積みあがらない。それに――――
「デビュー戦のレベルなら、貴女は小細工なんかなくても十分勝てる」
最初こそは奇抜な行動をとる変わったウマ娘との認識だったが、暫く指導して分かったことがある。
パールは私が受け持った時点である程度完成していた。大まかな走りの形は出来ていたし、元々高いポテンシャルがあるから能力も高い。レースを初めて走るウマ娘が集まるデビュー戦で負ける要素はまずない。実践向けのトレーニングや戦略は後からでも十分間に合うだろう。
そしてもう一つ。パールには精神的な余裕もある。通常この時期のウマ娘は精神面で成熟してない面があり、自分のことで精一杯なことも少なくない。が、彼女は違う。他人の感情の機微を感じ取り、それに見合ったフォローを入れることができるぐらいには落ち着いているのだ。これはレースについても同様で、冷静な分析と判断が可能だろう。
「それだけ買ってもらえてるのはうれしいわね」
「調子に乗って気を抜かないように」
「分かってるわ」
パールはそういうとターフに駆けていった。彼女にはああ言ったが、不安がないわけではない。レースでは想定外の事象も起こりうる。だが、ここで躓いているようでは、世界レベルなんて夢のまた夢だ。
「信じるしかないか」
私の努力と、彼女の力を。
36パルトレSS22/05/21(土) 20:15:03
日本から遠く離れた、イングランドのサフォーク州ニューマーケット。世界最大のウマ娘レースの町とされるこの町の郊外に、広大な敷地を持つ屋敷がある。ウマ娘レースに携わる者にとって名の知られた、とある一族の本家である。その屋敷の一角にある執務室に二人の人物がいた。
「あなた、■■■■が初勝利したそうよ」
「そうか…」
片方は柔和な笑みを浮かべた東洋人の女であり、もう片方は長身痩躯の厳格そうな男である。両者の手元にある端末には、極東の日本にてあるウマ娘が勝利したという記事が映し出されている。
「奴とて一族の者だ、その程度はこなしてくれねば話にならん」
端末の電源を切った男は、一言だけ述べると直ぐに眼前の業務に取り掛かる。が、通常は寡黙と評される男の表情にほんの少し笑みが浮かんだのを女は見逃さなかった。
(本当に口下手なんですから)
心の中でひとりごちた女は、画面の記事に目を落とす。その記事には、『シーキングザパール9馬身差圧勝!!■■■■家令嬢、まずは一勝!!』との見出しと、自信ありげな表情を浮かべたシーキングザパール担当トレーナーの画像があった。
≫60二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 23:07:02
「はぁ…」
朝日が差し込む寝室。男性だった時には感じなかったずっしりと肩に伝わる重み。女性特有の柔らかい肉付きの身体。それは産まれてからなかったはずのものだったのに、今となってはとても慣れ親しんだものに感じる。
「よしっ」
洗面台に並び、顔を洗い始める。鏡に映るのは紛れもない耳と尻尾。毎朝見ている筈なのに未だに違和感を覚えてしまう。手慣れた仕草で髪を整え、簡単な化粧を済ませていく。その動作一つでも、以前のような男らしさは無くなっていた。
「今日も一日頑張りますか」
午前の業務を終え、生徒会室を訪ねていた。そこには既にルドルフがいて、書類仕事をこなしていた。
いつものように扉を開けると、彼女はこちらを見てにっこりとした笑顔を見せた。
「お疲れ様、トレーナー君」
「うん、そっちもお疲れさま」
労いの言葉をかけつつ、彼女の隣の席に着く。
「早速だが、次のレースについて相談したいのだがいいかな?」
「ああ、構わないよ」
「次のレースなんだけれど……」
「そうだね……」
互いが互いに意見を出し合い、話し合いを進めていく。そんな風に会話をしていると、不意にルドルフが俺の尻尾に目を光らせた。
61二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 23:08:20
「トレーナー君、尻尾の手入れが疎かになってはいないかい?ほら、こことか毛並みが乱れてしまっているじゃないか」
ルドルフは俺の背後に回り、尻尾の付け根付近を優しく撫で上げる。
「ひゃう!?」
突然のことに驚いて、思わず変な声が出てしまう。慌てて口を塞ぐが、時すでに遅し。
「ふむ」
と言いながら彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「トレーナー君よければ私に尻尾のケアを任せてくれないだろうか?」
「え、いや、自分でやるから大丈夫だよ!」
「遠慮することはないさ、日頃のお礼も兼ねて、私が綺麗にしてあげよう。それに、私は担当ウマ娘だからね。何かあった時に頼ってくれても良いんだよ」
「いや、ほんとに……んぅ……っ」
ルドルフは有無を言わさず、俺の尻尾を優しく撫で始めた。その刺激に思わず身悶えてしまう。
「ふぁ…」
「どうだい、気持ち良いだろう?」
ルドルフの手にはブラシと尻尾用のオイルが握られていて、尻尾を撫でられるたびに、それが擦れる音が聞こえてくる。
「ふふ、本当に君は可愛いなぁ……」
耳元で囁かれる甘い言葉に頭がくらくらしてくる。耳の内側を舐め上げられ、背筋に電流が走るような感覚に襲われる。
「ふぁ……ん……ぁ……」
ルドルフの手が背中に回されて、ぎゅっと抱きしめられる。そのままの状態で尻尾にブラシをかけられたり、マッサージされたりすると、意識が飛びそうになるくらい気持ち良くなってしまう。
「ま、待って……んっ……ちょっと、そこぉ……んんっ……」
「君の尻尾はこんなに綺麗になっているよ」
そう言って、彼女は尻尾の先端へと手を伸ばした。敏感な部分を指先で弄ばれ、身体中に快感が駆け巡る。
「ああっ…ん…」
全身から力が抜けていき、その場にへたれ込んでしまう。その拍子にルドルフを押し倒してしまう形になってしまう。彼女の上に覆い被さるような体勢になり、荒くなった呼吸を整える。
「すまない、少しやり過ぎてしまったようだ」
ルドルフが謝ってくるが、今の俺はそれどころではなかった。身体中を甘い痺れに支配され、力が入らない。ルドルフの顔がすぐ目の前にあるせいで、ドキドキしてしまう。
「だ、大丈夫……だから……」
「そうか、なら良かった」
彼女は安心したように微笑むと、俺を抱き寄せてきた。そして、頭をゆっくりと撫でてくれる。その心地良さに、思わず表情が緩んでしまう。
62二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 23:08:59
「ふふっ、この姿の君は本当に可愛らしいね」
「か、かわいくなんてない……」
「そんなことは無い。私の目にはどんなものよりも君が一番魅力的に見えるよ」
彼女に真っ直ぐに想いをぶつけられる度に、顔が熱くなっていくのを感じる。お腹の奥底がじんわりと熱を帯びていた。男の身体だった時には感じることがなかった感覚。それを自覚してしまった瞬間、更に恥ずかしくなってきてしまう。
「そんな顔をされると、抑えが効かなくなってしまうよ?」
そう言いながら、ルドルフは俺の頬に口づけをする。それだけでは飽き足らず、首筋にも唇を這わせていく。ゾクッとした感覚が身体中を走り抜ける。
彼女はそのまま、俺の唇を奪う。何度も繰り返されるキスの嵐に身体中の力を奪われ、抵抗することも出来ずにされるがままになっていた。
結局、ルドルフが満足するまで離して貰えず、お昼休みが終わる頃にはその身体はすっかり骨抜きにされてしまった…
≫69二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 23:18:01
●ネイチャさんはまだまだ子供って話
「『担当にキスマークを首元に付けてもらわないと出られない部屋』……久しぶりだね。こんな部屋」
「えとトレーナーさん。これってリップないと無理じゃないですか……?」
「…………ほ、ほう? 確かに?」
「今って口紅持ってますか」
「ごめんネイチャ。バッグの中はともかく手ぶらだったから……」
「トレーナーさん自身が今つけているわけでも……」
「ないねぇ。ただのリップクリームだし、つけてから長いから唇の跡はつかないかも」
「……え? もしかしてこれ、詰んだ?」
「あのねネイチャ。キスマークって「いや!思いついたかも!」」
「……はい。かしこいネイチャさんどうぞ」
「今からアタシが舌を噛んで血を出す! それを使ってキスマークを残す! どう!?」
「解決法が猟奇的すぎる!」
「うにゃあああ! でももう他に方法が思いつかない……!!」
「それでも血染めのキスマークはやめよう……?」
――……あのねネイチャ、キスマークには大きく二種類あって……
――……ふぇっ!!? いや、でもそれってつまり……?
――だから……こうして…………
――あ、や、え…………
数分後、顔を赤くしたネイチャペアが二人とも首元を抑えて無事出てきましたとさ。
うまぴょいうまぴょい
以上。吸引性皮下出血の事をさして「キスマーク」と呼ぶことを皆さんはいつ知りましたか?(恥)
≫80キスデレステークス22/05/22(日) 00:21:38
(スイトレ・スイーピー)
「は~い、口紅ぬりぬりしようね~」
「ふふん、魔女の……ちゅ、ちゅーをしてあげるわ!」
「もう一生首洗えないねぇ(わあ~ありがと~)」
(オペトレ・オペラオー)
「おお、トレーナー君! その首筋にボクの接吻を受けるがいい!」
「いや待ちなさい口紅くらい化粧入れに入ってあっちょっやめっ」
「聞けないね!!」
「あぁあああ……」
(イクトレ・イクノ)
「(無言で指を噛む)」
「いけませんトレーナーさん。小児の怪我は痕に残りやすいです」
「いくの……」
「ここは売店で買ったホットスナックについていたケチャップで代用しま……チリソースでしたね。では」
「いくの!?!?」
(ヘリトレ・ヘリサブ・ヘリオス)
「ほーれ、存分にやっていいぞヘリオス」
「うぇーいトレぴっぴちゅっちゅしよっ!!」
「ひゃああああああっ!?」
(ダストレ・ダスカ)
「出れたわね」
「(無言で首全体を隠すダストレ)」
≫87【救出/求む】22/05/22(日) 00:35:51
「っく、ふぁ~あ…開いたか…?」
「いや?まだね」
「マジかよ、もうちょいしっかり働けよなぁ部屋外の連中も」
「そうね、でも待ってたら開くんでしょう?」
「そいつは確信して良いだろ、ふぁ~あ…開いたら起こしてくれ…」
「分かったわ」
(すぅ……すぅ……)
(ぺらっ…………ぺらっ…………)
≫89トップロードの災難22/05/22(日) 00:47:44
「『キスマークをつけないと出られない部屋』ですか」
「みたいですね…トレーナーさん、なんでそんなに落ち着いていられるんですか?」
「いえ。キスマークと言っても口紅で付ける方と皮膚の下の出血の方のキスマークのふたつがありまして。どちらなのかなぁと」
「キスマークを付けることには突っ込まないんですね…」
「トップさんはまだ学生ですし、世間体もまずいでしょう。ではお願いします」首筋バッ
「……??」
「あ、私ではやりにくかったですか?チェムさんに変わった方がいいですかね?」
「いや…その…そうじゃなくて、首筋が…あの…」
「暫くはスカーフでも巻けばいいでしょう。もうすぐ蚊の出てくる季節ですからバレる事はないと思います」
「そうじゃなくてですね…首筋が…その…とても……えっちで…」
「好きなようにやっちゃってください」
「あ、で、では…失礼…しますね……」
トップロードは────耐えた
その後顔を真っ赤にして出てくるトップロードと、そんな彼女を心配しておでこ同士をあてて体温を図るトプトレがいたとかいないとか
≫92二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 01:55:21
「はて~、また何かお題をこなさなければいけない部屋みたいですね~」
「何度目でしょうかね~」
気が付けば謎の部屋に俺とグラスは寝かされていた。
もう何度目かになる〇〇しないと出られない部屋だろう。
「取り合えず、開いていないかの確認は致しましょうか~」
「今まで開いていた事は無いですけどね……」
「まあまあ、確認は大事で……あら?」
「どうされたんですかトレーナーさん?」
「……開いていますね~」
「ええっ、どうして?」
「分かりませんね~、お題を見れば理由が分かるでしょうか~?」
「お題でしたら机の上に有りましたよ」
「ふむ、見てみましょうか~」
「えっと、お題は……『担当にキスマークを首元に付けてもらわないと出られない』……との事ですね」
「…………」
「…………」
「そういえばグラスに付けられていましたね~」
「あぅぅ……」
「まあまあ、グラスのお陰で直ぐに出られましたよ~」
「ううっ……恥ずかしいです……」
グラトレ・グラス ペア
突破時間0秒(最初から付いていた)
≫105二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 10:54:28
ある朝のこと。
「ふわぁぁ……んー?」
起きたらなんか凄い体が重い。下を向いてみると胸が妙に膨らんでいた。
「おぉー…」
触ってみるととても柔らかい。重い体を起こし洗面所に行くと──
鏡にはウマ娘になったらしい自分が立っていた。
「おはよーパーマー。うぇーい」
「おはよう!ウェー…え?誰?」
「君のトレーナーだよー。ほら、トレーナー証ー」
「うぇええ!?ウマ娘化ってやつ!?大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫ー。運転も出来るみたいだしー」
「ならよかったけど……あんまり驚いたりしてないね」
「驚いてはいるんだけどねー……口調がどうやってもこんな感じになるみたいでー。表情もあんまり変わらないんだー」
「うーん大変だね……そういえば服とかは?」
「ほとんど入る服がなくてねー。何着かあって助かったよー。」
「下着とかは…もしかしてつけてない?」
「上はないねー。まあ仕事帰りに買ってくるから心配しないでー」
「いやいやそんな体で一日中はまずいって!買いに行こうよトレーナー!」
「でもパーマーの邪魔する訳にはー」
「今日ウマ娘になったばかりなのに無理しなくていいって!とりあえず着られるシャツとか必要だよね!」
「パーマーがそうしたいならー…」
「うん!私が車出すからすぐ行こっか!」
「……ありがとー、パーマー」
「いつも支えて貰ってるからこれくらいはね!明日からまた頑張ろう!」
「おー」
≫124二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 12:30:36
『Uの病人/命は一つだけ』
「暇……暇だわ……結局精密検査だなんだってしばらく病院に磔になってしまうだなんて……」
(仕方ないですよ、ウマ娘になってしまったのですから……いや、私もよくわかってないんですけども)
「それにしたってねぇ……もう健康体そのものなのよ?特に体が痛いとかもないし、傷がついてるわけでもないし」
一人だけで四人用の入院部屋をゆったりと使う、鹿毛のウマ娘が独り言を呟いている。彼女はアドマイヤベガ担当トレーナー。つい数日前に生死の境をさまよった結果、なぜかウマ娘になってしまった元女性である。
「あーダメ。暇でしょうがないから散歩でもしようかしら」
(そうですね、多少の運動ならきっと大丈夫ですよベガトレさん)
「とりあえず自販機あたりにでも向かってみようかしらねー。アル、何か飲みたいものある?」
(あ、じゃあ……栄養ドリンクってのを飲んでみたいですね)
頭の中でベガトレと会話するのはアルタイル、通称アル。元よりベガトレの頭の中に存在していた、アドマイヤベガの双子の妹の魂である。ベガトレがウマ娘になったのと同時に、表層へと意識が現れるようになった。
「……意識が表に出て真っ先に飲むもんじゃないわよあれ」
自分の意志で初めて飲む物が栄養ドリンクでいいのか、とベガトレは少々苦笑いする。だが、アルの興味は尽きぬようで、わくわくとした口調で話し続ける。
(でも気になるものは気になるんです!たまに飲んでるの見て、わたしもちょっと味わってみたいと思っていましたので!)
「わかったわよー。そのあたりは自由だからね」
ああ、そういえばそういう時期も子供のころにあったなとベガトレは昔を思い出しながら、自販機のところへと向かった。
がこん、と自販機から栄養ドリンクの瓶が出てくる。取り出したそれはひんやりと冷たく、夏の時期にはありがたい気分になる。
「……よし、これであとは入れ替われば普通に味わえ……いや、入れ替わらなくてもいいのかしらこれ?」
(病院食の時は特に入れ替わらずとも味わえたので……でもせっかく入れ替わってもらえるなら入れ替わってもよいでしょうか?)
「ん。じゃあそうするわよー」
そうして髪の毛を撫でつけ、入れ替わろうとした時。後ろからプラチナブロンドの髪色の女性が、ベガトレへと話しかける。
「おや……? 貴女はベガトレさんですか?」
125二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 12:30:48
「ん? その声は……ウラトレ? 久しぶりー」
ウラトレ、と呼ばれたのはハルウララ担当トレーナー。その辣腕にてダートのみならず、芝の重賞でもハルウララを活躍させ、共に一躍時の人となったトレーナーである。
「……貴女もウマ娘になった……にしては、見た目に関してはほぼ変わりませんね」
「会う人会う人そう言うのよねぇ……一応立派な耳と尻尾が生えたのよ?」
訝しむようにも、単純に気になるようにも見えるような仕草で、ベガトレの体を見つめるウラトレ。
「それを差し引いたとしても、目がなぜか隠れている程度の髪型の変化と少々ばかり体つきが変わった程度にしか変わっていないようですから。……そういうこともあるんですね」
「んー、んー……私も詳しいわけじゃあないっていうか、つい数日前に当事者になったみたいなもんなんで全然知らないほうなんだけどね?私はなんかいろいろと特殊らしいのよ」
「そもそもウマ娘になるという現象そのものが特殊極まる、と言いたいのですが?」
顎に手を当ててうなるように喋るベガトレに対して、少々頭を抱えながらウラトレは口を挟んだ。
「そりゃそうだわ……ま、こんなところで立ち話もなんだし、ちょっとお茶会でもしましょ」
二人は休憩スペースへ向かい、ベガトレはこれまでの経緯、事故、そしてウマ娘になったこと、アルの存在についてザックリと説明した。
もともとそこまで説明が上手というわけではないベガトレだが、それなりに長い付き合いであるウラトレにはすんなりと理解できたようだ。しかしそもそもが異常現象のそれなので、納得半分不服半分といった面持ちで話を聞き続けていた。
「……ま、そんなこんなで、今はもともと頭の中にいたアルタイル……アルが表に出るようになったというわけで」
やはり、頭を抱えたような姿勢になったウラトレ。しかし、話を聞きながら思うことがあったのか、口を開く。
「……そうですね、諸々の不可思議現象に関してはもう目を瞑らざるを得ませんが、取り合えず一言言わせてもらいます」
これだけは伝えなければならない、そういった空気を感じ取ったベガトレは自然と姿勢を正す。以前も何度か“お説教”を受けたことがあるのだが、今回もそれだと判断したのだろう。
ウラトレは、真直ぐにベガトレを見据えて言い放つ。
「……無謀極まる行動を勢い任せに行ってしまうのは貴女の悪癖です」
126二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 12:31:02
「……返す言葉もないわ」
ベガトレは、静かにそれを受け入れた。
「貴女のやりたかったこと、そして行った行動全てが間違いとは言いません。目の前で失われそうになる幼い命があったとして、それを助けるための手段があれば確かに私も咄嗟に動くかもしれません。けれど、貴女は一人の人間であるとともに、一人の子供の人生を背負って生きているトレーナーでもあるのです」
淡々と、しかし優しさと厳しさを織り交ぜた口調で、ベガトレを諭すウラトレ。
「……そうね」
「貴女が突然命を落としたとして、貴女の友人たちはどう思うでしょうか。……当然悲しむでしょう。そして、それ以上にアドマイヤベガさんはどう思うでしょうか」
その中に、自身も含まれている。言外に伝えながらも、ウラトレは言葉を緩めない。
「……」
「命は誰しもただ一つだけです。今回は星の導きだとしても、次はないのです。それを今一度思い返してください」
言い終わると、ウラトレは少し息を吐く。
「ごめんなさいね、最早これは私の癖と言っても良いものです。どうにも、説教臭くなってしまいますね」
申し訳なさそうな表情をするウラトレに対して、ベガトレは静かに笑顔を返す。んなもんもう気にしてないわよ、といった表情で、感謝を伝え始める。
「……あんがとね。ウラトレくらいしかバシッと説教してくれるのいないからねぇ。勿論もう命をぶん投げるような真似はしないわよ?これ以上ベガを泣かせるわけにもいかないわ」
病院のベッドで目が覚めた時、そしてベガが病室に飛び込んできた時。
大粒の涙を零しながら、自身に縋り付いてきたベガの表情を見た時。
この子に悲しみをまた与えてしまったという罪悪感と共に、またともに生きていける喜びを感じた時。
もう二度と、命を粗末にすることはしないと誓ったのだ。
「ベガトレさん……」
「それに死んだらもうネイトレにちょっかい出せないし!」
そうして、重くなってきたので意図的に台無しにする。悲しい空気はこれでおしまい、ここからは友達との楽しいお茶会なのだ。
「アドマイヤベガ担当」
ウラトレの表情が、一気にひきつったような笑顔へと変わる。
「冗談だって、冗談だって!」
「……ふふっ。まあ本当にほどほどにしてくださいね、いい大人なんですから」
口元に手をあて、静かに笑うウラトレに、ベガトレも釣られて笑う。
やはり笑顔はいいものなのだ。
127二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 12:31:15
「あ、そうそう……その入れ替わりというものを見せてください」
「ん?あーいいわよー……──はい、初めまして……で、良いんでしょうか?わたしはアルタイルです」
先程はできなかった入れ替わりを、ウラトレの目の前で行う。表に出している瞳を黄色から桃色へと変え、表に出る意識をスイッチさせる。こうして、今まさにそこにいた自分が奥へと引っ込み、舞台には奥に控えていたもう一人が現れる。
「初めまして、アルさん。……一応これ、意識は常に共有しているという認識でいいのでしょうか?」
ウラトレが疑問に思ったことを、率直にぶつける。聞いておいて、話す言葉を決めるという打算も兼ねているが。
「そうですね、起きている間は常にどちらも覚醒している感覚で合ってます。どちらかだけが寝ている、というのは殆どありませんね」
「そうですか。なら特に気にする必要もありませんね……ベガトレさんと、仲良くしてくださいね」
静かに、そして優しく微笑みながら。ウラトレは初めて会う、魂の存在に友人を託した。
「……はい!」
その言葉に、アルは満面の笑みを返した。
「ところで、ウラトレさん……おすすめの飲み物ってありますか?栄養ドリンクもおいしかったんですけど、ほかにもいろんなものを味わってみたいのです」
「そうですね、ここで買えるものだと……」
(飲みすぎには注意しなさいよアル……)
まだまだお茶会は続く。まだまだ人生も続く。
見た目がちょっと、中身もちょっと変わっても、友人付き合いは変わらない。
酸いも甘いも噛み分けて、トレーナー人生は続いていく。
≫134二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 13:26:21
◎まだまだ休憩スペースにて
「受け入れてもらった手前なんですが、やはり悪癖なのでしょうね……」
「ああ説教のこと? 大丈夫大丈夫、ちゃんと考えに考えて言ってくれてるんだろうなってのが言葉以外のとこからも伝わってきてるから」
「……ありがとう。身を削って口にした甲斐があります」
「そんなに? まあ誰か一人くらいやんなきゃってなると、実際損な役回りよねぇ。私ならんなお鉢が回ってきても、キッパリノーをしてからそっとよそに譲るわ」
そういいながらお鉢を勢いよく地面に叩きつけるジェスチャーをする彼女。陶器の砕ける音が聞こえてきそうです。
「ふふふ、貴女ならそうでしょうね。……でも『そん』な役回りが性に合う――望まれた天命なのだと思えばこそ、わたしも考えは改めねばなりません」
「……つまるところ?」
一息をついてからアルさんに勧めたのと同じ、アイスココアを飲んで続けます。
「『おいしい』……役得、というやつです」
「ちゃっかりしてるねぇウラトレ!」
「そうでも思わないとやってられません」
「でもなんだかんだ人に説教するのも嫌いじゃない? ……あ、目がきつい。元のウラトレ戻っておいでー? ほら、アルも怖がってるし?」
「アルさん引き合いに出すのは反則ですよ。むしろ『ベガトレさんが悪いです』と言ってるのでは?」
「なぜ分かっ! ……あ」
「……アドマイヤベガ担当?」
とある夏の日の昼下がり。こうやって言葉を交わせる日々のなんと贅沢なことでしょう。
……のちにタマトレ(小)さんにも厳しく言ったりしますがそれはまた別の話。
(終)
掛け合いに応える。それにしてもウラトレさんありがとうございます……!そうですよね、ベガトレさんならウラトレって呼び捨てにしてくれますよね!
昨日はログ追いかけ切れていませんでしたが、他にもネイトレさんウラトレさんの取扱いありがとうございます!腹を切ることなく健やかにどうぞ!
≫146二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 15:41:18
「首にキスマークをつけなきゃ出られない部屋……?」
「らしいね」
「……キスマークはいつもつけられてるからまだ大丈夫かな」
「それはよかった。日頃から着けてる甲斐があったよ」
「……いつも不意打ちでつけられて隠すの困ってるからあんまやらないでほしいんだけどなあ」
「ははは、こめん。着けられた時の貴方があまりにもかわいらしいものだから、つい抑えられなくなってしまって」
「ああ言えばこう言うんだから……とりあえず、早く着けて出ちゃおうか」
「誰にも邪魔されない二人きりの時間を手放すのは少し残念かな」
「そっちは僕の部屋ででもいくらでもできるでしょ、はい、お願い」
「……そういえば、だけど」
「?」
「首筋のへのキスへの意味、貴方は知ってる?」
「……独占欲、執着心、でしょ。フジが教えたんでしょ」
「あはは、そうだったけ?」
「そうだよ」
「……貴方にどれだけつければ、私からの欲を表しきれるかな」
「なら、さ」
「着けてよ、好きなだけ」
「その代わり、僕は隠さないからね?」
次の日、フジトレの周囲が一時ざわついたのは言うまでもない
≫164赤タボSS22/05/22(日) 18:31:59
ツインターボとの契約期間はある程度充実していた。お互いの相性も悪くはない。目立った成績はあげられていないものの、不思議と以前の様な焦りはない。彼女の終始明るく負けてもめげることのない気質が、少なからず俺の精神面に影響を与えているのだろうか。
「トレーナー…!」
そんなある日、神妙な面持ちのターボがやってきた。普段と違う様子に話を聞いてみる。なんでも、彼女が親しくしている友人が故障により引退すると仄めかしているという。ターボは何とか今度のオールカマーで勝つことで、諦めなければ軌跡が起きることを示し、友人の引退を思い止めたいのだ。
だが、今回ばかりは厳しいと言わざるをえない。今度のオールカマーはライスシャワーを始めGⅠクラスのウマ娘が複数出走を表明している。対してターボはGⅢを1勝したのみで、GⅠクラスでは良くて好走どまり。相手に勝てるような実力は持ち合わせていない。冷静に考えれば、彼女が勝つのはかなり難しい状況だ。
でも、今までこれ程にターボが勝ちへの執着を見せたことがあっただろうか。彼女が諦めずに挑もうとしているのに、俺は弱気になっている。違う、そうじゃないだろう。俺が、彼女のトレーナーとして出来ることはーーーーー
「ターボ。一回だけしか使えない秘策がある。その為にはターボにこれまで以上にきついトレーニングがいる。ついてこれるか?」
「うん!」
ターボはそれを聞いて力強く頷いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
目標としていたオールカマーの日。俺はこの日のために全力を尽くした。この1勝の為に、布石を打った。ターボもきついトレーニングに精一杯ついてきてくれた。
「言った通りにやるんだぞ」
「頑張る!!」
ミーティングが終わり、ターフを駆け出すターボ。遠ざかる彼女の背中には、いつもと違う気迫が宿っているように見えた。
165赤タボSS22/05/22(日) 18:32:37
『体勢が整いました!』
いつも通りターボが大逃げをうつ。後方を大きく突き放した状態でレースを進むこと暫し。1000メートルの通過タイムが表示される。
『通過タイムはーー59.5!?』
ざわつく会場。この通過タイムは平均から比較的早い程度のペースでしかない。にも関わらず、ツインターボから2番手まで10バ身。3番手までは更に10バ身以上の差がついている。
「かかった…!」
そう、これこそが俺の秘策。これには、前走のレースから仕掛けたブラフがあった。
オールカマーより前に、ターボは七夕賞に出走している。このレースでは彼女に全力で逃げてもらった。実際1000メートル通過は57.4のハイペースでターボは優勝した。ターボとしても破滅的な逃げで逃げ切ったのはベストパフォーマンスといえる。ここで負けては作戦が台無しになるので、可能な限り体力をつけるトレーニングをしたが、本人もよく頑張ってくれたとおもう。
何にせよ。オールカマーに出走する陣営はこう考える筈だ。『無理に深追いしてもこちらが潰れる。共倒れを防ぐ為に、ツインターボから距離をとれ』と。実際それは正しい。普通ターボのペースについていけば道連れになる。距離をとって、ターボがいつものように逆噴射した後に抜けば良い。が、それを行うためのペース判断には隙がある。レース中のウマ娘は自身の体感と互いの相対距離でペースを把握するしかない。つまり、逃げはレースにおいてペースのイニシアチブを握っている。
今回はその応用だ。このレースでターボには、いつもより抑えた速度で走ってもらっている。率にして70%ほどか。だからこそ、1000メートル通過タイムは控えめだった。これにより、レースが最終コーナーに差し掛かった段階で、確かな影響が現れる。ターボは何時もよりスタミナに余裕をもって挑むことができーーーーー
『これはーーーーー!!』
「もう遅い!!!」
コーナーを曲がり終える頃には、ターボと後方集団との間に致命的な差ができている!
166赤タボSS22/05/22(日) 18:33:08
最終直線をセーフティリードをつけながら走るターボ。肉体的には限界に近づいている筈だ。フォームは乱れ、息も絶え絶えな様子が分かる。でも、その目には微塵の諦観もなく。
「これが諦めないってことだ〜〜〜〜!!!!」
ただ、思いを示す為の奮起があった。
「……しれ」
握り締めた拳に力が籠もる。いつの間にか、観客席の最前列から身を乗り出していた。この時の俺は純粋にーーーーー彼女に勝ってほしいと思った。
「走れェ!!!!!ターボォォォォオ!!!!!」
あの日、俺を救い出してくれた蒼い光は、誰よりも早くゴール板の前を駆け抜けた。
『見事に決めたぞ!!逃亡者ツインターボ!!!』
「やった…トレーナー…」
若干ふらつきながらウィナーズサークルに戻ってきたターボ。倒れかかった彼女を抱きとめた。大粒の汗を顔全体に浮かべながらも、酷くやりきった表情を浮かべているターボ。それを見ていると、何故だろう…涙が溢れて止まらない。
「…よくできたな…ターボ…」
ああ、この娘を担当できて良かった。そう強く思った。