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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart41~45)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part41【TSトレ】
≫15TSセイトレ概念提唱者21/09/25(土) 21:32:04「トレーナーさん、そろそろ観念してくださーい」
「俺にも譲れないものがあるから…」
「外聞も気にしてくださーい。その格好不審者と思われちゃいますよー?」
スカイの言葉を聞き自分の服装を見返す。
20cm以上縮んだ背丈に合わせるように捲くった袖が固定されたスーツ。
ズボンもぶかぶかだからベルトで強引に留めているせいで悪目立ちしている。
不審者と言われると言葉に詰まってしまう、しまうが──
「だから着替え買いに行きましょう?」
「…女物はちょっと」
「今のトレーナーさんはウマ娘じゃん」
再び言葉に詰まる。
体に合う物と言う意味では服を新調すべきだろう。
だが俺の性自認は男のままだ。どうしても女物に抵抗はある。
「大丈夫ですって、トレーナーさんが興味のある服から試してみましょう」
「俺が興味のある服…」
女物で興味がある服、と聞いて部屋に用意してあるスカイの勝負服に目が行く。
幼い頃レースに憧れ、ウマ娘じゃないと走れないと泣いた事。
トレーナーとしてウマ娘を夢の舞台へ導ける事に気づき、トレセン学園を目指した事。
ふと、色々な事を思い出しいやいやと心中否定したとこでスカイが楽しそうに笑っている事に気づく。
TSセイトレ概念提唱者21/09/25(土) 21:32:13
「…へー、トレーナーさんは私の勝負服に興味あるんですか?」
「い、いや…そういう事じゃ」
「…今回だけですよー?もうトレーナーさんったらセイちゃん大好きなんだから」
そういうスカイも顔を赤くしている。抵抗があるなら止めた方が良いと思ったけど少し楽しみにしてる俺も居た。
とうに諦めていたが嘗て憧れた勝負服を着る事が出来る。しかも何より自慢の担当バの。
ちょっと不味い気もするが興奮している俺も居た。口元が緩まない様に手で覆う。
「はい、トレーナーさん」
「あ、ああ…スカイ、これどう着るんだ?」
「ホントに女物着たことなかったんですね。…ちょーっと恥ずかしいですけども教えてあげますよ」
何かとても間違った事をしている気分になりながらスカイの勝負服の着方をスカイに教わりながら着ていく。
何故かトレーナー室に常備されていた下着も付けるように言われ不承不承だが下着も付けてみる。
…なんだか勝負服への憧れでおかしくなっている気がしたがこうなっては憧れは止められない。
鏡に写る勝負服を纏った自分を見るとどういう訳か嬉しくなる。
つい軽く回って見ると後ろで見てたスカイと目が合った。
「エスコートしましょうか?」
「よろしく、私の愛バ?」
「っ!?」
ちょっと遊ばれてる気がしたが勝負服を着て舞い上がった俺は伸ばされた手を取って微笑んでみた。
スカイの赤くなった顔を見てちょっとからかい過ぎた気がしてくる。
「とにかく!抵抗も薄れましたよね。今度一緒にウマ娘用の服と、日用品も買いに行きましょう」
「考えとく…」
「ぶぶーっ、セイちゃんをからかったバツでーす。逃げられませんよ、トレーナーさーん」
≫56二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 21:49:30こっそりとロブトレの入浴SS上げます。
トレーナーさんに一通り着衣の指導(という名の着せ替え会)を終えた後、お互い汗をかいていました。
トレーナーさんがとても乗り気でやってくれたおかげで、私も思わず夢中になってしまいました。
まだウマ娘になって大変なのにここまでしてしまったことが申し訳なくなります。
「あ、あの、すみません、トレーナーさん、とても大変な時なのに着せ替えで夢中になってしまって……」
「ふふ、いいのですよ。私もとても楽しかったですからね」
そういいながら、汗でうっすらと下の肌が見えてくる。
ちょうど今着ている最後の服は生地が薄いためか、とても危険な状態です。
これは、早急にお風呂に入れなくては……
「あ、あの、トレーナーさん、汗かいちゃいましたし、お風呂、入りませんか?お風呂の洗い方もまだ分からないです、よね?」
「ええ、そうです、ね。お風呂に入りたいですが、洗い方もわからないですし……」
どうやらお風呂に入ることにも乗り気なようです。なら、ここは私が教えなくては……
「あ、あの、でしたら……」
「それなら、タイシントレーナーに教えてもらおうかな」
「え……」
その言葉に、止まってしまいます。
どうして、私が教えたいのに……。
とても優しいトレーナーさんのお役に立てるかもしれないのに……。
普段の私なら、そのまま頷いてしまいそうでしたが、なぜかトレーナーさんのことだともう一歩、踏み出していました。
「い、いえ、タイシンさんのトレーナーさんも忙しいかもしれませんし、私が教えますよ」
「ロブロイ、とてもうれしいけど、今回は遠慮しておくよ」
「な、何故ですか、その、私では、やはり、いや、なのでしょうか……」
≫57二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 21:50:05≫56
もしかしたら、嫌われてしまったのでは、やっぱり先程の着せ替えはやり過ぎてしまったのか、
それとも地味な私ではやっぱり嫌なのだろうか、そんな不安な感情がぐるぐると渦巻いてしまう。
それに気づいたトレーナーさんは優しくなでながら、少し顔を赤くして
「そんなことありません、私にとっての英雄は貴方だけなのですから。ただ、その……私も元々男だったので……」
「?」
「その、私の身体を見られるのはいいのですが、男だった人に自分の裸を見られるのは、あまりよくないのでは、と思ってしまいまして……」
目をぱちくりしてしまう。この人は、こんな状態になってまで私のことを気にしてしまっているのだ。
本当に優しい人。こんな人だからこそ、私は安心して一緒に走ることができる。
「フフ、トレーナーさん、嫌でなかったら誘ったりしませんよ。大丈夫です、一緒に入りましょう」
「しかしですね、やはり年若い少女のお風呂に一緒に入るのは風紀的にも……」
「大丈夫です、他のトレーナーさんも担当ウマ娘と一緒に入っていること知っていますよね。さあ、一緒に入りましょう!」
「あ、ちょっと、ロブロイ……もう、仕方ないですね、ではエスコートお願いしますね」
トレーナーさんの手を取って強引に駆け出す。
トレーナーさんは困惑していたけど、それでも最後は受け入れてくれた、それがやはりうれしく思えるのです。
そして、二人で一緒にお風呂場へと……
「やっぱり大きいですね、トレーナーさん。でもとってもきれいです」
「そういうロブロイこそとてもかわいらしいですよ」
「ふふ、ありがとうございます、さあ、ではさっそく洗い方を教えてあげますね」
≫59二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 21:50:25≫57
そう言って、トレーナーさんの身体を丁寧に洗っていく。
私の言うとおりに体を動かしてくれて、とても洗いやすいです。
すべすべした肌で、私よりも綺麗で……
そして、次に洗うのは、大きな胸……私も大きいですが、こうして真正面から見るとやはりすごい迫力です。
……他の方からも私の胸はそのように見えていたのでしょうか……
「胸の間も汗疹ができやすいのでしっかり洗わないといけませんからね、くすぐったいかもしれませんが、少し失礼しますね」
「ええ、お願いしますね……ん……あ……」
……どうしましょう、その声、その表情、それにこの揉みごたえ……
とても、かかってしまいそうです。
自分についていた時は大きくて邪魔なだけだったのに、こうして自分以外の方に、それも私のトレーナーさんにあるというのが、
とても、気になってしまいます。
「……この柔らかさはまるでマシュマロのようで、なのにこの迫力、凄いです。……段々と肌も赤くなって、これは熱が上がってきていますか?その赤みがとても色っぽいです。それにトレーナーさんはまだ自分のことを何もわかっていないですし、私がしっかり知らなくちゃ、もっともっと知りたい。これもきっとこれからの物語に必要なことです。大丈夫、トレーナーさんはもっと自分のことを知らないといけないけど、それは自分だけの視点によるものです。それだけではきっといけません、私が、私がもっと詳しく知らなくちゃ……」
「そ、その、ロブロイ、怖いのです、が……」
少しおびえたような表情を見て、私、分かってしまいました。シンボリルドルフ会長の気持ちが……。
「トレーナーさん!!」
「チョ、ちょっと待ってください、ロブロイ、ロブロイ―――!!」
そのまま丁寧に洗ってつやつやした姿で二人が出てきたというのは風の噂である。
≫94二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:04:06立ち直れなかった可哀想なテイトレ概念垂れ流すね…
嫌な雲だと思っていたがとうとう降り出してしまったな。車椅子を動かしながらそんな事を考える。
俺の背を押してくれるテイオーはスキルアップのために一週間ほど地方に遠征をしているため今この学園にはいない。
俺のことを心配して渋っていた彼女を笑い飛ばし見送ったものの、数日会わないだけでこんなにも寂しく感じるとは思わなかった。なんて情けない。
落ち込んだ気持ちに比例するように天気荒れ廊下が暗くなっていく。
こんなコンディションの時はいつもあの日俺が俺であるために脚を折った光景を思い出す。思い出してしまう。
ひゅっ…と息が漏れる、まずい、駄目な方向に向かっている。
何も考えるな、と顔を上げた瞬間に私の横を何人かのウマ娘が通り過ぎた。いや、駆け抜けていった。
楽しそうだった。輝いていた。笑顔で、走るのが幸せそうで。
なにかに、ひびが入った。
私もあんな風に走ってみたかった。何にも囚われずに自由に駆けたかった。
ちがう、違う。そんな訳ない。だって俺はテイオーの、俺はテイオーのトレーナーなんだ。
湿って張り付く服に不快感を覚えながらエントランスに向かう。何か飲み物でも飲んで熱いシャワーを浴びて眠れば忘れるとそう思って。
挨拶をしてくれるウマ娘や同僚に微笑み返して進む。口に出さなかったのは震えを抑える自信がなかったから。
早く飲み物を買って帰ろうとして備え付けの大きなモニターから聞こえた歓声に目を向けた。見てしまった。
俺と同じくウマ娘になったトレーナーがターフを駆け抜けてるのを。ゴールし二人笑顔で抱き合う瞬間を。
なにかが、壊れそうになった。
なんで、おれは諦めたのに。わたしは我慢したのに。私だってはしって、テイオーと。
駄目だ、いやだ、ずるい。
ぐちゃぐちゃになった頭は回らない。息を荒らげ全力で腕を動かす。心配そうに声をかけてくれた誰かを無視してでもその場から一刻も早く立ち去り…いや逃げ出したかった。
≫95二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:05:37建物を飛び出し勢いを増してきた雨に打たれながら車椅子を動かしていたが石か何かに躓き体勢を崩して地面に倒れ伏す。衝撃で呼吸が早まる。どくん、どくんと心臓が脈打ち口腔が酸味を帯びてきて、そして、
「う、えぇ」
水分だけで構成された胃液を吐き出した。
食事を取るのが嫌になってサプリばかり飲んでいたお陰で学園を酷く汚す事がなかったのが幸いだった。
何度か嘔吐を繰り返して内容物を空にした私の目に映ったのは動かなくなった自分の脚。
雨と涙で滲む瞳で忌々しいそれを睨み殴り付ける。何度も、何度も、何度も。
悔しかった、悲しかった。他のみんなは前を向いて進んでいるのに、私1人だけが担当の荷物になっていることが。
咎人の証のように残った傷跡をかき消すように強く爪を立てて引っ掻いて、ふととある懸念が脳裏によぎった。
私は本当に愛バの事を、テイオーの為を想っているのか。
本心では、自分の事しか考えていないんじゃないかと。
私は可哀想なんです。他のみんなのように強くないから許してくださいと、指導者として不出来で何も出来ない惨めな私をどうか憐れんで欲しいと思っているだけなのではないか。
掻き毟り続けた脚の傷が裂け、剥がれた爪の痛みが他人事の様に遠くに感じる。
弱くて無能で役立たずで卑怯で自分勝手で臆病で醜怪で卑しい恥知らずのクズが。お前なんかトレーナーにならなければ、生きてこなければよかったんだ。
鼓動が痛いくらいに早まる。止まらない嗚咽と吸い方を忘れた呼吸のせいで視界がチカチカと瞬く。
なにかが、折れた。
「あ…ああぁ…あぅ…テイオー…テイオー…っテイ、オー…テイオぉ…うぅぅっっデイオー…テイオー…」
壁にもたれて膝を丸め、両肩を強く、壊れるほど強く抱く。あなたがあの時そうしてくれたように。
だけど、何も感じない。みんながくれた優しさも
あなたがくれたあの温度も。
赤い血潮が水に染み込み、地面を汚して流れていく。
「ごめん…ごめんなさい…テイオー…っうぅ…みんな…ごめんなざい…ていおぉ…たすけてぇ…ゆるしてください…だれか…ごめんなさい…」
雨はまだ、止まない。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part42【TSトレ】
≫20二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:53:15デジトレSS上げるね
「デジタルって最近ずっと幸せそうな顔してるよな」
ソファーに寝そべりながら、スマホを見ていたアグネスデジタルに声を掛ける。
「うん?」と声を出しながらスマホから目を離して身体を起こすデジタル。
「同僚のトレーナー達が何人もウマ娘になってるから、生粋のウマ娘オタクのデジタルがどんな反応するかと思ったら案の定大興奮だし」
「そりゃあ当然です。だって元々のトレーナーさんとウマ娘ちゃんの関係も尊いのにそれがウマ娘ちゃん同士になるんですよ?デジたんの魂は昇天寸前ですよ」
まあ寸前と言うかもう片手じゃ数え切れないぐらい昇天してるけどな。
一日最低三回以上はデジタルが失神してると言う報告を聞くし、この間なんて昇天のしすぎで魂だけの状態でトレーニングに来てたから。
…………そんなデジタルに対して俺は妙な感情を抱いていた。
俺がウマ娘の身体になった当初からデジタルはその知識を最大限に生かしてサポートしてくれているのだが、ウマ娘オタクである彼女が何度も俺の身体に触れてるのに落ち着いた反応ばかりするのだ。
サポートそのものはとても助かっている。彼女のおかげでこの身体二なれるのに時間は掛からなかった。
ただ、俺に対してだけ反応が薄いのが疑問だった。
この身体になってから、俺を助けてくれる彼女の事を何度も意識してしまう。
頭を撫でて貰った時も、お姫様抱っこしてくれた時も、心地よさや照れくささと様々な感情でいっぱいになっている俺に反してデジタルは至ってクールに対応してくる。
彼女は俺を思ってくれているはずだが、どうしても不安になってしまう。
(デジタルにとって、俺は意識するに値しない存在ではないのかと。意識しているのは俺だけではないのかと)
「…………デジタル」
「どうしました?トレーナーさん」
「デジタルは俺の事どう思ってるんだ?」
「…………」
「俺は今、デジタルがいつも推しているウマ娘になっている。でも、デジタルは俺にだけずっと落ち着いた反応をしている。…………お前は、俺の事をどう思っているんだ?」
気持ちの悪い質問なのは分かっている。
だが、溢れ出る言葉が止まらない。___感情が止まらない。
すると、デジタルは俺をそっと抱き寄せた。
≫23二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:54:37≫20
デジトレSS続き
俺の頭をそっと撫でながら、彼女は口を開く。
「トレーナーさん、アタシはウマ娘ちゃんが大事です。そして貴方の事も大切なんです」
「あなたを傷つけたくない。守りたい。…………アタシの欲望で汚したくないんです」
「でも、トレーナーさんはそれじゃあダメなんですかね」
俺の事を強く抱きしめるデジタル。
俺よりも小さな身体で包み込んでくれる。
「アタシ、ずぅと我慢してたんですよ?トレーナーさんを傷つけないように」
そう言いながら、カバンから何かを取り出す。
それは、首輪だった。
「トレーナーさんがウマ娘ちゃんになってから、なんだか大きな犬みたいに思ってたんです」
俺の首に、首輪を巻き付ける。
嬉しい。嬉しすぎて上手く息が出来なくなる。
顔に力が入らなくなって、どんどん顔に笑みが広がってしまう。
首輪をきつめに着けられて苦しい筈なのにその苦しみに快感を覚えてしまう。
______俺はいつの間にか四つん這いになっていた。
「トレーナーさんは今からアタシのペット、愛玩動物です。…………いいですね?」
ペット。その言葉で俺の自尊心は完全に崩壊した。
「はい、ご主人様♡」
その言葉が、俺とご主人様の長い夜の始まりだった。
≫22二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:53:47「トレーナーさん……ちょっと太った?」
「いやネイチャ、こんないい身体借りといてそんな事は…………うーーーん?」
「うーんどっちだー?」
「……トレーニング行こっか。今日は筋トレメインでやろう」
「はいはい。よーく分かりました」
≫33二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:58:35前スレ174の続き
数日前から音信不通だったトレーナーからメールで急に呼び出されて文句言いながらもトレーナー宅を訪問するタマモクロス
「どないしたねん?急に呼び出して?熱でも出したんか?」
合鍵でトレーナーの家に入るとそこには160cmぐらいの芦毛のウマ娘が居た
芦毛ウマ娘はタマを見るなり抱きついて
「タ゛マ゛た゛す゛け゛て゛く゛れ゛」
「ちょちょちょ、何やねん嬢ちゃん一体誰なん?」
「お゛れ゛だ゛よ゛タ゛マ゛ト゛レ゛だ゛よ゛」
「嘘言っちゃいかんで、トレーナーは男だし身長も180はあったはずや」
「ぐすん、本当なんだ信じてくれほら、天皇賞で勝った後ホテル行っただろ?」
「なんで嬢ちゃんがそのこと知っとんね...本当にトレーナーなんか!?」
タマにこれまでの経緯を話すトレーナー
唖然とするタマモクロス
「取り敢えず、当面の問題は生活をどうするかなんだが、タマ何か良いアイデアは無いか?」
「トレーナーは知らんやろけど、最近学園では人がウマ娘になる事件が起きとるんや、だから生活面は問題ない...と思う」
この言葉を聞いて早速タヅナさんに連絡を取った所あっさりと話を受け入れて貰った
こうして俺の奇妙なウマ娘ライフが幕をあけたのだ
≫81二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:17:48≫33
「タマ、自分でやるから一人にしてくれないか?」
「アカンアカン、こう言うのははじめが肝心なんや!」
そう言うとタマが俺の股間にタンポンを挿入する
「んっ...」
「変な声出すんやない、ええかタンポンは8時間ぐらいで効果が無くなるからその前に交換するやよ、今日みたいにパンツやズボン真っ赤にしたくないやろ」
「はぁー、それにしてもツルツルでキレイなピンク色やな...えい!」
「ひゃい、何するんだタマ」
「いやぁ、すまんすまんついな」
「もういいいだろ、腹が痛いから俺はもう寝るぞ...おやすみタマ」
「ああ、おやすみトレーナー」
このあとお漏らししてたまにしこたま笑われた
≫47二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:05:20「…ねえ、お兄ちゃん、何か言うことがあるよね…?」
「ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
「……うっ…いや、それで誤魔化されないからね!お兄ちゃん体重管理については自分でもいつも散々言ってたでしょ!」
「ごめんお姉ちゃん…パフェで自撮り映えるし美味しいからって食べてたらつい…」
「ごめんで済んだらダイエットなんて言葉は要らない!ああもう、ほら一緒に付き合ってあげるから、ダイエット、しよ?」
「はーい…。…ところでカレン、ちょっと体重計に乗ってみてくれないか?いやカレンなら大丈夫だと思うけど、最近一緒に映えるからってマルゼンさんとマルトレさんに付き合ってタピオカとか奢って貰ってたし…」
「…………うん」
ふたり仲良くダイエットすることになったカレンチャンと元お兄ちゃんであったとさ
うまぴょいうまぴょい
≫68二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:11:06息抜きに秋の紅葉山道サイクリングに出かけた
タイトレタイシン箇条書き概念
少しでこぼこの多い山道を
自転車で少しずつ登っていくタイシンとタイトレ
立ち漕ぎ自転車で駆け上るタイトレ、後ろにタイシン
要所要所で休憩を挟みながら紅葉や山からの景色を楽しむ二人
コースの最後100mほどの長い坂道を「これがぁ…ラストぉ…」と
これまで一番のオーバーアクションで駆け上がるタイトレ
しかしそのオーバーアクションがいけなかった
今まで自転車の運転や周りの景色に気を取られていてたタイシンが
自転車のアクションやタイヤからの振動で躍動するタイトレの身体の動きに気付いてしまったのだ
気付いたらもう見るのを止める事はできない
タイトレがペダルを踏み込む度左右に躍動するソレは
タイシンのメンタルをブレイクするには十分すぎる動き様で
見事タイシンの性癖に深い傷を残す事になったのだ
帰りのタイシンは「絶対アタシが前だから💢」と
意地でも先頭の景色を譲らなかったそうな
≫79二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:17:10ギリ間に合ったスズトレSS
「うーん、参ったな…」
体重計の数字を見ながら私はそう呟く。
明らかにウマ娘化した時に測った数値より増えている。幸い体型には出なかったが…
「何がいけなかったんだ…?」
自分の行動を脳内で振り返る。やはり一番の原因は食べすぎだろうか。
確かにウマ娘になってから食べる量は増えた。が、それは他のトレーナーも同じだ。
となると…
「…スイパラかぁ。」
うん、間違いない。他のスイーツ好きのトレーナーに誘われて行ったスイパラで食べすぎたのがいけなかった。
決して多く食べる方じゃないスズカでさえ太り気味になるのだ。ちょくちょく並走するとはいえほかのウマ娘より動かない私がいっぱい食べたらこうもなる。ボテ腹にならなかっただけよしとしよう。
あとはダイエット方法だ、だけどこれはもう決まってる。
「…もしもしスズカ?今日のトレーニングなんだが…」
いっぱい並走した。
新しいトレーニングは閃いた。
体重は戻った。
デビューは断った。
≫124タバコカフェトレの人21/09/25(土) 23:38:17タバコのカフェトレのウマ娘化の朝を書きます
…なにやら体の裏から異物感を感じて、真っ暗な部屋の布団から起き上がる。
───尻尾が、生えていた。
それだけでは無い、頭の上に手をかざすと何やらぴこぴこと動いている。
「………ウマ娘…?」
普段と違う声が喉奥から聞こえる。
ぱたぱたと体を叩いて確認すれば胸もあるし、顔を触れば骨格から違うように思えた。
やけに長く後ろに伸びた髪は起こした上体からベットまで垂れ下がっている。
…何があったかは分からないが、どうやら本当にウマ娘になっているようだった。
「……そうだ、この体なら」
ベットから降り、PCとノートを広げる。
自分の体の各部を触り、可動域を検証し、それを記録に残していく。
カフェの成長のヒントになるかもしれない。
絶好の機会を逃す気はなかった。
………窓から光が差し込み、鳥の囀りが聞こえてくる。
その頃には、机の上のノートは5冊を越え、そしてそれ以上の数のコーヒー缶が散乱していた。
「あ…学園行かないと…」
PCとノートを乱雑にバックに放り込み、朝食代わりの10秒チャージを喉に流し込んだ。
が、ウマ娘の空腹感は抑えきれずそのまま数パックを空け、洗面所に向かう。
やけに伸びた後ろ髪をバッサリと切り、冷水を顔にかけて無理やり目を覚まさせた。
さて、着替えるかと部屋に戻り…
「あ……着替え、どうしよ…」
ぽつんと、カフェトレはフリーズした。
必ずカフェのトレーニングには遅れなかったカフェトレだったが、その日だけは流石に休んでいたようだ。
≫126二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:38:49温泉旅行ルドトレSS①
https://bbs.animanch.com/board/67150/?res=126
≫128二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:39:52
≫129二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:40:37
≫131二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:42:29
≫132二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:43:18
≫135二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:44:00
≫136二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:44:25
≫157二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:54:58草木も眠る丑三つ時。などと言えばベタな表現ですが、この時間においてトレセン学園、しかも特別教室の集まる第三校舎には草葉の揺れる音すら響きません。
そんな静寂の中では、普段の日常であるはずの革靴達の輪唱は却って異物でしかありませんでした。
「……で、今回のウワサとやらは何処だって?」
「ん。三階旧科学実験室。上がって奥から二番目だと。」
「ふんににに~!出ましたッ!今日の運勢は大凶です!そうと決まれば帰りましょう!」
「駄目です……第三木曜の午後三時なんて厭に細かい時間指定があるんですから……今回を逃すと一か月先ですよ……」
≫158二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:55:15≫157
私、マンハッタンカフェと私のトレーナーさんは生徒たちから寄せられる怪談の調査を頼まれることがあります。
何処からの依頼なのかは大体ぼかされていますが、おそらく生徒会からでしょう。まあそうする理由なんていくらでも思いつきます。
噂なんてバ鹿バ鹿しいものに対して生徒会が対応するのは問題がある、そもそもそういう風に生徒会が動くと生徒の不安を煽ってしまう……まあ真意なんて分かりませんが、こうした調査依頼が私たちに舞い込んでくるには十分な事実があります。
そう。この手の怪談。たまに"ホンモノ"の可能性があるのです。大抵は根も葉もない噂だったり、変に脚色された話だったりしますが、ほんの一部には実際に一般で言う幽霊やら物の怪やら……私たちが「怪異」と呼んでいるモノの存在が裏にあります。
私はその「怪異」を視ることができ、私のトレーナーさんは「怪異」を診ることができます……といってもトレーナーさんが使うのは私のような霊能力めいたものではなく、過去の膨大なデータから得られた「どうしてそんなことを起こすのか」の分析です。
そんなこんなでこの2つを用いれば怪異たちの事件を解決できるかもしれないということで、私たちはこんな役回りをさせられています。
そして、その調査でこれまた欠かせないのが今回も同行いただいているフクキタルさんとそのトレーナーさんです。
フクキタルのトレーナーさんは私ほどではないですが霊感に優れています。あと、私にはできなかった「怪異」に「触れる」こともできます。大抵したがらないので最後の手段になりますが。
フクキタルさんは霊感皆無、推理もそんなに……ですが彼女の「占い」は時として事態を動かすこともあります。結局理由はあるけど理屈ではないものを相手にするのですから、神頼みも役立つ場面がある、ということでしょうか。
あ、ちなみに、私のトレーナーさんもフクキタルさんのトレーナーさんもウマ娘です。いえ、元々はどちらも男性のトレーナーさんだったのですが校内で流行り出した「トレーナーさんがウマ娘になってしまう事象」の煽りを受けた形でこうなってしまいました。……先にこっちを調査すべきだとは思うのですがそんな依頼は一向に来ませんし、私のトレーナーさんは「まあこっちのほうがこういう時にも便利だから」ということで特に問題にしていません。
≫161二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:55:34≫158
さて、今回の依頼は人呼んで「第三校舎三階旧科学実験室の怪」。
この時は、まだよくある骨折り損の一つだろうと思っていました。……実は先程の大凶で結構その予測も既に揺らいでしまっていましたが。
導入だけできた
ちびちび続きを書いていくがいつになるかはわからない
設定使ってもいいのよ?
≫170二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 00:04:09なんか前スレでみんなにめっちゃダメージ与えちゃったっぽいからトレsのアホアホss垂れ流すね…
グラ「そういえば昨日テレビでやってた映画、どなたかご覧になられました?」
テイ「見た!格好良かったなぁ…ウマの呼吸一乃型ー!」
フク「アブナァイ!杖を振り回すんじゃないよお前!」
ルド「怪我したらどうするんですか。主にあなたが…私も見たけどどうしたの?」
グラ「いえ実はインスピレーションを受けて技を幾つか編み出したのでどなたか犠牲になっていただけないかと…」
デジ「こわ〜…トレーナーって必殺技身につけないと駄目なの…?」
タイ「そりゃあ担当を守るために必要だろう!鬼になれテイトレ!!」
テイ「俺は俺の責務を全うする!奥義玖乃型…うわぁ!あ、ありがとう…」
ルド「止めろって言ったでしょ!テイオーに詰められるのルドルフとは違った怖さがあるんですから!」
デジ「しかもどっちかっていうとそれやるのタイトレの方が似合ってるし」
グラ「ふふ…まぁ冗談なんですけど。単純に少年漫画ごっこでもしたいなと思いまして」
フク「冗談に聞こえんかったが…俺たちもういい大人だぞ?流石にそれは…なぁフラトレ」
フラ「そうですね…フラッシュにそんな姿見られたら死んでも死にきれませんし」
フク「とか言いながらリング指につけるな!どっから出したっていうかウワーッなっつ…」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part43【TSトレ】
≫9二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 00:19:21立て乙寝る前にごみ投下するね
日曜7時からの新番組
TSトレーナー戦隊
タンントウニオソワレルンジャー
第一話 さよならルドトレ、また会う日まで
ルドルフ「トレーナーくん、なんだね、そのけしからん全身タイツは!こっちに来なさい!そんな姿で皆を誘惑して私だけのものという自覚が足りないようだね!今日は寝れないと」
ルドトレ「」
世界の平和はルドトレがその身をていして守ってくれた、ありがとう!ルドトレ!君の勇姿はいつまでも忘れないぞ!
第2話 さらば!テイトレ、悪夢の無限骨折地獄
≫26二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 00:32:26「さあお兄ちゃん…夜になったね♡ 寝ない悪い子に…おしおきしちゃう? それとも…一緒に眠れない夜を過ごしちゃう…なんて☆」
「ふわぁ…お姉ちゃん…ちょっと怖いお本読んじゃって眠れないの…一緒に寝てくれる…?」
「…………待って、夜怖くて眠れない妹概念ちょっとずるくないお兄ちゃん。 カレン今、うんお姉ちゃんが一緒に寝てあげるよ、絵本も読んであげるからね!って言う寸前だったしもういつのまにかどこからか取り出した絵本を手に持ってるんだけど」
「自ら体得して思う妹ポジの凶悪さよ。あと早く寝なさい」
「…釈然としない」
この後素直に寝て寝不足気味は免れたカレンチャンとお兄ちゃんであったとさ
うまぴょいうまぴょい
≫48二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:12:56
「その理由は今は話せないけれど、ぼくには君に愛すべき理由がある」
――ロミオとジュリエット
***
この世には学問では計りしれぬことが山とあるとは、担当ウマ娘と観た「ハムレット」の言葉だったか。
例えば昨今トレセン学園で頻発する、トレーナーのウマ娘化現象などがそれだ。
私ことテイエムオペラオーのトレーナーもその例に漏れず、三十半ばを越えたおじんが、中等部程度の少女となる怪現象。
当然ながら、免許の更新やコネクションの再接続だけで済まない問題もあり……。
「……すみません、樫本さん。お手数おかけします」
「お気になさらず。生理衛生の管理もトレーナーには必要な知識です」
「ふむ。哲学でジュリエットはできない。ならば、保健の授業だけではウマ娘も成らず、だね!」
「誠に面目次第もない……。女性の悲喜こもごも、些か不勉強でした」
つまるところ、身体の構造の変化である。
幸いにして背格好が標準体型のオペラオーと変わらないため、衣類に関しては滞りなく用意できた。
しかし……存在しなかった内臓が冷えた場合、どの程度痛みを覚え、どの程度苦痛を耐えられるかなど、算盤勘定に刻める訳もなく。
こうして後生大事に、樫本女史おすすめの、毛糸のパンツを抱えているのである。
≫49二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:13:35≫48
「そういえばトレーナー君、理事長代理とは仲がいいのかい?」
「後輩だが、話すようになったのはアオハル杯からだ。昔から優秀な人だと評価されていたが……今は、元気そうで何よりだ」
チーム<ファースト>の面々とのトレーニングへ向かう樫本女史を見送りながら、私達はカフェテリアへ向かう。
非常識な量を食べるオグリキャップと配膳をするトレーナーを眺めながら、今日の昼食について話し合うこととした。
「さあ、どうする? 君とボクの食卓を、君が選びたまえ!」
「お言葉に甘えて、にんじんポタージュでも頂こうかな……」
身体の変化として次に挙がるのは、甘味への受容、そして苦味への拒絶だろうか。
愛飲していたスタウトも今や苦く、気に入りのパイプも、懐かしさにリップを舐める程度だ。
代償といってはなんだが、疎遠となっていた揚げ物は常連となり、生クリームとの和解もできた。まずまずである。
「トレーナー君、あそこのウォーターサーバーで自由湯も貰ったほうがいいんじゃないかい?」
「権利幸福も嫌いじゃないが、また腹痛でオッペケペーにはなりたくないから貰っておこう」
≫50二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:14:14≫49
にんじんポタージュに鮭と卵の雑炊。それと揚げ出し豆腐。
秋の頃にありつくには、中々悪くない組み合わせだ。
「トレーナー君の食事の趣味は、露骨に変わらないようだね」
「苦味や酸味を気に入る歳になって長いからね。味わい方を理解していれば、舌が若くなっても楽しみ方を思い出せる」
苦味酸味は、慣れて楽しむものだというのが持論だ。
かかりつけの医者からは「少女の身体をいたぶらないよう、煙草は控えるように」と釘を刺された為、パイプはお守りのように首に提げている。
だが、それ以外の楽しみは、いつか取り戻せる筈だ。私という記憶の年輪が、少女の器の中で蒙昧にならなければ……。
「ではトレーナー君。若返りの薬を飲んだ君は、誰に恋をするんだい?」
「それは覚えがある。ゲーテのファウストだったね」
「エクセレント! 正解だよ! 君の知識の海から、天使の取り分は徴収されていないようだね!」
「君と観た芝居だから」
テイエムオペラオーの言葉は滑稽で意味のないように思えるが、その実は高い教養に隠された金言であると私は考えている。
この場合、ゲーテのファウスト。悪魔メフィストフェレスと20年に及ぶ契約を結び、若返りと贅沢な暮らしを与えられる老錬金術師を私に見立てているのだろう。
さて、神と悪魔の賭けに投じられた老人を演ずるならば、どのような台詞をひねり出すべきかと、私は雑炊に舌鼓を打って、呑み込んで、答えた。
≫51二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:15:17≫50
「時よ止まれ、そなたは美しい……などとは、とても言えないだろうな」
「おや、悪魔の奸計には乗らないと?」
「私は、君の成長を見届けたいから」
きょとんという顔をしたオペラオーに、私はこみ上げる懐かしさと共に語る。
圧倒的な常勝、そして絶対的な包囲戦を切り抜けた、世紀末覇王の活躍。
しかし、栄枯盛衰。いつか王の幕は、勇者によって切って落とされることだろう。
それでも。
「私は君の専属トレーナーとして、君を支え続けたいんだ」
その先も、その先々も。
覇王の挑戦は終わらないだろうから。
≫52二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:15:52≫51
「……温泉旅行の時にも思ったが、そういう言い方はないだろう? もうちょっと、こう……」
「すまないね。だけど、本音を言っているだけなんだ」
「ぐっ……やめろ……やめてくれ。表情が皺に隠れていない分、破壊力が……」
身悶えるオペラオーが料理を溢さぬよう、少しこちらに寄せてから私は追撃する。
「次は君とデュオを歌えるよう努力するよ。君の美声に負けないように」
「うおおおおおっ、滅びる……マズい……! カフェテリア、お前もか……!」
逃げようとするオペラオーの肩を掴み、最後まで食べるよう促す。
まだ、バッソ・プロフォンドは程遠いアルトだが、務めて元の声を意識して。
「美しいぞ、テイエムオペラオー」
「こ、降伏だっ! 白旗……白旗をぉぉぉッ!」
紙ナプキンを振りかざすテイエムオペラオーの頭を、私はとても愉快な気持ちを湛えて撫でる。
私の愛バは今日も美しい。時を止めずとも、明日も美しい。
そうやって、美しい時を重ねていくのだ。
それを見守る時間が増えたことを、三女神に感謝しても罰は当たらないだろう。
うまぴょいうまぴょい
≫58二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 01:23:41スイーツビュッフェ(トレーナー達はバイキングと呼ぶ)にやってきたタイシンとタイトレ達
各組がいちゃついたり騒ぎを起こしてるのを横目に(まぁアタシ…というかあいつはそんなんじゃないし)とタイトレがスイーツを取ってくるのを待つタイシン。
「いろいろ取ってきた!」
と器用に頭より上の位置で山盛りに積んだトレイを左右一枚ずつ運んでくる訳ですよ。
呆れながら近づいて正面に立った瞬間に女神のいたずらかハート型のチョコが転げ落ちてタイトレのお山に挟まる。
しかも柔らかい生チョコレートなもんでみるみるうちに広がっていく。
その光景を見て固まったタイシンに気づかずに
「すまんタイシン胸に落ちたの取ってくれ」
とかクソボケかます訳ですよ。
胸に落ちたの取るってことは…谷間に手を入れて拭かないと駄目…ってコト!?と思わずちいかわになりながらも「頼む!この服汚したら怒られる!」と焦るトレーナーに従って手を伸ばしたタイシンは……脳が破壊された。
みたいなのね。寝ぼけながら書いてるからガバガバでごめんね。
オペラオーのやつすごく良さそうだから起きたらしっかり読むね…
≫67二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 02:45:36ヤンデレネタ
タマ「…言ったよね。うち嫉妬深いから、裏切んといてって…。」
タマは、タマトレの血を拭いながら笑った。
タマ「トレーナーが悪いんやで?"この身体ならウマ娘や女トレーナーの裸見放題じゃん!"なんて言って本当に覗きに行くんやから、ボノトレさんびっくりしとったで?
馬鹿な人や…本当に馬鹿な人…」
≫79二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 06:49:44トレーナー対抗3200M。この企画を考えたやつはアホだと思う。普段周りからアホと呼ばれている俺から言われるんだから相当なもんだ。
マジで何考えてるんだルドルフとタキオン。本当に皆の脚質計ったのか?明らかに短距離向きのやつもいるぞ?
それになんでノリノリで協力してるんですかたづなさん。あなたがコントロールできなかったら誰がコントロールできるのこの学校。
あとあの実況は誰だ。ヘロヘロのトレーナーたちを見たいかーってアホか。アホだな。
ほれ後ろを見てごらん。運動不足で死にそうな顔をしているカフェのトレーナー。
明らかにこれ私の距離じゃないって顔をしているスズカのトレーナーとカレンチャンのお兄(姉)ちゃん。
あんま見られたくない感じのオーラが漂っているロブロイのトレーナー。やばいな死屍累々に近い。
オグリのとこのやマルゼンさんのとこのトレーナーもやる気はありそうだが普段走ってる姿見てないし何とも言えぬ。
しかし隣を見てみればやたらとイキイキしてるルドルフのトレーナーに、吹っ切れたような顔を見せたテイオーのトレーナー。
差してやるぞと言わんばかりの顔のフラッシュのトレーナー、意を決して走るといった趣のフクキタルのトレーナー。
そして友であるマックイーンのトレーナー。こいつらはやってやるというオーラがものすごく漂っている。
掲示板を争うのはこのメンツになりそうだ…
この地下通路を選手として歩くことになるとは思わなかった。
悪い気分ではないが、やはり自分はレースというよりは自由に走り回るのが性に合っている。だがしかし。
「せっかく用意してくれたのだから、本気で走るのが礼儀というものだろう」とエアグルーヴのトレーナーに言われ、
「お前は私とトレーニングを続けていたんだ、ふがいない姿を見せられては困る」と愛バのブライアンに言われてしまえばやる気も出ようものだ。
「一世一代の大レース、一丁やってみますか!」
心の奥底で魂が燃えるような感触がある。おそらく彼女もそれを望んでいる。
青空広がる、トレセン併設の大型レース場。芝3200M。やっぱ長いよこれ。
各トレーナーがゲートに入る。いざ死にそうな顔をしていた面子も、ゲートに入ると覚悟を決めた表情になる。
ここから先は勝負の時。普段はウマ娘を応援する側が、今度は応援される側になり、大地を駆ける。
そしてゲートは…開かれた!
≫80二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 06:51:11≫79
体中に血液が高速で巡る。普通の人でなら短距離走で使うようなフォームで激走する。
俺が選択したのは先行のポジション。ある程度レースに従いながら、終盤で一気に加速して抜き去る。
足には自信がある、当たり負けしないパワーとスタミナも十分と感じ、この位置でレースを見ていく。
まずぶっちぎりで逃げまくってるのはカレントレ、スズトレ。ただし彼女らはおそらく途中でスタミナが死ぬのでそこまで気にしてはいない。
近くで虎視眈々と戦闘を狙っているのは俺とマクトレ、テイトレとフクトレ。
後ろを気にしてる余裕がないので憶測ではあるが、フラトレとルドトレもある程度近くにいると思う。俺はただ我武者羅に先頭を追い続けている。
1000M通過。まだまだ余裕といったところ。崩れるやつもいない。
1600M通過。ようやく半分。まだまだ。
2000M通過。少し逃げコンビの足が滞る。先行組も結構息を切らしてきた。
2200M。ついに逃げコンビ、失速。虎と鹿は今や息も絶え絶えである。
1000Mを切ればもう終盤だ。本来そこまでガチガチにトレーニングしてるわけではない俺たちはかなり息が酷いことになっている。
突如、後ろから殺気を感じる。獅子と閃光がその覇気を纏いながら突っ込んでくる。
かと思えば隣で帝王と令嬢が闘気を纏い、もう一人の福の神はなんか神々しいオーラまで纏いだした。
自分も内面から熱があふれ出してくる。熱は体を伝い、大地を蹴る力をますます強くしていく。
これがゾーンというものなのだろうか。
負けられない。負けたくない。前へ。勝ちたい。誰よりも早く。
衝動が溢れ出す。瞳から炎が噴き出すイメージ。背中から翼が生えたような感覚。
グン、と加速する。今や6人の戦騎が我先にとゴールへと向かっていく。
残り600。もはや考える余地も無し。
残り400。ただただ足を動かすのみ。
残り200。息も忘れて駆け抜ける。
残り…0!走り抜けた。3200Mの長距離を6人の戦騎が駆け抜けきった。
≫81二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 06:51:56≫80
結果は…見事優勝。なのだが、掲示板は非常に接戦であったことを示していた。トップ3人には1身差が表示されてない。ハナ差クビ差の表記だらけ。
順位はブラトレ、テイトレ、マクトレ、フクトレ、ルドトレの順であった。惜しくもフラトレはルドトレを逃してしまったようだ。
その後自分のペースを守った面々やスタミナが死んだ面子が息も絶え絶えにゴールにたどり着いた。
お疲れさまです。マジでゆっくり休んでほしい。俺もめっちゃ休みたい。
あとなんか表彰台に乗った時に観客から罵倒された。なんで俺のぶっ倒れた姿がそんなに見たいんだ。
トレーナーたちは迎えてくれた担当たちのもとへと行く。そして俺のもとにもブライアンがやってきた。
「お疲れ様」
「ああ…いや疲れすぎて死ぬわ…やっぱ凄いんだな、ウマ娘って」
「ふっ…しかしなかなか様になっていたぞ」
ブライアンは笑いながら肩を貸してくれた。
「ブライアンが感じる熱を俺も感じた。確かにこれにあてられ続けたら渇きもするだろうな…」
「ああ…」
「でもな、渇きだけじゃあない。走り切った時の満足感ってのはとんでもないもんだ」
「そうだな」
「ま、しばらくはレースはいいかな。俺は自由に走ってなんぼだ」
「ああ、お前はそれでいい。きっとそれがお前と、お前の「魂」が一番望んでることなのだろうな」
目をパチクリさせる。
「あれぇ?ブライアンに教えてたっけ?」
「ふっ、何年一緒にいると思っている。それくらいはわかるさ」
「…ま、そっか。今後ともよろしくな」
「ああ、よろしく頼む」
走るものにのみ見える地平がある。
そしてその一端を垣間見ることができた。それだけでも今回のレースに収穫はあったと思う。
優勝賞品の地域通貨は今回のお疲れ様会でも開くときに使ってしまおう。
そんなことを考えながら、俺は愛バと共に戦場を去った。
≫97太陽に黒点21/09/26(日) 07:10:37「ハロハロ〜トレーナーちゃん元気〜? ってそんなわけないわよね」
タッちゃんをかっ飛ばしてコンビニやスーパー服屋に薬局と寄って私はトレーナーちゃんの家を訪ねていた。トレーナーちゃんったら『熱を出したから今日は迎えに来なくていいよ、トレーニングはいつも通りのメニューで』なんて送ってきちゃうのだから心配してきてみてチャイムを鳴らしてみればなるへそ、トレーナーちゃんの返事がない。以前はマジヤバだったこともあって蹴り破ったけれど今はその時に扉を付け替えたオマケで合鍵をもらったからモーマンタイ。鍵を開けて中に入るとベッドでゲロゲローなトレーナーちゃんが顔を真っ赤にして汗だくになって眠っていた。近くには人用の解熱剤と空になったスポーツ飲料のペットボトルが転がってるし、起き上がった時危ないからゴミ箱にポイしときましょう。
トレーナーちゃんの額に私の額を当ててみれば、うん目測四十度。人用の解熱剤はモチのロン効いてないみたい。私の事になるととても気配りが細かいのはマンモスウレピーけど自分の事に雑なのは良くないわね。薬や毒に高い耐性を持つウマ娘に人用のは無理だっちゅーのと言うのにトレーナーちゃん買い換え忘れてたんでしょうけど。ウマ娘は風邪を引きにくいけど代謝がベリベリグッドすぎて高熱がポンっと出ちゃうのよね。買っておいたウマ娘用の解熱剤や飲み物を買い物袋から取り出していると音で気づいたのかしら、トレーナーちゃんがみじろぎして目を開けたわ。
「……マルゼン……スキー?どうして?」
「ふふ、トレーナーちゃん素敵なしょうゆ顔が台無しよ。ヨーグルト買ってきたからそれ食べてお薬飲んでグンナイしましょうね」
「……だって、トレーニング」
トレーナーちゃんがちょっと幼い感じになってる。熱がぶっとびーで意識も朦朧としてしまってるようね。私のことを第一すぎなのはやっぱし考えものってところよね。
「トレーナーちゃんと一緒にいるのが、トレーニングにマストバッチグーなのよ」
「……それなら良かった……」
「さ、トレーナーちゃん。汗だくだから辛いと思うけど着替えちゃいましょうほらトレーニングトレーニング⭐︎」
クローゼットを勝手に開けるのはゆるしてチョンマゲということで物色し肌着や寝巻きを引っ張りだした。どれも私とタッちゃんに乗って行ったザーギンで買ったものだ。
≫98太陽に黒点21/09/26(日) 07:10:50≫97
「さ、トレーナーちゃん、起きて脱げる?」
「うん……っとと」
起きてぬごうとしたトレーナーちゃんがぽふりと布団にまた倒れてしまった。
「マルゼンスキー……自分で脱げるから……」
「メンゴメンゴ、体冷えちゃうと悪化しちゃうから手早くしないといけないの」
仰向けになったトレーナーちゃんの寝巻きのボタンを手早く外して前を開けば、汗で少し透けて張り付いた肌着が待っていた。
「はいトレーナーちゃんばんざーい!」
トレーナーちゃんにバンザイをしてもらって肌着ごと上にまくりあげると、私より十センチも細い腰と確かな主張をする胸が順々に露わになって、私はなんとも言えない背筋をかける寒気のようなものをぎゅんぎゅん感じた。
そういえばと今の状況に似た話をルドルフちゃんとしたことがあった。「愛らしい、愛おしいものを束縛したい、壊したい、自分のものにしたい衝動を感じることがある」と私相手だから生徒会長としてではなく一人のウマ娘として本音を曝け出したもので。今目の前のトレーナーちゃんが、そういう状況だ。折れてしまいそうな細い体は熱で赤みを帯び、そこに滴る汗と。キリッとしたしょうゆ顔が普段見せない気怠げで潤んだ瞳はランバタな過激さを客観的には持ってるわね。背筋をかけるのは寒気じゃなくてそれを感じた私のケダモノ心。
≫99太陽に黒点21/09/26(日) 07:13:30≫98
「……?」
手が止まったのを不思議そうにしているトレーナーちゃん。
「あ、ごめんなさい。ぼうっとしちゃって、汗を拭いちゃうわよ」
襲いたいと思ったのは嘘じゃないわ。でもそんなマルゼンスキーはお呼びでないの、何処かへバイビーよ。体を拭いてあげて……くすぐったそうに身じろぎするのも理性がバイバイキンしちゃいそうなバイヤーね。なんとか全部着替えさせるとヨーグルトをあーんで食べさせてあげて、もう一度お薬を飲んでもらってトレーナーちゃんの額にピタひえを貼ってあげる。
子守唄でも歌ってあげようかしらと思ったけれど、トレーナーちゃんは私がポンポンと優しく布団を叩くリズムにつられてウトウトしてるから要らないみたいね。
「……マルゼンスキー……」
「なぁにトレーナーちゃ」
「……大好き……俺の……マルゼン……スキー」
「……私も大好きよ。グンナイ、トレーナーちゃん」
私は眠りに落ちたトレーナーちゃんの手の甲へキスをした。
そうして汗だくだった寝巻きは袋に詰めて、持って帰りウチで洗っちゃいましょう。代わりに買ってきておいた予備の服を並べて、完璧。洗濯機の雑音で起こしちゃうのは偲びないしね⭐︎
手軽に食べられるものを作って冷蔵庫に入れ、作ってあることをベット脇に張り紙して、私はタッちゃんで学園にブットビーした。遅刻はたづなさんに特別許可をもらってたから、神様仏さまたっなサマって所ね!お礼にドライブデートを提案したら断固拒否されたのは残念だけれど。
学園でトレーナーちゃんのトレーニングをきっちりこなして帰りも寄ろうと思ったら、メールで良くなってきたか今日はもう大丈夫、と来ていたから、私は何となくタッちゃんと峠にいって限界を攻めた。言葉にできない何かを発散したかったのかもしれないわね。峠攻めてた走り屋さんたちを置き去りにしちゃった。
次の日。トレーナーちゃんを迎えにいくと、いつも通り赤いワイシャツに私のプレゼントしたサングラスをしてやってきた。ウマ娘らしくすぐにすっかり良くなったみたいで
「マルゼンスキー、ありがとう助かったよ。あんまりにも熱がすごくて朦朧としてて……」
「でもいつも通りのトレーナーちゃんだったわよ。でもトレーナーちゃん。さっ、今日もかっ飛ばしていきましょう!」
昨日のトレーナーちゃんの様子とそれに感じた事は誰にもナイショナイショってね!
≫100太陽に黒点21/09/26(日) 07:14:20≫99
その日の夜。
「くそ、あのカウンタック、今日は来ねえのか」
「慌てるな。ゲリラ的に走ってるやつなんだろう期待しすぎはダメだ。だが……走り屋として誘いたいもんだぜ」
≫114二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:32:01ルドルフ「理事長やたづなさんに悟られない為にも温泉地への公共交通機関での移動は極力避けるべきだ」
テイオー「でもカイチョー、僕たちが走ってたらそれこそ目立つんじゃない?」
ルドルフ「わかってるともテイオー。マックイーン」
マック「ええ、こちらの方で極秘で車を用意させていただきましたわ」
テイオー「何で車だけ!?誰も運転できないじゃん!!」
ルドルフ「問題はない。マルゼンスキー」
マルゼン「ハァイ!私が運転するわよ!」
ルドルフ「臥薪嘗胆、不撓不屈。運転はマルゼンスキーが行う」
≫119二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:42:44グラトレ「いやー景色が綺麗で……」(新幹線脇の幹線道路を並走するマイクロバス)(窓を閉める)
グラトレ「みんなでババ抜きしませんか!(現実逃避)」
≫122二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:50:03≫119
道中の景色が見たいからと1人だけ抜け出すスズカ
トレーニングと言いながらトレーナーがいないことを不審に思ったスペシャルウィークから連絡を受けるスズトレ
まさか…と気のせいにしようとしたがグラトレの顔を見て全てを察す
≫123二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:55:29≫119
「もしもし?テイオー?」
「アッドウシタンダイトレーナー!」ワーギャーウワッー
「ううん、急に旅行なんて事になってごめん、理事長から口止めされてて。今日はトレーニングお休みだけどしっかり休みできてる?」
「ウンダイジョーブテイオーサマハヤスミカタモカンペキナノダー!」エンシンリョク!ケツスベッテル!!
「……なんか後ろでみんなが騒いでるけど何かやってるの?」
「エ!!?イヤリョウノミンナデホラーエイガミテルノ!」イックワヨーミンナテスリニツカマッテネー!
「ア゛!!」
「……あれ、切れた」
≫120二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:47:39「トレーナーさん?あら」
橙の日の落ちる夕暮れ、トレーニングルームの片隅でノートとシャープペンシルなどを広げたまま、トレーナーさんは寝ていました。
「全く、私が着替えている間に寝てしまうんて」
寒い時用のタオルケットを掛けようとわたくしはトレーナーさんに近付きます。
トレーナーさんは気持ちよさそうに寝息を立てています。
──本当に、そっくりですわね。
菊花賞が終わってすぐあと、トレーナーさんはウマ娘になっていました。それも、私とほとんど同じ容姿の。差といえば、前髪の白い束、そしてトレーナーさんの方が数センチ身体が太いことだけ。
こうして寝ているトレーナーさんを見て、普通の方は微笑ましさを抱くのでしょう。しかし、私はそうではありません。自分と瓜二つの存在が目の前で寝ていると大抵の感情より「なんでしょうこれ?」という疑問が湧きます。数ヶ月経っても慣れません。特に最近は、トレーナーさんは私のような言動が多くなってきていて、より言葉にできないわモヤモヤが強くなっています。これはなんなのでしょう。
「ん...毛...きれいですわ...」
「トレーナーさん?」
「Zzz...」
一体どんな夢を見ているのでしょうか。毛って。
とにかく、タオルケットを掛けてわたくしは隣の椅子に座りました。
起きるまで本でも読んでいようかとカバンを漁っていたところで。
「......差せーッ!!!!」
「!?!?!?!!?」
「はっ!!」
突然トレーナーさんは叫び、そして起きました。互いに耳としっぽがぴんと張っていました。
「...あっ、ごめんなさいマックイーンさん。わたくし...」
「い、いえ、大丈夫ですわ。少しだけ驚きましたが」
お嬢様口調のトレーナーさんはあたふたと机の上のものを片付け始めました。
≫121二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:47:47≫120
ええ、これです。さっきの寝言もそうでしたが、トレーナーさんは最近素だとこの言葉遣いになることが非常に多いのです。まるでわたくしのように。
しかも、今の。自分の寝言で自分で起きる。なかなか共感されにくいわたくしの癖ですが、トレーナーさんはそこまで辿り着いている。
トレーナーさんは、わたくしにどんどん近付いてきている。距離が縮まっているのではなく、存在そのものがちかいものになってきている。
思い返せばそれらしい事は沢山あります。
最近のトレーナーさんのアドバイスの的確さは凄まじいのです。理由を聞くと、なんでも同じシチュエーションを用意して休日に試しているのだとか。私とほぼ同じであることを利用した素晴らしい行動ではあるのですが。
また、メジロマックイーンとして接されても、短いやり取りならばメジロマックイーンとして対応するようになっているようです。トレーナーさんづてに応援の声などをよく聞きます。
これ、良くないのではないでしょうか。
トレーナーさんがどんどんわたくしになっている。トレーニング支障は今のところでていませんが、これが進行したら何かがまずい。
そうだ。わたくしがわたくしであるという自信が揺らいでしまう。今まで抱いていたもやもやとした感情の正体が、ここでようやく言語化出来ました。
そう、わたくしがわたくしであるためには、トレーナーさんにはトレーナーさんであってもらわなければならない。
何かの機会に、それを理解って貰わなければ。トレーナーさんは、わたくしではないと。
≫125二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 07:57:09≫121
数週間後。何組かのトレーナーとウマ娘で温泉旅館に泊まることになりました。
旅館にたどり着くまでにグロッキーになりましたが、しばらく休んで回復して歩いていたところ。
ルドルフ会長とそのトレーナーさんが絡み合っているのが見えました。濃厚に。
いやなんでですの!?ここ人通りが少ないとはいえ一応廊下ですのよ!?
と言いたくはなりましたが、ここはむしろ見ていることに気付かれる方が厄介になりそうでしたので、すぐ角を曲がって別のルートを選びました。
あっ。
閃きましたわ。
これはトレーナーさんを理解らせることに役立つかもしれませんわ。
≫154二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:34:31朝食の味噌汁代わりの和メイド喫茶スズトレSS
「和メイド喫茶…ですか?」
「ああ、前にもやってみたところ好評だったようで、ウマ娘化トレーナーも増えてきたしもう一度やろうと。」
どこに需要があるんだか、とトレーナーさんが苦笑いする。
和メイド喫茶…確かに前、一度感謝祭でもないのに開かれた事があった気がする。
特に興味が湧かなかったしトレーナーさんとのお出かけの予定が入ってたからスルーしていたがそういうことだったのか、と今更ながら納得する。
「それで、トレーナーさんも参加するんですか?」
「参加するよ。なりたての頃は色んな人にお世話なったから、その恩返ししないとな。
で、今日はその日のトレーニングの打ち合わせをしておきたくてな。」
わざわざ聞かなくてもいいのに、と心の中で呟く。
元からしっかり者ではあるけれど、トレーナーさんは私に対してはとても律儀だ。
今だって、「そういう事だからその日は見てやれない」とか、「いつも通りこなしておいてくれ」とかすればいいのに。
「なら休みでいいですよ。」
「いいのか?」
「はい、本格的なトレーニングは再開したばかりですし、1人でやってまた怪我でもしたら大変ですから。
もし喫茶が終わってまだやれる時間があったらその時に考えましょう。」
「…ありがとう。じゃあそろそろトレーニングに行くか。」
「ですね。」
そう短くやり取りをかわし、2人で並んでトラックへと向かった。
≫157二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:38:14≫154
「いらっしゃいませー。」
新たな来客を知らせる鈴に合わせ、お決まりのかけ声を言う。
2回目のウマ娘化トレーナーによる和メイド喫茶は見事なまでに大繁盛していた。いや、実際は無料なのだが。
担当のウマ娘が友達誘ってきてるのだろうか、と接客しながら色々理由を考えてみる。そんな時。
「いらっしゃいま…スズカ?それにスペシャルウィークも。」
「おじゃまします、トレーナーさん。」
「こんにちは!食べに来ちゃいました!!」
顔見知りの2人が来店する。
てっきり来ないものだと思ってたから少しだけ驚く。
「興味湧かなかったんじゃなかったのか?」
「私が行きたいってスズカさんを誘ったんです。チラシの写真が美味しそうだったので…」
「確かに前はそうでしたけど、今はトレーナーさんがいるので。」
正直ちょっと嬉しい。というのも、いざ着てみると思ったより和服が似合っていたのだ。オシャガチ勢の技術には感心しかない。
そんな感じでせっかく素晴らしい仕上げをしてもらったため、スズカに見てもらいたいと思ってたとこだったのだ。
何はともあれ2人はお客様だ。いつまでも立たせとくわけにはいかない。
「ちょうど席も空いた案内するわ。私についてきて、2人とも。」
その言葉と共に2人を誘導し、座らせる。
「担当ウマ娘がいる時はそこの接客するように言われてるからメニュー決まったら私に言ってね。」
「あ、来る前に2人とも決まってます。まず私は…」
スズカの声を聞きながら、私は手に持った紙にチェックを入れていく。
「注文、承りました。厨房に注文票持ってくから少し空けるね。」
「分かりました!お腹空かせて待ってますね!」
やや急いでほしい、とも言っとくべきか。
スペシャルウィークの声を聞いてそんな事を考えながら去ろうとすると、「待ってください」とスズカが止める。
「ん?追加注文か?」
「いえ…似合ってます、トレーナーさん。」
「…ありがとう、スズカ。」
お客様であるスズカから今1番欲しかったものをもらって、私は今度こそ厨房へと消え…
≫158二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:38:28≫157
「勝負服にも和要素入れましょうか?」
「まずデビューしないからな?」
≫163二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:58:44ルドトレ「そんな、会えないだなんて」
ルドルフ「堅忍不抜……いや、私の思いはその程度で止められるものか?」
「私達は、URAはその意思を認めません」
シービー「ルドルフ……」
マルゼン「ルドルフちゃん……」
テイオー「会長おおおお!!」
ルドルフ「無様ではあるが……乾坤一擲の勝負と行こうじゃないか!!」
ー汝、皇帝の神威を見よ
『劇場版ウマ娘プリティーダービー』
『どきどき!ルドトレビキニバカンス!汝皇帝の職務放棄を見よ!!』
同時上映、オグリの夏休み
抽選で怪獣オグリぬいぐるみが当たる!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part44【TSトレ】
≫19二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:50:15天高くウマ肥ゆる秋。
そんな言葉通り天井の抜けたような快晴のもと、こちらは言葉と真逆に顔の死んだ錚々たるメンツがゲート越しに肩を並べていた。
≫20二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:50:29≫19
トレーナー対抗3200m。
関係各所からアホだなんだとぶーぶーいわれたこのぶっ飛んだ企画は、それでも生徒会と理事長のゴリ押しによって開催が強行された。いやだんだん悪ノリが悪化してないかこの学園。
とはいえ乗り気の奇特な奴も一定数いるのは事実。
ブラトレを筆頭に生徒会所属担当のトレーナーは不甲斐ない走りを見せられないと息巻いている。
スズトレは担当の輝く目をいなしながら内心待ちきれないという様子。
カレトレはパドックでふわりと一回転の後観客への手振りに交えて担当にウインクをそっと送るなどノリノリだ。他所でやれ。
フラトレからも何故だか闘志を感じる。走る機会もありませんしと髪を長くしていたのはなんだったのか。担当が意味深な視線を送っていたのであまり考えないようにした。
驚いたのはテイトレだ。前々から既に脚は完治していると聞いたが、ゲートイン前吹っ切れた様子で担当に3つ指を立てていた。いや何のマークだそれ。こんなレースに三冠があってたまるか。
≫21二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:50:42≫20
……といっても心底驚いているのは自分が出走するという事実だ。
ウマ娘になって以降、フクを変に刺激するのを避けるため、フクの前で走るのは避けていた。
今回の企画も聞いた瞬間何か適当な理由をつけて出走回避しようと思っていた。
だが、フクが妙にしおらしくなってやけに大人しく出走を薦めてきた。その変な気迫に圧されている内に周りに流されあれやこれやという間に今に至る。
正直、自分の走りに興味がなかったかとい聞かれると否定はできない。努めてフクのトレーナーとして日々を過ごそうとは思っていたが内心の欲求を抑えるのは結構至難の業だ。
だからこうしてゲートの中にいると不思議な高揚感を感じてしまい、そんな自分に思わず溜息が出る。
遥か遠くの観客席からうるさい応援が聞こえる。うるさ。なんでこの距離で聞き取れるんだ。ここバックストレッチだぞ。だが悪い気はしない。
軽く深呼吸。各自走り出しの姿勢を構え、……ゲートが開いた。
≫22二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:50:55≫21
各自スタートは順調。伊達にトレーナーとして普段担当のそれを見ていないといった風情で、心なしか得意げに皆が一斉に駆ける。
向こう正面───俺たちにとってはスタート直線だが───を走り抜け、第3コーナーへ。
そこから1000mで脱落するものは流石にいない。後ろでぜーひゅー言ってるカフェトレは皆が見ないふりをしているのでそういうものなのだ。
第4コーナーを回り、1週目のホームストレッチ。
瞬間。地響きにも似た歓声が走者を包む。後方集団にいた俺も例外ではなかった。
トレーナーに向けられる歓声の音圧か?これが……。これ校外秘のレースだよな?生徒と関係者だけでこれ?
……とか思考だけでも冷静にツッコミを入れなければ、心の奥底で震える感情を無視はできない。違う。これははっきりとわかる。俺の感情ではない。
どうにもできない本能ともうひとつの感情に舌打ちをしながら、それでも単純なもので大歓声から容易に聞き分けられる独特の歓声に気をよくしながら、第1コーナーへ。
≫23二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:51:13≫22
2回目の向こう正面に入ったところで、短距離適性の奴らが脱落していく。ここまでもったのは曲がりなりにもウマ娘としての矜持が観客の前でバテるのを抑えたからか。あとカフェトレほどでもないが運動不足のトレーナーも篩にかけられていく。
俺もフクに日頃連れまわされてはいるが運動不足は否めないはず。だが未だに足が軽い。そんなことにも舌打ちをしかける。
2回目の第3コーナー。先頭を走ってきたスズトレのペースが落ちる。それでも先頭を譲ろうとしない意地に火を付けられたか。ここまでついてこれたトレーナーたちがにわかに殺気立つ。
3・4コーナー中間。マクトレが早めのロングスパートをかけ、それを見たブラトレが後を追うその加速は軽く、やつらの担当バカと体力バカには呆れそうになる。前者は見習うべきか。自嘲が漏れる。
後ろのタイトレは……やっぱり斤量不利で走りづらそうだ。観客席のまだ見ぬタイシンに合掌をする。
前のフラトレとルドトレは……まだ様子見か。この様子では第4コーナー中間からが勝負か?
冷静にレースを分析しているこの思考はトレーナーとしてか?ウマ娘としてか?そんな螺旋に陥りそうになった時に、左斜め前方のテイトレが超前傾姿勢を取る。
それを見た瞬間。足が勝手に動いていた。
≫24≫23
横を一瞬ルドトレとフラトレの驚愕が過ぎていった気がする。いい気味だ。違う。
俺は今何をしている?何処にいる?
頭の中にイメージが流れ込んでくる。いつの間にか緋袴を履き、千早を振り乱す自分。これは自分か?
横に誰かがいる。同僚ではない。はっきりとわかる。では誰だ。目を背けたい。声が聞こえる。
横の揺らぎに目線を遣る。微笑み。差し伸べられる手。……いや、その向こう。見えた。はっきりと担当の顔が。あの呆け顔が。
≫26≫24
───黙れ。
訣別の意を込めまやかしを睨む。
俺はマチカネフクキタルのトレーナーとしてこの場を走っている。
平時は最早どうにもできなかった。お前の誘惑に。彼女の誘惑に。
だが、ここで今俺の見せ場を、担当へ向けた意地と矜持の邪魔立てをするなら。
まやかしの向こうの愛バを見遣る。
俺はお前のトレーナーとしてこの場を走っているんだ。
お前に見せてやる。俺の意地と。矜持と。覚悟と。それと。
≫27≫26
まやかしが一層優しく、しかし先程とは違う趣きで微笑む。
何だ。お前もそんな顔ができるのか。アイツには敵わないが。
視界が晴れる。
脚が震える。
意地の塊のようなウマが影を揺らす。
矜持の塊のようなウマが誇りを貫く。
覚悟の塊のようなウマが天へ跳ねる。
心が、揺れる。
だが。
言って見せたんだ。だったら。走り抜けてやる。
叫ぶ。あいつらの絶叫に負けないだろうか。いや。勝ってみせる。
≫28≫27
結局。あいつらには勝てずに4着。"アレ"が無かったらルドトレとフラトレに勝ててたかも怪しい。呆れるな。
地下バ道を歩いていると、担当が立っていた。
言葉を飲み込んだような、そんな様子にいてもたってもいられず。
「どうだった。お前のトレーナーの走りは」
「───っ。」
「…ええ。カッコよかったです。とても。……まあ、さながらマチカネホレナオシタルといった趣でしょうか。えーと。あ、微妙なので忘れてください。」
忘れることにした。
「…ですが!結果がカッコ悪いですね~!私の末脚を見習ってくださいよ~!仮にも菊花賞バのトレーナーさんですよぉ!?あんなにバテバテでぇ!これは次から私の併走占いに……オヤ?どうしました?ゆっくり近づいて?お手てを上げて……っ!イヤッ!カッコよかったです!トテモ!エエソリャモウ!アッアタマニナニカヒビイテ、オ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゜ァ゜ァ゜ァ゜」
秋晴れ。天高く。外では慰労会の煙が上がり始めていた。
≫58二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 10:19:36
≫59二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 10:19:48
≫60二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 10:20:09
≫72二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 10:29:02突貫でかいた。
トレーナー3200m対抗レース。企画を聞いた時はえ?ってなったもののトレーナーもあくまでトレセン学園の職員。理事長の決定に逆らうつもりはない。いつものトレーナースーツをマルゼンスキーと一緒に勝負服風にちょっと改造して河原でトレーニングの合間にマルゼンスキーに並走してもらったり……いやあれ並走か?秒で置いてかれたけど流石マルゼンスキー俺の愛バ。
自分なりに頑張ってみたつもりだ。ゲート入り前になんか予想より来てるお客様達にカレンチャンのトレーナーと一緒に手を振っておく。
「トレーナーちゃーん!」
と、マルゼンスキーの声が聞こえそちらを見れば。
「チョベリグよー!Fooo!」と黄色いハンカチを振ってるマルゼンスキーの姿が。サムズアップで俺は答えるとゲート入りする。そしてオリジナルのファンファーレが鳴り、スタートの合図にゲートが開いた。
[出遅れ][レース苦手][良バ場×]
なんか見えた気がするが普通に出遅れる。マルゼンスキーみたいに逃げやってみたかったのに!
最初こそ順調に走っていたものの1800を超えたあたりから露骨に苦しくなりだし減速していく。前の方は一位争いで盛り上がっているがこちらは最後方、せめてゴールまで、せめてゴールまで走りたい!そんな感じでスタミナが死んだ後方集団は最終コーナーに突入した。その時視界の奥が弾けた。
[紅焔ギア
マルゼンスキーの運転するカウンタックの幻影が見える。いける!せめてゴールできる!
[紅焔ギア/LP1211-ガス欠]
その幻影がボスんとエンジンが止まってボンネットがパカっとひらいた。俺はガニ股で芝に倒れ伏した。他にも何人か死んでいたが何故か会場は割れんばかりの歓声に満ちていた。
≫144二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:10:46タバコカフェトレの3200mレースを上げます
他のトレーナーさん達の描写が薄くなってしまったのはご勘弁を…
トレーナーによる3200m走…こんな事を考えた奴は頭がおかしいのだろうか。
これが担当の為になるのだというのなら走りはするが…自分と彼女らの運動能力の差は凄まじいというのに。
おまけにカフェも遅れてしまうと連絡が来たので姿が見えない…モチベーションもだだ下がりという訳だ。
周りを見てみると自分と同じような感想を頭の上に浮かべているような者達もいたが…それ以上に走る気が満ち溢れているような奴も居た。
生徒会のトレーナー面々はメンツもあるのだろう、気配からは緊張感が溢れているし観客席にファンサービスしているような輩も居る。それでいいのかトレーナー。
…やはり、ウマ娘となったからにはターフは興奮するモノなのだろうか。
蹄鉄付のブーツで足元の草を弄り回すが、土の匂いが鼻を突くだけでいまいち感慨が湧かなかった。
自分はカフェを速くしたいだけだというのに…思わず胸ポケットからタバコを取り出し、火…は流石に付けずに咥える。
ゲート前に並ぶトレーナー達の中には勝負服なる物を着ている奴も居て、なんだか黒インナーにコートの自分が浮いているようにすら感じた。
いや、これでいいんだ…うん、そうだ。
ゲートに入ると、ほんの少し胸の奥で火種が弾ける感覚がする。
これがウマ娘特有の高揚感というやつか。
遠くから聞こえる声援が、やけに耳に届いた。
体制を整え…ゲートが開いた。
≫145二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:11:01≫144
出遅れである。
うん…まぁそうだろうな。
開いた瞬間を知覚するのと自分の脚が前に出る時の差が大きすぎるのだ、普段から運動していないツケがここに出てきている…
集団になんとか食い込もうとはしているが、追い掛けるだけでも精一杯だ。
そもそも筋肉量ですら彼/彼女らには全然届いていないのだから頑張っている方だ、うん。
そんな事を考えていながら、第4コーナーへ突入する。
前のトレーナーとは4バ身といったところか、ぶっちぎりの最後尾を走っていた。
体力は限界に近く、喉は酸素を求めてぜひゅーぜひゅーと異音をあげていた。
キツイ…これがレースか…!
遠くから声援が近づいてくる。
聴覚を支配するような観客の応援の中で…いつもの、あの声がした。
顔を向けると、急いで来たのかボサボサの髪のカフェの姿。
───カフェが、観客席から身を乗り出して喉から振り絞るように声を上げていた。
がんばれ、と…
≫147二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:11:15≫145
瞬間、脚が爆ぜるように前進する。
担当にどうして無様な姿を見せられようか…ああ、なるほど…少し息巻いていた人達の気持ちがわかった気がする。
軽さ故の瞬間的な加速力の高さから、一気に後部集団に追い付く。
明らかに早すぎるスパート。
しかし、その速度のままぐんぐんと伸び…それどころか加速すらしているような気がした。
短距離勢の人達が脱落していくなか、その人波を掻き分けて先頭集団を目指す。
前を走るのは生徒会トレーナーの面々やフラトレやタイトレ…レース前に気合が乗ったメンツだった。
各々の闘志で、空気が揺らいで見えるほどの先頭集団。
思わず、ニイと笑ってしまい…そうか、これがウマ娘のサガと言う奴か。
ちらりと、視界の端に再びカフェが見えた。
咥えたタバコを投げ捨てて、第4コーナーに入る直前…再び…今度は超前傾姿勢のまま急加速する。
色とりどりの闘志の後ろから、全てを塗りつぶすように黒の津波が襲い掛かる。
一斉に飲み込んでやろうかとでも笑うように、集団を突き抜け死んだ目を煌めかせながら、尾を引いて一人が突き抜けた。
最終直線、間違いなく真っ先に飛びだしたカフェトレは…
瞬間、がくんと止まるように急減速しバ群の中に埋もれていった。
残り200m、身体を引きずるように歩き…それどこらかゴールした他のトレーナーに肩を貸してもらいながらも、なんとか最後まで辿り着く。
他の記録に加えて一分半もの遅れ…思わず、乾いた笑いが溢れ出た。
ターフに倒れ込むと他のトレーナーが水分を持ってきてくれる。ありがたい…
しわがれた声ではきちんと感謝の気持ちが伝わったかどうかも分からないが、タイトレはにこりと笑ってくれた。
≫148二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:11:28≫147
観客席のカフェが、駆け寄ってくる。
汗と疲労でボヤケた視界には、カフェがどんな顔をしているかまるで分からなかったが…
ぎゅうと抱きしめられたのは感覚で分かった。
「カフェ…ごめん」
「………!そんな事、ないです…。
すごく、格好良かったですよ…トレーナーさん」
「そっか…」
最下位だというのに、はは…
視界の端ではもう担当と元気に話し出すトレーナー達の姿。
今度からはタバコの本数を減らそうか、だなんて…
少し考えてみるカフェトレなのだった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part45【TSトレ】
≫25二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:01:42寝起きデジトレSS①
https://bbs.animanch.com/board/67824/?res=25
≫26二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:02:35
≫52二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:12:58わたしは普通のハルウララトレ♀。
激動の時代の到来を、病室にいても肌身に感じます。
ネイトレさんがナイスネイチャを連れて来てくれました。
彼女が笑顔でいられることが嬉しくて、
今もその時の事を繰り返し思い出しています……。
────────────────────────────────
「ネイチャ、一緒に病院行かない?」
「……は??」
おでかけに誘ったが反応はイマイチだ。
溜まっていた諸々の雑務を片付け、切り抜け、色々ぶっちぎった結果、
ようやく余裕ができたので、かねてよりの懸案事項を解消することにしたのだ。
「……大丈夫トレーナーさん?そりゃ倒れるならうってつけの場所だけど」
ナイスネイチャが心配そうに、後ろ手を組みながら顔を、目をのぞき込んでくる。
こういう美少女しか許されない仕草をこの子はたまに天然でしてくる。
「いや、垂れ目で目に疲れが出やすい体質なだけだよ。それでどう?」
「いやいや……誘い文句が既にもう病院案件なんですわ」
「頭の病院?」
「正解~。10ネイチャポイント入りまーす」
「そろそろ温泉旅行と交換できるね」
「そんな溜まってたっけ!?」
いけないいけない、打てば響くとはいえ話が進まない。
「ウララトレさんのお見舞いに、ついてきてくれないかな」
≫54二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:13:12病院に到着したころ、ネイチャは小さくため息をついていた。
「最初病院って言われたときさ、重い病気が見つかったーとか、検査入院がーとか、
そういう覚悟が必要な話かと思ったよ」
「覚悟は常に必要だよネイチャ。私は最近そう思えてきた」
「何があったのトレーナーさん……」
「人からウマ娘になった」
「うーーん……!!」
頭を抱えて唸っているネイチャを連れて目当ての個室前まで来た。
「……こういうのはね、インパクトのある先制攻撃が重要なの」
小声でネイチャに伝える。
「討ち入りの相談なら乗らないよ」
「敵は一人。侮れないけど、こっちにはネイチャがいる」
「聞いてないし……とりあえずあたしウララトレさん側につくから」
「……それなら私の散り様、しっかり目に焼き付けてね!」
「そんな大層なことなの!?」
勢いのまま戸を開ける!
「ただいまー!!母さ、ん、……」
「本当に待って!?今母さんって言った!!? ん……?」
ウララトレさんはベッドの上で正座をしてスタンバっていた。
「わたしは母ではありません。そして病院では静かにしてください」
至極まっとうな理由で怒られた。
「……だからそんな年じゃないって言ってるのに」
「やっぱりママの方がよかったですかね」
「ナイスネイチャ担当」
「ごめんなさい」
担当に見せるべき醜態じゃないのに、こんなやり取りがまたできることが嬉しい。
≫55二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:13:23「それで、横にいるのが?」
「えと、はい!初めまして。ナイスネイチャです。……初めましてですよね?」
「ええ。活躍は拝見してましたけど、実は初対面。……うん、かわいらしい」
「ふぇっ!?」
「でしょう、かわいいでしょう!」
「ウララの次にかわいいわ」
「は???」「ん???」
「あ!あの……!」
メンチを切りあう私たちを余所目に、意を決して声を挙げるネイチャ。
「トレーナーさんの、お母さんではない……んですよね?」
混乱してるのかぐるぐる目になってる。やだかわいい。保存したい。
「……こんな誤解をネイチャに与えにきたと」
「ごめんねネイチャ、冗談だよ。母でも義母でもない。……友達だよ」
「はい。中央トレセン学園勤務の女性トレーナーはその実多くはないので、
大体顔馴染みなんです」
「はえ~……」
貴女は男女関係ないのでは?私は訝しんだ。
「ま、私自身はまるで馴染みのない顔になっちゃいましたけどね」
「……自虐できるようになったなら、とりあえず大丈夫だと思います」
ウララトレさんが笑う。そっか、大丈夫だった。大丈夫でいいんだ。
「でも」
「『声』は人間のころとほとんど変わりません」
「うんうん。体格全然違うけど、声聞いただけでトレーナーさんって分かるし」
「……そうなの?」
分からなかった。でも言われてみれば自分の声に違和感を感じてなかった。
のどに手を当てて「あーー」と繰り返し声を出す。
……自分をもう少しだけ好きになれる気がした。
≫56二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:13:36「ムニャムニャ……まだ……まだ食べられる、いけるよ……」
奇妙な寝言が聞こえると思ったら、ウララトレさんの後ろ、
ベッドにもたれて布団に埋もれたハルウララが寝ていた。さすがの図太さ。
「わー……あたし、漫画以外で鼻提灯って初めて見ました」
「女の子が作るものじゃないんですけどね」
苦笑いした彼女は鼻提灯を弾いて消し、ハルウララの頭に手を置いた。
「ハルウララはよくがんばってくれました。
彼女に力添えができたこと、できること……それが今のわたしの誇りです」
「……トレーナー……も、もう無理かも……グフッ」
自然と笑いに包まれる部屋。こんなところがファンの心を掴むのかもしれない。
病院の玄関を出てからすぐ、ネイチャが話しかけてきた。
「お見舞い。どうだった?」
「ネイチャも紹介できたし、話したいことも話せたと思う。
元気なのは他のトレーナーからなんとなく聞いてたし」
「……悩んでたのもなんとかなった感じ?」
「少しだけよくなったと思う。来てよかった」
「ふーん……ま、ネイチャさんはまだまだ発展途上、成長途中だからね」
ネイチャが二歩三歩と歩を進める。
「でもさ、一緒にいるトレーナーさんが悲しいのは嫌だしさ」
振り返った愛バの顔は赤い。
「どうしていいか分からなかったときは、またあたしに言ってよ」
──小さく愛らしい独占欲の発露がこそばゆくて。
──でも夕陽を背にしてはにかんでみせるネイチャがとても眩しくて。
──こんなにも、ああこんなにも。
──うちの子はかわいくてかわいくて、ちょっとかっこいい。
≫57二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:13:51「ああ……。嫁に出したくない……」
「いきなり何いってんの!?」
「どこの馬の骨ともわからない男にやりたくないぃ……」
「大昔の親父か!邪魔になるしさっさと帰るよ!」
「うん……」
≫68二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:16:53≫59
おまけ
ぎゃぐはさまないとしぬえぬじーしーん1
「ま、私自身はまるで馴染みのない顔になっちゃいましたけどね」
「ええ。本当に馴染みのない身体になって……」
「顔って言ったんですよ?」
「……いけませんね。要らぬ毒を吐くところでした」
「いや言っちゃいましょうよ。とんだ裏切り者ですよこいつ」
「ネイチャ!!?」
ぎゃぐはさまないとしぬえぬじーしーん2
「彼女に力添えができたこと、それが今の私の誇りです」
「……ねぇトレーナーさん。私3冠取ったよね?」
「うん?そうだよ」
「春シニアも秋シニアも全部取ったよね?」
「…………そうだよ」
「ウララトレさん。あたし、ウララと対決したことないんだけど……」
「……君のような勘のいいウマ娘は嫌いだよ」
「どストレートに言った!!!」
※マジカルU☆R☆A概念
≫61二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:15:40グラトレが下着を買いに行くSS
「新しい下着……ですか……」
あまり同じ物を使い続ける訳にもいかず、仕方無しにグラスと下着を買いに来たのだが
……正直女性物はよく分からないので
「それじゃ、グラスに選んで貰おうかな?」
「私が……ですか?」
「グラスはどんな下着を着せたい?」
「…………着せ……たい?」
「しっかり選んで欲しいな?……見るのはグラスだからさ?」
そう言うと一気にグラスは頬まで紅潮する
「……想像した?」
「いっ……いえ」
「グラスの新しい下着も一緒に選ぼうか? 今夜はそれで行こう」
「……はい」
そう言いながらグラスと手を繋ぎ店の奥へと姿を消す……
……今夜も楽しい時間になりそうだ
完
≫75二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:19:40「私…ライバル宣言…してみます…。」
「こ、これまでと違うオペラオーさんと私になるの…怖いけど、でも…。」
「言います!オペラオーさんに…挑戦を!自分のために、オペラオーさんのために、私が、私がっ、私が! 変わらなきゃ。」
アドマイヤベガの助力もあり、やっと本人の口から聞くことができたメイショウドトウの意思。これならきっと、彼女は本当の意味で前に進んで行ける。
誰よりも諦めが悪い彼女なら、きっとテイエムオペラオーさえも超えてキラキラする走りを見せてくれる。
「明日から心機一転、ジャパンカップに向けて一緒に頑張ろう、ドトウ。ドトウがもっと自分に自信を持てるように、俺も頑張って支えるから。」
「は、はいい!わ、私も、頑張りますうぅ!」
決意を新たに、また明日、と言って帰路に就く。ふと、いつもなら特に気にしたことはないのだが、なぜかその時だけ三女神の像が目にやたら入ってきた。
ドトウも過去に何度か不思議な力をもらったと言っていた、トレセン学園の謎のパワースポットでありシンボル。
もっとも現在は学園内に広まってしまった『トレーナーのウマ娘化現象』に関わっているのではないかとかで、むやみに触れられないようにバリケードが張られている。
それでも現象は時々発生しているらしく、今の学園はかなり混沌としている。
なぜかウマ娘化した当のトレーナーたちがほとんど順応してしまっているため、あまり深刻さが表立つことはないのだが…。
確かドトウと親しくしてくれているマチカネフクキタルのトレーナーも少し前に巻き込まれてしまっていた。フクキタルによく似た容姿をしていて、男性であった頃の彼を知る者としては今でも少しだけ慣れない。幸い性格などはあまり変わっていなくて、頼れる先輩トレーナーのままだったのは本当に安心した。
≫76二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:20:28≫75
遠目で三女神像を眺めていた時間はほんの数秒だったと思う。帰ろうと思い三女神像に背を向けた瞬間、俺はひどい頭痛に襲われた。
あまりの痛さに立っていられなくなり地面に座り込む。現状把握も正常な思考もできないまま、謎の幻覚が視界を覆う。
それは暗闇の中、二人のウマ娘が光に向かって駆けていくような情景。
俺はただふらつく足で、先に行く二人を追おうとする。ただ夢中に先にある光に手を伸ばし続ける。やがて光に手が届きそうになった瞬間…。
視界が開けた。謎の暗闇の空間ではなく学園の地面が映り、さっきまでいた場所に俺は座り込んでいる。
頭は少しまだ痛むが普通に立ち上がれる。幸いにも近くに人の気配はなく、倒れこんだ時を見られたということはなさそうだ。それにしても…。
嫌な予感が全身を駆け巡る。いやこんな予感は外れてくれないと困る。悪い方に思考を働かせるな。
以前に想像したことが無かったわけではない。あまり被害らしい被害は出ていなかったが、俺は前から正直怖くて仕方がなかった。
学園を少し離れることも考えたが、ドトウを一人にして置いていくなんてことはできなかった。ただのオカルトなんかよりもドトウの隣にいて助けてやらなければいけないと、そう必死でいるうちに頭から追いやられていた懸念。
「…早く帰って今日は早く寝よう」
徐々に早足になっていくのを自覚しながら逃げるように俺はトレセン学園から出る。悪いことは考えないように、ただ一心に、明日からのこととドトウのことだけを考えて…。
秋も終わるというのに汗が止まらず、高熱にかかった時みたいに頭に靄がかかったような感覚に襲われ続け、帰り道の記憶はほとんど残っていない。
ただ自宅の玄関にたどり着きドアを閉めた瞬間、俺は崩れるように倒れた。
≫77二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:21:08≫76
ドアの隙間から差し込む光と外の喧騒で目が覚める。意識を起こしていくのと同時に目覚めたことを後悔した。
…自分が自分でないような感覚というのはこういうことなのだろうか。胸と腰の下あたりにある異物と、音が聞こえる位置がやや上になっているのが特に顕著だった。
「…なんでだよ…」
俺ではない誰かの声が部屋に響く。なんで。なんで。なんで。しかもよりによって今、この時期に。言葉が頭の中で回り続ける。
ドトウだってトレーナーのウマ娘化現象のことぐらいは把握している。俺が話せば理解はしてくれるだろうし、助けてだってくれるかもしれない。ドトウは誰よりも優しい子だから。
同時にドトウは不器用な子でもある。昨日の決意の後すぐにこんな現実を突きつけられたら絶対に混乱する。きっとトレーニングにもレースにも支障が出る。
ジャパンカップまで時間は正直あまりない。こんな俺の身に起きた都合で、ドトウが踏み出し始めた一歩にノイズが入ってしまう。今この時期だけは、それは絶対にあってはいけないことだったのに。
…しばらくは隠し通さなくてはいけない。ジャパンカップ、いや年末の有馬記念までは少なくとも必ず。
嘆いてばかりいては、進めない。
「…まだ、大丈夫」
ドトウだってあんなに頑張ったんだ、彼女のトレーナーである俺がここで立ち止まってはいけない。
納得は決してできそうにないが、それでもこれから自分のしなくてはいけないことを必死に考える。そして一つの案とも言えない何かが浮かび上がる。
これしか、ない。
体を起こして立ち上がる。サイズが合わなくなったのか、昨日着ていた服がずるずると脱ぎ落ちていく。自分ではなくなった体に気持ち悪さを感じつつも、これからは我慢しなくてはいけない。
時計を見ればすでに午前9時を過ぎていた。ドトウとのトレーニング開始予定も9時に決めていたから遅刻は確定してしまっている。
すぐに謝罪と遅れる旨の連絡を送りながら、準備を進めていく。
ふと、鏡に映った自分ではない顔の誰かに向かって少しだけつぶやいた。その言葉はまるで自分に言い聞かせたようにも思える。
「ドトウたちの邪魔だけは絶対にするなよ」
その声も、姿も、今はただ気持ち悪い。
≫79二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:21:42≫77
私は、頑張ります。オペラオーさんのライバルになる、そう信じてくれるトレーナーさんのためにも。
昨日のこともあってか、今朝の目覚めは自分でも驚くくらいばっちりで。シャカールさんもちょっと驚いていたけど、頑張れよ、と準備を手伝ってくれて。
9時の開始に間に合うように、ドジを踏まないように、ゆっくりしっかり、集合場所へと向かいます。
「ト、トレーナーさあぁぁん…。お、お待たせしましたぁぁぁ…」
時間は9時ぴったりくらい。いつもならトレーナーさんはずっと早く着いていて先に待っていてくれているのですが、今日はその姿が見えません…。
…も、もしかして私また集合場所を間違えてしまってたり…? あぁぁぁほんとにドジでごめんなさいぃぃぃ…。
急いで場所を確認しなおそうとするのと同時に、カバンの中からスマホの着信音が鳴りました。慌てて取り出してみるとそのトレーナーさんからです。
『すまないドトウ。俺の都合で申し訳ないんだが開始時間を1時間遅らせてほしい。10時までには必ず着く。もう少しだけ待tt』
最後の途切れた文だけ気になりますが、どうやらトレーナーさんがまだ来ていないというのは本当らしいです。場所ももう一度確認しましたが私のいる場所で間違いなさそうでした。
「私が遅刻しないで、トレーナーさんが遅刻…珍しいですぅ…」
その場で時間まで待とうかとも思いましたが、周りからはだんだんと、他のウマ娘さんたちがトレーニングをしているらしい声も聞こえてきて、思い直しました。
「トレーナーさんが来るまで、準備運動しておこう…かな…」
そうして私は少しだけ転びそうになりながらも、走り始めました。
≫80二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:22:17≫79
ちょうど一時間くらいが経ったでしょうか。私の方に近づいてくる人がいるのに気が付きました。感覚で、間違いなくトレーナーさんだと思ったのですが…。
「あ、トレーナーさん…!おはようござ…いま…すぅ…?」
変な恰好でした。いえ、そもそもトレーナーさんかどうかもわかりません。少なくとも私が覚えている限りでは、トレーナーさんがこのような恰好で来たことはありません。
まずコートを着てフードをかぶっています。でもサイズが全然合っていなくてかなりぶかぶかで、手に関しては袖に完全に隠れてしまっているくらいです。それになぜかスケッチブックとペンを持っています。ズボンは普通ですが靴は底がいつもより厚いようにも見えます。さらに極めつけは大きめのサングラスとマスクをしていることです。
胸にトレセン学園のトレーナーバッジを着けて、登録証を首にかけている以外、不審者にしか見えません…。
いくら私がドジで抜けているとはいえ、さすがに怪しいと思いました。
「えっとぉ…あのぉ…本当にト、トレーナーさんですかぁ…?」
すると不審者さんは持っていたスケッチブックを開き、書きにくそうにしながらも何かをペンで書いていきます。
『すまないドトウ。疑問に思うのも無理はない。この格好には深いわけがあって』
…。
『まず筆談とマスクについてだが、これは俺がしばらく声が出せない病気にかかったから』
…。
『サングラスと大きめのコートは、医者から日光に素肌をさらさないようにと指示されたから』
…。
『昨日帰ってからどうにも調子が悪くて病院に行ったんだ。そうしたら結構大変で治るまで何か月かかかるみたいで』
『でも声が出ないくらいで日常生活に支障はほとんどないし、ドトウが頑張らなくちゃいけない時期に離れるなんてできないから』
…。
『ちょっと変かもしれないけど、俺はちゃんとドトウのトレーナーだから。だから一緒に』
『オペラオーに、勝ちに行こう』
≫81二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:22:47≫80
スケッチブックに書いては見せてめくり、もう一度書いては見せる。
まだ手の力加減に慣れず、筆跡は少し歪んでいる。スマホはドトウへメッセージを打っている際に誤って画面を割ってしまった。
我ながら頭のおかしい嘘をついているという自覚はある。でも頭のおかしくなるような現象が起きてしまった以上、良識の範囲内で解決することは不可能だと察した。
ドトウならわかってくれる、姿が変わっても変わらない気持ちが伝わってくれる、そう信じるしかない。
大きくなった胸部はむりやり締め付けておさえた。生えてしまった耳と尻尾は表に絶対に出ないように衣服に隠れるよう固定した。おかげで常に鈍い痛みがあるが、こんなのは些細なことだ。
変わった声は聞かれないように。変わった顔は見られないように。せめてドトウがジャパンカップ、そしてその先の有馬記念を走り切るまで、俺は変でも、変化した姿を誰にも晒してはいけない。
やがてドトウが口を開く。
「う~ん…、わ、わかりましたぁ。い、いやよくわかってはいないんですけどぉ…。でもなんとなく、今目の前にいるのはトレーナーさんだって、わかる気がするので…」
「そ、その、はやく病気が治るように…、私も毎日お祈りしますぅぅ…。だから、が、頑張りましょうっ!」
ありがとう、と言葉にできない代わりに俺は精一杯うなずくことしかできない。
心の中で何度も謝る。すまないドトウ。これはドトウの優しさに甘えた俺の弱さだ。
でも成し遂げてみせる。君の決意に、障害があってはならないのだから。
≫82二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:23:13≫81
二年以上一緒ですから、トレーナーさんのことは多少わかっているつもりです。
ドジでダメで自信の持てなかった私を信じてくれている人。私が頑張れるように背中を優しく押してくれる人。
だから感じます。トレーナーさんには今何か普通じゃない事情があること。そしてそれをごまかしてまで強引に私のところにいようとしてくれていること。
変な恰好には慣れないけれど、でも私のことをそこまで思ってくれているのは素直に嬉しいです。
でも同時に思ってしまいます。トレーナーさんにそう思わせてしまうほど、私はまだまだ頼りないんだって。
『私の…貴方の担当の前でなら、隠し事はしなくてもいいんじゃないですか…?』
そう私が言えたなら。トレーナーさんはどんな反応をするのだろうか。
でもトレーナーさんはそれを望んでないと、なんとなく分かってしまいました。
だから私は、私にできることを…。
トレーナーさんに迷惑をかけながら、オペラオーさんたちの待つ舞台に、少しでも相応しくなれるように。
≫83二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:23:44≫82
ドトウはジャパンカップを無事に走り切った。今までのオペラオーにどこか遠慮していた走りとは違い、彼女を超えていくためにライバルとして挑んだ。
結果、ドトウの走りを受けたオペラオーがさらに上回る底力を見せ、ドトウはクビ差で二着だったが、ドトウはすさまじい速度で実力を伸ばしている。
これなら大丈夫。ドトウなら乗り越えていける。その思いがジャパンカップを経てより固い確信へと変わった。
不安であった俺との筆談でのトレーニングも、最初こそ戸惑いながらだったが、今では特に問題なくコミュニケーションをとれるくらいには慣れてきた。
有馬記念まであと少し。それまでは…。
今日のトレーニングの準備をしていると、ドトウが珍しく二人のウマ娘を連れてきているのが分かった。
「おや、噂は本当だったようですねぇ。ドトウさんのトレーナーさんが怪しい恰好をし始めたというのは」
「はーはっはっは!ドトウのライバル宣言に加えそのトレーナー君もヴィランになり切るとは!僕を倒すための心意気の表れということかな?素晴らしい!」
「い、いや…トレーナーさんはぁ…病気のためにぃ…仕方なくぅ…」
一人はマチカネフクキタル。ドトウのトレーニングの時にたまに顔を出して助言してくれる占い好きの友人。
もう一人はテイエムオペラオー。今の世代で名前を知らない者はいない、ドトウの憧れであり、そして超えるべき覇王。
「ふむ…病気というならあまり外を出歩かずに安静にしていた方がいいのでは?」
「その通り!万全の状態の好敵手を相手してこそ、覇王の輝きはより一層増すのさ!」
他の人に見られることを極力避けてきはしたが、それもそろそろ限界が来たらしい。
トレーニングの指導のために来ているのだから、絶対に見られないなんていうことはそもそもあり得なかったのだ。
≫84二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:24:05≫83
俺の姿形は少しずつトレセン学園のウマ娘たちの話題に挙がるようになってしまった。そもそもドトウであったから受け入れてくれただけであって、
本来の反応としてはフクキタルやオペラオーが正しい。ドトウもかなり二人の対応に困っているようだった。
「えぇぇっと、それはぁ…そのぉ…その通りなんですけどぉ…」
二人はかなり興味深そうに俺の恰好を見てくる。どうしたものかとスケッチブックとペンを手に考えていると、
「と、とにかくっ!私のトレーナーさんは、だ…大丈夫なのでぇ!ってうわぁぁぁぁぁ!」
その時だった。近くの茂みががさがさと揺れ、なぜか急にタヌキがドトウめがけて飛び上がってきた。突然すぎる出来事に反応なんてできず、タヌキを受け止めきれずにドトウは体勢を崩し、近くにいた俺にぶつかる形になった。それなりにつよい衝撃に視界が揺らぐ。倒れるドトウの手は俺のコートをつかみ、そして一緒に倒れこむ。
「あぁぁぁ…やってしまいましたぁぁ!トレーナーさん、ご…ごめんなさ…」
ドトウの声は驚きのあまり途切れた。
鎧がはがれる。仮面も、今までなんとか取り繕っていた「メイショウドトウのトレーナー」という形が無音で崩れ去る。
耳。尾。変わり切った顔。短く震えて漏れ出る声。俺ではない誰かを、見られてしまった。
「まさか、ドトウさんのトレーナーさんも…?」
「…なるほど!そういうことか…」
思考がパニックに陥る。壊れた頭で、周りの声が何を言っているのかも理解しないまま。
俺はドトウを置いて、逃げてしまった。
≫85二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:24:38≫84
私が、トレーナーさんの守っていた何かを壊してしまった。…それだけは直感で分かった。
やってしまったことの重大さに気づき、頭が真っ白になる。トレーナーさんが走って行ってしまった方角をぼんやりとながめ、ただ立ち尽くす。
「……ウさん!ドトウさん!」
誰かが私を必死に呼ぶ声がします。
「気をしっかり持つんだドトウ!確かに驚きはしたが、このまま立っていても解決しない!」
よく聞いた声。私の大切な友達と、私の憧れの、二人の声が。
「………はっ!フ、フクキタルさんっ!オペラオーさんっ!ど、ど、どうしましょうぅ…!?
ト、トレ、トレーナーさんがぁ…!ウマ娘になって…?どこかに行ってしまいましたぁぁ!」
混乱する頭で叫びました。トレーナーさんがどうしてウマ娘になっていたのか、そしてどうして逃げて行ってしまったのか。
たった今起きた何もかもが、私には分かりません…。
「ドトウ、とにかくゆっくり落ち着いて聞くんだ」
オペラオーさんが真剣な面持ちで私に話しかけます。
「君も少しは知っていると思うが、今このトレセン学園は妙でね。僕たちのトレーナーがウマ娘になってしまうという奇想天外な現象が起きているんだよ」
「は、はいぃ…私も聞いたことありますぅ…」
「で、さっきほんの少し見ただけだが…。君のトレーナー君もその現象に巻き込まれてしまったとみていい」
「…」
「彼が逃げ去ってしまった本当の理由は僕には想像がつかないが…、それでもきっとウマ娘になってしまったことが深く関わっていることは間違いないだろう」
頭を整理します。ということは、ジャパンカップの前、突然筆談を始め、変な容姿をするようになったあの時に、きっとトレーナーさんはウマ娘になってしまったのかもしれません。でもどうして、トレーナーさんは隠し続けていたのでしょう?
≫86≫85
「今までが特に大きな問題になっていなかっただけで、やっぱり自分の姿が変わることに恐ろしさは感じるんでしょうねぇ。私のところのお姉…じゃなくてトレーナーさんは、最初戸惑ってはいましたがすぐに順応したので何とも思わなかったんですけど。私もなんだか慣れちゃいましたしねぇ」
「とにかくだ!彼を追って話を聞かなくては解決しないことは確かだ。そして彼を探す役割は…ドトウ。君にしかできないことだ」
トレーナーさんを探して話を聞く。私にしかできないこと…。
「行くんだドトウ。できるね?」
「大丈夫ですよドトウさん!この幸運が詰まった私愛用の水晶玉をお貸しします!この水晶玉がきっとドトウさんのトレーナーさんの場所まで導いてくれるはずです!」
そう言ってフクキタルさんはどこからともなく取り出した水晶玉を私に差し出します。私はそっと落とさないように受け取りました。
「わ、わかりましたっ!私、頑張ってトレーナーさんを見つけてきますぅっ!」
「僕たちも何か手がかりを見つけたらすぐに知らせる!行ってきたまえ!」
オペラオーさんとフクキタルさんにはまた助けられました。私一人ではもしかしたら進むのにもっと時間がかかっていたかもしれません。
目指すは水晶の光る先。トレーナーさんのもとへ。
遠慮も隠し事も、もう終わりにしてください、トレーナーさん。
≫87二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:25:34≫86
俺は自分が嫌いだった。何も取り柄がない自分が。他人みたいに輝けない自分が。
それでも、トレセン学園でトレーナーになって、ひょんなことからメイショウドトウのトレーナーをすることになって。
俺は救われていた。自分では輝けなくても、誰かを輝かせる手助けはできるんだって。
いろいろなことがあった。でも、どんな時も充実していた。ドトウと一緒に歩んできた日々は楽しかった。
メイショウドトウ。誰よりも優しく、誰よりも諦めが悪い、誰よりも強いウマ娘。俺は彼女を信じて一緒に進んできたから、
自分の価値が少しはあるんじゃないかと思うこともできた。それなのに。
たかが姿が、性別が変わっただけ。と誰かは言うかもしれない。でもそれは俺にとっては自己を否定されたことに他ならない。
『メイショウドトウとともに歩んできたトレーナー』という形は否定され、残されたのは誰ともわからないウマ娘の姿。
誰が受け入れることができる。やっと手にできた自分の生きる価値を否定されて、俺には何が残されているというのだろう。
そんなことを思いながら、俺はさっきのことを思い返す。
我ながら何をやっているんだろう。パニックで逃げ出すなんて子どもじゃあるまいし。もう、あの場所には戻れそうにない。
ドトウにはなんて説明しようか。こんな勝手なことばかりしてさすがに愛想を尽かされただろうか。ドトウの優しさに俺はずっと依存していたのかもしれない。
後はマチカネフクキタルのトレーナーに任せようか。彼、いや今は彼女か。フクキタル経由に事情を聞いてくれるかもしれないし、何より人柄が信頼できる。
ドトウもきっとうまくやっていけるはず。
そう全てを諦めて最後の連絡を取ろうとした時、スマホが壊れていることを思い出す。
仕方なく立ち上がり、自宅に帰ってから連絡をしようとそう思った時。
「ト、トレーナーさぁん!み、見つけましたぁ…!」
ジャージを汚れまみれにしながら、メイショウドトウは現れた。
≫88二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:26:04≫87
「どうして場所が分かったんだ…?いやそれよりも、俺がトレーナーだってわかるのか…?」
学園からかなり遠い山奥のはずだ。それに何より、俺の容姿はドトウと長く過ごしてきた男性の人間の時のそれではない。それなのに。
「フ、フクキタルさんの水晶が案内してくれましたからぁ…。そ、それに服装とかも…。なにより雰囲気が、トレーナーさんだってわかります…」
息を切らしながらも、ドトウはまっすぐに、震えながらも強くこっちを見つめてくる。俺はそれに耐えきれず目線をそらしてしまう。
何か言わなければいけない。感謝か、謝罪か、別れか。俺が言葉を選びかねていると、
「わ、私はっ!トレーナーさんが何に苦しんでて何を悩んでるかなんて全然分かりませんっ!
でも、私は貴方に勇気をもらいましたっ。貴方のおかげで成長できましたっ。あのオペラオーさん、『覇王』に並べるところまで来たんですっ。
だから言いますっ!一人で悩まないで私に任せてくださいっ!貴方が教えた私をもっと信じて頼ってくださいっ!
姿形が変わって不安なら私が支えます!不安なんて忘れるくらいの輝きを、私が持てるだけの光を貴方にあげます!
だからそんな顔をしないで戻ってきてください!私に遠慮して隠し事なんてしないでください!
私にも、迷惑をかけてくださいぃぃぃぃぃぃぃ!」
静寂の中、ドトウの必死の叫びが響き渡る。
俺の口から言葉は出なかった。
でもせき止めていた何かが壊れたように、涙が溢れてとまらなかった。
無意識にドトウの方に体を預けてしまう。感情は治まりなんてせずに、ただただひどい泣き声を空に響かせる。
小さい子どものようにずっと。俺は意識を失うまで泣き続けた。
≫89二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:26:35≫88
「んで、サングラスとマスクは外れたが、結局クソデカコートはそのままと」
「…ウマ娘の見た目って死ぬほど恥ずかしいんですよ本当に。なんで先輩たちはみんなはしゃいでいられるんですか。」
「まあアホばっかりだからな」
「じゃあ俺はアホの仲間入りはしてないってことですね」
「お前はお前で違う意味でアホだとは思うけどな。ほら、そんな意地張ってないでフード取って楽になれ」
「やっ…、本当に勘弁してください…」
俺をからかって意地の悪い笑みを浮かべるのはマチカネフクキタルのトレーナーだ。今はドトウとフクキタルの並走トレーニングのために同じ場所にいる。
彼女?には本当に世話になった。あの日意識を失った俺の面倒をしばらく見てくれたのも、俺の現状を知っていろいろと手配してくれたのも彼女?だった。
「…平気か?」
「平気じゃないですよ。この見た目には慣れないし、まだ気持ち悪いです」
「そんなに悲観するなって。男のお前より何倍も可愛いぞ」
「…元男に容姿をそんな風に評価をされる時がくるなんて、この世はもう終わりですね…」
「ははっ、そんな返事ができるくらいには回復してんじゃねえか」
そう笑って彼女はフクキタルに呼びかける。
「今日はお疲れさん。おーいフク!今日のトレーニングは終了だ!帰るぞー」
「あ、待ってくださーい!トレーナーさーん!」
フクキタルと彼女は練習場を後にする。もうだいぶ日が傾いてきた。
「今日もお疲れ様、ドトウ」
「は、はいぃ…、お疲れさまでしたぁ…」
ドトウに飲み物とタオルを手渡す。彼女はいつもとなにも変わらずそれを受け取る。
あの日、ドトウは俺を見つけてくれた。もっと頼ってくれと、そう言ってくれた。言わせてしまったのだ。その意味を俺は忘れてはいけない。
「あれ…トレーナーさん…、コート脱いでも大丈夫なんですかぁ…?」
「ドトウの前だけでは恥ずかしくても隠さないって約束したから。少しずつ頑張ってみるよ。…ドトウがそうだったように」
いつか、二人でお互いをもっと誇れるように。
終
≫112二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:49:30「頑張ってください!!トレーナーさん!!」
「…何度も言ってるけど適性距離じゃないし期待するなよ…?」
目をキラキラと輝かせるスズカにそう念を押しつつ、ゲートの中へと入る。
トレーナー対抗3200m、生徒会と理事長による半分ゴリ押しで開催された企画だ。
…いや、トレーナー対抗までは分かる。ウマ娘化トレーナーもすっかり普通にレースできる人数に達したし。だけど問題は距離だ。
なぜ3200mを選んだ??普通適性率の高い中距離、もしくは適性なくてもほぼ確実にスタミナが持つ短距離では??
最長のGIを選出した意図が全く分からないが、ひとまず置いておこう。
これまでのスズカとの並走からして私の距離適性は中距離とマイル。長距離の中でも更に長い今回のに出る必要はない、はずだった。
「トレーナーさん、申し込み終えてきましたー。」
流石の大逃げ。恐るべき俊足。気づいた頃にはもう遅い。こうして無事(?)私の出走が決まり、今に至る。
…さて、出るからには当然勝つつもりで挑まなければならない。
こちらの有利なとこは日頃からスズカのトレーニングに付き合ってること。要は経験の差だ。
一方で不利な点は不適性距離によるスタミナ不足。逃げてもバテちゃ終わり。
特にブライアンとよく走っててかつ長距離適性のあるブラトレは1番の脅威と言える。
「ふぅー…」
ゲートに入り、目を閉じて心を落ち着かせる。
あえて中盤でスピードを抑え、後続との差を維持するだけに留める。
これが今回の、勝つための作戦だ。序盤はスズカのように思いっきり逃げて差を5~7バ身程度に開き、そこからはあえてその差を維持し続ける。
そうする事でスタミナをギリギリまで温存し、終盤に持ち越す事ができるだろう。
「…よし。」
実況の声で目を開く。
そして…ゲートは開かれた。
≫113二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:50:00≫112
出だしは好調、スズカと鍛えた逃げ足で一気に他を離していく。
だが想定よりもペースが早い。ブラトレとマクトレ、テイトレ辺りか?その3人が逃がさないと言わんばかりにいい速度を出してきてる。
1000m、圧をかけてきていた3人がやっとこさ速度を下げてくれる。が、正直かなりスタミナを持ってかれた。
1600m、ちょうど中間地点だが残りスタミナはざっと見積もって3割、よくて4割ほど。最後まで持つ気がしない。
2200m、終盤に突入し、後続が一気に加速する。
差し返すほどのスタミナはとてもじゃないがない。ならば…逃げるしかないだろう!
負けじとこちらもその速度を一気に上げる。
残されたスタミナが一気に消費され、息が荒くなり始める。
2500m、長距離に突入。作戦のおかげでまだスタミナはかろうじて残っているが、後続がその差を徐々に詰めてきている。
2700m、ついに先頭を奪われる。メンバーは6人、ブラトレ、マクトレ、テイトレ、フクトレ、フラトレ、ルドトレ。
スタミナももうほとんど残っておらず、脚が重くなるのを感じる。
…ちくしょう、と心の中で叫ぶ。無謀と分かってたとはいえ、勝ちたかった。
そうしてる間に2800m、最終直線へとたどり着く。
────ゴールの先で待つ、スズカが見えた。
「…は、あ、ああぁ…!!」
無理やりにでも肺に息を取り込む。
とっくに枯れ果てたスタミナを根性で代用し、限界以上の力を以て脚を動かす。
2900m、さらに速度が落ちる。
3000m、息が苦しい。
3100m、視界が霞む。
…3200m、先頭集団から大幅に遅れ、ゴール。
≫114≫113
「トレーナーさん!!!」
「ス、ズカ…」
力尽き、地面に倒れそうになった私をとんできたスズカが支えてくれる。
「ご、めん…1着…取れ…」
「全然気にしないでください。最後まで諦めずに走りきったその姿、凄かったです。またいい景色見させてもらいました。」
「そか…なら、よか…た…」
空気を肺に取り込むのにせいいっぱいな口で途切れ途切れながらもそう返す。
ヤバい。今にも気を失いそうなレベルで意識が朦朧としている、頭が回らない。
が、これ以上スズカに迷惑をかけたくない。
用意されたイスに座らてもらい、意識をハッキリさせるために、ゆっくりと呼吸をしていく。
「…あの、トレーナーさん。」
「ど…うした…?」
「…私、やっぱりトレーナーさんのトレーナーになりたいです。
トレーナーさんは私の走りを「みんなに夢を与えるもの」だと言ってくれましたよね。
同じ、なんです。私も、トレーナーさんの走りは多くの人に夢を与えるものだと感じたんです。
自分の方も疎かになんかしません。…なので、お願いします…!!」
スズカが頭を下げる。
頭が回らない今、正直何を言われたか理解できてない。
だけど、スズカが頭を下げてまで頼むということは、相当の覚悟を持ってるのだろう。
「…い、いよ…」
「…!!」
「がん、ば…るん…ぞ…」
「…はい!!!!!!」
スズカの顔が歓喜一色に染まるのが鮮明になってきた視界に映る。何かは分からないけど、よほど喜ばしいものだったんだろう。
≫115≫114
「ついに決意固めたのね…」
そん後ろから声がかかる。振り向くと比較的仲のいいグルトレだった。
「決意…?」
「ほら、さっきスズカの提案飲んでいたでしょ?」
「ん?ああ…ちょっと待って、あれ私絡みなの?」
「うん?当然でしょ?」
…なんだろう、猛烈に嫌な予感というか、やらかした気がしてきた。
すっかり回復した脳をフル回転し、何があったかを思い出し────
「…あああああああ!!!!」
自身のやらかしに盛大に叫んだ。
「…やった…やった…!!」
「待ってスズカ!違う!!違うんだ!!あの時はまだ意識が朦朧として!!」
「まずはトレーナーの資格取るとこからよね…勉強頑張らなくちゃ…」
「ホントに待って!せめて話し合いを!!!!」
しばらくの間、レース場に私の絶叫が響き渡った。
≫132TSセイトレ概念提唱者21/09/26(日) 13:01:22「ミーティングもこんなところかな」
「はーい、お疲れ様でーす」
夕暮れ時より幾分日が高い時間、ミーティングも早めに終わる。
模擬レースの後という事で私の疲労抜きにトレーニングも軽くしてくれていた。
「いやー、何時もこの位ならセイちゃん助かっちゃうんですけどねー」
「…疲労抜き終えたら何時ものメニューに戻してくからな?」
「はーい」
釘を刺すように伝えるトレーナーさんの言葉を聞きながら時計を見る。
ゆっくり休む時間をくれているだけあってまだ時間に余裕がありますねー。
「それじゃトレーナーさん、一つ相談したい事が」
「何?」
「買い物行きましょう?服とかー、日用品とか!」
ビクッとトレーナーさんの耳と尻尾が跳ね上がる。
私よりも身長が縮んだ影響かトレーナーさんの耳は随分大きく、時に顔より感情を表してくれる。
おかげでセイちゃんはトレーナーさんを引っ掛けやすくて助かってまーす。
「スカイの疲労抜きの為の休みだから」
「えー、トレーナーさんはセイちゃんのお休みに付き合ってくれないんですかー」
「…スカイの買い物ならいいよ」
「やったー、流石トレーナーさん!それでですね──」
≫133TSセイトレ概念提唱者21/09/26(日) 13:01:37仕事用のスーツ、髪や尻尾のケア用品、私服に化粧品とプランを話すとみるみるトレーナーさんの耳がペタリと倒れていく。
イジメてるみたいになってますけどココまで何も用意してないトレーナーさんも悪いんですよー?
「俺はスーツとジャージがあれば良いんだけど」
「トレーナーさん、身嗜み整えるのも社会人の礼儀ですよー」
「そうなんだけども…私服はジャージかスーツで良いんじゃ」
「良いじゃないですか、担当の為に一肌脱いでくださいよトレーナーさーん!」
「女物は気が進まない…」
「えー、私の勝負服はすぐに着てくれたじゃないですか」
「それは…」
トレーナーさんが体を縮こまらせて押し黙る。
逃げるように視線を泳がせていく先を見ると私の勝負服、そんなに気に入ったの?
「しょうがないなぁ、似たような服ちゃんと見繕ってあげますから」
「いや俺はスーツかジャージで」
「良いんですかー、着せ替え大好きな人達のところに連れて行っちゃいますよ?」
「見繕ってください!」
「にゃはは~、りょうかーい」
≫134TSセイトレ概念提唱者21/09/26(日) 13:01:57「それで貴方のトレーナーさんもスーツの丈が合ってたのね」
「うん、やーっと買いに行ってくれてね。でも大変だったんだよ、採寸に影響出るから厚底ブーツ脱がせたり」
「気持ちは買うけどなんで履いてきてるのよ」
「色々と譲れないものがあるんだって。特に下着買う時大変だったんだよ」
「抵抗あるでしょうね、今までずっと女性ものを避けてたんですもの」
「そうそう、まず下着を買わなきゃいけないと連れて行ったらトレーナーさん逃げ出しちゃってね」
「ショッピングモールで何をやっているのよ!?」
「トレーナーさんの腰にしがみついて引っ張って連れて行ったよ、ちょっと憔悴しちゃったけど」
「本当に何をやっているのよ!!」
≫152二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:12:04ターフを走る。
それ則ちウマ娘の本懐というには、些か多様性に欠けると今はハルウララのトレーナーを務める女史に諌められたことを思い出す。
而して私こと、テイエムオペラオーのトレーナーも今はウマ娘であることから、この芝3200m走には僅かな高揚を感じているのだ。
例えそれが、凡走だったとしても。
私は内臓機能から脚質に至るまで、知り合いの教授がいる大学病院で検査を受けてきた。
結果として、私の脚質は障害走向きであると明らかになっている。
最高速度に恵まれないが、スタミナはあり、膝や腰は強靭、ということだ。
故に私が取った作戦は、最初からハイペースに逃げウマに食らいつくこと。つまり追いの逃げだ。
先行バには前段階で差をつけ、逃げウマに常にプレッシャーを与える。世紀末覇王の黒子にしては上出来の、脚引きウマと言えよう。
而して結果は凡走。元より一位は期待していなかったが、先行バ達の若い情熱に勝つには速度が足りなかった。
「良い走りだったよ、トレーナー君」
「ああ……最後まで息を乱さず、完走できてよかった」
世紀末覇王、テイエムオペラオー。
そのトレーナーとして、着順こそ凡庸でも、最後まで胸を張っておきたい。そういう見栄が私にもあった。
「さて……完走できなかった組に渡す、差し入れを用意しておこう。こういうところで恩を売っておかねば」
「素晴らしい奉仕の心だよトレーナー君! さあ、どんどん配りたまえ!」
スポーツドリンクを詰めたクーラーボックスを抱えて、私はオペラオーと共に駆け出す。
私はテイエムオペラオーのトレーナー。
常に優秀な黒子なのだから。
うまぴょいうまぴょい
≫169二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:21:13『ある科学者の推論』
「先日はありがとう。まさかあそこまで大盛況になるとは思わなかったがね!」
そう言って俺の目の前で紅茶のカップを傾かせているのは、トレセン内で最もマッドな科学者ともっぱらの噂、いや事実であるアグネスタキオン。
アホ企画の発起人であり、最初に俺ことブラトレとマクトレに話を持ちかけてきた張本人でもある。
「まあ新鮮な気分ではあったが、あそこまで規模を大きくする必要はあったのか…?理事長やたづなさんまでノリノリだったし」
「まあ秋のイベントとして受理されたわけだしね。それに私の研究にとっても、予算が増えることは喜ばしいことなのだよ」
「いえまあ、それは…良かったですね」
ケラケラとタキオンが笑う。今でこそ色々と世話にはなっているが、実験対象になるとは思わなかったから最初はビビり散らかしたものだ。
「さて、本題に入ろう。今回のレースは他でもない、君たちトレーナーがウマ娘に変貌してしまった現象についての研究が主目的だ。今回のレースで分かったのはやはり各々脚質があること、個人差が非常の出ていること。まあここらはすでにわかっていたことだがね」
そういうと一呼吸おいて、タキオンは言葉を告げる。
「そして何より…ゾーンに入った者が多く存在したこと。それがわかったのだよ」
ゾーン。タキオンが言うには、ウマ娘の内面に存在するウマソウルが爆発的に活性化した際に、ウマ娘の体へと強力な力を与える現象。
ゾーンが発揮される時、ウマ娘はさまざまな光景を見るという。
「自分からならわかるのですが、他所から見てもそういったものはわかるのですか?」
マクトレが疑問を投げかける。俺はちょっとわかってしまったからなんとも言えない。
「そうだねえ…共鳴とでも言うのかな?近くにいた場合はビリビリと感覚に訴えかけてくるのだよ。科学者の言葉とは言えないが、そういったものだ」≫170二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:21:45≫169
「なるほどなー…」
難しいことはよくわからんが、とにかく走りまくってればビリビリ来るものらしい。
「そう、そして最初にキミたち2人に声をかけたのはもうひとつ理由がある」
ビッと手を向ける。いきなりでちょっとびっくりした。
「一つは、マクトレ君。君は明らかにメジロマックイーンと同じウマソウルを宿しているだろう。出なければここまで似た顔つき、似た体格にはならないだろうからね。まあ一部違うが瑣末な問題さ」
俺と同じことを思ってる。
「そして重要なのはブラトレ君だ。ウマ娘となったその姿からはまったくと言っていいほどそのウマソウルはわからなかった。しかも肉体以外の影響もほぼ出ていない…君はイレギュラーすぎるのだよ」
言われてみれば確かに。皆大体何かしらの影響が出ているのだが、俺はアホだったからなのか何なのか、影響はほぼなかった。
いや、あの夢を見てから少しだけ走ることに対してのイメージは変わったのだが、それだけである。
「しかし私は少ない情報からある程度の憶測を立てた…まあこれは話半分に聞いてくれたまえ。名前が響かないということは名前が元から無いだろうということ。最初黒毛だったのが今や黒い部分は髪先に少ししか残っていない。それならば宿ったウマソウルが非常に幼かったということだ。そうなればそこから導き出される結論は…」
一呼吸置く。
「…名前をもらう前に死んでしまった、ウマの魂だというわけだ」
「な、なるほど…?」
「ふむ…いや、言われてみればだな」
走りたい。自由に走りたい。夢の中で出会った魂にはそんな気持ちが溢れていた。それは自由に走ることもできなかったから。
「そんな希薄な魂だが、他のウマとどう違うのか?といった部分でも私は疑問を抱いた。だからこそ、今回のレースを企画したというわけだね。結果としてはブラトレ君もしっかりとゾーンに入っていたようだ。大きく変化した存在というわけではないと証明されたといえよう」
「つまりは壮大な人体…いや、バ体実験だったということですか」
「まあ乱雑に言い放てばそうだろうね。そこに掛かり切ったライオンさん…もとい生徒会長がノリノリで企画に賛同し、あれやこれやのうちに一大イベントとなってしまったのが先日のトレーナーズステークスというわけだ!はっはっは、どうなるかわかったものではないね!」
≫171二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:22:36≫170
「いや笑い事で済ましてますけど3200なんてアホみたいな距離設定のせいで何人かひっくり返って過呼吸起こしてたし、走り切ったらなぜかブラトレさんが妙に罵倒されたのですが?」
「アッハッハッハ!」
「笑って誤魔化すんじゃなあい!」
「まあまあ、君はしょっちゅう走り回ってたしその分強い存在と見られていたからね。そんな強い存在がふとしたときに弱さを見せる、そんな姿に興奮を覚える子も大勢いるというわけだ!まあ私もまさか走り切ってしまうとは思わなかったがねアッハッハ!」
と、倒錯している…!顔も知らぬウマ娘たちめ…!
「ふう、笑いすぎて顔が引き攣りそうだよ。ともかく貴重なデータは取れたわけだ、大変感謝しているとも。まあ感謝の一部は既に優勝賞品として受け取っているとは思うが、改めて感謝させてくれたまえ」
散々笑い飛ばした末に、落ち着きを取り戻して真面目な顔に戻る。
「いずれこの件は解決させるとも。科学者として断言は避けたいが、ここまで興味をそそられる事象もそうないからね」
「ええまあ、期待していますよ」
「俺はまあ…楽しいから戻れる時が来ればその時に考えるかな」
ぐいっと紅茶を飲む。タキオンもなんだかんだ先のことはしっかり考えているようだ。
尊大な態度や色々とおちょくるような口調も、不安を隠すためであるのは知っている。
こうしてつつがなく茶会は終わりを告げようと…した最後に。
「ああ、この後血液検査もちゃんと受けてくれたまえよ!」
「えええーっ!もう嫌ですわ!この体になってから注射がやたらと怖いんですよ!」
爆弾によってマクトレは悲鳴を上げた。
この後、タキオンは遂に禁断の薬を作り出してしまうのだが…まだ先の話。
ああ、それと3200を提案したのはルドルフ生徒会長殿だよ。
スカレトレその他撃沈ステークス陣は激怒した。
うまぴょいうまぴょい。
≫176二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:35:02トレーナー3200m対抗レース。そう、3200m。担当しているカレンにも、ましてや普段飲み込まれるのを恐れて走ってない俺にとって、あまりにも長すぎる距離だ。
俺に宿り普段から何かと囁きかけているウマソウル─いまいち明瞭としないが、今の俺の姿がカレンチャンに似ていることを考えればたぶん葦毛のウマ娘なのだろう…いやカレンチャンそのものかも─も、先ほどから「1200mならいけてた」「1800m、いやせめて2000mまでなら勝ってた」とどこか諦めムードに入っている。
──だが、それでも、走る前から諦めるわけにはいかない。なぜならそれは、カワイイではないから。俺はカレンチャンのトレーナーなのだから。一つ決意を胸に、ゲートの中に入る。そしてゆっくりと目を閉じ、また開く。視界が広がる。感覚が広がる。熱狂する観客達、静かに熱意を放つウマ娘と化したトレーナー達、芝が風で僅かに揺れる音。自分の中の何かが切り替わった。今、俺はウマ娘だ。いや、最初からそうであったような気もする。
ゲートが開く。少なくとも出だしは問題無い。先頭を走るスズトレを視界に収めながらその後ろを走る。ははっと笑い声が漏れる。勝ちたい、証明したいと、私の魂が叫んでいるのが分かる。広がった視界で周囲のトレーナー達を観察していく。やはり強いのはブラトレ、テイトレ、マクトレの三人、それにルドトレとフラトレ、フクトレからも奇妙な感覚を感じる。逆にカフェトレは既にやばそう。早くね。
そして1000mに差し掛かり、まず最初に後ろでカフェトレが崩れ落ちたのは理解った。1200m。まだいける。まだいけると私の魂が叫んでいる。1400m。まだいける(震え声)。ぎりいける。1800m。いける逝ける。まだドバイドバイ。2000m。やべ秋天超えた死ぬかもこれ。
そして2200mを超えて──私の体がいきなり崩れ落ちた。 まだジャパンカップよりは短い距離だしいけると思ったんだけど、やっぱ無理だったか。拡散は#LocketFallingでね。そんなアホなことを思い、暗くなる視界の中で、情けない、カワイくないという気持ちを抱いたまま、でもせめて倒れる時はカワイイで…とゆっくりとポーズを決め、そこで俺の意識は落ちた。
≫177二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:36:01目が覚めた時、俺はカレンの腕の中だった。
「ごめんお姉ちゃん…私、やっぱりまだカワイイじゃないみたい…」
カワイイであれなかった自分の不甲斐なさを噛みしめていると、カレンはゆっくりと俺の頭に手を伸ばし、撫でた。
「…ううん、そんなことないよ、お兄ちゃん。今のお兄ちゃんは、とっても、とってもカワイイだよ!」
そっか、それならよかった。俺は安心して、ゆっくりと目を閉じ──ようとして、微妙ににやついてるカレンの顔に気付いた。別にいい、別にいいが…やっぱなんか負けた気がする。
俺の中の負けず嫌い精神に火が付き、負けたままではいられないとカレンを見つめる。ゆっくりと上目遣いになり、涙目で、そしてずび声を意識して──
「ううっ、ありがとう、お姉ちゃん…」
カワイイを全力でぶつけてみた。
そしてお姉ちゃんは──耐えた。
やっぱり今の俺は、まだカワイイに値しない。
≫182二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 13:41:40「会長、緊急の要件が福島競バ場であるそうです」
「わかった。すぐ向かおう」
「たづなさんが車を出してくれるみたいですのでこちら資料です車内で読んでおいてください」
「仔細承知した」
(読みながら駐車場に向かっている)
「シンボリルドルフさん、こっちですよ」
「ありがとうたづなさん」
ガチャ。バタン。
「しっかりシートベルトをしてくださいね」
「ああ、すまない」(ペラッ)
「ん?」
(……たづなさんの車は左ハンドルでガルウィングだったか?)
運転席のたづなさんが帽子を外すと、栗毛の激マブな美女が現れた。
「はぁい!」
「ま、マルゼンスキー!?」
開けられた窓の外には少し申し訳なさそうなたづなさん(本物)がいる。声は本物のたづなさんが出していたのだ。
「な、なにを」
「別に?ルドルフちゃんが福島競バ場まで急いでるって言うから。あ、あとこれ渡してって」
マルゼンスキーが差し出した写真を見ると。四人のウマ娘がポーズを取り、手書きで『3200持たなかった』と書かれていた。私は全てを察した。
「さっかっ飛ばしていくわよ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
私の体は高Gにより座面に押しつけられのだった。
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