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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part711【TSトレ】
≫11二次元好きの匿名さん22/03/17(木) 22:11:44
「…運命?」
「ああ、今日ふと思いついたから。信じるか信じないか聞いてみたくて。」
…夜、どこかの部屋にて。酒を注いだグラスを片手に飲み交わすファイトレ'sとキタサトトレはファイ男からの話題に食いついた。
皆にそこそこアルコールも入って…でも少し顔が赤かったりするくらいにすました状態で、まずサトトレが口を開く。
「ん〜、僕は信じるよ。僕がこうやって競い合えてる事も、皆と話せることも天文学的な巡り合わせでしょ?」
顔を赤く染め、いつもより軽い口で語るサトトレ。その表情はとても満足してるような、或いは受け入れてるかのような。
「…サトトレ、それは、例えターフの上で散ることが定められていたとしてもか」
「…ファイトレ(女)?」
何故かいつもよりもやや冷たい視線を向けるファイ女。その対応にファイ男が反応しながらも、サトトレは笑って返した。
「勿論だよ。でも、引かれた運命のレールの上をどう走るかは僕が選んでもいいでしょ?…何より、僕は運命を愛してるからね。」
『私は運命を愛してるの』
「…そう、か…」
視線を外し、コトリとグラスを置くファイ女。サトトレの発言に、担当の姿を幻視してしまったのが理由だった、
「…ああそうだ、私は信じてないさ。運命も神様というのも全部。そんなもの、何処かに投げ捨ててしまえばいいと思ってる。」
「随分とぶった切るわね、ファイ女」
「当然のことだ。そもそも祈れば救われるのが本当なら、とうの昔に皆救われてるだろうよ。」
酔ってるわけではないが、どこか饒舌なファイ女にキタトレは彼女の酒を軽く注ぎながらトントンと肩を叩き
「追加よ、後そうね…私はどちらかといえば信じる派ね。ただ、だからといって甘んじる気も神様に頼る気もないわ。」
「うん、俺もキタトレと同じ意見かな」
「あら、そうなのねファイ男。まあこういうのは都合良く使ってやるくらいが丁度良いわ。…違うかしら?」
「…そうだな」
キタトレからのある意味ロマンもへったくれもない発言に、小さく肯定の意を示したファイ女。一方で横のサトトレは
「…んにゃ?」
案の定、酔って反応が怪しくなり始めていた。ペタペタと隣に座るファイ女に触れて寄りかかってきてるし
「あ〜、ちょっと辛くなってきたわ…」
ファイ男もそろそろ酔いが回り始めたのか少しフラフラとした感じを見せる。この場で提供された酒の度が強いのが理由だった。
13二次元好きの匿名さん22/03/17(木) 22:12:01
「「ふふっ…」」
キタトレとファイ女は示し合わせたように笑うと、キタトレは二人のグラスを下げて水を出し、ファイトレ(女)は二人に手をのばすと軽くさすって力を抜かせ、楽にさせていた。その時の顔は先程話していたときより、随分と気楽そうだったようだ。
短文失礼しました
アヤベさん育成をyoutubeで見ていて、ふとうちのトレーナーで運命についてどう思うかというネタを書いてみました。
大体信心深い方からサトトレ>>>キタトレ=ファイ男>>>>>>>ファイ女のノリです。ファイ女とサトは結構、ね?
所でメジロブライト実装ですね、うちにはダイヤちゃんは…ダイヤちゃん、は…ハハッ(即死)。…搜さないでください。
≫35二次元好きの匿名さん22/03/17(木) 22:57:13
これは…どこかにあるかもしれない、そんなバースのお話
「黒!なんで起こしてくれなかったんだよ!」
ドタバタと、階段を駆け降りてくるパチ。そんな彼女を、黒は嗜めるように言う。
「だってパチ姉ちゃん、あと五分だのあと気分だので起きなかったじゃん。何回も起こしたのに」
「ううぅ〜〜」
慌ただしくスーツを着るパチ。
「ちょっと!姉ちゃんちゃんとブラ付けてよ!もう社会人でしょ!!」
「うるせえ!ブラを付けたら人間としての尊厳が破壊されるんだよ!!」
行ってくるからな!!とトーストをくわえて玄関を飛び出す。さながら特急のようだ。
「あんなに慌てて…小姉ちゃん、起きてる?」
「…うん」
押し入れの扉を開けると、豆電球のついたその中でパソコンを打つ小が居た。
「ほら、出て。今日は散髪と買い物に行くんでしょ?」
「ねぇ…さ、散髪…また今度じゃ……だめ?」
「ダメ。今回で4回目だから。その跳ねた髪ちゃんとしてもらうの。小姉ちゃんきちんとすれば可愛いんだから!」
「あぅ…」
引きこもりがちな小は、ネットでエンジニアの仕事をしている。押し入れのスペース、それが彼女の部屋となっている。
彼女をリビングまで誘導し、いただきます、と2人で朝食を取る。トースト、チーズ、サラダと軽い食事だ。
「ほら姉ちゃん着替えて!予約遅れるよ?」
「外…怖い…」
小柄な小が着替え終わると、自身もカバンを持ち靴を履く。しかし扉の奥からパチが帰ってきた。
「どうしたの?」
「……今日日曜…」
「「あ」」
そんな、ありふれた、とても遠い幸せ。
≫44EMってことはこういうことか22/03/17(木) 23:34:49
「れ、れでぃーすえーんじぇんとるめー……」
「だめだよ、トレーナーさん!声はもっと大きく!」
「面白がらないでよフジ!」
「私は真剣だよ!ほらほら、貴方の声を聞きたい人もいるんだから!!」
「慣れてない30過ぎのおじさんには拷問だってばぁ……もう……」
「レディース・エーンド・ジェントルメーン!!!!!!(ヤケクソ)」
「(ニコニコニコニコニコ)」
「うぅぅっぅぅぅぅぅぅぅ……//////」
≫47バクシン的休日・相合傘編1/222/03/18(金) 00:08:15
天気予報では一日曇りだったはずのある休日、バクシンオーと出掛けた先での昼下がり。
目的の一つだった買い物を終え、遅めの昼食を取るべく店を出たタイミングで、雨は降ってきた。
雨模様を警戒して幾つかの情報サイトを確認しても総じて曇りだと言っていたのに、それでも降ってきた雨。
雨は嫌いではないが、しかし突然の雨は困る。何せ対策をまるで講じていないから。
こうなるなら折り畳み傘の一つでも携帯しておけば、など考える僕のすぐ横で、何やら愛バが不敵に笑う声。
首を傾げつつ見れば、そこにはドヤ顔で傘を掲げて見せる彼女がいた。
「トレーナーさんっ! さあどうぞ! さあさあ!」
「バクシンオー、いきなりどうしたんだ? いや嬉しいは嬉しいけど」
「皆さんが時々やっていた相合傘ですよ! いま試さずにいつ試すんですか!?」
「試す、って……いやその、確かに僕今日は傘忘れて来ちゃったけど、でもさ」
「ムムム、やけに渋りますね……何か理由でも?」
「理由、ってほどでもなくて。その、何となく気恥ずかしいっていうか……」
「……?」
「ああ、そういう反応なんだね」
「ええと、バクシンオーは相合傘が何か知ってる?」
「私の調べた所によると、相合傘とは一つの傘を二人が共有すること、だそうです」
「まあ、正しいかな」
「現に学園内外問わず、老いも若きも傘を共有する二人組を時折目にしますよね!」
「うん、それもそう」
「そこで私は思ったのです! アレは動きにくい、即ちバクシンしにくいのではと!」
「うん、うん……?」
「しかし即断・即決・即行動を常とする私でも、晴れた日に雨傘は使えない、つまり調査が出来ません!」
「だから今、なの?」
「その通りッ! さあトレーナーさん! 皆さんに手本を示すためにも! 私と模範的相合傘をしましょうッ!!」
「模範的相合傘って何?……まあいいか。それじゃしてみようか、相合傘」
「……ハイッ♪」
48バクシン的休日・相合傘編2/222/03/18(金) 00:08:34
バクシンオーが用意していた傘に二人並んで入り、次の目的地へ向かう。
一人で使うには少し大きなその傘は、しかし二人で使うには少し小さかった。
傘を持つのは用意したバクシンオー。故に傘が雨を遮る範囲は彼女を基準としている。
一方の僕は購入した荷物を持って歩く。濡らさないよう、なるべく荷物を傘の中心へ。
すると当の僕は少し肩や尻尾が濡れてしまう。そして、それを見逃す愛バではなかった。
「あのー。トレーナーさん」
「うん、どうかした?」
「荷物が濡れないよう、という配慮はわかりますが。トレーナーさんが濡れては意味がありません」
「いや、僕が少し濡れるくらいなら、」
「いいえッ! よくありません! それでは傘を共有する意味がないのです!」
「や、そうは言っても」
「ですからトレーナーさん、もう少しこちらへ寄ってください。でないと調査になりませんので!」
気恥ずかしさから遠慮しようとする僕を、アレコレ理由付けて寄らせようとするバクシンオー。
結局言い分に折れて寄れば、彼女の存在をそれまでよりも更に強く感じられた。
言いようのない緊張と羞恥にいたたまれない僕と対照的に、彼女は目的地到着まで終始ご機嫌だった。
立ち寄った喫茶店で昼食を済ませる間に、雨はまた気紛れに去っていった。
どこか安心したような表情で行き交う人々の手の中、出番を終えた傘たちが少し、寂しそうに見えた。
「はあ、やれやれ。通り雨でよかった」
「……そうですね。さあトレーナーさん! 次の目的地へバクシンです!」
一瞬愛バの顔に浮かんだ、残念そうな表情を見逃す僕ではない。
「ねえ、バクシンオー」
「はい!なんでしょう、トレーナーさん!」
「ここに着くまでの短い間じゃ、検証は不十分だと思うんだ……また今度、調査の続きをしようか」
「……ッ! ハイッ! このサクラバクシンオーが、喜んでお付き合いいたしますともッ!!」
(了)
≫61二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 08:02:53
メカちゃんなう! メカちゃんなう!!
メカちゃんメカちゃんメカちゃんなう!!!
メカちゃんなう! メカちゃんなう!!
メカちゃんメカちゃんメカちゃんなう!!!
(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ
メカちゃんをぎゅーぎゅーしたいな
じたじたするのを押さえ込んでぎゅーってしたいな
腕噛まれるのもアリだよ 噛んでいいよ メカちゃん
メカちゃんと二人で買い物に行くことになって、
なんでもない顔で「デートだねー」って言ってめちゃくちゃに意識させたい。
メカちゃんの角はカチューシャについていますが、
朝、こっそり猫耳にすり替えて、いつ気づくかなーと思っていたら、
メカちゃんが出かけたのにぼくが気付かず、
夕方帰ってきたメカちゃんが猫耳カチューシャを握りしめて真っ赤な顔で睨んできたため、反省したい。
(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ
メカちゃんをちやほやしたい。
ちやほやされ慣れてないメカちゃんが挙動不審になるのを見て、
さらにちやほやしたい。ちやほやしたい。
メカちゃんがPixivで「メカ邪龍×カマライゴン R18」で検索をかけるのを全力で阻止したい。
トレセン学園ではメカちゃんにあじさいコスしてもらいたい。
しかし、強烈な違和感を発するメタリックな体に無意識に目がいってしまい、
「も、もう着替えるっ」 と逃げ出そうとするメカちゃんを必死にフォローしたい。
(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ
≫79二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 13:34:52
「…」
軽く吐息をもらしたキタトレは、彼以外に誰もいない…いや、たった今二人だけになったバーで艶めかしい姿を見せる。
「あら、二人きり…というのは珍しいわねバクトレ。」
「どうもキタトレさん、奇遇ですね。貴方の担当のキタサンと私のバクシンオーはよく一緒にいるのですけど」
「ふふ、あの委員長には驚かされもするけど助けられたこともあるわね。でも1200mを3本で3600mって、彼女が言ってたのを聞いた時は私も流石に驚いたわよ。まあ、あのポジティブさには救われるのだけど…と、貴方がしたいのはこんな世間話ではないでしょう?」
キタトレのその発言に、話が早いと切り替えて問いかけるバクトレ。
「ええ、今日は貴方の噂で直接確認したいことが…そう、貴方はサトノジャッジが壊れることを想定していたということです」
それは、どこからか流れ出した一つの噂。キタトレは、前からサトノジャッジが壊れることを分かっていたという噂であった。
「噂、うわさね…それは、まだそこまで広がってないんじゃないかしら?少なくとも、そこまでな訳ではないわね。」
「ええ、まことしやかに一部で囁かれているという程度なのですが。…ただ、この噂は恐らくそれは真実だと確信していますから」
「でしょうね、まあいいわ。…そうね、結論から言えば私はあの子がいつか壊れると確信していたのは事実よ。…もっと聞きたい?」
…動揺はない。先程も言ったがバクトレは確信しキタトレもまた後ろめたい訳ではない。だからこそバクトレは頷き
「…まず、どうして貴方は確信していたのですか?」
「簡単な話よ、彼は遠征を終えてから明らかにコンディションが低下し続けていたし、何よりそれを彼と直接話したのだから。」
「なら、なぜレースに?」
「…そうね、私は彼を止めることは出来なかった。言い訳じみた話だけど、想定してたよりずっと早かったの。」
そっと視線を落とし、その整った顔を僅かに歪めたキタトレ。
「彼はあの時点で競争バとしては老い先短い老人のようなものよ。いつか終わりが来ることなんて、分かりきってたのに」
「…けれど、止められなかった。走りたいという本能を、願いを、我儘を、私は止めるという選択はしてやれなかった。」
それは、キタトレが彼の昔からの親友であり…何より、彼の覚悟であり選択を否定出来なかった『情』が故だった。
80二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 13:35:52
「…結局、まるで運命に殉じるように壊れた。壊れる前に、しかしなるだけ長く走れるようにと考えて動いていたのだけどね」
(そう、彼も随分変わった。まるで子供のように純粋に走りたいと言ってきた彼は、私も見たことなかったから、別人のように)
それは、或いは彼がウマ娘『サトノジャッジ』へと変化していた証であり呪いでもあったのだろう。
「多分、私は入れ込み過ぎてたのでしょう。もし今同じことをしようとする娘がいたら、今度こそ全力で止めるわ。」
「…そうだったんですね。」
バクトレはそっとキタトレの肩に手を置き、少し慰めた。
「ありがとねバクトレ、私の話に付き合ってくれて。久々に誰かに話したわ。」
「いいえ、私は噂を確かめただけですから」
「ふふ、お礼といってはなんだけど、今日は私が奢ってあげるわ…」
その後、バーには二人分の人影が暫くちらついていてらしい。
短文失礼しました
アルダン育成を見てると熱意が高まってリビドーのままに書き上げたものです。ぶっ壊れる様を見たキタトレの悔やむ姿です
トレーナーは担当ウマ娘が故障したときに色々言われてそうで、バクトレはそういう心無い噂には良く思ってなさそうですね。後キタトレに関してはサトトレの我儘を聞いてたからこそ、時期の相談はしつつも走らせてた訳です。バクトレさんを付き合わせてすみません
≫119二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 19:43:27
急な雨の日のグラスとグラトレ(独)
ザァァァッ
「中々止みませんね~」
トレーナー室の窓を濡らす雨を見ながら私は独り言を言います。
朝から雲は掛かっていましたが、雨になるとは予報されておらず完全に予定外です。
雨ではグラウンドでのトレーニングも出来ないので、こうやって窓の外を眺める事しか出来ません。
そして、そんな中で考えるのはトレーナーさんの事。
「トレーナーさん、傘を持って行かれてないですよね……」
雨が降り始める少し前に出掛けてしまったトレーナーさん。
何でも教材が届いたとの事で、直ぐに帰るつもりだったからか雨具の類は持って行かれていませんでした。
私もトレーナーさんも曇りのままだという予報を信じていましたからね……
私自身も雨具を持っていない為にトレーナーさんを迎えに行く事も出来ず、トレーナーさんの帰りを待つしかありません。
そんな風にやきもきしているとドアを軽く2回 コンコン と叩く音がした後、扉が開かれました。
「ただいま〜……」
「おかえりなさいトレーナーさん……あらあら、濡鼠の様で……大丈夫ですか?」
「取り敢えず着替えが欲しいですね~……」
案の定、帰って来たトレーナーさんは全身ずぶ濡れといった惨状です。
「私の替えのジャージでも良いですか?」
「グラスが良ければお願いしますね~」
なにはともあれ、トレーナーさんには雨を盛大に吸った着物を着替えて貰わないといけません。
こういった時に体格が同じ様になったのは利点ですね、以前のトレーナーさんでは丈が間違いなく合っていませんでしたからね。
120二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 19:43:48
「さてさて、次は髪ですが〜……グラス、手伝って貰えますか~」
「はい、任せてください♪」
着物を脱ぎジャージに着替えたトレーナーさん。
濡れた衣服の次に取り掛かるのはその長い長い黒鹿毛の髪です。
纏めている髪を解く為に鍔を模した髪留めを外します。
「水気でくっついてしまってますね~」
普段ならば帳の如く広がるサラサラな髪も、水分を含んで固まっています。
「少し時間が掛かりそうですね……」
「お手数を掛けますね……」
かと言って放置する訳にもいきません。
幸い、お泊りする度に髪を乾かすのを手伝っていますから手慣れたものです。
櫛とドライヤーを取り出した私はトレーナーさんの固まった髪を櫛で梳きつつドライヤーで乾かし始めました。
……絡まった髪に櫛が引っ掛かり、その度にトレーナーさんが「アウッ」っと声を漏らしていたのは申し訳無かったです。
「助かりましたよ、グラス」
「いえいえ、こちらこそ何度も引っ掛けてしまってすみません」
「こればかりは仕方無いでしょう~」
トレーナーさんの髪を何とか乾かし終わり、トレーナーさんから感謝されます。
何度も乾かすのを手伝って来ましたが、その度にトレーナーさんは感謝の言葉を述べてくれます。
だからこそ髪を乾かす手伝いは大変ですが、手伝う事が苦痛になりません。
……トレーナーさんの髪を触れるというのも有りますが。
121二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 19:44:08
クシュッ
そんな事を考えているとトレーナーさんが小さなクシャミをされました。
「雨で身体を冷やされたみたいですね」
「そうみたいですね~」
「仮眠用の毛布を出しますね~」
「助かります……」
トレーナーさんにはソファーに横になって貰って、その上から毛布を掛けます。
ですが暖まっていない毛布ではまだ寒そうです。
「……グラス」
そんな寒そうにしているトレーナーさんから、頼み事が有る様な目を向けられます。
「ふふっ、トレーナーさんは仕方が無いですね~」
その意図を察した私はトレーナーさんに掛かる毛布を捲り、トレーナーさんの腕に収まる様に横になって再度毛布を被ります。
「グラスは暖かいですね~」
「トレーナーさんは冷えてますね~」
「グラスも冷えてしまうかな?」
「いえいえ……暖かくなって来ましたよ♪」
「……ええ、暖かいですね~」
……それから直ぐにトレーナーさんから寝息が聞こえて来る様になりました。
私もこのまま眠ってしまいましょうか……
結局お互いが目を覚ましたのは、とうに雨が止んでいた頃でしたとさ。
うまぴょいうまぴょい
≫125二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 20:17:05
―ヤエノムテキ歌唱練習中―
「どう、でしょうか?」
「…」
「あの、トレーナー?何か言ってください…そう黙っていられると恥ずかしいのですが…」
「…はっ!悪い悪い、かっこよすぎて放心してた。歌に関しては素人だから上手いことは言えないが…。でも、すごくカッコよかった。世界一!」
「そう、ですか。でも世界一は言い過ぎだと思いますが…」
「いやいや本当にめちゃくちゃ良かったって。心が震えるっていうか、揺り動かされるっていうか、そういう力強さがあった」
「あ、ありがとうございます」
「改めて思ったが…ヤエはすごいよな。担当っていう贔屓目抜きにしてもかっこいいし、強いし、疾いし、歌も上手いし。惚れそうになった」
「…えっ!?ほ、ほ、惚れ…って…」
「ヤエはモテるだろうなぁ。これからメディアへの露出も増えて人気も出るだろうし。でも付き合う相手には気をつけろよ?ヤエは生真面目だからな」
「つつつ、付きき合ああ…」
「ん、どうした?顔が赤くなってるけど。やっぱり歌うのって恥ずかしいか。人前でそういうのしっかりとできるやつってすごいよな」
「〜っ、な、なんでもありません!聞いていただいてありがとうございました!し、失礼します!」
「お、おう…。ヤエ、そっちは壁だぞ、出口はあっちだ」
「わわ分かってますっ!」
「…大丈夫かな、ヤエ」
≫162二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 21:24:34
腰のあたりに違和感がある。眠っていたいのに、気になって眼が覚める。
「…ぅん……」
身体を起こすと長い尾がひょっこりと目の前で主張する。担当であるタマモの色ではない。他の子だろうか、そんなに親密な子はいなかったと思う。クリークちゃんは潜り込む前に声かけてくれるだろうし。そもそもうち以外にこの寝室に誰もいないはず。音の聞こえにも違和感を覚える。おもむろに頭を触ってみる。頭の横にあるはずの耳は頭の上にあり、その形は普段うちが見ているものだ。うち自身にはないはずの形のそれがうちの耳として存在している。
「うん……?」
思い浮かぶのが、兄と慕うオグリンもといオグリキャップのトレーナー。彼は2m近くもあったガタイがうちより小さいオグリンそっくりのウマ娘になってしまった。中身は相変わらずだったけど。他にもタマモと一緒にレースした子たち含め、多くのトレーナーがウマ娘になってしまっていた。トレーナーは男女問わず、その現象が起こっていたが、うちもなってしまったということだろう。尾や耳は確かにそうだが、体型は然程変化を感じていない。髪は短くなったかな。
「今何時かなー」
スマートフォンに手を伸ばし、時間を確認する。まだ3時、朝トレは今日ないのでタマモに連絡をとるには少し早すぎる。ショーツには影響がないが、パンツを履いていると尾が邪魔なので脱いで二度寝することにした。
―――PiPiPi……。
起きなくては、ウマ娘になってしまったとタマモに報告しなくてはいけない。身嗜みを整え、いつもの服ではなくワンピースに着替える。スマートフォンでタマモに連絡をとる。
「おはよーさん、なんや?どうしたん?」
「おはよー!…じゃなくてっ!タマモ、うちなっちゃったみたいです」
「なにになったんや?」
「ウマ娘!」
「嘘やろ……」
タマモは少しうーんと悩んだような唸り声を出したあと、うちの家に向かうから大人しくしとけと自宅待機を提案した。うちはタマモと走れるのかなとのんきな事を考えながら、タマモの到着を待ちつつも朝のニュースをBGMに朝食の準備を始めた。
―――ピンポン。
しばらくし、朝食を食べているとインターホンが鳴り響く。どうやらタマモが到着したようだ。玄関へ向かいドアを開けると息を荒くしたうちの担当ウマ娘、タマモクロスがそこに居た。
163二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 21:24:53
「ほ、ほんまにトレーナーもウマ娘になっとる…!」
「えへへ、あ、タマモもご飯食べる?」
「食っとる場合かー!」
色々と言うタマモの手を引き、リビングの椅子に座らせる。
「ええか、人間だったアンタがウマ娘になっちゅうのは大変なことなんやで」
「そーですね!」
「お昼の番組ちゃうで!」
「そーですね!」
タマモの前にご飯とお味噌汁を用意してあげるとゆっくりと箸を手に取り、口にしていく。とてもかわいい。確かにこの現象はとても不可解だ。なんでこうもトレーナーがウマ娘になってしまうのか。未だに人間に戻ったトレーナーはいない。男性だったトレーナーがウマ娘になってしまい、そのまま精神が女性になってしまったヒトもいる始末だ。
「うん。確かにヘンやけど、今のところは不調ないし大丈夫!」
「そうはゆうてもな…」
「心配してくれてるんだね、タマモ」
「当然やろ!ウチの大事なトレーナーや」
貧乏な家庭に生まれたこの子は小さい妹、弟の世話をしているのもあり、とても面倒見の良い子だ。家庭の為に頑張ろうとこのトレセン学園に来たこの子のそれは後輩たちにも変わらず、そしてうちに対してもだ。いつも隣りで一緒に歩いて、時にはおんぶしてあげたりもするけど頑張ってきた。食が細くなっていたタマモの食生活を整えるために得意の薬膳料理のノウハウを使い、食生活や身体を整えていった。
「ごちそーさん」
「お粗末さんでした」
綺麗に平らげた食器を見て頬が緩む。この子はもうしっかり食べられるようになっている。食器を片付けようとすると手伝ってくれる。本当にいい子だ。
「ねータマモ」
「なんや?」
「ウマ娘用の服売ってるところ教えてくれへんか?」
「ええで!今日はトレーニングどころちゃうからな」
タマモとウマ娘用の洋服をたくさん買った。戻る予定が無いわけじゃない。でも戻れる保証もないのだ。姿形が変わってもうちはタマモと歩き続ける。それだけは変わらないことだ。
164二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 21:25:06
翌日、トレーナー室。
「ターマーモー!」
「ええい!毎度毎度!」
「えへへー『家族』やろー」
小さくて逞しくてかわいいタマモ。わかっているのに、避けたりしないでうちに抱き締められてくれる。背中をとんとんと叩くので、腕を緩めるとぷはーっと大きく息を吸う。
「ウチを殺す気か!」
「ちゃうもん、そんなことせーへんですよ」
「ウマ娘になって体型変わらへんなんて……」
確かにウマ娘化したトレーナーのほとんどは体型が大きく変わっている。だが、うちに体型はほぼ変化なし。髪が短くなったり、眼や髪の色が変わった程度だ。なので尾の関係でスカートやパンツを購入し直した程度だ。
「このー!」
「揉んでもうちのおっぱいからお乳は出ないんやで」
「少しはこの脂肪の塊をしぼませてみーや!」
「そんなことしても大きくなるだけなんやで?」
うちの変わらず大きい胸を揉みしだくタマモに忠告をする。揉んで大きくなるかどうかは実際のところ知らないのである。はったりだ。そう言うとぴたりと手が止まる。
「これ以上大きくなるんか…?」
「もし大きくなっちゃったらタマモに責任取ってもらわないと…」
「責任っちゅうのは…?」
「内緒でーす」
内緒だ。冗談でも言って良いことと悪いことがある。今言うと真に受けてしまいそうだし、誤魔化すことにした。
「タマモ」
「なんや?」
「うちもウマ娘になったから併走トレーニングできるのかな」
「かもしれへんな」
この身体に慣れたらアリかもしれない。筋トレを始めてみようか。トレーナーとしてのノウハウはあるわけだし、使わない手立てはない。どこか嬉しそうにニカっと笑うタマモをよそにうちは併走トレーニングを口にしていた瞬間からどくり、どくりと胸の高鳴りを感じていた。
≫166二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 21:26:12
ボクの自宅、寝室。
「まぁ…トレーナーさまもウマ娘になってしまわれたのですね~」
「ああ、それでブライトには服と下着を用意して欲しいと言ったのだが」
ボクがウマ娘になったのは朝、目を覚ましたらなっていたので深夜寝ている間と推測した。目の前にいる担当ウマ娘であるメジロブライト、少しばかりマイペースなメジロ家のご令嬢だ。彼女に連絡を取った。大まかではあるが身体のサイズを伝え服を用意してもらい、家にまで来てもらった。流石メジロ家と言うべきか、思ったよりも早い到着だった。今家にいるのは彼女だけだが、恐らく家の近くに彼女を送迎する為の車が控えているのだろう。
「こちらですわ~とてもびっくりいたしました…子供服を持ってきてとおっしゃるのですもの~」
「ありがとう、ブライト」
彼女から上品なデザインの紙袋を受け取る。恐らく子供ブランドのものなのだろう。小学生低学年くらいだろうか。ボクの身体は小さくなり、髪はその背よりも長い。尾も立つと床についてしまうし、耳も少し長い気がする。寝るときに着ていた服は寝ている間にほぼほぼ脱げている。同性の身体ということと彼女のマイペースさもあり、ボクがほぼ全裸状態でも彼女はボクがウマ娘になったということだけにしか驚いた様子を見せなかった。
「トレーナーさま、その~」
「どうした?」
「お洋服をお召しになる前に、少しだけぎゅ~としても……」
「身体はきみと同性だが、ボク自身は男だぞ?」
構いませんわ~、と彼女は言いながらボクを抱き締める。
「とても可愛らしいのですもの~長い黒髪もとても綺麗…こんなにも可愛らしいお姿になられるなら、もっと可愛らしいお洋服を用意すべきでしたわ~」
「今のボクはとても可愛いか?」
「はい。とても可愛らしくて…『マキちゃん』と『キューちゃん』にも見せたくなってしまいます~」
「ブライト、きみは今のボクとも」
「トレーナーさま、わたくしは言いましたわ。トレーナーさまの『この先』をいただきたいと」
「ああ、覚えている。クリスマスの夜にキミがそう言った」
メジロがボクを待っていたと。新しい考えや思想との出会いが必要だと。あの時の彼女の真剣な顔は今でも脳裏に焼き付いている。
167二次元好きの匿名さん22/03/18(金) 21:26:27
「それはたとえ、トレーナーさまがウマ娘になってしまわれても変わりませんわ」
「ブライト……」
「それに、そのわたくし……」
「それに?」
「ふふふ……ないしょ、ですわ」
彼女の腕が緩み、額を重ねられる。身体が年下の同性になったせいなのだろうか、スキンシップが多い気がした。嫌悪されているわけではないのでよしとしよう。
「ブライト、そろそろ服を着たい」
「そうですわね。わたくし、お手伝いいたしますわ~」
彼女から受け取った紙袋から下着や服を取り出す。可愛らしい女児向けの下着、ジュニアブラまで入っている。この身体になった以上はそれに見合ったものをする。フォーマルな襟付きのワンピースにパニエにカラータイツ。今日ボクはこれを着るようだ。
「さあ、トレーナーさま。少し足を…」
「下着は自分で」
ボクの言葉空しく、一式を彼女の手によって着せられた。尊厳もなく、涙が出そうになったが、彼女がとても楽しそうだったので開き直ることにした。
「とってもお似合いですわ~ふふふ」
「ありがと……」
「これから毎日トレーナーさまのお洋服をお届けいたしまして…そのままわたくしがこうして着せたいですわね。それに髪も整えないといけませんわ~」
ルンルン、なんて擬音でも付きそうなくらいに楽しそうにバッグからブラシと髪留めなどを取り出した。ボクは彼女にされるがままだった。今後はこれがボクのルーティンになりそうだ。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part712【TSトレ】
≫69二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 08:04:27
『味ってどうなのブルーグリーンジュース』
「……そういやネイトレさー、あんた仕事こなすためにアレやらかしたって聞いたんだけど」
「アレって……ああ、アレですね……」
「いやね?私も売ってた時に試しにって思って買って飲んだけどさあ、ヤバいじゃんあれ。確かに体力は回復したように感じるけど苦いってもんじゃないでしょ、やる気減少待ったなしよあれ」
「そ、そう思ってたんですよ私も。でもそのあとに……これまた……ショップのカップケーキを……」
「……よく持ったわねそれ」
「正直アレは何度もやるものじゃないです。断言します」
「たまに飲む分にはいいかもしれないけどねぇ、仕事立て込んでるときにやるもんじゃないわよアレは」
「おっとどうした二人とも」
「あ、ブラトレさん。……アレ飲んだことあります?あの、ショップでたまに売ってある緑色の」
「あーアレ……まあたまに飲む分には。毎日飲むとかたぶん死ぬわ」
「ブラトレー、このネイトレってやつはそれやらかしてたらしいのよ」
「それは……ほんとよく体持ったな」
「あの時はちょっと……正直切羽詰まりすぎて思考がロックしてたと思います」
何事も抱え込みすぎるのはよくない。そしてそれを無理に外部出力頼りに解決しようとするともっと酷いことになる。
古事記にも書かれている。うまぴょいうまぴょい。
≫77二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 08:58:27
「描き出せ!青空彩る天気模様!
アローヘッド確認。
召喚条件は天気モンスター三体以上。
サーキットコンバイン!
青雲の空駆ける稲妻から広がれ、気象の極彩色!
お披露目だ!リンク3、虹天気アルシエル!」
「──これルールもだけど考えるのも難しいな」
「トレーナーさん、今のなんです?」
「遊○王、勧められたから遊んでるけど面白ねこれ」
「ほうほう、カードゲームの……今の決め台詞?」
「大体そんな感じ?淡々とやるより面白いって」
「男の子だね~、可愛い絵のカードだけど強いの?」
「準備整ったら強そう、かな。上手い事相手から逃げたり封じたりするって感じ」
「へー、もっと強い力でドーン!とかやっつけたりする方が好きじゃないんです?」
「俺はこっちの方が良いかなぁ、上手い事手綱取って自分の思惑通りに勝つ方が楽しい」
「ゲームの話だよね?」
「ゲームの話だよ?」
「……それで、さっきの難しいって言ってたのはなんです?」
「手綱取ったりする事?」
「違いますよー、決め台詞の方です!」
「……アニメとか漫画に出てないカードは決め台詞ないから」
「考えたんです?」
「……うん」
「男の子だね~、もう一回言って?」
「意識すると恥ずかしいからパスで」
「まぁまぁそう言わず、後で皆の前で言うんでしょ~?」
「ぅ"……じゃあ、一回だけ」
≫155二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 17:07:24
●れっつすたでぃ●
「ごめんなベイ…巻き込んでしまって」
「No problem!それより成長痛は止まった?」
「全く。歩くのがまだキツいよ。しかしベイ、いいのか?授業抜けて」
「自習だったから。だからこうやってトレーナーを抱えてるんでしょ?」
中等部の廊下。授業が始まる2分前に、彼女らはとある教室へ向かっていた。今回2人に頼まれたのは英語の授業。本場の英語を教えてほしい、と担任と知事長直々の業務だ。
「ベイ、ここだ。降ろしてくれ」
「歩ける?」
「分からん。でも流石にこの始末で教室には入れないだろ」
「I see.ヤバかったら支えるね」
そうして扉の前でオベトレをおろしたオベイは、彼の歩きを見守って…
「Ouch!」
コケた。2歩も持たなかった。
「ホラだから言ったのに…あ、皆さん気にしないで。ちょっと椅子借りるね」
その不思議な光景を見る生徒たちは、無意識ながらも恐れていた。腐っても目の前にいるのは第8回ジャパンカップの勝者。あの芦毛2人に世界中の強豪に競り勝ったのだ。
「イテテテ…皆さん、申し訳ありませんでした。本日の講師を勤めさせていただきます、オベイユアマスター担当トレーナーです」
「Meが同伴者のオベイユアマスター。You know…ま、気楽にね!」
そうして始まった授業は、生徒それぞれに基本的な英語からどうやったら表現の幅を広げることができるかという事に重きを置き、教えていくものだ。
「あ、ここはーーーだから〜〜〜で…じゃあ、そこの二番目の芦毛の君、ちょっと前に来てくれる?」
「は、はい!」
「芦毛……」
少しぎこちない彼女は黒板の前に歩いてくる。
「よっこいしょ…ミ゜」
オベトレは忘れていた。指導に熱心になるあまり自信の成長痛を懸念していなかった。それは彼の立ち上がった体が傾くことを意味する。
「うわああ危ない!」
「え…?」
156二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 17:08:36
そうして体がぐらりと前に傾き、制御を失ったそのアメリカンは見事にその生徒へと向かっていき……
「わぷっ!」
顔に直撃した。
「お、っと」
その後ろから慌てて生徒の背中をオベトレの後ろから抱き上げるオベイ。ぎゅっと抱きかかえられると、さらに胸が顔に埋まる。
「ごめん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫です…」
「芦毛を…あんな…羨ましい……」
そしてその後はオベイの警戒によってハプニングはあまり怒らなかった。しかしその生徒の性癖は壊れた。
以上。勉強を教えるオベトレとオベイでした。
貴重な外国人コンビという訳でこういった勉強会みたいなのがあってもいいなぁと思いました。
ごめんね一般モブ芦毛ちゃん。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part713【TSトレ】
≫18二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 20:52:04
『ピカピカなトレセン学園』
ここトレセン学園で最も清掃が行き届いている場所はどこか?
学園の経営者である理事長室?学園の顔である生徒会室?病人達のケアのための保健室?それとも学園の花である生徒たち一般教室?
どれも違う、最も清掃が行き届き床に埃一つもない場所、それはトレーナー達が集まる事務室周辺である。
ウマ娘主体の学園でありながら、なぜウマ娘ではなくその指導者であるトレーナー室の環境がいいのか
もちろん学園は理事長の意向にしたがって、専門の業者によって日々理想的な環境に整備されている。だがそれ以上にある理由があった
その理由とは――
アルトレ「みなさんって髪のお手入れってどうしてます?こう埃や汚れとか……」
シビトレ「いや…全然…して、ない…」
ウオシス「だめですよ!シビトレさん!ちゃんとお手入れをしないと!きれいな髪が台無しです!」
サトトレ「それなら、おすすめがあるよ。ダイヤが教えてくれたものなのだけどね。」
マベトレ「それって高級店に売ってるマーベラス☆なものだったりしない?大丈夫?シビトレおねえちゃんに使いこなせるー?」
黒メブトレ「それは参考になるわね。後でブライトと買うことにしよう」
――髪が膝から足元そして床まで届くほど超ロングヘアーのトレーナーの存在だった。
ウマ娘化現象が相次ぎ、男女関係なしにウマ娘になったトレーナー達。髪量も当然変化したが、とりわけロングヘアーになる傾向があった。
そのなかでも超ロングヘアーと言われる長さまで達するトレーナーが数多くいた。
彼女らの存在によってトレセン学園にわずかに残った埃は舞い上がり絡め取られ駆逐つつあるという。
そのトレーナー達が集まる場所はどうなるかというと――火を見るよりも明らかであろう。
今日もトレーナー室周辺の床はルンバ(超ロングトレ達)によってピカピカに磨かれていった。
≫34二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 22:14:45
「…うん、いつもどおり美味しいファイトレ(女)」
「…そうか、それは良かった」
トレーナー室、紅茶を片手に啜り美味しいと感想を述べるのはファイトレ(男)。ファイトレ(女)は変わらない反応を見せる
(いつも通りの返事だけど、今日は少し気分は良い感じか。俺に対しては僅かに気を許してくれてるから分かりやすいな)
本人が自覚しているのかいないのか、とはいえ反応が周りとは違うのは事実であり、少しだけ気分が分かりやすいのだ。
(まあ謎も多いのだが。ほぼ全て黒塗りの履歴書とか流石に冗談…だよな?)
「甘くないが良かったか?」
「大丈夫、ファインも多分美味しいって言うと思うな。」
(俺も何度か練習して淹れてみたことがあるけど、やっぱりファイ女には敵わないんだよな。後は…)
「所で、紅茶ラーメンとかいうのを作ってみたらと言われたんだけど…」
「待て、なんだその色んな意味で冒涜的な料理は。そもそも誰から吹き込まれた?」
「え?ゴルトレからだが…」
「…はぁ、何がしたいんだあれは」
真顔で、しかし苦々しい反応のファイトレ(女)。言った側のファイトレ(男)も微妙な態度で二人して頭を抱える。
「せめて逆に…いや駄目だ。」
「そういえば、ファインはタキオンの薬貰ってきてたね。紅茶に注いだらラーメンの味になる謎の薬…」
「私としては仮に何かあったら責任問題どころではないし、控えて欲しいと思うんだが…あまり口出しは…」
「まあ、大丈夫だと思う。…多分」
心配気味な反応を見せつつ、とはいえ輝きを見せるファインの顔…瞳を二人して思い出してしまえば止めることは出来なかった。
「…ファイ男、少し言いづらいのだが…その服からファインの匂いがするんだ。もしかして…彼女の服を着てないか?」
「んぐっ!…ゴホッゴホッ!」
むせるファイトレ(男)。後ろから軽く背中を擦るファイトレ(女)の指先はまるで氷のようにひんやりした感触がする。
「…え?」
「気づいてなかったのか…恐らくファインの悪戯だろう。」
つまり今日のファイトレ(男)は担当ウマ娘の服を知らなかったとはいえ着ていた訳で、当然顔を赤くして慌てるファイトレ(男)
「…なんだ、着替えは取ってくるか、ら…」
「あ、私の服の着心地はどうかなキミ♪」
35二次元好きの匿名さん22/03/19(土) 22:15:09
…ここで殿下のご登場。追い討ちをかけるように着心地を確認してくる。手玉に取られる彼を横目にファイトレ(女)は目を逸らした
短文失礼しました
ファイトレ'sのトレーナー室での一幕。仲良く胃にダメージを貰ったり殿下に振り回される姿が見れます。
紅茶ラーメンとかいう料理への冒涜()。でもイベでは紅茶をラーメン味にするタキオン薬を試してたりするし…
≫47二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 00:20:10
良い子の言うっちまう昔話
長靴を履いた猫タマ
昔々、あるところに三人の子供を持った粉ひきがおりました。もともと貧乏でしたから、死んだあとで子供達に分けてやる財産といっては、粉ひき臼をまわす風車と、なんかよくわからないものと、それから猫タマだけしかありませんでした。さていよいよ財産を分けることになりましたが、公証人や役場の書記を呼ぶではなし、至極無造作に、一番上のパチタマが風車と不労所得をもらい、
二番目の黒タマが異次元の闇をもらいビィ君に変貌し、末の小タマが猫タマをもらうことになりました。
末の小タマは、よりにもよって猫タマしか貰えなかったので、めそめそ泣いてしまいました。
「このままじゃ……タマぁ……猫タマさんも、飢え死にさせちゃう……」
小タマは、心底申し訳なさそうにこう言いました。すると、そばでこれを聞いていた猫タマは、なにを考えたのか、ひどくもったいぶった、しかつめらしいようすをつくりながら、こんなことをいいました。
「なんや、もう諦めとるんか……ってタマは言うでしょ?だったら、うちのためにいくらか用立ててくれれば、二人とも飢え死にしないで済む方法があるんだけれど……」
小タマは猫タマのいうことを、藁にも縋る思いで信じました。そうして、猫タマのいうままに袋と新しいブーツをこしらえてやりました。
猫タマはさっそく、そのブーツをはいて、袋を手に取りました。そして、袋のひもをおさえて、なかなか気取った恰好で、兎を放し飼いにしてあるところへ行きました。そこで猫タマは、袋の中に野草を入れて、遠くのほうへ放り出しておきました。そこから、袋のひもを長くのばして、その端を掴んだまま自分は昼寝のふりをしてしまいました。こうして、まだ世の中の嘘を知らない若いカマライゴンたちが、なんの気なしに袋の中の草を食べに、潜り込んでくるのを待っていました。案の定もう早速、むこう見ずの若いウサミミをつけたメカ邪竜が一匹、その袋の中へとびこみました。猫タマは、ここぞとすかさずひもをしめて、そのミニメカをさっくり殺してしまいました。
そうして、それを担いで、女王様の御殿へ出かけてお目通りを願いました。
48二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 00:20:49
猫タマは、女王様の御前へ出るとうやうやしくおじぎをして、
「親愛なる女王陛下、お会いできて光栄です。私はタマモ侯爵の使いの者です」
タマモ侯爵というのは、猫タマが適当に小タマにつけた名前ですが、女王様はそんなことはご存ぞんじないものですから、
「おおー!ブラトレちゃん、今日は唐揚げにして!あ、タマモ侯爵のご厚意と臣下の礼に大変感服したから、とりあえず今日はこれくらい出すよう黒ル……財務官に言っておくね!」と、言いました。
猫タマは、とりあえずこんな感じでいいのだろうかと心の中では思いながら、
「王様のその太っ腹なところが臣下にも慕われるんやな」と伝えて、お辞儀をして、帰って来ました。
そののちまた猫タマは、今度は麦畠の中にかくれていて、例の袋をあけて待っているとミニメカが二羽かかりました。それを二羽ともそっくりつかまえて、ミニメカとおなじように王様の所へもって行きました。
それから二月三月のあいだというもの、タマモ侯爵の使いだと言っては、いろいろと狩場の獲物を、王様へ献上しました。そしてその度に、猫タマはお金をいただいたり、はちみーを飲まされたりと、たっぷりおもてなしをうけるうちに、だんだん女王様の御殿のようすが分かってきました。
ある日のこと猫タマは、いつものように狩場の獲物を献上しに行きました。すると話のついでに、今日、女王様が王子様を連れて、川へ遊びにお出かけになるということを聞きました。そこで、タマは早速帰って来て、主人に話しました。
49二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 00:21:48
「いい話を聞いたんだけれど、少し無理な相談をするかもしれないんだけど……」
タマモ侯爵は、そう聞いてもなにがなんだかちっともわけが分かりませんでしたし、誰かに見られるかもしれない水浴びをするのを恥ずかしそうにしましたが、今まで猫タマに食べさせてもらっていた恩もあるので言う通りにしました。
さて、ちょうど猫タマの主人、すなわちタマモ侯爵が、水に浸かって身体を洗っているとき、そこへ女王様の馬車が通りかかりました。すると、猫タマは急に良く通る声をあげて叫びたてました。
「女王様!あそこで溺れているのはうちの主人や!どうにか助けてもらえないでしょうか!」
女王様はこの声を聞くと、何事かとおもって、カマライゴン車の窓から首を出しました。見ると、しきりにどなっているのはこれまでにたびたび狩場からいろいろと美味しいものを持ってきてくれた猫タマなので、女王様は傍の家来に、「ヒシトレさん!今すぐタマモ侯爵を助けてあげて!」と言いました。
家来が、「……やれやれ」と言いながら急いで川へ降りて行って、タマモ侯爵を引きあげている間に、猫タマは王様のところへ出かけて行きました。
「あのな。実は先程野盗が現れてしまいまして。うちも侯爵も必死に抵抗したのだけれども着物を奪われてしまったんです。せやから、侯爵がすぐ着れるものがないのです……」
猫タマは、こう女王様に訴えました。実はその着物は、大きな石の下に隠しておいたのです。けれど、猫タマには恩義があるので、女王様は御殿の衣裳部屋の係に「グルトレちゃん!今すぐ一番良いドレスを出して!ちいさい奴!」と言いました。
女王様は、侯爵を大変丁寧にもてなして、小タマにぴったり合う、立派なドレスを着せました。
ところで、小タマもウマ娘でしたから、そのドレスを着ると、いかにも侯爵らしい上品な見た目になりました。それを見た王子様は、すっかり侯爵に気に入られてしまいました。そこで、女王様は侯爵にすすめてカマライゴンに乗せて、いっしょに旅をすることにしました。
猫タマは自分の博打で勝てたので、大得意でカマライゴンよりも先へ走って行きました。すこし行くと、牧場の草を刈っているお百姓たちに出会いました。
50二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 00:22:43
すると猫タマは、
「あのー……出来れば『この牧場はタマモ侯爵のものです』と言って欲しいのです。なあ”お姉ちゃん”」と伝えると、
「よし!お姉ちゃんに任せなさい!いいよね!」
「そうだね、別にそれを言うだけならおじさんも大丈夫かな」
……脅しを使わなくてよかった、と猫タマが思うくらいいい人たちでした。
女王様が、やがてそこを通りかかると、なるほど猫タマの思ったとおり、この牧場はだれのものだ、と聞きました。お百姓たちは気がよくて優しいので、
「私達のご主人、タマモ侯爵様のものでございます。親愛なる女王ルドトレ陛下」と、みんな声をそろえて答えました。
女
王様はふむふむと頷いて考え込みました。そして侯爵に向かって、すんなり祝福しました。
「おお、いい牧場!」
侯爵は、そのあとについて、
「……取り入れが、沢山」と申しました。
それを見た王子様は「一体、ウチのチビ達の食べる飯何年分があの牧場で作れるんかな……」と考えだしました。
まずこういうやり方で、猫タマは、いつも馬車の先に立ってあるいて行っては、麦刈り、草刈りをしている者を見ると、
「あのー……」とそのひたむきな努力で説得して回りました。
そういって歩いたあとに、すぐ女王様は通りかかって、麦畠も、牧場もみんなタマモ侯爵のものだと聞かされました。そのたびに女王様は、タマモ侯爵が、たいへんな広い領地をもっているのに、どうしてこんな広大な領地を見落としていたのか、と考えだしてしまいました。そうしてそのたびに侯爵にむかって、
「とっても良い土地……」といいました。
このあいだに、猫タマは一人先に、どんどん歩いて行ってとうとうマッスルモンスターが住んでいる、立派なお城へ来ました。このマッスルモンスターは、世にもすばらしい大金持ちで、女王様がみちみち通っておいでになった、タマモ侯爵のものだという広大な領地も、じつはみんなマッスルモンスターのものでした。猫タマは、このマッスルモンスターのことをよく聞いて知っていましたから、そのとき、ずんずんお城の中へはいって行って、
「世界一の筋肉を決めるボディビル大会が遠くの町でやるそうです」と呼びかけました。
51二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 00:23:11
それを聞いたマッスルモンスターは、すっかり喜んで、
「それはいけない!きっと、無理なトレーニングで弱った筋肉があるかもしれない!財産に囲まれる生活は飽きた!ボディビル大会に急いで、疲労した筋肉を労わねば!」と猫タマを放置して、財産の権利書を猫タマに渡してどこかに行ってしまいました。
なので、猫タマはお城のアレコレを使って、パーティー料理を作ることにしました。
そうしてすっかりパーティーの料理が出来上がったそのとき、お城の外のつり橋を、女王様の馬車のわたってくる音がきこえました。猫タマは、その音を聞きつけると、さっそく、お城の門のところへ出て行って、女王様にこう申しました。
「さあ、どうぞ。女王様には、タマモ侯爵のお城にお入りくださいませ」
女王様は、さっきからこのお城に気がついていました。そして、誰のお城だか知らないが、中はさぞかし立派だろうから、入ってみたいものだと思っていたものですから、猫タマがそう言うと、驚いてしまいました。
「これが侯爵のお城!?お庭も綺麗だし、建物もこんなに大きくて滑らかに切り出された大理石は見たことがない……」
女王様が馬車からおりると、猫タマは、その後からついて行きました。タマモ侯爵は王子様に手を貸されて、その後に続きました。やがて大広間にはいると、立派に飾られたテーブルの上に、猫タマ自家製の料理が並んでいました。
そうして、皆テーブルについて、料理を食べました。女王様は、王子様とタマモ侯爵の婚姻を本格的に考えだしました。何故なら、こんな立派な領地を持つ貴族が外戚となれば国が安定するからです。そこでいくらかブラトレに絡み酒をしてから女王様は、
「小タマちゃ~ん……タマと、ずっとに居たらいいんじゃないかなー……」と、言いました。
侯爵はそのとき恭しく敬礼したのち、女王様の申し出された名誉をよろこんでお受けすることにしました。そうしてその日、さっそく王子様と結婚しました。
さて、猫タマは大貴族にとり立てられました。それからはもう、マッスルモンスターから貰った城でタマやパチタマ、黒タマ、小タマ、あと生徒会トレと寮長組トレと仲良く暮らしましたとさ。
うまぴょいうまぴょい
≫143二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 14:16:53
「お待ちしておりました、お嬢様。」
(凄く様になってるなファイ女…)
…不定期に学園にて開かれたトレ喫茶。今回は元女トレが執事服を着て対応するもので、元男のトレーナー達は客側である。
そんな中、やってきたドベトレを出迎えたのは執事服を綺麗に着こなし、軽く一礼するファイトレ(女)であった。
「どうぞこちらへ、お手を拝借いたします」
「あ、ああ…」
白い手袋をつけた手に引かれ、ドベトレは席へ案内される。乱れなく無駄もない所作でドベトレを席につかせると
「お嬢様、メニューはこちらでございます。何か用がございましたら、なんなりとお申し付けくださいませ。…失礼いたします」
手を回して一礼、凛とした声とほぼ音も鳴らさずに歩き出す姿を見ながら、いつもよりクールな彼女に
(凄くかっこいいなファイ女…)
そんなことを思いながらファイ女を呼ぼうと顔を上げた所で、まるで把握していたように歩いてくると
「お決まりでしょうか、お嬢様」
「とりあえず…紅茶とスコーンを一つ頼むぜ」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ、すぐにお持ちいたします。」
店の奥へと向かうファイトレを視線で追うと、ふとダストレに対応するウオシスを見つけて引っかかりを覚える
「お待たせしました、スコーンと紅茶です。お嬢様の目の前で紅茶は淹れさせていただきます。」
「…そういやファイトレ(女)、ウオシスの動きなんだけど…何かファイ女とそっくりな気がするんだが…」
「…ええ、彼女には私が従者としての作法を手ほどきしております故、似たような所作になるのもおかしい話ではないでしょう」
会話しながらでも優雅な姿勢を崩さず紅茶を淹れるファイトレ(女)。淹れ終わるとドベトレの前に置き
「どうぞ、お召し上がりください」
「ああ、いただくぜ…」
144二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 14:17:32
〜⌚〜
…出されたそれを綺麗にしたドベトレは、先程から周りを見渡していた。知ってるトレーナーも結構来ていたのが理由だった。
ドベトレが立ち上がりそろそろ出ようかと考えた矢先、隣で控えていたファイトレは入口の方へとドベトレを連れて歩く。
ファイトレにエスコートされる中、周りへと視線を散らしていたドベトレは、流れるように振り返ったファイ女に壁ドンされる。
「…へ?」
ファイ女は更にもう片方の手を顎にそえるとクイッと引き寄せる。アップで映る顔に思わず頬を紅く染めるドベトレ。
透き通る氷のような碧色の目を真正面から覗き込むように見ているドベトレに、口づけを軽く落として微笑む。
「見てスズトレ、ファイトレがキスしてる!」
「ファイトレさんも大胆だね…」
店内にいたルドトレとスズトレの二人が野次る。黄色い声も上がる中、真っ赤な顔をしたドベトレに
「如何でしたかお嬢様?…私からのリップサービスです、それでは、またのお越しを。」
「きゅう…」
オーバーヒート寸前のドベトレを支えるファイトレ(女)は、それはもう綺麗な顔をしていたらしい。
短文失礼しました
上のイケ女ネタより、ファイ女にキュンとさせられるドベトレです。尚ファイ女は他の人にもしているので割とヤバい。
イケメンで強くて守ってくれる、話し相手にもなってくれるけど精神的に弱い部分もある面倒な人…乙女ゲーの攻略相手かな?
≫160二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 17:48:27
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
件の喫茶店にダストレが脚を運んだのは、どうやら今回はもてなされる側であると聞いたからだ。
「……如何なさいましたか?」
「あっ、大丈夫大丈夫。ちょっとびっくりしちゃっただけだよ」
眼前のウオシスは、スラリとした長身を黒い執事服で包み込んでいる。中のシャツと手袋だけが白く、濡羽色の髪の毛と相まってそのコントラストがよく映えていた。
「えっと、ここであってるよね?」
「勿論でございます。では席の方へご案内させて頂きます。失礼」
「ふぇ?」
スッといつの間にか手を白い手袋に取られ、エスコートをされる。歩幅もこちら側に完全に合わせていた。そのままなされるままに席へ着くと
「こちらメニューとなります、お嬢様。何か申し付けがございましたら、私をお呼びください。何なりと対応させて頂きます」
「う、うん。ありがとね、ウオシスちゃん」
手を前と後ろに回し、静かに一礼をすると裏へと消える。それを見送ったダストレは自分の顔が少し熱いことに気がついた。
(やべ……なんかめっちゃドキドキしてるぞ俺……というか何あのウオシスちゃん?普段とは全く別物じゃん!!)
いつもの実家に帰った時に飛びついてくるような犬みたいな彼女とは違い、今日の彼女はさながら狼。きりりとしていて、獲物を狩る時の冷たさのようなものを纏っている。
(えっと……メニュー見なきゃ。えっと……紅茶とスコーンのほかに……タキトレさんのクッキーか。RGBって……。ムントレさんの大根と……寮長のトレーナーさんたちのビーフシチューも。オベトレさん……ああ、オベイユアマスターさんの。いいなあ……じゃなくて!シェフの気まぐれ……?)
うんうん悩んで、これにしようと決め、顔を上げるとそこにはもうウオシスがいた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
161二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 17:49:04
「え、えっとね、このオベトレさんの気まぐれ……って何?」
「そちらオベイユアマスター様の担当トレーナー様が作る料理でございます。しかし出てくる料理はランダムとなります」
「そ、そっか……じゃあコレを頼もうかな」
「承りました。少々お待ちください」
メニューを受け取ったウオシスが厨房の方へ消える。
5分ほどして、料理が運ばれてきた。
「こちら、思い出のハンバーガーとコーラ、ポテトとなります。どうぞごゆるりと」
見るとボリューミーなハンバーガーにMサイズのコーラ、そしてポテトが芳しい香りを立てていた。
ハンバーガーに齧り付くと、まだ温かい。味も申し分なく、サクサクのポテトと共に、何かを流し込むように夢中で食べた。
「ふう……美味しかったなあ」
「お楽しみになられたようで何よりです」
いつのまにか背中にウオシスが立っていた。少し心臓が縮んだ。一体誰からこんなことを教わったんだ……。
「そういえばさ、ウオシスちゃんってこういうのにも慣れてる感じ?時たますごく雰囲気が変わるからさ」
「……いえ。今回はファイトレ(女)様にご指導を頂きました。その他は、どうかお控えください」
その時少し顔に影が差した気がした。気のせいだろう。
「うーん……そっか。ウオシスちゃんもありが……っっ!?」
立ち上がり、彼女に礼を言おうとしたところで顔に手を添えられる。手袋越しの温度はヒヤリとしていて、自身の顔の温度が浮き彫りになる。
「ケチャップをつけたままでは、その美しいお顔も台無しですよ、お嬢様」
そんな二次元の中でしか見たことのないようなセリフをかまされ、口元を優しく拭き取られる。
「えっあっあ、ありがと」
「いえいえ。お嬢様を美しくさせて頂くのも、執事としての務めですから」
そうしてはやる胸を押しとどめながらエスコートされて出口へと歩く。彼女の歩きは音もなく、まるで夢現のようだ。
162二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 17:49:48
「じゃ、じゃあありがとね。ウオシスちゃ……」
お礼を言おうとした時、グイと壁が背中に迫る。状況を飲み込むのに幾らかかかった。壁ドンをされており、彼女は今自身に壁ドンをしている。袋のネズミとはまさにこのことだ。
彼女の透き通った、アメジストを彷彿とさせる紫の瞳が近付いてくる。思考はもはや動転して使い物にならない。
(キスされるの……?)
そう思い、無意識に目を瞑ると、耳を優しく撫でられ、
「どうかまた、お越しくださいね。お嬢様」
そう囁かれた。ぞわぞわぞわっ、と今まで感じたことのない何かが全身を駆け巡る。体は熱を帯びて、心臓はどんどん早鐘を打っていく。
「きゅう……」
か細い声と何かに堕ちる音を最後にフラリと倒れるダストレ。
「おっと。少々おいたがすぎましたかね……」
そんな彼女をお姫様抱っこすると、裏にあるベッドに寝かせ、ダイワスカーレットを呼ぶ。
そうしてダストレはダイワスカーレットと共に帰っていった。
(ヤバかったなあ……ウオシスちゃん。次も絶対行こう)
「ちょっとアンタ!何ボーッとしてんのよ!?」
こうしてまた1人、夢女が生まれた瞬間であった。
おしまい
スレに上がっていたスパダリ元女トレ夢女生産喫茶とファイトレ(女)さんの指導という着火剤をもとに書きました。ごめんなさいダストレさん……彼はこの後もあの時の喫茶店のスパダリウオシスが脳裏をチラつくことでしょう。
今回ダストレさんをお借りしました。何か問題あればご指摘お願いします。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part714【TSトレ】
≫39二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 21:51:11
セイトレ「さて、曰く付きの廃墟でお泊りですが……」
グラトレ「南無大慈大悲救苦救難広大白衣観世音……」ガタガタガタガタ
セイトレ「……グラトレさんや頭隠して尻隠さずですよー」
グラトレ「億兆京垓杼穣溝澗正載極恒河沙阿僧祇那由多……」ガタガタガタガタ
セイトレ「グラトレさんや、それは数の値ですよー」
グラトレ「何故……何故此の様な……」
セイトレ「さあ?」
グラトレ「ううっ……お化けコワイ」
セイトレ「取り敢えずフクトレさんか、カフェトレさんに助けを求めに行きますけど……どうします?」
グラトレ「き、気を付けて行ってきてください……そ、そうだ、せめて十字架っぽいの渡しておきますね」
セイトレ「お化けに十字架って効くのかなぁ……って、まさかの十文字槍かぁ……」
グラトレ「が、頑張って……」
セイトレ「まあ、頑張りますけど……その間グラトレさんは独りになりますよ?」
グラトレ「……!? ……つ、着いて行きましゅぅ……」
その後フクトレによって怪異に引っ張られているセイトレと、セイトレを反対から引っ張っている腰の抜けたグラトレは救助されました。
≫96二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 23:39:28
テイトレ遊戯王ネタ。各デッキはpart711より
vsフクトレ
「占術姫コインノーマのリバース効果発動。アローシルフを裏側守備表示で特殊召喚する…どうする?テイトレ」
「なめんな!俺の帝王は…絶対だ!冥帝従騎エイドスを通常召喚!こいつは召喚に成功した時追加でアドバンス召喚ができる!」
「…ん?」
「エイドスをリリース!こい!光帝クライス!絶対の光で我が敵を破壊せ」
「待て待て待て!」
「な、なんだよぉ…せっかく口上考えてきたのに…」
「…アドバンス召喚?リリース?い、生け贄召喚じゃ…」
「?フクトレ何言ってんだよー5D'sから名前変わったじゃん」
「あー…そうか…久しぶりにジェネレーションギャップ感じた…そうか…そういえば3つも離れてんのか…」
vsウラトレ
「汎神の帝王を発動します!手札の進撃の帝王を墓地に送ってカードを2枚ドロー…」
「灰流うららを発動。チェーンはありますか?」
「…ないです…じ、じゃあ天帝従騎イデアを召喚!効果でモンスターを守備表示で…」
「ライフを支払い神の警告を発動。効果を無効にしイデアを破壊します。チェーンはありますか?」
「…もー!なんで俺に気持ちよくデュエルさせてくれないんですか先生ー!」
「勝てば勝つほど相手にコスプレを要求できるらしいので。ドベトレとマルトレが待ってますよ。」
vsネイトレ
「エクシーズ召喚!みんなおいで!わくわくメルフィーズ!」
「…も、もこもこがいっぱい…」
「よーしみんな攻撃ー!いっけー!」
「わーかわい…いたっいだだだだ!痛い!攻撃力が可愛くないこいつら!」
「よし。で、えーとメルフィーはお友達を探すらしくて…どんな子がくるのかな」
「動物たちが集まって…切り株に乗って…う、うん?」
ガシャン!ギュイン!バァァン‼︎
《天 霆 號 ア ー ゼ ウ ス》
「「ロボだこれー!!!」」
97二次元好きの匿名さん22/03/20(日) 23:39:55
vsシャカトレ
「炎斬機ファイナルシグマはEXゾーンにいる限り斬機以外の効果を受けません!」
「うあー!駄目だ負け確だ…」
「ふふ、こうなったファイナルシグマは厄介でしょう?」
「くっそ…あ、ファイナルシグマって斬機シグマの最終形態みたいな感じか」
「…ええそうです!ファイナルシグマとはギリシャ文字における小文字のシグマ(σ)が単語の最後につく際の字形(ς)を意味しまして!数学では、シグモイド関数と呼ばれる関数に使用されているんです!!シグモイド関数とは座標点(0, 0.5)を基点(変曲点)として点対称となるS字型の美しい滑らかな曲線で「0」~「1」の間の値を返す、ニューラルネットワークの活性化関数でして!!!あ、厳密に言いますと標準シグモイド関数とは、あらゆる入力値を0.0〜1.0の範囲の数値に変換して出力する関数で… シグモイド関数は現在では、主に分類問題(二値)における出力層の活性化関数として用いら」
「はよ殴れ!!!!!」
vsマクトレ
「…あのぉ、マクトレ…さん」
「ふぅん…テイトレ…貴方如きよわよわ雌落ち決闘者が私と同じ場に立つなど…身の程を弁えなさい押し弱右固定!」
「お前ぇ!バ鹿にするなら凡骨でいいだろ!オラモンスター効果無効!返せるもんなら返してみろ!!」
「おおおおお!ドローオォォ!!」
「ばっ…バ鹿な!モンスター効果は全てはず…」
「モンスターではありません!神ですわ!!」
「うわあーっ!!」
「…」
「…満足した?」
「はー…楽しかったですわ…」
おまけ
「うーん基本プレイ無料の遊戯王マスターデュエルは複雑な効果処理等をしてくれるから遊戯王復帰勢はもちろん初心者でも気軽にデュエルが楽しめるなぁ(ステマ)」
「それに無課金でもデッキをいくつか組めて自分のお気に入りのカード達で遊べるなぁ(ステマ!)」
「対人が不安な人でも充実したソロモードでコツが掴める上に各テーマのストラクチャーデッキが貰えるんだぁ(ステマ!!!)」
「それにカード毎のストーリーが学べるんだぁ…どれどれ俺の帝王デッキは…」
『帝王と呼ばれるモンスターたちは全てを消滅させるためだけに活動する、さながら破壊そのものが形となったような存在』
「くっ、くそ迷惑…!」
≫104二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 01:00:35
〜🎶(流れ出す控えめなミュージック)
ウオシス「眠れない夜。其れは誰にだって在ります」
ケツ上「何か悲しいことがあったり。何だか胸がザワついたり」
黒ルド「そんな夜、ゆったりとラヂオでも聞いてみませんか?」
黒タマ「トレセン学園協賛、深夜ラヂオ『黒の會』始まります」
ウオシス「初めての企画ですね。ラヂオ番組って」
黒タマ「そうだな〜。それにこのメンバーで集まることも珍しいよな」
ケツ上「そうですね。僕もこういった物は初めてなんです」
黒ルド「まあ、気楽に行こう。これ、魔ルドが差し入れてくれた花林糖」
ケツ上「あ、頂きますね」
黒タマ「ありがと。…うん、美味いな」
黒ルド「どうした?ウオシスは食べないのか…?」
ウオシス「いえ、その…私だけ黒が無いのが少し…」
黒タマ「あー…じゃあ黒ウオ…黒シスとか?」
ケツ上「なら僕も黒カフェですね」
黒シス「わぁ…皆さんとお揃い…ふふ…」
黒カフェ「嬉しそうですね。では、質問返答コーナーにしましょう」
黒ルド「今回のお題は…気になる!黒の會トレーナーに聞きたいこと、か。えっと…最初のお便りは…『自身の担当ウマ娘の別のトレーナーについてどう思うか』だとさ」
105二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 01:01:37
黒カフェ「僕は…そうですね…ちょっと危なっかしいけど頼れる2人、といった印象ですね。義もタバコも2人とも何処か欠けた、って言うんですか?そんな印象があって、でも其れは美点で…そんな感じですよ」
黒ルド「私の…というかルドルフの魔ルドはなぁ…私にルドルフと色々な事を教えてくれた存在だな。頼ること、繋がり、…数え始めれば際限が無い」
黒タマ「パチ…は、うん。少し、ほんのちょびっとだけ悪い所はあるけど、それ以外は完璧に頼れる兄貴だな…うん。せめて小遣い全額スってくるのはなぁ…。猫もしっかりサポートしてくれるし、何よりも飯が美味いな。パチのはレーション缶詰虫…だから」
黒ルド「む、むし…」
黒タマ「大丈夫。今日は持ってきてないから。あと小か…アイツはな…許されないことをした。それは誤魔化せない。だけど、小なりに贖罪をしようと頑張ってるから…。それにタマ自身が1番望んでることだからな。俺はそれを尊重するし、小ともっと理解し合いたいと思う」
黒シス「ふぁああ…」
ケツ上「どうしました?黒シスさん」
黒シス「皆さん、とっても他の方を大切にされてて…凄いなぁって…」
106二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 01:01:49
黒ルド「そういう黒シスはどうなんだ?教えてくれ」
黒シス「あっ、はい!えっと、親父さんとギムレットさんと202さんとVさんでいいですよね?」
黒タマ「分かってはいたけど、多いな」
黒シス「親父さんはいつもしっかり者で、皆のリーダーなんです。私もまだまだ未熟なトレーナーで、そんな私に色んな所に連れて行ってくださって、経験をさせてくれるんです。悩み事の相談にも乗ってくださって…とっても素敵な方です。ギムレットさんは、そんな私と親父さんとの緊張を上手く解してくれて…ギムレットさんはウマ娘としての理論を教えてくださるんです。ヒトの目線じゃなくて、ウマ娘からの。だから自分の理論がウマ娘にはどう適用されるか、というのが分かるのが、とっても助かってます。それに、にんじん料理を沢山食べてくださるんですよ。202さんは、どっちかと言うと文化的なものを多く教えてくださいますね。この前も一緒にジェンガをしました!私もまだ知らない事が沢山なので、もっと学んでいきたいです。Vさんは…結構親父さんに窘められてたりしますけど、なんだかお兄ちゃんがいたら、こんな感じなんだなぁって…そう思うんです。この前もクレープに誘ってくださったし、猫だって一緒に探しました。やっぱり…こうやって思い返してみれば…何だか家族みたいなんです。ウオッカさんも含めて…って皆さん!?どうしたんです!?」
黒タマ「いや、なんでもない…」
黒カフェ「皆さん、いい娘さんを持ちましたね…」
黒ルド「(なでなで)」
107二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 01:04:14
黒タマ「お次はこれだ。『最近流行りの商品について』」
黒ルド「と、いうと…あれか。最近流行りの枕やらメガホンやら」
黒カフェ「うちはタバコがジュースとケーキのコンボを決めようとしてたので危うく阻止しました。さすがにこれ以上は…」
黒シス「えっと、この前余ったカップケーキを貰いました…とっても美味しかったです!」
黒ルド「この2つ使えばなぁ…こう、仕事も無理してできるのが尚更タチ悪いよなぁ」
黒カフェ「ですねぇ、それとさっきのお題で大分使ったからここは流して次行きましょう。えーっと、匿名Mさんからのお便りです。ありがとうございます。『どうして皆胸が…小さいの…☆』」
黒ルド「ッス〜〜〜〜〜〜〜〜…」(A)
黒シス「え?皆さん!?」(B)
黒タマ「変形するか…」(B)
黒カフェ「よろしい。ならば戦争(クリーク)だ」(AAA)
黒シス「どうなってしまうんですか…あ、今日の夜はこれでお開きです。不定期深夜ラヂオ『黒の會』、是非、気が向けばゆるりと。では〜」
黒タマandビィ「「諸君、私は巨乳が嫌いだ」」
〜🎶(徐々に大きくなっていくクラシック)(後ろで聴こえるドタバタ)
ぽっ、ぽっ、ぽっ、ぽーーん…
≫115セイ義の?廃墟探索22/03/21(月) 07:36:00
「こんばんわ〜。義カフェトレです。今日は廃墟に来ています。こういうのは幽霊がどうとかの前に廃墟は床が腐ってたり廃棄物があったりで危険なので良い子は真似しないでください。事前調査のもと、専門家の監修のもと行われています」
「セイトレだよ〜。先導は今回"私"がやっていくよ〜」
「………はい。キミですか。よろしくお願いしますね」
「結構雰囲気があるね」
「そうだね〜生き物への怨嗟が聞こえてきそうなくらいだよ〜」
「音がこう……キィィィィンと」
「それは音叉だねぇ」
「ビデオカメラ何か映ってますかァ?」
「………………"特に何も映ってないね"まあそういうものだよ」
「まぁ心霊番組でもほぼやらせでありがちですよねェ」
ドンっ「ぐえっ。キミ、そっちはルートから外れるから危ないよ」
「大丈夫ですよ〜何のために今日は厚底外してると思ってるんですか?」
「ダメダメ、ルートは守らないとね」
「はぁ〜い」
ガタガタッ
「おおーラップ音的な」
「どっちかというと野良犬でも紛れ込んでそうな音だね。念のため切り上げて戻ろうか」
「えぇ〜もっとオクマデイキマショウヨ」
「だめ。戻るよ」
「……企画は最後までやらないとダメなんじゃないですか?」
「そんな事ないよ。狂犬病は一応駆逐されてるはずだけど、もし僕かキミが野良犬に噛まれたらトレーナーTVの責任問題になるから」
116セイ義の?廃墟探索22/03/21(月) 07:36:32
「そんなぁ〜。まあ」
ボキッ
「うわっ」
「何かに守ラレてルアナタの足を折るのは無理ですが、左足なラ別です………もうスグだから引きずっていカせてもらうね?」
「まあそうくると思ってましたよ」
「何やつ!?」
「SEC●Mです!! 安否確認もしっかりそれケツパンチ!!」
「えっギャァァァァァァ!!?馬鹿なそいつにくっついてきた守護霊みたいなやつ対策はしてきたのにぁぁぁぁあ!!」グワッシャジョウブツウウウウウウ!!
「ありがとう黒」
「やっぱこういう企画はやるものでは無いと思うんですよ」
「僕もそう思う。ただでさえ怪しいのにわざわざ近付くのはね」
「ところでセイトレは?」
「フクトレが動いてますよ。ほら肩貸しますから帰りましょうよ義」
「ありがとう。これ義足代どこに請求すればいいんだろ……」「………トレーナーTVでしょうか」
後日見たビデオにはセイトレではない人のふりをしたナニカが映っていて当然お蔵入りからのフクトレによるお炊き上げとなったとさ
おしまい
≫124二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 08:59:49
「少々おいたが過ぎたようですね……ですがこれをもって終幕とさせていただきましょう。レベル11、原始生命態ニビル!全てを喰らい、地に落ちよ!」
「うげぇ!どうせ持ってると思ってましたよ!」
「ではなぜそれを見据えておきながら尚、展開を続けていたのですか?ブラトレさん」
「そりゃ何とかできなくても止まったら死にますから。それにミスりましたね先生、ニビルは攻撃表示、そこに攻撃力12000越えのニビルトークンを攻撃表示で置いてくるとは!このまま殴ってフィニッシュでしょうよ!バトルフェイズ!」
「ではニビルトークンの攻撃宣言時にトラップ発動、魔法の筒!相手の攻撃を反射してダメージへ!」
「チェーンして速攻魔法発動、禁じられた聖槍で魔法、罠の効果を受けない!」
「ではそれにチェーンしてディメンション・ウォールを発動させてもらいましょう」
「あ”っ”」
「ここで簡単な質問です。11400引く3000は?」
「8400……」
「ブラトレさんの今のLPは?」
「5200……」
「ディメンション・ウォールの効果は?」
「発生した戦闘ダメージを相手に押し付ける……」
「では宣言通り、終幕といたしましょうか」
「ギャアアアアアア!」
ピーッ LP 0
「伏せへの警戒を怠るとは、まだまだ青いですね」
「ライトニングストームは表のカードが何かあったら発動できませんからねえ……」
「故に適材適所というわけです。羽箒を引けなかったのは運が悪かった、ということでしょう」
≫155「出る」と噂の廃墟122/03/21(月) 18:26:39
「よし、着いたよ皆」
夜、鬱蒼と生い茂る木々の下で一台の車が止まる。運転席のドアが開き、中からデジトレが出てくるとそれに続いてファルトレ(蒼)、そして二人の担当ウマ娘であるアグネスデジタルとスマートファルコンも降りてきた。
春も近づいてはいるものの夜はまだ肌寒いので全員長袖の上着を着用している。
「ここが「出る」と噂の洋館ですか……確かに不穏な空気を感じますね」
ファルトレが森の中に建てられた洋館を見上げる。
過去に起きた事件が原因で呪いをかけられていると言われており、肝試しに訪れる者達が怪現象に襲われた等の話がある。
今回、デジトレ達は心霊ロケと言う事でこの洋館を訪れていた。
撮影と調査の許可は現在この場所を管理している人物にあらかじめ取っている。
「心霊スポット撮影はウマドルの定番だからってやる事になったけど、実際に来てみると思ってた以上に不気味だね。ファル子今ちょっと後悔してるよ……」
「幽霊を怖がるウマ娘ちゃんもまた良き……………じゃなくて、かなり古い建物らしいので皆さん怪我に気を付けてくださいね」
「とりあえず、早いとこ準備を済ませて撮影に入っちゃおう」
156「出る」と噂の廃墟222/03/21(月) 18:27:53
「デジトレさん、何かありましたか?」
「うーん……パッと見は何も無いね。ファルトレ、ちょっとカメラで部屋を撮ってくれる?」
「わかりました」と周囲をデジタルカメラで撮影するファルトレ。
その間にデジトレも部屋を懐中電灯で照らしながら調査を進めるが、出てくるのは埃ばかりだ。
隣の部屋に行くと、別行動を取っていたファルコンが壁に飾られた時計を見上げている。そしてデジタルはそんなファルコンに見とれていた。
二人に声をかけようとすると後ろからシャッター音が聞こえた。ファルトレが写真を撮った様だ。
「あれ?どうしたのトレーナーさん?」
「……ごめんファル子、もう一回部屋の絵を見てくれる?」
「ん、これでいーい?」
先程と同じ様に薄暗い部屋の中心で壁掛け時計を見上げるファルコン。そんな彼女の姿をカメラに収めていく。
撮影の邪魔になると察したデジタルは部屋の外に出た。
「見てください二人とも、廃墟と言う怪しさと危うさを持つ空間にウマドルが入る事で儚く、それでいて神秘的な空間に変わるんです。ファル子の新しい輝きが見れるだなんて……来て正解でしたね」
落ち着いた口調、しかし興奮を隠せない様子のファルトレ。最初は困惑していたファルコンもすぐにノリノリになり自分からポーズを取る等している。
「わかります!わかりますとも!」とファルトレの言葉に同意しながら見学しているデジタルを見たデジトレにも撮影欲が沸き上がって来た。
157「出る」と噂の廃墟322/03/21(月) 18:29:28
「アタシもデジタルを撮りたくなって来たんだけど……いいかな?」
「ふぇっデジたんを!?ああハイ、問題ナッシングです!」
照れでぎこちなく歩くデジタルを連れて隣の部屋に移動する。
デジタルを窓の下に座らせ、愁いを帯びた表情をさせる。床に寝転ばせてカメラに目線を送らせる。部屋にあった花瓶を持たせる。
先程のファルトレ様に撮れば撮る程、魅力が増すデジタルに夢中になって行くデジトレ。
ふと、デジタルとは違う視線を感じてそちらを向くと、いつの間にか来ていたファルトレがカメラを向けていた。
「せっかくなんでデジトレさんの事も撮って良いですか?」
「勿論。じゃあその後アタシもファルトレを撮らせてね」
「是非お願いします。……では、まずはカメラを持ったまま壁にもたれ掛かってください」
「はいはい」
「さてと、私はどうしようかなー♪」
トレーナー同士の撮影を部屋外から眺めていたファルコン。ファルトレに渡されたカメラを手に自分はどうしようかと考えていると部屋の隅で自分のトレーナーを恍惚な顔で見詰めている、デジタルの姿が目に入る。
「ねえねえ。ファル子、デジタルちゃんを撮りたいな?その後デジタルちゃんもファル子を撮って良いからさ☆」
「そんな畏れ多い……いえっ喜んで!」
158「出る」と噂の廃墟4(終)22/03/21(月) 18:32:18
思い思いに撮影を続ける4人。彼女達の頭からはすっかり心霊スポットの調査と言う目的が抜け落ちていた。
そんな脱線している彼女達の目を覚まさせる為の、神の悪戯だろうか。撮影に夢中になっているトレーナー二人が後ろに下がり、ぶつかってしまう。お互いにバランスを崩した二人は大事な足を守りながら共に床に倒れる。
「大丈夫!?トレー……ナー…………?」
「んなっ!?」
心配して駆け寄って来た担当ウマ娘二人がその光景を見て硬直する。床に仰向けに倒れたデジトレの上にファルトレが多い被さり、まるでファルトレがデジトレを押し倒す形になっていた。驚きと照れのせいか、頬を朱く染める二人。見詰めあったまま動けなくなっている。
「こ、これはまさか……ラッキーなんとか!?ダメですお二人とも……普通の絡みだけでも威力が凄いのに不意打ちなんて食らったらデジたんは………きゅう」
デジタルの身体から魂が抜け出て行く。
心霊スポットと言う特殊な場所だからだろうか、霊体になったデジタルの姿はデジトレだけでなくファルトレ達にも見えていた。
「デジタルちゃん?デジタルちゃん!?どうしよう、デジタルちゃんが召されちゃった!」
「マジか。ゴメンちょっと魂回収してくるね!」
「あ、ハイ。いってらっしゃい」
上に乗っていたファルトレに退いてもらい、デジタルの身体を抱えて部屋を出て行くデジトレ。
「ファル子、霊……出たね。噂は本当だったんだ」
「「出た」ってより「出した」じゃない?」
ファルコンの冷静なツッコミが二人きりの部屋に静かに響き渡る。
「……色々と脱線しちゃったし、そろそろ調査に戻ろうか」
「そうだねトレーナーさん」
今ので本来の目的を思い出した二人は再び心霊スポットの調査を再開する。
(もしかしたら、さっきまで撮ってた写真に何か写ってるかも)
せっかく良い写真が撮れたので、出来れば何も無い事を祈りながらまだ撮影してない場所をカメラに収めるファルトレだった。
≫165二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 19:52:41
フクトレ「これから心霊スポットの除霊を始めたいと思います」
スズトレ「嘘でしょ……ゲーム実況ですらない」
フクトレ「こちらに用意したのはマルトレです」
スズトレ「嘘でしょ……猿轡されてる……」
フクトレ「マルトレを台車乗せたままとりあえず心霊スポット中心に移動するぞ。────はい移動完了。スズトレと、はいカメラさんもこれつけて」
スズトレ「イヤーマフ……あっ(察し)」
フクトレ「そして猿轡を取る」
マルトレ「何でこんなところ連れてこられてるの俺!?」
フクトレ「大丈夫やばいのは蹴っておいてあるから」(イヤーマフしてて聞こえない)
マルトレ「どゆこと!?」
ガタッ
スズトレ「あっ────」
その瞬間であった。マルトレの発動が起こったのは。廃墟の幽霊や怪異は諸共全滅した。イヤーマフを貫通した音にやられスズトレは弱弱モードになってマルトレと一緒にフクトレにしがみつきながら廃墟を後にした。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part715【TSトレ】
≫33二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:34:51
Blow our gale 前編
「う、ううん…」
ゆっくりと意識が戻っていく。うっすらとぼやけた視界には控室の天井が映っていた。
そうだ、毎日杯。レース後、俺はその場ですぐに倒れてしまった。
「トレーナーっ!」
「ふむ。目覚めたようだな」
近くには二人の姿。心配そうに俺をのぞき込むヤエと、そして。
「し、師匠…?」
「孫娘と弟子の晴れ舞台だ。私が動かない理由はなかろう。れーす、見させてもらったよ、少年。いや、少年と呼ぶにはいろいろと変わりすぎたようだが」
およそ一年ぶりの対面だった。俺の人生において最大の恩人、そしてヤエノムテキの祖父、その人がここにいた。
「レース後の余韻に浸る間もなく、なにやら普通じゃない空気を感じたのでね。少しばかりお邪魔させてもらった。二人とも私の教え子だと言ったらすぐに通してくれたよ」
「そうでしたか…。すいません、せっかくいらしてくださったのにご迷惑をおかけして」
「気にする必要はない。これくらいは老兵の務め、いいものを見させてもらった礼もある」
そう言って師匠は穏やかに笑う。
「俺が倒れてから、どれくらい経ちましたか?」
「ちょうど一時間が経とうとしているくらいだ。関係者に聞いてみたが、出走者が体力尽き果て倒れてしまうことは前例がないわけではないらしい。その場合は大事をとって、ういにんぐらいぶは見送られることが多いそうだが、今回の君は勝者だ。多少の遅れは問題ないから、もしすぐに回復するようだったらできれば出てほしいと言われた。どうする?」
「…そういうことでしたら、出ない理由はありません。今の俺はウマ娘としてもここにいますから」
「そうか。念のため確認するが、身体の方は大丈夫なのだな?」
「はい、動けます。…終わったら、お話しなければいけないことがあります、師匠」
「分かった。では私は一度戻るとしよう。待っている人々がいる。行くといい」
「ありがとうございました。…よしっ、行こうか、ヤエ」
「…えっ、あっ、はいっ!」
34二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:35:43
「話は以前に聞いていたが、しかしいざ対面してみれば不思議以外の何者でもないな。事実は小説よりも奇なり、とはまさにこのことだな。らいぶ、ご苦労様だった。個人的な感想を言うならば、踊りは及第点だったが歌は…」
「言わないでください。見様見真似でなんとかなる踊りと違って、数か月前まで音楽とほぼ無縁な野郎だったやつが急に人前で歌うというのは流石に無理があります」
「はは、それもそうだったな。…恨んでいるか?」
「えっ…?」
「聞けば君のその変容はとれせん学園に起因することだという。君をヤエノムテキのとれーなーとし、共に行くように指示したのは私だ。…責任は、私にある」
「…それなら、気にしていません。確かに人間のままだったらと、そう思うこともないわけではありませんが。でも、こうなってしまったからこそ気づけたことがたくさんあって、それはきっと昔のままの俺じゃずっと気づけないことだと、そう思うので。だから、師匠が気にすることはありません。何より、ヤエも一緒にいてくれている。俺は、前を向いて進めてますから」
「…そうか。そう言ってもらえると、助かる。この一年で大きくなったな、少年」
「むしろ容姿は幼くなってますけどね…」
35二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:36:48
「ははっ。では、私から一つ。ヤエノムテキを下したことなら、君が気にすることではない」
「!? どうして…?」
「根が真面目な君のことだ。真剣勝負に手加減は不要、そう挑み掴んだ勝利であっても、とれーなーとしては担当であるヤエノムテキの勝利を阻んだことに負い目を少なからず感じている、そんなところだろう」
「…お見通し、ですね」
「私はウマ娘のれーすについて決して詳しいわけではない。だが、今日の勝負の中心は間違いなく君の動きだった。君の走りに触発されてヤエノムテキは二位という位置に食らいついたのだ。仮に君が出走しなかった場合、ヤエノムテキは今日と同じ力は発揮できまい。おそらく、あの芦毛の娘に差されていただろう」
「…」
「結果だけ見れば、確かに君はヤエノムテキの一着を阻んだ。だが、担当ウマ娘の成長と言う点では、間違いなくトレーナーとして役目を果たした。私は、そう捉えたがね」
「ありがとう、ございます。そう言っていただけると、気が少し楽になります」
「だが、私は驚いたよ。いくら鍛錬に熱心だった少年といえど、ウマ娘になってすぐに猛者達と渡り合えるとは思っていなかった」
「…そのことです。師匠にも、話しておかなければいけないのは」
…
「成程。君の言うその感覚を、真実と断定するには根拠が足りず、虚構とするのもまた自身に起こっている事実から難しい、と」
「はい。突拍子のない話だと思われるでしょうが…」
「だが君の姿は変わってしまっている。それを事実とする以上、何が起きても不思議ではあるまい。…孫娘にはもう話したのだろう。何と言っていた?」
「…必ず、帰ってくると。一人にはしないと、そう約束しました」
「そう、か。君の走りに対する思いの強さは、道場に迎え入れた人間として理解しているつもりだ。その選択をしたことを、責めることはしない。だから同じ言葉にはなるが、私からも『呪い』をかけさせてもらおう」
「必ず、帰ってくるんだ。少年。君の居場所はまだ、ここにあるのだから」
「はい。絶対に、守ります」
36二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:37:23
「さて、私はそろそろ帰るとしよう。『皐月賞』だったか。そこでまた、願わくば万全な姿で会えることを心から願っている。最後に一つ、聞いてもいいだろうか」
「はい、なんでも」
「その『名前』の由来だ。少しだけ気になったのでね。何を思い、少年がその名を名乗っているのか」
「俺はあくまでもトレーナーです。だからウマ娘としてのあの名前に、大した理由はありません。ただ…僅かしか許されないこの身でも、誰かの心には鮮烈に残ってほしい。そういう願いは、少しあります。前半分はあの娘の借り物ですが」
「だから、か」
八重の、花火。
「『ヤエノハナビ』、悪くない名だ」
続
37二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:38:16
Blow our gale 中編
「うそ、ありえ、ない…」
「うっわー!すごかったねー!思わず言葉を忘れるほど引き込まれちゃった!」
「…」
「最後の三人の競り合いとかGⅠ級じゃない!?しかも人気も実力も圧倒的だったオグリキャップに二人も先着するなんて!かっこよかったなー!あの二人のファンになろうかなぁ…」
「…」
「おいおーい、だいじょーぶ、『』?意識あるー?」
「…」
「応援してた大好きなオグリキャップが一着じゃなくて、ちょっと残念なのは分かるけどさ。でも三着だし、すっごく惜しかったし!今は勝ったあのウマ娘を祝ってあげようよ」
「…ちが、う。…そう、じゃ、ない」
「えっ?何?」
あんな走り方まともじゃない。作戦も走法も、成し遂げたことも。
耐えられるわけがない。それだけの無茶な加速と速度だった。仮に耐えたとして、もう動くことすらままならないくらいの負担がかかったはずだ。
それに何より、普通のウマ娘のトレーナーなら、あんな走り方を指示するわけがない、許すはずもない。ウマ娘側の独断だったとしても、無茶がある。
まるで、あれは。
「たしかめ、たい…」
レースの勝敗なんて関係ない。ただ、真意が知りたい。
「ききたい」
理由があるはずだ。何かが、必ず。ただ勝ちたいというだけでは、あんな走りにはならない。
聞かなくちゃ。
熱狂したレースの余韻の中、私の中の何かが、そう静かに言い続けていた。
38二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:38:50
「今日はお疲れ様でした。トレーナーと一緒にレースで走る、なんとも不思議な感覚で、それでいて心の底から楽しいと、そう思える勝負でした。だからこそ、勝てなかったのは悔しいです」
「ヤエもお疲れ様。俺も、本当に楽しかった。倒れてヤエにも師匠にも迷惑をかけたのは申し訳なかったが…。でも勝てたのは、色々と運が良かっただけだ。もう一回やったら、多分ヤエかオグリキャップが勝つだろ」
「気を使わなくても大丈夫です。それがありえないことはオグリさんも、私自身もよく分かっています。同じ条件なら、何度やってもトレーナーが勝ちます。今日はそういう勝負でした。だからトレーナーは次に私に負けるまで、胸を張っていてください」
「おっと、いらない心配だったみたいだな。ああ、次の『皐月賞』もお互い頑張ろう」
「でも、流石にライブのあの歌は…」
「ちょっ、ヤエまでそれを言うのかよ…。俺はついこの前まで、走りが少し好きなだけの普通の人間だったんだぞ?急にアイドルまがいのことができるわけないっつーの…」
「ふふっ、あれはあれで一つの特徴として受け入れられそうですが」
「勘弁してくれ…」
「…」
「…ヤエ、気づいたか?」
「…はい、確かに。帰り道ずっと。偶然にしては、視線に意思がありすぎています」
「はぁ、ただの熱の乗りすぎたファンとかだったらまだいいんだが…。とりあえず向こうの出方を探る。ヤエは俺の側を離れるなよ」
「は、はいっ」
39二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:39:23
予想外だった。用があるのは一着を取ったあのウマ娘だけだったのに。なぜかヤエノムテキさんと一緒にいる。おかげで話しかけるタイミングを見失い続けて不器用な尾行を続けることになってしまった。自分のコミュ障っぷりが少し嫌になる。
さらに予想外だったのは二人ともトレーナーと思しき人物が近くに現れなかったこと。放任主義?でもこれだけの結果を残すウマ娘たちのトレーナーなのだからその可能性は薄い気がする。これも何か理由があるのだろうか。
ただ、帰る手段が徒歩だったのは不幸中の幸いというべきか、それとも要らない苦労をする羽目になったというべきか。車か何かで帰られてしまえば、いよいよ私なんかに追いかける手段なんてなくなってしまうのだけれど、徒歩だというならまだ追いかけられる。ほぼ引きこもりの私には少しつらいけど、なんとか見失わずに追えてる。まだ話を聞ける可能性がわずかにあるから、諦めきれずにこの変な状況は生まれている。久々の外出だったのに、何やってるんだろう、私…。
「何か用か?」
「ひぇっ」
驚いた。純度100%の混じり気のない驚きの感情が出た。
「あ、あれ、ここ、どこ…?」
二人を追いかけるのに必死で今いる場所の把握が疎かになっていた。さっきまで人の多い大通りを進んでいたはずなのに、今は少し離れた静かな公園だ。しかも追っていたはずの二人は私に気づいている。
「何か変なことを考えているのでしたら、こちらとしても通報なりしないといけません。でも、話とかそういうことでしたら内容によってはお聞きします。目的は何ですか?」
驚いた。驚いたが、状況としてはむしろ一気に好転した。
目的を果たせる状況になったのだ。なら、隠れる必要もない。直接、聞くだけだ。
静かに、でもしっかりと。一歩を踏み出して姿を見せ、口をひらく。
「あなたは、何のために、走っているのですか」
40二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:40:04
「…?」
「毎日杯、見てました。おめでとう、ございます。正直なことを言うと、このレースでオグリキャップさんを超えるウマ娘が現れるとは、思っていませんでした。ヤエノムテキさんも。だから本当に驚きました。…でも同時に、あなたの走りには違和感を感じました。決してあなたの実力を疑っているわけではありません。今日の勝利は、疑いようもない事実です。運などではないことくらい、一般人の私なんかでも分かります」
「逃げに追従するくらいの前のめりな先行策。レース後半、位置をほぼ最後方に落とした後の再びの追い上げと圧倒的な加速。さらにはそこから先頭を奪い死守する速度とスタミナ。何をとっても、今日のあなたは異様だった。経験を積んだウマ娘でさえ、あんな無謀な策は取らない。いや、策なんて呼べるようなものじゃない。いくらメイクデビューで少し話題になるような成績を出したとはいえ、二戦目でとれるような技じゃないんです。例え『固有』に関わることだったとしても、リスクに対するリターンが釣り合っていない」
「…あなたの名前を調べても、メイクデビュー以前の情報は全くなかった。あなたは『何者』なんですか。何があなたをそこまでさせたのですか。あなたは何を見ているのですか。そこまでして勝利を掴む必要があったのですか。教えてください。私は、それを聞きたくて、ここに、来ました。理由を聞けないと、納得できないと、私は、あなたのその破滅に向かうような走りを、認められそうに、ないんです」
だってそれは―。そこから先は流石に言えずに、私は言葉を終えた。
目の前に現れたのはヤエよりも少し年上程度の少女だった。
見つかったことに明らかに動揺はしていたが、悪意などは持ち合わせていなかった。
そのことにほっとしたのも束の間で。
その後に発せられた問いへの答えは簡単に片づけられるものではなかったのだが。
41二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:40:52
小さい声だった。でも、はっきりとしていた。
わざわざ尾行までするくらいだ。並程度の思いなら、ここまですることはないだろう。
彼女の言葉を反芻する。「一般人の私なんかでも分かる」と彼女はそう言ったが、それは違う。師匠のような俺たちの事情をある程度知っている人ならともかく、ただの無関係な観客がここまで踏み込んだ分析ができるはずがない。そもそも少し周囲と変わった走りをしたウマ娘がいたところで、その真意を聞きたいなどと思い問いただしに来る彼女もまた、俺からしたら異質だ。
事実を答えてしまうことは簡単ではない。第一に信じてもらえるか、第二にこの特殊な状況を全くの第三者に言ってしまっていいのかどうか。それ以外にも答えられない理由は出てくる。
嘘を作り上げて伝えてしまう方法もある。が、俺もヤエも決して得意ではない。それにこれは勘にはなるが、嘘をついたところで彼女には見破られる気がする。
では、取れる方法は…。
沈黙は続く。彼女は特に急かすこともなく、ただじっとこちらを見ているだけ。梃子でも動かなさそうな固い意志を抱いて、目の前に立ち続けている。
…思い浮かんだことが無いわけではない。だがこれもまた賭けだ。それにヤエを巻き込んでしまうことにもなる。まずは、ヤエの許可を取らなくては。
「ヤエ、聞いてもいいか」
「? はい、何でしょうか」
「できれば驚かないでほしいんだが…」
…
「えっ、は、はいっ!?ほ、本気ですか!?」
「頼む、信じてくれ。というかそれ以外に方法が思い浮かばない!」
「いや、確かに私にも何か方法があるわけではありませんが…。でも、い、いいんですか!?いろいろとその…どうなるか、全然分かりませんよ!?」
「俺としては自分の勘を信じてみたい。彼女の言葉を聞いて、逃げるのは不誠実だとも思う。ヤエが嫌と言うなら諦めるが、でもどうか、俺を信じてくれないか」
「…分かりました。そこまで言うのなら、任せます。信じていますから」
「…ありがとう」
42二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 22:41:53
「ええ、と。あの…」
「…答えてもいいです。ただ、こちら側としてもかなり踏み入った話になるので。それを聞きたいということで、間違いはないですか」
「(頷く)」
「では、条件があります。まず大前提として、これから聞くことを絶対に他人に広めないこと」
「そ、それはもちろんです」
「そしてもう一つは」
「ヤエノムテキのサブトレーナーになること」
「は、はいっ。…えっ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
続
会話文と心情だったらなんとか書ける。でも情景描写は全く書けない。そんな駄文を繰り返してます。
本来書く予定は無かった話です。レース結果についてとヤエトレのウマ娘としての名前、そしてサブトレとの出会い等。もう少し続きますがこれ以上はさすがに長くなりすぎるのでいったんここまで。サブトレのプロフィールも次回に。もう一つ挟んで皐月賞ですかね。終わりが遠のいていく…。
もし次があるのなら、長編はしっかり最後まで書き終えてから上げるようにします。膨れ上がりすぎて収拾がつかなくなってきてます。自業自得ですね。もっと単純にできればいいんですが。
失礼しました。
≫49二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:38:22
「…」
「ん…」
…トレーナー室、椅子に座ったキタトレとその膝上で体を彼に預けるサトトレ。時間も大分遅く生徒達はもう寮に戻っていた。
相変わらずキタトレは片手で作業しつつもう片方でサトトレを支えて撫でるテクニカルな行動をしており、サトトレは
(んん…温かい)
キタトレの胸を枕代わりに休んでいた。室内なだけあってか薄着かつ、サトトレのウマ耳が丁度谷間に差し込まれる形。
トクン…トクン…という落ち着いた、ブレの少ない一定のリズムを刻む心音を聞きながらサトトレは考える。
(ダイヤだとこれより心拍数多かったし、割と間隔に振れ幅がある感じ…他に分かりやすい人だとグラトレさんは意外と心音大きいし、魔ルドトレさんはあれでリズムはきっちりしてたり個人差があるんだよね)
「…サトトレ、実はちょっと今日気になることがあってね…」
「…なにかな?」
「チームメンバーの一人から、私の声と心音のASMRが欲しいって子がいたのだけど、それで用意してみようと思ってるのよ」
「…うん、僕はいいと思うよ。実際、睡眠導入には効果があるからね」
キタトレの言うASMRを肯定するサトトレ。自分がされていてどうなのかということを伝えておく。
「そう…ならいいわ。」
「そっか…」
(そろそろ眠たくなってきた…頭はまだ回る…けど…やっぱり、こうしていると…落ち着くなぁ…)
先程からずっと聞こえる心臓の音色と、触れた所から感じる温かみや感触が意識をそっと何処かへと連れ去っていく。
「〜♪」
「んぅ…」
ベールで包み込むような感じのダイヤとは違う、寄りかかれる大木のようなキタトレの安定感。
色んな人に抱かれたり触れられたりしたサトトレだが、幼くなった体に引っ張られるような強い眠気が襲われては…
「zzz…」
…容易く意識を落とし、その信じれる人に任せるように軽い体を垂らした。人形のように綺麗な彼は、今日もまた静かに眠る。
───後日、サトトレが編集に協力したASMRは、安眠用としてプロキオンの中で流行ったそうな。
短文失礼しました
心音ネタより、多分悪気はないけど聴き比べてるサトトレ。チムメンの娘は寮のベッドで安眠している頃合いですね。
正直心音とかをこうやって聞く時は、大体親しい人とかのを聞く形になりそう。想像すると割と眠くなりそうです。
≫106ASMR視聴122/03/22(火) 13:41:06
「じゃあ……次は右の耳を掃除するぞ……」
「はひっ……」
目隠しをして身を捩らせるダストレ。その耳にはウマ娘用のヘッドホンが着用されている。
流れて来るのはフェストレの声。企画でウマ娘化したトレーナー達のASMRを撮る事になっており、現在ダストレは実験として完成してフェストレのASMRを視聴させられている。
少女らしさを残しながらもやや低くした声。落ち着いた、ゆったりとした口調で囁かれる言葉がダストレの脳を支配し、一言一言発せられる度に身体を振るわせる。
本来はスズトレがやる筈だったのだが、別件で用事が出来てしまった為、代わりに暇そうにしてたダストレが連れて来られていた。
「ふぅー......はい、お掃除おわり。……最後は、俺の心臓の音を聴かせるぞ」
「んっ……んんっ……」
ヘッドホンを通して吹き掛けられる吐息に身体を振るわせるダストレ。
布が擦れる音が聞こえる。ヘッドホンの向こうで、フェストレが胸を当てているのを想像してしまうダストレ。
高鳴って行く自分の鼓動に対して流れて来るのは「トク……トク……」と安定したリズム。微かに聞こえる吐息。
(あ……何かコレ、ほっとすると言うか……)
聴いているうちにダストレの心音も落ち着きを取り戻していく。
107ASMR試聴2(視聴は誤字)22/03/22(火) 13:43:41
そんなダストレの背後に立つ影がひとつ。フェストレ本人だ。素早くヘッドホンを外すと、自分の胸をダストレの頭に乗せ、右の耳を胸の間に挟んで心音をダイレクトに聴かせる。
「フェストレさん!?何してっ……」
「……ヘッドホンと直接、どっちの方がお好みかな?」
規格外の大きさの物を持つトレーナーやウマ娘もいるので印象が薄いが、フェストレもそれなりにはある。
その柔らかな感触を頭の上に感じ、思わず顔を赤くさせるダストレ。聴こえるのは先程と同じ心音。しかし、実際に聴こえる音はASMR以上にダストレの脳内に染み渡って行く。
「大丈夫。……ほら、すっかり眠くなって来てるだろ……?」
ヘッドホン越しではなく、直接耳に響くフェストレの甘い吐息と声、落ち着いたリズムの心音、そして枕代わりのフェストレの胸の柔らかさに、次第にダストレの意識はうつらうつらと微睡む。
「何も考えなくていい……ただ俺の言葉と鼓動に耳を傾けるだけで良い……俺が今から3数えたら、君は深い、深い眠りに入るからね……」
「ふぇ、ふぇすとれしゃん………?」
一瞬顔を耳から離して一呼吸おいてから、再び口を近づけるフェストレ。
「……良い夢を。3………2………1………ゼロ」
「………………すぴーーーー」
数え終わったと同時に、眠り落ちたダストレの頭を乗せたまま自分もソファに座るフェストレ。自分の上で気持ち良さそうに寝息を立てる後輩の髪を軽く撫でる。
「………すか……」
「ん?」
「おれは……すかーれっとを……いちばんに……」
「……ふふっ」
夢の中でも担当ウマ娘の事でいっぱいなダストレを微笑ましく思い、つい笑みを溢すフェストレ。
ダストレに釣られたのか、手で口を覆いながら大きなあくびをする。
それから暫くして、部屋に流れていた寝息が、もうひとつ増えるのだった。
≫114二次元好きの匿名さん22/03/22(火) 14:46:39
「…」
「(スヤスヤ)」
…朝、早くに目が覚める。隣で私の腕を枕にしてまだ眠るのは私の殿下ことファイン。その端正な顔は嬉しそうに緩んでいた。
割れ物に触れるように彼女の頬に指を添わせる。指先から感じる温もりが、冷たいだけの私を優しく狂わせる。
「…とりあえず、朝を用意せねば…」
ベッドから起き上がると、お姫様を起こさないように静かに出る。まだ冷たい外気が素肌に触れてひんやりと感じた。
手早く着替えて台所へ、ウマ娘の体でも以前と同じ速度で着替えれるようになるくらいにはすっかり慣れてしまった。
「…ん、こんなものか。」
「んんっ…」
2、3品ほど作り揃えた所で寝室から小さく聞こえる声。出来た料理をそのままに向かい、彼女の目前に座る。
「…おはよう、ファイン。」
「おはよう、トレーナー。」
「朝食は出来てるから、用意している内に着替えてきてね」
「うふふ、ありがとう」
部屋を出て着替えの邪魔をしないようにする。ウマ娘準拠なため食事の量も二人分でも多いし耳と尻尾のケアも必須。
(さて、今日私がすべきことと本国への報告やら…今の内に纏めてこなしておくか。まあとりあえず…)
「…ああ、席についてくれファイン。」
「はーい!…いただきます」
「いただきます」
二人で机を挟み朝食をとる。美味しい飯と彼女との会話、この二つから味わえる満足感はそうなかった。
「今日は休日だし、最近チラシで見つけたアウトレットモールの中にできた新しい店、行ってみたいな♪」
「それはいいね、ならゆっくりと回るとしよう。…ごちそうさま」
「ごちそうさま、じゃあ用意して出かけよっか!」
「ああ、少し待っていてくれ。」
皿を下げ、洗濯と掃除を外出中にセットしておく。最後に戸締まりを確認して玄関に立つと先に出たファインから
「トレーナー、善は急げ、だよ!」
「勿論、行こうかファイン。」
今日もまた、一日が始まる。許されるなら、永遠にこの日常を過ごしたいと私は思ってしまうのだった。
≫178二次元好きの匿名さん22/03/22(火) 21:11:51
一、午后の授業
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」
ウラトレ先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところをさしながら、みんなに問いをかけました。
マクトレが手をあげました。それから四五人手をあげました。テイトレも手をあげようとして、急いでそのままやめました。たしかにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろはジョバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。
ところが先生は早くもそれを見附けたのでした。
「テイトレさん。あなたはわかっているのでしょう。」
テイトレは勢よく立ちあがりましたが、立って見るともうはっきりとそれを答えることができないのでした。マベトレが前の席からふりかえって、テイトレを見てくすっとわらいました。テイトレはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまいました。ウラトレ先生がまた云いました。
「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」
やっぱり星だとテイトレは思いましたがこんどもすぐに答えることができませんでした。
ウラトレ先生はしばらく困ったようすでしたが、眼をマクトレの方へ向けて、
「ではマクトレさん。」と名指しました。するとあんなに元気に手をあげたマクトレが、やはりもじもじ立ち上ったままやはり答えができませんでした。
ウラトレ先生は意外なようにしばらくじっとマクトレを見ていましたが、急いで「では。よし。」と云いながら、自分で星図を指しました。
「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。テイトレさんそうでしょう。」
179二次元好きの匿名さん22/03/22(火) 21:12:14
テイトレはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかテイトレの眼のなかには涙がいっぱいになりました。そうだ僕は知っていたのだ、勿論マクトレも知っている、それはいつかマクトレのお父さんの博士のうちでマクトレといっしょに読んだ雑誌のなかにあったのだ。それどこでなくマクトレは、その雑誌を読むと、すぐお父さんの書斎から巨きな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒な頁いっぱいに白い点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。それをマクトレが忘れる筈もなかったのに、すぐに返事をしなかったのは、このごろぼくが、朝にも午后にも仕事がつらく、学校に出てももうみんなともはきはき遊ばず、マクトレともあんまり物を云わないようになったので、マクトレがそれを知って気の毒がってわざと返事をしなかったのだ、そう考えるとたまらないほど、じぶんもマクトレもあわれなような気がするのでした。
先生はまた云いました。
「ですからもしもこの天の川がほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さなバースはみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。またこれを巨きな性癖の流れと考えるならもっと天の川とよく似ています。つまりそのバースはみな、性癖のなかにまるで細かにうかんでいる脂油の球にもあたるのです。そんなら何がその川の水にあたるかと云いますと、それは真空という性癖をある速さで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりそのなかに浮んでいるのです。つまりは私どもも天の川の性癖のなかに棲んでいるわけです。そしてその天の川の性癖のなかから四方を見ると、ちょうどバースが深いほど青く見えるように、天の川の底の深く遠いところほど性癖がたくさん集って見えしたがって白くぼんやり見えるのです。この模型をごらんなさい。」
180二次元好きの匿名さん22/03/22(火) 21:12:34
先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズを指しました。
「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの光るつぶがみんな私どもの太陽と同じようにじぶんで光っている性癖だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。こっちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒即ち概念しか見えないのでしょう。こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち性癖がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるというこれがつまり今日のマルチバースの説なのです。そんならこのレンズの大きさがどれ位あるかまたその中のさまざまの性癖についてはもう時間ですからこの次の理科の時間にお話します。では今日はその性癖のお祭なのですからみなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。」
そして教室中はしばらく机の蓋をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいでしたがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました