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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part736【TSトレ】
≫17二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 21:13:10
「いらっしゃいませ…あ、オベトレさん」
「こんにちは、チヨトレさん。ベイも同伴でいいですかね?」
「もちろんです。施術でよろしいですか?」
「肩と腰回りの方をお願いできればと。ウマソウルの方に引っ張られて、体がすごく痛いんですよね」
「了解しました。オベイさんはこちらの椅子にどうぞ」「Sank you」
「ではここに服を脱いでうつ伏せになってください」「はい」「タオルはこれを巻いてください」「ありがとうございます」ムチィッ
「(うわすごい…こう…潰れて…あの…すごいなぁ…)」
「………チヨトレさん?」
「あ、ああすいません!では失礼しますね」
「(すごい…肩を押すたびに潰れて…うお……)」
「じ、じゃあ次はリンパの方を整えるので、仰向けになってもらって」
「はい。よっこいしょ、っと」
「じゃあ、オイルの方、塗っていきますね」
「よろしくおねが…ひゃっ?」
「Wow…too hot…」
その瞬間、チヨトレの何かにヒビが入った。
ちなみに現在のオベトレのスリーサイズは169-94-58-93である。
この後は製品版「ぬるぬる✩Japanese流オイルマッサージ編」をご購入の上お楽しみください!
≫23二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 21:23:25
「ニシノ!誕生日おめでとう!」
ニシトレはそう言いながらニシノフラワーに花束を渡す。
「トレーナーさん!ありがとうございます!」
4月19日、今日はニシノフラワーの誕生日。この日ニシトレはニシノフラワーの誕生日を祝っていた。
「いやー…それにしてもニシノももう誕生日かぁ…早いなぁ。」
「今日まであっという間でしたね。」
「そうだね。」
やはり信頼している相手が誕生日を迎える事は嬉しく、ニシトレもとても嬉しそうだった。
「それにしても、私の誕生日のために部屋の飾り付けや花束の用意までしてくれて嬉しいです…!」
「喜んでもらえて何よりだよ。ニシノの誕生日はトレーナーの俺にとってもめでたい事。だから少しでもニシノに喜んで欲しいって思ってね。」
「…そう言われると照れちゃいますね…えへへ…」
と二人は微笑ましい会話をする。
24二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 21:25:11
「どうかな?美味しい?」
「はい!とっても美味しいです!!」
「そっか、よかった。ニシノの口に合って。」
ニシトレが誕生日のために作ってくれた料理を美味しそうに食べるニシノフラワー。その横にはその様子を楽しそうに見つめるニシトレ。
「──ごちそうさまでした!」
二人で色々な話をしながら食べていくうちにいつの間にか料理を食べきっていたようだ。
「あのっ!トレーナーさんが作って来てくれた料理、とっても美味しかったです!」
「喜んでくれて何よりだよ。頑張った甲斐があった。」
「また食べたくなっちゃうような味でしたよ!」
「ははっ。そっか。」
ニシトレとニシノフラワーは顔を合わせながら二人で笑い合った。
25二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 21:25:33
「さて、食べ終わった事だし渡したいものがあるんだ。」
ニシトレは丁寧にラッピングされたプレゼント用の袋を取り出すと、ニシノフラワーに差し出した。
「はい!誕生日プレゼント!」
「プレゼント…?」
「うん。開けてみて。」
渡されたプレゼントのラッピングを丁寧に開くと中には花の装飾がついた一つの髪飾りが入っていた。
「これって…髪飾りですか?」
「うん。ちょっと作ってみたんだ。装飾をどうしようか少し悩んだけど、色々考えて、ガーベラの花をモチーフにした髪飾りがいいかなって思って作ってみたんだけど…どうかな?」
「嬉しいです!大切にしますね!」
そしてニシノフラワーは手に持った髪飾りを早速自分の髪につけてみる事にした。
「どうですか?似合ってますか…?」
「うん。似合ってるよ。」
貰った髪飾りをつけたニシノフラワーはその姿をトレーナーに見せ、褒められるとすごく嬉しそうにしていた。
そして料理やプレゼントも全て出し終わった所でニシトレは最後にこう言った。
26二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 21:25:52
「さてと、ニシノ。一ついい?」
「なんでしょう?」
「これからまたトレーニングやレースとか大変な出来事がたくさんある。それを乗り越えられるように俺もしっかりニシノを支えていくからお互いに頑張っていこう。これからもよろしくね。」
「はい!これからもよろしくお願いしますね!」
二人はこれからもお互いに支え合っていこうと誓った。
≫36二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 22:06:00
「来たな…」
「ほんまにここなんやな?」
「ああ、間違いない」
「人…いない…?」
「「「「温泉…!」」」」
パチの運転する車から降りたタマトレ一行の4人は、山奥にひっそりと佇む温泉旅館に来ていた。
まさしく秘境といった様子で、パチの運転する車でここまで来るのに3時間ほどかかってしまったが、それを踏まえてもお釣りが来る程度にはその風格が立派だった。
「しゃ、温泉行こうぜ温泉」
「まあ待て黒。まずは枕投げ…だろ?」
「その前にチェックインやで〜」
「ま、まって……」
まるで男子高校生のようにはしゃぐ男性陣を横目に、猫とくっついた小が歩いていく。
「ようこそ当館へ。ご予約された〇〇様でよろしいでしょうか?」
「よろしいで〜。あとの2人はあっちです」
「あの、失礼ですが大人4名様とお聞きしましたが…こちらの方は?」
そう言って小を見てくる。猫の後ろから顔を少しだけ出した小は
「お、おとな…です」
と言った。猫も「ちっちゃいですけど、大人なんやで。な?」と小を撫でて言う。
「承知いたしました。お部屋はこの鍵の番号になります。お風呂につきましてはお部屋の方に、露天風呂がございますので、そちらかもしくは大浴場をご使用ください」
「そんなら、ありがとうございます。小、行こか」
「あ、あの2人…は?」
「ん〜…ちょいと待ってな」
37二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 22:06:55
そう言って小を置いて外の方へ歩いていく。しかし取り残された小は不安そうにキョロキョロしている。
「あの…」
「は、っはははい…」
「飴、食べますか?」
「……いいん…ですか?」
「当館オリジナルの飴です。どうぞ」
心配した受付の人が包装された飴を渡す。それを口に入れると、幾らか不安は薄まったようで、小は飴を転がしながらぽわぽわしている。
「小〜。パチと黒捕まえたから、行くで〜」
「う、うん。あ、あり、がとうごじゃいました」
若干噛んでしまったが礼を言い、てとてとと歩いていく。
「おお…広いな」
「流石だな。タマも連れてくればよかったな」
「でもアイツが4人で行ってこいって言ったし、なら俺たちは満喫しようぜ。な?」
「そうやね〜」
「うん…」
その後、荷物を置いた4人は外を散策し、鯉に餌をやり、セルフサービスのアイスクリームを食べた。アイスは宿泊客には食べ放題なようで、4人で食べて頭がキーンとなった。
「ふう…じゃあ、温泉入るか」
「だな。と言っても俺たち2人は女湯に入るわけにもいかないし、部屋のだよなあ」
「うちは大浴場でもええけど…こっちのにするわ」
「小はどうするんだ?」
「わ、私…は、部屋…にする」
「んじゃ、皆部屋か。順番はどうする?」
38二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 22:08:41
その後順番決めをし、パチと黒が一緒に入り、その後猫、小の順となった。
2人が最初入っている間、縁側でゆったり寛ぐ猫。小は部屋の隅に丸まり、鞄から出した書類の整理をしている。
「小、そんなここまで来て仕事せんでも。ゆっくりし」
「…でも…私……」
「デモもストライキもないで。今日は休むために来たんや。ならゆっくりするべきやで」
それを納得したのか書類を一旦置き、縁側の猫の向かいに座る小。
そうやで、と微笑む猫と一緒に、外の風景を眺めるのだった。
閑話休題。温泉の中はと言うと
「あったかいな〜〜パチぃ〜」
「くろぉ…くるしゅうないぞぉ…」
溶けていた。黒とパチは広い温泉に浮かび、ふわぁとしている。体はすでに洗ったらしく、かぽ〜ん、といった擬音が似合いそうな具合だ。
体は浮かんでも浮かぶ胸はないが。
「そろそろぉ…あがるかぁ…」
「おおおぉ…」
そうして体を拭いて腰に巻き、着替えようとして止まった。
「なあ黒着替えどうした?」
「こりゃ…部屋に忘れたか。取りに行こうぜ」
「体ちゃんと拭けよ」
そう言って腰巻き一枚で外に出る。しかし2人がいることを忘れていた。
「はぁ…2人とも、ここは家やないし、うちだけじゃなくて小もおるんやで?」
「わ……あ……ぷしゅうう………」
オーバーヒートした小を見て、急いで着替えを持って戻り、着替える2人。きちんと帯を絞めて外に出ると、小をパタパタと猫が扇いでいた。
39二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 22:09:12
「ご、ごめんな小。そんなつもりはなかったんだ」
その後先に来た食事を終え、なんとか冷めた小は猫と温泉へ向かった。どうやら2人で入るようだ。
「小、こっちおいで。洗ってあげるで」
「う、うん…」
豊満な体にタオルを巻いた猫が、同じくタオルを巻いたもののあまりの肉付きの差の小を呼ぶ。
「あんた、ほっそいなあ。タマと同じでちゃんと飯食べとるん?」
「う、うん……ちょっと、すくない、けど」
「そんなんやったらいつまでもガリガリなまんまで?女の子なんやから、ちゃんと食べんといけんよ?」
「う、うん…がんばる」
小の体を洗い終えると自身も洗い終え、ゆったりとした広さの檜風呂に浸かる。途中小は寝そうになっていた。
一方その頃…
「オルァ喰らえ!ジェットストリームアタック!」
「うおっあぶね!ならば俺が枕になることだ!」
「グワーッ!!」
2人は枕投げをしていた。些かテンションは高い。
パチが瞬時に弾道を見切ってすんでのところで避け、黒タマは大胸筋バリアで防いでいる。
ゆったりと風呂に浸かる2人と、ドンパチやる2人。ゆったりと、旅館の夜は更けていくのだった。
おしまい
この4人の温泉を見たい…と思い出力しました。
いいよね温泉……
≫85二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 08:07:52
ちょいと早めに 仕事に来れば
懐かしきかな バニー服
……なんか際どくなってない? ども、タイキトレです。
トレセン学園やばい。着いた途端何時ぞやに着た黄緑色のバニー服に変わったんだけど? 春にお外でする格好じゃないんだけど? ……おー寒。涼宮ハルヒってすごかったんだなぁ。
なんか今回のは三女神様云々とは別にもう一つ、春の女神のエオストレとのイタズラ合作な気がする。……タイキ、イースターについて頑張って説明してくれてありがと。
「そんなわけでリウトレちゃん。卵料理プリーズ」
「……は?」
すでにバニーな後輩が給湯室で何やら料理中なところに出くわしたので無心してみる。しかしまーバニー服の似合うこと似合うこと。
「自分で作ればいいじゃないですか。これは私の目玉焼きです」
「イースター関係なしに家でポーチドエッグ作って食べてきたから、今日はもう作るのはいいかなって。それに一人分も二人分も同じじゃーん」
「倍になってるんですけど? 毎日毎食作ってもバチは当たらないんですよ」
そう言いながら皿に料理を乗っけるリウトレちゃん。うーむ自分の分がないじゃないか。……あれ。もしかしてそれ、くれるの?
「あげませんよ」
「はいもっと大きな声で」
「あげま……! ……言いませんよ?」
「ちぃっ」
よっしゃ笑った笑った。浅いため息にウサちゃんの警戒心が緩んだのを感じる。
「……先輩は」
「ん?」
「先輩は目玉焼きに何かけます?」
「! 塩こしょう!」
……リウトレちゃんいい子。目玉焼きの白身を一欠片とはいえ、ちゃんと塩こしょうかかってるところを口にできた。優しい。
(終)
≫94二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 10:07:56
チヨトレさんのマッサージを受けるグラトレ(独)
「ふむ……此方がそうでしょうか~」
「おや、こんにちはグラトレさん、どうされましたか?」
「あら、チヨトレさんこんにちは〜、いえいえ、噂に聴くチヨトレさんのマッサージを受けてみようかと思いまして〜」
「あっ、そうだったんですか、直ぐに準備しますね」
「お手数おかけ致します〜……あっ、それとすみませんが、オイルやリンパもされているとか〜」
「うっ…………されますか?」
「ええ、ぜひ〜」
(…………まあ、グラトレさんなら大丈夫ですね)
「分かりました、準備します」
「グラトレさんお待たせしました」
「ふふっ、楽しみですね~」
「では、着物を脱いでうつ伏せになって貰えますか? ……あっ、私は一度外に出ていますので」
「あら? 何故外に?」
「い、いや、脱ぐ所を見るのもなと思いまして」
「おやおや、気にせずとも元は供に男……気にせずともよいでしょう~」
「そ、そうですか?」
「ええ、ええ、最低でも私は気にしていませんのでお気になさらずに〜」
「……分かりました」
シュル…シュル……パサッ…
(…………あの、前言撤回して外に行っちゃ駄目ですか?)
(グラトレさん、元が男と言いつつ着物を脱ぐ所作が完全に女性なんです……)
(どうして俺はそれを目の前で見せられているのですか……)
「では、お願いしますね~」
「あっ、はい……では、始めます」
95二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 10:08:22
「オイルを掛けますが、ちょっと冷たいですよ」
「あらあら、本当にひんやりとしていますね~」
「……では、失礼して触ります」
「ええ、ええ……ふむ、このような感じなのですね~」
「次は少し強めにします」
「あうう、ちょっと痛いですね~」
「あ~、この辺り凝ってますね」
「……上半身はこれで終わりですので次は下半身の方へ行きます」
「ええ、宜しくお願いしますね~」
(ふぅ、良かった……やっぱりグラトレさんは声を上げるタイプじゃ「ひゃん」
「……へっ?」
「い、いえ、すみませんチヨトレさん続けて貰えますか」
「えっ、あっ、はい」
「ふっ…………んっ……ふっ…………んんっ……」
「あ、あの? グラトレさん?」
「す、すみません……その……お尻は少々敏感でして……」
「ええっ!? す、すみません!」
「い、いえ、極力声は出さないように致しますので……んっ……どうか、続きをお願いできますか?」
「は、はい、分かりました最後までちゃんとします!」
(いいですか俺、心頭滅却……そう、心頭滅却です!!)
この後無心で施術を終えたチヨトレだが
頬を紅潮させ、恥ずかしそうに着物を着付けるグラトレに何かが壊れかけた。
うまぴょいうまぴょい
≫133二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 19:42:08
「…そろそろ反応に困るくらいには慣れてきたわね…」
…金色の生地に黒いストッキング、白い肌を晒したバニーガール姿のキタトレは微妙な羞恥心を覚えつつ考えていた。
また俗に言う女神様の気まぐれか、等と思考しつつトレーナー室の冷蔵庫を覗く。数少ない食材を見て
「ふむ…これなら作れるかしら。」
〜〜⌚〜〜
「…あれ、どうしたのキタトレ?」
「ん、サトトレと…隣の二人は彼の護衛か何かかしら。」
「その…抱き締めさせてもらったので、代わりにと言ってはなんですが雑談がてらついてきたんですよ。」
「あ、決してやましいことはしてませんよ!?」
イースター仕様な服装のサトトレと、その隣にいたモブトレ二人。キタトレはクスクスと少しからかうような反応を見せると
「…ああそう、チーム向けにお菓子を用意したのだけど、折角だから貴方達も食べていくといいわ。」
「え、いいんですか?」
「なら、お言葉に甘えて…」
「とりあえず、ここに座るといいわ」
…三人を座らせ、奥の冷蔵庫から取り出しにいくキタトレ。そわそわするモブ二人と対照的にサトトレはニコニコしていた。
バニーガール姿で皿を手に持ってくる姿はそういうお店の如くで、一度意識してしまえば頭から離れない。
「…フレンチトーストよ、コーヒーと合わせて頂いてちょうだい。」
三人の前にそれぞれ置き、キタトレも座る。置く際にかがみ込んだことで、肌の見える胸の谷間がしっかりと見えてしまう。
「ウオデッカ…」
「いただきます。…うん、いいねキタトレ。美味しいよ。」
「…お、美味しい…」
純粋に味を楽しむサトトレと、キタトレのその姿に何かを壊されかかってることで集中出来ない二人。
「まだまだ改善の余地ありって所かしらね」
一方で綺麗に一口食べたキタトレは腕を組みそう評価する。持ち上げられる形になった巨乳、はっきりしたムチムチの太もも。
こんなのを見せつけられた二人は…どこかでバキンと壊れる音がした気がするのだった。
短文失礼しました
出てきたネタで。ちなみにサトトレの衣装はバニースーツだと犯罪的すぎるということで上で上がったものになりました。
金と黒、中々の色調ですがキタトレの暴力的な体型に合わせると非常にやべーです。バニーコス自体やばいけどね!
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part737【TSトレ】
≫42二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 23:06:36
黒の曾トレーナー交流……ということでルドルフ担当トレーナー室送りになった俺。
当然ながらそこに待ち構えているのは──
「それじゃあ、黒タマさんに教えられることは教えていくね?」
「よろしくお願いします!」
無自覚天然傾国魔性こと魔ルド。猫タマより色々小さいが、色気とかは圧倒的だ。なんならチームトレーナー、生徒会トレーナーとして日々の激務をこなすやり手でもある。
その点についてはむしろ大当たりなのではなかろうか?
「うんうん!元気よーし!それじゃあ、今日はもう生徒会の方はある程度終わってるから、チームの方を見ていくよ!」
「おおー!」
そうして魔ルドについていくと、既にチーム『プラエトリアニ』のメンバーが集まっていた。
「こんにちは、トレーナー」
「……あの、トレーナー、隣のウマ娘は?」
やいのやいのと皆が俺について聞くなか、ルドルフの一言が入る。
「……トレーナー君。今日は彼でなく黒タマトレーナーを連れているのか?」
「うん!なんでも、黒の曾の交流でってことで黒タマさんが来てくれたんだ!黒ルドちゃんは……確かカフェトレさんのところだから……ちょっと、後で差し入れ……かなぁ?」
そう返す魔ルドの言葉のなかにさりげなく他のトレーナーへの気遣いも入るあたり、人たらしは天性のものなのだろう。ゴルトレも苦労するわけだ。
43二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 23:07:18
「俺は黒タマ。魔ルドが言った通り交流でこっちに来た!今日はよろしくな!」
「「「はい!」」」
「ええ、よろしくお願いします」
……どことなく、ルドルフとそれ以外の温度差を感じながら返事を受ける。とはいえ、重賞クラスのウマ娘も所属するチームというだけあるのだろう。
それだけで熱意というか迫力がある。
「……それじゃあ、今日のメニューだけど、パワーをつけるためにウェイトをつけるのが……」
テキパキと指示をしていく魔ルド。そういえばこのメンバー、魔ルド曰く「ルドルフの身体を考えて走らせなかっただけでマイルでも勝てる」ルドルフを除けばある程度適正がバラバラなのを見事に育てているあたり知識は豊富なのだろう。それを実践できるのもやはり黒ルドと二人だからなのだろう。
そんなことを思いながらチームの面々のトレーニングを眺めたり、アドバイスをしたりされたりして過ごしたあと、魔ルドがこんなことを言い出す。
「……そういえば黒タマさん、夜はどうするの?」
「タマの食事……は猫タマとウオシスがやってくれるだろうから特にやることもないな」
「なら、ちょっと食べにいかない?私イチオシのお店がトレセン学園から車で少し行ったところにあって……」
「はい」と答えようとした瞬間、背後からぞわりと軽い悪寒を感じる。多分これは……
「……いや。確か夜は黒の曾で合流したような、しなかったような」
「そっかぁ……なら仕方ないよね。あ、仕事はほどほどにね?あと、説明はわかりやすかったかなぁ?」
「そこは問題なかったな。あと、個人的には……」
仕事で語らうだけなら問題ないのに気がつく頃には、時刻は6時25分を指していて、話し込んでしまったことに驚くのだった。
そんなことをパチに話すと「……それ、頭の位置に来る胸が見たかっただけだろ」とか言われたので後頭部をハリセンで叩いた。爽快だった。
因みに、学んだことはちゃんとタマのトレーニングに活かせた。あと、あんな天然キャラなのに理論派なのはなんなんだ?
そんなことを思いながら、俺は風呂に溶けていくのであった。
≫69二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 08:35:28
「…ど、どうしたの?」
「…」
…ベッドの上で仰向けのサトトレは、上から覆いかぶさるような姿勢で少し不満気な顔のダイヤに対して問いかける。
「…トレーナーさん、今日は匂いがするんですよ。私が知らない人の匂いが凄くついてます。」
(あっ…あの娘の匂いかぁ。大分つけられたのか…)
キタちゃんやキタトレといった知り合いや、常々彼を湯たんぽにする人達の匂いはまあいいとしても、今回は違う。
「トレーナーさん、誰に長時間抱き締められていたのか話してくださりますか?」
「う、うん…」
サトトレはあっさりとあるウマ娘に頬ずりされるくらいに抱きしめられ、長時間引っ付かれながら会話したことを話した。
「…そうなんですか」
「あの娘、会った時に何かピンときたような感覚がして、ちょっとアドバイスとか色々してみたんだ。」
ただの直感か、或いは何かが引かれ合っているのか。それは不明だが気になるものがあったのだ。
「直感、ですか…」
「そうなんだ。トレセンの生徒達の中にも何か感じる娘って結構あって、勿論ダイヤにも感じるんだけど…」
「…」
(なにか考えてる顔してるなぁ…)
すると、いきなり彼の両手首を両手で抑えたダイヤは体を落としてより密着すると、サトトレの耳元で
「そういえば、フジキセキさんが言ってたのですが、いい匂いと感じる人との相性はいいらしいんです。」
「んぐっ…そうだね」
「トレーナーさんは私の匂いがいいって思いますか?」
さて、サトトレからすれば返答に困る…というより、ダイヤちゃんからすればどちらで返事されてもいいのだろう。
仮に肯定ならそのとおりだし、否定を言っても悪いジンクスとして破壊しにいくのがダイヤである。サトトレは…
「ぅん、いい匂いだよ…」
───その後匂いがダイヤのものになるくらいまでくっつかれたサトトレだった
短文失礼しました
匂いにも敏感そうなウマ娘、知らない匂いがきつくついてたらジェラシー感じてもおかしくはないですよね。
勿論匂いは上書きするダイヤちゃん。強い。
サトトレが感じた直感は、或いは何かの繋がりかもしれません。
≫103二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 17:08:53◇貴女に足りないものは、それはーーー
「……残念だけどネイトレさん。我々の求める基準に貴女は達していないわ。星はなしよ」
「そんな……!」
トレーナーさんの髪と尻尾から手を離し、神妙な顔つきで告げるアヤベさん。やり切れない表情を浮かべるベガトレさん。劇的に崩れ落ちるトレーナーさん。……そんな現場にたった今出くわしたアタシ。なにごと?
「……フワフワ度とはまた妙なことを」
「いいもん。ネイチャがサラサラ髪綺麗ですねって褒めてくれるからいいもん……」
アタシを抱えて拗ねるトレーナーさん。世の中向き不向きってもんがあるんですよ……あとやめて。恥ずかしい話バラさないで。
「ネイトレのは短いのもあって指通りめちゃくちゃいいんだけどねー、今日はそういう趣旨じゃなかった。何よりも、モフみが足りない!」
「モフみ……? あの、さっきの星云々ってミシュランみたいなことですか?」
「ええ。厳密な数値化を求められればできなくもないけど、今回のFMT(フワフワ・モフモフ・テスト)は3つ星評価でやっていくわ」
アヤベさんが真剣な面持ちで説明してくれてるけど、ごめん。口調と内容のギャップで正直頭に入んない。
「……ねえベガ。その子の髪はどうなの?」
ベガトレさんがアタシを指名する。うおぉ、モフられちゃう……!?
「それなんだけど、学生についてはネイチャ含め数名がすでに3つ星。殿堂入りを果たしているわ」
「殿堂入り!?」
「なるほど……そういう事なら長居は無用! いくよベガ! 前方300メートル先にマベトレ発見よ!」
「……アリだわ!」
「あ、ネイトレ! 付き合ってくれてありがとねー!」
嵐のように去っていくアヤベさん達。……ていうかアタシ以外の殿堂入りメンバー? 一体何ハヤヒデさんなんだろ……。
「……よかったねネイチャ」
「……『3』つ星かぁ」
「最高の3なんだから文句言わないの」
「それもそっか」
「そうそう。……ネイチャの髪はー♪最高のモフモフ……♪」
これトレーナーさん。アタシのツインテで遊ばないの。こーら、そんな触んないでってば。……もー。少しだけですからねー?
(終)
≫116二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 17:49:25
「うーん、やっぱ思ってた通りスルスルだわ。案外手入れはしてるのねえ」
「スルスルて。まあ最低限はしてるぞ、最低限は」
「最低限って本当に最低限なんでしょうが、それでサラサラなのは世の女性がうらやむわよ?」
「恨まれるの間違いなんじゃねえのそれ」
「そうともいうわね、まあ私は無頓着なほうだから楽しめれば別にいいんだけど」
「うーん、通り魔的だぁ。今日までで何人モフって来た?」
「聞きたいのね?今の時点で……」
「覚えてないだろ」
「バレたー」
「うぅん……悪くはないのだけれど、モフ度に関してはほぼ無いに等しいわ……サイドテール部分は惜しいわね、ドライヤーを当てた後みたいなタイミングによっては良いかもしれないけれど……普段からFM(ふわもふ)値が高くなければ貴方も星を上げられないわね」
「いや、堪能する分には別にいいんだけどさ……アヤベ、星もらうとどうなるのこれ」
「三ツ星なら殿堂入りになるわよ?」
「……さっぱりわからねぇ!」
「ま、そういうこともあるわねぇ。というわけでおさらばー」
「嵐のように去っていった……ん?そこにいるのはブライアンか」
「……」
「おいどうしたブライアン、なんか負けたような不思議な顔をして」
「……さすがにケアもするべきか……?」
「おーい、ブライアン?おーい?」
≫127二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 19:00:06
グラトレ「あの〜……」
アヤベ「うーん、やっぱりサラサラしてフワフワしてはいないわね……そちらはどうかしら?」
ベガトレ「尻尾も……サラサラしていてフワフワじゃないみたい」
グラトレ「ま、まあ、しっかり手入れをしていますからね~」
アヤベ「それよ。元が男の人とは思えない程の手入れの入りようだわ」
ベガトレ「うーん、この長い髪全てがサラサラなのは手間が掛かりそうだわ」
グラトレ「ええ、大和撫子たるもの髪の手入れもしっかり行うものですからね~」
アヤベ「でも、残念ながらフワフワ度は低いから星はあげれないわね」
グラトレ「フ、フワフワ度?」
ベガトレ「だけどベガ? 目星は付けてるんでしょ?」
アヤベ「当然よ。サラサラした長髪を丸めて作ったお団子……グラトレさんの最フワフワポイントとみたわ」
ベガトレ「それなら早速。グラトレ触らせて貰うわね?」
グラトレ「え、ええ……ま、まあ、良いですが~」
アヤベ「……やっぱり! 私の見立ては正しかったわ! フワフワよ!」
ベガトレ「おお〜、フワフワ〜」
グラトレ「はあ……喜んで貰えて何よりです?」
アヤベ「でも、サラサラの髪を丸めたらフワフワになるのは収穫ね、それこそサラサラだったグラスさんの髪も丸めたらフワフワになるかもしれないわ」
ベガトレ「あっ……」
グラトレ「あらあら、グラスの髪も触って確かめたのでしょうか~」
アヤベ「ええ、グラトレさんと同じくらいサラサラだったわ」
グラトレ「…………ふふっ」
アヤベ「!? 身体が重く!?」
ベガトレ「くっ、独占力! ベガ! 逃げるよ!!」
グラトレ「あらあら、お話を聞かせてくださいな」
ベガトレ「また、後日でお願いします!」
アヤベ「さようならフワフワ、必ずまたフワフワしに来るわ!」
≫157二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:33:16
『もふもふ☆』
「モフモフ?」
「「そうモフモフよ。」」
「いいよー☆。ベガとベガトレおねえちゃん。その代わりもふもふに沈んじゃっても知らないよー★クスクス」
「では拝もふさせて頂くわ」
「わぁ、圧倒的なボリュームの暴力流石はマベトレといったところだわ。」
「髪に隠されてたけどしっぽもなかなかのボリュームこれは高もふもふ点ね。」
「どう?マーベラスでしょー☆」
「ええマーベラスだわ。」
「しかしベガ?マベトレのボリューミーな長髪は足元の毛先にいくに従ってつるつるサラサラになってるわ。これはどういうことかしら?」
「あきらかにもふ質自体が違ってる。お手入れだけではこうならないわ、きっと受けた因子の影響ね。
頂点付近がマーベラスさんの因子を色濃く受けていて、足元にいくに従ってもう片方の因子の影響が強く出現している。そんなところね。」
「なるほど――。根本があったかもふもふ毛先がひんやりサラサラ本体もひんやりと保冷剤マベトレのヒミツがわかったわ。」
「殿堂入りするには全体的なモフリ度と温かみが足りない、星2つといったところだわ。」
「悔しいーーー★」
ベガトレコンビお借りいたしました。エミュ間違っていたらごめんなさい
≫161二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:38:27
シンデレラのドレス
リーニュ・ドロワッテ当日、トレセン学園ではダンスパーティが開かれている。
華々しい衣装やその日のために新調した衣服、それぞれがデートを連れて春のダンスパーティを楽しんでいる。
デートとの華やかなダンスを楽しむもの、生徒会が告知していたDJに惹かれて来たもの、そしてかけがえのない思い出を作りたくて勇気を出したもの……さまざまな想いの中、このダンスパーティが開かれていた。
そんなウマ娘たちが楽しんでいる中、トレーナー室の一つには今も光が灯っている。
書類仕事やトレーニング計画を練っているわけではなく、ただただ一つの布と向き合い続けている。
一針一針、想いを込めて、これからこれを身に纏い、輝く姿を夢見て……
華やかなパーティとは異なり、夜の静けさがその空間を包んでいる。
たとえどれだけパーティが華やかであろうとも、この空間の静けさは続くことだろう。
もしもその静けさが破られるなら、それはきっと……
「トレーナーさん、お疲れさまです」
「おや、ロブロイ……いつの間にいらしていたのですか?」
162二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:38:50
トレーナー室に新たな音が加わる。その音でようやくロブロイがいることに気づく。どうやら私は集中しすぎて気づかなかったようだ。
縫う手を止めて、目の前で腰掛けているロブロイに目を向ける。
両手にはマグカップが一つずつ握られており、どうやら飲み物を用意してくれていたようである。
「はい、少し前から来ていました。その、トレーナーさんがとても集中してドレスを作っていらしたので、トレーナーさん、どうぞ」
「ありがとう、ロブロイ。そうですね、集中しすぎてロブロイに気づかなかったようです、申し訳ありません」
「い、いえ!……その、なんだか私が本を読んでいるときと同じみたいでなんだか嬉しかったですので」
「ふふ、たしかにロブロイも本を読んでいるときはどんなときも気づきませんからね……ふう、とても落ち着きますね」
ロブロイから受け取ったマグカップを一口飲む。
暖かなミルクティーの柔らかな甘さとほのかに香る暖かな香りが落ち着かせてくれる。
どうやら、思った以上に疲れも溜まっていたようです。集中状態がとけると自分自身の疲労が強く感じられてきます。
それに微笑んでいる彼女と一緒にこの空間を過ごすのは日常のような安心感と暖かな気持ちで落ち着くことができる。
そして同時に疑問も浮かんでくる、なぜ彼女は……
163二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:39:11
「ロブロイ、今日はリーニュ・ドロワッテなのになぜこちらに?」
「その……少し前まではライスさんたちと参加していたのですが、パーティ会場でトレーナーさんが作ったドレスを着た皆さんを見ていたら、その、来ちゃってました。その、今作っているドレスもみんなのために、ですよね」
「ふふ、そうだったのですね。ええ、遅れてドレスを着てみたい、という方もいるかもしれませんので」
そう言いながら作りかけのドレスを抱きしめる。
今回のリーニュ・ドロワッテにおいて、ドレスを持っていないウマ娘たちのために私が作ったドレスを提供していました。
オーダーがあればそのオーダーに沿ったものを、そうでなくても多くのドレスを作ってそのウマ娘が着てみたいと思うようなドレスが見つかるように、そう思って今回のために多くのドレスを最近作り続けていました。
そして今も、こうしてドレスを作っている。
そんな私を、嬉しそうに微笑みながら見つめてくる。
「ふふ、トレーナーさん、まるでシンデレラのフェアリーゴッドマザーみたいですね」
「ふむ、フェアリーゴッドマザーですか」
「はい!ドレスを与えて舞踏会へと一歩踏み出す力をくれる姿はまるでシンデレラの魔法使いのようです!」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しく思いますね。ですが私は与えてはいません。シンデレラもきっともともとのドレスでも誰よりも輝いていたはずですからね」
164二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:39:47
シンデレラはもともと自分でドレスを作り上げていました。それを破り捨てられて打ちひしがれていたところに魔法使いが現れてドレスや馬車などを用意して、それで舞踏会へと赴いていく。
華やかなドレスを身にまとい、美しいシンデレラを王子様は見惚れたのである。
だが、例えそれが彼女の作ったドレスであってもきっと王子様はシンデレラに見惚れることでしょう。
だって、そのドレスには確かなシンデレラ自身の想いがこめられている。それはきっとどんなドレスよりもきっと美しくて……
破り捨てられようと、その想いはシンデレラの身を纏っていることでしょう。
そしてそれはウマ娘たちも同じです。
私はたしかにドレスを用意しました。
ですがそのドレスたちは未完成です。
ドレスを着たい、素敵な自分になりたい、そんな想いを胸に秘めてドレスを身にまとうことでシンデレラのドレスは完成する。
そう、私の紡ぐドレスは、ウマ娘たちがもともと持っている想い、一歩踏み出す勇気、その想いこそが本当の彼女たちのドレスになる。
だからこそ、私は一歩踏み出す勇気を授けているのではない、その勇気はウマ娘たちが持っているものですから……
「トレーナーさん……やっぱりトレーナーさんの考えは素敵ですね」
「ふふ、そうでしょうか?」
「はい、ウマ娘の人生は一編の物語、という考え方もそうでしたが、ウマ娘はすでに想いという名のドレスを持っているだなんてとっても素敵です!」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。ありがとう、ロブロイ」
「……それにその考え方だったからこそ、私もここまでこれたんですから……」
私自身の考え方、ずっといだき続けている考え方に対して、ロブロイは嬉しそうに受け入れてくれる。
それがお世辞でもなく、紛れもなく本心であるのはその目を見れば明らかである。
物語を語るときのように、キラキラと光り輝いているのですから……。
そしてそれは、私自身も救ってくれる。ロブロイと一緒であったからこそ、この考え方のままで一緒に紡いでいくことができたのですから。
165二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:40:27
「……ですが、トレーナーさん……」
「?どうしましたか?」
「あの、先程は魔法使いって言いましたが、トレーナーさんもきっとシンデレラなんですよ!」
「え、私がシンデレラ、ですか?」
ロブロイはそれが正解だ、とでも言うようにはっきりとした口調で答える。
私が、シンデレラ……今まで魔法使い、と表現されるトレーナーは数多くいました。
六平さんのフェアリーゴッドファザー、私の父親のハシバミの小鳥といったように、ウマ娘をプリンセスになぞらえてトレーナーをプリンセスに導く存在に例えられることはある。
ですが、私がシンデレラ……それは、自分自身考えたこともなかった。
「はい!だってトレーナーさんも自分自身の夢であるデザイナーになるという夢に向かって自分で向かっている……その一歩歩みだした想いはトレーナーさんの言うシンデレラと同じではないですか?」
「それは……」
「それに、このドレス、トレーナーさん自身のドレス、ですよね?」
そう言ってロブロイはトレーナー室にかけてあったドレスを手に取る。
それは、他のウマ娘たちのために作ったものではなく、自分のために作ったドレス。
リーニュ・ドロワッテはウマ娘たちのダンスパーティであり、トレーナーは参加するものではないが、それでも自分自身もまたドレスを身にまといたい、という思いもあり、作っていたもの……。
だけど同時にこのリーニュ・ドロワッテの際にはそれに袖を通すことはないだろうと思っていました。
ですが、ロブロイはそのドレスを抱えながら私に手を差し出す。
これは、もしかして……
166二次元好きの匿名さん22/04/21(木) 20:40:51
「せっかく素敵なドレスなんですから、一緒に踊りませんか、トレーナーさん……いえ、お姫様?」
ああ、そんなキラキラとした瞳とそのどこまでも私を信じてくれる顔を見たら、答える気持ちは決まっています。
差し出された手を静かにとって……
「ええ、是非お願いします、英雄様」
くるり、くるり
華やかなダンスパーティから離れた暗い闇の中、2つの小さな影が踊り続ける
お互いドレスを身にまとい、静寂の中をくるりくるり
誰かが見ればそれはきっと可愛らしい二人に映るだろう
だけど二人は感じている。これは英雄と姫のダンスであると……
ここはパーティ会場ではない。周りに人はなく、観客はきっと月の光だけ
それでも、その想い《ドレス》を身にまとい、二人が揃えばそこはきっと舞踏会なのですから……
『ロブロイ……私の英雄様……あなたがいるから、こうしてドレスを身にまとい、あなただけの姫になれるんです』
『トレーナーさん……あなたがいてくれたから、ずっと信じてくれたから、私は英雄になれるんですよ』
声はない、音はない、ただただ静寂の闇だけが包んでいる。
それでも、お互いに何を思っているのか伝わるように、ただただその瞳を見つめ続ける。
お互いの瞳にお互いの光が映り合う。一つの光《物語》なのだから……
くるりくるり
二人は踊り続ける。
その踊りはこの時のものだけでしょう。
時間がすぎればそのドレスを脱ぎ、ふたたび日常に戻るでしょう。
それでもきっとその英雄はシンデレラを見つけることでしょう。
たとえドレスがなくても、何時だってガラスの靴《愛しき思い》を王子様はその手に持っているのですから……
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part738【TSトレ】
≫30二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 08:57:25
「うう…」
…たまに聞く偏頭痛、なのか。原因はよく分からないが頭が痛い。ふらふらと頭を手で抑えながら歩く。
───トレセンに所属する私は、ここ最近のたぶん睡眠不足とどんよりした天気のせいで疲れが取れず、疲労が溜まっていた。
「あら、こんにちは…って貴方、随分と疲労しているように見えるわよ。睡眠不足かしら。」
「こんにちは、キタトレさん。…いえ、私は大丈夫です」
「ふむ…ちょっとおいで。私のトレーナー室へ行きましょう、この後特にすることはないのでしょう?」
「ちょっと疲れてるだけですから…」
そうは言ったものの、キタトレさんにやや強引に部屋へと連れ込まれる。抵抗しようと思っても体は満足に動かない。
キタトレさんのトレーナー室に入ると、部屋のソファに凭れかからされる。隣に座った彼女に軽く近寄られると
「疲労と頭痛…明らかに無理してるわね。貴方、満足に休めていないでしょう。」
「…」
反応に困る。ふかふかのソファに座ったせいか思考がいまいちまとまらない。とはいえ、キタトレさんに迷惑をかけるのは…
「動かないでちょうだい。私は別に迷惑とは思わないし、何よりこんな病人を一人で放置する訳ないわよ。」
何とか立ち上がろうとしたところを抑えられ、そのままこてりと膝上に私の頭を乗せられた。…片手で掴まれてるので動けない。
「さて、少し急だけど…癒やしてあげるわ。貴方は何もしなくていいわよ。」
すりすりと、白い手で頭を撫でられる。髪越しとはいえ人肌の体温は温かい。もう片手は私の脇腹から腰の方へ。
しかも仰向けの姿勢のせいで、キタトレさんの大きな2つの山が視界の大半を占領する。…漂って来るいい匂い。
「うふふ、良さそうな反応ね」
…頭痛も和らいできた気がする。私は重くなってきた瞼にとうとうこらえきれず目を閉じ、感触と音と匂いだけを感じる。
ふと両耳を指先で軽く押し込まれたり、挟まれたり揉まれたりする心地よい感触が更に私を落とそうとしてくる。
「…やすみ、──…─……」
額と首元を指でなぞられる。ほんのりとした熱にまともに思考することが出来ない私は水の上を漂う木の葉のよう。
「………へや…つれ……って………わ」
───途切れ途切れにしか聞こえず匂いもわからない中で、私の意識はぬるま湯のようなぬくもりの中でそっと沈んでいった。
≫50二次元好きの匿名さん22/04/22(金) 19:49:56
「ブルマなー、だいぶ初期…いや初期って言い方もアレだが着させられたな」
「だいぶ前だろ?あれから10倍以上に膨れ上がったが」
「そうそれ、だれが用意したか知らんが全員に支給されたときは目を疑ったわ」
「その割には割とノリノリだったよなブラトレ」
「まあそうでもない限りは着る機会すらない服だしなあれ。あとまあ、G2以下のレースだと普通にみんな着用してるから認識がだいぶすり減ってる気はする」
「それもそうか」
「ふっ、まだまだ甘いよ二人とも」
「ボノトレ……いやお前着てたっけ」
「……元男の俺らはともかく現男のお前が着て大丈夫だったんかあれ」
「それくらい超越しないで何がコスプレだよ」
「強い……」
「それは……そうなんだが……」
「むしろあれグラトレやルドトレのほうがやばくなかった?」
「あれはまー……そうだな、うん」
「生地の軋む音ってマジであるんだなって……」
(引っ張ってきたついでにSSっぽいものに仕立て上げる図)
≫59レス♡不要です22/04/22(金) 21:00:41
シアワセうさぎ リウトレ
あたしの小さい頃の記憶。数少ないお母さまが『いる』記憶。
「おかあさまー」
「まぁ、どうしたの?フェリ」
『フェリ』はあたしのミドルネームの一部だ。イタリア語でフェリーチタ、幸せを意味する言葉に通ずるそれをお母さまは愛称としてあたしをそう呼んでいた。やさしくて、いつもあたしを抱き締めて頭を撫でてくれた。あたしはお母さまにそうしてもらうのが大好きで、いつも甘えていた。
「ふふふ…甘えん坊さんね」
「えへへー」
「今日はフェリのお誕生日、みんなでお出かけの日でしょう」
「うん!」
あたしはお母さまが大好きだった。小さいながらも、あたしはお母さまとのことを忘れたことはない。あたしの誕生日に、レース場に連れていってもらったことがあった。レースの名前は東京優駿、日本ダービー。今思えば、運命的なものだったのかもしれない。当時のあたしは空気感や彼女たちのダービーにかける想いをピリピリとした痛みのようなもので感じていた。
「おかあさま」
「なぁに?」
「あたしもとれーなーになれる?」
「なれるわ。でも!お勉強をいっぱいしなくちゃいけないよ」
「うーん、おべんきょう…」
あたしの家はイタリア系の良家だった。祖母がイタリア人であたしはいわゆるクォーターだ。彫刻家のお父さまとウマ娘育成クラブに勤めていた経験のあるお母さま、それとあたしの3人家族だった。イタリアにいる期間もあったが、お母さまが身体を壊したあとは日本で過ごしていた。
「いい?フェリ」
「なにー?」
「ひとつひとつのレースがみんなとっても大事なの。みんな勝ちたい!って思って走っているのよ」
「うん、みんないっしょうけんめいですごい!」
「トレーナーになるってことはそれのお手伝いをするの。いっしょに頑張っていくのよ?」
「おてつだいしたい!」
あたしはウマ娘の近くで何かしたいと小さいながらも考えていた。お母さまのようになりたかったのかもしれない。
「もし、フェリがトレーナーになっていっしょに頑張りたいとウマ娘さんがあなたの手を取ってくれたら―――」
60レス♡不要です22/04/22(金) 21:00:53
誕生日を迎えた朝はいつもこの夢を見る。微睡みの中、閉じていた瞼を開けるとダービーを獲った担当ウマ娘があたしの左手に指を絡めていた。いつものように、朝起こしに来たのだろう。
「おは…ん、なに?」
彼女は何も言わずに、空いている手であたしの頬を指で拭う。眠りながら泣いていたようだ。
「寝ながら泣いていたのか?」
「……多分そうね」
そう言うと、彼女は小難しそうな顔をした。あたしが泣いていたのは悪夢を見たからでも、何か悩みがあって思い詰めていた訳でもない。
「そんな顔しないで、シリウス。お母さまとの、家族との夢を見ていただけだよ」
「…なら良い」
彼女はあたしを抱き起こすが、そのまま放してはくれない。身だしなみも整えていないと言うのに、あたしは彼女の胸の中にいる。オフの日だから何も問題はないが朝のことはさせて欲しい。そうは思うものの、あたしは特に抵抗もせずにいた。
「安心した。今日はアンタの誕生日だってのに、早々に悲しくて泣かれるなんてごめんだからな」
「…別に誕生日だろうと泣く時は泣くわよ」
「どうせ泣くなら私のために嬉し泣きしろ」
「意味わかんないわよ」
あたしの頭に彼女の顎が乗るが、あまり重くはない。耳に彼女の髪がかかり少しこそばゆくなり、肩が小さく震えた。
「トレーナー」
「なによ?」
「誕生日おめでとう」
「……ありがと」
彼女の腕が緩み、向かい合う。小恥ずかしくなり、目線を下げると額と額を重ねられる。彼女のルビーのようなあかい瞳があたしを捉える。まだこの距離には慣れない。あたしの気持ちを察してか、彼女はニッと口角を上げた。
「イイところに連れて行ってやるから早く支度しろ」
「っ…誰のせいで」
「なんだ?私に支度させたいのか?着替えから何まで全部」
構わないと言わんばかりの発言だ。あたしはニヤニヤしている彼女から離れ、寝室を出る。誕生日にどこかへ連れて行ってくれるようだ。身だしなみを整えていく。この身体にも随分慣れてきてしまった。良いことなのか、悪いことなのか。あたしは元の身体に戻れるのかさえ、わからないのだ。貴重品だけを入れた小さなバッグを手にいつものように彼女に横抱きにされる。
61レス♡不要です22/04/22(金) 21:01:05
―――もし、フェリがトレーナーになっていっしょに頑張りたいとウマ娘さんがあなたの手を取ってくれたら、そのウマ娘さんが笑顔で幸せでいられるようにそばにいてあげてね。
あたしはあの時のお母さまの言葉を守れているのだろうか。あたしを横抱きにしてどこかへ連れて行こうと歩く彼女の顔を見て思う。
「シリウス」
「どうした?」
「……あたしといて、その…しあわせ…?」
「アンタと居るのが嫌ならとっくのとうに契約切ってんだよ。当たり前のこと聞くんじゃねぇ」
自分の言葉に恥ずかしくなり、あたしは彼女の身体に顔を埋めた。お母さまの言葉が守れていることへの安堵とは別の感情にあたしは内心振り回されていると長い耳に彼女の唇が触れた。
「私を幸せにするのはアンタで、アンタを幸せにするのは私だけだろ」
「…っ……」
恥ずかしさのあまりに彼女の服をぎゅっと握ると、それに応えるようにあたしの肩を抱いていた彼女の手に力が入った。こんなあたしがいいと言ってくれる彼女に笑っていて欲しい。改めてそう思った。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part739【TSトレ】
≫31二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 21:03:34
ダベリーノ (ダストレ・ネイトレ)
[格付け再放送視聴中...]
「……格付けチェック見てていつも思うんだよなぁ。一本5000円のワインって十分高いし美味いよねって」
「分かります……しっかり庶民ですからねぇ、自分然りダストレさん然り」
「ネイトレさんはいけそうなのある?ワイン以外だと六重奏、三大珍味、アルゼンチンタンゴ、ゴスペル……あと肉」
「流石に最後の肉比較なら分かると思うんですが、私の場合最終チェック前に移す価値なしになりそうで……」
「分かる……あと、自分の選択に自信が持てなくて逆張りしちゃって自爆する」
「ああ……『自分はきっと外すだろうから本当はAだと思ってるけど、答えはBだ!』ってやったら本当にAが正解だったりとかですね。……テレビの前で何度突っ伏したことか」
「あまり続くと『俺、実は違いの分かるすごい奴か?』って思っていざ本心で選択すると間違える……」
「分かる……。あ、カエル選んでる」
「……でもあれですね。勝手なイメージですけどこういうの、オペトレさんは外さなそうです」
「……なんならゴスペル歌うのもタンゴ踊るのもヴァイオリン弾くのもいけるだろうなぁ」
「まさかの出題側」
「ま!うちらには縁がないタララバですけどね!」
「……鱈のレバーって美味しいんでしょうか……」
「もしかしてお腹空いてる?」
(終)
≫48二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 21:52:01
「どうしても画面越しだとわからんよなーああいうの、香りとかも確認したい」
「実際嗅いだり食べたりしたらわかるんですの?ブラトレって」
「うぅーん正直怪しいな。色々な肉を食べてきた経験はあるがさすがにカエル肉は食ったことない」
「いや多分食べた人のほうが少ないと思うぞあれは」
「カエル肉、まあ……鶏肉に近い味でしたわね」
「マジかよマクトレ食ったことあんの?」
「昔友人の伝手でおすそ分けされまして、その時に頂いたのですが……案外癖は少なかったですわね。唐揚げにして食べたというのもありますけれども」
「唐揚げかぁ、確かにうまそうだな。機会があれば作ってみるか」
「……なんか悪寒がした。明日フクが何か言いだしそうな気がする」
「その時は俺に言ってくれれば多少は調理できるようにしとくぞ」
「助かる……」
「そう言う割にはいつも付き合ってあげますわよねえ、フクトレ」
「……まぁ、大切な担当だからな」
「……もしかして惚気てる?」
「惚気ですわね」
「あーあー聞こえねえ」
≫55二次元好きの匿名さん22/04/23(土) 22:00:55
───ムントレの家、それは友人から、或いは何処からかの珍しい品物や貴重な楽器等が調度品として丁寧に置かれた家である。
そんな品のある家に、キタトレはムントレの誘いでお邪魔していた。部屋の奥で二人してソファに座りながら
「招いてくれてありがとうねムントレ。」
「礼はいらないさ。私から誘ったのだから。…それと、紅茶の味はお気に召してくれたかな」
「ええ、紅茶の本場英国のアールグレイは中々美味しいわ。…ところで、そちらの棚にある本は中世西欧の古文書かしら。」
「ああ、私の友人が持ってきたものでね。…気になるなら少し読んでみるかい?」
表紙と本の状態からある程度特定したキタトレは、ムントレからの提案に肯定の意を示し丁寧に本を受け取る。
ムントレも追加で持ってきた本を読み始め、ペラリという微かな音だけが広がる空間が暫く広がっていた。
〜〜⌚〜〜
カチャリとカップを置く音が響く。ムントレは読み終わった本を戻し、代わりに立てかけられたバイオリンを手に取る。
「キタトレ、この古いバイオリンの音色を聞いてみるかい?」
「そうね、またとない機会ではあるし聞いてみたいわ。…貴方の腕も楽しみだしね。」
世界で数百挺しかないというとある製作家のバイオリンを構えて奏で始めるムントレ。楽譜はなくとも覚えている。
響く音色に目を閉じて聞き入るキタトレ。二人だけの演奏会は、まるで浮世離れした異世界ですらあった。
(…そう、言葉を挟むのはあまりに不粋ね。)
…或いは、同じ人でありながらどこか人間離れした側面と理想を持つ二人だからこそ生まれる空間なのかもしれなかった。
綺麗な音色が途切れ、ムントレがバイオリンをおろしてウインクする。キタトレは拍手とともに賛辞を送った。
「…素晴らしかったわ」
「それほどでもないとも。…さて、夕食にしよう。鯛の干物と大根の煮付け、大根入り味噌汁に自家製沢庵があるんだ。」
「ふふっ…鯛の干物に煮付け、味噌汁と沢庵ね。そこまで大根尽くしなら大根下ろしもいるんじゃないかしら。」
「?…なるほど、確かに大根下ろしもいるね。」
笑みを浮かべて話すキタトレとムントレ。楽しげな二人はこの後仲良く大根尽くしの夕食を頂いたとか。
≫111二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 04:23:30
温泉療養するセイトレさんとグラトレ(独)
ザッ、ザッ、ザッ……、コッ、コッ、コッ……
二つの異なる足音が夜の帳に閉ざされた温泉街の軒先を静かに響く。
月も地平へと沈もうと傾く夜遅くに、黒鹿毛と白毛のウマ娘が二人静かにゆったりと歩いていた。
「ふふっ、月夜に桜というのも乙なものでしたね~」
「確かに綺麗でしたけど……わざわざ俺に付き合わなくても良かったんですよ?」
「あらあら、今夜もセイトレさんは起き続けるのでしょう? それならば相手が居た方が良いと思いませんか~」
「ですが、グラトレさんは徹夜なんてあまり慣れてないですよね?」
「……ええ、ええ、なので、しっかりお喋りをして眠らないようにしないといけませんね~」
今回温泉街へと来ている理由は、少々アレな生活習慣のトレーナー達を療養させるという目的の為。
現在私と供に深夜の温泉街を歩いているセイトレさんも、昼夜逆転と極少量の食事を普段から行っていることから療養対象として選ばれ温泉旅行へと連行されたのだ。
ちなみに私はセイトレさんが温泉地に来てまで仕事をし始めないかの監視役だ。
……とはいえ昼夜逆転や食事量が温泉地に来ただけで治る筈もなく、あくまで今回の目的は心身の療養。
その為にセイトレさんの昼夜逆転に付き合うのもやぶさかではない。
「おやおや、月も沈んだみたいですね〜」
「……もうすぐで夜明けですね」
「ふふっ、セイトレさん、せっかくですし朝風呂というのはどうでしょうか~」
「…………え? いや、別に要らないですよ?」
「少し汗も掻いていますし、行きましょうか~」
「俺に決定権が無い……」
二人でお喋りしながら散歩を続けるうちに、気付けば夜明けも近くなっていました。
そろそろ旅館へと戻る良い頃合いですね。
旅館へと戻ったら、せっかくこの時間に起きているのですから朝風呂として露天風呂に入るのも良いでしょう。
そしてせっかくの機会です、少々強引ではありますが普段はシャワーで済ませているというセイトレさんもお湯に浸かって貰う為に連れて行きましょう。
セイトレさんはよく転倒されますから、温泉でしっかり脚の療養をして貰いたいですしね。
112二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 04:23:51
「ああ……やはり良いお風呂ですね~」
「へぇ、露天風呂から桜が見えるんですね」
「ええ、ええ、実に雅なものですね~」
竹製の塀と山肌に囲まれて、塀から桜が覗く風流な露天風呂。
塀の外に生えている桜は夜明けの光にほんのりと照らされ淡く存在感を魅せてくれます。
「さてさて、早速入りたい所ではあるのですが~」
「汚れを落としてから入るのがマナーですね」
「ええ、そうですね〜」
では、礼儀として湯船に浸かる前に汚れを落とす為に身体を洗いましょう。
早く湯船に浸かりたいという欲求も有りますが、お風呂を使わせて貰う身としての礼儀は大事ですからね。
という事で身体を洗い始めたのですが、ちょっと気になる事が一つ。
「セイトレさん……少々髪が傷んでいませんか?」
「ん? そうですかね?」
普段の不健康な生活によるものか、セイトレさんの髪が少し傷んでいる気がします。
例え、少々の傷みとはいえ気になってしまったら仕方が無いもの……
グラスに教えて貰い身に付いた整髪技術をセイトレさんに振るまってみましょうか。
「ふむ、ではセイトレさんの髪……それと尻尾もですね、私が洗わせて貰いましょうか~」
「へ? いや、別に大丈夫ですよ?」
「今回の温泉は体調を整えるものですが〜、せっかくなので髪の方も整えましょうか~」
「やっぱり俺に決定権がないですね……?」
先程と同じように少々強引な形ではありますが、セイトレさんの髪と尻尾を洗わせて貰いましょう。
私が愛用している椿油も持って来ていますから、出来る限りサラサラにしてしまいます。
せっかくの綺麗な白毛なのに少しでも傷んでいるのは勿体ないですからね。
113二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 04:24:07
「ではでは〜、櫛を通しますね~」
「はーい……痛ッ」
「絡まっているのが解けるまでは少し痛いかもしれませんね~」
シャンプーで洗った後に、オイルを塗り、櫛を通す工程を幾度か繰り返してセイトレさんの髪をサラサラにしていきます。
他の元男性トレーナーさん達もですが、あまりしっかり手入れをする習慣が無かったからか少々髪の手入れが雑な方が見受けられます。
斯く言う私もグラスに指導されるまではそうだったのですが……
まあ、他の人の髪はいずれ手入れするとして、今はセイトレさんに専念しましょう。
「さてさて、後は耳と尻尾ですね~」
「いや、ちょっと耳とか尻尾は他の人に触られると変な感覚になるからさ……?」
「問答無用ですよ~」
「うわー!」
……耳や尻尾の付け根を洗われて悶えるセイトレさんは可愛かったですね。
カポーン
「酷い目に逢いました……」
「ふふっ、私は楽しかったですよ~」
気付けば夜明けは等に過ぎて空も青く染まり、夜明けの光に染まっていた桜も淡紅の色を魅せています。
そんな中、互いに身体も洗い終わり、態々離れる事も無いので肩を並べて湯船に浸かります。
「夜も完全に明けてしまいましたね」
「ですが、他のトレーナーさん達は朝風呂に来る気配が無さそうですね~」
他の不健康トレーナー達とその監視者さん達はまだ眠っているのかもしれませんね。
それに、この旅館はトレーナー達の療養の為に学園が貸し切っているので露天風呂にも他の客は居ません。
見知った相手と二人きりの露天風呂というのも気が楽で良いですね。
114二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 04:24:19
「……グラトレさんはどうしてここまで付き合ってくれたんですか?」
二人で肩を並べて湯舟へと浸かり少し経った頃、ポツリとセイトレさんが疑問を呈して来ました。
「別に態々一晩中一緒に居なくても良かったんですよ?」
……どうやら一晩とはいえ夜明けまで一緒に起きていたのが気になるようですね。
「何てことはありませんよ~、私はセイトレさんの面倒を頼まれたましたからね~」
「頼まれたからって一晩起き続けるなんてグラトレさんは真面目ですねー」
「ええ、ええ、信頼されて頼み事を受けたのですから全うせねば不義理というものですよ~……それに~」
「それに?」
「大事な同期の……それも担当ウマ娘も同期となるトレーナーですからね~」
「……それもそうですね、同じ歳で、同じ黄金世代なんて呼ばれるウマ娘のトレーナーで……一緒に居た記憶は無いですけど」
「ふふっ、気にせずとも良いのですよ~、それならもう一度作るだけのお話ですからね~」
記憶が無いと言うのなら、また作り直すだけの話です。
1が0になっただけで再び1に出来ない訳じゃないのですから。
「それに、私は今もセイトレさんがスカイさんのトレーナーをされている事だけでも満足していますからね~」
「……そうなんですか?」
「ええ、ええ、大事なグラスのライバルがトレーナーを失う形で弱るのは面白くないですからね~」
「ええっ……そんな理由……?」
「あら、案外大事な事ですよ~」
もし記憶を失ったセイトレさんがスカイさんのトレーナーを辞めてしまったら……
スカイさんは悲しんで練習どころじゃなかったかもしれませんし、逆にやけになって身体を壊す程練習に打ち込んだかもしれません。
そうなればスカイさんの周りの人も変調したでしょう……当然グラスも……
「記憶を失ってもセイトレさんがトレーナーを続けてくださったおかげで、スカイさんの周りの人達が大きく変わる事無く今まで通りに過ごせているのです」
「……俺はそんな大層な理由では無く、俺は記憶を失う前のメモを見て自分を定義しただけですよ?」
「理由がどうであれ、私は救われたと思っているので救われた……それだけですよ~」
……だから
「俺は感謝していますよ?」
記憶を失おうともこの道を歩んでくれた者に感謝を告げましょう。
115二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 04:24:37
「ふっ……ふふふっ、グラトレさんの"俺"なんて珍しい物を聴けましたね」
「あー、そうですね……まあ、帰っても周りに言わないでくださいね?」
「言わないですよ、俺も命は惜しいですからね」
「……どんな風に思われているのでしょう、私の担当は……」
「スカイもグラスちゃんを怒らせてはダメって言ってますよ?」
「それは間違いないですね~」
「ははっ、そこは否定してくださいよ」
「ふふっ」
それから少しの間セイトレさんと二人で笑い合って、それからまた静かに温泉を堪能します。
とはいえ流石に眠くなってきましたね……
普段朝まで起きてる事などあまり無いですから、いよいよ眠気に限界が来てしまいました。
コテン とセイトレさんの肩に頭を預けてしまいます。
「グラトレさん?」
「……も、申し訳……ありません…………」
「ああ、流石に眠気が来たんですね」
「…………です……ね」
「ありがとうございます付き合ってくれて…………おやすみなさい」
その言葉を最後に私は眠りへと落ちるのでした……
「いや、温泉で本気で寝ないでください」
私を起こす為にセイトレさんが私の顏にお湯をかけるのは10秒後の事でした。
うまぴょいうまぴょい
≫144二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 10:42:48
七、北十字とマルチバース海岸
「お婆様は、ぼくをゆるして下さるでしょうか。」
いきなり、マクトレが、思い切ったというように、少しどもりながら、急きこんで云いました。
テイトレは、
(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのように見える橙いろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考えているんだった。)と思いながら、ぼんやりしてだまっていました。
「わたくしはお婆様が、ほんとうに幸になるなら、どんなことでもいたしますわ。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんでしょう。」マクトレは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
「きみのお婆様は、なんにもひどいことないじゃないの。」テイトレはびっくりして叫びました。
「わたくしわかりませんわ。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんでしょう。だから、お婆様は、わたくしをゆるして下さると思いますわ。」マクトレは、なにかほんとうに決心しているように見えました。
俄かに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石や草の露やあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床の上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射した一つの島が見えるのでした。その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い元凶の十字架がたって、それはもう凍った北極の雲で鋳たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。
「90-55-80。90-55-80。」前からもうしろからも声が起りました。ふりかえって見ると、車室の中のスレ民たちは、みなまっすぐにきもののひだを垂れ、黒いバイブルを胸にあてたり、水晶の珠数をかけたり、どの人もつつましく指を組み合せて、そっちに祈っているのでした。思わず二人もまっすぐに立ちあがりました。マクトレの頬は、まるで熟した苹果のあかしのようにうつくしくかがやいて見えました。
そして島と元凶の十字架とは、だんだんうしろの方へうつって行きました。
145二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 10:43:56
そして島と元凶の十字架とは、だんだんうしろの方へうつって行きました。
向う岸も、青じろくぽうっと光ってけむり、時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、さっとその銀いろがけむって、息でもかけたように見え、また、たくさんのりんどうの花が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火のように思われました。
それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、元凶の島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。テイトレのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒いかつぎをしたカトリック風の202さんが、まん円な緑と赤の瞳を、じっとまっすぐに落して、まだ何かことばか声かが、そっちから伝わって来るのを、謹しんで聞いているというように見えました。旅人たちはしずかに席に戻り、二人も胸いっぱいのかなしみに似た新らしい気持ちを、何気なくちがった語で、そっと談し合ったのです。
「もうじき元凶の停車場ですわね。」
「ああ、十一時かっきりには着くんだよ。」
早くも、シグナルの緑の燈と、ぼんやり白い柱とが、ちらっと窓のそとを過ぎ、それから硫黄のほのおのようなくらいぼんやりした転てつ機の前のあかりが窓の下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって、間もなくプラットホームの一列の電燈が、うつくしく規則正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人は丁度白鳥停車場の、大きな時計の前に来てとまりました。
さわやかな秋の時計の盤面には、青く灼かれたはがねの二本の針が、くっきり十一時を指しました。みんなは、一ぺんに下りて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分停車〕と時計の下に書いてありました。
「ぼくたちも降りて見ようか。」テイトレが云いました。
「降りましょう。」
146二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 10:45:00
二人は一度にはねあがってドアを飛び出して改札口へかけて行きました。ところが改札口には、明るい紫がかった電燈が、一つ点いているばかり、誰も居ませんでした。そこら中を見ても、駅長や赤帽らしい人の、影もなかったのです。
二人は、停車場の前の、水晶細工のように見える銀杏の木に囲まれた、小さな広場に出ました。そこから幅の広いみちが、まっすぐに銀河の青光の中へ通っていました。
さきに降りた人たちは、もうどこへ行ったか一人も見えませんでした。二人がその白い道を、肩をならべて行きますと、二人の影は、ちょうど四方に窓のある室の中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪の輻のように幾本も幾本も四方へ出るのでした。そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に来ました。
マクトレは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢のように云っているのでした。
「この砂はみんな概念ですわ。中で小さな性癖が燃えていますわ。」
「そうだ。」どこでぼくは、そんなこと習ったろうと思いながら、テイトレもぼんやり答えていました。
河原の概念は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲をあらわしたのや、また稜から霧のような青白い光を出す鋼玉やらでした。テイトレは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖の下に、白い岩が、まるで運動場のように平らに川に沿って出ているのでした。そこに小さな五六人の人かげが、何か掘り出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈んだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。
「行ってみよう。」二人は、まるで一度に叫んで、そっちの方へ走りました。その白い岩になった処の入口に、
〔邪神酒乱海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立って、向うの渚には、ところどころ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。
147二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 10:46:22
「おや、変なものがありますわ。」マクトレが、不思議そうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきの尖ったくるみの実のようなものをひろいました。
「バースの実だね。そら、沢山ある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
「大きいですわね、このバース、倍ありますわ。こいつはすこしもいませんわ。」
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。左手の渚には、波がやさしい稲妻のように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻でこさえたようなSSがゆれたのです。
だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴をふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていました。
「そこのその突起を壊さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」
見ると、その白い柔らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣の骨が、横に倒れて潰れたという風になって、半分以上掘り出されていました。そして気をつけて見ると、そこらには、蹄の二つある足跡のついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
「君たちは参観かね。」その大学士らしいシャカトレが、眼鏡をきらっとさせて、こっちを見て話しかけました。
「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新らしい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこつるはしはよしたまえ。ていねいに鑿でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔はたくさん居たさ。」
148二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 10:46:47
「標本にするんですか。」
「いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。けれども、おいおい。そこもスコープではいけない。そのすぐ下に肋骨が埋もれてるはずじゃないか。」大学士はあわてて走って行きました。
「もう時間ですわ。行きましょう。」マクトレがスレとレスの数とをくらべながら云いました。
「ああ、ではわたくしどもは失礼いたします。」ジテイトレは、ていねいにシャカトレにおじぎしました。
「そうですか。いや、さよなら。」シャカトレは、また忙がしそうに、あちこち歩きまわって監督をはじめました。二人は、その白い岩の上を、一生けん命汽車におくれないように走りました。そしてほんとうに、風のように走れたのです。息も切れず膝もあつくなりませんでした。
こんなにしてかけるなら、もう世界中だってかけれると、テイトレは思いました。
そして二人は、前のあの河原を通り、改札口の電燈がだんだん大きくなって、間もなく二人は、もとの車室の席に座って、いま行って来た方を、窓から見ていました。
≫154二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 12:02:13
「おぎゃー!!ばぶぅー!!」
「コイツ頭が終わっておる!治れ!治れ!」
グレーの長い髪を揺らしながら一人のウマ娘がキチゲを発散していた私の頭をポコポコと優しく叩いていた。
彼女、いや彼はテイトレ。数奇な運命を辿り人の身からウマ娘へと変わった友人である。
殴ると言うよりも軽いその衝撃は凝り固まった重い頭を柔らかくしているようで。すごく気持ちがいい。これがフクトレ辺りなら愛のアイアンクローが頭蓋骨を軋ませていただろうしウラトレさんやヘリオス先生なら容赦のない言葉が飛んできていただろう。想像するだけで泣きそうになる。
「治った?」
「うごごご…ノルマ…A帯…通常軸…2ポチ一召喚…牡羊座のムウ…Bグループ…」
「だめかぁ…うーん…しょうがねぇなぁ」
背伸びをしながら頭を叩いていたのをやめたかと思えば私を椅子に座らせ背後に回った。
次は何が来るかと身構え固くなった肩を小さな手のひらが包んだ。
「軽くマッサージしてやるからさ、早く正常に戻ってくれ…生徒の目に入る前に」
疲労した肩に熱を通すように柔らかく包んでいたかと思えば首から肩、肩から肩先へと筋繊維に沿って血流を促すように撫で摩る。
「俺あんまりさ、あったかくもないし大きくもないから…くすぐったかったらごめんなー」
確かに彼の言う通りその手のひらは私のそれよりも小さく指は白魚のように白く細い。しかし動きが小さい分その丁寧で細かな動きがひどく心地よかった。
少しの間続けた後揉んでいく旨を伝えられて瞳を伏せる。
くにくに、くるくると。指先ではなく手首を中心として手のひら全体を使い揺らすような感覚が私を癒した。
「ガチガチだったから押すよりほぐしていくからな…しっかりしたのは店行くかチヨトレに頼んでくれ」
いたずらが成功した幼子のように楽しげなテイトレの甘い声が溶けるように脳に響き瞼がどんどんと重くなっていく。このままだとより好きに、違う眠ってしまいそうだ。
「肩甲骨もぐにぐにーっと…別に寝ちゃってもいいぞー?ちゃんと最後までやるし…担当達が来るまでに起こしてやるから」
首を掴んだかと思えば器用に指先を動かして頸椎を波打つように揉む。加減を見誤れば強い痛みは免れないと言うのに心地よさしか感じないのはやはり、彼が優秀なトレーナーだからだろうか。
156二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 12:02:53
ぐいーっ、くにくにーっと揉まれるたびに身体がぽかぽかと温まり比例して意識が遠のいていく。
「前から失礼…この辺も結構疲れるからやっとかないとなぁ」
胸骨の付け根から鎖骨に沿って温めるように、悪いものを流すようにさすり二の腕を掴まれたところで限界だった。
寝るな、お礼の言葉を。そう思った私の頭を手櫛を通すように優しい感触が撫ぜる。
「…いつもよく頑張ってるもんな…おやすみ」
微睡みの闇に堕ちる間際、そんな声が聞こえた気がした。
──目が覚めたら、結婚しよ。
「ぐうゔうゔぅぅ…あいつ…なんていい思いを…!」
「モブトレA…嫉妬は醜いわ…」
「だって!だっでぇ!!あんな近くでASMRしてもらって!褒めながら頭撫でられて!!」
「正直クッッッソ羨ましいし妬み呪いたい気分だけど…まさかテイトレにあんなお姉ちゃん力…いや包容力があるだなんて…これは次の新刊は全肯定してくれる甘々テイトレママ本ね…」
「ゔう…優しい陽だまりの中縁側で膝枕をしながら耳かきをする描写も入れて…出来ればトレトレで…いや待て…もしかして俺も頼めばマッサージしてもらえ」
「バ鹿っ!やめなさい罠よ!あれは裏とかなく善意100%!だからこそガチ恋勢になる恐れがあるッ!あまりにも危険ッッ!!」
「罠でもいい!罠でもいいんだッ!!」
「キタトレにバブみを感じて甘えたりマベトレにわからせ失敗するのとは訳が違うのよッ!DK4の中でもテイトレは別格ッ!ガチになってもマクトレはなんだかんだで上手く捌けそうだしフクトレはあの包容力と気量で最悪の状況にはならない!だけどテイトレは割とガチな雰囲気になっちゃったら物凄く気まずくなる!ブラトレ?顔真っ赤にしてギャグになる可能性の方が高いわ」
「…そっそうか…テイトレ抱え込むタイプだしなんだかんだで常識組だし…」
「…リスクは理解出来たようね」
「ということは告白を聞いて申し訳無さや関係が壊れる不安から涙をこぼしながら断り、謝るテイトレが見れる…ってコト!?」
「コイツ頭が…!」
「『ごめ…ごめんなさ…っおれ、自分のことなのに分かんなくて…だってでも、わた、しぃ…』ぐちゃぐちゃになった感情や考えを上手くまとめられなくて壊れて心に傷を負うテイトレはかわいいですね」
「もしもし警備員さん?」
≫190二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 17:16:42
「せっかくの紫陽花の見頃だと言うのに雨ですね~」
「そうだな」
「ですが〜、あじさいさんが居られると部屋の中でも紫陽花が見れて良いですね~」
「我の紫陽花は常日頃から咲いておるぞ?」
「いえいえ、この季節は増量されて見応えが有りますよ~」
「それなら良いが……ついでに聞くが、我は寝そべっているたけでも良いのか?」
「ええ、ええ、今はお茶を飲みながら紫陽花を愛でる時ですので〜……かりん糖は如何ですか~」
「頂く」
「では、口を開けてくださいな~……はい、あ~ん」
「あ~ん……旨い」
「ふふっ、それは良かったですよ~」
「さて、茶会が終わるまで我は寝そべれば良いのは分かったが、その後はどうしたら良いのだ?」
「その後はあじさいさんのうどんを食べたいですね~」
「ふむ、それなら腕によりをかけてうどんを作ろう」
「楽しみにしてますね~、……もう一本かりん糖を食べますか〜?」
「頂く」
それからのんびりとあじさいにかりん糖を与えつつ室内での紫陽花鑑賞を続けた
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part740【TSトレ】
≫83二次元好きの匿名さん22/04/24(日) 20:14:55
「…ここまで来れば外してもいいよね」
…変装用の道具を外しながら、ファイトレ(男)は息を吐きつつ椅子に座り込んだ。勿論その姿勢は崩していない。
この姿で出歩こうものならどんな面倒な事になるのか分かったものではない。実際、何度かそうなって苦労したのだ。
「でも、俺にも護衛がいるって考えると凄いよな。ターゲットにされる側って考えると大変…」
時折SP達が様子を伺いに来るのはそういうこと、なんだろう。気分はもはや影武者かなんかである。
「何なら入れ替わっても気づかれないし…」
…実は、ファインとファイトレ(男)で一度入れ替わりを試してみたことがある。ファインがやってみたいと言い出したものだ。
そして結果は、トレーナーも生徒も気づかない人が多くて余りの気づかれなさに少し泣きたくなった程であった。
「すまない…貴様の演技が迫真に近いものだったからな…」
「凄いそっくりだよファイトレ(男)…」
…よく話すエアグルーヴやタキトレ(養)らにすら最初は間違えられた時点でファイ男からすれば笑うしかなかった。
(ファインにこのことを言ったら笑ってたからな…昨日からアイルランドに帰ってたはずだけど、元気にしてるだろうか)
「…うん、やっぱりとても寂しい。」
いつものように振り回してくるかの殿下のいない日々は、やはり一抹の寂しさを覚えてしまう。
そのままこてりと横になると、急激に眠気が襲ってくる。何とか逆らおうとしても逆らえず意識は落ちていく。
「…あ……」
「────か──おつ───」
「──しい───た──う」
ふと近くに誰かが来たような、それとも勘違いだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら沈んだファイトレ(男)。
───起きた時にいつの間にか羽田空港行きの車に乗せられ、アイルランドへと行く羽目になるとは思いもよらなかった彼であった。
短文失礼しました
ファイトレ(男)の独白、多分一番ウマ娘化の影響が世間体に大きそうな彼はVIPや報道相手には変装や男装やらしてるかも。
多分入れ替わりはそっくりさんなトレーナー達なら一度は試しているかもしれない。尚気づかれないファイ男の悲しみ。
そして安定にアイルランドへ連れて行かれます。殿下と姉上の二人に付き合ってたら休めなさそうだね…