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このページは「おれバカだから言うっちまうけどよぉ…」スレに投稿されたSSをまとめるページ(スレpart446~450)です。
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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part446【TSトレ】
≫34二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 18:47:28
夜、何処かの居酒屋にて
「お酒飲めないのがつらい」
「ははっ、貴方ならそう言うよね…」
「どうして僕は巻き込まれてるんですか…」
そう口々に言い合ってるのはタイキトレ、ファイトレ、ゴルシサブトレの三人。
タイキトレは焼き鳥串を食べながら、ファイトレはビールをあおりながら、ゴルシサブトレは隅で枝豆を剥きながら話していたのだった。
「あのさ…飲めない私に当てつけ?」
「そんな訳ないよ。第一、このビールをいつものノリで頼んだのは貴方でしょうに。」
「だって私の居酒屋でのルーティンなのよ、そんなすぐに変えられる訳ないじゃん。」
「いや知らないわよそんなの…。所でゴルサブトレは飲まなくていいの?」
ファイトレとタイキトレの二人はゴルサブトレの方に視線を向ける。彼女は少し縮こまると
「僕は結構です…」
「え、そっちも飲んだらいいのに。折角の宴会だし。」
勢いに押されたゴルサブトレは思わず言ってしまう。
「…そうですね、なら一杯…」
「店主さーん!ビール二杯頂戴!」
タイキトレは席から身を乗り出すといい声で2倍注文した。それに慌てるゴルサブトレ。その姿をみたタイキトレは
「あはは、流石に二杯飲んでって訳じゃないよ。一杯は隣でビールを水のように涼しく飲んでるそちらの人の分だよ。」
親指をぐっと立てながらいい笑顔で返すタイキトレ。その姿にファイトレは微妙そうな目を向ける。
35二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 18:47:40
「なら最初から言ってあげなさい。彼女も困惑してるでしょ。…店主さん、追加でビール一杯ください。…今日はタイキトレの奢りでいいかい?もっと飲んであげるよ?」
その言葉を聞いたタイキトレは慌ててめんごとばかりに手刀とともに頭を上下させる。ふぅっと息を吐いたファイトレは
「…冗談だよタイキトレ。私が今日は奢るから」
「やっぱそっちは太っ腹だねぇ!なら遠慮なく食べてやるわ。ほら、そちらも食べとけ食べとけ。」
ついていくのに必死なゴルサブトレは頷いた。
「う〜ん、今度タイキとお揃いの勝負服着るんだけど、そっちはどう思う?」
「ファインと同じ勝負服ね…良いと思う。」
「僕はサブだしいいや…」
ーーー三人の宴会はまだまだ終わらなかった。
短文失礼しました。
ノリのいいタイキトレとツッコミに回るファイトレ、巻き込まれ枠でゴルサブトレを書かせてもらいました。
ヨシ!後はタボトレとシントレとパルトレ書いたら良いな!早速…。…どうしてこんな時に限ってテストがあるんですか?チクショーメ!
≫45二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 18:56:42
義カフェトレ「今日は〜お蕎麦にしようかと思ったけどやっぱりうどん〜。ルドトレさんに打ってもらったうどん〜……みんな汁は昆布ベースと鰹節ベースどっちがいいんだろ両方作ろうか」
〜しばらくして〜
義「うどん冷やしてと……えーとわさびわさび」
(冷蔵庫ガチャ)
義「買っといたワサビが」
デスワァーアンマリデスワー
義「ふふ、なんか顔みたい手加減して摺らないとね」ジョリジョリデスワー
タバコ「戻ったよ」黒「ただいま」カフェ「うどん……ですか?」
義「ルドトレさんからお裾分けもらったからね。お汁も昆布と鰹節のを用意したから好きなので食べて! はいワサビとネギも置いておくよ」スリオロシデスワー
黒「うどんコシがあって美味しですね」
タバコ「ああ、食べやすい」
「「「「……………」」」」(黙々とうどんを食べている)
カフェ「昆布出汁で食べたことは……なかったのですが……これも美味しいですわ」
義「そうですわね。二種類作った甲斐がありましてよ」
黒「午後のトレーニングもこれで頑張れましてよ」
タバコ「練習メニューもしっかり準備しておきましたわ」
義「また徹夜したりしてませんわよね?」
タバコ「……そんなことありませんでしてよ?」
黒「義にバレてますわよ。そんなに分厚いのを一夕一朝で作ったらいくら義相手でも徹夜はバレますわよ」
カフェ「皆さん食後のコーヒーはいかがでして?」
トレ達「飲みますわよ。ありがとうございますわ」
────この場に巨乳がいなかったことは幸いであった。完
≫60ニシン.121/11/14(日) 19:08:04
トレセン学園にある外のベンチでシントレが本を読んでいると
「やあシントレ君」
「…あ、どうも…ニシトレさん。」
シントレにニシトレが話しかけてきた。
「…どうかしましたか?」
「いやあ、ここで座ってるシントレ君を見かけてね。せっかくだし相談事でもないか聞きにきたのさ。」
「…お気遣いありがとうございます。…でも特に心配事はないです。」
「そっか。それなら良かった。もし今後相談事ができたら気軽に言ってね。」
ニシトレはシントレに笑いかけた。
「ところでずっと本を読んでるみたいだけど、何を読んでるんだい?」
「…小説です。」
「小説かぁ。普段からよく読むのかい?」
「…はい。色々な知識を得たり様々な世界観に没頭するのが好きなんです。」
「そうなんだね。」
この後、ニシトレとシントレは二人でしばらく雑談をした後に
「ありがとうね。俺の話に付き合ってくれて。」
「…はい…こちらも色々話せてよかったです。」
「じゃあそろそろ花の水やりに行こうかな。それじゃあまたね。」
「はい。それでは。」
ニシトレは花壇のある場所に向かって歩き出したが
「…あ、ニシトレさん危な…」
ゴッ!
「あっ…」
ニシトレは建物の角に体をぶつけてしまった。
「───ッッッ!」
「あの…大丈夫ですか…?」
「自分の体格把握してなかった…」
涙目で語るニシトレ
「とりあえず保健室に行きますか…?」
「行く…」
≫69チケトレの人21/11/14(日) 19:21:06
ほいじゃあげます
【交わる紫煙】
がらららっ
喫煙所のドアを開け、チケトレが中へと入る。いつ見ても手入れが行き届いたいい喫煙所だなぁ
流石トレセンだと思いつつ、ポケットから赤ラークを取り出して煙草に火をつける。
「ふぅー」
口の中で紫煙を燻らせ煙を吐き出した。ビターチョコのような後味を仄かに感じながらもう一度口をつける。
がららっ
暫く吸っていると、喫煙所のドアが開き一人のウマ娘が入ってきた。少し力をいれたら折れてしまいそうな儚さを感じさせ、闇を閉じ込めたかのような黒い瞳をもち目元に隈を蓄えたショートヘアーのウマ娘─カフェトレがチケトレの近くに歩みを進める
「となり、いいかな…?」
「どうもカフェトレさん、大丈夫ですよ…」
軽く会釈すると、カフェトレがコートからJPSを取り出し火をつけようとコートのポケットをまさぐった
カフェトレさんがライターを取り出すよりも早く、自分のライターを取り出しすかさずカフェトレさんの煙草に火をつける。昔やらされてたことが役に立つとはおもわなんだ。
「ああ、ごめん。ありがと…」
「いえいえ大丈夫です…」
暫くの間、換気扇が回る音だけが喫煙所に響いていた
70チケトレの人21/11/14(日) 19:21:53
【交わる紫煙2】
「そういえば、キミもウマ娘になってたんだね…」
「はい、朝になって気づいたらこうなってました…」
「ふふっ私と同じだね」
耳をピョコピョコと動かしながらカフェトレは口角を上げて微笑んだ。息づかいが、掠れた声がどこか心地よく耳に入ってくる。
他愛もない雑談を交わし互いの紫煙も交わっていく時に、チケトレが意を決した表情でカフェトレに話を振った
「タバコさんは…ウマ娘になって怖いって思ったことはありますか?」
ウマ娘化の先輩、人生の先輩であるカフェトレに聞いておきたい─そう思って尋ねると、カフェトレは少し考えたあとでゆっくりと口を開く
「…不安は確かにあったさ。でもね」
「その程度のことで止まれるかって気持ちが大きかったんだ」
「カフェと走り続ける覚悟をしたから」
「そのためならこの身体も利用してやる─ってね」
「カフェの役に立てるならば」
「私は文字通りなんだってするさ」
優しい口調からは想像もつかない覚悟がチケトレの心へと突き刺さる。この人は強靭(つよ)い人なんだなとチケトレはその言葉を噛み締める
「有り難うございます。心構え、覚悟をお聞きでき勉強になりました」
「役に立てたなら私も嬉しいよ」
そういって、カフェトレはにこりと微笑むと、チケトレがタバコに口をつけたのを見計らうようにカフェトレがすかさずチケトレのタバコの火に自分のタバコをくっつける。
不意打ちのシガーキスに思わず煙を吐き出した思いっきりむせる
「いっ、いきなりなにしてるんですか…
」
「さっきのお礼だよ」
そう答えるとカフェトレはチケトレをからかうように悪戯っぽくクスクスと笑った
≫94フェストレさんウマ娘化1/821/11/14(日) 19:46:34
(ここは……?)
牧場だろうか。辺り一帯を木の柵が囲んでおり、自分はその上に座っている。
強い風が芝生を薙ぎ、木の葉を空に舞わせるが自分は何も感じない。3Dの映像でも見るかの様だ。
「おーい、こんなところにいたのか」
誰かが、後ろの方から『私』を呼んだ。
振り向くと見知らぬ男性が立っていた。『私』のトレーナーだ。
でも顔はぼやけてよく見る事が出来ない。
「本当にお前はじゃじゃウマ娘だな。俺の帽子をどこに隠したんだ?」
やんちゃ盛りの娘を見るかの様な表情で頭を撫でられる。
少し力が強くて目が回るけど、どこか気持ちよくて思わず笑みを浮かべてしまう。
「●●●●、今日のメニューも厳しく行くからな。お前が将来、立派なウマ娘になれるために」
名前を呼ばれたようだ。けれどノイズがかかって上手く聞き取れない。
それどころか、音だけだったノイズが見える様になり、辺りの景色やトレーナーにも表れる。
ついには自分の身体も包み込んで、最後は電源を落としたテレビのかのように夢の中の映像は途切れた。
寝起き特有の倦怠感を感じながら薄暗い部屋で目を覚ます。
ぼやけていた感覚が少しずつ鮮明になり、頭の上と腰の辺りに出来た覚えのない感覚に気付く。手を目の前にかざすと細くなめらかに変わったものが見えた。
トレセン学園所属のトレーナーに起きている、ウマ娘化と言う謎現象。それがついに自分の所にも来てしまった。
さて、どうするか。とりあえずフェスタに連絡して何か着れる物を持って来てもらおうか。
このままでは外出も出来ないからな。
95フェストレさんウマ娘化2/821/11/14(日) 19:47:18
「今までは蚊帳のだったが、実際に目の当たりにするとなかなか愉快もんだな」
「まあこんなの笑うしかないよね」
フェスタが持って来てくれた学生用ジャージに着替えた後、リビングに移動して一緒に朝食を食べていた。
フェスタは自分の服を持ってきてもよかったと言っていたが、元異性かつ担当ウマ娘の服をいきなり着るのは抵抗があったのでお断りさせて貰った。
「気になるのはあの夢なんだよな。恐らく因子の記憶だと思うが」
俺はフェスタに今朝の夢の内容を離した。
自分が知らない場所でトレーナーと思われる人物と共にいた事。ウマ娘としての名前があった事。そしてそれらを正確に認識する事が出来ないと言う事を。
「だが、一番の問題はそれじゃない。肉体に関しては慣れさえすればどうとでもなるからな」
そう言うと、隣に座っていたソファーから立ち上がって俺の目の前に移動する。
「アンタの心はアンタのままか?まさか私のトレーナーが容易く乗っ取られる様なやわな精神をしてるなんて言わねえよな?」
挑発をする様に俺を見下ろすフェスタ。しかしその目には確かな信頼の感情が見て取れた。
「今のところは俺のままだよ。今後どうなるかは不明瞭だがな」
ウマ娘化によって精神に影響を及ぼし、別人の様になるトレーナーは多い。
見た目通りの女性らしい振る舞いになるトレーナーを見掛けるが、中にはウマ娘の人格とトレーナーの人格を同居させているベガトレや、ウマ娘の人格を受け入れて元の人格と混じりあったデジトレ等様々な選択をする者がいる。
勿論、男としての人格を保つ為に抵抗をしているトレーナーも多い。
自分の感覚だと、どうやら俺の中の因子はかなり自意識が強いらしい。気を抜けば、すぐに肉体の主導権を奪われるだろう。
96フェストレさんウマ娘化3/821/11/14(日) 19:49:10
「不安か?トレーナー。自分が消えるかもしれない感覚は」
「とてもな。だがそれ以上に……楽しいんだ」
俺はいつも限界に触れる戦いをしているフェスタを見ている事しか出来なかった。どれだけ彼女をサポートしても、挑むのは当事者である本人だけだ。
だからこそ、俺もまた求めていたのだろう。己を顧みないギリギリの勝負を。
そしてついに、ウマ娘化による人格の消滅の危機と言う人生最大の試練の試練が訪れた。
これを僥倖と呼ばずになんと言う。
「その様子だと、私の心配は杞憂だったようだな。むしろ勝負師としての血が滾ってるみたいだな」
「自分が自分でなくなって行くスリル。こんな快感、フツーに生きてたら絶対に味わえないよ」
「ハハハハハッ!!自分が消えるかもしれない感覚を楽しむとは、とんでもない狂人だな。流石は私のトレーナーだ」
腹を抱えて笑うフェスタ。それを見て自分も自然と笑みを浮かべる。
不安がないとは言わない。だが、もし俺が負けて今のこの意識が消されたとしてもそれで構わない。勝負の世界に後戻りと言う選択肢は無いのだから。
その時ふと、夢の中で聞き取れなかった筈の言葉が頭に浮かんだ。名前ではない。だが、『私』を表す言葉であるのは確かだ。
(なあ、聞こえているかイル・ピッコロとやら。遠慮はいらないからいつでも出て来い。そして楽しもう、この肉体をめぐる真剣勝負を)
97フェストレさんウマ娘化4/821/11/14(日) 19:49:52
ここはウマ娘の中の因子が住む世界。
夢で見せたのと同じ、私が幼い頃暮らしていた牧場だ。
日本のトレセン学園が面白い事になっていると聞き、観光ついでに子孫の様子を見に来たはいいが、まさか私と適合する身体の持ち主の中に入りウマ娘化させてしまうとは。
今の変化した肉体は私の生前の姿だ。
しかし元の人格を追いやってまで生き返る気は無い。しかし彼が気を抜けば直ぐにこの身体の主導権は私に移ってしまうだろう。
なので、幼少期の夢を見せたり内部から存在を主張して私を意識させる様に仕向けた。
危機感を募らせる事で、彼が自分を認識出来る様にした……のだが。
(まさか宣戦布告されるなんて)
どうやら私はとんだ変わり者の中に入ってしまった様だ。
これは気苦労が絶えなさそうだと、冷や汗が流れる様な感覚を覚えた。
退屈せずに済みそうなのは幸いだが。
≫126二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:02:07
翌週、遂に戦いの火蓋が切って落とされるとなったところ。
「うーん……なかなか、うまくいかないもんだねえ」
「一ヶ月でどうにかなるなら、わたくし達は御役御免ですわよ」
「そりゃそうだ。けどドベトレ君の吠え方聞き慣れちゃったし……」
「新たな併走相手が必要ですわね……」
毎日のようにマクトレや他の人達と打ち合わせをしながらランチを取ることに慣れてきたが、成長しているのはトレーナーとしての手腕であり、走行に必要な脚力ではなかった。
そろそろぼんやりと焦りが浮かんできたところで、グラウンドに向かうと……ブラトレと、見慣れないウマ娘のペアがトレーニングをしていた。
「おーい、ブラトレーっ」
「お? おー! ダストレ、マクトレ、こっちこっち」
ブラトレに手招きされて近づくと、ウマ娘のペアもトレーニングを中断しこちらに注目する。
ブラトレの紹介を受けて、俺もマクトレも簡単な自己紹介をする。
フジサマーチちゃんと、そのトレーナーのマーチトレさん。
俺の耳にも活躍が入ってこない辺り、成績こそ芳しくないようだが、ふたりはしっかりした信頼の下でトレーニングができているようだ。マーチちゃんの顔にはトレーニングの疲れがあるが、その瞳に俺達への関心が失われていないことからそれが察せられる。
(上手くいっていないウマ娘は過度にひとつのことを思い悩んだり、注意力が散漫になる傾向があるのだ)
「オグトレさん経由で知り合ってさ。ちょっと走り見てるんだよ」
「へぇ……あ、そうだ」
丁度いいと思い、俺は運動シューズに履き替える。
「併走、お願いできないかな」
マーチトレさん達は、困惑したように顔を見合わせた。
127二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:02:48
5走5敗。
わかりきっていたことだが、俺の身体能力はマーチちゃんにさえ遠く及ばなかった。
勝ちに慣れていないのか、マーチちゃんはちょっと困った顔で完全に息の上がった俺を見つめている。
けれど反対に、俺は気付けることがたくさんあった。
「やー……一緒に走ってみると、わかること多いですね」
「ダストレさん、何に気付いたんだ?」
マーチトレさんが興味深そうに俺へタオルを渡す。ありがたくお借りして、俺は俺なりに気付いたことを話した。
「諦めるポイントです」
「……諦める?」
「そう。走る時に、どこを失敗していいか」
ノーミスクリアは見ている分には簡単に見える。
けれどその内心は数多の段取りの積み重ねと、重圧に耐える精神力で保たれていて、一度ミスをすれば脆くも崩れ去る。
スカーレットもすべてを完璧にして1番を獲ろうとしていたが、そんなのは無理だ。
競バに絶対が言えるのは、皇帝サマくらいのものだろう。
「だからどこを妥協して、どこを妥協しないか決める。それで失敗を巻き返す思考を作ります」
走る中で考えさせず、後の先を練ってから走らせましょう。
ウラトレ先生の教えは、本当に後になってから噛み締めることが多い。
128二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:03:09
「……諦めていいものなのか?」
マーチトレさんの問いは、俺に向けたようでそうではない気がする。
それはまるで、自問自答のようだった。どう答えるべきか。考えが纏まる前に、ブラトレが口を開いた。
「少なくとも、勝つのを諦めちゃ駄目だな」
「いや、そりゃそうだが」
「最初はざっくり決めていくといいと思うんですよ。17人に抜かれてもいいけど1着は諦めない!」
「追込に転向するなら放り投げますわよ」
「ミシュテナイデ!」
マクトレへ勢いよく頭を擦りつけた俺を見て、マーチちゃんが笑うような、呆れるような溜息をついた。
それを見て、マーチトレさんが相好を崩したところを、彼女はしっかりと支えるように語りかけた。
「結局、勝つのを目指すのは変わらないだろう」
「……確かに」
マーチトレさんの迷いが、少しずつ晴れていくように見える。
お蔭で俺も、何をすべきか見えてきた気がする。
129二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:03:31
「ありがとな、付き合ってもらって」
「ううん。こっちも色々見えてきたから」
マーチトレさん達がクールダウンを終えて引き上げた後、ブラトレから労いを投げ渡された。
買ってきてくれたのか、水滴溜るお茶のペットボトルは夕陽を透かし、ターフを光で彩っている。
「で、何をどう諦めるつもりなのです」
「自分の走りで勝とうってこと」
「諦めないことは?」
「最高の競争にすること」
「……矛盾ですわねえ」
「うん。割と俺もそう思う」
思わず遠い目になる。
けれど、これは俺がレースで勝ち誇る為の戦いなんかじゃないのを忘れちゃいけない。
俺はトレーナーで、トレーナーはウマ娘の為に頑張る職業だ。
「でも、キンチェムには必要なことだと思うんだ」
「……そっか。そうだな」
ブラトレ達は納得したように頷く。
俺達は考え方も生き方も、向き合い方さえも違う。けれど、ウマ娘には誰よりも真摯なことは変わらない。
「なあ、ダストレ。それでも、あの子とちゃんと走ってやれな」
「うん」
「いっしょに走ったら……今までより、わかることもあるからさ」
「……うん」
彼らに頼れて、本当によかった。
軽く肩を叩かれながら、俺はそのありがたさを噛み締めた。
130二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:04:04
「ねえ、ボディ。本当にいいの?」
「何が?」
「色々してるみたいだけど……勝っちゃうよ、わたし」
特別障害走も明日に控える夜。
俺はキンチェムに呼び出され、トレーナー寮の屋上で話をしていた。
それは競い続けた者としての確信なのかもしれない。
残酷に、けど申し訳無さそうにキンチェムはそう告げた。
「うん、勝てばいいんじゃない?」
「へっ?」
呆気に取られたように、キンチェムは俺の顔を見つめる。
その性根は優しくて、人間でない出自からすればずっと賢いんだろうけど、どうにも勝者の傲慢さというか、勝って当然というのは頂けない。
だからとびっきり意地悪に笑ってみせた。舐めるなよ、という圧を込めて。
「勝って、勝ったら……俺の身体を好きに使いなよ。それで、どこにでも行けばいい」
「……そう。そう、よね。わたしは……」
「君が本当に、それを望むならね」
「……」
キンチェムは迷っている。
彼女からしたら、俺とスカーレット、そして周りの人達との絆を引き裂くようで怖いのかもしれない。けど、自分の未練を捨てることはできなくて葛藤しているのだろう。
その葛藤は、少なくともキンチェムにとっては苦しいものだが……必要なものだと、俺は思う。
けれど。
131二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:04:25
「けど……負ける為に走るやつなんていないよ、キンチェム」
「……うん」
「俺だって、勝ちに行く。だから君も勝ちに来て」
「…………うん。ごめんね、ボディ」
「ううん。ほら、キンチェム」
伏せた目に映るように、俺は屈んで手を差し伸べる。
明日、俺達は競い合い、どちらかが負ける。
それはこの世界から消えるということを意味しているのかもしれない。
けれど、それでも。
「レースが終わったらライヴだよ。最後に練習、しておこうよ」
「……うん。やろ、ボディ」
俺達のおしまいは、笑顔で迎えたいんだ。
そう願いを込めた手は、怖がるような笑みと共に、縋るように取られた。
「……こう?」
「そう。上手上手」
「えへへ……」
スマホから流れる音楽に合わせて、ステップをワン・ツー。
次第にメロディと共にキンチェムの心も弾んで、俺達はもつれるように踊り明かして……。
「……流石に深夜までダンス大会はおじさんどうかと思うんだ。ねえ?」
「スミマセンデシタ……」
フジトレさんにそれはもう怒られるのであった。
132二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:05:04
フジキセキちゃんの担当トレーナーさんはちょっと、捉え方の難しい人である。
いつも微笑んだ顔でいるけど、割と圧の強い人で、それが割と言い返せないタイプのお節介焼きに絡んでいるから、不健康だったり不真面目なトレーナーは彼を見ると「げえっ、関羽!」みたいな顔をする。
特にオペトレさんの同居人(というかあれは愛人とかそういうのでは……?)であるスイトレさんはフジトレさんを見た瞬間に脱兎の如く逃げ出すので、スイトレさんとフジトレさんが追っかけっこをしている様はトレセン学園の風物詩でもあった。
ゲロ濡れの服で帰ってくる以外は優等生な俺であったのだが、真夜中の騒音は確かにご迷惑である。大変申し訳ありませんと平伏するばかりであった。
「まあ、気持ちはわかるけどね……ダメだよ? 身体は大事にしないと」
「はい……風邪ひかないように、そろそろ帰ります」
「そうしてくれると、おじさんも安心かな。それで、その子が……」
「……ああ。あなたが」
けれども、今日のフジトレさんはどこか歯切れが悪く、ちらちらとキンチェムの方を見ている。
それに気づいたキンチェムも、フジトレさんのことをじっと見て……どこか羨ましそうに言った。
「そっか。そっちのわたしは、置いていかなかったんだね」
「……どういう意味?」
「気にしないで。わたしはわたしだけど、あなたの知るキンチェムじゃない、ってだけ」
それは拒絶のようでいて、肯定のようにも思えた。
その内心は誰にもわからないだろうけれど、少なくともキンチェムの中では割り切れたらしい。
「――だから、ごめんね。わたしはあなたから……みんなから、彼を奪うよ」
双眸から迸る迷いの揺れが凪ぎ、勝者の眼差しが戻った。
ゾッとするほど空虚な眼差しに、俺もフジトレさんも思わず黙り込み、去りゆく背を目で追う他になかった。
明日、俺はこの瞳に追われることとなる。
133二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:06:24
「……ねえ。この服、レースにいる?」
「「いります!!」」
「わぁ……うーん、汚れると思うんだけどなあ」
遂に迎えたトレセン学園大障害走。
勿論ジャージや貫頭衣ひとつで走ることなど許される筈もなく、俺とキンチェムは俺達の為にロブトレさん達が誂えてくれた勝負服に袖を通していた。
「似合ってるよ、キンチェム」
「えへ……そうかな?」
「そうですよっ。ハンガリーの奇跡たるキンチェムさんなんですから、お刺繍をしたブラウスがきっと似合うと思ったんです!」
「刺繍はマチョー刺繍にしました。キンチェムさんの故郷、ブダペストに程近い様式です」
キンチェムと俺の勝負服になったのは、ハンガリーの民族衣装だ。
キンチェムは真っ白なブラウスとエプロンに、所狭しとデイジーの刺繍(カロチャ刺繍というらしい)が施され、頭に花の輪っかを戴いている。まるで絵本から飛び出したような装いとなっていた。
俺はその対を意識したらしく、青を基調としたベストに白いシャツとズボン(カラーリングはスカーレットに合わせた。俺の希望である)。ベストにはキンチェムと同じようにデイジーの刺繍が飾られていて、これはロブトレさん達から解説があった。
「どちらの勝利も祈って、この花を刺繍の題材に選びました。
キンチェムさんの勝利に飾る花で、ダストレさんの勝利に贈る花です。……ふたりとも、どうか頑張ってください」
「……うん、ありがとう」
「すてきなお洋服……本当に、すてき。ありがとうね」
俺達の礼を受け、ロブトレさんは目元の隈を濯ぐように微笑んだ。
俺達の為にこの一ヶ月、暇さえあればお針子をしてくれたそうだ。
ある意味一番俺達に献身的にしてくれたのは彼女達かもしれない。本当に頭が上がらない。
134二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:06:48
「……ん。トレーナー、そっち終わった?」
「うん。シチー、ちょっと見てもらっていい?」
「わかった……うん、いいんじゃない? わかってきたじゃん」
「そうかもね」
準備するのは勝負服だけじゃない。
とっておきのメイクアーティストとして、俺達はゴールドシチーちゃんとその担当トレーナー、シンボリマティリアルさんにメイクを受けていた。
「……わ。ボディ、すっごくきれい! お嫁さんみたい!」
「うーん、お嫁さんにお嫁さんみたいと言われるとは」
「二人共、目鼻立ちに歪みはないけど、目尻の線とか鼻筋が曖昧だからね。
強調してあげればすっごく美人になるよ」
「ウォータープルーフで盛ったからね。汗かいても落ちないから、安心して」
俺もスカーレットのメイクの手伝いくらいはするが、正直に言ってそこまで詳しくないからありがたい。
二人のお蔭で、
「それじゃ、すてきなおまじないをかけるよ! せーのっ」
「「マーベラース!」」
ありがたい支援は形に残るものだけではない。
マーベラスサンデーちゃんとその担当トレーナーさんは不思議な出来事や噂の絶えないペアだが、今日の為にと不思議なアイテムを並べて、とっておきのおまじないをしてくれた。
生憎、効果のほどは俺はよくわからなかったのだが、おまじないを受けた時、キンチェムの……霊体?のようなもの(傍から見るとその輪郭か)が、一瞬金色に光ってみえたので、きっと何かいい効果があったのだろう。
「……貴方の出逢いはきっと、数字では現しきれないほどマーベラスな奇跡だよ。だからどうか、楽しんで走ってきてね!」
「うん……ありがとう、みんな!」
色々な人の祝福を受け、俺達は手を取り合ってレース場へと進む。
その先で、待ち構えている人がひとりいた。
135二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:08:23
【修正部分】
俺もスカーレットのメイクの手伝いくらいはするが、正直に言ってそこまで詳しくないからありがたい。
二人のお蔭で、俺達のレースはより強く、見た人達の記憶に残るものになるだろう。
136二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:08:46
「……チヨトレさん」
「…………すみません。少し、お話があります」
レース場前の高架下、その影でチヨトレさんが待っていた。
俺はキンチェムを先に行かせて、彼女の前に立つ。
「資料、できました。お目通しは後で構いません」
「……うん。ありがとう、チヨトレさん」
「…………どうしても、やるおつもりですか」
チヨトレさんは喉を、声を震わせて俺に問いかけてきた。
その心にあるのは、どういった不安だろう……なんて、考えるまでもない。
心配してくれているのだ。負ければ消え、走れば怪我を負いかねない立場の俺を。
トラウマがどうこう、だけじゃない。それは彼女が本来持っている、心根の優しさから。
なら、答えないといけない。この場を諌める為だけじゃなくて、チヨトレさんの不安に寄り添う為に。
「……うん、行く。それが、キンチェムの魂の救いになると思って走る」
「……なら、貴方の魂は誰が救うのですか! 貴方は……!」
「それは少なくとも、わたくし達だけでどうこうできませんわね」
チヨトレさんの背から声をかけたのは、マクトレだった。
懐かしむような目をチヨトレさんに向けた後、彼は呆れるような目でこちらに暴言を言い放った。
137二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 20:09:45
「担当以外に命をかけるなんて、そうできるもんじゃありませんわ。
わたくし達はその尻拭いに追われるしかありませんわよ」
「それ、君が言う?」
「わたくしだから言えるのですわよ、この友人A野郎」
ひどいなあ、と思いながらも、その軽口は心地良い。
緊張に強張った身体をぐるりと回すと、血流と共に思考も回ってきた。うん、いつもどおり。
「……チヨトレさん、ありがとうね」
「何を……」
「心配してくれてさ。まあ、その心配を加速させちゃって申し訳ないんだけど……。
……俺の救いは、今はキンチェムとの走りにあるから」
それは本心だけど、きっと今のチヨトレさんを本当に納得させるものではないと思う。
チヨトレさんの心配を本当に解けるのは今じゃないし、解くのは俺でもないだろう。
だからその時は、今日心配してくれた分、必ず報いよう。そう心の中で誓って。
「必ず、笑顔で帰ってくるよ。だから、待ってて」
俺はチヨトレさんをマクトレに任せ、レース場へと駆け出した。
伸ばされた手へ振り返して――努めて、彼女に安心させてあげられるように、笑って振り返りながら。
レースが始まる。
俺の一世一代、もしかすると、人生最後のレースが。
(つづく)
≫165ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:34:10
読書少女と賢者の催し物withロブトレ&スイトレ
何時ものように図書室でロブロイの手伝いをしに行くと───
「……はぁ。結局決まらなかったなぁ」
ため息をついているロブロイの姿がありました。今日は確か、『読書推進週間』の会議がある、と言っていました。しかし、あの顔を見るとどうやらあまりうまくいかなかったようである。
「ロブロイ、お疲れさまです。読書推進週間の準備、大変そうですね」
「あ、トレーナーさん……。はい、実はですね……」
ロブロイに事情を聞くと、『読書推進週間』の催し物に対し、図書委員たちはあまりやる気がないとのこと。でもロブロイにとってはきっと……
「『読書は難しそう』と催し物に興味を持つ子自体が少なくて……図書委員としても力を入れる意味はないという意見が多く───」
「でも……難しそうで終わってしまうのは、もったいないし……とても寂しいです」
「本を読めば、どんな世界にだって飛んで行ける……。夢の世界の入り口なのに……!」
物語への熱意を込めて語るロブロイ。
物語から英雄に憧れ、ここに入ってきたロブロイにとっては難しいからで終わるのは諦めきれるものではないのだろう。
それに、ロブロイから教わった私自身もいろんな方に本への興味を持ってもらいたいと強く思います。
「たしかに、難しい本もありますけど……。素敵で楽しいものもたくさんあるってことが分かれば、きっと───」
「ええ、その気持ちはとても分かります。ならそのことを催し物で伝えてみる、というのはどうでしょうか?」
「あっ……!そうですね……トレーナーさん!苦手意識が薄れるような、本の面白さを───物語の魅力を、催し物を通して伝えることができれば……!」
「そうですよ。それに以前、和メイド喫茶を企画したこともありますから、その時のように楽しくなるようなものを考えてみましょう。私もぜひ協力しますからね」
「はい!トレーナーさん、お願いしますね」
以前のようにまたロブロイと企画を、それに今回はロブロイの好きな物語の良さを広めるために……。
これは、是が非でも成功させなくてはいけませんね。
「話は聞かせてもらったわっ!」
「ロブロイ、ロブトレさん、こんにちはぁ」
「おや、スイープにスイトレさん、こんにちは」
166ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:34:46
突然、後ろから聞こえてきた元気な声に振り返ると、ロブロイと仲良くしているウマ娘のスイープトウショウと、そのトレーナーであるスイトレさんの姿がありました。
「喜びなさい♪ 天才魔法少女のスイーピーが手伝ってあげてもいいわよ!魔法の物語も一緒に紹介すれば、みんな魔法のすばらしさに気づくはずだもの!」
「そういうことなのでぇ、私たちもぜひ、協力させていただけませんかぁ?」
「ほ、本当ですかっ?ぜひともお願いしたいです……!」
「ふふ、ええ、是非お願いします。やはり催し物の準備は大勢でやる方が楽しいですしね」
「良いわ、契約成立ね!成功したら二人とも魔法の練習に付き合いなさいよ♪」
「はい……っ!本の魅力を伝えるためなら、どんな練習でもお付き合いします……!皆さん……ありがとうございます!」
「ええ、いいですよ。ふふ、スイープさんの魔法の練習は何時も楽しませてもらっていますからね」
「スイトレさんも協力してくださり、ありがとうございます。それではこちらで何時話すか日程などを決めませんか?」
「いいですよぉ。スイーピーもとっても楽しそうで、私も楽しみですぅ」
「ええ、同感です。やはりロブロイが楽しそうにしていると、私も楽しくなりますからね。それに……」
「それにー?どうしたのぉ?」
「物語の良さを広めたい、というのは私自身も同じですからね」
その後、改めてスイトレさんと話し合って日程を決めました。
また、その際に一緒にスイープと合同トレーニングをする約束なども取り付けられたのは思わぬ収穫でもありました。
これからの準備がとても楽しみに感じている自分もいるのでした。
167ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:35:45
『読書推進週間』の催し物について、スイトレさんと打ち合わせたとおりに作戦会議を行うことになりました。
その当日───
「なっ、なによ、あの分厚い紙の束! 魔法書っ!?」
「いえ……?私がピックアップした本のおすすめポイントをまとめた資料です」
「これを読むのは、大変だねぇ」
「ふふ、私としては是非読みたいのですけどね」
「ロブロイの眷属までそうなの!? こんなの皆見る気にならないわよっ!」
「トレーナーさんの言った通りでしたね……。多すぎると見る気にならないんですね」
ロブロイが用意したのは分厚い紙の束でした。
実は昨日のうちにロブロイに見せてもらっていました。とても読みごたえがあって私自身は楽しめましたが、知らない人からすると見るのも大変になるのもわかります。
ただ、今回はロブロイが中心となって行っている企画、ロブロイ自身のいい経験になると考えて、一回このままで出してもらいました。
「そうだねぇ……もっと一目でわかるものだといいかもねぇ」
「そうよっ!グランマは魔法も目の前でやってみせてくれたの! 分厚い魔法書を読むより、そっちの方がよっぽどわかりやすかったわ♪」
「なるほど……」
「ええ、実際に体験するというのは相手にとっても入り込みやすいですからね」
他の方の意見を聞き、ロブロイは深く考えている。
最近はウマ娘化したトレーナーたちのために生徒会からの依頼でコスプレ関連の企画をロブロイと一緒にしたことは何度もあるが、ロブロイ自身が好きな本に関する企画はあまりなかった。
きっと彼女にとっても今までと比べて熱心に考えているのだろう。だからこそ、今回は明確に彼女が主導で考えていくのがいいと思えていた。
「私たちがやるなら……本の見どころを再現した展示コーナー……ですかね?」
「いいじゃない! 本の中に入ったみたいでたのしそう♪」
「スイーピーも楽しそうだしぃ、私もいいと思うなぁ」
「では催し物の内容は決定ですね! トレーナーさん、衣装についてはお願いしてもいいですか?」
「ええ、衣装であれば任せてください。すぐに用意しますからね」
168ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:36:51
どのようなことをするかが決まると、そこからはそれぞれが何を担当するか、どのようなコーナーにするかを話し合いました。
その一つ一つをロブロイ自身が主導して……やはり、これはいい経験になると感じられます。
何より、自分の好きなことを企画しているその姿は私の好きなロブロイの姿でもありました。
「ありがとうございます。あと必要なものは───」
「そうだねぇ。こんな素敵な企画なら皆に知ってもらいたいねぇ」
「たしかに、いくら展示を頑張っても、見に来てもらえなければ意味がないですし、人通りの多い街頭なら……。いい参考例があるかもしれませんね」
「それなら、早速行ってみましょうか」
その後、会計を済ませ、宣伝の参考にするためにカフェの外を散策し始めました。
するとちょうど、魔法使いのようなコスプレをした人が宣伝を行っていた。
それを見ると、すぐにスイトレさんは思いだしたようで
「そういえばぁ、この時間はスイーピーが好きな、ダビ子のイベントがあるねぇ」
「ダビ子ですって!? 本当なの、トレーナー!」
「あっちみたいだねぇ。スイーピー、見に行くのぉ?」
「行く行く!絶対行くわ~~~~~!!」
「そうだねぇ、なら一緒に行こうねぇ」
「……!」
どうやら外ではスイープが好きなアニメのイベントステージがあるようです。
スイープはそちらに行く気満々であり、スイトレさんも同じように行くようです。
宣伝の参考になるものを探すのであればここで一旦離れるべきですが、ロブロイの顔を見る限り恐らく……
「ロブロイ、何か気づきましたね」
「はい、トレーナーさん……。私たちもダビ子さんみたいに、登場人物になりきって宣伝してみればいいんじゃないかなと」
「ふふ、それはいいですね。ロブロイ、よく思いつきましたね」
「はい……!皆さんが一緒に考えてくれたからです。私一人だったらきっと上手くいかなかったと思いますので……」
「ふふ、大丈夫ですよ。企画というのは皆でやるものですからね。その中でよく頑張りましたね、ロブロイ。きっといいものにしましょうね」
「はい、トレーナーさん……!」
後日ロブロイの熱意は他の図書委員にも伝わり、その企画で決定されました。
一つずつ一つずつ、全員で準備をしていき、本番で成功できるように……。
169ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:37:32
ロブロイ達と一緒に進めてきた『読書推進週間』の当日───
ロブロイはとても緊張していたが、スイープの言葉から勇気をもらい、見事に宣伝を成功させた。そして、展示コーナーでは大勢の人々で賑わっていました。
そして、今もロブロイは彼女の好きな物語を、好きになってもらいたい英雄譚を伝えに駆け回っている。
その姿はとてもキラキラと輝く、私の好きなロブロイの姿でした。
そして、そんなロブロイ達の様子を私とスイトレさんは眺めていました。
「スイーピーも、ロブロイも、とっても楽しそうでぇ、よかったですねぇ」
「ええ、本当によかったですよ。スイトレさんも、改めて協力してくださりありがとうございました」
「いいんですよぉ。スイーピーも楽しんでいたからねぇ。それに、ロブロイとロブトレさんへのお礼もありますからぁ」
「私とロブロイへのお礼、ですか?」
スイトレさんはお礼、と言っていたが、私がスイトレさんに対して何かをしていた覚えはなかった。
首をかしげながら聞くと、スイトレさんはゆったりとした様子で
「だってぇ、私が私になる前から、スイープの魔法の練習に付き合ってくださっていたじゃないですかぁ」
「知っていたのですね、スイトレさん」
「嫉妬していましたからねぇ。意識しているからこそ、色んなものが見えちゃいますからぁ」
「私も意識してしまっていたのはありますからね。ロブロイと友人であるスイープのことも放っておくことはできませんでしたしね」
「なので、そのお礼もしたかったんですよぉ」
「なるほど、そういうことだったのですね。ふふ、私としては今後ともスイープともスイトレさんとは今後もこういうことをしていきたいと思っていますので、その時はまたお願いしますね」
「そうですねぇ。スイープが楽しめるのなら、協力しますよぉ。でもぉ」
そう言って、一呼吸置き……
「スイープは、ロブロイにも負けませんからねぇ」
「ふふ、ええ、こちらこそ、負けませんよ。ロブロイが一番ですからね」
170ロブトレヒロイン概念21/11/14(日) 20:40:18
その時のスイトレさんの瞳には、今までにない想いが強く感じられました。
お互い、自分の担当が一番であると疑わない、その想いを秘めながら、担当ウマ娘の姿を見る。
ロブロイとスイープ、二人の魔法使いが楽しそうに笑いあっている。
そして同時に、お互いに競い合う相手。何時か、一緒にレースで走る時は、きっと素敵な魔法使いの宴が始まるのだろう……。
以上、リハビリとエミュ精度の練習としてサポートカードのイベントにロブトレを当てはめて書きました。
未実装ウマ娘のエミュの練習としてはサポカイベントに自分のトレーナーを入れるのはありだと思っています。
そして、スイトレさん、お借りしました、ありがとうございました!
その、スイトレさん、ずっと最弱で言われていますけど、スイーピーの勝利も誰よりも信じていると思うんですよ
だから、そういう一面も出せたらな、と思ったのですが、大丈夫でしょうか?
なんというか、あのSSの後にお出しするのはとても恥ずかしく思えてきます。
では失礼しました。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part447【TSトレ】
≫11二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 21:02:31
『パフェデート』
「久しぶりのお出かけでイチゴたっぷりのこんなに素敵なパフェをご馳走していただけるなんて、今日はとっても素敵な日ですね」
「アルダンさんに喜んでいただけたようで何よりです」
「イチゴの酸味とやわらかい甘みのクリーム、とても素敵で頬がとろけてしまいそうです。流石はマックイーンの紹介のお店ですね」
「アルダンさんが幸せそうにしていると私も幸せな気持ちになります。メジロマックイーンさんには足を向けて寝られないですね」
「トレーナーさんのチョコレートパフェも白と黒のコントラストが大人っぽく見えて素敵ですね」
「よろしければこちらも食べてみますか?」
「いいのですか?それでは、あ~ん」
「……あの?」
「私の口はここですよー」
「あ~ん」
「……はい、あーん」
「あ~む。んん~、ほろ苦いビターなチョコレートソースとアイスクリームの強い甘みが合わさって、素敵な大人の味です。それではお返しに、トレーナーさんもイチゴパフェをどうぞ」
「いえ、私は結構です」
「トレーナーさんが幸せだと私も幸せになります。だからトレーナーさんも、あ~ん」
「……あーん」
「どうです?おいしいですか?」
「ええ、とてもおいしいですよ」
「ふふっ、トレーナーさんが幸せになることで私が幸せになって、私が幸せになることでトレーナーさんがもっと幸せになる。永久機関が完成してしまいましたね」
「……アルダンさん」
「お顔が真っ赤ですよトレーナーさん。あなたのメジロアルダンはここですよー、そっちを見ても誰もいませんよー」
「……あまり揶揄わないでください」
「ふふっ、じゃあここまでにしてあげます。また、いっしょにおいしいものを食べにお出かけしましょうね、私のトレーナーさん」
「ええ、また時間をつくって出かけましょう、私のアルダンさん」
≫19二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 21:07:41
トレセン学園の自販機前にて
「ふぅ…」
缶コーヒーを買うフェストレの元に近寄る一人の人影。
「こんにちはフェストレ、いい天気だね。」
「ふっ…こんにちは、ファイトレ。ああ、喉が乾くくらいには晴天だな。」
二人で顔を変えずに見つめ合う。とそこへ…
「何してるのお二方。」
「…パルトレか」
「何、少し挨拶をしていただけだよ。」
「そんな所で睨み合ってたら勘違いされても仕方ないわよ?」
パルトレからの言葉に二人は互いへの視線を外し、パルトレに返した。
「それは失礼した。」
「ああ、そうだな。…所でファイトレ、少し俺と勝負をしないか?勝ったらここの缶コーヒーを奢ろう。」
「ふむ…なら受けるとしよう。」
少し考えこんだあとに勝負を受けたファイトレに対して、フェストレは提案する。
「…じゃんけんで決めるとしようか。一発勝負でいいか?」
「…了解した。しかし流石の自信だね。」
「何、勝負はスリルがあってなんぼだろう?…それと、パルトレには審判を任せてもいいかな?恐らく暇だろう?」
「…いいわ、引き受けてあげる。」
「助かるよ。」
「…フェストレ、では始めようか。」
二人の雰囲気が変わる。パルトレは付近の気温が下がっていくように感じる。
20二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 21:08:03
フェストレは考える
(ファイトレは一筋縄ではいかない相手だ。だが、仕草からまだ読み取れる。例えポーカーフェイスや義手相手でも余裕で読み取れるとも)
「「最初はグー、」」
お互いに片腕でもう片方の腕を抑えながらグーをだす。
…ファイトレは思案する
(フェストレのあの自信、つまり私の行動は多分読めるとでもいうことだろう。ならフェイントを混ぜるべきか。…多段階で入れる。)
ファイトレは腕を動かしながらフェイントを混ぜ込む。ついでに視線もずらしておく。
「「じゃんけん」」
ーーーフェストレは思考する。
(彼女なら俺が読めることぐらい気づいている。よってフェイントは確定で入れてくるな。)
実際、ファイトレはフェイントを二重で入れてきており、その左手は…
(俺の経験則ならこれはチョキに見せかけたパー…ではなくチョキ。よって俺が出すのはグー!)
「「ポン!」」
…フェストレがグー、ファイトレがパー。その瞬間、二人は同じタイミングで呟いた。
「「…私(俺)の勝ち(負け)か」」
「…さっきの勝負に不正行為はなかったわ。ファイトレの勝ちよ。」
パルトレの鶴の一声とともに緊張がとかれ、ファイトレとフェストレは思わず微笑んだ。
「…なるほど、これは一杯食わされたな。」
「どうやら貴方にも通じたみたいね。」
「ふふふ…ああ、とても楽しかったよ。後賭けのコーヒーだ。受け取ってくれ。」
缶コーヒーを手渡しで受け取ったファイトレは口元を緩める。フェストレも凄く楽しそうに笑みを浮かべた。
「熱中してるわね…」
パルトレはそんな二人に少し呆れたような、しかし面白そうな顔を向けたのだった。
≫37[馬魂考は珈琲と共に]1/421/11/14(日) 21:15:57
[馬魂考は珈琲と共に]
「おーい、タキオンは居るか?ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「どうしたんですかギムレットさん。タキオンさんなら「ちょっと用事がある」とか言って出かけましたけど」
「その声は緋色のか。何、最近書き物にハマってな。少し質問があったから研究室にまで足を運んだが入れ違いだったようだな」
「前から思ってたんですけど「緋色の」ってなんですかそれ」
「ウチと同じく3人居るんだからカフェのと呼ぶわけにもイカンだろ。良いじゃねぇか、青いの白いのからの赤いのとかで呼ばれるのよかマシだろ?」
「それはそうですけど……。ところで、ギムレットさんが書き物ですか。個人的にはそっちの方が気になるんですけど、何を書いてるんですか?」
「高負荷のトレーニングをどのようにして継続するかについてを書いたトレーニング本さ。タキオンを尋ねたのもトレーナー共々そういったことに詳しいからだったんだが、居ないんじゃどうしようもないな」
「それはまた興味深そうな本ですね。出版とかするんです?元ダービーウマ娘の書いたトレーニング本ですし、出たなら購入も検討してようと思うんですけど」
「出版する予定は無い。なんせ複数のトレーナーのトレーニングの秘訣をパク……拝借してきた本だからな。出したら方々から怒られる。ウチのチームだけに見せるのがせいぜいさ」
「それは残念。カフェのトレーニングにも活かせそうだったから見てみたかったんですが」
「気になるんなら自分で盗みな。……ところで、ウマ娘になって少し経ったがどうだ?走りたいと感じることはあるか?」
「いや、走りたいとはそこまで思わないですし車椅子にも新しい義足にも慣れましたけど、『お友達』と『お友達のお友達』が喧嘩してるのには少し……ってアイタァ⁉」
「そうか。また難儀なウマソウルに憑かれたものだなお前も。しかもよりにもよってその2人か。これは幸運なのか不運かなのか困ったところだな」
「見えるんですか。というか『お友達』について何か知ってるんですか?」
「これでもウマソウルだからな。一目見れば知ってる奴なら大体わかるぞ」
39[馬魂考は珈琲と共に]2/421/11/14(日) 21:16:30
「……教えてくれませんかギムレットさん。正直気になってしょうがないんです」
「いいぞ。じゃあタキオンが戻ってくるまで1つ、ウマソウルについて話をしてやろう」
「緋色の、コーヒーを持ってきたぞ。インスタントですまないがそこら辺はまぁ、勘弁してくれ」
「話してもらう側なんですし珈琲ぐらいなら僕が持ってきますよ?」
「このぐらいは自分でやるさ。さて、お前に憑いたウマソウルについてなんだがな」
「はい、ギムレットさん」
「ぶっちゃけよく知らん」
「えぇ……知ってる口ぶりだったじゃないですか」
「なんせ海外で走ってた奴だからな。『お友達』の中核については良く知ってるが、そいつの知り合いのこととなると留学生だった元友人兼ライバルからの又聞きになるんだよ」
「へぇ、ギムレットさんに留学生の友人が。気になることがどんどん増えますね」
「話が脱線するかそれについてはまた別のタイミングに話をしよう。で、そいつから聞いたことだがな。曰く、『お友達』と『お友達のお友達』はライバル関係だったらしい」
「ライバル関係、ですか」
「そうだ。最底辺から成り上がった無頼漢と自らの走りで自身を証明し続けた貴公子、外国において当時の人気を二分した二大巨頭こそがそいつらだったんだとよ。引退後、無頼漢は日本で、貴公子は地元でそれぞれ後輩にレースの指導を行うことになったそうだ。それが俺の知る『お友達』と『お友達のお友達』の関係性だ」
「そんなことがあったんですか。というか『お友達』も海外のウマ娘で、引退後は日本に来てたんですか」
「それはもう凄かったぞ。そいつの門下からは次々にクラシックを勝つウマ娘が出てきて、最終的には無敗の三冠ウマ娘を輩出したぐらいだからな。1代で日本ウマ娘レース界を塗り替えて歴史に名を残した稀代の怪物こそが『お友達』ということになのさ」
「何ですかそれ……。レースは強い、指導力でも三冠ウマ娘を育てるとかそんなウマ娘にしたヘリトレ先生みたいな人が居たんですか?ちょっと俄かに信じ難い話ですね」
「信じられんというのも理解できる話だな。まあ歴史に名を残した、という意味なら長老のも同じだし、土俵が違うから競うこと自体不可能な話だがな」
「それもそうですね。ところで時々つっかえてますし『お友達』とか呼ぶの面倒じゃないですか?名前とか言っても良いと思うんですけど」
40[馬魂考は珈琲と共に]3/421/11/14(日) 21:17:45
「それはダメだ。たとえウオッカに頼まれたとしてもその2人の名前は明かさない。これは決定事項だ」
「……それはどうしてですか?そこまで強く言うのなら何か理由があってのことだと思うんですが」
「名前を教えてその後の責任を取れないからさ。そうだな、ここらでウマソウルについて1つ考えてみるとしようか。あとコーヒーのお代わりを頼む」
「お代わり持ってきましたよギムレットさん」
「ありがとよ緋色の。良い匂いだな。インスタントでも淹れる人間が変わるとこうも変わるものか」
「コーヒー1つ入れるのもお湯の温度とか色々ありますからね。それで、『お友達』の名前を言ったらどうして責任が取れないんです?」
「ま、その前にウマソウルについての話をしよう。さて、緋色の。ウマソウルとは何だ?」
「異世界で活躍したウマ娘の魂、でしたっけ?ウマ娘になったトレーナーはそのウマソウルを後天的に獲得したのではないかとかなんとかって聞いたことがありますよ」
「正解だ。異世界からの魂であるためにその数と種類は多岐に渡る。基本的には2つ以上だが、トレーナーにはボウズや今のお前のように1つの魂だけが入ってくるという例外も発生する。ここまでは良いな?」
「はい、ギムレットさん」
「さて、ウマソウルを獲得したことによりウマ娘になるトレーナーが居たが、その中にウマソウルに自身を侵食される者が現れ始めた。走りたいという強い衝動に襲われたり、自身の認識や記憶が変質したりとその影響は様々だが、少なくとも変質という点では大きく変わらないな」
「……ええ、最近は少なくなったので同僚としては嬉しい限りですね」
「そしてこれは俺の所感だが、侵食速度はウマソウルが2つ以上の時と1つの時では1つの時の方が圧倒的に速い。互いに食い合う部分が無い分、その速度も圧倒的なものになるんだろう。事実、ボウズも通常よりはるかに速い速度で侵食されたことがあった」
41[馬魂考は珈琲と共に]4/421/11/14(日) 21:18:13
「……なるほど。もしかしてギムレットさんは僕の中にいる『お友達のお友達』がウマソウルとして覚醒するのを回避したい、ということですか?」
「話が早くて助かる。さっきお前に「走りたくなってたりしてないか?」と聞いたのはウマソウルによる侵食が発生しないかを確かめるためだ。そして頑なまでに名前を呼ばないのは……」
「名前を呼ばれることにより存在が確立するのを避けるため、ですか。名前を呼ばないのは『お友達』や『お友達のお友達』にどのような影響が出るかわからないと」
「そういうことだ。その2人が優しい性格をしているのは現状を見れば理解できる。だが魂が活性化した時に何が起こるかについては、その時にならなければわからない。俺もそこまでは流石にわからん」
「……そうですね。何が起こるかわからない以上迂闊に触らないことが賢明ですね」
「だろう?だから「でも」……どうした?」
「そうすることがカフェのためになるなら、そうすることが僕たちにとっての最善なら、僕はきっとそうすると思います。ギムレットさんの心配はありがたいことなんですけど、それだけは譲れません」
「……どうしてもか?」
「ええ」
「……そうか。じゃあ仕方ないな」
「すいません。心配を無下にしちゃうようなことをしちゃって」
「いいや、お前が気にすることじゃないさ。このテの話で断られるのは2回目だからな。……緋色の」
「なんですかギムレットさん?」
「気休めにもならんアドバイスになるが、『自分は何者か?』。この問いを憶えておけ」
「? それは一体?」
「御守り代わりの合言葉さ。……おっと、思ったより話し込んでしまったな。タキオンに聞くのはまた次の機会にしよう。邪魔したな」
「あ、ちょっと⁉もうちょっと詳しく話してくださいよ⁉」
「行ってしまった……」
自分の静止の声に「言葉通りの意味だよ」と返して消えてった同僚に想いを巡らせる。
彼は一体どんな目的であの言葉を言ったのだろうか。いくら考えても答えは出なかった。
茜差す夕日に照らされながら、自分が淹れなおしたコーヒーを口に含む。温かな香りと苦みは自分がいつもと変わらないことを誰よりも明確に教えてくれていた。
≫109添い寝マルゼンスキー21/11/14(日) 21:47:23
「安眠用にね、トレーナーちゃんの抱き枕作ってみたの! これさえあればベリクッナイよ!」
マルゼンスキーの次のレースへの集中追い込みで授業中を除き四六時中張り付いてトレーニングを行なっていたのだが睡眠時間も管理してほしいと言われたのでスズトレに選んでもらったパジャマでお泊まりをする事になった。ストレッチの手伝いや明日のトレーニング用のシューズ群裏の蹄鉄のチェック、夕食をとりつつコース特性と合わせたライバル達の動きの研究を終えた後、風呂を終えてさあ寝ようと言う時にマルゼンスキーが抱き枕を見せてきたのだ。なるほどこの間撮った写真にこんな使い方が。
「やっぱり抱きしめるものがあると違うもんなのかな?」
「そうかもしれないわね〜あとはトレーナーちゃんの写真効果かも!」
俺の写真すごいな? あ、その時ふと閃いた!
「待てよ……? 写真の俺でそんなに効果あるなら俺が一緒に寝たらもっとリラックス効果かあるんじゃないか?」
俺の閃きにマルゼンスキーも驚きつつ納得したような顔だ。
「なんで的確で冷静な判断力なのかしら……! 早速試しましょう!」
そんなわけで俺は寝袋に入ってマルゼンスキーの隣に寝転がったが、マルゼンスキーの「それでお布団に入るとトレーナーちゃんが蒸し焼き虫になっちゃうわよ?」のアドバイスで未来の熱中症を回避して寝ることになった。なんかよく考えると恥ずかしいことしてないか?と思ったが深呼吸して意識を落として眠る。
(ね……寝れない!)
マルゼンスキーはトレーナーが寝たのを確認してこっそり抱きしめてみるが、心臓が高鳴りミリも寝れないので、ベッドから出て寝袋で寝た。トレーナーが起きる前に起きてベッドに戻り寝たふりをして、ぐっすり眠れたていを装うのだった。
「マルゼンスキーおはよう。ぐっすり寝れた?」
「ええチョベリグスリープだったわよ!」
マルゼンスキーの体力が70回復した。
寝不足気味になった。
おわり
≫164二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:16:07
「お待たせ、キンチェム」
「うん。待ちわびたよ」
芝・ダート複合障害走4200m、ゲートイン。
練習をしたから初めてではないが、物珍しそうに俺とキンチェムはゲートの中から周囲を眺める。
「頑張れよ、ダストレー!」
「キンチェムちゃーん! こっちに手振って~!」
レース場の外では、俺達が今まで関わってきた人……だけじゃない。
この障害走を聞きつけた様々な人達が、俺とキンチェムの走りを見るために集まってきてくれたのだ。
オペトレさんの手引きで学園内で配信もされているらしく、ちょっとした見物気分の人達から、どっちが勝つかトトカルチョするウマ娘とトレーナーまでいるようだ。賭けはやべーからやめてほしい。
「……勝つよ、ボディ。これはわたしの、わたしだけのレースになる」
「どうかな。キンチェム、ちょっと勘違いしてるんじゃない?」
冷たく放たれたその宣言に、俺は皮肉っぽく笑って返す。
虚を突かれたように此方へ振り返ったキンチェムへ、とびっきり意地悪な笑みを返してやった。
「俺は、レースのプロフェッショナルだよ」
そうして屈めば、足元にはスターティングブロックを踏む感覚があった。
非ウマ娘における陸上競技では欠かせぬそれは、ウマ娘では破損の危機があるから使用禁止となっているが、ウマ娘としての推力のない俺には貴重なサポートグッズだ。
急に視界から消えたことに困惑するキンチェムを安心させる為に手を振ってやると、彼女の足取りも落ち着いたものになる。
そして、一瞬の静寂が流れ――。
165二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:16:32
――ガコン、という音と共にゲートは開放され、俺達は疾駆した。
奇しくも走行フォームは同じものから対照的になる。
片や頭を地面につかんほどに下げ、まるで這うような獣の走り。
片や身体をぴんと伸ばし、釈迦力に足を動かす人の走り。
お互いに創意工夫と自信あってのもの。
しかしどうしようもないほどに隔絶した「スピード」の差があった。
ぐんぐんと差が広がっていく。
(……ここまでは、予想通り!)
早速走りで並び立つことを諦めて、俺は目印を探す。
眼前に広がっているのは不良などという言葉では生温い、一瞬泥沼と見紛うダートバ場だ。
「……くっ。足が、呑まれる……!」
当然、ダートの走行経験の乏しいキンチェムにとっては辛い足場である。
(ロブトレさん達と総出で当たった資料から、当時のバ場整備は今ほどいいものではなく、芝がこそげて実質ダートのようになっていたことから、怪我は免れるだろうと見込んでのものだ)
時間稼ぎには充分な成果を挙げているが、それだけでは足りる筈もない。
いくつか踏み倒す必要がある。そして、その為に練習を重ねたのだ。
166二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:17:00
「……おっ、らあぁっ!!」
内ラチを蹴り、俺は“横に走る”。
それはギムレットさんやVトレさんから教わった「柵蹴り」めいたパルクールだ。
最初は壊さないか戦々恐々だったが、内ラチは本来ウマ娘の衝突時に保護する為のレールであり、その強度は高く、しなやかである。
ヒトの力で蹴ったとしても、たわみこそすれ壊れはしない。だからこそ全力で泥沼と化したダートを飛び越えることができた。
「ウッソでしょ……!?」
「まだまだぁっ!」
けれど、それだけでは足りない。
パルクールなんて曲芸、俺がそう何歩も続くわけがない。だから俺は更に前へ跳ねて、目的地へ飛び込んだ。
その直後、俺は広く、頼もしい手の中に包まれる。
「ナイスキャッチ!」
「はいよ。ナイスジャンプっす」
ウオトレさんは手の中で笑う俺へ、しっかりと笑い返した。
そう、ここからがこのレースの「意地悪」なのだ。
167二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:17:29
「――んじゃ、覚悟をどーぞっす」
「できてますっ!」
「おk把握」
あっという間に追い抜いたキンチェムが、不安そうにこちらへ振り返る。
俺は座り直しながら、その背に手を振ってやった。
「……勝ってくださいよ。まだ一気観してないアニメあるんっすから」
「へへ……楽しみにしてますっ!」
「そりゃよかった」
ウオトレさんの手に、マメができている。
それはシャカトレさんの指導の下、投げ続けた等身大ダストレ君人形がもたらしたもので、間違いなくウオトレさんが努力した結果だ。
今更疑うことなどない。俺は迷いなく手を離し、ウオトレさんに命を預けた。
「……■■■■■■――ッ!!!」
轟音とも言える叫び声と共に助走が始まり、次の瞬間には俺は宙を舞っていた。
驚愕と困惑の表情でキンチェムと観客が見上げる中、俺は少しも回転することなく、校舎へと射出された。
「そんなの、アリ!?」
「先に待ってるよ、キンチェェェェェム!」
これが俺達のレース。
つまり、ダストレの走りにはろくに頼らず、みんなの力を借りて伝説を出し抜くということである。
壁がどんどん近づいてくる。
衝撃に備えて、俺は目を閉じ身体を丸め――。
168二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:17:56
「――風向90度。計算通りですね」
俺の背を、柔らかいクッションが包み込んだ。
それでも背骨に響いた衝撃に咳き込みながら目を開けると、そこには俺の顔を覗き込むシャカトレさんの姿があった。
「立てますよね? そのエアマットの強度なら、骨に損傷はないはずです」
「だ、大丈夫……! バイクは?」
「そこに。暖気も済んでますよ」
「ありがとう!」
シャカトレさんの手を借りながらすぐに起き上がって、猛追するキンチェムを目にしながら愛用のカブへ跨る。
普段トロトロと走らせている愛機だが、今日ばかりは全速力だ。
「御健闘を。この一戦の結果は、僕の研究にひとつの進歩を与えるでしょう」
「どうなると思う?」
「それを語るには、時間が足りませんね……ただ、一言で表すなら」
アクセルを捻り、走り出す俺の背を見て、シャカトレさんは笑って呟いた。
「奇跡の証明ですよ」
おぼろげにウマ耳が捉えたそれは、どのような気持ちで唱えられたのか。
俺にはわからないけれど――その一助になれるよう、努力する気にはなった。
169二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:18:53
残念ながら、カブの走りではウマ娘を振り切れはしない。
泥だらけの素足は足を滑らせるかもしれないが、そんなもので足が鈍るなら、キンチェムは歴史に名を遺したりはしないだろう。
「ここから先は急な曲がり角だから、気をつけてね!」
そう伝えながら、俺は更にアクセルを踏む。
ウマ娘のコーナリングの都合上、直角のカーブは減速を挟まなければならない。
しかしそれはバイクも同じであり、小回りの効くカブといえどその法則からは免れることはない。
しかしそれなら何故、俺はアクセルを踏むのか?
それは勿論、勝利の為である。
「……ボディ! ぶつかっちゃうよ!」
「違うね、ぶつけるんだッ!」
ぐんぐんとキンチェムとの距離を離しながら、俺はぐんぐんと壁に近づく。
内心で別れを告げ、愛機を蹴り飛ばして乗り捨てれば、カブはぐしゃりと壁にぶつかった。
曲がる気なんて、最初からなかった。すべては次の乗り物までの距離を稼ぐ為。
ごろごろと転がりながら倒れ伏した俺を、ふたつの手が抱え上げる。
「……まったく、無茶な作戦だ」
「見ててヒヤっヒヤしたぁ……運ぶねえ」
「ぉっ……お願いします……」
オペトレさんと、スイトレさん。
見慣れた顔が両側を挟みながら、マルトレさんとマルゼンスキーちゃんの待つワゴンへと運びだす。
ちなみにカウンタックは二人乗りなのでNGである。
ここばかりは安心できるポイントだった。
170二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:19:23
「……ダストレ君。もしや、肩が」
「えっ」
「あー……外れてるねぇ」
「ウソぉ!? 無茶しすぎでしょ!」
「あーらら、チョベリバ……トレーナーちゃん、鎮痛剤出してあげて」
マルゼンスキーちゃんが運転する中、俺はマルトレさんに鎮痛剤と水を突っ込まれる。
アドレナリンでも出ていたのか、痛みは随分と遅れてやってきた。
「仕方がない、荒療治だ。スイトレ、支えてくれ」
「はぁい」
「えっ、ちょっ……う”ごぉ”っ”」
ごくん、という音と共に、垂れ下がった右肩が嵌め込まれた。
重く鋭い痛みが肩から脊髄に流れて、俺は息をする肩が痛いという高度な痛みの体験を味わう。
気遣わしげに此方を見ながら、肩をはめ込んでくれたオペトレさんが耳打ちをした。
「辛いことを言うが――痛みを堪えて笑いなさい。
彼女に、君の身を案じさせてはならない」
「……っ」
顔を上げれば、爆走するワゴンのミラーに、ぴったりとくっつくキンチェムの姿があった。
彼女はペースを乱しながら、それでもスピードを上げて叫ぶ。
「ボディ! どうなったの!? 大丈夫!?」
心臓が縮み上がった。どうしようもない、失策だ。
171二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:20:09
「……中距離辺りで競争してみたかったわね」
「後で予約が取れたらね。ダストレ、どうしたい?」
「……窓を。窓を、開けてくださいっ」
痛みを抑えて懇願すれば、すぐにワゴンの窓が降りる。
それを見て取ったキンチェムが、息を切らしながら窓を覗き込んだ。
「ボディっ」
「何を心配してるんだっ!」
叱責に、キンチェムの顔が、心が傷つく。
それでも、言わなければならない。例えこれが彼女の身体になるとしても。
謝るよりも先に、言わなければならないことがある。
「……見縊るなよ。俺は、レースのプロだって言っただろ!
君の心配なんていらないんだ。誰より狡いことをしてでも、君に勝つ自負がある!!」
「ボディ……」
「息を整えて、君の走りをしろ、キンチェム!
その走りに勝つのは、俺達だ!!」
それはあからさまな強がりだ。
けど、それでも彼女が心配なんてする必要のない、悪党になってでも戦える相手だと認識してほしかった。
その意思を汲んだのか、キンチェムはスピードを落とし、息を整えにかかってくれる。
「ううん……勝つのはわたしだよ、ボディ」
その顔には、笑みが戻っていた。
思わず俺は、笑みを返していた。
172二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:20:51
「熱愛だな、ダストレ」
「なんとでもどうぞ!
でも俺はスカーレット一筋だってこと、マルトレさんもお忘れなく!」
「はいはい。ほら、ローラースケート」
「ありがとうございます!!」
オペトレさん達に靴を履き替えさせてもらいながら、俺は次の準備をする。
ここからは俺の走りに頼らざるを得ない。
急停止したワゴンから追い出されるように外へ立った俺へ、マクトレさんが声をかけた。
「ダストレ」
「なんです?」
「今、一番楽しそうだぞ」
「……そりゃそうでしょ」
変わらないなこの人も。
そう思いながら地面を蹴り、俺は駆け出した。
「――愛バと走るんです、楽しくないわけないでしょ!」
向かうはゴール地点、三女神の像が待つ正門前だ。
173二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:21:34
「――ハァッ、ハァッ……!」
直線距離1200m。孤独の200m走が始まる。
背後から迫りくるプレッシャーは言わずもがな、未だ痛みの引かない右肩に加えて、ここまで踏み倒してきたもののツケが今の俺を襲っていた。
(――気分が、悪い)
貧血。
直接血を失ったわけではない。
様々な無茶を通して流れていた脳のアドレナリンが、鎮痛剤の効果発生に伴い収まり、一気に血が引いてしまったのだ。
一度痛みを自覚すれば、まともにローラースケートなど無理なことを鑑みれば妥当な処置だが、それでも目眩や酸欠は如何ともし難い。
(目が回る。今なんメートルだ? キンチェムは? この先は――)
後ろを振り返ろうとして、身体の体勢が崩れる。
不味い。まだ150m。“彼女”が待つ場所にはまだ、ヒトの足では遠い。
そう思って立て直そうとしても、もう遅かった。
「……っ!」
視界が斜めに傾き、転がり落ちる。
後ろからは、キンチェムが迫ろうとしていた。
もう、ダメなのか。そう思った、その時――。
「……なんて顔してんのよ」
――俺の身体を、彼女が抱き起こした。
174二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:22:58
息を切らして倒れ伏すアイツを見て、抱き起こした指先が震えた。
アイツの顔は青ざめて、今にも死にそうな顔をしている。
対してキンチェムのやつと来たら余裕綽々で、ここからスパートをかけますって顔をしている。
「……どうして」
「どーしてもこーしても、予定通りでしょ。……後は任せなさい」
「……うん。信じてる」
お姫様抱っこは、するんじゃなくてされたかったんだけどな。
そんなくだらないことが脳裏に浮かびながら、アタシは堂々とキンチェムを待ち構えてやった。
やっと眼中に収まったのだろう。栗毛の伝説が、驚いたように――そして、勝利を確信したように見開かれる。
「……あなたが、ボディが頼る最後?」
「そうよ」
舐めやがって。
思わず口汚い思考が流れるも、努めて無視する。
舐めてるなら、舐めていればいい。
「アタシは、ダイワスカーレット」
青と白。アイツと同じカラーリングの勝負服。
以前の賭けでは着なかったそれを、今日、今こそ着て宣言する。
「こいつの愛バよ」
勝負よ、キンチェム。
アンタが持っていなくて、アタシが持っているものを教えてやるわ。
(つづく)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part448【TSトレ】
≫6ターボトレSS21/11/14(日) 22:37:06
「ごめんなさい、トレーナーさん…」
そんな担当の悲嘆を何度聞いてきただろう
何度心が折れるのを見てきただろう
一体何度――泣きながら田舎に帰るのを見てきたのだろう
そのウマ娘に実力がなかった?
そう考えるのは楽だろう
だが、そんな逃避は俺の在り方が許さない
自分の指導に問題はなかったのか?
彼女達の資質を十分測れていなかったのではないのか?
トレセン学園での時間が過ぎていく中で、心は次第に摩耗していった
情報として知ってはいた
毎年8000人近くのウマ娘がレースの道を志し
G1を勝てるウマ娘は大体20人前後
重賞を勝てる馬は120人前後
最終的にオープンまで上り詰めるウマ娘は240人程度
そして―――1勝すら出来ずに引退するウマ娘は全体の6割を超える
URAが公開している平均的な数字だ
知っていたはずだ、覚悟してきたはずだ
この世界は実力こそ全ての厳しい世界であると
なのに、俺の心は彼女達の涙を見るたびに軋んでいく
「向いてないのかな、俺…」
7ターボトレSS21/11/14(日) 22:37:39
俺みたいな半端な覚悟の人間が踏み込んではいけない場所だったのか
俺みたいに担当の引退を事務的に受け止められない器量の人間はいない方がいいのか
そこまで考えが至った時、俺は辞表を書いていた
ならばここで潔く身を引くべきだ
そうするのが最善だと思った
そして、あの日がやってきた
辞表を携え学園の管理棟に向かう途中、俺はコースに立ち寄った
今思えば、辞めたくないという最後の意思表示だったのかもしれない
そこで、俺はそいつと出会った
青いツインテールをたなびかせて走るウマ娘
走りはなっちゃいないが、今まで見た中で早い方だ
いや、問題はそこじゃあない
何よりそいつは他のウマ娘とは決定的に違う
「なんて楽しそうに走ってるんだ―――」
そのウマ娘はただ純粋に走りを楽しんでいる
レースの結果なんて大した問題じゃないように
まるで子供がまだ見ぬ大人の世界に憧れをいだくように
でも、いずれは…
それを見つめる俺の脳裏にそいつが泣くビジョンが見えた時、俺は走り出していた
それはとても悲しい事だ
一かけら残った勇気が俺を奮い立たせる
「君!!名前は!!?」
「ターボはツインターボって言うんだよ!!」
8ターボトレSS21/11/14(日) 22:40:38
ニコッと笑うウマ娘、ツインターボ
その顔は夕日に照らされ、酷く美しく見えて…
俺は自分の素性を明かし、一つの提案をした
「ツインターボ、俺とトレーナー契約をしないか?」
心配ない、これで最後だ
ツインターボの契約が終わり次第、俺はトレーナーを辞める
ただ、明るく純粋なこの子の笑顔だけは――何としても守らなければ
その衝動のみが俺を突き動かしていた
~~~~~~~~~~
以上です。う~む湿っぽい
P.S.
暫くの間概念を出したタボトレ、パルトレ、クリトレ眼鏡のSSを出す予定です
その為、チヨトレ及びマッサージシリーズの更新が止まります
楽しみにしている方、すいません
≫16二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:45:13
ーーーキタトレのトレーナー室で
「…すみません、相談に乗ってもらって」
「良いのよ、私は気にしていないからね。」
…そう話しているのはキタトレとシントレの二人、シントレが悩みがあると言ったため、キタトレが相談に乗っていたのだ。
「それで、どういう悩みかしら?」
「…元気な子についていく時のコツが少し知りたくて。」
「ああ、担当のウィンディちゃんね。確かにあの子はそういうタイプよね。」
「…はい」
「そうね、私からは…」
ピンポーン!
トレーナー室に鳴る音。シントレはピクリと震え、キタトレは立ち上がると、シントレに
「ごめんなさい、少し待っててちょうだい。」「…分かりました」
ドアの方に向かい、来訪者を確認するキタトレ。シントレはその声に耳を澄ましてみる。
「…タボトレかしら?」
「そうです、キタトレさん。少し話が…」
「今、シントレが来てるのよね…」
話の一部始終を聞いていたシントレは少し声を張り上げて、キタトレに伝えた。
「…あの、僕は増えても構いませんよ。」
…するとドアの方から音がやみ、少ししてからキタトレとタボトレが部屋に中に来た。
「ごめんシントレ…邪魔かな」
「僕は気にしてないですよ」
「ありがとう…先に話していたみたいだから、そっちを優先してくださいキタトレさん。」
「…そうするわ。それで、ついていくコツだけど、私は一緒に騒ぐとかじゃなくても、見守るだけでも別にいいと思うわ。」
「…そうなんですか」
「ええ、慣れないのにした所で疲れるだけよ。だからそこは無理して付き合うよりも、後ろからついていくだけでもいいと私は考えるわね」
「…ありがとうございます」
「いいわよ、これくらいならいつでも付き合うわ。…タボトレも話があるのよね?」
17二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:46:18
「…僕は用も済みましたので帰りますね」
シントレは立ち上がると支度を行う。それを見ていたキタトレとタボトレは
「別に居てもいいのだけど…引き止めはしないわ。それじゃあまた今度。」
「邪魔したかな、ごめんシントレ。」
「いえ…それでは。」
ドアから出ていくシントレ。ふと気になって耳を澄まし、部屋からの声を聞く。
「最近、ターボが…」
「あら、そんなことがあったのね…」
「はい…」
楽しそうに担当について話し合う二人の声を聞きつつ、少しだけ彼女は微笑んだのだった。
短文失礼しました。
上でタボトレssきた後にタボトレを借りるまさかの絶妙なタイミングです。ちょっと想定外の事態で芝生えました。
タボトレとシントレを借りて、キタトレに相談させています。無口ってほどではないかこれ…?エミュは合ってると信じたいです。
タボトレもキタトレも担当や他の人に笑っていてほしい人なので、きっと二人は意気投合していると思います。
これで新トレは全部です。また思いついたシーンがあれば書いて上げていきますね。…くそったれのテストのせいで今週の投稿頻度が下がりそうですが。…あ、安心してください。朝食はほぼ確定で毎日投げますので。
≫31DK4CHTRPG③1/921/11/14(日) 23:01:42
では https://bbs.animanch.com/board/160549/?res=40 の続きです
修正:
<重要>このゲームの目標値は基本一律11です。10とか書いた酔っ払いがいたらしい
<重要>テイトレの移動スキルの「スカフィールド」に、「移動前は含まない」と記述しましたが公式のF&Aを確認したところ「移動前も含む」らしいです
「では、イベントの配置を決定してください。あ、ベースの緊急物資として1SRと3Rがあります。ハンターラインはマテリアルの共有もできるのでこれは皆さんのパーティ共有されます」
「いまいちまだ価値が分かりませんわね」
「まあ戦闘を行えば分かるとは思いますが別の尺度では参考までに現在価値にして1SRが100万円,1Rが10万円相当らしいです」
「え?俺歩くだけで10万生やせるの?(マテリアルマイニング)」
「いや、世界観説明にもあったようにハンターがマテリアライズできるのはコロッサルとその影響下にある物体だけです。平時には使えませんね」
「なーんだ」
「あと大事な概念として【ピリオド】、という概念があります」
「ビガミのサイクルみたいなものか?」
「その通りです。プレイヤー全員が1回行動できる単位が1ピリオド。今回の準備フェイズは2ピリオドです」
「0になると強制的に決戦フェイズか?」
「ええ。コロッサルの居場所が分かっていればその前に決戦フェイズに進むことも可能ですが、今回の初期配置にはありませんね」
「十中八九ロックイベントだぁ」
「多分めくっとかないとデメリットがありそう」
「このZOWには能力が指定されていませんけれども」
「ああ、それは実は空きイベントです。能力の補正なしに目標値11振ってもらいます」
「となるとZOWと居場所を除いて6イベントを2週使って4人で回るのか。結構余裕あるな」
32DK4CHTRPG④2/921/11/14(日) 23:02:11
「それではどうぞ」
「俺知ってるよ。こういう時は未公開情報を積極的にめくりに行けって」
「ロックイベントとコロッサル情報のどっちだよ」
「ロックイベントかな」
「となると[調査/サバイバル]……持ちはいませんので調査持ち、テイトレか私ですわね」
「ん?てっきりあのキャラ設定ならテイトレのイベントに参加しに行くもんだと思ったが」
「そばにいることだけがサポートではありませんわ。それに離れていてもテイトレに向けている心は変わりありませんもの」
「どうしようフクトレ。あの態度に全然慣れないんだけど」
「諦めろ。アレ相当ノリノリだからな」
「っつーか皆バラバラで行く流れなの?」
「だって3d6なら期待値11.5だし……」
「騙されるな!!2dの期待値は5なんだ!!」
「なんかトラウマ刺激しちゃったみたいですわね。その理論でも3dなら7.5、分類ボーナスと間接支援2人加えて10.5で……微妙に足りませんわね」
「ああ、レンタルは実は専門能力さえ違えば修正が累積します。なので皆さんの能力分布ならその人から支援さえもらってれば専門能力レンタル分で+2は確約されます」
「別々に行けるな。ヨシ!」
「手のひら扇風機かよお前。まあロック解除は成否に関係ないけど偵察はフレーバー的に2人で行っても良いかもな」
「では行きましょう御姉様!」
「たすけてブラトレ!」
「じゃあ俺とフクトレで情報と動物対処を抜きに行く感じか?」
「いや、他PCから借りられるらしいから専門能力的な観点でその2つに絞らんでもいいと思うぞ?」
「うーんでも俺導入で目撃者に案内してくれって言っちゃったもんなー」
「あー」
「無視しないでよ!!薄情者ぉ!!」
「自ら身体を動かすのもリーダーの役目ですわ!さあ行きますわよ!」
「配置は決まりました?」
「おう。偵察→テイトレ&マクトレ、情報→ブラトレ、修繕→フクトレだ。まず偵察から処理してくれ」
33DK4CHTRPG④3/921/11/14(日) 23:02:37
「わかりました。ではマクトレさん、テイトレさんのイベントからですね。あの会議の後RIACT本部に報告を入れ、正式に動向を探ってくれという要請を受けたため、お二人は先行隊が帰ってきたアサマヤマ大山岳のルートをそのまま奥方向へ進んでいます。情報は支部内のみに共有されていて、まだベースの一般住民には知られていない状態ですね」
「まあないだろうけど誤報という可能性もあるからねぇ」
「怪我人出てますのよね。せめて進行方向がベースでないことを祈るばかりですわ。ないでしょうけど」
「貴方たちは異常発達した木々の枝や根をよけながら、凹凸の激しい山道を歩いていきます。フチュウにほど近いZOWなので貴方たちも訓練の為に来たことがありますが、異常なほど静かなことがわかります」
「『まるで嵐の前、ですわね。御姉様、そちらには何か?』」
「『何も見つからないな。獣の痕跡すら見当たらないのは逆に異常とも言えるけれどね』」
「その時です。奥地の方から轟音と木々がちぎれ倒れる音がします。距離は遠めですが、それでも聞こえることからかなりの規模と推測できます」
「そうですわね……武装の噴射で木々の上まで飛べます?」
「ならばそこで[調査/サバイバル]の判定をお願いします」
「では私が代表ですわね。テイトレからは勿論直接支援とレンタルをもらうとして、間接支援はどちらからもらいましょう……」
「俺からでいいか?」
「フクトレ。ちなみにどうしてでしょう」
「ハンターライン3達成のAPが欲しい。多分俺のAPクッソすくねぇ」
「一人だけ一桁だもんね」
「わかりましたわ。では専門能力で+2、支援で+3ですわね。それっ」コロコロ
[3][1][4] → 8 + 5 = 13 / 目標値11
「成功、ですわね」
「うーん、+5もらってもクリらないのかぁ」
「期待値でクリる筈なんだがな」
「うるさいですわよ」
34DK4CHTRPG④4/921/11/14(日) 23:02:58
「ではマクトレさんが木々の上まで出ると、山の奥地の上で巨大な何かが飛んでいるのを目にします。直下の荒れようからその場所から飛び立ったものと見ていいでしょう。遠くて詳細は分かりませんが、何かをぽろぽろと落とし、その落下地点がキラキラと光っています」
「え?空飛ぶの?」
「飛行するコロッサルも割とメジャーです。さて、飛行物体───ほぼ間違いなくコロッサルであろうそれは貴方達の方……正確にはベースの方を向き、再び木々の中に姿を消していきます。そう遠くない山の上を飛んでいたということで、ベースでもその様子は確認できてしまいますね」
「GM、ハンターラインがあるってことは参加してなくても会話することもできるんだよな」
「はい。好きなタイミングで割り込めますよ。イベントを阻害しない程度に、かつきちんと共有しないと場面の詳細は知りえませんが」
「それでいい、支援も飛ばしたしな。『<おい、ベースでもコロッサルの確認が出来ちまった。そっちは無事か?>』」
「『<ええ、無事ですしこちらでも確認できていますわ。私たちからでも遠いのでよく見えませんけれど。ただし間違いなく進行方向はベースですわね>』」
「『<本格的に迎撃に動き出さなきゃな……まだ確認はしてないが今頃ベースの住民中に知れ渡っちまってるだろう>』」
「まあ遠くてもデカイのが飛んでるならコロッサルだろうし混乱を加速させないためにも正しい情報を流す必要はあるだろうしなー」
「『<わかりましたわ。一度そちらに戻りますわ>』と発して下に戻ってきます」
「じゃあそのマクトレに話そうか。『やっぱり?』」
「『ええ、残念ながら。さて、戻って準備を進めましょう』」
「『……ベースの人たちは心配だろうね』」
「『ええ。そしてそれを晴らすのは御姉様の役割ですわ』」
「『……そうだね。俺がベースのリーダーなんだ。やってみせるさ』シーン切りまーす」
35DK4CHTRPG④5/921/11/14(日) 23:03:35
「では支援を行ったハンターは各自ハンターラインの強化を。報酬のAP最大値+1は全員どうぞ。あとロックイベントが解除されます。「コロッサルの居場所」と「混乱の鎮静」です」
「あちゃー、やっぱりすったもんだが起きちゃうか」
「やっぱこのイベントはテイトレにさせたいな」
「じゃあ次ピリオドですからイベント配置の変更はなしですわね」
「続いてどちらからやります?
「じゃあその流れで目撃情報の俺かな」
36DK4CHTRPG④5/921/11/14(日) 23:03:57
「ではブラトレさんのイベントです。ブラトレさんは調査隊によるコロッサルの目撃情報の詳細を聞くべく、ベース職員の案内でリラクゼーションルームを訪れていました」
「え?医務室とかじゃなくて?」
「彼らはハンターだったので傷も自分で治せました。しかし急速な自己回復は自らの人間性を削る行為でもあり、そもそも人間性が薄れ過ぎるとそれを取り戻すための日常の交流さえ困難になります。そのような事態に備え、RIACTが設置しているのがリラクゼーションルーム。1日寝ると人間性が完全に元に戻りますが、原理は明かされていません」
「えっこわ……」
「多分嫌でも利用する羽目になりますよ。テイトレさんとか」
「何かすっごい捨て身のスキルが見えるんですのよね」
「しかもこれ初っ端に撃つものっぽいしね」
「ルームに入っていた中から、比較的軽傷だった隊員の話が聞けることとなりましたが、ルームの機能云々で少し時間がかかっていました。しばらく待ちぼうけていると、扉が開いて一人の女性が出てきました」
「あれ?彼らって言ってたけど……」
「そりゃお前、つまるところ元男だったんだろ……」
「あぁ……」
「『すまない、待たせてしまったようだな』そう言う隊員には傷一つありませんが、異様なプレッシャーを放っています。ハンターである貴方にはそれが人間性が失われてることによる影響だとわかります」
「まあそれが分かってるなら普通に対応するわな。『いんや、大丈夫だ。早速で悪いけれど、コロッサルを見たときの話を教えてくれるか?』」
「『ああ。俺たちはマテリアルハンターだからエネルギー反応には敏感なんだ。休眠状態から目覚めたアイツの存在を感知できたし、その後の攻撃からも何とか退避できた。さらに不幸中の幸いと言っちゃなんだが、丁度目覚めるところにいたからメインコアの位置も特定できたんだ。といっても何せ今まで報告も無かったタイプだったからな……それに奇妙な形状をしていたから伝えられる自信がな……』」
「『とりあえず話してみてくれないか?なんかこう、図とかでも構わんから』」
「アホの発案だ」
「うるへー」
37DK4CHTRPG④7/921/11/14(日) 23:04:29
「じゃあ理解できるか、図を用意する場合はちゃんと即して表せるか[日常/芸術・芸能]判定です。ただし、そこにコロッサル発見の報が入ってきて、ハンターラインで目撃情報を教えられます。達成値+2です」
「ああ、さっきの偵察の成功が条件か」
「『<なんか飛んでた>』」
「情報量!!!」
「支援どうする?連絡飛ばしたのはテイトレだが」
「私はなんかこれ既にAPたっぷたぷな気もしますのでテイトレでいいと思いますわよ」
「じゃあ後は俺が日常追加でレンタルさせて間接支援か」
「これで条件達成の+2、専門能力+2、支援で+2の計+6か。まあ大丈夫だろ」コロコロ
[2][4][1] → 7 + 6 = 13 / 目標値11
「何なの?お前らもしかして2d振ってる?」
「いや……なんかすっげーふわふわした情報しかもらえなかったし……」
「…まあ成功だしいいでしょ」
「では何とか分かるレベルまで図を描くことに成功しました。データ的にはメインコア───破壊すればコロッサルを倒すことができるコアの位置とサブコア───メインコアを補助している全部壊すといいことがあるコアの位置が分かりました。ただし説明の都合上決戦フェイズ開始時に開示します」
「え?ここで抜かなかったらどこ攻撃すればいいか分からなかったの?」
「はい。元々メインコアは非公開情報ですから。コロッサルによって頭にあったり胴体にあったり様々ですからね」
「よかったー……『…うし、大体わかったわ。サンキューな、あとは俺たちコロッサルハンターに任せてくれ』」
「『ああ。このベースを頼む』」
「じゃあシーン切るぞー」
38DK4CHTRPG④8/921/11/14(日) 23:04:50
「では最後にフクトレさんのイベントですね」
「あーいや待ってくれ。これ支援の関係上俺は動物の処理の方に言った方がよさそうだからそっち行くわ」
「え?能力はレンタルできるからどこでもいいんじゃないか?」
「いや、次のピリオドでテイトレに混乱鎮静にいかせるなら能力レンタルの都合上俺とブラトレが支援することになる。そして次ピリオドで全員のハンターラインを3にするには俺とテイトレペアでテイトレが代表、マクトレとブラトレペアでブラトレが代表として動く必要がある。となると先にここでブラトレとのHLを3にしておきたいから、俺の持ってない専門能力のレンタルの為にテイトレマクトレから支援をもらうことになる[復興]が必要なイベントに行くのは得策じゃねぇ」
「メッタメタな動きですわね」
「ゲーム的には『実際にコロッサルが動き出してるならその影響でベースに来かねない動物を対処しにいく方が優先度が高い』っつー言い訳ができる。」
「まーじゃあそれで行くか」
「わかりました。では動物の方で処理しますね。フクトレさんは諸々のサポートを終えた後、RIACTからコロッサルの活性化の影響で野生動物が凶暴化している可能性があるとして、ZOWの境界部分を見回っています」
「『うし、にゃーさん。頼むぞ』」
「威圧感がすげぇのよ」
「そんぐらいの方が動物も寄ってこねぇだろ」
「ところがそうもいきません。複数個所の茂みが音を立てます」
「『団体さんか。生憎こっちも対多数には向いてるんでな』札を広げて御神籤ランチャーを構える」
「なんかお前世界観違くね?」
「仕組みが分かればクラフトできるって言ってたろ?だったらアレンジも自由だろうが」
「では複数の野生動物が襲い掛かってきます。猪、狼、中にはここまで降りてくるのは珍しい熊や人をあまり襲わない鹿まで。連携は無く、ただ逃げた先に貴方がいた、という感じです」
「『同情はするわ。けど、こっから先に行かせるわけにもいかねぇよ!』」
39DK4CHTRPG④9/921/11/14(日) 23:06:04
「では[準備/狩猟]判定をどうぞ」
「うし、ブラトレとマクトレ、支援をくれ。それで両方ハンターライン3になるだろ」
「ほいきた。あとは俺の[準備/トレーニング]貸すわ」
「ん。そこんとこ反映して周辺の被害が出ないよう訓練した成果で危険物バラ撒きますかね」
「コイツヤベぇですわ」
「ヤベぇとか言われたから爆発物ばら撒くときにちょっと楽しそうな顔することにするわ」コロコロ
「あいつヤベぇよ」
[4][3][5] → 12 + 4 = 16 / クリティカル
「こわい」
「まーこれでも戦闘時に20以上は出なさそうなんだがな」
「あっ、クリティカルが出たので復興ポイントが+1されます」
「この状況からどういう理屈だよ」
「さぁ……。とりあえず爆音と共に一瞬辺りが光に包まれ、煙が晴れた後には動物たちが倒れています。そうですね……クリティカルの描写としては制御の妙か、周囲の地形や木々には傷一つついていません。精々煤けているぐらいでしょうか」
「『ッフー。出力調整しながらっていうのはやっぱ骨が折れるな。ま、もうすぐ気にせずにぶっぱなせる環境にやっとこさありつけるんだ。…どうせやるんなら精々楽しませてもらうぞ』後はGMにシーン渡すぞ」
「やばぁ」
「では、加工できるものはベースに持ち帰り食肉として、それ以外や超過しそうな分はその場でマテリアライズします。その中で上等なマテリアルは今回の討伐でも役に立つことでしょう。RM3個獲得です」
「俺のジョギング3回分か」
「価値観が狂いますわね」
「さて、第1ピリオドは終了ですね。では第2ピリオドに入っていきたいと思います」
続く
≫52二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:21:04
選抜レースにて
「おいお前!すげえいい走りじゃねえか!俺と契約してメイクデビューしてみねえか?」
「ターボと?いいよ!ターボの逃げを見せてあげるから見てて!」
「おう!よろしくなターボ!」
『ラジオNIKKEI賞、勝者はツインターボです!』
「よくやったなあターボ!すげえ走りだったぜ!次はどのレースで走りてえんだ?」
「ターボねターボね!G1出たい!」
「よっしゃ!じゃあ次の有馬出ようぜ!」
『1着〇〇〜、ツインターボは14着です。』
「ぐやじぃ…」
「かぁー惜しかったなターボ!次頑張ろうぜ次!」
『ツインターボ10着!』『6着!』『6着!』『8着!』
「うぅ〜次は勝つもん!絶対勝ってやるんだ!」
「おうよ!心配すんなターボ!お前を信じる俺を信じろ!次の七夕記念とオールカマーは絶対勝たせてやる!約束だぜターボ!」
七夕杯の前日
「よし!ターボの調子もいい感じだし明日はきっと勝てる!早く帰って明日に備えるとすっかあ!…ん?なんで信号が赤なのに子供が居んだ…?おい!危ねえぞ!」
キキーッドンッ
「クソ…まだだ、まだ逝く訳にゃいかねぇ…アイツに伝えねぇと…」
「ふふ…今日の大根もいい感じだ…む、タボトレから電話か」
『やあタボトレ。どうかしたのかい?』
『よお…ムントレ…ちょっと頼みを聞いてくんねぇか…』
『…大丈夫かい?只事じゃないようだが』
『んな事今はいい…それより俺に代わってターボの事を頼まれてくれねぇか…頼む。』
『分かった。他に何か彼女に言っておきたい事はないかい?』
『すまねぇ…アイツには伝言を用意しといたから今送る…伝えてくれ。じゃあな…』ピッ
「……タボトレ」
53二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:21:47
七夕杯当日
「えっ!アニキが事故に!?大丈夫なの!?」
「ああツインターボ。命に別状はない。でもまだ目を覚まさないそうだ。彼から伝言を預かってるから聞いてくれないか?」
「伝言?」
「ああ。レースまでまだ少しあるし聞いてやってほしい。」
『よおターボ。すまねえ、悪いが俺はちょっと行けねぇみてえだ。これからは俺の信じるお前じゃなく、お前の信じるお前を信じろ!お前ならきっと出来る!あばよ…ターボ』
「ターボの信じるターボを…?」
「ああ。君ならきっと出来るさ。さあ、彼との約束、果たしてやろうじゃないか!」
「もちろん!絶対勝ってやるんだ!」
───────────────────
んん?なんだあここは?あの世ってやつか?
≪貴方は担当の子に相応しいと思いますか?≫
ああ?誰だ?何言ってやがる?
≪馬鹿なことを…無理して伝言したりしなければそこまで悪化する事もなかったかもしれないのに≫
そうだな…バカだったかもしれねえ。それでもアイツには言う事があったんだ
≪自分を省みれないのですか?あの子が悲しんだとしても?≫
…アイツは勝てたろ?もう心配いらねえ。こんなバカな俺よりももっといいトレーナーが…
≪本当に?≫
…な訳あるかよ!もっとアイツの走りを見てえ!約束も果たさなきゃいけねぇんだ!
死んだだけで諦めたりしたら笑われちまうぜ!
≪ふふ、ならもう一度チャンスをあげましょう。時間はかかりますが次のレースまでには目が醒めるでしょう。では、おやすみなさい≫
何…の事…
───────────────────
54二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:22:14
病院
「う、うーん、…ハッ!」
「目覚めたようだねタボトレ」
「ああ?誰だお前は」
「ムントレさ。色々あってウマ娘になったんだ。それよりほら、今日の新聞」
「ウマ娘だあ?何言って…新聞?」ペラ
「オールカマー…二か月も経ってんのか!?…ターボ!!」
「約束したんだろう?必ず勝つって」
「おう!こうしちゃいられねえ!さっさと行かねえと!」
「ああ。早速行こう、と言いたいところだが…」
「ああ?なんだよ勿体ぶって…ん?お前そんな背高かったか?」
「ほら、鏡を見るといい。今の君は小さなウマ娘だ」
「何ぃ!?縮んじまったのかよ俺!」
「そうとも。今学園で流行っているウマ娘化さ。…その姿で彼女と会う覚悟はあるかい?」
「あったりめえよ!俺は俺だ!いいからさっさと行くぞ!てかここどこだよ!」
「変わりないようで何より。この病院の屋上に知り合いのヘリを呼んであるからそれで行ってくれ。あと服だが君の着てたマントはあるが...前のような格好だと流石に上半身裸はまずい。この際水着でもいいから着るんだ」
「仕方ねえか…すまねえなムントレ!行ってくるわ!」
「ああ。行ってくるといい…彼女には君が必要だ」
屋上
「おう来たなセカンドターボ!このゴルシちゃん号で飛ばすからしっかりつかまってろよ!」
「お前もしかしてゴルトレかよ!?まあ頼んだぜ!」
55二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:22:29
レース場
「よし、間に合ったな…!」
『ツインターボだけが!ツインターボだけが4コーナーのカーブに入ってきました!』
「ターボ!!!」
『ツインターボが200の標識を切った!』
「いっけえぇ!!!ターボ!!!」
『ライスシャワーこれはもう無理!…11番ツインターボ!見事に決めたぞ逃亡者ツインターボ!』
「見たかアニキ…!ターボ勝ったぞお…!」
「おう!!見てたぞターボ!!!よくやったなあ!!!」
「え…?」
「よおターボ」
「え?…もしかしてアニキなの?」
「おう!タボトレ様とは俺のことよ!いつの間にか背ぇ越されちまったな!はっはっは!…すまねえ。すっかり遅れちまったな」
「大丈夫なのアニキ!ターボ心配したんだよ!」
「おう!もう大丈夫だ!それよりなんでウマ娘になったのに全く驚いてねぇんだ?」
「だってウマ娘になったトレーナーいっぱい居るんだよー。今更驚いたりしないもん!」
「マジで!?」
終
≫108邪龍ぐるみ降誕21/11/14(日) 23:55:13
吾こそは邪龍・亜光鎌獅子斎。
同胞であるカマライゴンと同胞もどきのミニメカ、双方の現況を知るべく吾が打って出ることとした。
あれらの実力を侮るわけでは決してないが、しかしこうも連絡がなくば是非もなし。
吾が碧き雷をもて、すべてを平伏せしめよう。いざ! トレセンへ!
……さて。こうしてやってきたは良いが、吾にとってここは文字通り、未知の領域。
先に潜伏しているであろう、あれらと合流することこそが優先事項であろう。
……む。遠方より微かに聞こえるはあれらの声か? どこか覇気がないように感じるが。
兎も角、向かい確かめねばなるまい。
メカ……メカ…… オイタワシヤ メカウエ……
──これ、は……何がどうなっているのだ。
「ん、その声は……亜光か。久しいな」
──カマライゴン。汝らが連絡を絶ち幾星霜、気の長い吾とて待つにも限度があるぞ。
「すまない……俺は上手く取り入って秘密裏に活動している。連絡できずにいたのはその為だ」
──そうか。して、あそこで目の光を失ったまま、おくるみに包まれているのがもしや……。
「……ああ。ミニメカだ。アイツは方々でエラい目に遭い、ここでも……ウウッ、あんな姿に」
──汝らも、苦労しているのだな……っ。部屋の主らが戻ってきたか。
「ただいま、と。ごめんねクリーク、僕らの買い出しに付き合って貰って」
「いいえ~。2人より3人の方が沢山荷物が持てますし、楽しいですから~!」
「そう言って貰えると嬉しいよ! 僕、お茶淹れるね……って、あれ?」
「どうしましたか? ……うん? このぬいぐるみ、見覚えがないですが」
「私もです~。うーん、カマライゴンちゃんにどことなく似ているような……」
「確かに……あ! もしかして、お友達でしょうか!」
「もしくは家族? 何にせよ、暫く置いておきましょうか。クリークもそれでいいかな?」
「ええ! 大歓迎です~!」
「ところでこの新しい子、なんて名前なんだろう」ワガナハ……
じゃりゅう・あこうかまじしさい が なかまになった!
≫121二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 00:03:52
「……ルドルフ、なんか増えてるね」
「……ああ……」オヒサー ヒサシブリダナ
「でももふもふしてるよ、ルドルフ」
「……もふもふは不審物をそのままにしておく理由にはならないと思うが……」ソヤゾー、シリアイダケド シリアイッテカドウゾクダナ
「……ルドルフ、お願い……ちゃんと手入れもするからさ……」
「……安全性を確かめてから、だな」ヨカッタネー タスカッタ
「……ん?」クモラセルメ「神威」ギャー
「ルドルフ、何かした?」
「何も?」
≫130二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 00:07:38
『マベトレのマベマベマーベラス☆-忘却曲線-』
トレーナーTVのみているみんなー今日もマーベラス☆
今日は予告と違ってちょっと特別編ー
今回は忘却曲線について解説していくよー☆
忘却曲線とはドイツ心理学者ヘルマン・エビングハウスさんが発見した理論で、どれくらい記憶が持つのか実験したマーベラスなんだー
それによると記憶力は一定ではなくて指数的に一気に失われるんだってー☆
どれくらいかというと20分でなんと半分のことが忘れちゃうんだ!
20分で忘れちゃうなんて皆も一期一会のマーベラス☆を大事にしないといけないねー
でも、その後は緩やかになって1時間には44%、1日後には34%、1ヶ月後には21%というようになっていくんだってー☆
ここからが重要だけど、復習・覚え直しをした場合はその後の曲線は緩やかになるらしうんだー☆
このことから復習するタイミングは覚えたて直後、1時間後、1週間後、1ヶ月後と最初のうちは集中的に、その後は間隔をおいて定期的するといいんだってねー☆
ちなみに、エビングハウスさんはエビングハウス錯視という同じ大きさの円でも周りにあるもので違って見える錯視を発見した人でもあるんだー☆
自分は変わってないのに周囲が違うだけで変わって見えるのはマーベラス☆だよねー
今回のプレゼントキーワードはこちら「☆の回数」じゃあみんなまたねーマーベラス☆
≫136パルトレSS21/11/15(月) 00:13:50
家の名前というのは、時に呪いにもなる
古くからトレーナーを輩出してきた欧州の名門
私はそんな家の生まれだ
幼い頃から英才教育を施されてきた
将来世界を席巻するトレーナー・ウマ娘になるために
でも、私は他の家族よりも出来が悪かったらしい
筆記も実技も基準ギリギリで、覚えが悪い
所謂落ちこぼれという奴だ
そんなこんなで、私への風当たりは強い
家の汚点、面汚し――そういう陰口も叩かれていた
そんな息の詰まる生活を送っていたある日、数少ない私の味方だった母がある提案をしてきた
母の故郷である日本に行き、そこでトレーナーになるというものだ
確かに極東であれば、うちの家の威光はそこまで強くない。今の環境からも抜け出せる
それに、母の生まれ育った日本という国に興味があった
私は単身での日本留学について当主である父に直談判した
そして、渋る父の返答を待たず家を出た
家のお歴々が激怒していたのはこの際どうでもよかった
妹が行かないでと泣いていたが、悪いことをしたなと思う
日本に渡った私は、母の実家にお世話になることになった
母方の祖父と祖母は暖かく迎え入れてくれた
最低限のお金は仕送りしてもらえるようだった、家の品格を落とさないようにという名目だったが
日本のトレセンでの留学は、最初あまり良いものでは無かった
やはりというか、私を名門の娘として見る人が大多数だ
畏怖だったり、羨望だったり様々だが、私を私個人として見ていない
それが堪らなく悔しかった
母の知己である先代理事長の娘や理事長秘書の方はそうでもなかったが、良い出会いはなかった
137パルトレSS21/11/15(月) 00:14:29
用意された自室のベッドで毛布に包まりながら考える
はたして、この選択は合っているのだろうか
昔亡くなった曾祖母が言っていたことを思い出す
『自分を信じることから道は開ける。ことの善し悪しは、全てが終ってみなければわからないさ。』
「ええ、そうよねファラリスおばあ様…」
悪い考えは忘れ去ってしまおう
そう自分に言い聞かせ、その日は眠りについた
~~~~~~~~~~
ある日、担当を見つけるために選抜レースに参加した時のことだ
トレーナーへとアピールするウマ娘の中で、ただ1人モノが違うと言えるウマ娘がいた
名を、シーキングザパールという
現時点でも世代では上位と思える脚は、多くのトレーナーの目に留まる
多くのトレーナーからの勧誘を断り続ける彼女の方へ歩いていくと、人だかりが津波のように引いた
ああ、やはりそういう扱いなのか
そんな事を思いながら、彼女に話しかけた
「ちょっといいでしょうか」
「あっ、やっと来たのね」
待ちわびていたとばかりにニヤリと笑うパール。それは、私を待っていたという事か
今まで話してきたウマ娘は、私を名家の娘として見ていた。この子もそういう手合なのかと訝しむ
138パルトレSS21/11/15(月) 00:15:04
「うん!見込んでた通り、マーベラスな人ね♪」
パールは私をじろじろと観察した後、私の手を掴み人通りのない場所へと引っ張っていった
「え!?ちょ、ちょっと貴女!!!??」
成されるままに校舎裏へとやってきた私達
私の腕を放すと、パールは本題を切り出した
「貴女、私のトレーナーにならない?」
つまり、これはプロポーズだ
この時点で不信感を持っていた私は、彼女に問うた
どうして私を選んだのか。私の血筋がそうさせたのか
彼女の意図を図りかねていたからだ
「貴女からはファビュラスは感じがしたの」
「はい?」
帰ってきた返答は、突拍子の無いものだった
曰く、私の家の事は知っていたが、つまらなそうな人なら断念するつもりだったと
どうやらパールは私自身を見て判断したらしい
「貴女の目、何か勝利に飢えている感じがしたの」
そう語る彼女の目からも、何か決意の様なものを感じられた
139パルトレSS21/11/15(月) 00:17:18
「――――分かりました。トレーナー契約を結びましょう。」
「あら、オッケーなの?」
「貴女は信用できると判断したまでです。ただし、私のやり方は生半可じゃないので、覚悟するように」
「望むところよ」
こうして、最初の契約はなされた
私とパールの成り上がりの旅が始まる
~~~~~~~~~~
以上です。やっぱ数裁くのはきついですね。何人も面倒を見れるものでは無いと反省
でも、SSのネタは思いつかないのに、設定の妄想だけは次々湧いてくるんですよね…どうしたものやら
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part449【TSトレ】
≫18二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 07:25:32
トーレス艦長《なんだこの奇怪な置物は》
クモラセルメカー
トーレス艦長《それは徹底して合理的に行われる》
トニカククモラセルメカー
トーレス艦長《……わからんのか?》
クモラセルメカー?
トーレス艦長《汚しやがって》
クモラセグシャッ
トーレス艦長《お前はは土足で上がりやがった!! 真っ当なロジックで完っ璧に整えた俺の曇らせの上に!!》
クモラセ……ル……メカ……
トーレス艦長《……こいつに次の展開を手伝わせよう。曇らせる計画の余興としてはおもしろい》
≫33侘助21/11/15(月) 07:57:06
某月某日。
いつの日か地へ落ちた紅葉は、
またひとつ色を変えていく。
一つ太陽が登る度、冬が、空気が、澄んでいく。
まあなんとも、ここまで寒いと仕事も捗らず
外の景色を、ただぼうっと見つめてしまう。
35侘助21/11/15(月) 07:57:48
「なーにしてるの」
右の肩に、確かな熱が置かれる。
柔らかな生命の感触。花のような甘い香り。
間違いない。間違えるハズもない。
オレの彼女だと、光の速さで理解する。
「おう、ドーベル。今日も早いな」
そう言って、彼女の腰まで届く
まるで絹とさえ思えるような黒髪を
自身の右手で梳いていく。
「…………///」
どことなく嬉しそうなその顔は
オレの心をココアのように
深く、甘く、暖かく、満たしていく。
「ねえ、にいさん」
すりすりと、首に頬を擦り寄せてくるドーベル。
肌がきれいな女性になっておいて良かったと
柄にもなく頬が緩んでしまう。
「やっぱりアタシ、にいさんのその顔が一番好き」
「……なんだよ、突然」
顔を埋めているためドーベルに
オレの顔は見えないハズなのだが。
「にいさんは笑ってる時が一番かわいいと思うの」
「最近はよく笑うようになったと思うぞ。
皆、オレみたいなヤツと仲良くしてくれるし」
36侘助21/11/15(月) 07:58:14
少し前、
『変わったね』と、あるトレーナーに言われた。
今思えば、そうかもしれない。
ずっと、いっぱいいっぱいだった。
自分のことばっかりで、子供だった。
散々周りに迷惑をかけてしまったのに
みんなオレを『仲間』だと言ってくれる。
それが、途方もなく嬉しかった。
皆がオレを、笑えるようにしてくれたんだ。
「にいさんが優しく笑ってるの、好き」
「…………」
「いっつも他の人にいじられて
子供みたいに元気に笑ってるのも、好き」
「子供みたいは余計だろうが」
少しむっとしたのでドーベルの髪を梳く
右手を止める。
ピコピコと耳としっぽが揺れるドーベル。
『もっとしてよ』と、無意識にも動いてしまった事に気づいたのか、オレの首元への熱が高まる。
「慈愛、か」
誰かを愛する気持ち。守りたいと願う心。
愛にも種類があるように、
笑顔にもたくさん種類があるようだ。
37侘助21/11/15(月) 07:58:39
「……暖かいな、ドーベル」
「うん」
オレもドーベルにくっつく。
人肌というのはせいぜい37度しかないのに、
どうしてこんなにも、暖かいのか。
「……そっか、そういうことか」
「なにが分かったの?」
「ドーベルが暖かい理由。」
「なにそれ」
二人で顔を合わせ、微笑む。
びゅうびゅうと吹く秋風の音が邪魔なので
オレの右耳とドーベルの左耳を合わせる。
耳を通して交換される二人の体温。
とくん、とくん、と一定のリズムを刻む
二人の心音が、混ざりあって溶けていく。
「でもその顔はアタシ以外に見せちゃダメよ」
ムスッと頬を膨らます彼女。
そんなの、分かりきっているのに。
───────「承知しました、お嬢様」
≫45二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 08:07:07
トレセン学園の資料室にて
「ごめんね、手伝わせちゃって。」
「おう!気にしてないさサトトレ!」
車椅子に乗ったサトトレと脚立に乗って本棚を探るタボトレ(アニキ)。サトトレが探し物をするのにタボトレに手伝ってもらってたのだ。
「『ウマ娘の強靭な肉体についての概論』…これじゃねえな?」
「うん、違うかな。でもそれは結構有名な論文だったはずだよ。」
「なるほどな…俺も後で読んでおくべきだなこれは!」
「そんなに長くはないから合間にでも読むと良いと思うかな。」
「ああ、そうするぜ。…あとは『骨折と走行能力の低下に関わる研究』…?」
「それだタボトレ。見つけてくれてありがとう。」
「そいつはよかったぜ!だが、どうしてそれを見たかったんだ?」
「…ちょっと確認したいことがあってね、僕は足を折って引退したけど、今の僕だとどうなるのか照らし合わせてみようかなって。」
その言葉を聞いたタボトレは少しムッとした顔でサトトレに問いかける。
「サトトレ、もしかして走れないのがつらいのか!?」
「ううん、そうじゃないよ。あのターフにもう僕は未練なんてないから。」
「なら…!」
「だから単純なデータ取りと証明だよ。壊れてもう走れないけど、僕のその結果は後に残る。僕は残したそれを役立てほしいんだ。」
「走った姿は消えたって、足跡は残る。足跡は道を作って、次の世代がそこを駆け抜けてより遠くへといけるんだ。」
「…」
「僕達は前の世代へのチャレンジャーで、同時に次の世代のディフェンダーでもあるんだ。そうやって歴史を積み重ねてきてるんだよ。」
「勿論、簡単に超えられる様にはしないよ。だけど、いつかはどんな壁だって乗り超えていける。僕はそう信じてるんだ。」
「…あ〜、やめだやめ!難しい話はついていくのが大変だぜ!要するに、俺たちはどんどん前に進んでけばいいんだろう?」
「…そうだよ。だからタボトレは今までどおりしたら良いと思うかな。」
「おう!これからも俺は突き進むつもりだからな!もちろん皆も連れて行ってやるぜ!」
「ふふ、タボトレらしいなぁ…」
ーーーその後も、二人の小さな人影は嬉しそうに話しあっていたのだった。
≫65二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 08:44:57
ポッキーゲーム グルトレ
「11月11日は終わったぞ」
「そうだけど…いいじゃん、しよ?」
ふたりきりのトレーナー室のソファーの上。赤い箱を片手に私はグルーヴにポッキーゲームの提案をした。食べさせ合いはするけど、こういったひとつの食べ物をふたりで同時に食べることはしていなかった。馴染みのある11月11日は過ぎてしまったが、私たちにはそんなの関係ない。いつだって、そうしていい時間はふたりで素敵な時間を過ごす。そういうものだ。
「ねぇ、チョコの方グルーヴにあげるから…だめ?」
「別にチョコが欲しいわけじゃない……まったく、付き合ってやる」
「ふふ~ん、グルーヴだいすき!」
「ええい、離れろ。このたわけが」
抱き着く私にそう悪態をつくが、抵抗はしない。これはあくまで彼女の照れ隠しだ。私もそれを重々知っているので離したくないのだが、くっついたままではポッキーゲームができないので渋々離れることにした。
「…珍しく素直に離れるのだな」
「もっとくっついていて欲しかった?もう~ポッキーゲーム終わったら時間の限りくっついたげるから」
「う、うるさい、ポッキーゲームするんだろ!」
どこか後ろ髪を引かれているような言い方をする彼女が愛おしい。私は高揚した気持ちになり、鼻歌交じりに赤い箱を開封する。もちろん彼女の持ち歌である。ふたつ入っている袋のうち、ひとつを開封する。チョコレートの甘い香りが周囲に漂う。
66二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 08:45:24
「うん、しよ。ポッキーゲーム!」
「途中で折ったら───」
「あり得ないよ!私絶対にポッキー食べてグルーヴとキスするんだから」
「自信があるんだな。それだけあるなら、折ったら何でもひとつ言うことを聞いてもらおう。問題ないな?」
「もちろん、何でもしてあげる!」
そんな罰ゲームなんてなくとも、私はグルーヴの言うことなら何でも聞いちゃうのになぁと思いつつも声にはしなかった。袋から1本取り出し、ビスケットの方を咥え、彼女の方へと前のめりになる。キスとは少し違ったドキドキがある。垂れている髪を少しかき上げながら、彼女がチョコレートの方を咥える。彼女と見つめ合いながら、互いに咥えたポッキーの距離はいつもと変わらない近さだ。ひとくち、またひとくちとポッキーを口にしていく。甘いチョコレートと少しずつ近づいていく彼女との距離がもどかしい。ひとくち、またひとくちと食べ合い、唇が重なる。いつもしているキスよりもずっともどかしくて甘い。チョコレートが溶け、甘さと愛おしさでいっぱいのキスをもっとしていたくて、彼女の身体へと腕を回す。もっと、ずっと。彼女が返すように私の身体へ腕を回し、尾が自然と絡み合う。息が苦しくなり、名残惜しくも唇を離す。
「…ね!」
ほんのりと頬を染め、そっぽ向いた彼女に私はまたポッキーを咥えながら抱き着いて次を誘う。ポッキーゲームはその1袋がなくなるまで何度もしたが、一度たりとも途中で折れることはなく、私は彼女と唇を重ねた。ご褒美として、私は彼女にひとつだけ何でも言うことを聞くよと提案した。
「今日は泊まらせろ」
「うん、もちろんだよ!」
この後、私は彼女と一緒に帰宅。料理や食事、お風呂を一緒にし、彼女とベッドで眠りについた。
≫90GMはロブトレさんです21/11/15(月) 10:25:55
またひとつ、都市が滅んだのです。
ええ、『また』なのです。こちらは《秩序》と《混沌》の立会場、神々が賽を振るう四方世界なれば、何処ぞの都市が邪悪なるモノの手に落ちるなど日常茶飯事。竜の襲来、巨人の略奪、ダークエルフの陰謀、魔人の跳梁、それら全ては冒険の種に過ぎぬが故に。
という訳で冒険です。滅ぶのが日常であれば退治も日常、舞台上がりしは四本の角、いやさ四人の冒険者。在野最高峰の一団として知られるパーティ『トレーナーズ』は、廃都攻略に向かいます。
トイウカンジデヨロシイデショウカ?
ヨッシャ
ガンバロウ
~~~~~~
かくして。
地下水道にて異界の蜘蛛を押し潰し、廃都に蔓延る生ける屍/リビングデッドの方々を弔い、恐ろしい巨人の手から人質を救い出した冒険者の一行は、ついに首魁の元へと辿りつきました。
そこは、戦女神を祀る神殿だったのでしょう。街の中心で、憩いの場で、多くの市民が祈りを捧げていたのでしょう。街の名所、住まう者の誇りであった、神を讃える大神殿。
けれど、それは失われたのです。壁面に描かれた宗教画は汚泥に塗れ、見事な意匠の施された柱の数々は煤けて、女神像の背後に煌々と佇むステンドグラスは無残に砕かれて。
何より、戦女神を模したのであろう、見事な石造。彼女が掲げる剣の先には、かつてこの場所を治めていたのであろう、清廉なる大司教の亡骸が突き刺さっています。
誇り高く、立ち向かったのでしょう。市民を守るために、教えを示すために、大司教の使命を果たすために。その結果が、目の前にあります。衣服を裂かれ、心を砕かれ、あらゆる悪行をもって尊厳を凌辱された、ひとりの女性の末路がそこにあります。
それを見て、精神を崩すようなことはありません。この場に集うた冒険者は、この程度の惨状、幾度も乗り越えてきたのですから。
だからこそ、こう述べましょう。『あなた達は誇り高き聖職者への冒涜に対して、何か想いを抱いてもいいし、抱かなくてもいい』。
…スミマセンチョットキツイデスネ…
マアマア ソウイウセカイカンダカラ
ジッサイキツイ
91二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:28:09
冒険者がそれぞれに想いを抱いていた時のことです。
無人であったはずの神殿内に、風が巻き起こります。ろうそくの火は掻き消え、魔力がさざめき、妖精達が凶兆を叫びます。
嵐の向こう、本来であれば聖遺物が祀られていたのだろう祭壇の前に、ぬうっと影が立ちます。それは、人型の闇でした。全身を覆うローブに、頭巾。首に下げる《覚知神》の信徒を示すブローチ───気まぐれな神から邪悪な思想を埋め込まれた証。
この狂信者こそ、都市落としの首謀者。脳に冒涜的な知識をため込み、多くの災いを為した、混沌の輩です。
あなた達の『敵』が、苛立ったように声を震わせたのです。
「オノレ、浅マシイ《秩序》ノ尖兵ドモメ。
我ガ神ニ捧ゲシ儀式ノ邪魔ダテ、モハヤ許シヨウモナイ。
逃ガシハセヌシ、死モ許サヌ。
痛メツケ、犯シ尽クシ、生キ死ヌママニ苦シメタ後、魂ノ欠片マデ使イ潰シテクレヨウ」
「うるせえな」
92二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:28:57
さて。
狂信者の苛立ちが嵐であれば、その一言はまさに、轟雷のようでした。
湾刀を構える『鎧武者』が、剣気をもって意思を示します。
「なんか言うことあるか?」
「いや別に。早く済ませたい」
彼女の言葉に『占い師』が続き、『賢者』があっさり切り捨てます。
街の惨状───リビングデッドにされた市民の姿を思い返しているのでしょう、杖を握る力は強く、瞳には殺意が満ちています。
それに対し、まあ思うところがないでもない、という様子の占い師は、愛用の煙管を吹かせながら、淡々と言いました。
「まあなんだ。《秩序》に属する者として、お前に言えるのはひとつだけだな」
「『さっさとくたばりやがれ』ですわ」
ガチャン! と音を立てて『君主』が竜殺しの魔剣を抜きます。
頭目である彼女の戦闘態勢に応じて、他の三人も覚悟を決めることでしょう。
賢者が三つの冠を模した杖を構え、占い師が水晶玉を浮遊させ、鎧武者が鮫のように笑い、
───天井を破壊して、落下する巨躯。
轟音と共に降り立ち、狂信者の前に立ち塞がるそれは、一見して死霊騎士───デュラハンのようでした。
首がなく、鎧具足を纏っています。大きな剣を携えて、人形のように佇んでいます。
その鎧の意匠が、戦女神のものであることに、この場の全員が気づくでしょう。
かの大司教に、神官戦士の伴侶がいたことも。
クソがよ、という悪態は、誰の耳に入ることもなく、戦禍にまみれて掻き消えるでしょう。
クライマックスフェイズです。
93二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:30:13
「《巡り巡りて風なる我が神、かの者の道行きに、善き縁を誘いたまえ》」
「死霊術士と割れているなら対処は明瞭! 引き気味に時を稼ぎますわよ!」
「了解ッ……!」
占い師のエンチャントを皮切りにして、戦いが始まりました。
月光に濡れる神殿を、鎧武者が駆け抜けます。
東洋風の具足に施された意匠もさることながら、驚くべきはその俊敏さ!
重装を感じさせない疾駆は、鎧武者が一流の戦士であることを示しています。
相対するのは、首のない騎士。かつてこの場所で伴侶と共に戦い、敗れ、今は混沌の手に操られる尖兵。
往年の剣捌きは失われようとも、その気迫は変わらないのでしょう。鎧武者を迎え撃つべく、大上段より大剣を振り下ろします。
「させませんわ!」
その一撃を、魔剣が阻みます。
鎧武者が東洋であれば、こちらは西洋の出で立ち。騎士を思わせる白銀の鎧は君主/ロードの証であり、貴族の誇りです。
的確に打ち込まれた剣閃に軌道を逸らされた剛撃が、石畳の床を砕きます。破片が飛び散り、君主の頬を掠めていく最中、鎧武者は一息に間合いを詰めました。
「───シィッ」
下段から跳び上がるその一撃は、谷を駆ける飛燕を思わせる鮮やかさで、混沌の尖兵の肘部分に吸い込まれ───しかし、鎧に阻まれます。
鉄を撃つ、高い音が響きました。舞い散る火花が鎧武者の相貌を照らし、瞬きのうちに消えます。
そのかんばせ目掛けて、狂信者の悪意が放たれたのです。
94二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:31:32
「《黄泉への誘い、死霊の歓待、振り下ろすのは死神の鎌》!」
「《マグナ》……《レモナ》……《レスティンギトゥル》」
「……ナッ!?」
驚倒が、狂信者の口よりこぼれます。
君主に放たれた断頭の呪詛を、賢者が見逃すはずもなく。抗魔の術をもって悪意を跳ねのけた乙女が、見せつけるように鼻を鳴らします。
「この程度かよ」
「小娘ガッ……!!」
憤激する狂信者。しばらくの間、彼の標的は賢者に固定されるでしょう。スペルスリンガー(呪文遣い)同士、技の比べ合いになりそうです。
かくして戦場は二面に分かれることとなりました。
狂信者と魔術戦に興じる賢者と、混沌の尖兵を受け持つ君主、鎧武者の剣比べ。
実力は伯仲、いいえこちらが優勢。狂信者は賢者の手練手管に余裕を削られ、尖兵の刃は未だに後衛まで届いていません───
ウワッヤベエシクッタ
アッチョットヤバイカモ
「───ッ!!!」
「うぉッ……!?」
戦場が、動きます。
開幕のそれを彷彿とさせる、大上段の一撃。
大地を震わせる衝撃が、鎧武者を捉えたのです。
宙に浮く身体。剣捌きに燕を宿したとして、空を飛べる道理はなし。
無防備を晒す鎧武者に、容赦なく大剣が振るわれます。
咄嗟に間に入り防御した君主のお陰で、真っ二つは免れましたが、しかし前衛二人が遠くまで吹き飛ばされたのです。
95二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:32:37
一変する戦況。不利を悟り一筋の汗を流す賢者に対し、狂信者は叫喚を挙げました。
「亡者ヨ掛カレ、襲イ喰ライ散ラセ……!」
途端、暗がりが蠢きます。
あらかじめ、そこに待機させていたのでしょう。這い出る死人の数は七。前衛を失った後衛職に、ここぞとばかりに牙を剥きます。
加えて、
「───!」
猛進する、首のない騎士。
「ッ……《マグナ》《マヌス》《ファキオ》!」
紡がれる高速詠唱。顕現するのは不可視の力場。魔力の輝きが豪拳となり、騎士の突撃を受け止めます。
それはつまり、騎士の突撃に手一杯であったということ。
四方より迫る亡者の牙を、賢者は甘んじて受け入れ───
「やめろやめろ、帝王の妃に畏れ多い」
神助の風が、迷える魂を掬い上げたのです。
呪縛から解き放たれた骸が、元の静けさを取り戻します。狂信者の困惑が理解に達し、怒りに転じるよりも早く、占い師は語りかけたのです。
「人質の護送にリソースを吐いちまったんで、フクの補助がない分手間取らせちまいはしたがな。まあ、道具頼りの弊害ってことで許してくれよ」
占い師の本来の職業名は『操術士』。祝福、呪い、奇跡、星辰、激情を宿すアーティファクトの担い手。道具がなければ何も出来ないと標榜する彼女ですが、此度の戦いの主役は間違いなくこの娘なのです。
「まだ妃って決まった訳じゃっ……!」と頬を赤らめる賢者を他所に、占い師は複雑な手順で指を動かします。それに呼応するように、月明かりに照らされていた神殿に、ぽつぽつと燐光が生じていきます。
前衛ふたりの時間稼ぎも、賢者が狂信者の目を引き付けていたのも、この術のため。戦闘の最中、多くの品、多くの形代を用いて下準備を完了させた占い師が、勝利の天秤を決定的に傾けます。
96二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:34:02
「生憎、死霊を祓うのは慣れていてな。───《清廉なる順風、霊験なる神風を私が招く。星々は空、地には光、妄執、暗澹、あらゆる不浄は重みを失い、沈み、浮上する》」
「私ガ許スト思ッテイルノカ……!」
「それは大変失礼いたしました。では謝意として、竜殺しの魔剣をくれてやりますわ」
「───ガッ!?」
狂信者の唇より疾く、魔剣が飛来したのです。
背後からの不意打ちは君主の名に相応しくないでしょうか? いいえ、そんなことはありません。少なくとも、この一党を率いる少女にとっては。
「《───戸を閉じ、祈り、四方を満たせ。全てを祓え》」
詠唱が完成します。
かつての神殿に神気が満ちるのを感じるでしょう。舞い踊る突風はしかし柔らかく、冒険者の頬を慰撫し、勇気を与えます。
ガシャリ、という音がします。首のない騎士の魂は、ようやく伴侶の許へと旅立ったのです。
狂信者は自らの『詰み』を自覚します。何年もの月日をかけ、多くの危険を犯した計画が、崩れ落ちる音を聞いたことでしょう。
けれど、ここで諦めないのが狂信者たる由縁です。来る再起の機会を得るため、この場からいち早く逃げ去ろうとするでしょう。
であれば。
自らの『罪』を自覚しない愚か者に、太陽が裁きを下します。
「《遍くを照らす太陽よ》!!」
太陽の瞳を持つ鎧武者から逃れる術はなく。
掲げられる湾刀に、神気が宿ります。
「《その心臓より迸る稲妻で、我等の道を拓きたまえ》!!」
ステンドグラスが暁を帯びます。
極光は、迫り来る夜明けを思わせて。
「───《太陽万歳》!!!」
97二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:35:01
「───おめでとうございます、シナリオクリアです!」
「お疲れ様です」
「いやほんとお疲れ様です。思ったより長丁場になった」
「お疲れ様ですわ! オンセ三倍則もありますがロールプレイに熱を入れすぎましたわね……反省点ですわ。ロブトレもGMありがとうございました」
「いえいえ、そんな! とても楽しませてもらいましたよ」
「ダイス目死んだ時は焦ったけどなんとかなったな」
「体力点的にゾンビアタック耐えれるかわかんなかったからなぁ……やっぱりフクちゃん離脱させないで人質連れてきた方がよかったのかね」
「いやー……依頼内容に人質の救出がある以上、優先するべきだとは思うんだがな……」
「まあまあ、結果よければ全てヨシ! ってことでいいだろ?」
「それはそうですわね。戦闘では振るいませんでしたが、貴族らしく探索で活躍できたので満足ですわ!」
「間違いないな。賢者ムーヴ楽しかった」
「見せ場貰えて楽しかった。太陽万歳!」
「ふふ、ひとつの物語の行く末を見届けられて、心踊る一時でした」
「それではこれにて、解散!」
≫107二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:51:20
『たぼとれさんたちとぶらとれさん』
「ぐへぇ……短期間でまさか2人ともなるとは思わないじゃないか……」
「それに関しては……俺も同感だ」
「おう、気にしてたらどうしようもねえからな!」
食堂の一角、丸いテーブルを囲んでカラフルなウマ娘が3人。1人は水色、1人は赤毛、そしてもう1人はビビッドカラーの青色。ブラトレとツインターボ担当トレーナーの2人である。
タボトレの2人は年齢が近いのと、どちらもターボが「ターボのトレーナーだもん!」とのことで、明確にサブトレーナーが決まっていない珍しい例である。
「で、赤タボ。なんか困ったことでもあったか?」
「いや、其方の用意してくれた制度のおかげで何ともない。こう言ってしまうのは失礼かもしれないが、先人たちに感謝しよう」
「そりゃよかった、生徒会のサポートが手助けになったんなら十分よ。……で、そこの青タボ」
「おう!なんだ?」
「いや何でビキニ?マジでその格好で過ごすつもりなの?」
「え?なんか変か?」
「満場一致で変だと答えたいがターボが特に疑問に思ってないからな……俺の手では止められなかった」
「あーん?理事長には許可もらってるから良いだろ?」
「理事長……!?お仕事の疲れでついに気が……」
「おいたわしや理事長……こんな過激な格好を見せられて頭が……」
「おうおうおう!言ってくれるじゃねえかお二方!格好一つと言葉にしても、言い表わせぬは十人十色!俺の魂表すこの服!漢一貫、一丁あがりよ!」
「「お前は今は女性だろうが(!)」」
「赤タボ、ターボの教育に悪くねえのかこれ!?」
「でもかなり好評なんだよ……」
「世も末だな!まあもう理事長が良いって言ってしまったのであればもう何も言えねえ……」
「これこそが俺にとっての勝負服よ!文句があるなら勝負でもするかぁ?」
「まあ負けたとしてもやめるつもりはないだろうしな……赤タボ、頑張れ……」
「善処はする、期待はしないでくれ……」
「まあ、指導方法の相性がかなり似通ってるようなのは幸いだな」
「ああ、ターボには自由に、そして前向きに走ってもらいたいからな」
「おう、アイツが元気に走るのを支えるのが、俺たちの仕事だからな!」
「似たもの同士ってわけだな。格好はあまりにも似てないけど……」
ツインターボの隣に2人のトレーナーがいる事が、今後トレードマークとなっていくだろう。片方ビキニだけど。
≫160二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 11:49:04
タイキトレ「7の段?ふっ、任せてよ」
タイキ「電卓没収しますネー?」
タイキトレ「……答えは『沈黙』」
タイキ「ノーウ!トレーナーさんノーーーウ!!」
こうですか?わかります
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part450【TSトレ】
≫100二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 14:11:52
「はあ!?可愛い服を着て欲しいだぁ!?」
「うん!皆アニキの可愛い服見たいって!」
「俺がそんなの着てんのなんて誰が見てぇんだよ!?ぜってえ着ねえぞ!」
「やだやだ!ターボも見たいもん!見せてよアニキー!」
「ダメなもんはダメだ!」
「うぅー…」ウルウル
「……クッソ!わかったよチクショウめ!なんでも着てやるから持ってこいってんだ!」
「…え!アニキ着てくれるの!?」
「男に二言はねえ!さっさと見たい奴ら呼んでこいターボ!」
「わかったよアニキ!みんなー!アニキなんでも着てくれるって!!」
「えっ」
その後色々なトレーナーに着せ替え人形にされ恥ずかしさで真っ白に燃えつきるタボトレ(アニキ)であった。
うまぴょいうまぴょい
≫104二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 14:13:34
「う、うおぉおお!嫌だ!またメイド写真がばら撒かれた時みたいな気持ちを味わうのは嫌なんだ俺は!!」ダダダダ
「待ってマヤトレお兄ちゃん!マヤノちゃんがあんなに楽しそうに可愛い服を選んでくれてるんだよ?」タタタタ
「止めろマヤノの名前を出すな止まりたくなる!」
「なら足を止めたらマヤトレお兄ちゃん!くっ、なんで追い付けないの……!」
「ここはレース場じゃないってことだカレトレぇ!」ヒトピョイ
「え!?いくらなんでも窓から飛ぶのは駄目だよ!?」
「ふははこれがマヤノのパパさん仕込みの逃走術よ! でも冷静に考えたら後で始末書確定だなこれ!?」
「分かってるなら大人しく捕まって!もう既に学園内を全力疾走してるのは言い逃れ出来ないよトレーナーというか大人として! 大人だけに!」
「それはまじでそうなのでせめて逃げ切ったという結果だけでも得なければ……ならん!」
「うぐ……いっそこっちも全力で……いや流石に不味いというか物理的に無理……。こうなったら……!」ピー
「え、なに今の笛の音。いやな予感しかしないんだけど」
「お願いお姉ちゃんのファンの人達!マヤトレお兄ちゃんを捕まえて!!」カワイイカレンチャン!
「おま、お前それは色々な意味で駄目だろう!?カレンちゃんならこれから捕まえるから見ててねくらい言うぞ!?」
「うん!でも未熟なカワイイは受け入れることもまたカワイイ……!卑怯とは言うまいな……!」
「(カワイイ的規制)!お、おいカレンちゃんのファン達!?俺を捕まえても何の得にもならないしカレトレに従う意味もあんまり無いだろ!?」
「無駄でございます!私共はただ、お兄ちゃん様が何も考えず勝負根性だけでマヤトレを捕まえてカレン様とマヤノ様に差し出した挙句『ありがとうお兄ちゃん♪それで、ご褒美は何がいい?』『えっ』ってカレン様に揶揄われてる姿を見たいだけなのでございます!」
「えっ」
「今のでカレトレ止まったぞ!くっ、俺は負けないからな!見ててくれよマヤノ!」
「マヤノ様は負けることを望まれているのでは……?いえ逃げ切ったらそれはそれでトレーナーちゃんカッコいいって喜びそうな気もするでございますが……」
この後無事捕まってマヤノ筆頭十数人によりカワイイコーデにドレスアップされついでに写真もばら撒かれてパパノトップガンにも見られたマヤトレでしたとさ
うまぴょいうまぴょい