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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part101【TSトレ】
≫16二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 10:48:49『ふたりの秘密』
「…どうですかねここ」
「ええ、存外良い店を知っていらっしゃるんですね」
「あーよかった…知り合いあたりまくってそれなりに良い店探すの大変でしたわ…」
そう言ったブラトレは心底ほっとした顔をしている。
今日はたまにはあまり交流してない組で夕食を、という話が出ていたのでブラトレとグラトレで少し奥まったところにある小ぢんまりとした和食料亭に来ている。
別にグラトレとしては格式のある店ばかりを好んで食事しているわけではないのだが、
「そういう知識持ってらっしゃるだろうしなるだけ選んでみます」というブラトレの言葉もあったので少し楽しみにしていたのだった。
「まあ値段とかそんな凄い所でもないですけどね…どちらかというと入りやすい料亭のほうですし」
「そうですねえ…私としては、これくらいのほうが気軽に楽しめてよいかと。グラスに連れてもらうときはかなり…気を遣うお店ばかりですので」
「恐ろしいなあ…うちは肉!肉!って感じなので格式ばった店よりでっかいステーキの出る店ばかりですからねえ」
「ふふふ、それもまた良いものでしょう?」「ええまったく。おかげで良い肉の見分け方はつくようになりましたよ」
「ではいつかそういった肉料理専門店にでも?」「あー、まだそのあたりの知識は持ってないのでいずれということで…さ、入りましょ」
この和食料亭は夫婦で切り盛りしているらしく、地元の隠れた名店、といった空気が漂っている。
魚系の料理をメインとしたお任せコースを頼み、料理を食べ、ゆっくりと話す、そういった時間が過ぎていく。
「そういえば…いや、面と向かって失礼だとは思うのですが、ブラトレさんってどうして…その…阿呆と呼ばれているのでしょうか?」
「おっとその口調で阿呆はボディブローのように効きますね…あー、グラトレさんは知らないのか」
こほん、とブラトレが一呼吸置く。
「まあ単純に言えば、後先考えてないなこいつ?っていう行動を新人の時に繰り返してた…わけではないんですけどね?一時期の行動がどうも皆の頭に残ってるようで」
「…というと?」
「まあ言ってしまえばブライアンのスカウトの時ですね」
「あー…昔はたいそう気の難しい方だったとか」
≫18二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 10:50:07「まあ平たく言えば。最初のころは早めにスカウトしなさいという感じですよね」
当然自分達はその括りに入らないのだけども、トレセンの考え方としては色んなタイプのウマ娘に対応できるトレーナーを目指してほしいのだろう。
「そうですねえ…まあ私も早い段階でグラスと知り合えたわけですが」
「まあそんな最初のだいじーな時期にブライアンの走りを見て…アッこれだ!この子だ!ってなった後は…2週間近くアプローチしてはフラれを繰り返してましたね」
「ええ…」
「まあそういう反応で間違いないと思いますよ、俺だってほかのやつがそうしてたらアホだこいつ!って見ますもん」
「それで…2週間後には無事スカウトを?」
「いや、途中姉のハヤヒデさんのトレーニングに付き合ってたりしました」「えええ…」
「更にはハヤヒデさんの頼みを受けてブライアンをメイクデビューに連れて行こうとしたら「トレーナーバッジ(資格)を捨てるならついて行っても構わん!」とぶちまけられました」
「ええええええ…」
困惑が深まりすぎていつも落ち着いた顔がだいぶ変なことになっている。ごめんなさいね、これ事実なんですマジで。
「さ、流石に資格を捨てることはなかったんですよね?冗談ですよね?」
「まあ捨てることはなかったですね、結果的に。ただその時「いいだろう!資格でもなんでも捨ててやる!」って思いっきり啖呵切っちゃいましたから向こうのほうが驚いてました」
「えええええええ…ど、どうしてまた…?」
「理由はまあ…いろいろあるんですが最終的に一つに絞れというなら、「ブライアンの走りにもうどうしようもなく惚れた」ってことですね」
「…ああ、その気持ちはわかります」
「んじゃスカウトできねえならもうトレーナー資格なんていらねえ!何ならブライアン!お前は何で走りたがらねえんだ!って逆に言葉で殴り掛かっていきました」
「お、おおお…」
「お前に何がわかるか!って返されたらわかるためにこうして話してるんだろうがぁ!って感じで…最終的に向こうが折れてメイクデビューに連れて行ったわけですよ」
「…なんだか想像以上に…凄いことになってますね…」
「そしてメイクデビューで何があったか、さっきまでの対応は丸っと変わってトレーナーとしてあの場所へ連れて行け!ってなったんで見事スカウト成功という…」
「………ええ…なんというか…劇的ですね」
>>19二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 10:50:26
「でしょー?今でも語り草なんですよこれ。で、2週間とちょっとを全部費やしてまで一人のウマ娘にアプローチをし続けたとんでもないヤツ…という意味合いで「アホ」の通り名がですね」
「…なるほど…」
「友人のマクトレにこの話した時は「お前もしスカウトできずにそのまま資格捨てたらどうするつもりだったんだよ!」って言われて「そんな未来はなかったから知らねぇ!」って返しちゃいましたね。まあそれくらい入れ込んでたと言えばそうなんですがネ!」
「…でも、その結果がURA優勝までたどり着いたわけですから正しく運命ともいえましょうね」
「ですね。結果的に二人の出会いは最高の出会いだったというわけです。…あ、グラトレさん」
「何でしょう?」
「この話まだ数人にしかしてませんし…特に資格のあたりは広めんでくださいね…ブライアンがすねちゃうので」
「うふふ、内緒のお話は内緒にしておくのが楽しいですからね。大丈夫ですよ」
「じゃ、ふたりの秘密ということで」
ちょっとした料亭で交わされる指切り。夜も更ける中のんびりとした食事会はもう少し続いていくのであった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part102【TSトレ】
≫41二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 12:38:36私もまた、今はウマ娘だ。走りたいという欲求は存在する。それを無視するというのはなかなかにストレスが溜まり、それはスズカへ行うトレーニング指導にノイズが混ざると言うことだ。スズカを万全に仕上げるためにはまず私自身も万全でなくてはならない。
「どこまでも走りたいという欲求はないの?」
「えっ……何それ……怖……無いけど」
走る欲求に悩まされてなさそうでアホと違い実際にも走ってなさそうなマルトレに声を掛けたが、意味がなかった。ならば私自身で解決するしかない。
というわけでルームランナーを買った。ちゃんとウマ娘用だ。使ったら下の階から苦情がすごい来た。ルームランナーは押し入れに詰め込まれた。リングフィット◯ドベンチャーを勝った。これは走らずにも出来るらしい。シェイプアップになったが走れてないので欲求が解消できてない。やはりリスクがあるが、外で走るしか無い。スズカに見られるとスズカに変な影響が出る。スズカの朝練より早い時間に河川敷を走ることにした。念には念を入れ目出し帽も被った。私の作戦は完璧だった。欲求も解消されスズカのトレーニングに集中できる。
三日後、不審ウマ娘情報が府中じゅうに出回ることになった。
≫83二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 13:04:29スレの流れに一切関係無いけど
後で転けたルドトレの胸に押され
前に居たタイトレの胸に当たり
助けようとしたルグトレが勢い余って横から胸を押し付け
面白がったゴルトレが空いていた方から胸で押さえ付ける
四面楚歌なタイシン概念の電波を受信した
タイシンの性癖は知らん
≫123二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 13:04:29人狼ネタ 正直好きなゲームのネタ使いたかっただけ
ウオ202「あ…俺霊能者…っす」
ヘリトレ「ほっほっ…微かに目が揺らぎ、心拍数が上がっておる…お主つまらん嘘をつくのう」
マルトレ「こわ〜…ここはネイトレでいいんじゃない?」
ネイトレ「(ネイトレは、哀しそうに俯いている…)」
ロブトレ「…私はネイトレは違うと思いますが」
グラトレ「ネイトレはちょっと…」
ファイトレ「ゲームが違う!まぁ似たようなものだけど…じゃ、じゃあパンダのテイトレですかね?」
テイトレ「(テイトレは、哀しそうに俯いている…)」
フクトレ「あー…テイトレは違うんじゃないか?」
ブラトレ「ここでテイトレを失いたくはないな…」
マクトレ「普段バ鹿やってるくせになんだかんだ甘いですわ二人とも!というか天丼やめて下さいまし!」
マヤトレ「つってもなぁ…もう時間ないぞ?どうすんだよ」
ボノトレ「うーん…じゃとりあえずマヤトレで」
「「「異議なし」」」
マヤトレ「ウワーッ!なんで俺!?離せ!離せー!」
マヤトレがコールドスリープすることになった…
マヤトレ「というかグノーシアネタ分かる奴何人いるんだこのスレ!」
≫152二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 13:55:22新人ちゃん「グスッ...グスッ...」
テイトレ「仕方なかったって奴だ、新人ちゃんは悪くない...」
新人ちゃん「でも...私のせいで...みなさんが...、私が気をつけてさえいれば...」
────────────
朝
おはようございます!新人トレーナーです!
今朝、地元のお父さんから荷物が届きました!
中身はアボカドと手紙です!手紙は後で読むとして量が多いから先輩方に御裾分けに行ってきます!
───────
マクトレさんにブラトレさんおはようございます!
アボカド有るんですけど少し如何ですか?新鮮ですからそのままいけますよ!
マジカアリガトサン!ブライアンニクワセルカ!
イタダキマスワ!パクパクデスワ!
────────
手紙
新人へ元気にしていますか
中略
今度はアボカドが沢山取れたのでそちらに送ります。
人間用なのでくれぐれもウマ娘の方には食べさせないでください
父より
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part103【TSトレ】
≫21二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 14:39:27「ざーこざーこ♡牡蠣食べてお腹壊す♡鯖食べてもお腹壊す♡よわよわ胃腸♡」
「あら♡叩いただけで折れる骨の方に何か言われてしまいましたわ♡」
「うっ...うう...ごめんなさい...ごめんなさい...」
「ヒェッ」
「あーあいつテイトレ泣かしてやがるーw」
「人の気持ちとか分からないなんて小学生までだよなー♡」
「なんですの?これ」
≫29二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 14:44:58「…………なあボノトレ」
「何ざーこ♡ ざこざこざーこ♡ 前髪スカスカ♡」
「…狂いそう」
「メンタルよわよわ♡ 根性足りてな~い♡ ロリコン野郎♡」
「遭難癖♡ イノシシに勝てない♡ 山菜台無しにする♡ 扱いがハムスターとかげっ歯類のそれ♡ 特に理由も無い女装♡」
「あ、ちょっと泣く♡ でも大の大人がメスガキ構文使うのきっつ♡」
「…なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ」
「ロリに雑魚雑魚言われたがってるクソロリコン野郎♡ 大人のくせに中等部から大人気♡」
「いや最後のは別にいいだろ…………。む、メスガキマヤ」
「もしもしマヤノパパ?」
「薄々思ってたけどさては別に正気だな手前」
「仕方ないでしょ…同僚皆メスガキしてて普通に振る舞うとめっちゃ浮くんだから…」
「冷静に考えたら地獄絵図以外の何物でもねぇな今のトレセン学園」
「それはそう」
オネエチャンノザーコ♡リセイヨワヨワ♡オニイチャンノホウガハガネノイシツヨイ♡
ハ? カレンオニイチャンニモマケナイガ?
「…助けてくれ」
「そうだね…三女神様に祈る?」
「元凶側な気もするなぁ…」
「そっかぁ…」
この後一日メスガキとして振る舞ってみたところ担当が真似始めて白目を向くことになったマヤトレとボノトレでしたとさ
うまぴょいうまぴょい
≫39 1/24 21/10/01(金) 14:49:35「ウマは走るために生まれてきた」
――戸山為夫
※※※
人類種の定義とは、叡智の継承に在ると博士は提唱した。
最大限に効率化された技術と熟成した文化を、遥か未来の子孫へ、遺伝子の変化と訓練以外で繋げることができること。
それこそが世界に人類種に赦された生物的な特権であり――それはウマ娘も例外ではないと。
機械工学の権威にして、医療生体工学を数世紀早めると謳われた博士が人生最後に取り掛かったのは――ウマ娘の育成であった。
博士は急な転向を記者に問われた時に、こう答えている。
「人類種がウマ娘を受容する日を、一日でも早く実現するために」
>>42 2/24 21/10/01(金) 14:50:04
「命令しよう。本日のトレーニング開始前に、オペレーションの再確認を実施せよ」
「了解しました、マスター。オペレーション、坂路トレーニングの実施。
通常の3セットを1回数超過。計4セット実施予定」
「オペレーションの認識に誤差のないことを確認。
ミホノブルボン。オペレーションを遂行せよ」
「了解しました、マスター。オペレーション、実行開始」
ひどく機械的なやり取りが、トレセン学園のトレーニング施設で行われていた。
ミホノブルボンに機械的な指示を送っていた博士に、その友がみかねて話しかける。
「相変わらずだね、君は」
「返答しよう。そういう貴方は、随分と変わった」
硬い物言いに苦笑するのは、トレセン学園の中でもある意味で有名人。
若くして七冠を飾る名バ、シンボリルドルフのトレーナーを勤め上げ……
そして、まるで伴侶や愛人のように皇帝の寵愛を一身に受けている、元男性のウマ娘だ。
>>45 3/24 21/10/01(金) 14:50:36
「人類種の変更が解析不能の現象によって頻発している事実は、私のメンタルに少なくない衝撃を与えている」
「普通、女の人になることを驚くと思うんだけど……」
「何故?」
「えっ」
「解説しよう。性別の変更は何ら驚くべき現象ではない。
生物界では出生率の調整のため数多の生物種が行っている上、人間は手術によって誰もが変更可能だ」
訳もなく言ってのける博士に、皇帝の付き人は「そういうことじゃないんだけどな」と言って頬を書く。
扇情的な眼差しが向けられるが、博士はそれに対して眉ひとつ動かさない。
かつて「彼女」が「彼」だった頃、博士がアメリカのある大学で医学に関する講義をしていた際に知り合ったのが二人の馴れ初めだが
その際にも海外留学中の「彼」が、無意識に行った蠱惑的な眼差しや仕草で男女問わず性的な興奮を与えていたのだ。
博士にとっては「そういう生物なんだからしょうがない」という認識であり、だからこそ学問に対し熱心な「彼」に真摯に教える内、対等な友人関係が成立していた。
それが今更、ウマ娘になって魅力が倍増したところで、ただ会話が成立すればそれでいい博士にとってはどうでもいいことだ。
「これは差別的表現になってしまうが、ウマ娘はホモ・サピエンス種の特徴を有しているとは言いがたい。
いっそ種族でさえなく、遺伝子のやり取りに際して発生する異常なキメラとも言えるだろう。
にも関わらず、君達は後天的にウマ娘となった。驚嘆に値する」
「それは……否定的な意見?」
「回答しよう。肯定的な見解だ。
……それはつまり、人間はいつか後天的なウマ娘化が可能ということであり、一個人の人間だという科学的な証明だ」
博士は測定機器を確認する。目標より速く、かつ安定したラップタイム。トレーニングは順調であった。
「私は期待している。この現象が、ウマ娘と人類の垣根を崩す切欠になることを」
人間のウマ娘化現象。
それを皇帝の付き人から聞いて、博士は態々アメリカから日本へ移り、トレーナーを務める決心をしたのだ。
>>46 4/24 21/10/01(金) 14:51:05
「では君は、ウマ娘の未来に対してどのように関与するつもりなんだい?」
そう言って皇帝の付き人を抱き寄せたのは、他ならぬ皇帝、シンボリルドルフであった。
博士が目を向ければ、皇帝は微笑みの裏に強いプレッシャーを放っている。
並の人間なら萎縮し退散する威圧に対し、また骨抜きにしたのか、と嘆息しながら、博士は軽い会釈と共に問に答えた。
「回答しよう。距離適性という制限の撤廃だ」
「――なんだって?」
「距離適性の撤廃だ。ウマ娘の本能は、つまり走ることだ。
にも関わらず、走りたい距離を走れない問題を、向き不向きという曖昧な言葉で容易に覆せないものにしている」
シンボリルドルフの一瞬の虚を突いて、博士は淡々と続ける。
それはシンボリルドルフの予想よりも遥かに淀みなく、そして女性に対する一切の興味を感じさせず……。
久し振りに、自分が本来抱いていた「理想」の琴線に触れるものであった。
「質問しよう。君は、芝の3200mを走れるか?」
「私の名を知っていれば、日月自明のことと思うが」
「そうだな。では、芝の1000mは?」
「……いや。中長距離と比べれば、上手く動かせないだろうな」
シンボリルドルフの適正距離は中長距離。
これは彼女が生まれ持った資質であり、筋肉内の遅筋線維・速筋線維の割合によって左右される。
収縮速度が速く、疲労しやすい速筋線維の比率が多いほど、瞬間的な速度を求められる短距離・マイル向きであり
逆に収縮速度は遅いが疲労しにくい遅筋線維の比率が多いほど、長期的な速度を求められる中長距離に向いている。
これは人間・ウマ娘問わず常識であり、受け容れるべき、当たり前のことであった――。
「その全てを可能にする技術。それを確立することが、マスターと私のミッションです」
――博士と、ミホノブルボンを除いては。
>>48 5/24 21/10/01(金) 14:51:46
「筋肉の比率はトレーニングと食事によって調整可能だ。
私のように、サイバネティックスは必要ない。地道ではあるが、適正距離の拡張は不可能ではない」
両足の義足――膝関節から下が鎌のような形をしたものをいじりながら、博士はミホノブルボンの隣に立つ。
博士が先天的に生えてこなかった両足を補うため、機械工学を志した話は、シンボリルドルフも承知のことであり、驚くことではない。
だが、その歪な義肢で行われる軽やかな歩行動作は、博士が本気で運動に挑んでいる証左であり、皇帝を驚かせるには充分だった。
「努力と技術で才能は越えられる。それをミホノブルボンと共に証明するのが当面の目標だ。
――君と同じ、三冠を得ることで」
「クラシックレース三冠達成及び、努力の証明。確かに命令として受理済です」
「……成程。こちらの認識が甘かったようだ」
先程まで放っていたプレッシャーを潜め、シンボリルドルフは手を差し伸べる。
博士はブルボンに握手をするよう勧め、幾秒かの思考と共に、彼女はその手を取った。
「期待しているよ。よければ博士と共に、たまに話をしに来てほしい。
……すべてのウマ娘に、幸福を願う者として。君達を歓迎しよう」
「はい。感謝します、生徒会長……いえ、シンボリルドルフ」
晴れやかな笑顔に、漸く博士はシンボリルドルフ本来の姿を見出した。
シンボリルドルフが、今まさに感動している皇帝の付き人が好む類の傑物であり、同時に彼女の毒牙によって堕落しやすい人物であることを確信した博士は、ため息と共に皇帝の手を取る。
「よろしく、博士。また貴方の研究について聞きたい」
「こちらこそ。情動を飼い慣らし、真に未来への探究を続けられることを期待している」
「て、手厳しいな……」
一介の大人として、そして首を傾げる付き人の友人として。
皇帝シンボリルドルフの善き友人となることを博士は決定した。
>>50 6/24 21/10/01(金) 14:52:30
「――皐月賞の勝利。まずは目標の第一段階達成を祝そう」
「ありがとうございます、マスター」
「贈呈しよう。商品への説明を要する為、この場での開封を推奨する」
果たして宣言通り、ミホノブルボンは第一の冠を手にした。
周囲の人間は無感情に踵を返す博士を想像していたが、意外にも博士は、ブルボンへ祝いの品を用意していたのだ。
二人きりの楽屋で、博士はひとつの小箱をブルボンへ手渡した。
「――腕時計を観測」
「パイロット・ウォッチだ。高い磁気耐性を有している。
……質問しよう。以前、身体検査を行ったことを憶えているか」
「はい。MRI他、複数の機器が破損しました」
「記憶に齟齬がないことを確認。
だが、訂正しよう。ただ機材を弁償しただけに終わった訳ではない」
いくつかの、紙にコピーされた資料を博士はブルボンへ手渡す。
それはブルボンを計測した際に発覚したいくつかの事実であった。
「君の身体を覆うように、膜のような磁場を観測した。
直接触れて漸く影響する程度のものだが、機械操作時に誤作動を引き起こすには充分な出力だ」
つまり、耐磁気性の機械製品であればいい。
そう言いながら、博士はブルボンの腕に時計を巻く――時計は依然として、針を動かしていた。
>>51 7/24 21/10/01(金) 14:52:57
「マスター、質問の許可を求めます」
「許可しよう。如何なる問いにも返答する」
「何故、機械製品を贈呈品に選出したのでしょうか。
情報が正しければ、この時計は磁気を帯び続け、いつか破損します」
「……回答しよう」
博士は前に屈み、座して見つめるブルボンと向かい合う。
「その機械製品は、私の誇り――技術の集大成だからだ」
「……マスターの、誇り」
「肯定しよう。私は技術の開拓によって、私を含めた多くの人生を救ってきた。
そのため、技術とは誰しもが享受できる灯火であると、私は信じている」
博士は表情を一切動かさない。
しかし、ブルボンの頭を撫でる手は、確かに人の優しさを感じる暖かさを持っていた。
「技術によって人は前へ進むことができる。文化によって、人は前を向くことができる。
にも関わらず、ひとりの少女が体質によって技術に触れられず、最新の文化から遠ざかる。
これは、私の人生を侮辱するような、運命の齎す事実だ」
「…………」
「他のウマ娘に関しても同様だ。
様々な境遇によって、本来甘受すべき技術を受けられず、辛い境遇を非効率な努力で補わねばならない」
それを覆すための一助として、私は日本へ、トレセン学園へやってきた。
そう締めくくると、博士はしっかりと自分のウマ娘の瞳を見つめた。
>>52 8/24 21/10/01(金) 14:53:25
「だから、私は君への助力を惜しまない。
全ての技術は運命を覆すために存在すると、信じているからだ」
「……マスターのアイデンティティ、“技術は運命を覆す”を入力中」
博士は待った。
ただ、じっと腕時計を見つめるミホノブルボンの、感情の揺れ動きを待った。
「マスター。私の三冠達成は――努力の証明は、貴方のアイデンティティを遵守しますか」
「肯定しよう。それは私の人生に対する、最大級の肯定だ」
両者は眉ひとつ動かさず、会話を続ける。
やがてミホノブルボンは顔を上げ、決意を表明するように答えた。
「目標の再設定――三冠達成及び、努力の証明を、最上級タスクに設定」
「承認しよう。三冠の頂に、私の理想を預ける」
博士が差し出された手を、ブルボンはしっかりと握る。
人の手はこれほど暖かく、確かなものだっただろうかと思考しながら、彼女は博士の顔を見据えた。
>>53 9/24 21/10/01(金) 14:53:51
そして、ミホノブルボンが日本ダービーでの勝利をもぎ取った後。
博士は皐月賞でのやり取りを生徒会室に報告しに向かった。
「……な、成程。そのようなやり取りを……」
「えっ。それ、報告していいやつなの……?」
「揶揄しよう。君達の痴情ほどではない」
顔を真っ赤にして黙り込むシンボリルドルフとそのトレーナーを、博士は無表情で見つめた。
トレセン学園へ赴任して数ヶ月。今まさにうまぴょいしようと服を脱がしあう二人をトイレで偶然発見してしまい
いい加減にこの学園の風紀がえらいこっちゃなことを理解した博士は
「まあ薬物打つよりはマシだし、公衆施設での非生産的な繁殖行為くらいはお説教ぐらいでいいか……」
というおおらかな気持ちで教育委員会への告発を中止することを二人へ報告した。二人はすぐさま居住まいを正す。
「君達は友人であるし、青春真っ盛りの若者達だ。
多少羽目を外すことは黙認するが……シンボリルドルフ、君は生徒の規範となるのだろう」
「はい」
「君も、全身を預けられる伴侶を得られたことで全て受け容れてしまうのは理解できる。
だが、君は君の英雄に泥を塗ることを至上の性癖としている訳ではない。そうだな?」
「はい」
「秘め事は秘めて事に至ると書くが故に、日本のウマ娘は奥ゆかしいと評されている。
米国のナードジョック問わぬ男子共通の幻想を、どうか踏み躙らないでやって頂きたい」
「「はい……」」
すっかりしょぼくれ、二人してたぬきのように縮こまったのを見て、博士はため息をつく。
本来まったく不要だった筈のやり取りを努めて忘れ、博士は真摯に頭を下げた。
「……本題はそこではない。君達が善良で優秀な人間だと見込んで、頼みがある」
>>54 10/24 21/10/01(金) 14:54:16
今の今まで説教されていた人物に頭を下げられ、バツの悪そうに二人は頭を上げさせる。
頭を下げても上げても一切表情を変えない博士は、一切の逡巡なく話を続けた。
「個人的な研究のために、何人かの人材を雇いたい。仲介をお願いできないだろうか」
「個人的な研究って?」
「説明しよう。早い話が、私の遺産作りだ」
ぎょ、とルドルフのトレーナーが目を見開く。
まさか古い友人に、いきなり終活の相談をされるとは思っていなかったのだろう。
だが、それが冗談ではないと察し、シンボリルドルフが更なる説明を促す。
「質問しよう。ウマ娘における脚部の欠損が、どのような問題を引き起こすと思う?」
「……人間と同じだ。血流の不全。心肺への負担」
「あとは、幻肢痛とかもそうかな……?」
「肯定しよう。だが、高い運動能力・高い代謝・高い内臓機能を有するウマ娘は、それ故に各部位の負担も倍増する。
通常ならば適度な運動と回復によって血液を循環させ、カバーされる負担だが、欠損すればそれは補われない。
心臓への負担、肝機能の低下。次第に鈍痛と共に、徐々に末端が壊死するだろう。つまり……」
博士はゆっくりと、背広の裾を割り開く。
まろびでるのは黒鹿毛の尾。博士の頭頂部から生えた耳が、ゆっくりと絞られた。
「……私は生まれながらに有する、ウマ娘という資質によって死ぬということだ」
生まれながらにして足を持たぬ小柄なウマ娘、モリー博士はそう言って笑った。
>>55 11/24 21/10/01(金) 14:54:43
夏合宿が過ぎて以降、ミホノブルボンは言いようのない不安に襲われていた。
菊花賞という初めての長距離への不安もある。
だがそれ以上に、博士の体調不良が続き、彼女と会えない時間が続いていることが原因である。
勿論、放ったらかしという訳ではない。
通話によってヒアリングと指示出しは行われ、細かいチェックはシンボリルドルフのトレーナーが代行してくれている。
皇帝の付き人だけあって、長距離走のトレーニングはお手の物。
以前よりも走り方には自信がついていた……が、頑なに博士へ会わせようとしない彼女に、ミホノブルボンは疑問を覚えていた。
「質問します。博士の容態はどのような状態ですか?」
「ちょっとずつだけど、良くなってるよ。大丈夫」
シンボリルドルフのトレーナーは安心させるようにそう言うが、待てど暮らせど、一向に博士が顔を出すことはなかった。
心配という名前の気持ちに気づかぬまま、ブルボンは通話越しに博士へ問う。
「博士。次はいつ会えますか」
『答えよう。菊花賞には、必ず間に合わせる』
「……」
いったい、何を間に合わせるつもりなのか。
結局ミホノブルボンは、それ以上の追及を行えず――疑問を振りほどくように、ハードトレーニングに打ち込んでいた。
>>56 12/24 21/10/01(金) 14:55:23
遂に迎えた菊花賞。
数多の強豪ウマ娘が参戦する中、ミホノブルボンはそれ以上に、自分のトレーナーに会えたことを喜んでいた。
「マスター……!」
「命令しよう。ミホノブルボン、現在の肉体ステータスを確認せよ」
「はい。現在、長距離走用のコンディション・パーフェクトを記録。
異常なし。今までで最高のステータス……『会えて嬉しい』の状態です」
「そうか。……私も、会えて嬉しい」
博士はそう言って、ミホノブルボンを抱き寄せた。
とても小柄な博士だから、ブルボンがその気になれば抱えあげることも容易いが、彼女はそうすることなく、ぎこちない動作で博士を抱きしめ返す。
手で触れる感触からは、浮き出た肋骨や薄い肉を通して伝わる心臓の鼓動が伝わってきていた。
「……マスターの体重減少を確認。以前確認した時より15.6kgの減量」
「問題はない。
……提案しよう。最後の命令の前に、少し、話がしたい」
「はい、マスター。……私も、それを望んでいます」
楽屋の椅子に座って、二人は久し振りに向き合った。
>>57 13/24 21/10/01(金) 14:55:49
「動揺を隠せない。私は今、非常に感慨深い気持ちでいる」
「マスターの情動は、外見的特徴から判別できません」
「私に、感情を表現する余裕はなかった。それだけだ」
博士は珍しく、「Ah……」とか「Uh……」といった音を喉からこぼした後、少しずつ語り始める。
彼女が生まれながらに足を持たず、走り回る他のウマ娘を羨望の眼差しで見ていたこと。
自分で設計した理論上最速の義足で走った時、言いようのない感動を覚えたこと。
それからは同じように境遇で苦しむ誰かを支える技術を学び、他人の人生に捧げようと研究を始めたこと。
その全てを、ミホノブルボンは黙って聞いていた。
「ブルボン。ろくな機器も使えず、ただ愚直にステイヤーを目指す貴方を見て、私は己の使命感に衝き動かされた。
貴方の観たい景色を見せるため――努力の証明を実現させるために、全てを捧げるつもりでいた」
「肯定します。博士は私へ、様々な技術的投資を惜しまず行ってくれました」
「そう、投資……私は自分のエゴのために、貴方へ協力した。
だが――ここから先は、貴方の未来となる」
「その先で、私は貴方の支えとなろう。
――例えこの身が、なくなろうとも」
>>58 14/24 21/10/01(金) 14:56:12
博士はブルボンの手を両手で包み込む。
細く、小さな手のひらで、いったいどれだけの人を救ってきたのか。
ブルボンは乏しい想像力で考えながら、彼女の話を一字一句記憶しようとしていた。
「最後の命令をしよう。
……走りなさい、ミホノブルボン。例え何があろうとも、貴方は走るために在る」
「――新たなオーダーを受諾。新目標、“存在の証明”」
ミホノブルボンは博士の手を握り返し、オーダーを受諾した。
ゆっくりと抱きしめ、そして立ち上がる。
「勝利を。三冠の頂きで、貴方と私のアイデンティティを証明します」
「ああ――頼む」
ミホノブルボンは走り出した――勝利に向かって。
>>59 15/24 21/10/01(金) 14:56:42
「……よかったの、本当のことを話さなくて」
「否定する。今は必要のない情報だ」
ずるずると、脱力するように博士は倒れ込む。
シンボリルドルフとそのトレーナーが抱き起こすと、その小さな生命の器は、ひどく軽く、儚くなっていた。
「――これを、ブルボンに」
「これは?」
「遺書と、鍵だ。後は――ブルボンなら、大丈夫」
もう余命幾ばくもないのだろう。
黄疸をメイクで隠した肌は、ファンデーションの上からでもわかるほど青ざめていて、目も焦点が合わなくなっている。
それでも遺書と鍵を取り落とすことなく、彼女はきちんとシンボリルドルフへ手渡した。
「……後は、後任に任せる」
「わかった。……また会おう、博士」
「――その遵守の精神は、貴方の伴侶が培った、貴方の人生にとって得難いものだ」
シンボリルドルフの言葉に対し、博士は最大限の称賛を以て返礼する。
やがて博士は目を伏せ、最後の吐息と共に何かを呟き始めた。
「……ブル、ボン。ま、た……」
言い残すことなく。
偉大なる研究者は、その生涯に幕を下ろした。
>>60 16/24 21/10/01(金) 14:57:11
ミホノブルボンが博士の訃報を知ったのは、菊花賞の戴冠を終え、ライヴを終えてからのことだった。
冷たい肉の塊となった博士を抱き上げたときも、ミホノブルボンは泣かなかった。
ただただ、何も感情を表さなかった。まるで、全てに蓋をしているように。
遺書と鍵を受け取ったミホノブルボンは、遺書が指し示す座標へ夢遊病のように歩き出した。
責任を感じ、同行を願い出たシンボリルドルフ達にも目もくれず、とぼとぼと歩いてその座標へ向かう。
座標に存在する、モリー博士の研究所……。
そこで待っていたのは、アグネスタキオンとそのトレーナーであった。
「やあやあ、ちょうど来ると思っていたよ」
「貴方も、関わっていたのですか」
「ちょっとしたインターンであり、研究協力者だねえ。
博士からは、君に施設の案内を任されているが……その前に、トレーナー君!」
「これ、静電気対策シート。気休めだけど触ってから入ってね」
手渡された静電気対策シートに触れ、一行は研究所へと入っていく。
アグネスタキオンは珍しく神経質に、そして真摯に注意事項を述べた。
「これから始める実験の為、何が起きようと、決して、何も触れないことを約束してくれ!
カリギュラ効果を狙っている訳ではない。素晴らしい研究をオシャカにされては困るんだ!」
本当は君が此処に来ることも反対だったんだと言うタキオンは、慣れた手付きでセキュリティを解除する。
研究所のドアの奥にいたのは――。
>>61 17/24 21/10/01(金) 14:57:39
「――マス、ター?」
それは、いくつかのコードが繋がれた、一体のウマ娘であった。
そのかんばせは亡きモリー博士に似ており、鎌のように湾曲した脚部は彼女が愛用したスポーツ用の義足に似ていた。
違うのは、その姿が年老いた芦毛のように真っ白に染め上げられているくらいであろうか。
思わず近づこうとするミホノブルボンを、シンボリルドルフが羽交い締めにして止める。
「触るなよ……モリー博士はここで、自分の脳を電子化しようとしていた。
結果は不成功。完全な彼女の人格再現には失敗している」
「……では、博士はもう蘇らないと?」
「そう結論を急がないでくれ。何のために実験をすると思っているんだい?
――記憶は全て入力した。だが、それがベース人格と結びつかないんだ」
アグネスタキオン曰く、人格というものを形作るのは、そこに結びついた無数の記憶である。
しかし記憶というものは思い出す契機がなければ箱の中に収められた不確定な宝石であり、取り出す手段がなければただの石屑と化す。
映像や音声を見せるだけでは造り物のモリー博士が目覚めることはなく、生前のモリー博士は「ブルボンと会えば問題ない」と答えていた為、渋々アグネスタキオンはその可能性に賭けているのだ。
「これからこのモリー博士の意識を覚醒レベルに引き上げる。
ブルボン。君はそこで話しかけたまえ」
「……はい。オペレーション、了解」
「モルモット君! 覚醒シーケンス開始だ!」
タキオンのトレーナーがその尾を振って応え、機材を動かし始める。
いくつかのコードから電気の音が漏れ、機材が低い唸り声を上げ始め。
痛いほどの沈黙が流れ――造り物の目が、開いた。
>>62 18/24 21/10/01(金) 14:58:04
「……マスター、聞こえますか。ミホノブルボン、菊花賞を勝利しました」
ぼんやりと、造り物のモリー博士の顔が動く。
その黒い瞳の奥で動くカメラアイが、じっとミホノブルボンを見つめていた。
「マスター……わたし、はっ」
徐々に、徐々に。蟻が堤を崩したように、少しずつブルボンの感情が氷解する。
一度解放された感情は、まるで雨のようにブルボンの瞳から、喉からこぼれ落ちていく。
「わたし、はっ。オーダーを……証明を、したんですっ。
貴方のおかげでっ……私は……!」
それは誰も見たことのない、ミホノブルボンの涙と嗚咽であった。
絶え絶えに言葉を紡ぎ、ブルボンは博士へ想いを伝えようとする。
「……きいて、きいて、ください。
また、頭を、撫でてください。
いっしょに、トレーニングを、してください」
こみ上げる想いは力となり、いつしか皇帝の束縛さえも振りほどく。
誰もが手を伸ばす中、ミホノブルボンはかつて意味がないとした「スプリンター」としての走りで造り物のモリー博士を抱きしめた。
「……いっしょに、いてください……マスター……っ!」
ミホノブルボンの手を通して、スパークが流れた。
>>63 19/24 21/10/01(金) 14:58:27
「――起動に要する電磁波を受信。モリー・システムを起動」
造り物のモリー博士が、見る間に人間性を取り戻す。
手から、足から。そして表情が虚ろなものから、強固な仏頂面に変貌していく。
呆然とそれを見つめる面々の中、アグネスタキオンのトレーナーが呆然と呟いた。
「まさか、ブルボンの生体磁場を起動コードにしていた?」
「――肯定する。その可能性に気付けるのは、流石はアグネスタキオンのトレーナーだと言えるだろう」
聞き慣れた堅いアルトの声が、電子音に紛れて発される。
徐々に喜色と、タキオンの唸り声が蔓延し始めた中、復活したモリー博士はブルボンと向き合う。
「いくつかの説明は、今は省略すべきだろう。今はこういうべきだ。
――よくがんばった、ブルボン」
「――――~~~~っ!」
この日、ミホノブルボンは声を上げて泣いた。
誰も、彼女が泣くのを止めなかった。
>>64 20/24 21/10/01(金) 14:59:54
「……騙された。最初から手のひらの上で踊らされたんだ」
「まあまあ、上手くいったんだからヨシ!」
「何もよくないんだよモルモット君! 今まで見せられていたデータは全部精巧なダミーだ!
この私に模倣させないために欺いたんだよこのちびロボウマ娘は!!!
さあ憂さ晴らしに作ったこの実験薬を飲みたまえ! 今すぐ! はーやーくー!!」
「任せてくれ!!」
満面の笑みで薬を飲み干し始めたアグネスタキオンのトレーナーを尻目に、ミホノブルボンに全身で抱きしめられた状態のモリー博士がシンボリルドルフ達に声をかける。
「今回は協力感謝する。お蔭で私の再構築が完了した」
「一回死んでるのに、ほんと動揺しないなあ……」
「肉体の限界は理解していたし、後継機の制作は五年前から着手していた。
あとは私が脳に強く刻み込むほど、感情移入する人物を探さねばならなかった」
彼女はトレセン学園へ来訪した同期を語りながら、泣きじゃくるブルボンの背を小さな手で撫で擦る。
その手付きは実に愛しげで、彼女を最大限に労ったものであることが見て取れた。
>>65 21/24 21/10/01(金) 15:00:14
「では、貴方は蘇る為にブルボンに協力を?」
「確認と理解はしているが、私はそれを強く否定しよう。
――私は彼女を支えるため、私の破棄ではなく再構築を選んだ。それだけだ」
「……それが聞けて、私は満足だよ」
微笑むシンボリルドルフに、博士は困ったようにため息をつく。
その姿は生前の博士そっくりで、帝王の付き人は思わず笑みをこぼした。
「……ブルボン。ブルボン。提案しよう。少し離しなさい」
「いやです」
「……懇願しよう。君と向き合って言いたい。離れてくれ」
渋々、といった風に抱擁という名の拘束を解くミホノブルボン。
くしゃくしゃになった病衣を整えながら、博士は改めてブルボンと向き合う。
>>66 21/2421/10/01(金) 15:01:00
「君にもう一度会う為に、運命を覆してきた。
……私にもう一度、君と走るための、技術の灯火を点けさせてくれないか?」
「……現在、ミッションは“存在の証明”が入力済みです。
このミッションは、モリー博士なしでは達成不可能と判断」
ミホノブルボンが博士の両手を握る。
涙でぐしゃぐしゃの顔で、彼女なりの精一杯の笑みを浮かべた。
「ミッションの達成を目指しましょう、マスター。
それまでは、いつでも、いっしょです」
「……了解し、自己を再定義しよう。私は、君のトレーナーだ」
博士が腕を広げれば、ブルボンはめいっぱいに飛び込んで抱きしめる。
倒れ込みながらも、博士は最愛の愛バをゆっくりと抱きしめた。
うまぴょいうまぴょい
≫83二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:06:56ルドトレとグルトレが呑むだけ
夜、生徒会業務を終えた各担当ウマ娘達を寮に送ったシンボリルドルフのトレーナーとエアグルーヴのトレーナーは月の照らす道を共に歩いていた。ナリタブライアンのトレーナーもいたが、オグリキャップのトレーナーに料理の事で用があったらしく先を急いだ。
「ねぇ、このまま今日グルトレちゃんの家で呑みに行ってもいい?」
鹿毛色の髪をふんわりと揺らし、柔和な表情で言った。わがままとも言える豊満な身体をぴたりと、グルトレにつける。グルトレは慣れた様子で、良いですけどその前にスーパーへ行きましょうかと呑みを承諾した。スーパーで酒、つまみを購入した2人はグルトレの家へ向かった。
グルーヴに掃除をしてもらった翌日で良かった、グルトレは家へルドトレを迎え入れながら心底思った。彼女は自分の事に関してずぼらであり、部屋は基本とっ散らかっている。そのため定期的に彼女の担当ウマ娘のエアグルーヴが掃除に来ていた。
「グルトレちゃんって抜けてるところがあるなぁって思ってたけど、しっかりしてるんだね」
「まぁ、グルーヴが定期的に来てくれているので」
グルトレは若干呆れ気味返した。このルドトレという天然にそう言われても困る。グルトレはリビングのソファーにルドトレを座らせ、袋に入った酒とつまみを目の前のテーブルに並べた。並べ終わるとルドトレがグルトレのスカートの裾を引っ張った。
>>84二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:07:27
「グルトレちゃん隣りに来て?」
「もうしょうがないですね…待っててください。グラスに氷入れて、箸と併せて持ってくるので」
「うん、待ってるね」
そう言ってルドトレは裾から手を離し、グルトレがグラスと箸を持ってくるのを心躍らせながら待っていた。グルトレはグラスに氷を入れ、箸と併せてトレーに乗せて、テーブルへと運ぶ。心躍らせながら待つルドトレにグラスと箸を渡し、彼女の隣りに座る。ルドトレは座ったグルトレにぺったりと身体を寄せ、手始めにと甘いチューハイをグラスに注ぎ、グルトレへ渡した。
「ありがとうございます」
「ふふふ、呑もう〜」
ルドトレもチューハイをグラスに注いで、乾杯と軽くグラスを鳴らした。ひとくち呑み、買ってきたつまみへと手を伸ばしていく。酒がまわり、ほんのりと頬を赤らめ、シャツをほぼ開けさせた2人は回らない呂律で会話をする。
「それで〜ルドルフがね、私の……」
「もう、それさっきも聞きましたよ〜ううっ……」
ルドトレがグルトレの腕に抱き着きながら酒を口にする。泣き上戸か、グルトレは涙を流しながら話を聞いていた。
「シようよ〜好きなんでしょ?」
「好きだけどぉ…ううっ…うぇ〜ん……」
グルトレがルドトレの胸へ顔を埋めると、ルドトレはグラスを置いて頭を撫でる。
>>85二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:07:51
「グルーヴに嫌われたくないもん〜!グルーヴとえっちなこといっぱいシたいよ…ううっ」
「よしよし、グルトレちゃんはいいこ〜グイグイいってもいいんだよ〜」
「でもぉ……」
「いっしょに気持ちよくなればだいじょうぶだよ〜」
グルトレは酒で回っていない頭の中で、彼女がルドルフとの行為について話していた内容を思い出していた。だが、それはこの2人だからであって、自身とその相手で通用するかというと別問題なのでは?と涙を流しながら思った。
「グルーヴとえっちなこと……シたいよぅ……」
酒のせいか、彼女の中で疼くそれが暴れていた。彼女の胸へ、それへ、手を、指を。私だけに見せる顔を、聞かせる声を欲しくてたまらなかった。
「グルトレちゃん、今度シよ?って誘ってみようよ〜キスとかしてるんでしょ〜」
ルドトレの言葉はまるで悪魔の囁きのように、グルトレの頭の中で渦巻いた。キスもしてるなら、グルーヴはシてくれるかな。顔を上げると赤らめた顔のルドトレが緩んだ笑顔で見ていた。
「ルドトレさん……ううっ…私……」
「きっとだいじょうぶだよ〜、ね?」
電子音が響き、ルドトレが私だ〜と誰かと連絡を取る。しばらくすると、怖い笑顔浮かべたルドルフと呆れた顔をしたグルーヴが家に来てこの呑みはお開きとなった。グルトレにひとつ波紋を残して。
≫91二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:14:00その日キングは不機嫌だった、決して表情には出さず、誰にもその苛立ちをぶつけることはなかった、自分の問題で当たり散らすのは無様であり、決して一流のすることではないと誰よりも自分が知っている。
母親に宣言して、共に一流になると、そうして走り出した自分の道はホープフルステークスに勝利し、2冠達成も果たし、そうあれたのは間違いなく支えてくれているあのトレーナーあってのもの。
いつまでも認めてもらえない己の母、この身はクラシックの二冠を手に入れ、次の菊花賞を制すれば、3冠ウマ娘という栄光を手にできる、それでも母は自分を認めることはなく恥をかく前に帰ってこいの一点張りである。
このままではいけない、自分の感情に振り回される前にトレーニングに打ち込み、夏合宿を越え、そして菊花賞を勝つのだと奮い立った時、携帯から通話が入る。
かけてきたのは自らのトレーナー、忘れもしない模擬レースの時、名乗りを上げたあの男。
だが、その「声」に驚いた。
≫111二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:30:54まず聞こえてきたのは女の声で、「悪い、俺もとうとうウマ娘なっちまった。」これである。
あまりにも堂々としすぎて携帯を落としかけたが、トレーナー室に足早で向かってみれば、そこにいたのは見慣れた複をダボダボにした見慣れないウマ娘で・・・。
「おー速いなキング、見てのとおりこのザマだ。」
「いやあなたなんでそんなに堂々としてるのよ!?」
「そうは言うがなあ、なっちまったのはしょうがないじゃん、未だにURAでもこうなる理由見つかってないみたいだし、聞いた話じゃ、キングたちの世代のトレーナーも何人かウマ娘になってるしさ。」
ダボついた服を直しながらも、ため息一つ落とすトレーナー。
「だからってねぇ・・・。」
普通自らの存在が変わればもう少し動揺するものだろう、だというのにこのトレーナーはいつものように自らの練習メニューをタブレットに打ち込んでいる。
「というか俺が変わった程度で何が変わるんだ?」
「はぁ!?」
「俺がウマ娘になろうが何になろうが、俺はキングの、一流のトレーナーだ。」
「っああ、もうあなたって人は!」
変わってない、本当に変わってない、模擬レースで名乗りを上げたあの時から、母親に宣言したあの時から、このトレーナーはちっとも変わってない。
≫112二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 15:31:07「何が一流のトレーナーなのかしら!?このキングのトレーナーを名乗るならば、もっと身だしなみに気を使いなさい!」
「え、いやでも俺男で・・・。」
「今はウマ娘でしょうが!!少し待ってなさい、このキングの側にいるのにふさわしい格好に仕上げてあげるわ、おーっほっほっほ!」
足早に部屋を出て、トレーナー室から離れてため息一つ。
「本当に、おばかなんだから。」
母親への苛立ちなど吹き飛んだ、それよりも優先すべきことができたのだから・・・。
≫177二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 16:08:16「……そういえば」
ふと、ルドルフが先生達────ヘリトレとウララトレの前で何か言おうとする。
「私と出会う前のトレーナー君がどんな人物だっのかについてはあまり印象がないな」
「あ、確かにルドルフにはあまり話してなかったね!アルバムとか出すよ?」
「いや、ここには私と会う前の君をよく知る人物が二人もいる……お二方、よろしければお話を聞いても大丈夫でしょうか?」
そう言うと二人は顔を見合わせてからこう述べた。
「儂はおけまる水産だが」
「私も構いませんけれど」
「なら決まりなのでは?って、私の話なのに私が仕切っちゃダメか……」
私の発言を聞いてから、ルドルフは姿勢を正し二人の方を見やる。それを見た二人は交互に話し始める。
「彼がアメリカ留学出来るほどに賢い人物なのはその隣にいる貴方がわかっているはずですが、私が最初に彼に会った時に抱いた感想は『よくアメリカで生きていけましたね』でした」
「えっ」
「儂が彼に会った時に抱いた感想は『いいトレーナーになる』と『如何せん自分の容姿に無頓着すぎる』の二つだったかの」
「えっ?」
意外そうな顔で先生二人を見るルドトレと、なかなか凄い子が来たなという顔で話す二人。
「ですが、情熱はしっかりあり、知識もそれこそその辺りの自称ベテラン並みにはありましたから。あの顔で誰彼構わず勘違いさせる悪癖を除けば手のかからない子でした」
「ああ。儂のところに『あの新人、私に気があると思うんですよ』という相談が複数来た時には頭を抱えたわい」
「……えっ?」
「なんじゃ、やはり気付いておらんかったのか。気ぶったトレーナー達が儂や他のベテランに恋愛相談しに来た話は有名だと思っとったが……当人の耳に入らぬのは幸いか不幸か……」
「ええ、彼が貴女──シンボリルドルフと専属契約した日にはもう大騒ぎでしたから。『まだ挽回できる』『皇帝には勝てない』『生徒相手なら勝てる』……あの時を思い出すと……失礼。涙が」
「……え、あの、ごめんなさい……」
「……トレーナー君」
「ひゃっ!?ルドルフ何?」
「君が自らの魅力に無自覚なのはここまで筋金入りなのは予想こそすれど、はっきり答え合わせをされると私ですら悪寒が……」
「……ご、ごめん……」
────ルドトレはルドルフにお説教されたが改善の傾向はあまり見られなかった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…par104【TSトレ】
≫34シャカトレ1 21/10/01(金) 16:22:41『神はサイコロを振らない』
アインシュタインの金言。因果律の存在を信じる最も偉大な科学者の言葉。現代科学の土台を否定する挑戦的な思想。そしてシャカトレの最も強い考えである。
シャカトレは、担当のエアシャカールと同様、いやそれ以上にロジカルさに対して固執している。世界のすべては一つの式で表現し続けられると信じている。今そうでないのは、単に人間がそこにまだ至っていないからであると。
同時にシャカトレは、それを暴こうという気にはならない。量子力学の否定は芥子粒の抱いた泡沫の思想であるとも捉えている。シャカトレは進学校から東京大学に入り、その十年でこの世の天才のいかに多いかを知ることとなった。
つまりシャカトレのスタイルは、「この世の全てはいつか説明されるが、自分にその能力はない」である。
ならばすべきことは、「発生したことを全て受け入れ、謎の解明には自分なりに全力を尽くし協力も仰ぐ」である。
トレーナーウマ娘化現象。シャカトレはすでに自分でできることの多くをした。様々な情報を集め、知り合いに極秘で情報を送り、最高の実験台も用意した。それでも色々と足りないが。
≫36シャカトレ2 21/10/01(金) 16:23:08トレーニングルームの一角に座り、ノートパソコンを開いた。そして体調、体温などを細かくメールに記載し、血液を今日の夜に届けにいく旨を付け足して協力者に送信した。
「トレーナー!」
大きな足音を立てながらで聴き慣れた声が聞こえてきた。エアシャカールだった。ドアが勢いよく開き、エアシャカールが現れ、そして目を見開いた。
「……マジでウマ娘になっちまったのか」
「ああ、そうだね。」
シャカトレは何も動じなかった。エアシャカールの驚きなど微塵も気にしないかのように。自分が昨日より30cmも縮み、長い黒髪が伸び、目の色が無機質な銀色になっていることなど、一切気付いていないかのように。
「安心しなさいエアシャカール。僕はなんともない。少し背が縮んだ暗いだ」
「っ……!」
エアシャカールは喉まで何かが来ているようだった。それを吐き出そうか躊躇したようで、しかしすぐに口に出してしまった。
「なあ、オレはわからねぇんだ」
声は震えていた。
「何が?」
「なんでそんなロジカルじゃねえことに首を突っ込めるんだよ!自分がどうなったって気にしないってのか!?」
≫37シャカトレ3 21/10/01(金) 16:23:31エアシャカールは尖ったウマ娘だが、かといって怒りっぽい訳ではなかった。そんなエアシャカールが怒りに溢れていた。
エアシャカールは理解できなかったのだ。シャカトレは数日前から三女神像の前で実験を繰り返していた。それは幽霊の出る橋の上から飛び降り続けることと同じくらいめちゃくちゃな行為に見えていた。そして今、不可逆的な変化を起こしてしまったシャカトレを見て、エアシャカールはうちに溜め込んでいたものをぶちまけた。
感情に突き動かされ、自分が今ロジカルでないことをエアシャカールは自覚していた。自分にとっては全く論理的に見えない思考で動いているトレーナーが静かでいることがその自覚を強めていた。
「いえ。僕は自分のことをどうでもいいとなんて思っていません。僕にも家族がいますし友人もいます。それに、君を支えたい、君の7cmを埋めてやりたい」
「だったらなんでそんなことした!?」
シャカトレの行動は、リストカットしながら自分の体を大事にしろと言っているようなものだった。エアシャカールにはそれがあまりにも意味不明だった。
≫38シャカトレ4 21/10/01(金) 16:23:53少し黙った後、シャカトレは立ち上がり、ようやく口を開いた。さっきまでよりはるかに冷たい口調で。
「そうですね。まずエアシャカール、訂正しなさい。未解明の現象は僕にとってイロジカルではありません」
エアシャカールは床に座り込んだ。今までにない諭され方をして力が抜けた。
「ロジカルに説明できないならロジックを発見する。科学はそうやって発展してきました。未知の現象をイロジカルと断言するほど愚かな行為は他にない」
その目はトレーナーではなく科学者の目だった。いつもはただ目つきは悪いがどこか優しい、そうエアシャカールの感じていた目は今、冷たく何かを見据えているように感じられた。
「安心しなさいシャカール。僕も安易な根拠でウマ娘化したわけではありません。ウマ娘化の過程について調べるならば僕が最も実験台に適していると考えたからです」
「……」
「そしてもう一つ。僕はすでに研究の手がかりを見つけています。今までは正直触れにくかったのですが、ようやく僕の研究を動かせるかもしれません」
≫39シャカトレ5 21/10/01(金) 16:24:14ここまで話して、ようやくシャカトレは表情を崩した。科学者からトレーナー、いやそれ以上の存在へ向ける優しい目があった。
そしてエアシャカールへと近づき、座り込んでいる彼女に目線を合わせて続けた。
「数学の友よ。僕の相棒よ。これはいい機会なんです。君のロジックへの信頼は正しいですが、僕よりも少し視野が小さい。それは経験の差から来る仕方のないものだ。だから君に見せたいのです。ロジックを見つけるという何よりもロジカルな試みを」
しばらく沈黙が続いた。何を言われたとしてすぐに受け入れられるようなものではなかった。しかしそれがロジカルでないことをエアシャカールは重く認識し、生気のない声で口を開いた。
「その手がかりってのはなんなんだ」
ふふ、とシャカトレは笑った。先ほどまでの学問の目が少し戻っていた。
「メジロマックイーン、トウカイテイオー、マチカネフクキタルのトレーナーです。二人の噂くらいは聞いているでしょう」
「メジロマックイーンそのもの、会長とオグリキャップ、マチカネフクキタルの姉だろ」
「そうです。確実に存在するウマ娘に極めて近い存在となったマクトレ、極めて情報の入手しやすい因子二つの影響を受けているテイトレ、確実に現存しないウマ娘の因子を継承したフクトレ。数式で言えば特殊解、一般解、別項を見つけるために必要な存在です。せっかくウマ娘になったのです、あのお三方に理由を話した上で仲良くなってきます」
シャカトレはエアシャカールの頭を抱いた。小さく柔らかなその感触は、エアシャカールに癒しと困惑、そして喪失感を同時に抱かせた。
「君がすぐには受け入れられないであろうことはわかっています。でも、僕と君の関係は何も変わりませんよエアシャカール。ただ僕にやりたいことが一つ増えただけ。さて、今日も論理的なトレーニングといきましょうか」
≫78二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 16:37:13「…母乳が出る…???????」
「ああ、一部のトレーナーから連絡が来た。実際朝起きてからずっと胸ムズムズしてるし。」
そう、ため息混じりに言う。多分いつぞやかのスリーサイズ変わった時並にひどい顔してるぞ私。
事の発覚はトレーナー共通LINE、発信源は…まあ、ルドトレとかフラトレとかいつものメンバー。
「…三女神ってなんなんでしょうか…」
「…さあ…?」
未だに理解しきれてない顔でスズカの漏らした言葉にそう返す。だって分からないものは分からない。仕方ないね。
「まあ、とりあえず出し切れば治るらしい。だからそれ頼みたくて呼んだんだ。朝からすまない。」
「…別にそれはかまいませんが…あの、自分では…?」
「…なんか、自分でやっても出ないらしい。」
「…三女神ってなんなんでしょう…?(二回目)」
「…さあ…?(二回目)」
この後搾った。
治った。
一応飲んでみた。
普通に美味しくなかった。
その場のしのぎの雑クオリティだから許せ
≫85ロブロイ搾乳体験済みです21/10/01(金) 16:39:25ロブトレ搾乳SS
「ロ、ロブロイ、あのですね……」
「トレーナーさん、ど、どうしましたか?顔が真っ赤になっていて、もしかして風邪でも……」
「その……う、うう……朝起きたら、母乳が……出るように……」
「え……」
ロブロイが完全に固まっている。
それはそうだろう。突然こんなことを言われたら固まるに決まっています。
以前、ロブロイと一緒に牧場に行って、搾乳体験などをして、かつての英雄もこんなふうに牛をお世話していたのか、わたしもそんな英雄みたいになりたいな、という話をしていたのに、まさかそのトレーナーである私が突然母乳が出るようになる、なんて思わないだろう。
「うう、ロ、ロブロイ、その、困ってしまうのはわかります。私も、そう思いますから……ですが、その……母乳で、胸が、張ってしまって……」
「え……」
続けての発言でロブロイが一周回って意識が戻ってくる。
ああ、本当に申し訳ない……今の自分が不甲斐ない……。
「それで、以前搾乳体験をされていました、よね……その時、すごく上手にされていたかと」
「え、あ、あの、トレーナー、さん?」
「ロブロイ……助けて……」
その時のロブロイの顔を、私は忘れられません。
その後、ロブロイはその後丁寧に搾乳してくれました。牛に好かれやすいロブロイは搾乳もとても上手でした。
え、詳細?そんなの、書けるわけないじゃないですか……。
(なお、トレーナー室からは……)
「あ、ひゃっ、ま、待って、ロブロイ、そ、そんな、行き成り……」
「……トレーナーさんが、悪いんですよ……フフっ、大丈夫です。トレーナーさんも言っていましたよね、搾乳体験しましたので」
「あ、フあ……ロ、ロブロイ……すごく、ん、良い……あ……です……」
「トレーナーさん、とっても気持ちよさそうですね。少しずつ先にたまってきていますね,トレーナーさん、行きますよ」
「あ、ふあああああああああ」
「フフ、トレーナーさんのミルク、とってもおいしいです」
「あ、ロブ、ロイ……好き……」
≫111二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 16:49:47「……うぅ……ルドルフ……どうしよ……」
朝私がトレーナー君のベッド(ウマ娘になってから新調した、クイーンサイズ)で起きると、甘い匂いとトレーナー君のすすり泣く声、蜜と汗と涙の他に白っぽい何かに濡れたトレーナー君がいた────
うん、とりあえず落ち着こう。
まず白っぽい液体が────胸から出てる。母乳かな?
とりあえずトレーナー君の肌についたものを舐める。
肌が敏感ゆえにひゃうん♡とか言ってるのは無視する。口に入れると薄いけど甘い。やっぱり母乳だ。
……なんで?
「……トレーナー君。直近半年で男性との性的接触は?」
「ルドルフ……落ち着いて……私にそんな時間あると思うの……?」
「……ない、な」
「それに、ルドルフ以外の人とあんなことやそんなことなんて……」
裸の状態で泣かれるとこちらの罪悪感も高まる。まあ、彼を彼女に変化させきったのは私が全ての原因なのだが。
「私が疑って悪かった……!だから、とりあえずあた……むぎっ」
急に抱きつかれる。口に甘いものが入ってくる。これ母乳だ。つまり胸から……?
やめてくれトレーナー君。真面目に私の何かが壊れる。
────シンボリルドルフはギリギリの理性で耐えた。ルドトレはお説教されて三日間焦らされた。
≫144ドべトレss最終章◆IGEMrmvKLI21/10/01(金) 17:00:20それは5年前のこと。
「兄さん!!早く早く!!」
「んな急いでたら転ぶだろうが。
……肩車してやっから、早く乗れ。」
小学生のドーベルとヤンキー全盛期のオレ。
傍から見ればヤベエ構図だが、
アイツはそんな事、微塵も思っちゃいないし、
むしろ満面の笑みを浮かべていやがる。
「ねえ!今日はどこに連れてってくれるの?
兄さんの学校?それとも高校?」
「ホント、高校好きだよなお前。
ヤンキーばっかでお前には合わねえよ。」
「…今日はお前へのプレゼントを買いに行く。
誕生日もうすぐだったろ、ドーベル。」
「やったあ!でも、どうせ私がいないと
『ドーベルの好みが分からない〜』とかで
兄さん買えないもんね。」
「……うっせ、お前の一番欲しいモノ選ぶなら
直接選んで貰うのが一番だろうが。」
言ってしまえば、お出かけとは名ばかりで
実際はオレのプレゼント選びに付き合わせている
だけだった。実際、女の趣味とか分からねえし。
「そうと決まったら、早く行こ!!」
「……ああ!しっかり捕まってろよ!!」
≫145ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:00:57エメラルドグリーンの髪飾りのリボンを買った。
オレがピンと来たモノを見せたら、
ドーベルも可愛いと喜んでくれた。
オレも女の趣味が分かってきたのだろうか。
「悪いな、高校生の金じゃコレが精一杯だ。」
「……ううん。嬉しい。ありがとう兄さん!」
オレはドーベルの頭をワシワシする。
オレがこの先もコイツを守るんだ。
ずっと笑顔で居られるように。
「んじゃ、オレ便所行って来っから。
ドーベルは外で待ってろ。」
「兄さんも一応メジロ家なんだから、
少し口調に気をつけてよね!」
耳が痛い。
だが、敬語のヤンキーってのもなあ……。
≫146ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:01:27「スッキリした〜、ドーベル帰ろ…う…!?」
居なかった。
アイツは勝手にどっか行くようなヤツじゃない。
だとすれば考えられるのは…
「……ッ!良家のお嬢様が一人きりって、
そんなの絶対狙われるだろうがッ!!」
誘拐だ。メジロ家の資産を目的にした
人質にされたのだ。
そんなの想定出来ていたはずなのに…。
「ドーベルッ!ドーベルどこだ!
返事してくれ!メジロドーベルッ!!」
≫147ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:02:00婆ちゃんから連絡が来た。
『ドーベルの誘拐犯からの連絡が来ました。
本日24時までに身代金──円を用意しろと。
万が一、
用意出来なかった場合は人質を殺すと。』
胸が苦しい。脳が働かない。
アイツが死ぬ?オレが目を離したせいで…?
そんな…。ウソだろ?
『今回の事件に関しては警察の協力の元、
メジロ家を総動員して事態にあたります。
皆さん、死力を尽くすように。』
また、婆ちゃんに迷惑を掛けてしまった。
身寄りのないオレを拾ってくれたのに、
メジロ家の一員にしてくれたってのに、
皆と同じように愛してくれたってのに、
「オレは、何にも…返せない……ッ!!」
≫148ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:02:32ヤツらの場所はすぐ見つかった。
割りとありきたりな廃工場。
その奥に男達に囲まれ、
拘束されて意識を失ったドーベルがいた。
「早すぎねえか?
拉致ってから1時間も経ってねえってのに。
やっぱりメジロの名は伊達じゃねえなあ。」
実行犯のリーダーと思われるヤツが口を開く。
「もう終わりだテメェら。
たった6人じゃ、すぐムショ行きだ。」
実行犯達を睨みつける。すると、
「まぁ、メジロ家相手に身代金要求なんか
出来る訳ねえのはバカでも分かるさ。」
「だったら何が目的なんだよ。」
すると、リーダーが懐から何かを取り出す。
≫149ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:02:57「『コレ』だよ。最初からこれが目的さ。」
拳銃だった。今まで見た事のない実銃。
「メジロのせいで、割食ってるヤツが
山ほど居んだよ。殺したいって思うヤツ
も山ほどな。」
「だったら…!ドーベルは関係ねえだろうが!
コイツはまだ何もしてねえだろうが!」
「ああ、『まだ』な。」
「…………??」
「ウマ娘のレースじゃメジロのウマ娘が
冠を独占してるだろ。面白くねえんだよ。」
「だからこうして早めに殺す。
デビューしてからじゃ面倒だからな。」
そうしてドーベルのこめかみに
銃が突きつけられる。
「お前は世間から『必要とされてない』んだよ。
恨むなら、『メジロ』の名を恨むんだな。」
──────その時、オレの中の何かが壊れた。
悪魔の囁きが聞こえた。
オレを救い、愛してくれた『メジロ』を
バカにした。オレが愛した『ドーベル』を
否定した。ならば、もう、いいか。
「絶対に殺す。死んでも殺す。
殺しても殺す」
≫150ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:03:26陽は落ち、夜の静寂が訪れる中、
肉を潰す音だけが規則正しく反響する。
あれから何時間だったのだろうか。
もはや時間も痛みも感じない。
「やっと壊し切ったか……。」
役目を終えた、ぐちゃぐちゃのオレの拳を見る。
「…ドーベル、もう終わった、帰ろう。」
振り返ると、ドーベルは既に覚醒していた。
「おんぶしてやっから、手、貸せ。」
姿は暗くてよく見えないが、
恐らく衰弱している。早く帰らなくては。
「イヤ、来ないで、助けて…!」
ドーベルは未だ混乱しているのだろう。
「オレだ。〇〇だ。アイツらじゃない。」
そうしてオレが手を差し伸べると、
「イヤ、イヤ…」
「イヤああああああああああ!!!!!!!!」
絶叫。やっと、己の行いに気づいた。
コイツが起きたのは、オレが殴り始めてからで
目の前で人間が死ぬ所を見せ続けたんだ。
血まみれのこの腕が、形を失ったこの手が
殺人鬼のドス黒い瞳が、
自身へと向かってきたのだ。
そんなの小学生にとっては劇薬だ。
脳を破壊するのに十分な力を持っていた。
「───────。」
そこからオレはメジロ家の捜索隊が来るまで、
己の罪を理解し、悔やみながら、
黒く染まった、血生臭い、天を仰いだ。
≫151ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:03:51「それで、アナタは自責の念から
国外に逃亡したんですのね。」
「……ヒック、罪に問われる前に
ばあちゃんがにがしてくれたんだ。
ドーベルとももう会わないつもりだったんだ。」
ドーベルをスカウトしたその日の夜、
オレはマクトレと飲み屋に来ていた。
「……、でも兄貴はオレの事許せねえんだろ。
男嫌いの原因を作ったオレをさ……。」
酒が入るとどうも気が沈む。
いつものハリがでない。
「……私が怒っているのはソコじゃなくて、
アナタがあの娘を置いてった事ですのよ。
……アナタは悪くない。
もし、アナタがいなかったら、
ドーベルは殺されていたんですから。」
≫152ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:04:18「……ッ!でもばあちゃんとか
絶対怒ってるじゃん。前の時怖かったし…。」
「はあぁぁぁ(クソデカため息)
…お祖母様はアナタに対して、一つも
怒りを含んだ言葉を投げかけていなかった
でしょうに。聞いてなかったんですの?」
思い返せば、確かにそうだ。
空気は重かったが、言葉には一切の憎しみは感じられなかった。
「お祖母様はずっと心配していたんですのよ。
大きなモノを背負わせてしまったって
それに、『貴方を誇りに思う。』って。
『優しい子に育ってくれた。』って。」
なんだよ、結局、オレがバカなだけだったじゃねえかよ。勝手に自分一人で抱え込んで、
勝手に暴走した。
「グスッ……。ありがとう…兄貴。」
「まあ…ドーベルの男嫌いの問題は
全く解決してねえけどな!!!」
「うええええええん!
せっかくいい感じで終わると思ったのにいいい!!」
≫153ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:04:47「これを渡して置きますわ。
苦痛に耐えられぬ時に飲むがいいですわ。」
ストゼロ500缶「コンニチハ」
「……、ゴクッゴクッゴクッ……。」
「……………………。」
「「ゴクゴクですわ!!!!!!!」」
≫154ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:05:11あれからオレたちは数々のレースを優勝した。
スタートは夏からと周囲よりも遅かったが、
死に物狂いで駆け抜けた。
そのおかげかドーベルも最近は自信が付いてきた
らしく、笑顔も増え、男嫌いも少しずつではあるが改善していった。
……もうオレ無しでもコイツは生きていられる。
トラウマも改善してきたようだし、
オレが守ってやらなくても、もう……。
「トレーナー?…トレーナー!!」
「……ン?どうしたドーベル?」
「どうしたじゃないわよ。
レースに買ったご褒美何にするか、考えてる
途中でしょ。全くもう…。」
そう言えばそうだったか。完全に呆けていた。
「私ね、ある場所に行きたいの。
私の思い出の場所。ね、一緒に来てくれない?」
「んじゃ、ソコにすっか!!
集合は学園正門前に9時な!!」
ドーベルとお出かけか。
久しぶりだから、なんか緊張してきた……。
≫155ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:05:38「どうしたのよ。そんな渋い顔して?」
オレ達が来たのは、5年前の事件が起こった、
あのショッピングモールだった。
しかも、ドーベルが行きたいと行ったのは、
昔プレゼントを買ったあの店。
「……でも、どうしてここなんだ?
他にも似たようなトコあるだろ?」
「私のこのリボンあるでしょ。
これ、兄さんがくれたの。
いつも守ってくれた私のヒーロー。
だからね、これを付けてると
兄さんが守ってくれてるような気がするの。」
「…………、お守りってコトか。」
ドーベルから「オレ」は消えてなどいなかった。
むしろ、アイツの心の支えとなっていたのか。
「……でね!その…、私とお揃いのリボンを
トレーナーに、あの、送りたいなって…。」
「……?でもそれじゃ、お前への
ご褒美はどうすんだよ。これじゃ、
俺へのご褒美じゃねえか。」
「もうっ!だから、私のご褒美は
ア…、アンタとデートする事なの!
それでトレーナーも最近ずっと頑張ってたから、私がご褒美を上げるの!いい!?」
すごい気迫だ。あの頃とは見違えるほどだ。
成長したんだなと感じる。
コイツは変われたんだ。自分自身の力で。
「分かった。じゃ、いいの選んでくれよ!!」
そう言って、店に入ろうとした次の瞬間、
モール内にとびきりの轟音が響き渡った。
≫156ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:06:04「トレーナー!?何?何なの!?」
「オレの下に隠れろドーベル!!!」
何かが爆発したような音が聞こえた。
一体何が起こってんだ……?
すると突如、自らの視界に
非現実的なモノが映り込む。
「持ち物を全て捨てて手を上げろ。すぐにだ。」
アサルトライフルだった。
コレにはさすがに手が出ない。
「……ッ。コレでいいかよ。」
無抵抗にオレは指示に従う。
間近に迫った死の前に、オレは無力だった。
「下の女も指示に従え。」
ドーベルにも指示が入る。しかし、
「あ、ああ、うわああああああああああ!!!」
「うるせえ!撃つぞ!!」
「やめろおおおおおお!!!」
振り抜いた右足が相手のこめかみを蹴り砕く。
ウマ娘のパワーというのは、これほどまでとは。
相手は蹴り一発でノビてしまった。
「お前、何してんだ!?」
仲間に気づかれる。アイツもライフルを持っている。まずい。今度こそ殺られるッ!
≫157ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:06:30「私の同僚に手を出さないで貰えますか?」
瞬間、相手が泡を吹いて倒れる。
「何?何が起こっているの?ねえ!?」
後ろの女がこちらへと顔を向ける。
「なんで、アンタがここに…!?」
その顔はオレを土につけた唯一の相手。
認めたくはないが…オレの数倍は強いヤツ。
「あん時は暴言吐いてごめんなさい。
後でファインにボコられましたよホント。」
ファインモーションのトレーナーだった。
偶然モールに居合わせたのだろう。
「……それで、今、何が起こってるんだよ?」
最も気になっていた疑問をぶつける。
「テロリストによるモール一体の占拠ですね。
爆発もその人達で間違いないかと。」
嘘だろ。
というか、本当にオレはつくづく運が無い。
「今は私とカフェトレさんの二人で
鎮圧に向かっていますが、
正直人手が足りません。」
カフェトレ。デカいケツの方は
強そうなオーラあったっけなあ。
「あなたの力を見込んで、頼みます。
私たちに力を貸して頂けませんか?」
今度こそドーベルを守りきるなら、
そんなの即決に決まってる。
「久しぶりのケンカだ。
派手にやってやろうじゃねえの!!!」
≫158ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:07:00何発…撃たれた…?何ヶ所…刺された…?
もう痛みも意識もおぼろげになっている。
血を流しすぎた。脚はもう動かせない。
そのままオレは床へと倒れた。
「とりあえず…全員鎮圧した…みたいだな。」
テロリスト達は先輩達の助けにより、鎮圧。
…てか、オレいらなかっただろ絶対。
「トレーナー!!!!」
あれは、ドーベル……か……?
「こっち来んな……、早くモールの外へ……。」
「何言ってんの!……って何この傷!?
早く…!救急車呼ばないと!!」
全く、コイツの、人見知りな癖して、
周りのヤツをほっとけないとこはそのままか。
「カフェトレさん!トレーナーが
大変なんです!早く来てください!
トレーナー!私が、絶対に死なせない!」
ドーベルが何か言ってるような気がするが、
あいにく、あまり聞こえない。
……、騙し続けるのも、もう疲れちまったよ。
「なあ、ドーベル。5年前は、ごめんな。
オレが、お前に一生残る傷をつけた……。
それとそのリボン、まだつけてくれてたんだな。
……お前は変わって、お前の中にある
『オレ』はずっと変わってなかった。
『オレ』は……変わらなくてよかったんだ。」
そうして、オレは意識を手放す。
最後にドーベルが泣いているのを見た。
……でも、今度こそ、守れて、良かった……。
≫159ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:07:23あれから数日が経った。
私のトレーナーは、出血多量でそのまま
緊急入院。奇跡的に致命傷となるような傷は
なかったみたいだけど、
脳に負荷がかかった結果、記憶にダメージが
残るらしい。
頭の中で今までに起こったことを整理しながら、
今日もあの人の病室へと向かう。
「今日も来たわよ……って、兄さん!?
いつ気がついたの!?」
そこにはベッドから起き上がった兄さんの姿が。
「……よう、ドーベル。元気してたか。
……見ての通り、身体は大丈夫そうだ。」
「よかった……。それで私ね……。
ずっとずっと侘びたかったの。
謝りたかったの。
あの時私を助けてくれた兄さんのことを
拒絶しちゃったこと……。
私のせいで兄さんの心が傷ついて
この国にも居られなくなって……。
ずっとずっと後悔してた。
謝れないまま、もう一生会えないんじゃないか
って。だから、今やっと言える。」
そう言うと、ドーベルは頭を下げ、
「ごめんなさい。そして、
あの時助けてくれてありがとう、兄さん。」
満面の笑みで、そう告げた。
≫160ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:07:44「───ごめん、さっきから言ってる
『兄さん』って、誰のこと……?」
「……、え……?」
「いや、すごく申し訳ないんだが、
起きた時には既に、
ドーベルとグラウンドで
会った日以前の過去が……、
思い出せないんだ。」
この時、トレーナーの中から
完全に「オレ」が消えた。
代わりに「オレ」の存在は
ドーベルの記憶の中に残った。
皮肉なことに、ドーベルから消したかったハズの
ものが残り、トレーナーの生きる目的であった
贖罪の原点が、消え去ってしまった。
≫161ドべトレss最終章21/10/01(金) 17:08:16そして、数週間後。
「ドーベル!そのタイミングで加速しろ!」
「はい!」
『私』とドーベルは次のレースに向けて、
練習を重ねていた。
数週間も入院してしまって、
ドーベルには本当に申し訳ないと思ってる。
だからこそ、また、歩き始める。
「次のレース絶対優勝してやろうぜ!
ドーベル!」
「…………、うん。『トレーナー』。」
─────────────────────
「しかし、その口調と性格は変わらねえなwww」
「うっせえ兄貴!」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…par105【TSトレ】
≫18耐えるお兄ちゃん1 21/10/01(金) 17:26:42ひとつ、夢を見た。
見たこともない景色だが、どこか見慣れた景色。レース場だろうか。少し違うのは、私はトレーナーのはずなのにゲートの中にいて、周りには見たこともない奇妙な生き物がいることだ。四つの足で走る、鹿毛や芦毛の色をした毛やしっぽを生やした生き物達。夢の中の私は、その生き物と一緒に人を背負って走り出す。ただ闘争心に駆られてか、それとも──勝つためなのか。それすら分からない。
朝、最悪な気分で目を覚ます。
夢で見た景色、そしてあの生き物を、同じくウマ娘になった同僚に聞いても、そんな物は知らないという。レース場も、似たレース場は見つかるが、あの夢の中のそれとは違う。
気分を切り替えよう。そう考え布団から起き上がり、洗面所に向かう。私が鏡を見つめると、カワイイが、私ではない誰かが私を見つめている。死んだ目ですらカワイイのに、どこかカレンチャンの面影を感じて……鏡を殴りつけたくなる。こんなのは私じゃないと──カレンチャンはもっとカワイイのだと。
変化した直後は、精々カレンチャンに似ているという程度だったはずだ。妹のように見えなくもないと、その程度。なのに、今はカレンチャンとほぼ同じ見た目になっている。違うのはどこか余計なモノがあるから。そしてその余計なモノとは、たぶん、俺だ。
顔を洗う。心を切り替えるように、髪をツインテールに結ぶ。ツインテールはカワイイ。そして何より、カレンと私の違いだ。カレンチャンはみんなの妹、妹ポジションのキャラとして振る舞っているけど、「妹」ではない。「お兄ちゃん」と「兄さん」が明確に分けられてるように、どこか確実にそこで一線を引いている。
だからだろう。カレンの「妹」としてカワイイをしている間だけは、明らかにウマ娘化が和らいでいるのを感じる。カワイイがカレンチャンとは別の何かとして、自意識が確立していく。私はカワイイで居続けなければいけない。そうでなければ、男であった過去など忘れて、一人のウマ娘になってしまうだろう。
……以前はもう少しましだったのに、今では本当に数時間に一度しかちゃんとお兄ちゃんとして振る舞えない。それだけじゃない。自分の事をお兄ちゃんと呼んだはずなのに、まるで違う誰かのことを指しているかのように感じることさえある。いやそもそも、私は私をお兄ちゃんと呼んでいたのだろうか。それすらあやふやになりつつある。
≫19耐えるお兄ちゃん2 21/10/01(金) 17:27:00──時々、カレンチャンなら一人でも、俺がいなくてもやっていけるのではないかと思う時がある。俺がいなくても、カレンチャンなら世界一カワイイになれるだろう。
だってきっと、俺が渡せるものは、カレンチャンにとって必要だったものは、あの日の遊園地でもう全部あげてしまったのだから。カワイイに不似合いな弱気な考えが頭を掠める。
幸い、私に宿ったウマソウルにとってもこの事態は事故なのだろう。明らかに、私を維持しようとしてくれているのは感じる。
でなければ──平凡でちっぽけで冴えない、ただあの日の遊園地でカレンに声をかけたことしか自慢できることのないような俺の魂なんて、とっくに飲み込まれているはずだ。
今だって、ずっと心が…いや、魂が訴えかけてきているのだ。
走れ。勝て。証明しろ。──遺せ。
この衝動は、たぶんウマ娘の、いやウマソウルの本質的な何かなのだ。カワイイでなければ耐えられないほどに強い、何かが。
いっそテイトレのように足を折ってしまおうか。そんなカワイくない考えさえ頭に浮かぶ。でも、それはカワイイではない。テイトレにも失礼だし、カレンチャンに似たこの姿を傷つけられるわけもない。そもそも、平凡な男でしかない俺にそんな度胸は無い。私に出来ることといったらただ耐えることだけだ。
「ちょっと、お兄ちゃん! まだ起きてないの?」
カレンの声を聴いて、現実に引き戻される。
鍵のかかった扉を当然のように開けて、カレンが部屋に入ってくる。
そして私の様子を見て、一瞬、ほんの一瞬だけ顔を曇らせる。それでも、すぐにカワイイを取り戻して、いつものカレンになる。
「あーもう、お兄ちゃんの髪ボサボサじゃないの! それにツインテールの結び方も雑! カワイイが足りてない!」
「ごめんお姉ちゃん…」
「ほらちゃんと結んであげるから、そこに座って。お兄ちゃん!」
≫20耐えるお兄ちゃん3 21/10/01(金) 17:27:34言われるがままに座ると、カレンが私の後ろに立つ。流石にカワイイの年季が違うからか、手際よく私の髪を手際よく整えて、ツインテールにする。やはり、私が結ぶより断然カワイイ。
「…無理しちゃだめだよ、お兄ちゃん」
ふと、カレンが呟いたその言葉に、なぜか懐かしさを感じる。
少し考えてから思い出す。昔、無理をしていないかとカレンを心配した時のことを。
そうだ、あの時俺は、決めたんだ。カレンに付き合っていくと、カレンを信じると。これからずっと。カレンのためなら、お兄ちゃんはどこまでも耐えられる。
「お姉ちゃん。心配かけてごめんね。でも──」
それでも、一言だけ、一言だけ気力を振り絞って答える。
出来るだけ笑顔とカワイイを意識して、安心させる…だけでなく、カワイイを相手に分けるように。カレンがいつもそうしているように、相手を笑顔に出来るカワイイを。
「カレンが信じてくれるなら、それでお兄ちゃんは大丈夫だからっ!」
これだけはきっと、伝えなければいけないことだから。
「うん、そうだね。優しい…お兄ちゃん」
でも結局、カレンの声はどこか浮かないままだった。やはり私は、まだカワイイに相応しくない。
今日も、お兄ちゃんは耐える。カレンチャンが無敵である理由を一つ、失わないために。
お兄ちゃんが、カレンチャンのトレーナーであること。それだけは、変わりの無い…いや、変わって欲しくない事実で──
だからもう少し、お兄ちゃんがちゃんと胸を張ってお兄ちゃんになれるまで、今度はカレンに待っていて欲しい……なんていうのは、大人として、カレンに対し甘えている考えだろうか。
お兄ちゃんがカワイイになるまでの道は遠い。今はまだ。
うまぴょいうまぴょい
≫33二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 17:34:111発ネタpart4 超絶悪のモブトレーナー共が出ます
「俺達はウマ娘化トレーナー達に邪な気持ちを向ける悪の集い…さぁてめぇら!己の醜い欲を曝け出せ!」
「へい…あっしはブラトレやスズトレ達が走るランニングルートのゴミ拾いや整備をやりました…「最近道が綺麗になって走りやすい」なんて笑いながら言ってやがりましたぜ…おめでたい奴ら…いつも笑顔でいてね…」
「へへ…私は生徒会主催のお菓子作り会に参加してやったわ…作ったお菓子を貰いたかっただけなのに無邪気に手際がいいだとか味見して美味しいだなんて言って…嬉しくて泣きそうになったわ….あ、これみんなにお裾分けね」
「わーいありがとう…あっこの包みはオグトレさんのやつだ…素朴で美味しいんだよね…」
「ふふ…わしは彼等の症状と経過報告、精神的な変化とそれに伴って起こる問題点を資料にまとめて学会で晒してやったわ…これで一般の方の理解が深まり奇異の目が減る気分はどうじゃ?感想を述べよ」
「…その学会拝見させて頂いたんですけど…もしかして大先生…?」
「さぁ何のことやら…ほれ次いかんか」
「アッハイ…わ、私は肉体的な変化によって利用出来なくなった身分証明書や保険等の事務作業の手伝いをしてやりました…スリーサイズとかの個人情報を知りたかっただけなのにお礼なんて言ってやがったんです…」
「やるやん。分かっているとは思うが個人情報は…?」
「口が裂けても、死んでも漏らしません」
「それでいい…よし次だ!」
「はい!僕は彼等を描いて同人誌にしてやりましたよ!!」
「どれ…おお絵のタッチが可愛らしくていいじゃないか…これはテイトレ本か、こっちはルドトレでこれはフクトレ…」
「「「ぐああぁ!!」」」
「!?どうした吐血して!」
「て…テイトレが誰にも頼れずに一人曇って救われずに終わった…」
「ルドトレが心中して会長が泣き叫んで終わってるぅ…」
「フ…フクトレが担当とイチャイチャしてたと思ったら本人は心に深い傷を残してたビターエンド…」
「やっぱ可哀想なのが一番!次は交通事故に合わせて植物状態にします!」
「こいつ…もしや曇らせの民!」
「なんだと!殺す!」
「囲め囲め!袋叩きにしろ!!」
「このように俺達はワルの中の悪…どうかこれでご内密に…」
「うーん…まぁ警察はいいか…?」
「こんなにデザートビュッフェ券貰っても…みんなを誘って行こうか…」
≫129グラトレ担当?21/10/01(金) 18:24:52たまには親睦を兼ねて黄金世代TSトレーナーズでドライブにでも出掛けてみようという話になり、それぞれの担当ウマ娘を含めた6人で山の上の景勝地に行く事になったのが数日前の事
セイトレ「次は何処曲がるのかな?」
セイ「にゃははっ、セイちゃんナビによると3つ目の交差点を左ですよ〜?」
グラス「トレーナーさん2八桂馬で王手です」
グラトレ「……やりますね」
スペトレ「……何で車ん中で将棋やってんの?」
スペ「おか…トレーナーさん!お菓子食べても良いですか!?」
そんな感じのドライブが始まった!
グラトレ「ところで運転を交代制で行うのは良いのですが、何故二人は話合いで決めて私は山道固定なんでしょうか?」
スペトレ「グラトレは迷うからね……」
セイトレ「殆ど交差点の無い山道なら迷わないでしょ?」
グラス「街中だと私のナビも追い付きませんからね〜」
グラトレ「………………グラスまで……」
スペトレ「ナイスアイデアだよ本当に」
セイトレ「いや〜照れるね〜」
迷子の実績が多々有るグラトレを山道に割り振ったのは妙案だったとセイトレを称賛していたのだが…
≫130グラトレ担当?21/10/01(金) 18:25:21スペ「おかあ…トレーナーさん!後ろから凄い勢いで車が!」
セイ「お〜、中々スピード出してるね〜」
スペトレ「ん? 走り屋か? 居るもんだなぁ」
セイトレ「パッシングして……抜いて行ったなぁ……」
山道を走行中、後方からかなりのスピードで来た車にパッシングされた後に抜かされたのだ
スペ「私達邪魔だったんですかね?」
スペトレ「と……いうより勝負を吹っ掛けられてた感じだね」
セイトレ「ワゴン車にぃ〜?」
セイ「相手が居なくて暇なんですかね〜?」
そんな感じで軽く話のネタになる程度だったのだが……前の二人は違った様で…
グラトレ「…………パッシングですね?」
グラス「……………勝負の申し込みみたいですね……トレーナーさん?」
グラトレ「……そうみたいだなっ!」
「「「………………マズい!! 」」」
スペトレ「二人共、落ち着いぃぃぃっ!?」
セイトレ「冷せっ……冷静にぃぃぃっ!!」
セイ「シ、シ、シートベルト!シートベルト!」
スペ「わぷぅっ!おかあちゃ…トレーナーさん!しっかりぃ!」
グラトレ「……ワゴンじゃキツイか?」
グラス「………地図ではこの後6個目のカーブから先長い下りです、仕掛けるならそこですね」
グラトレ「了解!!」
スペトレ「止まれぇぇぇ!!」
「「「「アアア゛ア゛ア゛ッ゛!!? 」」」」
山の中に悲鳴とスキール音が響く…
スペトレ「言い訳は?」
グラトレ・グラス「「無いですごめんなさい……」」
その後、休憩所でスペトレによる説教が始まったとかなんとか……
≫140タキトレはこういう奴だよ1/2 21/10/01(金) 18:31:33「時にモルモット君。ウマ娘になったトレーナーたちから母乳が出るようになったという話は聞いているかい?」
日常生活においてはまず聞くことのない発言を聞いて、飲み物を飲んでいた自分は咽て咳き込んでしまう。
昼食の時に「今日の天気は晴れですね」、とでもいうような口調でいきなり放り込まれる衝撃発言。今この発言をした人物は、TPOなんていうものを踏み荒らして我が道を行く天才だということをどうやら自分は忘れていたようだ。
「うわッ⁉いきなり咽ないでくれよ。この白衣洗濯したばかりなんだぞ?汚れたらどうしてくれるんだい?」
何を言うかと思う。先にとんでもないことを言ってくれたのはそっちだ。後白衣は汚れることが前提の服じゃないか。
しかし口には出さない。生活において彼女自身がする数少ないことである洗濯で、自身が洗濯したばかりの服を他人に汚されるのはあまり好きではないのだろう。口に出してこれからの洗濯を全て押し付けられても個人的には嬉しいのだが、それはそれで洗濯をする彼女の姿を見れないのが困りどころだった
「ゴメンね。でもいきなり何を言うのかと思って」
「そんなに驚くようなことかい?既に学園では噂になっているよ。ロブロイ君なんて牛に好かれやすいものだからトレーナーの乳搾りをした、なんていう噂がたっているぐらいだからね。まぁ嘘だろうが」
「あはは……」
本当です。
心の中で眼前の彼女にバレない様に口に出す。トレーナーたちのミーティングが終わった後、母乳が出るようになってしまったトレーナーたちで話している時に聞いてしまった。洗濯のことと同様、いや洗濯のこと以上にこのことについては秘密にすることを決心した。タキオンには悪いがこれも彼女たちの名誉のためだ。
「でも、人それぞれらしいよ。俺は出てないし」
胸を隠すようにして彼女の目線に胸部が入らないようにする。体の隅々まで知り合う関係ではあるが、それとこれとは話が別だ。
「ふぅン…まぁ、いいか。それよりモルモット君。箸を持つ手が止まっているよ。速く食べさせてくれよ。昼休みが終わってしまう」
はいはいと返しながらタキオンの口元に箸を運ぶ。最初は手慣れてないせいで安定しなかったが、今となれば話は別である。そう時間が経たないうちに弁当の中身は全て彼女の胃に収まることになった。
≫141タキトレはこういう奴だよ2/2 21/10/01(金) 18:32:09「しかし、今回は随分と面白い事象だねモルモット君」
「まぁ、それはそうだけど、何か気になることでもあった?」
「気になることだらけさ。男がいきなりウマ娘になり、男と肉体関係を持っていないにもかかわらず多くの者から母乳が出る。事象としてはくだらないが、何故発生したかについては気になるところだね。ウオトレ君のこともあるから私も流石に神の存在を信じ始めてきてるが」
弁当を食べ終えたタキオンが今回の出来事に興味を向ける。そういえばそうだ。やっていること自体はバカみたいだが、規模が広すぎる。こんなことをするのはよっぽど暇な奴なんだろう。
そう思っていると、タキオンが何かを思案するような顔をしていた。一体何を考えているんだろうか
「トレーナー君」
「うん?どうした?」
「嘘をついているね。キミ本当は母乳が出るだろ」
バレた。というかバレていた。
実は自分も朝から母乳が出ていた。朝起きた時に白い液体が胸から出ているのを見てどうすればいいか途方に暮れていた。無論対策はしていたがまさかこんなにもあっさりと看破されるとは。
「ちなみに、どこらへんで解りました?」
「まず匂いがいつもと違う。いつもは香水をつけないキミが今日に限っては香水をつけている。そしてさっき嘘を吐いた時に手を後ろに回してたろ?キミは嘘を吐くときは片手を後ろに回すからね。あの時点で解っていたよ」
自分の癖まで見抜かれていることに驚愕すると共に、彼女が自分をそこまで見てくれていることに嬉しさを覚える。嘘がバレて状況は良くないが、彼女が自分の知らない自分まで知ってくれているのはそれでも嬉しかった。
「それに噂を聞いて、出るかどうか私が試さないはずないだろう?ホラ、さっさと胸を出して。食後のデザートにはちょうどいいだろう?」
≫142タキトレはこういう奴だよ+121/10/01(金) 18:32:32「タキオン。それ変態の言うことだよ」
そう返しながら上に来ていた物を全て脱ぎ捨てて、彼女の前に胸を突き出す。今までもやってきたことだが、白昼堂々とこんなことをやることになるとは思わず思わず顔をそむけてしまう。部屋の空気が胸を撫でるような気がして妙に落ち着かなかった。
元より彼女に求められれば自分は差し出すつもりだった。少々恥ずかしくはあるけど、それがタキオンにとって善いことであるのなら、自分には断る理由が無かった。
「じゃあ、いただきます」
彼女の端正な顔が近づいてくる。男だった時ならば味わうことはなかった感覚をこれから味わうのだろう。
それは少し怖いことだけれど、彼女に与えるならそれも悪くは無いと赤ん坊の様な彼女の口が胸元に近づいていくのを見ると共にそう思うのだった。
≫149二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 18:42:28キントレSSの続き1
「なぁ、本当にやるのか?」
「当然じゃない、このキングのショッピングに付き合う権利をあげるわ」
いつものように笑みを浮かべるキングヘイローだがトレーナーは若干気分が沈んでいた。
「やっぱりさ、俺男だし服も男物でいい気が・・・。」
「おだまりなさい、そんな身体で何を言っているのかしら?」
キングヘイローの目に映るのは同室のハルウララと全く変わらない身長まで縮んだにもかかわらず、どういうわけか男にはなかった膨らみが確かにある。
ウマ娘となってからもトレーナーは自分のあり方を変えなかった、それ自体は別にいい、トレーニングだってウマ娘になったからと何故かトレーナーも参加してサポートに回り、トレーニング効率は明らかに上向きだ。
それにしたって身だしなみがいただけない、たづなから支給されたトレセン学院ジャージばかり着てこちらを優先するばかりである。
嬉しいには嬉しいが、それはそれ、これはこれ、このキングのトレーナーであれば身だしなみにも一流の心構えを持ってほしいと思うのがキングの思いだった。
「いいこと?このキングが教導してあげるのだから、しっかりと気を使いなさいな。」
≫150二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 18:42:35「・・・ああ、わかったよ。」
渋々ながら服屋へと足をすすめるトレーナーであるが、キングは知らなかった。
普段ジャージばかりだしウマ娘化した際もダボダボなスーツだった。
つまるところ、その「未知の素材」がしっかりとした身だしなみをすればどうなるか。
ハルウララと変わらない体躯でありながら出るところは絶妙に自らよりも大きく、いわば出ているところは出ていてそれ以外はしっかりと引き締まっている。
キング指導の元、完璧な身だしなみを整えた普段自らを支えると言ってくれているトレーナーの前にキングの自信ではない何かが壊れた
≫161ドベトレ真エンド21/10/01(金) 18:52:33今日はアタシの誕生日。
マックイーン達や他の皆が祝ってくれるみたい。
正直、ちょっとワクワクしている自分がいる。
「でも、兄さん……、いや、トレーナーは
アタシの誕生日知らないわよね……。」
あのテロ事件の後、兄さんがこの世から
姿を消した。
後からマックイーンのトレーナーさんから
聞いた話によると、
私が思い出さないように、兄さんは
自身に関わる全ての情報を抹消したらしい。
「…っ、もう何にも…っ、
残ってないの……グスッ。」
最近ずっと落ち込んでいたのを見かねてか、
マックイーンとマクトレさんが
今回のパーティーを企画してくれた。
…本当に、マックイーンはお節介なんだから。
─────────────────────
私の誕生日パーティーは滞りなく進み、
プレゼント開封を残すだけだった。
「皆、本当にありがとう。
……少し、元気でたかも。」
皆の思い思いのプレゼントには、
私の好きなコスメや雑貨などが入っていた。
そして、最後に残ったのは、
少し不格好小さな箱。
「これが最後ね。……、やっぱり兄さんは……、ッ!?」
プレゼントの大トリを務めたのは、
私が一番欲しい『あれ』だった。
≫162ドベトレ真エンド21/10/01(金) 18:53:05トレーナー室の扉が勢いよく開かれる。
「トレーナー!!これって……!!」
箱の中の『オレ』からの手紙を見て、確信した。
「……『兄さん』でいいよ。ドーベル。」
そこには、昔と変わらない笑顔があった。
「……!でも…。どうして…。」
「婆さんからウマ娘化のシステムを
聞いててな。……あれは、魂をぶち込んだり、
引っこ抜いたりするらしいんだけどよ。」
「三女神が俺の魂を保管してたらしくてな、そんで昨日の夜、『オレ』を見つけたんだ。」
「……うっ…、う゛う゛……グスッ。」
「夢ん中で『オレ』が言うんだ。
『オレの生きる目的はドーベルへの贖罪だと思ってた。でも、それだけじゃなかった。
あの事件より前から持ってた生きる理由を
思い出したんだ。』ってな。」
「……うん……!!」
「『オレがドーベルを守る。』って。
『一生かけて守る。』ってな。」
「……あっ……。」
「それにあの時、お前にご褒美あげられなかった
だろ。だからその時のプレゼントっつー訳よ。」
「エメラルドグリーンのリボン……。
あの時と同じ……!」
「そんでオレも自分の分買ったぜ。
まあ、付け方分かんねえんだけどよ。」
「……後でつけてあげるわよ。」
「……前置きが長くなっちまったが、
ただいま、『ドーベル』。」
≫163ドベトレ真エンド21/10/01(金) 18:53:36「…う゛っ、ううっ、
うわああああああああああん!!!!!」
「泣き虫は治んねえなあ!お前はよ!!」
「だって……、だって……グスッ。」
ドーベルは兄の胸で泣き続ける。
「……改めて言わせて貰うぞ、
次のレース、絶対優勝しようぜ!
ドーベル!」
「…………うん!『兄さん』!!」
終わったはずの贖罪の旅。
されど道はまだ遠く。
寄り添う二人の行先を
月の光がただ照らす。
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「お前、担当とお揃いとか可愛いトコある〜!
ドス黒い瞳も戻ってるしwww」
「うっせえ、兄貴!」
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