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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part656【TSトレ】
≫49二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 12:20:07
『ねこしんし』
「おい、トレーナー」
「なんだブライアン」
いつも通りの朝、いつも通りのミーティング。しかしブライアンの目に映るのは異常なる光景。
「今度は何事だ」
「何事……まあ見ての通りだな。猫になったんだよ猫に」
「私の知っている猫において、その姿は映画でしか見たことない」
猫になったとブラトレは言ったが、猫は猫でも猫紳士である。それがスーツを着て紅茶のカップを傾けながら炬燵でティータイムを楽しんでいるのだからあまりにも統合性のなさすぎる光景なのだ。
「おかしいなー、よそのトレーナーは結構普通の猫になってたんだけどねぇ」
そう呟きながらブラトレはタブレットを見せる。そのアルバム画面にはいろんな担当ウマ娘に抱えられたトレーナー……と思わしき猫の姿がずらりと並ぶ。ブライアンははぁとため息を一つつき、どうせまたよくわからぬ現象が起きたと切って捨てた。もはや何度目かわからないのだ。
「それにその気取った白スーツにシルクハットはどこから出てきたんだ」
それよりも気になるのはブラトレが大変パリッとしたスーツを着込んでいること。これも映画で見た。
「これ?これはねぇ、ちょっと前にジブリいいよね……ってロブトレとやってた時に、適当に実物大で採寸してウオサブが作ったやつ」
ブラトレは思い返しながらまたカップを傾ける。炬燵に入り込んでいる、という一点を除けば大変絵になる光景である。
「ちっ、気になって仕方がない……まあ良い、今日のトレーニングは問題ないんだろうな」
「まあ大丈夫じゃあないか?走るのはちょっと怪しいんで併走はやめとくが」
そうしてブラトレが立ち上がって背伸びをする。殆ど猫のそれのような背伸びの仕方を見て、ブライアンは少々手がうずうずしてきた。
「ん。……あと、ちょっといいか」
「ん?どうしたブライアン」
「……撫でさせろ」
口に出した後、少々ばつが悪そうに顔をそむけるブライアン。
「あー。なるほどねぇ」
「おい、ニヤニヤするんじゃない。あくまでもあんたは『バロン』としてふるまえ」
「了解。ではお手をどうぞ、レディ?」
そう言って頭を少し下げる。背は、ブライアンより高くなっていた。
「ちっ、やっぱりあんたが入ってると思うと微妙だな……撫で心地しか取り柄はないのか」
「酷い言い草だ!」
そう言いつつも、しっかりブライアンは手触りを楽しんだ。
50二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 12:20:16
「おい」
「どうしたブライアン」
頭を撫でる手が止まる。
「あんたは勝手に、どっか別のところにいなくなったりするんじゃないよな」
「そりゃどういう事だ。もしや、この姿見てからそう思ったのか?」
そう言い返され、ブライアンはちっと一つ舌打ちをすると頭から手を放し、トレーナーに背を向けた。
「……つまらんことを聞いたな。忘れてくれ」
するとブラトレは逆に、ブライアンの頭に手をのせる。
ぴくっと耳が動く。
「俺はいなくならないさ。だって、ブライアンが俺のことを必要としてくれているからな」
「……はっ、口ぶりだけは一丁前の猫紳士だな」
だが、そう口にされたことで多少安心したのか、尻尾はゆらりゆらりと揺れ、機嫌も良くなっていた。
結局猫から戻ったのは、夕暮れ時になってからであった。
戻るまでの間、チームメンバーからも散々撫でられまくったせいで頭の毛は少々ボサついていた。
≫55二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 12:33:20
「トレーナー、お邪魔するでー」
「ヨシ!」
「おお、邪魔してええんか。ほいならお邪魔して……」
「ヨシ!」
「ってヨシちゃうねん!なんやそのチンケな猫は!」
「ヨシ!」
「ヨシちゃうて!いつもの黒髪はどこいったんや!」
「ヨシ!」
「ヨシヨシヨシヨシうるさいわ!クリークか!」
「タマちゃん呼びましたか〜?」
「呼んでへん!」
「ヨシ!」
「あらまぁ可愛い猫ちゃんですね〜」
「ヨシ!」
「なあクリーク。なんとかしてくれへんか?」
「よしよし〜」
「どうして」
「お!別のこと喋ったで!もっとやるんや!」
「ヨシ!」
「よしよし〜」
「ちゃうわ!そうじゃないわ!」
黒さんごめんなさい出来心だったんです
≫87二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 14:39:00
ニャンコなグラトレ(独)リターンズ
「トレーナーさん? グラスワンダーですよ~♪」コンコン
「」
「あら?」
授業も終わり、私はトレーニングの打ち合わせをする為にトレーナー室へと向かったのですが、トレーナー室から返事が有りません。
「…………失礼します」
「にー……にー……」
「……トレーナーさん…………また、ですか」
疑問に思いながらもトレーナー室へと入らせて貰うと、炬燵で寝ている一匹の黒猫を発見してしまいました。
「にー…………ふみゃあ~……みゃ? 」
炬燵から頭だけ出して呑気に寝ていたトレーナーさんは、どうやら私の気配に気が付いたのか目を覚ましてしまいました。
「ごめんなさいトレーナーさん、起こしてしまいましたね」
「みゃあ、みゃあ」フルフル
トレーナーさんは、黒毛に覆われた可愛らしい顏を振る事で否定としています……今回は言葉が分からないですね……
そんな事を私が考えていると、トレーナーさんは
「みゃっ!」シュタッ!
炬燵の上に軽い身のこなしで飛び乗り
「ふみゃぁ~っ」ノビー
なんとも寝起きの猫らしい所作で背伸びを始めました。
「ふふっ、本当に猫みたいですねトレーナーさん♪」
そう私が思った矢先 ボフンッ という音と共にトレーナーさんは煙に包まれ
「みゃっ、元に? ………………ふみゃっ!!?」
全裸ですが元(元?)のウマ娘の姿へと戻るのでした……直前の猫らしい伸びをした体勢のまま……
「ごめんなさいトレーナーさん……いただきます」
お尻を強調する様な体勢のトレーナーさんに誘われる様に、私はトレーナーさんへ手を伸ばすのでした。
うまぴょいうまぴょい
≫92二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:50:07
某日、何処かの家で
「…んんっ…」
「おはようございます、トレーナーさん」
朝日の差し込む部屋で、目を覚ましたサトトレに掛けられる声。…担当であるダイヤの聞き慣れた声だった。
「…おはようダイヤ、よく眠れた?」
「はい♪」
上半身を起こしたサトトレの顔を前から覗き込むような姿勢で見つめるダイヤ。少し呆けたサトトレの前髪を上げ
「…」ジィー
「…ダイヤ?」
「綺麗な瞳ですねトレーナーさん…」
「ひゅっ!?」
僅かに目元を舐められた事に驚くサトトレ。満足したのか離れるダイヤを見ながら、でも特に文句の一つも言わない。
「それじゃあ…」
「ちょっと待ってダイヤ」
部屋から出ようとしたダイヤを引き止めて、ベッドからおりたサトトレは歩み寄る。そして…
「誕生日おめでとう、ダイヤ」
満面の笑みで、そう言った。
「…!」
嬉しいのか、照れているのか。珍しく顔を赤くしたダイヤは
「はい、ありがとうございます♪」
思わずサトトレを抱き締めて彼の耳元で言う。
えへへ…と笑い合う二人。そのまま暫く抱き合った後、離れてから
「それと、プレゼントがあるんだ。」
93二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 15:50:38
ごそごそと後ろの棚に仕舞ってあった袋を取り出し、ダイヤに手渡す。
「ありがとうございます。……!」
…中から出てきたのは白い糸で編み込まれたネックレス。一つつけられた小さなダイヤモンドがきらりと輝く。
そのネックレスをベッドの上に上り、サトトレはその首に掛ける。やや背伸びしてるのが微笑ましい。
「…よし、これでいいかな。どう?」
「最高です!」
「うん!よく似合ってるよ」
ダイヤの白い肌に金色の金具とブリリアントカットのダイヤモンドが映える。満足気なダイヤは
「ねえトレーナーさん、もう一つお願いがあるんです。」
「うん、何かな?」
「ふふ…」
ガバッという音と共にベッドにサトトレを押し倒し、
「今日は好きにしてもいいですよね?」
「〜っっ!……うん」
「ありがとうございます♪」
───その後は…二人の秘密である。
短文失礼しました
今日はダイヤの誕生日だそうですので、それをネタに一本。ネックレスは当然サトトレの手作りです。
猫カフェはどうなんでしょう、意外と詳しくないからうちのがどんな感じになりそうか分かんねぇ…
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part657【TSトレ】
≫35Debug・dancer序章22/01/30(日) 22:12:45
(では、アグネスデバイスメイクデビューSSのプロローグ行きます)
推される。という感覚ははたしてどういったものだろうか。
推し活はデジタルの担当トレーナーになってから何度も目にしている。ウマ娘達の様々な活躍を見てはその度に(周囲の迷惑にならない範囲で)狂喜乱舞し、感動で滂沱の涙を流して挙句には失神するデジタルの推し活を見守りつつ、自分も彼女の楽しそうな姿とレースでの非凡な才能に魅了されていた。
故に、ウマ娘になった今ならアタシもデジタルに感動を与えられるのではないかと。アタシも、デジタルに推されてみたい。ウマ娘の身体になってからそんな感情が芽生えていた。
試しに「デジタルを担当トレーナーにしてレースに出たい」と彼女に言ったところ「キタアァァ――――――――ッ!!」返って来たのはまさかの絶叫だった。
どうやらデジタルもアタシの育成をしてみたかったらしく、こっちから言い出して来た事が嬉しくてつい叫んでしまったらしい。先程の自身の行動を思い返して恥ずかしそうにしている姿がなんともかわいらしい。抱きしめて愛でたいが、やってしまったら絶対失神してしまうので我慢した。
「正直デジタルも自分のレースがあるから言おうか迷ってたんだ。いい答えが返って来るのは予想出来るんだけどね」
「ウマ娘ちゃんのトレーナーなんて全てのウマ娘オタクが憧れる立場ですからね。推しを応援するどころか自らの手で育成出来るなんて……デジたんはなんて幸せものなのか……」
様々な感情が極まった恍惚の顔でこれからのトレーナーとしての生活に思いを馳せるデジタル。この普通ならドン引きしてしまいそうな表情も愛らしく思える辺りアタシも大分染まって来ているのだろう。
「ホント、どうなって行くのかな……」
アタシもまた、彼女と同じ様に競争ウマ娘としての未来を思い浮かべる。
デジタルと同じ様に一線級の舞台のセンターで活躍する事が出来るか、それとも並み居る強豪達の影に埋もれ、バックダンサーとして終わってしまうか。
不安は多いが、今はただ挑戦出来ると言う事が嬉しくてしかたなかった。
≫101Debug・dancer222/01/31(月) 00:58:05
アタシがトレーナーとしてデジタルの指導をして、また別の日にはデジタルがトレーナーになってアタシことアグネスデバイスの指導をして。トレーナーと競争ウマ娘。それぞれの視点を交互に入れ替えながら進めたトレーニングの日々は順調に進み、アタシも自分にあった走り方を習得するのに時間はかからなかった。
しかし、何事も上手く進むとは行かず、現にアタシ達は壁にぶつかっていた。
「落ち着いて、ゆっくり息をしてくださいねデジトレさん」
グラウンドを一周走り終わった後、並走相手のファルトレ(蒼)に背中をさすられながらゆっくりと呼吸をする。
「なかなかスタミナに伸びが見られませんね……トレーニングのやり方に問題は無い筈なんですけど」
ノートに書かれたこれまでのトレーニングの内容を見ながら頭を悩ませているデジタル。
アタシが真っ先にぶつかった壁は体力の低さだ。走っている最中に息切れを起こす事が多々あり、酷い場合はせき込んでしまう事も少なくなかった。
「今度、ボイストレーニングの時にデジトレさんにあった呼吸法を探してみましょうか」
ファルトレもアタシの体質の対処法を考えてくれていた。
「じゃあお願いしようかな。お礼は新曲の振りのコツでいいかな」
「あーあの曲ですか。振り付け覚えるのに苦戦してたんで助かります」
「指導は同じ日にした方がいいかな」
「そうですね。ちょっとスケジュール確認しましょうか」
二人で今後の予定を立てる。
ファルトレとはダート適性持ち同士で一緒にトレーニングをする事もあるが、アタシはダンス講師。むこうは声楽講師として互いにライブでの動きを指導する事がよくあった。
「二人のウマ娘ちゃんが互いの得意分野を教え合っている……尊……」
「ファル子としてはちょっと妬いちゃうかなー」
アタシ達のやりとりをまるで大自然の絶景でも見たかの様な感動と興奮が入り混じった顔で見詰めるデジタル。逆にスマートファルコンは少し複雑そうな表情だ。
「あ、もうこんな時間か」
ふとグラウンドの時計を見ると練習時間も残り少なくなっていた。とりあえず今日はあと一周走って終わりにしよう。
102Debug・dancer222/01/31(月) 00:58:47
「ではラスト一周お願いします!」
デジタルの合図と共にファルトレと同時に駆け出す。
先に逃げて行くファルトレの背中を追う。途中、脚に力を入れて多少前に行きつつも体力を温存しながら進んだ。
最終コーナーに差し掛かる。ここで一気に距離を詰めていき、ファルトレの隣を奪おうとする。相手もこちらに気付き引き離そうとするが、温存していた体力を駆使して差を縮めた。後は抜き去るだけ。コーナーを抜け最終直線に入り、スパートをかけようとした瞬間______異変が訪れた。
呼吸が出来ない。まるで時間が止まったかの様に周りの景色が動かなくなる。感覚が消える。
視界が一瞬暗転すると、バランスを崩し目の前がひっくり返る。転倒したのか。
もう一度暗転。元の立ち上がっている状態になり消えていた感覚も元に戻る。
これは何だ?幻覚か?
今度は本当にバランスを崩したのか上手く立てない。せめて脚を痛めない様に気を付けながら内ラチに身体をぶつけた。ずるずると地面にへたりこみ、「ぜー……ひゅー……」と荒い呼吸を整える。
「トレーナーさん!」
コースの外から見ていたデジタルとスマートファルコンがこちらに駆け寄る。ファルトレもいつの間にか近くに来ていた。
「お怪我は大丈夫ですか⁉いったい何が!」
青い顔でアタシの脚を触診するデジタル。その横ではファルコンが持って来た救急箱をスズトレが手際よく準備していた。
「ちょっとバランスを崩しちゃった。とりあえず脚に痛みは無いよ」
「腕をすりむいてますね……あ、背中にも傷が」
ファルトレがアタシの服をめくって怪我の位置を確認した。負傷したのはラチにぶつけた上半身のみの様だ。脚が無事なのは不幸中の幸いか。
ひとまず怪我を悪化させないための応急処置を施されていく。
「見たところ大きい怪我ではないけど、念のため保健室で見て貰った方がいいですね」
「ここはファル子達で片付けておくから大丈夫だよ☆」
「ごめん。助かるよ」
ファルトレ達に促されてデジタルと共にグラウンドを後にした。
≫128二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 09:50:31
グラトレ(独)の場合
「ああっ! ……流石ですねトレーナーさん」
「ふふっ、グラスも強かったですよ~」
「では、トレーナーさん……私の顔に墨を……ううっ」
「ふむ……グラスの顔に墨を塗るのは忍びないですね〜……そうです」
「トレーナーさん?」
「では、失礼して……」
チゥ−
「ト、トレーナーさん!?」
「プハァ……ではグラス、この様に羽子板で負けた者は首筋にキスマークを付けられる……というのはどうでしょう〜」
些細な事柄でも独占力を隠さない……そんなグラトレ(独占力)
他の皆も墨の代わりにキスマークを付けても良いと思うの……独占力開放しよ?
≫149二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 11:28:49
アグネスタキオンとそのトレーナーについて
「さてトレーナー君。心の準備はできたかい?」
「…………はい?」
「えーっ⁉何もそんな苦虫を10匹ぐらい噛み潰したかのような顔をしなくて良いじゃないか⁉アレかい?君は顔に墨を塗られるのがそんなに嫌なのかい⁉」
「いやだって、それ明らかに墨の色をしてないし……発光する空色の墨なんて初めて見たんだけどナニコレ?」
「良いかい?これは私がオペトレ君から依頼されている蛍光塗料だ。光と熱に反応して発光するものでね。どうせ塗るものならとついでに実験することにしたんだよ」
「何をしているんですかオペトレさん……」
「さあ?何やら演劇に使うらしいけどどう使うかまでは知らないねぇ。それよりホラ、この後も羽根つきをするんだろうから目頭を押さえてないで目を瞑ってさっさと顔を差し出したまえ」
「はいはい。……ひゃあっ⁉どうして指で書いてるの⁉」
「筆だとキミはくすぐったそうにして動くだろうし、指の方が描きやすいからだよ……出来た。目を開けても良いよ」
「ん、ありがとうタキオン。……描かれてる時は二重丸かなと思ってたけど、これ……タキオンの髪飾りのマーク?」
「正確にはインダンという物質の構造式だね。これから恐らくキミは色んな人と羽根つきをするんだろうけど、一番最初に書くならやはり私とわかるものじゃないとね?ほら、『持ち物には名前を書いておけ』とはよく言うだろう?」
「人を物扱いするなんて随分とひどいウマ娘。でも、ふふ……こうしてみてみるとタキオンとお揃いだね。なんかすごい嬉しいな」
色の違う墨で自分のマークを描いて自分の物アピールをするタキオン
羽根つきで独占力を発揮するという発想天才的だと思うの
≫166二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 12:49:04
「つまりは自分もまとも枠って訳よ。クォド・エラト・デーモンストランドゥム」
「イミわかりまセーン」ケラケラ
「……タイキ、今のはQ.E.D.って言ってね」
「でもトレーナーさん、まともデショ?って聞かれたら?」
「そんなことないって答える!」
「オゥ、ファジー……」
「玉虫色っていい色よね……英語だとボールインセクトカラー?」
「ノーウ!タマムシはJewel beetleでーす!」
なお玉虫色はJewel beetle colorではない模様
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part658【TSトレ】
≫39二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 17:12:25
パラパラパラ!言うっちまうの南斗水鳥拳、パラシンちゃんです!
ここ最近死鬼封陣されてましたがなんとか復活しました!
今日はこちらのクラッカーを後ろからいきなり鳴らそうと思います!
おや、こんな早朝の購買でビクビクしているニット帽の変な尻尾をしたちっちゃいウマ娘ちゃんは…おいたわしや、許してくだされ
そーれ!パアン
「ヒイッ!?!?」
ドッキリ大成功で…で…?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
どうしましょう、ガチでうずくまってしまいました。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
とりあえずは様子を見守り
「じゃあな」
そこで私の意識と記憶は途絶えた
───────────────────
おはようございます!みんなのアイドルパラシンちゃんです!
昨日の早朝からの記憶がありません。ついでに何故か階段から動けません!
「座標を固定させてもらった。じゃあセイトレ、ブルトレ、やってしまいなさい」
ちょっと待ってください何が起こ
ヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤッフーーーーーーー!!!
ぱらぴょいぱらぴょい
≫85Debug・dancer322/01/31(月) 18:46:19
保健室で養護教諭であるタキトレに怪我と脚の状態を見て貰ったが特に選手生命に関わる様な物は無く、身体の傷も時間が経てば回復するとの事で一安心だ。
しかし問題はまだある。先程転倒する際に見た幻覚の件も含めてタキトレのカウンセリングを受けていた。
「レース中に転倒する幻覚を見るか……何か心当たりはある?」
「ウマソウルの記憶かな。転倒したのが原因で命を落としてるんだけど」
「となると考えられるのはPTSDか。呼吸困難も過去の記憶を想起した際の発作によるものかな……」
「トラウマはウマ娘化を決めた時に乗り切ったと思ったんだけどな」
「頭では克服してても、身体が勝手に反応してしまうのはよくある事だよ」
アタシのウマソウルは転倒で大怪我を負ったのが原因で幼くして命を落としている。
ウマ娘化した当初はそのトラウマにより危うくウマソウルが消滅しアタシの人格も消えかける所だったが、アタシやデジタルの説得によってどうにか思い留まり、最終的には元の人格と混ざって一つになった。
「一朝一夕で治る物じゃないからね。気長に付き合うしかないよ」
「そっかぁ……またデジタルに迷惑かけちゃうな」
「こんな時は思いっきり頼るのが正解だよ。俺の所にも何かあったら来てな」
86Debug・dancer322/01/31(月) 18:47:08
ファルトレと言いタキトレと言いアタシの周りには何かあったら直ぐに手を貸してくれる人が沢山いて感謝してもしきれない。アタシがデジタルだったら泣いていただろう。
その後診察を終えたアタシは外で待っていたデジタルと顔を合わせた。
「お待たせ。怪我は大丈夫だったよ」
「もうほんっとに心配しましたよ!大事に至らなくて何よりです」
安堵の表情で大きなため息を吐くデジタル。どうやら中での会話は聞こえていたらしい。
「……やっぱり辛い記憶はそう簡単には消えないんですね」
「うん、自分でも気づけなかった傷痕が残っていたとは」
「タキトレさんも言っていた様にゆっくり向き合いましょう。あたしはずっとトレーナーさんの側にいますから」
告白とも取れる言葉でアタシの今の名前を呼ぶデジタル。
小学生にも見える小さな身体なのにいつも頼りになるアタシのトレーナーに愛おしさと温もりを感じつい抱きしめてしまった。
「やっぱあったかいなぁ……湯たんぽみたい」
「ちょっトレーナーさんダメですって……ハグなんてそんな……ふぁいいかほり……」
ウマ娘と触れ合う遠慮から硬くなっていた表情が次第に綻び、恍惚のものに変わって行く。
ウマ娘化して好意を自覚して以来、こうしてデジタルを抱きしめる事が多くなった。それは想い人を近くで感じたいと言う理由もあるが、同時に母親に甘える様な気分にもなる。
ウマソウルが幼いのが原因だろうか。
男だった頃からは想像出来ない程変わってしまったが、こうしてデジタルと触れ合えるなら安い代償だ。
そろそろ限界みたいなのでデジタルを開放する。
「はひー、はひー……と、ともかく今後の方針を改めて考え直しましょうか」
先程のアタシと同じ様な荒い息をしているデジタル。
「心に、身体に……なんで走りたいだけなのに邪魔が入るのかな」
「無事に走る事が一番大事ですよ。一緒に乗り越えていきましょう」
「……だね」
レースまでの道に影が差し込んだ事に気を落としているアタシを気遣うデジタルに少し弱めの声で返事をする。
いつもなら彼女の言葉に勇気を貰い立ち直る事が出来るのだが、今は妙な息苦しさを感じていた。
≫93二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 19:01:02「メガネを外すと目を細めなくてはモノが見えなくなるのでイヤなんですよね」「🕶」
「度入りのサングラスですか?うーん、どこか『輩(やから)感』が出てしまう気がして……」
『ウラトレさんはコンタクトにしないのかい』
「メガネ込みでわたしの顔なんですよ。ある意味すっぴんを見せるようなものです」
「……」
「ウルウルした目で見たってダメですよ。……ああいや、ここで勿体ぶるからダメなんですね。はい」スッ
「……」パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「連写するほどのことですか!」
『なんやかんや使えるかもしれない。ちなみになんやかんやはなんやかんやだ』
「ほほぅ……それなら、えいっ」
「……」←イクトレwithウラトレ眼鏡
「……」
『……せめて反応が欲しい』
「……微妙に似合ってる?」
「😞」
「そう言えば、イクトレさんは『ウラトレちゃん』って呼ばないんですね?」
『何故か迷ってしまった結果、さん付けに落ち着いてしまった』
「何故迷うんです?」
「🤷」
「何故迷うんです??」
『あの、圧がこわ「何故迷うんです????」』
「……ゴメンナシャイ」
「……特派員マルトレは見た。過去類を見ないガンを飛ばしながら幼女を壁際に追い詰める某トレーナーウラの顔ぉぉーー!!」脱兎っ
「ああっ!?待ちなさい!」
「はーーはっはっはぁ!追いつけるもんなら追いつ、意外と速っ!?」
ほどなくスタミナ切れでヘロヘロになったウラトレだった。うまぴょいうまぴょい
≫102二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 19:11:20
「青タボは……随分と、こう、ハイカラなのを着けているな」
「おうよ! 不思議なもんさ、今まで着けてなかったのがウソみてぇに馴染むんだ!」
「……周りの反応は?」
「今一ピンと来てねぇらしい。ま、そのうち分かんだろうさ、コイツの良さってもんがよ!」
「アニキのカッコいー! ターボも、ターボも着ける!」
「おう、いいぜ。ほい、ターボの分」
「わーい! ……どう? ターボかっこいい?」
「カンペキだぜターボ! こりゃあ俺も負けらんねえな!」
「で、そういう赤タボはまたクールな眼鏡だな」
「奇をてらったデザイン、という訳じゃないからな。実用性重視だ」
「それもまた一つのカッコよさってな! バッチリ似合ってるぜ」
「ん、ありがとう……ターボ、どうした。俺の方をじっと見て」
「……ターボ、そっちも着けてみたい!」
「ああ、そういうことか。いいぞ、ほら」
「そーちゃく! へへん、どう? ターボ似合ってるかな!」
「勿論似合ってるよ。3割増しで賢そうだ、流石ターボ」
「へっへーん! あ、そうだ! いいコト思いついた!」
「クールな眼鏡で知性もアップか、やるなターボ!」
「時に閃きは侮れないもの……ターボ、何を思いついたんだ」
「二人のメガネ、一緒に着けたらもっとカッコいいかも! 三人で!」
「「……?」」
その日、奇抜な星形のサングラスと落ち着いたメガネとを同時に着用した三人が各所で目撃されたという。
≫136二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 21:52:16
───どうしてこうなった
「…」
「…」ニコニコ
「…(ん?という顔)」
固まったモブトレは内心呟いた。
───時は遡って少しほど前
「ふぅ…やっぱ毎日大変だぜ…」
缶コーヒーを片手にモブトレこと彼はトレセン学園の外を歩いていた。一般中央トレである彼はふとベンチに人影を見つける。
…そこには長い栗毛の髪の少女がノートを開いて座っていた。その姿には見覚えのある彼は遠慮なく声を掛ける
「お、こんにちはサトトレ、隣座らせてもらうぜ」
「あ、どうもこんにちは。構わないよ。」
この学園で起きてる謎現象に巻き込まれたトレーナーの一人、あのサトノダイヤモンドのトレーナーとして名は知られている。
二人は面識…といっても彼がこうなってからだが…があり、少なくともサトトレに信頼はされてるこのモブトレである。
「そのノートは…研究用とかか?」
「そうだよ、レースの…ってうわっ」
そよ風というにはやや強い風がふく。サトトレの前髪がはらりと舞い、その普段見えない目元がはっきりする。
──その目には小さな曲線美のある眼鏡が。細い金属フレームがクリアなレンズを支え、特徴的な瞳を更に分かりやすくする。
(眼鏡…!?凄く似合ってるな…でも視力が悪い訳でもなさそうだし何故だ…?)
「…もしかして、何で眼鏡掛けてるかって思ってる?」
「あ、ああ…」
「これはね、眼鏡なんだけど虫眼鏡みたいなのなんだ。小さい字で書いてこれで拡大して見れば量を圧縮できるからなんだ。」
「なるほど…凄えな…」
そう言いながらも缶コーヒーと好物のカルパスを開けて食べる彼。…横から見つめるような視線に
「…もしかして、お腹空いたのか?」
「…」
「はぁ…ほれ、あげるよ。」
「…ありがとう!」
受け取ってもぐもぐと食べ始めたサトトレをかわいいと思い和む彼。最初会った時も同じような状況だった。
137二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 21:52:40
(今の状況ってどう見ても餌付け…いや駄目だ、考えちゃいけねえ。…今なら許可も出てるものだし膝上にのせてもいいか…?)
そっと横のサトトレに手を伸ばし、抱えようとする。お腹と脇から手を回そうとして…
「…あら、何をしているのかしら?」
瞬間、彼は心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた。
そして冒頭に戻り、彼は目の前から見つめる少し首を傾けたキタトレの瞳から目を離せなくなっていた。
その瞳は片方は閉じて、モノクルのかかった方は絶妙な光の反射で見えない。しかし、その雰囲気が洒落にならなかった。
(…冗談じゃねえ!まずい、このままだと恐らく勘違いで俺が殺される!でも弁明のしようがない!?)
事実、客観的に見れば少女を餌付けしてそういうことをしようとしたと見える状態であり、普通にギルティであった。
相談に乗ってもらってる同僚曰く、優しくて穏和な笑みの絶やさない人と言っていたが、今の笑みはそれではない。
「…私のチームメンバーに何をするつもりだったのかしら?」
(ここまでか…)
処刑人がスタンバイした処刑台に乗せられたのに等しい状況で覚悟を決めた彼の横から掛かる声。
「…キタトレ?彼は大丈夫。脅すのも程々にね」
「そうねサトトレ。…脅かしてごめんなさいね、大丈夫なのは分かってたけど、少し確認がてら圧を掛けさせてもらったわ。」
(…助かった…のか?………センキューサトトレ!!!)
心の中で隣の天使にめちゃくちゃ感謝しつつ、硬直が解けた彼はキタトレからの提案を受ける
「お詫びといってはなんだけど、今からカフェに行く予定で、相談がてら私が奢るわよ」
「ありがとうございます…」
───この後彼は連絡先を交換してもらえたらしい。
短文失礼しました
モブトレを使って出た概念を纏めたssです。眼鏡かけたサトトレがもぐもぐしてる姿に和まない人はいないよなぁ?
間違えてもサトトレ相手に怪しい行動はしない方が良いです。サトトレは大体庇ってくれるけどね…
≫143二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 22:12:01
「買っちゃった…新しい相棒…!」
いつものように休養日にガレージハウスに遊びにいくと、そこには何やら喜んでいるトレーナーがいた。
「トレーナー、何を買っちゃったの?」
「ふふふ…この子!です!」
そう言ってぱぱーん的なSEがなりそうなポーズの後ろを見るとコレまたゴツいバイクがあった。
「ああ、あの潰れた子の代わりか」
「シービー…それ以上あの子のことを言ったら耳元で泣き喚くわよ?」
めんどくさい。
「なんでこんな似てる子にしたの?」
「カワサキでH2系統に乗ったりドゥカティでパニガーレV4とかムルティとか乗ったけど、やっぱアメリカンのあの子を忘れられなくて。ならいっそハーレー以外のアメリカンに乗ろうって訳になったの」
「なるほどね。で、この子の名前は?」
「インディアン制作のスプリングフィールド!」
「インディアン…アメリカの原住民の名前かい?」
「そ。アメ車よ。見てこのまるで生きるような空冷Vツイン!伝統を踏襲した空冷式!それに」
「ハイストップ。いい子なのは分かったから」
そう宥めると不服そうに耳を倒したが、
「じゃ、走ってくるね。シービーも来る?」
そう言ってヘルメットをこちらにかざす。
「いや、アタシはいいや。部屋上がってていい?」
「了解。コレ鍵ね。あと次のレースの展開と相手の予測と練習メニューまとめといたからそれ見て」
「は〜い」
ガレージの外にバイクを出し、エンジンがいななきを上げる。そのままドコドコという音を立てて走り去っていった。
鉄階段を上がって部屋に入る。相も変わらず本の森みたいな部屋だ。
今頃どこを走ってるのかななんて思いつつ、言われた例の資料を見ながら次のレースに心を馳せるのだった。
≫175二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:36:00
[長いお別れ、その前に]
──俺は、ウオッカにどれだけのことをしてやれただろうか。
地下バ道を歩きながらそう思う。自分が父として子供に何を教えてやれただろうかと考えた回数は優に1000を超えている。思えば、子供には心労をかけっぱなしだったようなそんな気がする。無様な姿は見せまいと心掛けていたが、それでも想定外の出費による金欠だとかサブトレーナーを勝手に見つけてくるだとかの自分の振る舞いのせいで呆れられることはしばしばあった。
そして──自らの相棒のこと
相棒と同じ体を共有することになって、彼女は困惑したことだろう。自分のトレーナーがいウマ娘になって、自分のことを「息子」と呼ぶ誰かが居座っていたのだから。どうやって接すれば良いのか悩んだこともあっただろう、もしかしたら次の日には自分のトレーナーが消えているのかもしれないと眠れぬ夜もあったのかもしれない。
「俺はきっと、親失格なんだろうな」
呟くように絞り出した自嘲に答えは返らず、その代わりにカツンカツンと舗装された地面を靴が叩く音が響く。
12時を回り、URAの職員も居なくなった東京レース場の地下バ道には今は自分たち以外誰も居なかった。
そのままターフのコースへと続く道を歩いていると、視線の先に3人の人影を見つけた。
176二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:36:17
「行かないでください」と、黒い髪をしたウマ娘が泣きそうな顔をして言う。
「これで、お別れですね親父さん」と白い髪をしたウマ娘が泣きそうな顔を平気そうに取り繕って絞り出す。
「……今まで、ありがとうございましたっす」と体の大きなウマ娘が覚悟を決めたかのような精悍な顔つきでまっすぐ前を見据えて声を出す。
皆自分にとっては家族のように大切な存在だ。出来るのならば彼らともずっと一緒に居たいとも思っている。それは自分の偽らざる本心だと、それだけは胸を張って言える。
だから。
「ゴメンな。もう行かなくちゃならないんだ」と黒い髪をしたウマ娘を抱きしめてあやすように頭を撫でた。
「お別れじゃないさ。お前が憶えてくれているなら、これからもずっと一緒だ」と元気づけるように握手をして彼と抱擁を交わした。
「その調子で頑張れ。俺にとって、お前は十分に立派だよ」と目の前の彼と拳を突き合わせるようにして別れの挨拶を交わした。
だからこそ──俺はいかなくてはならない。
もう踵は返せない。たとえそうすることが彼らにとって良いことなのだとしても、俺はそうしなければならない。もしここで進むことを諦めてしまったら、今度こそ俺は親として本当の意味で屑に成り下がってしまうのだから
「じゃあな!これからの人生思う存分楽しめよ!」
務めて陽気な声をだして別れの挨拶をする。彼らの視線を背に受けながらまた再び歩き出した。
(……本当に良かったのか?)
体の内から響くように、自分の相棒の声がする。それはまるで自分の良心や後ろ髪を引かれている心を見透かしているかのように、自分の決意を問う言葉だった。
177二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:36:38
「ああ、これで良い」
応える言葉は「是」の一言のみだった。自棄になったのではない。逃げ出しているのではない。ただ己の覚悟として、自分はこの道を選んだのだからそのことに後悔は無い。
「ところで、折角人がレースに臨むというのにどいつもこいつも湿っぽい言葉を吐きやがる。おい相棒、どうせなら景気づけにやる気の出る言葉でもくれよ」
重苦しい感情を振り払うかのように言葉を吐く。別に彼らの言葉がうっとおしくなったのではない。むしろ自分にとっては持ったないぐらいありがたい言葉だ。だけど、今は少しだけ勇気が欲しかった。
(そうだな……ギムレット)
(ああ)
(勝て!たとえ相手が誰でも関係ない!最後のその瞬間まで全力で駆け抜けろ!)
心の底から放たれる真っすぐな言葉。いつもなら覚悟や決意といったものが湧き上がってくるというのに、今は只その言葉が嬉しくてたまらなかった。
「……ありがとな。相棒、お前と出逢えてよかったよ」
(こちらこそお前と一緒に居れて嬉しかったよ。それと……)
「どうした?」
(お前がどう思ってるかは知らないけど、俺にとっては最高の親父だよ。だから、全力で行ってこい!)
「……おう!」
無二の友からの激励の言葉に応と返してまた進む。もう迷いはない。最後の瞬間まで自分は自分らしく突き進むと、そう決意をまた一段と固めた。
長い長い地下バ道、その先には昼とは違いライトに照らされているターフと誰も居ないスタンド。それに──
「よう、待っていたぜギムレット」
──自分にとっての”最強”が居た。
ウオッカ。かつて自分が夢を諦めたからこそ得られた愛おしい我が子。そしてダービー馬である己を超えていった、誇らしい自分にとっての最強。力強いまなざしは揺ぎ無く、ただ眼前の相手を見据えている。
178二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 23:37:00
「ああ、待たせて悪いな」
「それで……本当にこれで良いのか?お前とレースをするのが俺で」
「これで良いんだ息子よ。昔から、お前とは一度でいいから本気でレースをしてみたいと思っていたんだ」
「だから息子じゃねえって言ってるだろギムレット⁉って、もう何回もやったなこのやり取り」
「これからレースをする前に少し緊張でも解してやろうと思ってな。……どうだ、少しは気が楽になったか?」
「まあ、ぶっちゃけ楽になったけどさ……ありがとよギムレット」
これからレースをするとは思えないほどに気楽な会話をする。しかし、ただ脱力をしているわけではない。自分も、目の前にいる彼女もこの後のレースに向けて集中を深めていっている。納刀された刀が引き抜かれる寸前のような、ある種の圧力を伴った空気が満ちていく。
「ウオッカ」
「ん? どうしたギムレット」
そして、これだけは言っておかなければならない。レースの際中にこれを言う余裕はないだろうから。そして、レースの後にもこれを言うことはできないだろうから。これだけは絶対に言わなければならなかった
「かつて親として、お前にしてやれなかった最期の役目を今果たそう」
「勝負だウオッカ───お前の相手は、第69回日本ダービー覇者タニノギムレットだ!」
彼女の眼を見据えて、堂々と胸を張って宣言をする。
自分にとって最初で最後のダービー馬としての名乗り。父としてライバルとして、彼女に負ける気はカケラもなかった。
「──勝負だギムレット。勝つのは、俺だ!」
彼女からも堂々とした宣言と共に、綺麗な瞳が圧力を伴って自分をまなざす。彼女もこのレースに絶対に勝つといった心持ちで、自分をレースの相手として認めているようだった。
ゲートへと向かって2人で歩いていく。もう言葉はいらない。あとはレースで語るのみだ。少なくとも、自分達にとってはそれで十分だった。
舞台は東京レース場左回り芝2400m。これが彼らにとっての日本ダービー。
そして──彼にとっての最期のレース。
勝敗の天秤は、果たしてどちらの側に
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part659【TSトレ】
≫26二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 08:50:58
M「我々は日頃の感謝を込めてメz…こほん、我々のアジトに連れていくべく3人ほど誘拐しますわ…これから一体何をされてしまうのか、楽しみですわね…」
A「とりあえず誰を招待…じゃなかった、誘拐するんです?」
M「そうですわね…>>28と>>31と>>33を誘拐することにしますわ!!」
R「何やってるんだろうこの人達…」
D「」
38二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 09:07:51
R「で、誰にするか決まったの?」
M「今回はフウトレさんとテイトレ、タイキトレさんでいきますわ!」
A「テイトレさんだけ呼び捨てかあ…」
R「確かにお世話になってる!存分に労わなくちゃ!」
R「そしてここからが重要なポイントですわ!」
D(オレ帰っていいよな、いいに決まってるよな)
R「ずばり!誰が捕まえに行くか!ですわ!」
A「確かに、捕まえなくちゃ話にならないですもんね」
M「さあああ行きますわあああ!!」
M「運命の!ダイスロール!!」
1→Mトレ、2→Dトレ、3→Rトレ、4→Aトレ
フウトレdice1d4=4 (4)
テイトレdice1d4=3 (3)
タイキトレdice1d4=2 (2)
46二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 09:34:07
M「…まあ俺は車の免許持ってるしちゃんとバラバラになったからいいじゃないか」
R「うわ、口調戻った」
D「さっきから黙って聞いてたけどよ、悪いことしてねえやつを誘拐すんのはクズだろ、おい」
A(そういえば昔ドーベルちゃんが連れ去られちゃったんだっけか、そりゃあんまり気が進まないよね…)
M「早とちりするんじゃないバカ助、連絡ついたか?」
R「うん!担当達には連絡つけといたよ!全員『ドッキリみたいで面白そう!』だって」
M「そういうことだ。そもそも、これは我々の担当きってのお願いなんだよ」
D「は?どういうことだよてめえ」
M「たくさんお世話になった仲間を労いたい。そして労うのならそのトレーナーも一緒が良い、そうだろ?」
A「……」
M「でもトレーナー達は絶対遠慮する、一応メジロはかなりの良家だ、特にその血を引いてるお前は十分理解してるはずだろ」
D「普通はビビっちまう、か」
R「はああ…、やっと説得できた感じだね。正直誘拐するよりこっちが心配だったんだよね…」
D「…分かった、オレも皆に世話になりっぱなしだしな。そうと決まれば今から捕まえに行くぞ!!!!」
A「まあ君の捕獲対象タイキトレさんだけどね」
D「はあああ!!??」
M「お労しやバカ助…」
≫61二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 11:31:05
ウオシス誘拐旅行・追加戦士
ルドゴルムンwithウオシスサイド
ゴルトレ(ん? ……前の車の車種……それにあのナンバー……よっしゃ♪)
ゴルトレ「退け退けぇ! ゴルトレ御一行が目に入らぬかぁ!」パパァーッ
ムントレ「む? ゴルトレ君、一般車に迷惑を掛けるのは流石にどうなんだい?」
ゴルトレ「大丈夫だ、知り合いだから問題ねぇ……それよか……面白くなるぜ?」
ルドトレ「知り合い? 面白くなる?」
ゴルトレ「ああ、あの車種とナンバーは間違いねぇ、追い抜く時に顔も確認出来たしな」
ウオシス「私も顔を見ましたが知っている御方でしたよ、こんな偶然が有るんですね」
ルドトレ「へ〜……ねっ、ウオシスちゃん、誰だったか教えて教えて!」
ウオシス「きゃっ……わぁ、ルドトレさんに抱き着かれると気持ち良いです…………あっ、えっと、それで誰だったかですけど……」
ウオトレーズサイド
202「ありゃ……ハイエースのヤツ盛大にクラクション鳴らして追い抜いて行きやがったッスね」
V「ここまでは割と普通の運転だったが……妙だな?」
親父「仕方無い俺達だけでも詫びを入れとくか」
V「了解、俺が謝罪しておくから親父さんと202はハイエースを追ってくれ」
202「了解ッス」
親父「任せたぞ」
V(取り敢えず並走してみて…………ん?)
グラトレ(…………💢)クラクション+追い抜きで闘争心に火が着いてる
グラスワンダー(……😭)涙目で何かをこちらに訴え掛けている
V「あ〜……」
ガオンッ!!
ウオシスを巡るカーチェイスに爆発的に加速したセダンが追加された瞬間だった……
≫93Debug・dancer422/02/01(火) 15:50:11
転倒事故を起こしてから二週間。
あの時の様な幻覚を見る事は無いが、スタミナの壁には変わらずぶつかっていた。
デジタルと話し合った結果、なるべくスタミナを使わない様に走る距離をマイルに絞ったが、練習が長引くと息切れを起こしてしまう。しかし脚の力にはまだ余裕があり、息さえ続けばもっと走れるだろう。
力はあるのに、それを使いこなす事の出来ないもどかしさに不快感を覚える。
だからだろうか。最近、昔の夢をよく見る様になったのは。
『あ、相手選手が棄権の為、今大会の優勝者は___選手となります!』
マイクを通して、「俺」の名前を呼ぶ司会のぎこちない声が会場に響き渡る。
幼い頃にレースとライブを見てからウマ娘の身体能力に憧れていた「俺」はダンサーとして彼女達に挑もうと史上初のウマ娘と人間の合同ダンスバトル大会に出場していた。
順調に勝ち進み決勝の舞台に立つ事が出来たのだが、対戦相手のウマ娘が会場に現れない。
そのウマ娘は、本番前の練習中に負傷をしていまい決勝を棄権していた。
先程まで観客達の熱気と歓声で溢れ返っていた会場が一転、困惑と静寂に包まれる。
「えっと、___選手、おめでとうございます」
空気の重さに耐えられなくなった司会が不戦勝と言う形で優勝した「俺」にトロフィーを手渡す。
「……ありがとうございます」
正直に言うと受け取りたくないが、それ以上にこの気まずい状態を早く終わらせたかった。
でないと、ちゃんと勝負出来なかった悔しさと無力感でおかしくなりそうだったから。
95Debug・dancer422/02/01(火) 15:50:46
大会が終わり、いつも以上に疲れた状態で自宅に帰った「俺」はベッドに寝そべりながらスマホで本来対戦する筈のウマ娘が踊っている動画を見ていた。
人間を遥かに超える身体能力を持つウマ娘のダンスはいつ見ても圧巻であり、自分はそんな彼女達に人間として挑戦してみたいと思っていた。
けれど、ネットの反応を見ると「俺」が負ける事を確信した声が数え切れない程見つかる
(実際に対戦したところで勝てる筈がない)
(やるだけ無駄だ)
(人間如きが身の程を知れ)
それを見ている内に「俺」自身も自分が勝つ光景を想像出来なくなっていた。
人間のアスリートがウマ娘と自分を比較して折れてしまう事は珍しくない。彼女達を目指して高すぎる目標を抱いては、種族としての差を思い知らされる。
自分だってそうだ。
本当は、心の何処かで諦めるきっかけを欲していたのだろう。不安になる事は一度や二度ではなかったから。
結局、消えてしまった情熱は戻らず「俺」はダンスの世界から去った。
今のアタシは人間だった頃とは違う。彼女達と同じ種族になり、正々堂々と勝負する事が出来る。それなのに、身体が言う事を聞いてくれない。
また、諦める事しか出来ないのだろうか。アタシはただ、デジタルが多くのウマ娘に送って来た声援と祝福を自分も受け取りたいだけなんだ。彼女と共に競争ウマ娘の世界を歩く事を想像しただけで、消えていた筈の情熱が再び湧き上がって来るから。
「……ーナーさん……トレーナーさん」
不意に聞こえたデジタルの声で目の前の景色が一瞬暗転し、いつもの部室に切り替わった。
≫117二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 16:59:26
「入るでー」
部屋に入って扉を閉める。
「どこにおる…ッ!」
その目に入った光景にブワッと毛を逆立て、部屋の隅で震えていたトレーナーを守るように立つ。
「お前……なんのつもりや?」
トレーナーを脅かすそれにドスの効いた声で聞く。
「答ええや。何が目的や。トレーナーに手出しするっちゅうんならバチキかますでコラ」
そこにいたのは小さな竜のような何かだった。
噂は聞いていた。三女神の遣い。事あるごとにトレーナーを不幸に陥れる憎きモノ。
「あんクソ女神かは知らんけど、ここで一発覚悟せえよ?」
そう言うとその龍は触覚なのか手なのか分からないそれを振り上げる。
「なんやクソトカゲ。手え出したら容赦せん…」チガウヨ
「んなぬけぬけと戯言いいよって…って待てや」ドウシタノー
「お前、喋るんか?」ソウダヨー。アトジャリュウジャナイヨ
「じゃりゅう…んなもんどうでもええんや!」
こんなトンチキがいるだけで謎なのに、無害だのなんだので更に混乱する。
「とりあえず…無害でええんやな?」ソウダヨー
「ならええわ。まあトレーナーに手出ししたらタダじゃおかんからな」ハーイ
とりあえずは震えてばかりのトレーナーをなんとかしなければ。
118二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 17:00:27
「トレーナー、大丈夫や。こいつはなんも悪いことはせんらしいで」
「……………」
恐らくこちらの声が届いていないのだろう。少し手荒だがまあいい。
「よっこいしょ」
彼女をお姫様抱っこの要領で持ち上げ、ソファに連れて行く。
自分が座った上にトレーナーを乗せると、細く薄い体でしがみついてきた。
「恐かった……タマ……」
「よしよし。大丈夫やで」
頭を撫でながら落ち着かせる。肩の向こうでは心配そうな顔でアイツが浮かんでいる。
「そういえば、アンタん名前はなんなんや」カマライゴンダヨ
「カマライゴン…どっかで聞いたこと……ってあんま近づいたら…」ダイジウブ、コワクナイヨ
「ヒイイイッッ」ダイジョウブ、コワクナイ
トレーナーの頭を撫で続けるカマライゴン。トレーナーはガタガタと震えながらさらに強くしがみついてくる。
「………」コワクナイ
しばらく撫で続けられたトレーナー。しかし少しずつ震えがおさまってくる。
「………」コワクナイ
「……ほん…と?」ウン
「トレーナー、撫でてみるか?」イイヨ
「う……うん……」(なでなで)オビエテイタダケナンダヨネ
「も……もふ…」ユパサマ、コノコワタシニクダサイナ!
恐る恐る、そのたてがみを撫でる。
119二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 17:01:01
(コイツ…トレーナーと和解しよった…!)
まさか最初の相手がこんな謎の生き物だとは思いもしなかった。
「もふ……」ギューットダキシメテ
「う……うん……」
おずおずといった様子でカマライゴンを抱きしめるトレーナー。
「あった……かい…」デショー?
「トレーナー、ほんまに大丈夫か?」
「…ぅ…怖い…けど……大丈夫……」ムガイダヨー
膝の上から隣に移ったトレーナーは、少し怯えながらも腕の中のカマライゴンを撫でている。静かに見守っているとうつらうつらと船を漕ぎ出した。部屋が少し散らかっているのをみると部屋に来る前に散々逃げたのだろう。
「トレーナー、肩、ええで」
「うん……」
肩にぽすんと頭を預け、静かな寝息をたてる。
「なあ、あんがとな」ドウイタシマシイテー
小声でカマライゴンに言うと、ゆらゆらと背中の羽をゆらす。
ふと、扉からノックが聞こえた。
出るとネイチャがいた。
「こんにちは。今、大丈夫ですか?」
「トレーナー寝とるから静かにならええで。どうしたんや」
「カマライゴン、見ませんでした?」
「あ〜。ネイチャんとこのやったんか。こっちや」
120二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 17:01:38
手招きして、静かにソファまで回ると、体を横にして胎児のように丸めてカマライゴンに顔を埋めて寝ているトレーナーがいる。
「こうなった訳や。すまんな」
「いえいえ!タマトレさんが打ち解けれたようで何よりです」
小声でこそこそと話すと、もぞもぞとトレーナーが動いた。
しかし起きることはなく。カマライゴンを数割増で抱きしめた。
「カマライゴン、大丈夫?」ア、ネイチャ、ダイジョイブダヨー
「そっか。なら良かった……タマモさんのトレーナーさん、かわいい…」
「せやろせやろ?ウチの自慢のトレーナーで、命の恩人やからな」
「……そっか。じゃ、アタシはここらでスタコラしますね」
そう言って静かに扉に向かって歩いていく。
「ネイチャ、トレーナーさんに今度遊びに行くってよろしゅう頼むわ。前の講座の恩返しもしたいしな」
「わっかりました〜。では」
そう言って扉の向こうに消えていく。戻るとカマライゴンがこっちを見てきた。
121二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 17:02:09
「なんか、あんがとな」コノコ、ナンカカナシイネ
「……ああ。でも、めっちゃ頑張っとるんやで?最近は早朝に行動範囲広げる練習しとるし…ま、人とはまだ話せんけどな」ナルホドナー
「ウチはサポートしとるだけや。頑張って改善しようとしとんのは、紛れもなくトレーナーのおかげや」ソウナンダー
「また今度、よかったら今日みたいに頼むな」モチロンダヨ
ソファに座り直し、トレーナーを膝に寝かせる。連絡やスケジュールの確認をしていると、頭のニット帽が取れかけていた。
「……」
中を覗きたい気持ちはあった。でも、まだ彼女に無断で見るのは気が引ける。
そっと頭を持ち上げてニット帽を被せ直し、隣にあったブランケットをかける。
(堪忍な)
パシャリとその寝顔を撮ると、スマホをしまって昔妹弟を寝かしつける時のように頭をゆっくりなでる。
(ほんま…かわええな…)
彼女にこびりついたそれは簡単には取れそうに無いが、いつか戻れるようになる日を楽しみに、部屋の時計の秒針の音と共に、目を瞑るのだった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part660【TSトレ】
≫12二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 19:31:09
チョコをちょこっとな
きっかけは喫煙所でのたわいない雑談。
「そういえばもうすぐバレンタインだね…今年はどんなチョコレートが流行るのかな?」
「あー…フク当てのファンからのチョコの選別がなぁ…手作りのはどうしても避けにゃならんし」
「ご厚意って言っても…もしもを考えたらなぁ」
スイーツ好きのフラトレは流行り物を想像して頬を綻ばせフクトレは冷静に業務の心配を、テイトレもそれに乗っかろうとしてふと思う。
「俺テイオーにチョコ手作りしたことないな」
「へぇ…市販品もいいけど…やっぱり気持ちを伝えるのには手作りが一番だよね」
「…お前のムーブで手作りチョコはもう…いや何も言うまい」
「うーん…せっかくだし今年は手作り挑戦してみるか?今から練習して駄目だったら買えばいいか」
「いいんじゃないかな?味見役は頼まれるよ」
「フラトレが審査員か…下手なもん出せなくなったなテイトレ」
「まぁ何とかなるだろ!分かんないけど!」
優雅に微笑むフラトレと意気込むテイトレを見て一人大丈夫かねぇという呟きと共に煙が吐かれた。
──後日
「お、二人とも!作ってきた!チョコ!」
「どれどれ…お?普通に美味しそう」
「生チョコと…ガトーショコラかな?初心者でも作りやすいいいチョイスだと思うよ」
「チョコレートそのまま火にかけるとかはしなかったか」
「お前俺のことバ鹿にしてんのか!湯煎くらい知ってるに決まってんだろ!」
「まぁまぁその辺で、じゃあ早速味見させてもらうね…」
「じゃあ俺はガトーショコラの方…」
「…ど、どう…かな」
「そんな乙女みたいに待たれても…美味しいよ、くどくなくて僕の好み…隠し味は蜂蜜?」
「ガトーショコラも普通に美味くて反応に困る…なんだかんだ常識組だしな」
「よかった…味見し過ぎて違い分からなくなってたから…」
「これならもっと難しいのに挑戦してもいいんじゃない?あとは見た目にこだわれば大丈夫だよ」
「俺達以外に渡して意見聞くのもいいんじゃないか」
「ふむふむ…見た目と…他のやつ…分かった!ありがとう二人とも!」
≫14二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 19:32:10
「マヤトレェァ!お前顔がいいからってトレーナー達を侍らせやがって!」
「荷物持ち雑用雑談その他諸々!俺はあいつらをそう言う目で見たこともなければ侍らせた覚えもない!第一あいつらに失礼だろうが!」
「駄目よモブB!こいつ顔どころか中身もイケメンだわ!あんたと違って!」
「最後の言う必要ありましたかねぇ!?でも確かに俺はみんなを邪な目で見る駄目なやつで執行部に何度もボコられたクズで…わりぃ、やっぱつれぇわ…」
「言えたじゃねぇか」
「聞けてよかった…」
「そうだよな…あいつらは変わってないんだから…それにマヤトレはロリコンだしそんな心配する必要もなかったな」
「なんだパワーLV5練習の瓦の代わりになりたいんだったらそう言ってくれればよかったのに」
「ごめんなさい二度と歯向かいません」
「なっさけな…話戻すけどあいつらが百歩譲ってそんなことする相手なんて担当くらいでしょ?普通の男をそう言う目で見る姿が想像つかないわ」
「全くだ…あいつらがそんな事するわけないだろ…おっテイトレ」
「あっマヤトレ!丁度いいところに…なんで土下座されてんの?」
「気にしなくていい。それよりどうしたんだ?」
「えっとな、はいこれマヤトレに!後で感想聞かせてくれ!それじゃ!」
「おーう…何だこれ?プレゼントか?」
「世話になってるからお礼とかじゃないかしら?どんなの?」
「どれどれ…えーっと…えっ…」
「…へぇ、ハートの形の、チョコレート」
「…モブB、しかもこれ手作りだな?」
「ええ間違いないわ…つまりコイツは、あのテイトレに手作りのハート形チョコを貰ったわけよ」
「待て待て待って本当に!やめろこっちくんなお前ら!!」
「ころすぞ〜!!可愛らしいラッピングの中にはハート形のチョコレートが入っており流石の俺も殺意に芽生えてしまいました〜!」
「殺すわ、嫉妬じゃないそれだけははっきり言える」
「怖えって!あいつがそんな感情俺に持ってるわけないだろ!!」
「そうね間違いないでしょう。それでもマヤトレがテイトレから手作りのチョコを貰ったと言う事実が、あの白魚のように細い指で、柔らかくて小さい手で作られた食べ物をあんたが持ってるその事実が羨ましいのよ!!」
「てめぇさては執行部から隠れて闇創作してんだろ!!」
「答える義理はないわ!行くわよモブA!」
「うひょ〜〜!!」
「上等だこいやオラァ!!」
15二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 19:32:39
「ブラトレーチョコ食えー」
「唐突ぅ…ってお前これ…もしかしてその抱えてるの全部ハートの形か?」
「?うん。型抜きが安かったから」
「…今みたいに特に説明せずにチョコを他の奴らにも?」
「そうだよ?」
「…目の前で開けたやつの反応は?」
「えーっと…ロブトレはなんか変な顔してて、でっかいウオトレは何ギャルゲーみたいな事やってるんすか…って頭抱えてて…あ、でもムントレとかマベトレは普通に喜んでくれてたぞ!」
「もしもし先生?はい説教と罰を一つお願いしたくて」
「なんでぇ!?」
うまぴょいうまぴょい
喫煙組を書きたい、久しぶりにマヤトレとモブトレ達のアホ会話が見たい。魔法カード融合を発動!そんな感じ
昨日パチンコで負けながら書いたから誤字脱字は気にしない。それ以前の問題?うるせ〜!しらね〜!FINAL FANTASY
テイトレから何も説明されずにチョコ渡されたトレーナーの反応はこいつマジ?の常識人組と気にしない天然組とわーいちょこらーの食欲組だと思う
≫37Debug・dancer522/02/01(火) 20:19:59
午後の授業が終わり、トレーナーさんが待つ部室に入ると、一人のウマ娘ちゃんがソファーの上で眠っていた。白毛に次いで希少な青毛を持つスレンダーなウマ娘ちゃん、あたしの担当トレーナーさんだ。
そのあどけない寝顔に見惚れてしまい、思わずスマホを取り出して写真を取りまくりたくなった。いや、ここは一眼レフの方が良いか。いっそ照明も用意して部室をトレーナーさんの寝顔撮影会場にしてしまおうか。
ウマ娘ちゃんになったトレーナーさんの姿も変化した当初と比べたら多少慣れては来ているが、その仕草ひとつひとつに興奮してしまう事は相変わらずだ。
トレーナーさんに萌える事自体に抵抗は無いが、若干の照れ臭さと気まずさはちょっとある。
「……?なんだろう」
トレーナーさんの様子を見ていると妙な違和感を感じ、気になったあたしは起こさないよう静かに近付く。
顔色が悪い訳では無い。もう少し顔を近付けるとトレーナーさんの吐息が聞こえて来た。
______いつもと違う。か細く、掠れた呼吸が。
「……トレーナーさん!トレーナーさん!」
呼吸に異変を感じたあたしは体調を確かめる為にトレーナーさんをゆすり起こす。
何度か身体をゆらしていると目を覚ましたのかトレーナーさんが薄く目を開いた。
「んぅ?どうしたの?デジタル」
突然起こされてぼんやりとした表情のトレーナーさん。あたしを見ながらゆっくりと身体を起こす。
「おやすみの邪魔してしまってすみません。息苦しそうにしてたのが気になってしまって」
本来なら寝ているウマ娘ちゃんを無理やり起こす等言語道断だが、今のあたしはトレーナーさんもといアグネスデバイスの担当でもある。
少しでも担当の身体に異変を感じたなら確認を取っておかないと。
38Debug・dancer522/02/01(火) 20:21:09
「喉か……寝てる時は気が付かなかったけど、寝相が良く無かったかな」
首をかしげながら自分の喉元を確かめている。大きく目立った異変は無いようだが、トレーナーさんの呼吸音に耳をすませると、ウマ娘化した当初よりも弱くなっている様にも聞こえる。
「トレーナーさん、眠っている間にウマソウルの前世を夢で見たりしませんでしたか?」
以前、トレーナーさんが呼吸困難を起こした時はトレーナーさんと融合したウマソウルが大怪我を負った瞬間をフラッシュバックした事で、PTSDを発症したのが原因と聞いている。
「いや、それは見てないな。昔の夢は最近よく見るんだけど」
「昔……。それはウマソウルのですか?トレーナーさんのですか?」
「アタシ……いや、『俺』のだよ。トレーナーになる前の、まだダンサーをしていた頃のね」
トレーナーさんがここに来る前はかなり有名なダンサーだった事は聞いた事はある。苦い経験をして、一度はダンスの道から外れた事も。
「これに関しては命に係わる程重要とは思わないから、呼吸の悪さとは別だと思うけどな」
「あたしの早とちりなんですかね……」
肌寒くなったのかソファーから立ち上がって上着を取りに行くトレーナーさん。アタシに言われたのが気になるのか、さっきから喉を撫でたり軽く咳払いをしている。
「それとも「俺」の記憶も原因になってるのかな。今までは思い出しても体調に影響が出るって事は無かったんだけど」
「……トラウマとは別となると、トレーナーさんの体質もあるんでしょうかね。ウマ娘化で体調面でも変化が出たって方は少なくないですし」
39Debug・dancer522/02/01(火) 20:21:45
ウマ娘ちゃんの身体になってから女性としての性格以外にも体質の変化で苦労している方は多い。身体が弱くなり、担当ウマ娘ちゃんに支えられながら頑張っている人もいれば逆に元々の持病がウマ娘化によって改善した人もいる。
トレーナーさんも体質が変化している可能性はある。
この間の呼吸困難による転倒事故は明らかに異常だったが、それ以外でもトレーナーさんの息が続かなくなる事をよく見る。
「体質……あ」
「デジタル?」
ふと、あたしの脳内にある言葉が浮かんだ。今のトレーナーさんの身体では可能性でしかない。しかし無視をする事は出来ない言葉が。
「あぁそっか、コレがあったか。……何で気がつかなかったんだろう」
いや違う、気付きたくなかったんだ。ウマ娘ちゃんを、トレーナーさんを想うあまりに目を逸らしてしまった。
これは、あまりにも残酷な可能性だから。
教えてしまったら、トレーナーさんはもう立ち直れなくなるかもしれない。
「どうしたの、デジタル。急に黙りこんじゃって」
トレーナーさんが身を屈めてあたしの顔を覗き込んで来る。
普段ならその凛々しい三白眼に見詰められただけで意味不明な奇声を発して意識を失ってしまうだろう。
___でも今は、その目を真っ直ぐ見ていた。
今回ばかりは、目を逸らしてはいけないと気付いてしまったから。
アタシはトレーナーさんが大切で、健やかに生きて欲しいと願っている。
だから、覚悟を決めよう。
それがトレーナーさんを傷つける結果になるかもしれなくても。
「トレーナーさん、もう一度タキトレさんに診察して貰いましょう」
≫50二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 21:15:47
5話『状況:多忙→
12月。それはトレセン学園において最も忙しいと言える月のひとつである。
いやまあ当然っちゃ当然なんだが。全職業共通だろう年末ラッシュに10月から続く秋戦線のラストマンス、そして……
「フウトレさん、いらっしゃいますか?次のアオハル杯におけるチーム「ミルキーウェイ」の日程が決まったのでお知らせに来たのですが……」
「たづなさんですね、どうぞどうぞ。」
アオハル杯、これもまた年末に行われるビッグイベントの1つだ。
複数のウマ娘が仲間と協力し、相手のチームのウマ娘達と競う。それはただレースに出るだけでは得られない貴重な経験、故に自身のチームをもたないトレーナー達もアオハル杯用にチームを組んで参加していたりする。
「──以上となります。」
「了解です。ほかのメンバーにもわたしから通達しておきますね。」
「よろしいんですか?」
「えぇ、そちらの方がこちらとしても都合がいいので。」
「……ならおまかせしちゃいますね。」
「任せてください!」
たづなさんが去るのを見届けてから連絡の準備をし始める。
……俺がリーダーの「ミルキーウェイ」はアオハル杯用に作ったチーム。今は各距離に平均4〜5人ずつ、合わせて20人を超えるウマ娘が所属しているが俺が担当してるのはフウだけ。
他はみな別にトレーナーがいて、俺はあくまで合同練習やミーティングといった複数人が関わる活動と出走申請やメンバー管理といったチーム運営をこなしてるにすぎない。
「まあここまで人数多いとすぎないで済まないくらいにゃあ作業量が鬼だけどねぇ、特にスケジュール調整。」
それでもファン感謝祭とかに比べれば楽のなんの。ちゃちゃっと資料を作り上げていく。
151二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 21:16:03
「っふー……」
そうして全員に連絡を終えて一息つく。あ゛ー疲れた。いつもに増して疲れた。……いや最近ずっとこんな感じなんだからいつもに増してではないか。
「ただでさえ多忙なこの時期にウマ娘化が重なったから仕方ないけど……」
免許とかの更新やら、グンと伸びた身長に合わせたアレコレやら、ウマ娘化現象に巻き込まれたことでやる事はガバッと増えた。後者なんかは前例が少ねえもんだから特に。
そしてそれに加えて12月の山積み仕事、記事書いたりのシンプルなものとはいえアルバイト、試作炬燵関係、あとそろそろ再開しようと思ってるフウのトレーニングの思案などなど……
……羅列すると思った以上にハードワーク気味だな???
「そろそろ1回休むべきかしらね……」
ウマ娘だからって限界がないわけじゃない。人よりか頑強とはいえいつもより少ない睡眠時間にこれだけの激務を重ねたら倒れるのは時間の問題だ。
ちょうど明日から週末だし、土曜にやる事まとめて片付けて日曜をまるまる休みにしてマッサージでも受けに行くか。
そうと決まればあとは行動に移すのみ。とりあえず書類を渡しに行こうと立ち上がって────
「────あ、れ。」
視界が、歪んだ。次いで脱力感。力の抜けた俺の身体はゆっくり地面に倒れていく。
────俺もまだまだだな。
口に出ることのなかったその言葉を胸に抱きながら、俺の意識は遠のいていく。
最後に、フウの声を耳にして。
152二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 21:16:45
トレーナーが倒れた。昼休み、一緒に食堂に行こって誘いにいった時だった。
疲労による貧血だろうってタキトレさんは言っていた。大事にならなくて安心した、ホントに。
……けど、それはあくまで最悪を避けれただけ。トレーナーが倒れたこと、そんなになるまで疲れてた事は変わんない。
「……あたしが、原因だってコトも。」
トレーナーが寝る前にこなしてるオンラインアルバイト。3つくらい掛け持ちしてるそれは、元々「トレーナーにお金で苦労はしてほしくない」ってあたしのわがままを聞いて始めたものだ。あたしに奢ったりしても全然困らないくらいの金、トレーナーは持ってたのに。
その結果他の人よりも多忙な生活をしてたトレーナーはウマ娘化でさらに忙しくなって、そして。
「……あたしは、気づけなかったの。」
気づかなきゃダメだった、あたしはあれだけ気にしてもらってたんだから。……世話になるだけじゃなくて、恩返しできるようになるって決めたんだから。
なのに、あたしは……
『……でもあたし、走るのが好きなだけで素質とか全然ないよ?選抜レースだって結局逃げきれなかったし……』
『俺はそうとは思わなかったし、仮に君の言う通りだとしても、俺は君を選ぶ。能力とか才能とか、生まれ持ったそれ等による差をトレーニングや作戦で埋めるのがトレーナーの役目だからだ。
……君の"好き"を俺に支えさせてくれ、アイネス。』
契約を結んだ時、トレーナーと交わしたやり取りを思い出す。
才能も、家柄も、自由も。ナイナイ尽くしの人生だった。そりゃもちろん負けないくらいの努力はしてたけど、トレセンにいるような娘はみんなみんな持った上で頑張ってる。だからあたしなんかじゃかないっこない、心のどっかではそう思ってた。
でも、トレーナーはそんなあたしを選んでくれて。両手に収まらないくらいの、たくさんのものをくれた。思い出、優しさ、走り、何より……ダービーの冠と、割れんばかりの歓声。
あんな大歓声、忘れようと思っても忘れらんない。あたしだけじゃ絶対得られなかった、大切な大切な宝物。
「……ホントにいっぱいもらってたんだなあ。」
何も持ってなかったあたしにこんな日が来るなんて思いもしなかった。ありがとみんな、トレーナー。
────だからもう、十分なの。
153二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 21:17:02
「ごめんね?いやホントにごめんね??」
「本当に反省してます?」
「してる、ガチで。というかわたし自身そろそろヤバくない?週末休むかーとか考えてた矢先だったのよ……」
「……まあウマ娘化してからまだ1ヶ月も経ってないですしね。次からは気をつけてください。」
「はーい!」
そう返事をすると共にタキトレから渡されたドライブルーベリーを口に放り込む。これ結構好き嫌い分かれてるよな、俺は好き。
今いるのは当然だが保健室。タキトレから聞くにフウが昼頃に運んできてくれたらしい。……そういやチャイムなってた気がする、気づかなかったあたりマジで限界だったか。
「フウにもあとで感謝しないといけないわね……って電話?」
着信名はリャイトレ。珍しいなと思いながら出る。
『もしもしフウトレさん!?』
「うん、わたし。どうしたの?そんなに慌てて。」
『実は先程の休憩時間、ライアンからアイネスちゃんが出てないと連絡がありました。』
「…………は?」
それ以上言葉が出ない。フウが?なぜ??
真っ先に思い浮かぶのは俺と同じ状態に、今度は人知れずなってる事。汗が頬を伝って落ちるのを感じる。
『自分も探したのですが、学園内では見つかりませんでした。ただ……』
だが、続く話でその可能性は否定される。謎は深まったが。
強いて分かるのはフウに何かあった事。じゃなきゃ無断で授業を欠席して学園から出るなんてことはしないから。
「……ただ、何?」
『……一つだけ、目撃情報がありました。"契約解除の用紙を持って玄関へ向かう"アイネスちゃんの。』
「……ありがとうリャイトレ。あとは俺に任せろ。」
電話を切って、ベッドから起き上がる。大丈夫、動ける。
「フウトレさん!?まだ安静に……」
「ごめんタキトレ、フウがいなくなった。俺が原因だ。だからどうしても行かなきゃいけない。」
「……!!分かりました。ただし本来ならまだ安静にしててほしい状態です。くれぐれも気をつけてください。」
「ああ、ありがとう。」
ホントならもっとお礼を言いたいとこだが時間がない。短く済ませ保健室から廊下に、そして玄関へ。
「フウ……!!」
目指すはただ1人の担当、彼女がいるだろう場所のみだ。
≫70二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:07:20
◆ああっサンタさまっ
終わらなーい終わらなーい仕事終わらなーい♪
埋もれていた仕事が 未だ終わらなーい♪
「もしかして今の、ビビディバビディブーですか?」
「ネイチャ……ごめんなさいぃ……」
「『こんなはずでは……』みたいな表情してるけど、それはこっちのセリフですよ。なんでまだ仕事してんですか?」
うぅ、ジト目がすごい。サクッと帰ってクリスマス仕様の商店街を歩くだけ歩いたら、後はのんびりおうちデートという予定だったから当然か。
「重賞トレーナーが持ち回りで寄稿しなきゃいけない広報のコラム当番が発掘された……〆切は鋭意伸ばしてもらってる最中……」
「……メールの受信箱整理怠っていたんでしょ」
「なんで見てないのに分かるの?」
「これはあたしじゃなくても察せると思う……。おろ」ピロン
「LINE?」
「うん。ターボから」
断っていたクリスマスパーティーについて、開催直前に涙の再勧誘らしい。
「……いってらっしゃい」
「……マジで言ってる?」
返信を送ろうとしているネイチャの手が止まる。
「私は今日もう動けないし。それに、友達とパーティーなんて学生の頃にしかできない事だし。だから、いってらっしゃい」
「……ですよね。トレーナーさんはそういうこと言ったりしますよね。ふーーーーん」
「……あの、「謝らないでね。じゃあクリパ行ってきます」」
バン!!!!
宣言するなりトレーナー室の扉は勢いよく開かれ、そして閉められる。残されたのはポツンと一人私だけ。
……行っちゃった。サバサバした感じだったけど、目が冷たかった。しかも目だけでバカって言ってた。はい……大バカ者です……。
……クリスマースおしょうがーつ仕事終わらなーい
三が日が過ぎてもきっと終わらなーい
71二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:07:46
───ネイチャが出ていってから一時間弱。
悲しみが力になったというべきか、もう書き終わってしまった。推敲完了、提出も完了です。やればできる、すごいぞ私。でも恋人としては赤点だぞ私……。仕事机から離れてソファに身体を横たわらせる。なんか疲れた。疲労感がすごい。
……しゃれたデートプランなんて用意できなかった。「憧れのクリスマスデートコース特集!」を見てもお互い首を傾げるばかり、琴線に触れるものがなかった。だからせめて一緒にいられるクリスマスにしようねって二人で決めたのに。なのに100自分のせいで。
「……さみしい」
口をついて出た言葉に心が蝕まれていく。涙腺がじわりゆるむ。さみしさで泣くとか子供か。しかも自分が悪いのに泣く辺り始末におえない。なのに一度考え始めると、そればかり考えるようになってしまう。
ネイチャがいないのがさみしい。
クリスマスパーティーに行ってほしくなかった。仕方ありませんねってため息をついて、隣にいてほしかった。二人で過ごしたかった。
居た堪れなさから送り出しちゃったけど、やめればよかった。なんで大人なフリしちゃったんだろう。……終わったから来て、なんてのは虫がよすぎるのは分かってる。でも会いたい。
……ごめんなさい。ちゃんと自己管理します。今後の改善策も。その、提示できます。だから一人にしないで。
「……一人にしないで」
ダメだ。口からこぼれちゃうあたり、相当キテる。
「トレーナーさーーん。いるのは分かってますよー……入りますよー?」
ネイチャの声だ。クリパはもう終わったんだろうか。
「返事がない……? まあいいや。おいっすー、サンタ様でーす」
返事を聞かずに入ってきたのはたしかにサンタだった。
髭こそないものの、赤いサンタ帽に肩にかけてるのは大きな白い袋。ただ、帽子同様に赤い服はやや丈が短い。ミニスカとニーソックスの間の太ももがまぶしいし、チラリとのぞくおヘソも目が眩む……いやどうしたのネイチャ。寒くないの?思わず身を起こす。
「……ステージ衣装と大して露出変わんないんですから、そんな目ぇ見開いてみるもんですかね?」
「でもエッチだよ?」
「頭沸いてるね」ペシッ
「あぅっ!!」
手痛いツッコミをオデコに喰らう。でもどう見てもセクシー衣装じゃん。ちょっと理不尽だと思う。
72二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:08:12
聞けば「イクノが人数分用意したパーティーの正装」とのこと。なお寒さからすぐにどてらを着込んでみんなしてコタツに入った模様。うーん浅慮。でもそれはそれでかわいい。
そんなサンタネイチャがソファに、私の隣にちょこんと座る。袋には元々着ていた制服と他色々が入ってるらしい。まだちょっとだけツンとした表情でいる。
「みんなも適当に予定があったりなかったりで、元より短めのクリパだったんですよ。なんでさっさと戻ってきちゃいました」
「そうだったんだ……」
「……見たところもう仕事は諦めた感じですか? 不良トレーナーさん」
「もう終わったよ。あっという間だった」
「そうなの!? やるじゃーん……!」
本当に驚いた様子のネイチャ。確かに自分でも終わりそうにないと思ってただけに、そこはすごいと思う。〆切伸ばしてもらったけど。
「……今日は本当にごめんなさい」
「まー、あー、そうですね。予定はちょいと遅れましたねー……そっかー、もう仕事終わってましたかぁ」
ネイチャの歯切れがどうにも悪い。
「……予定だと悪い子にも差し入れする慈悲深いサンタ様のつもりだったんですけどねぇ……」
「差し入れ……」
「はい。お腹空いてるんじゃないかと思ってチキンの───」
「サンタ様がほしい」
「…………ええっと。チキンのですね」
「ネイチャみたいなサンタ様がほしい」
「あの、えと、聞いてますか? あたしはご飯食べたいだろうなって意味で」
「そばにいてほしい」
ジト目のサンタ様を力なく抱きしめる。
「……ふえ」
「ずっとそばにいてほしい」
ごめんなさい。でもさみしいの。
みっともないけど、でもさみしかった。
ネイチャより大人なのに。でもさみしい。
73二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:08:50
───優しく、でも自分がしているのより強く抱きしめ返される。後ろに回された手でポンポンと背中を叩かれる。
「なんでそっちの方が震えてんですか。あたしの方が寒そうな見た目してると思いません?」
「心細かった」
「……そうでしたね。そういうときは素直になれちゃうんでしたね……え、そんなに??」
小さく頷く。自分でもびっくりするくらい参っているようだ。
……めちゃくちゃクリスマスデートを期待してたクチですか? 自分が悪いの分かってます?
自分が悪いから凹んでる……
なるほど……
……あたしも、拗ねてクリパ行っちゃってごめん
ううん。そんなの気にしないで。……楽しかった?
……タンホイザとイクノから軽く説教されました
ああ……
ターボには蹴っ飛ばされた
ええ……
……トレーナーさんは不定期にか弱くなりますね
ネイチャにいっぱいパワーを吸い取られたかもしれない
そりゃ悪いことしちゃいました
悪いネイチャも好き
実は余裕ですか?
ううん。かなりダメ
……
「じゃあさ」
さらに強く抱きしめられる。そのままソファに体を沈められてしまう。目の前にはネイチャと、少し遠くに部屋の天井。
「あたしがさ。……げ、元気。あげ直しましょうか」
……あ。私、押し倒されてるかもしれない。
74二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:09:22
「……少したどたどしいね」
「うるさいっ。あたしが欲しいんでしょ」
「んっ……」
減らず口を黙らせるような口づけが降ってくる。
……弱みを見せたら、きっとネイチャは励まそうとする。分かっていた事なのに。なのにこんな構ってほしがるような態度をとってしまった。また少し自己嫌悪してしまう。
……ここ、私のおうちじゃないよ。学校だよ。まだ卒業だってしてないよ。
好きだよネイチャ。大好き。
でもダメだよ。……ダメなのに。
ダメなのに、ダメじゃないって思ってしまう。
唇が離れる。銀色の橋が自分の口元に落ちてくる。
「トレーナーさん……」
「……ネイチャ」
───クゥゥゥゥゥゥウウゥゥ
「……今の、トレーナーさんのお腹の音ですよね?」
「……ノーコメント」クゥゥン
「……ブフッ!くっ、くく、あーはっはっはっはっは!!」
「ふふ、そんな、そんな笑わなくてもぉ!ふふふ!」
「トレーナーさ、はぁ、はぁ……
トレーナーさん! それはダメだよ!! 今日一のダメ! ……はははは! ひーーっ! あっはっはっはっは!!」
「だって、頭使ったから! メチャクチャフル回転だったんだからぁ!」
ネイチャには大変ツボだったらしく腹を抱えて笑っている。そんな、涙が出るほどなの??
でも自分も笑ってる。あんなに空っぽだったのに、少し元気になれたかもしれない。
とはいえ、我ながらないと思います。ああもうダメ。お腹空いたぁ……。
75二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:09:51
「……いやー笑った笑った。今年一番笑ったかも。お腹のワンコに免じて今日の失敗はぜーんぶ許してあげますかね!」
「恥ずか死……」
「死なない死なない。……それじゃ改めて、プレゼントは唐揚げという名のチキンでいいですか? ギリギリ良い子のトレーナーさん」
「……またお肉屋さんのお裾分け?」
「はい不正解。自分で作れるようになったので、あたしのお手製です。残念ですか?」
「……言わなくても分かるくせに」
「言ってほしいんですよ。アタシの捻くれた乙女心、分かってやってくださいな」
会った頃に比べてだいぶ素直になってるのに、そんな事を言っちゃうところもかわいい。
「でもそっか。前のバレンタインにもらった唐揚げも美味しかったけどね」
「ぐ……そっちの方が好きですか」
……そんなわけないじゃない。
「ううん。ネイチャが、好き」
改めて抱きしめる。今度は少しだけ強く力を込めながら、ネイチャの頭にそっと頬を寄せる。ほどなく背中にネイチャの腕の温もりを感じる。
……ちゃんとネイチャ「の」が好きって言えなかった気がするけど、いっか。ウソじゃないもの。
(終)
≫86二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:19:05
「……おはよう。今日は"僕"と"私"どっちにする?」
『んー、"私"で』
「ん、んんー……はい!どう、かな?」
『いつ見ても凄いね』
「そう……かなぁ?」
そうしていると、一人やってくる。
「おや二人とも。もう、か……すまない、どうやら遅れてしまったようだ」
「ううん、まだ時間あるよ?」
『そうそう、決して遅いってわけではないから』
「そう言って貰えると喜ばしいのだけれども……おやゴルトレさんは?」
「……すぐ来ると思うけど……あっ」
『来たね。今日は一輪車かぁ』
キコキコ音をだしながらやってくるのはゴルトレ。
こうして、四人揃ったわけだが……
「で、今日はデートだろ?ルドトレ、プランは?」
「んーと……のんびりふらふらして、お昼頃に予約してあるクロアチア料理のお店に行って、そのあとまたフラフラ歩いて……」
『東京だから出来る無計画なプランだね』
「でも、歩いて興味のまま誘われるのもまた楽しいから」
「……それもそうだな、なら行こうぜ!昼頃に店に着くならどう歩いてもいいんだろ?」
「だね!なら……」
「「「どう歩むかは、君次第だぞ」だとも」だよ」
『……全く、三人とも……』
≫112二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 07:31:28
「おい」
「にゃい」
「真顔で何をら言ってるんだ。それより練習メニューを」
「にゃい」
「……まさかそれ以外喋れないのか?」
「にゃい」
「いつもははいかいいえしか言わんのな…」
「にゃい……」
「あああもう!こっちこい!」(なでなで)
「にゃい^〜」
変わんねえなこれ
≫114二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 07:54:43
「ニャー」
「ワッツァップ!?トレーナーさん!?」
「ニャーー」
「ンー。ネコの言葉分かりまセーン……」
「ニィーー……」
「ニャ、ニャニャニャーニャ」
「……オゥ!ここがおかしかったんデスね!こ、れ、で……宿題、コンプリートでーす!」
「ニャニャ」
「ウゥ、視線が痛いデース……」
「ミャー、ニャアニャ」
「もっとピッチを上げるんですね?オーケー!」
「ニャ!」
「ミ!!」
「ノーーーーーーゥ!!BBQしたいデース!!」
「ミ!!!」
「トレーナーさーーーん……」
「……ミャー」
「!! トレーナーさーん♪」
「ンッニャーー!!」ハイタッチ
「イッエーーイ!!」ハイタッチ
意外となんとかなるなと思ったタイキとタイキトレだった。
≫125二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 08:16:46
「違いますよトレーナーさん、猫ちゃんはですね!」
「……ニャニャ」ワカラーン
「やっぱり難しいかなー、お話できるからわかるのも違いますよね」
「ニャ・・・・・・?」
と煽られて完徹してセイちゃん流猫語マスターしようとするセイトレはいます。
後日
「全身でのボディランゲージ始めそうになる癖つきそうで人目が辛い……」
「またまたー、可愛くて私は好きですよ。うりうりぃ!」
「俺一応男……まあ、緊急時のボディランゲージと思えば良いのか……?」
「それよりこれで猫の楽園ニャンガディア計画に一歩前進しましたね!」
「まだやる気だったのあれ!?」
とか遊ばれます。猫語ネタはアプリが強すぎる。
≫133二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 09:58:08
「猫がしゃべるというのであればそれは猫語ということでまかりとおらんかな、ロブトレ」
「にゃおう……?」(まあそうなりますかね……?)
「ならば猫紳士モードであればたとえそれが日本語であったとしても猫語ということに……」
「にゃいにゃー」(それはどうなんですかね。そもそも猫紳士になぜなってるんですか)
「なんか……前回のあれから癖が抜けてない」
「にゃあい……」(ええ……)
「ああでもスーツがあったおかげでそれっぽさはとてもいい感じ。ありがとうロブトレ」
「にゃい」(それはとてもよかったです)
≫138にゃんにゃん鳴くのは…?1/222/02/02(水) 10:06:52
にゃんにゃん鳴くのは…?
「にゃー」
「……ついにネコ語で話すようになったか。ウマ娘の三女神もまた変なことしかやらないものだねぇ」
「にゃーにゃうにゃう?」
「猫の言語理解のために録音を…というのも発声しているのが人間の声帯だから参考にならないし、今日一日は何もできないだろうね。もし治す方法があるならそれに越したことは無いんだが」
「にゃう!にゃうにゃみゃー!」(喉を指さして撫でるような仕草をした後に3本指を立てる)
「その様子からして……『喉元を3回撫でたら元に戻る』?また随分と簡単な条件だねぇ」
「にゃう!にゃいーにゃうっう」(腕時計の長針を見せて3本指を立てる)
「なるほど、『喉元を3分撫でる』か!よし、ではさっさと頭を差し出したまえよ。キミも話すのが全部猫の言葉になったまま過ごすのは嫌だろう?」
「にゃう…」
「大変だった……」
「まあ話そうとする言葉と実際に話している言葉が違うというのが多大なストレスになる、というのは想像に難くないからねぇ」
「まあその通りだったんだけど、そういうのはタキオンからしてもわかるの?」
「何にするにせよ、思い通りにいかないというのは苦痛なものさ。例えば、『脚部不安で思うように全力で走れない』とかね?」
「タキオン……」
「でもそれが解消された時の安堵と解放感と言えば筆舌に尽くしがたいというのも事実だ。人間の言葉で話すことができるようになった時に正直安心しただろう?……さて、キミのことだから他のトレーナーにも説明して回るつもりなんだろうし、今日の実験はそれからにしようか」
139にゃんにゃん鳴くのは…?2/222/02/02(水) 10:07:10
「うん、わかった。ちゃんと皆にも元に戻る方法を両方教え「両方?」…違うんです。1つしか説明できなかっただけなんです」
「……まあ、こんなこともあったし今日は多めに見てあげることにしよう。それで、もう1つの戻る条件は何だい?さっき説明しなかったということはジェスチャーでは説明しにくいということなんだと予想するけど」
「えっと……実は、3分間頭を撫でられ続けても治るってネコ語で話すようになる直前に、そんなことを言われたんだ」
「なぁんだ、そっちの方が簡単じゃないか。それに頭を撫でるんだったら撫でられてる時に顔を真っ赤にする必要はなかっただろう?」
「それはそうなんだけどさ……その、タキオンにこうして喉を撫でられるのも悪くないなぁって思ったというか……こういう機会でもなければ撫でてもらうことも無いなぁとか思ったりしたわけで……」
「……」
「タキオン……?「今日の予定は全てキャンセルだ」っ⁉タキオン⁉」
「キミがそうして欲しいのなら思う存分してあげよう。ついでに、それを私に黙っていた分のツケも払ってもらおうじゃないか」
「でもタキオンさっきは多めに見てくれるって……」
「あれは我慢しただけさ。それに、『思い通りにいかないというのはストレスに繋がる』とさっき言ったろう?キミなら、今私がこうしてキミを抱き上げている意味も理解できると思うんだけどね?」
「うう……あの、せめて優しくしてほしいにゃん……?」
≫165Debug・dancer622/02/02(水) 14:55:58
デジタルに促され訪れた保健室。
突然の訪問にも驚く処か来るのが分かっていた様に手早く準備をするタキトレ。今はアタシの向かいに座ってパソコンに何かを打ち込んでいる。
デジタルはアタシの後ろに立って神妙な面持ちをしている。
「突然すみませんタキトレさん、どうしても確かめたい事があって」
「構わないよデジタル。俺ももう少し診察したいとは思ってたからさ」
どうやらタキトレもアタシを心配してくれていたらしい。
タキトレだって暇じゃない筈なのにアタシがいつ来ても良いようにしてくれていた。アタシの身体のせいで余計な手間をかけさせてしまったと思うと申し訳なくなる。
パソコンへの記入が終わったらしいタキトレがアタシの方へ向き直る。
「今回は色々と話を聞かせて貰うよ。踏み込んだ質問をさせて貰うから気分が悪くなったら言ってな」
「わかった。よろしく頼むよ」
アタシの返事を聞いて友人の顔から養護教諭の顔に変わるタキトレ。
タブレットを手に取り、一呼吸置いてから口を開いた。
「まず初めに、デジトレは転倒した時に過去……と言うか前世?の記憶をフラッシュバックしたでいいね?」
「ああ、アタシじゃなくてアタシの中に入ったウマソウルの……死の原因になった記憶だね」
死の記憶はいつ思い出しても慣れない。
握った拳が震え、背筋に冷たい汗が流れる感覚がする。
「呼吸困難はそのフラッシュバックが原因……と言いたいけど、これってよく考えたら順序がおかしいんだよ」
「順序?」
「フラッシュバックによる体調不良は普通は原因になる事柄を思い浮かべてから起きる。でも前に聞いた話だと、デジトレは逆になっているんだ」
166Debug・dancer622/02/02(水) 14:56:36
「……フラッシュバックで呼吸困難を起こしたんじゃなくて、呼吸困難を起こしてからフラッシュバックを起こしてる……」
言われてみると、確かにちょっとおかしい。
よく聞くPTSDの症例と比べたら事象と、それに対する結果が出る順序が逆になっている。
「それでさ、こう言う風には考えられないかな。呼吸困難そのものがPTSDでフラッシュバックの原因だったって」
「…………!」
驚きで、言葉を返せなかった。
探してすらいなかったパズルのピースが見つかった様な感覚に襲われ、身体が硬直していた。
「俺の頭の中にある考えは……デジトレのウマソウルは、生前にデジトレと同じ様に走っている最中に呼吸困難を起こした。それによってバランスを崩して転倒、そして取り返しのつかない大怪我を負ってしまった。……そして、その怪我が原因で……」
そこでタキトレの言葉が止まる。その先は、言うまでもないという事だろう。
PTSDの原因となる何かを見たりすると、その時の映像を思い出してパニックを起こす。
アタシも、あの呼吸困難そのものがPTSDだとしたらおかしくはない。それがアタシの死の原因だとしたら猶更。
「それに加えて、デジトレは他のトレーニングでも息の続かなさに悩んでいる。普段から出るとしたら、それはPTSDとかでは無く、体質そのものに問題がある可能性が高い」
タキトレが、何を言おうとしているのか。デジタルが何故ここに連れて来たのか。
アタシは気付いてしまった。二人の仲に浮かんでいる言葉に。
「デジトレ、君は喘鳴症を発症している可能性がある」