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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part311【TSトレ】
≫170二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 22:37:27
ーーーサトトレはアルバムを見ていた。
「…何をみてるんですか?」
…いつの間にか隣にいたスペトレが問いかけてくる。
僕は笑いながら答えた。
「僕の思い出のアルバムだよ。」
そのアルバムには何枚もの写真が乗り、僕はそのうちの一枚を指差す。
…それは高校生だった頃にキタトレと撮った写真だった。
「懐かしいなぁ…あの頃は。」
『サトトレ、課題は終わっただろう?』
『ん?ああ、そうだね。』
『よし、ゲーセン行こうか。今日もベスト更新しよう。…サトトレもだぞ?』
『ははは…お手柔らかにね』
「いつも僕を引っ張ってくれたのはキタトレだったね…」
「キタトレさんは今も先導してくれるよな。最近も俺を手伝ってくれたし。」
「うん、キタトレは昔からそうだから。」
172二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 22:38:19
ページをめくり、次の写真を指差す。
「…これは?」
「卒業時の写真だよ。」
『サトトレ、何かあったらすぐに言ってくれ』『…いきなりだね。』
『いつでも助けてやるから。…お前は危なっかしいからな。』
『心配性だね、多分僕は大丈夫だから。それよりキタトレはファンクラブはいいの?』
『…ああ、あのクラブの相手してあげないと…』
「キタトレは人気だったなぁ…」
「やっぱり昔もなのか?」
「うん、昔から面倒見が良くて人気があったから。ファンも多かったしね。」
「凄いなぁ…」
「うん、僕の最高の親友で器用な人だよ。」
そっとアルバムを閉じる。立ち上がって言う
「そろそろ行こうかな。さようならスペトレ。」
「サトトレさんもさようなら。」
僕は歩き出す、次のナニカを刻むために
駄文失礼しました
スペトレエミュが違ってそうでガクブルしてます。
どこまでも器用なキタトレととても不器用なサトトレの対比です
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part312【TSトレ】
≫20ロブトレヒロイン概念21/10/24(日) 23:07:31
過去回想:ロブロイとの出会い第四話「物語の最初の1ページ」
「トレーナーさん、次の話ですが、こういうのはどうでしょうか?」
「なるほど、いいですね。ですがそれだと次の冒険に響きますから、ここはこうではないでしょうか?」
「ですが、もっとこうした方が……」
「ならここをこうして、どうでしょうか?」
「はい!これならとてもいいと思います!」
ロブロイの物語のヒロインになると宣言をしてから、トレーナーである私自身が考えるだけではなく、ロブロイ自身も一緒に物語を綴るようにしてトレーニング内容を考えるようになった。
お互いに尊重しあい、また、ロブロイ自身も本当に物語の主役のように感じて、楽しみながら、そしてその熱意を燃やしながら、トレーニングに取り組んでいく。
また、ロブロイ自身もやはり体は弱い方で、保健室に横になることもあったが……
「トレーナーさん、ごめんなさい……心配、かけてしまって……」
「いいのですよ、それにこれもまた、一つの物語の一幕ではありませんか?」
「ふふ、そうですね……英雄が倒れたのを看病する、というのも、物語、みたいですね」
そういうときはすぐにロブロイのもとに駆け付けて看病をしていた。
保健室の養護教諭でもあるタキトレさんとは保健室に通うようになってからは顔なじみにもなった。
また、寮で休んでいるときはライス経由でお見舞いの品などを渡したりもしました。
そして、少しずつ、少しずつ一緒にトレーニングを行い続け、ついに選抜レース当日になりました。
地下バ道で、選抜レース前にロブロイへと声をかける。
ロブロイは少し緊張してはいるが、それでも以前のような調子の悪そうな様子はなかった。
「あ、トレーナーさん……」
「ロブロイ、あなたの、英雄としての走りを魅せましょう」
「はい!トレーナーさん、行ってきます」
その顔に迷いはなかった。今のロブロイなら大丈夫。そう自信をもって言えるほどに……。
21ロブトレヒロイン概念21/10/24(日) 23:08:04
ガコンッ!
ゲートが開かれる。
以前参加した選抜レースの時と同じように、今回も1800m。
以前は見に来てくれているトレーナーさんに私の走りを見せよう、と思って焦ってしまった。
でも、今は違います。トレーナーさんがついてくれている。あの時は見せる相手であったトレーナーさんが、今は一緒に紡いでくれている。
『ロブロイの強みは三つあります。一つは安定した走り。あなたの走りは本当にきれいなフォームで走っています。落ち着いていけばこの距離も問題なく走れます』
トレーナーさんは言ってくれました。私の走り、フォームは崩れることなく、とてもきれいな走り方をしていると。
以前は焦ってしまって早めに出てしまいましたが、今回は差し、序盤は足をためていく。
呼吸が、軽い。走りに乱れはなく、落ち着いて、トレーナーさんと一緒に走ってきたように。
そして……
『二つ目はその末脚の鋭さです。あなたの末脚は誰よりも早く駆け抜けます』
「やあああ!!」
最終コーナーに差し掛かるところで、今までためてきた足を踏みしめ、一気に……
駆け抜ける!!
『おおーと!ここでゼンノロブロイ上がってきた!これはすごい末脚だ!』
次々に眼の前のウマ娘を抜き去っていく。そうです、この走りです。
私が目指している英雄の走り。かつての英雄たちのように、誰にも負けない走り方。
でも、まだだ……まだ、前を走る子は諦めていない。あそこから再加速している。
このままだと、押し切られる……あの人も、負けたくない、勝ちたい、という気持ちが伝わります。でも……
22ロブトレヒロイン概念21/10/24(日) 23:08:15
『そして三つ目。崩れない心。物語の主役になりたいという強い熱意を決して崩れることがないその心です。その心があなたの一番の武器です』
勝ちたい、物語の主役のようになりたい、英雄の走りをしたい、そして、トレーナーさんに私の走りを魅せたい。
その想いが私の足をより熱くさせます。まだ、まだいけます。
負けない。私は……私だって……
「私だって、物語の主役になるんです!!」
その想いのままに、さらに足を踏み込む。
前へ、前へ、もっと、もっと、前へ!
誰にも負けない英雄のように!!
『ゼンノロブロイ、さらに加速する!ぐんぐん追い抜いていく!ゼンノロブロイ、1着でゴール!!』
その想いのまま、走り切りました。
英雄は、ヒロインである姫に支えられて、大きな戦いを制したのでした。
23ロブトレヒロイン概念21/10/24(日) 23:09:42
「トレーナーさん!」
「ロブロイ、お疲れさまでした。本当に素晴らしい、走りでした」
レースを終えたロブロイが私の元に駆け寄ってきます。
その表情はレース後であるのに疲れを感じさせず、満面の笑みでした。
「あの、私、私が目標にしている英雄の走りに近づけたように感じます」
「ええ、ええ、確かに見えました。あなたは少しずつ、そして確実に英雄へと近づいていますよ」
「はい……それも、トレーナーさんが一緒に物語を書いてくれたおかげです」
そうしてロブロイが嬉しそうに今日のレースのことを語っていると……
「そう、その人がロブロイちゃんのトレーナーさんなのね」
「え……お、お母さん!」「え……ロブロイの、お母様、ですか!」
「ええ、初めまして、ロブロイちゃんの母親です。ロブロイちゃんがお世話になっております」
後ろから年上の女性の方がいました。どうやらロブロイの母親のようでした。
ロブロイも驚いているのを見ると、恐らく内緒で見に来ていたようです。
そうして驚いていると、お母様はロブロイと嬉しそうに話し始めました。
「ロブロイちゃん、頑張ったのね。お母さん、ロブロイちゃんが嬉しそうに走っているの見てとてもうれしかったわ」
「はい、お母さん。私、走るのが楽しいです。トレセン学園に入れて、よかったです」
「よかった。素敵な出会いをしたのね……トレーナーさん、どうかロブロイちゃんのこと、今後もよろしくお願いしますね」
ロブロイのお母さんから深々と頭を下げられる。
本当に、ロブロイは親にとても愛されて育ったのが伝わる。
そんな大切な一人娘を、これからも預かっていくのだ。改めて、そのことを心に刻み込む。
24ロブトレヒロイン概念21/10/24(日) 23:10:04
「ええ、必ず、ロブロイを、彼女の目指す英雄にしてみせます」
「本当にいいトレーナーさんね。ロブロイちゃん、これからもトレーナーさんと一緒に頑張ってね、お母さん、応援しているからね」
「はい、お母さん、見ていてくださいね。私、頑張りますから」
そうして、突然のロブロイの母親はそのまま去っていきました。どうやら近くのホテルに泊まる、ということです。
後でロブロイも一緒にご飯を食べるとのことで、レース後のミーティングは早めに切り上げ……
「あの、トレーナーさん……」
「どうしましたか?これからお母様とご飯を食べに行くのですよね」
「いえ、その……私、トレーナーさんが一緒に書いてくれたから、ここまで私自身の物語を、レースができました」
「私ひとりじゃ、きっとここまでこれませんでした。トレーナーさんがいてくれたから、私、走れました。やっぱり英雄にはヒロインが必要なんです」
一呼吸おき、真っすぐに私の目を見る。その瞳には、あの時のように強い英雄への想いが光り輝いている。
「トレーナーさん、これからも、一緒に物語を紡いでくれませんか」
ああ、やはり私はその姿に心の底から惚れたのだ……。
「ええ、私の方こそ、どうかあなたの物語を紡がせてください。あなたの物語のその先を見たいのです」
そうして私とロブロイの物語の最初の1ページは終わりました。
だけどそれで終わりではない。次のページを捲り、二人でそのペンをとる。
私たち二人の物語は、始まったばかりなのですから……。
≫56二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:43:03
『ドべ助、泊まりに来る』
「ブラトレー、来たぞー。案外近いっぽいな」
「おお来たかドベ助。まあトレセンまで軽く走ったら10分程度ってところだな」
「しかしなぁ、いろんなトレーナーのところに泊まらせてもらったが」
「ン、なんか問題あったか?」
「いや、ぶらとれの家の中が思ったより汚くないんだなって」
「──さよーならー」ギィィィィ
「待って閉めないで!追い出さないで!」
「もう秋だぞ、外は涼しくて過ごしやすいぞぉー」
「そういう問題じゃなぁい!野宿する羽目になるじゃねえか!」
「じゃあその俺が掃除ができないズボラなやつのイメージを払拭してから来な!30分間ランニング!」
「うひぃー!」
「ぐへー、戻って来たぞ……うおーい」(ピンポーン)
「おかえりー。ご飯できてるから食べなさーい」
「……まさかこの時間で用意してくれたの?」
「いいから食え食え、出来立てを腹減った状態で食うのが一番うまいぞ」
「あざぁーっす!」
「あ、シャワー先でもいいぞ」
「おなか減ってるからご飯先で!」
「ビーフシチュー良いねえ…濃厚な味わいだ」
「あったかい料理が心にしみる時期だからな。ちょっとすき焼きと迷ったが今日は白菜のいいのが見当たらなかった」
「すき焼きも食べてえなー……」
「ドべ助お前料理って出来たっけ?」
「……あんまり。でもサバイバル能力はちょっとあるぞ?」
「歪だなあオイ!とりあえず包丁くらいはまともに握れるんだろ?あとはまあフライパンや鍋の扱いとかができれば十分行けると思うぞ」
「ぬぬぬ、まあ一人暮らしってなるとそれくらいはできないとな…」
「あと、野菜の皮むきとかを何も全部包丁使う必要はねえんだ。道具を使え!適宜楽をしろ!」
「べ、勉強になる!」
57二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:43:13
~桃〇12中~
「おいやめろドベ助、考え直せ。今都心に突っ込んだら間違いなくハリケーンに巻き込まれるぞ」
「止めるなブラトレ、今あそこは空き物件の山だぞ。今あさらずに放置してたらさく〇にむしり取られる!」
「行くなぁぁぁ!」
「おらーランドセルタワーだぁぁぁぁああああああこっちくんなそしてギリギリで擦り付け失敗してんじゃねえええええ」
「おいたわしや、欲望に負けたドベ助……」
「待てこらドベ助、そこの物件あと一つで独占なんだ手え出すんじゃああああああ!」
「放置してたブラトレが悪いぜふはははー!」
「呪われろ!呪われてしまえぇい!」
「敗者の負け惜しみはおいしいなぁ!」
「お前次のターン絶対なんか起きるように呪ってやるぞ……」
「今日は調子がいいんだ、そんなことには負けねえ!」
「あ、ドベ助お前行先全部赤マスか黄色マスだぞ」
「んげ、いや、俺は俺の運を信じる!黄色マス!あっデビルカード」
「あっ」
「あっあっ銀二全額スリ……」
「おいたわしや、一文無しのドベ助……いや物件売って一文無しではないな」
「やめろ!悲しくなる擁護はやめろ!」
「け、結局ギリギリ負けた!」
「むしろあれだけ無茶苦茶な被害請け負ってよく2位まで戻ってこれたな」
「運が良かった……それに尽きるぜ」
「最初からその運を活用すれば十分1位だったのにな」
「言わないでくれ……!」
59二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:43:23
「さー寝るぞ寝るぞ」
「ブラトレの家ってなんで布団が2セットあるんだ?」
「まあ友人が泊まったりすることもあるしな。いつぞやはブライアンも使ってたと思う」
「嘘ぉ」「あ、そ、そういうことは特に起きてないからな?」
「……まあ知ってたけど」
「むしろお前が大丈夫なのかよ、ドーベルちゃん結構お熱じゃないの」
「ま、まだ俺には早いから……」
「……いやそこはドーベルには早いって言うところだろ」「ぐぬぅ…」
「まあ一人暮らしし始めたらドーベルも遊びに来るだろうし布団ぐらい用意しておきなさいよ」
「……もぐりこんできそう」
「……寝るかぁ」
「そうしよう……」
「おはようございまぁぁぁぁぁす!」
「ごがっ!う、うるひゃい……まだ6時前だぞぉ……」
「さあ新しい朝が来たからさっさと起きてジョギングすっぞドベ助!」
「き、きぼう……二度寝ぇ……」
「そんなもんは無し無し、さっさと起きろ起きろよーい」
「んごごごご……」
「で、どうだった?」
「まあ……悪くはないけど起き抜けのジョギングきつい」
「まあそうだろうなー。朝から運動するのは健康にいいからやっていいと思うぞー」
「そうか……?本当にそうなのか……?」
「ま、とりあえず朝ご飯はおいしくなるな」
「……確かに」
「また泊まりに来ていいんだぜー。歓迎するよ」
「……まあ、楽しかったし考えとく。ありがとさん」
なんだかんだ楽しんでくることができたドベトレさんであった。
≫64二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:56:40
DK組看病ネタ
「鍵いつものとこか?」
「…いや、開いてる」
「不用心過ぎますわ…」
雲が泣いたように雨が降り注ぐ天気の中、三人のウマ娘がドアを開けてとある部屋に入る。その手には食材や飲み物といった見舞いの品があった。
フクトレとブラトレとマクトレがやって来たのはテイトレの部屋。恐らく直前に連絡して一番上に来てたであろうブラトレがメッセージを受け取ったからだ。
その内容は、体調を崩したからテイオーを頼むという簡潔なもの。自分の心配をしろと呆れた三人が各々必要な物を用意して同僚の様子を見に来たのである。
「おーい入るぞー…入ったぞー」
「不法侵入ですわー」
「調子どうだー…あーっとこれは…あれか?」
「…そうっぽい。テイトレ、俺達のこと分かるか?」
入り口を抜け、ベッドの置いてある部屋に入った三人が顔色を変える。ベッドから半身を起き上げたテイトレの瞳が虚ろで光が無いのを確認したからだろう。当の本人は来訪者を見てへにゃりと笑顔を見せる。
「…こんにちは」
「んー…駄目そう」
「はいこんにちは…お名前とお仕事を聞いてもよろしくて?」
「…?えっと、俺は…トレセン学園っていうとこで働いてて…おれは…トウカイテイオーの…トレーナーで…っ!!」
ニコニコと笑っていたかと思うと急に血相を変えて、呼吸を乱し震え出した。
「わっ…私、だれ、だれかの役に、テイオーの役に立た、立たないと…っぁ…!ゔ、えぇ…」
「大丈夫ですわ…っあー…やっちゃいましたわね…」
ぶつぶつと幽鬼のように呟きながら立ち上がろうとする彼をフクトレが押さえ込む。
その際にベッドに置かれていたガラスのコップが落ちて割れ、それを見たテイトレが水分だけで構成された嘔吐をした。
ベッドが、自分の寝間着が、近くにいたフクトレの衣服が少し汚れたのを見て歯を震わせながら頭を下げる。
「ごめんな、さい…ごめんなさい…!」
「おう気にすんな。これ飲め」
この世の全てに怯えるように震えるテイトレは零れ出る涙を拭おうともせず、嘔吐きながらも差し出された水をゆっくりと飲み干す。半分以上をベッドに溢しながら。
一息吐いたのも束の間、一種のせん妄のような状態になったテイトレの声が懺悔から助けを求めるものに変わる。
65二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:57:02
「助けて…テイオぉ…父さ…母さん…怖いよ…ひっく…」
「大丈夫だー…大丈夫だぞー」
ぐしゃぐしゃと赤子の様に、幼児の様に泣き崩れるテイトレに吐瀉物や割れた食器を片付けながらそうブラトレが声を掛ける。
心の奥底からの救いの声。彼が彼女になったとしても頼りたい、縋りたい人への願い。
(それにしてもまぁ…親より先にテイオーが出て来るのはテイトレらしいというか…)
全員が苦笑いを浮かべながら各々の行動を取ろうとして、息を呑んだ。
「たすけ、て…フク、トレ…ブラトレ…マクトレ…」
びくりと、三人の動きが止まる。一人は差し出そうとした手を震わせ、一人は拳を強く握り締め、一人は唇を噛み瞳を伏せる。
「テイトレ、ここにいる。いるから…ほらつかまって…大丈夫…大丈夫…」
「う、うぅ…うゔゔぅ…!」
「…ゆっくりお休みなさい…私達が、そばにいますから…」
フクトレが震える身体を抱きしめ、頭を抱える。その背を優しくマクトレがあやす様に叩く。嗚咽混じりの泣き声は数分もしないうちに止まって規則的な呼吸音が部屋に響いた。
「…眠ったか?」
「タキトレに言って貰っといてよかったな…睡眠薬」
くしゃりと潰した薬袋をゴミ箱に放り込む。見舞いに来る前にタキトレから渡された睡眠薬を嘔吐した後に飲ませた水に混ぜていたらしい。
「後は寝間着も変えておきましょうか…失礼しますわよ…っ!」
胃液で汚れたテイトレの服を下着だけ残し着替えさせようとして、顔を顰める。汚れの不快感などではなく、彼の左足を見て。
66二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:57:36
白い肌に負けぬ程清潔な包帯は、どす黒く、真っ赤に染まっていた。まるで咎人のように、幸せになる事を許さぬ様に。
「圧迫する。マクトレ頼む」
技術も知識も一流のトレーナー達の手によって手際よく手当とテーピングが施される。そのまま衣服を取り替え清潔になったベッドで横にさせる。縋る様に差し出された手をフクトレが握ったまま。
「…はぁ…」
誰かが吐いた、深い、重いため息。汚れ物を洗濯機に放り込み戻ってきたブラトレがそのまま近くの壁にもたれかかる。
「…最近は、明るかったから吹っ切れたと思ってたわ」
「久しぶりにここまでなったこいつ見たな…」
「…多分、体調不良だけじゃ無くて」
ぽつりと呟くように口を開いたマクトレを二人が見やる。眠り込んだテイトレを眺めながらそのまま言葉を続けた。
「弱ったところを間違いなく蝕まれたんでしょう。私達を変えたナニカ…邪神に」
弱々しい、哀れな犠牲者の頭を撫でながら、もう片方の手は血が滲む程強く握り締める。
「面白半分なんだろうよ。あのクソ野郎共からしたら…俺は、奴等を許さねぇ…未来永劫。何があってもだ」
忌々しそうに言い切ったその言葉に同調するように二人が黙り込み、静寂が包んだ部屋で三人の瞳が一箇所に集まった。
どうか、願わくば幸せな夢を見ているようにと。
67二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:58:01
「いやーごめん!覚えてないけど看病してくれたらしいな!」
「…おう、足大丈夫か」
「…覚えてないのか?」
「おー車椅子使う程じゃないから平気…ってそれがさぁ、なんかその部分だけ記憶が抜け落ちたみたいで…俺なんか迷惑かけた?」
「…うう…酷いですわ…私と共に愛しさと切なさと心強さを追いかけたあの日を忘れるなんて…」
「過ちを恐れずに俺は進むから…なんか迷惑かけたっぽいな…今日飯奢るから許してくれ」
「仕方ない…焼肉で手を打とう」
「寿司でもいいぞ。回らないやつ」
「えっ…えっ…?」
「私行きたいバーがありまして…アルティメット高いお酒置いてますのよねぇ…」
「無理!無理だって!お財布が死ぬ!」
「おーお前の財布空にしてやる」
「明日休みだしテイトレの家で二次会するかー」
「…?なんだよー頭撫でんなよお前ら」
≫74二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 00:14:09
パーラシンシン!お望み通りテイトレ先輩にはえっちな目にあっていただきます!
テイトレ「お前は何を言って」
問答無用です!テイッ!
テイトレ「ウッ」
恐ろしく早い手刀...私でなきゃ見逃しちゃいますね...
さて、先輩をこのコンテナ部屋に寝かして...先輩の携帯からテイオーちゃんにここに来るように伝えて...この紙を貼ればOKですね!
《うまぴょいしないと出られない部屋》
────────────
見せられないよ!
────────────
≫89チヨノオートレSS21/10/25(月) 00:39:49
チヨノオーさん、私と一緒に走ってみませんか?」
ウマ娘になって間もないある日、トレーナーがそんな事を言い出した
私もウマ娘になったトレーナーの走りが気になったのもあり了承した
トレセン学園のトラックで待っていると、ジャージを着たトレーナーが現れた
改めて見てみると中々の美少女ウマ娘だ
グレーっぽい白の長髪に、紺紫の釣り目。顔立ちは整っている
走りの方はどうかというと
最初は人間との違いに戸惑っているようだったが
今まで収集した知識のおかげかすぐに慣れていった
「それじゃあ、一緒に走りましょう」
大分慣れてきたのか、トレーナーは次の段階に進みたいらしい
並走のスタート地点を指で指示してきた
距離は皐月賞やホープフルステークスと同じ2000m
合図はコイントス
「位置について―――」
打ち上げられたコインがしばし滞空する
「用意」
地面に落ちる瞬間、私は弾かれたように飛びだし――――
目の前の光景に唖然とした
まだ殆ど時間が経っていないのに、トレーナーが数バ身先を走っている
いやそれだけじゃない
私との差がじわじわと開いていく
91チヨノオートレSS21/10/25(月) 00:40:57
「くっ」
更にギアを上げようとして思いとどまった
他者に無理に合わせてペースを崩したらいけない
私は自分のペースを守りながら走ればいい。逆転は終盤でも可能だ
そう考えてトレーナーの後ろを追随するも
「スピードが落ちない――?」
終盤になって追い上げるも、差が思った以上に縮まらない
そしてその差を最後まで維持されたままゴールイン
「はっ…はっ…」
荒れた呼吸を整えながらトレーナーの走りについて振り返る
彼女の走りは想像以上だった
脚質や距離適性は分からないけれど、相当の実力者で間違いない
恐らく今からクラシック級に出ても通用するだろう
今後トレーナーを仮想ライバルにして鍛えるのもありかもしれない
そんな事を考えていると、トレーナーが寄ってきた
「チヨノオーさんから見て私の走りはどうでしたか?」
どうやら私の所感を聞きたいようだったので、素直に気持ちを話した
「凄いですッ!!なんならこれからも一緒に走りたいです!」
若干まくし立ててしまった感があるが、私は単純に嬉しかった
2人でこれから走りを作り上げられる気がしたのだ
100チヨノオートレSS21/10/25(月) 00:53:31
トレセンコソコソ噂話
チヨノオートレの適正距離は1800m~3000m
差しも先行もできるらしい
チヨノオートレの固有スキル
『DATE CALCULATION』
膨大なデータにより最適の挙動を演算し、凄く抜け出しやすくなる
≫107二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:02:55
「楽なんですのよ最近」
「ん?」
時々開くオンライン飲み会も中盤に差し掛かった頃、マクトレの話。
「最近まともな夢ばかり見ますの」
「まとも?まともじゃない夢って?」
「何回かお話しているでしょう」
「あ、うぅ」
いつも見ている夢の話は3人とも何度か聞いていた。それゆえテイトレは顔を赤らめ、フクトレは皺を寄せ、ブラトレは顔を伏せた。
「耐性が低すぎるよ」
「このアホは置いとくとして、いいことなんじゃないか?減るだろ、負担」
「そうなのですけど」
マクトレは頬杖をつき、はぁ、と溜息を吐いて続けた。
「急すぎるんですの。まるで嵐の前の静けさのような」
「なるほどねぇ」
ウマ娘化トレーナーに影響を及ぼす謎の存在。その毒牙にかかり心をおられかけたトレーナーは複数いる。最近はマクトレにやたらご執心でマクトレの夢をうまだっちなものにしていたのだが、ここしばらくそれが消えたということだ。
「となると何が起こるんだろうな?お前自体に何をしてもだいたい耐えるだろ?」
「ま、耐えますわね」
「素晴らしい自信だね……」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「そこは尊敬できるからな。そうだ、今まで何が起きてたかを少し思い返してみるか」
そして3人、途中からブラトレが復活し4人で今まで起きたことについて知っていることを話し合った。ウマソウルの侵食、掛からせ、夢。いろいろあったなと思っていたところで、テイトレがふと思い出した。
108二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:03:16
「記憶喪失」
「あー」
セイトレの記憶が飛んでいたことがふと浮かんだのだった。発言により、全員がそのことを思い出す。
「流石に記憶持ってかれたらやばいですわね」
「普通はそこまでされる以前でやばいんだよ?」
「しかしなぁ、アイツら与えることはしても奪うことはしないよなあんまり」
「例のアレが関係ないか、それとも何かとの交換だったり?」
「科学的に訳分かりませんわね……しかし記憶喪失ですか」
「こいつが記憶喪失になったとしてどうなるんだろうな?」
「メジロガンギマリがナニモノガンギマリになる」
「ひでぇ」
「でも確かにそうかもな……や、俺は記憶失っても酒飲んでる説を推す」
「フクトレも充分酷いよね」
「そうだぞー」
「そういうブラトレはどうなんだ」
「そうだな……なんか起きた瞬間マックイーンの顔見て記憶戻りそう」
「そういう話じゃ……マクトレ?」
談義に盛りあがっている中で、フクトレはマクトレが途中から一言も話さなかったことに気がついた。抗議も同意もなく、ただ険しい顔で手元を見ていた。
「どした?」
「──どうなるんでしょう?わたくしには見当もつきませんわ」
「本人がわかんねぇのか」
「わたくしが思い出を全て忘れたとして……どうなるんでしょうね?なんだかどの時期のわたくしも当てはまらない気がしますわ」
「ま、ふつーはそうだよな」
「そもそも記憶喪失になるとわかった訳じゃないもんね」
「ですわね。とりあえず色々考えてみて備えときますわ」
こうしてまた4人はありふれた話題へと戻っていった。
109二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:03:33
この数日後、マクトレの記憶は消えた。
≫131二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:41:07
最悪の目覚めだ。頭から突っ伏して床に寝てるなんてどんな寝相なんだ。
体を起こして支度を、そう思った時──
「ッうぉおおわぁああ!!?」
右足が動かず体が床に叩き伏せられる。とっさに掴んだ木製テーブルはバキバキと嫌な音を立て一緒に床に転がった。
ドサドサとテーブルに載っていた本やノートが落ちてくる。
「な、なんで?老朽化でもしてた?」
イヤそんな事どうでもいいと頭を振る。まだ痛い。
取り敢えず右足の感覚が戻るのを待とう。右足を見ているとゆっくりと感覚が戻ってくるのを感じる。
よろよろと立ち上がりこの部屋の洗面台へ向かう。右足はまだ怖いが何かに捕まりながら慎重に歩く。
取り敢えず酷い寝癖がついてなければ良い、位に思っていた。ただ、寝癖で説明のつかない大きな耳二つが頭に載っている。
ポカンと立ち尽くし呆気に取られている鏡の中ウマ娘は、見る見る血の気が引いていった。
「ウマ娘、だったのか?いや…でも、えっ」
「男?女?この服は男物だけど…俺?俺…は、誰なんだ…」
混乱。困惑。──やがて、憤慨。
「ふッッッざけるな!なんなんだお前は!なんで俺の動きを真似る!?」
右手を思い切り鏡へ振り下ろす。右足の感覚が消え前へ倒れるが止まらない、止められない。
割れた鏡が耳に、頭に降り注ぐ。頭に当たる鏡の破片は自分の体だとこれ以上なく主張をしていて尚更腸が煮えくり返る。
「お前はなんだ!俺は誰だ!!答えろ!何か!答えろ!!!」
132二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:41:25
鏡が飛び散った洗面台を殴りつける。洗面台を左手で掴み体を支えていたが自分が映るほどの鏡が残ってない。
視線はすぐに転がった鏡の破片に移っていた。大きい破片をすぐさま砕くように殴りつける。
あのウマ娘が映っている、ココにも、そこにも。まだ!まだ!まだだ!!!
細かな破片を握りつぶしていく内に両の拳が赤くなっていた。叫びすぎたのか息が荒い。
鏡の破片を大体砕いた頃、急に不安になったのか今度は泣きたくなってきた。この後何をやればいいのかわからない。
助けを求めるように誰かの部屋…俺の部屋だと思う。に戻る。壊れたテーブルと散らばった本とノート。
そして、アルバム。アルバム?飛びつくように掴む。また右足がおかしくなりベッドに頭を打ち付ける、鈍い声が出る。
パラパラと捲ると知らない男女二組と男が二人写っている写真が幾つも出てきた。コレは俺?俺なのだろうか…。
一枚捲る、わからない。また一枚、わからない。成長している男二人のどちらなのか?わからない。この男女二組の誰か?わからない。
ココは俺の部屋ならなんでわからない?なんで?おかしい、こんな事はおかしい。
「…ぅ、ふぐ…ひっ、ぅう…ぐす、ぁあ…」
気づいたら俺はアルバムの写真を一枚一枚破り始めていた。
なんで破りだしたかはわからない。何時破り始めたかもわからない。
気づいたら破りだしていた。気づいたのに止められない。自分で自分をコントロール出来ない。
ひたすらひたすら、おかしい事でも、間違っていても。今自分で手を止められない。
気づけばアルバムの写真は全て破かれ、気づいたらページも破りだしていた。
なんでページも破っているんだろう、なんて思いながらも手は止まらない。涙も止まらない。本当にこの体は自分の体なんだろうか。
アルバムのページを破り終わり、ウマ娘の力で強引にカバーも破る。それでも涙は止まらない。
「ぅ、ひぐ…ぁ、うわあああああああああああ!!」
ベッドに縋り付き泣いた。俺は結局誰で何者なんだ。思い切りベッドを殴りつける、軋む音がする。
何も答えてくれない、答えになってない。どうすればいい、何をしたらわかる。
涙が止まるまで一発、もう一発とベッドを殴りつける。変な音が響いた気にしない、もう一度、もう一度と殴りつける。
133二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:41:34
ようやく落ち着いた頃ベッドもおかしな曲がり方をしていた。
俺は、何をしていたんだろう。俺は誰なんだろう。駄目だ、考えると頭がおかしくなりそうで怖くなる。
別に何か考えるものが欲しい、何か。何かないのか、何か。
目に止まったのはテーブルから落ちていた本とノート。本は、トゥ…何?まあ、競争の雑誌。
落ちた時に開いていたページに何か書いてある。"最大釣果目標"…と。
気になってページを捲ってみる。パーソナリティ以外は見れば多少思い出せるみたいで色々思い出してきた。
トゥインクルシリーズ、クラシック期の特集。皐月賞、日本優駿、菊花賞の特集だ。
余程熱心に読んでいたのか古いのか、メモ書きが多く本は多少痛んでいた。
そして捲ってる内にまた最大釣果目標、と書かれたメモに戻ってくる。赤いペンで皐月賞、日本優駿、菊花賞に丸がつけてあった。
何故か、また涙が溢れる。何故か、この本を破く事が出来ない。
震える手で本を手放し落ちていたノートを拾う。トレーニングメニューや並走の記録を付けているようだ。
ページを捲る、捲る…幾らか前のページで俺の手は一度止まった。
"セイウンスカイは絶対に彼女が求める大物を取れる"
何も疑う事のない様な力強い文字が目に入る。
俺が書いたのだろうか、俺がセイウンスカイのトレーナーだったのだろうか。
ノートを捲る、捲る。前の方に挟んであるメモに携帯のパスワードが書いてあった、不用心だが今は有り難い。
幾つか連絡が来ていたが無視。それより録画データを探す。
全てがある訳ではないがココにも幾らか走っている録画があるはずだ。
あった、芦毛のウマ娘が走っている。此方をからかっている様な楽しそうな言動だ。
だが二つの足でしっかりと大地を踏みしめて、然し回りをよく見ている様に目を奪われた。
戻ってきた芦毛のウマ娘はトレーナーらしき人物と走った感触や並走した相手について話している。
このトレーナーが俺なんだろうか。推定自分、としか言えないが本当なのだろうか。
俺は、"セイウンスカイのトレーナー"なのだろうか。
134二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 01:41:52
今の俺には、コレしか自分を証明出来るものがない。
歯を食いしばれ。震えを止めろ。泣き言は止めだ。コレ以外マトモに生きる道はない。
もう一度レースの映像を見返す。セイウンスカイと自分の言動、行動を見返す。
反芻…俺は今から"セイウンスカイのトレーナー"だ、そう認識して生きる。支える。クラシックを取らせる。
食いしばった歯が震えだすが、頬の肉を噛み震えを止める。鉄の匂いがしてきたが好都合だ。
覚えろ、覚えろ、"セイウンスカイのトレーナー"なら何を言う。見逃すな、全部覚えろ、全部だ。
数回動画を見返した後、息を吸って吐き出す。
俺は今から"セイウンスカイのトレーナー"だ。どうやらレースが好きだったみたいだし俺も多分レースが好きだ。
トレーナーをやる事に文句はない。知識も…資料を見て頭に入ってきている、パーソナリティ以外は無事のはずだ。
少なくとも自分を思い出すまで、そうじゃなくても今の俺が生きる道が見つかるまで。
俺は俺だった誰かとして生きる。口の中の鉄分を飲み込み、連絡を入れる事にした。
≫139二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 03:29:18
車で移動する際荷物をトランクにいれて扉を下ろして閉めようとした時に胸と衝突して悶絶するタイトレ。何やってんのよとトランクを代わりに閉めてタイトレの方を見るとワイシャツのボタンを開けていたいところをフーフーしているタイトレの姿が。そういえばデカかった頃も痛いところをフーフー吹いてたなと思いつつそこを吹くのは絵面がやばいのだがそれを指摘すると自分がタイトレの胸を意識してるみたいで恥ずかしいので何も言わずに溜め込んだ結果性癖が破壊されるタイシン
≫140二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 03:35:07
曇りの日にちょっと憂鬱なタイシン。気晴
らしにゲーセンに行くが一人は味気ない。
せっかくなので暇人居ないか確認をしてみ
るとタイトレが居たので嫌な予感しつつも
メーカー品のバチを持っていき太鼓達人と
かの音ゲーをやったらバチで連打の時にわ
ー胸が小刻みに揺れてる。とタ性壊した。
≫157二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:42:23
「……侘助さん。私に頼むのはさすがに無理があると思いませんか?あと一人暮らしって言葉の意味知ってます?」
「悪いネイトレ。声かけたのは、その……なんかの気の迷いだった」
「バックパッカーみたいな格好してるから何かと思えば……」
「転々としなきゃいけない呪いというか、色々あってな?……てかここ住んでんの?このでかいマンションに」
「はい。まあ入ろうとしたところを見られたから隠しようもないですけど」
「それはただの偶然だって!別に尾けてたとかじゃねえって!」
「そんな事思ってませんよ!?……ああ、会った頃の侘助さんはもっとキリッとしていたのに、今はもうこんなにキャンキャン鳴く子犬になってしまって……」
「そんな哀れむような目で見ないでくれよぉ!悪かった!もう頼らねぇから!今日は野宿でもなんでもする!」
「……そんなことしなくていいですよ」
「……は?」
「そもそもお金があるならこんな事頼まないだろうし、最近は夜も寒いし……あと天気予報で今夜は雨が降るって見たし。一宿一飯ぐらいなら提供してあげます」
「……あ」
「?」
「あぁぁねぇぇきぃぃぃいいい……!!」
「まだ外!まだ外だからね!?泣くなら中に入ってからにしようね!?」
────────────────────────────────
「……かなり高い階なんだ」
「正直地震が来たらどうなっちゃうんだろって不安だけど。ちゃんと免震とか制震?っていうのがしっかりしてるみたいで、なんとか大丈夫みたい」
「へぇー……」
(広い家はさておき、こんだけ高い家は初めてか)
158二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:42:46
「……さて。ここが私の部屋だけど、入る前に決まり事を簡単に。中の様子は他言無用。あとああしろこうしろみたいな干渉もダメ。いい?」
「……分かった。覚悟する」
「別に汚部屋とかじゃないからね?一応の礼儀として。そ、れ、とーー……あ、もしもしネイチャ?今寮にいる?」
実はね……うん……うん……大丈夫だって……うん……え?
「かわってほしいって、ネイチャが」
「……なんか急に緊張してきた。もしもしぃ?」
『……話は聞いた。ドベトレさんさ、今どこにいる?』
「どこって……あね、ネイトレんとこの部屋の前だけど」
『もうそんなとこかー……。…………』
「お、おーい……ネイチャ?……ナイスネイチャー?」
『そっか』
「!!!!!????」
(痛ってえ!!なんだこれ、「視線」が痛ってえ!!!睨まれてる!?どこから!!?)
『分かってると思うけどさ、手を出さないでね』
「分かってる!んなこと絶対にしねえ!!」
『……トレーナーさんにかわって』
「(痛みが、消えた……)ああ……」
はーいかわったよ……うん……誓います……うん……うん、じゃあね
「よっし。これで半分終わり」
「半分ってなんだよ……すでに大分ヤベェよ
」
「ううん。あとは侘助さんがドーベルから了承もらえば泊めてあげる」
「」
〜子犬説明中〜
「……どうだった?特に私にかわらなかったけど」
「『ネイトレさんに手を出したら兄さんを殺して私も死ぬ』って言われた……」
「……愛だねぇ。とにかく誓約はこれで十分でしょ。それじゃ、入って入って」
159二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:43:11
「……なんつーか、女子力をぶちまけてるわけじゃない分落ち着く、でもたしかに女子の部屋って感じだ」
「おっと。お部屋批評は恥ずかしいからそれぐらいにしてね。夕食は適当にパスタ茹でるからー……はい。この箱から味選んで?」
「レトルトの山!?自分でソース作ったりしねぇの?」
「手間がかからないってのは正義なんだよ侘助さん。出来合いのお惣菜コロッケがどれだけの家庭と家そのものを救うのか……」
「その話はわかんねえけど……じゃあこれ。カルボナーラ」
「オッケー。じゃあ私は、ナポリタンで」
「どっちも二人前だけどいいのか?俺は食うけど」
「身体おっきいしね。それぐらいがちょうどよくなっちゃった。あ、手伝いしなくていいよ。ゲストなんだからリビングでのんびりしてて」
「わ、わかった」
(……そうは言われてもやることがねえ。てか落ち着かねえ。だから、部屋を見回す)
(大量のネイチャのぱかプチ。大きさ違い、表情違い、服装違い……コンプリートしてんのか)
(飾られている学園からの表彰状。ネイチャの戦績を考えりゃこんだけにもなるか……ちょっと待てマイルのG1も取ってんの?)
(コルクボードに貼られた写真。意外といろんなとこ行ってんだな姉貴。まりも祭りってなんだ?)
(でもほとんどの写真が担当と一緒に写ってるのはさすがって感じ。……ん?)
「……でーきまーしたー。トマトとレタスだけのシンプル野菜サラダ付き……ってあれ?なんか変な写真でもあった?」
「……姉貴。これって」
「どれ?ああ、ネイチャがシニア有マ記念で勝った時のだね」
「一緒に写ってる黒い髪の人は」
「それは私。人間の頃の」
「……こんな顔だったんだな」
「そういえば侘助さんと会った時にはもうウマ娘になっていたっけ?そうです、元はこんなのでした」
「……なんつーか、」
「普通だな?」
「それ!……あ」
「そんな顔しなくていいよ。むしろ褒め言葉みたいなもんだし。……さ、ごはん用意できたし食べるよ」
「……おう」
160二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:43:38
「……普通にカルボナーラうまかった」
「よかった。メジロの口になんてものを!みたいな展開はなかったんだね」
「俺も別に純正かっていうと……てか姉貴のメジロ像どうなってんだよ」
「……やっぱり名門・上流階級って感じかなあ。住む世界が全然違うってイメージ」
「まあ……そういう面もあるか」
「あと、金の力で外堀埋めてガンガン人を追い詰める」
「それもう酒飲んでるときの兄貴のイメージだろ」
「マクトレさんを見るたび『あれがメジロなんだ……!』って思ってるよ」
「ちげーんだよ!兄貴のは大体メジロモドキだから!見るならドーベルとかマックイーンにしてくれ!」
「あんまりお兄さんの事悪く言ってちゃダメだよ?」
「自分だってすげえ言い草……ってちょっと待て姉貴。俺と兄貴は実の兄弟、マルかバツか?」
「……バツ」
「よかった、さすがにそこは分かってたか」
「そりゃあね。だって私と侘助さんも本当の姉弟じゃないでしょ?」
「……迷惑だったか?」
「え?」
「姉貴って呼ぶの」
「……逆に聞かせて。なんで迷惑なんじゃないか、って思ったの?」
「……俺にとっては、初めて会った時から姉貴──ネイトレはよく声をかけてくれて。白い髪で瞳の色が黒くて。本当にその程度のことで姉貴って呼んでた」
「うんうん。っていうかそういう理由だったんだね」
「でも元の、人間の頃の写真を見て、」
「……黒い髪の私を見て、自分が姉貴呼びしていることが急に申し訳なくなってきた?」
「……なんでわかんだよ」
「今の侘助さんはちょっと素直だし。こう見えて、学生の頃は現代文けっこう得意だったんだから」
「けっこう?」
「……まずまずだったかな?」
161二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:44:06
「とにかく、こちらからすれば『迷惑じゃないし今まで通りどうぞ』って感じ」
「……さっきも言ったけど、あの程度の理由で姉貴呼びはねえだろ?」
「しょうもない理由でもみみっちい理由でもいいよ?」
「うーん……」
「納得いってないっぽいねぇ……まあすでに『兄貴』がいるんなら姉貴呼びにモヤモヤするのも当然か」
「……悪ぃ、多分そうかも」
「……一応補足するけど、私はむしろ全然言ってって気分だよ。一人っ子だったし」
「それは弟分が欲しかったって話じゃねえか?」
「……子犬扱いと弟分扱い、どっちがいい?」
「その二択は卑怯だろ!?」
「まあまあ、それくらい呼ばれ慣れてたってことだから!」
「……そもそも、私からは『侘助さん』って呼んでるよ?会って間もない頃からずっと」
「……そういやそうだな」
「しょうもない理由かもしれないけど、今更呼び方変えないからね」
「そういうことなら……バランス考えて前向きに考えとくか」
「そうそう。でもすぐに決めなくたっていいからね。侘助さん」
162二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:44:24
「……変なこと聞いて悪かったな」
「気にしてないよ。……要は愛称というか、呼び方だからね。母さん(ウラトレ)って呼んだり、ママ(フジトレ)って呼んだり、色々だよ」
「かあさん……ああ、そういえば若い義母さんがいるんだっけ?今はもうママって呼んでるのか」
「え?母さんとママは別人だよ?」
「え?」
「え?」
「……その義母さんとネイチャと一緒に温泉旅行行ったんだよな?」
「えええ!?行ってない行ってない!!」
「えええ!?」
──全ての誤解を解くのに10分を要した。
(終)
≫168二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 06:55:40
ネイチャ「これは?」(ウラトレの写真
ネイトレ「母さん」
ネイチャ「これは?」(ネイトレ母の写真
ネイトレ「お母さん」
ネイチャ「これは?」(ネイチャ母の写真
ネイトレ「うーん、お義母さま?」
ネイチャ「これは?」(フジトレの写真
ネイトレ「ママ」
≫184二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 07:13:57
スズトレ「ドベトレが料理のさしすせそも知らなくて……」
マルトレ「砂糖、塩、スターバックス、正油(しょうゆ)、味噌だな」
スズトレ「嘘でしょ……なんでスターバックス……」
マルトレ「だって酢使わんし……りんご酢飲んでるくらいだし……スタバでデザート買って食後デザートの方が料理に貢献してるし……」
スズトレ「嘘でしょ……酢の物とかに使わないの……?」
マルトレ「酢の物作らんし……サラダも既製品のドレッシングかけるし……」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part313【TSトレ】
≫7二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 07:35:00
『スネーク、よく聞いてくれ。今回の作戦は破壊工作だ。ただし絶対にウマ娘には見つからないでくれ。今回の破壊目標である三女神像、その主体たる女神はウマ娘と視界を共有している。見つかればどんな妨害があるかもわからない。それに可愛らしい彼女達に危害を加えるわけにもいかないしね』
「ああ、わかっている。所でオタコン」
「なんだいスネーク」
「あそこのダンボール、使えると思わないか?」
『人参運搬用の段ボールだね。お腹の空いたウマ娘の気をそらせるかも。スネーク、君がウマ娘になっても関係は変わらないとは思うけれど、できれば今の君のままで居て欲しいな。無事帰ってきてくれ』
「わかった。作戦を開始する」
≫8二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 07:36:19
「こちらスネーク。トレーナーバッジを着けた褐色のウマ娘がいるが……」
「その人はフジトレだね。トレセンでやりてのベテランだよ」
「あれでベテランなのか?あんなにほんわかしてるのに?」
「ああ見えて気難しい子や中々目が出ない子ばかり担当しては実績を出している。派手ではないけど間違いなくトレーナーとしては実力者だ」
「そうだったのか……人は見た目によらないな」
「まあ性格の方は見た目通りに心優しく、トレーナー業の合間合間に新人トレーナーたちにご飯を作ってあげたり掃除をしてあげたりしてあげてるらしい。ウマ娘になる前の不健康だったころからしてたらしいから驚きだよね」
「なるほど……だからママと呼ぶ奴が結構な数いたのか」
「ただ気を付けてスネーク。くれぐれもその人を怒らせちゃいけないよ。なんせトレセンで一番怒らせちゃいけないとも言われることもあるからね」
「普段優しい人間ほど怒ると手が付けられないものだ。気を付けるとしよう」
≫9二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 07:37:58
「オタコン!空を何か飛んでいるぞ!」
『ああ、あれはイロボケカマキリライオンドラゴンだよ」
「なんだって?」
『だからイロボケカマキリライオンドラゴン。いやぁこの目で観れるとは思わなかったな、あれを刺激すれば一時的にウマ娘達は行動不能になるはずだ。タイミングを見て活かしてみてくれ』
「いやだからオタコンイロボケカマ……なんだって?」
『じゃ切るよスネーク』
「オタコン!!」
≫16二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 08:09:55
「オタコン、あの帽子を被った男装のウマ娘は?」
「ああ、あれはVトレだね、最近ウマ娘になった探偵だよ」
「探偵?なんで探偵なんかが学園に居るんだ?」
「学園の依頼で調査中にウマ娘にされたみたいだね。色々あって今ではサブトレを兼任してるそうだよ」
「そうか・・・おいオタコン。何か猫の真似をし出したぞ」
「あんな風になって猫を探したりするのが得意らしいね。学園が平和なのもあってくる依頼は大体ペット探しだそうだよ」
「そうなのか・・・服装はカッコつけてるがあれでは台無しだな」
「でも探偵としての能力は高いらしいよ。勘づかれたらまずいから気をつけてスネーク」
≫72二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 09:31:09
トレ公が倒れたと連絡があった。幸いにもただの風邪のようで、今は自身の家に帰っているようだ。
ふと不安がよぎる。アイツ、ウマ娘用の薬を買ってないんじゃないかい?
ずぼらなアイツのことだ。間違いなく買っていない。
「よしっ!見舞いがてら、薬やら何やら届けてやるかね」
薬局やスーパーに寄り、アイツの寮へ向かう。
──ガチャッ
合鍵を使い、部屋へ入る。
「トレ公!調子はどうだい?」
トレ公はベッドの目の前で倒れていた。
「うわあっ!?トレ公!?しっかりしな!」
慌てて抱きかかえると、トレ公はひどく熱くなっていた。
「ヒシアマ……ゾン?……トレーニングは……?」
ぼんやりとした目でアタシを見つめてくる。意識はあるみたいだ。
「トレーニングが始まる前だよ」
「なら、良かった……」
こんなときまで、アタシのことかい。それにトレ公の服から察するにまたトレーナー室で寝たんだろう。風邪ひいた原因はそれじゃないだろうね。
「ひとまずベッドへ行くよ」
抱き上げ、ベッドへ寝かせる。だいぶ汗をかいているようだった。汗だくな服は変えちまったほうがいいだろう。
「まずは着替えようか。体起こせるかい?」
トレ公はこくりとうなずくと、起き上がろうとする。しかしベッドへと倒れこんでしまう。
「汗かいたままだと冷えるから、脱がしちまうよ」
「……頼む……」
服を脱がしていく。アタシより一回り小さい体が露わになる。苦しいのか汗が滴り、呼吸音と共に豊な胸が上下する。タオルで汗を拭いていると「……んっ」とくぐもった声が聞こえてくる。熱で顔を赤らめ、潤んだ瞳でこちらを見つめるトレ公……。何を考えているんだい、アタシは。
汗は拭き終わった。改めて体を見ると前より筋肉がついている。並走トレーニングの成果だろうか。感心している場合でもないね。
今度こそ新しい寝巻を着せる。
73二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 09:31:42
「薬は飲んだのかい?」
「……家にあるの、人用だった……」
やっぱり、なかったか。
「買ってきたから、これ飲んじゃいな」
水と共に渡す。
「ありがと……」
ごくりと薬を嚥下する。
冷えピタを貼り、掛布団をかける。
「アタシの相棒が倒れちゃ困るんだから、しっかり寝てさっさと直しな」
「うん」
トレ公はふふっと小さく笑って「アタシの相棒」とつぶやいた。そんなにうれしいなら、今度からもっと相棒って呼んでやろう。
アタシが頭を撫でていると、穏やかな寝息が聞こえてきた。
買い込んできたスポーツドリンクを冷蔵庫へしまい、食材を取り出し消化に良いものを作り、これも冷蔵庫へしまう。薬も飲んだし、起きたころには食べられるだろ。
枕元にメモを残し、学園へ戻ろう。
「ヒシアマ……」
ふと声がし、振り向くと、どうやら寝言のようだった。寝込んでるときに出る名前が親御さんでもなく、アタシなのは喜ぶべきなのかねぇ。
さて、トレ公を心配させるわけにもいかないし、今日のトレーニングもこなさないとね。
トレーニングが終わるころ、トレ公から電話があった。
「元気になったかい?」
「おかげさまで。ありがとね」
「その声はだいぶ元気になったみたいだね」
「うん。明日には治ってると思う」
「じゃあ、また明日だね」
74二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 09:31:54
翌日、トレ公はいつものようにトレーナー室へ来ていた。
「昨日は助かったよ。ごはんもおいしかったよ」
「それならお見舞いに行ったかいがあったってもんだい」
元気な顔を見てほっとする。それはそれとして……
「そういえばトレ公。一昨日はどこで寝たんだい?」
「ナンデバレタンデス……?」
さすがに反省したのか、しばらくの間トレ公はトレーナー室で寝ることはなくなった。
≫85二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 09:46:57
耳飾り リウトレ
シリウスのトレーニングが終わり、着替えてくる彼女をあたしはトレーナー室にて待っていた。寮の門限については事情が事情のため、特別免除らしい。今日の夕食はどうしようか、スマホでレシピサイトを見つつ冷蔵庫の中を思い出す。決めかねていたところで相変わらずノックもせずに彼女が入ってくる。帰るぞ、と言いあたしを横抱きにした。
「今日はカレーがいい」
「時間がかかるじゃない、却下よ」
彼女と夕食のメニューについて話しながら、自宅に帰る。良さげなメニューも特に思いつかなかった為、シンプルに肉野菜炒めと味噌汁となった。休みにカレーを仕込んでおこう。それでいいだろう。夕食を済ませ、皿を洗いながら考えていると彼女が声をかけてきた。
「渡したいモンがある」
「ウィスキーボンボンはやめてよ?」
「食べ物じゃねぇよ」
ウィスキーボンボンはじめ、アルコール度数が少しでも入っているものであたしは簡単に酔ってしまう。なので少し身構えたが、そうでもないようだ。あたしは洗った皿を片付け、ソファーへ彼女の隣りへと座る。彼女はあたしの肩を抱き寄せ、長方形の箱を差し出した。開けてみろ、と言われるがままにきれいな包装を丁寧に取り、開封する。細長い貴金属だ。植物のツタのようなデザインのそれは見覚えがあった。ちらりと彼女の方を見る。
86二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 09:47:10
「アンタの耳飾りだ」
「ありがとう…ところで、このデザインだけど」
「当然私と同じデザインだ。流石にそのままだと、その兎みたいな耳には合わねぇから伸ばしてあるが」
「兎って言うな」
彼女は箱から耳飾りを取り出し、あたしの左耳へとつける為に手を添えた。妙なくすぐったさに肩がぴくりと震えた。彼女の手が一瞬止まるが、耳飾りをあたしに付けた。思ったより気にならない。耳を動かすが、不快感がない。耳を気にしていると、頬に彼女の手が添えられる。
「こっち見ろ」
「っ……!」
「よく似合ってるな」
顔に熱が集まり、心臓が大きく跳ねる。移動の際に横抱きにされることには慣れたが、彼女のアプローチには慣れる気がしない。あたしの反応を見て、彼女はにやりと笑みを浮かべた。
「やっぱり…こういうのは慣れてないんだな」
「う、うっさい…」
「そういう反応をするのは私を意識してるってことだ。悪くない」
言い返す言葉も出ない。意識しているつもりはなかったが、意識していなければ、こんなことをされても顔は赤くならないし、心臓が大きく跳ねることもないだろう。
「ちが…」
「違わなくないだろ?そんなに顔を赤くして言っても説得力ねぇよ」
嬉しそうに彼女は言った。アプローチをするということはそういうことだ。あたしは彼女にされていることの意味を改めて理解した。呆けているあたしの髪をもみくちゃにして彼女は寮へと帰った。
───あたしは今日も頑張って耐えた。
≫164二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 12:03:03
ーーーキタサンの実家にて
広い家の一角では…
「色々用意してくれるのは助かるわね…」
「トレーナーさんは私の家族みたいなものだからね!」
居間でそう喋るのはキタトレこと私とキタサンだった。
「トレーナーさんもここに住んだら楽だと思うよ?」
「気持ちは嬉しいけどまだいいわ。住むならキタが卒業してからかしらね。」
「…うん、待ってるからね!」
そんなことを話しながら時間はゆっくりと流れていく。
ふとキタは私に話しかける。
「ねえトレーナーさん。私、皆に優しくしてるけどこれで本当にいいのかな?」
キタが悩むそれは最近あった出来事が原因だ。
いつものように優しく接した時、真っ向からそんな世話焼きなんていらないと言われたのが刺さっているのだろう。
だから
「…そうね、でもそれでいいと思うわ。」
「…」
「私とキタでも違うように、その子とキタの価値観や感じ方が同じな訳がないわ。」
「だからお互いに妥協するの、落とし所を探して決める。正直、そっちの方が大切よ。」
「トレーナーさんはそっちの仕事だもんね…」「それもあるけど、私も昔貴方と同じ悩みを持ってたからね。否定される気持ちは分かるわ。」
「だからキタはそれでいいの、いくらでもぶつかりなさい。そしたらきっと分かるわ。」
「…うん。」
一旦言葉を切り、改めて向き直りながら言う。
「傲慢なのかもしれないけど、私は手が届く範囲なら全部すくって上げたいからね。」
「例え全部拾えなくても、なるべく沢山拾いたいから。」
「キタもきっと同じでしょう?」
「…うん。」
「ワガママなくらいでいいと思うわ。…それに、キタには笑顔が似合うわよ。」
「…ありがとうトレーナーさん!」
二人で笑いあった。悩みを吹き飛ばすように。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part314【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 13:28:23
マフラー
「へっくしゅっ」
「マーチ、大丈夫か?」
「ん?ああ、大丈夫だ。ただ少しだけ寒くてな。」
「最近急に寒くなってきたからな。
うん…そうだな。マーチ、これをするといい。」
「…それは、マフラーか?」
「そうだ、男の時に使っていた物だから少し大きいが…無いよりはマシだろう。」
「でも、それだとトレーナーが寒く無いか?」
「そんな事気にしなくて大丈夫だ。それに、マーチが風邪でも引いてしまったらその方が大変だろ?」
「…むぅ…貴様はいつもそうやって…
いや、いい事を思いついた。トレーナー、少しこっちに寄れ。」
「え?どうしたんだ…ってうわっ」
「このマフラーならトレーナーと一緒に巻くことが出来る。
こうすれば二人ともあったかいだろ?」
「だ、だがマーチ…これは少し…近すぎないか?」
「そんな事、今更気にするな。」
「う、うぅ…」
あったかくなったマーチと、
顔が熱くなったマーチトレであった。
≫18二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 13:35:01
フクトレ『今日のゲームは太鼓の◯人〜だドン〜』
スズトレ「なのに何故コントローラーを……?」
フクトレ『用意できなかった』
スズトレ「嘘でしょ……」
デジトレ「ゲームは初めてだけれどよろしくお願いします」
マルトレ「デジトレ上手いな。初めてでもダンスやってるやつは違うな……スズトレ仇は頼んだ!」
スズトレ「ふふ、任せて」
デジトレ「負けませんよ」
フクトレ『曲も終盤だがここまで完全に互角、最後の連打地帯が勝負を分けるか?』
デジトレ「んん……連打速度で負けてる……そうだ!」
マルトレ「そっそれは⁉︎」
デジトレ(カチカチカチカチカチカチカチ)
マルトレ「爪連打!?」
スズトレ「くっ……!」lose
デジトレ「よし、勝てました!」
フクトレ『おめでとうデジトレ!ただその連打はコントローラー摩耗するから次は禁止だ』
デジトレ「えっ」
≫31二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 14:52:55
フクトレ『さぁ今日プレイしているのはホラーアクションの金字塔だぁオグトレとスズトレの協力プレイをお届けしていくぅ(若本の真似)』
「グオオォォ!」
マルトレ「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
バンバンバン!グァァァ!
オグトレ「よくやったスズトレ、よく見えている。助かったよ。次は向こうのレバー操作をしてきてくれ。その間に私がこいつの相手をしておく」ギシャァァシュラァァ
スズトレ「グロテスクだし音が気持ち悪いわ……」
「ジュルグルピャァァァ!」
マルトレ「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
オグトレ「いいぞマルトレ、そのままクッションを減音機がわりに使うんだ」
スズトレ「レバー動かし…「グオオォォ!」きゃあ!?」
オグトレ「フォローしよう」バンバンバン
スズトレ「あ、ありがとうオグトレ」
フクトレ『ホラーに強いのもあるがゲーム上手いな』
オグトレ「ゲームは大体学生の頃やっているだろう? それの応用さ」
フクトレ『たしかにテイトレとかもモンハン普通にできたしな』
≫42ガンギマリ頭スズトレ21/10/25(月) 15:07:43
「…あ、そういえばなのですが、スズトレさん。」
「ん、どうした?」
一緒に昼食を食べてる最中、思い出したようにアルトレが手を叩く。
「実は先日、リャイトレさんに筋トレの誘いを受けまして。走りに関わる筋肉を…という事でしたので、スズトレさんもいかがかなと。」
「ふーむ…それは気になるけど飛び入りってありなのかな?」
「まだ予定日は先ですし、リャイトレさんもみなさんと一緒の方が喜ぶ方ですので、おそらくは快諾されると思います。」
「…なら参加させてもらうとするかな。」
「はい、分かりました。では日程なのですが──」
「おはようございます!!スズトレさん、今日は来てくださってありがとうございます!!!」
そして何日かの時を経ての当日、リャイトレの朝とは思えない大音声が私を迎える。
「おはようリャイトレ、ただちょっと音量抑えてほしいかな…朝だから頭に響く。」
「あ、ごめんなさい!!スズトレさんが耳いいの忘れてました!!これくらいでしょうか!!」
「うん、そんくらいなら平気。気使わせてごめんね。」
「いえいえ!!スズトレさんの引き締まった筋肉にはいつも安心感を与えてもらってるので!!
アルトレはもうついてます!自分達も行きましょう!!」
…毎回思うけど筋肉で安心感を得るって、どんな感覚なんだろう。そんな事を考えながらジムの中に入る。
「スズトレさん、おはようございます。」
「おはよう、アルトレ。改めて誘ってくれてありがとうね。」
「お礼なら企画してくださったリャイトレさんに。今日は一緒に頑張りましょう。」
「うん。リャイトレ、お願い。」
「はい!!ではまず今日のトレーニングメニューとそれによって鍛えられる筋肉について話していきたいと思います!!」
眠気も吹き飛ぶような元気な声とともに、三人のトレーニングが始まった。
43ガンギマリ頭スズトレ21/10/25(月) 15:08:09
「まずはスクワットです!!足は肩幅程度でつま先は正面を向かせてください!!」
「このような感じ、でしょうか?」
「はい!!そして手は頭の後ろで組み、その状態で腰を真下に落としてください。このとき、腰を反ったり目線が下に向いたりしないように気をつけて!」
「分かった、よっと…」
「おお、いい感じ!!じゃあ数え始めますよ!!いーち、にーぃ…」
「…これって腹筋じゃないの?」
「上体起こしとも言いますが、専門的な用語だとクランチが主流ですね!!誰かに足首を抑えてもらうとより効率があがるのでこれは1人ずつやっていきましょう!!」
「分かりました。スズトレさん、お先どうぞ。」
「ありがとうアルトレ。」
「あーむれっぐくろす…何???」
「アームレッグクロスレイズです!背筋を鍛えるのに有効なトレーニングなんですよ!!こういう風にですね…」
「あ、このポーズ…高校の時にストレッチの一つでやったやつではないでしょうか?」
「あー…言われてみれば。」
「はい!ですがアームレッグクロスレイズはこのポーズを取るだけではありません!!まず息を吸いながら────」
「ふぅ、疲れたねー…」
「そうですね…ですがその分、お弁当が美味しく感じます。私の分まで作ってきて下さりありがとうございます、スズトレさん。」
「私が作りたかっただけだからいいよ。」
一旦トレーニングが終わって訪れた食事タイム。
体を動かして減ったお腹に作った弁当はドンドンと吸い込まれていく。
そんな時、ふとアルトレの箸が止まる。
「…アルトレ?大丈夫?」
「…すみません、大丈夫です。ただ、少しある人が頭をよぎってしまって…」
「…タイトレ?」
「分かります?」
「だって二人、最近はあまり一緒にいるとこ見ないし。」
44ガンギマリ頭スズトレ21/10/25(月) 15:08:28
アルトレはウマ娘化現象の前後関係なく、大人しく優しい性格の、トレセンの中でも上から数えた方が早いくらいには温厚だ。しかし、198cmもの長身、鬼かと見間違うほどの強面、性格と反して溢れ出る威圧感の三重奏のせいで、大抵の人に怖がられ、避けられていた。しかもウマ娘化してなお186cmだったり、目つきが鋭かったり名残が残ってる筋金入り。私やブラトレみたいに気にしない人も当然いたけど、それでも辛かったはず。
そんなアルトレにとって、同じく長身であり発される威圧感を全く気にせず話しかけてくれるタイトレは大事な友人の1人だった。
「…タイトレさんがウマ娘になってから、私は彼と距離を置きました。ブラトレさんの時のように、いやそれ以上に周りを勘違いさせ迷惑をかけてしまうのではないか、と。
それが申し訳なくて。ウマ娘化して勘違いさせることの無くなった今、謝罪したいと考えてるのですが…」
「…まあ、正直私も後輩だから「お、凄い子来たな…」で済ませれたけど、先輩にいたら敬遠しない自信ないからなぁ、男時代のアルトレ。」
「やっぱり、そうですよね…」
「でもさ。タイトレはそんな先輩のアルトレにも全く臆せずに話しかけてくれたんだよ?」
「…あ。」
「だから大丈夫じゃないかなって、私は思う。」
「自分も同じ意見ですね!!」
そう言いながらリャイトレが後ろから歩いてくる。
「タイトレとは同期なのでウマ娘になってから何度も話しましたが、彼が持っていた筋肉の燃焼のような熱い思いが健在でした!!きっと話せば分かってくれますよ!!!」
「…お二人共、ありがとうございます。
私、頑張ってみますね。」
アルトレが微笑む。柔らかな、優しい笑顔。
これを見られただけでも言う価値はあったと断言できる。
「リャイトレはもうご飯食べ終わったの?」
「はい!!なので先にジムに戻っていますね!!」
「分かった。私達もササッと食べきってトレーニング再会しよっか。」
「そうですね。」
三人のトレーニングはもうしばらくの間、時折断末魔に近い声をあげながら続いた。
≫51二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 15:19:57
よし来た、任せろ。
トレセン学園の一室で
何人かのトレーナー達によるお茶会が開かれていた。
キタトレ、スイトレ、フジトレ、オグトレの四人で何を話してるかというと…
「体重が増えたことでセラタプラタが少し悩んでいるのよね…」
「ははっ、それは災難だな。」
「ダイエットには付き合ってるんでしょ?」
「…色々と大変そうだねぇ。」
ーーー茶会というよりはママ会だった。
「そういえば、三人は最近何かあったかしら?私は入り浸る子が更に増えて、そろそろトレーナー室が手狭なのよね…」
「また増えたのかい、罪づくりな女とでも呼んだらいいのかな?」
「否定はしないけど、オグリちゃん以外にも時々差し入れとかいってご飯作ってる貴方も大概よ?」
「すぐに相談に乗って手伝ってくれるお前さんもだよ。また落としてただろう?」
「そうだね、キタトレは皆に優しいからね。」
「さも当然というけど貴方もよフジトレ?何人か貴方の部屋に押しかけてたでしょう。」
「バレてたか、昔世話してた子が何人か連れてきてね。」
「でしょうね、反応が分かりやすかったもの。…スイトレはどう?」
「ひぇ、私は…」
「そういえば最近、公園で子供に囲まれてたね。何してたの?」
「遊び相手になってたんだろう?お前さん楽しそうに見えたし。」
「そうです…可愛かったです…」
「縮こまらなくていいのにスイトレ…」「ひぃ…」
ーーーその後、担当達が呼びに来るまで四人は楽しんだのであった。
≫60二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 15:42:01
咲かせたい グルトレ
乾燥し始め、冷え込みを感じるようになり、グルーヴと手入れしている花壇に色鮮やかな花々が咲き乱れる。梅雨の時期に種蒔きしたプリムラだ。紫、黄色、ピンク、赤、花びらだけ色が違うものや少しシックな色もある。トレーニングや生徒会業務の合間に手入れしていたものだが、問題なく綺麗に咲いた花々に彼女と見とれる。
「すごく綺麗に咲いてよかった~」
「そうだな。しっかりと応えてくれた」
「頑張った甲斐があるね……くちゅんっ」
「全く……」
彼女は巻いていたマフラーを取り、私の首へと巻いた。彼女のぬくもりが残っている為とてもあたたかい。長いマフラーだったので、私は彼女にぴたりと身体を密着させる。
「こうしたら、もっとあったかいよね」
私はマフラーを彼女の首に巻き、ふたりでマフラーを共有する。彼女の腕に抱き着き、指を絡めるように手を繋ぎ、尾を絡め、彼女の肩に頭を寄せる。寒さのせいか照れているのか、ぼそりとたわけがと言った彼女の頬が少し赤い。きっと私の頬も赤いだろう。
「ずっとこうして居れたら良いのに」
「私はそう思わない」
「え、グルーヴなんで~?いや?」
「私はこれからも貴様ともっと様々な花を咲かせたい。冬のままでは困る」
「グルーヴ…」
彼女の言葉に思わず、頬が緩む。
「ああ、その顔やめろっ」
「ふふん~、卒業して同棲したら絶対ガーデニングしよ。毎日ふたりで手入れしてこうやって綺麗な花咲かせたい!」
「それならもう少し大きい部屋か一戸建てがいい」
「勿論、ふたりで暮らすんだからちゃんと選ぶよ。落ち着いたら、不動産で色々見たいね」
花が彩る鮮やかな景色の中で、私は彼女と近い将来を語り合った。家のこと、家事のこと、家具に、ペットは飼うか、その時また変わってもいい。ただただ、彼女と約束した将来をより明確にしたくてたまらなかった。
≫74二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 16:10:25
カレトレ「こんにちはみんなー⭐︎……スズトレお姉ちゃんもいい芦毛ですね……」
スズトレ「カレトレ? あ、様子が変だったらこの紙を渡してってゴルトレが」
[お前芦毛だったら誰でもいいのかよ]
カレトレ「ち、ちがゴルシ聞いて……はっ! ごめん変な感じになっちゃった! 今日はよろしくねスズトレお姉ちゃん♪ところでなんでマルトレお姉ちゃんは? いつもはお姉ちゃん二人でやってるのに」
フクトレ『本日は視聴者CCさんからの熱烈なリクエストによりぃ、カレトレはどこまでカワイイなのか実験を執り行うぞぉ。マルトレ入場ぉ!」
マルトレ「んーーー!んんーー!」(台車で椅子に縛られて運ばれてくるマルトレ)
スズトレ「えっ猿轡ってことは……えっ聞いてない」
フクトレ『本日行うのはテイトレの時にやった最恐ゲームの続編だぁ』
マルトレ「んんんんんん!!」
スズトレ「いやー⁉︎」
カレトレ「大丈夫お姉ちゃん達⭐︎私に任せて!カワイイは無敵だよ♪」
カレトレ「わー⭐︎すごいお化けだぁ♪(震え声)すごいのがきたから逃げないと♪(震え声)」
マルトレ「………」(気絶)
スズトレ「………」(気絶)
カレトレ「お姉ちゃん達起きて♪(震え声)私一人だと心細いのカレンお姉ちゃん助けてぇ♪(震え声)かっカワイイは崩れないんだ俺のカワイイは絶対に崩れないんだ……(ウマソウル侵蝕の剥離)カワイイはカワイイ!」
フクトレ「……ふむ」
────お兄ちゃんは耐えた。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part315【TSトレ】
≫9二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:14:29
『ていとれさんとぶらとれさん』
「はちみーをかけるか、かけないか……それが問題だ」
「何悩んでんの?そんなオペラオーみたいな顔して」
「いやそんな顔はしてなかったと思うが?っていうかなんだテイトレか。急にどうした」
「いやどーしたもこーしたも知り合いがクレープ屋のメニューを見てうんうん唸ってたらそりゃ声かけるでしょ」
「げっ、もう10分も悩んでたのか!」
「そりゃ人だかりもできるわけだ!さっさと決めて一緒に食べる!」
「うむ、かけて正解だった。はちみーうまし」
「そりゃ結構なことで。一応ブラトレも有名人の類なんだからあんまり変なことしないでよね」
「あー、なんかあれなんだよ……俺ってあくまでブライアンやブラックヴォルフのサポートがメインなわけだろ?乙名氏記者も言ってたと思うけど、陰に徹するその姿!ってやつよ」
「うーん、それは……確かに?」
「俺が目立っても大したことはないだろうし……あ、でもそれでチームに迷惑かかると駄目だな。反省しよう」
「ああそこなのね、基準。よく考えたらなんも考えてないアホがチーム経営できるわけないね……」
「ナチュラルな罵倒は置いておこう。俺はチームのためならいくらでも仮面をかぶってやるさ」
「記者会見の時のブラトレって大体真面目系オーラ出してたよねえ。まあ今でも出てるけど顔がほら、子供っぽくなっちゃったからほら……」
「うぬぬぬ、まあそれ言うなら大体のトレーナーがな。むしろ美人系!って感じになったほうが少ないしな」
「そうだよねー、ほんのちょっとうらやましいよねー」
「……お前もその括りに入ってんの気が付かない?」
「……うぇっそうなの!?え、えっぇえ!?」
「おー、見る見るうちに食ってるいちごクレープより真っ赤になっちまった……おーい大丈夫かー?」
「ダァ、ダイジョウブジャナイィー」
「ほれ、フード付きのパーカーやるから顔隠しとけ」
「アリガトー」
「……そんな話をトレーナーから聞いた。色々な意味で破壊力があるな、お前のトレーナーも」
「まあ、そうなんだよねぇ。無敵のテイオー様としても参っちゃうよね。ブライアンのとこのは?」
「あいつの場合はどちらかというと動物…ああ、犬だな」「いぬ」
「犬。まあ大型犬の類だがな」「あー、だからわしわし撫でてるの?」
「……」「図星?あーちょっと!どっかいかないで!謝るからさー!」
≫25二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:31:53
『プリンじゃんけん戦争』
ここはトレセン学園購買部、食事時は人ウマの群れでごった返すが食事時を除けば、
人気がなく普段はたまに、備品を買いに来る客がまばらにいる程度の静かな場所であるが、このときは違った。
足にまで届く巨大なポニテを持った小さくで大きいウマ娘と
セミロングの白色の髪を持ったややヤンキー気質の背が高めのウマ娘が言い争いをしてた。
「これは、私が先に手を付けたものなんだー☆。」
「いーや俺が先だ。」
「ちがうものドベトレは私よりも遅かったよー。」
「遅かったのはマベトレだ。」
二人のウマ娘が何やらを求めて口喧嘩をしている。この騒ぎをなんだと思い新たに、いつもつるんでいる4人のウマ娘が顔を見せ始めた
「お二人でなにしてますの?」
「騒がしいったらありゃしないぞ」
「そうだそうださわがしいぞ」
「珍しいね喧嘩してるなんて」
4人の仲裁と質問に対し、一旦口喧嘩を終えた二人は指を指し示し理由を話す
「理由はこれだよー☆」
「「これ?」」1/6
26二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:32:18
そこには幻のDXプリン入荷しましたのポスターがあった。
「あーこれは!幻の購買部の数量限定DXプリン!いいなー」
「マクトレ説明を」
「幻のDXプリンそれは厳選されし材料、そして職人芸ともいわれる絶妙な手ほどきによって作られるここトレセン学園購買部の名物とも言われる幻のプリン
あまりの人気から予約なし不定期日不定期時間に発売されるという。そしてわたくしは本日分は購入済みですわ」
「おい、お前」
「そして、その最後の一つをマベトレとどっちが先に手を付けたかって話だ。」
「ねー皆信じてよー、私が先に手に入れようとしたのにドベトレが後から取っていっちゃたんだーこんなのマーベラスじゃないよね。」
「チッチッチ、嘘はいっちゃいけないなー、俺が先お前が後だ!なあそうだろ兄貴。」」
「見ていないのでわかりませんわね。」
「ううそんな、痛いとこをつかれた。」
「素直にじゃんけんで勝負をつけたらどうなんだ?それなら公平だろ。」
「そうだねー仕方がないけどそれならマーベラスだー☆」
「しょうがねえなあ。」2/6
27二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:32:32
ブラトレの提案に乗り、決着はジャンケン勝負となった。
そこへマベトレは突然ニヤリを笑みをこぼし言った。
「じゃあ、私は最初にパーを出すね☆」
「ああ、わかった。ってなに!?心理戦だと!?」
急に不意を突かれたドベトレしかし、中止を言い渡す前に言った言葉によって了承と受け取られたのか、
マベトレからじゃんけんの掛け声は止まらない
「いっくよー☆じゃーーんけーーん☆」
「うおおおまてええええ」
(何を出す?何を出せばいいんだ?考えろ)
(マベトレの手はなんだ?いきなり心理戦を仕掛けてそのまま始めるということはそのままパーか?)
(それを逆に取ってチョキを出せばいいか?いや更にそれを読んでのグー?)
(よく考えろ普段のやつの行動を
ドベトレの脳内のマベトレを見聞きした記憶が駆け巡る
(マーベラス☆)(マーベラス☆)
くっっそおおおわからねぇぇぇあいつは何を出す?俺は何を出せばいい?)
(仕方がないここは直感に頼るしかねぇパーだ!)
「「ポン」」
出された手は 3/6
28二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:32:51
ドベトレ:パー
マベトレ:パー
あいこであった
「あいこかー」
「あぶねえぇぇつーか卑怯だぞいきなり心理戦じゃんけんとか。」
「そのほうがマーベラスかなーと思って☆」
「マーベラスじゃねえぇぇ」
「じゃあ次行くよ次からは私も本気だからねー」
「本気ってじゃんけんに本気も何も。」4/6
29二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:33:06
「宇宙(そら)は我が瞳の中に」
瞬間マベトレの星のような瞳が光ったのをドベトレは見た。
マーベラス・タイム
領 域 ☆ 展 開
【偽・不天驚奇術】
マベトレの茶色の瞳が青くなりその中に黄色い星が浮かぶようになる青い瞳の奥に数え切れぬ星々が現れ拡大していく
青い瞳は辺りを飲み込みはじめ次第に周辺は青い宇宙の星々と黄色の月の大地へ置き換わる
「これは領域展開!?これほどの使い手がここにもいたのか!?」
「知っているのかフクトレ」
「ああ、心の中の風景を何らかの方法で映し出す技だ。この中だとマベトレの言いなりだぞ注意しろ。」
「注意しろって言われてもどうすればいいんだ。というかどうやって会得したんだ。」
「マベに教わったんだー☆私じゃあまだまだマベには及ばないけど、この世のマーベラスを一緒に味わおうー☆」
(ドレイクの方程式って知ってる簡単に言うと宇宙にいる知的生命文明を計算する式なんだけどねこれでいうとね……
……………
…………
………
……
…
…それはとってもマーベラス☆だよね)
(ほかにもほかにも……)
「うわあぁぁぁ…………、こうなればあれをつかうしかない」
「この空間から脱出することはできないよーさあ負けを認めようー☆」
───面を上げろ、侘助
「………マーベラス☆」5/6
30二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:33:25
星々でかたどられたミニチュアの宇宙が割れた。
4人が見守る中、二者の影が現れる
パーを出すマベトレそして、チョキを出すドベトレの姿であった。
「やったぞ、俺の勝ちだ!!」
「うわーー負けたーーーーーー」
ドベトレを勝ちを喜び、マベトレは大粒の涙を流す
ひとしきり、両者は勝敗を噛み締めた後
「でもお前の戦い方、マーベラスだったぞ」
「ドベトレもいいたたかいっぷりだったよ☆」
二人はなにか通じたように拳を突き合わした。
「さあ、お目当てのプリンはっと」
「お買い上げありがとうございましたー。以上でDXプリンは完売となりますー」
「え」
「え」
「―――嘘でしょ。」
後ろで大騒ぎしてる間にすんなり購入してたスズトレの姿がそこにはあった。6/6
≫37二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:37:17
チョコレート リウトレ
今日は特にトレーニングもない日だった。私はチョコレートアソートの箱とバッグを手にし、トレーナー室へと足を運ぶ。私のトレーナーがウマ娘になり、数日。歩くことが人並みもままならい彼女を横抱きにして移動することが当たり前となっていた。素直になれずとも自分を頼る彼女が愛おしくてたまらない。いつも通り、ノックなしにトレーナー室へと入れば、その愛おしい彼女は兎のような長い耳を動かしながら、ノックをしろと騒ぐ。動くたびに、同じデザインの耳飾りがキラキラと輝く。
「やるよ」
「ハロウィンには早いわよ」
「貰ったモンだが、食べきれねぇから手伝え」
「いいけど、甘いもの好きだし」
知っている。だから持ってきた。私はソファーにかける彼女の隣りに座り、箱を開ける。様々なひとくちサイズのチョコレートが並ぶ。それなりのメーカー品で上品なデザインだ。ひとつ取り、彼女の口元へと運ぶ。
「じ、自分で食べるわよ」
「これも『頼る』だぞ?」
「違うでしょ!絶対…」
「ほら、私を頼れ。それとも口移しが良いのか?」
「うぅ…」
私の手からチョコレートがなくなる。しぶしぶでもなんと可愛いものだろうか。頬を赤くさせながら、チョコレートをほおばる彼女を見て頬を緩む。彼女はチョコレートを手にし、目線を逸らしながら私へと向ける。
「なんだ?」
「シリウスも、食べるのよっ!」
「いいぜ」
私は彼女の手にしたチョコレートを口にする。赤かった彼女の顔は更に赤くなる。まるでゆでだこだ。これだけのことでも彼女には大ごとのようだ。私は適当にチョコレートを取り、彼女の口へ運ぶ。
「ん…もう……んっ」
「どうした?」
「シリウス~~」
39二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 18:37:28
勢いよく彼女に抱き着かれ、そのままソファーの上に倒れる。むすっとした表情はなく、とろかした表情で私を見る彼女がいた。どうやら食べさせたチョコレートはアルコールがあるものだったようだ。
「えへへ~~、あったかい~~」
「あったかいな」
頭を撫でてやれば、また頬を緩ませる。素面でもこうさせたい。何も気にせず、私を頼り、私に愛され、私を愛せ。必ずそうさせる。
「シリウスはなんれ、あたしのことだいじにしてくれうの?」
「そりゃアンタのことが好きだからな」
「あたしおんなのこだよ」
「関係ないだろ、そんなこと」
性別なんて些細なことだ。アンタがアンタだから私は好きだ。それだけだ。
「それに……寝やがった」
放課後は始まったばかりだ。寝ても問題ないだろう。私は自身に覆い被さったまま眠る彼女を抱き締めながら、仮眠をとることにした。
「あぁあああああああああ!!」
「うっせぇなぁ…」
彼女の悲鳴で閉じていた瞼を開ける。顔が赤いが酔いが冷めて思い出し、悶絶しているのだろう。
「ねぇ、忘れて…忘れて…」
「無茶言うな」
彼女はこのあと、私が寮に帰るまでの間もいつものテンションに戻ることはなく、顔を赤くさせてしおらしくしていた。
≫71二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:02:26
俺ことダイワスカーレットのトレーナーは、来月にいなくなる。
いや、より正確に言えば、キンチェムというウマ娘に取り込まれるのだ。
そうして吸収されて、何も残らない。そうなる。
そうなっても習性というものは厄介で、どれだけ塞ぎ込んでいても、求められれば飯を炊き、出勤してしまうのである。
翌日には何ら変わらない様子で……。
「……おい、大丈夫か」
「え」
「いや……こんな時にふざけてるとは思われたくないが、ダストレ……
……煙草、逆さだぞ」
「あっ」
……何ら変わらない様子でいられなかったようで、俺は百均ライターをぽけーっと握りしめながら、逆さに火がついた煙草を咥えていた。
それをフクトレさんに指摘されてようやく気づいて、元に戻そうとして……口を軽く火傷して正気にかえった。
「あっつい!」
「あーあーあー……落ち着け落ち着け。新しい煙草出せ。火ぃ点けてやるから」
「あい……」
自然な動作でシガレットキスをされて、別の意味で動揺したことで、ようやく落ち着いてきた。
怪我の功名……というには、ちょっと間抜け過ぎるかもしれない。
72二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:02:47
「で、煙草吸いに来たのは、お前なりの反抗か?」
「いや、マジでなんとなく……休憩時間だし」
「じゃあ、あんまり煙を肺に入れるな。走れなくなるぞ」
それはそうだ。俺は煙を口で燻らせて、肺に入れずに吐き出した。
この身体は一ヶ月後、キンチェムのものになる。
そうなれば傷物にするのは、トレーナーとして褒められたことじゃないのだ。
どうせ譲り渡すなら、きれいな身体を渡すべきだ。内心で反省しながら、人生最後の煙草を揉み消した。
「ごめん、けどありがとう……気遣ってくれて」
「気にするな。似たような立場だ、同情くらいする」
それってどういう意味、と聞くに聞けないのが俺の弱さだ。
フクトレさんはそれを責めず、薄く笑って俺を送り出す。
「どうするにしたって、挨拶回りしてこい」
気軽な言葉。
それが今の俺にとっては、何よりありがたかった。
73二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:03:16
いろんな人と話してみて、わかったことがある。
俺はけっこういろんな人に存在を知られていて、いろんな人が親しく思ってくれている。
努めて気楽に話してくれたり、別れを悲しんでくれたり、励ましてくれたり……普段よりずっと、親身にしてもらえた。
「だ、ダストレさん……」
「あぁ、チヨトレさん。おはよう」
「おはようございます。……あの、聞きました。貴方が、キンチェムさんの……」
「うん。明日から引き継ぎ資料作らないとって考えてる」
チヨトレさんもそのひとりで、理路整然としながら脆い心を抱えたこの人が俺の身を案じてくれるというのは、少し申し訳ないような、嬉しいような気持ちになる。
(それ以上に自分を大事にしてほしいとこあるけどね!)
ここで無理に離れて気に病ませてしまうより、少し手伝ってもらった方がいいかも。
そう考えた俺は、スカーレットのトレーナーとしての引き継ぎ資料をチヨトレさんに見せる。
「良ければ、手伝ってくれる?」
「……いいんですか」
それは決して、資料作りを手伝うことだけじゃないだろう。
わかってる。でも、俺は敢えて深く考えてない振りをして、手を合わせた。
74二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:03:37
「たのむよー。俺、見直しとか苦手でさ」
この通り! そうおどけて頼んでみれば、チヨトレさんも重苦しい気持ちが少し抜けて、元の優しい無表情を取り戻してくれた。よかった。これで一安心。
「ご無理は、なさらないでくださいね」
「もちろん。何事もほどほどに、が地味なダストレさんの持ち味ですとも」
ゆらゆらしていた気持ちも解けて、ゆるやかな諦めと共に俺は状況を受け容れた。
うん。何も恐れることなんてない。ただ俺がいなくなるだけなんだ。
俺ができることは、それをできる限り、悲しいものにしないようにすること。
そう決めると――心が少し、楽になった。
後日、俺は樫本理事長代理に一ヶ月後には辞める旨を伝え、辞表を提出した。
誰にも。スカーレットにも内緒で。
75二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:04:02
諦めれば色々楽になる。
聞こえは悪いけど、思いつめてブッ壊れるよりはマシだと思っていて、現に今の俺は楽な気持ちで普段どおりの暮らしをしていた。
「はい、キンチェム。お豆腐サラダだよー」
「……ウマソウルに食事はいらないのよ、ボディ」
「体つくりの為のごはんは大事なんだよ、キンチェム。
なんとスカーレットのボディはこのごはんで出来てるんだ!」
「あのボディが……これで!?」
「ホッホッホッ……わしがそだてた」
「食べなきゃ……!」
今現在も成長中のスカーレット・ボディに惹かれてか、キンチェムはお豆腐サラダを熱心に食べている。
……ここ一週間はこういった菜食主義だから、ちょっとウェストが絞られ気味だ。
そもそもこの身体が本格化や成長期を迎えているかどうかもわからない(生理は来ていない)ので、この食生活が正しいかがわからないが、いずれ本格的に走るのなら、鳥のささ身くらいは食べておくべきかも。
……いや、わかってる。わかってるんだ。自分でも、スカーレットを避けていることは。
けど、今だけはどう向き合えばいいかわからない。それを考える時間が、少しでも欲しいだけ。
そう言い訳をしながら、久し振りに栄養学の本からレシピを紐解いていると、キンチェムがそういえば、と聞いてきた。
「来てからそんなに生活が変わらないけど、やることないの?」
「ん……一応、色々やってるよ。終活みたいなこと」
俺はもしキンチェムとひとつになった時、俺の知識も残らなかった場合に備えて、トレーナーとしての知識は勿論、生活に必要な知識をチヨトレさんとまとめたり、困ったら誰に頼ればいいか、連絡の仕方などもまとめていた。
見る人が見ればまるで遺書のようなそれを、キンチェムはしげしげと眺める。
76二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:04:30
「フランキーはこんなの書いてなかった」
「そうなの?」
「そーだよ。フランキーはわたしに飼い葉をくれたり、優しく洗ってくれたり……。
シラミっていうかゆかゆの虫がわかないように、櫛で梳いてくれたの」
愛しげに長い髪を撫でるキンチェムの顔は、まるで遠い昔を懐かしむようで、それでいてつい先程まで櫛で梳かれていたようで。
愛の歌を奏でるように、キンチェムは甘い声でフランキーへの想いを語ってくれた。
「お酒が大好きでひげもじゃの、ちょっとだらしのないお腹をしたフランキー。
レースで勝つ度に酔いどれマデンやブラスコヴィッチのおじさまと乾杯をしていたけれど
わたしにだけは誠実で――わたし達はいつも同じ夢を見ていた」
こうしてね、とキンチェムは手近なブランケットを手にして俺の背を包む。
恋と愛の熱が肩から背骨に伝わって、なんとも甘い寒気が俺の背筋を伸ばした。
「フランキーったら、寒い夜に何もかけないで眠るものだから、わたしの衣をかけてやったの。
寄り添って同じ星を見上げたわ。言葉がなくたって、想いが通じていた」
年老いたお婆さんのようで、うら若き乙女のようで。
命ひとつが紡いだ思い出の歴史が、すぐ後ろから囁かれる。
「――あの人といつまでもいっしょにいたかった。名前だけじゃなくて、終わりまで」
彼女の深い愛を知るには、それで充分だった。
77二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:04:54
「……ねえ。怖くないの? わたしのこと」
「怖くないよ」
「でも……消えちゃうかもしれないのよ、あなた」
「あ、うん。それはめっちゃ怖いかな」
努めて朗らかに答えると、キンチェムは申し訳無さそうに俯いた。
君にも願いがあるんだから、気にしなくていいのにと言ってやると、彼女はぶんぶんと首を振る。
「誰だって大事な、あなただけの身体だもん。それを奪おうとしているのはわたし。
憎んだり、恨んだりして、当然なのよ」
「そんなことしないよ」
「どうして……?」
「だって、俺はトレーナーだもん」
それは消えてなくなる俺を支える、ささやかな矜持。
トレーナーはウマ娘の為に身を粉にして働く者。そういう役職を全うする為のプライド。
要は、俺なりにカッコつけることで自分を保っているのだ。なんかこう言うとダサいけど。
「君の願いが本当に胸を張って成し遂げられることなら、俺だって手伝うよ。
……ときどきでいいから、スカーレットのことも気にかけてやってくれると嬉しいな」
「…………うん」
その言い淀んだ沈黙の中に、どんな逡巡があったのか。
俺が踏み込もうとする前に、ポケットの携帯電話が鳴り響いた。
77二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:05:15
思わぬ人の呼び出しに、キンチェムにごめんねしてから慌てて俺は夜のトレセン学園へ向かう。
こういう時に夜だからと断れないのがなんとも俺らしい……と自嘲するも、月夜に照らされるトレセン学園は仄かに白く光っているようで、見慣れた石畳さえどこか綺麗だった。
「おお、来たか。夜分にすまんの」
「い、いえ! 呼んでもらえて光栄でっ……!」
「ホッホッホッ。まあまあ、座りなさい」
呼び出したのはヘリトレ大先生――ではなく、マクトレだ。
「御爺様が呼んでるからなる早で」とマクトレに言われた時にはどんなお叱りがあるんだろうと戦々恐々としていたが、ヘリトレ大先生は優雅に月見酒を楽しんで待っていた。
学園内は飲酒禁止ですよとかツッコんじゃダメなやつだろうかこれ。
「どうじゃダストレ君、一杯いっとくかの?」
「御爺様、学園内は飲酒禁止ですわよ」
「なんじゃ堅いのう。おぬしもストゼロ舐めるくらいよかろ?」
「いえ、ダストレの前だと安心して三本イッキしてしまうのでナシですわ」
「いや箍外れすぎじゃろ」
「あーごめん、カブで来ちゃった。
公道にレインボーロード敷くのはマックイーンちゃんのイメ損だよね?」
「イメ損ランキング堂々の第一位としてヒットチャートしてしまいますわね……」
「そんなオリコンランキングみたいなノリで担当ウマ娘への風評被害を刻むでないわ」
最初は緊張で頭がいっぱいだったが、マクトレのいい感じのボケとヘリトレ大先生のまっとうなツッコミで気持ちが落ち着いてきた。
うーんやっぱリフレッシュにはコントが1番だな! マクトレがいてよかったぁ!!
79二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:05:39
「呼んだのは他でもない、君の進退についてじゃ」
「……退職届は、もう出しましたけど」
「うむ。実はの、儂が預かっとるんじゃよ」
ヘリトレ大先生が袖から取り出したそれは、密かに俺が理事長代理に提出したものだ。
強権で握り潰すつもりなのだろうか。けどそうされても……と俺が色々困っていると、ヘリトレ大先生は寂しげに微笑んで語り始めた。
「諸君ら……いや、儂らかのう。奇妙な身の上に置かれながら
今もどうにか担当のウマ娘と向き合えておる。幸運なことじゃ」
そう、幸運なことだ。
当たり前に続くと思っていた日常は、ある日あっさりと終わる。
それに気づくのは、もう取り返しがつかない時なんだと、最近になって俺も知った。
「じゃが、どうしても別れの時は来る。別離の慰めとなるのは、いつだって思い出だけ……
歳を取るほど蓄財に励むのは、そうした思い出を一欠片でも取り零さんようにするためじゃ」
まあボケて忘れるんじゃがの、と笑うヘリトレ大先生だが、その人生にはいったいどれだけの別れがあったんだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、先生は鈍色の瞳をすいと俺の瞳と合わせた。
「それで、ダストレ君。
御主は担当のウマ娘へ、充分に思い出を遺してやれたかのう?」
心臓が跳ねる。
それと同時に、俺は肩を掴まれた。
(続く)
≫106二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:24:23
手作りご飯
「出来たぞ、マーチ。」
「おお、これまたとても美味しそうじゃないか、トレーナー。」
「最近フジトレさん達に料理を教えてもらっていてな、難しい物で無ければ作れる様になったんだ。」
「それで最近資料室から出ている事が多かったのか。トレーナーが外に出るようになって私は嬉しいぞ。
それはそうともう食べてもいいのか?」
「ああ、大丈夫だぞ。」
「感謝する。いただきます。」
「…!美味しいな、トレーナー。」
「なら良かったよ。」
「?トレーナー、そんなじっとこっちを見てどうしたんだ?」
「いや、随分美味しそうに食べるなぁと思って。」
「そうか、それなら見ててもいいがトレーナーも早く食べないと冷めてしまうぞ?」
「それもそうだな、いただきます。」
「…うん、上手く出来てる。」
「弁当の時もそうだが、どんどん料理の腕が上がっていくな。」
「あの人達の教え方が上手なんだよ。」
「でも頑張って覚えたのはトレーナーだろ?ならトレーナーも十分凄いと思うが。」
「そ、そうか?でも、マーチからそう言ってもらえると…嬉しいな。」
「……あの、マーチ…?」
「どうした?」
「…俺が見てたのが気に障ったのなら謝るから…その…食べるところをずっと見るのはやめてくれ…恥ずかしい…」
「別に腹を立ててやってる訳ではない。
ただ、トレーナーが随分美味しそうに食べる姿が、少し愛らしくてな。」
「うぅ…からかわないでくれよ、マーチ。」
「からかっている訳でもないのだが…」
≫119ガンギマリ頭スズトレ21/10/25(月) 19:31:49
28歳組とスケート取材
「…ねえ。」
「どうかしたかスズトレ?おっと危ないぞルドトレ。」
「これ、前に集まった時に言ってた二人宛の雑誌取材だよね?来てほしいとこがあるって聞いたからついてきたけど…」
「そうだよ〜。あと助けてくれてありがと〜オグトレちゃん。まだスケート慣れてなくて…」
「ルドトレは体型変化1番大きいしバランス取りづらいのは仕方ないでしょ…じゃなくて。なんで私も?」
「う〜んとね〜、実はこれから1時間くらいしたら小学生たちが見学に来るんだって。」
「それでその子らがスズカの大ファンなんだと。んで急遽予定変更、同期三人の会談、ってことになったわけだ。」
「記者の人の柔軟性が高すぎる…でも何してあげたらいいんだろう。私ひとりでのファン対応は初めてだからなぁ…」
「じゃあスズトレちゃん、もし私が同じ状態だったらどうしたらいいと思う?」
「日常の話して親しみを持ってもらいやすくするとか、あとスマホで写真見せてあげるのもいいんじゃない?当然内容は選ぶ必要あるけど。でもなんで急に?」
「だって、それが答えでしょ?」
「え?…あっ。」
「毎度思うがお前さん、ファンとかメディア関連は自分限定で一気にダメになるな…」
「…未だに実感が湧かないんだよね、正直…担当持ってない期間長すぎたからかもしれないけど。経験の差かなぁ、2人には一生追いつけそうにないや。」
「イタチごっこだよね〜。でも、サブトレとかのスキルに関しては私もオグトレもスズトレにはかないっこないんだよ?」
「互いに足りないとこ補う、それでいいだろ。焦る必要はないさ。」
「うーん、それもそうかぁ…よし、分かった!ありがとね二人とも!!早速だけど私実はスケート経験者だったりするから少し教えよっか?」
「お、マジか。それは助かるな。」
「スズトレちゃんすごい!!今そっち行くね〜!!」
「あ、待ってそんな急に動いたら体制崩すって…」
「あっ…」
────ルドトレはスズトレに倒れ込んだ。
しかもたまたま写真に撮られた。
さらに見栄えがよかったので雑誌に掲載された。
────ルドトレは監禁された。
スズトレは頭を抱えた。
≫127二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 19:40:54
練習終わりの穏やかな時間、トレ公が聞いてきた。
「ヒシアマ~、耳飾りってどんなのが良いと思う?」
「それ聞くの、今日で何度目だい。アタシが決めてやろうか?」
「ん~、お願い。この手の物選ぶの俺は苦手だから」
トレ公がつける耳飾りか、ヒシアマ姐さんの腕の見せ所だね!
数日後。
「ヒシアマ!耳飾り届いたよ!ありがとう!」
トレーナー室に入ると、右耳に耳飾りを着けたトレ公が笑顔で迎えてきた。
黒い髪に太陽をモチーフとした耳飾りがよく映える。アタシの目に狂いはなかったね。
と、悩んでいることがあるのか、トレ公は何か言いたげな顔をしている。
「何かあったのかいトレ公?」
「えっと、昨日いっしょにショッピングモール行ったじゃん」
「行ったね」
「そこで、髪飾り見つけたんだ。つい衝動買いしちゃったんだけど、耳飾りと合わせると飾りが多いかなって思ってさ」
「ひとまず、付けてみたらどうだい?」
「それは……そうだね」
納得したのかトレ公は鞄から赤い髪飾りを取り出した。
不器用な手つきで左耳のとなりに髪をまとめ、髪飾りを着ける。
「この髪飾り、ヒシアマが勝負服のときに着けている耳飾りに似ているなって思って……
それで、髪をこうやってまとめるとヒシアマみたいになるかなって」
トレ公は不安そうに耳を揺らしながら、上目遣いで見てくる。
「……よく似合ってるよ」
「ほんとか!」
嬉しそうにトレ公の尻尾が揺れる。
「これでヒシアマとおそろいだな!うわっ!?」
満面の笑みになったトレ公を見て、思わずわしわしと頭を撫でちまった……
≫139ドベトレ、クリトレの世話になる21/10/25(月) 19:53:09
インターホンを鳴らしながら、かつて誰かが言っていた言葉をふと思い出す。
『知ってるか? トレーナーと担当ウマ娘の極まった関係は3つに分けられる。戦友、恋人、親子。この3つだ』
その当時のオレは、多分バカバカしいと思ったはずだ。今は……残念ながら、理解できてしまう。
何故か? 戦友は星の数ほど例がある。恋人も、まあ覚えがある。親子はまあ、恋人よりは分かりやすいか。
親元離れて寂しい生徒が、親身になってくれるトレーナーを親代わりにする。こういうケースが多い。
いやまあ、それにしたって──
「はーい。あ、ドベトレさん! そっか、もうそんな時間か。どうぞ、入ってください!」
「ん、おお。よろしく頼むわ、ちっこい方のクリトレ」
──目の前のコイツ……小さい方のクリトレとその担当との関係は、ちょっと特殊が過ぎる気もする。
お邪魔するなり鼻腔をくすぐったのは、作りかけだろう様々な料理の香り。
「あー……いい匂いがする」
「えへへー。もうちょっとで出来ますから、手を洗って待っててくださいねー」
「手伝わなくて大丈夫か? ちまっこいのがちょこちょこしてるの、見ててちょっと心配だが」
「ふふん。大丈夫ですよドベトレさん! これでも普段は自炊してますからね」
「そうか、んじゃあ大人しく待ってることにする」
そして言われた通りに食卓で待っていたオレの前に運ばれてきたのは、
「へえ、こいつは美味そう……お、こっちも中々……ん、おい待て。ちと多くねぇか」
2人分というにはあまりにも多い料理の数々。多分5、いや6人分くらいあるぞコレ。
「普段お屋敷住まいのドベトレさんをおもてなしするんだから、これくらいは、と!」
「いやいや、いくらメジロの屋敷ったってウマ娘1人分の量は世間と変わらねえよ」
「んー、でも聞いた話、ドベトレさんまだお若いし、もりもり食べるかな、って」
「確かにオレはそこそこ食うしまだ22だけどよ、にしたってアンタと2つしか変わらねぇっつーの!」
「まあまあ、冷める前に食べましょう! 大丈夫、残ったら朝ごはんとかお弁当にすればいいんです!」
「……ま、それもそうか。んじゃ有難く。いただきます」「はーい! ふふ、召し上がれ!」
ちなみに味はフツーに良かった。聞けばオグトレさんに教わってるらしい。納得。
141ドベトレ、クリトレの世話になる21/10/25(月) 19:53:21
「はー……いやもう腹いっぱいだわ、ごちそうさん」
「はい! お粗末様でした。片付けは僕がやりますから、先にお風呂どうぞ」
「あー、いや流石にこの量を家主ひとりに片付けさせるのは気が引けるからよ、手伝わせてくれ」
「あ、ははは……そうですね。じゃあお手伝い、お願いしてもいいですか?」
「はいよ。にしても、結構食べたつもりなんだが、それでも2人分くらい残ったな」
「お客さんが来るからって、張り切って作りましたから。お弁当、楽しみにしててくださいね!」
そんなことを話しながらある程度片付けたところで、後は僕だけでも大丈夫だからっていうんで風呂へ。
寝間着は以前のクリトレのを貸してくれるらしい。おまけにまとめて洗濯もしてくれるという。有難い。
ご厚意に甘えて服を洗濯籠に放り込み、風呂場へ。シャワーを出そうとして、オレの耳が物音を捉えた。
「ふふん、ふふん♪ふふふふふーん♪かゆいところはございませんかー?」
「……ハイ。ゴザイマセン」
──いやホントどうしてこうなった!
落ち着け、いや落ち着けるかよ! なんでクリトレがオレの髪を洗ってるんだ!?
さっきまで洗い物してたクリトレが、いつの間にか服脱いで風呂場にやってきて、んでこの状況だ。
……ダメだ。わかんね。つーか何故そんなに楽しそうなんだ。
「ふふん、ふふん♪ふふんふんふんふん♪よし、次はお耳ですねー」
「あっ、ちょ、耳はいいって! ていうか別にオレはどこも洗って貰わなくても……」
慌てて振り向いたオレが見たのは、耳をぺたんと倒し目を潤ませるクリトレの姿だった。
「そう、ですよね……迷惑ですよね、ごめんなさい。お世話が楽しくて、つい調子に乗っちゃって……」
「……だぁーっ! 勝手にしてくれ、耳と尻尾以外な!」
「……! はいっ! えへへ、頑張ってお世話しますね!」
何となく、だが。多分オレはコイツに勝てないんだろうな、と思った瞬間だった。
「いいお湯ですねー……そんなに緊張しなくていいんですよ、ドベトレさん」
「……その、恥ずかしい話なんだがオレ、女性に慣れてないんだよ」
「? でもドベトレさんだって、今はウマ娘、つまり女性じゃないですか」
「や、オレ自身の体はまあ、いいんだよ。置いとく。でもその、アンタのは、なんつーか」
「僕の体がどうかしましたか?」
「だあああヤメロ見せるな押し付けるなウワーッ!」
142ドベトレ、クリトレの世話になる21/10/25(月) 19:53:32
嫌な汗をかいた気がするが、とにかく湯浴みを終えて後は寝るだけ……なんだが。
「なあクリトレ、オレはどこで寝りゃぁいいんだ? 見たとこベッド一つしかないんだが」
「あ、ご心配なく。僕の体、小さいでしょう? だからベッド一つで足りますよきっと!」
まさかの添い寝。いきなりの添い寝。しかも聞けばもともと寝具は一人分しかないらしい。
あーだこーだとオレが考えているうち、クリトレはさっさと布団に潜ってこっちを見ている。
「さあどうぞ! 遠慮なさらず!」「いやどうぞ! じゃないんだが」
「大丈夫ですよ、クリークはよく『抱っこすると温かいです~』って褒めてくれますから」
「そういう心配はしてないっつーの。いや待て、その口ぶりだとアンタ、担当とよく寝るのか」
「よく、かどうか分かりませんが、時々一緒のお布団で寝ますよ」
……もう駄目だ。脳がバグる。諦めてベッドに入ってさっさと寝よう。
「しょ、っと。失礼しまーす……うん、ドベトレさんも温かいですね」
「……そっすか」
予測可能回避不可能とはこういう事だろう。寝転がったオレの懐へ、クリトレはすっぽり収まってきた。
なんかもう色々一杯一杯だ。そしてそんなオレとは正反対に、クリトレはどうやらもうおねむらしい。
「ドベトレさんもあったかいですけど、クリークのあったかさとは、なんだかちがいますねー……」
「そうかい……あー、今聞くのも変だが。クリトレ、アンタ何でそんなに世話焼きなんだ?」
「うー……んー……みんながえがおだと、うれしいから、でしょうかー……」
「……そうか。わかった、ありがとな。おやすみ、クリトレ」
「はーい……おやすみなさい、どべとれ、さん」
後になって考えると、朝までグッスリ眠れたのは案外、クリトレを抱っこしてたからかもしれない。
朝。昨夜の残り物を詰めた弁当をクリトレに持たされ、いよいよ出かける時間。
「一晩とはいえ、世話になったな。今度お礼させてくれ」
「いいえー! 僕こそ、沢山お世話させてもらえて楽しかったです! よければまたいらしてくださいね!」
正直、世話を焼かれすぎると一人暮らしのとき大変そうなんだが。それでもまあ、
「おう。そのうち、な」
このお日様みてえな笑顔を前に、断りきれるヤツなんかきっといないだろ?
(了)