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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part796【TSトレ】
≫22二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:55:13
七月七日……その日はとある夫婦が年に一度再会することのできる日……
その日に人々は短冊に願いを記し、笹に捧げる。
それはこのトレセン学園でも同様で、笹が飾られそれらにウマ娘たちが短冊を飾っている。
やはりレースで走る馬が多いためか、「無敗三冠ウマ娘!」「○○で勝つ!」「レースに出る!」というようにレースに関する願い事をする子が多い。
そんな日に私達はとあるキャンプ場に来ていました。
「ロブロイ、このキャンプ場が以前言っていたあの舞台なのですね」
「はい!トレーナーさん。ここがあの『ロードストーンと夢の石』と同じ場所なんですよ!」
そう、いま来ている場所は以前ロブロイがタイキたちと探検した『ロードストーンと夢の石』の舞台であったキャンプ場である。
その物語に関しては以前からロブロイから教えられており、実際に探検に出かける前はロブロイから熱心に話していたのをとても覚えている。そしてその探検後の話も、目を輝かせながら話しているのを聞くのはやはり私自身も同じように冒険したかのような気持ちになれて嬉しくなってくるものであった。
そして昨日、ロブロイから七夕の日に一緒に行きましょう、と誘いを受けたのである。
今回は前回のように予定も空いており(もともとトレーニングも休息日でもあった)当然その誘いを受けたのである。
「さあ、トレーナーさん。まずはロンリーリバーからですよ!」
「ふふ、ええ、今生きますよ、ロブロイ」
再び冒険の舞台に足を踏み入れたロブロイは、すでに物語の世界に入り込んでいるようで、瞳をキラキラ輝かせて駆けていく。
そんなロブロイの後を微笑ましさと同時に自分自身もまたものが足しの世界に入ることに胸を弾ませる。
そんな気持ちの中、一点の曇りのように上を見上げる。
「……雨がふらなければいいのですが……」
厚く覆われた曇り空は、今夜の彦星と織姫の再会を遮っているかのようであった……。
23二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:55:35
「トレーナーさん、この泉見てください!アンダインの住まう聖なる泉ですよ!」
「これは!!本当にこの泉も再現されているのですね。地図には載っていないのに、確かにここはあの泉……?なにか声が……?」
「トレーナーさんも聞こえますか!やっぱりなんとなく聞こえますよね!きっとここにはアンダインがいるんですよ!」
「ふふ、きっと私達の冒険を見守ってくれているのでしょうね」
「はい!なんだかアンダインが見守ってくれると思うとよりたのしみになってきます!
」
「トレーナーさん、ここが第一の試練のロンリーリバーですよ!」
「確かここはあの本のとおりであれば、あの大きなウロに……おやこれは……」
「ふふ、やっぱりあの本を読んだらそうなりますよね。そこにあるヒントから考えるんですよ」
「なるほど……森の一番長い髭……少し待ってくださいね、ロブロイ、これが何を表しているのか、解いてみせますので」
「はい、待ちますよ、トレーナーさん。村人たちと同じようにこの謎を考えましょう!」
「ギリー・ドゥの庭はこの奥ですね」
「はい、この先にありますね……あ、この場所……」
「どうしましたか、ロブロイ?」
「トレーナーさん、実はこの崖、タイキさんと落ちた場所なんですよ」
「落ちた?それは、大丈夫だったのですか?」
「はい、大丈夫でした。あのときは大変でしたが、でもこの場所でタイキさんたちと本当の意味で仲間になれたんです。だから、この場所もまた大切な場所で……」
「ふふ、本当にロブロイは素敵な冒険をしてきたのですね。物語の村人たちとはまた違う、素敵な冒険を……」
「はい!オデュッセウスのように私たちもこの場所で沢山冒険をしてきたんです!」
「ええ、その気持がとても伝わります。なら今度は私と一緒に新たな冒険を楽しみましょう、ロブロイ」
「はい、トレーナーさん!新しい冒険譚が今、開かれているんですから!」
24二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:56:23
ロブロイと一緒に物語の世界を冒険し続け、ついに最後の試練、『オベロンの宮殿』の扉の前まで来ていた。
ここまでの冒険で実際に読んだあの物語の世界であることを強く実感した。
これまでもロブロイと一緒に物語を紡いできたが、このように一緒に物語の世界を歩くのはまた違う感動が感じられる。今、私たちは異なる物語の一部になっている、あの物語の世界をロブロイと一緒に冒険しているのだ、と。
そんな長い冒険をしていたからだろう、すでに日は沈んでいる。しかしなお、その空は雲に覆われて、今にも彦星と織姫の涙が流れそうである。
「そして、ここが最後の扉なのですね」
「はい、ここに石をはめ込んで……ここの文字、私が翻訳しますね……『これが読まれ輝くとき、僅かな隙間を見逃すなかれ』ですね」
「ふむ……最後の最後でも謎かけ、ですか……」
最後の謎かけ、すでに夜遅く、もう時間もあまりないだろう。それでもこれが何を示しているのか……
ぽつ、ぽつ……
そう思っていると、冷たい感触が、これは、ついに溜め込んでいた涙が流れ出したのだろう。
心惜しくはあるが、これ以上はロブロイが風邪を引く恐れがある、そう考えロブロイとともに戻ることに……
「雨が、降ってきましたね……ロブロイ、残念ですが、ここまで……」
「!!トレーナーさん、待ってください!文字が……」
「これは……もしや……」
「はい!オベロンの宮殿の扉が開いたんです!」
そこには文字が光り輝き、扉からはわずかに光が差し込んでいる。
どういう理由かはわからないが、これはオベロンの宮殿が開いたのだろう。
扉と文字が突然光り輝いたことに面食らっていると……
「トレーナーさん、さあ、行きましょう!」
「ロブロイ……フフ、ええ、参りましょうか」
私の手を取って扉へと足を踏み出す。
驚いて止まっていましたが、ロブロイの手の熱とその顔を見たら、そのまま止まることなんてできるわけがない。
ロブロイに連れられて一歩踏み出す、オベロンの住まう宮殿へ……
25二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:57:50
「これは……」
「はい、ここが冒険の終着点、『オベロンの宮殿』です!」
通路を抜けた先、そこにはまるでこの世のものとは思えない幻想的な光景が広がっていた。
青白い光に包まれた洞窟。洞窟の中という暗闇の中を鉱石たちがキラキラと照らし出している。
その青いきらめきはまるでロブロイの瞳のように煌めいている。そう、まるでロブロイの心を表したかのような、暗闇の中でも常に輝く物語への光《想い》……
そして同時にもう一つ感じられたこと、この夜のように暗い闇の中に瞬く光たちはまるで……
「天の川を漂っているかのよう……」
自然と、そんな言葉が口をついて出てしまった。
その声を聞かれたかと思ってロブロイの方を向くと嬉しそうにほほえみながらこちらを、この洞窟に負けないくらいキラキラと輝かせた青い瞳を向けていました。
「ふふ、やっぱりトレーナーさんならそのように感じると思っていました」
「ふむ、夜空の星々と感じるかもしれませんが、天の川のよう、というのも想像通りなのですか?」
「はい、だってトレーナーさん、昨日からずっと今日の曇天のことを気にしていましたから……」
そこまで言ってロブロイがこの七夕の日に誘った理由がわかった。
もしかしてロブロイは……
「あの、ネタばらししちゃいますと、あの扉の三角形は夏の大三角形なんです。夏の大三角形の見える短い時間だけあの扉は開くんですよ」
「あ、あの三角形はそういうことなのですね」
「はい、それで、その、そんな夏の大三角形の先にあるこの光景なら、天の川のように、彦星と織姫が渡れたように感じられるかな、と思ったんです」
26二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:58:26
どうやら私は思ったよりも顔に出てしまっていたようだ。
この子は私が今日の七夕のことを気にしているからこそ、こうしてこの光景のもとに誘ってくれたのだ。
本来なら村人五人で、というのを再現しようとすると思われるのに、二人だけで誘ったのもその一つだ。
ああ、本当にこの子は……
「フフ、ありがとう、ロブロイ……たしかにここなら彦星と織姫も渡れることでしょうね」
「ん……トレーナーさんが喜んでくれて、良かったです」
そっとその頭を優しく撫でる。かつてのように変わらず丁寧に、優しく……。
今はこちらのほうが小さくなったが、それでもこの手つきは変わらずに……。
たとえ姿かたちが変わろうと、彼女を思い続けるこの心は、この熱は変わることはきっとない、その熱を伝えるように優しく、慈しむように……。
「あの、そういえばトレーナーさん、どうしてこんなにも七夕の天気を気にされたんですか?」
ひとしきり撫でてこの幻想的な光景を二人で堪能していると、ふとロブロイから一つの疑問を投げかけられる。
それは思って当然の質問でもあった。
「あー、そうですね、ちょっと自意識過剰になって少し恥ずかしいのですが……ロブロイ、笑わないでくださいね」
「そんな、トレーナーさんの話で笑うなんてことしませんよ!ぜひ聞かせてください」
少し言いよどみながらも確認するが、ロブロイはまっすぐにこちらを見ている。その目は真剣でそれと同時に絶対に聞く、という意思が強く感じられた。
その瞳で見られると答えないわけにはいかず、一拍おいてから……
27二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:58:44
「そうですね……彦星と織姫が出会えないことを気の毒に思えているのも一つですが……ロブロイは七夕の元ネタを知っていますか?」
「はい、もともとは中国の織女と牽牛の伝説で、機織りの織女と牛飼いの牽牛が結婚してから今まで真面目に働いていたのが打って変わってずっと話してばかりになり、そんな二人を見かねて天の川でそれぞれを離し、年に一度、この七夕のときだけ再会を許すという……」
「ええ、その伝説です。それでその……機織りと牛飼いの二人、というのが私とロブロイと重ねてしまいまして……」
「あ……トレーナーさん、それで……」
織女牽牛伝説……それは七夕のもとになった話である。
機織りが得意で真面目に働く織女と牛飼いでこちらもまた真面目に働く牽牛のお話だ。
この二人が結婚してから真面目には足らなくなったことを怒って天の川で二人を引き離し、年に一度だけ出会うことを許した、それが日本で七夕として変わったのである。
その織女がトレーナーをしながら勝負服デザイナーを目指している自分に……
そして牽牛が酪農家で牛を飼っていた英雄『ロブ・ロイ』と同じ名前を持ち、同じように牛に好かれている彼女、ロブロイに重ねてしまったのだ。
そのように感じると、どうしてもこの日に一緒にいられないのは自分たちのことのように悲しく感じられてしまったのだ。
ひとしきり説明すると、恥ずかしくなってきて頬が赤くなるのを感じられる。ああ、本当に伝説の人物たちと自分を重ねるなんてとても恥ずかしい……
「……ふふふ」
しばらく静寂が続いていたが、その静寂を一つの笑い声が打ち消す。
その笑い声は止まる様子はなく、洞窟内で響き続ける。
流石に恥ずかしくもなりながらも、ロブロイの笑い声を聞き続けるとずっと笑い続ける姿を見れるのなら良かったのかもしれないとも思えます。
28二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:59:18
「流石に笑いすぎですよ、ロブロイ。自分自身もちょっとおかしなことを考えすぎだとは思っていますが」
「ふふ……ご、ごめんなさい、トレーナーさん。でもトレーナーさんもそういうこと考えるんだな、って思うとなんだか嬉しくなってしまって」
「確かにそうかもしれませんね。これもきっと、ロブロイと一緒にいるからこそ、かもしれませんね」
ロブロイから常日頃から物語について語り合い、ifの話をよく考えるものである。
もしも私たちがファンタジー世界にいたら、もしも私たちがSFの世界にいたら……
そんな風にロブロイと語り合うことが日常になっていたからこそ、私もまたこのような想像を、伝説の人物たちと重ね合わせてしまったのかもしれない。
でもそれはロブロイと同じ気持ち、同じようになれているようで嬉しく感じられるものでもあった。
「なら、やっぱり今日のここはオベロンの宮殿であり、私たちにとっての天の川ですね」
「ええ、たしかにこの場で私たち二人の逢瀬をしているわけですからね……」
外は雲に覆われ、彦星と織姫は涙を流す。
だがベガ(織姫)とアルタイル(彦星)に導かれ、デネブ(白鳥)はオベロンの宮殿へと続いていく。
そこには誰に遮られることもない天の川が作られている。
ああ、たしかに今の私たちは『ロードストーンと夢の石』だけではなく、『織女牽牛伝説』の世界にもいるのだろう。
それはなんと、素敵なことなのだろうか……
「なら、この夢の石もきっと……」
「ええ、願いを叶える短冊、と言えるのでしょうね」
この洞窟に眠っている赤く美しい石、夢の石。
ロブロイもまた、この夢の石を残した際に『願い』を残していったとのことだ。
そして今は七夕の一つとも考えれば……
「ロブロイ、この夢の石に一つの願いを込めましょうか」
「そうですね!七夕として新たな願いをまた……」
29二次元好きの匿名さん22/07/08(金) 21:59:33
二人で夢の石に手を重ねる。
ロブロイは前回は『次の村人たちも素敵な冒険ができますように』と願ったそうだ。
そしてそれは確かにかなった。なぜなら私たちの今回の冒険がとても素敵なものであったのだから。
そして今回願うなら、二人にとっての願いを……
『ロブロイが今年一年も健康で素敵な一年になりますように』
『トレーナーさんが今年も素敵な一年を、物語を紡げますように』
それはもしかしたら、彦星と織姫、織女と牽牛たちも同じように願ったことかもしれない
たとえ離れ離れでも次に出会うまで相手が幸せで健やかに過ごせることを……
「ロブロイ……」「トレーナーさん……」
願いを込めてお互いに顔を見合わせる。きっと願いはお互いに伝わってくる。
そして、再び言葉を紡ぐ。きっと相手も同じ想いだから
「これからもずっと、ずっと一緒に冒険を、ロブロイ」
「はい、トレーナーさん、一緒に英雄譚を、冒険譚を、これからもずっと……」
誰も知らない天の川で二人の逢瀬は続く
彦星たちのように離れることはなく、だが彦星たちと同じように相手を想いながら、今年もまた物語は続く
この幻想的な景色の先の空、そこには涙が開けて、再開を祝う星星をきらめかせながら夜は続いていくのだから……。
≫45◆cRvsSr6LRA22/07/08(金) 23:24:34
獅子は酒を呑む ルドトレ
親戚から日本酒が届いた。なんでも彼女の戦績とわたしのトレーナーとしてのそれをイメージしたものだとか。流石に未成年者である彼女と呑むわけにもいかず、わたしはよくルナが併走トレーニングをしていたオグリキャップの、その担当トレーナーを呑み相手に選んだ。彼とは同じ酒豪仲間として、呑み友達のようなもので時折、こうして場を設けて呑みかわす。
「珍しいねぇ、お前さんから私を誘うなんて」
「たまには良いだろう」
「そんなことしたらルドルフが妬くんじゃないか?」
「いくら大事なパートナーとは言え、呑みには付き合わせられないからな」
ある程度のことは腹を割って話せる相手だ。わたしも彼もいわゆるザルでいくらでもいけてしまうので、今回はこの日本酒を1本と彼の持ってきた清酒1本だけにした。冷えた徳利に入った日本酒をお猪口に注ぐ。
「お前さんも相変わらずだな」
「それはお互い様だ」
酒のつまみも自分たちで用意したものだ。彼は和食をベースに、わたしはじゃがいもをメインとしたイギリス料理。
「これも相変わらずだ」
「……メイドが飽きもせず送ってくるんだ」
「名家のご息女の悩みも尽きないねぇ」
「そうは言ってもわたしは跡取りではない」
日本酒を口にする。呑みやすいタイプだ。日本酒に慣れていない者も呑めるのではないだろうか。刺身や肉料理と併せても良さそうだ。つまみに箸をつけ、そう思う。酒を呑むと少し昔のことを色々と思い出す。
46◆cRvsSr6LRA22/07/08(金) 23:24:47
獅子は我が子を千尋の谷に落とす。わたしの家はそういう家だった。かなり裕福な家ではあったが、故にか、いくつか持っていた土地の内、何も手入れのされていないどこの国ともわからない土地へと放り出され、夏休みや冬休みを過ごすという訳の分からないことをさせられていた。襲ってくる動物は物心ついた時には身に付いていた武術が、いつそんなこと必要になるんだと思いながら学ばされていたサバイバル知識がわたしの命を守っていた。弱肉強食、それに怯えたのか、迎撃した動物はわたしを王とし、付き従うようになった。社会というのはこうして成り立っていくのだろう。身をもって学んだ。
「父上はどうしてこんなことを」
鳥に問いかけたところで返答なんてあるわけが無い。両親とはほとんど会話をした事がなかった。いつも周囲にいたのは家抱えのメイドや執事だ。血の繋がりだけの存在。幼いながらにそう思っていた。女のわたしは跡取りにはなれないからだろうか。
「1本の釘の欠落は一国の王を殺すこともある」
父上がわたしによく言っていた言葉だ。いや正確には、父上との数少ない会話の中で印象に無理やり残させられた言葉。おまえはリベットだと、必要不可欠なものになれと、そう言われた。跡取りになれないわたしはすでに必要不可欠なものではないのだろう。わたしがトレーナーになったのも、誰かにとってのリベットになりたかったのだ。女として生を受けてしまった以上、家を継げないわたしは自由であり、不自由だったのだろう。
47◆cRvsSr6LRA22/07/08(金) 23:25:01
「わたしは必要不可欠なものになれているだろうか……」
「お前さん、絶対にルドルフの前で言うんじゃないぞ」
思わず、口からこぼれた。酒のせいだろう。緩んで仕方ない。確かに彼女が聞いたらわたしを怒るだろう。
「わかっている、酒のせいで口が滑っただけだ」
「ならいい。さぁ…まだ酒はあるんだ」
夜は長い。酒で普段流せないアカとやらを流すとしよう。大人だけの空間でしかできないことは多いのだ。
≫60二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 04:45:37
梅雨寒に たまらず上着 持ち出して 狼煙代わりの 湯気へと走る……ども、タイキトレです。
いやまったく参ったね。暦の上では夏なのに、昼間はメッチャ暑いのに、夜にはだいぶ冷え込むんだもの。
おかげで目が覚めちゃったときの寂しさと寒さがひとしおな訳で……。
「成程。だからそんなに急いで来たんだね」
「そういうことです。いやー、まさかこの時期の夜更けにおでんを食べられるとは」
「ふふふ。冬にアイスを食べるようなものさ……そうだ、折角だからお酌しようか」
「ムントレさんや、分かって言ってるでしょ……ぐおー、この恨み晴らさでおくべきか」
恨めしげなこちらの視線に、ちょっとした冗談さ、サービスするから許しておくれ、なんてサラッと返すこの方こそ。
大根王子……じゃない、月毛のおでん屋さん……も違うか。正解はムントレことマチカネタンホイザ担当トレーナー。
本当に王子様みたいな見た目と、それにそぐわぬ愉快なキャラクターを兼ね備えたオモシロかっこいい人。
「にしても、大根好きよねー。なんで?」
「うん? ……うーん。うまく言えないな……素直だから、かな?」
「ほほう、その心は」
「煮てよし、焼いてよし、なんなら生でもいい。どんな調理・味付けにもスッと馴染んで、他の食材と仲良くできるだろう?」
「んー、確かに?」
「おでんは特にそう。他の具から少しずつ旨味が滲んだ出汁を、たっぷり吸って美味しくなる。それでいて、邪魔もしない」
羨ましいし、こうありたいと思う。だから、大根が好きなんだ……くらくら煮える鍋を混ぜつつ、彼はそう語った。
照れくさそうによそってくれたおでん──煮卵、はんぺん、そして大根──を口に運べば、なるほど確かにこりゃ美味い。
つゆもすっかり飲み終えて、そろそろお暇しようかと席を立──とうとすると、スッと椅子を引いてくれる。そういうとこだぞ。
見送りにひらひらと手を振って、夜道を歩く。すっかりぽかぽか、心おだやか。
後でお礼に差し入れでもしようか、なんて考えながら、来た道を引き返していくのでした。
あ、翌日この話をしたらあじさいがむすーっとしてたのはナイショ。ごめんて。今度おうどん御馳走するから。
(了)
≫157二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 20:47:25
七夕
「トレーナーさんは書き終わられましたか?」
「書き終わりましたよ~」
「トレーナーさんは何と書かれたんでしょうかね~」
「少々恥ずかしいですが〜……コホン」
『天ノ瀬に、願い託して、梶の文、綴りし言の葉、息災願ふ』
「……この様な句ですね~」
「なるほど〜」
「ではでは、グラスの句も聞かせてくださいな~」
「……私のは秘密です♪」
「……え? ですがグラスは私の句を聞いて来ましたよね?」
「あら、私は「何を書かれたんでしょうか~」と疑問を口にしただけですよ?」
「……た、確かにそうなのですが~」
「ふふっ、良い短歌でしたよトレーナーさん♪」
「ぐっ……逃しませんよグラス」
「あらあら、トレーナーさんに捕まってしまいましたね~」
「グラスの短歌を教えてくれるまで離しませんよ?」
「ふふっ、教えれませんね~」
「生意気な事を言うのはこの口でしょうか~」
「きゃーっ♪」
それから暫くの間、二人は仲睦まじい様子を織姫と彦星に見せ付け続けるのでした。
うまぴょいうまぴょい
≫179二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 21:35:33
「んん…ありがとうファイトレ(女)」
「構わん、どうせ一人ではとてもじゃないが危なくてやれんだろう。私とてそうだからな。」
膝枕された状態で、丁寧に耳を掃除されているのはファイトレ(男)、ファイトレ(女)の手で優しく耳垢を掻き出されていた。
ウマ娘の耳の構造上、個人でやるのは難しいので必然的に誰かに頼ることになる。その相手が今回は彼女だった訳だ。
「それで、心地よいのか?」
「ああ、いい感じに奥まで届いてこすってくれるから…」
「そうか、マッサージとでも組み合わせてやれたらもっといいのかもな。」
「…その腕、充電してるのか?」
ふとチラ見したファイトレ(女)の左腕から伸びるコード。普段ウマホの充電用であろうそれは、どうやら義手にも使えるようだ。
「なんだ、type-c端子のケーブルを使ってるのにでも驚いたか?」
「いや、専用のとかじゃないんだなぁって。最先端技術の代物だし…」
「ふ、独自規格なぞ面倒なだけだろう。それで必要な条件を満たせるなら問題ない。それより、目が細まって来てるな…」
「ちょっと、眠気が…」
凛とした中性的な声、先程から相変わらず耳の中で垢を擦り取る耳かきの感触と音が意識を奪いに来ている。
今だ謎も多く、果たして彼女の本心がどこにあるのかは知らないが、それでもファイトレ(男)からすれば信頼出来る相手だ。
「しかし前回やった人は随分丁寧だったのだな。そんなに汚れてない…私がする必要もそこまでないか。」
「…ああ、何も言う必要はない。眠いのだろう、ならば余計な思考はせずに身を任せているといい。その方が眠れるはずだ」
膝枕をされた状態で目を閉じたファイトレ(男)の目元を指で拭うと、そっくりな容姿の彼女を思い出して呟く。
「さあ、お休み」
手を止めずにそっと耳の中をマッサージするように擦りながら、感情の色のない瞳で見つめていた。
短文失礼しました
耳かきですが、担当とのは書いた覚えがあるので同僚ので。この女は相変わらず喋り方からしてクールです。
民生品の転用も視野に入ってるこの義手。今後広めることを考えれば当然だし、未来にはウマ娘と同等のサイボーグとか出そう。
(サイボーグ…雷電…上院議員…うっ頭が)
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part797【TSトレ】
≫20二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 22:43:47
「オペレーション『笹の設置』完了。マスターでも届く位置に設置致しました。」
「ありがとうブルボン。では短冊を飾りましょう」
七夕に笹を飾るのなんていつぶりでしょうか。多分子供の頃にやったきりです。まあ今の背丈はあの頃と同じくらいですが…
「マスターはどのような願い事を記入するのでしょうか?」
「私?もちろんブルボンの健康を─」
「いえ、学園から担当への願いは控えるようにとの通達がありました。マスター自身の願い事をするべきと提案します」
「確かに言われはしましたが…ではブルボンも自分の願いを書いてくださいね」
「……了解致しました、マスター」
少しシュンとするブルボン。これは私の事を書く気でしたね。嬉しいですが。
「たまには欲を出してもいいんですよ」
いつも助けられてますし、叶えられるならどんなことでもするので。
「ステータス『難しい』を感知。決めるのが困難です…」
「どんな事でもいいんですよ、欲しい物とか、食べたい物とかいくらでも」
「…質問。マスターはどのような願いを記入するのでしょうか」
「私は──まあ色々です。それよりほら、今日は天の川が綺麗ですよ」
「…?そうですね、とても綺麗です」
来年もブルボンと一緒に──と言おうとして、でも口に出してしまうと叶わないかもしれないからと、私は咄嗟に空を見ながら誤魔化すのでした。
…まあ後で短冊を見られて撫でられましたが。
終わり
21二次元好きの匿名さん22/07/09(土) 22:46:58
願い事は
『背が伸びますように』
『扱える機械が出来ますように』
『来年もブルボンと一緒に七夕を過ごせますように』
笹に一枚ずつだと寂しいので達成したい目標の短冊も何枚か。どちらもブルトレさんには切実です
おまけ
タナバタメカ!ロウソクヲヨコスメカ!
「ロウソク…?はい、どうぞ」
チガウメカ!オカシヲワタスメカ!
「ええ……?まあいいですけど」
ウマイメカ!ウマイメカ!
「ん?この短冊は…メカさんのですか」
『曇らせたい めか』
「……」トリハズシ
ナニスルメカ!
「うるさいです」
≫34◆cRvsSr6LRA22/07/10(日) 00:00:14
獅子は月に祝福される ルドトレ
カーテンの隙間から朝日が射す。目元に光を感じて瞼を開ける。少し汗などでベタつきのある一糸纏わない身体にはわたしを離さんとばかりに、ルナはトレードマークの三日月をわたしの胸に埋めていた。息苦しくは無いのだろうか。身体にぬくもりを感じているので余計な心配ではあったかもしれないが心配なものは心配なのだ。今日は、とベッドの近くに置いてあるデジタル時計で時間と日付を確認する。
「オフの日、ゆっくりするか」
変わらずシーツの海に身体を委ねることを選ぶ。ルナは朝があまり得意ではない。あらゆる分野において経験も多く、何でもこなしてしまう彼女の数少ない弱点である。一夜を共に過ごした翌朝はいつもこうなっているのだ。
「……たまには二度寝も悪くない」
頭を優しく撫で、重たく感じる瞼を閉じる。ゆっくりと、意識が落ちていく。
「―――君……レーナー君」
ルナの声だ。彼女の方が先に目が覚めたようだ。わたしが二度寝したとはいえ、ルナの方が先なのは少々意外というか、わたしは随分と眠ってしまっていたのではと考えてしまう。
「ん……ああ、おはよ」
「おはよう…と言うには些か遅めではあるが…ふふふ」
「どうした?」
「いや、そうだな…こういうのも悪くないと思ってね」
横たわるわたしの隣りにシーツを纏いながら座り、穏やかに笑みを浮かべている。いつもならわたしが起こす側だから、嬉しいのだろうか。たまには良いだろう。そう思いながら、身体を起こす。なぜなら、今日は―――。
「だが……光陰流転。よりにもよって今日をそれに消費してしまうには少々惜しい」
「わたしはそれで構わん…」
「君が良くても私が納得しない」
「オフの日は少ないんだ。それでいい」
生徒会長という立場も持つ彼女のトレーナーと言うのは忙しないものだ。今は多少なりとも落ち着いてきたと思ったが、トレーナーのウマ娘化現象がつづき、解決の見込みもなく日々が重なっていく。挙句の果てにわたし自身までなってしまう始末だ。
「特に今日は君の誕生日だろう」
「だからこそだ」
「君におめでとうだけ言って今日この日を終わらせたくないぞ」
「なんだ、あれだけのことをしたのに昨晩だけじゃ物足りないか?」
「昨晩はやり過ぎたとは思って……そうじゃない」
「わたしは今日一日、誰にも水差されずにルナを独り占めできるだけで満足している」
35◆cRvsSr6LRA22/07/10(日) 00:00:27
どんな身体になろうと、どんなに変わり果てようと、わたしはルナの、シンボリルドルフの、隣りに居られるならばそれでいい。この身体に変わったのはきっと神託なのだろう。冷静に前へ進め、彼女の征く道を隣りで進み続ける。こんなことで後退りなんて選択肢は存在しない。
「それはオフの時にいつもしているだろう」
「いつもしていることが、常に当たり前であってくれるとは限らんからな」
「あの日のことを気にしていたのか、君は……」
「どうだろうな」
こんな世界だ。秩序があるようで出鱈目な何が起きても不思議ではない世界に、当たり前などハナから存在していないのだろう。
「わたしの誕生日だとわかっているなら、そんなことよりも聞きたい言葉がある」
「ああ、わかっている」
彼女の首へと腕を回すも、大き過ぎる胸のせいでうまくいかないので腕をおろし、彼女を軽く抱きかかえると彼女はわたしの首へと腕を回した。わたしの胸の上に彼女の胸が重なり、直に伝わるぬくもりが寝起きの思考を更に蕩かす。言葉を紡ぐ前に、唇が重ねられる。触れるだけの軽いキスだ。
「お誕生日おめでとう、トレーナー君」
「ありがとう、ルナ」
再度唇を重ねる。その言葉だけでわたしは満足なのだ。あとはいつものようにふたりで風呂に入り、いつもより遅い朝食を済ませ、残りはゆっくりとふたりきりの時間を過ごせたらいい。当たり前を忘れないでいられるように、噛み締めながら。
≫97二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 15:43:39
「…うし、この下が伝説のお宝が飾られてる会場か。『八咫烏の涙』、予告通り頂戴させてもらうぜ」
「いつも通り、華麗に盗み出すだけですね」
「だが、油断は禁物だ。面子を潰された警察は、今回は威信をかけて警備に『彼女ら』を雇ったとも噂されてる」
「それだけ本気、ということかな」
ある高級ホテルの屋上、人のいないそこで話すルドゴルトプムンの快盗達。彼等は世界的に有名な怪盗団として名を轟かせていた。
そんな彼等は、今夜ここの中央階会場にて展示される宝石、『八咫烏の涙』を頂戴すると予告状を送りつけた訳である。
「それで、いつも通りでいいのかい?」
「もちろんだよムントレ。警備体制は強化されてるみたいだけど、私達なら問題ないよ」
「私達に盗めないものはなかったですからね」
「よし、じゃあ分かれるぞ。…今夜も、最高のショーの幕開けといこうぜ!」
───一方でホテル内部、会場内に響く靴音の発生源である彼女は、警備員達から報告を受けていた。
「総員、配置につきました。巡回警備班、固定警備班、即応予備班全て問題ありません。まもなく開場時刻です。」
「宜しい。各員には持ち場を離れるなと厳命しろ。それと、常に相互確認及び異常報告を欠かすなよ。」
引き下がる警備員と入れ替わるように、ゴム弾が詰まった銃を片手に隣へ気安く歩いてくる姿が一人。
「…しかし随分警備の人が多いよなファイトレ(女)。オレ達にまで頼むって何度も盗み出されたのが堪えてんのか?」
「ふん、そうだろうな。…ドベトレ、即応班の指揮は任せる。監視カメラ担当の黒カフェトレがサポートしてくれるはずだ」
「おうよ、例の怪盗団…世界的な奴らだろうが、オレが纏めてひっ捕らえてやるぜ!」
「ああ。(カチッ)…総員、傾注。これより無制限発砲を許可する、不審者に対しては独自の判断で発砲しろ。…鼠狩りの始まりだ」
66の導入部だけ思いついたので纏めた。この後67みたいな事したり黒カフェの監視下でファイドベから逃げたりしてそう
≫115二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:21:22
『天翔ける金色の翼』
むかしむかし、ひとびとがすむやまのてっぺんにとてもおそろしいかいぶつがあらわれました。
かいぶつはやまをあらし、どうぶつをくらい、にんげんをおそい、それはそれはおそれられていました。
ひとびとはかいぶつがあばれないように、ねんにいちどひとりずつ、いけにえをささげるほどにおびえるせいかつをつづけていました。
そんななか、いなびかりとおおかぜをともなって、ひとつのくろいかげがやまのうえにおりたちました。
くろいかげはかいぶつとたたかいはじめ、なのかななばんのあいだやすむこともなくかいぶつとうちあいつづけました。
そしてようかめのあさ、ついにくろいかげのおおやりがかいぶつののどぶえをつらぬき、あらしはやみました。
くろいかげ、あまかけるものはひとびとのまえにすがたをあらわすと、こうさけびました。
「おまえたちのおそれていたかいぶつはもういなくなった! これからはわたしがおまえたちをまもってやる!」
ひとびとはよろこび、あまかけるもののもとでこれからはたくましくいきていくことをきめました。
いまでも、そのやまにはあまかけるものにつらなるひとびとが、やまとたみをまもるためにしゅぎょうをしているでんせつがのこっています。
「……というのが、この里に伝わる伝説のようだね。天翔ける黒き影の伝説、とても面白いものだと思わないかい?」
パタリ、とパンフレットをたたむ魔術師。その語り口に耳を傾けていたウマ耳の弟子はほわっとした表情を浮かべつつも、昔話に興味津々のようだ。
「ほほー、すっごいですねえ……でも師匠、流石にその天翔けるひと……なのかな? そのひとたちはもういなくなってるんじゃないかなあ」
「おや、どうしてだいタンホイザ?」
「だって、もうとっても昔の話なんじゃないですか? 流石にもうだーれもいなくなってるんじゃないかなあって」
むむっと頭を悩ませる弟子に、師匠は静かに笑みを浮かべながら話を続ける。
「ふふふ、確かに本人はもういないかもしれないね。だけど、その意志を継ぐ者がいるかもしれないよ? さて、そんな伝承の残る山に登る訳だけど……準備は大丈夫かい?」
「ばっちりですよぉー、ばばんばっと素材を集めていきましょー」
彼らは今回、霊山にある素材を集めるためにこの土地に来た。大切にされた場所であるからこそ、正しき手段に則って入山しなければならないのだ。
116二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:21:32
息を切らして走り続ける男。その後ろを、様々な動物が追跡していく。
「ハアッハアッ……! チクショウッなんだこいつら!」
道もない道を突き進み、木の枝や茨によってその体はすでにボロボロになりながらも生き延びようとする男は、ついに開けた場所へとたどり着く。
「や、やっ……」
しかし、そこには既にこの山にいるであろう動物たちが集っており、もはや逃げ場などどこにも存在しないと男へ向けて牙や爪を向け、唸りをあげている。
「ひ、ひひっ……な、何が……どうなってやがる」
後ずさるにも後ろには狼、前を突き進むにも大熊、左右を見渡せば虎や猪までもが男へ向けて殺意をたぎらせている。たった一瞬でも気を抜けば、すぐさまその牙や爪は男を引き裂き、血みどろの肉塊へと変えさせてしまうに違いない。
「こ、こうなりゃ自棄だ。こいつら一体でも道連れにしてや……」
そう言いながらナイフを取り出そうとした瞬間、殺意の渦が突如として消え去る。男が不審に思いあたりを見渡すと、空から何者かが下りてくる姿が目に映った。
「な、なんだ? 天使か? 悪魔か?」
そうつぶやく男に向けて、一直線に降り立ったのは金色の翼を携えた、見目麗しい女性の化生。
「どちらでもない、とだけ伝えましょう。汝、何故この山に現れたか?」
「は?」
質問の意図がわからぬと男が聞き返すと、びしゃん、と雷が落ちる。そう、比喩ではなく、男の背後に雷そのものが落ちてきた。激しい音と光によって男は完全に竦みあがってしまった。
「質問には答えるものです。もう一度だけ機会を与えましょう、汝……何故この山に現れたか?」
「ひっ、ヒイッ! そ、そりゃ俺が逃げるために……」
そう口を滑らせるとハッとした顔で口元を抑える。男は、犯罪を犯した上でこの山に侵入したのだ。
真実を口にすれば、あっという間に丸焦げにされてしまいかねぬとその口を無理やりに閉じてしまった。
「……この霊山は人の領域に非ず、獣と自然の領域である。人の罪は人の法で、自然の罪は自然の法で裁かねばならぬ。故に、汝の人の世にて犯した罪はこの場にて裁かれるものではない」
そう伝えられ、ほっとしようとした男は、瞬間顔を青ざめさせる。ならば、自分の犯した自然の罪はいったい何だというのか。
言い知れぬ恐怖が男の全身へと駆け巡り、自然と口から命乞いの文句が垂れ流される。
「や、やめ……た、たすけ」
117二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:22:30
その言葉を聞きもせず、化生はその手に持った金剛杖を振るって大地へと打ち鳴らす。そして目を閉じて、裁決を下した。
「汝の罪は、これより裁かれる」
そう口にすると、左右に控えていた獣たちが、一斉に男へととびかかっていった。
「あ、あぁぁああああああああああ!!!!」
男の意識は、そこでプッツリと途切れた。
「……えっ、あんなことになるんですか? 私たち逃げたほうがいいんじゃないですか?」
「大丈夫だよタンホイザ、その為に正しい手順を踏んだんだから」
その光景を遠目より見ていたのは先ほどの二人組。男は一瞬にして気絶させられた後熊に取り押さえられてしまい、植物のつたで雁字搦めにされ、鹿の背に乗って人里へと運ばれていった。
「……おや、この時期に来客とは珍しいですね。あなた達は何故この山に現れまたのですか?」
化生はその二人組に気が付くと、先ほどの威圧感はどこへやら、柔らかみのある口調で問いただす。
「我々は旅の魔術師。この山には霊木の枝を授かりに来たのだ」
そう言って木の札を化生へと見せる。からんからんと、乾いた音が森の中に響き渡る。
「成程、では折角ですから私が案内いたしましょう。……そこのお弟子さん、そう怖がる必要はありませんよ」
「は、はいっだいじょうぶです! たぶん!」
がちんがちんに緊張してしまった弟子は少々素っ頓狂な返事をかましてしまったが、師匠とともにあれば大丈夫といった具合にすぐに元のペースを取り戻していった。
静かな山の中を、三人がゆっくりと登っていく。
「というわけで、彼らが伝承にあった存在に近しいとされる天狗と呼ばれる種族だ」
「ほへー、お姉さんは天狗さんなんですねえ」
「お姉さん、というような歳でもございませんが……そうですね。天翔ける影という伝承は麓の町でお聞きになられたかと思われますが、その末裔……というのも少々違いますね。まあ、とりあえず我々は天狗なのです」
大きな翼は少し折りたたまれ、金色の外套にも見えるような形になっている。金色天狗は迷うことなく道なき道を行き、魔術師の二人はそれを追いかけていく。道中絡まった茨に阻まれるも、金色天狗が手をかざすと静かに茨は道を開けていく。
山道を進んでいけば、彼らは霊妙な空気に包まれていく。そうして天狗が立ち止まり二人の魔術師へ振り返った時には、悠久の時を過ごした老齢なる巨木が背後に聳え立っていた。
118二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:22:45
「ここが霊木の眠り場です。枝はその辺に落ちているものをお使いください」
「ふむ、これで問題ないようだね」
魔術師が枝を拾ってみてみると、微かに龍脈の力を枝から感じた。それを確認すると、数本の枝を大切そうにかばんの中の布に包んで仕舞い込んだ。
「ありがとう、我々だけではこの霊木までたどり着くのに時間がかかったかもしれないからね。土地を知るものに手伝ってもらえたのは幸運だった」
「気にすることはありませんよ、久々の来客でもありますし。代わりとしては不適切かもしれませんが……外のお話を聞かせていただければありがたいですね」
「それくらいならお安い御用です!」
その後、二人の魔術師は天狗にこれまでの旅のことを話し、それを聞いて天狗は楽しみ、さらに気になることを聞き、和睦を深めていった。
「というわけで、そのケンタウロスさんたちは虹の上を駆けていったわけです。不思議ですよねー、歩ける虹の架け橋だなんて」
「世界には不思議が溢れているものです。そもそも、私がこのような姿になったのもまた不思議の一つですからね」
「あえ? 天狗さんって天狗さんじゃなかったんです?」
そう聞かれると、天狗はふむと顎に手を触れる。
「……まあそもそもこの話は隠す必要が特にないことかもしれませんし、御二人はむやみやたらと喧伝するような方でもないとお見受けします。なので、我々の歴史についてお伝えいたしましょう」
そうして天狗は、自らの種族についての歴史を語り始めた。
「そもそも我々の歴史は、昔話における黒い影というのは何者か……という部分から語るべきでしょう。彼の者はこの大陸より少し離れた島国、ヤマトノクニと呼ばれるところからこの大陸へとやってきた風来坊なのです」
「ふむ、今でも交流が続いているヤマトノクニが関わっているのか……」
「風来坊の種族は大きな翼を持ち、風と共にある存在でした。その種族はヤマトノクニのとある霊山に住まい、修行の日々を過ごしていたのですが……ある日、修行に飽きた彼は出奔してしまいました」
「えっ」
「そう、修行を放り出して旅に出たわけです。ついでのように雷の神器と風の神器を持ち去り……こほん、借りていったそうですが。あてもなく飛び続けるうちにこの山に偶然やってきて……偶然、怪物の目に留まりました」
119二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:22:57
怪物はその異物に反応し、攻撃を加えた。気ままに飛んでいた風来坊はその攻撃に大層怒り、反撃に出ることにした。しかして怪物も怪物、何十年と山の上で暴虐の限りを尽くしていたその存在は非常に頑強なる生命力を持っており、何度槍を突き刺そうとその皮膚は矛先を弾き返し、何度雷に打たれようとその体は焼けることなく暴れ続けた。
暴威がその体を震わせ、風が吹き荒れ、稲妻が鳴り響く。まさしく山の上は嵐に包まれたかのような様相であったらしく、その地に住まう動物たちが人里まで避難してきたとまで言われていたそうだ。
「そこまで行くと、周囲の被害もなかなか大変なことになりそうだね」
「そうですね、結局戦いの後に残った植物はこの霊木のみといわれていますから。……そして、七日七晩、八度目の朝。遂に力尽きた怪物の喉に、満身創痍の風来坊が槍を突き立てたことでその戦いは終わりを迎えました」
「なんだかもう、想像つかないですね。ぐわわーって感じの戦いだったんでしょうねえ」
「それこそ神話の戦い……といった様相だろうね。ところで、その戦いの時期としては……もしかすれば、魔王騒動のあたりなんじゃないかい?」
「御察しの通りです、魔術師さん。だからこそ人々は住んだ土地を捨てることもできず、唯々おびえる生活を続けていたのですから」
そうして、風来坊は力尽きてその場に倒れ伏す。争いが終わったのちに数人の村人が風来坊を助け、手当の甲斐あって風来坊は目を覚ました。そしてその村の惨状を見てか、それとも勘違いされたのかは定かではないが、最終的に風来坊、始祖の天狗は山を治めることとなったそうだ。
「そこから天狗さんが山を守るようになったんですねぇ」
「暫くのうちはそうだったようですが、村人の中から見込みのある者を選んで修行させ、天狗の力を継承させるようになりました。……そしてそんな継承された天狗たちの一人が私です」
「えっ、あ、じゃあ元は人間さんなんですか?」
「一応獣人系の血統ではありますがそうですね。耳が獣のそれでしょう?」
「あ、ほんとだ」
「継承にはかの怪物が持っていたとされる宝珠が使われています。渡すものが持つ素質を渡されるものに写し込む……そういう仕組み、らしいです。未だに詳しく解明されていませんが」
120二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:23:10
「そんなよくわからないものよく使う気になりますねぇ」
「始祖の天狗曰く『まあ使えるししばらく様子見ても特に問題ないようだからいいだろ』、とのことでした」
「そういうもんなんですねぇ……」
そして二百年ほど経ったある日、始祖の天狗は“人々”の前から忽然と姿を消したそうだ。以来、彼から力を受け継いだ者たちが山と人里を守護しているのである。
「……長くなってしまいましたが、以上が私たちの歴史です」
そうして長い語り口は終わりを告げ、観客となっていた二人の魔術師は拍手をもってその終焉を迎えた。
「ありがとう、実に興味深い話だった」
「人に歴史あり……あ、いや天狗さんに歴史ありって感じですねぇ」
そう呟く二人の後ろから、ドタドタと走りこんでくる音が聞こえてくる。
「お師匠さぁーん! 何っスかあの届け物は!」
「おや、バンブーさん。ちゃんと受け取りの査印はやっておきましたか?」
バンブー、と呼ばれたハチマキが特徴的な獣人の少女が金色天狗のもとへと駆けつけてくる。言いたいことが沢山あると言いたげな表情である。
「やってないっスよそんなの! とりあえず役人には引き渡したっスけども!」
「正解です。あれはどうやら人殺しの悪人のようでしたので」
「それは先に言って欲しかったっス……」
げんなりとした表情のバンブーを、金色天狗が頭を撫でてなだめる。
「まあまあ、此方に御客人が来ていますので早急に対処する必要があったのです。済みませんね、今度修行の際は良い桃を用意しますので」
「し、仕方ないっすねホント……」
桃と聞いて耳がぴこぴこと動くバンブーを見てクスリと笑う弟子。
「あ、あのバンブーさん。私とお友達になりません?」
「え、いいっすけどどなたっスか?」
「私、魔術師の卵でタンホイザって言います! 師匠と世界を旅してまわっていろんなことを学んでるんです、エッヘン」
「へぇー、それは旅の話を聞いてみてもいいって事っスか?」
「どうぞどうぞー、何の話がいいかな? 歩くきのこ? 地底怪獣と戦う巨人の話? それともでっかい蛾のお話?」
「ら、ラインナップがだいぶ変わってるっスね……」
そう喋りながらも、興味津々といった具合のバンブーを見て金色天狗は静かに笑う。
121二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:23:36
「ほらバンブーさん、新しいお友達に軽く山を案内するのもいいものですよ」
「あ、それもそうっスね。道行きがてらに色んな話を聞いてみるっスよ!」
「じゃあじゃあ、おすすめの場所に連れてってくださいなー」
二人は初めてあったとは思えぬような足の揃い方で、それぞれの師匠に手を振りながら山の探検を始めた。
あとに残された二人は座りながら、静かに話を始める。
「そういえば、始祖は先ほど人々の前から消えた……と、言っていたね」
「そうですね、それ以来町で彼の者を見たという情報は一切現れなくなりました」
「……逆に言えば、“人”の前でなければ現れるとも取れるだろう。もしかして、まだ彼は元気なんじゃないかな、と」
ざぁっ、と風が吹く。二人の金糸が揺れ、木漏れ日が静かに形を変える。
「……正解です。そこに黒い羽根が落ちていますでしょう?」
そう言って金色天狗は指をさす。その指し示す方向には見るも美しい、黒く艶めいた羽根の一枚が落ちていた。
「おや?先ほどまではなかったはずだが……」
「今でも見守っている……というよりは、偶々帰ってきていただけのような気もしますけどね。兎も角、忽然と消した際の話にはもう一つ裏話がございます」
「ふむふむ」
「……ある日突然、『飽きた!』と一言叫んだらしいそうです。慕われ、敬われ、畏れられる存在になっただけでは、きっと彼の者の冒険心を止めるようなことにはならなかったのでしょうね。若しくは、天狗の力そのものを持った彼の者がこれ以上人に干渉しないため……とも取れるのかもしれません。我々も元は人故に、人の手によって今この山と里は守られているとも取れなくはありませんから」
「成程、神の消失に似たようなことか。つい最近ではあるが、友人からそのような話を聞いたものでね」
「……この世界に神はいます。ですが、積極的に動こうとする神はあまり見かけなくなりました。そういう時代になった……とも取れますし、彼の者と同じ様に単に神が飽きただけなのかもしれません。ですが、我々が生きていく限りこの世界は続いていくのです」
再び風が吹く。それは黒き翼がもたらした肯定の風か、はたまた未熟であるといった具合の否定の風か。
それは金色天狗だけが読み取り、理解したようだ。
「……貴方がそう言うのであれば、そうなのでしょうね」
そうして風は、また何処かへと飛び去って行った。まだ見ぬ何かを求めて。
122二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 18:23:47
「いやはや、霊木の枝一つ求めてきた旅路とは思えぬほどの収穫だったよ。実に興味深く、好奇心をそそられる話だった」
「それは何よりで御座いましょう。私も語った甲斐があったというものです」
楽しそうに笑いあう二人。そんな中、魔術師が思いついたように手を軽くたたく。
「……ふと、弟子たちの姿を見て思った事があるんだが……折角だろう、私と君も友達にならないかな?」
「ふむ、それもまた良いものでしょう。大人になったとしても、友人が増えぬという道理はございませんからね」
そう語りながら差し伸べた手を、魔術師は固く握りしめた。
「我々はまた旅をする。面白いものがあったらまた、君に伝えようと思う」
「では私はこの山と里を守り続けます。天と地と、そして人との狭間に立つ者として」
「その言葉はもしや……?」
「えぇ、始祖の天狗の師匠が自分たちを表していた言葉ですね。『我々は人ならざりし、さりとて蒼天を舞うには低く、地に足をつけるには程高い。なればこそ、その全てを見届けよ』、と」
「君たち翼の種族が飛ぶには低いとは……」
「ええ、宙は果てしなく遠いものですから。いつしか、届くことはあるかもしれませんけどね」
空を見上げてそう語る天狗の顔には、空への憧れが見えるようであった。
成程、空を制するとしても全てを支配するわけではない。我々魔術師が只人の中において憧れの存在であるとして、その力が全てを上回るわけではないように。そして、我々も未知への憧憬を捨てぬように。空を飛ぶ者たちも、更なる高さを望むこともあるのだろう。
きっと、届くかもしれないね、と魔術師は呟いた。
ええ、そう願いたいものです、と天狗も返した。
≫149二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 20:55:27
「あ」
ある朝、起きると体が妙に軽い。また「彼ら」が連れ去ろうとしていたのかと思いつつも、体は起こせることを知覚した。
「…あら」
口調も頭に思い浮かんだことと異なるし、なにやら音が上から聞こえる。
「…耳に、尻尾。あるわね」
カーテンの奥から差し込む朝日を透かしているシャツは、持ち上がってまた別のカーテンが出来上がっている。
「……結構、大きいのね」
胸を揉む。うん。結構やわらかい。これから肩が凝るかもしれない。
「準備しなきゃ、遅れるわね」
布団から出て、鏡に向かう。金縛りに合わなかったのは、今日に限ってではないがとても助かった。
「まあ」
そこには薄幸と玲瓏さとをまさに絵に描いたようなウマ娘がいた。後ろでは彼らがビビっている。
「カフェにどう伝えよう…」
悩み、とりあえずメッセージを送る。
『カフェへ。ウマ娘になってしまいました。少し遅れて出勤しますから、心配いりません』
「カフェ。おはよう」
「あ……トレーナーさん……」
「オトモダチもおはよう。とうとう、私ももウマ娘になったわよ」
「その……喋り方……」
カフェがちょっと眉を顰め、何かしたのかとばかりに虚空を睨む。
「いずれ慣れるわ。それとオトモダチは何もしていないわよ」
「そう……ですか……。それより……他の、トレーナーさんには……」
「今から言いに行くわ。カフェはどうする?」
「私も……同行します……」
150二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 20:56:03
inカフェのトレーナー室
「あ、カフェ。サブトレさんを見ませんでしたか?」
ケツ上がキョロキョロしながら言う。メールをもらった筈ではあるが、部屋に入ってきたのはカフェひとりだったからだ。
「そこに……いますよ……」
「え…どこ?」
「ここですよ」
「!?」
後ろをバッと驚いて振り向くと、口にカーディガンの袖をあて肩を震わせるサブトレがいた。
「は〜…本当に心臓に悪いですよ…」
「でも、面白いでしょう?」
ふふふふとサブトレが笑う。薄い胸を撫でたケツ上は息を整えて、改めてサブトレを見る。
「小さくなりましたね」
「はい。といっても、そんなに一気に変化などが無かったのはありがたいです」
「うん…うん!」
ちらっと胸の方を見て、少し元気そうになるケツ上。結構厚着をする癖があるため着痩せしている、と言うのはやめておいた。
「ギーさんにタバコさんは?」
「もうすぐで理事長室から帰ってくるよ」
「了解です」
そう言ってからすぃっと、ケツ上の前から消える。
「え、どこ!?!?」
「トレーナー……さん……目の前に……います」
「え…え?」
じいっと目を凝らしたり擦ったりすると、ぼやあっと見えてくる。
目の前数センチのところに、サブトレは居た。
「え…どんな仕掛けですか?」
「タネも仕掛けもありませんし、ずうっと目の前にいましたよ?」
そう言ってまた笑うサブトレに、目を白黒させるケツ上。カフェは少しだけ笑っている。
その後来たギーさんとタバコさんはウマ娘になったことと気配消しに大層おどろきつつも楽しんだそうな。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part798【TSトレ】
≫14二次元好きの匿名さん22/07/10(日) 23:27:34
「ふぅっ…」
…しとしとと雨が滴る中、外のベンチに座り込んでいるファイトレ(女)は、ふと視線を左右に向ける。
まるで獲物を探す獣のように周辺を見回した彼女は、一息ついたあとに右後ろへと振り向くとつぶやいた。
「…いるんだろう、カフェトレ(影)?」
「ええ、こんにちはファイトレ(女)さん。しかし、私のいる方向がよく分かりましたね」
「…第六感、或いは勘というべきもののお陰さ、こんな不確定なものに頼る時点でアウトだがな。それと、私に傘はいらん」
「あれ、良いんですか?」
普通なら濡れるのは嫌うはずだが、そうではないらしいファイトレ(女)を不思議に思うカフェトレ(影)。
「濡れることには慣れてるのと、寧ろ私は雨が好きなのでな。雨音と冷たい水滴は私の心を落ち着かせてくれるんだ。」
「体を冷やしたら風邪ひきますよとは思いますが、まあファイトレ(女)さんなら大丈夫なんでしょうね。」
「ふ…私は元々体温が冷たいんだ。手袋とかなしで握手でもすれば殆どの人には冷たいと評されるくらいにな。」
「…確かに冷たいですね。私と同じ…」
カフェ以外には…否、カフェですら本人から聞いた話を信じるしかないカフェトレ(影)。そもそもどれが本心なのか、感情と表情及び行動が切り離されてるが故に分からないファイトレ(女)。似た者同士と言える二人は、何か通じる部分はあるのだろう。
「私のこと、幽霊だと突然言われたら信じますか?」
「さあ…私は恐らく信じないだろうな。それ以上に、貴女が幽霊だと言うのであれば…私は亡霊だろうし。」
「あはは、そんな事言うんですね。おもしろい人…」
「ふふふ、ふははは…当然だろう。私のような女が、亡霊以外だというのなら逆に聞きたいくらいだ…」
───暫く雨の中で過ごす座り込んだ人影と、傘の下に映る人影だけが見られたそうな。
短文失礼しました
早速借りて一つ。結構要素要素で似た者同士なファイトレ(女)とカフェトレ(影)。この空間、すっげえひんやりしてそう。
仮にファイトレ(女)にも幽霊を引き寄せる何かがあったら、彼女の心象風景と合わせてとてもねっとりですな。
(カフェトレ影制作者さん、何かあればお気軽にどうぞ)
≫42二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 08:58:35
水着とは、プールや海で運動、遊泳もしくは潜水用に着用する衣服のことである。(Wikipedia参照)
目的の中に見せるためのもの、という事はあるが主な目的は遊泳や潜水用に着用する事である。そして夏とは、その水着の需要が高まる時期である。
セイトレ「正直釣りに行く方が多いから誤魔化せると思ってたんですけどね。なんだか悪い気がしてきて」
ブルトレ「それで水着について相談ですか。私じゃなくてセイウンスカイさんに相談しなくてよかったんですか?」
セイトレ「それは、そうなんですが……」
最もな意見に苦笑いをしてしまう。突っつかれているならその相手に意見を聞いた方が良い。
出来るのであれば需要を確認して応える方が良いだろう、だが──
セイトレ「スカイに相談したら勢いで変な水着着る事になりそうで……」
ブルトレ「相談ですから冷静に話せば良いのでは……?」
セイトレ「トレーニングの事なら平気なんですけどね、それ意外だと手玉に取られる事もあって怖いというか……」
ブルトレ「なるほど、それで私に」
セイトレ「買った水着見せて貰って参考にしたいと思いまして」
ブルトレ「良いですよ、ただこの水着は余り参考にならないかもしれません」
スマホから水着を覗き込んで見る。
可愛らしい花柄の水着と浮き輪、ビーチサンダルのセットが華やかで可愛らしい。
子供らしいと言うと怒られそうだが愛らしくてよく似合っている。
セイトレ「確かに華やかな水着ですけど、こういうのは着れないですね……」
ブルトレ「ドレスとは勝手が違いますか?」
セイトレ「いやドレスなら良い訳じゃないんですけどね!?」ゴカイデスゴカイ!
ブルトレ「そうでしたね。でも水着の好みかわかりませんし次の休みに買いに行きますか」
セイトレ「えっ、いや……お店で買うのは、恥ずかしくて……」
ブルトレ「なら通販はどうでしょう?サイズがわかっているなら今はネットから買えますよ」
セイトレ「あれ、服も買えるんですか?ならそっちの方が良いです!手に取るの恥ずかしいですから!」
ブルトレ「届いたら着るものですよ、大丈夫ですか?」
セイトレ「ウッ……頑張ります」
43二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 08:58:57
セイトレ「水着って色々種類あるんですね……え、ネット販売なのにこんな色々?」
ブルトレ「ええ、落ち着いた物も十分に……どんな水着が良いですか?」
セイトレ「そうですねぇ……お腹周りというか、腰辺り怪我とか痣がどうしても残るから隠せるような水着を」
ブルトレ「……何か遭ったんですか?」
セイトレ「何事もないですよ!?転ぶ事が多くて怪我ありますから、知ってても見るのはまた別ですから見せたくないんですよね……」
ブルトレ「馴れてそうでしたけど、難儀ですね」
セイトレ「俺は仕方ないと割り切りましたよ。ただ、人に見せるのはまた別ですからね。隠せる方が良いです」
ブルトレ「お腹周りを隠せる水着ですか、ワンピースタイプや競技用もありますね」
セイトレ「……いっそ競技用の方が良いかもしれません」
ブルトレ「極端過ぎると他の水着を催促されるかもしれませんよ。上着を羽織るのはどうでしょうか、これも色々ありますよ」
セイトレ「上着で色々隠せるなら良いですね。じゃあここから、思ったよりこれも多いですね……?」
落ち着いた配色のものから、派手な明るい色、柄物や華をあしらった物まで色とりどりの水着が並ぶ。
改めてお店に行かずに買えてよかった、上着だけでちょっと緊張しそうになる
人に見せると考えると派手な配色は避けたいが地味過ぎても催促されるなら期待に添えないのだろう。
セイトレ「……いっそこの動物の被り物の方が良い、とか?」
ブルトレ「良いんじゃないですか。これなんてどうです?」
セイトレ「えーと、嘴?鳥?確かに色は黒系だし落ち着いてて良いですね」
ブルトレ「配色落ち着いてますし、可愛い動物上着です。後は」
セイトレ「サイズも表記通りなら問題なし!よし注文しましょ」ポチー
ブルトレ「思い切りましたね!?」
セイトレ「暑い日に水場で着やすい上着は確かに欲しかったので、今から楽しみです」
ブルトレ「気に入ったのなら大丈夫ですよ。でも下に着る水着見ないで大丈夫ですか?」
セイトレ「あ、そうでしたね。商品の違う画像、ゥン"ッ!?」
ブルトレ「……小さいビキニですね。大丈夫ですか?」
セイトレ「ま、まあ隠せますし大丈夫です。普段使いは出来なさそうですけど平気ですよ!ええ!」
ブルトレ「普段使いするつもりだったんですか!?」
セイトレ「その、何故か時々水没する事があるので。水場なら良いかなと」
44二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 08:59:33
おまけ
セイトレ「そう言えばこの動物、嘴あるから鳥ですっけ。この辺りでは見ませんよね」
ブルトレ「ああ、リヴァイアサンですよ」
セイトレ「えっ」
ブルトレ「リヴァイアサンですよ」
セイトレ「……だいぶ大仰な名前ですね?」
ブルトレ「商品ページに書いてましたよ」
セイトレ「ま、まさか……あ、ほんとに書いてある!?」
ブルトレ「……あ、本当に知らないんですね?リヴァイアサンは設定なだけでその鳥はペンギンですよ」
2part前の水着絵貰って触発されました。
ほんとはすぐ書くつもりでしたけど夏場の暑さで体力ががが。
FGOからfateは入りましたがメルト/λはお気に入りの一人なのでビックリしました。
二人共聖杯入れてLv100にしてる事何故バレ気分です、すごく嬉しい。
セイトレとしても見られるの恥ずかしい/下手に見られても気を使わせそうなのがNG理由なので上着付きならちょっと意気込めば水着も着る事ができます。
改めて可愛い水着ありがとうございました、スゴクウレシイ
≫62◆cRvsSr6LRA22/07/11(月) 17:57:13
星に願いを リウトレ
七夕、ここ日本においては7月7日である。その数日前のこと、トレーナー室に置かれているちょっとした笹に飾り付けをしていた。あたしが飾りを作り、シリウスに飾ってもらう予定。ちょっとしたとはいえ、今のあたしよりも長いのだ。身長を考えれば当然のこと。
「一応、日本にいる期間の方が長いけど……」
「ああ、言ってたな。イタリアだと8月10日だろ?」
「そうよ」
彼女の言う通り、イタリア版七夕はLa notte di San Lorenzoといい、8月10日なのだ。あたしのもうひとつの実家と言っても過言ではないフィレンツェにて催されるお祭りもある。日本とは違い、笹を飾ったり短冊に願いごとを書いたりせず、その日に見た流れ星にお願いする。もしそれができれば、願いは叶うというものだ。
「相変わらず、手先は器用だな」
「なによ、その言い方」
折り紙を折るあたしをニヤニヤ、という擬態語がぴったりだろう口角の上げ方をしながらシリウスは隣りで見ていた。大方、この前のさくらんぼの件を思い出させたいのだろう。
「手先じゃない方は器用になれたか?」
「っ……余計なお世話よ」
「私がいくらでも教えてやるから、安心していいぜ」
「……できたわよ、飾って」
「思い出して赤くなってんな」
出来上がった飾りをシリウスへと渡そうとすると揶揄うようにあたしの頬をつついてくる。誰のせいだと思っているのだろうか。彼女はそれをわかったうえでやってくるのだ。
「ちゃんと飾らないと今夜のご飯と……」
「ご飯と、なんだ?」
「……そっちの、キス…してあげないわ」
そんなにそのキスがしたいのか。シリウスはそくささと、丁寧に飾り付けを始めた。あたしはいつものように羞恥心を犠牲にしてことを進めた。
63◆cRvsSr6LRA22/07/11(月) 17:57:25
七夕当日。天気予報は夜も晴れ、絶好の七夕日和となった。ここは都会のわりには見えている気がする。
「なんて書いたんだ?」
「書いたって?」
「短冊だ、短冊」
「……別に何でも良いでしょ」
トレーニング後に芝とは違う草原の上、あたしはシリウスの膝に座らさせられていた。トレーナー室にある笹に書いた短冊が付いている。現状彼女に見られることはない。
「私に、関することか?……今のアンタは本当にわかりやすいな」
「……うるさい」
シリウスから目線を星空へと移すと、彼女はあたしを抱き締める。胸が重なると腕の力が緩む。少しだけ暗く感じる空、空気の違いか、それとも、1番明るい一等星をあたしが独り占めしているから、暗く感じるのだろうか。
「あっ……」
きらりと、ひとつの星が光の線を描く。慌てて、あたしは願いごとをした。叶えたい、叶えさせてと、思いながら。
「どうした?」
「内緒。早く学園に戻るわよ、ご飯遅くなるとあんたが寝るのも遅くなるわ」
彼女に揶揄われながらも学園へと戻る。トレーナー室に到着し、ソファーへと座らさせられたかと思いきやそのまま押し倒された。
「っ……どういうつもりかしら」
「短冊を見るより、アンタに直接聞いた方が良いと思ってな」
「密室だろうと言わないわよ」
別に言ったっていい。問題ないことだ。たいしたことじゃない、けれどもあたしの口はそれを拒む。それはブレーキなのだろう。あたしを見下ろし続ける一等星は薄暗いトレーナー室だろうと輝き続けている。
「言えないようなことなのか?」
「別にそうじゃないわ」
正直言って、直接見た方が早いだろう。わざとだ。あたしの口から言わせたい。あたしの声で彼女は知りたがっているのだ。なんでもそう、基本的に彼女はあたしからさせたがる。素直ではないあたしがシリウスを好きだと言うことを知らしめる行為。
「……そんなに言わせたいの?」
「よくわかってんじゃねぇか」
何年あんたのトレーナーやっていると思っているの、と言いたくなったがあまり時間もかけられない。言わないとことは進まない。
「……わ、わかったわよ……言えば良いんでしょ」
あたしはどうしてこうなのだろう。
「あたしが短冊に書いたのは―――」
64◆cRvsSr6LRA22/07/11(月) 17:57:46
翌日。あたしはトレーナー室にて笹を片付けていた。昨日、短冊に書いた内容を伝えた時の彼女の顔が焼き付いて離れない。
「…これ、シリウスの字……あぁ、もう……」
学園内にあった笹には彼女が彼女たらしめるものが書かれているのであろう。いや、彼女の性格というか、生徒会長であるシンボリルドルフとのことを考えると短冊はないのかもしれない。あの笹は生徒会が用意したものだったと記憶している。少なくとも、あたしが今この手にしたシリウスの字が書かれた短冊はここにしかないものだ。
「あたしは、あんたのそういうところが……」
言おうとした言葉も口が閉じる。他の飾りや笹に入った袋にその短冊を入れることはなかった。
≫89二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 21:57:53
「……ここは……いや……」
ブツブツと、明るく電灯の灯った部屋に独り言が響く。デスクの上には大量の資料、英語で書かれた論文、学術誌などが散乱していた。
「むぅ……」
どうやら行き詰まったのだろう。カシュ、とプルタブを起こし、ブラックコーヒーを流し込む。それをホルダーに収め、再びキーボードを叩きながら本を開く。
「……わっ」
「!?」
後ろから、耳の奥にゾワっとくるような声で囁きかけられ、その細い体が跳ねた。
「もう…びっくりさせないでくださいよ、影カフェさん」
「ふふっ…普段はこんなことしないんですけどね。どうにも、集中されていたようなので」
部屋の扉は鍵をかけていたはずだし、窓もすべて施錠されている。加えて今は夜半である。一体全体どうやって入ったのだろう。
「一旦休憩にでもしませんか?何か、新しい視点が見つかるかもしれませんよ」
カーディガンの袖からスティック羊羹を取り出すと、ちょいちょいと手招きしてくる。
その誘いを無碍にするのもどうか、と思い、フラリと立ち上がる。背中がバリ、ゴリと悲鳴を上げた。
「抹茶と小倉、どちらにしますか?」
「小倉でお願いします」
どうぞ、と渡された羊羹を剥き、口にする。甘くねっとりした餡子が口に柔らかく染み渡る。
「おいしい…」
小さなそれを2、3口で食べ終わると、いつの間にか目の前には暖かいお茶が。初夏とはいえまだ夜は冷える。その中の茶はありがたい。
「カフェが私にくれたんです。とても、おいしいでしょう?」
「ありがとうございます。これでもっと頑張れそう…」
90二次元好きの匿名さん22/07/11(月) 21:58:21
すっくと立ち上がったところで、部屋の外からかつ、かつと足音が聞こえる。
「まずい………」
「どうされました?」
「見つかったらきっと今日も寝かされる…」
部屋を忙しなく見回し、隠れられるところを探す。しかしどこも紙の束や本などで、隠れられそうな場所はない。
「そういうことなら。今回だけ、協力させていただきます」
そう言って不タキの後ろに回り込み、肩に白魚のような手を触れる。
「あの…これは?」
「あなたの分まで気配を極限まで薄くしておきました。ですから見つかる心配はありませんよ」
それにほっと胸を撫でる。それと同時に部屋へ養タキが入ってきた。
しかしどういうことだろうか。こちらへつかつか近寄ってくるではないか。
「ふふっ……なーんて。嘘ですよ」
「ありがとう影カフェさん。お陰で今日も捕まえられたよ」
「いえ。この間のお返しです」
ガシリ、とお縄を頂戴した不タキは謎に満ちた顔をしている。
「あの…どういう?」
「ネタバラシ、といきましょうか。…まあそんなネタはないんですけどね」
そう言って語り始める。
「まず、私が部屋に入ったのは養タキさんから鍵を借りたからです。ここはタキオンさんのトレーナーさんの部屋ですから、その方から鍵を借りるのは当たり前でしょう?あとは扉の気配を消して鍵を開け、部屋に入り込み、あなたに問いかけたまでです」
カーディガンの左、先ほどの羊羹とは逆の方から鍵を取り出し、養タキへと渡した。
「では、私はこれで。どうぞお楽しみくださいね」
またもやすうっとどこかへ消えてしまう。その光景に少し背筋が冷えつつも、今はもっと恐ろしいもの、それこそ幽霊の何十倍も怖いものから降る罰を静かに待つ不タキだった。
≫129二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 08:02:32
「…物欲センサーかしら」
「そんな気がする。多分これ沼るやつだなー」
Switchを手に狩りを続けている二人。かれこれ十回以上周回を繰り返していた二人は、狩りが終わった所でそれを置いた。
「ま、それなら大人しくやめるだけだね」
「拘った所でどうにもならないもの。それなら別のに時間を割いた方が有益だわ」
彼等なりの信条として、変にストレス溜めるくらいならゲームから一旦離れろというのはお互いに共有されてるのだ。
「ふふふ…ははは、いやぁこんな時間取れたのも久しぶりじゃないかサトトレ?俺もそこまで鈍ってはなかったしな。」
「!…キタトレ、そっちの話し方は随分久しぶりだね。まぁその姿だと違和感あるのも仕方ないけどさ」
「それはそうだろうよ。だから『俺』は『私』として振る舞ってる訳だしな。…どちらにしろ『キタトレ』ではあるが。」
「やっぱり、凄いよね。僕にそんな器用な真似は出来ないし、そもそもそこまで強くはあれないから…」
ポンと肩を叩かれる。振り向いたサトトレの視界には、普段とは違うかつての男性だった頃とそっくりな笑顔のキタトレ。
「いいじゃないか、人なんてそれぞれだ。俺が特殊なだけで、普通はそういうものだろ?それに、お前も変わったからな」
「僕が、変わったかぁ…」
少し考えて納得したような顔をサトトレが見せると、その不敵な笑みのまま親指を立ててくるキタトレ。
「折角の機会だ、勝負しようサトトレ。MRレウスTA、負けた方はいつかのモンハンコスプレ姿で半日過ごすでどうだ?」
「あー、そういやキタトレの家に纏めて置いてあったね…。いいよ、でも前に鈍って一乙したのに僕に勝てる?」
「昔からサトトレの得意分野の音ゲーじゃなきゃ勝率6割叩き出せただろ?それに今日、罠の設置ミスしてるからお互い様だ。」
「言ってくれるねキタトレ…」
───その後、派手なゴア装備の衣装を着た美女と、勝ち誇った顔をした美少女がいたとか。
短文失礼しました
キタトレの素の姿、こっちだと胡散臭さとかは色々なくなる代わりに気のいいお兄さんに近くなります。見れる機会は少ないですが。
その精神性は間違いなく特殊なキタトレ。尚仕事に追われてたのが祟ったのか、サトトレに負けて例のコスを着せられてます。
≫162二次元好きの匿名さん22/07/12(火) 18:19:23
「菓子類は好きですよ。基本教導者(とれえなあ)は頭を使う仕事ですから、皆様何かしらの糖分補給手段を常備しているのが一般的な所ですね。わたくしの場合は小分けになったらむね菓子が最近の流行です。甘くすっきりとした味わい、少量でもある程度満足できる点。あと……小分けのおかげで食べ過ぎない、ということが利点として大きいですね。以前大袋のちょこれーとを食べた際、ついつい食べ過ぎて体重に回ってしまいましたので」
「トレーナーさんの場合1週間走ればだいたい元に戻るっていうのもだいぶよくわかんないっスけどね……」
「付きやすく落ちやすい、という体質なのかもしれませんねぇ。ところでバンブーさん、こちらゴルトレさんから頂いた海外のお菓子ですが」
「一日一個だけっすよ、絶対カロリーやばいっスもん」
「是非もございませんね……」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part799【TSトレ】
≫162二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 16:35:05
グラスを遊びに誘いに来たエル
「失礼するデース!」
元気良くエルコンドルパサーが扉を開けたのはグラトレのトレーナー室。
暇なので此処に居るであろう友人を遊びに誘いに来たのだ。
「っと、おや? グラァス? 居ないデース?」
しかし放課後は大概此処に居る友人の姿は見えない。
何処かに出掛けている可能性も有るが……
しっかりした性格の友人の事だ出掛ける時に部屋の鍵を閉め忘れる事は無いだろう。
「エル?」
そんな時だ、誰も居ないと思っていた部屋から友人の声がしたのは。
「グラァス?」
「ああ、エル良い所に……んんっ……た、助けてくれませんか?」
「……何か嫌な予感がするデース」
「いいですから、早く」
姿は見えないが助けて欲しいと語る友人からの催促の言葉。
何やら一瞬堪える様な声が聞こえたのだが……
ちょっと嫌な予感に髪を引かれながらも声がした方へと足を運ぶと机の向こう側のソファーに友人は居るらしい。
どうやらソファーに横になっていたせいで机に隠れて部屋の扉からでは見えなかった様だ。
しかし実際に友人が寝ているであろうソファーを見た時
やっぱり引き返せば良かったと思う光景をエルは目の当たりにした。
163二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 16:35:18
「…………何してるデース」
「エ、エル、助けてください」
「…………スゥ……スゥ」
友人を見付けたエルが目にしたのは、ソファーに横になった状態で助けを求める盟友たるウマ娘グラスワンダー。
その盟友とソファーの間に挟まり盟友を後ろ側から抱き締める形で寝ている盟友のトレーナーであるグラトレ。
要は友人とそのトレーナーが添い寝をしていたのである。
……エルは何を見せられてるんですか?
それがエルコンドルパサーの率直な意見だった……
「帰って良いデース?」
「ま、待ってくだ……ひゃうっ」
「何を見せ付けてるデー……んっ?」
急に小さな悲鳴を上げた友人に若干白い眼を向けた時、何やら違和感を感じた。
何かが足りない気がする……
そう思い軽く友人の顔を見回した時、視界の端に違和感の正体が入り込んで来た。
「……スゥ……スゥ」アムアム
「ひゃうぅぅ……」
「あー……」
後ろから友人を抱き締める形で熟睡している友人のトレーナー
そのトレーナーがどうやら寝ぼけて友人の耳を甘噛みしていたのだ。
つまり盟友は耳を甘噛みされ悶えてるのに抱き締められて逃げれないので、エルに助けを求めたのだ。
……帰ろう
エルはそう心に決めた。
164二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 16:35:32
「それではごゆっくりするデース」
「エル待って、待って、このままじゃ私はおかしくなってしまいます」
「……」パタン
「エルゥゥ!」
「……スゥ……スゥ」アムアム,アムアム
「ひゃぁぁぁぁ…………」
閉めた扉の向こうから友人の悲鳴が聞こえた気がしたが……聞こえなかったことにした。
「はあ……大変なものを見てしまったデース」
普段はあんな状態でもレースでは牙を見せる辺りに若干の理不尽さを感じる。
助けてという割に少しにやけていた友人の顏を思い浮かべそんな事を思った。
……正直、少し友人が羨ましい。
「エルもトレーナーさんに言ってみたいデース……」
「何を?」
「Te gustaría jugar a morder la oreja? ……なーんて」
「うっ……ゴメンねスペイン語かな? あんまりスペイン語分からないんだよ」
「ノー、エルが臆病なだけデー……」
……待って、今誰と話しているんですか?
独り言のつもりだが成立している会話。
それも聞き間違える訳が無い声の主と会話している様な……
165二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 16:35:44
ギギギギギ……
と、まるで錆び付いた機械の様な動きで会話の相手へと首を向けると……
「……トレーナーさん」
「……? そうだよ?」
エルのトレーナーさんが居ました。
「何故此処に……」
「通り掛かったらエルの姿が見えたからね、それよりさっきの言葉をもう一度言ってくれないかな? メモして和訳したいんだ」
エルがトレーナーさんへ言いたいと言っていたからでしょう。
トレーナーさんは純粋な目で和訳の為にエルにもう一度同じ言葉を言って欲しいと言ってきました。
とてもじゃないが和訳なんてされたら困るしもう一度言うのも憚られます。
なのにその言葉はエルの喉まで……それも日本語で出てしまいそうになります。
「カ、カァァァァァッ!!!!!」
「エル!?」
「エルは根性訓練に行って来るデェェェェェス!!!!!」
「エル!? エル!?」
このままだと駄目だ。
そう思った私は根性訓練Lv6(滝行)を行うべくトレセン学園を駆け出すのでした。
うまぴょいうまぴょい
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part800【TSトレ】
≫55二次元好きの匿名さん22/07/13(水) 22:58:38
夜間、降り注ぐ雨、黒い雲が空には広がり時折雷鳴を鳴らす。光る雷に生徒やトレーナーの一部は叫んでいる頃。
「さて…」
いつもとは違い、明らかに冷たい雰囲気を見せて濡れながら立っていたのはファイトレ(女)だった。
本来、彼女は休みである。強制で取らされたそれに、担当からのごり押しもあって家に待機させられていた筈だった。
「バレないようにせねばな…」
雨音に紛れて進む。悪天候はこういう潜入には助けになる。いくらウマ娘の聴力が優れてようと、雷雨の中では流石に聞き取れない。
傘もレインコートも邪魔なのだ。体を冷やさないかと言っても、昔濁流の川を泳いで渡ったこともある彼女には問題なかった。
(屋内は…駄目だな。遭遇する人全て眠らせられるならともかく、ここでそんな真似をする訳にはいかん。何より多すぎる。)
「ううっ…雷の音がまだ頭の中で聞こえるよ…」
「仕方ないよー、雷雨だし寮に早く行こう?」
…近くの建物を歩く人影を見た瞬間、姿勢を下げて歩くファイトレ(女)。その姿が消えたのを確認してから急ぐ。
パシャッパシャッと僅かな音はするが、この状況では誰も気に留めない。あっさりと目的の建物に辿り着いた。
(さて、トレーナー室にある書類を回収するとしよう。とはいえ、流石にまだ人はいるな…。…?!)
「…また鳴ったな」
「今日は激しいですわね…」
…奥からT字路からこちらへ向かって廊下を歩いてくるフクトレとマクトレを、出てくる瞬間認識して横に転がる。
即座に階段下へと潜り込んだ彼女は、息を殺して気配を消した。心拍数も一気に下げて音源を徹底的に無くす手法。
「テイトレ、近くに落ちた雷に飛び上がってましたわね。」
「あれは誰だって驚くだろうさ」
…気づかれなかった。ウマ娘の脚力を生かして素早く自らのトレーナー室へと滑り込むと、置いてある書類を纏めて写真に撮る。
「あとは帰るだけだな。…折角の時間だというのに、この頼んでおいた膨大なウマ娘の走行データを分析しないのは勿体ない」
帰りは運良く誰ともすれ違うことなく建物から出れたことで、もう気づかれる可能性はゼロ。外に停めた車に乗り込む。
「さあ、明日はあの家で休みというのなら、ノートパソコンに取り込んで解析するとしようか…」
───データを纏めた彼女は、トレーニングメニューの改良に役立ったと呟いてたとか。(尚、少ししてから担当にバレた)
≫79二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 06:18:55
「……ブラトレちゃん」
「どうした、魔ルド」
「……魔ルド、俺は?」
「あ、マヤトレちゃん!あとボノトレちゃんも……まあ、この二人はすこーししたかった話とずれるけど……」
「……まあ、なんだ、聞こうか」
「さらっと流されたけど割と酷い発言じゃない?今の」
「気にするなボノトレ、あるあるだろ」
「……それマヤトレだけじゃない?」
「その、ね?これはみんなわかって貰えると思うけど。自宅とかの高いところに置いたものってあるじゃん?」
「あるな」
「……それをさ。今になって出そうと思ったらぜんっぜん届かなくて……仕方ないから脚立持ち出したりしちゃった……」
「魔ルド、それ、身長が減ったのが15センチ以内に収まってるから言えるだけだぞ?」
「……あ、ブラトレちゃんだいぶちっちゃくなったもんね!大丈夫?高いところ届く?」
「必要があればそれこそチームの面々とかブライアンに頼むから大丈夫だぞ」
「……そーお?」
「……ねぇマヤトレ」
「どうした、ボノトレ」
「なんか、さ。今のやり取りで心が……」
「……食いにいくか、デカい肉。俺の奢りで」
「いいの?」
この後マヤトレはボノトレを肉で釣るロリコンだと噂された。あと、ボノトレはボーノに普通に頼ってたのでダメージの類いは全くなかった……
≫158二次元好きの匿名さん22/07/14(木) 21:06:37
「ねぇファイトレ(男)」
「どうしたんだい、ベガトレ?」
「あれ、二人で仲良さそうに飲んでるけど…話してる内容が…」
「あぁ…」
どこかの居酒屋にて。同じ身長のファイトレ(男)とベガトレは、ひょんなことから二人で飲みに来ていた。
そんな中、奥で飲む178cmのウマ娘化トレーナー二人を見かけて、その会話を聞いた157cmの二人は微妙な反応を見せた。
「貴女なら分かるでしょう?個人確認のために一々名前や電話番号を書く際にとても気を遣うあの面倒さが…」
「凄く分かります…!残されちゃうから汚い字で出すわけにもいかなくて、その度に書き直さなくちゃいけないのが…」
二人共強いので酔ってないはずだが、なんというか同志との話は嬉しいのだろう。テンションも高く見える。
「…なんか、触りたくなるわね」
「ベガトレ、隣にキタトレもいるし無理だと思うんだけど。それに前もファイトレ(女)にホールドされてなかった?」
「あのときはファイトレ(女)の体を堪能してたのよ!」
「(窒息しそうな勢いだった気がするけど、まあいいか…)」
…ただでさえないデリカシーが、酔っている+ストッパーがいないことで更に吹き飛びかけていた。
アルちゃんはベロンベロンで使い物にならないので、ファイ女の名を借りてなんとか止めるファイトレ(男)。
「…また上層部にお願いしなければいけないわね…早くデジタル化を押し進めてもらわないと。いっそ私が上になるべきかしら」
「あはは、私も手伝いますよ…でも、もし偉くなったとしても、私を一本釣りするのはやめてねキタトレさん…」
面倒くさいのか、上層部で押し進めるかとぼやくキタトレと、庶民根性故に上へと引き抜きはやめてとお願いするネイトレ。
…ファイトレ(男)は、この状況に苦笑いしながらビールを呷った。
短文失礼しました
どこかの飲み屋で一つ。178と157の各ペアですが…キタトレとネイトレが情けnいやなんでもないです。
ベガトレとファイトレ(男)、相性は悪くない…のかな?ファイ女の名義はファイトレ(男)が自己判断で使えるようになってます。