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目次
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part831【TSトレ】
≫15どうして勝つと言えるのか1/722/09/11(日) 22:00:47
[どうして勝つと言えるのか?]
「そういえばだけどさギムレット」
(ん、どうしたボウズ)
「さっきキタトレと話していた時に『走ったら誰が相手でも勝つつもりだ』って言ってたけど、アレって本当なのか?」
夕刻に差し掛かり影が伸び、自分以外には誰も居ないトレーナールームで先程交わされた会話について質問する。キタサンブラックのトレーナーとギムレットが話している中、ギムレットの言った『たとえ誰が相手でも走れば自分が勝つ』という言葉。その言葉はある意味衝撃的な印象を自分の中に残した。
ギムレットは他人の可能性を否定しない。たとえどれだけ高い壁であっても、当人が必死に努力をしているのならば結果がどうであれ、それを嗤うことは決してないある種の高潔さを持っている。だが、だが────それと同じだけ、彼は現実的な人間だ。冷静に状況を見極め、必要とあらばたとえどれだけ相手に恨まれようとも冷徹なまでの評価を下す。普段の振る舞いから粗雑な印象を与えがちな彼だが、その決断が感情だけで行われることは無い。
そんな彼が『走れば絶対に自分が勝つ』と言い切る。それは自分にとってはまさに寝耳に水も同じことだったのだ
そんな風に考えていると──
(本当だぞ)
「──へ?」
ギムレットは事も無げに、自分の質問に肯定の意を示した。さもそれが当然の事実であるかのような雰囲気を漂わせている彼の答えに、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
(……さてはお前、こう考えているな。「勝てる確証が無いのに、ましてや誰と戦うのかもわからないのに誰相手でも勝てるって断言できるのか?」ってな。違うか?)
16どうして勝つと言えるのか2/722/09/11(日) 22:01:11
その通りだ。
声に出しこそはしないが、自分の疑問に対して呆れているような、悩んでいるような、そんな感情を滲ませた彼の言葉に強く同意する。
この世界はいつだって先行き不透明だ。昨日の弱者が明日の強者になることもあれば、今日の強者が明日の弱者になるなんてことは当たり前のように起こり得る。自分たちの担当するウオッカであるならば、いつの時代のどの相手にも最後には絶対勝つと確信しているが、それでもどれだけの相手と戦うことになるのかという不安は常に付きまとう。
ましてや、かつては極限まで鍛え上げた体を失ったギムレットが、それでもなお自分が勝つと言えるのが自分にとっては疑問だった。キタトレとの話の中で彼はその原因を「勝者の責任」としていたが、それだけではないのではないかと、自分は何かを感じている。
(その感じからすると合っているのか。境遇が境遇とはいえ、お前も変な所で頭が固いなぁ…)
「薄々だけれど、それは自覚してるよ。だから…頼む。お前がどうしてそう思うのかを教えてくれないか?」
目頭を押さえていそうな彼の姿を幻視しながら、自分の中に居る彼に頼み込む。「自分で考えろ」と言われてしまえばそこまでなのだが、恐らくは自分のこれからにもかかわることであると朧気ながら理解しているだけに、彼の口から考えを間違えることなく知りたいと思ったのだ。
(いいぞ、いずれにしろこれについては伝えるつもりだったからな。むしろちょうどいい機会だろうよ)
「ありがとう。恩に着るよ」
(と、言ってもそんな大層なことではないんだが……例えば、お前が以前キンチェムの奴が居た方のスカーレットのと走るとして、勝つ自信はあるか?)
自分の頼みに対して元々教えるつもりだったから構わないと鷹揚な態度で返すギムレット。感謝の言葉に対しても大層なことではないと手をひらひらと振った──姿は見ることができないためになんとなくの感覚だが──かと思えば、普ダストレと走って勝つ自信はあるかという質問を出してきた。
17どうして勝つと言えるのか3/722/09/11(日) 22:01:37
「そりゃあ勝てるさ。一応これでもウマソウルがあるウマ娘なわけだし、ヒト並みの身体能力しかないアイツと俺が走ったら普通に考えて俺が勝つだろ」
ギムレットの質問に「是」と答える。
こう言っては角が立つかもしれないが、ダイワスカーレットのチーフトレーナーの身体能力はウマ娘とは思えないほどに低い。力の源泉となるウマソウルを保有しないが故に彼の身体能力はヒト程度しかなく、それでも成人男性程度の身体能力はあるのだが、種族という差をひっくり返すほどにはならない。そのような彼と併走したとして、自分が負けるイメージは思い浮かばなかった。
(ま、そうだわな。じゃあ2問目だ。小さい方のビワハヤヒデのトレーナー、そのウマソウルとお前が走ったとして、お前は勝つ自信があるか?)
自分の回答を予期したかのように笑みを浮かべたような雰囲気であっさりとした同意を返すギムレット。それと同時に、今度は小さい方のビワハヤヒデのトレーナーの中に居るウマソウルと自分が戦ったとして、勝てるかどうかを尋ねてきた。
「ソラヒデちゃんだろ?ちびハヤトレがウマ娘になって日が浅いから良くわからないけれど……将来はともかくとして、現在の時点で負ける気はあまりしないかな」
(ほう?さっきとは違ってウマソウルその物が相手なわけだが……そう思う理由は何か有るのか?)
「レースで競う経験の差だよ。仮に身体能力が上回っていたとしても、それを上手く発揮できるかどうかは別だろ?そういった戦略の部分も含めて考えると、俺は彼女に勝てると思う」
18どうして勝つと言えるのか4/722/09/11(日) 22:02:09
経験の差。
それはウマ娘化したトレーナーと学園に在籍するウマ娘達でレースを行った際に、前者が勝つことのできない第一の原因として挙げられる要素。
トップスピードであれば三冠ウマ娘ナリタブライアンに比肩しうるだけの能力を有するブラトレも、トレーナーの中において屈指の逃げ足を持つスズトレも、“レースでの経験”という一点においては学園に在籍するウマ娘には一歩譲ることになる。レースでの急激な流れの変化に不慣れであるが故に、かかりなどの問題を発生させてしまうのだ。
そして、先述したトレーナーと学園在籍のウマ娘との間に発生した差が、今度は自分とソラハヤヒデとの間に発生することになる。将来彼女がビワハヤヒデを上回るほどのウマ娘になるとしても、現在の実践的なレースをまだ経験していない彼女に負ける気はしなかった。
「ま、経験ってのは存外侮れない物だからな。トレーナー側が助言するならまだしも、現在のソラハヤヒデ単独でお前に勝つのは難しいだろう。じゃあ最後の質問だ。もしお前がウオッカと走ったとして────お前、アイツに勝つ自信はあるか?」
自分の回答に先程と同じく同意を返した上で、「ウオッカと戦って勝つ自信はあるか」と質問をするギムレット。それと同時に彼の纏う気配が突如として変わった。
先程まで冗談なども言いながらどこか楽しそうにしていた筈の彼が、今ではどこか自分を試すような、何かを見定めようとしているかのような、そんな気配を漂わせている。
自分が彼から「どうして常にレースで勝てると思えるのか」を学ぼうとしているのと同時に、彼は自分の何かを見定めようとしていた。
顎に手をあてて少し考える。
ウオッカとレースをするとして、果たして自分に勝つ自信はあるのだろうか。ウオッカの強さは誰よりも自分が知っている。自分がトレーナーとして指導をして、共に歩んできた相手に自分は勝てるのか。
これまでの思い出を振り返ってみると、自分の中に1つ、答えがあることに気が付いた。
19どうして勝つと言えるのか5/722/09/11(日) 22:02:39
「……負けない」
(「負けない」と来たか。相手は経験も能力も全てお前より上だぞ?それに併走でもお前は何回も負けている。冷静に考えれば、レースにおいてお前がウオッカに勝てる見込みは万に1つもないだろうに。それとも、お前が勝つという根拠が何か見つかりでもしたか?)
自分はウオッカには勝てない。
ギムレットの言う通りだ。積み重ねた経験も、発揮できる能力も、全てがウオッカに劣っているのが今の自分だ。評価をすればするほど、自分の相棒に自分は勝てないという事実が積み重なっていった。
それでも、自分は彼女に負けないと言った。
そのことについて、彼が疑問に思うのも当然の事だろう。
「いいや、いくら考えても見つからなかった。むしろ負ける要素ばっかり出てきて、着差が埋まるどころか広がる一方だったぐらいだ」
(じゃあどうして「負けない」と言える?根拠も何もあったものではないだろう)
「そうだな。100回やれば100回ウオッカが勝つ。それでも────それでも俺は、戦う前から勝つことを諦めたく無い。そんなカッコ悪いことを、俺はしたくないんだ」
経験の差は歴然だ。
能力においても何一つ勝ることは無いだろう。
正しく評価をして、走りにおいて自分がウオッカに勝る部分など1つもない。
だが──心まで負けてしまう訳にはいかない。
戦う前から「勝てない」と諦めてしまう。これまで積み重ねてきた努力を投げ捨ててしまう。そんなことはウオッカの相棒として、そして何よりも自分という個人にとって「やりたくない」ことだった。
(…………)
自分の答えを聞いて沈黙するギムレット。
彼の好む回答ではないのかもしれない。だが自分にとってこの感情は大事な物だ。
根拠はない。理由もない。ただ、勝負をする前から勝つことを諦めたくないし、やるならば勝ちたいと心の底から強く思っている。
ならば、根拠も理由もそれで十分だった。
20どうして勝つと言えるのか6/722/09/11(日) 22:03:45
(……ククク。そうか、そうか!何を言うかと思えば自分が「負けたくない」と思ったから「負けない」か!また面白い考えをするものだなお前も)
「……なんだよ、こっちは真面目に答えたんだぞ。それを笑うなんて、無神経が過ぎるんじゃないか?」
(スマンスマン。さっきまであれこれと理屈を言っていた癖に、いきなりそれを全部投げ捨てて「負けたくないから負けない」と言い出したものだから面食らってな。しかしお前、わかってるじゃないか)
「──えっ?」
自分の答えに対して、先程までの試すような雰囲気を一変させて上機嫌になるギムレット。
どの様に考えたにせよ、真面目に考えた答えに笑いで返すのは良い気分ではない。そのことについてデリカシーが無いのではないかと問い詰めると、彼からは謝罪と共に「わかっているじゃないか」という言葉が返って来て、思わず困惑してしまう。
(さては、考え事に熱中しすぎて最初の質問を忘れていたな?お前は「どうして誰の相手のレースでも勝てると言えるのか」と聞きたかったんじゃないのか)
そうだった。自分は最初そのことを知りたくてギムレットに質問をしたのだ。
だが彼に逆に質問され、その回答を考えていたためにすっかり当初の質問を忘れてしまっていた。
しかし、彼の口ぶりからすると──
「もしかして、自分が勝ちたいから勝てると言っている…のか?」
(そういうこった。勝てるかどうかは時の運。どうにかなる時もあれば、どうにもならない時もある。それより大事なのは自分が「勝ちたい」と思うこと。どうしたら勝てるのかとかは詰まるところ二の次で良いのさ)
自分の推測に正解だと返し、続けて何よりも大事なのは「勝ちたい」と思うことだと続けるギムレット。その言葉を聞いて自分の中で何かがすとんと腑に落ちる気がした。
21どうして勝つと言えるのか7/722/09/11(日) 22:04:13
「勝ちたい」と思うこと。
ウマ娘ならばごく当たり前とされるレースに勝利することへの欲望。ギムレットはただそれを口にしているに過ぎない。それがどのような物に由来するにしろ、勝ちたいと思うことはレースで勝つためにはなくてはならない物だ。
しかし、こともあろうに自分はそれを失念していた。勝てるかどうか、勝つとしたらを考えすぎるあまり、レースにおいて本当に大事な物を見失ってしまっていたのだ。
ギムレットは恐らく、それを理解していたのだろう。
だからこそただ答えるのではなく逆に質問し、自分の奥底にある純粋な想いを認識させるようにした。知識ではなく実感として理解させるために、彼は敢えて教えないことを選んだのだ。
「…ギムレット」
(どうした)
「ありがとうな。俺、大事な物を忘れていたみたいだ」
(良いってことよ。勝てるかどうかを考えるのはトレーナーとして大事な仕事だからな。その考え方も将来のお前には必要になってくるだろうさ。それはそれとして、このことはウマ娘やお前が走る上で一番大事なことだから、それだけはちゃんと心に留めておけよ?)
「わかったよ。ちゃんと忘れないようにする」
(本当かぁ?お前は走っている時でも考え事が多いからなぁ)
「大丈夫だって。これでも大事なことは忘れたことは無いんだ。それよりも走る時に考え事が多いって……」
感謝の言葉を述べると、ギムレットは少し照れくさそうにした後、それを隠すかのようにして自分に忠告をしてきた。それに同意をすると、今度はそれを疑いながら自分の走りについて「走る際に考え事が多すぎる」と指摘をする。心配性なのかただ照れを隠したいのか最早わからないが、彼の浮かべている表情は自分と同じような笑顔だという確信がある。
多分、彼にとって今みたいな大仰に教え教えられる関係というのは少し面映ゆい物なのだろう。
だからこそ彼は誰に対しても対等に付き合って、真摯に向き合うのだろうな──自分の走りについての改善案などをギムレットと話しながら、頭の片隅でそう思った。
傍から見れば独り言、彼らからすれば楽しい話し合いであるこの状況は今しばらく続いていた。
≫31二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:16:56
「魔ルド」
「なぁに?オグトレちゃん」
嬉しそうに揺れる尾、問われることをピンと張って一言一句聞き逃さないつもりの耳。
相変わらず可愛らしい動きをするそれは、眺めるだけで微笑ましい。
だからこそちょっとした意地悪も兼ねて質問をしてみる。
「お前さんにとって、目上の存在ってどんな人になるんだ?」
「……年上ならだいたいみんな?でも、フウトレさんとかはそんなに意識してなくて……
でも、大先生──あ、ヘリトレ先生のことね?とか、先生、こっちはウラトレさんのこととかは今も畏敬?の念があるよ?」
「成程。他は?」
想定内の答えを聞き、更に掘り下げる。
その二人は絶対大切な存在だろうから。
「……ギムトレさんはちょっと関わりが薄かったしそんな……って感じかな?あ、イクトレさんはお世話になってるけど。なんだろう?」
「お前さんでも、態度の使い分けはわからないか」
「わかんないや。でも、そんな区別してるかなぁ?」
「区別ではないさ。只、お前さんの立場として相手に喜ばれるそれを使い分けているだけ、そうだろうさ」
一瞬、きょとんとしてからすぐいつもの笑みを浮かべる。
「オグトレちゃん、わりと見てる気がするけど……」
「私だけじゃないさ。私の他にも見てる奴は沢山いるだろうな」
「そう?例えば?」
「そうだな……」
そう、考え込むと足音がする。
底が響きにくい素材なのだろうそれは、こちらに近付いてくる。
33二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:17:19
「ほら、お前さんをよく見てる奴がまた一人来るぞ」
「え?……あ、スズトレちゃん!」
「うん?何してたの二人とも?」
「少し、雑談をな」
「うん。スズトレちゃんはさ、私を見てる?」
「……ねぇオグトレ、どういう風の吹き回し?」
「さあ。どうだろうな」
「……からかうのも、程々にしとこうか」
「???」
いまいちよくわかってなさげな魔ルドをよそに、二人は話す。
多分、わかっていても許してくれるだろう。そういった信頼も話の空気に紛れていた。
≫40二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:19:05
からんころん、からんころん、と下駄の音を鳴らして君は私の数歩先を行く。
「ほらほら、早く来て!花火が上がっちゃうよ!」
「わかった、わかったってば〜」
祭りの熱にあてられてはしゃぐ、君の笑顔は輝いて見えて、また君に惚れ直す。
心のドキドキが身体中を駆け巡る。はぐれないようにって繋いだ手から君に、このドキドキはバレてるのかな。握る力が少し、強くなる。
石畳の階段を登り、小高い丘に辿り着いた。人がいっぱいいたらどうしようと思っていたが、浜から見る花火がきれいだと話題になったおかげか、どうやら自分たち以外の人はいないようだった。
丘から海の方を見下ろす。空と海の紺色に包まれ、星と文明の光が煌めく夜景がきれい。
「そろそろかな」
「えっと花火が上がる時間は――」
君が巾着袋からごそごそとスマホを取り出そうとするのを、腕を掴んで止める。
「なんで止めるの?」
「夜景がこんなに綺麗なのに、スマホの光が混じっちゃうのはもったいないな、って思って。それに、いつ花火が上がるかわかんない、じれったい時間も悪くないな、なんて」
君の目を見つめれば、宵を照らす煌めきにも負けないぐらい輝いていた。
「……そうだね。こういうのも、たまにはいいよね」
静寂が訪れる。手と手が触れる。繋ぐ。にぎにぎと、絡ませる。かつ、かつ、と音がして、肩と肩が触れる。僅かに触れるだけでも、君と触れ合うとあたたかくなる。
ひゅー、と音を立てて、空を逆さまに落ちる流れ星。星が弾けて花が咲いた。
「わぁ……」
「綺麗……」
次々と空を登って色とりどりに輝く花火。見とれる君。横顔を見つめる私。
「ねぇスカイ」
「――――」
私の声はスターマインにかき消される。でも、私の想いまでは空の華に奪われなかったみたいで、スカイのほっぺたに朱が咲く。
「トレーナーさん」
スカイの手が腰に回って。抱き寄せられて。私の目は空一色になった。
≫45二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 01:04:31
昇ったばかりの朝日を浴びながら、ヒシトレは自宅であるトレーナー寮へ急いでいた。
ガサッ……
頭の横から上へと移った耳は、以前だったら気づかないほどの小さな音をとらえた。
目を向けると……、灰色の何かが落ちていた。
やかんほどの大きさのそれを見た途端に、水を掛けられたように寝起きの頭はスッとはっきりしてきた。
「……でっか」
ヒシアマから話には聞いていた。学生寮でとても大きなネズミが出た、と。そして、学生寮では大変な騒ぎになったということを。
「寮生で協力して外に逃がすことに成功したって言ってたけど」
このサイズのネズミなら間違いなく同じやつだろう。聞いていた特徴とも一致する。
「お前が、やかんネズ公か」
と言うよりこんなのが複数いるとは思いたくない。
さて、どうしたものか。
こんなサイズの野生動物に一人で捕獲を試みるのは危険だ。
「トレーナー室にすぐ戻るからって携帯おきっぱにしなきゃ良かった」
追いかけてこないことを願って、目をそらさずに数歩下がる。
「うわっ」
そのまま段差につまずき、尻もちをついた。
やかんネズ公は隙を逃さず、跳びかかってきた。
「ひっ」
ヒシトレはばね仕掛けのように飛び起き、全速力で駆けだした。
「何あれ! こっわ!!!」
46二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 01:04:55
気が付いたらトレーナー寮からは離れていた。
速度を緩めることなくチラリと振り返ると、やかんネズ公は距離を離さず追いかけていた。
「うそぉ! はっや! こっちはウマ娘だぞ!?」
なんとか撒こうと曲がるたびに安全のために速度を落としたのが原因なのだが、必死に逃げているためヒシトレは思い至ることはなかった。
また角を曲がると、その先に人影があった。
「そこの人逃げて!」
「ヒシトレさんか? いきなりどうしたんだ」
「マーチトレさん!? 助けて! ネズミに追われてるんだ!」
「ネズミ?でっか!」
「しかもウマ娘並みの速さで走るんだ。もはや化け物だよ」
「でもネズミは立ち止って──あっ逃げた」
ヒシトレが振り向くと、数の不利を悟ったのか走り去るやかんネズ公の姿があった。
「助かったよマーチトレさん。ありがとう」
お礼を言いながら見上げると、マーチトレはやかんネズ公が走り去った方向を見つめ青ざめていた。
「どうした?」
少し遅れてヒシトレも気がついた。
「あっちは学生寮だ!」
まだ距離があるとはいえ、もしウマ娘の速度で走れるなら猶予はない。
こんな早朝にあんなのが現れたら大混乱が起こるだろう。
「「追いかけよう」」
マーチトレと並走しながら、ヒシトレはジャージのポケット取り出した大きな鍋やフライパンなどの調理器具を取り出し、手渡した。
「これ、武器替わりに使って。さぁタイマンの時間だ!」
二手に分かれ、それぞれやかんネズ公を追いかけ始めた。
47二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 01:05:15
ひと気のない通りでヒシトレはやかんネズ公と相対していた。
フライパンとお玉を手に立ちふさがるように仁王立ちしながら言う。
「ここから先には行かせない」
ヒシトレは藪の中を走ったのか体中に葉がつき、特徴的な青臭く強い香りをまとっていた。
「幸いにもここはトレセン学園の外れだから早朝に大きな音を出しても問題ない」
ヒシトレはつぶやくと、手に持ったお玉をフライパンにぶつけ音を鳴らしだした。
やかんネズ公は目の前にいるのが一人だと気づいたのか、逃げなかった。
「来いタイマンだ!」
ヒシトレは相手に伝わるように叫んだ。
やかんネズ公は臨戦態勢になる。
ガンガンとフライパンの音は、自分の恐怖を打ち消すように、自分の弱さを隠すように、何もかもをかき消すように響き渡る。
ヒシトレとやかんネズ公の間に一触即発の空気が流れる──
──ガコン
突如としてやかんネズ公の上から大鍋が迫り、やかんネズ公は捕まった。
ヒシトレはフライパンを叩くのをやめ、相手を見る。
「助かったよマーチトレさん。ナイスタイミングだった」
やかんネズ公を捕まえたのはマーチトレだった。
「葉っぱをまとったのは臭いで嗅覚を鈍らせるため、大きな音を出したのは俺がネズミに気づかれないためだったんだろ?」
「やかんネズ公と向かい合ったときに、後ろにマーチトレさんが見えたから挟み撃ちできるなって。ありがとな」
早朝のトレセン学園に静けさが戻っていた。
「ところでヒシトレさん」
「ん?」
「挟み撃ちはタイマンではないんじゃないか?」
「……確かに!」
≫55二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 08:39:54
夏の暑さが夜に見られなくなってきた頃の夕暮れ。
今日も今日とてトレーニングを振り返り、ミーティングもおしまい。お疲れさまでしたとファイルを閉じた頃。
「そうそう。今日は、えー……何か満月らしいから」
「ちょっとちょっと、話振った側は覚えてないのはどうなの?」
「満月の方覚えてるから良いでしょ。はい、月見団子変わり」
冷蔵庫から封をした瓶を取り出して渡す。
中には団子に見立てた白玉と、果物をシロップに漬けこまれた──
「……フルーツポンチ?」
「そうそう。スカイ嫌いだった?」
「嫌いじゃないですけど、手作りだよねこれ?」
「月見るのに団子居るらしいからね。白玉入りをグラトレさんが作るの手伝ってきた」
「なるほどー、それでこの出来に。トレーナーさんは何処手伝ったんです?」
失礼な事を言われてるのでHAHAHAこやつめ、なんて言ってみる。
実際難しいところは全部任せたと言って過言ではない。
ちらりと時計を見るとまだ門限まで時間もある。
「材料選びと、火と包丁使わない手伝いだから──」
56二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 08:40:06
……一日前……
「転セイトレさん、中秋の名月はご存知でしょうか~?」
「んー……いや、覚えてないです。なんですかそれ」
やっぱり。という顔をするのはグラトレさん。
俺の記憶喪失がプロフィールが主だが、それに伴って基本的な生活の要素意外は大抵忘れている。
当然季節毎のイベントもトレセンのイベントや周囲の指摘で知る事になる。
「中秋の名月は月を見るのに良い日と言われてる日ですよ~」
「月を見る日をわざわざ決めてるんですか?」
「ええ、特によく見える日として古くから親しまれてるのがこの時期の満月です」
なるほど、と一つ頷き。何時も日が昇るまで起きてる身としては一度位見上げてもいいと思ったりする。
何か動いていないと恐ろしくて仕方ない時間だ。
「それでですね~、月見団子というものもあるのですが。月見をするつもりであれば是非に用意したらどうかと~」
「……何か食べさせようとしてません?」
「これも月見ですので~。これが月見団子ですよ~」
「はいはい。……んー、味気ないって言うか。何か地味じゃないです?月見って卵のイメージでしたけど」
「それはまた別の料理ですよ~。卵の黄身を月に見立てたものですね~」
「いっそ生卵上からかけても、あー鰻釣れてれば噂のうなぎゼリーみたいな感じで混ぜれたかも」
「華やかさが欲しいならフルーツポンチなんてどうでしょうか~、担当にも小分けして配れますよ~」
「あー、果物付き?でしたっけ」
「ええ、果物と白玉を一緒にシロップや炭酸水に入れて食べるものですね~。そう難しくもありませんしご一緒にどうでしょうか~」
「俺も?手伝いになるかわからないですけど良いですよ」
「ありがとうございます~、後」
「はい?」
「鰻を釣った時は調理せず私のところへ持ってきなさい」
57二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 08:40:26
「転セイトレさん、確かに私は白玉の材料を取りに行く間に果物を見繕う様に頼みました。でもお中元用セットは少し違いますね~?」」
「いい感じのセットになってると思ったんですけど」
「折角ですから旬の物から選びましょうか~」
「何か似たような梨多いですし、西瓜とか入れません?後はブドウとリンゴと、なんですこれ。らずべりー?」
「……始めからその様に選べば良かったのではないでしょうか~?」
「思ったより量が増えたので~、お世話になっている人達にも配りましょうか~」
「すみません、手間増やしちゃって」
「手伝ってもらいますから大丈夫ですよ~。私は果物を切るので白玉をお願いしますね~」
「えーと、粉を混ぜるから。まず転ばない様に足を縛って」 アシキュッ
「耳たぶ位の硬さ……?耳たぶ、耳……」 サワ
「……手が止まりましたけれど、大丈夫ですか~?」
「グラトレさんちょっとこっち来て貰えますか?……えいっ」 サワ
「はい!?」 パシッ
「あっ」
「聞いてくれれば教えますから、どうしたか教えてくれませんか~?」
「いや、自分で耳たぶがわからなかったんですよね」
「確かに今確認するのは難しいですね~。……ええ、だいたいこの位で大丈夫ですよ~」
「あ、もう良いんですね」
「ええ、瓶詰めするお団子をお願いします~」
「はーい。……えいっ」
「甘い」 ペシッ
「後は人数分瓶詰めすれば完成ですね~。冷凍保存して起きましょう~」
「すみません、殆どお願いしちゃって」
「いえいえ、お団子捏ねてもらって助かりました~」
「なら良かった。それじゃあ小分けなんですけど──」
58二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 08:41:12
…………
「まあ大体こんな感じで、切ったり茹でたりは全部任せて……スカイ?」
「ふーん。じゃあこのフルーツポンチ配ったんですね」
「うん、普段お世話になってる人にはお世話になりっぱなしだからな」
「ふーん、そうなんですね。つーん」
「……スカイ?」
「……朝練」
「うん?」
「朝練しましょう。ついでに朝の月見ましょう」
「朝に月……?」
「あー、信じてない顔だ!見えるんだよ、うっすらとだけど!」
「お、おう?いやうっすらなら夜にすれば良いんじゃ?」
「トレーナーさん侘び寂びが足りないよ、夜のお月様がどうだったか話しながら名月の名残を楽しみましょう!」
「りょ、了解……!」
勢いで押し切られてしまった。
まああのスカイが自分から朝練に精を出してくれるのは良い事だしフルーツポンチも貰ってくれそうで良かった。
確か後ススキが居るって話だったし帰りに用意しよう。
「でも俺侘び寂び?とか難しい事わからないけど大丈夫か」
「セイちゃんも難しい事はわかりませーん、のんびり見れたら良いじゃん。それに」
「うん?」
「トレーナーさん夜に色んな事起きるって言ってるじゃん」
「ヤな信頼だなそれ!?」
「にゃははっ、土産話楽しみにしてますね!」
「そんなポンポンあれこれ起き、いや……人並み位?」
「そこ悩んだら負けですよーだ!」
≫82二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 19:15:33
『慰問』
「こんにちは。お久しぶりです」
「こんにちは。それにしても随分小さくなったわねえ……」
「気にしてるんでやめてください。あ、こっちは担当ウマ娘のビワハヤヒデです」
「こんにちは、ビワハヤヒデです。今日はよろしくお願いします」
今日、俺とハヤヒデはかつて入院していた病院へ来ていた。診察……ではなく、病院慰問だ。
「トレーナー君、こちらの方とは知り合いなのか?」
「ああ、入院していた時にお世話になった。今日の担当になったのは偶然だけどな」
「私も元気な姿を見れて嬉しいわ。それに、あのビワハヤヒデさんが来てくださって嬉しいわ。きっと子供達も喜ぶわよ」
「入院している子供達に喜んでもらえるなら私も嬉しいです」
こういった慰問は嬉しいものだ。俺も何度か元気づけられた。だから、こういった活動には積極的に参加するようにしている。
「今日の病棟はどちらですか?」
「今日来てもらうのはてんかん専門の病棟。いつ倒れてしまうか分からないから、基本的に付き添いがないと病棟の外に出られない子達なの」
「そうですか……」
外に出られない、自由に出来ない辛さを知っているから暗い気持ちになる。
「今日はあのビワハヤヒデさんが来るって喜んでる子達がたくさんいるのよ。みんな大騒ぎで」
「それなら私も気合を入れないといけませんね。楽しみです」
その後、病棟の説明を受け、病棟に入った。
────
「あーっ!ビワハヤヒデだ!」
「凄い、本物だ!」
入った途端に沢山の子供達が駆け寄ってきた。
「こら、いきなりみんなで来たら困っちゃうでしょ。みんな順番ね」
「ふふ、私は逃げないぞ。順番だ」
俺とハヤヒデは病棟の中を周って次々に挨拶をしていく。子供達は大喜びで、慰問は大盛況だった。
────
83二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 19:16:01
「今日はありがとうねえ。あんなに喜んでるのを見たのは久しぶりだわ」
「ふふ、それは何よりです。それにしても、ああして見ていると普通の子供と変わらないように見えるんですけどね」
「てんかんってのはいつ起こるか分からないからな。それに身体の一部だけ起こる事もあるから、知らない人が見ると分からない事も多いんだ。多分三人目の子、軽い発作起こしてましたよね?」
「流石、良く見てるわね。本当に軽くだけど発作を起こしていたわ」
「そうなのか。全く気づかなかった……あの子達も戦っているんだな」
病気というものは難しい。一見大丈夫なように見えても大丈夫ではない事も多いのだ。
「まあ、そう落ち込むな。それに、俺達が勝てばあの子達も元気づけられる。気合入れて頑張らないとな」
「……ああ、そうだな」
ハヤヒデの顔が少し晴れる。俺も気合を入れないと。
────
帰るために病棟を歩いていると、とある部屋が目に入って足を止めた。
「トレーナー君、どうしたんだ?」
「……あそこはねえ、リハビリ室なのよ。やっぱり気になる?」
「そうですね……うん、変わってないですね」
いくつか機材は更新されているが、ほとんどあの頃から変わっていない。辛い思い出や、歩けるようになった時の思い出、いろんな思いが混じって懐かしいようなそうでないような、複雑な気分になる。
「……やっぱり、ここには思い出が多いです。良い事も、悪い事も」
「そうね。でも、今日の姿を見て安心したわ」
「何がです?」
「ビワハヤヒデさんを心の底から信頼して、一緒に歩けているのね、って。二人で話している時、そんな眼をしているもの。そんな相手がいるなら安心できるわ」
「……なんか照れくさいですね、そう言われると」
「同感だ。でも……悪くはないだろう?」
「わざわざ答える必要あるか?」
うん。そうだ。俺には最高の相棒で、一緒に夢を追いかけるハヤヒデがいる。
「さて、感傷に浸るのは終わりだな。負けない為にもトレセンへ帰ってトレーニングだ」
「ああ、分かった」
「ふふ、元気で良いわね。それじゃ、帰りは気をつけてね」
「はい。今日はありがとうございました。また来ますね」
トレーニングへの気合を入れ直し、俺とハヤヒデは病院を後にした。
≫105二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 21:51:33
「あら、もう終わりかしら」
「はぁ…はぁ…」
「それとも、私に対して気が引ける?」
「そんな…ことは…」
──私の目の前で膝に手をつき、ぜぇぜぇと息を整える少女。チームプロキオンに所属する最近スカウトしたばかりのこの娘は、つい先程私との模擬レースで影を踏むことも出来ずに引き離されたばかりだった。
(まあ、仕方ないでしょうね。スカウトしたてとなれば第一線で競ってはない私相手でも経験とトレーニングの差が大きいもの。これが他のトゥインクル出走組やサトトレなら余裕でしょうし、キタやダイヤなら最早相手にすらならないわ。)
…とはいえ、そこはどうしようもない差であるから気にする所ではない。重要なのは、彼女から『欲』が余り感じられない所だった。
(まあスカウトした時から分かっていたことね。だから…そろそろ始めましょうか)
「そうねぇ、貴女に一ついいことを教えてあげましょう。…何も背負わなければ早く駆けて行けるわ」
「!」
彼女に近づいて身長差から見下ろす形で話しかける。少し前に走ったばかりの芝の上で、心に染み付かせるために。
「貴女はここでは自由なの。誰一人、何一つとして縛るものなんてない。貴女だけの領域、貴女だけの世界。…疼いたでしょう?」
「…ッ!」
「そう…それでいいの、その疼きが貴女を走らせてくれるわ。ここは、その強欲さが許されるのだから。」
「は、い…」
耳元に顔を近づけ、顔を手でなぞる。彼女の反応は上々といった所で、思ったより上手く行きそうだとくすりと笑ってしまう。
勿論この程度ですぐにどうにかなる…だなんて甘い話はない、であるが故に何ヶ月、或いは年単位まで見越してやるのだ。
彼女は環境から来た性格を理由に自分を出さない娘だった。悪い事ではないが、レースではそれがマイナスになる。だから、抑圧された彼女の欲望を引き出す、巻き付いた鎖を外してやるようにして、そのスペックを最大限活かしきれるための手法。
(『俺』ならあんまりやらなかったかもしれないけど、『私』にとっては手段の一つって所かしらね。)
──私は少し笑って、その手を離した。
短文失礼しました
キタトレのやり方の一例、この姿に引っ張られてる側面はない訳でもないし、こいつも強欲なのは否定出来ないので。
気持ちだけではどうにもならないけど、勝ちたいという欲がなければまず始まらないからね、『君と勝ちたい』ですよ。
≫126【執着点/■■点】22/09/12(月) 23:35:37
ーワァァァァ…
歓声が聞こえる、勝者を称える歓声だ。
しかし、それを聞いてるいるのは私の担当であるダイワスカーレットではなく、別のウマ娘であった。
そう、負けたのだ。私達は
契約してまだ数度目、序盤も序盤、しかしそれでも悔しいものは悔しいし、どんな時も一番を目指していた彼女に、黒いものを付けてしまったという不甲斐なさも感じる。
それは、今も横で拳を握りしめている彼女も同じであろう。
「……トレーナー」
「…何だ?」
拳を握りしめ、俯いたままの彼女が話しかけてきた。
「…負けたのね、アタシ」
「そうだな、お前は2着だ」
「……そう」
静かだ、とても静かに悔しさが煮えたぎっている。
そして、あぁ、それはきっと私も同じだろう。体がとても熱い。
「学園に帰ったら、トレーニング増やそうと思うのだけど」
「そうだな、私も付き合うぜ。色は黒いがお前に似た姿だ。自分で試せば質は高められるだろ」
「時間はどうしましょうか」
「削れる部分は削りゃ良いだろ、でも品行方正優等生でとうってからなぁ、私ら」
「そうね、どうしようかしら」
「…あるぜ、削れる部分」
あぁ、私はこれからとても傲慢な事を言ってしまう。
だが彼女は受け入れるだろう。だって、とても恐ろしく愉しそうにワラッテイル。
「これから先の、2位と3位とバックダンサーの振り付け、覚えなくて良いだろ」
「なるほど、それはとっても、いい案ね」
あぁ…どこかが崩れた音がする
≫175二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 11:09:35
「あめ〜」
「雨ですね…」
トレーニングの予定を身体を無闇に冷やす事はないだろう、と言われて撤退してきて、私の部屋。
ちょっぴり物の増えた、私と、トレーナーさんの場所。
「ん〜…カフェ〜…♪」
「はい…♪」
いつものように、トレーナーさんを抱っこして膝の上に乗せる。
「んっ…うりうり…」
「まぁまぁ…ゆっくり…」
トレーナーさんは撫でろ〜、とでも言うみたいに頭をごしごし私に擦り付けてきて。
頭を撫でてあげると、ふにゃふにゃの笑顔に変わる。
自然と、私も笑ってしまう。
トレーナーさんが女の子…ウマ娘になってしばらく経つ。
最初の頃こそ、必死に前のように頑張ろうとしていたけれど今ではすっかり甘えんぼになってしまった。
前のトレーナーさんが恋しくないわけではないけれど、今のトレーナーさんも可愛くて仕方がない。
愛しさをぶつけるみたいに、髪を梳くようにゆっくり頭を撫で続ける…
さぁさぁと、雨音が静かな部屋に響く。
…それと、コポコポというフラスコの音。
「随分見せつけるようにイチャついてくれるじゃないかねぇ!ウチのモルモットくんは会議だなんだと私を置いていってしまったからねぇ!当てつけかいキミたち!」
「うるさい…です…」
「モルくんも直ぐに戻ってくるって…」
フン!紅茶でも入れてくるかねぇ!と鼻を鳴らして話を打ち切られる。
会議といってもほんの小一時間程度のものと言っていましたし、少しの我慢くらい出来ないのでしょうか…
176二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 11:10:15
…いえ、けれど。
抱きしめる腕に力が入ってしまう。
「…? なぁに?」
「…なんでも…ありません…コーヒー、淹れましょうか…」
こうしているのが心地よくて。
こうしている時間が長過ぎて。
私も案外、我慢して居られないかもしれない。
ふにふにと、トレーナーさんの手を触る。
すべすべの小さな手。私を撫でてくれていた頃の面影のない、小さい小さい手。
「…どーしたのー…?」
「…いえ…少し…」
「ん〜…そっか〜…」
そう言ってほのかに微笑む。
ぎゅっと、手を握り返して来る。
指を絡めて強く、深く。
最近のトレーナーさんはずるい。
普段は甘えてくるのに、こうしてたまに察したように甘やかしてくる。
…席を立つ前に、もう少しだけ。
私も、ぎゅっと手を握り返した。
しんしんと、雨音が静かな部屋に響く。
手に感じる体温だけが、今の私の全てだった。
「寂しいねぇ、早く帰ってきておくれよぉ、モルモットくぅん」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part832【TSトレ】
≫50二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 13:51:45
『全力?』
「じゃあちびハヤトレ、頑張ってね」
「おうよ」
サトトレに軽い返事をした後、前を向き集中する。
『READY』
スタートの合図を待たずに足を動かし始める。一歩ずつ動かし方を間違えないように、正確にリズムを刻む。ウマ娘になって上がった身体能力をフルに使って先に進む。
途中でリズムを狂わされないように体内時計と視覚を頼りにし、ウマ娘になっても変わらず身体に染み付いた動作を繰り返す。
しかし全力で動いていると意図しない動きをしてしまう事もある。バランスを崩して命が削れる音がするが、なんとか立て直す。
後10秒。心臓が高鳴る。加速に合わせて足を動かし続ける。
そして、最後まで踏み切った。
『STAGE CLEARED』
「よっしゃ、紫芋鬼LIFE4クリア!」
「凄いよハヤトレ!上手いとは聞いてたけど、ここまで出来るなんて……」
俺とサトトレは初めて一緒にゲーセンへ来て、音ゲーを遊んでいた。やっぱり他人と一緒に遊ぶのは楽しい。
「まあ、昔は結構D○Rやってたからな。コツを思い出してウマ娘の身体能力があればこんなもんよ」
ゲーセンの中で二人盛り上がる。俺とサトトレはその後、定期的に二人でゲーセンへ行くようになった。
≫63二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 15:44:14
いかん、行数がお化けなので4レスくらい跨ぎます
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ある日の話。
トレーナーさんは取ってこないといけない書類があるとの事で一足先に部屋に着いた私。
少しおやつでも食べたいな、なんて思って冷蔵庫を開けた。
すると、プリンが一つ。
入れた覚えは無いから、トレーナーさんのだろうか。
「■■■■■■■■■」
「えっ…本当…?」
「■■■■■■■■■」
おともだちが言うにはトレーナーさんが私に買ってきてくれたものらしい。
少し強めに聞いてみても本当だ、と言うので信じて食べた。
「たーだいまー!!」
「おかえり…なさい…」
少し後に、トレーナーさんがウキウキで部屋に入ってきた。
良い事でもあったんだろうか?
少し鼻歌交じりに冷蔵庫を開けて…
「あーーーーっ!!!!プリンがなーい!!!!」
あぁ…やっぱり…
横を見れば楽しそうに笑うおともだち。
これは…誠心誠意謝らなくては…
64二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 15:45:38
「すみません…トレーナーさん…私が食べてしまって…」
「えーっ!!楽しみにしてたのにー!!」
がーん!と大きくショックを受けた表情をして。
気の所為でなければ僅かに紅い瞳が潤んでいる。
「代わり…買ってきますので…」
「でも今ないよぅ!今食べたかったんだよプリン!?今ここには無いプリン!プリン!!」
相当楽しみにしていたようで中々に苛烈に怒っている。
「怒ってますからね!許してあげないよ!!」
ぷりぷりと怒りながら、頬を膨らませるトレーナーさん。
その様が可愛らしくて。
つい、両手でほっぺをむにゅっとしてしまった。
「ぷしゅー…」
口から空気の抜ける音。そして
「カフェー!!!!!」
キシャーッ!と猫が威嚇する時みたいに怒るトレーナーさん。
しまった、火に油を注いでしまった。
「もー怒った!!ふーんだ」
65二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 15:46:40
ぷいっ、とそっぽを向いてしまう。
視線を合わせようとしても反対を向いてしまう。
やってしまった…これはほとぼりが冷めるまで待つことにしよう…
一先ず、代わりのものは買ってきておこう…
そして、少し時間が経った。
私はトレーナーさんの代わりのプリンを買いに、少し遠めのスイーツ店まで行ってきていた。
部屋に戻ると、相変わらずムスッとしているトレーナーさん。
「すみません…でした、トレーナーさん…」
「ふーん」
また少しそっぽを向く。
「あの…代わり、買ってきましたので…」
「ふーんだ…」
むすっとしたままだ。
これは根が深いかもしれない…
「…どこの?」
「〇〇堂の…」
「…たべる」
案外そうでもないかもしれない。
トレーナーさんの隣に座る。
普段よりちょっと遠い距離。
買ってきたプリンをテーブルの上に置くと、トレーナーさんはゆっくりとそれを手に取った。
いただきます、と微かな声で言うと小さな口でゆっくりと食べ始める。
66二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 15:47:19
「…おいしい」
そう言うと、少し早めのペースで口に運んでいく。
やがて容器が空になると、ごちそうさま。とまた微かな声で。
少しの、沈黙。
トレーナーさんから口を開く。
「…反省した?」
「はい…たっぷりと…」
「…もうしない?」
「はい…約束、です…」
「…じゃあ、ん。」
そういって、両手を広げてこちらを向いて。
それを、私はぎゅっと抱きしめる。
背中に腕が回るのを感じる。
普段より、少し強い力で抱擁を続ける。
私たちがそこから普段の調子に戻るまでは、そうはかからなかった。
おともだちは、たっぷりと説教した。
≫119二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 19:54:38
『Damaged Pressure Bulkhead』
「さて、と」
俺は珍しくきちんとしたレース用のシューズを履き、ターフに立つ。
「全力で走って本当に大丈夫なのか?」
ハヤヒデが若干の心配を含んで話しかけてくる。
「大丈夫じゃ無いかもな。でもある程度は把握しておきたい。今ここで小さい怪我をするより、土壇場で大きい怪我をする事の方が怖い」
リスクを減らしておくに越したことはない。確かにこの身体で全力疾走は何が起こるか分からないが、一切把握出来ないよりかは遥かにマシだ。
「それに、あの時のスピードを制御出来るかどうかも試しておきたい。多分今でもスイッチのオンオフは出来るけど、出力の量を調節出来るか試したい」
「ソラヒデのウマソウルの力をある程度溜められれば、という事か」
「そうだ。要はスタミナタンクとして使うって事だな。幸い俺には元々走ってたアドバンテージがある。フォームは人間の走りをウマ娘用に無理やり合わせた奴だから完成度はお察しだけど、無いよりマシ」
もしこれが出来れば草レースくらいは成立する。人間の競走とは違うレース勘を訓練出来るのは大きい。
「ただ、これはあくまでウマソウルと俺の力が分離してたら、って話だ。もし俺の力自体がソラヒデのウマソウルと合算されてるなら無理だ」
「なるほど、それを確かめたいという事か」
「という訳で、万が一の時はよろしくな」
「分かった。気をつけるんだぞ」
「了解!ソラヒデも頼むな」
『うん!』
俺はスタート位置に立って合図を待つ。
「よーい……ドン!」
下半身に力を込め地面を蹴り出す。出来るだけ足を地面に付ける時間を短くしつつ、瞬間的に力を込める。これをウマソウルの力を借りずに最初から使えるのは大きなアドバンテージだ。だんだんスタミナが切れてきて、スピードが落ちかける。ここからソラヒデと力を合わせる。
「よし、ソラヒデ頼む。いいか、ゆっくりだぞ」
『分かった!ゆっくり……ゆっくり……』
力がみなぎってくる。だが以前とは違い、きちんと力の制御が出来る。闇雲に出力を上げるのではなくスピードを維持するギリギリの出力を続ける。見立て通り、ウマソウルの力を使えば身体能力を上げられる。仕組みは分からないが、考えるのは後にする。
120二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 19:54:52
「どうだ、まだ行けそうか?」
『うん、まだ大丈夫そう』
下手をすると事故りかねないので、リソース管理をしっかりとしながら。もう既に以前全力で走った距離の倍以上は走っている。そして、ある事に気づいた。
「……これ、俺の力もまだ残ってるな」
ソラヒデ側の力が別で管理されているなら、今感じている力は俺の残っている力のはずだ。
「なあソラヒデ、そろそろ切れそうか?」
『うん、そろそろ怪しいかも』
「じゃあ、ちょっと試したい事があるんだ。良いか、少ししたら俺が合図をする。そしたら全力を注ぎ込んでくれ。それと同時に俺も力を込める。二人の力を合わせた時どうなるか試したい」
『分かった!やってみる!』
元気な返事が帰ってきた。合図の前に、俺は一度深呼吸した。
「じゃあ行くぞ。三……ニ……一……ゴー!」
『うおー!』
子供らしく叫ぶソラヒデからの力を感じながら、俺も全力を注ぎ込む。前回のようにならないよう全神経を尖らせる。
「凄いな……」
今までのどこにこんな力が残っていたんだと思う程に加速した。一瞬続けるか迷うが、今回の趣旨を考え限界まで走る事にした。
『早くて気持ち良い!』
ソラヒデが無邪気に楽しんでいる。微笑ましいが、今はそっちを気にしている余裕はない。このスピードをなんとか制御して物にしたい。前はこの高出力を制御出来なかった。だが、今回は違う。だんだんと加速が止まりスピードの維持に入った。きちんと制御が出来ている。
「よし……よし!」
俺は今、この身体の全ての力を出し切れている。しかしそれがマズかった。
『グギッ』
足から嫌な音がした。ああ、やってしまった。足に痛みが走る。やったのは右足か……なるべく右足を地面につけないように左足に重心を移しスピードを落とす。
『お兄ちゃん大丈夫!?』
「今出てきたら痛み感じるから待ってろ。疲れたなら寝てていいぞ。また後で話そう」
『うん……分かった、お大事にね!』
ソラヒデとの会話を終えると、ちょうど救急箱を持ったハヤヒデが到着した。
「おい、トレーナー君?大丈夫か?」
「すまん、やっちまった。多分捻挫だと思う」
「全く、無茶をしないでくれ……」
ハヤヒデに心配させてしまって若干心が痛む。だがそんなリスクは承知でやっていたので自業自得だ。
121二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 19:55:09
「また暴走したのか?」
「いや、今回はどっちかというと制御出来すぎた。極限まで出力を上げようとして身体が耐えられなかったんだな。実際、最後まで身体を全て制御しきれている感覚があった。後、ウマソウルの力の使い方の見立ては正しかったよ、合わせて使えるのは思わぬ収穫だったけどな」
応急処置をしているハヤヒデが安堵と呆れが混じった表情をしている。
「……全く、怪我の処置をされながら分析か。トレーナー君の走りへの執着は並大抵の物じゃないな」
「そう言うけどな、ハヤヒデだって走ってる途中に怪我をしてもその時の知見を無駄にはしないだろ?似た者同士なんだよ」
「はは、確かにそうだな。似た者同士だ」
二人で笑いながら応急処置を終える。
「さあトレーナー君。保健室まで行くぞ。抱きかかえて行こう」
「すまん、頼む」
この姿を目撃されたらまた弄られそうだが、今回ばかりは自業自得なので仕方ないので大人しく運ばれる。そんな事より、今回の結果を早く分析したい。後でハヤヒデに撮ってもらったビデオを分析しなければ。
……後日、実はハヤヒデと俺が付き合ってるんじゃないか?という噂が流れた。いや、おもちゃにされるだけならともかくそれはマズいだろ、という事で誤解を解くのが大変だった。本当にこの苦労はいつまで続くんだ……締まらねえ……
≫128作品bot22/09/13(火) 20:26:38
「…本当に変わったな」
「どういう意味よ」
「色々とな。まぁ根っこは変わってねぇが」
『頼る』のことだろう。見た目だけではないあたしの色々、人生設計図まで変えられてしまった。そう考えていると、シリウスはあたしの長い耳につけている彼女と同じデザインの耳飾りに触れた。
「これは大丈夫そうだな」
「耳飾りだもの。平気よ」
「なぞってもか?」
シリウスは耳飾りの上で指を滑らせた。感覚がなんとなく伝わるが、それに対して身体が敏感に反応することはないようだ。耳飾り越しに触る分には問題なさそうだと安心していると、シリウスは口を開いた。
「次はここだ」
声とともに指はあたしの耳の先端へと優しく触れた。先端には耳飾りはなく、あたしの耳そのものだ。直に触れられた瞬間、あたしの思考を麻痺させる甘く痺れるような感覚が耳からつたわる。
「あっ、んっ……っ」
思わず漏れた声に戸惑いつつも、手で口元を抑えた。恥ずかしさのあまり顔に熱が集まる。なんて恥ずかしいことだろうか。もうやめて欲しいのか、もっと触られることを求めているのか、それとも別の何かか、あたしは彼女の顔を見た。
「もうダメか?」
「そうじゃ、ないわよ…っ」
「じゃあ、なんだ?」
シリウスはあたしの耳から手を離し、三つ編みを弄り始める。これはワザとだ。あたしの性格をわかったうえでやっている。
「……す、好きにすれば」
「ああ、最初からそのつもりだぜ」
「知って……ひゃぁっ」
あたしの耳に彼女の指が触れる。また出る声を抑えようと口元へ手を伸ばそうとするが、耳に触れていない彼女の手がそれを阻んだ。
「今は2人きりだろ?」
シニカルな笑みを浮かべ、あたしを見下ろす彼女を見て覚悟をした。今日1日はずっとシリウスに耳を触られ続け、この情けない声を彼女に聞かせないといけないらしい。この敏感な身体を恨む。彼女の気が済むまで、ただただ、あたしは耳から感じる彼女の甘い刺激に耐えた。
≫172二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 21:32:45
『やみおち』
「闇落ちしたわー」
「エエーッ」
「友情パワーでよみがえってくださいましー!」
「ならば私を倒して見せよー」
「望むところですわ!」
「「デュエッ!」」
「ほい、ディンギルスで墓地送り。そのままダイレクトあざっしたー」
「ぎえーっ!」
「マクトレが負けたー! 次は俺の番だ!」
「……闇落ちって何のコントだと思ったらデッキ変えただけか」
「いやだってさぁ、強いし……」
「まあ強いデッキを使うのもたまにはいいがな」
「ほいアクセスブッパあざっす」
「ぎょえーっ!」
「……じゃ、フクトレもやる?」
「ふん、たまには本気のデッキを使わせてもらおうか」
「「デュエッ!」」
「あっ先手虚無空間はやめるんだ禁止になっただろ」
「フリー部屋アンリミテッドだからな」
「魔法除去あんまり入れてないのが致命的だわ(パリンパリン)」
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part833【TSトレ】
≫19二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 22:27:59
「…よっと、これで大丈夫かな。どう、落ちそうとかない白カフェトレ?」
「ありがとう…」
「ハヤトレ…いえ、ソラヒデさんも手を離さないようにしてくださいね」
「分かった!」
──おぶわれる二人と、背負う二人。ちっちゃいもの倶楽部所属、サトトレとブルトレは同じく倶楽部に所属するちびハヤトレ(今はソラヒデ)と白カフェトレを小さな背に背負い、下がりつつある太陽を背にトレセン近くの商店街をゆっくりと歩いていた。
「う〜ん大分遠出だったかな、この距離は流石に歩いて…走っていくとウマ娘の体でも疲れるからね」
「私達は兎も角、白カフェトレさんは単純に慣れてなさそうですし…」
「後、ソラヒデが前に出てるのはハヤトレを休ませるためだったね」
「うん、お兄ちゃんが最近ちょっと疲れてそうだったから」
まあつまりここにいるのはロリボディの中身精神年齢大人にして子供という訳である。勿論、全員の担当ウマ娘に出掛ける事は連絡してるので特に問題はないし実際何も危ない事はなかった。そして半日程のお出かけは良かったようで
「今日はとっても楽しかったよ。でも…」
「その体も、少ししたら慣れてくると思いますよ。例え色々と変わっても白カフェトレさんは白カフェトレさんですし」
「ソラヒデ、ちびハヤトレなら大丈夫だと思うけど、限界超えて追い込んで壊れそうだと感じたらちゃんと止めてあげてね」
「サトトレお兄ちゃんも、だね!」
ちょっと楽しそうで、でもどこか不安気な白カフェトレに安心出来るように言うブルトレ。ソラヒデに忠告するも、逆にソラヒデからも言われて困るサトトレ。
「あ、あの店まだやってるんだ」
「…たい焼き、買ってきましょうか」
──背負われた二人が両手にたい焼きを持ち、時折食べたり背負う二人に食べさせたりしていたとかなんとか。
短文失礼しました
ちっとれで末女二人と次女三女な二人での一幕。ソラヒデと白カフェは元は背負う人が逆の予定だったけど、身長差がね…
そして突っ込まれるサトトレ、こいつも高代謝による再生能力生かして限界攻めてるのでまあ妥当。無理するタイプだし。
白カフェさんはカフェ以外との普段の会話を推測して書きましたが…解釈違いなら遠慮なく言ってください。腹を切ります。
≫81二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:03:28
さぁ投下
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「えーっと…あ、これこれ…」
トレーナー室で必要な書類を見つけたボクは部屋に急いでいた。
カフェを待たせているし、いっぱいカフェに甘えないと!
いや、そうじゃなくて。
とにかく急がなくては…
少し小走り気味に部屋に向かっていたところ…
「静止ッ!走っては危険だッ!」
呼び止められてしまった。
この特徴的なしゃべり方は理事長かな?
「しっかりと落ち着く事だ!」
う、その通りだ…
ここはしっかりと反省をして
82二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:03:50
「職業体験にはしゃいでいるのは分かるが、体験とはいえ仕事であるのだから」
「りじぢょお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!!
ボクは!!!カフェトレで!!!理事長より年上です!!!!」
こ、こいつっ…!今ボクの事を職業体験中の子供だとッ…!!
「ムッ!?た、確かによく見れば…」
「一目見て気付けバカ理事長!ばーか!あほー!」
「き、驚愕ッ…い、今私の事をバカと言ったか!?」
「バカにバカって言って何が悪いんですかバカ〜」
「り、理事長も務める私にバカだとっ…つ、つまり私の部下のキミはバカ以下という事になるな!このバカ!」
「今理事長なの関係ありませーん、はいアホー」
「なんだとこのバカもの!」
「うっさいばーか!」
ぎゃいぎゃいぎゃい。
「…止めた方が、良いですよねぇ…」
二人の子供っぽい言い争いが最近絶えない。
いちいち対応に追われるのが面倒なような。
まぁ、理事長のいいガス抜きになっているなら良いか、と止めに入るたずなであった。
≫85白黒22/09/14(水) 05:20:33
「白さん、居ますか?」
「あ、くろ〜!」
「はーい、黒ですよー」
「カフェたちは〜?」
「タバコさん達とトレーニング中です。僕はここでデスクワークですよ」
「ん〜……そっかぁ」
「くろ、くろ」
「はいはい、何でしょうか?」
「膝、膝乗せて」
「膝ですね、どうぞ」
「んしょ……」
「……なんか冷たいね?」
「体温低めなんですよね、僕」
「でもまぁ、おーるおっけーってかんじ!」
「おーる?……まぁ満足して頂けてるなら良いですかね」
≫112二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 13:05:58
『大きな夢と小さな相棒』
「うん、中々良い仕上がりじゃないか?」
「ああ、かなり状態が良い」
トレーニングを終えた私は今日の結果について話しながらトレーナー室へ向かう。
「負荷の割に疲れも溜まっていない。これもトレーナー君のメニューのお陰だな」
「そりゃお褒めに預かり光栄です。ま、実際にやってるのはハヤヒデだからな、俺は大した事は出来ないんだからこれくらいはやらないとな」
「そう謙遜するな。私は君がトレーナーで良かったと思っているぞ」
私のトレーナーはウマ娘化してから小さな子供みたいになりトレセンでもマスコットのように扱われていたりするが、トレーニングの理論や健康管理に長けた優秀な人物であることは私が一番良く知っている。私の理論と一致するトレーナーに出会えたのは幸運という他ない。
「さて、トレーニング室に戻ってビデオの分析でもするか」
「ああ、そうだな」
二人で帰り道を歩いていると、私達について話しているウマ娘が居た。どうやらこちらには気づいていないようだ。
113二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 13:06:13
「ねえ、ハヤヒデさんのトレーナーの事どう思う?」
「ああ、あのちっちゃい子でしょ?ちゃんとしたトレーニングが出来るとは思えないんだけど……」
「ハヤヒデさんは優秀だから一人でなんとか出来ちゃうんだね。あのトレーナーも最初から一人でなんとか出来るウマ娘を担当するなんてずる賢いよね」
そんな会話が聞こえた。
「おい、お前た……」
「待て」
声を掛けようとした私をトレーナー君が静止した。こちらに気づいたのか、そのウマ娘達は居なくなっていた。
「どうして止めたんだ!?あんな好き勝手言われて悔しくないのか!?」
するとトレーナー君はさも当然のように答えた。
「ああ、少しも悔しくないね」
「どうしてっ……!」
私には分からなかった。どうしてバカにされたのに悔しくないのか。少しの時が流れた後、トレーナー君は答えた。
「……ハヤヒデ、良く聞いてくれ。俺はな、お前に夢を見たんだ。情熱を失っていた俺が、こいつを最高のウマ娘にしてやりたい、そんな夢を。だからな、俺にとってはトレーナーが優秀かそうじゃないかなんて関係ないんだ。とにかくハヤヒデが最高のウマ娘になってくれれば」
「それでも、ハヤヒデが俺をバカにされて悔しいと思うなら、お前のレースで証明してくれ。俺が間違いなく最高のトレーナーである事を。お前に夢を見た俺は間違ってなかった事を」
……そこには、私に対する全幅の信頼があった。その目は、私が負けるとは微塵も思っていないと物語っている。
「……ありがとう。私は負けないよ、トレーナー君。最高のウマ娘になってみせる」
私は、トレーナー君の為にも心を新たにした。
「そうこなくっちゃな。それじゃ、さっさと戻って分析するぞ」
「ああ」
「そうだ、偶には家に来いよ。夕飯作ってやるぞ」
「良いのか?」
「ああ、大丈夫だ。疲労回復に効くバランスで作ろうと思ってたからな」
「それはありがたいな。お邪魔させてもらうよ」
そして私はトレーナー君と分析を終えた後、手作りの夕飯を食べた。バランスの取れた、それでいて美味しい料理。これもトレーナー君の努力の賜物だ。
トレーナー君。君は自分の事を大した事は無いというが、やはり私にとっては偉大で優秀なトレーナーだよ。子供のような小さい身体で夕飯を頬張る姿を見ながら、そんな事を思っていた。
≫129二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 17:20:35
ひとくち白カフェ劇場
白カフェ「もっとボクのことをみんな大人として見るべきだよ」
カフェ「そうですね・・・ ナデナデ」
白カフェ「カフェもそー思うよねぇ・・・えっへへ・・・」
タキオン「うーむ、少し糖分が・・・おっと、いいところに饅頭があるじゃないか、もらっていくよ ヒョイパク」
白カフェ「あ゙ー゙っ゙!゙!゙!゙ざい゙ご゙に゙の゙ごじでだぼ゙ぐの゙お゙ま゙ん゙じ゙ゅ゙ゔー゙-゙っ゙!゙!゙!゙」
タキオン「おおっと・・・あー、ほら、大人だろう?ここは流して」
白カフェ「しるかー----っ!!!!!!!!!! ビリビリ」
タキオン「ああっやめたまえ!!その資料は!!!!」
カフェ「代わり、買ってきておきましょうか・・・」
≫138二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 19:12:21
『白カフェとちびハヤの夕食』
俺が一人トレーナー室で作業をしていると突然ドアが開き、小さい子供みたいな白カフェトレが入ってきた。お前の方が小さいだろは禁句。
「ちびハヤトレー!仕事終わったー?」
「終わってない。何しに来たんだ?」
「こんばんは。トレーナーさんが夕飯を一緒に食べたいと」
後から入ってきたカフェが補足説明をしてくれた。
「まあ大方俺というよりソラヒデ目的だろ?」
「なんで分かったの?」
「普段の仲の良さ見りゃ分かるわ」
「ハヤトレさんは裏に引っ込んでいても何をやっているか見れるんでしたっけ」
俺は不思議そうにしているカフェの疑問に答える。
「寝てなきゃね。今はソラヒデ寝てるから代わるのは無理」
「えー……残念……」
明らかにしょぼーんとしているカフェトレ。全く仕方ないな……
「まあ、俺で良ければ夕飯付き合うぞ」
「え、ほんと?」
「本当も本当。この仕事片付けるまでそこで待ってろ」
「やったー!」
素直に喜んでる姿を見てこれじゃソラヒデと変わらないぞ……と思いつつ仕事を進め、終わらせる。
「よし、仕事は終わった。どっかで外食するか、奢るぞ」
「良いんですか……?」
「大丈夫、お金ならそれなりにあるから。学生は気にすんな」
「ありがとうございます」
「奢りありがとー!」
「お前はもうちょっと気にしろ!」
自由すぎるカフェトレに突っ込みつつ、俺達は三人で夕食を食べに行った。
≫172二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 20:59:29
ひとくち白カフェ劇場 「ゲーム借りたよ!」
白カフェ「カフェカフェ!モルくんがゲーム貸してくれたからやるよ!! ロロナノアトリエェェェ」
カフェ「はい・・・見ていますので・・・そう慌てずに・・・」
白カフェ「色々作れるんだって、何作ろっかな~」
~数時間後~
白カフェ「たーるっ」
カフェ「・・・」
白カフェ「たるったる~」
カフェ「・・・たる~」
白カフェ「うに~~~~~!!!!」
二人の間で少しの間流行った
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part834【TSトレ】
≫52二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:24:39
「きたわね…」
遥か地平線の向こうから、陽炎に僅かに乗ってこちらへと押し寄せてくる大群が見える。
それは幾万もの海老フライ。各々が気色悪いほどに規律の取れた大軍となってこちらへと向かってくる。
対するこちらは100人ほどもない。それをいかに使い、いかに犠牲を最小限にするかによって勝敗の天秤は傾きを変えてくる。
油を撒き散らし、こちらを食い散らさんと突撃してくるエビフライへと、ひとりのウマ娘、キタトレが声を大きくはありあげる。
「第一陣特殊弾幕配備、用意!」
キタトレの号令に合わせ、イクトレ謹製50口径重機関銃群が鈍く太陽光を反射する。
「用意…‥撃てぇ!」
それを操り、硝煙と弾幕を撒き散らすちっトレ。その体躯に不釣り合いな重機関銃をいとも容易く操るはさすがウマ娘と行ったところか。
発射される鉛玉は敵の装甲を容易く貫き、ぼとぼとと剥げたアスファルトに油のシミを作り出していく。
「第二陣はU作戦の展開用意。弾幕斉射の終了と同時に切り込みを開始。合図は私が出す」
その号令で腰にMP5を装着して、各々の武器を手に取るは初代メイクデビュー組。大ぶりの刀を鞘へと収めるスズトレ、小ぶりなダガー二組を振るサトトレ、脚にスパイクを嵌めこむデジトレ、大きな特殊指向性音響兵器を装備するシチトレ、侘助を確かめるように太陽に透かすドベトレ、そして大ぶりなグローブをガツガツとぶつけるファルトレ。
「乙二作戦用意…初め!」
号令と共に一斉に左右に拡散するメイクデビュー組。右翼は敵の正面を乱し、そこに左翼をぶち込む作戦だ。
まずは右のスズトレが速度に乗せて一斉に敵陣を薙ぎ払う。そこへ小柄な体を滑り込ませ、内部から静かに一匹一匹を葬るサトトレ。
そこにグローブでファルトレが思いっきり地面に打撃を打ち込み、海老フライの足元を乱すとシチトレの音に乗って加速したデジトレがスパイクに海老フライを刺していく。
「っと、危ねえ」
「ありがとう、ドベトレ」
危うくサトトレの背後を取られそうになったところに侘助の一撃。2人はコンビとして動いている。侘助で動きを鈍くし、サトトレが的確に弱点をつぶす。息のぴったりなツーマンセルだ。
「ここまでは順調ね…」
指令であるキタトレは、背後の作戦立案班のテントへ足を向ける。その間の敵の確認をイクトレに一任しておく。
55二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:25:18
テント内にはロブトレとバクトレ、パチタマとシャカトレがいた。
「状況は?」
「上手くいきすぎて怖いくらいです」とバクトレ。
「しかし向こうにはこちら側から強奪された兵器もいくつか渡っているはずです。油断はすべきでないかと」とロブトレ。
「その場合…予想される被害はこのくらいになります」そうシャカトレがデータを渡してくる。
「…厳しいわね」
「いいや、その心配はない」とパチが言う。
「どうして?」
「今、猫の空挺部隊からの連絡があった。小と黒が潜入に成功。破壊工作によって敵兵器は沈黙」
「グッジョブよ。……了解。引き続きよろしくね」
労いの言葉を最後に外に出る。少しづつではあるが押されはじめていた。
「…地上車両班。スタンバイは?」
「あと7分だけ持たせてください。最終調整がまだです」とシビトレの声が聞こえる。
「6分で終わらせて」と無線を切る。
一方車両庫では…
「中々無茶を言いますね〜」とサスを調節しながらグラトレが言う。
「仕方ありません。グラトレさん、ステアリングの方は」「この後です〜」
「本当に無理を言いますね…キタトレさんは」オイルに塗れた手で頬の汗を拭うシビトレ。
「5分で終わらせましょう」そう言ってレンチを握り直すのだった。
「…戦局が押され始めたわね」
僅かではあるが、戦線が後退し始めている。
「些か早いけれど…しかた無いわね。イクトレ、カタパルトの方は」
『👍』
「了解。聞いた?202、オベトレ。射出用意は?」
「完璧っす。ただあいかわらずちょいと乱雑すぎないっすかね」
「まあまあ。そんなに言ってももうどうにもならないわ。一発派手にぶちかましましょう」
迫撃砲のような中からカプセルに入った202とオベトレ、加えて幾つかの補給用のカプセルも同時に空に煙の弧を描いて戦場へとんでいく
56二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:25:49
「!!この音は…皆一時後退!!」
スズトレが声を張り上げて叫ぶとメイクデビュー組はさっと後退を始める。空からは補給用のカプセルが戦線より後ろに落ち、もう二つが敵のど真ん中へと落ちていく。
カパッと上空でカプセルが割れ、202とオベトレが一直線に落ちてきたと思いきや、綺麗なヒーロー着地を決める。
「ふう…結構いるっすね」
「そうね……皆は一旦戦線離脱して!ここは私達で止めとくわ」
202はモンスターでも狩るような大剣を、オベトレは超大ぶりな鎌を担ぐ。
「ソウ●イーターみたいっすね」
「攻撃こそ絶対的な防御…私の好きな言葉よ」
「そうっすね。でも特攻はダメっすよ?」
「もちろん」
202が地を砕き、それに乱されたところをオベトレが一気に刈り取っていく。
パワーとスタミナに優れた2人が戦線を維持、じりじりと押し戻している中、基地では第3陣の準備が始まっていた。
「チーム7+1は?」
「準備オーケーです」
戦斧を担ぐタイトレ、杖を持ったテイトレ、牙をかちかちと確かめるルドトレ、包丁をくるくる回すボノトレ。今はまだ車庫にいるグラトレ、レーザー銃を持ったフクトレに、徹甲をはめたブラトレ。そしてフェンシングのスピアを持ったフラトレがスタンバイしていた。
「おそらくこれが今日の最後です。好運を祈ります」
「おう!まかせておきな!」
タイトレがその豊満な胸を揺らして返事をすると、車庫から泥だらけになったRが出てくる。
「皆さん〜改修が終わりました〜」
「荷台に乗り込んでください」
その魔改造Rの後ろには牽引された荷台が取り付けられ、そこに油に濡れたグラトレが正座している。
砂の多く乗った運転席にはシビトレが乗っかり、NO2Sの調整をしている。
リアシートは取っ払われNO2Sのボトルと大量の銃火器が載っている。
57二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:26:18
「捕まっていてください…よっっ!」
速度を上げていき、戦線をぶち破って海老フライを跳ね飛ばしていく。
「ハヤイハヤイハヤイ!!!」
「剛性たっぷりのボディはびくともしない…勝負はここから…!」
フロントガードを海老フライにぶつけては4WDでがっちりと曲がっていくR。やはり不敗神話と言っても差し支えないだろう。きちんとアンダーも出さず意思通りに曲がってくれる。
「皆さん降りてください。オベトレさんと202さんを回収して後退しますから、それまでは防衛をお願いします」
キビキビとそれを言い、全員が降りたのを確認すると再び土煙を上げて海老フライを鬼神の如く薙ぎ払い続ける2人へと向かっていく。
「オルァ!お客さまだぞ!!」タイトレが早々に海老フライに戦斧をぶち込む。衣の砕ける感触と共にボウリングのように後ろの海老フライも転がっていく。
「っしゃあ!ストライク!」
「そんなにはしゃいだら前みたいにスタミナ切らすぞ。っと」
レーザーで海老フライを焦がしていくフクトレの前ではテイトレが杖で海老フライに風穴を開けていく。
ルドトレは敵がフラフラになったところに牙で噛みちぎってはぺっと吐いてを繰り返す。ボノトレは海老フライを細切れにしてはデカいボウルにぶちこんでいく。
すぱすぱと薙刀で海老フライを薙ぎ払い続けるグラトレに、地面を砕いて足場を崩すブラトレ。
フラトレも3、4匹を連続で刺してはボウルに入れてを繰り返す。
「202さん、オベトレさん、帰投の時間です」
「了解っす」
「ありがたいわね…っと」
最後に大きく払ってまとめて広範囲をぶっ飛ばすと荷台に乗る。
Rが遠ざかっていくのを確認して最終兵器を顕現させる。
58二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:26:49
「カモン……カムちゃん!!」
カプセルから大百足を呼び寄せる。さながらカプセル怪獣だ。
「シャアア!!」
大ぶりな顎から火花を散らしながら、轟音を轟かせて地を這う。
最後に二十匹ほど砕いてもらうと、あたりは一気に静まった。
「今日は終了…か」
「カムちゃんどう?美味しかったか?」
「シャアアーーーー!!」
「ならよかったです〜」
戻ってきたRに全員で乗り込んで基地へと戻っていく。……はずだった。
「…ッ!Emergency!!」
オベトレの叫びと同時に、地面へクレバスのようなヒビが出現する。
見るとその奥には蠢く影があった。
「まさか…シビトレさん!飛ばして!」
「捕まっててください…ねっ!!」
グラトレが叫ぶと、ガオンとエンジンが唸り、圧倒的なトラクションを地面に伝える。
「おいおい…ウッソだろ…」
そこに現れたのはギガントエビフライ。先日取り逃がした個体だ。コイツのせいで3人ほど戦闘不能に追い込まれた。記憶に新しいそれは、まさしく地獄絵図だ。
「どう…すんだよ」
ブラトレが絶望の表情を映す。もうだめ、おしまい。
そう思った瞬間だった。
59二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:27:07
「まったく、年寄りには堪えるのう」
「本当じゃよ。まあ、良い運動なのじゃ」
スパン。まるで豆腐を切るみたいにエビフライが真っ二つに切断される。陽光を鈍く反射する燻銀の仕込み杖に目を向けると、黒髪乙女のウマ娘。じじぴことヘリトレだ。
それに続いてギムトレが地面で弾みをつけ、体を新体操のように捻って回転切りを繰り出す。さながらモンハンのようにエビの身体中を細かく切り刻み、最後の一閃と同時にブロック状に崩壊する。
その道具は、千枚通しだった。
「ほれ、早く片すのじゃぞじしさん。出番のないワシらが働かんと若い衆に良い迷惑じゃ」
「ホッホッホ。老体に鞭打って頑張るかの」
こうして、エビフライ侵攻は食い止められるのだった。
つづけ
9月といえばエビフライですよね。彼らは遥か空の星よりひどく輝いて見えるこの地球へ震えながらこの光を追いかけてきますから。
いつも思うのですが彼らのその知的なフォルムに、何か心の最奥部へと語りかけてくる味、相棒であるタルタルのそのマリアージュは露ほどの疑いのイメージさえ湧き上がりません。
酔って私は二酸化珪素を織り込んだカーボンファイバーの全身網タイツをテイトレにきてもらうことを決定しました。
≫94二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 00:58:52
この時間帯なら許される事を願って()
『If.Teenagerちびハヤ』
ある日、朝起きると身体がウマ娘になっていた。はて、昨日までは男でハヤヒデのトレーナーだったんだが。だが、身長などに違和感はない。まあ、元々小さかったからウマ娘らしいのは変わらないんだが。鏡を覗き込むと、耳が生えて髪が芦毛になり、若干女の子っぽい顔になった事以外は大して変わらなかった。ちょっとボーイッシュな顔付き。
とりあえず下着などが無いのでハヤヒデを呼び、来るまでの間に身体の調子を確かめる。軽く動かした限りでは全く違和感無く動く。まるで元からこの身体だったみたいだ。それだけではなく全身しなやかでバネのようになっている、これはウマ娘の力だろうか。身体の馴染みが良いらしく、耳と尻尾もある程度は思うように動かせる。そして──怪我をした足が、痛み無くもう一度動くようになっていた。
ハヤヒデが来たとき全身を曲げて色んな事を確認しながら耳をぴょこぴょこさせたり尻尾を振り回したりしていたので怪訝がられたが、そんな事はどうでも良い。早く走りたい。俺は悪いと思いつつもハヤヒデを急かして急いで下着や服を用意した。正直恥ずかしいが、そんな事を言っている場合ではない。一通りの準備を終えてトレセンから靴を借りターフへ向かう。
「おい、トレーナー君。本当に走って大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。この感覚なら間違いなく行ける。この全身の力を余すことなく使える自信がある」
「まあ、トレーナー君の言うことだから信用するが……もし何かあったらすぐに止めてくれ」
「分かってるって」
俺は適当に流して、スタート位置へ着く。
「よーい……ドン!」
スタートと同時に足を蹴り出す。それだけで分かった。怪我が治っている。ウマ娘として走れている。
どんどん速度を上げる。タイムは測っていないが、並のウマ娘とやったなら勝てる自信があるくらいのスピードは出ている。そこから更に加速。
95二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 00:59:22
ウマ娘に必要なフォームも勘で掴み取り、即興で陸上フォームをアレンジする。すると身体の加速がもう一段階上がった。
行ける。まだまだ。走るのが楽しい。そう感じ始めていると、身体の底から湧き上がってくる力を感じた。
なるほど、これが噂に聞くウマソウルとかいう奴か。なんとなくで力を把握し、力を借りる。
ああ、楽しい。これだけ走れれば重賞やG1も取れるかもしれない。過去の夢が、新たな夢が眼の前に転がっている。心の中で手を伸ばす。その瞬間――
『ボキッ』
右足から鳴ってはいけない音がした。
俺の身体はスピードが乗ったまま吹っ飛ぶ。
『ゴッ』
まずは右膝が倒れた衝撃で地面に当たり、衝撃で身体が傾いて前のめりになる。
『ガッ』
次に左肩。響くような痛み。そのままひっくり返りながら左側へ転がる。
『グニュッ』
頭から地面に落ち、首と身体がくの字に曲がる。
『バーン』
更に首が曲がり切った後に内ラチに背中から叩きつけられ、俺は意識を失った。
意識を取り戻すと、病院のベッドの上だった。だが、首から下の感覚が無い。しばらくすると、医者が現れて説明を受けた。
「今は混乱しているかもしれませんが、落ち着いて聞いて下さい。あなたは頸髄損傷で身体の首から下が動かなくなりました」
え?何を言っているか分からない。
「……――……!!」
声が出ない。出し方が分からない。声はどうやって出してたっけ。
「やはり、脳挫傷も併発しているようですね……おそらく声が出ないのは失語症でしょう」
ちょっと待て、俺は走っていて怪我をして……あれ?そもそもなんで走ってたんだっけ?思い出せない。この医者が言っている事もさっきから要領を得ない。説明が下手くそだと思った。
それよりもさっさとハヤヒデとトレーニングをしなければ。まず俺の服を買って……いや待て、なんで俺の服を買わなくちゃいけないんだ?思考が巡り巡って整理がつかない。
「……また後で来ます。混乱しているようなので、睡眠薬を使いましょう」
はぁ?混乱なんてしていない。さっさと俺をトレーニングに行かせろ。だが声に出来ない。俺は点滴を差し替える看護師に文句も言えず、黙って睡眠薬を投与されるしか無かった。そして、意識は落ちた。
≫109二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 09:00:30
それでは失礼して…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
アラームの音で目が覚める。
部屋は暗い。目の前の大きなカーテンを開け広げれば暖かい光が私を包んでくれるだろう。けれど、私はそれをしない。私だけ、はずるい気がするから。
日の光を浴びなくなって、随分と経つ。
トレーナーさんが体調を崩して倒れ、介抱したあの日から。
結論から言えば、トレーナーさんに吸血衝動が芽生えてしまった。
無理やり性別を歪められ、本来であれば死ぬはずだった未来まで歪められた結果、生命を繋ぐ為に血を啜らなければ生きて行けなくなった。
そして、陽の光をまともに受けられなくなった。
針で刺されるような痛みを味わってしまうせいでまともな環境では生きられなくなり、理事長の紹介で町外れの森の古びた洋館を借り受け暮らしている。
私は、そんなトレーナーさんに着いてきた。
私を、初めて受け入れてくれた人。
私の、大事な…大事な人。
決して手放しはしないと、決めたから。
カーテンの締め切られた廊下を歩き、トレーナーさんの部屋へ向かう。
起きているだろうか?
110二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 09:02:04
「…トレーナーさん、起きていますか…?」
ゆっくりと、ドアを開ける。
「ァ…ぁ、か、ふぇ?」
あぁ、苦しそうにしている。
「…だから、我慢してはいけないと、あれほど。」
「でも、かふぇ」
「いいんです…トレーナーさんの為なら、いくらでも。」
「ぁ、う。」
這いずるように、ゆっくりと動こうとするトレーナーさんに歩み寄り、そっと抱き寄せる。
「ぁ…は、ふ…ぁ…んっ…」
僅かに躊躇いを見せたあと、トレーナーさんはゆっくりと私の首元に口を付けた。
舌が這い回る感覚がする。ぞくぞくと背筋に何か走ったような感覚。
舌が離れた僅かあと、
「んっ…!」
鋭い痛み。けれど、直ぐに引いていく。
そして痛んだ部分から自分が流れ出して行くような脱力感と
「ちゅ…んっ…く。ちぅ…ちゅぅ…」
目尻を蕩けさせ、必死に私の首元に吸い付くトレーナーさん。
背中に腕を回して強く抱き締めながら、一生懸命に私の首に吸い付くトレーナーさん。
あぁ、ダメだ。
こうされている時、ゆっくりと自分を陶酔的な感覚が飲み込んでいくのが分かる。
頭の中がじんわりと熱くなり、自分が興奮していくのを確かに感じる。
111二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 09:02:49
僅かな、時間の後にゆっくりとトレーナーさんが顔を離す。
顔は火照り、目尻は蕩けっぱなし。
吸血衝動を満たした後は何時もこうだ。
また、ゾクリと私の身体に甘い電流が走る。
「ご、めんね?カフェ…」
語調はしっかりとしているが、気分は弱気だ。
「いいんですよ…トレーナーさん…」
「うん…ありがとう…ごめんね…」
ゆっくりと、トレーナーさんを抱きしめる。
あぁ、どうかトレーナーさん。
そんなに謝らないで。
私は、貴方の思っているほど、良い子では無いから。
117二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 10:17:15
閃いちゃったので蛇足
ー----------------------------------------
抱き合ったまま、時間が経つ。
ゆっくりと息を吐いて、トレーナーさんを抱き上げる。
「ぁ…や、やっぱり…するの?」
「約束、でしょう?」
「で、でもでも…よくないよう、やっぱり…」
「だぁめ、です…私をこうしたのは、トレーナーさんなんですから…」
「うう、ぅ…」
抱き上げたトレーナーさんの身体を、そのままゆっくりとトレーナーさんのベッドに寝かせる。
静かに、覆いかぶさって。私も首元に口付けをする。
トレーナーさんが僅かに吐息を漏らしたのを感じたのを最後に、私は湧き上がる興奮に身を任せた。
洋館は今日もほの暗い。二人の夜は、まだ明けない。
≫127二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 15:16:49
「…なんだ、私に気になる所でもあるか」
「いや…ファイトレ(女)ってどっちかといえばズボンとかの方が多いよなって。スカート姿もたまに見かけるけどさ」
「こちらの方が色々気にせずに済むからな。別にスカートが悪いとは言わんが、正直な話パンツスタイルの方が慣れてるんだ」
「ファイトレ(女)、時々元女性なことを忘れそうになりますよね。」
出先、並んで歩くファイトレ(女)と黒カフェトレとドベトレ。比較的広い道を3人で歩く姿は、真ん中の黒カフェトレだけ162で周りの170二人組より一回り背も小さいこともあって、前から見ると凹んでるように見える(ついでに胸も双丘が確認出来る二人と違い平たい)
「でもファイトレ(女)、オレみたいに胸をサラシとかで抑えたりしないのか?普段のファイトレ(女)的に邪魔そうだし」
「…ドベトレ、サラシで抑えられるサイズじゃないんだよ。邪魔なのは否定せんがな」
中性的な性格や言動のファイトレ(女)の、女らしい部分と言えるその巨乳。上には上がいる…というより、ファイトレ以上のものをお持ちのトレーナー達はごろごろいるせいで感覚が麻痺りそうだが、十分大きいのだ。とはいえ、本人的には不満もあるようで
「この体になる前なら性別まで誤魔化せて便利だったんだがな。身バレは出来る限り避けておきたい」
「え?なんで誤魔化す必要があるんですか」
「…私が彼女の護衛役も兼ねているのを忘れたか?」
「あぁ…」
要するに、性別がバレると特定されやすくなる対策という訳である。ウマ娘じゃない女性の警護役というのは、数が少ないのだ。
「まあ、今はウマ娘の体ではあるしそこまで神経質になる必要はなくていいがな。サイズ的にもまだ楽ではあるし」
「…」
そんなもんだな等と頭越しで会話する二人を他所に、黒カフェトレは…自分の絶壁を触って落ち込むのだった。
短文失礼しました
前200のおっぱいより、所作や反応以外で分かりやすく女らしさのある胸を持つファイトレ(女)。周りがインフレしすぎてるから…
実際リアル日本のSPだと女性が僅か数%しかいないので、ウマ娘世界だと大分貴重そうな予感。黒カフェは…壁でええんやで。
≫165二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 19:44:34
ひとくち白カフェ劇場 『日傘のあの子』
モブ娘A「ねぇねぇ、みてみてあそこのあの子」
モブ娘B「あの日傘さしてる子?凄いね…お人形さんみたい…」
モブ娘A「髪も綺麗…どこの子だろう、見学かな?」
モブ娘B「あ、誰か近付いてるよ。あれは…カフェさん?」
モブ娘A&B「「………………」」
モブ娘A「み、見たっ!?に、にぱーってっ!ふにゃふにゃだったよ!?」
モブ娘B「カフェさんも凄い優しく笑ってる…あ、抱っこした…」
モブ娘A「すりすりしてるぅ…ぁーっ…」
モブ娘B「…こ、今度見かけたら声掛けてみようかな…」
モブ娘A「えっ、そ、その時はわたしも誘ってね?ね?」
後日、ウマ娘ちゃんから美味しいおやつをたっぷり貰ってにこにこの白カフェちゃんなのでした
≫171ちびハヤトレ長編その122/09/15(木) 20:02:42
『Junk Airplane "1.Cleared for Takeoff"』
「キーンコーンカーンコーン」
授業を終えるベルが鳴る。俺は荷物を手に取り教室から出る。今日はいつも使っている競技場が閉まっているので学校のグラウンドを借りる事にした。
とはいえ、グラウンドはウマ娘も使うので交代制だ。着替えた後ノートを見ながら待っていると、後ろから声を掛けられた
「先輩、こんにちは!」
「おう」
後輩の一人が話しかけてきた。後輩といっても陸上の後輩ではなくウマ娘なのだが。うちの学校は陸上とグラウンドを共用している関係でそれなりに仲が良い。
「すいません、ちょっと走ってる所を見てほしいんすけど」
「ああ、良いぞ。見てるから走ってこい」
「了解っす!」
一周して戻って来た後輩に改善点を指摘する。
「スタミナは大丈夫だと思う。ただ、中盤フォームが崩れて速度が落ちてる。スタミナは足りるはずだからきちんとフォームを意識して走ればもっと早くなるはずだ」
「なるほど、ありがとうございます!先輩のアドバイスはいつも具体的でありがたいっす!」
「といっても、ウマ娘については素人だからあんまりアテにするなよ」
「でも私達のトレーナーも先輩はウマ娘のトレーナーが向いてるんじゃないかって言ってましたよ?」
「いやー、それは興味ないかな」
もちろん今のように聞かれればアドバイスはするが、正直な所本気で人を教える事に楽しさはそこまで感じられない。自分が走っている方が楽しいし性に合っていた。
「もったいないなー。先輩がトレーナーなら百人力なのに」
「残念だけど他を当たってな」
そんな事を話していると、また別の人物から声を掛けられた。
「やあ、こんにちは。少し話をしても良いかな」
スーツを着た男が誰かはすぐに検討がついた。
「もしかして、スカウトの方ですか?」
「おっと、どうして分かったのかな?」
「最近多いですから。将来的にはプロも進路としては考えていますが、今はまだ答えは出せません。すみません」
「いやいや、構わないよ。まだまだ成長途中だからね。でも、もし気が変わったらここに電話を掛けてくれ」
そういうと、名刺を俺に渡してスカウトは去っていった。
172ちびハヤトレ長編その122/09/15(木) 20:03:13
「先輩、プロのスカウトも受けてるんすか!?」
「まあな。結構色んな所から」
「そりゃトレーナーを断るのも納得っす。で、なるんすか?プロ!」
「んー、どうすっかなー」
正直な所、プロになるかは決めあぐねている。プロとして走ってみたい気持ちはあるが、今のように自分の好きに走っていたい気持ちもあった。
「えーっ!勿体ないっすよ!私達で言えばトゥインクルシリーズに出られるようなもんすよ!」
「まあ、それはそうなんだけど。プロになったら自分のやりたいように出来なくなるしな、やっぱ責任も伴うし」
「はー、やっぱり先輩は真面目っすね。私なんてなんも考えてないっす」
「それくらい気軽な方がいいのさ」
そんな事を話している内にグラウンドを使う順番が回ってきた。
「それじゃ、俺も走ってくるわ。お前も頑張れよ」
「はい、先輩も頑張ってください!」
「おうよ」
後輩に見送られながら俺はグラウンドに向かった。
「よし、今日のトレーニングは終わりだな」
さっさと着替えて家へ帰る支度をする。校門から出ると、さっきの後輩が待っていた。
「先輩、お疲れ様っす。今日町外れのスポーツショップで新作のシューズが入ったらしいんすけど、見ていきませんか?確か先輩気になってましたよね」
「お、あれ入ったのか。せっかくだし見に行くか」
「そうこなくちゃ!早く行きましょう!」
スポーツショップで新作のシューズをチェックする。「んー、ちょっと微妙かも。期待してたんだけどなあ」
「残念っすね、まあそういう日もありますよ」
「そっちはどうだ?」
「私はちょっと前に出たこれが良い感じっす」
どうやら気に入ったようで、ずいぶん上機嫌だった。
173ちびハヤトレ長編その122/09/15(木) 20:03:33
「じゃ、俺が買ってやるよ。こっち貸しな」
「良いんすか!?」
「その代わりグラウンド優先して使わせてくれよな」
「了解っす!ありがとうございます!」
人が喜んでいる姿を見るのは好きだ。どうせ普段陸上用品以外に金なんて使わないし、たいして懐も痛まない。
「ありがとうございました!また明日っす!気をつけて帰ってくださいね!」
「おう、お前もな。気をつけて帰れよ」
スポーツショップを出てお互いの帰路に着く。スポーツショップが町外れなので、普段とは違う道を歩く。
「あれ、ここに出るんだっけ?」
道を間違えたのか大通りに出てしまった。歩道でスマホを取り出しマップを見る。
「えーと、ここから家までは……」
突然叫び声がする。
「危ない!前!早く逃げて!」
意味も分からず前を見ると、トラックが凄いスピードでこちらへ突っ込んできていた。慌てて逃げようとするが、恐怖で身体が硬直して動かない。そのまま眼前までトラックが迫り、はねられた瞬間。
「……ッ――!!!」
……目が覚めた。周りはまだ暗い。
「夢か……」
ここ最近は悪夢が続きまともに寝れていない。外に出て風を浴びる。普段の生活にも影響が出ていて、最近はキャパオーバーを防ぐ為に一時的にトレーニングをしていないが、このままだとトレーナー業にも影響が出てくる。
「……部屋に戻って寝るか」
落ち着いたので、少しでも睡眠不足を解消するために睡眠薬を飲んでからもう一度寝た。しかし、結局その後も悪夢で起こされまともに眠れなかった。
おれバカだから言うっちまうけどよぉ…part835【TSトレ】
≫25二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:15:53
最終話前編 行進の果て
ついにオグリキャップとの対決の当日。
学園のコースには、引退するオグリの走りを一目見ようとギャラリーが集まっていた。
「大丈夫か?マーチ」
「問題ない」
不思議な夢を見た日。あれから誰かに背中を押されているような感覚があるからか、
少し前まで感じていた不安と恐怖は何処かに消えていた。
そんな俺を見てマーチも安心したのか、程よい緊張感を保てている……が、
「なぁ、トレーナー」
「ん?どうした?」
「……いや、なんでもない」
やはりまだ不安があるようだ。
「そうか」
そんな彼女に、トレーナーの俺ができる事は、
「……時間だな。それじゃ、行ってくる」
「……マーチ!」
「どうした?」
「オグリに、君のライバルに勝ってこい!!」
彼女の勝ちを心から信じる、そしてそれを伝える事だ。
「!!……ああ!」
俺を見返すマーチの表情が、少し明るくなった。
コースに向かうマーチを見送った後、俺は観客席へと移動する。
26二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:16:41
「いい顔になったな」
そこには、オグリキャップのトレーナーが待っていた。
「このレース、受けてくれてありがとうございました」
「そんなに畏まらなくていい、って言っても聞かないか。オグリも乗り気だったし、気にしなくても大丈夫だ。
それにしても……あの日トレーナー室へ助言を求めに来たお前さんが、今やオグリと勝負するウマ娘を育てるまでになるとはねぇ」
「……あんたの所に宣戦布告をした頃から、俺たちは確実に強くなった。だから、楽しみにしていてくれ」
「それは良かった。少なくとも私とオグリは、お前さん達を倒すべきライバルだと思っている。
それなのに倒し甲斐が無いんじゃ、面白くないからな」
「……勝つのは俺とマーチだ」
「いや、私とオグリだ」
「…………」
「…………」
重い空気が流れる。
「まぁ、どちらが勝つにせよ。勝負はもうすぐ始まる。お互いの担当が、全力で競い合えることを祈ろうじゃないか。
それじゃ、いい勝負をしよう」
そう言ってオグトレは客席に向かう。
「…………」
いつもは優しいオグトレさんが、強い敵意を向けてきた。間違いなく、今日のレースは全力でくるのだろう。
その事を嬉しく思うと同時に、気を引き締め直す。
すると、コースに2人が入ってきた。
27二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:17:24
「……オグリキャップ」
「君とまたレースで走れる事が、私はとても嬉しいよ。フジマサマーチ」
「はは、ずいぶん時間がかかったがな……
公式戦という訳では無いが、もう一度コースの上ででお前の隣に立てた事、私も嬉しく思う。
……お前のライバルとして」
「うん、私もだ。だからこそ全力で行かせてもらう」
「……勝つのは──」
「「私達だッ!!」」
そう啖呵を切ると2人はゲートに入った。
そして、
ガゴンッ
レースが始まった。
28二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:18:13
距離はマイル。コースはダート。馬場は良。
スタートから飛ばしたマーチが先手をとる。
(スタートは上手く行った、あとは集中……集中して、オグリの動きを予測する!)
マーチに伝えた作戦の一つ。
スズトレの空間把握能力から着想を得たもので、俺が集めたオグリのデータを元に動きを予想、把握し、常に最適解を導き出ながらハイペースに持ち込み、その上でスタミナを温存すると言うものだ。
正直、机上の空論の域をでなかった作戦だが、マーチはそれを実現させてみせた。データの情報と、今のオグリの動き、それらを使って全てとはいかないがそれでも作戦通りの動きは出来ている。
(よし、上手く距離をとってスタミナもそこまで消費していない。あとはオグリの動きだが……!!)
ダッダッダッ
(このペースに何の躊躇いもなくついてくるか!)
ハイペースの中、2バ身ほどあけてはいるがピッタリとついて行くオグリキャップ。
(ついてくるなら向こうもスタミナは削られているはず!それにこの程度想定の範囲。勝負はここからだ、集中を切らすな!)
そうして第3コーナーを抜け最終コーナー中間。
(まだだ、まだ待て。オグリが、スパートをかける。そのタイミングを)
ハイペースを保ちながら、時を待つ。すると
ドッ
(!!来たッ!)
「はあああぁぁぁ!!!!」
オグリがスパートをかける。それと同時に、
「ここだぁぁぁぁ!!!!」
合わせるように、マーチもスパートをかける。
29二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:19:39
これも作戦の一つだ。
上がり勝負では確実にオグリに負ける。だが、直線の根性勝負ならマーチも負けていない。
ならば、オグリの加速するタイミングに合わせてこちらも加速し、持久戦に持ち込めばチャンスはある。
とは言っても、これは過去に一度負けた作戦だ。それでも勝つにはこれに賭けるしか無かった。そして、勝つ為のチャンスを掴むには、ハイペースとスタミナが必要だった。
その全てが上手くハマり、同時に加速をかける。
しかし、
(くっ……オグリの加速が段違いで速い!このままでは、直線で抜かれる!)
ジリジリと芦毛の怪物が後ろから迫ってくる。
(なら……奥の手だ!)
「勝負だッ!オグリキャップ!」
最後の直線に入った瞬間、マーチの走るフォームが変わる。
それは、オグリやタマモクロス、ナリタブライアンが使う地を這うような超前傾姿勢のフォーム。身体の重心を前に傾け、力強く踏み込む事で更にスピード上げる事ができる。
とはいえ、この走りは脚腰の柔らかさと姿勢を保てる体幹、そして脚にかかる負担をものともしないパワーが必要だ。
マーチがいきなりそんなフォームを、最初から無理矢理使っても、脚への負担からすぐにスタミナを使いきり、最悪途中で走れなくなる。
だからどうしようもなくなった時、最終直線だけで使う奥の手として用意し、その距離を保つだけのスタミナとパワー、体幹を集中的にトレーニングした。完全な付け焼き刃。だけど、それで届く。怪物の首元に。
30二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:20:49
(俺ができるのは作戦とトレーニング指示……ここまでその全てを完璧にマーチはやり切った。なら後は、勝つだけだ!)
オグリとの差は縮まず、むしろほんの少しずつ開いて行く。フジマサマーチはこの瞬間、間違いなくオグリを押していた。
しかし、その後方につく灰の怪物は、
「マーチ……やはり君は──」
この絶望的な状況で、
「強いな」
そう口にして、笑った。
≫46二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:00:49
では失礼して! ちょっと多めにレスまたぎますね…!
ー-----------------------
「練習終わったしぃ、購買でおやつ買って行こうよ~♪」
「だめ…です…」
「なんで~!?けちんぼ~!!」
今日のトレーニングもいつも通りに終わり、部屋に帰って変わらない時間が過ぎるのだろうと思っていたその時
「すみませ~~ん!!!」
その日の特別は、そんな声から始まった。
「んぅ?誰か呼んだ?」
「あれは…ファル子さん…ですね…」
「すみませ~ん!!あのあのっ!お手伝い、してもらえませんかっ!?」
「「お手伝い?」」
「うん!お手伝いっ!」
ファル子さんが言うには、こうだ。
今日はライブで、ゲストが来る予定だったのだが体調不良で来れなくなったそうだ。
代理を務めてくれる人もなかなか見つからず、近くを歩いていた私たちに白羽の矢が立った、と。
「…トレーナーさんを…お日様の下にはちょっと…」
「そこは大丈夫!今日は屋内ステージなのっ!」
「むっ、断る理由があんまりないっ」
トレーナーさんはそんな事を言った。
48二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:01:15
「…出るんですか…?」
「アイド「ウマドル!!」…ウマドルだよ?してみたいじゃぁ~ん、ねっ?」
上目遣いで、いいよね?と聞いてくる。あぁ、それは、ずるい。
「…無理は…ダメ…ですからね…?」
そうやって頼まれてしまうと、断れない。
「うんっ!!あ、でもねでもね?歌いたい歌があってね…デュエット曲…だから、ね~?」
…まったく、もう。
「…わかりました、わかりましたから…」
「わ~いっ!!」
少し後、ステージ裏にて。
「…本当に…この曲でいいでしょうか…」
「歌う曲決められてる訳じゃないしぃ…ヘーキヘーキ」
「…まぁ…怒られたりは…しませんか…」
ほう、と一息。落ち着くために周りを見回す。
私は勝負服を着ているが、トレーナーさんは借りてきたフリフリの衣装を着ている。
正直、色々と卑怯だ。可愛らしくてしょうがない。
普段肌を隠すために着ているものよりドレスチックで、少し歩くとスカートがふわりと揺れる。
スカート自体が長いから見えることはないけれど、雰囲気がふわふわとした方向に強まっている。
なぁに?と首を傾げてくるだけでも、心臓が跳ねるのを感じた。
49二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:02:21
「カフェ?」
「…なんでも…ありません…」
そう、少し目を逸らしながら言ってしまう。
トレーナーさんは不思議そうにしていて。少し、申し訳なさも感じてしまう。
「二人とも~!出番だよ~!」
ファル子さんから、声がかかる。
ウイニングライブと、それほど変わらないはずだ。
落ち着いて、頑張るとしよう。
「今日はスペシャルゲストに来てもらってま~す!!」
「おー」「誰だろー」「楽しみ~」
「それではっ、スペシャルゲストの~…マンハッタンカフェさん!と、そのトレーナーさんで~っす!」
「…どうも…」「こ~んに~ちは~!!」
私はゆっくりとお辞儀をして、トレーナーさんはぶんぶんと観客席に手を振っていて。
「おお、珍しい人が」「あれがトレーナーさん?」「ちっちゃい~」「かわいい~」
「ライブの雰囲気の曲じゃないかもしれないけど~!頑張って歌うから~!応援お願いね~!」
「がんばれ~」「応援してるよ~」
こういうところは、素直に凄いと思える所だ。
明るさと素直さで人を虜にしてしまう。…アイドルの応援というよりは、お遊戯会ムードなのだが。
「じゃあ、カフェ~!歌おっか!」
「…はい」
50二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:02:41
ゆっくりと頷いて。静かに息を吸う。
トレーナーさんも少し深呼吸をしているのを、隣を感じた。
「…それでは、聞いてくださいっ」
♪ハンバートハンバート 「おなじ話」
ー-----------------------
観客席に居た観客たちは、瞬間幻視した。
マンハッタンカフェが、昔ながらの家に静かに暮らしている様。
縁側に座り、ゆっくりと過ごすカフェとそれに静かに寄り添うトレーナー。
ただたわいもない話をする内に、静かに時間が過ぎて。
トレーナーがゆっくりと立ち上がり、中庭に出て。
それじゃあね。とにっこり微笑んで。
それを静かに泣きながら微笑んで見送るカフェ。
縁側には、精霊ウマ。
蚊取り線香の煙が、空に溶けていく…
ー-----------------------
「・・・いつも、おなじ話。」
歌い終えて、静かに一息。トレーナーさんと一瞬見合った後に二人でお辞儀をする。
まばらな拍手の音が聞こえる。やはり選曲が失敗だっただろうか。
お辞儀から顔を上げると…
号泣している観客の皆さんが居た。
51二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:03:01
「えっ!?!?どっどうしたのみんな!!?」
私が思ったことをトレーナーさんが代わりに口にする。
「だって…だってよぉ…」「いかないでぇ…」「ばあちゃん…会いてぇなぁ…」
「ふぁ、ファル子さん、これは一体」
隣に視線を向けると
「うっ…ううっ…」
号泣しているファル子さん。
「もっとっ…もう少しだけでもっ…」
「…えぇ…?」
その後、妙な空気感のまま解散となった。
私とトレーナーさんは釈然としないまま、静かに部屋に戻った…
その日のライブは、後にファンの間で伝説になった。
しかし、当日のライブを知るもの以外にその話は語られることはなく
その日を知るものだけが、その伝説の記憶に耽るのだった。
≫68二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:03:51
『おやつの山』
「遊びに来たよー!」
「こんにちは……」
白カフェトレとカフェが一緒に入ってきた。
「今はソラヒデは居ないぞー」
もはやここ最近は半分定番となったやり取りをする。
「大体、俺がトレーナー室に居る時は仕事してるんだからソラヒデが居ないって分かるだろ」
「確かに!」
「確かにってお前な……まあ、せっかく来たんだから適当に休んでってくれ。俺も休憩したい所だったから」
「いつもすみません……」
「気にしないで。というか、反省すべきなのは担当に保護者ムーブされてるそこのトレーナーだから」
若干の呆れを含みながら笑う。
「あ、そこのお菓子の山から適当に取ってって食べて良いぞ」
溜まりに溜まったお菓子の山を指差す。
「本当?やったー!」
「このお菓子は……どうしたんですか……?」
「ソラヒデが沢山貰って来てな……ただ食べる量制限してるから、溜まってく一方って訳だ」
「……なるほど……」
わちゃわちゃとお菓子を探している白カフェを尻目に、俺は冷蔵庫に向かい飲み物と別に用意してあるお菓子をカフェの為に持っていく。
「はい、カフェはこっちのクッキー食べな。おからクッキー。健康に良いんだ。見てくれは悪いけど勘弁してくれな」
「自分で作ったんですか……?」
「ああ。あとこっちも俺が作った野菜ジュース。中々の自信作だぞ」
「それでは……いただきます……」
カフェがおからクッキーと野菜ジュースに口を付ける。もちろん自分で味を確認してはいるが、緊張する一瞬だ。
「……おいしい……」
「そりゃ良かった。安心した」
「えー、僕も食べて良い?」
「あんまり食べすぎるなよ?バランスが大事だから」
「はーい!」
分かってるんだか分かってないんだか。ま、こうして二人が楽しそうにしてるのを見るのも悪くない。また今度レパートリーを増やしておくかな、と思った。
≫78【執着点/■■点】side:緋22/09/16(金) 01:31:25
『一着は、ダイワスカーレット!『勝ったのは、ダイワスカーレット■『強■、強す■るぞ、ダイワスカーレット!『一着■、ダイワスカーレット■』
アタシが一番。望んだ結果だけが聞こえる。
一度負けて二番になってから、ひたすらにトレーニングを積み重ね、トレーナーと話し合い、適した肉体を作れるようにと栄養に気を使ってくれた食事をする。
そうし続けて、走って走って走り続けて。
だけど日頃の生活での一番になり続けるために、アタシは『アタシ』を続ける。大丈夫。何も失敗は無いはず、それなのに、どうして…
「なぁ、スカーレット。調子悪いのか?」
「何よ、唐突に?万全よ、レース見てないの?」
「いや見てるけどよぉ、でもなぁんか変だと思ってな」
「アンタの気のせいよ。明日も早いのアタシはもう寝るから」
何故、そんなことを聞くの?どこも変わってない何も変じゃない、アタシはアタシを続けて一番を取り続けてる!
「俺の気のせいかぁ?」
「そうに決まってるでしょ、バカなこと言ってないでさっさとアンタも寝なさい」
「もうちょい待ってくれって、もうすぐ終わるから!」
「はぁ…、ん?アンタの好きなのってバイクじゃなかったかしら?それ、電車よね?」
「まぁな、けどトレーナーが列車や電車、車にもカッコよさがあるって教えてくれてよ、俺も興味が出てきたっつぅか…」
「それで雑誌やらを買ってみたって訳?単純すぎない?」
「良いだろ別に、トレーナーが教えてくれたことだし…そう言うお前は何か無いのかよ!トレーナーが教えてくれた趣味とか!」
「特に無いわね」
「マジかよ…」
「何よ?」
「いや、別に…っと、終わった終わった。俺も寝よーっと。」
そう言ってウオッカは寝だした、私も寝ようとして、何故かウオッカの机の上にあったものに目が行って、焼き付いてしまう。
「あれってたしか、終着駅…」
そう言葉がもれて、すぐに寝てしまった。
それが何故か忘れられなくて、だけどトレーナーとトレーニングを重ねるうちにやっぱり忘れてしまうのだった。
79【執着点/■■点】side:黒22/09/16(金) 01:32:22
『一着は、ダイワスカーレット!『勝ったのは、ダイワスカーレット■『強■、強す■るぞ、ダイワスカーレット!『一着■、ダイワスカーレット■』
歓声が聞こえる。
スカーレットが勝利して、一番を取り続けたが故の歓声だ。
最初はこれらにすら価値を見いだせなかったがスカーレットが勝ち続け、聞き続ける度に嬉しさがこみ上げて来るようになった。
メニューを練り、スカーレットと話し合い、自分で試し、栄養学を学んだ。
一番をとらせ続ける。そのために今までやらなかった事をやり続け、試し続けた。私が変わっていく自覚はあるが、それもどこか心地いい。
「いやー、やっぱり強いッスね!そちらのスカーレットちゃん!」
「貴方は…ウオッカさんのトレーナーさん」
「ウッス!お久しぶりッス!」
「えぇ、お久しぶりです」
めんどくさくて、鬱陶しいのが話しかけてきた。
ウオッカのトレーナー、私の同期で、同時期に担当を決めたヤツだ。
担当どうし、トレーナーどうしの関係もあって、私とコイツ、そしてここには居ないが桐生院はライバルとして世間には捉えられている。
そこからコイツや桐生院は話しかけてくるようになった。こちらは■■に無いと言うのに。
「けど、そちらのウオッカさんもお強いじゃないですか」
「へへっ、そっすか?それだったらウオッカも喜ぶと思いますよ!」
馬鹿で単純で裏表無い。それでいて中央でトレーナーをやれている。何かに影響されて変わることも無さそうな、どんなことにもカッコよさを見いだす変なヤツ。実際コイツもウマ娘化したのに何かがあったとは聞かない。
まぁ、どうでもいいことだ
「あ、そうだ!これどうぞッス!」
「これって…」
「電車の写真ッスよ!カッコよくないですか!」
「はぁ…?そうですか?」
「そうッスよ!やっぱりこれもカッコよくて色々な人にあげてるんスよ!写真なら邪魔になりくいッスし!」
「まぁ…じゃあ…受け取っておきますね」
「どうぞッス!っと、そろそろ行かなきゃ、またあいましょーっ!」
「あはは…」
受け取った写真に描かれていたのは電車と終着駅
走るものが最後に止まる場所。とは言っても
「私には、私等には関係無い。そうだろ?スカーレット」
≫85二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 07:56:43
俺はモブトレ!
図書室で椅子に座り資料を机に広げて読んでいるぞ!
これも担当ウマ娘の為だ!
導入終わり!
「はてはて、モブトレさん少々よろしいでしょうか~」
本を熱心に読んでいた俺に声を掛けたのはグラトレ(独)さん。
着物姿でトレーナー業に当たるその姿は大和撫子と言う他無いともっぱらの評判だ。
この人が元々男だなんて知らない人に言っても信じて貰えないぞ!
……そんなグラトレさんが何で俺に声を掛けたのだろうか?
「申し訳無いのですが~、席の後ろに私の読みたい本が有りまして〜」
……という事らしい。
それならばと椅子を引き席を立とうとする。
……しかし、その行動はグラトレさんに止められてしまった。
「いえいえ、お手を煩わせる事は有りませんよ〜」
そう言ってグラトレさんは身体を横に向ける。
「この程度の隙間が有れば大丈夫ですのでそのまま読書を続けていてくださいな〜」
……そう言われたらそうするしかない。
なのでせめてもと思い、椅子を少し机に寄せて後ろのスペースを少しでも広げる。
「……お優しいのですね~」
そんな風に感謝されただけでもやった意味は有った。
そんな充足感と共に俺は読書を再開する事とした。
「では、失礼して〜」
そう言ったグラトレさんは身体を横に向けたまま俺の座る椅子の後ろへと入ろうとする。
……やっぱり席を立った方が良かったんじゃ。
そんな事を考えたその時だ……
87二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 07:57:07
「あ、あら……す、すみません」
流石に狭すぎたのか俺の背中に何か柔らかい物が当たる感触がした。
その物体が何か……それに思い至る前に今度は背中にふわふわした物が当たる感触。
……これはいったい?
「すみませんお尻が当たってしまいまして〜、直に本を取って退きますので〜」
疑問の答えはグラトレさん自らから有った。
どうやら背中に感じる感触はグラトレさんのお尻と尻尾らしい。
……当たってる面積広いなぁ!
「おや? ……ああ、良かった有りました〜」
背中に感じる感触に意識が持っていかれてる中そんな声が聴こえる。
どうやらグラトレさんは探していた本を見つけられたらしい。
……俺はグラトレさんのお尻が気になって1ページどころか1文字も読めてないが。
「すみません、お邪魔しました~」
本を見つけたグラトレさんはそそくさと俺の座る椅子の後ろから離れ俺へ礼を伝えてきた。
そんなグラトレさんに俺は大丈夫だと伝える……大丈夫ではないが。
「いえいえ、お背中すみませんでした〜……少々大きいものでして……」
俺の大丈夫という言葉に少し恥ずかしそうに謝罪したグラトレさんは
「それでは~」
そう言って図書室を後にして行った。
そして残された俺は背中に感じた暖かさを思い出し
……フンッ!
煩悩を祓うべく机に思いっきり頭を打ち付けたのだった……
その後、図書委員のロブロイちゃんに怒られた……
うまぴょいうまぴょい
≫94二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 08:51:09
ひとくち白カフェ劇場
白カフェ「みぃつけたぁ」
ちびハヤ「んなっ…もう見つかっ」
白カフェ「つかまえたぁ!!!」
ちびハヤ「うっ!くそっ…は…なせぇっ…」
白カフェ「ふっふっ…何がなんでも離してあげないからねっ…」
????「うふふー…よくできまちたね〜…」
ちびハヤ「やめろっ!はなせ!やめろおおおおお!!!!!」
ちびハヤ「…」フリフリノドレスゥゥゥゥ
クリーク「似合ってますよぉ〜」
白カフェ「可愛いのに」スモック
ちびハヤ「俺は!こういうのは!嫌なんだ!」
白カフェ「そんなこと言ってぇ、実はちょっと嬉しかったりぃいったぁ!?ぶ゙っ゙だね゙!゙?゙ガブェ゙に゙も゙ぶ゙だれ゙だごどな゙い゙の゙に゙!゙?゙」
クリーク「あらあら〜、喧嘩はダメですよ〜?」
この後記念撮影(強制)した
≫109二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:54:32
『ちびハヤトレに哀しき過去……』
「ウマ娘になってしまったちびハヤトレに哀しき過去……」
「それを自分で言うのか?」
「だってちょっと前のスレで過去が重いとか言われたし……」
「メタい発言をするな……」
「もしかしてハヤヒデは刃牙派だからタフ語録は禁止って感じか?」
「そういう訳じゃないが、言うっちまうスレでメタネタ使うのは禁止スよね」
「言うっちまうスレはルール無用だろ」
「やっぱ怖いスね言うっちまうスレは」
「というか冷静に考えるとトレーナーをウマ娘にしてかわいいかわいいするとかヤバいスレだよな。忌憚のない意見ってやつっス」
「ククク...ひどい言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど」
「大体俺らはなんでタフ語録で会話してんだ?」
「分からない。私が刃牙派だからという所から会話が始まったのでは無かったか」
「そうだった。……アホなこと言ってないでトレーニングすっか」
「ああ」
モブウマ娘「うぁぁぁ ち...ちびハヤトレとビワハヤヒデがタフ語録で会話しながら廊下を練り歩いてる」
哀しき過去とハヤヒデの刃牙ネタから連想して書いたけど内容があまりにもあまりにもなんで没にするか悩んだSSを供養します。反応次第では消すかも……
≫118二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:22:43
では失礼しまして…またしても多めにレス跨ぎますね…
ー-----------------------------------
「カフェカフェ!!やよいちゃんから借りてきた!!」
「…それは…?」
「ウマレーターの利用券的なやつ!」
今日の特別はそんな風に始まった。
「それは分かりますが…何のために…?」
「前にやったゲームが面白くってぇ…ウマレーターで遊べないかな~、と思って!」
「…なるほど」
そういえば、この前随分はまり込んでいたゲームがあった。あれだろうか。
かなり戦闘面が重視されたゲームだったような気がするが…
「…できそうなんですか…?」
「『つづきから』なら!…クリア済みデータしか保存してない…」
少ししょんぼりしてはいるが
「でも戦いの雰囲気は楽しめるし!」
「まぁ、そうですね。」
ふんす!と鼻息を鳴らして気を取り直して。
それほど落ち込んではないようなので大丈夫だろう。
「カフェもやろうよ~、VRだから直感でどうにかなると思うしぃ」
「そう…でしょうか?」
「そうだよう、やろ?ねっ?」
そう誘われてしまえば断れない、私はゆっくりと頷いた。
119二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:24:12
ウマレーターを起動し、ゲーム内。
少しスチームパンクな雰囲気を感じる…いや、しかし街の雰囲気というか、街全体が暗い。
いつの間にか勝負服に変わっている…トレーナーさんもスーツだ。豪華な刺繡も入っているが。
「…どこでしょう…ここ…?」
「えっ…どこだろここ…多分裏路地だとは思うけど…」
「裏路地なんですか…?随分広いように感じますが…」
「一つの街くらいの規模だからね…」
街並みの規模の裏路地とはいったい…?ゲームの世界観は難しい…
見回してみるが人はいな…
「えっ…」
訂正しよう、人だったらしきものは転がっている。部分的に液化しており、非常にグロテスクだ。
ゲームだからか多少マイルドに見えるが、本物なら胃の内容物をぶちまけたかもしれない。
「トレーナーさん、これは…」
「んぅ…?ひっ…なにこれこわい…ひえ…ぇ、待って、裏路地で液化してるの?」
トレーナーさんの顔から血の気が失せる。今日は随分感情の動きが普段に比べると緩やかだ。VRのおかげだろうか?
「…カフェ~、やばいかも、やばいですこれぇ…やだようこんなゲームオーバー…」
「…なにか、やっぱりまずいんですか?」
変死体がある時点で穏やかではないが。
「多分今『夜』だ…たっぷり敵がきちゃう…」
「…たっぷり、ですか。」
「たっぷり…しかも一体一体がかなりしぶといやつ…」
120二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:25:49
すると、遠くから音。
大量の足音がきこえてくる。
「…あの、トレーナーさん。」
「…うん、来てる…」
赤い刃物を持っているガスマスクの人間の大群。
よくわからない数字の羅列を口にするばかりで会話が成立しそうにはない。
「…戦闘だよ~…」
「…はい…」
トレーナーさんが腕を回して…おや?
「手、赤くないですか…?」
「んぅ…?あ、これエレナなのね…」
思えば私の手袋も少し意匠が違うような気がする。
一先ず、戦わねばならないらしい。感覚で大丈夫だろうと言われたが、平気だろうか…
121二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:26:22
♪BGM Library of Ruina 『Kether battle』
「んっ!どーんっ!だぁーっ!!」
相手が斧のような武器を振り上げるが早いか、弾丸のような速度で飛び込む。
そして攻撃を繰り出そうとした敵の攻撃の上から爪のように変貌した赤黒い手で引き裂いた。
「わぁ…」
引き裂いた本人であるトレーナーさんが感嘆したような声を漏らす。
まるで、戦いに酔うように。赤い瞳が僅かに煌めいた気がした。
ー何かを振り上げる音。
「ッ!?」
慌てて振り返れば、別の敵。トレーナーさんのことを気にしすぎたっ…!?
咄嗟に顔を守ろうと手を振り下ろされる武器に向けて…
金属音。キィンと嫌な音が響く。そして痛みはない。
慌てて閉じてしまった目を開くと…
「ハンマー?」
私は、黒いハンマーを手にしていた。赤い武器を、そのメイスで受け止めていたのだ。
一体どこから?なぜ?それを思考する前に、反撃をするべきだと理性が語り掛けている。
私はそのまま武器を押し返すと、そのままそのハンマーを敵の頭に振り下ろし、頭蓋をたたき割った。
恐怖はなく、驚きもない。頭は冷えている。どころか興奮すら感じる。
…それがたまらなく怖い、ゲームだからと信じたい。
一先ず、今の状況を切り抜けなくては。
次の敵を見つけ、私もその敵に向けて走り出す。
いつの間にか消えていたハンマーの代わりに握っている二本の剣で切りかかる。
敵の初撃を躱し、一度、二度と切り抜けて身体を切り裂く。
倒れた敵を見送ると、二刀を手放してメイスと斧で次の敵に殴りかかった…
122二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:27:37
少し、経った。
足元には大量の死体。しかし未だ敵は減らず。
絶望的とも言える状態だが、胸は高鳴り口角は上がって戻らない。
分かった事がある。私が今付けている手袋は、すなわち収納であるということ。
この手袋から、状況に応じた武器が飛び出している、ということ。
故に、危険であるなら武器が手の中に握られているのだ。
身の丈ほどもある鈍器のような大剣を振り下ろして敵を押しつぶし、また一つ死体が出来上がる。
背後からから近づく敵に大剣を手放して拳銃で弾丸を叩き込む。
一発、二発。そして拳銃を手放しライフルで打ち抜く。
また死体が増える。
ふと、トレーナーさんの方に視線をやる。
「んんんゔっ!!!アァッ!!!ヒヒ、ははハはっはハ!!」
血に酔ったように、まるで正気ではない。
腕を振るえば赤い奔流が大量の敵を飲み込んでいく。
トレーナーさんは防御をしていない。故に傷付く。
しかし、その爪で、力の奔流で敵を傷付け葬る度に傷が癒えていく。
凄まじい光景だ。相手が私でなくて良かった。
さて、私も次の敵を…
視界が、閉じた。
123二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:28:04
意識が戻ると、トレセン学園の教室。
VRウマレーターの座席に腰をかけて座っていた。
目の前にはおともだち。
『アソビスギダ』
そう言って、どこかに去っていく。
…時計を見れば、始めてから数時間が経っていた。かなり遊んでいたらしい。
…しかし、どうにも記憶がはっきりしない。どんなゲームを遊んでいただろうか。
ふと、となりの席を見る。
「むにゃ…そのおかひわ…ぼくのらぁ…じゅる…」
ぐっすりのようだ。起こすのも悪い。私はトレーナーさんをおぶると、ゆっくりと部屋に戻った。
後日、トレーナーさんと理事長がたずなさんに説教されていた。
南無。
≫142二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:38:22
「まあ……綺麗な月」
買い物の帰り道、空にはぽっかり明るい月が浮かんでいた。薄く叢雲のかかったまんまるな月は、何を言うわけでもなくこちらを見ていた。
「…急ぎましょう」
影カフェが現在何をしているかといえば買い物の帰り道。あと2週間に迫った重賞のための話し合いで今日は黒カフェ宅へのお泊まりだ。
ゆるふわな黒のロングスカートにレディースのサンダル、白いシャツにオーバーサイズの緑のカーディガンを羽織った彼女は、閑静な道を歩いていく。
「随分、買い込んでしまいましたね」
袋の中にはいくつかの文房具と、あとはお菓子。明日が日曜日ということもあって今日は夜更かしをするつもり。
「戻りました」
黒カフェ宅の扉を開け、そう言うが何も返答がない。
「皆さん?いらっしゃらないのですか?」
「にゃ」
やっぱり人の返答はない。代わりに猫の鳴き声だけ。
………猫?
「無事ですか?」
「にゃおう……」
リビングへと入ると、そこには4匹の猫がいた。猫。
哺乳綱肉目猫科に属する動物の総称。その中でもイエネコに属する猫が、ここにいる。
1匹は黒の艶やかな日本猫。黒色の毛に、金色の瞳。耳は大きめ。
1匹は灰の細身のロシ アンブルー。シュッとした細身の体に、どこか憂いを帯びた黒の瞳。
1匹は栗色のアビシニアン。アグレッシブな体つきに、燻銀の瞳。
1匹は真っ白なスコティッシュフォールド。一番最初にとびついてきて、いまはしきりに脚に顔を擦り付けてくる。
いやしかしやはり、どこかで見たことある4人組だ(この場合4匹組とか4猫組の方が正しいのだろうか)。
143二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:38:54
「……黒さんにタバコさん、あとギーさんと白さん?」
「みゃあ!」
そうだと言わんばかりに黒猫が返事をしたかと思えば、みんなで足元に擦り寄ってくる。ギー猫(推定)のアビシニアンは遊んで欲しそうにボールを咥えている。
「投げてほしいんですか?」
「にゃあ」
ぽいと軽く投げるとそれをダッシュで捕まえ、てくてく戻って手に置いてくる。まるで遊ぶ犬みたいだ。
「少し、座らせてください」
彼らを踏みつけないようにそっとを崩して座り、買ってきたものを机に置くと、太ももの上にゆっくりと灰猫(推定タバコ)が丸くなり、静かに寝息を立てる。
「ふふ。…よしよし」
優しく撫でながら、ボールをぽん、ぽんと投げる。それにしゅっしゅと反応するギー猫を見て微笑む。
「みい」
「ふふ…どうぞ」
そんなギー猫よりももっと太ももの付け根の方に白猫が乗ってきて、小さく鳴いた。それに返事をすると丸くなって腹に頭を擦り付けてくる。
「……あら」
太ももの外をふにふにする存在に目を向けると、心なしかやきもち妬いたように黒猫がふみふみしていた。
「寂しいんですか?」
うん、と言うように頷くと、その猫を抱き抱えて頬擦りする。それに目を細めながら、優しく肉球でほっぺパンチ。
「うふふ……」
眠る1匹、甘える1匹、遊びまわる1匹、頬擦りする1匹。
4匹のかわいいかわいい猫に囲まれて、さぞご満悦の影カフェだった。
なお翌日ウマ娘に戻った4人は、しばらく影カフェに猫の時のことを擦られたとか。
おしまい
突貫で書いた猫になったものです。
可愛いで満たされたこの空間の観葉植物になりたいですね……本当に。
ということで黒カフェさん、タバコカフェさん、義カフェさん、白カフェさんをお借りしました。
エミュ等の相違点じゃなくて今回誰も人語を介してねえ!申し訳ない。お詫びに影さんを猫にして放つのでユルシテ……
あと白さんがウマ娘化するときは三女神やオトモダチを介して何か感じ取ってそうです。流石に枕元に立っているなんてことはないと思いますが、座ってじいっと監視してそうではありますね。存在感を0にしてサポートに徹してそう
≫171二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:16:10
(ドアの開く音)
…うーわまだいるわ。ん?ただの冷やかしだよ。期待すんな。
ちなみにあとどんぐらいだ?…先は長ぇな、ご愁傷様。
俺?下で買ってきたわいいけど帰る頃には冷めちまいそうだったんでな。
(ビニール袋を漁る音)
おーおー、その物欲しそうな顔。そういうヤツを横目にモノ食うのが一番うめぇんだわ。
………悪かったよ。ほらこれ。
(缶が置かれる音)
これだけ、って?あんま調子に乗んな。でかしてねぇやつにご褒美があると思うか?
(プルタブの開く音と喉が鳴る音)
(息を吐き出す音)
(隣の椅子がぎしりと鳴る)
(近くの紙がやや遠くに移動する音)
…ん。何、って…やっぱちょっと冷めて油の回ったホットスナックの方が好きだなーって思っただけだよ。
いいからさっさと終わらせるぞ。俺が飽きないうちに終わらせられたら唐揚げの一個でもくれてやるよ。出来たらな。
オギャられじゃないけど前に書いたフクトレAMSRの夜仕事編。
EXボイスはキーボード音とたまに隣の椅子が軋む音と缶が置かれる音と伸びをして漏れる声なんかが延々と流れます。
≫175二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:21:36
──某日、どこかのキタトレさん家にて。
「そういえば、ファイトレ(女)…貴女もICU送りになったことがあるのよね」
「腕をふっとばされた時にな。丸一年昏睡して、目が覚めた時に伝えられた時は流石に驚いたさ」
「じゃあ僕も、もしかしたら一年くらい寝てたかもね」
「…いや、ブラックジョークが過ぎないかサトトレ?」
車椅子を脇にソファへちょこんと座るサトトレとその隣にキタトレ。向かいにはファイトレ'sが綺麗な姿勢で座っていた。
「そもそもそういう経験ってない方が普通というか…サトトレももう走れないんだろ?」
「僕はなんだがんだレース中に派手に転倒した割にはこの程度で済んだからまだ良い方だと思うよ?」
「その通りだけど、それでも洒落にはならないわよサトトレ。後私はそういう経験は一切ないわね」
「まあ、そうだろうな。あるようには見えん」
ここにいる四人中二人が危うかった経験有りと考えれば大分…な話である。その二人も四肢欠損と競争能力喪失の後遺症付きだし。
サトトレは幸いにして日常生活には支障ない程度で済み、ファイトレ(女)は実験体ではあるが義手で代替出来てるのでマシだが。
「とはいえ、寧ろ代わりにこの腕を手に入れたのはプラスな面だったかもしれない…な。実に便利だ」
「なんとなく分かるけど、それでも相当イカれてるわよ貴女?」
「でもキタトレも大分やべーやつだよね。ベクトルとか違うけど」
「それ言い出したら皆大体どこかおかしいんじゃないか?」
その言に全員で思考した後、納得したとばかりにソファに凭れかかった。なにせ否定できる理由とかあんまりないのだ。
「…一旦お茶でも入れてこようかしら」
「む、あるなら紅茶をお願いしていいか。…ファイトレ(男)のと合わせて二人分」
「僕はお茶でいいよ」
「分かったわ、すぐに戻るわね」
──家主が注いで戻ってきた後、茶が冷めるまでゆっくりと話していた四人だった。
短文失礼しました
うちの子全員集合。半分がとても重い過去持ちで中々(だからもう半分で中和するね)…作者がこんなのだからね。仕方ないね。
多分この中で一番おかしいのはやはりファイトレ(女)。お前がナンバーワンだ…(中央のトレーナーは皆おかしいといえばそう)
≫182二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:18:25
『ソラヒデと白カフェのランニング』
「はあ……はあ……辛いよお」
市民公園のランニングコースで白カフェトレが息を切らす。
『先にソラヒデと遊びたいって良い出したのはどっちだ?ほら頑張って走れー』
「ランニングは遊ぶって言わないよお!」
「僕は楽しいよ?」
「なんでそんなに余裕があるの……」
なぜソラヒデと白カフェがランニングしているか。話は2時間前に遡る。
「おーいハヤヒデ……って、なんでお前が居るの?」
「こないだ夜に来ても居ないだろって言われたから!」
「いや言ったけどさ……というかカフェのトレーニングはどうしたんだよ」
「今日は休みの日!」
「ああそう……というかハヤヒデも餌付けしなくて良いんだぞ」
お菓子の山から適当に分け与えているハヤヒデにも突っ込む。
「いや、なんだかんだ可愛くてな。つい」
「まあ、子供の面倒見るの好きだもんな。こいつ子供じゃないけど。ほら、仕事するから出てけー」
「えー?ソラヒデはー?」
「いや、俺ハヤヒデとのトレーニングあるから」
そう言って支度をしようとした時にハヤヒデから提案があった。
「たまにはソラヒデと遊んできたらどうだ?私は自主トレーニングをするから構わないぞ」
「うーん、それは……まあ、たまには自主トレも良いか。メニューはちゃんと考えて組めよ」
「分かっている。それでは行ってくるぞ」
そんなこんなで白カフェと遊ぶ事になったのだが。
「で、何するんだ?」
「うーん……何も考えてなかった!楽しいこと何か考えて!」
「えぇ……」
困惑しつつも何をするか考える。楽しい事か……うん、そうだ。あれにしよう。
『ほらさぼるなー、後半分だぞー』
「まだ半分もあるの!?」
183二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:18:36
こうして、ランニングに来ているのであった。
「頑張れ白カフェお兄ちゃん!」
『ほら、ソラヒデにすら負けてるぞー』
「ソラヒデちゃんがおかしいんだよう……」
「普段から走ってるからね!」
実際ソラヒデは偉い。文句も言わずにトレーニングを続けている。
「その身体でこの距離のランニングするのはおかしいよう……」
『俺なんて普段この倍走ってるぞ。ソラヒデに走らせすぎるとフォーム間違えて覚えちゃうかもしれないからな』
「これの倍!?」
……まあ、俺は普通より走ってる自覚はある。ソラヒデは頑張ってる程度に収まってるとは思うけど。
「ほらほら、一緒に頑張ろ?応援するから!」
「うう……頑張る……」
そうしてランニングが終わった。
「ほら、アイス買ってきてやったぞ」
「アイス!ありがと!」
めちゃくちゃ分かりやすい。こういう所が単純で助かる。
「あれ、というかいつの間に変わったの?」
「今気づいたのかよ。走り終わったちょっと後には変わってたぞ」
「そうだったんだ……」
「さて、今日はここらで終わりにしとくか。お疲れ様」
「やっと終わった……」
「でも、運動した後は気持ち良いだろ?」
「疲れただけだよう……」
残念ながら同意は得られなかった。
「じゃあ、一緒にトレセンまで帰ろう?」
「いや、俺これからプールで泳いでいくから」
「まだトレーニングするの!?」
「うん。先帰ってて良いぞ」
「分かった、先に帰るね。……ちょっと怖いよお……」
……なんか聞こえた気が気がしたが、無視した。