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男のもののジャージを着た遼子が自分の手を枕にうつぶせになり、洸至のベッドに横たわっていた。
遼子のまだほのかに濡れた髪は、いつにもまして艶を持ちベッドの上に広がっている。
「俺達ペアルックだな、まるで」
濡れた髪を拭きながら洸至が笑って言った。
遼子に抱く男としての気持ちをそらすべく、妹をからかう兄の仮面をつける。
しどけなく横たわっていた遼子が赤みのある眼もとで、似たようなジャージ姿の洸至を見ると、笑った。
「干しとけば明日には乾くさ。始発で帰れば出勤前に着替えられるだろ?今日は泊っていけよ」
部屋にはシャンパンで濡れた遼子のスカートとシャツが干してある。
「お兄ちゃん、ありがとう。いきなり来たのに部屋に入れてくれて、ジャージまで借りちゃった」
「いいさ、それ、おととしお前がくれたやつだよ」
「まだ持っててくれたんだ…」
「お前からもらったやつは捨てられないさ」
「お兄ちゃんも彼女といるかも、って思ったんだけど、史郎ちゃんとこんなことになった後にひとりの部屋に
帰りたくなくって」
「俺もそうだよ」
思わず本心を言ってしまった。洸至が遼子を横目で見る。兄の秘密の一端を垣間見た妹がにやけていた。
「えっ?あ、お兄ちゃんも誰かに振られたんだ…」
洸至の目元が険しくなり、押し黙ると、その様子を見た遼子が慌てて言葉を続けた。
「そ、それでね、真っ先に思い浮かんだのがお兄ちゃんの顔だったから、つい、来ちゃった」
「忙しすぎて、彼女を作る暇なんかないさ。それに俺の部屋はお前にとって実家みたいなもんなんだから、
いつ帰ってきてもいいんだぞ。遠慮なんかするなよ」
「お兄ちゃん、本当にありがとう」
遼子が頬を染めたのは、酔いなのか照れなのかはっきりしなかったが、首を傾げ微笑む様は華のように美しかった。

「お前が来るってわかってたら、ケーキでも買っておいたんだけどな。あ、飴ならあるぞ。食べるか?」
「いいよ…、こんな遅くに食べたら…太っちゃう…」
洸至が来るまでにシャンパンを飲み強かに酔っていた遼子は、風呂に入って躰が温まったせいか一気に眠く
なったらしい。返事が緩慢になっていた。
「だけどプレゼントだけは買っておいたんだぞ」
洸至は遼子の枕元に、紙袋を置いた。
「メリークリスマス、遼子。それ開けてみろって」
返事がない。
遼子は目を閉じて、静かな寝息を立てていた。
「マフラー買ったんだけどな」
洸至はしばらく寝顔を見つめた後、妹に布団をかけてやる。遼子が軽く身動きしたが、眠りは深そうだった。
洸至が遼子の濡れた髪を撫でる。妹の髪を一筋取る。
そして、髪の香りを心行くまで吸い込んでから、その髪に口づけた。

これが自分に許す兄を越えた行為。

唇に口づけたら、きっと止まれないのがわかっていた。
兄でいる為に、踏みとどまる為に洸至は妹の髪にしか口づけられなかった。
だったら口づけなどしなければいいのだ。それはわかっている。
だが口づけせずにはいられなかった。
それ程の想い。そして、きっと永遠に届かぬ想い。

「お前は何もくれなくていいから」
妹の顔にかかる髪の毛を指で梳く。
「妹でいいから。ずっと俺の傍に居てくれ」
妹の眠るベッドにもたれかかりながら、洸至はその寝顔をいつまでも見つめていた。


2008/12/24 おまけ
鷹藤は待ち合わせ場所に急いでいた。
昼飯を食べていた時に、クリスマスイブにひとりで過ごす野郎同士で飲むぞという電話があった。
仕事終わりの時間が読めないので、適当な返事をしていたが、意外に早く終わったので鷹藤もそれに参加する
ことにしたのだ。

鷹藤がアンタッチャブルで働くようになってから、彼女とは別れていた。

その彼女とは友人の紹介で知り合い付き合っていたのだが、平日はもちろん、休日に事件が起これば呼び出し
がかかる仕事のせいですれ違いが続き、いつしかメールも電話も回数が減っていった。
そして好きな人が出来たという彼女からの電話を最後に、連絡は途絶えた。
今の彼氏が、彼女を鷹藤に紹介した友人だったというのを人づてに聞いた。

街中が浮き立っている夜に、マンションの部屋で一人過ごすよりは、束の間でも気の合う仲間同士で
飲んでいた方が楽しいに決まっている。
たとえ、その飲み会のあとで数倍の侘しさが押し寄せて来ようとも。

大声が聞こえた。女の声だろうか。道行く人々が大声の方向を見た。
「らによおぉ!見れもんじゃないわよ!」
前方でよろめきながら、こちらへ向って歩く女がいた。千鳥足でシャンパンボトルを片手に歩いている。
少し離れているので顔ははっきりとは見えないが、地味目の服装がなんとなく残念な印象を与える女だった。
「なんだあれ」
鷹藤が足を止め、茫然と見ていると、女がこちらを見た。
鷹藤は慌てて目をそらすと、また歩き始めた。
「女がひとりで歩いてるからって、声かけようっていうの!そんなに安い女じゃないんだから」
鷹藤の背に女の声が飛ぶ。

「違うってば。俺、そういうつもりねえし」
小さな声で言い訳めいたひとりごとをいいながら鷹藤は足を早めた。
こんなのに絡まれて約束の時間に遅れるのも厭だった。
「ちょっと、話は終わってないろよ」
その幸薄そうな女の大声があたりに響く。鷹藤は待ち合わせ場所に急ぐため走り出した。
前方に友人がいた。
「あの女の人、お前の知り合い?」
友人がにやつきながら鷹藤の肩ごしに女を見ていた。

「いや、知らない女。絡まれそうになってさ」
後ろをむけば女に絡まれそうな気がして、鷹藤は振り返らずに言った。
「結構美人なのにな。あんなひどい酔い方するんじゃ、彼氏大変だな」
友人が女の方をまじまじと見ながら言った。

「彼氏居そうに見えねえけどさ。俺だったらあんな奴の面倒見るのはごめんだな」

「それもそうだな」
「しろうちゃ~ん!ふぇっふえええっん」
辺りに響く女の声が、いつしか泣き声に変わっていた。
クリスマスイブに振られるなんて、ついてない女…。肩ごしに振り返ると、女も背を向けて、よろめきながら
歩いていた。
何故か気がかりで、その女がタクシーに乗るところまで鷹藤は眼で追っていた。
それから鷹藤は友人と肩を並べて歩きはじめると、華やぐ街の中へ消えていった。



ちなみに、お兄ちゃんがプレゼントしたマフラーは最終回で遼子がつけているマフラーのつもりで書きました。
エロなしすいません。


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クリスマスイブエピソード、GJ!!

エロ無しですが、兄は十分エロかったですw
マフラーの裏設定もいいですね。
それを頭に最終回を観ると、また萌えられそうですw
最終更新:2010年12月24日 07:04