奪還 投稿日 2012/05/01(火)
某刑事ドラマで銃を振り回している兄の中のひとを見ていたら出来た話です。
そしてなぜか鷹×遼です。今回も長いです。すいません。
新しく広い国道が造られた結果、敬遠され通行量が少なくなった旧国道沿いにそのラブホテルはあった。
廃業してから次の所有者が決まることなく打ち捨てられ、手入れがされていないのは一目見れば明らかだ。
外壁には蔦が絡まり、看板に明かりはなく空室を示すランプは割られたままだ。
駐車場出入り口にはベニヤ板が張られ、赤いスプレーの殴り書きが描かれていた。
客など入るはずもないそのホテルの前に、顔が映るほど磨き上げられた黒い高級車が止まった。
ドアガラスにも濃い色のスモークが貼ってあり、中の様子はうかがえない。
運転手が携帯電話を取り出し誰かに電話をした。
するとベニヤ板が左右に開く。
車は中に滑り込み、何事もなかったようにベニヤ板はもとあった場所に戻っていった。
ホテルの一室、かつては複数プレイ用に提供されていたパーティールームのドアを、黒いコートに身を包んだ
男が開けた。
白い壁はギリシア風の柱で支えられ、天井には星空が描かれている。星が蛍光塗料で浮かんで見えていた。
がらんとした部屋にあるのはドアから向って左側にダブルベッドが二つ置いてあるだけだ。
金目の家具類はすべて運び出され、テレビや冷蔵庫が置かれていた名残がカーペットに黒い跡として染みのようについている。
安っぽさと過剰なロマンティックさが同居する部屋の中央に広げられたブルーシートの上に鷹藤は居た。
ブルーシートの上にパイプ椅子が置かれ、両手を後ろでに戒められ、両足は開いた格好でそれぞれ結束バンド
で椅子の脚にくくりつけられている。
殴られた後らしく顔全体を腫らし、目の端が切れ鼻や口には黒く固まった血がこびりついていた。
鷹藤のそばで見張っていたいかつい顔にスーツ姿の男二人が急に背筋を伸ばし、部屋に入ってきた男に礼をした。
一見平凡な顔立ち、だが凄みのある表情が男の住む世界をうかがわせた。
黒コート姿の男は煙草をくわえたままかがみ鷹藤の顔をのぞき込んだ。
男の切れ長の眼は冷たく光る剃刀のような光を放っている。
「だいぶやられたじゃないか。でもそう苦しくないだろ?これがプロの仕事だ。
骨や内臓を傷つけずに長く痛めつける」
「う…るせえ…あいつは…」
さんざん殴られたせいで、息をするだけでも胸の激しい痛みに襲われる。
だが開かない眼をこじ開け、鷹藤は男を睨みつけた。
男は吸っていたたばこを親指とひとさし指で挟むと、鷹藤の顔へ弾き飛ばした。
瞼に煙草が当たり、鮮烈な痛みに鷹藤は声を上げた。
「お前たちみたいなのはな、すぐ山に埋めた方が簡単なんだよ。だが依頼主の希望でな。
特別オプションをすることになった」
男が顎で合図をすると、見張りの男たちが動いて入り口のドアを開けた。
そこには両腕を屈強な男二人に支えられた遼子が立っていた。
何時間にも渡って殴られ続けた鷹藤とは違い、着衣の乱れも殴られた様子もない。
が―――。
とろんとして定まらない眼からは普段の遼子の瞳にある光が消えていた。
かすかに開いた唇から垂れた涎、躰に力が入らない様子から見ると一服もられたのは明らかだった。
「女にはこれが一番だ。これをキメてヤると一晩じゅう腰を振ってくれるからな。こいつらもこれから大変だよ」
部屋に居る男たちが笑った。
それにつられて鷹藤と相対する男が口を曲げて笑みの形を作ったが、瞳の奥は洞穴のように暗い。
まだ遼子が汚されても、命を奪われてもいないと思って鷹藤は一瞬安堵したが、地獄はこれからだったようだ。
自分の命が奪われる以上の絶望感が鷹藤を襲い、耳の奥で血の気の引く音が聞こえた。
鷹藤の耳元に口を寄せると、男が囁いた。
「依頼主は相当お怒りでな。この女を輪姦させるだけじゃ飽き足らないんだと。それを撮って闇で売りさばくんだそうだ。
この女は病気もなさそうだから、ナマでいけるな」
「頼む…やめてくれ…。俺の命ならやるから」
顔を上げ、懇願する鷹藤の頬を男は硬い手のひらで軽くたたいた。
「おいおい。お前の命でカタがつくわけないだろ。それに女だってまさかそれだけで終わると思ってないよな。
幸せもんだぜ、あの女。飲まず食わずで死ぬまでヤりまくられた後、死んだらその後も男にヤってもらえるんだ。
それ専門の男優も連れてきた」
黒コートの男があごで示した先に居る、遼子の手を取る男達がにやりと笑う。
「…俺は観る気がしないが、マニアにはたまらんDVDができそうだ。本物の死姦だからな。
で、それを見ながら依頼主は酒を飲みたいらしい。そういう希望だ」
吐き気がこみ上げた。
男たちの依頼主は骨の髄まで腐っている。
依頼主の名は男たちが口に出さずとも、鷹藤にはよくわかっていた。
病や悩みで道を失った人々から金を巻き上げ、それで贅沢な暮らしをしている新興宗教の教祖である老人だ。
その教祖が作ったハーレムでの爛れた写真を入手した遼子と鷹藤は、スクープ記事のため私生活を探る過程で
ある愛人の存在に突き当たった。
狂信的な信者である両親に差し出され教祖の手に落ちたあまりにも若いその愛人は―――中学生だった。
鷹藤と遼子が協力してその娘を逃がし一時的にアンタッチャブル編集部で保護し、児童保護施設へと引き渡す手はずをつけた。
それが教祖の逆鱗に触れた。
聖人としての仮面を引き剥がしただけでなく、彼の手中の珠である少女まで取り上げたのだ。
老人は怒り狂い、北関東の寂れた田舎道沿いにあるラブホテルで今その罪人たちに罪を償わせようとしている。
「相手が悪かったな。でも最後の慈悲をお前に施してやるそうだ」
黒いコート姿の男が目で合図すると、鷹藤の傍らに立っていた男がジャケットの内ポケットから金属のケースを取り出した。
中には注射器とアンプルが入っている。男は無表情のままアンプルを折ると注射器にその中身を吸い上げる。
「やめ…!」
鷹藤が抵抗する前に、がっしりとした手で押さえつけられ首筋に注射針が刺された。
するどい痛みのせいで一瞬息がつまる。
「女とは違う薬だ。安心しろ。それに毒薬でもない」
薬が注入された首筋が熱くなってきた。
激しく心臓が動き、躰の熱が上がる。
荒い息をしながら、鷹藤が男に問うた。
「何を…」
「爺さん連中から大人気の薬さ。すぐに効果が現れる」
男が眼で合図すると、鷹藤の前に遼子が連れてこられた。
定まらぬ眼で鷹藤を見つめる遼子と眼が合う。
「たかふじくん…ごめ…んね…」
ようやく絞り出した声の奥から、遼子の理性が感じられた。
「いいんだ…俺こそあんたを守れなかった…」
「いいぞ。その調子だ」
強い光で眼を打たれ、鷹藤は顔をしかめた。
遼子と鷹藤の周りがライトで照らされ、まるで真昼のように明るくなっている。
カメラマンにはそぐわないチンピラ風の男が、鷹藤と遼子を撮影していた。
「座ったままで動きにくいだろうが、この女とヤるんだ」
「な…」
鷹藤は呆然とした。
「知らない男にヤりまくられる前に、お前がまずヤってやれよ」
ライトの向こうに居る黒コートの男の顔は逆光で鷹藤からは見えない。
だが口調から嘲っているのだけは感じられた。
「さんざん殴られた後だから勃つのか心配か?大丈夫だ。見ろよ、お前の。もう注射の効果が出てるじゃないか」
鷹藤が自分の股間を見ると、デニム越しにも隆々と膨らんでいるのがわかるほど勃起していた。
「お前がこの男とやったら、男だけは自由にしてやるぞ」
「本当に…?」
遼子の瞳が揺れていた。
「本当さ。嘘はつかない」
鷹藤と遼子がしばし見つめ合う。
男の言葉は信じられない。
だが、鷹藤と遼子に選択の余地などなかった。
「そいつの出してやれよ。苦しそうだろ」
遼子は言われるがまま鷹藤の前にひざまずくと、鷹藤のデニムのベルトに手をかけた。
「ごめんね…本当にごめん…」
遼子はそう言ってチャックをおろした。
鷹藤の意に反して男根は、厚く苦しいデニムから解放されたことを喜ぶかのように天をついた。
男根には血管が浮き、赤黒く色づき恐いくらいに漲っていた。
「まずは口だ」
遼子は、それを見て明らかに動揺していた。
男性経験などそうそうないはずの遼子なら無理もなかった。
「銃をつきつけてやらせるなんて興ざめなことをさせないでくれよ」
意を決した遼子が眼を閉じ、鷹藤のものを口に含んだ。
つぷっ…。
痛めつけられ続けた鷹藤の躰を、柔らかな唇がもたらす快楽が貫いた。
リンチされ、男たちの目にさらされているのに、こうも感じるのは鷹藤に注射された薬のせいもあるのだろうか。
今までに経験したことのない新鮮な快感だった。
「んっ…んっ…」
最初は浅くくわえていた遼子が、徐々に鷹藤自身をのど奥へ導いていく。
切なそうな喉奥からの声を出しながら、遼子が頭を上下させ始めた。
こうして肌を合わせることはこれが最初で最後かもしれない。
遼子の兄―――海に消えた名無しの権兵衛。
その記憶が、近づきかけた二人の気持ちを押しとどめていた。
遼子は鷹藤に対して罪悪感を抱え、鷹藤は遼子の心にある洸至の幻影を打ち払えるか不安だった。
だから常にともに行動していた鷹藤の心は遼子にこの上なく近いところにあっても、恋人になるまでは至っていなかった。
あの時、鷹藤が遼子に「守りたい」と言った気持ちは今も変わらない。
なのに遼子を守ることなどできずに鷹藤と遼子は悪人どもの手に落ち、その上、鷹藤の命を守るために遼子は嘲笑
されるのを承知で、恥ずべき行為を必死に行っていた。
張り裂けそうな程の罪悪感に襲われながら、甘美な快楽にも浸る自分を鷹藤は激しく嫌悪した。
鷹藤が思っていたとおり、遼子の動きは舌技など望むべくもない不器用な動きだった。
歯を立てないように、鷹藤の躰にこれ以上傷を付けないように、唇をすぼめ一心不乱に首を上下させている。
ただそれだけの行為なのに、鷹藤は呻き声をあげそうになるほど感じていた。
傷つけられ、打ちのめされた果てに自分がもっとも思い焦がれたものまで、衆人環視の前で堕落させた鷹藤の心は痛みで
きしみをあげている。
それなのに遼子の温かい口内は鷹藤自身をいたわるように優しく包む。
遼子の口内がもたらすあまりの気持ち良さと、自分への情けなさ、そして遼子へのいとおしさが混じり合い鷹藤は
悦楽と苦痛のるつぼと化していた。
最終更新:2012年06月17日 22:57