遼子の親を、上司を奪ったのは俺だ。遼子を守るため事件を捏造し、真実から遠ざけ続けた結果、
俺があいつに与えたのは犯罪者の妹としての汚名だけだ。
恨まれていて当然なのに、そんな俺の為に遼子は涙を流してくれた。
憐みだったのか、俺の魂を救えなかったことへの後悔なのか。
自分に破滅をもたらしたが、そんな女を憎めるはずがない。
そして忘れられるはずもない。
「でも、わたしだったら懲らしめちゃうかな。わたしがもしあなただったら、傷ついた分、相手にも傷を
負わせたいと思うもの」
軽い調子で女が言ったが、その言葉の中には鈍く光る悪意があった。
遼子は、自分の中にある正義を信じていた。
こんな世の中で、ジャーナリストとして取材をしていれば、人間に幻滅するような事件にぶち当たるのは
一度や二度ではないはずだ。
それでも、遼子は正義を信じた。理想を失わなかった。
緋山が語る理想は、聴衆を幻惑し己の利になる様に人々を操る為の詐術だ。
だが遼子は自分の青臭い理想を純粋に信じていた。
悪意だけは形として存在しているような世の中で、まるで幻のようにおぼろげな正義を求めて遼子は記者
として戦い続けていた。
巨悪を追求し、真実を暴くことでそれを形にできると信じているように。
そんな妹の姿が洸至には眩しかった。
決して手にできない光をその中に見ていた。
そんな遼子とは違い、この女は何も信じていない。
人間など信じていない。遼子の生き映しだが、まるでコインの裏表だ。
遼子が陽の光なら、この女はその影だ。
遼子が善を信じるなら、この女はその逆。
微笑む女の口元は、闇夜をくり抜くように浮かぶ月のようだった。
「嘘ですって」
洸至の微妙な変化を読み取ったのか、女が悪戯っぽく笑った。
「変なこと言っちゃって、ごめんなさい。今日待ち合わせの人が遅れているものだから…」
「振られそうですか」
硬くなりかけた空気を和らげるように洸至が言った。
「そうかもしれませんね。もしそうだったら、今日はあなたに付き合ってもらおうかしら」
グラスを口元に運んだ洸至が手を止めた。
「相手に振られた、似た者同士って気がするし…」
女がそこで言葉を切った。店のドアが開く音がした。
息せき切って入ってきた客が、女の隣に座った。
「すいません。仕事で少し遅れました。待ちましたか」
半白の髪を撫でつけた、整った顔立ちの中年の男だった。
贅肉のないタイトなスーツ姿は中年の臭みなど感じさせず、今でも若い女を惹きつけそうだ。
「いえ…。あの方がお話相手になってくれて」
男が女越しに洸至を見て会釈した。
それから女に男は囁く。
「よければ、食事にでも行きませんか」
囁き声の中に潜む雄の本能に気付いて、洸至は心の中で笑った。
中年にもなって、この男は女の躰を待てないらしい。完全にこの女の虜と言ったところか。
「そうですね。行きましょうか」
女の中にある余裕。誰がこの関係をコントロールしているかは明らかだった。
二人が席を立った時、女が洸至を見た。
「お話できて楽しかったです。また、お会いできたらいいですね」
「ええ」
あいさつ代わりに洸至はグラスを掲げた。
女が店を出ていった後も、女がつけていた香水の残り香が漂う。
この香水はあの女には似合わない。きっと、さっきの男の好みに合わせたのだろう。
柔らかさと甘さの中に少し幼さが漂う匂い。少し野暮ったい様な、日向の香り。
―――まるで、遼子のような匂い。
「同じものを」
バーテンダーがうなずくと、洸至のグラスに琥珀色の液体を注いだ。
洸至は、残り香に包まれながら女が呼び起こした妹の記憶と、もう少しだけ酒を飲むことにした。
お兄ちゃんmeets遼子のそっくりさん。たぶん名前はマイ(ry
自己満足でした、すいません。
現在「本誌美人記者による体験手記」お兄ちゃん篇書いてます。
仕上がったら投下します。
うおぉぉぉぉ
マイ○ーさん(仮名w)キターーーーー!
素晴らしいコラボ、ありがとうございます!
そして東京では、遼子が某管理官とその先輩が食事している所に
同席してしまうんですね、わかりますww
体験取材のお兄ちゃん編も、楽しみにしてます。
イイヨイイヨー(・∀・)
そしてお兄ちゃんは籐カバンを持った手品師とか
ジャージ着用のメガネ女教師も見かけるのですねww
ん?思ったより絡みづらいな・・・
最終更新:2011年04月15日 22:43