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鷹藤萌えなので。
鷹藤カゼで寝込む。見舞いにいって…
鷹藤とカップルにふんして取材。
鷹藤と車で張り込み中に。
シチュ希望。


「張り込み」by184 さん  投稿日2010/08/17


背の高いマンションが立ち並ぶ中にある、猫の額ほどの小さな児童公園。
真夜中も過ぎれば、そこにある遊具で遊ぶ者などいない。
木枯らしが寂しくブランコを揺らしていた。

公園の植栽前に止められた一台の車の中から、鷹藤がその様子を物憂げに見ていた。
「そっちはどう。動きあった」
「ないわよ」
「寒いな。今晩このまま朝までコースかね」
暖かくしすぎれば眠くなる、という理由から車のエアコンの暖房は弱めにしてある。
「しょうがないじゃない。居眠りして、撮り逃すよりマシよ」
助手席の遼子は、マンションの出入り口から眼を離していない。
「早いところ来てくれりゃあ、撮って帰れるのにさ」
「こっちの都合で相手が動いてくれることなんかないわよ」

スクープ写真が撮れるまで帰ってくるなと言われ、二人はいま張り込みをしていた。

編集長の樫村が掴んだネタは、若手政治家のスキャンダルだった。
国会での雄雄しい質問ぶり、歯切れのいい演説、恵まれた外見は彼を所属する党内でも1,2を
争う人気議員にしていた。
その男が不倫しているらしい。しかも先輩議員の妻と。
鷹藤にしても、遼子にしても、そいつが誰と恋愛しようがどうでも良かったが、雑誌記者とは
所詮はサラリーマンであり、給料の為には意に沿わぬ仕事も行わなければならない。
今夜の張り込みも、そんな仕事のひとつだった。

「やだ」
「どうした」
「警察よ」
二人の車の前方から、パトロールの警官が二人歩いてきた。
「政治家のマンションがあるから、パトロール多いのかもな」
ここで職務質問を受けて、移動したら、その分時間も機会もロスしてしまう。
「しょうがねえな。いつもの手、使うか」
「うん」
鷹藤が遼子へ覆いかぶさると、軽く抱きしめるふりをした。
車内でいちゃつくカップルを演じれば、警官も見逃してくれることが多かったので、張り込みで
警察に通報されたときは二人でそんな演技をして誤魔化すことにしていた。

もちろんキスなどしないし、あくまでそのふりをするだけだ。
それでも、息がかかるほどの近くに遼子を感じるとき、いつも鷹藤の心臓は高鳴っていた。

遼子に囁く。
「見てるか」
「見てるわね」
覆いかぶさっている鷹藤に車外の様子は見えない。
遼子から様子を聞きながら、あまり密着しないようにして抱きしめるふりをしたままでいた。
無理な姿勢に鷹藤の筋肉が強張る。
「離れないわね」
「のぞきじゃないよな」
「制服着てるもの。政治家のマンションが近いから、疑ってるかも」
「まいったな…」


一瞬の間の後、遼子が言った。

「しょうがないわね。唇、借りるわよ」

遼子が鷹藤の頬に手を添えた。

頬に添えられた遼子の手は冷たかった。
だが、唇は温かかった。
すごく温かかった。

遼子のそれは、キスと言うよりただ唇を強く押し付けた不恰好なものなのに、鷹藤の鼓動ときたら
ドラムが乱打するように激しく高鳴っている。
ヘッドレストのあたりに置いていた鷹藤の手が、徐々に下がり、遼子の背中に廻された。
遼子の背が強張るのを彼女のジャケット越しに感じていた。

本人は否定するだろうが、多分コイツは奥手なはずだ。

妄想上では経験豊富らしいが、鷹藤が何かの拍子に遼子に触れたときには、いやらしいとか
下心が見え見えなのよとかなんとか大騒ぎしたくせに、それなのに、今していることは何だ。

遼子は取材となればまるで別人になる。
常識から解き放たれ、驚くほど執拗に、そして大胆になれる。

戸惑い続ける鷹藤をよそに、遼子が唇をはずして鷹藤の首を抱くと、その耳元に唇を寄せた。
まるで愛撫するように吐息が鷹藤の耳朶をくすぐる。

「まだ見てる」

鷹藤も囁き声で返す。

「どうすんだよ」

「…もうちょっと続けるわよ」

その言葉を聞き終える前に今度は鷹藤の体が動いていた。
今度は鷹藤から唇を重ねる。

そんな鷹藤に遼子は少し驚いたようだが、まるで本当の恋人を迎えるかのような自然さで、
その唇をそのまま受け入れた。
鷹藤は身を乗り出し、遼子の背にまわした腕に力をこめ相方の細い体を抱き寄せる。

上手に嘘を吐くなら、嘘を吐いていると思わないことだ。
飲み会の席でこんなことを言っていたのはたしか樫村だったか。

いま鷹藤がしているのは、警官をだますための嘘だ。
そのためのキス。


だが、真に迫った嘘が、鷹藤の本当の心をあぶりだす。
嘘ではなく、心からのキスを求めていた。
いま鷹藤は狂おしいくらいにせつなく感じている。

せつなさに引きずられるように、鷹藤は遼子の口内に舌を潜り込ませた。
やりすぎなのはわかっていた。
遼子は怒るだろうか。それとも押しのけるだろうか。

しかし、その舌に遼子の舌が絡みついてきた。
鷹藤の口内に侵入し、歯を舌を探りはじめる。
合わせた唇から溶け合うように二人はお互いを貪りあっていた。

「どんな様子だ」
「こんなところで盛り上がってるよ」

車外から話し声が聞こえる。

「ホテルにでも行けよなぁ」

その言葉を潮に、話し声が遠のいていった。

見せる相手がいなくなったはずなのに、二人はまだ合わせた唇を離せないでいた。
絡み合う舌に、首にまわされた腕の力の強さに、鷹藤の中にもしかしたらという想いが過ぎる。

その刹那、遼子が鷹藤を突き飛ばした。

「な…」
「鷹藤君、来たわよ!撮って!」

遼子の視線の先。
高級車から降りた男が、女の背に手をまわし、マンションのエントランスへと向かって歩いていた。

瞬時にカメラマンの自分へと意識を引き戻し、足下に隠していたカメラを掴むと被写体へと向けた。

「撮れた?」
「当たり前だろ」

正直なところ、タイミングとしてはギリギリだったが、辛うじて使えそうなものは撮れた。

「あとは出待ちか」
「そ、そうね」

助手席の相方は、さっきまでの落ち着きと大胆さがすっかり消え失せ、うろたえきっていた。

「またあいつらが来たら、さっきの手は使えねえな。そうしたら撤収すんぞ」
「う、うん」

今更になって恥ずかしさを感じ始めたのか、暗がりでもわかるほど顔が赤くなっている。

「どうした」
「鷹藤くんって意外とやるじゃない」
「はぁ?」

「け、警官を煙に巻くお芝居、鷹藤くんのおかげでうまくやれたわ。経験豊富な私についてこれる
 なんて、鷹藤君も隅におけないんだから」

淀みなく言っていれば、少しは本当らしく聞こえるが、しどろもどろな上に所々つっかえながら言って
いるので、動揺してるのがバレバレだった。

最終更新:2010年11月09日 09:11