アフタヌーンティーブレイク by86さん 投稿日 2011/11/14(月)
遼子×坊ちゃんの言葉攻め女王様プレイSSできました。
でもエロくできませんでした…。
とある屋敷の前に鷹藤の車が止まっていた。
ハンドルに顎を乗せ少し心配そうな表情を浮かべ、鷹藤は屋敷入り口の固く閉ざされた門扉を見つめていた。
しばらくそうしたあと、鷹藤は車を発進させ走り去った。
鷹藤が見つめていた屋敷――。
そこの入り口では薔薇の花が芳しい香りを漂わせながら、アーチを作り門扉を彩っている。
アールデコ風の門扉を開けると車一台がやっとの小道が折れ曲がりながら坂の上へ続いていた。
坂の途中には西洋式に手を入れられ栗鼠や白鳥といった生き物を象った植木が小道の横に立ち並び、来るものを
館へと誘う。
それらオブジェが立ち並ぶ西洋式庭園の向こうに白い洋館が立っていた。
ここだけ見ると、日本ではなく欧州の別荘地に迷い込んだようだ。
その洋館の回廊を、黒と白の制服を着たメイドが紅茶の茶器と菓子を載せたワゴンを押しながら歩いていた。
大理石の廊下を、音を立てずにワゴンは静かに進む。
メイドは、ひざ丈の黒のワンピースに白のフリルのエプロンをつけており、豊かな黒髪をひとつにまとめ額の
上にはホワイトプリムをつけている。
メイドの足が止まる。大きな扉の前に来ると、美しい横顔に一瞬翳りが浮かんだ。
大きく息を吸いこんでから、2メートル半はあろうかという華やかな装飾をされたドアをメイドは控えめにノックした。
「おぼっちゃま、お茶のお時間です」
鈴の音のような、透き通る声の持ち主だ。
「入れ」
メイドがドアを開けると、30畳程はあろうかという広大な部屋に入った。
金で装飾されたアンティーク家具がところどころにおかれ、中央には直径2メートル程の大きさの猫足のテーブルがある。
きれいに整えられたブロンドの髪と、深緑色の瞳を持つ人形のように美しい顔立ちの男がそのテーブルについていた。
男の顔には少年から青年になりかけるころの、瑞々しくもどこか男らしい雰囲気が漂っている。
テーブルの上には組み立てている途中のカードハウスが載っていた。長く細い指で青年はカードを載せ、一段、
また一段と積み上げていく。
4段目の途中まで出来たところで青年は手を止め、メイドを見た。
「もうそんな時間か」
日本人の顔立ちではないが、青年は完璧なアクセントの日本語でメイドに話しかけた。
「ええ」
「今日は何をして楽しませてくれるんだい?」
そのメイド―――鳴海遼子はぎこちなく微笑んだ。
「今はお菓子の時間ですわ」
遼子が青年の横までワゴンを押し、紅茶の茶器や菓子類をテーブルに並べ始めた。
「じゃあ、僕に食べさせてくれ。いま手が塞がっているんだ」
その言葉を聞いた遼子が、菓子が載った皿からチョコビスケットをひとつ指でつまむ。
ゆっくりと二人の間にそれを掲げる。
青年が餌を待つ小鳥のように口を開ける。
すると、遼子は主の口ではなく自分の口の中へ入れた。
「おいしいよ」
無邪気な残酷さ漂う笑みを浮かべ、遼子はゆっくりとチョコビスケットを味わった。
「僕には食べさせてくれないの…?」
青年が唾を飲み込み、艶めかしく動く遼子の唇を見つめていた。
「ただで味わえるとお思いですか?おぼっちゃま」
背筋を正し、手を腰のあたりで組み合わせ遼子が青年を睥睨する。
主従が逆転し、あたかもこの場を支配する女王のような風格すらその姿からは漂っていた。
「今日は…どうしたら僕にお菓子をくれる」
青年が喘ぐように言う。
「くださいますか?じゃないのかしら。それにそんな高いところから私にお願いするなんて間違っているわ」
遼子が冷然と言い放つ。
「も、申し訳ございません」
青年は椅子から飛び降り、床に額をこすりつけるようにして許しを乞うた。
その姿を見下ろす姿はまるで女王だが、その実、内心では遼子は狼狽しきっていた。
―――メイドの連続失踪事件を調査しろ。
名無しの権兵衛を追いかけるあまり、暴走しがちな遼子に対してお灸代わりに樫村が言い渡した仕事がこれだった。
とある屋敷で勤務していた若いメイドが連続して失踪していた。
家族は捜索願を出したが、事件性はないとして警察は取りあおうとしなかったらしい。
そこで家族は伝手を頼って城之内にこの件を持ちこみ、そしてそれが編集長の耳へ入ったのだった。
この記事に、グラビアアイドルにメイド服を着せた巻頭グラビアを載せた『メイド総力特集号』として売り出し、
部数を伸ばす目論見のようだった。
グラビアアイドルのメイド服姿を想像してにやける樫村の顔を見る限り、それは部数の為といった職業上の理由
だけではなく、彼の趣味も多分に反映されているように見えた。
「メイドなんて今更…それより名無しの権兵衛を追う方が…」
白けきった声で遼子が反論すると樫村がこう遮った。
「そういや言っていたな、マンションの敷金礼金が欲しいって。ボーナスが出れば、それも夢じゃないぞぉ。
…ボーナスが出れば、の話だけどな。言っておくが、この取材しなければボーナスは無いぞ」
遼子はいやいやその屋敷のメイドに応募することとなった。
採用されるわけがないと思っていたのだが、何故かあっさりと書類選考も通過しその屋敷のメイドとして採用された。
そして今は日中のみ、この青年専属のメイドとして勤務している。
「―――わかればいいのよ」
這いつくばる青年へ遼子が言い放つ。
甘いお菓子の時間のみの危険なゲーム。主従を逆転させ、主となった者が従者を言葉で虐げる。
これが遼子を雇うにあたって出した、青年の条件だった。
君なら完璧にこなせるはずだ、青年は遼子の履歴書から眼を上げた時満足げな顔をしてこちらを見ていた。
元々裕福な家庭に生まれ育ち、その上天才的なゲームデザインの才能を活かし巨万の富を得た青年だったが、
丈夫ではないために外に出ることはほとんどない。
メイドを雇うのも実利的な目的よりも、日々屋敷に閉じ込められた鬱憤を晴らし、生活に潤いをもたらすためだ。
そして彼が望む行為―――それがこのゲームだった。
遼子がサディスティックに振舞えば振舞う程青年の眼が輝き、蒼白い顔に赤みがさしていく。
人形のような冷たい顔立ちに命が宿る。
体に手を触れないことが、このゲームの最低限のルールだ。
遼子もそのルールがあるからこそこのゲームをすることができるのだ。
それにこのゲームにメイド達の失踪の鍵が隠されているような気がして、遼子も付き合っているのだが―――。
最近では自分でもわからない衝動がこみあげてくる時があった。
今もそのスイッチが入りかけている。
「お願いします。私にお菓子を…」
「お菓子、お菓子って食べ物のお話ばかり。いじきたないわ」
遼子が今度はチョコレートを口に運んだ。
普段は男性と、しかも遠山並みかそれ以上という美形の男性と二人っきりであればしどろもどろになってしまう
のだが、彼をいたぶる言葉を吐くときはまったくつかえることなく言葉が出てくる。
「あなたが選んだチョコレート、とってもおいしい」
チョコレート専門店のチョコレートだ。一粒1000円近くする。普段の遼子なら決して味わえないチョコレー
トをゆっくりと食べていると、遼子の口元を凝視していた青年の喉が鳴った。
「誰がそんな風に音を鳴らしていいと?」
「申し訳ございません」
「言葉ばかりじゃあなたの気持が見えないわ。もし、本当に申し訳ないと思うならあなたの気持を見せて」
普段は食べられない高価なチョコレートを頬張ることに気をとられ、深く考えないで放った言葉だった。
しかしそれを聞いた青年の眼が妖しく光った。
「僕の気持ちですか」
「わたしにお願いするんだから、何か気持ちがわかるものを見せてもらわないとわからないわ」
「よろしいのですか」
青年が乾いた唇を舐めた。
「で、ではご覧ください」
青年が頭をあげ、背筋を伸ばし正座した。
が、その股間に隆々とした膨らみがある。
「えええええっ…」
遼子が初めて目の当たりにする男性自身を隆起させた姿。
あまりの禍々しさに遼子は顔を手で覆った。
初めての衝撃に叫び声をあげたいところだったが、記事の為に遼子はそれを堪えた。
ここで逃げたら今までの苦労が水の泡だ。
「これが私の気持ちです…」
青年が陶然とした声で言った。
「きゃあ!いやあっ!わたしにそんなもの見せないで!」
遼子がボウルからチョコレートをわしづかみにすると、そこに投げつけた。
バラバラと音を立てて丁度そこを弾くように当たる。
「うっ」
痛みというより快感の甘い呻きを青年が漏らした。
「そのチョコレートをあげるからそれを元に戻して!」
遼子が眼をそこから眼を逸らしながら言った。
「それが簡単に戻らないんです。遼子さま」
青年が膝でにじりより、遼子のふくらはぎに両手で縋りついた。
いままでこんな風に男に触られたことなど無かった遼子の頭が真っ白になった。
「離してよおお!」
縋りつかれた足を遼子は思わず払ってしまった。
足蹴にされた青年は床に仰向けに転がった。
だが股間の隆起したものはそのままだ。
「お願いです、遼子さまが戻してください」
触れてはいけない―――。
このルールが崩れたいまゲームは終わったはずだ。
「ご、御主人様は私に触れたんですよ。ゲームはおしまいです」
遼子の口調は元のメイドものへ戻り、丁寧語で主に呼びかけた。
「違う。今からゲームは変わったんですよ」
青年は仰向けのままで遼子を見つめた。眼には妖しい光が宿っている。
「あなたが変えたんだ。またひとつ上のゲームに」
最終更新:2012年01月04日 14:55