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「CRAZY TAXI」357さん   投稿日2010/10/20


需要が無いのに出来てしまった、遼子×変酋長もとい、編集長の羞恥エロ。
つまり珍品です。しかもエロくない様な気もしますが投下。



今日は遼子がアンタッチャブル編集部に来て初めての編集部全体での飲み会だった。
名無しの権兵衛がらみの記事が大当たりを続け、アンタッチャブルの部数は伸び続けていた。
そのことの祝勝会と、遼子の遅ればせながらの歓迎会を兼ねて、ささやかな飲み会を開いたのだ。
そこで樫村は遼子に掴まった 。
樫村の隣で、樫村の向いで、アンタッチャブルの編集方針への疑問と、自分が信じるジャーナリズム
への情熱を延々と語った。
遼子の話に適当な相槌を打ち、樫村はただグラスを煽っていた。

自分もあと十歳若ければ、もう少し熱くこいつと語り、討論していたろう。
だがそうするには年を取り過ぎた。
自分の命か、記者としての魂を売るかをヤクザに拉致された時、聞かれた。
その時樫村は前者を取った。だから俺には記者としての魂なんかない。悪魔に売ったんだ。
だから、提灯記事を書くことに何の抵抗もない。ペンを走らせるのは樫村にとってメシの為であり
正義の為ではない。
だが、遼子の青臭いジャーナリズム論に眼の奥が熱くなる。それは嫉妬と言うより怒りだった。
死の恐怖に晒されたことのないやつに俺の気持ちなどわからない。
そのくせ理想だけは一人前に語りやがる。
遼子に悟られぬよう、ひとり拗ねた心を抱えて樫村は相槌を打ち続けた。

ジャーナリストなら、論争なら論争で、言葉には言葉で答えるべきだろう。
「まあ、鳴海君、固いことばっかり言っていても、部数が伸びない。そうなったら、君も俺も
 食えなくなっちまうだろ。目をつぶる時には目をつぶるのも処世術さ。さあ、飲めって」
だが樫村は酒で遼子を沈黙させることにした。記者としての魂など、もうないのだ。
言葉は酒で封じよう。
延々と酒を勧める樫村と、論争を吹っかけては樫村から酒を注がれそれをあおる遼子を、鷹藤が
眠りこけた城之内の隣から心配そうに見ていた。
「編集長、そんなにそいつに呑ませると、後が大変ですよ」
「大丈夫だよ、酔っ払いの一人や二人」
山奥で俺に人ひとり分の穴を掘らせ、それからその前にひざまずかせ、一晩中死をちらつかせて
脅かし続けたヤクザに比べれば酔っ払いなど大したことはない。

それより、遼子の理想論が耳触りだった。かつて自分が持っていたジャーナリズムへの信頼と理想。
それを遼子が樫村に突きつける。樫村が失ったものをまだ抱え持っている遼子の眼の奥にある光。
そこに嫉妬と羨望を覚えつつ、樫村はあえて陽性の声を出した。
「さあ、部数アップの功労者なんだから、どんどん飲めよお。鳴海君。飲んだらますますきれいに
 見えるぞ」
遼子のグラスにワインを注ぐ。
「えっ、もう、編集長ったらお上手なんだから~」
乗せられた遼子が、またグラスを空ける。
「鳴海さん、いい飲みっぷりだね!」
里香の隣から、中原が声をかける。遼子は調子に乗り、手酌し始めた。
その様子をみて鷹藤が更に心配そうな顔をした。

飲み過ぎて潰れた城之内と遼子を、それぞれ帰る方向が一緒である鷹藤と樫村が送っていくことになった。
「編集長、大丈夫ですか。コイツ、ほんっと酒癖悪いから。なんならコイツ、俺が送っていきますよ」
「大丈夫だって。それより城之内さん頼むぞ」
「でも…」
真っ青な顔をして苦しげにしている城之内の世話の方が、樫村には大変そうに見えた。
樫村がちょうど通りかかったタクシーに気付いて止めると、城之内と鷹藤に乗るように促した。
「そっちの連れの方が具合悪そうだから、早く家に帰してやってくれ。こっちは何とかなるから」
そう言って先に乗せたはいいが、それからタクシーが通らない。

途方に暮れた頃、ようやく一台のタクシーが通りかかった。
運転手に行き先を告げ、樫村はようやく一息ついた。
もう少しでこの女から解放される。後部座席に体を預け樫村は目を閉じた。
その時、樫村の肩に遼子の頭が乗せられ、樫村が驚いて遼子の方を見ると寝息を立てている。
「史郎ちゃん…」

史郎…?国民ジャーナルの遠山のことか。そういえば、遼子はそいつにストーカーまがいの行為を
して別れられたとか。まだ未練があるらしい。
…どうでもいい。
酒臭いタクシーの窓を少し開け、樫村は新鮮な外の空気の匂いを嗅いだ。
今度は樫村の手に遼子の手が重なる。
「鳴海君…」
「んふふ、史郎ちゃん…」
今度は樫村の首筋に遼子の手が這う。
「鳴海君!ちょっと待て、君、何してるんだ」
「何って、史郎ちゃんに甘えてるの」
遼子が狭い車内で、樫村ににじり寄る。樫村も狭い車内で逃げ続ける。

「俺は樫村だ、鳴海君、目を覚ませ」
後部座席のドアに樫村の背が当った。
「史郎ちゃん…」
「ちーがーう!」
ようやく、遼子がきょとんとした顔で樫村を見た。
「あ、編集長」
「正気に戻ったか…鳴海君…」
「史郎ちゃんじゃないんだあ」
そう言って、突然遼子が樫村の太ももの上に突っ伏した。
「って、お、おいっ」
遼子の肩を掴み上に向けると、遼子はすでに寝息を立てていた。

…なんて迷惑な女なんだ。
飲み会の時は延々と絡み続け、タクシーに乗ったらかつての恋人と間違い続けた。
力の入らぬ遼子の体を引き上げ、後部座席に身を預けるようにしたが、すぐに樫村の方へともたれかかってくる。
また後部座席に座らせる。遼子がもたれかかる。樫村はそれを何度か繰り返した。

その度に、遼子の髪から漂う甘い香りを強く感じるようになっていた。
汗ばんだ肌から立ち上る、女特有の体臭。
そういえば、最後に女を抱いたのはいつだったか。
肩や腕に触れる遼子の柔らかな感触がそんな思いを呼び覚ます。
何度目か、樫村の肩に遼子の頭がもたれかかって来た時、樫村は物憂げに遼子の背中に手を廻し抱き寄せた。
眠る遼子を見つめ、顔にかかったおくれ毛を指で梳くと、樫村は遼子にキスをした。

最終更新:2011年01月07日 20:44