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俺の忘れたい記憶と、忘れたい理想を揺さぶって、その上忘れかけていた男としての本能まで揺さぶっておいて、
寝て終わりって訳にはいかないさ。
―――これくらいの迷惑料、いいだろ?

眠りながらも遼子の唇がついばむような動きをした。樫村が驚いて動きを止めると、とろんとした目で
遼子が樫村を見た。
「史郎ちゃん…」
都合良く誰かと誤解しているらしい。
抱き寄せる手に力を籠める。久しぶりの女の躰の感触に樫村の体の熱が上がる。
そしてそのまま、また遼子にキスをした。
すぐに舌が絡んでくる。自分を捨てた恋人としているつもりなのだろう。
女の吐息の甘さ、舌の柔らかさに溺れるように口づけた。

その時、タクシーの運転手がバックミラー越しにチラチラとこちらを見ているのに樫村は気付いた。
樫村は唇を外し、運転手に話しかけた。
「運転手さん、最初の目的の場所まで、あとどれくらい?」
運転手の眼鏡の奥にある神経質そうな目が揺れた。
「あ、あとですか。えーと20分くらいですかね」
「チップはずむから、ここで起こること見ないふりしてもらえる?」
「お客さん、ちょっと、それは…」
「2万円上乗せするよ。20分で2万円。普通に稼ぐとしたらもうちょっと時間かかるだろ」
「ええ、それは」
「犯罪じゃないから安心してよ。俺の彼女だから」
その言葉に納得はしていなさそうだが、運転手は前を向いた。
「ほどほどにしてくださいよ。それと」
「チップは渡すよ」
運転手がタクシーの速度を緩めた。時間通り楽しませるつもりか。

20分。
それが樫村が買い取った時間だ。忘れたい記憶を揺さぶった部下へのささやかな復讐のための時間。
そして自分の欲望をほんの少しだけ充たす為の時間。

樫村が遼子を自分の膝に乗せると、後ろから遼子と唇を合わせる。
「んっ、史郎ちゃん駄目…見てる」
「大丈夫。あの人なら忘れてくれるし、だったら見せつけてやればいい」
シャツの下に手を入れ、ブラジャーの上から柔らかな肉を揉む。
「史郎ちゃん、いつも、こんなことしないのに…今日は…あんっ」
いつも。後ろ髪を横に流して、露わにした遼子の首筋に唇を落としながら樫村は思った。
…遠山と別れたのは国民ジャーナル時代のはずだ。

いつも。いつも、こうなった遼子を送っていたのは…。
鷹藤。
あいつも相棒の酒癖の悪さにつけ込んだ口か。
だから俺が送ると言った時、心配そうな目をしてこちらを見ていたのか。

「今日はいつもより楽しめるかもしれないぞ」
樫村が膝に乗せた遼子の右足を抱えて、開かせる。
「きゃっ…。やめて」
少し声が出たが、運転手の存在に気付いて遼子が声を呑みこむ。
「鳴海君の家に着くまでだけだ。その間だけ楽しもう」
遼子に囁き、首筋に口づけた。右足を抱えていない方の手が、遼子のスカートの下へ入れられた。
「駄目…」
「鳴海君のはミニじゃないから、脚を上げたくらいで運転手さんから見えたりはしないさ。でも、見られたいのか?
 見られて興奮したいのか」
「ち、違う…」
指先が下着に触れた。そのままその下に潜り込ませる。

「ひゃっ」
樫村が耳たぶを舐めると、遼子からまた小さな悲鳴が上がる。
「鳴海君…すごいことになってるぞ、ここ」
指を細かくふるわせ、遼子のそこから溢れそうになっているものの音を立てた。
猫がミルクを舐めるような音が車内に響く。
「やめ…止めて…」
「声出すと、聞かれちゃうよ」
そう言いながら、樫村は遼子の亀裂に中指を侵入させた。
「…ひぃっ!!!!!!」
遼子の背が一瞬のけぞり、息が止まる。狭い車内で、しかも誰かに見られている行為が更に遼子を煽るのか、
たった指一本で相当感じているようだった。遼子の熱く潤む感触に気を良くして樫村は指を縦横に蠢かす。

バックミラー越しに、運転手が二人の痴態を見ていた。樫村と運転手の眼が合う。
それは非難している眼ではなかった。覗き見ることで共犯者となった者の眼だ。
だが遼子は目を閉じ、自分を襲う快楽からそのことに気付いていない。
右脚を抱えていた手をはずし、その手で樫村が遼子の顎を持つ。
そしてミラーへと目を向けさせた。
「いやっ」

運転手の視線に気づいた遼子が目をそらそうとするが、樫村が顎を押えているので顔が動かせない。
「この運転手さん口が堅いんだよ。見せつけてやれって。それに、見られてるのがわかった時、君のここ、
 凄く締まったんだぜ」
「もう…やだ!やめて…史郎ちゃ…っっ!!!」
遼子が言い終わらないうちに、今度は突き上げるようにして指二本で掻き回し始めた。
「いやぁあああ…んっ」
拒否の言葉を吐くが、口を半開きにしてのけぞりながら遼子が快楽に呑まれ始める。

「はぁっ、あっ、あんっ」
下から突き上げられ、捏ねまわされる遼子の腰が蠢く。狭い車内に、遼子の水音が響く。
「運転手さんが事故らないように、声、もう少し堪えたらどうなんだよ」
「で、でも、出ちゃうの」
「見られて感じるのか。理想や正義を語る癖に、こんな風にして腰振るなんて、ただの変態だよ鳴海君は」
遼子の奥がまた体温を上げ、樫村の指に肉が絡みつく。
運転手が後部座席の窓を少し開け、充満した雌の匂いを外に逃がす。

「お前の匂いで運転手さんもおかしくなりそうだって。窓、開けられちゃったぞ。声を出したら、外のみんなに聞える。
 そうしたら、みんなが淫乱なお前を見るんだよ」
「や、止め…」
口では嫌がっても、樫村のズボンが濡れるほど、遼子のそこから蜜が滴っていた。
さらに出し入れのスピードを上げる。
「きゃっ、んっ、んんんっ」
嫌がりながらも遼子の腰も一緒に跳ねている。
運転手の視線と、声を堪えなければならない状況に遼子の理性は溶けはじめていた。
理性が消えうせた先にあるのは悦楽に溺れる本能だけだ。
遼子の息が上がる。遼子の背中の筋肉が強張るのを、抱きかかえた樫村は感じていた。
「いきそうなのか」
「だめっ、もう止めて…お願い…きゃああぁっ」
遼子の亀裂に押し付けるようにして更に強く指を叩きつける。
激しくぶつかる肉の音と はしたない水の音が樫村と遼子の耳を打つ。

最終更新:2010年11月08日 23:38