アットウィキロゴ
「片山×薬×遼子」 by215さん  投稿日2010/09/14


もう、ほとんど眠っているのかもしれない。
意識がアルコールで溶けて、ここちよく無意識の海を漂っているように見えた。

「んふふ…。史郎ちゃん…」

誰に抱かれた夢を見ているのか、目を閉じたまま遼子は微笑んだ。
片山は腕に抱いた遼子のうっすら開いた唇の奥へ、大振りな丸い錠剤を入れ、
舌に乗せる。
ミネラルウォーターを口に含むと、遼子と唇を合わせて流し込んだ。
零れ落ちた水が遼子のシャツを濡らすのも構わずに、舌で錠剤を喉の奥へと押し込む。
そのまま暫く遼子の舌を嬲りながら、片山は薬の効き目が現れるのを待っていた。



「相談?わたしに?」
電話口で片山はおずおすと言った。

「他に相談できる女性がいればいいんですが、生憎職場にそういった女性はいないし、
鳴海さんに話すのも気恥ずかしい内容なんですよ。実は、今付き合っている彼女の
ことを相談したくて。俺が忙しすぎて、すれ違いが続いてもう駄目になりそうで…。
もし、遼子さんが良ければですが、相談に乗っていただけませんか」

口からでまかせだった。
だが遼子はすぐに食いついた。

恋愛の相談なら任せて、とか、他でもない片山さんの相談なら乗ってあげなきゃね、
お兄ちゃんだってお世話になってるし、といいつつも、その言葉の向こうからむき出し
の好奇心が垣間見えた。

スキャンダリズムはジャーナリズムではないと普段は息巻く遼子だが、他人のプライベート
を覗けるチャンスをみすみす見逃す程大人しい性格では、雑誌記者はつとまらない。

待ち合わせをしたチェーン店の居酒屋で、片山がさりげなく勧めた酒を遼子はぐいぐい
と飲んだ。
ビールから始まり、ワインに焼酎、日本酒と度数が増えていくのもお構いなしに飲み
続けた。
いつしか片山の相談はそっちのけで、遼子は自分の恋愛(というより片思い)と職場の
同僚(主に鷹藤)への愚痴を語り続けていた。
そして、遼子は思惑通り酔いつぶれた。




「遼子…さん」
「あれ…。ここ、どこ…」
「俺の部屋ですよ。遼子さんちょっと酔っちゃったんで、部屋で休んでたんです。
憶えてます?」
「ん…、なんだか頭がぼんやりする…」
「飲みすぎちゃいましたね。お互い」

「あっ」
ようやく、遼子は自分が置かれている状況に気付いたらしい。
片山の腕の中、シャツのボタンが全て外され、その下のブラジャーがあらわになっている。
「かっ、片山さん、わたし…」
遼子は慌ててシャツの前を合わせると腕で自分を抱くようにして隠した。


「どうしました?」
片山は優しく問いかけながら、酔いのせいなのか、羞恥のせいなのか、熱を持った遼子
の耳たぶを口に含んだ。
「きゃっ…。どうして、片山さん」
遼子の耳元で片山は囁いた。

「俺が彼女とうまくいっていない、っていったら片山さん寂しいんだねって慰めてくれた
 じゃないですか。俺、誤解しちゃいますよって言ったのに、遼子さんが、お互いに
 寂しいんだからいいじゃないって…。だから、俺…」

片山は切なげに言った。もちろんこれも口から出まかせだ。
酔って意識がない状態で自分が誘ったと信じ込ませるための嘘だった。
片山を誘うも何も、遼子は酔いつぶれて眠りこけていただけだ。
遼子の罪悪感につけこむ片山の言葉は続く。

「憶えてないんですね。俺、嬉しかったんですよ、遼子さんにそう言ってもらえて。
 だけど、遼子さんが嫌ならもう止めます」
「わたし、誘っちゃったんだ…」
「遼子さんは優しい人だから。悪くなんかないですよ。俺、調子にのっちゃって」
「片山さん、ごめんね…」
「いいですよ。だけど」

片山が遼子の眼を真正面から見つめた。

「こんなお願い厚かましいかもしれないけど、キスだけしていいですか。そしたら、諦められますから」

片山はその嘘を一瞬自分が信じてしまいそうになるほど、心をこめて言った。
「えっ。キス…」
異性とつきあった経験をほとんど持ち合わせない遼子は、見てわかるほど動揺していた。

「で、でも、わたしのせいだもんね、こんな風になったの。…き、きすだけならいいわよ」
逡巡するような様子を見せてから、背を伸ばすと、遼子は眼を閉じた。
「ありがとうございます。…遼子さん」
二人は唇を重ねた。
遼子にあの錠剤を仕込んで、ちょうど30分。
スイッチを入れる時間だった。

遼子からすれば軽く重ねるだけのキスのつもりだったようだ。
唇の間から片山の舌が侵入してきた時、腕の中で跳ねるような動きをしてそこから逃れようとした。
だが片山の舌が口内の全てをつまびらかにするように動き回り、遼子の舌を絡め取り、
吸い始めるとその動きが止まった。肩を掴んでいた手が、次第に首へと回され、片山を抱き寄せた。
そこで片山は唇を外した。

「キス…だけですから」
恍惚の表情を浮かべたまま、遼子が片山を見た。
「キスだけ…」
「キスだけじゃ、駄目ですか」


「もっと…」
そう言った時、恍惚の表情から普段の遼子の顔へ変わった。
自分の言葉が信じられないような顔をして、遼子が片山を見た。

「もっと?」

遼子の喉にキスをしながら答えを促す。片山の首に廻された遼子の腕に力が込められる。

「教えて下さいよ、遼子さん。どうして欲しいのか」
「片山さん、わたしおかしいの、だけど…」
喘ぐように遼子が言った。
返事の代わりに、片山は遼子を押し倒した。

どんな女も同じだ。
薬飲んだら、自分から足を絡めて、結局は腰を振るんだ。

鳴海さんが喉から手が出るほど欲しいくせに、手を出さずに、眼を覆い、耳を塞いで
真実から遠ざけ守り育ててきたあなたの妹もそうなんだよ。
神聖でもなんでもないただの雌に、あんたはかしずいているんだ。

片山は鳴海洸至のことを畏怖し、崇拝に近い感情を抱いていた。
刑事としても、犯罪者としても。
非情にして狡猾。冷酷で苛烈。障害は全て粉砕し、己の理想へとただひたすらに進む。
片山からすれば全てを兼ね備えたように見える洸至のたった一つの瑕疵。

それが遼子だ。

洸至に守られて生きながらえているくせに、洸至の計画の邪魔をする。
気に入らなかった。
勘が良く、一度真実の匂いを嗅ぎつけたら、しつこくそこから離れようとしない。
洸至も片山もそんな遼子には手を焼かされている。
それに何の手も打たない洸至も気に入らなかった。
洸至が遼子に時折見せる甘さも気に入らなかった。
だから、洸至が守り慈しむ存在を、引きずり落としたくなった。

もちろん、このことを洸至に知られたら爆弾を抱かされるか、鉛玉をぶち込まれるか
ロクな死に方はしなさそうだが、計画が大詰めを迎えている時に手をこまねいて遼子が
動き回るのを見ているのは我慢ならなかった。


「駄目よ…片山さん」

遼子が片山の胸を押す。理性の最後のあがきにも似たその動きは、あまりにか弱く、
逆に片山を愉しませる。
ベッドの上に横たわる遼子に覆いかぶさるようにしながら、遼子の服を脱がせ、下着
だけにすると、その体を眺めた。
暗がりで浮かぶような肌の白さ。
大きすぎない胸、そこから流れる腰までの見事な曲線、それに続く足は長く形がいい。
普段服の下に隠れている遼子のスタイルは片山が思った以上に良かった。

最終更新:2010年11月08日 20:09