しかし、いつもと違う場所、ましてや編集部での行為に遼子自身がまだ戸惑っているのがわかる。
わずかにもれる吐息が震えているのが愛しく、鷹藤は淡く微笑んだ。
「気にするなって、誰も来ないから。」
重なる口づけの合間に、間近で目線を合わせて可笑しそうに鷹藤が耳元で囁けば、
遼子は一瞬動きを止め、やがて物申し気な表情で上目遣いに鷹藤を睨み、小さく頬を膨らませる。
「だって・・・」
拗ねた表情に静かに返す返事も、なおさらに甘い。
鷹藤は、今すぐにでも衝動的に、思いつく限り攻め立ててどうにかしてやりたくなるような、
けれど大切に優しく、包み込んでいつくしんでおきたいような、複雑な気持ちに駆られた。
「鷹藤君?」
「あんまり煽るなよ」
その語尾は、もう一瞬も待ちきれないといった様子のままに、唇が首筋のやわらかい肌に吸い付く音に
まぎれて消える。
首筋に埋められた鷹藤の頭に、遼子は擽ったそうに身をよじった。
「煽るって・・・ん・・・ぁん・・・」
遼子に言葉をみなまで言わせずに、しっとりと湿った肌を生暖かい熱が線を描く様に這う。
執拗なその熱は、鎖骨やぬ根のふくらみを花を散らしながら通り抜け、赤い頂を
水音を立てて湿らせた。
すでに固くなっていたそこに何度も吸い付かれ、その感覚に、遼子の息が徐々に乱れ始める。
場所が場所だけに、周囲を気にして我慢しようとしていても、白い喉を仰け反らせながら
時折艶を含んだ甘い声が遼子から漏れ聞こえるたびに、聴覚を刺激するその音が
昂ぶりを連れてきて、背筋が震える。
鷹藤が、遼子のスカートをたくし上げ、太腿で隠されていた部分を撫でるようにそっと指をのばして
きゅと探れば、そこはすでに濡れてきていた。
「遼子・・・」
そう、甘く名前を呼ばれ、瞼に、頬に、首に、胸に、唇に優しく口付けの雨が降れば
遼子は幸せでどうしようもなくて、泣きたくなる。
いつもはそっけなく自分のことを「アンタ」呼ばわりする鷹藤が、二人が睦び交わる時だけは
熱に浮かされたうわ言の様に遼子の名を呼ぶ。
それが訪れる瞬間が、遼子は好きだった。
鷹藤が遼子の着ているものを全て脱がすと、遼子のほっそりとした白い裸体が暗い空間に
艶やかに浮かび上がる。
鷹藤が、やわらかな膨らみに唇を押し当てて、音を立てながらかわるがわるに吸うと、
遼子は艶を含んで、しなやかに美しく身を反らしてもだえる。
「鷹藤君・・・」
遼子はうっすらと目に涙を浮かべ、やさしく見下ろす鷹藤の首に両手をまわして、
ぎゅっと引き寄せると、涙で潤む目で鷹藤をうっとりと見上げる。
「ん?」
「今日の事、黙っててごめんね。心配してくれてありがとう。・・・大好き。」
とまるで幼子のように、純真に笑った。
「――――っ」
その表情と仕草が堪らず、鷹藤が呼吸さえ奪い、食らいつくように深く唇を重ねれば
そこから先はもう流されていくばかりだった。
貪るような口付けの嵐の中で、ふとした息継ぎの切れ目に、鷹藤に組み敷かれたままの
遼子が、遠慮がちに目を開けてそっと自分を抱く鷹藤の肌に触れようとする。
すると、鷹藤にその手を攫われぎゅっと握ったまま、遼子はソファーへ力任せに押し付けられた。
「・・・見すぎ」
「えっ?」
鷹藤の呟きに、遼子はぱちくりと瞬きをした。
至近距離で瞳を見つめると、何とも言えないはにかんだ表情を浮かべ、遼子の視界を掌で覆った。
「さっきまで場所気にしてたのに、余裕じゃん。」
視界を覆われたまま、耳元で囁かれれば、遼子の背筋がぞくりと仰け反る。
余裕なんて、ない
遼子がそう反論する間もなく、鷹藤の指がスルリと遼子の両足の間に滑り込む。
もうすでに、口付けや愛撫だけで潤っていたそこを、躊躇うことなく鷹藤が探ってみれば、
遼子の唇からは細い喘ぎが次々に漏れた。
さらに、胸を揉みしだかれ、固くなった蕾を捏ねられ、遼子は胸に与えられる刺激に反応することにも
忙しい。
滑らかなロングヘアーを乱し、悶えるように身を捩る遼子をさらに高みに押し上げようと、
鷹藤が、絡み付いてくる壁を縦横無尽に撫でると、遼子の啼く声が高く小刻みになり、その声に
一層余裕がなくなっていった。
「あっ・・・はっ・・・」
遼子が奏でる、溶けそうに甘い歌を聴きながら、それを暫く執拗に続けると、温かい液が
遼子の内部からどんどん溢れ、鷹藤の指を伝う。
そしてそれは遼子の太腿を伝い、しとどにソファーにも溢れていく。
「・・・あっ・・・んんっ・・・鷹藤・・・くん・・・」
遼子は無意識のうちに両膝を立て、そこを攻める指を導くように大きく開き、腰を浮かせていた。
鷹藤の指の動きに合わせて遼子の腰が自然とせつなげに、それに押し当てるかのように
揺れ始める。
その動きに合わせて零れる遼子の声に、鷹藤の意識もどんどんと甘く捕らわれていく。
「――いいか?」
遼子は肩で呼吸をしながら、そっと目を開けて鷹藤に向かって微笑んだ。
遼子の微笑みに、鷹藤も笑みを返すと、深い口付けと共に、遼子の中心に
鷹藤自身をあてがい、押し進めてくる。
はじめはゆっくりと――そして徐々に刻まれ、加速していく律動に、愛し合う水音と
肌が弾けあう音が大きくなっていく。
「あ・・・あぁ・・・」
それと共に、遼子の細かな喘ぎが、耐え切れぬ啼き声へと変わっていった。
交わった部分から激しく揺さぶられ、淫らな音と共に細かな泡が立つ。
そして遼子も鷹藤の腰へ脚を絡め、自らを昂ぶらせようと動いていた。
「・・・くっ」
白くはじけ飛びそうになる意識の中で、遼子が鷹藤を締め付ければ、鷹藤の
喉からも一瞬苦しそうな息が漏れ、反射的に遼子の背を掻き抱いた。
最奥に放たれる熱と共に襲い来る、とてつもない幸せと快感に、遼子は二・三度
身をうち震わせ、そして意識を手放した。
果てた後の静けさの中、電源をつけたままの遼子のパソコンの起動音だけが
編集部の中に響いていた。
最終更新:2011年04月15日 23:06