「俺だってお前たちの前から消えてから、遊んでた訳じゃないんだぞ。俺には俺の計画がある。
それを進めようとすると、月イチでお前が事件に巻き込まれるからそのたびに裏で動く羽目になるだろ。
遼子が俺の計画を嗅ぎつけない限りは、順調に進むはずが…。結局お前たちに邪魔され通しだ」
不満げな口ぶりだが、遼子には洸至がそのことを愉しんでいるようにも聞こえた。
「ずっと姿を現さずにいるつもりが、あんなことになったら出ない訳にもいかない。
ギリギリ間に合って良かったよ。遼子がもうちょっとちゃんと調べれば、あの医者の周りで
行方不明事件が相次いでいたこととも繋がって、そうしたらお前ももう少し警戒したはずなんだがな。
今回は勇み足だぞ、遼子」
山道が終わり、なだらかな道路が続く。ようやく少し開けた場所に出てきた。
フロントガラスに、水滴が落ちて来た。
灰色の雲が、雨粒を吐き出し始めたようだった。
「それにしても鷹藤君も、もう少し鍛えなおす必要があるな。本来なら、恋人である鷹藤君が遼子を
守るべきだろ。状況が許せば俺が相手になって鍛えてもいいんだがなあ。
そんな訳にも行かないか。鷹藤君にとって俺は仇だ」
バックミラー越しに眠りこける鷹藤に眼をやりながら洸至が言った。
店舗やアパートが立ちならぶ道路の突き当たりに、赤い十字のマークがついた大きな建物が
見えてきた。
敷地内に車を入れると、洸至が正面玄関に車を止める。
「行か…ないで」
ようやく絞り出すようにして遼子が言った。
兄に縋りついて止めたいが、遼子の体はまだ動かない。
「じゃ、全てを捨てて俺と来るか、遼子?」
洸至が真面目な顔で遼子を見た。
遼子の目が泳いだのを見て、微笑んだ。
「俺だってまだすることがある。お前も鷹藤君の看病があるだろ。
お前の記事はどこにいても読んでる。次の記事、楽しみにしてるよ。俺のことが書かれたとしてもな」
遼子が辛うじて動いた右手を兄へ向け手を伸ばした。
その手を洸至が取る。
遼子のぬくもりを確かめるようにゆっくりと指を動かして、遼子の指と己の指とを絡め合わせてから手を離した。
「今度から気をつけろよ。次も俺が来るとは限らないんだからな」
遼子の頭を軽くポンポンと叩くと、洸至は車を出て行った。
洸至が駐車係とおぼしき若い男に声をかける。
男が慌てた様子で遼子と鷹藤のいる車を見て、それから病院の中へ駆け込んでいった。
遼子の方へ目を向け、軽く手を振るとそのまま洸至は病院の敷地から出て行った。
その姿は、雨のカーテンの中すぐに見えなくなった。
病院の中から雨が降っているのも構わず、ストレッチャーを押しながら看護師たちがこちらへ
向ってくるのが見える。
「…兄さん、行っちまったな」
「鷹藤君…起きてたの?」
「俺を鍛えなおす、のあたりから…かな。一体…何したんだ、あの医者。全然体が動かねえ…」
「わたしも…」
「なあ、あんたもし躰が動いてたら兄さんと…」
「まさか」
遼子は言葉を濁したが、はっきりとは否定できなかった。
遼子が目を閉じた。
―――薬で体が動かなくなっている今だけ、兄に甘えていた頃の自分に帰ろう。
体が動くようになったら、妹ではなく、記者として私はまたあの人を追いかけなくてはいけないのだから。
洸至が死んだと思ってから凍らせていた時間と想いが、洸至が帰ってきたことで一気に押し寄せてきていた。
もう手が届かない兄との平穏な日々の記憶と、兄と共に居る時に感じるやすらぎと、絶対の安心感。
抱きしめられたときに思い出した、忘れていたはずの兄の温もり、兄の匂い。
絡め合った指の感触が今も残っている。
今度お兄ちゃんの温もりを手にしたら、私はそれを手放せる…?
そうしないと言い切れる自信がなかった。
遼子は、指に残る洸至の温もりに絡め取られている自分を感じていた。
遼子ピンチ→鷹藤頑張る→瞬殺→遼子(鷹藤)命の危機→お兄ちゃん登場→武力で制圧
File5の黄金フローチャートが好きで、再現してしまいました…。
ほんとに、ほんとにお目汚しです、すいません…。
しかもエロなしです、重ね重ねすいません。
267
GJ!!!
朝からいいモノ読ませていただきました。
鳴海兄妹、せつないですね。
黄金フローチャート、自分も大好物ですw
もっと遼子がピンチになってからでも…げふんげふん
268
GJです!!
深夜枠でドラマ化してくれないかなあ。
269
GJです!
お兄ちゃんカッコいいですww守られたい!
しかし終わって一年経つのに未だに、需要があるのはすごいっスね~
最終更新:2010年11月08日 22:14