投下直前に規制され投下できなかったネタ投下。
最近ダークエロが続いたらエロなし爽やかネタをやりたくなってしまいました。
エロなしごめんなさいの鷹遼です。
遼子メイドCM「食べちゃうもん」から出来た鷹藤話ですw
カメラ カメラ カメラ by103さん 投稿日2011/12/13(火)
もうすぐ冬になる。
透き通り冷たく冴える風が吹く中、オレンジ色の夕日が照らす時間はほんの束の間で、空はあっという間に濃紺一色に染め上げられる。
その空の下、張りこみ帰りの鷹藤が自動販売機で自分と相棒の缶コーヒーを買っていた。
硬貨を自動販売機に入れながら鷹藤は大きなくしゃみをした。
「やべえ。薄着だったかな」
鷹藤は寒さに身をすくませ、早く暖かな車内に入ろうと小走りで自分の車に戻った。
車のドアを開けた瞬間、強い光で眼を打たれた。
「うわっ」
驚いて助手席の相棒に眼を遣る。相棒――-鳴海遼子がコンパクトカメラをこちらに向けて構えていた。
カメラの下からのぞく彼女の口元は楽しげな笑みを浮かべている。
「なんだよいきなり!コーヒー落とすところだったぜ」
口を尖らせながら鷹藤は車に乗り込みドアを閉めると、ドリンクホルダーに缶コーヒーを置いた。
「あんたそんなの持ってたっけ?」
この数カ月間、相棒と行動を共にしていたがこうして写真を撮られるのは初めてのことだった。
「ネットで買ったカメラが昨日届いたの。使い方憶えようと思って持ってきてたんだけど仕事中は出せな
かったから、今から試し撮りしようと思って」
悪戯っぽく首を傾げて遼子が照れ笑いをした。
「あっそ。今度から撮るときは断ってからにしろよな。でもあんたカメラなんか買って何撮る気だよ」
不機嫌そうに答えながら、鷹藤は遼子の笑顔で心臓が高鳴っていた。
数カ月間共に働き、何度も二人で修羅場をくぐり事件を追い続けているうちに、最初は空気が読めない面倒
な女と思っていた遼子を鷹藤はただの相棒と見られなくなり始めていた。
「何って、二人の想い出作りに…」
「誰とだよ。あんた彼氏いないだろうが」
ほのかな期待を抱きつつ鷹藤は聞いた。
「史郎ちゃんとヨリが戻った時の為に今から備えているのよ。」
「遠山さんなら美鈴さんと…」
鷹藤が半笑いで答える。
「男と女の間は何があるかわからないでしょ!美鈴さんとうまくいかなくなって、史郎ちゃんがバーで飲んだ
くれるようになるのよ。で、その時に私のことを思い出して電話してくれたら、私が史郎ちゃんを優しく慰め
て、
そしてそれをきっかけにして二人は…」
遼子はあくまで現実から眼を逸らし、自分の妄想の中で想像力の翼を無限に広げるつもりのようだ。
遠山はいま美鈴と付き合っているはずだし、遼子の事を完全にストーカー扱いしているのを鷹藤も良く知っている。
途中から遼子の妄想を聞くのが馬鹿らしくなった鷹藤は、相棒の手にあるコンパクトカメラを取った。
「ちょっと貸してみろって」
「壊さないでよ」
「俺を誰だと思ってんだよ。あんたよりはカメラの扱いに慣れてるって」
鷹藤はコンパクトカメラを構えた。
カメラの背面部分は大きな液晶画面になっており、眼をつけてファインダーをのぞく必要が無い初心者向けの
機種だった。
「あんたも雑誌記者なら、カメラぐらいもうちょっといいものにすればいいだろ」
「だって安いし、彼氏と撮る写真ならこれくらいでいいと思ったのよ」
いきなりカメラを遼子に向けて鷹藤がシャッターボタンを押した。
むくれ顔の相棒が液晶画面に大写しになる。
「ちょっといきなり撮ることないでしょ!」
「おあいこだろ」
鷹藤が画面で写り具合を確認してみると、安物のカメラの割に意外と悪くなかった。
「へえ。いいじゃん」
「モデルがいいのよ」
遼子がふざけてい言った。
「かもな」
液晶画面に映る遼子を見つめながら、鷹藤は思わず本音を言ってしまった。
「えっ?」
驚いた遼子が鷹藤を見る。
「あ、いや、その…あれだ、このカメラのモデルがな、この機種の中で一番いいモデルなんだよ。仕事で使える
かチェックしたいから、あんたちょっとモデルになってくれよ」
遼子が驚いて眼を瞬かせた。
誰が聞いてもわかりやすい嘘。苦し紛れの口からでまかせだ。
鷹藤の全身から汗が吹き出し、カメラが手から滑り落ちそうになっている。
「ほんっとカメラが好きねえ。カメラばっかり見てるから彼女が出来ないのよ」
遼子が自分の事は棚に上げて呆れたように言う。
「ま、まあな。プロだから仕事道具には詳しくないとさ」
実は今日初めて知った機種だったが、どうにか誤魔化せたらしい。鷹藤は胸を撫で下ろしていた。
「私に使い方を教えてくれるなら、しばらくそのカメラ好きにいじっていいわよ」
遼子が缶コーヒーを開け、口をつけた。
「おいしい。鷹藤君ありがとう」
遼子の口元が緩んだ。缶コーヒーにつけられた遼子の桃色の唇を見ながら、鷹藤はまたシャッターを押していた。
「えっ?」
「好きにいじっていいんだろ。ちょっとあんたをモデル代わりにして撮らせてくれよ」
「どうして私なのよ」
「ここにあんたしかいないからに決まってるだろ」
またシャッターを押す。遼子の困り顔が液晶画面に映る。
いつも困らされている相棒の困り顔を見るのが楽しかった。
見なれた遼子の顔も、静止画となると眼や唇といったパーツの魅力が際立って見える。
普段は妄想やら自分の理想やら他人への的外れな恨みを語る遼子の唇が、写真の中だと艶めかしく見えていた。
「そういやあんた、お菓子持ってなかった?」
「あるけど…」
「ちょっと食べてみろよ」
「なんでよ」
「写真撮るから。かわいく撮れそうな気がするんだよな。上手く撮れたら遠山さんに見せたらいいだろ。
もしかしたら惚れ直してくれるかもしれないぜ」
またしても口からでまかせだ。可愛く撮れたとしても、自分の写真を見せつけるような女など遠山も願い下げだろう。
単に鷹藤の為だけの写真だ。
自分に振り向かない相手を、せめて写真の中だけでも自分のものに、自分好みのものにして置いておきたかった。
「し、史郎ちゃんが…。そうね。じゃあ…」
遼子はかばんをゴソゴソと探ると、黄色いパッケージのお菓子を取り出した。
遼子が最近よく食べているお気に入りのチョコビスケットだ。
「いっただっきまーす」
遼子が大きく口を開けた。
「違うな」
鷹藤がすぐに制した。
「何がよ」
「『食べちゃうもん』って言ってみろって」
「はぁ?気持ち悪い事いわないでよ!」
遼子が声を上げる。
「大口開けて食べてるところなんて、色気ねえんだって。食べちゃうもん、だと口も閉じられるし口角も上がるだろ。
食い物のコマーシャル用写真撮る時、モデルにそうやって指示するんだよ」
今日3度目の口から出まかせだった。
カメラマンの鷹藤にそう言われてその辺の知識に自信がない遼子は首をかしげつつも納得したようだった。
「じゃあ言うわよ。食べちゃうぞ」
遼子がはにかみながら言った。
その固い感じもまた胸をときめかせるものだったが、鷹藤は相棒の間違いを瞬時に訂正した。
「食べちゃうもん、だよ。あとな、ここのラインがきれいに見えるようにもうちょっとこっち側向いてくれよ」
遼子の頬に手を伸ばし、鷹藤は角度を調整した。
意識は遼子の頬に触れる指先へと集中していく。あまりにも柔らかで吸いつくような感触の肌だった。
「鷹藤君…」
たかだかチョコを食べる写真を撮るのに、本格的なポーズの指示が出るので遼子も眼を白黒させている。
「遠山さんに見せられる写真欲しくないのかよ」
「う…。じゃあやるわよ。食べちゃうもん」
少し首をかしげ、恥じらいながら言った遼子は美しかった。
鷹藤が息を飲む。
大人の色気と清らかな乙女が同居した微笑みは鷹藤の呼吸が止まりかけるほど魅力的だった。
カメラマンとしてあるまじきことながら、鷹藤はシャッターを押すのを忘れていた。
「ちょっと!せっかく人がポーズ取ったのに、なんで撮らないのよ」
遼子がむくれた表情を浮かべ、遼子を見つめたまま固まる鷹藤を睨んだ。
「あ、ああ悪い」
正気に戻った鷹藤がまたカメラを構える。
可愛らしくむくれた遼子の横顔を捉えた。
鷹藤の頬が緩む。
そしてシャッターを押した。
「何で今の顔撮るのよ!もう!」
遼子が更にむくれる。
「悪かったって。じゃ、もう一回『食べちゃうもん』よろしく」
どうしてシャッターを押しているか言えるはずもない鷹藤が必死で誤魔化そうとする。
その必死さが遼子の猜疑心を煽ったのか、遼子が鷹藤に不審の眼を向けた。
「さっきから鷹藤君、何か変よ。わかったわ…。私の変な写真ばかりとって、編集部で笑いものにしようっていうのね」
「違うって!」
「もうカメラ返してよ」
遼子がカメラを取ろうとして鷹藤の腕を掴んだ。
「まだ撮り終わってないから、もうちょっと貸してくれよ」
鷹藤も取られまいと腕を伸ばし抵抗する。
「きゃあ!」
バランスを崩した遼子が鷹藤の膝の上に倒れ込んだ。
遼子が持っていたビスケットの箱が宙を舞い、中身が運転席にばらまかれた。
太股の上に倒れ込む遼子の温もりがデニム越しに鷹藤に伝わった。
鷹藤の心臓が耳奥まで鼓動が響くほど強く拍動する。
「ん、もう~!」
遼子が鷹藤の膝から顔を上げた。
二人の眼が合う。鷹藤の瞳の奥に何かを感じたのか、遼子は動きを止めた。
鷹藤の手が吸い寄せられるように動くと、遼子の頬をそっと包んだ。
最終更新:2012年04月16日 00:54