{予兆 by51さん 投稿日 2011/10/23(日)
グレー遠山に遼子を盗られた鷹藤を、優しい人が慰めてくれる話が出来ました。
燈火の続きです。しかもエロなしごめんなさい。
とあるスポーツバーのカウンターに鷹藤は居た。
ダーツやビリヤード、そしてホール中央にある大画面では有名リーグのサッカー中継が楽しめる所で、
サッカー好きな鷹藤が常連として通っている店だ。
平日だが客の入りも悪くなく、数グループがそれぞれダーツやビリヤードに興じていた。
本気で酒を飲もうという客はあまりいないのかカウンターにいる客は鷹藤ひとりだけだ。
カウンターに覆いかぶさるようにして飲んでいるところからも、鷹藤が相当酔っているのがわかる。
普通のバーであればここまで酔い潰れた客は追い出されてもおかしくないが、鷹藤が深酒する事情を知っているのか
バーテンダーは酔い潰れた鷹藤をそのままにしていた。
「テキーラ、もう一杯」
アルコールでふやけきった声を絞り出すようにして鷹藤が言った。
大分酔いも回っているらしく、眼を開けるのも億劫そうだ。
「さすがに飲み過ぎだよ、俊一君」
カウンターの向こうにいるバーテンダーが顔をしかめてたしなめた。
「頼むよ、あと一杯だけだからさ」
バーテンダーは首を振るとしぶしぶといった様子でテキーラをグラスに注いだ。
「その代金は俺がもとう」
鷹藤の隣のスツールに黒いスーツ姿の男が座った。
上背があるが華奢ではなくがっしりとした体格の男だ。
「あんた…」
眼があかない状態の鷹藤が声の方向を向くが、酔いのせいか瞼はしっかりとは空かないようだった。
「そんな状態の君でも声だけで俺のことがわかるのか」
この声を忘れるはずはない。
同僚の兄であり、事件が次々と起こり危険な状況に何度か直面した同僚と自分を幾度か守ってくれた
頼れる存在だった。
だが彼こそが一連の事件の黒幕であり、警察官でありながら殺人者そしてテロリストであった男。
そして鷹藤と同僚の家族を殺した男。
それが鷹藤の横にいる男―――鳴海洸至だった。
「俺にはモヒートを」
酔っ払いから解放されたバーテンダーが洸至に軽く会釈すると酒を作りにいった。
「相当飲んでいるようだな」
洸至が突然現れることにも鷹藤は慣れた。
妹が危機にある時常にこの男は現れた。最も大切に思う者を守るため闇の中から現れる。
ならばいまここに居るのは全くのお門違いだった。
洸至の妹、鳴海遼子はいまフリーランスのジャーナリストとして返り咲いた遠山の恋人となり彼のマンションで
同棲している。
編集部に遼子が来てから一年近く傍に居たのに、鷹藤は彼女への思いを告げていなかった。
大事にしすぎて言えなかった。言わなくてもわかってくれると思っていた。
しかしそれば鷹藤のうぬぼれにしかすぎなかったのだ。
友達とも恋人ともつかぬ心地よい距離感に自分は甘えていた。
そのうぬぼれや甘えで失ったものを忘れたくて鷹藤はいま浴びるように酒を飲んでいた。
それをこの男は冷笑しに来たのだろう。
「あんた俺の家族の仇だってこと忘れたのか?俺が通報するかもしれないんだぜ」
鷹藤がテキーラを飲もうとグラスに手を伸ばした。
が、酔いのせいで手元がおぼつかない。鷹藤はグラスを掴み損ね、グラスが傾く。
倒れかけたグラスを洸至が掴んだ。
「これだけ酔っている君の言うことを真に受ける人間が果たしているかな。それに俺は別に君と事を構えにきた
わけじゃない」
言い終わると鷹藤の前にグラスを置いた。
「じゃ、俺の前に何しに現れたんだよ。あんたの妹ならいま遠山さんの所だぜ」
「そのようだな」
バーテンダーがモヒートを持ってきた。
洸至は札をカウンターに置くと、バーテンダーに眼で席を外すように合図した。
「君とこうして飲むのは初めてだ。乾杯でもしないか」
「何に乾杯するんだよ。あんたの復活を祝えってのか」
鷹藤がテキーラを一気に煽り、度数の高さにむせかえる。
それを横目で見ながら洸至が二人の間にグラスを掲げた。
「遼子のかりそめの幸せと…遠山の策略に乾杯」
カウンターにだらしなく寝そべっていた鷹藤がその言葉を聞いて体を起した。
「今なんて言った?」
「遼子の…」
「そっちじゃない」
鷹藤が真顔で遮った。
「からかって悪かった。遠山の策略、だ」
悪戯っぽい笑みを浮かべると洸至はモヒートを一口含んだ。
「いい味だ」
「策略…って何だよ」
鷹藤が空いたグラスをバーテンダーに見えるように振る。バーテンダーが洸至の方へ視線を送る。
洸至が眼で肯くとしぶしぶと言った様子で鷹藤のグラスにテキーラを注いだ。
「遠山が君に仕掛けた策略のことだ」
「俺に?」
「あの二人が恋人となった夜だよ。君が遠山の部屋での食事に行けなくなった日があったろう?」
この男の前に秘密など意味をなさない。
下手をすると鷹藤について鷹藤が知る以上のことを知っていることすらある。
洸至の言うあの夜、鷹藤は遠山の部屋に遼子と共に訪れるはずだったがアンタッチャブル編集部から急に呼び
出され夜明けまで現場に釘づけになっていた。
あれは城之内が掴んだ政変スクープだった。
この記事はアンタッチャブル独占スクープとなり、その号は部数も普段の数倍以上に伸び、鷹藤は城之内と二人
で社長賞を貰ったのだ。
カメラマンとしてのちっぽけな栄誉と引き換えに鷹藤は最も大切なものをあの夜に失った。
「タイミングが良すぎると思わないか。まるで君が不在になるのを知っていたかのようだ」
「まさか」
酔いで紅潮していた鷹藤の顔が一気に蒼ざめた。
「そのまさかさ。城之内に政変スクープを流した相手は誰なのか。情報の糸を辿って行った先に居たのは遠山だった。
君だって知っているだろ?遠山の情報網がどれほどのものか。記者を辞めた後でもあいつはそれを利用し続けている。
表の仕事でも、君相手にしたことでも」
「嘘だろ。なんで遠山さんがそんなこと」
「欲しいものがあったからだろ」
洸至はこともなげに言ってグラスを傾けた。
「お前を出し抜いてまで欲しいものが」
口元に笑みを浮かべて洸至は鷹藤を見たが、目は笑っていなかった。
「でもそんなにタイミングよく進むはずねえよ」
鷹藤は戸惑いながら洸至の言葉に反駁した。
「君がいなくなるかならないかは賭けだ。それも緩やかな賭けだ。別にあの夜その賭けに勝たなくてもいい。
もし失敗しても機会ならそれから先も自分が作るつもりでいただろうからな」
「どうしてそんなことを俺に教える?あんたの常とう手段だよな、誰かに情報を流して自分の
都合のいいように操作するのは。俺に何をさせたいんだよ」
「何も」
グラスの中のライムを指で弄びながら洸至が言った。
「俺は事実を告げただけだ。信じられないなら裏をとればいい。あとはお前が好きにしろ」
鷹藤が怪訝そうな表情を浮かべ洸至の横顔を見た。
「あの男は俺に似ているんだよ。だからわかる。奴にとって人間は二種類しかない。利用できる人間と、
利用する価値のない人間だ。そんな奴が遼子を幸せに出来ると思うか。あいつは遼子を貪るだけだ。
何も与えられない」
「あんたの妄想だろ。そんな人じゃない」
吐き捨てるように鷹藤が言った。
「遠山の行動を振り返ってみろ。違うと言えるか?」
洸至が冷ややかに笑った。
「あいつが決めたことだ。兄貴だったら祝福してやれよ。念願の彼氏ができたんだからさ」
自分の言葉に胸が疼く。
遼子の隣に自分がいないことを思い知らされる。酒で消そうとした痛みが躰中に拡がり鷹藤を苛む。
「言ったろ。これは遼子の選択じゃない。遠山の策略だったんだ」
「きっかけはそうでも今あいつは一緒に暮らしている。俺の出る幕は無いだろ」
鷹藤はテキーラを一気に煽り喉奥に流し込んだ。
「お前にとって遼子はその程度の女ってことか。無駄足だったな」
洸至が低い声で言うと席を立った。
「何で…何で俺にこのことを教えたんだよ」
唸るように鷹藤は言った。
「敵の敵は味方っていうだろ」
「ふざけんな」
鷹藤がスツールから立ち上がり洸至に殴りかかった。
店内が一瞬どよめく。
だが泥酔した鷹藤の拳が洸至を捉えられるわけもない。
洸至はこともなく避け、その腕を掴むと勢いあまってつんのめった鷹藤に足払いを掛けた。
鷹藤の躰がふわりと宙に浮く。
激しい音たてて背中から落ち、朦朧としている鷹藤を洸至がのぞきこんだ。
「飲み過ぎだ。それで俺を撲れる訳がない。もし遼子を取り戻したいのなら酒に逃げるな」
「うる…せえよ」
頭を打ったうえに酔いが周り、鷹藤はもう立ち上がることすら覚束ない。
洸至を引き留めようと服を掴もうとしたがその指は空を切るだけだった。
「意地があるなら見せてみろ」
洸至はそう言うと立ち上がり、バーテンダーに鷹藤のことを頼むと店を出ていった。
床に寝転がり、天井を見つめながら鷹藤はさっきの言葉を反芻していた。
緩やかな賭け――。
洸至にとってもそうだ。鷹藤が動くか動かないかは賭けだ。
動かなければ次の手を打つ気なのだろう。
ともかく、賭けの賽は投げられた。
これから何かが起こる。暴力的な何かが。破滅的な事件が。
それは身にしみてわかっている。
鳴海洸至が動くと言うことはそういうことだ。
それを遠山に告げれば、遠山も身を守れるかもしれない。
酔いがまわり手元が揺れるが、鷹藤はどうにかして携帯を操作し遠山の電話番号を呼び出した。
しかし発信ボタンを押そうとした時に指が止まった。
遼子を奪われたのは俺が間抜けだったからだ。
遠山を憎んではいない。羨んでもいない。
結局、遼子とは離れる運命だったのだ。仕方のないことだ。
諦めるしかない。
いままでそう思い込んでいた。いや、思いこもうとしていた。
鷹藤は遠山の電話番号が表示さたままの携帯をしばらく見つめてからそれを消して、ポケットにしまった。
無理をして抑えこみ蓋をしていたどす黒い思いが溢れ出し、躰に満ちはじめたのを鷹藤は感じていた。
この後、兄と鷹藤が二人で超ダークに…w
うわぁ、なんか素敵な予兆が来た――!!
兄と鷹藤のWで超ダークなんて…wktk
続き、正座してお待ちしてます!
遼子がお金持ちの屋敷にメイドとして潜入取材して、
そこで坊ちゃまにイケナイ事をされそうになって、
お兄ちゃんが突入してくるんですね、わかりますww
そして「お兄ちゃんと鷹藤くんが二人で超ダークに」って
どうなっちゃうんですか?!
これで色々あって3人兄弟??ww
}
最終更新:2011年10月28日 10:20