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それから二度の計測時に、遼子が洸至の体温、血圧そして胸囲を測ったが、体温と血圧が微増したくらいで、
胸囲には変化がなかった。
洸至が薬を飲んでからずっと遼子はむくれていたが、今度行列に並ばないと買えないロールケーキを洸至が
買ってきてやることでようやく機嫌が良くなった。
部屋が少し暑くなった気がしたので団扇であおぎながら、洸至は暇つぶしの模型作りにいそしみ、三度目の
計測を待った。

そして三度目の計測時。遼子の方がおかしくなった。


「すごくいい匂い。…こんないい匂い嗅いだことない…。嬉しくなっちゃう」
遼子が洸至の唇を求めて背を伸ばすが、洸至が顔を逸らして妹の唇から逃げる。
「ずっと傍にいて…抱きしめて…」
遼子がうっとりとした顔で洸至の胸に頬を擦りつけた。

洸至の心臓は呆れるほどの爆音を轟かせている。しかし未だ洸至の息の根は止まっていなかった。
死を覚悟する程の興奮と幸福感に襲われたが、妹の様子に、ある違和感を覚えてから洸至は警察官らしい冷静
さをすぐに取り戻していた。

…匂い。
遼子はこの言葉ばかり発している。
俺から漂うという匂いのことばかり、うわ言の様に言っている。

その匂いに遼子は酔い、その匂いを発する相手を求めているだけだ。
―――遼子が求めているのは俺ではない。
そのことが洸至の熱を冷ました。

温もりに名残り惜しさを覚えながら、密着する妹の躰をひきはがす。
遼子の肩に手を置き、洸至は妹の眼を覗きこんだ。
「遼子…眼を醒ませ。お前は何かに酔っているんだ。いつものお前じゃない」
「でも、わたし離れたくないよ。こんないい匂いするお兄ちゃんから、離れたくない」
遼子が洸至の首にしがみつく。
「駄目だ…。頼む、遼子離せって!こんなことしていいわけがないだろ?兄妹なんだから」
洸至が遼子から身を離そうと決意した時、唇に柔らかなものが重なった。
「!!!」
遼子が洸至の唇を奪っていた。
ずっと夢見ていた瞬間の訪れに、洸至の理性が揺らぎかける。

その時、15年間耐え続けた、眼も眩むような誘惑の数々を洸至は思い出していた。

成長するにつれて変わる遼子の甘い匂い。
夏場に暑いからといって、ノーブラにタンクトップとホットパンツ姿で洸至の前をぶらつく遼子。
ソフトクリームを舐める舌の動き。湯上りにバスタオルを巻いただけで冷蔵庫を開ける後ろ姿。
怖い夢を見たと言って一緒に寝た夜の温もり。
その翌日、腕の中で微笑み、「おはよう」と言った時のこと。


それに耐えられたのは、いつか思いを告げる日を夢見ていたからだ。
自分の罪、自分の欲望、その全てを遼子にぶちまけた末に溶け合い重なり合う日のことを。

だからこんな風になし崩しに遼子を奪うのは違う。
「グラン・バスト」なんていうふざけた商品名の妙な薬のせいで兄妹という枷から自由になるなんて、美学に反する。

―――どうしたら、遼子を止められる?

洸至は理性の残りの部分を総動員して、この事態を収拾させる術を考えようとしていた。
だが遼子の唇の感触に意識が吸い寄せられていく。このまま流されろと本能が洸至に囁く。

妹に当て身を喰らわせて、気絶させるか?
こういう状況とはいえ、遼子に手を上げることを洸至は躊躇した。
だったら…。

自分の躰からその匂いをさせなければいい。
遼子を突き離すと、妹が後ろから追いかけてくるのも構わずに、洸至は風呂に走った。
風呂場のドアを勢いよく開ける。
バスタブには、数時間前に入った風呂の残り湯がまだあった。洸至は、服を着たままそこに飛び込んだ。

洸至がぬるま湯の中に頭まで沈め、顔を出すと、風呂場の入り口に立つきょとんとした顔の遼子と眼が合った。
さっきまであった艶は、その表情から消え去っていた。
「あれ…。おかしいな。さっきまでいい匂いしてたのに…」
それから遼子は口をつぐむと、見る見るうちに赤くなっていった。
「私…お兄ちゃんに…あ、あんなこと…! お、お兄ちゃんごめん!」
耳まで朱に染めると、遼子は恥ずかしくなったのか自分の部屋に飛び込むようにして入り、音を立てて扉を閉めた。

遼子のあの様子では、さっきまで自分が兄にしていたことの記憶はあるようだ。
この結末を、少しほろ苦くもあったが、良かったと洸至は思いこむことにした。
もし、あのまま流されていたら、お互いにいたたまれず共にいられなくなるところだった。
しばらくは遼子も顔を合わせづらいだろうが、まだ薬のせいでのアクシデントとして笑い話にできる。
俺が何も気にしていないと言えば、遼子だってすぐに立ち直るだろう。

「でも、どうしよう。史郎ちゃんじゃなくてお兄ちゃんにあんなことしちゃった…。史郎ちゃんだったら
良かったのに~。ふえ、ふえええ~ん」
扉を閉めたので聞えないと思ったのか、遼子の部屋から狼狽しきった独り言と泣き声が聞こえてきた。

―――遠山だったら良かったのに…?
それを聞いた洸至の心の中で、何かが砕け散った。

洸至は樫村を怨んだ。
そして洸至に極限までの忍耐を強い、聞きたくもない遼子の本音を聞かされるような状況を作り出した報いを
あとで樫村にきっちり受けさせてやることを心に誓った。

そして、バスタブの中でずぶ濡れになりながら、ひとりさめざめと泣いた。




「本誌美人記者による体験手記」のお兄ちゃん篇ですが、お兄ちゃん悲惨オチになりました。
その上エロくなくてすいません…(汗)。
お兄ちゃん微エロが楽しくてつい…(大汗)


GJ!!!!

なんだろう、バスタブに服のまま飛び込むお兄ちゃんが
愛おしすぎてこちらまで泣けてきたw

編集長・・・ご愁傷様です・・・


爽やか兄妹話、ありがとうございます。
まさか、兄の体験記だとは思いませんでしたw

亀ですが、
216さんの「鷹遼の誰もいないオフィスでのシチュ 」に
挑戦中。
軽く、挫折中w
その前に、このスレで初めて史朗ちゃんを現実に絡ませるか
思案中。

「中」ばかり・・・orz

亀でも宜しくです! 
遠山初登場も楽しみだ~!
最終更新:2011年04月15日 23:04