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黒いコートの男に言われるまでもなく、遼子が本能が呼ぶままに腰をグラインドさせ始めた。
ぐちゅ…くちゅ…。
グラインドするたびに肉と肉の付け根がこすれ合い、そのたびに快感が鷹藤を襲う。
汗を浮かべながら、更なる快楽を求めて鷹藤も遼子に動きを同調させた。
「あっ…ああっ…」
眼を閉じ、鷹藤にまたがりながら遼子は髪を打ち振り快楽に溺れていた。
その半開きの唇から垂れ落ちた涎を鷹藤は舌でなめとった。

この行為が終わった後、二人は引き離される。
それを予感しているのに―――予感しているからこそ、二人は求め合わずにはいられなかった。
「あっ…はぁっ…」
この状況でも、薬のせいか遼子も甘い声をあげる。
遼子をもっと感じたかった。
グラインドさせていた腰の動きを今度は律動に変える。
繋がりあった快楽が、遼子の甘い声が、死の恐怖を忘れさせた。
緊張して動きの鈍った指が、また自由に動き始めた。
情交の律動は、結束バンドを切る指先の動きをうまい具合にごまかしてくれている。

この甘美な時間。
これを最初で最後にしたくない。だから最後まで希望は捨てたくない。
―――それが限りなく零に近くとも。

「あん…あんっ…」
遼子の嬌声が部屋に響く。
男たちの視線が遼子に集中していた。
カメラを構える男も舌なめずりしている。鷹藤の後にハメ撮りする時のことをいまから想像しているのだろう。
美しい顔を歪めて、快楽に啼く姿はたとえようもなく淫らで扇状的だった。
姿形ばかりではない。遼子が動く度に肉襞が男根から離れまいと淫らに絡みつく。
遼子の肉壁はまるで別の生き物のようにうごめき鷹藤を包んでいた。

「はぁっ…」
鷹藤も不様に悦楽からの声を上げていた。飢えた獣のように快楽を求め、本能のままに腰を振り立てる。
「やっああっ…奥に…あたるのぉ!」
遼子とは思えない程ののめり込みようだ。
鷹藤の強烈な突き上げに声を上げながら、遼子も腰を振っていた。
遼子の淫裂から卑猥な水音を立てながら蜜が飛び散る。
あふれた蜜のせいで、鷹藤のデニムは濡れていた。

「いい女だ。…中に出してやれよ」
黒いコートの男の声が響く。
遼子の眼を鷹藤が見た。
返事はなかったが、その瞳には鷹藤を受け入れる柔らかな光があった。
「一緒にいこう…」
鷹藤が囁くと、遼子が小さくうなずいた。
遼子の奥まであたれとばかりに、鷹藤が腰を突き上げる。

「きゃうんっあんっあんっ」
快楽に翻弄され、漆黒の髪を揺らしながら遼子が鷹藤の首にすがりつく。
ぶちゅっ…ぶちゅぅっ。
遼子の躰は、淫猥な破裂音を立てる楽器と化していた。
部屋中に雌の情欲の音をかきならしながら、遼子はあえいでいた。
喘ぎ情欲に狂う遼子の肉壁は喜びにふるえ、鷹藤に快楽をもたらす。
射精感が切迫し、鷹藤の太股の裏側がに汗が浮く。

「やんっ…い、いきそう…」
「こっちも…いく」
愛する女の中に、すべてを解き放つときぐらい抱きしたかった。
それが出来ないいま、代わりに鷹藤はすぐそばにある遼子の唇を求めた。
すぐに遼子もそれに応える。
目を閉じ、雄の匂いのする口づけを激しく交わしながら二人は一体となり高めあう。

「んっ…んんっ…」
鷹藤の男根が遼子の中で大きく膨らんだ瞬間、遼子の肉襞が一気に締め付けた。
「…!!!!」
全身を鳥肌が襲い、髪の毛が逆立つほどの快楽が鷹藤の中を突き抜ける。
「ああああっ!」
唇をほどき、のけぞった喉を震わせながら遼子も達した。
鷹藤自身が遼子の中で脈打つ度、遼子も躰も痙攣する。


欲望をすべて吐き出し、鷹藤が再び目を開けたとき遼子の背後から銃口がこちらを見ていた。
「自由にしてやるって言っただろ?」
黒いスーツの男の手下、グレーのスーツを着た男が鷹藤に向けて銃を構えていた。

―――これもショーの一巻だった。
まずは遼子を相棒と交わらせ、そして達した直後に目の前で愛情を抱いている相手の脳天を打ち抜く。
それを見た遼子の受ける衝撃、悲嘆の表情がこのショーの最大の見せ場なのだ。
あの変態爺なら感動ではらはらと涙をこぼしながら見るだろう。

鷹藤が達した瞬間にふたりが激しく動いた結果、手を戒めていた結束バンドは切れていた。
だが、足の戒めがとれていないいま、手だけ動いたとして何になる?
自分の命が助からないのならせめて―――。

鷹藤の全神経が銃を構える男の指先-―――なめらかに動く引き金に集中する。
それを見ながら鷹藤は、夢中で手を動かした。

閃光とともに凄まじい轟音が響く。

銃で脳天を撃ち抜かれる時、自分の中に響く音とはこういうものかと思っていた。
激しい衝撃を受けつつも鷹藤の思考はまだ冷静に働いていた。

もう自分は相棒のことは守れない―――。
これから先、ひどい目にあう相棒のことを―――。
そう思うと、遼子を抱きしめる手に力が入る。

…腕に力が入る?
驚いて鷹藤は目を開け、頭を触る。撃たれていなかった。
ただ何か衝撃を受けて、椅子ごと倒れたのだ。
「鷹藤君大丈夫…?」
腕の中には遼子がいる。表情からすると、遼子も状況が飲み込めていないようだ。
鷹藤は首をめぐらせて周囲を確認した。
部屋は火薬の臭いと煙で満たされていた。
鷹藤に銃をつきつけていたグレーのスーツの男は床に尻餅をついて、呆然とした顔でドアを見ている。
ドアは吹き飛んで無くなっていた。ドアの傍にいた男たちの服は所々破れ、床の上に倒れている。

「何が起こった。報告しろ!」
黒コートの男が携帯電話に怒鳴る。
「爆弾だと…!?車が吹き飛んでる?一体何だってんだ」
男の部下たちがその言葉で顔色を変えた。
「畜生…引き上げるぞ。男は殺せ。女は念のために連れて行く」
携帯をしまいながら男が言った。
鷹藤は遼子を引き離されまいと抱きしめる手に力を込めた。

「どこに引き上げるって?」

入り口に男が立っていた。
黒いスーツ姿に漆黒の髪を持つ長身の男。
「おにいちゃん…」
その姿を目にした遼子が思わず呟いた。
男―――鳴海洸至は煙の立ちこめるなか、事も無げに立っている。
無表情だが、目の奥には強い光があった。

鷹藤の視界で、グレーのスーツを着た男の手がそろそろと動いた。
洸至はそれへ向けて警告もなしに発砲した。
鷹藤の傍で銃を持っていたグレーのスーツ男の頭が撃ち抜かれる。
「おまえたちに帰る場所などない」

「てめえ!」
黒のコートの男が銃を出し反撃する。
数発自分の方へ銃弾が飛んできても洸至は顔色ひとつ変えずに歩きながら発砲した。
洸至の銃弾を受け、黒コートの男の躰が吹き飛び床の上に転がった。

「撃て、撃て!」
男たちがパニックに陥りながら銃を取り出そうとする。
だがその前に洸至の銃口が男たちをとらえていた。
洸至は正確に2発ずつ男たちに撃ち込んでいった。
男たちが倒れるたびに肉の塊が床に叩きつけられる音が連続する。
銃声の咆哮が止んだ。
部屋にはうめき声と水が吹き出す音しかしない。
埃臭かった部屋は、いまでは火薬と血の匂いに満たされていた。

鷹藤と遼子の様子を撮影していたチンピラ風の男の足が震え、ズボンから湯気を立てながら小便がしたたり落ちた。
「なんだよ…一体誰だ手前!近寄ると女殺すぞ」
チンピラ風の男がカメラを捨てると、ナイフを取り出し遼子と鷹藤に突きつける。

それを見ても洸至は足を止めない。ガラスを踏む音が近づいてきた。
「ショーは終わりだ」
洸至が恐怖に震える男の胸を撃ち抜いた。
遼子と鷹藤の顔に男の血が飛び散る。
男はゆっくりと前のめりに倒れた。
「お兄ちゃん?」
腕の中の遼子が身を起こす。

「ひどい目にあったな」
目の前に遼子の兄―――鳴海洸至が立っていた。
洸至は銃を腰につけたホルスターに入れると、ジャケットを脱ぎ遼子のさらけ出された下半身にそっとかけた。

「俺の依頼主の敵になって…生き延びられはしないさ…」
喘ぎながら誰かが呟いていた。
洸至が銃を取り出す。
「まだ生きていたのか」
黒コートの男の方へ銃口を向け、洸至が言った。
「教祖様は怖いぜ…。力が及ばないところなどな…い」
「バラバラになってもか?」
「なんだと…」
「帰る場所などない、と言ったろう?奴は屋敷ごと吹き飛ばした」
そう言うと、洸至は引き金を引いた。

最終更新:2012年06月17日 23:04