濃紺の涙  by253さん  投稿日 2012/07/26(木)



250
遼子(の中の人)もママ役か…(遠い目)
確かに婦警コスプレ姿はママ役でも可愛かった。

遼子が婦警姿で潜入捜査して、それが兄に見つかって…とかいうエピが
あっても良かったのにな…。


250さんの方向とは全く違いますが、婦警姿で潜入捜査して兄に叱られる話が出来ました。
エロなしなのでごめんなさい。



洸至は片山の車の助手席に乗り込み、後部座席に手にした紙袋を投げ込むとドアを閉めた。
閉めた人間の不機嫌さを示すように、ドアは大きな音を立てる。
「遼子さんは」
片山の問いかけにも洸至は無言だった。ドアウインドウの枠にひじをかけ、窓の外を見ている。
片山が滑らかにシフトレバーを動かすと、車はすべるように走り出した。片山はちらりとサイドミラーを見た。
鳴海兄妹が住む部屋が小さくなっていく。
助手席の洸至が煙草を取り出し火をつけた。

―――遼子はあの部屋でまた泣いているのだろうか。

遼子の頬をつたい零れ落ちる涙。
その雫が衣服に作った濃紺の模様と決意を秘めた瞳を片山は思い出していた。

「まったく…。あの格好で潜入取材なんて誰が考えたんだ」
その声で片山は現実に引き戻される。
「遼子さんの独断って言ってましたね」
「おおかた樫村が入れ知恵したんだろ。遼子はそこまで馬鹿じゃない」
洸至がため息交じりの煙を吐き出した。
いざ取材となると常識外れの行動に出られて何度も迷惑をかけてられているのに、洸至は無意識のうちに妹をかばっていた。
「あの格好で警視庁に入ろうとするなんて驚きましたね」
「軽犯罪法違反だ。ホールで俺たちに見つけられたから良かったようなものの、建侵もつくぞ。無謀すぎる」
頭痛がするのかこめかみを揉む洸至をよそに、片山はバックミラー越しに後部座席に投げ捨てられた紙袋からのぞく紺色の制服を見ていた。

今日の午後のことだ。
普段なら張り込みで外に出ていることが多い片山と洸至だったが、先日解決した事件の調書づくりのために午後は本庁に帰ってきた。
片山は上階へ行くボタンを押し、エレベーターを到着するまでの間一階のホールをぼんやりと眺めていた。
ホールの中央で同期の交通課の伊藤が、制服姿の女性職員に話しかけているのが見えた。
必死さが漂うがどこかにやけている伊藤の様子からすると仕事がらみの会話ではなさそうだ。
話しかけられている女性職員はそわそわと落ち着かない様子で聞いている。

片山からはうしろ姿しか見えないその女性職員は目を引く存在だった。
凛々しい印象を与える紺のブレザーに包まれた華奢な体、その背を流れ落ちるひとつに結わえられた艶のある
黒髪。ジャケットの襟足からのぞく首筋は雪のように白く、後ろ姿には儚い風情が漂う。膝丈のタイトスカート
の下からのびる足は女性らしいなだらかなラインを描き、それに続く足首は折れそうなほど細い。
女性でも武道経験者の多い警視庁ではあまり見ない、可憐で品のある美しさが感じられた。

その女性職員に話しかけている伊藤はもうすぐ30だ。
社会全体の結婚率が落ちた今でも、警察における結婚への圧力は弱くない。
もし警察内で上を目指すのなら、昇進試験だけでなく身辺も抜かりなく整えておく必要がある。
伊藤は上昇志向の強い男だった。警察官の結婚相手として理想なのは同じ職業の女だ。身元も間違いないし、
職業に対する理解がある。警察官は一般の会社員より結婚への渇望は強い。
伊藤はもてるタイプでもなさそうだから、たまたま庁内を訪れていた女性職員に眼をつけ声を掛けたのだろう。

「庁内でナンパですかね。出会いがないとはいえ…必死ですね」
冷やかすようにいった片山のその言葉で洸至が視線をそこに移した。
「おい…まさか。りょ…」
洸至の眼が見開かれ何か言いかけた。

それを最後まで言い切らぬうちに、洸至がその二人の下へ早足で歩いていく。
片山も慌ててその後についていった。
背後に人の気配を感じて、伊藤に話しかけられていた女が振り向いた。
黒の大きなセルフレームの眼鏡の下で、アーモンド型の眼が見開かれていた。
片山は息を呑んだ。
警察官の制服に身を包んだ鳴海遼子がそこにいた。
濃紺のブレザーに映える白シャツとネクタイ姿が遼子によく似合っていた。
衣装に合わせてほどこした控えめな化粧が、逆に遼子の素の美しさをひきたてている。
「おに…」
言いかけて遼子が止めた。

遼子の驚いた様子で伊藤も怪訝そうな顔をして洸至を見た。
「お知り合いですか?」
「ええ」
洸至が伊藤に会釈した。それから向き直り、
「本庁に来るなら俺に連絡をくれれば良かったろ」
と、相好を崩して遼子を見た。
片山と遼子は戦慄した。
傍目には柔らかな笑顔に見えるが、この笑顔を見せるときの洸至は危険だと彼のそばにいる者たちはよく知っている。
「あ…。だって仕事の邪魔しちゃいけないかな、と思って」
遼子も怯えながら洸至に調子を合わせた。こうでもしなければこの窮地を抜け出せないとわかっているからだろう。
「気にするなよ。時間あるなら飯でも一緒に食べないか?」
「は、はい…」
うつむく遼子と、親しげな洸至の様子を見て伊藤の顔に落胆の色が広がる。
洸至が歩き始めると、遼子も伊藤に会釈をしてから歩き出した。
傍らに立っていた片山に気づいた伊藤が口を開いた。
「あの子、お前の知り合いか」
「まあな」
「どこの署の子だよ」
「さあ。そこまでは俺も知らない。お前にしちゃ珍しくがっついてたな」
「見てたのか。結構いい感じの子だよな。タイプの子なんで、つい話しかけちまった」
自分の焦りを見られた照れ隠しだろうか、伊藤が苦笑いした。
普段の遼子の口からは乙女めいた妄想や粘着質な質問ばかりが出てくるが、さすがに警視庁に潜入したとあって今日はおとなしくしていたようだ。
遼子は口さえ開かなければ美女の部類に入る上玉だと片山も思う。あくまで口を開かなければ、だが。
「あの子、鳴海さんの女か」
「…そんなところだ。残念だったな」
片山はそういい残して、洸至と遼子の後を追った。

鳴海兄妹が正面玄関を出て、脇の植え込みの方に歩いていく。片山も少し距離を開けてその二人の様子をうかがった。
そんな三人の様子を正面玄関前で警杖を手に立番している制服警官がいぶかしげに見ていた。
「遼子」
洸至の声の異常な低さが怒りを示していた。
「何をしたかわかってるのか!」
洸至が遼子の肩を掴んだ。激情を堪え歯の奥をかみ締めているせいで、喉奥から搾り出すような声になっていた。
片山でさえ震え上がるような声だ。
「わかってる…。わかってるよ…」
だが遼子は洸至の視線にひるむことなく背筋を伸ばし決然と顔を上げ、兄の眼を見た。
「何のために…。お前のしようとしたことは犯罪だぞ」

「名無しの権兵衛を追いたいからよ…!」

洸至が眼を見開いた。
遼子の肩を掴む手に力がこめられる。

「名無しの権兵衛は今だって犯罪をおかして、たくさんの人を傷つけてるわ。だから止めたいの。
 もう一度15年前の事件に立ち返って名無しの権兵衛のことを知る必要があるのよ。そのために当たれる
 ものには全て当たったわ。だけど15年も経てば資料は少なくなるし証人の記憶も風化していく。
 当時のまま保管されている警察の捜査資料を見ればきっと新しいことがわかるかもしれないと思ったの」
悲愴なまでの真実への欲求が遼子の言葉から感じられた。
「…無茶だ。犯罪をおかしてまで知った真実じゃ記事にはできないんだぞ」

名無しの権兵衛は触媒となり強い反応を起こさせる存在だ。
直接は手を下さない。接触した人間が変化を起こした結果事件となるのだ。
だが、唯一自ら手を下した事件が―――15年前の爆破事件だった。
そこに注目した遼子のジャーナリストとしての能力は決して低くない。
危ない橋を渡ってまでこの事件の資料を見ようとした遼子の執念と一途さが片山には恐ろしかった。
遼子のスクープに対する執念は事件を追うときの洸至にものに良く似ていた。
片山の頭のどこかで遼子は危険だと警報が鳴る。このまま野放しにしていれば計画の邪魔になるはずだ。
それでいながら片山は遼子の決意をこめた瞳に魅了されていた。

「記事にするためじゃないの。そうでもしないと、あの事件を終わらせることができないから。
 それに…新しい悲劇を防げないから」

濃紺の制服に黒い模様が浮かぶ。
遼子の頬から涙が零れ落ちていた。
自分の身を省みないこの行動は、スクープのためでも名無しの権兵衛への憎悪でもはなく、誰かの大事なものを守るため――-。
遼子を突き動かした衝動は片山にはないものだった。
だからこそ遼子が流す涙はたとえようもなく美しく見えた。

「あの事件を終わらせるのは…俺がやる。…俺が…」
洸至が呻くようにいった。
遼子が着ている制服に、洸至の指が食い込んでいた。

洸至はアンタッチャブル編集部ではなく家に遼子を連れ帰った。気詰まりなドライブの後、洸至は片山に車で待っているように
言い残して遼子の腕を取り鳴海家に入っていった。


窓を開け、タバコの煙を外に逃がす。窓から夜の訪れを告げる少し湿り気のある空気が入ってきた。
洸至はまだ頬杖をして窓の外を眺めていた。
「無茶だな。本当に無茶だよ。資料室への入室の仕方も知らないで警視庁に侵入するんだからな」
洸至の言葉に遼子に正体を知られることを怖れている風情はない。
もちろん、遼子に真実を知られることは洸至にとっても片山にとっても破滅を意味することだ。
だが洸至は逆にその到来を待ちわび愉しんでいるようだった。
「遼子は執念深いからな。怖いよ」
洸至の瞳に昏い光が宿る。だが口元は笑っていた。
「嬉しそうですよ」
「冗談はよせ」
「…遼子さん似合っていましたね。制服」
洸至が片山を睨む。
「違いますか?」
助手席の男は無言でまた窓の外に眼をやった。これ以上踏み込めば怒鳴られる。
そう思って片山は口をつぐんだ。
車窓から外を眺める洸至の目には何が映っているのだろうか。
たぶん自分と同様に、あの時の遼子の制服姿だろう。そんな気がした。




エロなし失礼しました。次はエロいことさせます。
遼子が脱いだ制服は兄が捨てるといいつつ永久保存して匂いかいでいる。はず。


ぬおおおお!遼子の婦警コスプレキター!
もう似合うのはわかってますからねww

遼子が袖を通した制服、ジッ○ロックに入れて永久保存でしょうww
逃亡先でも持っていそうだw

エロいの、正座して待ってます!

エロいのもエロなしも両方大好きですー!
いろんな婦警コスプレ読めて幸せです!正座してます!

この片山もいいなぁ…!
最終更新:2012年10月20日 23:00