■ 学生たちへのレクイエム  ジョルジョ・アガンベン 「HAPAX(8月 27, 2020)」より
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 予想されたとおり、大学の授業は来期からオンラインで開催されることになった。注意深い観察者からすれば明白だったこと、すなわち、「パンデミック」がデジタルテクノロジーをよりいっそう跋扈させるための口実として利用されるだろうということが、まったくそのとおりに実現されることになったわけである。

 学生と教員の関係においてたえず重要なものでありつづけてきた身体的な現前という要素が決定的に失われ、教育の場においてもっとも活気をもった部分であるゼミのなかでの集団的な議論が失われてしまったとはいえ、ここでわれわれにとって重要なのは、結果としてもたらされた、教授法にかかわる変化ではない。そうしたことはあくまで、実体のないスクリーンのなかにいつまでも閉じこめられることによって、あらゆる意味の経験から生が抹消され、まなざしが失われてしまうという、すでにわれわれが経験しているテクノロジーによる蛮行の一部をなしているものだ。

(※mono....中ほど略)
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 十世紀近くもつづいてきたこうしたことのすべてがいま、永遠に終わることになる。学生たちはもう大学街に住むことはなくなり、かわりに部屋に閉じこもり、かつて共に学んだ仲間たちと何百キロも離れたまま授業を受けることになるだろう。以前は名の知れていた大学がある小さな街では、おうおうにしてそのなかでもっとも活気に満ちた要素を生みだしていた学生たちのコミュニティが、街頭から消えていくのが見られるはずだ。

(※mono....中ほど略)
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  • 学ぶことを真に愛する学生たちは、現下のように変わってしまった大学に所属することを拒み、その起源に立ちかえって新たなウニヴェルシタスを作りだすべきである。目下のような技術的な蛮行に直面するなかにあって、過去の言葉が生気を保ちつづけ、まったく新たな文化のようなものが――もし仮にでも――生まれる可能性があるとしたら、そのなかにしかないはずだ。











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最終更新:2021年11月01日 17:45